JP7205077B2 - 分析方法、処理装置、分析装置およびプログラム - Google Patents

分析方法、処理装置、分析装置およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、分析方法、処理装置、分析装置およびプログラムに関する。
質量分析により、試料に含まれるタンパク質の定量を行う方法が知られている。この方法では、タンパク質をタンパク質切断試薬により切断し、複数のペプチドを生成した後、生成されたペプチドをクロマトグラフィにより分離し、分離されたペプチドのうち、特定のペプチドの特定のフラグメントイオンを質量分析により検出する(特許文献1参照)。
この質量分析は、MRM(Multiple Reaction Monitoring)またはSRM(Selected Reaction Monitoring)と呼ばれる測定モードにより行われる。この測定モードでは、予め定められたペプチド(以下、対象ペプチドと呼ぶ)がプリカーサイオンとして選択され、解離された後、予め定められたフラグメントイオン(以下、対象フラグメントイオンと呼ぶ)が検出される。
対象ペプチドは、定量を行うタンパク質に特異的なアミノ酸配列を有するものが選択されることが好ましい。これにより、試料が様々なタンパク質を含む場合でも、定量を行うタンパク質を選択的に検出することができる。さらに、対象ペプチドは、所望の価数でイオン化されやすいことも定量性を高めるために重要である。加えて、対象ペプチドは、酸化されやすい部位を有するメチオニンや、糖鎖が結合する特定のアミノ酸配列等を有しないことが、翻訳後修飾によりm/zがばらつき、プリカーサイオンが十分に抽出されなくなることを防ぐために必要である。
対象フラグメントイオンは、質量分析によって高い感度で検出されるものが、定量性を高める上で好ましい。対象ペプチドの安定同位体標識ペプチドを予め試料に加えておくことで、内部標準法により対象フラグメントイオンの濃度、すなわちタンパク質の濃度を算出することができる。
国際公開第2012/111249号
しかしながら、検出するフラグメントイオンの選択では、予め様々な分析条件の下で質量分析を行って検出強度の高いものを探索することが必要とされ、その作業は煩雑であった。
本発明の好ましい実施形態による分析方法は、タンパク質の切断を行って複数のペプチドを生成し、クロマトグラフィで分離された前記複数のペプチドの少なくとも一つのペプチドのフラグメントイオンを第2質量分析によって検出することにより前記タンパク質の定量を行う分析方法であって、前記タンパク質のアミノ酸配列と前記切断の配列特異性とに基づいて、前記切断を行った場合に生成され得る複数のペプチドのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出することと、前記第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析における分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて、前記第1質量分析で検出する第1フラグメントイオンを設定することと、前記第1質量分析により、前記第1フラグメントイオンを検出することと、前記第1質量分析における検出により得た測定データに基づいて、前記第2質量分析で検出する第2フラグメントイオンを設定することと、前記第2質量分析により、前記第2フラグメントイオンを検出することと、前記第2質量分析における検出に基づいて、前記タンパク質を定量することと、を備え、前記絞込情報は、前記ペプチド配列、前記ペプチド配列に基づいて算出されたパラメータ、前記切断の条件、前記第1質量分析の条件、および前記クロマトグラフィの条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、前記第1質量分析の分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報である。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報に基づいて、前記第1質量分析におけるコリジョンエネルギーを選択することと、前記第1質量分析における検出により得た測定データに基づいて、第2質量分析におけるコリジョンエネルギーを設定することと、をさらに備える。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、前記切断を行ったタンパク質切断試薬、有機溶媒、緩衝液または添加剤の種類を含む前記クロマトグラフィの移動相の組成、前記移動相のpHおよび温度、ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数、誘導体化剤の種類および前記誘導体化剤に置換される官能基の数、翻訳後修飾により想定され得る価数の変化ならびに前記第1質量分析において検出するイオンの正負の極性の数からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドがイオン化された際の価数とが紐づけられている情報を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、ペプチドがイオン化された際の価数とそれぞれの前記価数を有する当該ペプチドの構成比、当該ペプチドのm/z、ならびに、CIDガスの種類および/または圧力からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドを解離するためのコリジョンエネルギーとが紐づけられている情報を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、前記クロマトグラフィにおけるカラムの種類および温度、移動相の組成および/またはグラジエント条件、ならびにペプチドの疎水性指標からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドの前記クロマトグラフィにおける溶出時間とが紐づけられている情報を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、ペプチドおよび/または前記クロマトグラフィにおける移動相の成分のプロトン親和力および/または電子親和力、ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数、ならびに前記第1質量分析において検出するイオンの正負の極性からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドのイオン化しやすさを示すパラメータとが紐づけられている情報を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、ペプチド配列およびコリジョンエネルギーと、前記ペプチド配列において切断されやすい位置、過去に取得された当該ペプチド配列からなるペプチドのMS/MSスペクトルならびに/または前記MS/MSスペクトルで検出されたフラグメントイオンの価数、m/z、種類および/または検出強度とが紐づけられている情報を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、ペプチドのMS/MSスペクトルと、当該ペプチドが帰属するタンパク質のデータを公開しているネットワーク上の情報源のアドレスとが紐づけられている情報を含む。
さらに好ましい実施形態では、前記絞込情報は、ペプチドのアミノ酸配列と、翻訳後修飾に関するフラグメントイオンの検出強度とが紐づけられている情報を含む。
本発明の好ましい実施形態による処理装置は、タンパク質の切断により生成された複数のペプチドがクロマトグラフィにより分離され、前記複数のペプチドのうち少なくとも一つのペプチドのフラグメントイオンが第2質量分析によって検出されることにより前記タンパク質の定量が行われる分析方法に用いられる処理装置であって、前記タンパク質のアミノ酸配列と前記切断の配列特異性とに基づいて、前記切断を行った場合に生成され得る前記複数のペプチドのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出する配列算出部と、前記第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析の分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて、前記第1質量分析で検出するフラグメントイオンを設定する分析条件設定部と、を備え、前記絞込情報は、前記ペプチド配列、前記ペプチド配列に基づいて算出されたパラメータ、前記切断の条件、前記第1質量分析の条件、および前記クロマトグラフィによる分離の条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、前記第1質量分析における分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報である。
