JPWO2011001777A1 - 花の色を薄く又は濃くする方法 - Google Patents

花の色を薄く又は濃くする方法 Download PDF

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Abstract

花の色を薄く又は濃く変化させる新規方法の提供。本発明に係る方法は、以下のステップ:タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を制御するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を変化させて該植物の花の色を薄く又は濃くする方法である。

Description

本発明は、タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を制御することにより、植物の花弁中のアントシアニン含量を変化させて該植物の花の色を薄く又は濃くする方法、より詳しくは、タイプIVカルコンイソメラーゼの発現を抑制することにより、植物の花弁中のアントシアニン含量を低下させて該植物の花の色を薄くする方法、及びこれらの方法に有用な新規遺伝子に関する。
花の色は、花卉の重要な形質であることから、色を変えることは花卉産業上有用である。花の色を含む植物の形質を改変する方法としては、(i)交雑、(ii)突然変異、(iii)遺伝子組換えなどの方法がある。遺伝子組換えにより花の色を薄くするか又は白くする方法として、ペチュニア(Petunia)、トレニア(Torenia)、バラ、キク、カーネーション等において花の色素であるアントシアニンの生合成に関わる酵素の遺伝子の内いくつかの発現をアンチセンス法、センス法(コサプレッション法)、RNAi法等により抑制することにより実現されている。
カルコンイソメラーゼは、そのようなアントシアニンの生合成に関わる酵素の内の一つであり、カルコンをフラバノンに異性化する反応を触媒する。代表的なカルコンは、2’,4,4’,6’-テトラヒドロキシカルコンであり、カルコンイソメラーゼは、これをナリンゲニンへと異性化する反応を触媒する。この反応を触媒するカルコンイソメラーゼは、タイプIカルコンイソメラーゼと呼ばれる(以下、非特許文献1参照)。マメ科植物は、この反応に加え、6'-デオキシカルコンを5-デオキシフラバノンへと異性化する反応も触媒するカルコンイソメラーゼを持ち、このカルコンイソメラーゼは、タイプIIカルコンイソメラーゼと呼ばれる。これらのカルコンイソメラーゼ間のアミノ酸同一性はミヤコグサ(L. japonicum)の場合、55〜90%である。
カルコンイソメラーゼのアミノ酸配列に相同性を示す蛋白質は、上記タイプI、タイプII以外にも知られている。アミノ酸配列にもとづいて分子系統樹に基づくと、タイプIII、及びタイプIVと分類されるグループも存在している。かかるタイプIIIカルコンイソメラーゼ及びタイプIVカルコンイソメラーゼは両者とも、タイプIカルコンイソメラーゼの触媒活性中心を持たないため、カルコンイソメラーゼとしての活性はないと考えられている(非特許文献1参照)。タイプIVカルコンイソメラーゼとしては、アラビドプシスのAT5G05270にコードされる蛋白質が弱い同一性を示すことが知られているが、その機能は不明である。タイプIVカルコンイソメラーゼがアントシアニンの合成に関与しているかどうかも不明であり、タイプIVカルコンイソメラーゼの遺伝子を用いて花の色を変えた例は未だ報告されていない。また、アントシアニンの合成に関わる複数の酵素は、蛋白質間の相互作用により、超分子構造を形成していると提唱されているが、このような相互作用にタイプIVカルコンイソメラーゼが関与していることも知られていない。
ところで、アサガオ(Ipomoea nil)は、日本で人気のある園芸植物の一つであり、江戸時代から品種改良が行われてきた。その過程で花色や形態が変化したさまざまな変異株が得られている。これらの変異株の内の易変異性アサガオの変異原は、Tpn1類縁のDNA型トランスポゾンであることが知られている。例えば、カルコン合成酵素、カルコンイソメラーゼ(異性化酵素)などの構造遺伝子にTpn1が挿入されることによりアントシアニンの合成が阻害され、花色が白くなる。Tpn1の脱離により構造遺伝子の機能が回復するとアントシアニンの合成が復活し、着色が起こる。一方、花色の濃淡に関わる遺伝子座として、Dilute、Intense、Light、Tinged、Faintedなどが知られているが、これらの遺伝子は未だ同定されていないし、産業的に利用されてもいない。
また、アサガオは複雑な構造のアントシアニンを生産することが知られている。最も複雑なアントシアニンは、ヘブンリーブルーアントシアニンと呼ばれ、ペオニジンにブドウ糖が6個、カフェ酸が3個結合している。ヘブンリーブルーアントシアニンのB環の3’のメトキシ基がないものは、ウェディングベルアントシアニンと呼ばれる。これらのアントシアニンの生合成経路は完全には解明されていないが、これらの前駆体であるアントシアニン、すなわち、結合しているブドウ糖やカフェ酸の数が少ないアントシアニンがアサガオ花弁には含まれている。アントシアニンや花色に係わる遺伝子の転写は、R2R3-Mybドメイン、bHLHドメイン、WD40リピートを持つ転写調節因子により制御されていることが知られていて、アサガオからもこれらに対応する遺伝子座と遺伝子が同定されている。遺伝子座c-1とcaは、それぞれ、R2R3-MybドメインとWD40リピートを持つ転写調節因子をコードしている。
