JP4454583B2 - 突然変異の検出法と誘発法 - Google Patents

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Description

本発明は、植物の芽条突然変異を誘発する新規の転移因子、転移酵素および転移酵素をコードする塩基配列を用いた突然変異の検出方法、誘発方法、安定化方法や突然変異遺伝子の同定方法および遺伝子の発現が抑制された変異体の選抜に関する。
突然変異は作物の品種改良や分子遺伝学的研究に重要であり、自然に発生する芽条突然変異や人為的な突然変異が利用される。本発明でいう芽条突然変異とは植物体の一部に体細胞の遺伝子レベルでの突然変異が生じることを指し、芽条突然変異体とは該突然変異体のことを指す。栄養繁殖作物である花きや果樹などの作物では、交雑を経ない芽条突然変異は品種育成に重要な遺伝変異を提供する。しかし、芽条突然変異による変異の分子的なメカニズムについては、その原因は不明であり自然発生に任せている。また、自然突然変異は100万分の1程度の確率でしか起こらないとされており、この効率をあげるために突然変異を誘発させる手法として放射線照射や変異原性をもつ化学物質などが利用されるが、変異出現率を増加させようとすると望ましい変異の他にも変異が入ってしまい目的の形質に加えて劣悪な形質を伴う場合が多く、非常に多くの個体からなる変異集団の中から目的のものを探す必要があり効率が低い。
転移因子(トランスポゾンともいう)は原核生物から真核生物にいたる生物種に広く見出される、ゲノム上を転移する可動性遺伝因子である。植物ではシロイヌナズナ、ハクサイなどで見出されており[特開2003−93074号公報]、またトウモロコシ(Zea mays)の穀粒やキンギョソウ(Antirrhinum majus)の花弁[蛋白質 核酸 酵素 37 1047−1059(1992)]、アサガオ(Pharbitis nil)の花弁[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:7016−7023(2000)]、ペチュニア(Petunia hybrida)の花弁[The Plant Journal 13:39−50(1998)]、およびカーネーション(Dianthus caryophyllus)の花弁におけるアントシアニン色素生合成系遺伝子の発現を制御する転移因子がよく知られている。
例えば白色花弁に赤い斑の入るカーネーション品種では、アントシアニン色素生合成酵素のひとつであるジヒドロフラボノール−4−リダクターゼ(以下、DFRという)遺伝子内に転移因子が挿入している。DFR遺伝子は赤色色素合成に必要であるが、転移因子が挿入しているとDFR遺伝子が機能しないため花色は白色となる。ところが、花弁形成時に挿入している転移因子が脱離することによりDFR遺伝子の機能が回復し、赤い斑の入った模様ができることが解明された[Plant Cell Physiology.43:578−585(2002)]。このように個体内の一部の細胞において転移因子が脱離しセクター状の変異を有する事例において、トウモロコシ、キンギョソウ、アサガオ、ペチュニアなどでは転移因子の関与が分子遺伝学的に解明されている。
また、転移因子による変異は生殖細胞を経て後代へ伝達されることも明らかとなっている。この場合転移因子は生殖細胞の形成期に転移したものであり、後代に転移因子による突然変異体が得られる。この事象を利用して、既知の転移因子を遺伝子導入などによりに導入し、その後代で得られた変異体を、導入した転移因子を指標に解析することにより遺伝子を単離する手法が開発されトランスポゾンタギングと呼ばれている[The Plant Journal 7:677−685(1995)]。
このように転移因子を変異原とする試みが行われるようになったが、現在の手法は芽条での転移因子の遺伝子への挿入による変異を得るにいたっておらず、もっぱら交配あるいは交雑を経由した変異体の取得にとどまっている。このように転移因子が個体を構成する一部の細胞で転移する事例は知られており、レトロトランスポゾンによる芽条突然変異の例も報告されている[Science 304:982(2004)]。しかしながら、芽条突然変異のような栄養繁殖による変異の固定が可能な突然変異がレトロトランスポゾン以外の転移因子により引き起こされている例は報告がない。
特開2003−93074号公報 蛋白質 核酸 酵素 37 1047−1059(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:7016−7023(2000) The Plant Journal 13:39−50(1998) Plant Cell Physiology.43:578−585(2002) The Plant Journal 7:677−685(1995) Science 304:982(2004)
従来、発生頻度の非常に低い自然突然変異と、目的とする変異に加え目的としない変異が伴ってしまう放射線や化学物質による人為的な突然変異を利用し芽条突然変異体が得られていた。このような技術下では多数の個体を扱い、その中から目的とする変異体を選抜する必要があり、効率が非常に低かった。また、従来の方法により得られた突然変異体は変異した遺伝子を特定するために多くの労力を必要とする。これらの課題を解決するために、本発明は芽条突然変異を誘発する植物の新規転移因子を提供すること、新規転移因子の有無や脱離の有無を検出する方法を提供すること、この新規転移因子を変異原として利用して芽条突然変異を誘発する手法を提供することを目的とする。
芽条突然変異を誘発する転移因子を突然変異原として利用しこの転移を人為的に促すことにより、1細胞あたりの変異する遺伝子が少数であるが効率高く芽条突然変異体が得られる理想的な突然変異方法となる。また、前述のとおり原因遺伝子に転移因子という指標が存在することになり、原因遺伝子の単離が容易になる。
前記の課題を解決するために発明者は研究を重ね、紫花色を示すカーネーション系統95SP(ミセスパープル、日本国での種苗法に基づく品種登録番号7291号、キリンビール社)、その芽条突然変異体であるピンク花色を示すカーネーション系統97SPi(ミセスピンクロサリオ、日本国での種苗法に基づく品種登録番号8976号、キリンビール社)、濃赤花色を示す97SE(ミセスエレガント、日本国での種苗法に基づく品種登録番号9247号、キリンビール社)、カーネーション品種カリー(バルブレ&ブラン社)、Dianthus chinensisDianthus barbatus、ピンク花色を示すカーネーション系統99SP4、およびピンク花色を示すカーネーション系統99SP5を用い以下の知見を見出した。
すなわち、カーネーション系統97SPiのアントシアニン生合成に関与する酵素であるフラボノイド3’水酸化酵素をコードするゲノミック遺伝子にはカーネーション系統95SPにはないDNAが挿入していた。挿入している塩基配列は転移因子が有する典型的な特徴を備えていた。すなわち、両端に配列番号1および配列番号2に示す13塩基の逆位反復配列を有し、該配列が挿入した位置の両側には8塩基の同一方向の同一塩基配列が存在していた。また、逆位反復配列はトウモロコシの転移因子であるACのそれに類似しているが(図1)、内部の約4kbにわたる塩基配列には類似性は認められなかった。該塩基配列にはオープンリーディングフレームが存在し、この塩基配列をアミノ酸に変換した配列は、キンギョソウ由来の転移因子およびトウモロコシ由来の転移因子にそれぞれコードされる転移酵素のアミノ酸配列と相同性を示した(図2)。この転移酵素の発現をリターンPCR(以下リターンPCRという)により検出することが可能である。
さらに97SPiから先祖返りをおこした紫花色を示す個体の花弁では挿入していた塩基配列が脱離しており、97SPiが生成した後もこの塩基配列が転移する能力を有していることが明らかである。
また、97SPiから両端に配列番号1および配列番号2に示す13塩基の逆位反復配列を有するが、内部に転移酵素遺伝子をもたない非自律性転移因子と考えられるDNA塩基配列を得た。このDNA配列は95SPおよび95SPの突然変異体である97SEにも存在し、97SEでは95SPにはない新たなゲノム部位に挿入しており、該配列が挿入した位置の両側には8塩基の同一方向の同一塩基配列が存在していた。97SEでは95SPとは異なるゲノム部位に挿入していることから該配列は可動であることが確認された。
本発明は、ゲノム上を転移し芽条突然変異を誘発する転移因子を初めて単離、同定したものである。また、ダイアンサス属の染色体DNAに由来する転移因子である本発明の転移因子のうち転移酵素をコードしているものは、本酵素の発現を制御することにより転移を制御することを可能とする。また、本発明の転移因子のうち転移酵素をコードしていないものについても、転移酵素をコードする転移因子の転移酵素の発現を制御することにより転移を制御することを可能とすると予想される。
本発明の転移因子は、芽条突然変異を誘発する性質を有する。したがって転移を促す温度等の特定の環境条件を与えること、あるいは転移酵素を人為的に発現することにより、効率よく芽条突然変異を誘発することが可能となるという有用性がある。芽条突然変異体は本発明により明らかとなった転移因子の塩基配列情報を利用して容易に検出することが可能となる。
また、本転移因子により誘発された突然変異を解析することにより容易に原因となる遺伝子を単離することが可能となる。
さらに、転移因子の遺伝子への挿入により、アンチセンスといった遺伝子組換え技術を用いることなく遺伝子の発現が抑制された変異体を得ることができるが、遺伝子が破壊された芽条を得ることが重要な遺伝的にヘテロな個体や生殖および種子形成に関与する遺伝子の場合、転移因子による芽条突然変異が有用である。本転移因子により誘発された突然変異の中から目的とする遺伝子破壊個体を容易にスクリーニングすることが可能であり、遺伝子組み換えを行うことなしに、遺伝子の発現の抑制が可能となる。
また、逆に温度等の環境条件への暴露を控えたりRNAiなどの手法を用い人為的に転移酵素の発現を抑制することによって芽条突然変異を安定化することも可能となる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003−323428号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、各種植物と本発明の植物(カーネーション系統97SPi)における転移因子中の末端逆位反復配列の相同性比較。ここで、クラスターは転移因子のタイプを意味する。Genetics 158:949−957 2001の記載を基に作成した。
