JPWO2011010649A1 - 質量分析方法及びイオン解離装置 - Google Patents

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Abstract

物質の構造に関する情報の取得効率を向上し、測定及び物質同定の時間を短縮することのできる質量分析方法を提供する。質量分析でのイオン解離過程において、反応前に測定したイオン量と解離後に測定したイオン量を比較し、最適なイオン解離強度を見積もることを特徴とする質量分析方法を提供する。

Description

本発明は、質量分析方法と質量分析に使用して好適なイオン解離装置に関する。本発明は、例えば生体高分子の解離分析に使用できる。
ヒトにはおよそ10万種のタンパク質が存在すると言われている。タンパク質の機能は、プロテアーゼによる切断、糖鎖やリン酸基などの付加による活性・相互作用調節、ミリスチル化やパルミチル化などのアシル化による膜への局在化など、様々な翻訳後修飾により巧妙な調節を受けている。特に真核生物においては、遺伝子配列に基づいて合成されたタンパク質がそのままの状態で機能を発揮することはむしろまれであり、例えばリボソーム上での合成後は、その場で又は細胞内での最終的な局在が決まるまでの様々の段階で多種多様な修飾を受ける。時間的空間的に変化するこれらの生体高分子の構造は、単にゲノム情報のみによっては決定することができず、タンパク質を直接解析する必要がある。
その構造解析手段の1つとして、質量分析法(mass spectrometry: MS)がある。質量分析法を用いれば、生体高分子を構成するアミノ酸がペプチド結合でつながったポリペプチド(ペプチドやタンパク質)の配列情報や翻訳後修飾情報を得ることができる。特に高周波電場を用いたイオントラップや四重極質量フィルターを用いた質量分析法や飛行時間型質量分析法(Time-of-Flight mass spectrometer : TOF-MS)は高速分析法のため、液体クロマトグラフィー(Liquid chromatography :LC)装置等に代表される試料を分離する前処理手段との結合性が良い。このため、これらの高速質量分析法では、多種類の試料を連続解析することが求められるプロテオーム解析等の目的に合致しており、幅広く利用されている。
一般に質量分析法では、試料分子をイオン化して真空中に導入し(又は真空中でイオン化し)、電磁場中におけるそのイオンの運動を測定することにより、対象とする分子イオンの質量電荷比(m/z)が測定される。得られる情報が質量と電荷の比という巨視的な量であるため、質量分析操作を単に1回実行するだけでは、その内部構造の情報までは得ることができない。そこで、タンデム質量分析法と呼ばれる方法が用いられる。
タンデム質量分析法では、まず1回目の質量分析操作において、試料分子イオンを特定する又は単離する。特定又は単離されたイオンを「プリカーサイオン」と呼ぶ。続いて、プリカーサイオンを何らかの手法で解離する。解離したイオンを「フラグメントイオン」と呼ぶ。このフラグメントイオンを更に質量分析すると、フラグメントイオンの生成パターンの情報が得られる。
なお、解離手法により、解離パターンには法則性がある。このため、プリカーサイオンの配列構造を推察することが可能となる。特にアミノ酸を骨格とする生体分子の分析分野では、イオン解離手法として衝突励起解離(Collision-Induced-Dissociation:CID)法、赤外多光子吸収(Infra-Red-Multi-Photon-Dissociation:IRMPD)法、電子捕獲解離(Electron-Capture-Dissociation:ECD)法、電子移動解離(Electron-Transfer-Dissociation:ETD)法が用いられる。
タンパク質の解析分野において、現在もっとも広く使われている手法は、プリカーサイオンに運動エネルギーを与えてガスと衝突させるCID法である。CID法では、ガスとの衝突によりプリカーサイオンの分子振動が励起され、分子鎖の切れやすい部分で解離が起こる。
また、最近使われるようになった方法が、プリカーサイオンに赤外レーザ光を照射して多数の光子を吸収させるIRMPD法である。IRMPD法では、プリカーサイオンの分子振動が励起され、分子鎖の切れやすい部位で解離が起こる。ポリペプチドの解離部位を図2に示す。図中のa、b、cは、NH2 末端側を含む分子、x,y,zはCOOH末端側を含む分子である。
CID法やIRMPD法で切れ易い部位は、アミノ酸配列からなる主鎖のうち、b−yで命名されている部位である。b−yの部位であっても、アミノ酸配列パターンによっては切れ難い場合がある。このため、CID法やIRMPD法のみでは、構造解析ができないことが知られている。また、翻訳後修飾を受けた生体高分子では、CID法やIRMPD法を用いると、ポリペプチド側鎖に存在する翻訳後修飾が切れやすい傾向がある。このため、失われた質量から修飾分子種と修飾されているかどうかの判定は可能である。ただし、どのアミノ酸部分で修飾されていたかという修飾部位に関する重要な情報は失われる。
一方、ECD法やETD法は、アミノ酸配列に依存せず(ただし、例外として環状構造であるプロリン残基のN末端側は切断しない。)、アミノ酸配列の主鎖上のc−z部位の1箇所を切断する。このため、ECD法やETD法を用いれば、タンパク質分子を質量分析的手法のみで解析することができる。また、ECD法やETD法は、側鎖を切断し難いという特徴をもっているので、翻訳後修飾を受けた生体高分子でもアミノ酸配列や修飾位置を同定することができる。このため、翻訳後修飾の研究・解析の手段として近年特に注目を受けているのがこのECD法やETD法という解離手法である。
また、最近新たな解離法として注目されているのが電子脱離解離(Electron-Detachment-Dissociation :EDD)法である。EDD法は、ECD法と類似の装置構成で実施される。EDD法は、負に帯電したプリカーサイオンを電子と反応させ、アミノ酸配列の主鎖上のa−x部位の1箇所を切断する。EDD法は、ペプチドだけでなく、オリゴヌクレオチドや糖鎖の構造解析に利用され始めている(非特許文献1)。
なお、正に帯電したプリカーサイオンと電子を反応させる手法はECD法と呼ばれる。また、正に帯電したプリカーサイオンと負に帯電したイオンを反応させ、電子の授受を経由して、ECD法と同様の解離を引き起こす手法はETD法と呼ばれる。これらの反応効率はプリカーサイオンのイオン量、価数、修飾有無、修飾の種類や修飾数に依存することが知られており(非特許文献2、3)、各プリカーサイオンに適した電子量、負イオン量及び反応時間を設定する必要がある。
ここで、サブスタンスPという2価のペプチドイオンのECD反応時間依存性を図3に示す(非特許文献4)。図中縦軸は相対イオン強度であり、横軸はECD反応時間である。反応時間の増加に伴ってプリカーサイオン量は減少するのに対し、フラグメントイオンは7ms付近でピークを迎える。つまり、プリカーサイオンがECD反応によって減少すれば、その分だけフラグメントイオンが産生されるわけではない。サブスタンスPでは、反応時間0のときのプリカーサイオン量を1とすると、プリカーサイオンが約0.3残存している状態のとき、ペプチド同定に必要なフラグメントイオンが最も産生される。ここで、プリカーサイオン残存率Iは、反応時間t、サンプルの性質によって決まる時定数τを用いてI=1/e^(t/τ)で示すことができる。
図4に、様々な電子量で獲得したECDスペクトルの模式図を示す。図中縦軸はイオン強度であり、横軸は分子イオンの質量電荷比(m/z)である。最適な電子量であれば、プリカーサイオン200、チャージリデューススピーシーズ201、フラグメントイオン202が検出され、フラグメントイオン202のm/zからアミノ酸配列や修飾物の種類や修飾部位が同定可能となる(図4(A))。チャージリデューススピーシーズ201とは、プリカーサイオン200が電子と反応したが解離しなかったプリカーサイオン200のことであり、プリカーサイオンの価数よりも低い価数となる。しかし、反応させる電子量が少なすぎた場合、プリカーサイオン200が残存するのみのスペクトルを得ることになる(図4(B))。また、反応させる電子量が多すぎた場合、ECD法によって産生されたフラグメントイオンは再度電子を受け取り、価数が低下したフラグメントイオンが産生される。このような多段的な反応の発生により、最終的にはイオンではなくなり、質量分析装置で検出できなくなる(図4(C))。
また、反応条件が最適であったとしても、価数が低い場合、修飾部位が多い場合、修飾物が大きい場合等では、解離効率が低いことが知られている。この場合、イオン強度の高いチャージリデューススピーシーズが観察される。
その解決手段として、ECD法では、Hot ECD(HECD)法やActivated Ion ECD(AI−ECD)法が用いられる。HECD法とは、通常のECD(特に、2eV以下程度のものをcold ECD(CECD)法という。)法よりも高いエネルギーをもつ電子(2eV以上)を利用する解離方法であり、解離効率を向上させることができる。しかし、c−z以外の2次的な解離が誘発され、その後の同定が難しくなる場合がある(非特許文献5)。
AI−ECD法は、ECD反応中又はその前後にプリカーサイオンを高周波電場で励起し、解離を起こり易くする方法である(非特許文献6)。AI−ECD法でもHECD法と同様にc−z以外の解離が起こり易い。一方、ETD法では原理上電子エネルギーを上げることはできない。このため、チャージリデューススピーシーズに対し、CID法を実施し、解離効率を向上させている(ETcaD法:非特許文献7)。チャージリデューススピーシーズから産生されるフラグメントイオンも主にc−zイオンである。
図5(A)及び(B)に、36アミノ酸からなる5価のニューロペプチドYをCECD(1.25eV)法とHECD(10eV)法で分析した結果得られたスペクトルを示す。なお図中縦軸はイオン強度であり、横軸は分子イオンの質量電荷比(m/z)である。また、プリカーサイオン残存率Iは、0.3になるように反応時間を設定した。
CECD法では解離可能な35ペプチド結合のうち21箇所が解離した(シーケンスカバー率60%)。一方、HECD法では、30箇所解離した(シーケンスカバー率86%)。HECD法ではチャージリデューススピーシーズ([M+5H]4+と[M+5H]3+)のイオン強度が低下し、フラグメントイオンの種類が増加していることが分かる。しかし、2次的な解離によるwイオンが観察されている。次に、ニューロペプチドYの5価イオンと6価イオンを様々な電子エネルギーでECD法を行い、シーケンスカバー率、全イオンに占めるチャージリデューススピーシーズ比、フラグメントイオン比の電子エネルギー依存性を示す(図6)。なお、図6(A)の縦軸はシーケンスカバー率であり、横軸は電子エネルギーである。一方、図6(B)の縦軸は全イオンに占める相対イオン強度であり、横軸は電子エネルギーである。
図6に示すように、6価イオンでは電子エネルギーに関わらず、86%のシーケンスカバー率が得られ、チャージリデューススピーシーズ比とフラグメントイオン比はほぼ変化しない。一方、5価イオンの場合、CECD(1.25eV)法で60%であったシーケンスカバー率が電子エネルギーを上昇させるに従って向上し、HECD(10eV)法では86%になった。更に、CECD法では、チャージリデューススピーシーズ比が0.2であったが、電子エネルギーを上昇させるに従い減少し、10eVで約0.1のチャージリデューススピーシーズ比になった。ニューロペプチドYの6価イオンでは2次的な解離も起こすことなく高いシーケンスカバー率が得られるCECD法が最適である。一方、5価イオンではCECD法ではシーケンスカバー率が低いため、高いシーケンスカバー率が得られるHECD法を用いることが望ましい。
