WO2009150865A1 - 修飾タンパク質の製造方法とこの製造方法で得られる修飾タンパク質及びタンパク質修飾キット - Google Patents

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Abstract

 本発明の修飾タンパク質の製造方法は、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有したタンパク質と、アルデヒド基を修飾ユニットの末端に有した修飾分子とを、アルデヒド基を含有したタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を修飾ユニットの末端に有した修飾分子とを、あるいは、アルデヒド基を含有したタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミンからなる修飾分子とを、弱酸性~弱塩基性条件下でピクテ・スペングラー反応させ、前記タンパク質を閉環された前記修飾分子で修飾する。

Description

修飾タンパク質の製造方法とこの製造方法で得られる修飾タンパク質及びタンパク質修飾キット
 本発明は、修飾タンパク質の製造法に係り、より詳しくは、タンパク質の分解や変性の虞を抑えつつ、位置特異的にタンパク質を修飾することが可能な修飾タンパク質の製造方法とこの製造方法で得られた修飾タンパク質、及びこの修飾タンパク質を得るためのキットに関する。
 本願は、2008年6月13日に、日本国に出願された特願2008-155994号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 現在、今までにない有用な性質をもつタンパク質をデザインし作製するうえで、人為的に所望の修飾分子をタンパク質に導入した修飾タンパク質が注目されている。この所望の修飾分子をタンパク質に導入する方法としては、タンパク質翻訳系を利用した非天然型アミノ酸の導入やde novo(デノボ)化学合成等が挙げられる。しかしながら、これらの方法ではそれぞれに以下に挙げる限界を有する。
 タンパク質生合成で非天然型アミノ酸を導入する方法としては、変異アミノアシルtRNA合成酵素と;前記変異アミノアシルtRNA合成酵素の存在下で、非天然型アミノ酸と結合可能なサプレッサーtRNAと;所望の位置にナンセンス変異を受けた遺伝子と;を用いて、非天然型アミノ酸を含んだタンパク質を発現させる方法が知られている(例えば、非特許文献1~11参照)。この方法は、非天然型アミノ酸の導入位置の特異性が高いという点で優れた方法である。
 ところがこの方法では、タンパク質合成に関わる生体分子の基質特異性の改変又はアミノ酸の化学構造の多様性に依存する。そのため、導入できる非天然型アミノ酸の種類は、自ら制約を受ける。つまり、この方法では、多様性の限界を超えた構造を有する非天然型アミノ酸は、導入できない。また、仮に、本来のアミノ酸と比べて、性質・大きさが著しく異なった非天然型アミノ酸が導入できたとしても、この非天然型アミノ酸が存在することにより、翻訳段階におけるタンパク質の正常なフォールディングを阻害する可能性も否定できない。
 他の一例としてde novo化学合成が挙げられるが、この方法ではアミノ酸100残基以上のタンパク質の合成は難しく、また、タンパク質が正しくフォールディングされるという保証はない。
 他の一例として、タンパク質を化学的修飾により修飾する方法も知られている。しかしながら、タンパク質を修飾する際に用いる化学反応によっては、化学的官能基を導入する位置を特定できないという問題がある。例えば、タンパク質中のアミノ基の修飾を化学的修飾法で行なうと、N末端とすべてのリジン残基が修飾を受けることになる。
 更に、タンパク質に非天然型アミノ酸を導入した後、化学的修飾を行なう方法(翻訳後修飾法)も試みられている。非特許文献12には、アジドホモアラニンを含有するタンパク質と、ホスフィン試薬とスタウジンガーライゲーション(Staudinger ligation)とを用いて反応させる方法が記載されている。しかしながら、アジドが分解して生じたニトレンが、タンパク質のリジンのアミノ基と反応してしまう。同様に、タンパク質側にケト基を導入し、このケト基とアミン又はヒドラジッドを含む機能性分子とを反応させる方法も知られている(非特許文献13及び14参照)。しかし、ヒドラゾン化やオキシム化は多少の安定性はあるものの、少しずつ加水分解が進行してしまう。また、タンパク質側にジエン基を導入し、ディールスアルダー(Diels-Alder)反応によりオレフィン試薬を導入する方法も報告されている(非特許文献15参照)。しかし、この方法ではタンパク質への部位特異的なジエンの導入が難しい上、システインのチオールと副反応が進行してしまう。
 また、遷移金属触媒を用いた化学反応により、タンパク質を化学修飾する方法も報告されている(非特許文献16~18)。しかし、この方法は実験操作が煩雑である上、詳細な条件検討が必要となる。さらに金属イオンによるタンパク質の変性等のリスクが考えられる。
 一方、特異性の高い炭素-炭素結合形成反応として、ピクテ・スペングラー(Pictet-Spengler)反応が広く知られている(非特許文献19~21参照)。ピクテ・スペングラー反応は、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミンとアルデヒドを閉環縮合させる反応であり、複素環化合物の合成に広く用いられている。本反応は、通常有機溶媒条件で行われることが多く(非特許文献19参照)、水溶媒中でも反応が進行する。その場合、触媒として10%TFA水溶液が用いられる(非特許文献20参照)。しかし、こうした条件ではタンパク質の変性を防ぐことができない。またトリプタミン等の求核性のあるインドール-3-エチルアミンは生理的条件下でも反応が進行することが記載されている(非特許文献21参照)。この場合、立体障害の低いアルデヒドを反応に用いる必要があり、タンパク質、またはタンパク質への応用は記載されていない。
 このピクテ・スペングラー反応を用いたオリゴペプチドのライゲーション反応が報告されている(非特許文献22参照)。この方法は、TFA1%水溶液という強酸を用いてライゲーションを行っているため、タンパク質の変性を防ぐことができない。また、反応性の低いモノアルデヒドを利用しているため、酢酸50%水溶液では修飾反応が進行せず、温和な条件でタンパク質の修飾反応を行なえない。
 一方、タンパク質を部位特異的にアルデヒド化する方法が報告されている(非特許文献23、24参照)。前者(非特許文献23)の方法では特定の一次配列を含んだタンパク質を発現させ、そのシステイン残基の側鎖を酵素酸化することでアルデヒドを調製する。しかし、反応性の高い活性化アルデヒドは調製できず、また水溶媒中で不安定なヒドラゾン化、オキシム化しか行っていない。一方、後者(非特許文献24)はピリドキサール-5-リン酸を用いた酸化的脱アミノ化反応により、活性化されたα-ケトアルデヒドを調製できる。しかし、水溶媒中で不安定なオキシム化を行っているのみであり、ピクテ・スペングラー反応型の修飾反応への応用は記載されていない。