赤い花を咲かせるアサガオ品種千鳥と、千鳥から自然突然変異により現れた花色の薄い易変異株であるくすみ千鳥のアントシアニンの種類、含量を、以下の非特許文献2に記載された方法に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLCによる分析に先立ち、95%MeOH/5%酢酸で、開花した花弁拡大部からアントシアニンを抽出した。品種千鳥に比べ、変異株ではアントシアニンの量が減少していたが、ウェディングベルアントシアニンを始め花弁に含まれるアントシアニンの種類は品種千鳥と変異株の間で変化はなかった。これは、アサガオ品種千鳥の変異株において花色が薄くなった原因はアントシアニンの生合成の関わる酵素の変異に因るものではないことを示唆している。
Plant Physiology, April 2005, Vol. 137, pp. 1375-1388 Phytochemistry, February 1992, Vol. 31, pp. 659-663
本発明が解決しようとする課題は、花の色を薄く又は濃く変化させる新規方法を提供することである。
本発明者らは、赤色の花を咲かせる千鳥系統とピンク色の花を咲かせるくすみ千鳥系統の遺伝的な違いが、原因遺伝子に挿入したトランスポゾンによるものであると予想し、トランスポゾンディスプレイ法を用いてトランスポゾン近傍領域を増幅して、くすみ千鳥系統に特異的に増えるDNA断片を取得した。かかるDNA断片はタンパク質をコードしていなかったため、近傍のゲノム領域を、インバースPCR法を用いて赤色の千鳥系統から単離した。得られたゲノム領域は、ダイズから単離されたタイプIVに分類されるカルコンイソメラーゼと相同性を示すことを発見した。かかる発見に基づき、タイプIVカルコンイソメラーゼの発現を抑制することにより、植物の花弁中のアントシアニン含量を低下させて該植物の花の色を薄くすることができるのではないかと推定し、実験を重ね、これを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を制御するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を変化させて該植物の花の色を薄く又は濃くする方法。
[2]タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を抑制するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を低下させて該植物の花の色を薄くする方法。
[3]以下の(a)〜(d):
(a)配列番号25の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号25の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号25の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、ペチュニアの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該ペチュニアの花の色を薄くする、前記[2]に記載の方法。
[4]前記遺伝子の発現の抑制がRNAi法による、前記[3]に記載の方法。
[5]前記[3]又は[4]に記載の方法により得られたペチュニア、又はアントシアニン含量低下効果に関し該ペチュニアと同様の性質を有する子孫、あるいはそれらの組織。
[6]以下の(a)〜(d):
(a)配列番号25の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号25の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号25の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子。
[7]以下の(a)〜(d):
(a)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号29又は31の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、トレニアの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該トレニアの花の色を薄くする、前記[2]に記載の方法。
[8]前記遺伝子の発現の抑制がRNAi法による、前記[7]に記載の方法。
[9]前記[7]又は[8]に記載の方法により得られたトレニア、又はアントシアニン含量低下効果に関し該トレニアと同様の性質を有する子孫、あるいはそれらの組織。
[10]以下の(a)〜(d):
(a)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号29又は31の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子。
[11]以下の(a)〜(d):
