JPWO2010147171A1 - ニワトリ由来抗lox−1抗体 - Google Patents
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Abstract
作用効率が高く交差反応性に優れた抗LOX-1抗体を取得する。重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)アミノ酸配列a)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)アミノ酸配列a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)アミノ酸配列a)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、作用効率が高く交差反応性に優れたLOX-1結合性抗体を取得した。
Description
本発明は、LOX-1結合性抗体に関する。
レクチン様酸化LDL受容体(lectin-like oxidized LDL receptor-1:LOX-1)は酸化LDL(oxidized low density lipoprotein:oxLDL)と結合し、種々の細胞反応を引き起こす膜蛋白質である。また、心血管疾患や動脈硬化性疾患等の発症原因として、LOX-1が重要な役割を担っていることが提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
心血管疾患は、WHO(世界保健機構)によると世界で最も多い死亡原因であり、2005年の推定では全世界の死因の30%を意味する1750万人の人々が、心血管疾患が原因で死亡したと報告されている(非特許文献2)。また、動脈硬化疾患は、動脈の壁が厚くなり血管本来の働きが低下する疾患であり、死亡リスクの高い心筋梗塞や脳梗塞などの主な原因である。今後、それらのような非感染性疾患(Noncommunicable Diseases、NCDs)による死者が増加することが推定されている(非特許文献3)。そのため、心血管疾患や動脈硬化性疾患に対する新規の作用幾序を持った、治療薬や診断薬の開発が世界的に期待されており、LOX-1はその重要なターゲットとして注目されている。
また、近年、抗体医薬品や抗体診断薬の研究開発が急速に進展しており、LOX-1においても、そのモノクローナル抗体(抗LOX-1 mAbs)がLOX-1の関わる疾患の治療薬や診断薬の用途として期待されている。しかしながら、LOX-1のCTLドメインが哺乳類間において高度に保存されているために、哺乳類への免疫によってLOX-1に対するmAbsを産生させることが難しい。そのため、実験によって哺乳類の抗LOX-1 mAbsを得た例は少ない(非特許文献4、5、6、7)。
本願発明者らは、哺乳類における抗LOX-1 mAbs産生の試みとして、ヒト、ブタ、ウシ、ウサギへの交差反応性を持つ抗ヒトLOX-1 mAbsの作成に成功したことを報告している(特許文献1)。さらには、LPS誘発血小板減少症、LPS誘発肺障害、LPS誘発炎症、PTCAの術後再狭窄、または動脈での血栓形成の疾患モデルラットに対して、抗ヒトLOX-1 mAbs投与による有効なin vivoの薬効データを得ている。これらは、抗LOX-1 mAbsがLOX-1が関わる疾患の予防薬、治療薬、および診断薬として有用であることを実証した革新的な研究成果であった。
一方で、哺乳類間で高度に保存されている生体分子に対する抗体作成の試みとして、ニワトリの免疫系を用いた抗PrPニワトリmAbsの作成について報告している(非特許文献8、9、10)。PrP(prion protein)は、哺乳類間で80%以上のアミノ酸配列の相同性を有しているため、哺乳類への免疫によって抗PrP mAbsを産生することは難しい。そこで、PrPのアミノ酸配列の相同性が40%以下であるニワトリを用いて、抗PrP mAbsを産生することに成功している。また、ヒトへ投与した場合の免疫原性を低減させる試みとして、ニワトリ由来抗体のニワトリ-ヒトキメラ抗体やヒト化抗体の作成にも成功している(特許文献2、3、4)。
さらに、近年、LOX-1はoxLDLだけではなく、アポトーシスの陥った細胞、老化赤血球、炎症細胞なども認識し、生体防御機構や炎症性機転などの様々な生命現象において重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。
Mehta et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):36-45. Epub 2005 Dec 1.
