JPWO2011024791A1 - レチノイン酸存在下でのt細胞集団の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明によれば、レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用して、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程を含むことを特徴とする、メモリーT様細胞を含有する細胞集団を製造する方法が提供される。更に、本発明によれば、メモリーT様細胞の比率が増加し、所望の遺伝子が高効率で導入され高発現している細胞集団を製造する方法が提供される。

Description

本発明は、医療分野、特に免疫療法において有用な、メモリー(memory)T様細胞を含有する細胞集団を製造する方法に関する。また、本発明は、医療分野において有用な、所望の遺伝子が高効率で導入されたT細胞を含有する細胞集団を製造する方法に関する。
なお、本願は、2009年8月25日出願の日本国特許出願第2009−194444号及び2009年12月18日出願の日本国特許出願第2009−287258号に対して優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2009−194444号及び日本国特許出願第2009−287258号の全内容を本願に組み込むものである。
生体は主として免疫応答により異物から守られており、免疫システムはさまざまな細胞とそれが作り出す可溶性の因子によって成り立っている。なかでも中心的な役割を果たしているのが白血球、特にリンパ球である。このリンパ球はBリンパ球(以下、B細胞と記載することがある)とTリンパ球(以下、T細胞と記載することがある)という2種類の主要なタイプに分けられ、いずれも抗原を特異的に認識し、これに作用して生体を防御する。
T細胞は、末梢ではCD(Cluster of Differentiation)4マーカーを有するCD4陽性T細胞、及びCD8マーカーを有するCD8陽性T細胞が大部分を占める。CD4陽性T細胞の大部分は、ヘルパーT(以下、Thと記載する)細胞と呼ばれ、抗体産生の補助や種々の免疫応答の誘導に関与し、抗原刺激により産生するサイトカインの種類が異なるTh1型あるいはTh2型などに分化する。CD8陽性T細胞の大部分は、抗原刺激により細胞傷害活性を示す細胞傷害性T細胞[Tc:細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte)、別名をキラーT細胞といい、以下、CTLと記載することがある]と呼ばれ、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−2(IL−2)などのタイプIサイトカインを産生するTc1型、あるいはIL−4、IL−10などのタイプIIサイトカインを産生するTc2型に分化する。
CTLには、主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex;以下、MHCと略す)にコードされるMHCクラスI分子(ヒトの場合、human leukocyte antigen クラスI分子と呼ばれ、以下、HLAクラスI分子と略す)と抗原との結合物である複合体を特異的なT細胞レセプター(T cell receptor;以下、TCRと略す)によって認識し、その複合体を細胞表面に提示している細胞を傷害することのできるものがある。
外科手術、化学療法、放射線療法に次ぐ第4のがんの治療法として、免疫療法が近年関心を集めている。免疫療法はヒトが本来有する免疫力を利用するため、患者への肉体的負担が他の治療法と比べて軽いと言われている。免疫療法には体外で誘導したCTLや末梢血リンパ球などから種々の方法で拡大培養して得られるリンフォカイン活性化細胞、NKT細胞、γδT細胞などを移入する療法、体内での抗原特異的CTLの誘導を期待する樹状細胞移入療法やペプチドワクチン療法、Th1細胞療法、更にこれら細胞に種々の効果を期待できる遺伝子を体外で導入して体内に移入する免疫遺伝子治療法などが知られている。
リンフォカイン活性化細胞(LAK細胞)は、リンパ球を含む末梢血液(末梢血白血球)、臍帯血、組織液などにIL−2を加えて、数日間試験管内で培養することにより得られる細胞傷害活性を持つ機能的細胞集団である。この際、抗CD3抗体を加えて培養することにより、LAK細胞の増殖は更に加速する。このようにして得られたLAK細胞は非特異的にさまざまながん細胞及びその他のターゲットに対して傷害活性を有する。
前記のLAK細胞を移入する免疫療法において、体外で誘導した抗原特異的CTLを拡大培養する際に細胞傷害活性をいかに維持するか、リンパ球を体外でいかに効率よく拡大培養できるかなどの問題について、フィブロネクチン又はそのフラグメントを使用することによる効果が検討されてきた(例えば、特許文献1〜3)。
メモリーT細胞は、その細胞表面抗原の解析からナイーブT細胞と区別される。更に、メモリーT細胞は、その機能の違いからもナイーブT細胞と区別することができる。すなわち、メモリーT細胞はナイーブT細胞と比べて、より弱い抗原刺激でより早くエフェクター細胞へ分化することができる(非特許文献1)。更に、メモリーT細胞から分化したエフェクター細胞は、1つの細胞が複数のサイトカインを同時に産生することができる点で、機能的にもナイーブT細胞と異なっている。しかし、メモリーT細胞分化の分子機構は不明である。
メモリーT細胞は、ホーミング能又はエフェクター機能の違いから、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞といわれる異なる2つの細胞集団を含んでいる(非特許文献2)。
近年、免疫療法では、すでに終末分化したエフェクターT細胞よりも、より未分化な状態のナイーブT細胞又はセントラルメモリーT細胞を生体に投与した方がはるかに高い治療効果が期待できると報告されている(例えば非特許文献3、4)。
免疫遺伝子治療法について、例えば目的の抗原を認識するTCR遺伝子を、CTLをはじめとするT細胞に導入することにより、目的の抗原に特異的な細胞傷害活性を付与することが期待できる。これに基づき、MART1、gp100、mHAG HA−2抗原など、様々な抗原を標的としたTCR遺伝子による遺伝子治療が試みられている。更に、T細胞に導入するレセプターとして、ヒト由来のTCR、ヒト以外の生物由来のTCR、ならびに目的の抗原を認識する抗体の抗原認識部位、TCRと会合して抗原認識複合体を形成する分子群(例えばCD3)、T細胞表面抗原(例えばCD8、CD28)及びこれらの一部を組み合わせたキメラレセプターをコードする遺伝子による遺伝子治療が試みられている。
遺伝子導入には種々のベクターが使用されているが、これまでにヒトでの臨床への応用が研究されてきた遺伝子治療の多くは、組換えレトロウイルスベクター(例えば、複製能欠損レトロウイルスベクター)を用いるものである。レトロウイルスベクターは目的の外来遺伝子を細胞内に効率的に導入し、その染色体DNA中に安定に組み込むので、特に長期にわたる遺伝子発現が望まれる遺伝子治療にとって好ましい遺伝子導入手段である。
フィブロネクチンは動物の血液中、細胞表面、組織の細胞外マトリックスに存在する分子量25万の巨大な糖タンパク質であり、多彩な機能を持つことが知られている。フィブロネクチン、そのフラグメントなどの機能性物質を用いた遺伝子導入方法は、レトロウイルス産生細胞と標的細胞との共培養を行わずに高効率で遺伝子導入を行うことを可能にする(例えば、特許文献4)。該方法による遺伝子導入効率の向上は、機能性物質がレトロウイルスと標的細胞とを近接した状態に共配置し、両者の相互作用の機会が増加することに起因すると考えられている。
このようにレトロウイルスを用いた遺伝子導入においては、レトロウイルスの標的細胞への感染の結果として遺伝子の導入が起こる。しかしながら、レトロウイルスによる遺伝子導入効率は、実際の臨床への応用を考えた場合には今なお満足できるものではなく、感染効率のさらなる向上が強く望まれている。
すでに、ビタミンA代謝産物であるレチノイン酸がT細胞に小腸組織へのホーミング特異性をインプリントする生理的因子であることが報告されている(特許文献5)。しかし、T細胞をレチノイン酸存在下で培養することにより、培養された細胞への遺伝子導入効率が向上することについては、記載も示唆もされていない。
国際公開第03/016511号パンフレット 国際公開第03/080817号パンフレット 国際公開第2005/019450号パンフレット 国際公開第00/01836号パンフレット 特開2005−336062号公報
ネイチャー イムノロジー(Nat. Immunol.)、第1巻、第47〜53頁、2000年 ネイチャー(Nature)、第401巻、第708〜712頁、1999年 ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(J. Clin. Invest.)、第115巻、第6号、第1616〜1626頁、2005年 ジャーナル オブ イムノロジー(J. Immunol.)、第175巻、第2号、第739〜748頁、2005年
本発明の目的は、がんの免疫療法などの医療での使用に適した、レチノイン酸類存在下での培養を特徴とするメモリーT様細胞を高含有する細胞集団の製造方法、ならびに当該方法で得られる、生体への投与に有効な細胞集団を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用して、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養することにより、前記培養工程で得られた細胞集団に、所望の遺伝子が高効率で導入され高発現されることのみならず、メモリーT様細胞を高含有する細胞集団が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明を概説すれば、本発明の第1の態様は、レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用して、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程を含むことを特徴とするメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法に関する。
本発明の第1の態様において、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程が、(1)〜(3)から選択される工程のいずれかである製造方法も、本発明のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法に包含される。
(1)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養する工程、
(2)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、次いで、レチノイン酸類及びCD3リガンドの非存在下で該細胞集団を培養する工程、又は
(3)CD3リガンド存在下かつレチノイン酸類非存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、次いで、レチノイン酸類の存在下で該細胞集団を培養する工程。
本発明の第1の態様において、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程が、フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の存在下で行われてもよい。また、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団が末梢血単核細胞であってもよく、更に、得られた細胞集団からメモリーT様細胞を選択的に回収する工程を含む製造方法も、本発明のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法に包含される。
本発明の第1の態様により、弱い抗原刺激にも応答して迅速に細胞傷害活性を有する細胞に分化することができる細胞医療用の細胞集団が提供される。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で製造された細胞集団に関する。
本発明の第3の態様は、下記工程を包含することを特徴とする、所望の遺伝子が導入された細胞集団の製造方法に関する:
(a)レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用して、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程、及び
(b)工程(a)の途中又は工程(a)の終了後に細胞集団に所望の遺伝子を導入する工程。
本発明の第3の態様は、下記工程(1)〜(3)のいずれかにより実施される製造方法を包含する:
(1)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、得られた細胞に所望の遺伝子を導入する工程、
(2)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、得られた細胞集団に所望の遺伝子を導入した後で、レチノイン酸類及びCD3リガンドの非存在下で該細胞集団を培養する工程、又は
(3)CD3リガンド存在下かつレチノイン酸類非存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、得られた細胞集団に所望の遺伝子を導入した後で、レチノイン酸類の存在下で該細胞集団を培養する工程。
本発明の第3の態様において、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程が、フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の存在下で行われてもよい。また、所望の遺伝子がレトロウイルスベクターによって導入される方法、あるいはフィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の存在下に所望の遺伝子が導入される方法も、本発明の所望の遺伝子が導入された細胞集団の製造方法に包含される。更に、所望の遺伝子が抗原を認識するレセプターをコードする遺伝子であってもよく、抗原を認識するレセプターがT細胞レセプターであってもよい。また、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団が末梢血単核細胞である方法も、本発明の所望の遺伝子が導入された細胞集団の製造方法に包含される。