また、ETD法でも負イオン量や反応時間の最適化は必要である。非特許文献2では、様々な糖ペプチドの分析を試みるための予備検討として代表的な糖ペプチドを用いて負イオン量や反応時間を最適化したことが記述されている。
CID法でもプリカーサイオン固有の解離エネルギーを設定する必要がある。特許文献1によれば、分子イオンの質量電荷比(m/z)に比例したイオン解離エネルギーを設定する必要がある。しかも、ヘリウム等のガス圧や電子機器等装置固有の誤差があるため、較正する必要性が記載されている。
また、サーモサイエンティフィック社のホームページには、ガスクロマトグラフ質量分析装置の一機能としてACE(Automated Collision Energy)法を採用するものが開示されている。これは、情報量が多いフラグメントイオンスペクトルを感度良く得るため、1回のスキャン中で3段階に解離エネルギーを変化させ、最適な解離条件の設定とフラグメントイオン生成を可能にしていることが記載されている(非特許文献8)。
No.US6124591
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タンパク質やペプチドの定性解析では、アミノ酸配列の同定だけでなく、翻訳後修飾の種類や修飾物の構造又は修飾部位の同定が求められる。前述したように、イオン解離手法としてECD法やETD法を用いれば、アミノ酸配列の同定だけでなく、翻訳後修飾物の修飾部位の同定が可能である。
また、CID法を用いた場合、翻訳後修飾の種類や修飾物の構造を同定することができる。ECD法やETD法を用いた場合のイオン解離効率は、プリカーサイオンの価数、修飾有無、修飾の種類や修飾数に依存するが、プリカーサイオンの情報は分子量と価数だけである。従って、これらの情報だけに基づいて、各プリカーサイオンに適した電子量、負イオン量及び反応時間を設定することは困難である。
しかも、電子量、負イオン量及び反応時間は最適であったとしても、プリカーサイオンによっては十分に解離しないことがある。その場合、これらのイオンに対してHECD法、AI−ECD法、ETcaD法等の適用により、解離効率を向上させることができる。
しかし、これらの解離方法では、2次的な解離によって帰属できないフラグメントイオンが増加する。このため、アミノ酸配列や修飾部位の同定を困難にさせる。さらに、AI−ECD法やETcaD法では、ECD法、ETD反応に加え、高周波電場を用いた励起が必要になる。このため、スループットが低下する。そこで、CECD法やETD法で同定可能である場合、CECD法やETD法を利用し、解離効率の低いプリカーサイオンに対してのみHECD法、AI−ECD法、ETcaD法を利用することが望まれる。
特許文献1には、CID法における最適な解離エネルギーは、分子イオンの電荷と質量の比(m/z)に比例することが記載されている。そのため、プリカーサイオンのm/z値から解離エネルギーを設定している。
しかし、プリカーサイオンのm/z値が大きくなるのに従い、推測した最適解離エネルギーでは最適値を設定できない例外があり、そのデータも記載されている。つまり、m/z値だけでは最適な解離エネルギーを設定することが困難である。
また、前述したACE法では3段階にエネルギーを変化させているが、最適な解離エネルギーを設定できているかは分からない。
そこで、本発明は、以上説明した技術的な課題を解決し、物質の構造に関する情報の取得効率を向上させる質量分析方法と、質量分析時のイオン解離に適した装置を提供することを目的とする。
(手段1)
本発明による質量分析方法は、試料をイオン化するイオン源の前段階に設けられた分離部によって試料を分離する工程と、分離された試料をイオン源によりイオン化する工程と、生成された試料イオンの非フラグメント化スペクトルを取得する工程と、プリカーサイオンを選択する工程と、プリカーサイオン強度を測定する工程と、生成された試料イオンを所望の強度で解離する工程と、試料イオンのフラグメント化スペクトルを取得する工程と、非フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度に対する、フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度の比を算出する工程と、算出された比とイオン解離強度の設定値に基づいて、所望の比が得られるイオン解離強度の最適値を算出する工程と、生成された試料イオンをイオン解離強度の最適値で解離する工程を有する。
また、本発明によるイオン解離装置は、電子源と、電子源に対してイオントラップ領域の遠端側に配置されるリング形状の第1の端電極と、電子源に対してイオントラップ領域の近端側に配置されるリング形状の第2の端電極と、第2の端電極に対して電子源側に配置されるリング形状の電子量制御電極とを有するイオン解離部と、電子量制御電極に印加する電圧を可変制御する制御部とを有する。
(手段2)
本発明による質量分析方法は、データベースに所望のイオンの分析条件を登録する工程と、試料をイオン化するイオン源の前段階に設けられた分離部によって試料を分離する工程と、分離された試料をイオン源によりイオン化する工程と、生成された試料イオンの非フラグメント化スペクトルを取得する工程と、プリカーサイオンを選択する工程と、プリカーサイオン強度を測定する工程と、電子電流値を測定する工程と、非フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度からECD反応時間を算出する工程と、電子電流値からECD反応時間を算出する工程と、データベースを更新する工程と、生成された試料イオンをイオン解離強度の最適値で解離する工程を有する。
また、本発明によるイオン解離装置は、電子源と、電子源に対してイオントラップ領域の遠端側に配置されるリング形状の第1の端電極と、電子源に対してイオントラップ領域の近端側に配置されるリング形状の第2の端電極と、第2の端電極に対して電子源側に配置されるリング形状の電子量制御電極とを有するイオン解離部と、電子量制御電極に印加する電圧を可変制御する制御部とを有する。
本発明により、各プリカーサイオンに適した解離強度を設定したフラグメント化スペクトルを獲得することが可能となる。これにより、同定精度の高いフラグメント化スペクトルを獲得することができる。また、質量分析による物質の同定において、物質の構造に関する情報を取得する効率が向上し、測定及び物質同定の時間が短縮する。
発明の実施の形態1におけるECD反応制御フローを説明する図。 ポリペプチドの解離パターンを説明する図。 サブスタンスPを用いたECD反応によるフラグメントイオン総量とプリカーサイオン量の反応時間依存性を説明する実験図。 最適な電子量(A)、電子量不足(B)、電子量過剰(C)におけるECDスペクトルの模式図。 ニューロペプチドY(5価)を電子エネルギー1.25eVで解離させたECDスペクトル実験図(A)と電子エネルギー10eV(B)で解離させたECDスペクトル実験図。 ニューロペプチドY(5価、6価)のシーケンスカバー率(A)とフラグメント総量とチャージリデューススピーシーズ総量(B)の電子エネルギー依存性の実験図。 発明の実施の形態1に基づくECDセルを含む質量分析システムの構成例を示す図。 電子量制御電圧を制御した場合と制御しない場合の各プリカーサイオン価数における反応時間と制御電圧値を示す図表。 イオンピークを説明する模式図。 非フラグメント化スペクトル(A)とフラグメント化スペクトル(B)の模式図。 リニアイオントラップECDセルと電子源の構成図。 イオントラップ電圧が20Vの場合(A)と28Vの場合(B)における電子量と電子量制御電圧の依存性を示す実験図。 発明の実施の形態2に基づくECD反応制御フローを説明する図。 発明の実施の形態3に基づくECD反応制御フローを説明する図。 発明の実施の形態4に基づくECD反応制御フローを説明する図。 発明の実施の形態6に基づくETDをイオン解離手段とする質量分析システムの構成例を示す図。 発明の実施の形態6に基づくECD反応制御フローを説明する図。 発明の実施の形態1に基づくデータ取得シーケンス例を示す図。 サブスタンスPを用いたECD反応による時定数τとプリカーサイオン強度の関係を示す実験図。 予測されたイオンクロマトグラムと各イオン強度での反応時間を示す模式図。 あるイオンの実測イオン強度とガウシアン関数によって予測されるイオンクロマトグラムの模式図。 発明の実施の形態7に基づくCID法をイオン解離手段とする質量分析システムの構成例を示す図。 発明の実施の形態7に基づくCID反応制御フローの図。 サブスタンスPを用いたプリカーサイオン強度とフラグメントイオン総量の相対強度とイオン解離強度との関係を示す実験図 様々なイオン解離強度で解離させたプリカーサイオン残存率の実測値と最適イオン解離強度を示す模式図。 発明の実施の形態7に基づくデータ取得シーケンス例を示す図。 発明の実施の形態5に基づくECDセルを含む質量分析システムの構成例を示す図。 発明の実施の形態5に基づくデータ依存解析モードの操作画面を示す図。 発明の実施の形態5に基づくデータベースモードの操作画面を示す図。 発明の実施の形態5に基づくデータベースモード制御フローの図。 イオン強度ごとにECD反応時間を設定するデータベース例を示す図。 イオン強度ごとにECD反応時間を設定するデータベースを使用した場合の制御フローの図。 リニアイオントラップECDセルと電子電流測定の構成図。 電子電流依存的にECD反応時間や電子量制御電圧を補正するフローの図。 電子電流値とイオン強度依存的にECD反応時間や電子量制御電圧を補正するデータベースモード制御フローの図。 イオン強度ごとにECD反応時間を設定するデータベースを使用した場合の電子電流値とイオン強度依存的にECD反応時間や電子量制御電圧を補正する制御フローの図。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する本発明の実施の形態は一例であって、公知又は周知の技術との組み合わせや置換によって他の形態を実現することもできる。
(A)実施の形態1:イオン解離手法としてECD法を用いる場合(その1)
(質量分析システムの構成)
図7に、イオンの解離にECD法を用いる質量分析システムの構成例を示す。分析対象となる試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー(LC))の前処理により分離される。なお、試料分離装置2には、ガスクロマトグラム(GC)を用いることもできる。
分離された試料は、イオン源3においてイオン化され、質量分析装置に導入される。非フラグメント化スペクトル取得の場合、導入されたイオンは、リニアイオントラップ(LIT)4に蓄積され、全イオン(又はある特定のイオン)が単離された状態で排出される。排出されたイオンは、TOF検出器8で検出される。TOF検出器8の前段には高分解能であるTOF7が存在する。
フラグメント化スペクトル取得の場合、質量分析システムに導入されたイオンはLIT4に蓄積され、ある特定のイオンが単離された状態で排出される。排出されたイオンはQディフレクター5を経由し、ECDセル6に入る。ここで、ある特定のイオン解離強度でECD反応が行われ、イオンは排出される。排出されたイオンは再びQディフレクター5を経由し、TOF7でイオンの質量電荷比m/zに応じて分離される。
イオン源3は、エレクトロスプレイイオン源、大気圧化学イオン化によるイオン源、マトリックス支援レーザ脱離イオン源、電気衝撃イオン源、化学イオン化によるイオン源、フィールドイオン化によるイオン源から選択される。
LIT4は多くのイオンを蓄積でき、高感度検出が可能である。しかし、LIT4に代えて、三次元四重極イオントラップ、四重極質量フィルター、コリジョンセル、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分離部を用いても良い。