本発明の好ましい実施形態による分析装置は、上述の処理装置と、クロマトグラフと、質量分析計とを備える。
本発明の好ましい実施形態によるプログラムは、タンパク質の切断により生成された複数のペプチドがクロマトグラフィにより分離され、前記複数のペプチドのうち少なくとも一つのペプチドのフラグメントイオンが第2質量分析によって検出されることにより前記タンパク質の定量が行われる分析方法に用いられる処理装置に、前記タンパク質のアミノ酸配列と前記切断の配列特異性とに基づいて、前記切断を行った場合に生成され得る前記複数のペプチドのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出する配列算出処理と、前記第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析の分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて、前記第1質量分析で検出するフラグメントイオンを設定する分析条件設定処理と、を行わせ、前記絞込情報は、前記ペプチド配列、前記ペプチド配列に基づいて算出されたパラメータ、前記切断の条件、前記第1質量分析の条件、および前記クロマトグラフィによる分離の条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、前記第1質量分析における分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報である。
本発明によれば、絞込情報を利用して有用性の低い分析条件を予め除くため、質量分析を行って検出強度の高いフラグメントイオンを探索する作業を減らすことができる。
図1は、一実施形態の分析方法を説明するための概念図である。 図2は、一実施形態に係る分析装置の概略構成を示す概念図である。 図3は、絞込情報の例を示す表である。 図4は、絞込情報の例を示す表である。 図5は、一実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図6は、一実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図7は、一実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図8は、一実施形態に係るプログラムを説明するための概念図である。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本実施形態の分析方法を説明するための概念図である。本実施形態の分析方法は、1以上の種類のタンパク質を含む試料Sに存在する、特定のタンパク質Prを定量するための方法である。試料S中にタンパク質Prが存在することを矢印A10で模式的に示した。本実施形態の分析方法では、タンパク質Prをタンパク質切断試薬により切断して複数のペプチドPeを生成(矢印A20)した後、質量分析を用いてペプチドPeを衝突誘起解離(Collision-Induced Dissociation;CID)等により解離させてフラグメントイオンFを生成する(矢印A30)。
質量分析は、予備的な質量分析(以下、第1質量分析と呼ぶ)と、実際にタンパク質Prの定量を行うための測定データを取得する質量分析(以下、第2質量分析と呼ぶ)とが行われる。
第1質量分析では、後述の絞込情報を用いて絞り込まれた範囲内で、様々な分析条件でフラグメントイオンFを検出する。第1質量分析の結果に基づいて、第2質量分析で検出するフラグメントイオン(対象フラグメントイオン)が設定される。例えば、第1質量分析の結果、図1中のフラグメントイオンF1の感度が高く検出された等の場合、当該フラグメントイオンF1が対象フラグメントイオンとなる。対象フラグメントイオンF1がペプチドPe1から解離されて得られたものである場合、ペプチドPe1が第2質量分析でプリカーサイオンとして選択されるペプチド(対象ペプチドPe1)として設定される。
第2質量分析では、第1質量分析の結果に基づいて設定された対象ペプチドPe1をプリカーサイオンとして選択し、対象フラグメントイオンF1を検出する。対象フラグメントイオンF1の量は、タンパク質Prの量に対応するから、検出された対象フラグメントイオンF1の強度に基づいて、タンパク質Prの定量を行うことができる。
図2は、本実施形態に係る分析装置1の概略構成を示す図である。分析装置1は、測定部100と、制御部40とを備える。測定部100は、液体クロマトグラフ10と、質量分析計20とを備える。
液体クロマトグラフ10は、移動相容器11a,11bと、送液ポンプ12a,12bと、試料導入部13と、分析カラム14とを備える。質量分析計20は、イオン源211を備えるイオン化部21と、イオンガイド部22と、イオン化部21からイオンを出射する管212と、第1質量分離部23と、コリジョンセル24と、第2質量分離部25と、検出器30とを備える。第1質量分離部23は、第1四重極230を備える。コリジョンセル24は、イオンガイド240とCIDガス導入口241とを備える。第3質量分離部25は、第2四重極250を備える。
情報処理部40は、入力部41と、通信部42と、記憶部43と、出力部44と、処理部50とを備える。処理部50は、装置制御部51と、配列算出部52と、第1分析条件設定部53と、第2分析条件設定部54と、定量部55と、出力制御部56とを備える。
液体クロマトグラフ(LC)10は、移動相と分析カラム14の固定相とに対する各ペプチドPeの親和性の違いを利用して、各ペプチドPeを分離し異なる保持時間で溶出させる。液体クロマトグラフ10は、上述の質量分析により少なくとも一部のフラグメントイオンFを定量することが可能な、所望の精度でペプチドPeを分離することができれば特に種類は限定されない。液体クロマトグラフ10として、ナノLC、マイクロLC、高速液体クロマトグラフ(HPLC)および超高速液体クロマトグラフ(UHPLC)等を用いることができる。
移動相容器11aおよび11bは、バイアル等の液体を格納可能な容器を備え、それぞれ異なる組成の移動相を格納する。移動相容器11aおよび11bに格納されている移動相をそれぞれ移動相Aおよび移動相Bと呼ぶ。移動相Aおよび移動相Bは、所望の精度でペプチドPeを分離することができればその組成は特に限定されず、溶媒として水、アセトニトリル、メタノール、エタノール等、添加剤として酢酸、ギ酸、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウムおよびギ酸アンモニウム等を用いることができる。
送液ポンプ12aおよび12bは、それぞれ移動相Aおよび移動相Bを所定の流量になるように送液する。送液ポンプ12aおよび12bからそれぞれ出力された移動相Aおよび移動相Bは、流路の途中で混合され、試料導入部13へと導入される。送液ポンプ12aおよび12bは、それぞれ移動相Aおよび移動相Bの流量を変化させることにより、時間によって分析カラム14に導入される移動相の組成を変化させる。
試料Sの導入等の分析の開始に対応する時点からの各時間における、移動相Aと移動相Bとを混合させた後の移動相の組成を示すデータをグラジエントデータと呼ぶ。グラジエントデータには、移動相Aおよび移動相Bの溶媒および添加剤の名前と、各移動相または各溶媒若しくは添加剤の割合の変化とが示される。例えば、移動相Aがギ酸で移動相Bがアセトニトリルであり、混合後の移動相における移動相Bの割合を15分間で10%から90%まで変化させたとすると、グラジエントデータは「A:ギ酸、B:アセトニトリル、10%B-90%B(15min)」のような文字列からなるデータとすることができる。
なお、グラジエントデータの態様は、複数のグラジエント条件が区別されて示されていれば特に限定されず、グラジエントを時間と移動相の混合割合との対応を示すグラフ等で表してもよい。
