JP2004180592A - トランスポゾン遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【課題】ソライロアサガオ等の真核生物において、複製を介して転移することにより変異原として働くローリング・サークル型トランスポゾンを取得し、分子育種に利用する。
【解決手段】特定配列で表される塩基配列(約11.5kb)に少なくとも98%相同のDNAから成るトランスポゾン遺伝子を提供する。このトランスポゾン遺伝子は、転移に必要と思われる2つの遺伝子(Replication Protein A 70kDa subunit(RPA70)とReplication initiator protein/DNA Helicase(Rep/Hel))を有していることから、自律性トランスポゾンであると考えられる。
【選択図】 なし
【解決手段】特定配列で表される塩基配列(約11.5kb)に少なくとも98%相同のDNAから成るトランスポゾン遺伝子を提供する。このトランスポゾン遺伝子は、転移に必要と思われる2つの遺伝子(Replication Protein A 70kDa subunit(RPA70)とReplication initiator protein/DNA Helicase(Rep/Hel))を有していることから、自律性トランスポゾンであると考えられる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、トランスポゾン遺伝子に関し、より詳細には、ソライロアサガオから見出されたローリング・サークル型と考えられるトランスポゾン遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
トランスポゾンは、転移の様式によりRNA中間体を介して転移するクラスI因子と、DNAの切り出しを伴い転移するクラスII因子の2種に大別される。さらに、原核生物では、ローリングサークルを介した複製によりDNAの切り出しを伴わずに転移する、どちらのクラスにも属さないローリング・サークル型トランスポゾンが知られている。2001年7月には、塩基配列のデータベース解析より見いだされた、真核生物(シロイヌナズナ、イネ、線虫)のローリング・サークル型トランスポゾンも報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、真核生物のゲノム中に存在する多くのトランスポゾンが、進化の過程でゲノム中に固定化し、現在では転移しえないことが知られており、これらのローリング・サークル型トランスポゾンが転移活性を有するのか否かは明らかにされていない(例えば、非特許文献2参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
Kapitonov V. V. and Jurka J. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98(15): 8714−8719
【非特許文献2】
Cedric Feschotte and Susan R. Wessler (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98(16): 8923−8924
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、転移活性を有して変異原として働くローリング・サークル型のトランスポゾンを取得し、分子育種に利用することを目的とした研究の成果として得られたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、後述の実施例にあるように、アントシアニン色素の呈色により青色花を咲かせるソライロアサガオ(Ipomoea tricolor)より分離した白色花をもつ変異体について、原因遺伝子の同定を行い、この変異にローリング・サークル型トランスポゾン(配列番号1)が関与することを見出した。この結果は、ローリング・サークル型トランスポゾンについて、真核生物で初めて転移活性を確認したものであり、ローリング・サークル型トランスポゾンが他のクラスに属するトランスポゾンと同様に変異原として働くことを示している。
【0006】
即ち、本発明は、配列番号1で表される塩基配列に少なくとも98%相同のDNAから成るトランスポゾン遺伝子である。
本発明は、また、上記に記載のいずれかのトランスポゾン遺伝子を含有するプラスミドである。ここで用いることのできるプラスミドとして、Tiプラスミド、pBI−121プラスミド等のバイナリーベクターが挙げられる。通常の遺伝子工学的手法を用いて、この遺伝子を上記プラスミドに挿入することができる。
また、本発明は、上記のいずれかのトランスポゾン遺伝子が導入された形質転換体である。この宿主は植物であることが好ましく、この植物としては、シロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ、トウモロコシ又はイネが好ましい。いずれも形質転換の方法が確立しており、研究および産業上で重要な植物である。このような植物を形質転換するには、上記トランスポゾン遺伝子が導入されたプラスミドを用いてこの植物を形質転換すればよい。
【0007】
本発明はまた、上記形質転換体において、前記トランスポゾン遺伝子が転移して形質転換した植物又はその種である。配列番号1のトランスポゾンは転移に必要な転移酵素遺伝子を有していると考えられるため、これらの遺伝子を強制発現させるキメラ遺伝子を構築してトランスポゾンと共存させることで転移を促進させることが可能である。たとえば、転移酵素遺伝子あるいはそのcDNAの上流に35Sプロモーターを融合させたキメラ遺伝子と、配列番号1のトランスポゾンあるいはその改変配列を同時に異種植物に導入することにより、トランスポゾンを転移促進することができる。この植物としては、シロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ、トウモロコシ又はイネが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
従来多くのトランスポゾンは転移活性を持たず、ゲノム中に固定化した、いわば化石であった。シロイヌナズナ、イネ、線虫などにもローリングサークル型のトランスポゾンが存在することは知られていたが、転移が確認された(すなわち変異原として働く)ローリングサークル型トランスポゾンは、真核生物において見出されていなかった。本発明は、ソライロアサガオにおいてこのようなトランスポゾン遺伝子を始めて明らかにした。
本発明のトランスポゾン遺伝子(配列番号1)は、後述の実施例で明らかにされるが、転移に必要と思われる2つの遺伝子(Replication Protein A 70 kDa subunit(RPA70)とReplication initiator protein/DNA Helicase(Rep/Hel))を有していることから、自律性トランスポゾンであると考えられる。
【0009】
本発明において、このトランスポゾンの配列(配列番号1)が解明されたため、この配列中の適当な配列にプライマーを設計し、inverse PCR法等により、転移したトランスポゾンが挿入されることにより破壊された遺伝子を特定することができる。このトランスポゾンの配列(配列番号1)を、他の植物に導入して転移させることにより、遺伝子が破壊された変異体を得ることが出来る。このような変異体とその遺伝子との相関を解明することにより、その遺伝子の機能を知ることができる。この場合、上記の方法により、転移したトランスポゾンにより破壊された遺伝子を特定することができる。
【0010】
本発明のトランスポゾン遺伝子の利用法として、これを変異原として利用し、所望の植物等において、トランスポゾンタグ系統を作出することができる。
本発明を利用して、ランダムに本トランスポゾンを転移させた系統を数万系統をつくり出すことができる。ソライロアサガオ以外の植物においても形質転換法により本発明のトランスポゾンを導入すれば、同様に転移を誘発することが可能である。
このようにして得た変異体は、遺伝学的解析法や逆遺伝学的解析法により解析することができる。
この遺伝学的解析法とは、変異体の表現型からその原因遺伝子を単離する方法であり、本トランスポゾンと変異体の表現型がリンクしていれば、このタグ(トランスポゾン)を利用して、容易に原因遺伝子の単離を行える。