本発明の第3の態様により、メモリーT様細胞の比率が増加し、所望の遺伝子が高効率で導入され高発現した、細胞医療用の細胞集団が提供される。
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様により得られる、所望の遺伝子が導入されたT細胞集団に関する。
本発明により、免疫療法への使用に適したメモリーT様細胞を含有する細胞集団を製造する方法、及び、メモリーT様細胞の比率が増加し、所望の遺伝子が高効率で導入され高発現している細胞集団を製造する方法が提供される。当該製造方法により得られる細胞集団は、細胞医療による疾患の治療に極めて有用である。
第4日目の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 細胞増殖率を示す図である。 第4日目の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 第7日目の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 CD8陽性細胞の導入遺伝子の発現率を示す図である。 遺伝子導入細胞における導入遺伝子のコピー数を示す図である。 細胞増殖率を示す図である。 第7日目の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 第7日目の遺伝子導入用ウイルス結合プレートを用いた導入法での導入遺伝子の発現率を示す図である。 第6日目のポリブレンを用いた導入法での導入遺伝子の発現率を示す図である。 遺伝子導入細胞における導入遺伝子のコピー数を示す図である。 CD8単独陽性細胞の導入遺伝子の発現率を示す図である。 CD8単独陽性細胞のIL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率の測定結果を示す図である。 CD8単独陽性細胞のperforin産生細胞率の測定結果を示す図である。 遺伝子導入細胞の各E/T ratioでのMAGE−A4由来ペプチドp143に対する特異的細胞傷害活性を示す図である。 CD8単独陽性細胞のテトラマー陽性細胞割合、すなわち導入遺伝子の発現率を示す図である。 第11日目のCD8単独陽性細胞の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 第11日目のテトラマー陽性かつCD8単独陽性細胞の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 CD8単独陽性細胞のIL−4産生又は非産生、及びIFN−γ産生又は非産生細胞率の測定結果を示す図である。 CD8単独陽性細胞のIL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率(Tc2)とIL−4非産生かつIFN−γ産生細胞率(Tc1)の比を示す図である。 CD8単独陽性細胞のperforin産生細胞率の測定結果を示す図である。 遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対する特異的細胞傷害活性を示す図である。 CD8単独陽性細胞のテトラマー陽性細胞割合、すなわち導入遺伝子の発現率を示す図である。 テトラマー陽性かつCD8単独陽性細胞におけるテトラマーの発現量を平均蛍光強度の値で示した図である。 遺伝子導入細胞における導入遺伝子のコピー数を示す図である。 第10日目のCD4単独陽性細胞の細胞表面マーカーの分布を示す図である。 CD4単独陽性細胞のIL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率、IL−4産生かつIFN−γ産生細胞率、IL−4非産生かつIFN−γ産生細胞率の測定結果を示す図である。 CD4単独陽性細胞のIL−4産生、IFN−γ産生細胞率の測定結果を示す図である。 CD4単独陽性細胞のIL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率(Th2)とIL−4非産生かつIFN−γ産生細胞率(Th1)の比を示す図である。
本発明において、「レチノイン酸」は、ビタミンA酸とも呼ばれ、鎖部の二重結合がすべてtransのall−trans−レチノイン酸又は9位がcis構造をとる9−cis−レチノイン酸のいずれでもよい。また、その他のレチノイン酸異性体及びレチノイン酸誘導体も本発明において使用することができる。前記のレチノイン酸、レチノイン酸異性体及びレチノイン酸誘導体又はそれらの塩を、本明細書ではレチノイン酸類と総称する。さらに、本発明において、使用するレチノイン酸類は1種類でもよく、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
T細胞とは、Tリンパ球とも呼ばれ、免疫応答に関与するリンパ球のうち胸腺に由来する細胞を意味し、分化したT細胞及び未分化なT細胞を含む。T細胞としては、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、α鎖とβ鎖のTCRを発現するαβT細胞、γ鎖とδ鎖のTCRを発現するγδT細胞などが知られている。本明細書において「T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団」としては、特に本発明を限定するものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)、ナイーブT細胞、造血幹細胞、臍帯血単核球などが例示される。また、T細胞を含有する血球系細胞由来の種々の細胞集団を本発明に使用できる。これらの細胞はIL−2などのサイトカインにより生体内(イン・ビボ)又は生体外(エクス・ビボ)で活性化されていても良い。これらの細胞は生体から採取されたもの、あるいは生体外での培養を経て得られたものをそのまま使用してもよく、凍結保存した後に使用してもよい。また、例えば生体から得られた細胞集団から種々の誘導操作又は分離操作を経て得られた細胞集団、例えば、PBMC等の細胞をCD8(陽性)又はCD4(陽性)細胞に分離して得られたいずれの細胞集団も使用することができる。更に、本発明の細胞集団の製造方法では、前記細胞を含有する材料、例えば、末梢血液、臍帯血などの血液、又は血液から赤血球もしくは血漿などの成分を除去したもの、骨髄液などを使用することもできる。
メモリーT細胞は、前の感染又はワクチン接種にて遭遇したバクテリア又はウイルスのような外来の侵入者を認識できるT細胞の特定のタイプである。侵入者との2回目の遭遇の際に、メモリーT細胞は、免疫系が最初に侵入者に応答した時よりも早く強く免疫応答を開始する。また、メモリーT細胞はホーミング能又はエフェクター機能の違いから、セントラルメモリーT細胞とエフェクターメモリーT細胞といった異なる2つの細胞集団を含んでいる(非特許文献2)。セントラルメモリーT細胞は、メモリー幹細胞としての性質を示すと考えられ、STAT5として知られる重要な転写因子の高レベルリン酸化によって自己複製能を示す。セントラルメモリーT細胞は、CD45RAが陰性であるが、CCR7及びL−セレクチン(CD62L)が共に陽性である。エフェクターメモリーT細胞は、CD45RAに加えてCCR7及びCD62Lも陰性である。
メモリーT細胞は、その細胞表面抗原の解析からナイーブT細胞と区別される。ナイーブT細胞は、細胞表面抗原マーカーであるCD45RA、CCR7及びCD62Lがいずれも陽性であるのに対し、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞からなるメモリーT細胞は、CD45RAが陰性である。更に、メモリーT細胞は、前記のとおり迅速に免疫応答を開始できる点からもナイーブT細胞と区別することができる。
本発明において、「メモリーT様細胞」は、セントラルメモリーT様細胞及びエフェクターメモリーT様細胞の両方を包含する。
本発明において、「メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造」とは、メモリーT様細胞への分化能を有する前駆細胞からのメモリーT様細胞の誘導及びメモリーT様細胞の増殖(拡大培養)を含む概念を意味する。本発明により、メモリーT様細胞を高い比率で含有する細胞集団を得ることができる。
本発明において、「フィブロネクチン」及びそのフラグメントは、天然から単離されたもの、人為的に作製されたもの、又は遺伝子工学的に調製された組換え体、すなわち非天然のもののいずれでもよい。フィブロネクチン及びそのフラグメントは、例えば、ルオスラーティ E.ら〔Ruoslahti E., et al.、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第256巻、第14号、第7277〜7281頁(1981)〕の開示に基づき、天然起源の物質から実質的に純粋な形態で製造することができる。また、フィブロネクチンフラグメントを調製するための情報であるフィブロネクチンをコードする核酸配列及びフィブロネクチンのアミノ酸配列については、NCBI RefSeq Accession No.NM_002026、NP_002017にそれぞれ開示されている。本明細書において、実質的に純粋なフィブロネクチン又はフィブロネクチンフラグメントとは、これらが天然においてフィブロネクチンと一緒に存在する他のタンパク質を本質的に含有していないことを意味する。上記のフィブロネクチン及びそのフラグメントは、それぞれ単独で、もしくは複数の種類のものを混合して本発明に使用することができる。
フィブロネクチンのドメイン構造は7つに分けられ、そのアミノ酸配列中には3種類の類似の配列が含まれており、これら各配列の繰返しで全体が構成されている。3種類の類似の配列は、それぞれI型、II型及びIII型と呼ばれている。フィブロネクチン中には14個のIII型の配列が存在するが、そのうち、8番目、9番目、10番目(以下、それぞれIII−8、III−9及びIII−10と称する)は細胞結合ドメインに、また12番目、13番目及び14番目(以下、それぞれIII−12、III−13及びIII−14と称する)はヘパリン結合ドメインに含有されている。また、ヘパリン結合ドメインのC末端側にはIIICSと呼ばれる領域が存在する。IIICSには25残基のアミノ酸からなる、VLA−4に対して結合活性を有するCS−1と呼ばれる領域が存在する。本発明に使用できるフィブロネクチンフラグメントは、III−7、8、9、11、12、13又はCS−1のいずれかのドメインを含むフラグメントであればよく、更に複数のドメインが繰り返し連結されたフラグメントであってもよい。例えば、VLA−5へのリガンドを含む細胞接着ドメイン、ヘパリン結合ドメイン、VLA−4へのリガンドであるCS−1ドメインなどを含有するフラグメントが本発明に使用される。前記組換えフラグメントとしては、例えば、ジャーナル オブ バイオケミストリー(J. Biochem.)、第110巻、第284〜291頁(1991)に記載されたCH−271(配列表の配列番号1)、CH−296(配列表の配列番号2)、H−271(配列表の配列番号3)、H−296(配列表の配列番号4)、又はこれらの誘導体もしくは改変物が例示される。前記のCH−296はレトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)の名称で市販されている。
本明細書において、「有効成分」とは、レチノイン酸類、CD3リガンド、フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物、その他の副刺激因子、細胞の培養に用いられる培地中に含まれ得る適当な化合物、タンパク質、サイトカイン類あるいはその他の成分を示す。
以下、本発明を具体的に説明する。
1.メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法−1
本発明のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法は、レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用して、T細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程を含むことを特徴とする方法である。本発明によれば生体外でメモリーT様細胞を含有する細胞集団を製造することが可能である。更に、当該方法により得られる細胞集団に含有されるメモリーT様細胞は、弱い抗原刺激にも応答して迅速に細胞傷害活性を有する細胞(細胞傷害性リンパ球)へ分化する能力を有しており、免疫療法などへの利用に好適である。
本発明の方法において、メモリーT様細胞の培養は、通常、本発明の有効成分の存在下、所定の成分を含む培地中で行なわれる。本発明において使用される培養開始時の細胞数としては、特に限定はないが、例えば、10〜1×10cells/mL、好適には10〜5×10cells/mL、より好適には10〜2×10cells/mLが例示される。
本発明のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法において使用される培地は有効成分を含有する限り特に限定はなく、T細胞又はその前駆細胞の維持、生育に適した成分などを混合して作製された公知の培地を使用することができ、例えば、市販の培地又はその改変物であってもよい。これらの培地はその本来の構成成分以外に適当なタンパク質、サイトカイン類又はその他の成分を含んでいてもよい。好適には、本発明の製造方法において、IL−2を含有する培地が使用され得る。IL−2の培地中の濃度は特に限定されないが、例えば、好適には0.1〜1×10IU/mL、より好適には1〜1×10IU/mLである。
有効成分として本発明に使用されるレチノイン酸類の培地中の濃度は、特に限定されないが、all−trans−レチノイン酸を使用する場合、例えば、好適には、0.01〜10nM、より好適には0.1〜10nMであり、9−cis−レチノイン酸を使用する場合、例えば、好適には、0.1〜10nM、より好適には1〜10nMである。