ECDセル6は、LIT、三次元四重極イオントラップ、コリジョンセル、四重極質量フィルター、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析部の中から選択される。また、本装置構成では、イオン解離方法としてECD法を用いているが、EDD法を用いても良い。この場合、イオン化は負イオンモードで実施する。
TOF7は高分解能で質量精度も高いので好ましいが、四重極質量フィルター、イオントラップ、磁場型質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、オービトラップ型分析器でも構わない。電子を供給するための電子源は、フィラメントでもディスペンサーカソードでも構わない。
TOF検出器8で検出された各イオンは、m/z値と共に全体処理部10に与えられる。全体処理部10は、後述するようなデータ整理及び又はデータ処理を実行する。なお、全体処理部10は、ハードウェア的な回路構造を有する場合だけでなく、コンピュータシステム上で動作するプログラムの処理機能を通じても実現することができる。全体処理部10の処理機能の一つであるイオン解離パラメータ決定部12は、イオン解離強度決定部13、プリカーサイオン強度測定部15、プリカーサイオン残存率算出部16、反応時間算出部1000で構成される。この全体処理部10が、特許請求の範囲における「計算処理部」に対応する。
プリカーサイオン強度測定部15は、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内の各プリカーサイオン強度を測定する。プリカーサイオン残存率算出部16は、測定されたプリカーサイオン強度に基づいてプリカーサイオン残存率を算出する。プリカーサイオン残存率とは、非フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度に対する、フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度の割合とする。
反応時間算出部1000は、プリカーサイオン残存率とユーザー所望の設定値とに基づいて最適反応時間を算出する。イオン解離強度決定部13は、算出された最適反応時間に応じてイオン解離強度を決定する。決定強度を与える信号は、イオン解離強度決定部13から制御部9を介してECDセル6に与えられる。すなわち、ECDセル6が決定強度に制御される。
また、図中に破線で示すように、LIT4におけるイオン蓄積時間を制御することによってプリカーサイオン量を調節することも可能である。同じく、図中に破線で示すように、試料分離装置2を制御することによって試料1の流量を変化させ、イオンの溶出プロファイルを調節することも可能である。
質量分析スペクトル、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内のプリカーサイオン強度、プリカーサイオン残存率、ECD反応時間、電子エネルギー、ECDセル6を制御するパラメータ、LIT4の制御パラメータ、試料分離装置2の溶媒混合比、流量等はデータ表示部18で表示される。全体処理部10に対する所望のプリカーサイオン強度の残存率は、パラメータ入力部19を通じて入力する。
(処理動作の概要)
図1に、本発明の実施の形態1に基づくECD反応制御フローを示す。複数物質の混合物である試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー)に導入される。クロマトグラフィーには、物質の性質によって分離させるための分離カラムが装着されており、分離カラムを通過した試料は、成分ごとに異なる時間に溶出する。溶出した試料の各成分は、イオン源3にてイオン化される(302)。イオンは質量分析装置内のLIT4に導入されて蓄積され(303)、排出口から排出される。排出されたイオンはTOF検出器8において検出され、横軸をm/z、縦軸をイオン強度とする非フラグメント化スペクトルを得る(304)。
次に、全体処理部10は、全イオンスペクトル(非フラグメント化スペクトル)からプリカーサイオンを選択する(305)。全イオンスペクトルは一般的にはMS1スペクトルと呼ばれている。プリカーサイオンはイオン強度順に選択されるのが一般的である。しかし、価数や分子量を考慮に入れてプリカーサイオンを選択しても良い。この後、全体処理部10は、選択したプリカーサイオンの価数とm/z値を特定し、価数とm/z値から分子量を算出する(306)。この算出動作の詳細については後述する。この算出動作と並行して、全体処理部10は、プリカーサイオンのイオン強度も測定する(308)。
例えば初めて分析されるプリカーサイオンに対し、全体処理部10は、m/z値、価数、分子量に基づいて各プリカーサイオンに適すると推定される電子エネルギー、ECD反応時間、電子量制御電圧を設定する(307)。もっとも、予め定めておいた特定値を、初めて分析されるプリカーサイオンに対する設定値として与えても構わない。例えば電子エネルギーを1eV、反応時間を10ms、電子量制御電圧を20Vに設定する。電子量の制御電圧については後述する。
次に、LIT4でプリカーサイオンを単離し(309)、単離したプリカーサイオンに対してECD反応(310)を実施し、その後、全体処理部10においてECDスペクトルを取得する(311)。次に、全体処理部10は、ECDスペクトル中に存在するプリカーサイオン強度を測定する(308)。
全体処理部10は、非フラグメント化スペクトル中のプリカーサイオン強度とECDスペクトル中のプリカーサイオン強度とを比較し、プリカーサイオンの残存率を求める(312)。この動作の詳細については後述する。なお、プリカーサイオンの残存率の値が所望の範囲外の場合(314)、全体処理部10は、最適なイオン解離強度を算出して設定し(313)、再度ECDスペクトルを取得する。一方、プリカーサイオンの残存率が所望の範囲内の場合、全体処理部10は、イオン解離強度は最適だったと判定する。
この場合(315)、全体処理部10は、非フラグメント化スペクトルの取得に戻る。もっとも、同一イオンのECDスペクトルの取得を継続しても良い。なお、全体処理部10によるプリカーサイオン残存率の算出、反応時間の算出、電子量制御電圧の算出、パラメータの設定は、いずれも分析を妨げないように、実時間で実施される必要がある。
(価数と分子量の算出)
ここでは、イオンの価数と分子量の算出方法について説明する。図9に、質量分析で観測されるプロトン化[H]したイオンピークの模式図を示す。縦軸はイオン強度であり、横軸はm/zである。タンパク質の構成原子は主に炭素、水素、酸素、窒素である。自然界の炭素には質量数12の12Cの他に、約1%質量数13の13Cが存在する。そのため、タンパク質は、12Cと一定の割合で13Cを含有する混合物である。質量分析では、12Cのみで構成されるモノアイソトピックピーク400のほかに13Cが混合した同位体が存在する。13Cを1つ含む同位体、13Cを2つ含む同位体、13Cを3つ含む同位体はそれぞれ12C体分子量+1、12C体分子量+2、12C体分子量+3となり、同位体ピーク401と呼ばれている。
プロトン化イオンの場合、プロトン付加数が価数zに対応する。質量分析では、m/zで表示される。このため、モノアイソトピックピーク400のm/z値は12C体の分子量をMとすると、(M+z)/z、同位体ピーク401のm/z値はそれぞれ(M+1+z)/z、(M+2+z)/z、(M+3+z)/zとなる。これらのピークの差は1/zとなる。つまり、1価の場合のピーク間隔は1、2価の場合のピーク間隔は0.5となる。従って、ピークの間隔から価数を判定することが可能である。また、価数が判明すれば、価数とm/z値から分子量を算出することが可能である。
(最適反応時間の算出)
図7の装置構成の場合、ECDセル6に導入される電子量は反応時間に比例する。このため、反応時間を操作することによってプリカーサイオンと反応する電子量を調節することができる。最適反応時間の算出方法を以下に説明する。最適反応時間の算出は、全体処理部10が実行する。図10(A)及び(B)に、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトルの模式図を示す。なお、縦軸はイオン強度であり、横軸はm/zである。
ここでは、非フラグメント化スペクトルでイオン強度xのプリカーサイオン200(図10(A))を単離し、t[ms]の間、ECD反応をした結果、イオン強度Ixのプリカーサイオン201(図10(B))が残存したECDスペクトルが得られた場合を想定する。この場合、プリカーサイオン残存率Iは、サンプルの性質によって決まる時定数τと反応時間t[ms]とを用いて、次式で示すことができる。
I=1/e^(t/τ)
この方程式から時定数τを求めれば、求めた時定数τとプリカーサイオン残存率との関係から、所望のプリカーサイオン残存率(例えば0.3)が得られるのに必要な反応時間tを求めることができる。この反応時間でECD反応を実施すれば、所望のプリカーサイオン残存率のECDスペクトルが得られる。また、反応時間を制御するのではなく、電子量の制御電圧を制御することも可能である。
(ECDセルの装置構成)
図11に、リニアイオントラップを用いたECDセル6の装置構成例を示す。このECDセル6が、特許請求の範囲におけるイオン解離装置に対応する。
ECDセル6は、四重極形のLIT4の両端部に第1の端電極100と第2の端電極101を配置した構成を有している。ここで、第1の端電極100と第2の端電極101は、リング形状を有する平板状の電極で構成される。すなわち、各端電極の基板中央には細孔が形成される。
図に示すように、LIT4の中心軸に沿うようにプリカーサイオン102が保持される。また、電子源104と第2の端電極101との中間には、やはりリング形状を有する平板状の電子量制御電極103が配置される。電子源104から照射された電子は、電子制御電極103の細孔、第2の端電極101の細孔を順番に通過してLIT4内に到達し、ECD反応を発生させる。後述するように、制御部9は、電子量制御電極103に対する印加電圧の制御によって導入する電子量を調整する。
図11の例では、電子源電圧105として20Vの電圧が印加され、イオントラップ電圧106が20Vから28Vの範囲で調節されることを示している。イオントラップ電圧106を上昇させることによって、高いエネルギーの電子を照射することができる(HECDに相当)。
ここで、イオントラップ電圧106を20V又は28Vに固定し、電子量制御電極103を10Vから23Vまで変化させたときに得られた電流値を図12に示す。図12(A)は、イオントラップ電圧106が20Vの例であり、図12(B)は、イオントラップ電圧106が28Vの例である。どちらのグラフも、電子量制御電極103に対する印加電圧が14Vまでの間は、電子がイオントラップ内に入射されていない。また、イオントラップ電圧が20Vの場合、電子量制御電圧が20V付近で最大電流が流れる。一方、イオントラップ電圧が28Vの場合、電子量制御電圧が23Vで最大電流が流れる。つまり、電子量制御電極103を制御することによってLIT4に入射される電子量を調節することができる。このように、反応に使用する電子量は、反応時間tだけでなく、電子量制御電極103に印加する電圧値によっても制御することができる。
なお、この実施の形態の場合には、電子量制御電極103に印加する直流電圧を可変しているが、制御方法は、イオン解離部によって異なる。例えば高周波電圧の周波数と振幅の可変制御によってイオン解離強度を調整することもできる。
図8に、従来法と電子量制御電極103を取り入れた発明案の2例についてのイオン解離強度パラメータの例を示す。2価から12価のイオンをECD分析する場合、従来法では、電子量制御電圧103を23Vに固定し、反応時間のみで電子量を調節する。しかし、反応時間を小数点第1位以下で制御することは困難であり、9価から12価までのイオンについては電子量を正確に制御することができない。一方、発明案の場合、反応時間は3msに固定し、電子量制御電極103の印加電圧を必要な電子量に合わせて可変的に設定すれば良い。これにより、実施の形態で使用するECDセル6においては、従来方式に比べて正確な電子量制御が可能になる。