試料導入部13は、オートサンプラー等の試料導入装置を備え、定量するタンパク質Prがタンパク質切断試薬により切断されて生成された複数のペプチドPeを含む試料Sを移動相に導入する(矢印A1)。試料導入部13により導入された試料Sは、適宜不図示のガードカラムを通過して分析カラム14に導入される。
分析カラム14は、固定相を備え、導入された試料Sに含まれる各ペプチドPeを、移動相と固定相とに対する各ペプチドPeの親和性の違いを利用して異なる時間に溶出させる。分析カラム14の種類は、所望の精度で各ペプチドPeを分離することができれば特に限定されないが、逆相カラムが取扱いの容易さや質量分析でのイオン化の容易さの観点から好ましい。分析カラム14の固定相は、例えばシリカゲル等の担体に担持された、C18、C8、C4等の直鎖炭化水素が結合されたシランが好ましい。
分析カラム14のカラムの種類等を示すデータをカラムデータと呼ぶ。カラムデータには、固定相や担体の組成等が示されている。分析カラム14から溶出されたペプチドPeを含む試料Sは、質量分析計20のイオン化部21に導入される。分析カラム14の溶出液は、ユーザによる分注等の操作を必要とせず、オンライン制御により質量分析計20に入力されることが好ましい。
質量分析計20は、分析カラム14から導入されたペプチドPeを含む試料Sに対してタンデム質量分析を行いフラグメントイオンFを検出する。本実施形態では質量分析計20はタンデム四重極質量分析計として説明するが、イオントラップを含むものでもよい。イオン化された試料Sの経路を、一点鎖線の矢印A2により模式的に示した。
質量分析計20のイオン化部21は、導入されたペプチドPeを含む試料Sをイオン化する。イオン化の方法は、所望の精度でフラグメントイオンFが検出される程度にペプチドPeがイオン化されれば特に限定されないが、エレクトロスプレー法(ESI)が好ましく、以下の実施形態でもESIを行うものとして説明する。イオン源211から出射されイオン化された試料Sは、不図示の電極に印加された電圧により移動し、管212を通過してイオンガイド部22に入射する。
イオンガイド部22は、段階的に真空度を変化させた不図示の真空室等に適宜配置されたリング状電極やイオンガイド等を備え、イオン化されたペプチドPeを含む試料Sを電磁気学的作用により収束させて第1質量分離部23へ出射する。
第1質量分離部23は、第1四重極230に印加される電圧に基づく電磁気学的作用により設定されたm/zを有するイオンをプリカーサイオンとして選択的に通過させてコリジョンセル24に向けて出射する。第1質量分離部23は、第1質量分析においては、後述の絞込情報に基づいて設定されたペプチドPeに対応するイオンをプリカーサイオンとして選択的に通過させ、第2質量分析においては、対象ペプチドPe1を選択的に通過させる。
コリジョンセル24は、イオンガイド240によりペプチドPeを含む試料Sの移動を制御しながら、CIDによりペプチドPeを解離させ、フラグメントイオンFを生成する。CIDの際にペプチドPeが衝突させられる分子を含むガス(以下、CIDガスと呼ぶ)は、コリジョンセル内で所定の圧力になるようにCIDガス導入口241から導入される(矢印A3)。CIDガスの種類は、所望の効率でCIDを起こすことができれば特に限定されないが、アルゴンや窒素等の不活性ガスが好ましい。生成されたフラグメントイオンFは、第2質量分離部25に向けて出射される。
第2質量分離部25は、第2四重極250に印加される電圧に基づく電磁気学的作用により設定されたm/zを有するフラグメントイオンFを選択的に通過させて検出器30に向けて出射する。第2質量分離部23は、第1質量分析においては、後述の絞込情報に基づいて設定されたフラグメントイオンFを選択的に通過させ、第2質量分析においては、対象フラグメントイオンF1を選択的に通過させる。
検出器30は、二次電子増倍管や光電子増倍管等のイオン検出器を備え、入射したフラグメントイオンFを検出する。検出モードは正イオンを検出する正イオンモードと、負イオンを検出する負イオンモードとのいずれでもよい。フラグメントイオンFを検出して得た検出信号は不図示のA/D変換器によりA/D変換され、デジタル信号となって情報処理部40の処理部50に入力される(矢印A4)。
情報処理部40は、電子計算機等の情報処理装置を備え、適宜ユーザとのインターフェースとなる他、様々なデータに関する通信、記憶、演算等の処理を行う。情報処理部40は、分析条件を設定する処理を行う処理装置となる。
なお、情報処理部40は、液体クロマトグラフ10および/または質量分析計20と一体になった一つの装置として構成してもよい。また、本実施形態の分析方法に用いるデータの一部は遠隔のサーバ等に保存してもよく、当該分析方法で行う演算処理の一部は遠隔のサーバ等で行ってもよい。測定部100の各部の動作の制御は、情報処理部40が行ってもよいし、各部を構成する装置がそれぞれ行ってもよい。
情報処理部40の入力部41は、マウス、キーボード、各種ボタンおよび/またはタッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部41は、定量するタンパク質Prやタンパク質切断試薬の情報を含む分析条件に関する情報等の、処理部50の行う処理に必要な情報等を、ユーザから受け付ける。
情報処理部40の通信部42は、インターネット等のネットワークを介して無線や有線の接続により通信可能な通信装置を含んで構成される。通信部42は、配列算出部52の配列算出処理や定量部55の定量処理に必要なデータを受信したり、配列算出部52の算出結果や定量部55の定量結果等の処理部50が処理したデータを送信したり、適宜必要なデータを送受信する。
情報処理部40の記憶部43は、不揮発性の記憶媒体を備える。記憶部43は、後述の絞込情報に対応するデータ、測定部100から出力された測定データ、および処理部50が処理を実行するためのプログラム等を記憶する。
情報処理部40の出力部44は、出力制御部56により制御され、液晶モニタ等の表示装置および/またはプリンターを含んで構成され、測定部100の測定に関する情報や、定量部55の定量結果等を、表示装置に表示したり印刷媒体に印刷して出力する。
情報処理部40の処理部50は、CPU等のプロセッサを含んで構成される。処理部50は、測定部100から出力された測定データを解析し、タンパク質を定量する等、記憶部43等に記憶されたプログラムを実行することにより各種処理を行う。
処理部50の装置制御部51は、第1分析条件設定部53または第2分析条件設定部54が設定した分析条件等に基づいて、測定部100の測定動作を制御する。装置制御部51は、送液ポンプ12aおよび12bの流量を制御したり、試料導入部13による試料導入を制御したり、第1質量分離部23および第2質量分離部25で選択的に通過させるイオンのm/z値を制御したり、コリジョンセル24におけるコリジョンエネルギーを制御したり等する。
配列算出部52は、定量するタンパク質Prのアミノ酸配列とタンパク質Prの切断の配列特異性とに基づいて、当該切断により生成され得るそれぞれのペプチドのアミノ酸配列を算出する。以下の実施形態では、ペプチドのアミノ酸配列をペプチド配列と呼ぶ。配列算出部52により算出されたペプチド配列は、記憶部43等に記憶される。
配列算出部52は、ユーザが入力した定量するタンパク質Prおよびタンパク質Prを切断するタンパク質切断試薬に関するデータを取得する。配列算出部52は、このデータに基づいてタンパク質Prのアミノ酸配列中の切断位置を算出し、この切断位置に基づいてタンパク質Prを切断した場合に生成されるペプチドのペプチド配列を算出する。
例えば、ユーザはタンパク質Prのアミノ酸配列と、タンパク質Prを切断する消化酵素とを入力する。当該消化酵素がトリプシンであった場合、配列算出部52は、記憶部43に記憶されているトリプシンの配列特異性に関するデータを参照する。トリプシンは、以下の配列特異性を有する。すなわち、(1)タンパク質のアミノ酸配列における、リジン(Lys:一文字表記ではK)およびアルギニン(Arg:一文字表記ではR)のカルボキシ基側(C末端側)を切断する。かつ、(2)トリプシンは、リジン、アルギニンのカルボキシ側でもプロリン(Pro:一文字表記ではP)との間は切断しない。上述の配列特異性に関するデータでは、配列特異性が、残基間で切断可能な二残基のアミノ酸の組合せ等により符号化され記憶されている。配列算出部52は、タンパク質Prのアミノ酸配列中、リジンまたはアルギニンのC末端側であってプロリンとの間ではない位置を配列特異性に基づいた切断位置としてペプチド配列を算出する。