図2−1は、本発明で用いた植物(カーネーション系統97SPi)における転移酵素とキンギョソウ転移因子Tam3の転移酵素とのアミノ酸レベルでの相同性比較。ここで、R,Q等の記号が2配列間に示されたものは、当該アミノ酸同士が同一であり、+で示されたものは当該アミノ酸同士が類似であることを示す。例えばLとIとVとMは疎水性のアミノ酸において共通しているのでこの記号を付す。また、Queryは本発明の転移因子が有する転移酵素のアミノ酸配列を示し、Sbjctはキンギョソウの転移因子Tam3が有する転移酵素のアミノ酸配列を示す。
図2−2は、図2−1のつづき。
図3−1は、95SPのフラボノイド3’水酸化酵素(F3’H)遺伝子cDNA塩基配列(Query)とGenBank AX028819に記載されているF3’H遺伝子のcDNA配列(Subject)の比較。|は相同な塩基、*は相違する塩基を表す。
図3−2は、図3−1のつづき。
図4は、各種カーネーションでの転移因子脱離の有無確認。GTTAACAATTCAATACTCAGTACA(24塩基:配列番号10)およびGGTCTAGTTAGTCAGCTACGG(21塩基:配列番号16)2種のプライマーを用い、系統95SP、97SPiのDNAおよび97SPiの個体から部分的に紫花色に先祖返りをおこした花の花弁のDNAを鋳型にPCRを行った。95SP(レーン3)のフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子には97SPiに存在する位置に本発明の転移因子は存在しない。さらに、紫花色に先祖返りをおこした花の花弁(レーン20、21)では本発明の転移因子はフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子から脱離しており、本発明の転移因子が転移能を有することは明らかである。レーンの説明; 1:分子量マーカー(λHindIII) 2:97SPi 3:95SP 4−19:97SPi 20−21:97SPiの個体から部分的に紫花色へ先祖返りをおこした花の花弁
図5は、各種カーネーションでの転移酵素の転写発現確認。系統95SPおよび97SPiからcDNAを調整し、プライマーCACTATGGATCCTAATTCTCAAA(23塩基:配列番号20)およびGAGACTCATAGTGGTTATATACA(23塩基:配列番号14)を用いPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃3分)を30回、72℃3分)を行った(イ)。また、プライマーTTCTTCACTTGAATTCGAACAAG(23塩基:配列番号21)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)を用い同様にPCRを行った(ロ)。このような手法により、転移酵素の発現を評価することが可能である。レーンの説明; 1:分子量マーカー(λHindIII) 2:97SPiイ 3:95SPイ 4:97SPiロ 5:95SPロ
図6は、各種ダイアンサス属植物での転移因子の有無確認。GGTCTAGTTAGTCAGCTACGG(21塩基:配列番号16)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)という2種のプライマーを用いPCRを行い本発明の転移因子の存在をダイアンサス属植物で調査したところ、カーネーションの他品種(レーン3)やカーネーション以外のダイアンサス属植物(レーン4、5)にも存在することが明らかとなった。レーンの説明; 1:分子量マーカー(λHindIII) 2:97SPi 3:カーネーション品種カリー 4:Dianthus chinensis 5:Dianthus barbatus
図7は、各種カーネーションでの転移因子の転移(芽条突然変異)の有無の確認。系統95SP、97SPiおよび95SPからの芽条突然変異体である系統99SP4、99SP5のゲノムDNAを制限酵素HindIIIあるいはSpeIにより分解した(それぞれ図7−Aと7−B)。これら分解産物を材料にプライマーCGAATACCGTGCTTTGGACG(20塩基:配列番号18)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)を用いインバースPCRを行い、本発明の転移因子の転移を評価した。それぞれバンドパターンに変化がみられ、本発明の転移因子が転移したことが検出された。レーンの説明; A HindIII 1:97SPi 2:95SP 3:99SP5 4:99SP4 5:分子量マーカー(λHindIII)レーンの説明; B SpeI 1:分子量マーカー(λHindIII) 2:97SPi 3:95SP 4:99SP5 5:99SP4
芽条突然変異を誘発する転移因子
ピンク花色カーネーション97SPiは紫花色カーネーション95SPより得られた芽条突然変異体である。両者の花色色素をTLCにより分析し、前者の花色色素はペラルゴニジン骨格をもち、後者はシアニジン骨格をもつことを明らかにした。このことによりこの芽条突然変異の原因遺伝子は、フラボノイド3’水酸化酵素であると考えられた。フラボノイド3’水酸化酵素のcDNA配列(GenBank AX028819)をもとに作成したプライマーAAGCATATTGCNTAYAAYTAYCANGA(26塩基:配列番号5)およびCCATCTCTTGCDATNGCCCANAYRTT(26塩基:配列番号6)を用いPCRにより、95SPのフラボノイド3’水酸化酵素cDNA配列を得た。ここで塩基Y、R、Nはそれぞれ、C又はT、A又はG、任意の塩基(A又はG又はC又はT)を指す。以下の実施例も同様である。次に得られたcDNA配列をもとに作成したプライマーTAAACGGGTACCACATTCCCA(21塩基:配列番号7)およびAAGTCGGAAAACCTCTTTGAT(21塩基:配列番号8)を用いインバースPCRを行い、ここまでに明らかとなった塩基配列をもとにプライマーAGCAGGAACAAAGCCAGTACA(21塩基:配列番号9)とGTTAACAATTCAATACTCAGTACA(24塩基:配列番号10)およびプライマーAATGTCACCCTTAGAGGTAACTTTCTA(27塩基:配列番号11)とTAGCAAGGCCTTAATTTCTGTG(22塩基:配列番号12)、2組み合わせのプライマーを作成しPCRによりフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子のゲノム塩基配列を明らかにした。さらにここまでに明らかとなったフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子のゲノム塩基配列をもとに設計したプライマーCACACGATTCGTTTGCGACC(20塩基:配列番号13)およびTAAACGGGTACCACATTCCCA(21塩基:配列番号7)を用い、ゲノムDNAを鋳型にインバースPCRを行い、97SPiおよび95SPの産物を比較し97SPiに特異的に存在するDNA断片を得た。
さらにこのDNA断片の塩基配列をもとに作成したプライマーGAGACTCATAGTGGTTATATACA(23塩基:配列番号14)およびフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子の塩基配列をもとに作成したプライマーTAACAACACGTAACCGAAAATATA(24塩基:配列番号15)を用いPCRを行い97SPiのフラボノイド3’水酸化酵素のゲノミック遺伝子に挿入する95SPにはないDNAを得、塩基配列を決定した。この塩基配列は転移因子が有する特徴を備えていた。すなわち、両端に13塩基の逆位反復配列を有し、該配列が挿入した位置の両側には8塩基の同一方向の同一塩基配列(AGTTAATT)が存在していた。
また、該塩基配列にはオープンリーディングフレームが存在し、この配列の相同性を検索すると塩基レベルでは相同性は検出されないものの、この配列をアミノ酸に変換した配列ではキンギョソウ由来の転移因子およびトウモロコシ由来の転移因子にそれぞれコードされる転移酵素のアミノ酸配列と相同性を示した。このうちキンギョソウのTam3とのアミノ酸レベルで相同性比較を図2に示す。BLAST検索により解析したところ、両者間の相同性は29%であった。
さらに97SPiの個体から部分的に先祖返りをおこした紫花色を示す花の花弁から単離したDNAをPCRにより検定すると、挿入していた塩基配列が脱離しており97SPiが生成した後もこの塩基配列が転移する能力を有していることが明らかとなった。
この塩基配列を配列番号4に、対応する転移酵素部分のアミノ酸配列を配列番号3に示す。この転移因子は、hAT型の自律性転移因子に分類されることから、5’末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有し、配列番号1及び配列番号2に示す配列を直接に、又は4000塩基より短い任意のリンカーを介し、連結された非自律性因子も転移酵素が外部から供給されることにより、芽条突然変異を誘発することが可能である。97SPiのゲノムDNAを鋳型に、配列番号4の塩基配列をもとに作成したプライマーAGATCTAGAGCTGGCAAACCGGTGC(25塩基:配列番号23)およびプライマーAGATCTAGAGCTGGCAAAAAAACGGGC(27塩基:配列番号24)を用いPCRを行い、得られた産物の塩基配列を決定し、配列番号22に示す自然に存在するこのような転移酵素遺伝子をもたない非自律性因子を得た。本非自律性因子は、95SPおよび95SPからの突然変異体である97SEにも存在し、97SEでは95SPには存在しないゲノム部位に挿入が見られることから、可動であることが明らかである。さらに、97SE特異的に挿入が見られるゲノム部位の塩基配列を決定したところ、両端に転移酵素遺伝子を有する転移因子と相同な配列番号1および配列番号2に示すそれぞれ13塩基の逆位反復配列を有し、該配列が挿入した位置の両側には8塩基の同一方向の同一塩基配列(GTTATATG)が存在していた。
このような自然に存在する非自律性因子も、本発明の転移酵素遺伝子をもつ転移因子の転移酵素が供給されることにより、芽条突然変異を誘発することが可能であると予想される。