(ECDを複数回実行する場合のシーケンス例)
図18(A)〜(G)に、本発明の実施の形態1に係るシーケンス例を示す。図18(A)に示すシーケンス例の場合、非フラグメント化スペクトルの取得(図18では、「MS1」と表記する。)後にプリカーサイオンを選択し、価数や分子量に応じた反応時間でpre−ECDを実施する。その後、非フラグメント化スペクトルとpre−ECDスペクトルにそれぞれ含まれる各プリカーサイオン強度の比較により最適反応時間を算出し、その最適反応時間でECDスペクトルを取得する。ここで、pre−ECDとは最適なイオン解離条件で実ECDスペクトルを取得するために、条件決めに利用するECDスペクトルである。
図18(B)に示すシーケンス例は、液体クロマトグラフィーが質量分析装置の前段に配置される場合に使用する。この装置構成の場合、時間と共にプリカーサイオン強度が変動する。そこで、pre−ECD反応後に、MS1スペクトルを再び取得し、pre−ECD前後のMS1スペクトル中のプリカーサイオン強度の平均値を最適反応時間の算出に利用する。また、ECD反応後のスペクトルは、プリカーサイオン強度のみが必要であるので、全イオンのスペクトルを取得する必要はない。これにより、測定時間の短縮が見込まれる。すなわち、ECD反応後のスペクトルは、プリカーサイオンのみを単離する。この場合、単離過程やイオン輸送の際に起きるロスも考慮される。従って、より正確なイオン強度を測定できる。図18(A)や図18(B)の例のように、時定数τは、pre−ECDを1回だけ実行すれば、すなわち1点の反応時間のデータを取得すれば算出可能である。しかし、精度をより高めるには、反応時間を変えながら複数点のデータを取得すると良い。
図18(C)は、独立したpre−ECDを複数回実行して各回の時定数τを算出し、平均値化した値から最適な反応時間を算出するシーケンスを示している。これにより、1回のpre−ECD測定よりも信頼性の高い反応時間を算出することができる。また、各pre−ECDの前に必ず(すなわち毎回)、MS1スペクトル(又はプリカーサイオンの単離のみ)を取得することで、信頼性の高いプリカーサイオン残存率を算出することも可能になる。
図18(D)は、予め決められた複数の反応時間によってpre−ECDを複数回実行し、所望のプリカーサイオン残存率に最も近い条件で実ECDスペクトルを取得するシーケンスが示してある。
図18(E)は、1回目の液体クロマトグラフィー分析において、各イオンのpre−ECDスペクトルを取得し、各イオンに最適な反応時間を算出してデータベース化する。2回目の液体クロマトグラフィー分析ではpre−ECDを実施せず、ECDスペクトルのみを取得するシーケンス例を示している。
図19に、サブスタンスPを用いて様々なイオン強度でpre−ECDを実施し、時定数τを求めた結果のグラフを示す。図19の場合、プリカーサイオン量と複数の時定数τとの間には比例関係が認められる(R2 =0.9949)。すなわち、イオン強度の異なるイオンを用い、それぞれpre−ECDスペクトルを取得して時定数τを算出すれば、関数(1次方程式)を求めることができる。これにより、液体クロマトグラフィーのように、プリカーサイオンのイオン量が時間と共に変化する場合でも、イオン量が予測できれば最適な反応時間を算出することができる。
図18(F)のシーケンスでは、1回目のクロマトグラフィー分析において、各イオンに対して異なるイオン強度で複数回のpre−ECDが実施され、イオン量と時定数τとの関数(1次方程式)の算出に続いて各イオンにおけるイオン強度と最適反応時間との関係をデータベース化する。2回目のクロマトグラフィー分析では、各イオンのプロファイルはほぼ同じになると予測できるので、各イオン強度に対応する最適な反応時間でECDを実施する。
図20に、処理イメージを示す。なお、縦軸はイオン強度であり、横軸は保持時間である。また、各ピークは、多くの場合、左右対称である。このため、1回目のクロマトグラフィー分析でも、イオンクロマトグラフの前半で数点イオン強度が測定できれば、ガウシアン関数等によってそれ以降のイオン強度を予測することは可能である(図21)。なお、図21の縦軸はイオン強度であり、横軸は保持時間である。
図18(G)に示すシーケンス例は、まずpre−ECDを取得してあるイオン量での最適時間を算出すると、ECDスペクトルを取得する前にMS1スペクトルを取得する例である。ここで、LIT4での単位蓄積時間当たりのプリカーサイオン量を算出してLIT4における蓄積時間を調節すれば、ECD反応するプリカーサイオンを一定にすることができる。これにより、液体クロマトグラフィーのように、プリカーサイオンのイオン量が時間と共に変化する場合でも、各イオンに最適な反応時間でECD分析することができる。もっとも、LIT4の代わりに、ECDセル6で蓄積時間を調節しても良い。
(実施の形態の効果)
前述した実施の形態に係る質量分析方法の適用により、各プリカーサイオンに対して最適なイオン解離強度データを蓄積することができる。これらのデータは、質量、価数、電子エネルギー毎にデータとして格納することができる。これは初めて分析するイオンのイオン解離強度の指標となる。これにより、最適イオン解離強度を導き出すまでの時間を短縮することができる。
また、これらのデータを、横軸に日付、縦軸に反応時間とする図表にプロットした場合、電子源フィラメントの消耗によって時間の経過とともに反応時間の増加が見込まれる。反応時間が延びるとスループットが落ちるので、反応時間にある閾値を設定し、閾値を超えた時点で電子源フィラメントの交換時期を、警報音その他の報知技術を使用してオペレータに促しても良い。
(B)実施の形態2:イオン解離手法としてECD法を用いる場合(その2)
図13に、本発明の実施の形態2に基づくECD反応制御フローを示す。なお、図13には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。
前述した実施の形態1では、測定中に電子エネルギーを変化させない場合を想定する。しかし、図6で示したように、物質の性質によっては、高エネルギー電子を用いなければ、解離できない場合がある。例えばニューロペプチドY(5価)は、所望のプリカーサイオン残存率0.3になるように反応時間を設定してCECDを実施しても、60%のシーケンスカバー率しか得られない。同様に、2価のリン酸化ペプチドVNQIGTLSESIK(Sがリン酸化修飾部位)をプリカーサイオン残存率0.3になるように反応時間を設定し、CECDを実施した場合、55%のシーケンスカバー率しか得られなかった。
どちらのサンプルでも、チャージリデューススピーシーズ比は約0.2であった。しかし、プリカーサイオン残存率0.3になるように反応時間を設定し、HECD(10eV)を実施すると、ニューロペプチドYの5価イオンでは、チャージリデューススピーシーズ比は約0.1に減少し、シーケンスカバー率は86%に上昇した。一方、リン酸化ペプチドでは、チャージリデューススピーシーズ比は約0.01に減少し、シーケンスカバー率は100%になった。
このようにCECDでは、チャージリデューススピーシーズが多く残存し、十分に解離できない場合があるため、チャージリデューススピーシーズ比を指標に電子エネルギーを上昇させ、データを取得しても良い。
ここで、プリカーサイオンの残存率が所望の範囲内であった場合(315)、全体処理部10は、所望のチャージリデューススピーシーズ比(ECDスペクトルにおいて、全イオンに占めるチャージリデューススピーシーズの割合)であるか否かを判定する。ここで、チャージリデューススピーシーズのm/z値は、プリカーサイオンの分子量をM、プロトン化[H]した価数をzとすると、[M+z](z−1)+、[M+z](z−2)+と続く。従って、この位置に存在するイオン量の和を全イオン量で割れば、チャージリデューススピーシーズ比を算出できる。
チャージリデューススピーシーズ比がある特定値以下である場合(316)、全体処理部10は、非フラグメント化スペクトルの取得に戻る。チャージリデューススピーシーズ比がある特定値以下でない場合(317)、全体処理部10は、ある特定値イオントラップ電圧を上昇させ、HECDでの分析を実行する(318)。また、HECDの代わりにAI−ECDを用いても構わない。その他の制御フローは実施の形態1と同様である。
(C)実施の形態3:イオン解離手法としてECD法を用いる場合(その3)
図14に、本発明の実施の形態3に基づくECD反応制御フローを示す。なお、図14には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。
前述した実施の形態2では、チャージリデューススピーシーズ比を指標に、電子エネルギーを上昇させる場合について説明した。しかし、フラグメントイオン比とフラグメント種類のどちらか一方、又は両方を指標として、電子エネルギーを上昇させても良い。
フラグメントイオン比やフラグメント種類がある特定値以上である場合(319)、全体処理部10は、非フラグメント化スペクトルの取得に戻る。フラグメントイオン比やフラグメント種類がある特定値以上でない場合(320)、全体処理部10は、ある特定値におけるイオントラップ電圧を上昇させ、HECD法による分析を実行する(318)。また、HECD法の代わりにAI−ECD法を用いても構わない。翻訳後修飾が想定されない場合、フラグメントの種類はペプチド結合の数に比例する。例えば10アミノ酸からなるペプチドでは、ペプチド結合は9箇所存在する。従って、全てのペプチド結合が解離した場合、cフラグメントが9つとzフラグメントが9つの計18個のフラグメントイオンが想定される。平均アミノ酸分子量は110なので、プリカーサイオンの分子量からおよそのアミノ酸数を算出させることによって、所望のフラグメント種類をプリカーサイオンの分子量ごとに設定するのが望ましい。HECD法やAI−ECD法の場合は、wやuイオンが検出される場合があるので、その可能性も考慮に入れるのが望ましい。その他の制御フローは実施の形態1と同様である。
(D)実施の形態4:イオン解離手法としてECD法を用いた場合(その4)
図15に、本発明の実施の形態4に基づくECD反応制御フローを示す。図15には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。
前述した実施の形態3の場合には、フラグメントイオン比とフラグメント種類のどちらか一方、又は両方を指標として電子エネルギーを上昇させる場合について説明した。しかし、リアルタイムでアミノ酸配列解析(デノボ解析)を実施し、ある特定値以上のアミノ酸配列の解析ができているかを指標に用いて、電子エネルギーを上昇させても良い。
ある特定値以上のアミノ酸配列解析が出来ている場合(321)、全体処理部10は、非フラグメント化スペクトルの取得に戻る。一方、ある特定値以上のアミノ酸配列解析が出来ていない場合(322)、全体処理部10は、ある特定値にイオントラップ電圧を上昇させ、HECD法による分析を実行する(318)。また、HECD法の代わりにAI−ECD法を用いても構わない。その他の制御フローは、実施の形態1と同様である。
(E)実施の形態5:イオン解離手法としてECD法を用いた場合(その5)
前述した実施形態1〜4では、各イオンをECDで解離し、その解離状況から反応時間、電子量制御電圧、電子エネルギーを制御する実施形態を示した。本実施形態では、予めこれらの分析条件を決定し、これらの分析条件に基づいて質量分析を実行する。
(質量分析システムの構成)
図27に、イオンの解離にECD法を用いる質量分析システムの構成例を示す。分析対象となる試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー(LC))の前処理により分離される。なお、試料分離装置2には、ガスクロマトグラム(GC)を用いることもできる。