また、有効成分として本発明に使用されるCD3リガンドとしては、CD3に結合活性を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、抗CD3抗体、ConA、PHA、PMA+イオノマイシンなどが例示される。特に好適には、抗CD3モノクローナル抗体、例えば、OKT3[サイエンス(Science)、第206巻、第347−349頁(1979)]が本発明にて使用される。CD3リガンドの培地中の濃度は、特に限定されないが、例えば、抗CD3モノクローナル抗体を使用する場合、0.001〜100μg/mL、特に0.01〜100μg/mLが好適である。リンパ球上のレセプターを活性化する目的で、抗CD3抗体を培地に添加してもよい。
更に、有効成分としてフィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物を添加してもよい。フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の培養中の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.001〜500μg/mL、特に0.01〜500μg/mLが好適である。フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物存在下での培養は、本発明において培養工程の一部のみで実施してもよく、培養全体を前記成分の存在下で実施してもよい。また、このほかに、レクチンなどのリンパ球刺激因子を培地に添加することもできる。当該成分の培地中の濃度は、所望の効果が得られる限り、特に限定されるものではない。
また、本発明において、必要に応じて、CD28リガンドなどのその他の副刺激因子を添加することによって副刺激を導入することもできる。その他の副刺激因子として、例えば、所望の抗原、glucocorticoid−induced TNF−related receptor ligand(GITRL)、抗CD28抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体などが例示される。
なお、これらの成分のうち、「CD3リガンド」及び「フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物」は、培地中に溶解して共存させる以外に、適切な固相、例えば、シャーレ、フラスコ、バッグなどの細胞培養用器材(開放系のもの又は閉鎖系のもののいずれも含む)、又はビーズ、メンブレン、スライドガラスなどの細胞培養用担体に固定化して使用してもよい。それらの固相の材質は細胞培養に使用可能なものであれば特に限定されるものではない。該成分を、例えば、前記器材に固定化する場合、培地を該器材に入れた際に、該成分を培地中に溶解して用いる場合の所望の濃度と同様の割合となるように、器材に入れる培地量に対して各成分の一定量を固定化するのが好適であるが、当該成分の固定化量は所望の効果が得られる限り、特に限定されるものではない。前記担体は、細胞培養時に細胞培養用器材中の培養液に浸漬して使用される。前記成分を前記担体に固定化する場合、該担体を培地に入れた際に、該成分を培地中に溶解して用いる場合の所望の濃度と同様の割合となるように、器材に入れる培地量に対して各成分の一定量を固定化するのが好適であるが、当該成分の固定化量は所望の効果が得られる限り、特に限定されるものではない。いずれの場合においても、前記成分の固定化は、公知の方法、例えば、国際公開第97/18318号パンフレット及び国際公開第00/09168号パンフレットに記載されたフィブロネクチンフラグメントの固定化方法に準じて行なうことができる。更に「CD3リガンド」及び「フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物」以外の有効成分を、細胞培養用器材又は細胞培養用担体に固定化してもよい。
前記の種々の成分や、本発明の有効成分から選択されるものを固相に固定化しておけば、本発明の方法によりメモリーT様細胞を得た後で該T細胞と固相とを分離するのみで、有効成分等と該T細胞を容易に分離することができ、該T細胞への有効成分などの混入を防ぐことができる。
本発明に使用される培地は、前記の有効成分に加えて、サイトカイン類、適当なタンパク質又はその他の成分を含んでいてもよい。サイトカイン類としては、例えば、IL−7、IL−15、IL−21などが例示される。また、レクチンなどのリンパ球刺激因子を添加することもできる。
本発明には血清又は血漿を含有しない培地を使用することもできるが、培地に血清又は血漿を添加してもよい。これらの培地中への添加量は特に限定はされないが、0超〜20容量%、好適には0超〜5容量%の含有量が例示され、また、培養段階に応じて使用する血清又は血漿の量を変更することができる。例えば、血清又は血漿濃度を段階的に減らして使用することもできる。なお、血清又は血漿の由来としては、自己(培養する細胞と由来が同じであることを意味する)又は非自己(培養する細胞と由来が異なることを意味する)のいずれでもよいが、安全性の観点から、自己由来のものが好適に使用される。
本発明において使用される培養開始時の細胞数としては、特に限定はされないが、例えば、好適には10〜1×10cells/mL、より好適には10〜5×10cells/mL、更に好適には10〜2×10cells/mLが例示される。また、培養条件に特に限定はなく、細胞培養に通常使用される条件を使用することができる。例えば、37℃、5%COなどの条件で培養することができる。また、適当な時間間隔をおいて細胞培養液に新鮮な培地を加えて希釈する、培地を交換する、細胞培養用器材を交換するなどの操作を行うことができる。
本発明の細胞集団の製造方法において使用される細胞培養用器材として、特に限定されないが、例えば、シャーレ、フラスコ、バッグ、大型培養槽、バイオリアクターなどを使用することができる。なお、バッグとしては、細胞培養用COガス透過性バッグを使用することができる。また、工業的に大量の細胞集団を製造する場合には、大型培養槽を使用することができる。また、培養は開放系又は閉鎖系のいずれにおいても実施することができるが、得られる細胞集団の安全性の観点から、閉鎖系で培養を行うことが好ましい。
レチノイン酸類をT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞培養液へ添加する時期は、培養開始時からが好ましい。例えばレチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下での培養工程は、培養開始時から少なくとも1日以上、より好ましくは2〜7日間、更に好ましくは2〜5日間実施される。また、レチノイン酸類は培養液中で分解される可能性もあるので、適当時間経過後に新たにレチノイン酸類を添加してもよい。
また、培養条件に特に限定はなく、通常の細胞培養に使用される条件を使用することができる。例えば、37℃、5%COなどの条件下で培養することができる。また、適当な時間間隔をおいて培地を新鮮なものに交換することができる。
本発明の製造方法で得られる細胞集団は、CD45RAを発現しないが、CCR7及び/又はCD62Lを発現する細胞、ならびにCCR7及びCD62Lが共に陰性である細胞の含有率が高い。CD45RA、CCR7及びCD62Lはいずれも、リンパ球の細胞表面抗原マーカーである。すなわち、本発明の製造方法により得られる細胞集団に高比率に含まれる細胞は、メモリーT様細胞に分類することができる。前述の非特許文献3及び4に記載のとおり、メモリーT細胞は生体に投与した際の生体内での生存率、細胞増殖効果、腫瘍への集積効果及び腫瘍特異的エフェクター細胞の産生率が高く、細胞医療分野において有用であることが記載されている。つまり、本発明の製造方法は、メモリーT様細胞の比率を上昇させることができる。ここでメモリーT様細胞比率の上昇とは、本発明の有効成分の有無以外は同等の条件で培養を実施した場合に、本発明の方法に使用される有効成分の存在下での培養により得られた細胞集団のメモリーT様細胞比率が、前記の有効成分の非存在下での培養と比較して高いことを意味する。好適には、前記の成分の非存在下の場合と比較して5%以上、より好ましくは10%以上メモリーT様細胞の比率が高い細胞集団を得ることができる。また、本発明の製造方法で得られる細胞集団は、Tc2型及び/又はTh2型の表現型の細胞を高含有する。
本発明の製造方法で得られる細胞集団について、レチノイン酸類を含有する培地又は含有しない培地でさらに培養を行ってもよい。通常、この際の培養は、CD3リガンドの非存在下で実施される。
本発明において、総培養日数は、好適には4〜14日間であり、より好適には5〜14日間、更に好適には7〜14日間である。
本発明のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法により得られた細胞集団中には、通常、メモリーT様細胞以外の細胞も混在している。本発明では、該細胞集団から遠心分離などにより細胞を回収し、本発明の製造方法により得られたメモリーT様細胞として、例えば、そのまま使用することができる。しかも、前記有効成分などを細胞培養用器材などに固定化しておけば、得られたメモリーT様細胞への該有効成分などの混入を防ぐことができる。
また、本発明の製造方法は、該細胞集団からメモリーT様細胞を分離する工程をさらに含んでもよい。すなわち、本発明において、メモリーT様細胞を含有する細胞集団中のメモリーT様細胞以外の細胞とメモリーT様細胞との分離操作を施すことにより、メモリーT様細胞が濃縮された細胞集団を調製し、使用することができる。例えば、CD45RA陽性細胞を除去する工程を含んでいてもよい。メモリーT様細胞の分離は公知の方法に従って実施することができる。例えば、フローサイトメーターを用いて、蛍光標識した抗CD3抗体及び抗CD45RA抗体で共染色することにより区分されるCD3陽性かつCD45RA陰性細胞を選択的に回収することによって、メモリーT様細胞を分離することができる。また、本発明の製造方法より得られた細胞集団から、メモリーT様細胞以外の細胞を除去することにより、メモリーT様細胞を高含有する細胞集団を得ることができる。また、本発明におけるメモリーT様細胞を高含有する細胞集団には、メモリーT様細胞のみの細胞集団も包含され得る。
本発明によれば、「上記の細胞集団の製造方法」を利用して所望の遺伝子が導入された細胞集団を製造する方法が提供される。当該方法は、以下の工程を包含する:
(1)レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用して、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程、及び
(2)所望の遺伝子を工程(1)で得られた細胞集団に導入する工程。
第1の工程の後に遺伝子導入操作を実施することにより、T細胞への遺伝子導入の効率が向上する。すなわち、本発明の方法により製造される細胞集団は所望の遺伝子が導入されたT細胞を高比率で含む細胞集団である。本発明は遺伝子治療用細胞の製造に特に有用である。
本発明においてT細胞に導入される所望の遺伝子は特に限定はなく、自己由来の遺伝子又は外来遺伝子から前記細胞に導入することが望まれる任意の遺伝子を選ぶことができる。このような遺伝子としては、例えば、タンパク質(例えば、酵素、サイトカイン類、レセプター類など)をコードするもの以外に、アンチセンス核酸、siRNA(small interfering RNA)又はリボザイムをコードするものが使用できる。また、遺伝子導入された細胞の選択を可能にする適当なマーカー遺伝子を上記遺伝子と一緒に導入してもよい。
導入される所望の遺伝子は天然より得られたものでも、又は遺伝子工学的に作製されたものでもよく、あるいは起源を異にするDNA分子がライゲーションなどの公知の手段によって結合されたものであってもよい。更に、目的に応じて天然の配列に変異が導入された配列を有するものであってもよい。
本発明の方法によれば、例えば、癌などの患者の治療に使用される薬剤に対する耐性に関連する酵素をコードする遺伝子をリンパ球に導入して該リンパ球に薬剤耐性を付与することができる。そのようなリンパ球を用いれば、養子免疫療法と薬剤療法とを組み合わせることができ、それにより、より高い治療効果を得ることが可能となる。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、多剤耐性遺伝子(multidrug resistance gene)が例示される。一方、前記の態様とは逆に、特定の薬剤に対する感受性を付与するような遺伝子をリンパ球に導入して、該薬剤に対する感受性を付与することもできる。かかる場合、生体に移植した後のリンパ球を当該薬剤の投与によって除去することが可能となる。薬剤に対する感受性を付与する遺伝子としては、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子が例示される。
特に限定はされないが、本発明の一態様として、所望の抗原を認識するレセプターをコードする遺伝子の導入が例示される。当該遺伝子としては、標的細胞の表面抗原を認識するT細胞レセプター(TCR)をコードする遺伝子、又は標的細胞の表面抗原に対する抗体の抗原認識部位を有し、かつTCRの細胞内領域を含むキメラレセプターをコードする遺伝子が例示される。この遺伝子が導入されたT細胞を含む細胞集団は、所望の抗原を認識するT細胞を含有している細胞集団である。当該細胞集団は、レセプターをコードする遺伝子が導入されていない細胞集団と比較して、所望の抗原に対する特異性の高い細胞集団であり、所望の抗原の刺激を受けた際に所望の抗原に特異的に反応することができることから、免疫療法への利用に有用である。
本発明の遺伝子が導入された細胞集団の製造方法において、第1の工程は、前記の「メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法」に従って実施される。第1の工程の培養は少なくとも1日以上、より好ましくは2〜7日間、更に好ましくは2〜5日間実施された後で、後述の第2の工程が実施される。
本発明の遺伝子が導入された細胞集団の製造方法において、得られる細胞集団は、メモリーT様細胞の比率が増加し、抗原特異的にIFN−γを産生する細胞比率が低下し、IL−4及びperforinを産生する細胞比率が向上したTc2型及び/又はTh2型の細胞を高含有する細胞集団である。この細胞集団は液性免疫の増強を介して寄生虫感染に対する免疫応答ならびに臓器移植におけるGVHDの軽減及びGVLの増強に有用であることから、細胞医療分野への使用に極めて適している。特に、同種造血幹細胞移植後の再発白血病を対象としたドナーリンパ球輸注療法において、副作用として発症する移植片対宿主病(Graft versus host disease:GVHD)をひき起こす率がTc1細胞あるいはTh1細胞と比して低いとされているので、本発明の細胞集団は有用である[Fowler D. H. 他1名、ロイケミア アンド リンフォーマ(Leukemia and Lymphoma)、第38巻、第221〜234頁(2000)]。