本発明で用いられる塩基配列には配列番号4および配列番号22の塩基配列以外に、
(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列
(2)配列番号3のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は(両端に)付加されたものであり、かつ転移活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列
(3)配列番号4に示す塩基配列のうち1056番目のAから3497番目のTまでである塩基配列
(4)配列番号4に示す塩基配列の縮重異性体
(5)上記(1)〜(3)いずれかに記載の塩基配列または上記(4)に記載の縮重異性体又は配列番号4とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコードされるポリペプチドが転移活性を有する塩基配列および配列番号22とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列も含まれる。
また本発明には、以下の(1)〜(2)のいずれかのポリペプチド
(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
(2)配列番号3のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は(両端に)付加されたものであり、かつ転移酵素活性有するポリペプチド、も含まれる。
ここで上記(2)でいうアミノ酸の欠失、置換、挿入又は(両端に)付加の操作は、例えば、D.F.Mark et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)5662−5666、S.Inouye et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79(1982)3438−3441、WO85/00817、R.P.Wharton et al,Nature 316(1985)601−605に記載されている部位特定突然変異誘発法等により当業者であれば容易に実施することができる。ここで得られた変異型アミノ酸配列を有するポリペプチドは芽条突然変異を誘発する転移活性を有すればよく、当該転移活性の有無は以下の実施例で述べる方法により判断できる。
上記(4)でいう縮重異性体とは、縮重コドンにおいてのみ異なっていて同一のポリペプチドをコードすることのできる塩基配列を意味する。たとえばある塩基配列に対してあるアミノ酸のどれかに対応するコドン、例えばAsnに対応するコドン(AAC)が、これと縮重関係にある例えばAATに変わったものを本発明は縮重異性体と呼ぶものとする。
上記(5)でいうストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度が、10mM〜300mM、好ましくは20〜100mMであり、温度が25℃〜70℃、好ましくは42℃〜55℃での条件をいう[Molecular Cloning(Sambrookら編集(1989)Cold Spring Harbor Lab.Press,New York)]。
さらに、本発明で用いられる塩基配列には、転移する能力を有する限り、上記の配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは94%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列、も含まれる。ここで、このような相同性の数値は、塩基配列比較用プログラム:例えばDNASIS−Mac v3.7やBLAST:NCBIのサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)を用いて、デフォルト(初期設定)のパラメーターにより算出されるものである。
転移酵素をコードする塩基配列を含むDNA又はその部分の変異体は、転移活性を有していればよく、その活性の高さは特に限定されないが、それぞれ、該塩基配列を含むDNA又はその部分の転移活性と同等の活性を実質的に有することが好ましい。ここで、「当該活性を実質的に有する」とは、該活性を利用した実際の使用態様において、これらのDNA又はその部分と、同一の条件でほぼ同様の利用が可能な程度の活性が維持されていることをいう。また、ここでいう当該活性とは、例えば植物細胞や植物体、好ましくは双子葉植物の細胞や植物体における活性、より好ましくはカーネーションの細胞や植物体における活性をいう。ここで転移活性は、例えば、Hashidaらの報告[Plant Pysiol.132:1207−1216]の方法に従って、欠失で自律性を失った転移因子を含むプラスミドを作成し、これをbombardmentにより細胞内に打ち込んで、プラスミドから転移する頻度を見ることにより測定することができる。
さらに、得られた転移因子の塩基配列のうち配列番号4をもとにプライマーを作成しPCRを行ったところ、カーネーションの品種カリーのみならずDianthus chinensisおよびDianthus barbatusでも予想される大きさの増幅産物が得られたので、この転移因子は少なくともダイアンサス属に存在することが明らかである。なお、この転移因子は転移酵素の活性を有し上記のような転移を起こすものであれば、本発明で見出されたダイアンサス属に限らず含まれ、幅広い植物での花色などの突然変異現象を説明できる。そのような植物としてダイアンサス属以外に例えばダイアンサス属が含まれるナデシコ科、バラ科、オシロイバナ科、キク科、ヒルガオ科、ツリフネソウ科やナス科の植物が挙げられるが何等これらの植物に限定されることなく、幅広く単子葉、双子葉の植物でも見出される可能性がある。
転移因子有無の検出に用いるプライマーの設計は転移因子の塩基配列のうち、連続する8塩基以上、望ましくは16塩基以上、更に望ましくは20塩基以上、更に好適には20〜30塩基の部分を2ヶ所任意に選ぶことにより可能である。以下の実施例で用いたプライマー配列はGGTCTAGTTAGTCAGCTACGG(21塩基:配列番号16)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(21塩基:配列番号17)であるが、これ以外のものでも構わない。2つのプライマーの選択位置の間の距離を、好適には、100から1000塩基、更に好適には、300から600塩基とすることができる。このようなプライマーは、プライマー間の目的とするDNA断片を増幅するものであればよく、例えばGENETYX−WIN version 4.0などの解析ソフトを利用することにより任意に選んで使用することができる。このようなプライマーは、数種類、望ましくは1種の増幅産物が得られるようなものであればPCR等の遺伝子増幅法による本検出に用いることができる。このような遺伝子増幅法としては、PCR法を挙げることができるが、PCR法に限定されず、特定的プライマーを使用する増幅法であれば、用いることができ、例えばPCR法は遺伝子増幅PCR法共立出版株式会社(1990)を参照すれば、当業者であれば容易に行い得る。
プライマーには、配列番号4および配列番号22から設計される特異的部分(実施例参照)に加え、アダプター配列を付加することもできる。このようなアダプター配列を付加したPCR法として、PCR−AFLP法やPCR−VECTORETTE法が挙げられるが、これらに限られることなく他にCTの繰り返し数に着目したPCR−SSR法、塩基配列に依存した高次構造の相違に着目したPCR−SSCP法、2本鎖DNAの融解温度の相違に着目したPCR−DGGE法等も適宜用いることができる。このような手法は当業者であれば、容易に選択し行うことができる。
転移因子の有無の検出に用いるプローブには、配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列又は上記(1)〜(5)の塩基のうち少なくとも連続した100塩基又はその相補的配列を有する100塩基を含むプローブを用いることができる。プローブには、通常用いられる手段、例えば、放射線標識(アマシャム社メガプライム法)、DIG標識(ロシュ社方法準拠)等で標識することができる。
また転移因子が挿入された遺伝子が同定できれば、転移因子の脱離を次のようにして確認できる。例えば、本発明により得られた転移因子をプローブとしサザンハイブリダイゼーションにより、又は転移因子の塩基配列をもとにプライマーを作成しインバースPCRを行うことにより、変異体と変異体が由来するもととなる個体の相違を検出することにより、変異遺伝子(転移因子が挿入された遺伝子)の一部(断片)を単離することができる。
このようにして得られたDNA断片を用い変異遺伝子全体を容易に単離することができる。
転移因子の脱離有無の検出に用いるプライマーの設計は、本転移因子が花色発現酵素をコードする塩基配列に挿入されている場合は、転移因子の塩基配列と花色発現酵素をコードする塩基配列(ここではフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子のゲノム塩基配列)から、それぞれ連続する8塩基以上、望ましくは16塩基以上、更に望ましくは20塩基以上、更に好適には20〜30塩基の部分を2ヶ所任意に選ぶことにより可能である。以下の実施例で用いたプライマー配列は配列番号19および配列番号4に示す塩基配列から、それぞれGTTAACAATTCAATACTCAGTACA(24塩基:配列番号10)およびGGTCTAGTTAGTCAGCTACGG(21塩基:配列番号16)であるが、これ以外のものでも構わない。このようなプライマーは、プライマー間の目的とするDNA断片を増幅するものであればよく、例えばGENETYX−WIN version 4.0などの解析ソフトを利用することにより任意に選んで使用することができる。
このようなプライマーは、数種類、望ましくは1種の増幅産物が得られるようなものであればPCR等の遺伝子増幅法による本検出に用いることができる。このような遺伝子増幅法としては、PCR法を挙げることができるが、PCR法に限定されず、特定的プライマーを使用する増幅法であれば、用いることができ、例えばPCR法は遺伝子増幅PCR法 共立出版株式会社(1990)を参照すれば、当業者であれば容易に行い得る。
また本発明には、