分離された試料は、イオン源3においてイオン化され、質量分析装置に導入される。非フラグメント化スペクトル取得の場合、導入されたイオンは、リニアイオントラップ(LIT)4に蓄積され、全イオン(又はある特定のイオン)が単離され、排出される。排出されたイオンは、TOF検出器8で検出される。TOF検出器8の前段には高分解能であるTOF7が存在する。
フラグメント化スペクトル取得の場合、質量分析システムに導入されたイオンはLIT4に蓄積され、ある特定のイオンが単離された状態で排出される。排出されたイオンはQディフレクター5を経由し、ECDセル6に入る。ここで、電子源104から照射された電子によりある特定のイオン解離強度でECD反応が行われ、イオンは排出される。排出されたイオンは再びQディフレクター5を経由し、TOF7でイオンの質量電荷比m/zに応じて分離される。イオンガイド2001では照射された電子電流値を測定する。また電子量制御電圧103を制御することでECDセル6に入射する電子量を調節する。
イオン源3は、エレクトロスプレイイオン源、大気圧化学イオン化によるイオン源、マトリックス支援レーザ脱離イオン源、電気衝撃イオン源、化学イオン化によるイオン源、フィールドイオン化によるイオン源から選択される。
LIT4は多くのイオンを蓄積でき、高感度検出が可能である。しかし、LIT4に代えて、三次元四重極イオントラップ、四重極質量フィルター、コリジョンセル、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分離部を用いても良い。
ECDセル6は、LIT、三次元四重極イオントラップ、コリジョンセル、四重極質量フィルター、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析部の中から選択される。また、本装置構成では、イオン解離方法としてECD法を用いているが、EDD法を用いても良い。この場合、イオン化は負イオンモードで実施する。
TOF7は高分解能で質量精度も高いので好ましいが、四重極質量フィルター、イオントラップ、磁場型質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、オービトラップ型分析器でも構わない。電子を供給するための電子源は、フィラメントでもディスペンサーカソードでも構わない。
TOF検出器8で検出された各イオンは、m/z値と共に全体処理部10に与えられる。全体処理部10は、後述するようなデータ整理及び又はデータ処理を実行する。なお、全体処理部10は、ハードウェア的な回路構造を有する場合だけでなく、コンピュータシステム上で動作するプログラムの処理機能を通じても実現することができる。全体処理部10の処理機能の一つであるイオン解離パラメータ決定部12は、データベース2102、データベース更新部2101、プリカーサイオン強度測定部15、電子電流測定部2100、反応時間算出部1000で構成される。この全体処理部10が、特許請求の範囲における「計算処理部」に対応する。
プリカーサイオン強度測定部15は、非フラグメント化スペクトル内の各プリカーサイオン強度、あるいは単離後のプリカーサイオン強度を測定する。
電子電流測定部2100では、電子源104から照射された電子電流値を測定する。
反応時間算出部1000は、電子電流値とプリカーサイオン強度の情報に基づいて最適反応時間を算出する。
データベース更新部2101は、データベース2102に記載の反応時間を、反応時間算出部1000で算出された最適反応時間に書き換える(更新する)。分析対象のイオンがデータベース2102に記載されている場合、質量分析の開始に先立って、当該イオンに対応付けられたECD反応条件が、データベース2102から制御部9を介してECDセル6に与えられる。すなわち、ECDセル6が予め定めた分析条件に制御される。
質量分析スペクトル、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内のプリカーサイオン強度、ECD反応時間、電子エネルギー、ECDセル6を制御するパラメータ、LIT4の制御パラメータ、データベース等はデータ表示部18に表示される。全体処理部10に対する所望のパラメータは、パラメータ入力部19を通じて入力される。
(処理動作の概要)
ここで、分析対象となるイオンが分析前に決定していない場合における操作方法を、操作画面の表示例である図28を用いて説明する。この場合、オペレータは、不図示の入力装置を通じてデータ依存解析モードを選択する。次に、オペレータは、分析対象とする価数(z)を選択し(図28では2価から4価までを選択)、価数ごとにECD反応時間、電子エネルギー、電子量制御電圧を設定する。設定されたパラメータがデータベース2102に保存された後、質量分析装置による分析が開始される。分析中に選択された価数のイオンが出現した場合、設定されたECD分析条件に従ってECD反応が実行される。
次に、分析対象とするイオンが分析前に決定している場合における操作方法を、操作画面の表示例である図29を用いて説明する。この場合、オペレータは、不図示の入力装置を通じてデータベース(DB)モードを選択する。次に、オペレータは、使用するDBを選択(図29ではmouse_plasma_Trp_f3を選択)する。このとき、選択されたDBのパラメータの内容が、データ表示部18に表示される。DBには、各イオンのクロマトグラフィーでの保持時間、m/z値、価数(z)、イオン強度、ECD反応時間、電子エネルギー、電子量制御電圧、電子電流基準値が記載されている。このうち、ECD反応時間、電子エネルギー、電子量制御電圧は、ECD反応条件を規定する項目である。すなわち、DBは、あるイオンが予め記載したイオン強度である場合に適用されるECD反応条件を記載する。電子電流基準値については後述する。オペレータは、データ表示部18に表示されたECD反応条件に所望の値を入力する。変更後の値が保存されると、質量分析装置によるイオンの分析処理が実行される。
ところで、イオン強度が図19で示したように変化する場合、変化に対応させて反応時間や電子量制御電圧を変化させる必要がある。図29に示すデータベースを用いる場合の処理フローを図30に示す。
まず、使用するデータベースをデータ表示部18の画面上で選択し、値の変更を行った後にデータベース2102に保存する(3000)。この後、質量分析装置によるイオンの分析が開始される(3001)。分析開始と同時に、全イオンスペクトルが取得される(304)。取得された情報に基づいて、全体処理部10は、保持時間、m/z、価数、イオン強度を含むピークリストを作成する(3003)。
次に、全体処理部10は、インクルージョンDB検索を実行する(3005)。全体処理部10は、作成されたピークリストとデータベース2102を照合し、保持時間、m/z、価数のすべてが一致するイオンが存在するか否かを検索する。一致するイオンが存在しない場合(3007)、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。一致するイオンが存在した場合(3006)、全体処理部10は、ピークリスト内のイオン強度とデータベース2102に記載されているイオン強度を比較し、ある一定値以上ずれているか否かを比較する。ここでの一定値は、オペレータが、分析実行前に決定する。
ここで、値が一定値以上ずれていなかった場合(3008)、全体処理部10は、データベース2102に記載されているECD反応条件を制御部9に与える。制御部9は、当該ECD反応条件に基づいてECDセルを制御する。全体処理部10は、TOF検出器8を通じてECDスペクトルを取得する(311)。この後、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。ECDスペクトルの取得は複数回でも構わない。
一方、値が一定値以上ずれていた場合(3009)、全体処理部10は、図19を一例とするグラフを用いてECD反応時間を補正する、又は、図12を一例とするグラフを用いて電子量制御電圧を補正する(3002)。全体処理部10は、補正後のECD反応条件を制御部9に与える。制御部9は、当該ECD反応条件に基づいてECDセルを制御する。全体処理部10は、TOF検出器8を通じてECDスペクトルを取得する(311)。この後、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。
図29の場合には、あるイオンについて1つのイオン強度が登録され、当該組み合わせについて1つのECD反応条件が登録されたデータベース2102を利用する場合について説明した。しかし、あるイオンにおいて複数のイオン強度が登録され、各イオン強度についてそれぞれ固有のECD反応条件が登録されたデータベース2102を利用することもできる。この場合、イオン強度の変化に応じて、反応時間や電子量制御電圧の補正を行う必要はない。
この種のデータベース2102の一例を図31に示す。図31の場合、m/z値が1110.3のイオンについて、3種類のイオン強度とそれぞれに対応する3種類のECD反応条件(ここでは、ECD反応時間)とが登録されている。
この例の場合、イオン強度が1000以下の場合に適用するECD反応時間として3msが登録されている。また、イオン強度が1000〜3000の場合に適用するECD反応時間として5msが登録されている。また、イオン強度が3000以上の場合に適用するECD反応時間として8msが登録されている。
なお、図31の場合には、電子量制御電圧を固定値とし、イオン強度に応じて異なる値のECD反応時間を設定しているが、ECD反応時間を固定値とし、イオン強度に応じて異なる値の電子量制御電圧を設定しても良い。
この図31に示すデータ構造のデータベース2102を使用する場合の処理フローを図32に示す。
まず、使用するデータベースをデータ表示部18の画面上で選択し、値の変更を行った後にデータベース2102に保存する(3000)。この後、質量分析装置によるイオンの分析が開始される(3001)。分析開始と同時に、全イオンスペクトルが取得される(304)。取得された情報に基づいて、全体処理部10は、保持時間、m/z、価数、イオン強度を含むピークリストを作成する(3003)。
次に、全体処理部10は、インクルージョンDB検索を実行する(3005)。全体処理部10は、作成されたピークリストとデータベース2102を照合し、保持時間、m/z、価数のすべてが一致するイオンが存在するか否かを検索する。一致するイオンが存在しない場合(3007)、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。一致するイオンが存在した場合(3006)、全体処理部10は、ピークリスト内のイオン強度がデータベース2102も予め記載されたどのイオン強度範囲に当たるかを判定し、当てはまるECD反応時間を制御部9に与える。制御部9は、当該ECD反応条件に基づいてECDセルを制御する。全体処理部10は、TOF検出器8を通じてECDスペクトルを取得する(3006)。この後、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。
(電子電流基準値の説明とフロー)
図11で説明したように、ECDでは、電子源104から電子が照射される。この電子量の供給が常に一定でなければ、再現性の高いECD反応を実行することができない。例えば分析毎に照射される電子量が変動する場合、以前の分析に使用したデータベース2102の条件を適用しても反応時間の過多や不足が発生し、以前と同様のデータ取得は困難となる。従って、照射される電子量のモニターは、データベースを利用する実施例において必須の条件である。