本発明の細胞集団の製造方法において、第2の工程は、第1の工程で得られた細胞に所望の遺伝子を導入する工程である。なお、細胞に導入する所望の遺伝子の数に限定はなく、1個の遺伝子であっても良く、複数の遺伝子(例えば、1〜9個の遺伝子)であっても良い。例えば、導入する細胞に応じてT細胞表面抗原をコードする遺伝子などの適当な遺伝子を、同時に、前もって、又は後で導入することができる。例えば、γδT細胞にαβTCR遺伝子を導入する場合、CD8をコードする遺伝子を同時に導入することが好ましい。
本発明において、所望の遺伝子の導入手段に特に限定はなく、公知の遺伝子導入方法により適切なものを選択して使用することができる。前記の遺伝子導入方法としては、ウイルスベクターを使用する方法、該ベクターを使用しない方法のいずれも本発明にて使用できる。それらの方法の詳細については、すでに多くの文献が公表されている。
前記ウイルスベクターに特に限定はなく、遺伝子導入方法に通常使用される公知のウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクター、シュードタイプベクターを包含する)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが使用できる。特に好適には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はレンチウイルスベクターが使用される。上記ウイルスベクターとしては、感染した細胞中で自己複製できないように複製能を欠損させたものが好適である。
ウイルスベクターを使用しない遺伝子導入方法として、本発明を限定するものではないが、例えば、リポソーム、リガンド−ポリリジンなどの担体を使用する方法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などを使用することができる。この場合、プラスミドDNA、直鎖状DNA又はRNAに組み込まれた外来遺伝子が導入される。
レトロウイルスベクターならびにレンチウイルスベクターは、当該ベクターが導入される細胞の染色体DNA中に該ベクターに挿入されている外来遺伝子を安定に組み込むことができ、遺伝子治療等の目的に使用されている。当該ベクターは分裂、増殖中の細胞に感染しうることから、本発明の製造方法にて遺伝子導入を行うのに特に好適である。
所望の遺伝子は、例えば、適当なプロモーターの制御下に発現されるようにベクター又はプラスミドなどに挿入して使用することができる。また、効率のよい遺伝子の転写を達成するために、プロモーター又は転写開始部位と協同する他の調節要素、例えば、エンハンサー配列又はターミネーター配列がベクター内に存在していてもよい。また、相同組換えにより導入対象のT細胞の染色体へ挿入することを目的として、例えば、該染色体における遺伝子の所望の標的挿入部位の両側にある塩基配列に各々相同性を有する塩基配列からなるフランキング配列の間に前記の遺伝子を配置してもよい。
本発明に使用できるベクターとして、例えば、MFGベクター、α−SGCベクター(国際公開第92/07943号パンフレット)、pBabe[Morgenstern J. P.、Land H.、ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第18巻、第12号、第3587〜3596頁(1990)]、pLXIN(クロンテック社製)、pDON−AI(タカラバイオ社製)などのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター[ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来ベクター、サル免疫不全ウイルス(SIV)由来ベクターなど]、又はこれらを改変したベクターが例示される。
また、これらのベクターは公知のパッケージング細胞株、例えば、PG13(ATCC CRL−10686)、PG13/LNc8(ATCC CRL−10685)、PA317(ATCC CRL−9078)、GP+E−86(ATCC CRL−9642)、GP+envAm12(ATCC CRL−9641)、プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ USA、第85巻、第6460〜6464頁(1988)に記載のψCRIPなどの細胞株を使用することにより、該ベクターがパッケージングされたウイルス粒子として調製することができる。また、トランスフェクション効率の高い293細胞又は293T細胞を用いてレトロウイルス産生細胞を作製することもできる。
本発明には、当該レトロウイルスのゲノムが由来するものとは異種のウイルス由来のエンベロープを有する、シュードタイプ(pseudotyped)パッケージングによって作製されたレトロウイルスも使用することができる。例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、水泡性口内炎ウイルス(VSV)又はネコ内在性ウイルス(feline endogenous virus)由来のエンベロープ又はエンベロープとして機能しうるタンパク質を有するシュードタイプレトロウイルスを使用することができる。更に、糖鎖合成に関与する酵素遺伝子などを導入したレトロウイルス産生細胞を用いて作製された、糖鎖修飾を受けたタンパクをその表面に有するレトロウイルスも本発明に使用できる。前記のウイルスは、それぞれのエンベロープを発現するパッケージング細胞を使用して調製することができる。パッケージング細胞はすでに種々のものが報告されており、市販されているものもある。本発明には、これらの公知のパッケージング細胞を使用することができる。
レトロウイルスベクターを使用して遺伝子導入を行う場合、レトロウイルス結合活性を有する機能性物質を使用して遺伝子導入効率を向上させることができる。当該方法に使用されるレトロウイルス結合活性を有する機能性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、フィブロネクチンのヘパリン−II結合領域、線維芽細胞増殖因子、V型コラーゲン、前記のポリペプチドのフラグメント、ポリリジン、DEAE−デキストランなどがある。フィブロネクチンフラグメントは分子内にヘパリン−II結合領域を有するものが好適であり、そのようなフラグメントは国際公開第95/26200号パンフレット、国際公開第97/18318号パンフレットにも記載されている。ヘパリン−II結合領域を有するフィブロネクチンフラグメントであるCH−296は、レトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)の名称で市販されている。またこれらの機能性物質と機能的に同等な物質、例えば、ヘパリン結合性部位を有する機能性物質も使用することができる。また、該機能性物質の混合物、該機能性物質を含有するポリペプチド、該機能性物質の重合体、該機能性物質の誘導体なども使用することができる。
また、本発明にて、標的細胞結合活性を有する機能性物質を併用してもよい。当該物質は標的細胞への遺伝子導入効率の向上、又は標的細胞特異的な遺伝子導入の実施に有用である。標的細胞結合活性を有する機能性物質は、特に限定されるものではないが、例えば、標的細胞に結合するリガンドを有する物質であり、該リガンドとして、細胞接着性のタンパク質(フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンなど)もしくはそのフラグメント、ホルモン、サイトカイン、細胞表面の抗原に対する抗体、多糖類、糖タンパク質、糖脂質、糖タンパク質、糖脂質由来の糖鎖、標的細胞の代謝物などが挙げられる。また、該機能性物質を含有するポリペプチド、該機能性物質の重合体、該機能性物質の誘導体、該機能性物質の機能的同等物などを使用することもできる。標的細胞結合活性を有する機能性物質は、レトロウイルス結合活性を有する機能性物質と同様に、固相に固定化して使用され得る。更に、前記のレトロウイルス結合活性を有する機能性物質として、標的細胞結合活性を併せ持つものを使用することもできる。
以上説明したように、レチノイン酸類を含む前記の有効成分の存在下で培養した後で遺伝子導入を行う本発明の方法により、T細胞を含有する細胞集団への遺伝子導入を効率よく行うことが可能となる。また、本発明の方法は、特別な設備、装置を必要とせず、また、多種のレトロウイルスベクター及び標的細胞について有効である。更に、当該方法は閉鎖系での利用に適していることから、遺伝子治療などの臨床用途で非常に有用である。
本発明の細胞集団の製造方法は、第3の工程として、第2の工程で得られた遺伝子導入細胞を培養する工程をさらに包含してもよい。
前記の工程は、通常の細胞培養の方法、例えば、公知のT細胞の培養方法により実施してもよい。前記の第1の工程と同一の条件、あるいは前記方法で有効成分として使用されたレチノイン酸類もしくはCD3リガンドのいずれか又は両方の使用を除いて、第1の工程で使用されたものと同様の条件で細胞の培養を行ってもよい。
本発明の細胞集団の製造方法において、総培養日数は、好適には4〜14日間とすることが好ましい。なお、総培養日数が4日未満の場合は、一般的な免疫療法に使用するには満足のできる細胞数を得ることができない。また、総培養日数が14日間を超えると細胞増殖率が低下する。本発明において、総培養日数は、より好適には5〜14日間、更に好適には7〜14日間である。
2.メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法−2
本発明者らは、驚くべきことに、前記の「メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法−1」とはレチノイン酸添加時期を変えて培養を行うことによって、前記方法で製造されるTc2型及び/又はTh2型の細胞を高含有する細胞集団ではなく、Tc1型及び/又はTh1型の細胞を高含有する細胞集団を製造することができることを見出した。当該製造方法は以下の工程を包含する。
(1)T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を、CD3リガンドの存在下かつレチノイン酸類非存在下に生体外で培養する工程、及び
(2)工程(1)で得られた細胞集団を、レチノイン酸類存在下に生体外で培養する工程。
当該製造方法において、第1の工程は、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を、CD3リガンドの存在下に生体外で培養する工程であり、有効成分として使用されるレチノイン酸類の使用を除いて、前記の「メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法−1」に準じて実施される。第1の工程の培養は、少なくとも1日以上、より好ましくは2〜7日間、更に好ましくは2〜5日間実施された後で、後出の第2の工程、すなわち第1の工程で得られた細胞集団を、レチノイン酸類存在下に生体外で培養する工程を包含する。第2の工程の培養は少なくとも1日以上、より好ましくは2〜10日間、更に好ましくは3〜9日間実施される。
当該製造方法において、得られる細胞集団は、メモリーT様細胞の比率が増加し、抗原特異的にIL−4を産生する細胞比率が低下し、かつIFN−γ及びperforinを産生する細胞比率が向上したTc1型及び/又はTh1型の細胞を高含有する細胞集団である。これらの細胞集団は、腫瘍に対する強い細胞傷害活性を有し、さらに細胞性免疫を活性化することから、細胞医療分野への使用に極めて適している。
前記の第2の工程は、レチノイン酸類存在下に実施すること以外は通常の細胞培養の方法、例えば、公知のT細胞の培養方法に従って実施すればよい。前記の「メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法−1」に記載されたものと同一の条件、あるいは前記方法で有効成分として使用されたCD3リガンドの使用を除いて前記方法で使用されたものと同様の条件で細胞の培養を行ってもよい。また、レチノイン酸類は培養液中で分解される可能性もあるので、適当時間経過後に新たにレチノイン酸を添加してもよく、適当な時間間隔をおいて培地を新鮮なものに交換してもよい。
当該製造方法においても、その工程中の適当な時期に遺伝子導入の操作を加えることにより、遺伝子導入細胞の製造を実施することができる。遺伝子導入の操作は、細胞の培養に影響を与えない範囲で任意の時期に実施することができる。例えば、遺伝子導入の操作を前記の第1の工程と第2の工程の間に実施してもよく、第1の工程で得られた細胞集団に遺伝子導入を実施した後に同じ培地で1〜2日培養を継続し、その後、培地にレチノイン酸類を添加してもよい。遺伝子導入方法に特に限定はなく、前記の「メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法−1」について記載されたものと同じ方法を使用することができる。
当該製造方法において、総培養日数は、好適には4〜14日間とすることが好ましい。なお、総培養日数が4日未満の場合は、一般的な免疫療法に使用するには満足のできる細胞数を得ることができない。また、総培養日数が14日間を超えると細胞増殖率が低下する。本発明において、総培養日数は、より好適には5〜14日間、更に好適には7〜14日間である。
下記実施例に記載のとおり、当該方法で製造された細胞集団は、Tc1型及び/又はTh1型のメモリーT様細胞を高い比率で含有している。Tc1型又はTh1型細胞集団は、細胞性免疫の増強を介した作用を発揮することから、細胞内寄生体に対する免疫応答及び腫瘍免疫に有用である。さらに、実施例6に記載のとおり、レチノイン酸を遺伝子導入後に添加することにより、導入遺伝子の発現が上昇する。
以上のとおり、本発明により、CD3リガンド及びレチノイン酸類を使用し、かつレチノイン酸類の添加時期を調節してT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団の培養を実施することを特徴とする、Tc2及び/又はTh2型あるいはTc1及び/又はTh1型のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法が提供される。さらに、本発明は、所望の遺伝子が導入されたTc2及び/又はTh2型あるいはTc1及び/又はTh1型のメモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造にも利用することができる。