(1)配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列のうち少なくとも連続した8塩基を含むプライマーを用いた遺伝子増幅法により、5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は以下の[A]に記載のDNA若しくは[B]に記載の転移因子塩基配列を検出することを特徴とする芽条突然変異の有無を検出する方法、
[A]: 以下の(a)〜(d)、(f)、(g)のいずれかの塩基配列又は(e)の縮重異性体を含んでなるDNA。
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列
(b)配列番号3のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は(両端に)付加されたものであり、かつ転移酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列
(c)配列番号4の塩基配列
(d)配列番号4の塩基配列のうち1056番目のAから3497番目のTまでである塩基配列
(e)配列番号4の塩基配列の縮重異性体
(f)上記(a)〜(d)いずれかに記載の塩基配列又は上記(e)に記載の縮重異性体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコードされるポリペプチドが転移活性を有する塩基配列
(g) 以下の(i)〜(ii)のいずれかの塩基配列
(i)配列番号22の塩基配列
(ii)上記(i)に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
[B]: 5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有し、配列番号1及び配列番号2に示す配列を直接に、又は4000塩基より短い任意のリンカーを介し、連結された非自律性の転移因子。
(2)配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列のうち少なくとも連続した8塩基を含むプライマーを用いた遺伝子増幅法により、5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は上記[A]に記載のDNAを有する転移因子若しくは[B]に記載の転移因子の有無を検出する方法、
(3)配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列のうち少なくとも連続した8塩基を含むプライマーと本転移因子が挿入している周囲の塩基配列のうち少なくとも連続した8塩基を含むプライマーを用いた遺伝子増幅法により、5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は上記[A]に記載のDNAを有する転移因子若しくは[B]に記載の転移因子の脱離有無を検出する方法、も含まれる。
より具体的には、配列番号4の塩基配列のうち少なくとも8塩基の塩基が連続した任意の場所と配列番号19の塩基配列のうち少なくとも8塩基の塩基が連続した任意の場所をプライマーとして利用したPCR法により、5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は上記[A]に記載のDNAを有する転移因子若しくは[B]に記載の転移因子の脱離有無を検出する方法、も含まれる。
(4) 配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列のうち少なくとも連続した100塩基又はその相補的配列を有する100塩基を含むプローブを利用した、5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は上記[A]に記載のDNAを有する転移因子若しくは[B]に記載の塩基配列を検出することを特徴とする芽条突然変異の有無を検出する方法、
(5) 配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列のうち少なくとも連続する100塩基又はその相補的配列を有する100塩基を含むプローブを利用した、5‘末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は上記[A]に記載のDNAを有する転移因子若しくは[B]に記載の転移因子の有無を検出する方法も含まれる。
これら(1)〜(5)の検出法に係る説明は、以下の通りである。
芽条突然変異の検出
本発明の転移因子の塩基配列を利用することによりサザンハイブリダイゼーション、インバースPCRあるいはトランスポゾンディスプレイなどの手法を用いて、もととなる個体との相違を調査することにより突然変異体を容易に検出することができる。
以下の実施例ではインバースPCRを用い突然変異の検出を行った。ここで用いた制限酵素はHindIIIあるいはSpeIであり、プライマーはCGAATACCGTGCTTTGGACG(20塩基:配列番号18)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)であるが、これ以外のものでも構わない。制限酵素は設定したひとつのプライマーの3’末端から5’末端側へもうひとつのプライマーの3’末端までの間に切断点をもたず、かついずれかひとつのプライマーの3’末端から転移因子の3’末端までの間に切断点をもたない酵素であれば、本検出に用いることができる。本検出に用いるプライマーは本転移因子の塩基配列のうち、連続する8塩基以上、望ましくは16塩基以上、更に望ましくは20塩基以上、更に好適には20〜30塩基の部分を2ヶ所逆方向に任意に選ぶことにより可能である。このようなプライマーは、プライマー間の目的とするDNA断片を増幅するものであればよく、例えばOligo 4.0などの解析ソフトを利用することにより任意に選んで使用することができる。
芽条突然変異を誘発する転移因子の転移促進による突然変異
(1)転移因子の利用法
転移因子の転移を誘発する環境条件としてカルス培養・紫外線照射・放射線照射・病原菌の感染などが知られている(Plant Cell 1998;10:427−34)。また、低温(MGG 1987;207:82−89)や高温(特開2003−93074号公報)など温度条件も転移を促進する要因として報告されている。このように種々の環境的あるいは人為的な要因により転移が活性化されることが明らかとなっている。これらの条件に植物を暴露することにより、転移因子の転移(突然変異誘発)を促進することが可能である。
本発明で得られた配列番号4および配列番号22に示す塩基配列を有する転移因子は、実際に転移することが可能である。また、それぞれが転移することにより芽条突然変異を誘発することがDNAレベルで明らかとなった。本発明で得られた97SPiのフラボノイド3’水酸化酵素に挿入している転移因子は、限定されるものではないが、少なくとも低温あるいは短日あるいはそれら両方の条件下において顕著に転移が促進される。このように当該促進に伴って芽条突然変異体を効率よく得ることが可能となる。また、すでに述べたようにカルス培養・紫外線照射・放射線照射・病原菌の感染(Plant Cell 1998;10:427−34)あるいは高温(特開2003−93074号公報)などの条件も、本発明の転移因子の転移を促進する条件の候補である。
また、転移因子の転移の促進には転移因子自身の脱メチル化が関与することが知られている(植物の生長調節2001;36:178−180)。DNAメチル化酵素遺伝子の発現抑制や、脱メチル化を促すために5−アザシチジンなどの化学物質処理を行うことにより転移因子の転移を促進することが可能であると考えられる。このような転移因子の活性化(可動)条件を容易に検出するには種々の条件においた植物の転移酵素活性を調査することも有効である。
そこで、予め転移因子の存在する個体をスクリーニングし、転移因子の存在が確認された植物について、上記の転移を誘発する条件に曝したり、化学処理をすることにより、芽条突然変異を効率よく導入できる。
転移酵素の転写量はノーザンハイブリダイゼーションやリターンPCRにより把握することにより推定することが可能であり、容易に転移を促す要因の特定ができ、芽条突然変異を得る条件を決定することが可能である。また、メチレーション感受性の制限酵素とメチレーション非感受性の制限酵素を用いRFLP、AFLP、CAPSなどのDNA多型検出方法を用いること(Nature(2001)411:212−214)、あるいはメチルシトシン残基に影響をおよぼさずにシトシン残基を化学的にウラシルへ変換し塩基配列を解読することにより(Nucleic Acids Res(1994)22:2990−2997)容易に転移因子のメチレーション程度を検定することができる。このような評価は当業者であれば容易に行うことができる。
これら転移因子がもつ転移酵素の転写量を監視することおよび転移因子のメチレーション程度を評価することにより、転移因子の転移活性を評価することが可能となり容易に転移を促す条件を得ることができる。
本発明には、請求項1記載のDNAを用いて宿主を形質転換し(当該DNA:遺伝子が発現した)形質転換体を作出することにより転移酵素を発現し自律性因子、非自律性因子を問わず転移因子の転移を促進することにより芽条突然変異体を作出する方法、即ち芽条突然変異の誘発法も含まれる。このような方法につき、以下(2)〜(4)に説明する。
(2)転移酵素をコードする遺伝子を含むDNA
転移酵素をコードする遺伝子を転移酵素をコードする遺伝子自身のプロモーターのみならずカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターなど植物での機能がみとめられるプロモーターと交換し、遺伝子導入の手法を用い植物に導入し、請求項1(1)〜(4)、(6)、(7)に記載のいずれかの塩基配列又は請求項1(5)に記載の縮重異性体又は請求項5に記載される転移因子のいずれかを転移させることにより芽条突然変異を促すことが可能である。
ここでプロモーターとしてカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを例示したが、植物で機能するものであれば、何等これに限定されるものではない。