(a)配列番号10の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号10の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号10の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号10の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、アサガオの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該アサガオの花の色を薄くする、前記[2]に記載の方法。
[12]前記遺伝子の発現の抑制がRNAi法による、前記[11]に記載の方法。
[13]以下の(a)〜(d):
(a)配列番号10の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号10の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号10の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号10の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子。
本発明により、タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を制御することによって、植物の花弁中のアントシアニン含量を変化させて該植物の花の色を薄く又は濃くすることができる。
アサガオくすみ千鳥系統に特異的に増える254bpDNA断片の塩基配列を示す。 アサガオCHI−B遺伝子の空間的発現に関するRT−PCRの分析結果を示す。 アサガオの花弁の発育段階にともなうCHI−B遺伝子の転写産物のノザンブロット分析結果を示す。 ペチュニア品種サフィニアパープルミニ(サントリーフラワーズ社)において、PtCHI−B遺伝子の転写産物量が低下した系統の花弁の花の色が、薄くなったことを示す。 トレニア品種サマーウェーブブルー(サントリーフラワーズ社)において、TrCHI−B2又はTrCHI−B11遺伝子の転写産物量が低下した系統の花弁の花の色が、薄くなったことを示す。
前記したように、タイプIVカルコンイソメラーゼの機能は不明であった。また、タイプIVカルコンイソメラーゼがアントシアニンの合成に関与しているかどうかも不明であり、タイプIVカルコンイソメラーゼの遺伝子を用いて花の色を変えた例もなかった。また、アントシアニンの合成に関わる複数の酵素は、蛋白質間の相互作用により、超分子構造を形成していると提唱されているが、このような相互作用にタイプIVカルコンイソメラーゼが関与していることも知られていなかった。
本発明は、タイプIVカルコンイソメラーゼの発現が抑制されていると、アサガオの花弁中のアントシアニン含量が低下して花の色が薄くなったという発見に一部基づくものである。
前記したように、タイプIVカルコンイソメラーゼは両者とも、タイプIカルコンイソメラーゼの触媒活性中心を持たないため、カルコンイソメラーゼとしての活性はないと考えられている。したがって、特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、タイプIVカルコンイソメラーゼは、アントシアニンの合成に関わる複数の酵素間の相互作用により形成される超分子構造の形成に、関与して、花弁中のアトシアニン含量に間接的に影響を及ぼしていると推定している。
本発明の1の態様は、タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を制御するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を変化させて該植物の花の色を薄く又は濃くする方法である。特に、本発明により、タイプIVカルコンイソメラーゼの発現を抑制するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を低下させて該植物の花の色を薄くする方法が提供されるである。尚、この遺伝子を過剰発現させることにより花の色を濃くすることも可能であろう。
本明細書中、「タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)」とは、非特許文献1の記載に従ってタイプIVに分類されるカルコンイソメラーゼをいう。
本発明の他の態様は、以下の(a)〜(d):
(a)配列番号25の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号25の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号25の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、ペチュニアの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該ペチュニアの花の色を薄くする方法である。
前記(b)のDNAにおける「1若しくは数個」とは、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有する範囲であれば、配列番号25の塩基配列において塩基が、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、欠失、置換若しくは付加されていてもよいことを意味する。また、「欠失」、「置換」、「付加」とは、配列番号25の塩基配列によりコードされる蛋白質(配列番号26)と同様の性質を有する蛋白質をコードする塩基配列を生じるものをいう。