更に、本発明の製造方法は、各工程の前又は後で、細胞集団を任意の亜細胞集団に分離する工程を包含することもできる。たとえば、前述のとおり本発明の有効成分の存在下で培養して得られた細胞集団には高比率にメモリーT様細胞が含有されていることから、所望の表面抗原マーカーを発現する細胞を更に分離、取得することにより、メモリーT様細胞又はメモリーT様細胞を更に高含有するT細胞集団を取得することが出来る。また、遺伝子導入された細胞集団の製造において、本発明の製造方法の途中で、又はその終了後に所望の遺伝子を発現する細胞を分離、取得してもよい。分離操作としては、特に限定はないが、例えば、セルソーター、磁気ビーズ、カラムなどを用いて公知の手法で分離することが出来る。また、適切な手段がある場合、導入された遺伝子を発現する細胞からなる亜細胞集団を選択してもよい。
また、本発明の方法により製造された細胞集団からT細胞をクローン化することにより、安定したT細胞として維持することもできる。また、本発明の方法により得られた細胞集団を用いて、本発明の方法や公知の方法により更に培養することで細胞集団を新たに得ることもできる。
本発明の方法は、レチノイン酸類及びCD3リガンドによる刺激、及び、所望により、所望の遺伝子の導入工程を含む、養子免疫療法のための新規のT細胞拡大培養方法であり、本発明の方法により得られる細胞集団は、生体内へ有効に移植され保持され得る。すなわち、本発明の方法は、移植された生体内で、長期に渡り、高濃度に持続可能で、より有用な細胞医療用の細胞集団の提供を可能とし、T細胞に基づく全ての遺伝子治療方法に広く適用することが可能である。
なお、本明細書において細胞又は細胞集団の製造方法は、細胞又は細胞集団を培養する工程を含み、当該細胞又は細胞集団の誘導(活性化)、拡大培養、分離の各工程、又はこれらを組み合わせた工程をさらに包含し得る方法を指す。
3.本発明の細胞集団、医薬、治療方法もしくは予防方法又は使用
本発明の方法により製造される細胞集団は、前記のように、免疫療法に適した性質を有している。また、本発明の方法により製造される遺伝子導入された細胞集団は、導入された所望の遺伝子に応じて、所望の効果を有する細胞集団である。例えば、所望の抗原を認識するレセプターをコードする遺伝子を導入する場合、該遺伝子が導入された細胞集団は導入されたレセプター遺伝子によりコードされるレセプターが認識する抗原を提示している細胞に対して細胞傷害活性を示すことができることから、種々の疾患の治療に有用である。前記の細胞集団を投与される疾患として、特に限定されるものではないが、例えば、がん(白血病、固形腫瘍など)、肝炎、自己免疫疾患、インフルエンザ、HIVなどのウイルス、細菌、真菌が原因となる感染性疾患(例えば、結核、MRSA感染症、VRE感染症、深在性真菌症)などが例示される。また、本発明の方法により製造される細胞集団は、骨髄移植又は放射線照射後の感染症予防、再発白血病の寛解を目的としたドナーリンパ球輸注、免疫療法、養子免疫療法などにも利用できる。
更に本発明は、本発明の方法で得られた細胞集団を有効成分として含有する前記疾患のための医薬(治療剤)を提供する。当該細胞集団を含有する前記治療剤は、免疫療法への使用に特に適している。免疫療法において、患者の治療に適したT細胞が、例えば、注射又は点滴により患者の静脈、動脈、皮下、腹腔内などに投与される。当該治療剤は、前述の疾患又はドナーリンパ球輸注での使用において非常に有用である。当該治療剤は、製薬分野で公知の方法に従い、例えば、本発明の方法により調製された当該T細胞集団を有効成分として、公知の非経口投与に適した有機又は無機の担体、賦形剤、安定剤などと混合され、点滴剤、注射剤として調製され得る。なお、治療剤における本発明の細胞集団の含有量、治療剤の投与量といった当該治療剤に関する諸条件は、公知の免疫療法に従って適宜決定され得る。例えば、医薬における本発明のT細胞集団の含有量として、特に限定はないが、例えば、好適には1×10〜1×1011cells/mL、より好適には1×10〜1×1010cells/mL、更に好適には1×10〜1×10cells/mLが例示される。また、本発明の医薬の投与量として、特に限定はないが、例えば、成人一日あたり、好適には1×10〜1×1012cells/日、より好ましくは、1×10〜5×1011cells/日、更に好ましくは1×10〜2×1011cells/日が例示される。更に、当該治療剤による免疫療法と、公知の薬剤投与による薬剤治療、放射線治療又は外科的手術による治療との併用を行なうこともできる。
本発明はまた、対象に、前述の方法により得られる細胞集団の有効量を投与することを含む、前記の疾患の治療方法又は予防方法を提供する。本明細書中において対象とは、特に限定されるものではないが、好ましくは、本発明の方法により製造されるT細胞集団を投与される前記の疾患を有する生体(例えば、ヒト患者又は非ヒト動物)を示す。なお、T細胞レセプターをコードする遺伝子を導入された細胞集団を有効成分とする本発明の治療剤は、前記細胞集団の発現するHLA分子と同一又は3座不一致までのHLA分子を発現する対象に投与され得る。
また、本明細書中において有効量とは、前記T細胞集団を上記対象に投与した場合に、該T細胞集団を投与していない対象と比較して、治療又は予防効果を発揮する該T細胞集団の量である。具体的な有効量は、投与形態、投与方法、使用目的、対象の年齢、体重又は症状などによって適宜設定され得るものであり、一定ではないが、好ましくは、上記の医薬と同様に設定され得る。投与方法に限定はなく、例えば、上記の医薬と同様に、点滴、注射などにより投与すればよい。
更に、本発明は、当該細胞集団を有効成分として含有する診断薬を提供する。例えば、患者から得られた細胞を本発明の診断薬により解析、スクリーニングすることにより、治療効果の推測、有効な導入遺伝子の選択などが可能である。
また、本発明は、前述の本発明の製造方法により得られる細胞集団に対して、抗原、CD3リガンド、CD28リガンド、サイトカイン、ケモカイン及びサイトカインを産生する能力を有する細胞からなる群より選択される少なくとも1つの刺激因子により刺激を与えることにより、活性化されたT細胞を含む細胞集団を製造することができる。更に本発明は、前記の製造方法で得られた細胞集団を提供する。このようにして得られる活性化されたT細胞を含む細胞集団は、前述の製造方法により得られるT細胞集団と同様に、医薬の有効成分として使用できる。本明細書において、刺激因子による刺激とは、当該刺激因子により前述の本発明の製造方法により得られる細胞集団が活性化され得るものであれば特に限定はないが、例えば、本発明の製造方法により得られるT細胞集団と刺激因子の共存下で培養を実施することが例示される。
ここで、提示される抗原としては、MHC分子を発現する細胞上にペプチドが提示されるか、又はT細胞により認識されT細胞を効率よく活性化できるものであれば特に限定はないが、例えば、ペプチド、糖ペプチド、腫瘍細胞抽出物、腫瘍細胞超音波処理物、腫瘍細胞熱水処理物、ウイルスなどの核酸(DNA又はRNA)、細菌、タンパク質などが例示される。また、CD3リガンド及びCD28リガンドとして、前述されたCD3リガンド及びCD28リガンドが例示される。
また、本明細書において、サイトカインとは、T細胞に作用し活性化し得るものであれば特に限定はないが、例えば、IL−2、IFN−γ、TGF−β、IL−15、IL−7、IFN−α、IL−12、CD40L、IL−27などが例示される。さらに、ケモカインとは、T細胞に作用し遊走活性を示すものであれば特に限定はないが、例えば、RANTES、CCL21、MIP1α、MIP1β、CCL19、CXCL12、IP−10、MIGなどが例示される。
本明細書において、サイトカインを産生する能力を有する細胞は、前述のサイトカインを産生し得る能力を有する細胞であれば特に限定はない。
なお、本発明の製造方法で得られる細胞集団に対して、抗CD3抗体及び抗CD28抗体による共刺激を与えることで、サイトカイン産生能を有する活性化されたリンパ球集団を製造することができる。
本発明の製造方法により得られるT細胞集団に対して抗原刺激を負荷することで、細胞傷害活性が極めて高く、抗原認識能も高い有用な抗原特異的CTLを誘導することができる。また、当該培養は、上記刺激因子以外に、前述のフィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物、あるいはT細胞の培養に使用される公知成分の存在下で培養を実施することができる。このようにして製造されたT細胞集団は、生体内で長期に渡り、治療効果が高く極めて有用なT細胞集団である。
また、本発明は、医薬製造のための前述の方法により得られる細胞集団の使用も提供する。当該医薬の製造方法は、前述の医薬と同様に行われる。当該医薬の投与される疾患についても、特に限定はないが、前述の医薬と同様である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
また、本明細書に記載の操作のうち、基本的な操作については2001年、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Maniatis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第3版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.)に記載の方法によった。
実施例1 レチノイン酸存在下での培養
フィブロネクチンフラグメント[レトロネクチン(登録商標)、タカラバイオ社製]を5μg/mL、及び抗CD3抗体(OKT3、ヤンセンファーマ株式会社)を5μg/mLとなるようにPBSに溶解した。この溶解液を表面未処理12ウェルプレートに1mL/ウェルの量で加え、37℃で5時間放置した。また、抗CD3抗体単独を5μg/mLとなるようにPBSに溶解し、同様に表面未処理12ウェルプレートに1mL/ウェルで加え、37℃で5時間放置した。放置後、それぞれの溶解液をとり除き、PBSを用い2mL/ウェルの量で各プレートを2回ずつ洗浄し、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート及び抗CD3抗体接着プレートを調製した。
インフォームドコンセントが得られた健常人から調製したヒト末梢血単核細胞(PBMC)を0.2×10cells/mLとなるように1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%ヒト血清アルブミン(HSA)、2.5μg/mLファンギゾン(ブリストルマイヤーズ社製)及び10nMレチノイン酸(和光純薬社製)を含むGT−T503培地(タカラバイオ社製)に懸濁し、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート又は抗CD3抗体接着プレートに2.6mL/ウェルとなるように加えた。この時、コントロールとしてレチノイン酸を含まない細胞懸濁液を調製して同様にプレートに加えた。各プレートをCOインキュベーター中、37℃で4日間培養した。
培養4日後に細胞を回収し、細胞表面マーカーの測定を行った。
細胞表面マーカーの測定結果を図1に示す。培養細胞中のCD8単独陽性細胞中のメモリーT細胞比率を、抗CD8抗体、抗CD45RA抗体及び抗CCR7抗体で細胞を染色して測定した。細胞表面マーカーに関して、ナイーブT様細胞はCD45RA+/CCR7+であり、セントラルメモリーT様細胞はCD45RA−/CCR7+であり、エフェクターメモリーT様細胞はCD45RA−/CCR7−である。更に、エフェクターT様細胞は、CD45RA+/CCR7−である。図1の各刺激条件において、棒は左からCD45RA+/CCR7+、CD45RA−/CCR7+、CD45RA−/CCR7−及びCD45RA+/CCR7−のCD8単独陽性細胞中の割合(%)を表す。また、図1〜15の各図において、OKTは抗CD3抗体単独刺激、RA−OKTはレチノイン酸/抗CD3抗体刺激、RNTはフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激、RA−RNTはレチノイン酸/フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激を示す。
図1より、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激とレチノイン酸刺激との組み合わせでセントラルメモリーT様細胞及びエフェクターメモリーT様細胞比率が増加することが明らかになった。
実施例2 TCR遺伝子導入細胞
国際公開第2008/111506号パンフレットの実施例1−(1)〜(4)と同様に、MAGE−A4特異的TCR遺伝子のクローニング、ベクターの構築及びプロデューサー細胞の作製の一連の操作を行い、MS−bPaウイルス液の調製を行った。本ウイルス液のRNAコピー数は、2.55×1011コピー/mLであった。
(1)TCR遺伝子導入細胞の調製
フィブロネクチンフラグメントを25μg/mL、抗CD3抗体を5μg/mLとなるようにPBSに溶解した。この溶解液を表面処理(tissue culture treated)12ウェルプレートに0.4mL/ウェルの量で加え、37℃で5時間放置した。また、抗CD3抗体(OKT3、ヤンセンファーマ株式会社)を5μg/mLとなるようにPBSに溶解し、この溶解液を同様に表面処理12ウェルプレートに0.4mL/ウェルの量で加え、37℃で5時間放置した。放置後、それぞれの溶解液をとり除き、GT−T503培地(タカラバイオ社製)を用い、2mL/ウェルの量で各プレートを2回ずつ洗浄し、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート又は抗CD3抗体接着プレートを調製した。
インフォームドコンセントが得られた健常人から調製したPBMCを、0.18×10cells/mLとなるように1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート又は抗CD3抗体接着プレートに2.65mL/ウェルとなるように加えた。この時、コントロールとして、レチノイン酸を含まない細胞懸濁液を加えたプレートを調製した。各プレートをCOインキュベーター中、37℃で4日間培養した。
遺伝子導入用ウイルス結合プレートを以下のように調製した。