Koideら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)、 USA、第85巻、1988年、p.6237-6241 Norenら、サイエンス(Science)、 第244巻、1989年、p.182-8 Wangら、サイエンス(Science)、第292巻、2001年、p.498-500 Chinら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)、第124巻、2002年、p.9026-9027 Chinら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)、 USA、第99巻、2002年、p.11020-11024 Furter、プロテイン・サイエンス(Protein Sci.)、第7巻、1998年、p.419-426 Wangら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)、第124巻、2002年、p.1836-1837 Santoroら、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、第20巻、2002年、p.1044-1048 Kigaら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)、 USA、第99巻、2002年、p.9715-9723 Sakamotoら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、第30巻、2002年、p.4692-4699 Kirschenbaumら、ケムバイオケム(ChemBioChem) 2002、No.02-03、235-237 Kiickら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)、 USA、第99巻、2002年、p.19-24 Dattaら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)、第124巻、2002年、p.5652-5653 Liuら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)、第125巻、2003年、p.1702-1703 Araujoら、アンゲワンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie International Edition)、第45巻、2006年、p.296-301 Kodamaら、ケムバイオケム(ChemBioChem)、 第7巻、2006年、p.134-139 Kodamaら、ケムバイオケム(ChemBioChem)、 第8巻、2007年、p.232-238 McFarlandら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)、第127巻、2005年、p.13490-13491 Eric ら、ケミカル・レビュー(Chem. Rev.) 第95巻、1995年、p.1797-1842 Biswajitら、テトラヒドロン・レターズ( Tetrahedron Letters)第48巻、2007年、p.1379-1383 Whaleyら、オーガニック・リアクション(Organic Reaction)、第6巻、1951年、p.151-190 Liら、テトラヒドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)、第41巻、2000年、p.4069-4073 Carricoら、ネイチャー・ケミカル・バイオロジー(Nat. Chem.Biol.)、第3巻、2007年p.321-322 Gilmoreら、アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angew. Chem. Int. Ed.)、第45巻、2006年 p.5307-5311
 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、強酸によるタンパク質の分解や変性が生じる反応条件ではなく、より温和な条件で、タンパク質内の位置特異的に、所望の修飾分子を導入することが可能な修飾タンパク質の製造方法の提供を目的とする。
 本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を採用した。
 (1)本発明の修飾タンパク質の製造方法は、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有したタンパク質と、アルデヒド基を修飾ユニットの末端に有した修飾分子とを、アルデヒド基を含有したタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を修飾ユニットの末端に有した修飾分子とを、あるいは、アルデヒド基を含有したタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミンからなる修飾分子とを、弱酸性~弱塩基性条件下でピクテ・スペングラー反応させ、前記タンパク質を閉環された前記修飾分子で修飾する。
 (2)前記芳香環もしくはヘテロ芳香環が、電子供与性の官能基を有するのが好ましい。
 (3)前記電子供与性の官能基が、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる1以上であるのが好ましい。
 (4)前記エチルアミン基のアミン基に隣接する炭素原子が、電子吸引性の官能基を有しているのが好ましい。
 (5)前記アルデヒド基に隣接する炭素原子が、電子吸引性の官能基を有しているのが好ましい。
 (6)前記電子吸引性の官能基がイミノ基、カルボニル基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる1以上であるのが好ましい。
 (7)前記芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基は、トリプタミン骨格又はドーパミン骨格をなし、前記アルデヒド基は、αーケトアルデヒドをなしているのが好ましい。
 (8)前記アルデヒド基を含有したタンパク質は、ピリドキサール-5-リン酸存在下で、酸化的脱アミノ化反応によりアルデヒド基が導入され得られるのが好ましい。
 (9)前記タンパク質は、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基またはアルデヒド基を含有したアミノ酸と結合したサプレッサーtRNAと、このサプレッサーtRNAのコドンに対応するコドンを有するようにナンセンス変異を施した遺伝子とを用いた合成系により合成されたタンパク質であるのが好ましい。
 (10)前記β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有したタンパク質が、N末端にトリプトファンを有したタンパク質であるのが好ましい。
 (11)本発明の修飾タンパク質は、上記(1)に記載の修飾タンパク質の製造方法で得られる。
 (12)前記タンパク質は、下記一般式(1)~(6)のいずれかで示されるのが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 上記一般式(1)において、Rはタンパク質であり、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 上記一般式(2)において、Rはタンパク質であり、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 上記一般式(3)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
 上記一般式(4)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 上記一般式(5)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 上記一般式(6)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。
 本発明のタンパク質修飾キットは、修飾タンパク質を製造するためのタンパク質修飾キットであって、ピリドキサール-5-リン酸と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有した修飾分子とを有する。
 上記(1)に記載の修飾タンパク質の製造方法によれば、タンパク質の翻訳後修飾における部位特異的な制御が可能となる。本方法は様々な修飾分子をタンパク質に導入可能であることから、修飾タンパク質に多様性を持たすことができる。また、本方法は、副生成物がほとんど生成せず、基質が低濃度でも修飾可能であり、高い修飾効率を誇る。また、触媒が必要ないことから、in vivoでの実験も可能である。更に、タンパク質の修飾操作が簡便であり、安価な試薬で修飾が可能である上、大掛かりな設備を必要としない。そのため、修飾タンパク質の大量生産系やハイスループット系の構築を可能にする。