前記(c)のDNAにおける「ストリンジェントな条件」とは、配列番号25の塩基配列からなるDNAの相補鎖にハイブリダイズさせるDNAに応じて、ハイブリダイゼーション時の、好ましくはさらに洗浄時の温度及び塩濃度を適宜決定することにより設定し得るが、ストリンジェントな条件としては、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件が挙げられる。具体的には、例えば、(i) 6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5% SDSと5×デンハルトと100μg/mL 変性断片化サケ精子DNAと50% ホルムアミドを含む溶液中、プローブと共に42℃で一晩保温し、(ii) 非特異的にハイブリダイズしたプローブを洗浄により除去するステップ、ここで、より精度を高める観点から、より低イオン強度、例えば、2×SSC、よりストリンジェントには、0.1×SSC等の条件及び/又はより高温、例えば、用いられる核酸のTm値の40℃下、よりストリンジェントには、30℃下、さらにストリンジェントには、25℃下、よりさらにストリンジェントには、10℃下、具体的には、用いられる核酸のTm値により異なるが、25℃以上、よりストリンジェントには、37℃以上、さらにストリンジェントには、42℃以上、よりさらにストリンジェントには、50℃以上、より一層ストリンジェントには、60℃以上等の条件下で洗浄を行う、という条件が挙げられる。Tmは、例えば、下記式:Tm=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)(式中、Nはオリゴヌクレオチドの鎖長であり、%G+Cはオリゴヌクレオチド中のグアニン及びシトシン残基の含有量である)により求められる。ハイブリダイゼーションの操作は、例えば、前記成書を参照して行えばよい。尚、本明細書において記載する操作は、当該成書を参照することにより適宜実施することができる。
ハイブリダイズ可能なDNAとして、具体的には、BLAST、FASTA等の解析ソフトを用いて計算したときに、配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上の同一性を有するDNAを挙げることができる。前記(d)は、配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNAを規定している。
前記遺伝子の発現の抑制は、アンチセンス法、センス法(コサプレッション法)、RNAi法等、いずれでも構わないが、好ましくは、RNAi法である。
前記方法により得られたペチュニア、又はアントシアニン含量低下効果に関し該ペチュニアと同様の性質を有する子孫、あるいはそれらの組織、部分、特に花弁を含む部分も、本発明の範囲内にある。
また、前記方法に使用する配列番号25の塩基配列からなるDNA等も本発明の範囲内にある。
本発明に他の態様は、以下の(a)〜(d):
(a)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号29又は31の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、トレニアの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該トレニアの花の色を薄くする方法である。
本発明のさらに他の態様は、以下の(a)〜(d):
(a)配列番号10の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号10の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(c)配列番号10の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
(d)配列番号10の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、アサガオの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該アサガオの花の色を薄くする方法である。
配列番号25の塩基配列からなるDNAに関して前記した事項は、配列番号29、31、及び10の塩基配列からなるDNAにも同様に該当し、これらの遺伝子の発現の抑制は、アンチセンス法、センス法(コサプレッション法)、RNAi法等、いずすれでも構わないが、好ましくは、RNAi法であり、また、前記方法により得られたトレニア又はアサガオ、又はアントシアニン含量低下効果に関し該トレニア又はアサガオと同様の性質を有する子孫、あるいはそれらの組織、部分、特に花弁を含む部分も、本発明の範囲内にある。さらに、前記方法に使用する配列番号29、31、及び10の塩基配列からなるDNA等も本発明の範囲内にある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されることを意図されない。
実施例1:アサガオDNA断片の取得