フィブロネクチンフラグメントを20μg/mLとなるようにPBSに溶解し、この溶解液を表面未処理24ウェルプレートに0.5mL/ウェルで加え、3日間、4℃に放置した。放置後、溶解液を除去し、PBSを用いて1mL/ウェルの量で2回ずつ洗浄し、MS−bPaウイルス液0.9mLをウェルに加え、32℃、2000×g、2時間遠心した。遠心後ウイルス液を除去し、1.5%HSA含有PBSを用いて1mL/ウェルの量で3回ずつ洗浄し、ウイルス結合プレートを調製した。
遺伝子導入操作を下記のように行った。ウイルス結合プレートに、抗CD3抗体単独又はフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体で4日間刺激した上記PBMCを0.8×10cells、2.0mL/ウェルとなるように加え、一晩、COインキュベーター中、37℃で培養した。培養後の細胞を0.68×10cells/1.9mL/ウェルとなるように5mM酪酸ナトリウム(和光純薬社製)を含むGT−T−RetroIII培地(タカラバイオ社製)に懸濁し、新たなウイルス結合プレートに撒き、COインキュベーター中、37℃で4時間培養した。培養終了後、回収した細胞を0.1×10cells/mLとなるように1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、細胞培養用12ウェルプレートに撒き直した後で、COインキュベーター中、37℃で培養した。この時、コントロールとしてレチノイン酸を含まない細胞懸濁液を用いて、同様の遺伝子導入操作及び遺伝子導入後の細胞の培養を行った。
PBMCの刺激開始後、第7日目に0.1×10cells/mLとなるように細胞を撒き、10日目まで培養した。第4、5、7及び10日目に細胞増殖率を測定し、第4日目にウイルス結合プレートに移す前の細胞表面マーカーを、第10日目に細胞表面マーカー、導入TCRの発現及び導入遺伝子のコピー数を測定した。
細胞増殖率の測定結果を図2に示す。図2の縦軸は培養開始時の細胞数に対する増殖比率(%)、横軸は培養日数を示す。図2より、レチノイン酸刺激の有無に関係なく、抗CD3抗体単独刺激と比べて、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激の細胞増殖率が高かった。
PBMCの刺激開始後、第4日目の培養細胞中のCD8単独陽性細胞の細胞表面マーカーの測定結果を図3に、第7日目の培養細胞中のCD8単独陽性細胞の細胞表面マーカーの測定結果を図4に示す。メモリーT細胞比率を抗CD8抗体、抗CD45RA抗体及び抗CCR7抗体で細胞を染色して測定した。図3及び図4の各刺激条件において、棒は左からCD45RA+/CCR7+、CD45RA−/CCR7+、CD45RA−/CCR7−及びCD45RA+/CCR7−のCD8陽性細胞中の割合(%)を表す。図3及び図4より、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸刺激との組み合わせでセントラルメモリーT様細胞及びエフェクターメモリーT様細胞比率が増加することが明らかになった。
MAGE−A4特異的TCRの発現をテトラマーアッセイにより測定することにより、遺伝子導入効率の測定を行った。
国際公開第2008/111506号パンフレットの記載に従い、HLA−A2402重鎖のC末端にビオチンプロテインリガーゼBirAの基質となる配列を付加したポリペプチド及びβ2−ミクログロブリンを不溶性封入体として大腸菌に発現させた。前記の封入体をP143ペプチドの存在下、インビトロでリフォールディングさせることにより、HLA−A2402/β2−ミクログロブリン/P143複合体を形成させた。得られた複合体にビオチンプロテインリガーゼ(アビディティー社製)を作用させ、フィコエリスリン標識ストレプトアビジン(Straptavidin−PE、インビトロジェン社製)を用いてテトラマーを調製した。
PBMCの刺激開始後、第10日目の細胞をテトラマーと混合して37℃、30分間反応させた後、APC−Cy7標識抗ヒトCD8抗体(ベクトンディッキンソン社製)で4℃、20分間反応させた。反応終了後の細胞を洗浄した後、FACScant(べクトンディッキンソン社製)を用いてフローサイトメトリー解析を行った。
テトラマー測定結果を図5に示す。縦軸がCD8単独陽性細胞中のテトラマー陽性細胞率(%)を示す。その結果、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸刺激との組み合わせにより、MAGE−A4特異的TCRの発現細胞率の上昇が見られた。
遺伝子導入細胞における導入遺伝子のプロウイルスコピー数をProvirus Copy Number Detection Primer Set. Human(タカラバイオ社製)で測定した。その測定結果を図6に示す。図6の縦軸は、遺伝子導入細胞における導入遺伝子のコピー数である。その結果、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸の添加により、遺伝子導入効率の上昇と相関したコピー数の上昇が見られた。
実施例3 ZsGreen遺伝子導入細胞の調製
(1)ウイルス液の調製
レトロウイルスベクタープラスミドpDON−AI−ZsGreenを、以下の手順で作製した。まず、ZsGreen発現ベクターpZsGreen−N1(クロンテック社製)を制限酵素NotIで切断し、DNA blunting kit(タカラバイオ社製)を用いて平滑化処理後、更に制限酵素BamHIで消化して約720bpのZsGreen遺伝子断片を得た。次に、レトロウイルスベクタープラスミドpDON−AI(タカラバイオ社製)を制限酵素BamHI及びHpaIで消化して得られたベクターに、ZsGreen DNA断片をDNA Ligation Kit Mighty Mix(タカラバイオ社製)を用いて挿入し、ZsGreen発現組換えレトロウイルスベクターpDON−AI−ZsGreenを得た。
pDON−AI−ZsGreenベクター及びRetrovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)を用いた一過性のウイルス産生を行い、エコトロピックDON−AI−ZsGreenウイルスを獲得した。エコトロピックDON−AI−ZsGreenウイルスを、GALVレトロウイルスパッケージング細胞PG13(ATCC CRL−10686)にポリブレン存在下で感染させ、遺伝子導入細胞PG13/DON−AI−ZsGreenを獲得した。PG13/DON−AI−ZsGreenを10%ウシ胎仔血清(Invitrogen社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、シグマ社製)で培養し、セミコンフルエントまで生育したところで、0.1mL/cmの新鮮な10%ウシ胎仔血清含有DMEMで培地を交換し、24時間後に上清を0.45μmフィルター(ミリポア社製)でろ過して、GALV/DON−AI−ZsGreenウイルス液を得た。得られたウイルス液を小分けして分注し、−80℃フリーザーで保存し、以下の遺伝子導入細胞の調製に供した。本ウイルス液の力価は、6.76×10cfu/mLであった。
(2)ZsGreen遺伝子導入細胞の調製
実施例1記載の操作により、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート及び抗CD3抗体接着プレートを調製した。
インフォームドコンセントが得られた健常人から調製したPBMCを0.2×10cells/mLとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート又は抗CD3抗体接着プレートに2.6mL/ウェルとなるように加えた。この時、コントロールとしてレチノイン酸を含まない細胞懸濁液を加えたプレートを調製した。各プレートを、COインキュベーター中、37℃で4日間培養した。
遺伝子導入用ウイルス結合プレートは以下のように作製した。
フィブロネクチンフラグメントを20μg/mLとなるようにPBSに溶解し、この溶解液を表面未処理24ウェルプレートに0.5mL/ウェルで加え、一晩4℃に放置した。放置後、溶液を除去しPBSを用いて1mL/ウェルの量で2回ずつ洗浄し、上記(1)で調製したGALV/DON−AI−ZsGreenウイルス液1mLをウェルに加え、32℃、2000×gで、2時間遠心した。遠心後にウイルス液を除去し、1.5%HSA含有PBSを用いて2mL/ウェルの量で3回ずつ洗浄し、ウイルス結合プレートを作製した。
遺伝子導入操作を下記のように行った。ウイルス結合プレートに、抗CD3抗体単独又はフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体で4日間刺激した上記PBMCを0.8×10cells、0.80mL/ウェルとなるように、5mM酪酸ナトリウムを含むGT−T−RetroIII培地に懸濁して加え、COインキュベーター中、37℃で4時間培養した。培養後の細胞を0.1×10cells/mLとなるように1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、得られた懸濁液を12ウェルプレートに撒き、37℃で3日間培養した。この時、コントロールとしてレチノイン酸を含まない細胞懸濁液を用いて、同様の遺伝子導入操作及び遺伝子導入後の細胞の培養を行った。更に、遺伝子導入用ウイルス結合プレートを用いないポリブレン法による遺伝子導入を、ZsGreenウイルス液を用いて行った。4日間刺激したPBMCを上記(1)で調製したGALV/DON−AI−ZsGreenウイルス液に1.0×10cells/mLになるように懸濁し、この懸濁液にポリブレン(Hexadimethrine Bromide、SIGMA−ALDRICH社製)を終濃度8μg/mLになるように添加し、24ウェルプレートに2mL/ウェルの量で加え、32℃、1000×gで1時間遠心した。遠心後にウイルス液を除去し、0.53×10cells、2.65mL/ウェルとなるように表面処理12ウェルプレートに播き、37℃で2日間培養した。
遺伝子導入用ウイルス結合プレートを用いた遺伝子導入について、第4及び7日目に細胞増殖率を測定し、第7日目に細胞表面マーカー、ZsGreen陽性細胞率及び導入遺伝子のコピー数を測定した。ポリブレン法による遺伝子導入を行った細胞に関して、第6日目にZsGreen陽性細胞率を測定した。
細胞増殖率測定の結果を図7に示す。図7の縦軸は培養開始時の細胞数に対する増殖比率(%)、横軸は培養日数を示す。図7より、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸の有無に関係なく、細胞増殖率が高かった。
培養細胞中のCD8単独陽性及びCD4単独陽性細胞中の細胞表面マーカーについて、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD45RA抗体及び抗CCR7抗体を用いて測定した結果を図8に示す。図8の各刺激条件において、棒は左からCD45RA+/CCR7+、CD45RA−/CCR7+、CD45RA−/CCR7−及びCD45RA+/CCR7−のCD8単独陽性及びCD4単独陽性細胞中の割合(%)を表す。図8より、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸刺激との組み合わせでセントラルメモリーT様細胞比率及びエフェクターメモリーT様細胞比率が増加することが明らかになった。
ZsGreen陽性細胞率を測定した。
PBMCの刺激開始後、遺伝子導入用ウイルス結合プレートを用いた遺伝子導入では第7日目の細胞を、ポリブレン法による遺伝子導入では第6日目の細胞を、PE−Cy7標識抗ヒトCD4抗体、APC−Cy7標識抗ヒトCD8抗体(ベクトンディッキンソン社製)で4℃で20分間反応させ、細胞を洗浄した後、FACScant(べクトンディッキンソン社製)を用いてフローサイトメトリー解析を行った。測定結果を図9及び図10に示す。なお図9及び図10の縦軸はCD8単独陽性及びCD4単独陽性細胞中のZsGreen陽性細胞率(%)を表す。その結果、図9に示す遺伝子導入用ウイルス結合プレートを用いた遺伝子導入では、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共にレチノイン酸添加条件において、無添加条件と比べて1.5倍のZsGreen陽性細胞率の上昇が見られた。一方、図10に示すポリブレン法による遺伝子導入では、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共にレチノイン酸刺激に関わらず導入効率の差はあまり見られなかった。図9及び図10より、レチノイン酸刺激及びフィブロネクチンフラグメントを用いた遺伝子導入法の組み合わせによる高効率な遺伝子導入が示された。
遺伝子導入用ウイルス結合プレートを用いて導入した遺伝子導入細胞における導入遺伝子のコピー数の測定結果を図11に示す。図11において、縦軸は遺伝子導入細胞における導入遺伝子のコピー数である。その結果、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸添加条件において、無添加条件の約2倍のコピー数を示し、コピー数は遺伝子導入効率に相関していた。
実施例4 TCR遺伝子導入細胞の抗腫瘍活性の測定
国際公開第2008/111506号パンフレットの実施例1−(1)〜(4)と同様に、MAGE−A4特異的TCR遺伝子のクローニング、ベクターの構築及びプロデューサー細胞の作製の一連の操作を行い、MS−bPaウイルス液の調製を行った。本ウイルス液のRNAコピー数は、2.55×1011コピー/mLであった。
(1)TCR遺伝子導入細胞の調製
実施例2−(1)と同様の操作により、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート及び抗CD3抗体接着プレートを調製した。
インフォームドコンセントが得られた健常人のPBMCを0.20×10cells/mLとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、フィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体接着プレート又は抗CD3抗体接着プレートに2.65mLとなるように加えた。この時、コントロールとしてレチノイン酸を含まない細胞懸濁液を加えたプレートを調製した。各プレートをCOインキュベーター中、37℃で4日間培養した。
遺伝子導入用ウイルス結合プレートを以下のように作製した。