 新しい修飾法によりタンパク質の機能的特性を広げることは、将来、機能的プロテオミクス及びナノテクノロジーを初めとする多くの分野に寄与するものである。また、本方法は、デザイン化された修飾タンパク質の生産を可能とする。
図1は、本発明の修飾タンパク質の製造方法の一例を模式的に示した図である。 図2は、蛍光分子が導入された修飾タンパク質の一例を模式的に示した図である。 図3は、蛍光基が導入された修飾タンパク質の一例を模式的に示した図である。 図4は、液晶分子が導入された修飾タンパク質の一例を模式的に示した図である。 図5は、重原子が導入された修飾タンパク質の一例を模式的に示した図である。 図6は、実施例1に用いた修飾分子の製造工程を模式的に示した図である。 図7は、実施例1における修飾タンパク質の製造工程を模式的に示した図である。 図8は、実施例1及び比較例の修飾タンパク質において、シプロタンジェリン染色及びウェスタンブロッティングの結果を示す図である。 図9は、実施例2の修飾タンパク質において、質量分析法を用いた測定結果を示す図である。 図10Aは、実施例2で生成された修飾タンパク質を示した図である。 図10Bは、実施例2で生成された修飾タンパク質を示した図である。 図11は、実施例2の修飾タンパク質において、MS/MS解析の結果を示す図である。 図12は、実施例2の修飾タンパク質において、UV測定の結果を示す図である。 図13は、実施例2の修飾タンパク質において、CD測定の結果を示す図である。
符号の説明
 1 ホルミル化ミオグロビン
 2 トリプタミン
 3 トリプタミン修飾ミオグロビン
 4 β-カルボリン修飾ミオグロビン
 5 フルオレセインを含んだ修飾分子
 6 フルオレセイン修飾ミオグロビン
 7 アレクサフルオロ488を含んだ修飾分子
 8 アレクサフルオロ488修飾ミオグロビン
 9 MBBAを含んだ修飾分子
10 MBBA修飾ミオグロビン
11 臭素原子を含む修飾分子
12 重元素修飾ミオグロビン
13 ビオチン
14 トリプトファン
15 修飾分子保護体
16 修飾分子
17 ビオチン修飾ミオグロビン
 本明細書において、タンパク質とは、アミノ酸がペプチド結合してなる化合物を言い、天然のタンパク質であってもよいし、人工的に合成された非天然のタンパク質であってもよい。また、タンパク質は天然の修飾体などを含むものであってもよい。このタンパク質としては、例えば、10以上のアミノ酸からなるオリゴペプチドであってもよいし、分子量が5000以上の高次構造を有するポリペプチドであってもよい。特に本明細書において、タンパク質とは、その翻訳後のフォールディングによって、独自の構造を有し、その構造により主に生体内で何らかの機能・活性を示し得るタンパク質をさすこともある。
 本発明は、所望の化学的官能基を持つ分子をピクテ・スペングラー反応によりタンパク質に結合させ、修飾タンパク質を得る方法である。
 以下、本発明をさらに詳細に説明する。以下の説明において、タンパク質に導入しようとしている修飾分子の末端の、ピクテ・スペングラー反応に寄与する部分をカップリングパートナーと称する。また、タンパク質に導入されていて、このカップリングパートナーと特異的に反応する部分をケミカルハンドルと称する。
 本発明における修飾タンパク質の製造方法は、ケミカルハンドルを含有するタンパク質と、カップリングパートナーを含有する修飾分子とを、弱酸性~弱塩基性条件下でピクテ・スペングラー反応させ、前記タンパク質を前記修飾分子で修飾する方法である。
<ピクテ・スペングラー反応>
 本発明において、ピクテ・スペングラー反応させるとは以下の場合をいう。
 ケミカルハンドルとしてβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基が導入されたタンパク質と、修飾ユニットの末端にカップリングパートナーとしてアルデヒド基を有する修飾分子とを反応させる場合。
 ケミカルハンドルとしてアルデヒド基が導入されたタンパク質と、修飾ユニットの末端にカップリングパートナーとしてβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を有する修飾分子とを反応させる場合。
 あるいは、ケミカルハンドルとしてアルデヒド基が導入されたタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミンからなる修飾分子とを反応させる場合。
 β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を有するタンパク質として、N末端あるいはC末端にトリプトファン残基を有するタンパク質を用いることも可能である。
 ここで、ピクテ・スペングラー反応とは、ケミカルハンドル含有タンパク質と、カップリングパートナーを有する修飾分子との反応とが、反応後に閉環縮合を伴った炭素-炭素結合を形成する反応である。
 ピクテ・スペングラー反応は、安定なケミカルハンドルとカップリングパートナーを利用する点、閉環縮合により生じた炭素-炭素結合が安定である点、修飾反応の官能基特異性が高い点、及び室温付近で反応が進行する点で好ましい。
 ここで、閉環縮合とは、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミンとアルデヒドが縮合することで複素環骨格が形成されることである。この複素環骨格としては、例えば、テトラヒドロカルボリン骨格などが挙げられる。複素環骨格を形成する反応を用いると、上述したように化学的に安定な炭素-炭素結合が形成される。そのため、修飾物が化学分解されにくい。反応後、形成された複素環骨格にさらに酸化反応を行うことで、蛍光基等の機能を付加できる、という利点も有する。
 代表的なピクテ・スペングラー反応としては、HClやTFAなどの酸触媒存在下で、下記の一般式(7)で示すように複素環化合物が形成される化学反応である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 一般に、ピクテ・スペングラー反応は、インドール-3-エチルアミン骨格等に代表される、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基のアミノ基と、アルデヒド基とが脱水してイミニウムカチオンが生じ、ここに分子内で芳香環がフリーデル・クラフツ型の求核付加を起こすマンニッヒ反応型の反応である。そのため、用いるタンパク質や分子によっては、有機溶媒中、強酸性条件にて加熱することによって、反応を進行させる必要がある。しかし、この条件下では、タンパク質が変性しやすい。
 そこで、タンパク質が変性しない温和な条件下でピクテ・スペングラー反応を行うと、インドール-3-エチルアミン及びモノアルデヒド基の反応性が低いため、また、タンパク質上での立体障害由来と考えられる反応性の低下から、用いるタンパク質や修飾分子によっては、タンパク質の修飾がほとんど進行しないという問題があった。
 本発明者らはピクテ・スペングラー反応において、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基の骨格を最適化することで、この反応性が向上することを見出した。
 すなわち、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基の、芳香環もしくはヘテロ芳香環上に電子供与性の官能基が配されていることが好ましい。分子内求核的付加が進行しやすくなるため、タンパク質の分解又は変性を抑制できる温和な条件、例えばpH4~9、反応温度が0℃以上37℃以下といった条件で、ピクテ・スペングラー反応の反応性を向上できる。
 電子供与性の官能基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはヒドロキシ基などが挙げられる。