第1分析条件設定部53は、第1質量分析における分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて、第1質量分析における分析条件を絞り込んで設定する分析条件設定処理を行う。第1質量分析では、第2質量分析で検出する対象フラグメントイオンF1およびその他の分析条件を決定するために、様々な分析条件でフラグメントイオンFの検出が行われる。ここで、「分析条件を絞り込む」、とは、第1質量分析の際に設定する分析条件を示すデータ(以下、設定データと呼ぶ)の範囲を狭くすることを指す。特に、「分析条件を絞り込む」とは、設定データが数値の場合、数値範囲が狭くなることを指す。設定データは、分析条件を直接示すデータ(例えば、コリジョンエネルギー、プリカーサイオンのm/zまたはフラグメントイオンのm/z)の他、分析条件を直接示すデータを算出する際に影響を与えるデータ(例えば、ペプチドPeがイオン化された際の価数またはペプチドの疎水性指標)も含む。設定データの例を図3および図4における表の左欄に示す。
図3および図4は、絞込情報の例を示す表である。絞込情報では、表の左側の列の設定データと、表の右側の列に示された、各設定データを絞り込むためのデータ(以下、条件データと呼ぶ)とが対応付けられている。各設定データに複数の条件データが対応しているが、必ずしも1つの設定データに対応する全ての条件データの値が指定される必要は無く、指定された条件データに基づいて設定データの範囲が狭くなるように設定されている。
一例として、配列算出部52が算出した、タンパク質Prが切断された場合に生成され得るペプチドのうち、あるペプチド(ペプチドAとする)が、アミノ酸を一文字表記で示した場合に” STPTAEDVTAPLVDEGAPGK”となる、配列表の配列番号1で示されたペプチド配列を有しているとする。また、質量分析は正イオンモードで行い、ペプチドPeを生成する際に用いたタンパク質切断試薬はトリプシンであり、クロマトグラフィの移動相にはDMSOが添加されることがユーザからの入力により設定されているとする。
第1分析条件設定部53は、第1質量分析におけるコリジョンエネルギーの範囲を絞り込む。第1分析条件設定部53は、絞込情報のコリジョンエネルギーの項目を参照する。絞込情報では、コリジョンエネルギーに対応して、ペプチドがイオン化された際の価数、ペプチドのm/z、CIDガスの種類およびCIDガスの圧力が設定されている。第1分析条件設定部53は、このうち、ペプチドのイオン化された際の価数を算出するため、絞込情報におけるペプチドがイオン化された際の価数の項目を参照する。絞込情報では、ペプチドがイオン化された際の価数に対応して、タンパク質Prの切断を行うタンパク質切断試薬、ペプチドPeの分離を行うクロマトグラフィの移動相の組成、ペプチドに含まれる塩基性アミノ酸の数および第1質量分析で検出するイオンの極性が設定されている。
第1分析条件設定部53は、ユーザからの入力に基づいて、タンパク質切断試薬としてトリプシン、クロマトグラフィの移動相の組成としてDMSO、ペプチドに含まれる塩基性アミノ酸の数として上記配列番号1のアミノ酸配列から算出した塩基性アミノ酸の数、質量分析で検出するイオンの極性として正イオンを条件データとして指定する。一方、トリプシンで消化されたペプチドにDMSOが添加された場合、イオン化された場合のイオンの価数は二価イオンとなる(三価イオンが相対的に減少し、二価イオンに集約する)ことが知られており、絞込情報では、上記のように指定された場合、ペプチドがイオン化された際の価数は2と出力されるように構成されている。第1分析条件設定部53は、このようにして設定データのペプチドがイオン化された際の価数を2に設定する。
第1分析条件設定部53は、配列番号1のペプチド配列からペプチドAの二価イオンのm/zを算出し、978.55の値を得る。絞込情報では、ペプチドがイオン化された際の価数が2で、m/zが900~1100の場合、コリジョンエネルギーは30V以上50V以下の範囲と設定されている。CIDガスの種類と圧力は、未入力の場合特に設定データの範囲を狭くするために用いなくてもよい。第1分析条件設定部53は、設定された範囲内でコリジョンエネルギーについて2Vおきに30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50の11通りの分析条件で第1質量分析を行うように設定する。第1分析条件設定部53は、このようにして絞込情報を参照してコリジョンエネルギーを絞り込んだ範囲に設定する。
なお、コリジョンエネルギーの電圧間隔は2Vおきに限られず適宜設定することができる。
第1分析条件設定部53は、第1質量分析で検出するフラグメントイオンFを設定する。上記ペプチドAは20残基からなるペプチドであり、イオン化された際の価数が2とすると、主要な候補となるフラグメントイオンFは76種類となる(一価yイオン19個、二価yイオン19個、一価bイオン19個、二価bイオン19個)。第1分析条件設定部53は、これら76種類のフラグメントイオンFのm/zを算出する。第1分析条件設定部53は、ペプチドAの二価イオンのm/zを第1質量分析の第1質量分離部23で選択するm/zとし、当該m/zに対応して(トランジションとして)検出されるフラグメントイオンFのm/zを、算出した76種類のフラグメントイオンFのm/zとして設定する。
このように、第1分析条件設定部53は、コリジョンエネルギーを11通り、ペプチドAに関して選択するプリカーサイオンと検出するフラグメントイオンとの組合せ(以下、適宜トランジションと呼ぶ)を76通りとして、第1質量分析に関し総計11×76=836通りの分析条件を設定した。
もし第1分析条件設定部53による絞込が行われなかったとすると、例えばプリカーサイオンの価数の範囲を2以上4以下として候補となるフラグメントイオンは342種類となる(二価のプリカーサイオン;76候補、三価のプリカーサイオン;114候補(一価~三価yイオン;それぞれ19、一価~三価bイオン;それぞれ19)、四価のプリカーサイオン;152候補(一価~四価yイオン;それぞれ19、一価~四価bイオン;それぞれ19))。そしてコリジョンエネルギーを0~50Vまで2Vおきに設定する場合、26通りとなる。従って、フラグメントイオンとコリジョンエネルギーとの組み合わせは342×26=8892通りとなる。この場合、1条件に5msecの時間(Dwell time)を割り当てると、8892条件について分析を行うために44.46秒かかり、液体クロマトグラフィにおけるピークの幅を考慮すると、複数回のLC/MS/MSを行う必要があり煩雑な作業となる。
以上から、第1分析条件設定部53による絞込により、第1質量分析の際に1つのペプチドに対して割り当てる時間を大幅に減らすことができ、より効率的に好適な分析条件の探索を行うことができる。
(絞込情報の各項目等について)
絞込情報では、過去に得られたデータや、理論値に基づいて、条件データの値を設定された際に設定データの範囲が適宜設定されるように構成されている。条件データの値は数値に限られず、文字列等でもよい。文字列の場合は、入力の際、選択肢が表示され(例えば、移動相の組成であれば「ギ酸」「アセトニトリル」等)、ユーザが入力部41を介して選択する構成であることが好ましい。この場合、各選択肢に設定データの範囲が紐づけられていてユーザの選択した選択肢に対応する設定データの範囲が設定されることが好ましい。また、絞込情報に含まれる情報や、各設定データに紐づけられる条件データは図3および図4に示すものに限らない。また、各設定データに対し、図3および図4に示された条件データのうちの任意の一部のみが対応していてもよい。