また、誘導性プロモーターに結合し遺伝子導入の手法を用い植物に導入することにより、誘導条件下でのみ転移を促すことができる。また、遺伝子組み換えを経ずとも一過的に転移酵素をコードする遺伝子を発現することにより転移を促進することもできる。
ここで誘導性プロモーターとして、例えばヒートショック誘導性(Appl Microbiol Biotechnol.1995 44:466−472)のものを用いることができる。但し、誘導性であり、且つ植物細胞や植物体内で機能するものであれば、上記プロモーターに限定されるものではない。
なお、上述のプロモーターは、該プロモーターを含むDNAの塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、ゲノムDNAを鋳型として、PCRによる増幅反応によって得ることができる。具体的には、誘導性プロモーターの場合このような遺伝子の1つであるヒートショック蛋白遺伝子(Mol Gen Genet(1989)219:365−372)のプロモーター領域(ヒートショック蛋白遺伝子の翻訳開始点から−678の領域)を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、増幅することにより得ることができる。ここでPCRに用いることができる鋳型DNAとしては、例えばシロイヌナズナのゲノムDNAが挙げられるが、何等これに限定されるものではない。
このようなプロモーターについても上記の転移因子の遺伝子同様、プロモーター活性を有する限りにおいて種々の変異体のものを用いることが出来る。該変異体の作成は、上記の転移因子の遺伝子の記載と同様、上記各種プロモーターに関わる文献に記載の塩基配列を参照すれば、当業者であれば格別の困難性なしに実施できる。上記のように取得した変異体がプロモーターとしての活性を有するか否か、さらには、プロモーターを含むDNA又はその部分のプロモーター活性を実質的に保持するか否かは、転移因子の遺伝子を繋いで宿主細胞内で発現させることにより、上記の芽条突然変異検出法あるいは目視、花色分析など生体成分の分析により確かめることができ、このような方法は当業者であれば容易に行うことができる。
また、必要に応じて転写終結を指令するターミネーターを転移酵素をコードする遺伝子の下流に連結することもできる。
ターミネーターとしては、例えば、35S遺伝子、nos遺伝子やocs遺伝子のターミネーターなどが挙げられる(Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.,44(1993)985−994、″Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual″)が、植物細胞内や植物体内で機能することが知られているターミネーターであればこれらに限定されるものではない。
また、必要に応じてプロモーター配列と転移因子の遺伝子との間に、遺伝子の発現を増強させる機能を持つイントロン配列、例えばトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ(Adhl)のイントロン[Genes & Development 1:1183−1200(1987)]を導入することができる。
DNAはさらに、翻訳エンハンサー、翻訳終止コドン等の構成要素を含むことができる。翻訳エンハンサー及び翻訳終止コドンとしては、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。ウイルス起源の翻訳エンハンサーとしては、例えば、タバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルスRNA4、ブロモモザイクウイルスRNA3、ポテトウイルスX、タバコエッチウイルスなどの配列が挙げられる(Gallieら、Nuc.Acids Res.,15(1987)8693−8711)。また、植物起源の翻訳エンハンサーとして、ダイズのβ−1,3グルカナーゼ(Glu)由来の配列(石田功、三沢典彦著、講談社サイエンティフィク編、細胞工学実験操作入門、講談社、p.119、1992)やタバコのフェレドキシン結合性サブユニット(PsaDb)由来の配列(Yamamotoら、J.Biol.Chem.,270(1995)12466−12470)などが挙げられる。翻訳終止コドンとしてはTAA,TAG,TGAなどの配列が挙げられる[Molecular Cloning前出等の記載]。また、プロモーター中の転写エンハンサーとして、35S遺伝子のエンハンサー部分が同定され、それらを複数個並べて繋げることにより、活性を高めることが報告されており(Plant Cell,1(1989)141−150)、この部分をDNAの一部として用いることも可能である。これらの各種構成要素は、その性質に応じて、それぞれが機能し得る形でDNA鎖中に組み込まれることが好ましい。そのような操作は、当業者であれば適切に行うことができる。
上記DNAは、遺伝子工学の分野で慣用されている手法を用いることにより、当業者であれば容易に製造することができる。また、本発明のDNAは、天然の供給源から単離されたものに限定されるものではなく、上記のような構造を有するものであれば、人工的な構築物であってもよい。該DNAは、周知慣用されている核酸合成の方法に従って合成する事により、得ることができる。
(3)形質転換と遺伝子発現個体の確認
上記の転移因子の遺伝子によって宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養又は栽培することにより、転移因子としての酵素活性を有するタンパク質を発現することができ、転移因子の転移挿入により任意の酵素をコードする遺伝子の活性発現が抑制された突然変異体を作製することができる。
形質転換後の本発明の鎖は、プラスミド、ファージ又はゲノムDNAの中に挿入された形で、微生物(特に細菌)、ファージ粒子又は植物の中に存在することができる。ここで、細菌としては、典型的には、大腸菌、アグロバクテリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の好ましい実施形態では、本発明のDNAは、タンパク質を発現させようとしている構造遺伝子が、植物細胞内や植物体内で安定に発現し得るように、本発明のDNA、翻訳エンハンサー、翻訳終止コドン、及びターミネーター等とが一体に結合して、これがゲノムに挿入された形態で植物中に存在する。
宿主の好ましい例としては、イネ、ムギ、トウモロコシ、ネギ、ユリ、ラン等の単子葉植物やダイズ、ナタネ、トマト、バレイショ、キク、バラ、カーネーション、ペチュニア、カスミソウ、シクラメン等の双子葉植物といった植物細胞が挙げられ、特に好ましい具体例としては、世界での生産流通消費数量が多い3大切花であるキク、カーネーション、バラや近年栄養系でも世界的に生産流通消費量が飛躍的に伸びているペチュニア等の植物細胞などが挙げられる。また、具体的な植物材料としては、例えば、生長点、苗条原基、分裂組織、葉片、茎片、根片、塊茎片、葉柄片、プロトプラスト、カルス、葯、花粉、花粉管、花柄片、花茎片、花弁、がく片等が挙げられる。
宿主に外来遺伝子を導入する方法としては、既に報告され、確立されている種々の方法を適宜利用することができる。その好ましい例として、例えば、生物学的方法としては、ウィルス、アグロバクテリウムのTiプラスミド、Riプラスミド等をベクターとして用いる方法が挙げられ、物理学的方法としては、エレクトロポレーション、ポリエチレングリコール、パーティクルガン、マイクロインジェクション(″Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual″前出)、シリコンニトリドウイスカー、シリコンカーバイドウイスカー(Euphytica 85(1995)75−80、In Vitro Cell.Dev.Biol.31(1995)101−104、Plant Science 132(1998)31−43)によって遺伝子を導入する方法等が挙げられる。当該導入方法については、当業者であれば適宜選択し、使用することができる。
さらに、本発明のDNAで形質転換された植物細胞を再生させることにより、導入された遺伝子がその細胞内で発現する形質転換植物を作製することができる。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、「植物細胞培養マニュアル、山田康之編著、講談社サイエンティフィク、1984」等の文献を参照することにより、当業者であれば容易に行うことができる。
一般に、植物に導入した遺伝子は、宿主植物のゲノム中に組み込まれるが、その場合、導入されるゲノム上での位置が異なることにより導入遺伝子の発現が異なるポジションイフェクトと呼ばれる現象が見られる。導入遺伝子がより強く発現している形質転換体は、導入遺伝子のDNA断片をプローブとして用いるノーザン法により宿主植物中に発現しているmRNAレベルを検定することによって選抜することができる。
本発明に用いる遺伝子を導入した形質転換植物に目的の遺伝子が組み込まれていることの確認は、これらの細胞及び組織から常法に従ってDNAを抽出し、公知のPCR法又はサザンハイブリダイゼーションを用いて導入した遺伝子を検出することにより行うことができる。また、形質転換植物での発現は、例えばリターンPCRにより容易に行うことができる。
(4)一過的発現
本発明の転移因子にコードされる転移酵素を植物で機能するプロモーターに結合し、一過的に発現することにより、限られた時間内でのみ転移因子の転移を促し突然変異を誘発することが可能である。一過的発現としてはPVXなどウイルスを使ったもの(Plant Cell(1995)7:249−257)やアグロバクテリウム(Plant J(2003)33:949−956.)による系が知られているが、これらに限定されるものではない。
さらに本発明には、配列番号4あるいは配列番号22の塩基配列、および配列番号4あるいは配列番号22とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、および請求項5に記載のDNAを宿主に導入し、転移酵素を供給することにより転移を促すことにより芽条突然変異体を誘発することも含む。
前述した形質転換と同様にDNAの宿主への導入は当業者であれば容易に行うことができる。導入されたDNAは、請求項1に記載したDNAを有する個体(前述した形質転換体を含む)と交配すること、あるいは前述した形質転換などの手法により転移酵素を供給することにより転移が可能となる。このようにして芽条突然変異を誘発することも可能である。