本発明者らは、赤色の花を咲かせる千鳥系統とピンク色の花を咲かせるくすみ千鳥系統の遺伝的な違いが、原因遺伝子に挿入したトランスポゾンによるものと推定した。そこで、トランスポゾンディスプレイ法(Fukada-Tanaka et al. Plant Biotech. 18, 143-149. 2001参照)を用いてトランスポゾンの近傍領域を増幅し、くすみ千鳥系統に特異的に増えていた259bpのDNA断片を取得した(配列番号1、図1参照)。DNA断片の増幅には、制限酵素TaqIで消化したゲノムDNAに、TaqI adapter (5’-GCGGATGAGTCCTGAG-3’(配列番号2)と5’-CGCTCAGGACTCAT-3’(配列番号3))を結合後、TaqI-C (5’-GAGGATGAGTCCTGAGCGAC-3’配列番号4)とTIR-T (5’-TGTGCATTTTTCTTGTAGTGT-3’配列番号5)の2つのプライマーを用いた。トランスポゾンディスプレイ法により得られたDNA断片はタンパク質をコードしていなかったため、近傍のゲノム領域を、インバースPCR法を用いて赤色の千鳥系統から単離した。DNA断片の増幅には、制限酵素TaqIで消化したゲノムDNAをT4 DNAライゲースを用いて環状化させ、トランスポゾンディスプレイ法により得られたDNA断片に設計したプライマーを用いてPCRを行なった。一次増幅には、IPCR-A1 (5’-ATTCATGTCTAAAATGTGACACC-3’配列番号6)とIPCR-B1 (5’-TCAATTTCAGACGAGAAAACTC-3’配列番号7)の二種類のプライマーを、二次増幅には、IPCR-A2 (5’-TGACACCCTGGCTAGTTCAG-3’配列番号8)とIPCR-B2 (5’-GAAAACTCATAACTACTACTCC-3’配列番号9)の二種類のプライマーを用いた。インバースPCR法により得られた1.1 kbのDNA領域は、ダイズから単離されたタイプIVに分類されるカルコンイソメラーゼ(AY595417)(非特許文献1参照)と相同性を示した。
実施例2:遺伝子のスクリーニング
ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)における野生型系統のアサガオ系統TKSのつぼみ及びシードリングから抽出したRNAを用いて作成されたESTライブラリーのデータベースから、インバースPCRにより得られた上記1.1 kbのDNA領域に対応するcDNAを単離し、この遺伝子をCHI−Bと名付けた。その配列を配列番号10に示す。この配列がコードするアミノ酸配列(配列番号11)は、前述のアラビドプシスAT5G05270とダイズAY595417に対して、それぞれ、59%と56%の同一性を示した。この遺伝子の発現の組織特異性をRT-PCRにより調べた。それぞれの組織からCsCl法又はGet pureRNA Kit (Dojindo社)を用いて取得したRNAを、SuperScript ファーストストランド システム(RT-PCR用)(invtrogen社)を用いてDNAに逆転写し、このDNAを鋳型に、CHI-B LA-F2 (5’-AGTTCTTCTTGCAGGCTGCAGAC-3’配列番号12)とCHI-B R1 (5’-ACTCCATAGGATCACCAAACTCTC-3’配列番号13)をプライマーに用いてPCRを行なった結果を図2に示す。図2から、CHI−B遺伝子は花弁で特異的に発現していることが分かる。尚、図2中、CHI−AとCHI−Cは、それぞれ、タイプIカルコンイソメラーゼとタイプIIIカルコンイソメラーゼをコードする遺伝子を示す。
また、花弁の発育段階にともなうCHI-B遺伝子の転写産物をノザン解析により調べたところ、図3に示すように、開花の12時間前に最も強く発現していたことが分かった。転写調節因子c-1又はcaが変異している花の花弁では、CHI-B遺伝子の発現は見られなかった。これらの結果は、CHI-Bがアントシアニンの合成に何らかの役割を担っていることを示唆している。
実施例3:ペチュニアのホモログの取得と機能解析
CHI-A蛋白質では保存されていないが、CHI-B蛋白質では保存されているアミノ酸配列に基づいて、以下のプライマーを合成した。ここで、Mは、デオキシイノシン、Hは、A、T、Cの混合物、Yは、CとTの混合物、Rは、AとGの混合物、Bは、デオキシウラシル、Wは、AとTの混合物、Dは、AとTとGの混合物、Kは、TとGの混合物、そしてSは、CとGの混合物を表す。
CHIB-F1 (5'-GGMATHACMGAYGTMGARABHCAYTTY-3’配列番号14)
CHIB-F2 (5'-TMWSMYTMHTMGGMCAMGGMATHAC-3’配列番号15)
CHI-B R1 (5'-CCYTTDATYTCYTMDATMACMAC-3’配列番号16)
CHI-B R2 (5'-TCYTCYTCYTCYTCRTAYTTKTC-3’配列番号17)
CHI-B R3 (5'-TTYTTRAARTAYTTMSWYTGRAA-3’配列番号18)