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しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。 第一に、より効率よくLOX-1と反応する、LOX-1結合性抗体(以下、抗LOX-1抗体と称することもある)を取得する必要があった。なぜならば、LOX-1結合性抗体を治療薬の用途として開発、販売する場合において、使用量を低く抑えることができるため、開発費の軽減、使用者の経済的な負担軽減や、患者の体力的な負担軽減などの効果が得られるためである。このことは、診断薬など他の用途として開発、販売する際にも同様である。
特に、近年、製薬業界において最も注目され、莫大な資源が投入されている抗体医薬品事業においては、いかに抗体の作用効率を上げるかが大きな課題となっている。事実、抗体医薬品に強い製薬メーカーや抗体医薬品ベンチャーにおいては、あらゆる手を尽くして、抗体の効率を上げる手立てを模索している。例えば、協和発酵キリンのポテリジェント技術およびコンプリジェント技術、Genentech社のFab断片の技術、Ablynx社のNanobodies、Domantis社のドメイン抗体技術などが挙げられる。この中には、有効性と安全性が実証され、日米欧で既存薬に変わる画期的な新薬として販売されているものもある。また、既存の抗体医薬品のほとんどが単独投与では十分な効果が得られず、化学療法薬との併用投与で使用されていることも、さらに作用効率の高い抗体が求められていることを物語っている。そのため、本発明においても、抗体医薬品への展開を見据え、さらに作用効率が高い抗LOX-1 mAbsを取得することが必要であった。
第二に、上記文献においては、ヒトおよびマウスへの交差反応性を持った抗LOX-1 mAbsが得られていなかった。マウスは、入手および取り扱いが容易で、ヒトの種々の疾患に対するモデル動物として最も汎用されている動物であり、発現解析、治療薬、診断薬の効果を検証するために重要なモデル動物である。同様に、LOX-1が関わるようなヒトの心血管疾患や動脈硬化性疾患等においても、マウスはきわめて重要な疾患モデル動物である。例えば、ApoE-knockoutマウスは、原発性高脂血症の動物モデルとして使用されている[Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12.]。そのため、ヒトおよびマウスに交差反応性を示す抗LOX-1 mAbsを獲得するために、さらなる改善が必要であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、種が異なる複数種類の哺乳類由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体を提供することである。
本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号1のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体が提供される。
このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合することが実証されている。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されている。
なお、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)配列番号1のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
また、本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号1を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドが提供される。
このポリヌクレオチドは、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合することが実証されている、LOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなる。そのため、ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも交差反応性を有するLOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドが得られる。また、このポリヌクレオチドは、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されている、LOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなる。そのため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドが得られる。
なお、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)配列番号1のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
また、本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号1のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体を含む、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤が提供される。
この結合阻害剤は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている、LOX-1結合性抗体を含む。そのため、この結合阻害剤は、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤として好適に用いられる。
なお、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)配列番号1のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
また、本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号1のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体を含む、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤が提供される。
この取込阻害剤は、後述する実施例で、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害をすることが実証されている、LOX-1結合性抗体を含む。そのため、この取込阻害剤は、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤として好適に用いられる。
なお、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)配列番号1のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
また、本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号1のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体を含む、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療薬が提供される。