本発明には、上記形質転換体を含め転移因子の転移により得られた芽条突然変異体の安定化方法も含まれる。このような方法につき、以下に説明する。
芽条突然変異の安定化
転移因子を遺伝子内に有する個体では、自然突然変異の発生率より大きな頻度でこの遺伝子から転移因子が脱離することによる復帰細胞が得られることがあり、易変性と呼ばれる(バイオホルティ 7 75−79 1992農耕と園芸編 誠文堂新光社)。易変性は農業生産物の品質の安定性を低下させる要因である。転移因子が脱離する際には、存在した遺伝子に転移因子のDNA塩基を数塩基ランダムに残していくことが知られており、この現象を利用すれば転移因子が脱離したにも関わらず遺伝子の機能が破壊されているものが得られる。つまり、転移因子の転移を促しその遺伝子から脱離したものを選抜することにより安定な変異体を得ることができる。ここで、芽条突然変異を誘発する転移因子で述べたように転移因子が変異遺伝子から脱離した個体を、転移因子の一部および変異遺伝子の一部をプライマーとしてPCRを行うこと、あるいは前出の芽条突然変異の検出で述べた方法によりスクリーニングすることが可能である。また、転移因子あるいは変異遺伝子もしくは転移因子と変異遺伝子をプローブにサザンハイブリダイゼーションを行うことによってもスクリーニングが可能である。上記転移因子離脱後の転移因子に由来する数塩基の残存有無については、例えばその領域を含む部分を遺伝子増幅法で増幅し直接塩基配列を決定することにより芽条突然変異の安定化を確認することができる。
また、逆に転移を助長する温度等の環境条件への暴露を控えたり、RNAiなどの手法を用い人為的に転移酵素の発現を抑制することによって芽条突然変異誘発を安定化することも可能となる。
本発明には、上記形質転換体を利用した芽条突然変異体の単離方法も含まれる。このような方法につき、以下に説明する。
転移因子により誘発された芽条突然変異の変異遺伝子の単離
本発明により得られた転移因子をプローブとしサザンハイブリダイゼーションを行うことあるいは転移因子の塩基配列をもとにプライマーを作成しインバースPCRを行うことにより、変異体とそのもととなる個体の相違を検出することにより変異遺伝子の一部を単離することができる。このようにして得られたDNA断片を用い変異遺伝子全体を容易に単離することができる。本発明の転移因子はこのような場面で、芽条突然変異を起こすという特徴から後代のみならず当代においても遺伝子単離の道具となり得る。
転移因子により誘発された遺伝子の発現が抑制された変異体の選抜
ある遺伝子の機能を抑制しようとする場合、アンチセンス技術などを用い遺伝子組み換えにより達成することが行われているが、本発明の転移因子の転移によりこのような遺伝子の発現を抑制された変異体を遺伝子組み換えを利用することなく作り出すことが可能となる。即ち、例えば低温あるいは短日あるいはそれら両方の条件により転移因子を有する植物の転移因子を転移させ突然変異を誘発することにより、ある遺伝子の発現が抑制された変異体を作成することができる。そして、目的の遺伝子に転移因子が挿入しているものをPCR法により容易に検出(選抜)することが可能である。
転移因子により誘発された変異集団の中から目的とする遺伝子および転移因子のDNAをもとにサザンハイブリダイゼーションあるいはPCRを行うことにより、目的とする遺伝子に転移因子が挿入した個体を選抜することが容易にできる。
なお、本発明の転移因子のうち内部に転移酵素を有しているものは自ら転移することが可能である(自律性)が、一般的に転移因子は内部の配列を除去しても転移酵素の供給があれば転移することが知られている[Plant Physiology 132:1207−1216(2003)]。例えば、本文献ではBall部位からTthHB81部位の2260塩基が欠落しても、転移酵素の供給により転移することができる。このように転移因子の内部を一部欠落させることにより転移酵素活性をもたない転移因子を得ることができ、得られた転移因子は転移酵素を有していないので自らのみでは転移することができないが、転移酵素の供給下で転移することが可能である。本発明で得られた内部に転移酵素をもたないものは、自然界に存在する転移酵素の供給下で転移可能な転移因子である。このような転移酵素供給下で転移可能な転移因子が自然界に存在することは知られており、非自律性因子と呼ばれている[蛋白質核酸 酵素 37:1047−1059(1992)]。転移因子が自律性か非自律性かは、発現可能な転移酵素遺伝子を有するか否かによって推察することができる。
本発明の転移因子においても転移酵素をコードする塩基配列の全部あるいは一部を除去(欠失)するまたは塩基の置換、挿入又は(両端に)付加するといった変異を導入することにより、上述したような転移酵素が働かない転移因子を作成することは当業者であれば容易である。また、本発明の転移因子のDNA配列の全部あるいは一部をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション法やPCR法により当業者であれば容易に本発明の転移因子と相同性を有するものを得ることが可能である。得られたDNA断片の塩基配列を解析することによりそれらの中から転移酵素部分に変異があり、かつ上述したような転移酵素が働かない転移因子を作成するあるいは見出すことは当業者であれば容易である。
このように人為的に作成、あるいは自然界から選抜することにより、本発明の転移因子と相同性を有するが自身では転移することができない転移因子を当業者であれば容易に得ることが可能である。これらは本発明の転移酵素により転移することが可能であるので、このような転移酵素活性をもたない転移因子を上述したような芽条突然変異の検出、芽条突然変異を誘発する転移因子の転移促進による突然変異、芽条突然変異の安定化、転移因子により誘発された芽条突然変異の変異遺伝子の同定、転移因子により誘発された遺伝子の発現が抑制された変異体の選抜に用いることができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は、何等実施例に限られるものではない。また、以下の実施例で用いられたカーネーション系統95SP、97SPi、97SE、99SP5および99SP4は、麒麟麦酒株式会社の植物開発研究所内にて保存されており、実験材料として分譲要請に応じることができる。連絡先は、〒329−1414 日本国栃木県塩谷郡喜連川町大字早乙女字申塚3377番地(電話;国番号81−28−686−0501、ファクシミリ;国番号81−28−686−0502)である。
カーネーションの花弁色素の分析
カーネーションの花弁の色素分析は山口雅篤の方法(南九州大学園芸学部研究報告(1988)・第19号1−78頁:カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)の花色育種に関する基礎的研究)によった。系統95SPと97SPiの花弁を5%酢酸50%エタノールでそれぞれ抽出した後、TLC(酢酸:塩酸:水=15:3:82)で展開した。それらの展開像を既知のシアニジン3グルコシド5グルコシド(Cy3G5G)の色素を持つカーネーション花弁(品種バーバラ:ヒルベルダ社)から抽出したものとペラルゴニジン3グルコシド5グルコシドグルコシド(Pg3G5G)の色素を持つカーネーション花弁(品種ライラック:シリー ブラザーズ社)から抽出したものと比較することにより、95SPはシアニジン骨格をもつ色素、97SPiはペラルゴニジン骨格をもつ色素を主要に含むことが推定できた。
カーネーションのゲノムDNAの調整
カーネーション系統95SP、カーネーション系統97SPi、カーネーション系統97SE、カーネーション系統99SP5および99SP4のDNAの調整は、インビトロの葉片を材料にNucleon PhytoPure(アマシャム社)を用い添付のプロトコールに従って行った。
なお、99SP5及び99SP4は以下の手法により得、材料とした。定法に従ってX線4KRを照射した95SPの草丈約5cm長のインビトロ植物1000個体を温室に馴化し、腋芽を採り育成しそれから発根した個体の腋芽を採り育成することを数回繰り返しピンク色の花をつけるもの(97SPiと同じ花色の個体)として2個体(99SP5、99SP4)を得た。
カーネーションのcDNAの調整
カーネーション系統95SPのcDNAの調整は、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ2 植物のPCR実験プロトコール(1995)42−43に記載の方法に従い、花弁を材料に単離したRNAをもとに、タカラ社のcDNA合成キットを用い添付のプロトコールに従いキットに添付されている18塩基のdTプライマーを用いて行った。
フラボノイド3’水酸化酵素(F3’H)遺伝子のクローン化と塩基配列の決定
(1)カーネーション系統95SPのF3’H遺伝子のクローン化とcDNA塩基配列の決
GenBank AX028819に記載されているF3’H遺伝子のcDNA配列を参考にしプライマーAAGCATATTGCNTAYAAYTAYCANGA(26塩基:配列番号5)およびCCATCTCTTGCDATNGCCCANAYRTT(26塩基:配列番号6)を作成した。これらのプライマーを用いインビトロのカーネーション系統95SPの花弁から得られた全cDNA画分に対し、PCR(条件:95℃5分、(95℃30秒、35℃30秒、72℃1分)を30回、72℃10分)を行った。得られた増幅産物をpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて848塩基の塩基配列を決定した。得られた塩基配列を上記GenBank AX028819に記載されているF3’H遺伝子のcDNA配列と比較すると5ヶ所の塩基置換と1ヶ所の3塩基の挿入がみられた(図3)。
(2)カーネーション系統97SPiのF3’H遺伝子のクローン化とゲノムDNA塩基配列 の決定
次に、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ2 植物のPCR実験プロトコール(1995) 69−72に従い、カーネーション系統97SPiのゲノムDNAを制限酵素NdeIで分解し、その分解産物を材料に前記カーネーション系統95SPで得られたF3’H遺伝子塩基配列をもとに作成したプライマーTAAACGGGTACCACATTCCCA(21塩基:配列番号7)およびAAGTCGGAAAACCTCTTTGAT(21塩基:配列番号8)を用いインバースPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃2分)を30回、72℃3分)を行った。得られた約1.6kbの増幅産物をpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。ここで得られた塩基配列を制限酵素NdeIの切断点で2つに分割し2種の塩基配列を得た。