また、逆遺伝学的解析法とは、遺伝子からその遺伝子の機能が失われた変異体を単離する方法である。多数の変異体よりDNAを抽出し、プールを作る。トランスポゾンタグ系統のDNAを購入し、その中から、目的の遺伝子にトランスポゾンが挿入した変異体をPCR法により釣りあげることができる。
【0011】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
野生型のソライロアサガオは、アントシアニン色素の呈色により青色の花を咲かせる。50年程前に、このような野生型系統から白色花を咲かせる系統(白色花変異体)が分離された。
本実施例では、この白色花を与える変異遺伝子を同定することを目的として、先ず、一連のアントシアニン色素生合成系遺伝子について、野生型のソライロアサガオ(HEM−ZADEN(1607 ZG HEM, Holland)から入手)と白色花変異体のソライロアサガオ(サカタのタネから入手)の花弁における転写産物の蓄積量をノザン法により解析した。
ノザン法は、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A LaboratoryManual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従い、ラジオアイソトープ(32P)を用いて行った。ノザン法のプローブ配列には、近縁種のアサガオ(Ipomoea nil)由来のCHS−D(chalcone synthase−D、DDBJ: AB001818)、CHI(chalcone isomerase、配列番号2)、F3H(flavanon 3−hydroxylase、DDBJ: D83041)、DFR−B(dihydroflavonol 4−reductase、DDBJ: AB006792)、ANS(anthocyanidin synthase、DDBJ: AB073919)、UF3GT(UDP−glucose:flavonoid3−O−glucosyltransferase、配列番号3)遺伝子の各cDNAを用い、RNAはグアニジンチオシアン酸塩を用いて抽出したtotal RNAを10μg使用した。RNAは1.0%の濃度のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画し、ナイロンメンブレン(Hybond−N、Amersham社)に転写した。その結果を図1に示す。
図1において明らかなように、野生型と比較して白色花変異体の花弁では、DFR−B遺伝子のmRNA蓄積量のみが有意に低下しており、変異の原因がDFR−B遺伝子にあるものと推測された。
【0012】
実施例2
本実施例では、各遺伝子のゲノム上の構造を調べるために、サザン法による検討を行った。
ソライロアサガオの葉よりCTAB法にGenomic−tip(QIAGEN社)を組み合わせて抽出したゲノムDNAを、それぞれ10μgずつ、SpeI又はHindIIIの制限酵素により消化した。消化したDNAは0.8%のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画し、ナイロンメンブレン(Hybond−N、Amersham社)に転写した。
実施例1で用いた6種の遺伝子のcDNAをプローブとしたサザン法による解析を行った。サザン法は、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従い、ラジオアイソトープ(32P)を用いて行った。
図2にプローブ配列としてアサガオ由来のDFR−B遺伝子cDNAを用いた結果を示す。DFR−B遺伝子遺伝子領域でのみ、DNAの再編成に由来すると思われる野生型とは異なるバンドのパターン(多型)が検出された。
【0013】
実施例3
更に、野生型のソライロアサガオより、DFR−B遺伝子のcDNAを単離し、塩基配列を決定した。
ツボミよりグアニジンチオシアン酸塩を用いてRNAを抽出し、Dynabeads(DYNAL社)を用いてpolyA+RNAを精製した。TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Amersham社)を用いて得られたpolyA+RNAからcDNAを合成し、Directional Cloning Toolbox(Amersham社)を用いてλExCellにクローン化し、さらにGIGAPACK III Gold Packagioin Extract(STRATAGENE社)によりin vitro パッケージングを行ってライブラリーを作成した。ライブラリーはアサガオのDFR−B遺伝子cDNAをプローブとしてスクリーニングを行った。
さらに、より完全長に近いcDNAの配列を決定するために、5’RACE法及び3’RACE法によりDFR−B遺伝子cDNAの両末端領域をクローニングした。
【0014】
5’RACE法には、5’RACE System for Amplification of cDNA ENDs, Ver. 2.0(Invitrogen社)を用い、これに付属するプライマーとTDB−E4R2(配列番号5)とTDB−E3R2(配列番号6)での2度のPCRにより5’末端領域を増幅した。
3’RACE法では、NotI−d(T)18(配列番号7)を逆転写反応のプライマーとしてSuperScriptII(Invitrogen社)によりcDNAを合成し、TDB−E4F1(配列番号8)とNotI only(配列番号9)プライマーを用いてPCRによる増幅を行った後、さらに増幅産物をTDB−E5F1(配列番号10)とNotI onlyプライマーにより増幅した。
5’RACEと3’RACEともに50μlの反応系で、2.5UのEx Taq、1X Ex Taq Buffer、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、1μMの各プライマーに2μlのcDNAもしくは1度目のPCRによる増幅産物を加えた。PCR反応は、94℃で30秒、60℃で30秒、さらに72℃で1分を1サイクルとして30サイクル行い、最後に72℃で7分間反応した。それぞれの反応産物は、pGEM−T Easy vector systemI(Promega社)を用いてクローン化した。
得られたcDNAクローンは、シーケンサー(ABI PRISM377、Applied Biosystems社)を用いて塩基配列(配列番号4)を決定した。
【0015】
次に、PCR法によりDFR−B遺伝子領域の構造を検討した。
プライマーにはcDNA配列の情報をもとに作成したTDB−LAF2−5(配列番号11)とTDB−LAR4−5(配列番号12)のペア、及びTDB−LAF1(配列番号13)とTDB−LAR5(配列番号14)のペアを用い、LA Taq(TaKaRa社)をTaq polymeraseとして説明書に従いPCR反応を行った。図3にソライロアサガオのDFR−B遺伝子の構造と用いたプライマーの位置を示す。
反応系は50μlで、2.5UのLA Taq、1X LA PCR BufferII、2.5mM MgCl2、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、0.2μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAが含まれるよう調製した。PCRのサイクルは、94℃で1分の後、98℃で10秒、68℃で15分を1サイクルとして14サイクル行い、さらに68℃の伸長反応時間をサイクル毎に15秒ずつ伸ばして16サイクル行い、最後に72℃で10分間反応した。反応産物は、0.8%のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画した。
その結果を図4に示す。図4の左図に示すように、TDB−LAF2−5とTDB−LAR4−5のプライマーペアを用いた時のみ、変異体(レーン4)で野生型(レーン3)より約11.5kb大きなバンドが得られた。
この結果は、白色花変異体のDFR−B遺伝子の第5エキソンから第6エキソンの間に11.5kbの挿入配列が存在することを示している。
【0016】
実施例4
本実施例では、DFR−B遺伝子の劣性変異により絞り花を咲かせる絞り花変異体と、白色花変異体を交配した。得られた次世代の植物は絞り花を咲かせた。その結果を図5に示す。