この治療薬は、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、Honjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.で、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果があるとされている、LOX-1結合性抗体を含む。そのため、この治療薬は、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療薬として好適に用いられる。
なお、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)配列番号1のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
また、本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号1のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体を含む、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の診断薬が提供される。
この診断薬は、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、Honjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.で、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果があるとされている、LOX-1結合性抗体を含む。加えて、標準細胞、被検細胞、被検血清、または上記いずれかの疾患における病態細胞におけるLOX-1発現の濃度を、この診断薬の結合様態によって測定、比較することで上記疾患の診断が可能になると考えられる。そのため、この診断薬は、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の診断薬として好適に用いられる。
なお、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)配列番号1のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号4のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体が提供される。
このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、ヒト、マウス、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合することが実証されている。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されている、LOX-1結合性抗体と同様の方法を用いて得られたものである。そのため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体が得られる。
なお、重鎖CDR3として、m)配列番号4のアミノ酸配列、n)配列番号4のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、o)配列番号4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、p)配列番号4のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号5のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体が提供される。
このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、ヒト、マウス由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合することが実証されている。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されている、LOX-1結合性抗体と同様の方法を用いて得られたものである。そのため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体が得られる。
なお、重鎖CDR3として、q)配列番号5のアミノ酸配列、r)配列番号5のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、s)配列番号5のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、t)配列番号5のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号6のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合するLOX-1結合性抗体が提供される。
このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合することが実証されている。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されている、LOX-1結合性抗体と同様の方法を用いて得られたものである。そのため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体が得られる。
なお、重鎖CDR3として、u)配列番号6のアミノ酸配列、v)配列番号6のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、w)配列番号6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、x)配列番号6のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
本発明によれば、重鎖CDR3として、配列番号7のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体が提供される。
このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、ヒト、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合することが実証されている。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されている、LOX-1結合性抗体と同様の方法を用いて得られたものである。そのため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体が得られる。
なお、重鎖CDR3として、y)配列番号7のアミノ酸配列、z)配列番号7のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、a’) 配列番号7のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、b’)配列番号7のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列であっても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
本発明によれば、特定のアミノ酸配列のCDR3を有するため、LOX-1への結合性に優れたLOX-1結合性抗体が得られる。または、特定のアミノ酸配列のCDR3を有するため、交差反応性の広いLOX-1結合性抗体が得られる。
<発明の経緯>