図33に、電子量(電子電流値)をモニターする電子電流測定部2100(図27)の装置構成例を示す。この形態の場合、電子電流測定部2100として、イオンガイドの機能を有するLIT2001を使用する。図33に示すように、LIT2001は、電子源104から見て端電極100の外側に設置する。LIT4を通過した一部の電子は、LIT2001内に形成される高周波電場の影響により中心軸から軌道を変え、いずれかの電極に衝突する。電子の衝突により、LIT2001を構成する電極の電圧が変動する。この電極電圧の変動を測定することにより、電子源104から照射された電子電流量を見積もることができる(2002)。もっとも、電子電流の測定は、他の方法を用いても構わない。
分析中に電子電流を絶えずモニターすることにより、一定量の電子が供給されているか否かを判定することが可能である。電子源104から照射される電子量を一定に保つ方法には、電子源104に印加する電圧を調節する方法がある。しかし、電子源104に印加する電圧を変化させると、電子電流が安定するまでに10分以上かかることがある。一方、クロマトグラフィーでは、数10秒の間に溶出されるイオンが切り替わる。従って、試料分離装置2にクロマトグラフィーを用いる場合には、電子源104の印加電圧を変化させる方法を適用しても再現性を高めることはできない。
そこで、本形態例の場合には、再現性の高いECD反応を実現するために、ECD反応時の電子電流値に応じてECD反応時間や電子量制御電極103の電圧値を変化させる。
図34に、モニターされた電子電流値に基づいてECD反応時間を補正し、再現性の高いECD反応を実現させるための処理フローを示す。
まず、使用するデータベースをデータ表示部18の画面上で選択し、値の変更を行った後にデータベース2102に保存する(3000)。この後、質量分析装置によるイオンの分析が開始される(3001)。
分析の開始と同時に、LIT2001は、電子源104から照射される電子電流値を測定する(3010)。
全体処理部10は、測定値がデータベースに記載の電子電流基準値(例えば0.6μA)とある一定値(例えば±0.02μA)以上ずれているか否かを判定する。ある一定値以上ずれていない場合(3011)、全体処理部10は、電子電流値の測定3010に戻る。ある一定値以上ずれていた場合(3011)、全体処理部10は、ECD反応時間を自動的に補正する(3013)。例えば電子電流基準値よりも0.05μA高い場合、全体処理部10は、データベース2102に記載のECD反応時間から事前に定めた値(例えば1ms)を差し引いた値に補正する。反対に、電子電流基準値よりも0.05μA低い高い場合、全体処理部10は、データベース2102に記載のECD反応時間に対して事前に定めた値(例えば1ms)を加えた値に補正する。
本処理フローでは、測定された電子電流値に基づいてECD反応時間を補正しているが、ECD反応時間の代わりに電子量制御電圧103を補正しても良い。
次に、図29に示すデータベース(各プリカーサイオンに対し、イオン強度を1つ設定する場合)を用いる場合において、測定された電子電流値とプリカーサイオン強度に基づいてECD反応時間を補正する際に実行される処理フローを図35に示す。
この場合も、オペレータは、使用するデータベースをデータ表示部18の画面上で選択し、値の変更を行った後にデータベース2102に保存する(3000)。この後、質量分析装置によるイオンの分析が開始される(3001)。
分析の開始と同時に、LIT2001は、電子源104から照射される電子電流値を測定する(3010)。
全体処理部10は、測定値がデータベースに記載の電子電流基準値(例えば0.6μA)とある一定値(例えば±0.02μA)以上ずれているか否かを判定する。ある一定値以上ずれていない場合(3011)、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理に進む(304)。一方、ある一定値以上ずれていた場合(3012)、全体処理部10は、データベース2102に記載されているECD反応時間又は電子量制御電圧を自動的に補正し(3013)、この後、全イオンスペクトルの取得処理に進む(304)。
全てのイオンスペクトルが取得されると、全体処理部10は、保持時間、m/z、価数、イオン強度を含むピークリストを作成する(3003)。
次に、全体処理部10は、インクルージョンDB検索を実行する(3005)。全体処理部10は、作成されたピークリストとデータベース2102を照合し、保持時間、m/z、価数のすべてが一致するイオンが存在するか否かを検索する。一致するイオンが存在しない場合(3007)、全体処理部10は、電子電流値の測定処理(3010)に戻る。一致するイオンが存在した場合(3006)、全体処理部10は、ピークリスト内のイオン強度とデータベース2102に記載されているイオン強度を比較し、ある一定値以上ずれているか否かを比較する。ここでの一定値は、オペレータが、分析実行前に決定する。
ここで、値が一定値以上ずれていなかった場合(3008)、全体処理部10は、ECDスペクトルを取得する(311)。その後、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。ECDスペクトルの取得は複数回でも構わない。
一方、値が一定値以上ずれていた場合(3009)、全体処理部10は、図19を一例とするグラフを用いてECD反応時間を補正する、又は、図12を一例とするグラフを用いて電子量制御電圧を補正する(3002)。全体処理部10は、補正後のECD反応条件を制御部9に与える。制御部9は、当該ECD反応条件に基づいてECDセルを制御する。全体処理部10は、TOF検出器8を通じてECDスペクトルを取得する(311)。この後、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理(304)に戻る。
次に、図31に示すデータベース(各プリカーサイオンに対し、イオン強度ごとに複数個のECD反応時間を設定する場合)を用いる場合において、測定された電子電流値とプリカーサイオン強度に基づいてECD反応時間を補正する際に実行される処理フローを図36に示す。
この場合も、オペレータは、使用するデータベースをデータ表示部18の画面上で選択し、値の変更を行った後にデータベース2102に保存する(3000)。この後、質量分析装置によるイオンの分析が開始される(3001)。
分析の開始と同時に、LIT2001は、電子源104から照射される電子電流値を測定する(3010)。
全体処理部10は、測定値がデータベースに記載の電子電流基準値(例えば0.6μA)とある一定値(例えば±0.02μA)以上ずれているか否かを判定する。ある一定値以上ずれていない場合(3011)、全体処理部10は、全イオンスペクトルの取得処理に進む(304)。一方、ある一定値以上ずれていた場合(3012)、全体処理部10は、データベース2102に記載されているECD反応時間又は電子量制御電圧を自動的に補正し(3013)、この後、全イオンスペクトルの取得処理に進む(304)。
全てのイオンスペクトルが取得されると、全体処理部10は、保持時間、m/z、価数、イオン強度を含むピークリストを作成する(3003)。
次に、全体処理部10は、インクルージョンDB検索を実行する(3005)。全体処理部10は、作成されたピークリストとデータベース2102を照合し、保持時間、m/z、価数のすべてが一致するイオンが存在するか否かを検索する。一致するイオンが存在しない場合(3007)、全体処理部10は、電子電流値の測定処理(3010)に戻る。一致するイオンが存在した場合(3006)、全体処理部10は、ピークリスト内のイオン強度がデータベース2102に記載されているどのイオン強度範囲であるかを判定し、当てはまるイオン強度範囲について設定されたECD反応時間でECDスペクトルを取得し(311)、電子電流値の測定3010に戻る。ECDスペクトルの取得は複数回でも構わない。
(F)実施の形態6:イオン解離手法としてETD法を用いた場合
(質量分析システムの構成)
図16に、イオンの解離にETD法を用いる質量分析システムを示す。なお、図16には、図7との対応部分に同一符号を付して示す。この質量分析システムの場合も、分析対象としての試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー(LC))の前処理により分離される。なお、試料分離装置2には、ガスクロマトグラム(GC)を用いることもできる。
分離された試料は、イオン源3においてイオン化された後、質量分析装置に導入される。
非フラグメント化スペクトルを取得する場合、導入された正イオンは、LITの中段601又はLITの前段600に蓄積され、全イオン(又はある特定のイオン)が単離された状態で排出される。排出された正イオンは、LIT検出器606でイオンの質量電荷比m/zに応じて分離される。なお、フラグメント化スペクトルを取得する場合、導入された正イオンは、LITの中段601又はLITの前段600に蓄積され、単離された状態でLITの前段600に保持される。
一方、ETD反応に利用される負イオンは、イオン源603による負イオン試薬604のイオン化により生成され、質量分析装置に導入される。導入された負イオンは、LITの中段601(又はLITの後段602)に、ある一定時間蓄積され、単離される。
LITの前段600に蓄積されたプリカーサイオンとLITの中段601に蓄積された負イオンは、ある一定時間、LITの全体においてETD反応が行われ、余剰の負イオンを排除した後、LIT検出器606でイオンの質量電荷比m/zに応じて分離される。イオン源は、エレクトロスプレイイオン源、大気圧化学イオン化によるイオン源、マトリックス支援レーザ脱離イオン源、電気衝撃イオン源、化学イオン化によるイオン源、フィールドイオン化によるイオン源から選択される。
LITには多くのイオンを蓄積できる。このため、高感度検出が可能である。もっとも、三次元四重極イオントラップ、四重極質量フィルター、コリジョンセル、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分離部でも構わない。また、感度向上が期待できるため、複数のLIT検出器606を設置しても良い。また、プリカーサイオンや負イオンの単離は、LITの前段600の前段やLITの後段602の後段にQマスフィルターを設置して行っても良い。また、実施の形態の場合には、LIT検出器606で検出しているが、TOF、三次元四重極イオントラップ、四重極質量フィルター、磁場型質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、オービトラップ型でも構わない。
LIT検出器606で検出された各イオンは、m/z値と共に全体処理部10でデータ整理及び又は処理される。全体処理部10のイオン解離パラメータ決定部12には、イオン解離強度決定部13、プリカーサイオン強度測定部15、プリカーサイオン残存率算出部16、反応時間算出部1000で構成される。
プリカーサイオン強度測定部15は、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内のプリカーサイオン強度を測定する。プリカーサイオン残存率算出部16は、プリカーサイオン残存率を算出する。反応時間算出部1000は、プリカーサイオン残存率とユーザー所望の設定値とに基づいて最適反応時間を算出する。反応時間の算出方法は実施の形態1に記載した方法と同様である。イオン解離強度決定部13で算出された決定強度を与える信号は、制御部9を介してLITの中段601を制御する。
質量分析スペクトル、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内の各プリカーサイオン強度、プリカーサイオン残存率等は、データ表示部18で表示される。また、パラメータ入力部19から全体処理部10に、プリカーサイオン強度の残存率が入力される。
(処理動作の概要)