ペチュニアの蕾からRNeasy Plant Kit (QIAGEN社)を用いてRNAを抽出した。スーパースクリプトファーストストランドシステム(インビトロジェン社)を用いてcDNAを合成し、これを鋳型にし、(CHIB-F1、CHI-B R1)、(CHIB-F1、CHI-B R2)、(CHIB-F1、CHI-B R3)、(CHIB-F2、CHI-B R1)、(CHIB-F2、CHI-B R2)、及び(CHIB-F2、CHI-B R3)のプライマー・セットを用いてPCRを行なった。反応は、25μlで行い、95℃30秒、72℃30秒、55℃30秒を1サイクルとし、これを30回繰り返した。それぞれの反応液を100 倍に希釈したもの1μlを鋳型として、上述と同じPCRを繰り返した。その結果、(CHIB-F2、CHI-B R2)のプライマー・セットでDNAバンドが得られたのでこれをpCR2.1TOPOに連結することにより、pSPB3387を得た。pSPB3387にはCHI-Bの部分cDNAが挿入されている。
全長cDNAを得るために、上記DNA断片の5'側、3'側の配列をGene Racer(インビトロジェン社)を用いて製造者の推奨するプロトコールに従って増幅した。すなわち、5’側の配列は、1回目のPCRは花弁のcDNAを鋳型にしてGeneRacer 5’ プライマー(5'-CGACTGGAGCACGAGGACACTGA-3'配列番号19)とPtCHIB-R1プライマー(5'-CTCTTACAGCACTCTCTAGC-3'配列番号20)を用いて行なった。増幅されたDNAを鋳型に2回目のPCRをGeneRacer 5’ネステッドプライマー(5'-GGACACTGACATGGACTGAAGGAGTA-3'配列番号21)とPtCHIB-RIプライマーを用いて行なった。このDNAバンドをpCR2.1TOPOに連結することにより、pSPB3401を得た。3'側の配列は、1回目のPCRは花弁のcDNAを鋳型にGeneRacer 3’ プライマー(5'-GCTGTCAACGATACGCTACGTAACG-3'配列番号22)とPtCHIB-F1プライマー(5'-CATTGAGATACACTTTCTCC-3'配列番号23)を用いて行なった。増幅されたDNAを鋳型に2回目のPCRをGeneRacer 3’ネステッドプライマー(5'-CGCTACGTAACGGCATGACAGTG-3'配列番号24)とPtCHIB-F1プライマーを用いて行なった。このDNAバンドをpCR2.1TOPOに連結することにより、pSPB3402を得た。pSPB3401をBamHIで消化して得られるDNA断片を、BamHIで消化して得られるpSPB3402に連結することにより、カルコンイソメラーゼタイプIVに分類されるペチュニアCHI-Bの全長(配列番号25)を含むプラスミドpSPB3400を得た。この配列がコードするアミノ酸配列(配列番号26)は、アサガオCHI-B、アラビドプシスAT5G05270、及びダイズAY595417に対して、それぞれ、74%、56%、及び58%の同一性を示した。
(i)pSPB3401をEcoRVとXhoIで消化して得られるDNA断片、(ii)pSPB3401をXhoIとBamHIで消化して得られるDNA断片、(iii)pSPB3400をBamHIとRsaIで消化して得られる約400bpのDNA断片を、連結することによりプラスミドpSPB3407を得た。このプラスミドをKpnIとXbaIで消化して約1050bpのDNA断片を回収し、これを、XbaIとKpnIで消化したバイナリーベクターに連結した。得られたプラスミドをpSPB3408とした。このプラスミドはペチュニアのCHI-B遺伝子の二本鎖RNAが構成的に転写されることを意図したものである。
PtCHI-B遺伝子の発現を抑制するために、ペチュニア品種サフィニアパープルミニ(サントリーフラワーズ株式会社)を、バイナリーベクターpSPB3408を含むアグロバクテリウムにより形質転換した。得られた形質転換体のつぼみの花弁からRNAを抽出し、RT-PCRキット(プロメガ社、プライマーとしてPtCHIB-FW (5'-ATGGGAAAGAACGAAGTGATGG-3'配列番号27)とPtCHIB-RV (5'-TCATTTAGATAATTCAGCAGAG-3'配列番号28)を使用して、得られた形質転換体のつぼみ花弁に含まれるPtCHI-B遺伝子の転写産物の量を測定した。転写産物の量が減少した系統の花弁は、宿主及びび転写産物の量が減少していない系統の花弁に比べて、花の色が薄かった(図4参照)。また、これらの花弁0.5gからアントシアニンを抽出し、加水分解後、アントシアニジンの量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。実験の手順は、WO 2005/017147に記載の方法に依った。アントシアニジンの総量の相対量を高速液体クロマトグラフィーによる測定で得られたピークの面積を指標にして比較した。CHI-Bを抑制したペチュニアの面積は約30%程度にまで減少していた。結果を以下の表1に示す。
表1及び図4から、ペチュニアのCHI-B遺伝子の発現を抑制することにより、花弁中のアントシアニン含量が減少し、花の色が薄くなっていたことが分かった。
実施例4:トレニアのホモログの取得と機能解析