さらにGenBank AX028819に記載されているcDNA配列と実施例4(1)で明らかとなったカーネーション系統95SPのF3’H遺伝子cDNA配列および前段落で明らかとなったカーネーション系統97SPiのF3’H遺伝子の一部分のゲノムDNA塩基配列をもとに以下のプライマーを作成した。プライマーAGCAGGAACAAAGCCAGTACA(21塩基:配列番号9)およびGTTAACAATTCAATACTCAGTACA(24塩基:配列番号10)を用い、カーネーション系統97SPiのゲノムDNAに対しPCR(条件:95℃5分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃3分)を30回、72℃3分)を行った。この約1.9kbの増幅産物と、プライマーAATGTCACCCTTAGAGGTAACTTTCTA(27塩基:配列番号11)およびTAGCAAGGCCTTAATTTCTGTG(22塩基:配列番号12)により同様にして得られた約2.9kbの増幅産物をpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。
(3)カーネーションのF3’H遺伝子のゲノムDNA塩基配列
実施例4(1)のcDNA配列、実施例4(2)インバースPCRによる約1.6kbDNA断片から得られた2種のDNA配列、実施例4(2)PCRによる約1.9kbDNA断片のDNA配列および実施例4(2)PCRによる約2.9kbDNA断片のDNA配列、合計5種の塩基配列を結合し重複部分を除くことにより、カーネーションF3’H遺伝子のゲノムDNA塩基配列5743塩基を決定した(配列番号19)。また、97SPiには対立遺伝子として2つのF3’H遺伝子が存在することが予想されるが、97SPiでは配列番号19の2527番目の塩基AのあとにGが挿入されフレームシフトを起こしていることが明らかとなった。
カーネーション系統97SPiからの転移因子のクローン化と塩基配列の決定
インバースPCRは、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ2 植物のPCR実験プロトコール(1995) 69−72に従い行った。実施例2に記載した方法によりカーネーション系統95SPおよび97SPiよりゲノムDNAを調整し、制限酵素HindIIIで分解した。これら分解産物を材料に実施例4(1)で得られた848塩基のDNA配列をもとに作成したプライマーCACACGATTCGTTTGCGACC(20塩基:配列番号13)およびTAAACGGGTACCACATTCCCA(21塩基:配列番号7)を用いインバースPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃2分)を30回、72℃3分)を行った。得られた増幅産物を1%アガロースゲルを用い100Vで20分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。この結果、97SPiに特異的に存在する約2.5kbの増幅産物が得られた。これをpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。この塩基配列を内部に存在する制限酵素HindIIIの切断点で分割し2種の塩基配列としたところ、約300塩基の1種は実施例4で得られたDNA塩基配列(配列番号19)の一部と全長にわたり一致した。
次に前段落で明らかとなった約2.5kbのDNA配列をもとに作成したプライマーGAGACTCATAGTGGTTATATACA(23塩基:配列番号14)および実施例4(2)で得られた約1.9kbのDNA配列をもとに作成したプライマーTAACAACACGTAACCGAAAATATA(24塩基:配列番号15)を用い、カーネーション系統97SPiのゲノムDNAを材料にPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃3分)を30回、72℃3分)を行った。得られた約3kbの増幅産物をpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。
本実施例で得られた3種のDNA塩基配列のうち実施例4で得られた塩基配列と一致した1種を除いた2種の塩基配列を結合し重複した部分を除外し、さらに両末端に存在する実施例4で得られたフラボノイド3’水酸化酵素(F3’H)遺伝子のゲノムDNA塩基配列(配列番号19)と相同な40塩基および931塩基の部分を除外することにより本発明の転移因子のDNA塩基配列(配列番号4)を得た。ここでDNASIS−Mac v3.7による解析によりオープンリーディングフレーム(ORF)は、1056番目の塩基Aから3497番目のTまでの2442塩基であった。
次に配列番号19および配列番号4に示すDNA塩基配列からGTTAACAATTCAATACTCAGTACA(24塩基:配列番号10)およびGGTCTAGTTAGTCAGCTACGG(21塩基:配列番号16)2種のプライマーにより、本発明の転移因子の内部からフラボノイド3’水酸化酵素の部分までをPCRを用い増幅することが可能となる。95SP、97SPiのDNAおよび97SPiの個体から部分的に紫花色に先祖返りをおこした花の花弁DNAを鋳型にこれら2種のプライマーを用いPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃3分)を30回、72℃3分)を行ったところ、95SP(レーン3)や紫色に先祖返りをおこした花の花弁(レーン20、21)では、増幅産物が得られず本発明の転移因子はフラボノイド3’水酸化酵素遺伝子より脱離をおこしていることが明らかとなった(図4)。このことより本発明の転移因子が転移能を有することは明らかである。
また、実施例4で明らかとなった97SPiの花色発現に係る塩基配列(フラボノイド3’水酸化酵素遺伝子、配列番号19の2527番目の塩基AのあとにGが挿入されているもの)と本発明の転移因子の塩基配列(配列番号4)に続く両側の塩基配列を比較することにより、本発明の転移因子は配列番号19の3908番目の塩基Tの後ろに挿入し、転移因子の両側で、配列番号19の塩基配列中3901番目から3908番目までのAGTTAATTという8塩基を重複していることが明らかになった。
つづいて、配列番号4に示す明らかとなった転移因子の塩基配列からAGATCTAGAGCTGGCAAACCGGTGC(25塩基:配列番号23)およびAGATCTAGAGCTGGCAAAAAAACGGGC(27塩基:配列番号24)2種のプライマーにより、97SPiのゲノムDNAを鋳型にPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃2分)を30回、72℃3分)を行い増幅産物を得た。これをpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。得られた増幅産物のうち約0.7kbのものを、配列番号22に示す。この塩基配列は両端約0.2kbにわたりそれぞれ配列番号4に示す転移因子とほぼ相同であるが、オープンリーディングフレームはなく、内部に転移酵素遺伝子をもたない非自律性転移因子であると判断した。
インバースPCRにより95SPと97SEの相違を検討した。すなわちカーネーション系統95SPおよび95SPからの芽条突然変異体である97SEのゲノムDNAを実施例2に記載の方法で調整し、制限酵素EcoRIにより分解した。これら分解産物を材料にプライマーCGAATACCGTGCTTTGGACG(20塩基:配列番号18)およびTCGTGCCGTGCACCGGTTT(19塩基:配列番号25)を用いインバースPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃3分)を30回、72℃3分)を行った。インバースPCRは、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ2 植物のPCR実験プロトコール(1995) 69−72に従い行った。得られた増幅産物を1%アガロースゲルを用い100Vで60分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。この結果、95SPには存在しないが、97SEに存在する約4.5kbの増幅産物が得られた。この増幅産物をpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて部分的に塩基配列を決定した。得られた塩基配列から作成したプライマーTATACGGAGTACCACAATCAGA(22塩基:配列番号26)およびCTAGTATGCTAGTCTGAAGGC(21塩基:配列番号27)を用い95SPおよび97SEのゲノムDNAを鋳型にPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃2分)を30回、72℃3分)を行った後に、1%アガロースゲルを用い100Vで30分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。得られた増幅産物のうち95SPに存在せず97SEに存在する約1.3kbの増幅産物をpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。この結果、この増幅産物には配列番号22に示すDNA配列が、配列番号28に示す塩基配列の第114番目のCから第121番目のCの8塩基(GTTATATG)を同一方向に重複した間に存在していた。即ち、当該8塩基の部分がGTTATATG・・・・GTTATATGとなり、・・・・の所に配列番号22の配列が挿入していた。このことから配列番号22に示す非自律性因子が可動であり97SEが95SPから突然変異により得られた時点あるいはそれ以降に転移したことが明らかである。
ここで示したインバースPCRによる転移の評価方法は、実施例8で述べる突然変異の検出法の実施例とともに突然変異の検出に有効な方法の1つである。