図17に、本発明の実施の形態6に基づくETD反応制御フローを示す。複数物質の混合物である試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー)に導入される。クロマトグラフィーには、物質の性質に応じて分離させるための分離カラムが装着されている。分離カラムを通過した試料は、成分ごとに異なる時間に溶出する。溶出した試料の各成分は、イオン源にてイオン化される(302)。イオンは、質量分析装置内のLITの中段601に導入されて蓄積され、その後、排出される(702)。排出されたイオンは、LIT検出器606にて検出され、横軸をm/z、縦軸をイオン強度とする非フラグメント化スペクトルを得る(304)。
次に、非フラグメント化スペクトルからプリカーサイオンを選択する(305)。プリカーサイオンは、イオン強度順に選択されるのが一般的である。しかしながら、イオン解離手法の性質により、価数や分子量を考慮に入れて選択しても良い。選択したプリカーサイオンの価数とm/z値を特定し、価数とm/z値から分子量を算出する(306)。この算出動作と並行して、プリカーサイオンのイオン強度も測定する(308)。
初めて分析されるプリカーサイオンに対しては、価数と分子量から各プリカーサイオンに適すると推定される負イオン量、ETD反応時間を設定することが望ましい(703)。次に、LITの前段600でプリカーサイオンを単離する(704)。一方、ETD反応に必要な負イオンについて、負イオン試薬604はイオン源にてイオン化され(603)、LITの中段601で所望の時間蓄積される(706)。LITの前段600内に単離しているプリカーサイオンは、LITにて、LITの中段601内に蓄積している負イオンと所望の時間ETD反応を行い(705)、ETDスペクトルを取得する(708)。
次に、ETDスペクトル中に存在するプリカーサイオン強度を測定する(308)。非フラグメント化スペクトル中のプリカーサイオン強度とETDスペクトル中のプリカーサイオン強度を比較し、プリカーサイオンの残存率を求める(312)。この値が所望の範囲外の場合は、最適なETD反応時間を算出して設定し(313)、再度、ETDスペクトルを取得する。このとき、負イオン量を調節しても良い。プリカーサイオンの残存率が所望の範囲内であれば、イオン解離強度は最適だったといえる。この場合(315)、非フラグメント化スペクトルの取得に戻る。
この実施の形態6の場合も、前述した実施の形態2、3及び4の場合と同様、チャージリデューススピーシーズ比、フラグメントイオン比、フラグメント種類、リアルタイムアミノ酸配列解析を指標にETcaDを実施しても良い。この場合、ETD反応を実施した後、チャージリデューススピーシーズのみを励起することによってCIDを実施する。また、CIDの代わりに、IRMPDを用いても良い。
また、この実施の形態6の場合も、使用するシーケンス例(図18)やイオン量が変化するプリカーサイオンの実施例(図20、21)は、実施の形態1と同様である。
この実施の形態6の場合にも、プリカーサイオン残存率の算出、反応時間算出、チャージリデューススピーシーズ比、フラグメントイオン比及びフラグメント種類の算出、デノボ解析、各種パラメータの設定は、いずれも実時間で実施され、分析を妨げない必要がある。
(実施の形態の効果)
前述した実施の形態に係る質量分析方法の適用により、各プリカーサイオンに対して最適なイオン解離強度データを蓄積することができる。これらのデータは、質量、価数毎に格納することができる。これらのデータを利用することにより、初めて分析するイオンでは、最適なイオン解離強度が導き出されるまでの時間を短縮することができる。
また、これらのデータを横軸に日付、縦軸に反応時間とする図表にプロットした場合、時間の経過とともに反応時間の変化が観察されることがある。この場合、負イオン量が安定して供給されていない可能性がある。従って、予め設定した反応時間に対する範囲を定めておき、当該範囲を越えた場合には、アラーム等を発して負イオン試薬604やイオン源603を観察するシステムを採用しても良い。
(G)実施の形態7:イオン解離手法としてCID法を用いる場合
(質量分析システムの構成)
図22に、イオンの解離にCID法を用いる質量分析システムを示す。なお、図22には、図7との対応部分に同一符号を付して示す。
分析対象としての試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー(LC))の前処理により分離される。なお、試料分離装置2には、ガスクロマトグラム(GC)を用いることもできる。
分離された試料は、イオン源3においてイオン化され、質量分析装置に導入される。非フラグメント化スペクトル取得の場合、導入されたイオンはリニアイオントラップ(LIT)4で蓄積され、全イオン(又は、ある特定のイオン)を単離した状態で排出する。排出されたイオンは、TOF検出器8で検出される。TOF検出器8の前段には高分解能であるTOF7が存在する。
フラグメント化スペクトル取得の場合、導入されたイオンはLIT4に蓄積され、ある特定のイオンの単離とCID法の実施後、排出される。排出されたイオンは、TOF検出器8でイオンの質量電荷比m/zに応じて分離される。イオン源は、エレクトロスプレイイオン源、大気圧化学イオン化によるイオン源、マトリックス支援レーザ脱離イオン源、電気衝撃イオン源、化学イオン化によるイオン源、フィールドイオン化によるイオン源から選択される。LIT4は多くのイオンを蓄積できる。このため、高感度検出が可能である。しかし、LIT4に代えて、三次元四重極イオントラップ、四重極質量フィルター、コリジョンセル、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分離部を用いても構わない。
また、本装置構成では、イオン解離方法としてCID法を用いているが、IRMPD法を用いても良い。TOF7は、高分解能で質量精度も高いので好ましいが、三次元四重極イオントラップ、LIT、四重極質量フィルター、磁場型質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、オービトラップ型質量分析器を用いても構わない。
TOF検出器8で検出された各イオンは、m/z値と共に、全体処理部10でデータ整理及び又は処理される。なお、全体処理部10は、ハードウェア的な回路構造を有する場合だけでなく、コンピュータシステム上で動作するプログラムの処理機能を通じて実現できる。全体処理部10のイオン解離パラメータ決定部12には、イオン解離強度決定部13、プリカーサイオン強度測定部15、プリカーサイオン残存率算出部16、イオン解離強度算出定部1001で構成される。
プリカーサイオン強度測定部15は、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内の各プリカーサイオン強度を測定する。プリカーサイオン残存率算出部16は、測定されたプリカーサイオン強度に基づいてプリカーサイオン残存率を算出する。CID法の場合、プリカーサイオン残存率が0(ゼロ)になる最も低いイオン解離強度の時に、フラグメントイオン量がピーク値を採る。詳細については後述する。イオン解離強度算出定部1001は、プリカーサイオン残存率が0(ゼロ)になる時のイオン解離強度を算出する。イオン解離強度決定部13は、算出されたイオン解離強度に応じた制御信号を、制御部9を介してLIT4に与えられる。すなわち、LIT4が決定強度に制御される。質量分析スペクトル、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトル内の各プリカーサイオン強度、プリカーサイオン残存率、イオン解離強度等はデータ表示部18に表示される。
(処理動作の概要)
図23に、本発明の実施の形態7に基づくCID反応制御フローを示す。複数物質の混合物である試料1は、試料分離装置2(図では、液体クロマトグラフィー)に導入される。クロマトグラフィーには物質の性質によって分離させるための分離カラムが装着されており、分離カラムを通過した試料は、成分ごとに異なる時間に溶出する。溶出した試料の各成分は、イオン源3にてイオン化される(302)。イオンは質量分析装置内のLIT4に導入されて蓄積され、排出される(303)。排出されたイオンはTOF検出器8で検出され、横軸をm/z、縦軸をイオン強度とする非フラグメント化スペクトルを得る(304)。
次に、非フラグメント化スペクトルからプリカーサイオンを選択する(305)。プリカーサイオンはイオン強度順に選択されるのが一般的である。しかし、前述したように、価数や分子量を考慮に入れて選択しても良い。このとき選択したプリカーサイオンのイオン強度を測定する(308)。
次に、LIT4でプリカーサイオンを単離し(309)、単離したプリカーサイオンに対して様々なイオン解離強度でCIDを実施し(800)、各解離強度についてのCIDスペクトルを取得する(311)。次に、CIDスペクトル中に存在するプリカーサイオン強度を測定する(308)。
次に、非フラグメント化スペクトル中のプリカーサイオン強度とCIDスペクトル中のプリカーサイオン強度に基づいてプリカーサイオンの残存率を求める(801)。更に、横軸にイオン解離強度、縦軸にプリカーサイオン残存率とする図表の上に、算出された残存率をプロットし、プリカーサイオン残存率が0となる最も低いイオン解離強度を推定(802)し、そのイオン解離強度でCIDを実施する(803)。
ここで、イオン強度1000、4000、12000のサブスタンスPを用いて様々なイオン解離強度(CID gain)でCIDを実施した。図24に、プリカーサイオンとフラグメントイオンのイオン解離強度依存性を示す。図24に示すように、ほとんどイオン強度に依存することなく、イオン解離強度の上昇に伴ってプリカーサイオンは減少する。そして、プリカーサイオンが最初に0になった時点でフラグメントイオン量は最大となる。それ以上、イオン解離強度を上昇させると、フラグメントイオン量は減少する。このように様々なイオン解離強度条件でプリカーサイオン残存率を測定すれば、プリカーサイオンが0になるイオン解離強度を推定することができる(図25)。なお、図25の縦軸はプリカーサイオン残存率、横軸はイオン解離強度である。
この実施の形態の場合も、プリカーサイオン残存率の算出、最適イオン解離強度の推定、各種パラメータ設定は、実時間で実施され、分析を妨げない必要がある。
(CIDを複数回実行する場合のシーケンス例)
図26(A)〜(C)に、本発明の実施の形態7に係るシーケンス例を示す。図26(A)に示すシーケンス例の場合、非フラグメント化スペクトルの取得後(MS1取得後)、プリカーサイオンを選択し、様々なイオン解離強度により複数回のpre−CIDを実施する。次に、独立にプリカーサイオン残存率を算出し、プリカーサイオン残存率が0になると推定されるイオン解離強度を推定し、その条件でCIDを実施する。
例えばCIDを実行するイオン解離強度は、縦軸をプリカーサイオン残存率、横軸をイオン解離強度とした場合、隣り合う2点を直線で結び、その傾きが負であり、しかも最も0に近い直線を選択し、その直線においてプリカーサイオン残存率が0となるイオン解離強度を選択することにより推定する。
CIDによるイオン解離効率はイオン量に依存しないので、液体クロマトグラフィー分析にも、このシーケンスを適用することができる。
また、非フラグメント化スペクトルでプリカーサイオンの選択後、プリカーサイオンのみを単離し、プリカーサイオン強度を測定する工程が存在しても良い。この場合、単離過程やイオン輸送の際に起きるロスも考慮されるため、より正確なイオン強度を測定することができる。
図26(B)に示すシーケンス例は、様々なイオン解離強度で複数回のpre−CIDを取得する点において、図26(A)と共通する。ただし、このシーケンス例の場合には、最もフラグメントイオン量が多く算出されたイオン解離強度についてCIDスペクトルを取得する。又は、プリカーサイオン残存率が0となったイオン解離強度のうち最も低いイオン解離強度を選択しても良い。
図26(C)に示すシーケンス例は、シーケンスを2回に分ける例である。すなわち、1回目の分析では各イオンのpre−CIDスペクトルだけを取得し、各イオンの最適だと推定されるイオン解離強度を算出してデータベース化する。2回目の分析では、pre−CIDは実施せず、CIDスペクトルのみを取得する。