実施例3と同様にトレニアのホモログを取得した。トレニア品種サマーウェーブブルー(サントリーフラワーズ社)のつぼみの花弁からRNAを抽出した。これを鋳型にcDNAを合成し、プライマーCHIB-F2とCHI-B R2とを用いて、PCRを行なった。得られたDNA断片をpCRTOPOにクローニングし、これをpSPB3388とした。これを用いてトレニアのcDNAライブラリー(Molecular Breeding 6, 239-246 2000に記載)をスクリーニングし、タイプIVカルコンイソメラーゼに分類される蛋白質をコードする遺伝子として、TrCHI-B2(配列番号29)とTrCHI-B11(配列番号31)を得た。そしてこれらをそれぞれ含むプラスミドpSPB3398とpSPB3399を得た。配列番号29がコードするアミノ酸配列(配列番号30)は、アサガオCHI-B、ペチュニアCHI-B、アラビドプシスAT5G05270、及びダイズAY595417に対して、それぞれ、67%、70%、58%、及び57%の同一性を示した。配列番号31がコードするアミノ酸配列(配列番号32)は、アサガオCHI-B、ペチュニアCHI-B、TrCHI-B2、アラビドプシスAT5G05270、及びダイズAY595417に対して、それぞれ、65%、70%、94%、58%、及び57%の同一性を示した。
WO2005/059141に記載されているプラスミドpSFL313をBamHIで消化したDNA断片と、pSPB3398をBglIIとSmaIで消化して得られる540bpのDNA断片と、pSPB3398をBglIIとPvuIIで消化して得られる280bpのDNA断片とを連結し、pSPB3403を得た。このプラスミドをHindIIIとEcoRIで消化して得られるDNA断片を、pBin+のHindIIIとEcoRIにクローニングした。このバイナリーベクターpSPB3405は、トレニアのCHI-B2の二本鎖RNAを構成的に転写するように設計されている。
また、ThCHI-B11の発現を抑制するためのバイナリーベクターを以下のように作製した。プラスミドpSFL313をBamHIで消化したDNA断片と、pSPB3399をBglIIとHindIIIで消化して得られる670bpのDNA断片と、pSPB3399をBglIIとEcoRIで消化して得られる360bpのDNA断片とを連結し、pSPB3404を得た。このプラスミドをAscIで消化して得られるDNA断片を、pBin+のAscIにクローニングした。このバイナリーベクターpSPB3406は、トレニアのCHI-B11の二本鎖RNAを構成的に転写するように設計されている。
トレニア品種サマーウェーブブルー(サントリーフラワーズ株式会社)を、バイナリーベクターpSPB3405を含むアグロバクテリウムにより形質転換した。得られた形質転換体のつぼみの花弁からRNAを抽出し、RT-PCRキット(プロメガ社、プライマーTrCHIB-FW (5'-GTATGGCCGGCGGTGAAG-3'配列番号33)とTrCHIB-RV (5'-CTCATTTCGATAACTCAGC-3'配列番号34)を用いて、得られた形質転換体のつぼみ花弁に含まれるTrCHI-B2の転写産物の量を測定した。転写産物の量が減少した系統の花弁は、宿主及び転写産物の量が減少していない系統の花弁に比べて、花の色が薄かった(図5上段、表2参照)。また、これらの花弁0.5gを、1%塩酸を含むメタノール5mlに浸潤することによりアントシアニンを抽出した。抽出したアントシアニンの400nm〜650nmのスペクトルを測定した。極大値の波長での吸光度によりアントシアニンを定量したところ、転写産物の量が減少した系統の花弁のアントシアニン量は少ないことが示された。
同様に、トレニア品種サマーウェーブブルー(サントリーフラワーズ株式会社)を、バイナリーベクターpSPB3406を含むアグロバクテリウムにより形質転換した。得られた形質転換体のつぼみの花弁からRNAを抽出し、RT-PCRキット(業者、プライマー)を用いて、得られた形質転換体のつぼみ花弁に含まれるTrCHI-B11の転写産物の量を測定した。転写産物の量が減少した系統の花弁は、宿主及び転写産物の量が減少していない系統の花弁に比べて、花の色が薄かった(図5下段、表3参照)。また、これらの花弁0.5gを、1%塩酸を含むメタノール5mlに浸潤することによりアントシアニンを抽出した。抽出したアントシアニンを400nm〜600nmのスペクトルを測定した。極大値の波長での吸光度によりアントシアニンを定量したところ、転写物量が減少した系統の花弁のアントシアニン量は少ないことが示された。
本発明は、タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を抑制すことにより、植物の花弁中のアントシアニン含量を低下させて該植物の花の色を薄くする方法及び該方法に有用な新規遺伝子を提供することができるので、例えば、花卉産業において好適に利用可能である。

Claims (13)

  1. タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を制御するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を変化させて該植物の花の色を薄く又は濃くする方法。
  2. タイプIVカルコンイソメラーゼ(Type IV Chalcone Isomerase)の発現を抑制するステップを含む、植物の花弁中のアントシアニン含量を低下させて該植物の花の色を薄くする方法。
  3. 以下の(a)〜(d):