 β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基の、芳香環もしくはヘテロ芳香環上に上記の電子供与性の官能基が配されているものとしては、例えばこれら電子供与性の官能基を5位に有しているピロール-3-エチルアミン化合物、これら電子供与性の官能基を4位又は6位に有しているインドール-3-エチルアミン化合物、これら電子供与性の官能基を3位又は5位に有しているインドール-3-エチルアミン化合物などが挙げられる。
 また、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基のアミン基に隣接する炭素原子が、電子吸引性の官能基を有していることが好ましい。イミニウムカチオンの電子吸引性が向上し、求核的付加が進行しやすくなる。そのため、よりピクテ・スペングラー反応の反応性を向上できる。
 電子吸引性の官能基としては、例えば、イミノ基、カルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
 この様なβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を有した化合物の例としては、以下のものが挙げられる。例えばβ-アリールエチルアミン基を有した化合物としては、L-ドーパ(DOPA)などが挙げられる。インドール-3-エチルアミン基を有した化合物の例としては、6-ヒドロキシトリプタミン、トリプトファンメチルエステル、N末端トリプトファン誘導体などが挙げられる。
 本方法に好ましい代表的なβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基の骨格を以下の一般式(8)~(10)に挙げていく。一般式(8)は、ピロール-3-エチルアミン化合物であり、一般式(9)は、インドール-3-エチルアミン化合物であり、一般式(10)は、βーアリールエチルアミン化合物である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 一般式(8)中、Rは電子吸引性の官能基であることが好ましい。また、Rは電子供与性の官能基であることが好ましい。R、Rとしては、特に限定されるものではないが、例えばアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。一般式(8)に示す化合物において、R~Rにて修飾ユニットあるいはタンパク質と結合していることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 一般式(9)中、Rは電子吸引性の官能基であることが好ましい。また、R、Rは電子供与性の官能基であることが好ましい。R、R、Rとしては、特に限定されるものではないが、例えばアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。一般式(9)に示す化合物において、R、R、R、Rにて修飾ユニットあるいはタンパク質と結合していることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 一般式(10)中、Rは電子吸引性の官能基であることが好ましい。また、R、Rは電子供与性の官能基であることが好ましい。R、R、Rとしては、特に限定されるものではないが、例えばアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。一般式(10)に示す化合物において、R、R、R、Rにて修飾ユニットあるいはタンパク質と結合していることが好ましい。
 また、本発明者らはピクテ・ペングラー反応において、アルデヒド基を最適化することで反応性が向上することを見出した。すなわち、アルデヒド基に隣接する炭素原子が電子吸引基を有していると、ピクテ・ペングラー反応において求核的付加が進行しやすくなる。電子吸引性の官能基としては、例えば、イミノ基、カルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
 本発明においてアルデヒド基としてはいずれも使用することが可能であるが、活性化されたアルデヒドを使用することが好ましい。具体的には、例えばαーケトアルデヒド等が挙げられる。
 本発明において、ピクテ・スペングラー反応を行う弱酸性から弱塩基性条件とは、具体的にはpH4.5以上pH8.5以下であり、好ましくはpH5.0以上pH6.5以下である。また、酸触媒としては、リン酸、酢酸等を用いることができる。
 ピクテ・スペングラー反応を行う溶媒としては、水溶媒に加え、有機反応及び錯体合成で一般的な溶媒、例えば、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、n-デカン、ベンゼン、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シメチルスルホキシド、トリエチルアミン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。
 反応温度としては、4℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上37℃以下の室温で行なう。
 例えば、ピクテ・スペングラー反応を用いた本発明における修飾反応系の一例を挙げると、下記の通りである。1μg/ml~2000μg/ml、好ましくは約1000μg/mlのケミカルハンドルを持つタンパク質と、25μM~100mM、好ましくは約100mMのカップリングパートナーを末端に有する分子とを、25mM~400mM、好ましくは約100mM、pHは、pH4.5~8.5好ましくはpH5.5のバッファー(リン酸ナトリウム)中で混合し、反応温度は4℃~37℃、好ましくは37℃、反応時間は30分~終夜にてインキュベートする。この反応により、修飾タンパク質が得られる。
 以上説明したように、反応性の高い求核的芳香環および活性化アルデヒドを組み合わせて用いることで、弱酸性から弱塩基性条件下において良好にタンパク質の修飾を効率よく行うことができる。
 具体的には、アルデヒドの求電子性を高めた活性アルデヒドであるαーケトアルデヒド基、及び、インドール-3-エチルアミンの求核性を高めた芳香族であるトリプタミンメチルエステル骨格を用いる、あるいは、インドール-3-エチルアミンの求核性を高めるため、アミノ基のα位にカルボニル基のような電子吸引性の官能基を入れる。これらにより、ピクテ・スペングラー反応の反応性が向上し、タンパク質の分解又は変性を抑制できる温和な条件にて、タンパク質の修飾反応を進行することが可能となる。その結果、タンパク質の立体構造や用いる修飾分子によらず、タンパク質の修飾を弱酸性から弱塩基性条件下で行うことができる。
<ケミカルハンドル含有タンパク質>
 タンパク質としては、ケミカルハンドルを有したものであれば特に限定されるものではなく、天然のタンパク質を用いることも出来るし、従来公知の方法でケミカルハンドルが導入された合成タンパク質を用いることもできる。
 ケミカルハンドルとしては、修飾分子のカップリングパートナーとピクテ・スペングラー反応するものであれば特に限定されるものではなく、カップリングパートナーがβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基であった場合は、ケミカルハンドルはアルデヒド基である。カップリングパートナーがアルデヒド基であった場合は、ケミカルハンドルはβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基である。ケミカルハンドルとしてβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を用いる際は、公知の方法でN末端をトリプトファンとしたタンパク質を用いることもできる。
<ケミカルハンドル含有タンパク質の調製>
 次に、タンパク質にケミカルハンドルを導入する方法について説明する。
 ケミカルハンドル含有タンパク質の製造方法は、特に限定されず、例えばピリドキサール-5-リン酸を用いた酸化的脱アミノ化による翻訳後修飾、真性細菌または真核細胞内でタンパク質を合成する系や、無細胞タンパク質合成系、生体内での翻訳後修飾などがいずれも適用可能である。また、タンパク質のN末端を任意のプロテアーゼで消化してグリシンとし、その後公知の方法でアルデヒド化してもよい。