本願発明者らは、疾患の治療薬または診断薬の開発のために、LOX-1蛋白質の機能解析や、抗LOX-1抗体の作用効果の向上を目指した研究をしている。例えば、WO01/064862号公報において、ヒト抗体産生トランスジェニックマウスを免疫して生成した抗ヒトLOX-1 mAbsを、LPS誘発血小板減少症、LPS誘発肺障害、LPS誘発炎症、PTCAの術後再狭窄、または動脈血栓形成の疾患モデルラットに投与して、有効なin vivoの薬効データを得ている。しかしながら、治療薬として開発を進める場合には、限られた予算と時間の中で、非臨床試験や臨床試験を乗り越え当局から販売承認を受けるために、より一層の強い効果を持った抗LOX-1抗体を獲得する必要があった。また、診断薬の用途としてもより効率のよい診断を行うために、強い効果を持った抗LOX-1抗体が求められていた。さらには、ヒトのLOX-1および、疾患モデル動物として有用なマウスのLOX-1に交差反応性のある抗LOX-1抗体を獲得する必要があった。
本願発明者らは、疾患の治療薬または診断薬の開発のために、LOX-1蛋白質の機能解析や、抗LOX-1抗体の作用効果の向上を目指した研究をしている。例えば、WO01/064862号公報において、ヒト抗体産生トランスジェニックマウスを免疫して生成した抗ヒトLOX-1 mAbsを、LPS誘発血小板減少症、LPS誘発肺障害、LPS誘発炎症、PTCAの術後再狭窄、または動脈血栓形成の疾患モデルラットに投与して、有効なin vivoの薬効データを得ている。しかしながら、治療薬として開発を進める場合には、限られた予算と時間の中で、非臨床試験や臨床試験を乗り越え当局から販売承認を受けるために、より一層の強い効果を持った抗LOX-1抗体を獲得する必要があった。また、診断薬の用途としてもより効率のよい診断を行うために、強い効果を持った抗LOX-1抗体が求められていた。さらには、ヒトのLOX-1および、疾患モデル動物として有用なマウスのLOX-1に交差反応性のある抗LOX-1抗体を獲得する必要があった。
一方で、本願発明者らは、Nakamura et al., J Immunol Methods. 2003 Sep;280(1-2):157-164. において、ニワトリを用いることで、哺乳類では産生が難しかった抗PrPニワトリmAbsの産生に成功している。この例のように、ニワトリは哺乳類とは系統学的に離れているために、哺乳類が産生できない抗体を作れる可能性を秘めている。
そのような中、本願発明者らは、ニワトリを用いることで、より効果の高い抗LOX-1抗体を獲得すべく検討を行った。その結果、ニワトリ由来の抗LOX-1 mAbsを作成し、さらにファージディスプレイ法で最適化することで、結合速度定数(ka)が極めて高い抗LOX-1 mAbsの作成に成功した。さらには、生成した抗LOX-1 mAbsの交差反応性を調査し、ブタLOX-1、ウサギLOX-1、マウスLOX-1のうち、1種または2種もしくはすべてに交差反応性を持ち、かつヒトLOX-1に特異的に結合する抗LOX-1 mAbsを獲得し、本発明を完成した。
<用語の説明>
本明細書における、各種用語の意味を以下の通り説明する。
本明細書における、各種用語の意味を以下の通り説明する。
(1)LOX-1(レクチン様酸化LDL受容体、lectin-like oxidized LDL receptor-1)
LOX-1(本明細書中ではLOX-1蛋白質と記載することもある)は、oxLDLと結合し、種々の細胞反応を引き起こす膜蛋白質である。また、LOX-1は、典型的には273 アミノ酸残基からなる約50 kDa の蛋白質で、N 末端が細胞質内、C 末端が細胞外に出る細胞膜一回貫通型のいわゆる2型膜蛋白質である(図1)。LOX-1 は、N 末端側より細胞質ドメイン、膜透過ドメイン、Neckドメイン、レクチン様ドメイン(CTLドメイン)の4 つのドメインに分けられる。CTLドメインはC 型レクチンファミリーの糖鎖認識部位とホモロジーを持ち、これらの蛋白質でよく保存されている6 個のシステイン残基の位置は完全に保たれている。CTLドメインは、LOX-1の機能に重要であり、このドメインのC末端残基とアルギニン残基はoxLDLとの結合に必須である[Chen et al., Biochem J. 2001 Apr 15;355(Pt 2):289-296.、Ohki et al., Structure. 2005 Jun;13(6):905-917.]。レクチンファミリーの中でも特にNK 細胞上にあるNKRP1 というNK 細胞が腫瘍細胞を認識して殺す際、NK 細胞の活性化に必須となる蛋白質と高いホモロジーをLOX-1は持っており、LOX-1もoxLDLを認識し取り込むだけでなく、当初から血管内皮細胞の活性化とそれに関連した機能を持っている可能性が考えられた。その後、LOX-1 は、アポトーシスの陥った細胞、老化赤血球、炎症細胞などを認識し、生体防御機構や炎症性機転などの重要な生命現象において主要な役割を果たしていること、またその発現は様々な条件下、刺激により、ダイナミックに調節されていることが明らかになった。最近、幅広い分野においてLOX-1 の病態生理学的意義に関する研究が展開されている。こうした研究の流れの中で、LOX-1が種々の疾患の病態形成において深く関わっていることが明らかにされつつある。
LOX-1(本明細書中ではLOX-1蛋白質と記載することもある)は、oxLDLと結合し、種々の細胞反応を引き起こす膜蛋白質である。また、LOX-1は、典型的には273 アミノ酸残基からなる約50 kDa の蛋白質で、N 末端が細胞質内、C 末端が細胞外に出る細胞膜一回貫通型のいわゆる2型膜蛋白質である(図1)。LOX-1 は、N 末端側より細胞質ドメイン、膜透過ドメイン、Neckドメイン、レクチン様ドメイン(CTLドメイン)の4 つのドメインに分けられる。CTLドメインはC 型レクチンファミリーの糖鎖認識部位とホモロジーを持ち、これらの蛋白質でよく保存されている6 個のシステイン残基の位置は完全に保たれている。CTLドメインは、LOX-1の機能に重要であり、このドメインのC末端残基とアルギニン残基はoxLDLとの結合に必須である[Chen et al., Biochem J. 2001 Apr 15;355(Pt 2):289-296.、Ohki et al., Structure. 2005 Jun;13(6):905-917.]。レクチンファミリーの中でも特にNK 細胞上にあるNKRP1 というNK 細胞が腫瘍細胞を認識して殺す際、NK 細胞の活性化に必須となる蛋白質と高いホモロジーをLOX-1は持っており、LOX-1もoxLDLを認識し取り込むだけでなく、当初から血管内皮細胞の活性化とそれに関連した機能を持っている可能性が考えられた。その後、LOX-1 は、アポトーシスの陥った細胞、老化赤血球、炎症細胞などを認識し、生体防御機構や炎症性機転などの重要な生命現象において主要な役割を果たしていること、またその発現は様々な条件下、刺激により、ダイナミックに調節されていることが明らかになった。最近、幅広い分野においてLOX-1 の病態生理学的意義に関する研究が展開されている。こうした研究の流れの中で、LOX-1が種々の疾患の病態形成において深く関わっていることが明らかにされつつある。
(2)oxLDL
oxLDLは、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが、さらに酸化されて生成される物質である。oxLDLは動脈硬化関連細胞を用いたin vitro研究や疾患モデル動物を用いた研究から、動脈硬化性疾患の発症から成熟までのあらゆる段階に関与する危険因子であるとされている。
oxLDLは、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが、さらに酸化されて生成される物質である。oxLDLは動脈硬化関連細胞を用いたin vitro研究や疾患モデル動物を用いた研究から、動脈硬化性疾患の発症から成熟までのあらゆる段階に関与する危険因子であるとされている。