リターンPCRによる転移酵素発現の評価
実施例3に記載した方法によりカーネーション系統95SPおよび97SPiからcDNAを調整し、プライマーCACTATGGATCCTAATTCTCAAA(23塩基:配列番号20)およびGAGACTCATAGTGGTTATATACA(23塩基:配列番号14)を用いPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃3分)を30回、72℃3分)を行った。
また、プライマーTTCTTCACTTGAATTCGAACAAG(23塩基:配列番号21)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)を用い同様にPCRを行った。得られた増幅産物を1%アガロースゲルを用い100Vで20分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。この結果、予想される大きさ(それぞれ約1.9kbおよび約1.1kb)の増幅が検出された(図5)。これらの産物のうち系統97SPiより得られたものについてpGEM T vector(プロメガ社製)を用いてTAクローニング(PCR実験ノート,谷口武利編著,羊土社(1997))し、ABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて部分的に塩基配列を決定したところ、本発明の転移因子が有する転移酵素をコードする遺伝子の一部と相同であった。このようにリターンPCRにより転移酵素の転写発現を容易に検出することが可能であった。
他のダイアンサス属植物での転移因子の存在の調査
カーネーション品種カリー、Dianthushinensis(一般の花種子販売業者で購入)およびDianthus barbatus(一般の花種子販売業者で購入)、ポジティブコントロールとして97SPiからのDNAの調整は、実施例2と同様に行った。ただしカーネーション品種カリーは温室で育成した植物の葉を材料にDNAを調整した。他の2種は水分を含むろ紙上に播種し6日後に発芽した子葉と胚軸からDNAを調整した。これらのDNAを鋳型に下記のPCRを行った。
明らかとなった本発明の転移因子塩基配列から、GGTCTAGTTAGTCAGCTACGG(21塩基:配列番号16)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)という2種のプライマーを用い、PCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃30秒)を30回、72℃3分)を行った。増幅産物は1%アガロースゲルを用い100Vで20分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。
この結果、ポジティブコントロールの97SPiと同様に、カーネーション品種カリー(レーン3)、Dianthus chinensis(レーン4)およびDianthus barbatus(レーン5)いずれからも予想される約460塩基の増幅産物が得られ、これらの植物にも本発明の転移因子が存在することが明らかとなった(図6)。
突然変異の検出
実施例5で述べたインバースPCRは、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ2植物のPCR実験プロトコール(1995) 69−72に従い行った。カーネーション系統95SP、97SPiおよび95SPからの芽条突然変異体である系統99SP4、99SP5のゲノムDNAを実施例2に記載の方法で調整し、制限酵素HindIIIあるいはSpeIにより分解した。これら分解産物を材料にプライマーCGAATACCGTGCTTTGGACG(20塩基:配列番号18)およびCGCAAATACACTAAATTTATGCC(23塩基:配列番号17)を用いインバースPCR(条件:95℃2分、(95℃30秒、56℃30秒、72℃5分)を30回、72℃3分)を行った。得られた増幅産物を1%アガロースゲルを用い50Vで120分間電気泳動することにより分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。この結果、それぞれ複数種の増幅産物を分離することが可能であり、用いた4系統それぞれに特異的に得られる増幅産物が検出され、これらは転移因子の転移によると考えられた。このように転移因子が転移することにより誘発されたゲノムDNA上の変異を検出することが可能であった(図7)。
また、インバースPCRの増幅産物の一部についてABI310(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて部分的に塩基配列を決定し、本発明の転移因子に含まれる予想される配列と相同であることを確認した。このことより本実施例の増幅産物は本発明の転移因子を含む目的とする増幅産物であることが明らかである。
環境による転移因子の転移促進
本発明で得られた97SPiのフラボノイド3’水酸化酵素に挿入する転移因子の脱離は、花色がピンクから紫になることで表現型として検出することが可能である。97SPiの定植苗(約5cm長)を2種の条件下の温室内で定法に従い2ヶ月間(2003年9月4日から2003年10月31日)育成したのち、開花時に紫色の斑の有無を検定した。第1は、ガラス温室で昼温25−33℃・夜温23−30℃・自然日長(13−12時間)の条件とした。第2は、人工気象器コイトトロン(小糸製作所製)を用いて昼温20度・夜温10度・8時間日長に調整した条件とした。この結果、第1の条件で開花した45花のうち3花に紫の斑が見られたのに対し(6.7%)、第2の条件では開花した51花のうち35花に紫の斑が見られた(68.6%)。このことから、低温、あるいは短日、あるいは低温および短日の条件が、97SPiのフラボノイド3’水酸化酵素に挿入する転移因子の脱離を促進することが明らかである。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明で初めて見出された芽条突然変異誘発型転移因子の転移酵素発現量をリターンPCRによって検出することおよびこの転移因子のメチレーション程度を評価することにより、効率的に芽条突然変異を起こしやすい環境条件を特定するあるいは芽条突然変異をおこしやすい個体を選抜することができる。
また、当該転移因子の転移を突然変異の検出方法に述べた手法により検出することにより、芽条変異をおこす環境条件を特定するあるいは芽条突然変異をおこしやすい個体を選抜することができる。
このようにして得られた環境条件および個体を利用して効率的に芽条突然変異を誘発することが可能となる。また、当該転移因子の転移酵素遺伝子を遺伝子工学的に利用することにより芽条突然変異体を効率よく作り出すことが可能となる。このようにして一細胞あたりの変異箇所が少ないにもかかわらず変異する頻度の高い、従来の手法の問題を解決する理想的な突然変異方法を提供し、突然変異育種が重要である果樹や花卉などの育種を効率よく進展させることが可能となる。
さらに、農業生産上問題となる易変性を示す個体において原因が転移因子によるものであれば、転移因子の転移を促すことにより安定化することが可能となる。また、転移をおこしやすい環境条件を避けることあるいは転移酵素遺伝子の発現を遺伝子工学的に抑制することにより安定に農業生産を行うことが可能となる。
得られた芽条突然変異体から突然変異の原因遺伝子を容易に同定・単離することが可能となる。また、目的の遺伝子に当該転移因子が挿入しているものをPCRなどの手法により容易に検出(選抜)することが可能となり、遺伝子の発現が抑制された変異体を効率よく得ることができる。このような技術は植物分子遺伝学研究を加速させ得る。

Claims (6)

  1. 以下の(1)〜(4)いずれかの塩基配列又は(5)の縮重異性体を含んでなるDNA。
    (1)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列
    (2)配列番号3のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加若しくは両端に付加されたものであり、かつ転移酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列
    (3)配列番号4の塩基配列
    (4)配列番号4の塩基配列のうち1056番目のAから3497番目のTまでである塩基配列
    (5)配列番号4の塩基配列の縮重異性体
  2. 配列番号4塩基配列のうち少なくとも連続した16塩基を含むプライマーを利用した遺伝子増幅法により、5’末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は請求項1に記載のDNAを検出することを特徴とする芽条突然変異の有無を検出する方法。
  3. 配列番号4塩基配列のうち少なくとも連続する16塩基を含むプライマーを利用した遺伝子増幅法により、5’末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は請求項1に記載のDNAを有する転移因子の有無を検出する方法。
  4. 配列番号4塩基配列のうち少なくとも連続した16塩基を含むプライマーと本転移因子が挿入されている周囲の塩基配列のうち少なくとも連続する16塩基を含むプライマーを利用した遺伝子増幅法により、5’末端に配列番号1に示す塩基配列を有し、かつ3’末端に配列番号2に示す塩基配列を有する転移因子又は請求項1に記載のDNAを有する転移因子の脱離有無を検出する方法。
  5. 以下の(1)〜(2)のいずれかのポリペプチド。
    (1)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
    (2)配列番号3のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加若しくは両端に付加されたものであり、かつ転移酵素活性を有するポリペプチド
  6. 請求項1(1)〜(4)に記載のいずれかの塩基配列又は請求項1(5)に記載の縮重異性体含んでなるDNAの転移を促進することにより芽条突然変異を誘発する方法。
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