それぞれの変異形質を相補しなかったことから、白色花変異体もDFR−B遺伝子の変異体であることが明らかになった。
実施例1〜5の結果から、ソライロアサガオの白色花に係わる遺伝子は、DFR−B遺伝子であることが明らかになり、11.5kbの挿入配列が変異の原因であることが示唆された。
【0017】
実施例5
本実施例では、11.5kbの挿入配列(配列番号1)の構造解析を行った。
挿入配列(配列番号1)を含むDFR−B遺伝子領域を4つの断片に分けて単離した。その断片と挿入配列の関係を図6に示す。
DFR−B遺伝子の5’側上流域から挿入配列の5’末端を含む断片(16kb)と、挿入配列の中央から3’側とDFR−B遺伝子の第6エキソンを含む断片(8kb)は、それぞれλDASHIIとλZAP Express(STRATAGENE社)のファージベクターにクローン化した。50μgのゲノムDNAを制限酵素、HindIIIで処理し、ショ糖密度勾配遠心によりサイズ分画を行った。ついで、HindIIIで処理した各ファージベクターに、目的のサイズが含まれた画分中のゲノムDNAを結合させて、GIGAPACK III Gold Packagioin Extract(STRATAGENE社)によりin vitro パッケージングを行った。ファージは、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従ってスクリーニングし、それぞれpBluescriptII SK−とpBK−CMVにサブクローニングを行った。
【0018】
さらに、16kbと8kbの断片間にある挿入配列の中央領域(6kb)と第6エキソンの下流領域(2kb)は、PCRを用いてクローン化した。
中央領域を増幅するプライマーはDFR−B遺伝子の第3エキソン内にTDB−LAF4(配列番号15)と挿入配列内にPI−LR2(配列番号16)を設計して用い、下流領域の増幅には第6エキソン内にTDB−E6F2(配列番号17)と第6エキソンの下流にW3−F1R1(配列番号18)を作成した。中央領域のDNA断片を増幅する反応系は50μlで、2.5UのLA Taq、1X LA PCR BufferII、2.5mM MgCl2、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、0.2μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAからなるよう調製した。PCRのサイクルは、94℃で1分の後、98℃で10秒、68℃で15分を14サイクル行い、さらに68℃で15分の伸長反応時間をサイクル毎に15秒ずつ伸ばして16サイクル行い、最後に72℃で10分間反応した。
【0019】
一方、下流領域の増幅も50μlの反応系で、2.5UのEx Taq、1X Ex Taq Buffer、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、1μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAを含むように調製した。PCR反応は、94℃で30秒、60℃で30秒、さらに72℃で1分を1サイクルとして30サイクル行い、最後に72℃で7分間反応した。それぞれの反応産物は、pGEM−T Easy vector systemI(Promega社)を用いてクローン化した。
【0020】
さらに、対照となる野生型ソライロアサガオからも、DFR−B遺伝子領域を2つの断片に分けてクローン化した。
DFR−B遺伝子の5’側上流域から第4エキソンの5’側を含む断片(6kb)と、第4エキソンの3’側から第6エキソンの下流までを含む断片(7kb)を、λZAP Express(STRATAGENE社)にクローン化した。50μgのゲノムDNAを制限酵素、SpeIで処理し、ショ糖密度勾配遠心によりサイズ分画を行った。ついで、SpeIで処理したλZAP Expressに、目的のサイズが含まれた画分中のゲノムDNAを結合させて、GIGAPACK III Gold Packagioin Extract(STRATAGENE社)によりin vitro パッケージングを行った。ファージは、変異体のDFR−B遺伝子領域のクローニングと同様にスクリーニングし、pBK−CMVにサブクローニングを行った。
【0021】
得られたゲノムクローンは、シーケンサー(ABI PRISM377、Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を決定し、各種のソフトウェアにより塩基配列の解析を行った。この野生型(配列番号19)と変異体(配列番号20)の塩基配列の解析により、白色花変異体のDFR−B遺伝子の第5イントロン内に、野生型には存在しない11,468bpの挿入配列(配列番号1)が見い出された。白色花変異体のDFR−B遺伝子と転写産物の構造を図6に示す。
野生型を示す配列番号19において、第1エキソンは4545〜4783位、第2エキソンは4894〜5063位、第3エキソンは5311〜5505位、第4エキソンは5953〜6112位、第5エキソンは6202〜6394位、第6エキソンは7640〜8261位に位置し、トランスポゾンの挿入位置は7038位のAと7039位のTとの間である。一方、白色花変異体を示す配列番号20において、第1エキソンは4036〜4274位、第2エキソンは4385〜4554位、第3エキソンは4802〜4996位、第4エキソンは5444〜5603位、第5エキソンは5693〜5885位、第6エキソンは18599〜19219位に位置し、トランスポゾン(配列番号1)は6530〜17997位に挿入されている。
このトランスポゾンは、ATの2塩基の間に挿入し、クラスIやIIのトランスポゾンが挿入に際して形成する標的配列の重複は存在しなかった。また、5’末端がTC、3’末端はCTAGであり、両末端近傍に短い逆反復配列を持っていた。トランスポゾンの挿入部位の配列と両末端領域の配列を図7に示す。
【0022】
さらに、内部領域には転移に必要な酵素と思われるReplication Protein A 70kDa subunit(RPA70)とReplication initiator protein/DNA Helicase(Rep/Hel)の2つの遺伝子と相同な配列が存在した(図8、9)。
これらの特徴は、塩基配列のデータベース解析より見いだされた、真核生物(シロイヌナズナ、イネ、線虫)のローリング・サークル型トランスポゾン(非特許文献1)と共通していることから、配列番号1は新規のローリング・サークル型トランスポゾンであると考えられる。
なお、Rep/HelとRPA70をコードする遺伝子の転写の方向と、DFR−B遺伝子のそれとは逆向きであり、新規トランスポゾンはDFR−B遺伝子に対して逆向きに挿入していた(図7)。
トランスポゾンを示す配列番号1において、RPA70の第1エキソンは536〜603位、第2エキソンは769〜953位、第3エキソンは1433〜1520位、第4エキソンは1603〜1735位、第5エキソンは1826〜2110位、第6エキソンは2189〜2416位、第7エキソンは2506〜2679位に位置し、Rep/Helの第1エキソンは4494〜4560位、第2エキソンは5852〜5971位、第3エキソンは6101〜6208位、第4エキソンは6508〜6663位、第5エキソンは6766〜7207位、第6エキソンは7309〜7664位、第7エキソンは7772〜8233位、第8エキソンは8416〜8859位、第9エキソンは8918〜9532位、第10エキソンは9620〜11280位に位置する。
【0023】
また推定されるRPA70のアミノ酸配列は、RPA70のDNA結合ドメインのC末端及びRPAサブユニット間の結合ドメインを有し、この領域(図8)ではイネ、ヒト、分裂酵母のRPA70と21%、20%、19%の相同性(identity)が見られた。
さらに、Rep/Helのアミノ酸配列もシロイヌナズナのローリング・サークル型トランスポゾンがもつRep/Helと比較して、Rep領域の2つのドメイン(図9A)で63%、Helicaseの8つに分かれたドメイン(図9B)で80%の相同性が存在した。
【0024】
実施例6
本実施例では、トランスポゾン(配列番号1)に相同な配列はソライロアサガオのゲノム中に数10コピー程度散在し、系統間により挿入部位が異なることをサザン法により明らかにした。