(3)重鎖
重鎖は抗体の主な構成要素であり、典型的には、軽鎖とジスルフィド結合および非共有結合によって結合している。重鎖のN末端側のドメインには、同種の同一クラスの抗体でもアミノ酸配列が一定しない可変領域(VH)と呼ばれる領域が存在し、一般的に、VHが抗原に対する特異性、親和性に最も大きく寄与していることが知られている。例えば、リゾチームで免疫化したマウス脾臓からVH遺伝子を抽出増殖し、大腸菌でVHのみを単独で発現させたところ、その断片は顕著な抗原に対する親和性を保持していることが報告されている[Ward et al., Nature. 1989 Oct 12;341(6242):544-546.]。さらには、ラクダの抗体の中には、軽鎖を持たない重鎖の2量体として存在している分子種が存在していることが報告されている[Wolfson W, Chem Biol. 2006 Dec;13(12):1243-1244.]。
重鎖は抗体の主な構成要素であり、典型的には、軽鎖とジスルフィド結合および非共有結合によって結合している。重鎖のN末端側のドメインには、同種の同一クラスの抗体でもアミノ酸配列が一定しない可変領域(VH)と呼ばれる領域が存在し、一般的に、VHが抗原に対する特異性、親和性に最も大きく寄与していることが知られている。例えば、リゾチームで免疫化したマウス脾臓からVH遺伝子を抽出増殖し、大腸菌でVHのみを単独で発現させたところ、その断片は顕著な抗原に対する親和性を保持していることが報告されている[Ward et al., Nature. 1989 Oct 12;341(6242):544-546.]。さらには、ラクダの抗体の中には、軽鎖を持たない重鎖の2量体として存在している分子種が存在していることが報告されている[Wolfson W, Chem Biol. 2006 Dec;13(12):1243-1244.]。
(4)CDR(相補性決定領域、complementarity determining region)
CDRは、抗体分子のFv(可変領域。重鎖のV領域(VH)と軽鎖のV領域(VL)とから構成されている)上で、実際に抗原に直接接触して結合部位を形成している領域であり、重鎖と軽鎖に、それぞれ約5〜10アミノ酸残基からなるCDR1、CDR2、CDR3が存在する。一般的にはCDR3が結合における寄与が最も高い。CDRは、抗原に対する特異性を決定する領域であるため、抗体間でアミノ酸配列が大きく異なり、超可変領域ともよばれている。それ以外のFv領域はフレームワーク(FR)と呼ばれ、FR1、FR2、FR3およびFR4からなり、抗体間で比較的よく保存されている[Kabat et al.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983.]。
CDRは、抗体分子のFv(可変領域。重鎖のV領域(VH)と軽鎖のV領域(VL)とから構成されている)上で、実際に抗原に直接接触して結合部位を形成している領域であり、重鎖と軽鎖に、それぞれ約5〜10アミノ酸残基からなるCDR1、CDR2、CDR3が存在する。一般的にはCDR3が結合における寄与が最も高い。CDRは、抗原に対する特異性を決定する領域であるため、抗体間でアミノ酸配列が大きく異なり、超可変領域ともよばれている。それ以外のFv領域はフレームワーク(FR)と呼ばれ、FR1、FR2、FR3およびFR4からなり、抗体間で比較的よく保存されている[Kabat et al.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983.]。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同様な内容については、繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
<実施形態1:重鎖CDR3に配列番号1のアミノ酸配列またはその類似配列を含む、LOX-1結合性抗体の作製>
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号1のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されているため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体である。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、このLOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、このLOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号1のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されているため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体である。また、このLOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、このLOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、このLOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
ここで、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号1に対して80%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。また、該重鎖CDR3は、配列番号1に対して好ましくは85%以上の相同性を有しており、より好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号1に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが実証されている、重鎖CDR3が配列番号1のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号1に対して1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR3は、配列番号1に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号1に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが実証されている、重鎖CDR3が配列番号1のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1に配列番号2のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されているため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体である。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号2に対して、90%以上の相同性を有しているアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR1は、配列番号2に対して好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR1が、配列番号2に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが実証されている、重鎖CDR1が配列番号2のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列に対して、1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号3のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が1.91×105 M-1s-1の値を示すことが実証されているため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体である。