図3の表に示された絞込情報において、設定データのペプチドがイオン化された際の価数は、条件データのタンパク質切断試薬、クロマトグラフィの移動相の組成、pHおよび温度、ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数、質量分析で検出するイオンの極性、誘導体化剤の種類および誘導体化剤に置換される官能基の数、ならびに翻訳後修飾により想定され得る価数の変化と紐づけられている。タンパク質切断試薬は、切断位置等の特徴によりイオン化された際の価数に影響する。クロマトグラフィの移動相の組成、pHおよび温度は、イオン化抑制等によりペプチドがイオン化された際の価数に影響する。当該移動相の組成としては、有機溶媒、緩衝液および/または添加剤の種類等を含むことができる。ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数は、それぞれ生成されるイオンの負電荷および正電荷の数に影響する。第1質量分析で検出するイオンの極性は、正イオンを検出する場合と負イオンを検出する場合とでイオン化した後に管212(図2)に導入されるイオンの極性も異なるため、ペプチドがイオン化された際の価数に影響する。誘導体化剤の種類および誘導体化剤に置換される官能基の数と、翻訳後修飾により想定され得る価数の変化は、リン酸基等の官能基が加わったりすることにより、ペプチドがイオン化された際の価数に影響する点等についてのものである。第1分析条件設定部53が、ペプチドがイオン化された際の価数の数値範囲を絞り込むことにより、上述のペプチドAの例のように価数に基づいて第1質量分析で検出するフラグメントイオンFの数を減らすことができ、より効率的にタンパク質Prの定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
コリジョンエネルギーは、ペプチドがイオン化された際の価数および各価数を有する当該ペプチドの構成比、ペプチドのm/z、CIDガスの種類およびCIDガスの圧力と紐づけられている。コリジョンエネルギーは、コリジョンセル24内でのイオンの移動やイオンが衝突するCIDガスにより影響される。第1分析条件設定部53が、コリジョンエネルギーを絞り込むことにより、上述のペプチドAの例のように第1質量分析でCIDを行う際に試すコリジョンエネルギーの数値の数を減らすことができ、より効率的にタンパク質Prの定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
クロマトグラフィでのペプチドの溶出時間(保持時間)は、クロマトグラフィのカラムの種類(上述のカラムデータ等)および温度、クロマトグラフィの移動相の組成、クロマトグラフィのグラジエント条件(上述のグラディエントデータ等)およびペプチドの疎水性指標と紐づけられている。クロマトグラフィでのペプチドの溶出時間は、ペプチドの疎水性と、クロマトグラフィでの固定相および移動相とにより影響を受ける。ペプチドの疎水性指標は、配列算出部52が算出したペプチド配列に基づいて、第1分析条件設定部53が算出する。ペプチドの疎水性指標としては、例えば、保持時間に対するペプチド配列特異的なアルゴリズムsequence-specific retention calculator (SSRC)に基づく疎水性指標(詳細は以下の文献を参照されたい;Krokhin OV, Analytical Biochemistry, 2006年,Volume 78, Issue 22, pp.7785-7795)等を適宜用いることができる。ペプチドの溶出時間は、過去のデータの他、このような保持時間を推定する計算に基づく理論値に基づいて適宜設定される。第1分析条件設定部53が、ペプチドの溶出時間を絞り込むことにより、第1質量分析で特定のペプチドPeの溶出時間に対応するピークから外れた時間でのトランジションを他のペプチドPeのトランジションに割り当てることができ、より効率的にタンパク質の定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
図4において、ペプチドのイオン化しやすさを示すパラメータは、ペプチドのプロトン親和力および電子親和力、クロマトグラフィの移動相の成分のプロトン親和力および電子親和力、ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数、ならびに第1質量分析で検出するイオンの極性と紐づけられている。ペプチドのイオン化しやすさは、基準となる分析条件においてイオン化された割合に基づいて適宜数値化される。ペプチドのイオン化しやすさは、ペプチドや移動相の化学的性質やイオン化の条件により影響を受ける。プロトン親和力および電子親和力は、適宜文献値や過去に取得されたデータに基づいた値が記憶される。第1分析条件設定部53が、ペプチドのイオン化しやすさを設定することにより、第1質量分析においてイオン化しづらいペプチドPeを測定対象から外すことができ、より効率的にタンパク質Prの定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
絞込情報では、過去に取得されたMS/MSスペクトル(プロダクトイオンスキャンにより得られたスペクトル)が、ペプチド配列およびコリジョンエネルギーと紐づけられている。ペプチド配列において切断されやすい位置、当該MS/MSスペクトルに基づいて解析されたフラグメントイオンの検出強度、価数、m/z、種類が、ペプチド配列およびコリジョンエネルギーと紐づけられている。ここで、ペプチド配列において切断されやすい位置は、グルタミン酸やアスパラギン酸のC末端側や、プロリンのN末端側であり、これらの切断位置で切断されたフラグメントイオンを優先的に候補に含めるためである。また、フラグメントイオンの種類とは、解離におけるペプチド鎖の切断位置やN末側またはC末側のいずれのイオンかによる分類(bイオン、yイオン等)に基づく種類である。過去に取得されたMS/MSスペクトルは、本実施形態の分析方法と同様の分析条件でプロダクトイオンスキャンをして取得したものに限られず、より精密に測定可能な条件下で取得したものであることが好ましい。第1分析条件設定部53が、ペプチド配列における切断位置や、フラグメントイオンの検出強度、価数、m/z、種類を絞り込むことにより、第1質量分析において検出しづらいフラグメントイオンFを測定対象から外すことができ、より効率的にタンパク質Prの定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
絞込情報では、翻訳後修飾に関するフラグメントイオンの検出強度がペプチド配列と紐づけられて記憶されている。翻訳後修飾については特に限定されないが、例えば糖鎖修飾であり、フラグメントイオンの検出強度は分解プロファイルについてのものが好ましい。分解プロファイルとは、様々なコリジョンエネルギーで解離させたフラグメントイオンの検出強度を示すデータである。絞込情報において、翻訳後修飾に関するフラグメントイオンの検出強度が参照可能であることにより、第1質量分析において分解プロファイル等の翻訳後修飾に関するフラグメントイオンの情報に基づいて分析条件を設定することができ、より効率的にタンパク質Prの定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
ペプチド配列が糖鎖結合モチーフを有する場合、分解プロファイルとして、当該ペプチド配列に対応する糖ペプチドを様々なコリジョンエネルギーで解離させた際の、糖鎖の一部のオキソニウムイオンに対応する各フラグメントイオンの検出強度を示すデータを含んでもよい。糖ペプチドにおける糖鎖を構成する糖や分子量が同一でも、分解プロファイルに示されるこのようなフラグメントイオン(オキソニウムイオン)の検出強度は各糖の位置により異なるため、これにより、糖鎖の構成を同定することができる(Erexim法と呼ばれ、詳細は以下の文献を参照されたい;Toyama A et al, Analytical Chemistry, 2012年,Volume 84, Issue 22, pp.9544-9662)。絞込情報において、糖鎖の分解プロファイルが参照可能であることにより、第1質量分析において糖鎖の分解プロファイルに基づいて分析条件を設定することができ、より効率的にタンパク質の定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
第1分析条件設定部53は、絞込情報の他、適宜ユーザが入力部41を介して入力した情報等に基づいて、分析条件を絞り込むことができる。当該情報は、例えば、プリカーサイオンとして選択するペプチドPeの残基数の範囲や含まれるべきでないアミノ酸残基等の情報である。ペプチドPeの残基数が小さすぎると、特異性が低くなるため好ましくなく、ペプチドPeの残基数が大きすぎると、正確に測定可能なm/zの範囲を逸脱する可能性が有るため好ましくない。また、糖鎖結合モチーフや消化されにくいリジンやアルギニンの連続部位がペプチドPeに含まれていると、当該ペプチドPeに対応するm/zがばらつく可能性が有るために好ましくない。