フィブロネクチンフラグメントを20μg/mLとなるようにPBSに溶解し、この溶解液を表面未処理24ウェルプレートに0.5mL/ウェルで加え、4日間、4℃で放置した。放置後、溶解液を除去しPBSを用いて1mL/ウェルの量で2回ずつ洗浄した後、MS−bPaウイルス液0.9mLをウェルに加え、32℃、2000×gで2時間遠心した。遠心後にウイルス液を除去し、1.5%HSA含有PBSを用いて1mL/ウェルの量で3回ずつ洗浄し、ウイルス結合プレートを作製した。
遺伝子導入操作を下記のように行った。ウイルス結合プレートに、抗CD3抗体単独又はフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体で4日間刺激した上記PBMCを0.8×10cells、2.0mL/ウェルとなるように5mM酪酸ナトリウムを含むGT−T−RetroIII培地に懸濁し、一晩、COインキュベーター中、37℃で培養した。培養後の細胞を0.8×10cells、1.0mL/ウェルとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁して新たなウイルス結合プレートに撒き、COインキュベーター中、37℃で4時間培養した。培養終了後、細胞を回収して0.1×10cells/mLとなるように細胞培養用12ウェルプレートに撒き直し、COインキュベーター中、37℃で3日間培養した。この時、コントロールとしてレチノイン酸を含まない細胞懸濁液を用いて、同様の遺伝子導入操作及び遺伝子導入後の細胞の培養を行った。
PBMCの刺激開始後、第8日目に0.1×10cells/mLとなるように細胞培養用12ウェルプレートに撒き、11日目まで細胞を培養した。第10日目に導入TCR特異的ペプチドに対する細胞傷害性解析を行った。第11日目にCD8単独陽性細胞中の導入TCRの発現ならびにIL−4及びperforinの産生細胞率を測定した。
実施例2−(1)と同様に、MAGE−A4特異的TCRの発現をテトラマーアッセイにより測定した。
テトラマー測定結果を図12に示す。図12において縦軸はテトラマー陽性率(%)である。その結果、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激の両群共に、レチノイン酸刺激によりMAGE−A4特異的TCRの発現上昇、すなわち遺伝子導入効率の上昇が見られた。
遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対するIL−4及びperforin産生細胞率を測定した。第11日目の細胞とMAGE−A4由来ペプチド結合T2A24細胞[クリニカル キャンサー リサーチ、第11巻、第5581〜5589頁(2005)]を1:1の比で2時間共存培養し、ブレフェルディンA(シグマアルドリッチ社製)を添加後、更に2時間細胞を培養し、10倍量の冷却したPBSで反応を止めた。これらの細胞にAPC−Cy7標識抗ヒトCD8抗体(ベクトンディッキンソン社製)を加え、4℃で20分間染色を行った。次いで、イントラプレップ(ベックマンコールター社製)を用いて細胞を固定・浸透化した後に、PE−Cy7標識抗ヒトIFN−γ抗体(ベクトンディッキンソン社製)、APC標識抗ヒトperforin抗体(ベクトンディッキンソン社製)及びPE標識抗ヒトIL−4抗体(ベックマンコールター社製)を加えて、室温で20分間の染色を行った。細胞を洗浄後、FACScant(べクトンディッキンソン社製)を用いてフローサイトメトリー解析を行った。IL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率の結果を図13に、perforin産生細胞率の結果を図14に示す。すなわち図13の縦軸はIL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率(%)、図14の縦軸はperforin産生細胞率(%)を示す。
また、図13、19、27及び28の各図において、IFN−γはIFNgと記載する。
その結果、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共に、レチノイン酸刺激によりIL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率及びperforin産生細胞率の上昇が見られた。これらの結果より、本発明のメモリーT様細胞はTc2型細胞に分類される。
遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対する細胞傷害性の解析を行った。3時間、ペプチドと共培養したT2A24細胞を0.5×10cells/mLとなるよう10%FBS(fetal bovine serum,ウシ胎児血清、SAFC社製)を含むRPMI1640培地に懸濁後、終濃度25μMとなるようにCalcein−AM〔ドータイト(Dotite)社製〕を添加し、懸濁物を37℃で1時間培養した。細胞をCalcein−AMを含まない培地にて洗浄後、10倍量のK562細胞(ATCC CCL−243)と混合し、Calcein標識標的細胞とした。なお、K562細胞を、レスポンダー細胞中に混入するNK細胞による非特異的細胞傷害活性を排除するために用いた。培養開始後第10日目の細胞をエフェクター細胞として1×10〜1×10cells/mLとなるように10%FBSを含むRPMI1640培地で段階希釈した後で、96穴細胞培養プレートの各ウェルに100μL/ウェルずつ分注しておき、これらに1×10/mLに調製したCalcein標識標的細胞を100μL/ウェルずつ添加した。上記細胞懸濁液の入ったプレートを180×gで2分間遠心後、COインキュベーター中、37℃で4時間インキュベートした。4時間後、細胞懸濁液の入ったプレートを180×gで2分間遠心し、各ウェルから培養上清100μLを採取し、蛍光プレートリーダー(485nm/538nm)によって培養上清中に放出されたCalcein量を測定した。「特異的細胞傷害活性(%)」は以下の数1にしたがって算出した。
Figure 2011024791
上式において、最小放出量は標的細胞及びK562細胞のみ含有するウェルのCalcein放出量であり、標的細胞からのCalcein自然放出量を示す。また、最大放出量は、標的細胞に0.1%界面活性剤Triton X−100(ナカライテスク社製)を加えて細胞を完全破壊した際のCalcein放出量を示している。
遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対する細胞傷害性解析の結果を図15に示す。図15の横軸は、培養開始後第10日目に回収したPBMCとMAGE−A4パルスしたT2A24細胞の比(E/T ratio)を示す。その結果、抗CD3抗体単独刺激及びフィブロネクチンフラグメント/抗CD3抗体刺激共にレチノイン酸刺激の有り無しでの細胞傷害活性(%)を比較したところ、レチノイン酸刺激群の特異的標的細胞に対する細胞傷害活性が高く、抗腫瘍活性が上昇することが認められた。
実施例5 レチノイン酸添加時期によるTCR遺伝子導入細胞の特性への影響
国際公開第2008/111506号パンフレットの実施例1−(1)〜(4)と同様に、MAGE−A4特異的TCR遺伝子のクローニング、ベクターの構築及びプロデューサー細胞の作製の一連の操作を行い、MS−bPaウイルス液の調製を行った。本ウイルス液のRNAコピー数は、2.55×1011コピー/mLであった。
(1)TCR遺伝子導入細胞の調製
実施例2−(1)と同様の操作により、抗CD3抗体接着プレートを調製した。
インフォームドコンセントが得られた健常人のPBMCを0.20×10cells/mLとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、得られた懸濁液を抗CD3抗体接着プレートに2.65mLとなるように加えた。この時、コントロールとして、レチノイン酸を含まない細胞懸濁液を加えたプレートを調製した。各プレートをCOインキュベーター中、37℃で4日間培養した。
遺伝子導入用ウイルス結合プレートを以下のように作製した。
フィブロネクチンフラグメントを20μg/mLとなるようにPBSに溶解し、この溶解液を表面未処理12ウェルプレートに1mL/ウェルで加え、4日間で4℃に放置した。放置後、溶解液を除去し、PBSを用いて2mL/ウェルの量で2回ずつ洗浄した後、MS−bPaウイルス液1.8mLをウェルに加え、32℃、2000×gで1.5時間遠心した。遠心後にウイルス液を除去し、1.5%HSA含有PBSを用いて1mL/ウェルの量で3回ずつ洗浄し、ウイルス結合プレートを作製した。
遺伝子導入操作は下記のように行った。ウイルス結合プレートに、抗CD3抗体で4日間刺激したPBMCを1.6×10cells、4.0mL/ウェルとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地で懸濁して加え、懸濁液を一晩、COインキュベーター中、37℃で培養した。この時、コントロール用プレート中の、レチノイン酸を含まない細胞懸濁液を加えて抗CD3抗体で4日間刺激したPBMCを用いて、同様の遺伝子導入操作及び遺伝子導入後の細胞の培養を行った。
一晩培養後の上記遺伝子導入細胞を回収し、10nMの終濃度レチノイン酸を添加または非添加した1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA及び2.5μg/mLファンギゾン含むGT−T503培地に0.1×10cells/mLとなるように懸濁後、得られた懸濁物を4.0mL/ウェルの量で細胞培養用12ウェルプレートに撒き、COインキュベーター中、37℃で3日間培養した。
PBMCの刺激開始後、第8日目に細胞を回収し、引き続き終濃度10nMレチノイン酸を添加または非添加した1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA及び2.5μg/mLファンギゾン含むGT−T503培地に0.1×10cells/mLとなるように懸濁後、懸濁物を細胞培養用12ウェルプレートに撒き、11日目まで培養した。第11日目にCD8単独陽性細胞中の細胞表面マーカー及び導入したTCRの発現細胞率、導入TCR特異的ペプチドに対するIL−4、IFN−γ及びperforinの産生細胞率の測定ならびに細胞傷害性解析を行った。
また、図16〜25の各図において、「RR」がPBMCの刺激開始から11日目まで終始レチノイン酸を添加し培養した細胞群、「R−」がPBMCの刺激開始から遺伝子導入(5日目)までレチノイン酸を添加し遺伝子導入後レチノイン酸を添加せずに培養した細胞群、「OR」がPBMCの刺激開始から遺伝子導入(5日目)までレチノイン酸を添加せずに遺伝子導入後レチノイン酸を添加し培養した細胞群、「O−」がPBMCの刺激開始から11日目まで終始レチノイン酸を添加せずに培養した細胞群を示す。
実施例2−(1)と同様に、MAGE−A4特異的TCRの発現をテトラマーアッセイにより測定した。
テトラマー測定結果を図16に示す。図16において縦軸はCD8単独陽性細胞中のテトラマー陽性率(%)である。その結果、テトラマー陽性細胞率は、終始レチノイン酸を添加し培養した「RR」が最も高く、次に遺伝子導入後レチノイン酸を添加し培養した「OR」、その次に遺伝子導入までレチノイン酸を添加し培養した「R−」、最も低かったのがレチノイン酸を添加せず培養した「O−」であった。「R−」が「O−」より高い陽性率であったことから、レチノイン酸添加によって遺伝子導入効率が上昇することが明らかとなった。「OR」が「O−」より高い陽性率であったこと、また「RR」が「R−」より高い陽性率であったことから、レチノイン酸添加によって導入遺伝子の発現も上昇することが明らかとなった。
CD8単独陽性細胞の細胞表面マーカーの測定結果を図17に、CD8単独陽性かつテトラマー陽性細胞の細胞表面マーカーの測定結果を図18に示す。メモリーT細胞比率を抗CD8抗体、抗CD45RA抗体及び抗CD62L抗体で細胞を染色して測定した。図17及び図18の各細胞群において、棒は左からCD45RA+/CD62L+(ナイーブT様細胞)、CD45RA−/CD62L+(セントラルメモリーT様細胞)、CD45RA−/CD62L−(エフェクターメモリーT様細胞)及びCD45RA+/CD62L−(エフェクターT様細胞)の割合(%)を表す。図17及び図18より、レチノイン酸を添加した場合、非添加(O−)の場合と比べて、セントラルメモリーT様細胞及びエフェクターメモリーT様細胞比率が増加することが明らかになった。
実施例4−(1)と同様の操作により、遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対するIL−4及びperforin産生細胞率を測定した。
CD8単独陽性細胞中のIL−4産生又は非産生、及びIFN−γ産生又は非産生細胞率の結果を図19に、IL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率(Tc2)とIL−4非産生かつIFN−γ産生細胞率(Tc1)の比を図20に、CD8単独陽性細胞中のperforin産生細胞率の結果を図21に示す。図19の各細胞群において、棒は左からIL−4産生かつIFN−γ非産生、IL−4非産生かつIFN−γ産生、IL−4産生かつIFN−γ産生細胞の割合(%)を表す。図20の各細胞群において、棒は左からTc1/Tc2及びTc2/Tc1をそれぞれ示し、縦軸の目盛りは、左側(0〜70)がTc1/Tc2に対応し、右側(0〜0.6)がTc2/Tc1に対応する。
その結果、図19よりタイプIIサイトカインであるIL−4の産生細胞率が最も高いのは「RR」であり、タイプIサイトカインであるIFN−γの産生細胞率が最も高いのは「OR」であった。また、非添加の「O−」と比べると、「R−」、「RR」および「OR」においてIL−4産生かつIFN−γ産生細胞の割合が高かった。図20よりTc2とTc1との比において「OR」より「R−」が高いことから、遺伝子導入前の培養時にレチノイン酸が存在することがTc2型CTLを誘導するために重要であることが明らかになった。また、perforin産生細胞率は「OR」、「RR」、「R−」、「O−」の順番で高かった。以上の結果より、本発明により製造されるメモリーT様細胞は、レチノイン酸の添加時期を調節することにより、Tc1型もしくはTc2型CTLにそれぞれ誘導することが可能であり、また、レチノイン酸を添加することによって、より高いperforin産生細胞率を示す細胞集団を製造できることが明らかとなった。
培養開始後第11日目の細胞をエフェクター細胞として1×10cells/mLとなるように10%FBSを含むRPMI1640培地で段階希釈後、96穴細胞培養プレートの各ウェルに100μL/ウェルずつ分注して用いた以外は、実施例4−(1)と同様に、遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対する細胞傷害性の解析を行った。