 これらケミカルハンドル含有タンパク質の合成法において、位置特異的に分子を結合させるためには、非天然型アミノ酸(ケミカルハンドルを有したアミノ酸)のアミノ酸導入位置を厳密に制御するか、位置選択性の高い有機化学反応を用いてケミカルハンドルを作ることが好ましい。
 ケミカルハンドルとしてアルデヒド基をタンパク質に導入する場合、アルデヒド基は、例えばグリシン、ε-N-(2-アミノアセチル)リジン等のアミノ酸残基に酸化的脱アミノ化反応により導入できる。
 タンパク質に導入する非天然型アミノ酸としては、前記ケミカルハンドルを有している、もしくは官能基変換によりピクテ-スペングラー反応の基質となり得るものであれば特に限定されるものではない。その様な化合物の例としては、例えばp-アミノエチルフェニルアラニン、δ-ケトリジンなどが挙げられる。
 ケミカルハンドル含有タンパク質は、簡便に低コストで作製できることから、ピリドキサール-5-リン酸を用いた酸化的脱アミノ化により作製することが好ましい。タンパク質をこのピリドキサール-5-リン酸で処理することで、酸化的脱アミノ化によりこのタンパク質のN末端を簡便にアルデヒド化ができる。
 また、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基またはアルデヒド基を含有した非天然型アミノ酸と結合したサプレッサーtRNAと;このサプレッサーtRNAのコドンに対応するコドンを有するようにナンセンス変異を施した遺伝子と;を用いた合成系により、ケミカルハンドル含有タンパク質を発現させることが好ましい。タンパク質の部位特異的に、非天然型アミノ酸を導入できる。
 変異アミノアシルtRNA合成酵素としては、ピクテ・スペングラー反応可能な官能基を含む非天然型アミノ酸に対して、基質特異性を有したアミノアシルtRNA合成酵素を用いる。または、本来のアミノ酸に対する基質特異性に比べて、ピクテ・スペングラー反応可能な官能基を含む非天然型アミノ酸に対する基質特異性が高められた変異型のアミノアシルtRNA合成酵素を用いることもできる。このような変異アミノアシルtRNA合成酵素としては、用いる非天然型アミノ酸に応じて適宜選択できるが、例えばチロシル-tRNA合成酵素、トリプトファニル-tRNA合成酵素、ピロリジル-tRNA合成酵素等が挙げられる。
 サプレッサーtRNAは、アミノアシルtRNA合成酵素又はその変異体により、ピクテ・スペングラー反応可能な官能基を含む非天然型アミノ酸でアミノアシル化され、アンチコドンがストップコドンに対応するtRNAである。
 サプレッサーtRNAは、その転写の鋳型となる配列を有した鋳型DNAを公知の方法で調製し、その転写反応により作製できる。
 遺伝子の所望の位置にナンセンス変異を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、例えば非特許文献1~11に記載の方法で行うことが出来る。
 これらアミノアシルtRNA合成酵素と、サプレッサーtRNAと、所望の位置にナンセンス変異を受けた遺伝子とを用いることで、例えばp-アミノエチルフェニルアラニンやδ-ケトリジンなどの非天然型アミノ酸をタンパク質に導入できる(例えば非特許文献1~11参照)。
 また、天然のタンパク質や合成したタンパク質を、N末端がグリシン残基となるようなプロテアーゼで消化することで、アルデヒド基を有したタンパク質を作製することができる。例えば、GST(glutathione-S-transferase)タグと、Factor Xaの認識部位の下流がグリシン残基となるように改変した遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを大腸菌や培養細胞等へトランスフェクションし、この大腸菌や培養細胞で発現させたタンパク質を回収する。そして、この回収したタンパク質を、Factor Xaで消化することで、N末端にグリシン残基を有したタンパク質を得ることができる。
<カップリングパートナー含有修飾分子>
 修飾分子とは、修飾ユニットの末端に、カップリングパートナーが結合している分子をいう。カップリングパートナーがβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基であった場合、修飾ユニットは、例えば上述した一般式(4)で表されるβ-アリールエチルアミン基のR、R、R、Rに結合していることが好ましい。また、カップリングパートナーがアルデヒド基であった場合、修飾ユニットはこのアルデヒド基の炭素原子に結合していることが好ましい。
 修飾ユニットとしては、特に限定されず、例えば、アミン(第1、第2、第3、第4)、アルコール(第1、第2、第3)、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸、アリール基、アリル基、含硫黄ヘテロ環、含窒素ヘテロ環、などの官能基又はその縮合物を含む機能性分子等が挙げられる。また、周知の補酵素、糖鎖、脂肪鎖、DNA、RNA、ヌクレオシド、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、脂質、糖質およびそれらの誘導体、あるいは非天然分子等を用いることができる。さらには、修飾ユニットとしては蛍光分子、液晶を示す周知の分子(液晶分子)、基板又はフラーレン等を用いることができる。
 修飾ユニットとしてガラス基板や樹脂基板と結合できる分子を用い、この修飾ユニットとカップリングパートナーとを介して、タンパク質をこれらの基板と結合させることも可能である。この際、修飾ユニットとカップリングパートナーとからなる修飾分子を先に基板に結合させ、その後ピクテ・スペングラー反応によりタンパク質をこの修飾分子と結合させることで、基板にタンパク質を結合できる。
<カップリングパートナー含有修飾分子の調製>
 例えばタンパク質に導入する修飾ユニットの末端に、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基をカップリングパートナーとして付加できる。カップリングパートナーとしてβ位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を修飾ユニットに付加する方法としては、例えば、下記一般式(11)に示すトリプトファン、または一般式(12)に示すL-DOPAなどを縮合反応により修飾ユニットと共有結合させる。これらトリプトファン、L-DOPA等は、市販品を用いることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 上記一般式(11)中、Rは修飾ユニットである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 上記一般式(12)中、Rは修飾ユニットである。
 あるいは、修飾ユニットの末端に、アルデヒド基をカップリングパートナーとして付加することができる。カップリングパートナーとしてアルデヒド基を導入する方法としては、例えば、2-アミノアセトアミドを酸化的脱アミノ化反応により、あるいはヒドロキシ基を酸化反応によりアルデヒド基に変換する。
 以上で、末端にカップリングパートナーを有した修飾分子が得られる。カップリングパートナーを予め有する修飾ユニットを修飾分子として用いることもでき、カップリングパートナー自身を修飾分子とすることもできる。
 本発明の態様の一例を示すと、図1に示す通りである。図1では、タンパク質として馬心臓ミオグロビン(以下、ミオグロビン称することがある)を用いている。また、図1では、ケミカルハンドルとしてミオグロビンのN末端に配されたアルデヒド基と、カップリングパートナーとしてインドール-3-エチルアミンを有したトリプタミン誘導体(例えば、トリプトファンメチルエステル)とをピクテ・スペングラー反応させた場合を例示している。しかしながら、タンパク質、ケミカルハンドル、カップリングパートナーは、この組み合わせに限定されるものではない。