図2に戻って、第2分析条件設定部54は、第1分析条件設定部53が設定した分析条件に基づいて行われた第1質量分析の結果得られたデータに基づいて、第2質量分析での分析条件を設定する分析条件設定処理を行う。
第2分析条件設定部54は、第1質量分析の測定データに基づいて、検出したフラグメントイオンFのうち、検出強度が最も高いものから順に所定の個数の対象フラグメントイオンF1を選択する。この際、第2分析条件設定部54は検出強度だけでなく、ノイズ等の検出強度の信頼性に関する情報に基づいて対象フラグメントイオンF1を選択してもよい。選択する対象フラグメントイオンF1の個数は数個等、適宜設定される。
第2分析条件設定部54は、選択した対象フラグメントイオンF1に対応するペプチドPe(対象ペプチドPe1)を第2質量分析において選択するプリカーサイオンとし、対象ペプチドPe1から対象フラグメントイオンF1へのトランジションを設定する。また、当該対象フラグメントイオンF1を検出した際のコリジョンエネルギー等の分析条件を第2質量分析における当該対象フラグメントイオンF1に対応する分析条件として設定する。さらに、第2分析条件設定部54は、ユーザ等の入力により、内部標準として加えられる各プリカーサイオンの安定同位体標識ペプチドの検出に対応するトランジションも設定する。
定量部55は、第1質量分析および第2質量分析において、測定部100から出力された測定データに基づいてタンパク質Prの定量を行う。定量部55は、検出器30から出力された測定データから各フラグメントイオンFに対応する検出強度を取得して記憶部43等に記憶させる。
第2質量分析の解析では、定量部55は、各対象フラグメントイオンF1に対応する検出強度を、当該対象フラグメントイオンF1の内部標準に対応する検出強度で割った比に、当該内部標準の既知の量を掛けた値を、各対象フラグメントイオンF1の量とする。定量部55は検出した各対象フラグメントイオンF1の量を算出したら、当該量の平均をタンパク質Prの量とし、試料導入部13で導入した試料Sの体積で割って試料Sにおけるタンパク質Prの濃度を算出する。第1質量分析の解析では、少なくともフラグメントイオンF間の相対的な検出強度の比較ができればよいため、検出強度のデータは適宜比較可能に記憶されればよい。
出力制御部56は、測定部100の測定条件および/または定量部55の定量結果等から出力画像を作成し、出力部44に出力する。
図5、図6および図7は、本実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。図5のフローチャートは、処理部50による第1質量分析の分析条件の設定処理を示すフローチャートである。ステップS1001において、処理部50は、定量するタンパク質Prのアミノ酸配列と、タンパク質Prの定量においてタンパク質Prを切断する際のタンパク質切断試薬とのデータを取得する。ステップS1001が終了したら、ステップS1003が開始される。
ステップS1003において、処理部50は、選択するペプチドPeの残基数の範囲等、その他の分析条件に関するデータを入力部41を介したユーザの入力等により適宜取得する。ステップS1003が終了したら、ステップS1005が開始される。ステップS1005において、配列算出部52は、タンパク質Prのアミノ酸配列と、上記タンパク質切断試薬による切断の配列特異性とに基づいて、当該切断を行った場合に生成され得る複数のペプチドPeのアミノ酸配列(ペプチド配列)を算出する。ステップS1005が終了したら、ステップS1007が開始される。
ステップS1007において、第1分析条件設定部53は、算出されたペプチド配列および/または取得した分析条件に関するデータを用いて、タンパク質Prを定量する際に検出を行うフラグメントイオンFを絞り込むための絞込情報を参照する。ステップS1007が終了したら、ステップS1009が開始される。ステップS1009において、第1分析条件設定部53は、絞込情報に基づいて、複数のペプチドのうち、一部のペプチドを第1質量分析におけるプリカーサイオンとして、当該一部のペプチドの一部のフラグメントイオンを第1質量分析において検出するフラグメントイオンとして選択し、第1質量分析を行う際のコリジョンエネルギー等のその他の分析条件の範囲を限定する。ステップS1009が終了したら、ステップS2001が開始される。
図6は、第1質量分析の流れを示すフローチャートである。ステップS2001において、ユーザによりタンパク質Prを含む試料が用意される。ステップS2001が終了したら、ステップS2003が開始される。ステップS2003において、ユーザまたは分注装置等により、試料Sにタンパク質切断試薬が加えられ、複数のペプチドPeを生成される。ステップS2003が終了したら、ステップS2005が開始される。
なお、ステップS2001およびS2003は、適宜ステップS1001~S1009の前に行ってもよい。
ステップS2005において、液体クロマトグラフ10は、生成された複数のペプチドPeを含む試料Sをクロマトグラフィで分離する。ステップS2005が終了したら、ステップS2007に進む。ステップS2007において、質量分析計20は、分離された試料Sを、ステップS1009で限定した範囲でコリジョンエネルギー等の分析条件を変化させて質量分析し、ステップS1009で選択したペプチドPeの、ステップS1009で選択したフラグメントイオンFを検出する。ステップS2007が終了したら、ステップS2009が開始される。
ステップS2009において、第2分析条件設定部54は、検出されたフラグメントイオンFの強度等に基づいて、タンパク質Prの定量のための第2質量分析を行う際にプリカーサイオンとして選択するペプチドPe(対象ペプチドPe1)と、検出するフラグメントイオンF(対象フラグメントイオンF1)とを設定する。ステップS2009が終了したら、ステップS3001が開始される。
図7は、第2質量分析の流れを示すフローチャートである。ステップS3001においえて、ユーザ等により、定量するタンパク質Prを含む試料Sと、ステップS2009で設定されたペプチドPe(対象ペプチドPe1)の安定同位体標識ペプチドとが用意される。ステップS3001が終了したら、ステップS3003が開始される。ステップS3003において、ユーザや分注装置等により、試料Sにタンパク質切断試薬が加えられ、複数のペプチドPeが生成される。ステップS3003が終了したら、ステップS3005が開始される。
ステップS3005において、ユーザまたは分注装置等により、複数のペプチドPeを含む試料Sに安定同位体標識ペプチドが加えられる。ステップS3005が終了したら、ステップS3007が開始される。ステップS3007において、液体クロマトグラフ10は、ステップS3005で安定同位体標識ペプチドが加えられた試料Sをクロマトグラフィにより分離する。ステップS3007が終了したら、ステップS3009が開始される。
ステップS3009において、質量分析計20は、クロマトグラフィで分離された試料Sを質量分析し、ステップS2009で設定された対象ペプチドPe1の、ステップS2009で設定されたフラグメントイオンF、すなわち対象フラグメントイオンF1を検出する。ステップS3009が終了したら、ステップS3011が開始される。ステップS3011において、定量部55は、検出されたフラグメントイオンF(対象フラグメントイオンF1)の強度に基づいて、タンパク質Prを定量する。ステップS3011が終了したら、ステップS3013が開始される。
ステップS3013において、出力制御部56は、出力部44に、定量したタンパク質Prの量を表示させる。ステップS3013が終了したら、処理を終了する。
上述の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態の分析方法は、第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析における分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて、第1質量分析で検出するフラグメントイオンFを設定することを備え、絞込情報は、ペプチド配列、ペプチド配列に基づいて算出されたペプチドの疎水性指標、酸性アミノ酸の数や塩基性アミノ酸の数等のパラメータ、タンパク質切断試薬等のタンパク質Prの切断の条件、CIDガスや検出するイオンの極性等の第1質量分析の条件、ならびに分析カラム14の固定相、移動相およびグラジエント条件等のクロマトグラフィの条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、第1質量分析の分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報である。これにより、絞込情報を利用して有用性の低い分析条件を予め除くため、検出強度の高いフラグメントイオンを探索する作業を減らすことができる。