材料には、野生型のソライロアサガオ2系統(HEM−ZADEN(1607 ZG HEM, Holland))、白色花変異体(サカタのタネ)、赤色花変異体(Arkansas, USAで採種)、DFR−B遺伝子の欠損変異体(サカタのタネ)、薄青色花変異体(HEM−ZADEN(1607 ZG HEM, Holland))の6系統を用いた。サザン法の詳細は、実施例1と同様にSambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従い、ラジオアイソトープ(32P)を用いて行った。ゲノムDNAは、CTAB法にGenomic−tip(QIAGEN社)を組み合わせて葉より抽出し、10μgのDNAをHindIIIにより消化した。消化したDNAは0.8%の濃度のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画し、ナイロンメンブレン(Hybond−N、Amersham社)に転写した。また、プローブにはトランスポゾン内のRep/Hel遺伝子領域を用いた。
解析の結果、用いた6種のソライロアサガオの系統いずれにも、トランスポゾンに極めて相同性が高い配列が数10コピー程度存在し、系統間によりバンドのパターンに多型が見られることから、挿入部位がそれぞれ異なることが示唆された(図10A)。また、一つの系統においても個体間で少数の多型が見られ、最近に起きた転移の痕跡であるか、集団の中で固定されていないコピーが存在すると思われた(図10B)。
【0025】
さらに、検出された相同配列の内部を白色花変異体よりクローン化し、配列を決定して配列番号1との相同性を比較した。内部配列はPCR法により増幅し、pGEM−T Easy vector systemI(Promega社)を用いてクローン化した。増幅には配列番号1のトランスポゾンの内部にRC−LF1(配列番号21)とRC−LR1(配列番号22)を設計した。中央領域のDNA断片を増幅する反応系は50μlで、2.5UのLA Taq、1X LA PCR BufferII、2.5mM MgCl2、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、0.2μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAからなるよう調製した。PCRのサイクルは、94℃で1分の後、98℃で10秒、68℃で15分を14サイクル行い、さらに68℃で15分の伸長反応時間をサイクル毎に15秒ずつ伸ばして16サイクル行い、最後に72℃で10分間反応した。
得られた18クローンの785bp(配列番号1の7376〜8160位に相当)について比較したところ、配列番号1に対して1〜9塩基の置換しかなく、98.9%から99.9%の相同性を有していた。即ち、サザン法により検出された相同配列の多くは、配列番号1に対して98%以上、特に99%以上の相同性と転移活性を有したトランスポゾンであることが示唆された。
多くのトランスポゾンは、ゲノム中に複数のコピーを有することが知られている。とくにローリング・サークル型のトランスポゾンは複製的に転移することから、今回得られたトランスポゾンおよびその相同配列がソライロアサガオゲノム中に多コピー存在することは自然なことである。系統間、あるいは個体間で挿入部位に違いがあることも、これらのトランスポゾンがかつて転移したことを強く示唆している。
【0026】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】ソライロアサガオの花弁の転写産物をノザン法により解析した結果を示す図である。アサガオ由来のアントシアニン色素生合成系遺伝子のcDNA配列をプローブに用いた。レーン1は野生型ソライロアサガオ、レーン2は白色花変異体を示す。
【図2】ソライロアサガオの葉より抽出したゲノムDNAを制限酵素(SpeI又はHindIII)により消化してサザン法により解析した結果を示す図である。プローブ配列はアサガオ由来のDFR−B遺伝子cDNAを用いた。レーン1は野生型ソライロアサガオ、レーン2は白色花変異体を示す。
【図3】ソライロアサガオのDFR−B遺伝子の構造と用いたプライマーの位置を示す図である。四角形はDFR−B遺伝子のエキソン配列(E1〜6は第1〜6エキソン)を示す。上下の矢印は用いたプライマー配列の位置を示す。
【図4】PCRにより得られたDNA断片のアガロースゲル電気泳動像を示す図である。図の上は用いたプライマーを示す。レーン1はλHindIIIマーカー、レーン2は1kb ラダーマーカー、レーン3は野生型、レーン4は白色花変異体を示す。
【図5】白色花変異体とDFR−B遺伝子を欠損するソライラアサガオの系統との交配実験を示す図である。
【図6】白色花変異体のDFR−B遺伝子と転写産物の構造を示す図である。PL、PLT、PM、PD3’の4つのDNA断片に分けてクローン化した。白い四角形はDFR−B遺伝子の6つのエキソン(下にE1〜6と付記)と、第5イントロン内に挿入した新規ローリング・サークル型トランスポゾン(配列番号1)。トランスポゾン内部の矢印は、それぞれ転移に必要と思われる酵素遺伝子で、Replication initiatior protein/DNA Helicase(Rep/Hel)とReplication Protein A 70 kDa subunit (RPA70)をコードする領域を示す。また、この変異遺伝子では、T1及びT2の様な構造を持つmRNAが転写される。各エキソンに対応する配列を塗りつぶした四角形で、スプライスアウトされるイントロンに相当する領域を点線で示す。
【図7】トランスポゾンの挿入部位の配列と、両末端領域の配列を示す図である。真核生物のローリング・サークル型トランスポゾンに特徴的な末端配列(下線部)と矢印で示した逆反復配列を有する。
【図8】トランスポゾン(配列番号1)とイネ(O. sativa)、ヒト(H. sapience)及び分裂酵母(S. cerevisiae)の酵素(Replication Protein A 70 kDa subunit(RPA70))の配列の比較を示す図である。配列番号1は、RPA70で保存されている3つのドメインのうち、DNA結合ドメインの一部、RPAサブユニット間の結合ドメインを有する。アスタリスクは4つの配列で保存されている推定アミノ酸を示す。
【図9】トランスポゾン(配列番号1)の酵素(Replication initiatior protein/DNA Helicase)の配列の比較を示す図である。Aは、ローリング・サークル型の複製に必要な酵素に見られる保存領域を示す。シロイヌナズナと線虫のローリング・サークル型トランスポゾン(HELITRON AT及びHELITRON CE)及びActinobavillusactinomycetemcoitansの持つローリング・サークル型の複製を行うプラスミドDNA(Rep AA)の比較を示す。Bは、DNA helicaseに見られる保存領域を示す。シロイヌナズナと線虫のローリング・サークル型トランスポゾン(HELITRON AT及びHELITRON CE)、分裂酵母(PIF1)及びT4バクテリオファージ(HEL T4)が持つhelicaseの比較を示す。ローマ数字は、helicaseのドメイン番号を示す。アスタリスクは配列間で一致する推定アミノ酸の位置を示す。
【図10】トランスポゾン(配列番号1)に相同な配列のサザン法による解析結果を示す図である。図10(A)において、レーン1、2は野生型、レーン3は白色花変異体、レーン4は赤色花変異体、レーン5はDFR−B遺伝子の欠損変異体、レーン6は薄青色花変異体のそれぞれソライロアサガオの異なる品種を示す。図10(B)は1個体の白色花変異体の次世代植物間での比較を示す。プローブ配列は、いずれもトランスポゾン(配列番号1)内のReplication initiatior protein/DNAHelicaseをコードする遺伝子領域の一部(IV)であり、ゲノムDNAの消化にはHindIIIを用いた。白抜きの三角で示したサイズのバンドには多型(バンドの有無)が見られ、配列番号1と同じか相同性の極めて高いトランスポゾンの挿入部位が、系統間、あるいは一つの系統でも個体間で異なることが示唆された。
【発明の属する技術分野】