 図1より、アルデヒド基をN末端に有したミオグロビン1(ホルミル化ミオグロビン1)と、インドール-3-エチルアミンを有したトリプタミン2とがピクテ・スペングラー反応により、トリプタミン修飾ミオグロビン3となる。その後酸化により、β-カルボリン修飾ミオグロビン4となることもある。このように複素環骨格を酸化することで、蛍光基としての機能を付加することも出来る。
<修飾タンパク質の精製>
 生成物(修飾タンパク質)の確認は、SDS-PAGE、質量分析などで検出できる。
 修飾タンパク質の単離・精製としては、生産した修飾タンパク質特有の性質に基づき、例えば溶媒抽出、有機溶媒による分別沈澱、塩析、透析、遠心分離、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、結晶化、電気泳動などの分離操作を単独あるいは組み合わせて行なうことができる。
 修飾タンパク質が切断・分解されていないことは、SDS-PAGEによる分離と、その後の修飾タンパク質に特異的な抗体とによる検出によって確認できる。
 また、修飾タンパク質の活性は、修飾タンパク質について周知の方法によって確認できる(例えば活性が保持されていれば,正しい立体構造を保持しているとわかる)。
 また導入した分子の活性が保持されていることは、この分子の活性を調べることで確認できる。例えば、ビオチンを結合した場合は、アビジンとの結合能、蛍光物質を結合した場合は、蛍光観測などで確認できる。
 このように、本発明は、周知の方法との組み合わせにより、多様な反応が可能となる。
 本発明の修飾タンパク質の製造方法で得られる修飾タンパク質は、例えば下記のような一般式(13)に示すものが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 上記一般式(13)において、Rはタンパク質であり、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。より具体的には、例えばRはタンパク質であり、Rは修飾ユニットであり、R、R、Rは水素原子である下記の一般式(14)で示す修飾タンパク質である。修飾ユニットにはアミドをリンカーとしたビオチンを用いている。得られる修飾タンパク質は、ビオチンで修飾されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 また、修飾タンパク質として下記のものを挙げることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 上記一般式(15)において、Rはタンパク質であり、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。より具体的には、例えばRはタンパク質であり、R~Rは水素原子である下記の一般式(16)で示す修飾タンパク質である。修飾分子は、β位に芳香環をもつエチルアミンからなり、得られるタンパク質は、6-azaindole(蛍光基)で修飾されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 また、修飾タンパク質として下記のものを挙げることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 上記一般式(17)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。より具体的には、例えばRはタンパク質であり、Rは修飾ユニットであり、R、~Rは水素原子である下記の一般式(18)で示す修飾タンパク質である。修飾ユニットにはアミドをリンカーとしたビオチンを用いている。得られる修飾タンパク質は、ビオチンで修飾されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 また、修飾タンパク質として下記のものを挙げることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
 上記一般式(19)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。より具体的には、例えばRはタンパク質であり、R~Rは水素原子である下記の一般式(20)で示す修飾タンパク質である。修飾分子は、β位にヘテロ芳香環をもつエチルアミンからなり、得られるタンパク質は、ノルハルマン(蛍光基)で修飾されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
 また、修飾タンパク質として下記のものを挙げることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000027
 上記一般式(21)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。より具体的には、例えばRはタンパク質であり、Rは修飾ユニットであり、Rはヒドロキシ基であり、R、R、R、Rは水素原子である下記の一般式(22)で示す修飾タンパク質である。修飾ユニットにはアミドをリンカーとしたビオチンを用いている。得られる修飾タンパク質は、ビオチンで修飾されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000028
 また、修飾タンパク質として下記のものを挙げることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000029
 上記一般式(23)において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。より具体的には、例えばRはタンパク質であり、R~Rは水素原子である下記の一般式(24)で示す修飾タンパク質である。修飾分子は、β位に芳香環をもつエチルアミンからなり、得られる修飾タンパク質は、イソキノリン(蛍光消光基)で修飾されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000030
 上記で例示した修飾タンパク質以外に、下記に示すような様々なものを修飾分子として用いることができ、以下に示すような応用例が考えられる。
(1)標識タンパク質
 例えばフルオレセイン、アレクサフルオロ(Alexa Fluor)、ボディピィ(BODIPY)等の蛍光分子を、カップリングパートナーを介して結合することにより得られる修飾タンパク質は、タンパク質の挙動の解析に好ましく用いられる。これまでにも、このような蛍光分子を標識とするタンパク質、例えはGFPなどが知られていたが、本発明の方法は、タンパク質の位置特異的に蛍光分子を導入できる。そのため、タンパク質の活性に影響を与えない箇所に選択的に導入ができる。また、タンパク質の機能を阻害するような立体障害はほとんど起こらない。したがって、より正確なタンパク質の挙動の解析が可能となる。ビオチンなどの分子を導入したタンパク質も、タンパク質の挙動の解析に好ましく用いることができる。
 図2は、蛍光分子が導入されたタンパク質の一例を示す図である。ホルミル化ミオグロビン1とフルオレセインを含んだ修飾分子5とをピクテ・スペングラー反応を行うことで、フルオレセインが導入されたフルオレセイン修飾ミオグロビン6が得られる。
(2) 機能未知タンパク質の相互作用の対象を検出
 本発明の方法によって、機能未知タンパク質に蛍光基を導入し標識タンパク質とする。これをcDNAライブラリーと共に、細胞に存在させ、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を測定する。ここで、蛍光特性の変化が検出された細胞では、ライブラリーから発現したタンパク質又はそのエフェクタータンパク質が標識タンパク質と相互作用している可能性が示唆される。蛍光基としては、フルオレセイン、アレクサフルオロ、ボディピィ、ローダミン、ハルミン等を用いることができる。図3は、蛍光基が導入されたタンパク質の一例を示す図である。ホルミル化ミオグロビン1とアレクサフルオロ488を含んだ修飾分子7とをピクテ・スペングラー反応を行うことで、アレクサフルオロ488を含んだ修飾分子7が導入されたアレクサフルオロ488修飾ミオグロビン8が得られる。