(2)本実施形態の分析方法は、絞込情報に基づいて、第1質量分析におけるコリジョンエネルギーを設定することと、第1質量分析における検出により得た測定データに基づいて、第2質量分析におけるコリジョンエネルギーを設定することと、をさらに備える。これにより、絞込情報を利用して有用性の低い分析条件を予め除くため、フラグメントイオンFの検出強度が高くなるコリジョンエネルギーを探索する作業を減らすことができる。
(3)本実施形態に係る処理装置は、第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析の分析条件を絞り込むための上述の絞込情報に基づいて、第1質量分析で検出するフラグメントイオンFを設定する第1分析条件設定部53と、を備える。これにより、絞込情報を利用して有用性の低い分析条件を予め除くため、本実施形態の分析方法において検出強度の高いフラグメントイオンFを探索する作業を減らすことができる。
(4)本実施形態の分析装置は、上述の情報処理部40を構成する処理装置と、液体クロマトグラフ10と、質量分析計20とを備える。これにより、絞込情報を利用して有用性の低い分析条件を予め除くため、検出強度の高いフラグメントイオンFを探索する作業を減らすことができる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、上述の実施形態と組み合わせることが可能である。以下の変形例において、上述の実施形態と同様の構造、機能を示す部位に関しては、同一の符号で参照し、適宜説明を省略する。
(変形例1)
上述の実施形態の絞込情報は、さらに、ペプチドのMS/MSスペクトルと、当該ペプチドが帰属するタンパク質のデータを公開しているネットワーク上の情報源のアドレスとが紐づけられている情報を含んでもよい。これにより、公開されているデータベース上の情報に基づいて第1質量分析において検出しづらいフラグメントイオンFを測定対象から外すことができ、より効率的にタンパク質の定量の際の分析条件の設定を行うことができる。情報源の例としては、過去にペプチドのMS/MSスペクトルから帰属されるタンパク質を推定するサーチ(ソフトウェアの一例;Mascot:Matrix Science Inc.;ボストン、アメリカ合衆国)を行った情報が公開されているWebサイト等が挙げられる。
(変形例2)
複数の試料のタンパク質Prをそれぞれ切断して生成したペプチドPeを混合した試料SのLC/MS/MSにより各試料のタンパク質Prの比較定量を行うこともできる。その場合、上述の実施形態の絞込情報は、さらに、各試料を区別するための質量タグの種類と、フラグメントイオンFの質量の変化とを紐づけた情報を含むことができる。このような質量タグでは、混合前の各試料ごとに、ペプチドPeに同一の質量タグが付される。各試料の質量タグは、それぞれ異なる構造を有するが、同一の質量になるように設計されている。従って、各試料の質量タグは、CIDの前には同じ質量であり、同一のm/zにより当該質量タグが付されたプリカーサイオンが選択されるが、CIDの後には各質量タグの構造の違いに基づいて試料ごとに異なるm/zのフラグメントイオンFとして検出されるように設計されている。これにより、試料間のタンパク質Prの量の比較定量を行うことができる。本変形例の絞込情報により、複数の試料のタンパク質の比較定量においても、第1質量分析において検出しづらいフラグメントイオンFを測定対象から外すことができ、より効率的にタンパク質の定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
(変形例3)
上述の実施形態の絞込情報は、さらに、CIDにおいて優先的に開裂しやすい部位と、フラグメントイオンの種類とが紐づけられた情報を含んでもよい。条件データにおける、優先的に開裂しやすい部位に基づいて、bイオン、yイオン等のフラグメントイオンの種類が限定される。これにより、ペプチドPeの開裂しやすい部位に基づいて、第1質量分析において検出しづらいフラグメントイオンFを測定対象から外すことができ、より効率的にタンパク質の定量の際の分析条件の設定を行うことができる。
(変形例4)
分析装置1の情報処理機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された、上述した配列算出処理および分析条件設定処理を含む測定、定量および表示等の処理およびそれに関連する処理の制御に関するプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
また、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記載)等に適用する場合、上述した制御に関するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体やインターネット等のデータ信号を通じて提供することができる。図8はその様子を示す図である。PC950は、CD-ROM953を介してプログラムの提供を受ける。また、PC950は通信回線951との接続機能を有する。コンピュータ952は上記プログラムを提供するサーバーコンピュータであり、ハードディスク等の記録媒体にプログラムを格納する。通信回線951は、インターネット、パソコン通信などの通信回線、あるいは専用通信回線などである。コンピュータ952はハードディスクを使用してプログラムを読み出し、通信回線951を介してプログラムをPC950に送信する。すなわち、プログラムをデータ信号として搬送波により搬送して、通信回線951を介して送信する。このように、プログラムは、記録媒体や搬送波などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給できる。
上述した情報処理機能を実現するためのプログラムとして、タンパク質Prのアミノ酸配列とタンパク質Prの切断の配列特異性とに基づいて、当該切断を行った場合に生成され得る複数のペプチドPrのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出する配列算出処理と、第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析の分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて、第1質量分析で検出するフラグメントイオンFを設定する分析条件設定処理とを処理装置に行わせるプログラムが含まれる。
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1…分析装置、10…液体クロマトグラフ、14…分析カラム、20…質量分析計、21…イオン化部、23…第1質量分離部、24…コリジョンセル、25…第2質量分離部、30…検出器、40…情報処理部、50…処理部、51…装置制御部、52…配列算出部、53…第1分析条件設定部、54…第2分析条件設定部、55…定量部、100…測定部、F…フラグメントイオン、F1…対象フラグメントイオン、Pr…タンパク質、Pe…ペプチド、Pe1…対象ペプチド、S…試料。

Claims (12)

  1. タンパク質の切断を行って複数のペプチドを生成し、クロマトグラフィで分離された前記複数のペプチドの少なくとも一つのペプチドのフラグメントイオンを第2質量分析によって検出することにより前記タンパク質の定量を行う分析方法であって、
    前記タンパク質のアミノ酸配列と前記切断の配列特異性とに基づいて、前記切断を行った場合に生成され得る複数のペプチドのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出することと、