    (a)配列番号25の塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号25の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (c)配列番号25の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (d)配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップをを含む、ペチュニアの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該ペチュニアの花の色を薄くする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記遺伝子の発現の抑制がRNAi法による、請求項3に記載の方法。
  5. 請求項3又は4に記載の方法により得られたペチュニア、又はアントシアニン含量低下効果に関し該ペチュニアと同様の性質を有する子孫、あるいはそれらの組織。
  6. 以下の(a)〜(d):
    (a)配列番号25の塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号25の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (c)配列番号25の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (d)配列番号25の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号25の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    のいずれかからなる遺伝子。
  7. 以下の(a)〜(d):
    (a)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号29又は31の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (c)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (d)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、トレニアの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該トレニアの花の色を薄くする、請求項2に記載の方法。
  8. 前記遺伝子の発現の抑制がRNAi法による、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項7又は8に記載の方法により得られたトレニア、又はアントシアニン含量低下効果に関し該トレニアと同様の性質を有する子孫、あるいはそれらの組織。
  10. 以下の(a)〜(d):
    (a)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号29又は31の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (c)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (d)配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号29又は31の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    のいずれかからなる遺伝子。
  11. 以下の(a)〜(d):
    (a)配列番号10の塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号10の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (c)配列番号10の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (d)配列番号10の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    のいずれかからなる遺伝子の発現を抑制するステップを含む、アサガオの花弁中のアントシアニン含量を低下させて該アサガオの花の色を薄くする、請求項2に記載の方法。
  12. 前記遺伝子の発現の抑制がRNAi法による、請求項11に記載の方法。
  13. 以下の(a)〜(d):
    (a)配列番号10の塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号10の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (c)配列番号10の塩基配列からなるDNAの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    (d)配列番号10の塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、アントシアニン含量低下効果に関し配列番号10の塩基配列からなるDNAと同様の機能を有するDNA;
    のいずれかからなる遺伝子。
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