この発明は、トランスポゾン遺伝子に関し、より詳細には、ソライロアサガオから見出されたローリング・サークル型と考えられるトランスポゾン遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
トランスポゾンは、転移の様式によりRNA中間体を介して転移するクラスI因子と、DNAの切り出しを伴い転移するクラスII因子の2種に大別される。さらに、原核生物では、ローリングサークルを介した複製によりDNAの切り出しを伴わずに転移する、どちらのクラスにも属さないローリング・サークル型トランスポゾンが知られている。2001年7月には、塩基配列のデータベース解析より見いだされた、真核生物(シロイヌナズナ、イネ、線虫)のローリング・サークル型トランスポゾンも報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、真核生物のゲノム中に存在する多くのトランスポゾンが、進化の過程でゲノム中に固定化し、現在では転移しえないことが知られており、これらのローリング・サークル型トランスポゾンが転移活性を有するのか否かは明らかにされていない(例えば、非特許文献2参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
Kapitonov V. V. and Jurka J. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98(15): 8714−8719
【非特許文献2】
Cedric Feschotte and Susan R. Wessler (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98(16): 8923−8924
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、転移活性を有して変異原として働くローリング・サークル型のトランスポゾンを取得し、分子育種に利用することを目的とした研究の成果として得られたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、後述の実施例にあるように、アントシアニン色素の呈色により青色花を咲かせるソライロアサガオ(Ipomoea tricolor)より分離した白色花をもつ変異体について、原因遺伝子の同定を行い、この変異にローリング・サークル型トランスポゾン(配列番号1)が関与することを見出した。この結果は、ローリング・サークル型トランスポゾンについて、真核生物で初めて転移活性を確認したものであり、ローリング・サークル型トランスポゾンが他のクラスに属するトランスポゾンと同様に変異原として働くことを示している。
【0006】
即ち、本発明は、配列番号1で表される塩基配列に少なくとも98%相同のDNAから成るトランスポゾン遺伝子である。
本発明は、また、上記に記載のいずれかのトランスポゾン遺伝子を含有するプラスミドである。ここで用いることのできるプラスミドとして、Tiプラスミド、pBI−121プラスミド等のバイナリーベクターが挙げられる。通常の遺伝子工学的手法を用いて、この遺伝子を上記プラスミドに挿入することができる。
また、本発明は、上記のいずれかのトランスポゾン遺伝子が導入された形質転換体である。この宿主は植物であることが好ましく、この植物としては、シロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ、トウモロコシ又はイネが好ましい。いずれも形質転換の方法が確立しており、研究および産業上で重要な植物である。このような植物を形質転換するには、上記トランスポゾン遺伝子が導入されたプラスミドを用いてこの植物を形質転換すればよい。
【0007】
本発明はまた、上記形質転換体において、前記トランスポゾン遺伝子が転移して形質転換した植物又はその種である。配列番号1のトランスポゾンは転移に必要な転移酵素遺伝子を有していると考えられるため、これらの遺伝子を強制発現させるキメラ遺伝子を構築してトランスポゾンと共存させることで転移を促進させることが可能である。たとえば、転移酵素遺伝子あるいはそのcDNAの上流に35Sプロモーターを融合させたキメラ遺伝子と、配列番号1のトランスポゾンあるいはその改変配列を同時に異種植物に導入することにより、トランスポゾンを転移促進することができる。この植物としては、シロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ、トウモロコシ又はイネが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
従来多くのトランスポゾンは転移活性を持たず、ゲノム中に固定化した、いわば化石であった。シロイヌナズナ、イネ、線虫などにもローリングサークル型のトランスポゾンが存在することは知られていたが、転移が確認された(すなわち変異原として働く)ローリングサークル型トランスポゾンは、真核生物において見出されていなかった。本発明は、ソライロアサガオにおいてこのようなトランスポゾン遺伝子を始めて明らかにした。
本発明のトランスポゾン遺伝子(配列番号1)は、後述の実施例で明らかにされるが、転移に必要と思われる2つの遺伝子(Replication Protein A 70 kDa subunit(RPA70)とReplication initiator protein/DNA Helicase(Rep/Hel))を有していることから、自律性トランスポゾンであると考えられる。
【0009】
本発明において、このトランスポゾンの配列(配列番号1)が解明されたため、この配列中の適当な配列にプライマーを設計し、inverse PCR法等により、転移したトランスポゾンが挿入されることにより破壊された遺伝子を特定することができる。このトランスポゾンの配列(配列番号1)を、他の植物に導入して転移させることにより、遺伝子が破壊された変異体を得ることが出来る。このような変異体とその遺伝子との相関を解明することにより、その遺伝子の機能を知ることができる。この場合、上記の方法により、転移したトランスポゾンにより破壊された遺伝子を特定することができる。
【0010】
本発明のトランスポゾン遺伝子の利用法として、これを変異原として利用し、所望の植物等において、トランスポゾンタグ系統を作出することができる。
本発明を利用して、ランダムに本トランスポゾンを転移させた系統を数万系統をつくり出すことができる。ソライロアサガオ以外の植物においても形質転換法により本発明のトランスポゾンを導入すれば、同様に転移を誘発することが可能である。
このようにして得た変異体は、遺伝学的解析法や逆遺伝学的解析法により解析することができる。
この遺伝学的解析法とは、変異体の表現型からその原因遺伝子を単離する方法であり、本トランスポゾンと変異体の表現型がリンクしていれば、このタグ(トランスポゾン)を利用して、容易に原因遺伝子の単離を行える。
また、逆遺伝学的解析法とは、遺伝子からその遺伝子の機能が失われた変異体を単離する方法である。多数の変異体よりDNAを抽出し、プールを作る。トランスポゾンタグ系統のDNAを購入し、その中から、目的の遺伝子にトランスポゾンが挿入した変異体をPCR法により釣りあげることができる。
【0011】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
野生型のソライロアサガオは、アントシアニン色素の呈色により青色の花を咲かせる。50年程前に、このような野生型系統から白色花を咲かせる系統(白色花変異体)が分離された。
本実施例では、この白色花を与える変異遺伝子を同定することを目的として、先ず、一連のアントシアニン色素生合成系遺伝子について、野生型のソライロアサガオ(HEM−ZADEN(1607 ZG HEM, Holland)から入手)と白色花変異体のソライロアサガオ(サカタのタネから入手)の花弁における転写産物の蓄積量をノザン法により解析した。