遺伝子導入細胞のMAGE−A4由来ペプチドp143に対する細胞傷害性の解析結果を図22に示す。図22は、培養開始後第11日目に回収したPBMCとMAGE−A4パルスしたT2A24細胞を1:1の比で共培養した時の細胞傷害率を示す。その結果、レチノイン酸添加の有り無しでの細胞傷害活性(%)を比較したところ、レチノイン酸刺激有りの細胞群(「RR」、「OR」、「R−」)の特異的標的細胞に対する細胞傷害活性がレチノイン酸刺激無しの細胞群(「O−」)より高く、レチノイン酸刺激により抗腫瘍活性が上昇することが認められた。
実施例6 レチノイン酸添加による遺伝子導入効率と導入遺伝子発現効果
国際公開第2008/111506号パンフレットの実施例1−(1)〜(4)と同様に、MAGE−A4特異的TCR遺伝子のクローニング、ベクターの構築及びプロデューサー細胞の作製の一連の操作を行い、MS−bPaウイルス液の調製を行った。本ウイルス液のRNAコピー数は、2.55×1011コピー/mLであった。
(1)TCR遺伝子導入細胞の調製
実施例5−(1)と同様に、抗CD3抗体接着プレートの調製、遺伝子導入前のPBMCの培養、遺伝子導入用ウイルス結合プレートの作製、抗CD3抗体で4日間刺激したPBMCへのTCR遺伝子導入操作及びTCR遺伝子導入後の細胞の培養の一連の操作を行い、TCR遺伝子導入細胞の調製を行った。
PBMCの刺激開始から第11日目に、導入したTCRの発現細胞率、発現量及びプロウイルスコピー数を測定した。
また、実施例2−(1)と同様に、MAGE−A4特異的TCRの発現をテトラマーアッセイにより測定した。
テトラマー測定結果を図23と図24に示す。図23において、縦軸はテトラマー陽性率(%)である。図24において、縦軸はテトラマー陽性かつCD8単独陽性細胞におけるテトラマーの発現量を平均蛍光強度の値を用いて示している。その結果、テトラマー陽性細胞率は、終始レチノイン酸を添加し培養した「RR」が最も高く、次に遺伝子導入後にレチノイン酸を添加し培養した「OR」、その次に遺伝子導入までレチノイン酸を添加し遺伝子導入後レチノイン酸を添加せずに培養した「R−」、最も低かったのがレチノイン酸を添加せず培養した「O−」の順番であった。また、CD8単独陽性かつテトラマー陽性細胞におけるテトラマー発現量すなわち平均蛍光強度もこれに相関した結果であった。つまり、製造工程においてレチノイン酸を添加することにより、特に遺伝子導入後にレチノイン酸を添加した細胞群(「OR」、「RR」)は非添加の細胞群「O−」と比べて、導入遺伝子の陽性細胞率と発現量が上昇した細胞を得ることができた。
培養細胞における導入遺伝子のプロウイルスコピー数を、Provirus Copy Number Detection Primer Set. Human(タカラバイオ社製)を用いて測定した。その測定結果を図25に示す。図25の縦軸は培養細胞における導入遺伝子のコピー数を示す。その結果、レチノイン酸を添加せず遺伝子導入を行った「O−」に比べ、レチノイン酸を添加し遺伝子導入を行った「R−」の方がプロウイルスコピー数の上昇が認められた。つまり、レチノイン酸を遺伝子導入前に添加することにより、遺伝子導入効率が上昇することが明らかとなった。
一方、遺伝子導入(5日目)まで同一のウェルで培養した細胞群(「O−」及び「ОR」又は「R−」及び「RR」)におけるプロウイルスコピー数の差が僅かであるのに対し、図23と図24の結果より遺伝子導入後にレチノイン酸を添加した細胞群(「OR」、「RR」)ではレチノイン酸を添加しなかった細胞群(「O−」及び「R−」)よりテトラマー陽性細胞率及びその発現量が高かった。つまり、レチノイン酸を遺伝子導入後に添加することにより導入遺伝子の発現が上昇することが明らかとなった。
実施例7 レチノイン酸添加によるCD4単独陽性細胞の特性への影響
実施例2−(1)と同様の操作により、抗CD3抗体接着プレートを調製した。
インフォームドコンセントが得られた健常人のPBMCを0.20×10cells/mLとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMレチノイン酸を含むGT−T503培地に懸濁し、該懸濁液を抗CD3抗体接着プレートに2.65mLとなるように加えた。この時、レチノイン酸を含まない細胞懸濁液を加えたプレートも調製した。各プレートをCOインキュベーター中、37℃で4日間培養した。
レチノイン酸を加えずに抗CD3抗体単独で4日間刺激したPBMC、及びレチノイン酸存在下で抗CD3抗体単独で4日間刺激したPBMCを各々0.1×10cells、2.0mL/ウェルとなるように、1%自己血漿、720IU/mL IL−2、0.2%HSA、2.5μg/mLファンギゾン及び10nMのレチノイン酸を含む培地に懸濁し、得られた懸濁液を細胞培養用12ウェルプレートに撒き直し、COインキュベーター中、37℃で3日間培養した。この時、レチノイン酸を加えずに抗CD3抗体単独で4日間刺激したPBMCを、レチノイン酸を含有しない培地に同じ細胞濃度で懸濁し、コントロールとして同様に培養した。
PBMCの刺激開始後、第7日目に0.1×10cells/mL、2.0mL/ウェルとなるように最終濃度10nMのレチノイン酸を含む培地に懸濁して各々のPBMCを細胞培養用12ウェルプレートに撒き、更に10日目まで培養した。上記のコントロールは、レチノイン酸を含有しない培地を用いて同じ操作を行い、10日目まで同様の培養を行った。
第10日目に各培養物中のCD4単独陽性細胞中の細胞表面マーカー及びPMA+イオノマイシン刺激に対するCD4単独陽性細胞中のIL−4並びにIFN−γの産生細胞率を測定した。
培養細胞のPMA+イオノマイシン刺激に対するIL−4及びIFN−γ産生細胞率を測定した。第10日目の培養細胞に最終濃度10ng/mLのPMA及び最終濃度1μg/mLのイオノマイシンを加えて、1時間培養し、ブレフェルディンA(シグマアルドリッチ社製)を添加後、更に3時間培養し、10倍量の冷却したPBSで反応を止めた。これらの細胞にFITC標識抗ヒトCD4抗体(ベクトンディッキンソン社製)を加え、室温で15分間の染色を行った。次いで、イントラプレップ(ベックマンコールター社製)を用いて細胞を固定・浸透化した後に、PE−Cy7標識抗ヒトIFN−γ抗体(ベクトンディッキンソン社製)及びPE標識抗ヒトIL−4抗体(ベックマンコールター社製)を加えて、室温で20分間の染色を行った。細胞を洗浄した後で、FACScant(べクトンディッキンソン社製)を用いてフローサイトメトリー解析を行った。
また、図26〜29の各図において、「RR」がPBMCの刺激開始から10日目まで終始レチノイン酸を添加し培養した細胞群、「OR」がPBMCの刺激開始から4日目までレチノイン酸を添加せずにその後レチノイン酸を添加し培養した細胞群、及び「O−」がPBMCの刺激開始から10日目まで終始レチノイン酸を添加せずに培養した細胞群(コントロール)をそれぞれ示す。
CD4単独陽性細胞の細胞表面マーカーの測定結果を図26に示す。メモリーT細胞比率を抗CD4抗体、抗CD45RA抗体及び抗CD62L抗体で細胞を染色して測定した。図26の各細胞群において、棒は左からCD45RA+/CD62L+(ナイーブT様細胞)、CD45RA−/CD62L+(セントラルメモリーT様細胞)、CD45RA−/CD62L−(エフェクターメモリーT様細胞)及びCD45RA+/CD62L−(エフェクターT様細胞)の割合(%)を表す。図26より、レチノイン酸を添加した場合、非添加(O−)の場合と比べて、セントラルメモリーT様細胞及びエフェクターメモリーT様細胞比率が増加することが明らかになった。
CD4単独陽性細胞中のIL−4産生又は非産生、及びIFN−γ産生又は非産生細胞率の結果を図27に、CD4単独陽性細胞中のIL−4産生、IFN−γ産生細胞率の結果を図28に示す。また、IL−4産生かつIFN−γ非産生細胞率(Th2)とIL−4非産生かつIFN−γ産生細胞率(Th1)との比を図29に示す。図27の各細胞群において、棒は左からIL−4産生かつIFN−γ非産生、IL−4産生かつIFN−γ産生、IL−4非産生かつIFN−γ産生細胞の割合(%)を表す。図28の各細胞群において、棒は左からIL−4産生、IFN−γ産生細胞の割合(%)を表す。図29の各細胞群において、棒は左からTh1/Th2及びTh2/Th1をそれぞれ示し、縦軸の目盛りは、左側(0〜1.4)がTh1/Th2に対応し、右側(0〜3.5)がTh2/Th1に対応する。
その結果、図28よりタイプIIサイトカインであるIL−4の産生細胞率が高いのは「RR」「ОR」であり、タイプIサイトカインであるIFN−γの産生細胞率が最も高いのは「OR」であった。また、非添加の「O−」と比べると、「RR」および「OR」においてIL−4産生かつIFN−γ産生細胞の割合が高かった。図29より、Th2/Th1比が「OR」より「RR」の方が高いことから、PBMCの刺激開始から4日目までの培養時にレチノイン酸が存在することがTh2型ヘルパーT細胞を誘導するのに重要であることが明らかになった。以上の結果から、レチノイン酸の添加時期を調節することにより、CD8単独陽性細胞と同様に、タイプIIサイトカイン産生又はタイプIサイトカイン産生のCD4単独陽性細胞を誘導できることが示された。
本発明により、免疫療法への使用に適したメモリーT様細胞を含有する細胞集団を製造する方法、及び、メモリーT様細胞の比率が増加し、所望の遺伝子が高効率で導入され高発現した細胞集団を製造する方法が提供できる。当該製造方法により得られる細胞集団は、細胞医療による疾患の治療に極めて有用である。
SEQ ID NO:1; Fibronectin fragment named CH-271.
SEQ ID NO:2; Fibronectin fragment named CH-296.
SEQ ID NO:3; Fibronectin fragment named H-271.
SEQ ID NO:4; Fibronectin fragment named H-296.

Claims (15)

  1. レチノイン酸類及びCD3リガンドを使用してT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程を含むことを特徴とする、メモリーT様細胞を含有する細胞集団の製造方法。
  2. T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程が、(1)〜(3)から選択される工程のいずれかである、請求項1記載の製造方法:
    (1)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養する工程、
    (2)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、次いで、レチノイン酸類及びCD3リガンドの非存在下で該細胞集団を培養する工程、又は
    (3)CD3リガンド存在下かつレチノイン酸類非存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、次いで、レチノイン酸類の存在下で該細胞集団を培養する工程。
  3. T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程が、フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の存在下で行われる、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団が末梢血単核細胞である、請求項1〜3いずれか1項に記載の製造方法。
  5. 得られた細胞集団からメモリーT様細胞を選択的に回収する工程をさらに含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜5いずれか1項に記載の方法で製造された細胞集団。
  7. 下記工程を包含することを特徴とする、所望の遺伝子が導入された細胞集団の製造方法:
    (a)請求項1記載の方法により、T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養する工程、及び
    (b)工程(a)の途中又は工程(a)の終了後に、該細胞集団に所望の遺伝子を導入する工程。
  8. 下記工程(1)〜(3)のいずれかにより実施される、請求項7記載の製造方法:
    (1)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、得られた細胞に所望の遺伝子を導入する工程、
    (2)レチノイン酸類及びCD3リガンドの存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、得られた細胞集団に所望の遺伝子を導入した後で、レチノイン酸類及びCD3リガンドの非存在下で該細胞集団を培養する工程、又は
    (3)CD3リガンド存在下かつレチノイン酸類非存在下でT細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を培養し、得られた細胞集団に所望の遺伝子を導入した後で、レチノイン酸類の存在下で該細胞集団を培養する工程。
  9. T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団を生体外で培養する工程が、フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の存在下で行われる、請求項7又は8記載の製造方法。
  10. 所望の遺伝子がレトロウイルスベクターによって導入される、請求項7〜9いずれか1項に記載の製造方法。
  11. フィブロネクチンもしくはそのフラグメント又はそれらの混合物の存在下で所望の遺伝子が導入される、請求項10記載の方法。
  12. 所望の遺伝子が抗原を認識するレセプターをコードする遺伝子である、請求項7〜11いずれか1項に記載の製造方法。
  13. 抗原を認識するレセプターがT細胞レセプターである、請求項12記載の製造方法。
  14. T細胞又はT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団が末梢血単核細胞である、請求項7〜13いずれか1項に記載の製造方法。
  15. 請求項7〜14いずれか1項に記載の製造方法により得られる、所望の遺伝子が導入されたT細胞集団。
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