(3)液晶分子を結合させる
 液晶分子を導入したタンパク質は、その液晶分子の作用により高磁場で配向する。これを利用して、NMRでの構造解析が容易となり、構造解析のハイスループット化が可能となる。図4は、液晶分子が導入されたタンパク質の一例を示す図である。ホルミル化ミオグロビン1と、液晶分子としてメトキシベンジリデンパラブチルアラニン(MBBA、methoxy benziliden p-butyl aniline)を含んだ修飾分子9とをピクテ・スペングラー反応を行うことで、MBBA9が導入されたMBBA修飾ミオグロビン10が得られる。
(4)タンパク質へ重原子の導入
 タンパク質に重原子を導入してから結晶化することで、位相決定が可能になる。重原子同型置換体を調製する手間が省けるため、構造解析が容易となる。図5は、重原子として臭素原子が導入されたタンパク質の一例を示す図である。ホルミル化ミオグロビン1と臭素原子を含む修飾分子11とをピクテ・スペングラー反応を行うことで、重元素として臭素原子が導入された重元素修飾ミオグロビン12が得られる。
(5)チップ上へのタンパク質の固定
 タンパク質をチップ上に固定すると、生体内の系をチップ上に再構成できる。本発明の方法によれば、タンパク質のチップへの固定の箇所を部位特異的に行なうことができ、タンパク質の配向を制御できる。このようなタンパク質チップは、リガンドの探索に有用である。
(6)薬剤送達システム
 病原部位に局在している物質に結合するタンパク質と、薬剤とを本発明の方法により結合させ、これを投薬することにより、所望の病原部位に薬剤を局在化できる。ゆえに、投薬効果の改善が図れる。
(7)ポリエチレングリコール(PEG)修飾による酵素の安定化
 タンパク質をPEG化することで、プロテアーゼによる分解が受け難くなる。またタンパク質の高次構造が安定化し、その酵素機能の向上が期待される。そこで、本発明法により、部位特異的にPEGを導入することで、タンパク質の活性を損なうことなく、タンパク質をより安定化できる。
(8)光親和性標識プローブへの導入
 光親和性標識プローブは生理活性物質である標的タンパク質の同定に広く用いられている手法である。プローブにα-ケトアルデヒドを導入し、光標識後、本発明を用いることで、標識されたタンパク質のみを単離もしくは検出が可能になる。
<タンパク質修飾キット>
 本発明の修飾タンパク質の製造方法を適用したタンパク質修飾キットを用いることで、より簡便に修飾タンパク質が得られる。例えばタンパク質修飾キットは、ピリドキサール-5-リン酸と、β-アリールエチルアミン基含有修飾分子とから概略構成されている。
 ピリドキサール-5-リン酸と、β-アリールエチルアミン基含有修飾分子とを、修飾したいタンパク質と混合させ、24℃以上37℃以下で例えば一晩反応させることで、修飾タンパク質が得られる。
 以下の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではない。
 タンパク質を扱う際は、記載の無い限り、全て氷冷下にて操作を行った。バッファー等におけるpHの調製は、pHメーター及び、文献に記されている条件に基づき行った。水は超純水(Milli-Q製のもの)を用いた。
<実施例1>
(1)α-ケトアルデヒド化ミオグロビンの調製
 非特許文献24に従い、ミオグロビンをリン酸バッファー(25mM、pH6.5)に溶かし、100μM溶液とした。この溶液に等量のピリドキサール-5-リン酸・リン酸バッファー溶液を加え、37℃にて24時間インキュベートした。反応によりN末端がアルデヒド化されたミオグロビン溶液は、12,000rpmの遠心分離による限外ろ過をもちいたバッファー交換によって、精製をおこなった。
(2)ビオチン化検出マーカーユニットの合成
 ビオチン13をタンパク質へ導入するため、下記の方法で、トリプトファン14をカップリングパートナーとして、ビオチン13と結合させた修飾分子16を合成した。この工程を図6に示す。
(a)トリプトファン14とビオチン13の脱水縮合による修飾分子保護体15の合成
 文献(Wilburら、 Bioconj. Chem. 第7巻、1996年、p.689-702)に従い、合成された31.2mgのビオチン13を1mlのジクロロメタンに溶かし、0℃に冷却した。この溶液に1mlのTFAを溶かし、0℃にて3時間攪拌した。その後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去した。残渣を2.0mlのDMFに溶かし、55mgの(Boc)2Tryptophan14、5.5mgのHOBt、77mgのEDC及び200μlのDIEAを溶液に加え、室温にて18時間攪拌した。反応溶液をトルエンにて共沸することによって溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンと水で二層分配し、有機層を硫酸化マグネシウムで乾燥した後に、減圧留去した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル→酢酸エチル:メタノール=10:1)にて精製することで、下記一般式(25)に示す目的のBoc保護トリプトファンを導入した45.0mgの修飾分子保護体15を、収率93%で得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000031
(b)Boc基の脱保護による修飾分子16の合成
 上記で得られた10mgの修飾分子保護体15を1mlのジクロロメタンに溶かし、0℃に冷却した。この溶液に1mlのTFAを溶かし、0℃にて3時間攪拌した。その後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去した。残渣をジクロロメタンに溶かし、風乾を2度繰り返すことでTFAを留去した。その後、ODSを用いた逆層クロマトグラフィーにて精製することで、6.6mgの下記一般式(26)に示す目的の修飾分子16を収率90%で得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000032
(3)タンパク質の修飾
 反応系の各組成は、下記のとおりである。2.0mg/mlのタンパク質(α-ケトアルデヒド化馬心臓ミオグロビン1)、10mMの上記で作製した修飾分子16及び100mMのバッファー(リン酸ナトリウム、pH6.5)。これらの試薬を混合した後、37度で18時間インキュベートし、生成物を得た。得られた生成物は、図7に示すように、ビオチンで修飾されたビオチン修飾ミオグロビン17であると考えられる。
<比較例>
(1)メトキシアミンを用いた競争阻害
 上記した反応溶液中に160mMのメトキシアミンを加え、競争阻害をかける条件で修飾反応を行った。
<生成物の検出>
 上記の実施例1及び比較例で得られた生成物は、直ちにゲルろ過で脱塩し、SDS-PAGEで分離をし、シプロタンジェリン染色及びウェスタンブロッティングで検出した。
その結果を図8に示す。
 図8において、レーン1は比較例1で得られたタンパク質を泳動したもの、レーン2は実施例1で得られたタンパク質を泳動したもの、レーン3はミオグロビンのみ泳動したもの、レーン4はビオチン化検出マーカーユニット2のみ泳動したものである。なお、図8上段に示す画像がシプロタンジェリン染色による結果で、下段に示す画像が抗ビオチン抗体を用いたウェスタンブロッティングによる結果である。
 図8上段の結果より、実施例1の生成物がSDSポリアクリルアミドゲル上で単一の17kDaのバンドを生成することから、酸化的分解を受けていないことがわかった。さらに、図8上段及び下段の結果より、このバンドはビオチンに対する周知の検出法で検出しても、ポジティブなシグナルを与えることから、ミオグロビンにビオチンがカップリングした修飾タンパク質3であると結論された。
 図8から、比較例の生成物では、シプロタンジェリン染色で検出されたバンドは、ビオチンに対する検出法で検出しても、ポジティブなシグナルを与えなかったことから、修飾が阻害されたと考えられた。