ノザン法は、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A LaboratoryManual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従い、ラジオアイソトープ(32P)を用いて行った。ノザン法のプローブ配列には、近縁種のアサガオ(Ipomoea nil)由来のCHS−D(chalcone synthase−D、DDBJ: AB001818)、CHI(chalcone isomerase、配列番号2)、F3H(flavanon 3−hydroxylase、DDBJ: D83041)、DFR−B(dihydroflavonol 4−reductase、DDBJ: AB006792)、ANS(anthocyanidin synthase、DDBJ: AB073919)、UF3GT(UDP−glucose:flavonoid3−O−glucosyltransferase、配列番号3)遺伝子の各cDNAを用い、RNAはグアニジンチオシアン酸塩を用いて抽出したtotal RNAを10μg使用した。RNAは1.0%の濃度のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画し、ナイロンメンブレン(Hybond−N、Amersham社)に転写した。その結果を図1に示す。
図1において明らかなように、野生型と比較して白色花変異体の花弁では、DFR−B遺伝子のmRNA蓄積量のみが有意に低下しており、変異の原因がDFR−B遺伝子にあるものと推測された。
【0012】
実施例2
本実施例では、各遺伝子のゲノム上の構造を調べるために、サザン法による検討を行った。
ソライロアサガオの葉よりCTAB法にGenomic−tip(QIAGEN社)を組み合わせて抽出したゲノムDNAを、それぞれ10μgずつ、SpeI又はHindIIIの制限酵素により消化した。消化したDNAは0.8%のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画し、ナイロンメンブレン(Hybond−N、Amersham社)に転写した。
実施例1で用いた6種の遺伝子のcDNAをプローブとしたサザン法による解析を行った。サザン法は、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従い、ラジオアイソトープ(32P)を用いて行った。
図2にプローブ配列としてアサガオ由来のDFR−B遺伝子cDNAを用いた結果を示す。DFR−B遺伝子遺伝子領域でのみ、DNAの再編成に由来すると思われる野生型とは異なるバンドのパターン(多型)が検出された。
【0013】
実施例3
更に、野生型のソライロアサガオより、DFR−B遺伝子のcDNAを単離し、塩基配列を決定した。
ツボミよりグアニジンチオシアン酸塩を用いてRNAを抽出し、Dynabeads(DYNAL社)を用いてpolyA+RNAを精製した。TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Amersham社)を用いて得られたpolyA+RNAからcDNAを合成し、Directional Cloning Toolbox(Amersham社)を用いてλExCellにクローン化し、さらにGIGAPACK III Gold Packagioin Extract(STRATAGENE社)によりin vitro パッケージングを行ってライブラリーを作成した。ライブラリーはアサガオのDFR−B遺伝子cDNAをプローブとしてスクリーニングを行った。
さらに、より完全長に近いcDNAの配列を決定するために、5’RACE法及び3’RACE法によりDFR−B遺伝子cDNAの両末端領域をクローニングした。
【0014】
5’RACE法には、5’RACE System for Amplification of cDNA ENDs, Ver. 2.0(Invitrogen社)を用い、これに付属するプライマーとTDB−E4R2(配列番号5)とTDB−E3R2(配列番号6)での2度のPCRにより5’末端領域を増幅した。
3’RACE法では、NotI−d(T)18(配列番号7)を逆転写反応のプライマーとしてSuperScriptII(Invitrogen社)によりcDNAを合成し、TDB−E4F1(配列番号8)とNotI only(配列番号9)プライマーを用いてPCRによる増幅を行った後、さらに増幅産物をTDB−E5F1(配列番号10)とNotI onlyプライマーにより増幅した。
5’RACEと3’RACEともに50μlの反応系で、2.5UのEx Taq、1X Ex Taq Buffer、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、1μMの各プライマーに2μlのcDNAもしくは1度目のPCRによる増幅産物を加えた。PCR反応は、94℃で30秒、60℃で30秒、さらに72℃で1分を1サイクルとして30サイクル行い、最後に72℃で7分間反応した。それぞれの反応産物は、pGEM−T Easy vector systemI(Promega社)を用いてクローン化した。
得られたcDNAクローンは、シーケンサー(ABI PRISM377、Applied Biosystems社)を用いて塩基配列(配列番号4)を決定した。
【0015】
次に、PCR法によりDFR−B遺伝子領域の構造を検討した。
プライマーにはcDNA配列の情報をもとに作成したTDB−LAF2−5(配列番号11)とTDB−LAR4−5(配列番号12)のペア、及びTDB−LAF1(配列番号13)とTDB−LAR5(配列番号14)のペアを用い、LA Taq(TaKaRa社)をTaq polymeraseとして説明書に従いPCR反応を行った。図3にソライロアサガオのDFR−B遺伝子の構造と用いたプライマーの位置を示す。
反応系は50μlで、2.5UのLA Taq、1X LA PCR BufferII、2.5mM MgCl2、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、0.2μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAが含まれるよう調製した。PCRのサイクルは、94℃で1分の後、98℃で10秒、68℃で15分を1サイクルとして14サイクル行い、さらに68℃の伸長反応時間をサイクル毎に15秒ずつ伸ばして16サイクル行い、最後に72℃で10分間反応した。反応産物は、0.8%のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画した。
その結果を図4に示す。図4の左図に示すように、TDB−LAF2−5とTDB−LAR4−5のプライマーペアを用いた時のみ、変異体(レーン4)で野生型(レーン3)より約11.5kb大きなバンドが得られた。
この結果は、白色花変異体のDFR−B遺伝子の第5エキソンから第6エキソンの間に11.5kbの挿入配列が存在することを示している。
【0016】
実施例4
本実施例では、DFR−B遺伝子の劣性変異により絞り花を咲かせる絞り花変異体と、白色花変異体を交配した。得られた次世代の植物は絞り花を咲かせた。その結果を図5に示す。
それぞれの変異形質を相補しなかったことから、白色花変異体もDFR−B遺伝子の変異体であることが明らかになった。
実施例1〜5の結果から、ソライロアサガオの白色花に係わる遺伝子は、DFR−B遺伝子であることが明らかになり、11.5kbの挿入配列が変異の原因であることが示唆された。
【0017】
実施例5
本実施例では、11.5kbの挿入配列(配列番号1)の構造解析を行った。
挿入配列(配列番号1)を含むDFR−B遺伝子領域を4つの断片に分けて単離した。その断片と挿入配列の関係を図6に示す。
DFR−B遺伝子の5’側上流域から挿入配列の5’末端を含む断片(16kb)と、挿入配列の中央から3’側とDFR−B遺伝子の第6エキソンを含む断片(8kb)は、それぞれλDASHIIとλZAP Express(STRATAGENE社)のファージベクターにクローン化した。50μgのゲノムDNAを制限酵素、HindIIIで処理し、ショ糖密度勾配遠心によりサイズ分画を行った。ついで、HindIIIで処理した各ファージベクターに、目的のサイズが含まれた画分中のゲノムDNAを結合させて、GIGAPACK III Gold Packagioin Extract(STRATAGENE社)によりin vitro パッケージングを行った。ファージは、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従ってスクリーニングし、それぞれpBluescriptII SK−とpBK−CMVにサブクローニングを行った。