(実施の形態の効果)
前述した実施の形態に係る質量分析方法の適用により、プリカーサイオン毎に最適なイオン解離強度データを蓄積することができる。これらのデータは、質量、価数、m/z値毎にデータを格納することができる。これは初めて分析するイオンのイオン解離強度の指標となる。これらのデータを用いてあるm/z値の最適イオン解離強度の下限から上限までのイオン解離強度でpre−CIDを実施しても良い。これにより、最適イオン解離強度を導き出すまでの時間を短縮することができる。
また、プリカーサイオン残存率の算出、最適イオン解離強度の推定と設定は、実時間で実施され、分析を妨げない必要がある。
1…試料、2…試料分離装置(LC又はGC)、3…イオン源、4…リニアイオントラップ、5…Qディフレクター、6…ECDセル、7…TOF、8…TOF検出器、9…制御部、10…全体処理部、12…イオン解離パラメータ決定部、13…イオン解離強度決定部、15…プリカーサイオン強度測定部、16…プリカーサイオン残存率算出部、18…データ表示部、19…パラメータ入力部、100…端電極1、101…端電極2、102…リニアイオントラップにトラップされたプリカーサイオン、103…電子量制御電極、104…電子源、105…電子源電圧、106…リニアトラップ電圧、200…プリカーサイオン、201…チャージリデューススピーシーズ、202…フラグメントイオン、400…モノアイソトピクピーク、401…同位体イオンシリーズ、600…リニアイオントラップ前段、601…リニアイオントラップ中段、602…リニアイオントランプ後段、603…イオン源、604…負イオン試薬、606…リニアイオントラップ検出器、607…負イオン量決定部、1000…反応時間算出部、1001…イオン解離強度算出部。2001…リニアトラップ

Claims (24)

  1. 試料をイオン化するイオン源と、特定の質量電荷比を有するイオンを単離する単離部と、電子を供給する電子源と、イオンを解離するイオン解離部と、イオンを質量分析する質量分析部と、イオンの解離を制御する制御部と、計算処理部を有する質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
    イオンを解離させることなく取得した非フラグメント化スペクトルを取得する工程と、
    あるイオン解離強度でイオンを解離させたフラグメント化スペクトルを取得する工程と、
    前記計算処理部において、非フラグメント化スペクトルとフラグメント化スペクトルスペクトルに存在する各プリカーサイオン強度を測定する工程と、
    前記計算処理部において、非フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度に対する、フラグメント化スペクトルのプリカーサイオン強度の比を算出する工程と、
    前記計算処理部において、算出された前記比とイオン解離強度の設定値に基づいて、所望の比が得られるイオン解離強度の最適値を算出する工程と、
    前記計算処理部において、算出されたイオン解離強度の最適値に基づいて実フラグメント化スペクトルを取得する工程と
    を有する質量分析方法。
  2. 前記イオン解離強度の最適値を算出する工程は、
    前記比Iaと設定した反応時間taをI=e^(t/τ)に与えて、プリカーサイオンに固有の時定数τを算出する工程と、
    算出された時定数τと前記所望の比IbをI=e^(t/τ)に与えて、所望の比Ibを求めるために必要な反応時間tbを算出する工程と
    を有することを特徴とする請求項1に記載の質量分析方法。
  3. 前記イオン解離部のイオン解離領域と前記電子源との間に配置される細孔を有する電極に印加する電圧の制御により反応に使用する電子量を制御する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  4. 初めて分析するプリカーサイオンの反応時間には、事前に設定された特定の反応時間によって与える
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  5. 初めて分析するプリカーサイオンのイオン解離強度は、事前に設定された特定の電極電圧によって与える
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  6. イオン解離の制御を測定中に実行する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  7. 同一のプリカーサイオンに対し、複数回のフラグメント化スペクトルを取得する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  8. プリカーサイオン強度の前記比が設定範囲外の場合、前記所望の比が得られる反応時間を算出し、算出された反応時間でイオン解離を実施し、
    プリカーサイオン強度の前記比が設定範囲内の場合、フラグメント化スペクトルを取得した反応時間で実フラグメント化スペクトルを取得する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の質量分析方法。
  9. 非フラグメント化スペクトル中のプリカーサイオン強度と算出された複数の時定数とに基づいて、前記プリカーサイオン強度と時定数との間に認められる相関特性を1次方程式として算出する
    ことを特徴とする請求項1、2又は7に記載の質量分析方法。
  10. フラグメント化スペクトルに存在する全イオン量を算出する工程と、
    チャージリデューススピーシーズ量を算出する工程と、
    全イオン量に対するチャージリデューススピーシーズ量の比を算出する工程とを有し、
    チャージリデューススピーシーズ量の比が設定された閾値よりも小さい場合には、別のプリカーサイオンの分析に切り替え、
    チャージリデューススピーシーズ量の比が設定された閾値よりも大きい場合には、電子エネルギーを変化させる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  11. フラグメント化スペクトルに存在する全イオン量を算出する工程と、
    チャージリデューススピーシーズ量を算出する工程と、
    全イオン量からチャージリデューススピーシーズ量とプリカーサイオン量の和の差分を算出し、フラグメントイオン量を算出する工程と、
    全イオン量に対するフラグメントイオン量の比を算出する工程を有し、
    フラグメントイオン量の比が設定された閾値よりも大きい場合には、別のプリカーサイオンの分析に切り替え、
    フラグメントイオン量の比が設定された閾値よりも小さい場合には、電子エネルギーを変化させる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  12. フラグメント化スペクトルの取得後も非フラグメント化スペクトルを取得して、各非フラグメント化スペクトルに存在するプリカーサイオン強度の平均値を算出し、当該平均値について前記所望の比が得られる反応時間を算出する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  13. 前記イオン源の前段に液体クロマトグラフ又はガスクロマトグラフを配置する場合に、 所望のプリカーサイオンが検出されると、前記液体クロマトグラフ又はガスクロマトグラフの流量を低減させる工程
    を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  14. 1回目の質量分析処理の実行時には、各プリカーサイオンのイオン強度と時定数τで与えられる1次方程式を算出し、算出された1次方程式と、各プリカーサイオンの質量電荷比と、保持時間と、イオン強度とを記録し、
    2回目以降における質量分析処理の実行時では、各プリカーサイオンのイオン強度に適した反応時間で実フラグメント化スペクトルを取得する
    ことを特徴とする請求項1、2又は13に記載の質量分析方法。
  15. 複数のイオン解離条件でフラグメント化スペクトルを取得し、前記所望の比に最も近いイオン解離条件にて実フラグメント化スペクトルを取得する
    ことを特徴とする請求項1、2又は7に記載の質量分析方法。
  16. 質量分析処理の実行時には、プリカーサイオンの質量電荷比、価数、質量数、算出された反応時間、電子エネルギーを記録し、以降の質量分析処理の実行時には、プリカーサイオンのイオン解離強度を記録情報から抽出する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  17. イオン解離強度は、高周波電圧の周波数、振幅、又は直流電圧の変化により調節する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  18. プリカーサイオンの前記比が0となった印加電圧値のうち最も低い印加電圧を用いて実フラグメント化スペクトルを取得する
    ことを特徴とする請求項1、2又は7に記載の質量分析方法。
  19. 縦軸をプリカーサイオン強度の前記比とし、かつ、横軸を印加電圧値とする場合において、隣り合う2つのサンプリング点同士を直線で結ぶとき、当該直線の傾きが負であり、かつ、前記直線の中で最も0に近い直線を選択する工程と、
    選択された直線を用い、プリカーサイオン強度の前記比が0となる電圧値を算出する工程と
    を有することを特徴とする請求項1、2又は7に記載の質量分析方法。
  20. 電子源と、前記電子源に対してイオントラップ領域の遠端側に配置されるリング形状の第1の端電極と、前記電子源に対してイオントラップ領域の近端側に配置されるリング形状の第2の端電極と、前記第2の端電極に対して前記電子源側に配置されるリング形状の電子量制御電極とを有するイオン解離部と、
    前記電子制御電極に印加する電圧を可変制御する制御部と
    を有するイオン解離装置。
  21. 試料をイオン化するイオン源と、特定の質量電荷比を有するイオンを単離する単離部と、電子を供給する電子源と、電子の電流量を計測する電子電流測定部と、イオンを解離するイオン解離部と、イオンを質量分析する質量分析部と、イオンの解離を制御する制御部と、計算処理部を有する質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
    データベースを登録する工程と、
    イオンを解離させることなく取得した非フラグメント化スペクトルを取得する工程と、
    前記計算処理部において、データベースに記載のイオンが存在するか否かを検索する工程と、
    データベースに記載のイオンが存在しなかった場合は、非フラグメント化スペクトルを取得する工程に戻り、データベースに記載のイオンが存在した場合は、データベースに記載のイオン解離強度で実フラグメント化スペクトルを取得する工程と
    を有する質量分析方法。
  22. 前記データベースは、質量電荷比、保持時間、価数、イオン強度、反応時間、電子エネルギー、電子量制御電圧、電子電流基準値で構成される
    ことを特徴とする請求項21に記載の質量分析方法。
  23. イオン強度に応じて反応時間を変更し、実フラグメント化スペクトルを取得する
    ことを特徴とする請求項14又は21に記載の質量分析方法。
  24. 電子電流測定部で計測された電子電流値とデータベースに記載の電子電流基準値とを比
    較する工程を有し、前記電子電流値と前記電子電流基準値との間にある一定値以上の差が
    あった場合は、データベースに記載の反応時間又は電子量制御電圧を変更する
    ことを特徴とする請求項21又は22に記載の質量分析方法。
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