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号3に対して、85%以上の相同性を有しているアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号3に対して好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号3に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが実証されている、重鎖CDR2が配列番号3のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号3に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をを有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号3に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号3に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが実証されている、重鎖CDR2が配列番号3のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号3のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体を含む。なお、該種が異なる複数種類の哺乳動物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、ヒトの疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーが典型的な疾患モデル動物として使用できる哺乳類であるためである。また、該哺乳動物は、より好ましくはマウス、ウサギ、ブタのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ウサギ、ブタが、すでに汎用されているモデル動物であるためである。
さらに、該哺乳動物は、特に好ましくは、ヒト、ウサギ、およびブタである。なぜならば、後述する実施例で実際に、ヒト、ウサギ、およびブタ由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体が得られており、さらに得られたLOX-1蛋白質のLOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高かったためである。
本明細書において「相同性」とは、2つ、もしくは複数間のアミノ酸配列の同一のアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。また、いかなる保存的置換も同一と考えない。また、最適に整列した状態において、オーバーラップするアミノ酸を含めた全アミノ酸残基に対する、同一のアミノ酸数の割合を意味する。整列のための方法、割合の算定方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られており、一般的な配列分析プログラム(例えば、GENETYX、GeneChip Sequence Analysisなど)を使用して測定することができる。
本明細書において「交差反応性」とは、ある抗体が、類似構造を有している2種以上の抗原に対して、いずれにも有意な結合親和性を持つ性質を総称する。ここで、類似構造を有する抗原とは、相同性が高い蛋白質を含む。
本明細書において「重鎖CDR3」とは、抗体の重鎖のCDRに存在していて、抗原に直接接触して結合部位を形成している領域である。一般的に、重鎖CDRには重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3が存在し、重鎖CDR3が結合における寄与が最も高い。CDRの定義およびその位置を決定する方法は複数報告されており、これらの何れも採用し得る。例えば、Kabatの定義[Sequences of proteins of immunological interest, 5th ed.,U.S. Department of Health and Human Services,1991]、またはChothiaの定義[Chothia et al., J. Mol. Biol.,1987;196:901-917]を採用してもよい。本明細書においては、Kabatの定義を好適な例として採用するが、必ずしもこれに限定されない。また、場合によっては、Kabatの定義とChothiaの定義の両方を考慮して決定しても良く、例えば、各々の定義によるCDRの重複部分を、または、各々の定義によるCDRの両方を含んだ部分をCDRとすることもできる。そのような方法の具体例としては、Kabatの定義とChothia aの定義の折衷案である、Oxford Molecular's AbM antibody modeling softwareを用いたMartinらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989;86:9268-9272]がある。
本明細書において「ハイブリダイズする」とは、あるヌクレオチドに対し、別のヌクレオチドが水素結合等を介し、相補的に結合し、比較対照とすべきヌクレオチドには同条件では結合しない状態をいう。必ずしも、他の全てのヌクレオチドに対して特異的である必要は無く、使用目的に応じた特異性を有していればよい。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、例えば、ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムをを用いる条件や、その適宜改変したものが挙げられるが、これに限られない。こういった条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するポリヌクレオチドが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。「ストリンジェンシー」は、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補的鎖がその融点に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにするが、低い温度はストリンジェンシーを低下させる。さらに、ストリンジェンシーは塩濃度に逆比例する[Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)]。
本明細書において「結合する」とは、物質間の連結を意味する。連結は共有結合または非共有結合のいずれであってもよく、たとえば、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用、または親水性相互作用が挙げられる。