【0018】
さらに、16kbと8kbの断片間にある挿入配列の中央領域(6kb)と第6エキソンの下流領域(2kb)は、PCRを用いてクローン化した。
中央領域を増幅するプライマーはDFR−B遺伝子の第3エキソン内にTDB−LAF4(配列番号15)と挿入配列内にPI−LR2(配列番号16)を設計して用い、下流領域の増幅には第6エキソン内にTDB−E6F2(配列番号17)と第6エキソンの下流にW3−F1R1(配列番号18)を作成した。中央領域のDNA断片を増幅する反応系は50μlで、2.5UのLA Taq、1X LA PCR BufferII、2.5mM MgCl2、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、0.2μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAからなるよう調製した。PCRのサイクルは、94℃で1分の後、98℃で10秒、68℃で15分を14サイクル行い、さらに68℃で15分の伸長反応時間をサイクル毎に15秒ずつ伸ばして16サイクル行い、最後に72℃で10分間反応した。
【0019】
一方、下流領域の増幅も50μlの反応系で、2.5UのEx Taq、1X Ex Taq Buffer、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、1μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAを含むように調製した。PCR反応は、94℃で30秒、60℃で30秒、さらに72℃で1分を1サイクルとして30サイクル行い、最後に72℃で7分間反応した。それぞれの反応産物は、pGEM−T Easy vector systemI(Promega社)を用いてクローン化した。
【0020】
さらに、対照となる野生型ソライロアサガオからも、DFR−B遺伝子領域を2つの断片に分けてクローン化した。
DFR−B遺伝子の5’側上流域から第4エキソンの5’側を含む断片(6kb)と、第4エキソンの3’側から第6エキソンの下流までを含む断片(7kb)を、λZAP Express(STRATAGENE社)にクローン化した。50μgのゲノムDNAを制限酵素、SpeIで処理し、ショ糖密度勾配遠心によりサイズ分画を行った。ついで、SpeIで処理したλZAP Expressに、目的のサイズが含まれた画分中のゲノムDNAを結合させて、GIGAPACK III Gold Packagioin Extract(STRATAGENE社)によりin vitro パッケージングを行った。ファージは、変異体のDFR−B遺伝子領域のクローニングと同様にスクリーニングし、pBK−CMVにサブクローニングを行った。
【0021】
得られたゲノムクローンは、シーケンサー(ABI PRISM377、Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を決定し、各種のソフトウェアにより塩基配列の解析を行った。この野生型(配列番号19)と変異体(配列番号20)の塩基配列の解析により、白色花変異体のDFR−B遺伝子の第5イントロン内に、野生型には存在しない11,468bpの挿入配列(配列番号1)が見い出された。白色花変異体のDFR−B遺伝子と転写産物の構造を図6に示す。
野生型を示す配列番号19において、第1エキソンは4545〜4783位、第2エキソンは4894〜5063位、第3エキソンは5311〜5505位、第4エキソンは5953〜6112位、第5エキソンは6202〜6394位、第6エキソンは7640〜8261位に位置し、トランスポゾンの挿入位置は7038位のAと7039位のTとの間である。一方、白色花変異体を示す配列番号20において、第1エキソンは4036〜4274位、第2エキソンは4385〜4554位、第3エキソンは4802〜4996位、第4エキソンは5444〜5603位、第5エキソンは5693〜5885位、第6エキソンは18599〜19219位に位置し、トランスポゾン(配列番号1)は6530〜17997位に挿入されている。
このトランスポゾンは、ATの2塩基の間に挿入し、クラスIやIIのトランスポゾンが挿入に際して形成する標的配列の重複は存在しなかった。また、5’末端がTC、3’末端はCTAGであり、両末端近傍に短い逆反復配列を持っていた。トランスポゾンの挿入部位の配列と両末端領域の配列を図7に示す。
【0022】
さらに、内部領域には転移に必要な酵素と思われるReplication Protein A 70kDa subunit(RPA70)とReplication initiator protein/DNA Helicase(Rep/Hel)の2つの遺伝子と相同な配列が存在した(図8、9)。
これらの特徴は、塩基配列のデータベース解析より見いだされた、真核生物(シロイヌナズナ、イネ、線虫)のローリング・サークル型トランスポゾン(非特許文献1)と共通していることから、配列番号1は新規のローリング・サークル型トランスポゾンであると考えられる。
なお、Rep/HelとRPA70をコードする遺伝子の転写の方向と、DFR−B遺伝子のそれとは逆向きであり、新規トランスポゾンはDFR−B遺伝子に対して逆向きに挿入していた(図7)。
トランスポゾンを示す配列番号1において、RPA70の第1エキソンは536〜603位、第2エキソンは769〜953位、第3エキソンは1433〜1520位、第4エキソンは1603〜1735位、第5エキソンは1826〜2110位、第6エキソンは2189〜2416位、第7エキソンは2506〜2679位に位置し、Rep/Helの第1エキソンは4494〜4560位、第2エキソンは5852〜5971位、第3エキソンは6101〜6208位、第4エキソンは6508〜6663位、第5エキソンは6766〜7207位、第6エキソンは7309〜7664位、第7エキソンは7772〜8233位、第8エキソンは8416〜8859位、第9エキソンは8918〜9532位、第10エキソンは9620〜11280位に位置する。
【0023】
また推定されるRPA70のアミノ酸配列は、RPA70のDNA結合ドメインのC末端及びRPAサブユニット間の結合ドメインを有し、この領域(図8)ではイネ、ヒト、分裂酵母のRPA70と21%、20%、19%の相同性(identity)が見られた。
さらに、Rep/Helのアミノ酸配列もシロイヌナズナのローリング・サークル型トランスポゾンがもつRep/Helと比較して、Rep領域の2つのドメイン(図9A)で63%、Helicaseの8つに分かれたドメイン(図9B)で80%の相同性が存在した。
【0024】
実施例6
本実施例では、トランスポゾン(配列番号1)に相同な配列はソライロアサガオのゲノム中に数10コピー程度散在し、系統間により挿入部位が異なることをサザン法により明らかにした。
材料には、野生型のソライロアサガオ2系統(HEM−ZADEN(1607 ZG HEM, Holland))、白色花変異体(サカタのタネ)、赤色花変異体(Arkansas, USAで採種)、DFR−B遺伝子の欠損変異体(サカタのタネ)、薄青色花変異体(HEM−ZADEN(1607 ZG HEM, Holland))の6系統を用いた。サザン法の詳細は、実施例1と同様にSambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従い、ラジオアイソトープ(32P)を用いて行った。ゲノムDNAは、CTAB法にGenomic−tip(QIAGEN社)を組み合わせて葉より抽出し、10μgのDNAをHindIIIにより消化した。消化したDNAは0.8%の濃度のアガロース(LO3、TaKaRa社)ゲルで分画し、ナイロンメンブレン(Hybond−N、Amersham社)に転写した。また、プローブにはトランスポゾン内のRep/Hel遺伝子領域を用いた。
解析の結果、用いた6種のソライロアサガオの系統いずれにも、トランスポゾンに極めて相同性が高い配列が数10コピー程度存在し、系統間によりバンドのパターンに多型が見られることから、挿入部位がそれぞれ異なることが示唆された(図10A)。また、一つの系統においても個体間で少数の多型が見られ、最近に起きた転移の痕跡であるか、集団の中で固定されていないコピーが存在すると思われた(図10B)。