    前記第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析における分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて該第1質量分析におけるコリジョンエネルギーの値の範囲を決定し、前記第1質量分析で検出する第1フラグメントイオンを設定するとともに前記コリジョンエネルギーの値の範囲内で該第1質量分析における複数のコリジョンエネルギーを設定することと、
    前記第1質量分析により、前記第1フラグメントイオンを検出することと、
    前記第1質量分析における検出により得た測定データに基づいて、前記第2質量分析で検出する第2フラグメントイオン及び該第2質量分析におけるコリジョンエネルギーを設定することと、
    前記第2質量分析により、前記第2フラグメントイオンを検出することと、
    前記第2質量分析における検出に基づいて、前記タンパク質を定量することと、
    を備え、
    前記絞込情報は、前記ペプチド配列、前記ペプチド配列に基づいて算出されたパラメータ、前記切断の条件、前記第1質量分析の条件、および前記クロマトグラフィの条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、前記第1質量分析の分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報である分析方法。
  2. 請求項1に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、前記切断を行ったタンパク質切断試薬、有機溶媒、緩衝液または添加剤の種類を含む前記クロマトグラフィの移動相の組成、前記移動相のpHおよび温度、ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数、誘導体化剤の種類および前記誘導体化剤に置換される官能基の数、翻訳後修飾により想定され得る価数の変化ならびに前記第1質量分析において検出するイオンの正負の極性の数からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドがイオン化された際の価数とが紐づけられている情報を含む分析方法。
  3. 請求項1又は2に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、ペプチドがイオン化された際の価数とそれぞれの前記価数を有する当該ペプチドの構成比、当該ペプチドのm/z、ならびに、CIDガスの種類および/または圧力からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドを解離するためのコリジョンエネルギーとが紐づけられている情報を含む分析方法。
  4. 請求項1から3までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、ペプチドがイオン化された際の価数及び質量電荷比と、該ペプチドを解離するためのコリジョンエネルギーの範囲とが紐づけられている情報を含む分析方法。
  5. 請求項1から4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、前記クロマトグラフィにおけるカラムの種類および温度、移動相の組成および/またはグラジエント条件、ならびにペプチドの疎水性指標からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドの前記クロマトグラフィにおける溶出時間とが紐づけられている情報を含む分析方法。
  6. 請求項1から5までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、ペプチドおよび/または前記クロマトグラフィにおける移動相の成分のプロトン親和力および/または電子親和力、ペプチドに含まれる酸性アミノ酸の数および塩基性アミノ酸の数、ならびに前記第1質量分析において検出するイオンの正負の極性からなる群から選択される少なくとも一つと、ペプチドのイオン化しやすさを示すパラメータとが紐づけられている情報を含む分析方法。
  7. 請求項1から6までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、ペプチド配列およびコリジョンエネルギーと、前記ペプチド配列において切断されやすい位置、過去に取得された当該ペプチド配列からなるペプチドのMS/MSスペクトルならびに/または前記MS/MSスペクトルで検出されたフラグメントイオンの価数、m/z、種類および/または検出強度とが紐づけられている情報を含む分析方法。
  8. 請求項1から7までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、ペプチドのMS/MSスペクトルと、当該ペプチドが帰属するタンパク質のデータを公開しているネットワーク上の情報源のアドレスとが紐づけられている情報を含む分析方法。
  9. 請求項1から8までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記絞込情報は、ペプチドのアミノ酸配列と、翻訳後修飾に関するフラグメントイオンの検出強度とが紐づけられている情報を含む分析方法。
  10. タンパク質の切断により生成された複数のペプチドがクロマトグラフィにより分離され、前記複数のペプチドのうち少なくとも一つのペプチドのフラグメントイオンが第2質量分析によって検出されることにより前記タンパク質の定量が行われる分析方法に用いられる処理装置であって、
    前記タンパク質のアミノ酸配列と前記切断の配列特異性とに基づいて、前記切断を行った場合に生成され得る前記複数のペプチドのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出する配列算出部と、
    前記第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析の分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて該第1質量分析におけるコリジョンエネルギーの値の範囲を決定し、前記第1質量分析で検出するフラグメントイオンを設定するとともに前記コリジョンエネルギーの値の範囲内で該第1質量分析における複数のコリジョンエネルギーを設定する分析条件設定部と、
    を備え、
    前記絞込情報は、前記ペプチド配列、前記ペプチド配列に基づいて算出されたパラメータ、前記切断の条件、前記第1質量分析の条件、および前記クロマトグラフィによる分離の条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、前記第1質量分析における分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報である処理装置。
  11. 請求項10に記載の処理装置と、
    クロマトグラフと、
    質量分析計と
    を備える分析装置。
  12. タンパク質の切断により生成された複数のペプチドがクロマトグラフィにより分離され、前記複数のペプチドのうち少なくとも一つのペプチドのフラグメントイオンが第2質量分析によって検出されることにより前記タンパク質の定量が行われる分析方法に用いられる処理装置に、
    前記タンパク質のアミノ酸配列と前記切断の配列特異性とに基づいて、前記切断を行った場合に生成され得る前記複数のペプチドのアミノ酸配列である複数のペプチド配列を算出する配列算出処理と、
    前記第2質量分析における分析条件の設定のために行われる第1質量分析の分析条件を絞り込むための絞込情報に基づいて該第1質量分析におけるコリジョンエネルギーの値の範囲を決定し、前記第1質量分析で検出するフラグメントイオンを設定するとともに前記コリジョンエネルギーの値の範囲内で該第1質量分析における複数のコリジョンエネルギーを設定する分析条件設定処理と、を行わせ、
    前記絞込情報は、前記ペプチド配列、前記ペプチド配列に基づいて算出されたパラメータ、前記切断の条件、前記第1質量分析の条件、および前記クロマトグラフィによる分離の条件からなる群から選択される少なくとも一つに対応する条件データと、前記第1質量分析における分析条件を設定するための設定データとが紐づけられて記憶媒体に記憶されている情報であるプログラム。
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