本明細書において、LOX-1結合性抗体のアミノ酸残基を改変する場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異させることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、および、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸同士の置換は保存的置換と総称される。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加、または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている[Mark et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656):1431-1433.]。
本明細書においてLOX-1結合性抗体は、該LOX-1結合性抗体をコードするポリヌクレオチド、該LOX-1結合性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、または該LOX-1結合性抗体をコードするポリヌクレオチドの一部を含むベクターのいずれかを導入された、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)の細胞から生産した組換え蛋白質であってもよい。哺乳動物細胞としては、例えば、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO細胞)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO(dhfr)細胞)、マウスL細胞,マウスAtT-20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、ヒトHEK293細胞などが挙げられる。または、Escherichia属菌、Bacillus属菌、酵母、または昆虫細胞から生産した組換え蛋白質であってもよい。最も取り扱いが容易で、コストが低く抑えられることから、生産に使用する細胞としてはEscherichia属菌が好ましい。
また、上記のベクターは、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどを用いることができる。
また、上記のポリヌクレオチドまたはベクターの細胞への導入と抗体の生産は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。抗体の細胞への導入方法として例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、アデノウイルスによる方法、レトロウイルスによる方法、またはマイクロインジェクションなどを使用できる[改訂第4版 新 遺伝子工学ハンドブック, 羊土社(2003):152-179.]。抗体の細胞を用いた生産方法としては、例えば、タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):128-142.、Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-174. に記載の方法を使用できる。なお、該LOX-1結合性抗体は、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。
また、抗体を産生する細胞から、当該技術分野において公知の方法を用いて抗体を精製することができる。抗体の精製方法は、例えば、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、プロテインA、プロテインG、ゲルろ過クロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーなどを用いて達成され得る[タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):27-52.]。
本明細書において抗体は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子を指し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む。また、該抗体は様々な形態で存在することができ、例えば、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、diabody、一本鎖抗体(例えば、scFv、dsFv)、CDRを含むペプチド、多価特異的抗体(例えば、二価特異的抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体などが挙げられる。また、既存の化学合成医薬品原体または医薬品製剤に結合した低分子抗体、もしくは糖鎖改変抗体の形態であってもよい。なお、該抗体は、治療薬として使用する際に免疫原性を低減させるために、ヒト由来のアミノ酸配列の割合が多いことが好ましい。つまり、該抗体は、好ましくはヒトとのキメラ抗体であり、より好ましくはヒト化抗体であり、最も好ましくはヒト抗体である。また、該抗体は、治療薬として使用する際に免疫原性を低減させるために、または安定性を高めるために、所望の機能を有している限り、より低分子であることが好ましい。さらには、該抗体は、所望の効果を持つ限り、RNAもしくはDNAを含む核酸アプタマーに置き換えても良い。
本明細書においてポリクローナル抗体は、例えば、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)に、目的の抗原を含む免疫原を投与することによって抗体を生成することが可能である。免疫原の投与は、1つ以上の免疫剤、および所望の場合にはアジュバントの注入を必要とすることもある。アジュバントは、免疫応答を増加させるために使用されることもあり、フロイントアジュバント(完全または不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウム等)、界面活性物質(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール等)、または潜在的に有用なヒトアジュバント(カルメット−ゲラン桿菌(BCG)またはコリネバクテリウムパルバム)を含む。その他、MPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫プロトコルは、当該技術分野で公知であり、選択する動物宿主に伴い、免疫応答を誘発する任意の方法によって実施される場合がある[タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):86-91.]。
本明細書においてモノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じることが可能な突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対応する。さらに、異なるエピトープ(抗原決定基)に対応する異なる抗体を典型的に含む、通常のポリクローナル抗体とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに対応する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有用である。「モノクローナル」という形容は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本明細書におけるモノクローナル抗体は、Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497. に掲載されているようなハイブリドーマ法と同様の方法によって作ることができる。あるいは、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法と同様の方法によって作ることができる。または、本明細書におけるモノクローナル抗体は、Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352(6336):624-628. またはMarks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597. に記載されているような技術と同様の方法を用いてファージ抗体ライブラリから単離してもよい。または、タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):92-96. に掲載されている一般的な生産方法によって作ることができる。なお、本明細書におけるモノクローナル抗体は、後述する実施例に記載の方法で作製することが好ましい。