【0025】
さらに、検出された相同配列の内部を白色花変異体よりクローン化し、配列を決定して配列番号1との相同性を比較した。内部配列はPCR法により増幅し、pGEM−T Easy vector systemI(Promega社)を用いてクローン化した。増幅には配列番号1のトランスポゾンの内部にRC−LF1(配列番号21)とRC−LR1(配列番号22)を設計した。中央領域のDNA断片を増幅する反応系は50μlで、2.5UのLA Taq、1X LA PCR BufferII、2.5mM MgCl2、200μM dATP、200μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、0.2μMの各プライマーに100ngのゲノムDNAからなるよう調製した。PCRのサイクルは、94℃で1分の後、98℃で10秒、68℃で15分を14サイクル行い、さらに68℃で15分の伸長反応時間をサイクル毎に15秒ずつ伸ばして16サイクル行い、最後に72℃で10分間反応した。
得られた18クローンの785bp(配列番号1の7376〜8160位に相当)について比較したところ、配列番号1に対して1〜9塩基の置換しかなく、98.9%から99.9%の相同性を有していた。即ち、サザン法により検出された相同配列の多くは、配列番号1に対して98%以上、特に99%以上の相同性と転移活性を有したトランスポゾンであることが示唆された。
多くのトランスポゾンは、ゲノム中に複数のコピーを有することが知られている。とくにローリング・サークル型のトランスポゾンは複製的に転移することから、今回得られたトランスポゾンおよびその相同配列がソライロアサガオゲノム中に多コピー存在することは自然なことである。系統間、あるいは個体間で挿入部位に違いがあることも、これらのトランスポゾンがかつて転移したことを強く示唆している。
【0026】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】ソライロアサガオの花弁の転写産物をノザン法により解析した結果を示す図である。アサガオ由来のアントシアニン色素生合成系遺伝子のcDNA配列をプローブに用いた。レーン1は野生型ソライロアサガオ、レーン2は白色花変異体を示す。
【図2】ソライロアサガオの葉より抽出したゲノムDNAを制限酵素(SpeI又はHindIII)により消化してサザン法により解析した結果を示す図である。プローブ配列はアサガオ由来のDFR−B遺伝子cDNAを用いた。レーン1は野生型ソライロアサガオ、レーン2は白色花変異体を示す。
【図3】ソライロアサガオのDFR−B遺伝子の構造と用いたプライマーの位置を示す図である。四角形はDFR−B遺伝子のエキソン配列(E1〜6は第1〜6エキソン)を示す。上下の矢印は用いたプライマー配列の位置を示す。
【図4】PCRにより得られたDNA断片のアガロースゲル電気泳動像を示す図である。図の上は用いたプライマーを示す。レーン1はλHindIIIマーカー、レーン2は1kb ラダーマーカー、レーン3は野生型、レーン4は白色花変異体を示す。
【図5】白色花変異体とDFR−B遺伝子を欠損するソライラアサガオの系統との交配実験を示す図である。
【図6】白色花変異体のDFR−B遺伝子と転写産物の構造を示す図である。PL、PLT、PM、PD3’の4つのDNA断片に分けてクローン化した。白い四角形はDFR−B遺伝子の6つのエキソン(下にE1〜6と付記)と、第5イントロン内に挿入した新規ローリング・サークル型トランスポゾン(配列番号1)。トランスポゾン内部の矢印は、それぞれ転移に必要と思われる酵素遺伝子で、Replication initiatior protein/DNA Helicase(Rep/Hel)とReplication Protein A 70 kDa subunit (RPA70)をコードする領域を示す。また、この変異遺伝子では、T1及びT2の様な構造を持つmRNAが転写される。各エキソンに対応する配列を塗りつぶした四角形で、スプライスアウトされるイントロンに相当する領域を点線で示す。
【図7】トランスポゾンの挿入部位の配列と、両末端領域の配列を示す図である。真核生物のローリング・サークル型トランスポゾンに特徴的な末端配列(下線部)と矢印で示した逆反復配列を有する。
【図8】トランスポゾン(配列番号1)とイネ(O. sativa)、ヒト(H. sapience)及び分裂酵母(S. cerevisiae)の酵素(Replication Protein A 70 kDa subunit(RPA70))の配列の比較を示す図である。配列番号1は、RPA70で保存されている3つのドメインのうち、DNA結合ドメインの一部、RPAサブユニット間の結合ドメインを有する。アスタリスクは4つの配列で保存されている推定アミノ酸を示す。
【図9】トランスポゾン(配列番号1)の酵素(Replication initiatior protein/DNA Helicase)の配列の比較を示す図である。Aは、ローリング・サークル型の複製に必要な酵素に見られる保存領域を示す。シロイヌナズナと線虫のローリング・サークル型トランスポゾン(HELITRON AT及びHELITRON CE)及びActinobavillusactinomycetemcoitansの持つローリング・サークル型の複製を行うプラスミドDNA(Rep AA)の比較を示す。Bは、DNA helicaseに見られる保存領域を示す。シロイヌナズナと線虫のローリング・サークル型トランスポゾン(HELITRON AT及びHELITRON CE)、分裂酵母(PIF1)及びT4バクテリオファージ(HEL T4)が持つhelicaseの比較を示す。ローマ数字は、helicaseのドメイン番号を示す。アスタリスクは配列間で一致する推定アミノ酸の位置を示す。
【図10】トランスポゾン(配列番号1)に相同な配列のサザン法による解析結果を示す図である。図10(A)において、レーン1、2は野生型、レーン3は白色花変異体、レーン4は赤色花変異体、レーン5はDFR−B遺伝子の欠損変異体、レーン6は薄青色花変異体のそれぞれソライロアサガオの異なる品種を示す。図10(B)は1個体の白色花変異体の次世代植物間での比較を示す。プローブ配列は、いずれもトランスポゾン(配列番号1)内のReplication initiatior protein/DNAHelicaseをコードする遺伝子領域の一部(IV)であり、ゲノムDNAの消化にはHindIIIを用いた。白抜きの三角で示したサイズのバンドには多型(バンドの有無)が見られ、配列番号1と同じか相同性の極めて高いトランスポゾンの挿入部位が、系統間、あるいは一つの系統でも個体間で異なることが示唆された。
Claims (6)
- 配列番号1で表される塩基配列に少なくとも98%相同のDNAから成るトランスポゾン遺伝子。
- 請求項1に記載のトランスポゾン遺伝子を含有するプラスミド。
- 請求項1に記載のトランスポゾン遺伝子が導入された形質転換体。
- 宿主が植物である請求項3に記載の形質転換体。
- 前記植物がシロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ、トウモロコシ又はイネである請求項4に記載の形質転換体。
- 請求項4又は5に記載の形質転換体において、前記トランスポゾン遺伝子が転移して形質転換した植物又はその種。
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---|---|---|---|---|
WO2011001777A1 (ja) * | 2009-06-30 | 2011-01-06 | サントリーホールディングス株式会社 | 花の色を薄く又は濃くする方法 |
CN104531727A (zh) * | 2015-01-07 | 2015-04-22 | 西南大学 | 桑树类黄酮3-o-糖基转移酶基因、蛋白及其制备方法 |
CN112391362A (zh) * | 2020-11-04 | 2021-02-23 | 江南大学 | 催化活性提高的黄酮3β-羟化酶突变体及其应用 |
-
2002
- 2002-12-04 JP JP2002352101A patent/JP2004180592A/ja active Pending
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