<実施例2>
(1)α-ケトアルデヒド化ミオグロビン(1)の調製
 [非特許文献24]に従い、馬心臓ミオグロビンを25mMのリン酸バッファー(pH6.5)に溶かし、100μM溶液とした。そして、この溶液に等量のピリドキサール-5-ホスフェート・リン酸バッファー溶液を加え、37℃にて24時間インキュベートした。反応によりN末端がアルデヒド化されたミオグロビン溶液は、12,000rpmの遠心分離による限外ろ過をもちいたバッファー交換によって精製をおこなった。
(2)タンパク質修飾反応
 反応系としては、下記の組成を用いた。2.0mg/mlのタンパク質(α-ケトアルデヒド化ミオグロビン)、100 mMのトリプタミン、もしくはトリプトファンメチルエステル、100mMのバッファー(リン酸ナトリウム、pH6.5)。これらの試薬を混合した後、37℃にて18時間インキュベートし、生成物を得た。
 上記で得られた生成物は、脱塩操作を行った後に、質量分析法(MALDI-TOF MS、ESI-TOF MS)を用いて測定を行った。その結果を図9に示す。
 図9より、トリプタミン修飾ミオグロビン及びトリプトファンメチルエステル修飾ミオグロビンに対応する全長イオンピークが検出されたことから、上記生成物は図10Aに示すトリプタミン修飾ミオグロビン及び図10Bに示すトリプトファンメチルエステル修飾ミオグロビンであり、ミオグロビンの修飾が行われたことが確認された。また、図9に示される相対強度から、1/3程度のミオグロビンが標識されたと推定される。
 また、MS/MS解析により部位特異的修飾の確認を行った。その結果を、図11に示す。
 図11より、N末端のグリシンが化学選択的に修飾されたことが確認された。前駆イオンは質量分析中にて酸化され、ハルミン骨格を形成したものと推定される。
 さらに、修飾ミオグロビンのUV測定及びCD測定により、変性の有無を確認した。その結果を、図12及び図13に示す。図12はUV測定結果であり、図13はCD測定結果である。
 図12より、インドール骨格由来の280nm近辺の吸収ピーク強度が増大していることから、修飾によりインドール骨格が付与されていることが確認できた。また、400nm近辺のヘミン由来の吸収ピークは、修飾後も変化は観察されなかった。
 また、図13より、野生型ミオグロビンと修飾ミオグロビンとでαへリックス由来の吸収ピークに違いが観察されなかった。
 以上より、修飾ミオグロビンが変性していないことが示唆された。
 本発明は、タンパク質に様々な修飾分子を付加することに適用できる。

Claims (13)

  1.  β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有したタンパク質と、アルデヒド基を修飾ユニットの末端に有した修飾分子とを、
     アルデヒド基を含有したタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を修飾ユニットの末端に有した修飾分子とを、あるいは、
     アルデヒド基を含有したタンパク質と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミンからなる修飾分子とを、
    弱酸性~弱塩基性条件下でピクテ・スペングラー反応させ、前記タンパク質を閉環された前記修飾分子で修飾することを特徴とする修飾タンパク質の製造方法。
  2.  前記芳香環もしくはヘテロ芳香環が、電子供与性の官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  3.  前記電子供与性の官能基が、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項2に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  4.  前記エチルアミン基のアミン基に隣接する炭素原子が、電子吸引性の官能基を有していることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  5.  前記アルデヒド基に隣接する炭素原子が、電子吸引性の官能基を有していることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  6.  前記電子吸引性の官能基がイミノ基、カルボニル基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  7.  前記芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基は、トリプタミン骨格又はドーパミン骨格をなし、前記アルデヒド基は、αーケトアルデヒドをなしていることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  8.  前記アルデヒド基を含有したタンパク質は、ピリドキサール-5-リン酸存在下で、酸化的脱アミノ化反応によりアルデヒド基が導入され得られることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  9.  前記タンパク質は、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基またはアルデヒド基を含有したアミノ酸と結合したサプレッサーtRNAと;このサプレッサーtRNAのコドンに対応するコドンを有するようにナンセンス変異を施した遺伝子と;を用いた合成系により合成されたタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  10.  前記β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有したタンパク質が、N末端にトリプトファン残基を有したタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  11.  請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法で得られたことを特徴とする修飾タンパク質。
  12.  下記一般式(1)~(6)のいずれかで示されることを特徴とする請求項11に記載の修飾タンパク質。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (上記一般式において、Rはタンパク質であり、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    (上記一般式において、Rはタンパク質であり、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    (上記一般式において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
    (上記一般式において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
    (上記一般式において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
    (上記一般式において、Rはタンパク質であり、R、Rがそれぞれ独立には水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基であり、R、R、R、Rのうち、少なくともいずれか1つは前記修飾ユニットであり、残りはRがイミノ基、カルボニル基、カルボキシル基であり、R、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基である。)
  13.  修飾タンパク質を製造するためのタンパク質修飾キットであって、ピリドキサール-5-リン酸と、β位に芳香環もしくはヘテロ芳香環をもつエチルアミン基を含有した修飾分子とを有することを特徴とするタンパク質修飾キット。
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