また、抗体は上述した既知の選択および/または突然変異誘発法を使用し、親和成熟させてもよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が出発抗体のものよりも、5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20または30倍の親和性を有する。例えば、抗体ファージライブラリを用いたバイオパニングを使用できる。この方法の典型的な操作は、固定化した標的蛋白質に抗体ファージライブラリを反応させ、結合しなかったファージ抗体を洗浄により除去した後に、結合したファージ抗体を溶出し大腸菌に感染させて増殖させる、という操作を数回行うことで標的蛋白質に特異的なファージ抗体を取得することである[改訂版 抗体実験マニュアル, 羊土社(2008):211-221.]。
また、Fvは、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この領域は、密接な非共有結合による1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。そして、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。なお、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体のFvをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fvを製造することができる。
また、Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該LOX-1結合性抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
また、F(ab’)2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
また、Fab’は、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した、抗原結合活性を有する抗体断片である。F(ab’)2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することができる。
また、scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカーを用いて連結したポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
また、diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
また、dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものの総称である。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法[Reiter et al., Protein Eng. 1994 May;7(5):697-704.]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
また、CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。そして、例えば、本明細書におけるLOX-1結合性抗体のVHまたはVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBOC法(t-ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
また、キメラ抗体は、非ヒト種由来の抗体の可変領域を、ヒト抗体の定常領域に連結したもので、遺伝子組換え技術によって容易に構築できる。キメラ抗体を生成する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、マウス-ヒトキメラ抗体は、Roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973. に記載の方法で作製できる。標的抗原に対するマウスモノクローナル抗体の、マウス軽鎖V領域およびマウス重鎖V領域をコードするDNA断片をクローニングし、これらのマウスV領域をコードするDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結して発現させることによってマウス-ヒトキメラ抗体が得られる。マウス-ヒトキメラ抗体を作製するための基本的な方法は、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞の発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体C領域をコードする配列に連結する。あるいは、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列をヒト抗体C領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結する。ヒト抗体C領域の断片は、任意のヒト抗体のH鎖C領域及びヒト抗体のL鎖C領域のものとすることができ、例えばヒトH鎖のものについてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4、及びL鎖のものについてはCλ又はCκを各々挙げることができる。さらに、ニワトリ-ヒトキメラ抗体も上記マウス-ヒトキメラ抗体と同様の方法で作成できる。または、ニワトリ-ヒトキメラ抗体はNishibori et al., Biologicals. 2004 Dec;32(4):213-218.、特開2006-282521号公報、または特開2005-245337号公報に記載の方法で作製できる。
また、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク(FR)領域、さらにヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有し、所望の抗原に結合する。抗原結合を改変する、好ましくは、改善するために、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換されることが多い。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法(例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するために、CDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって、および特定の位置で異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較)によって実施される[Riechmann et al., Nature. 1988 Mar 24;332(6162):323-327.]。抗体は、当該技術分野で既知の種々の手法を使用してヒト化することが可能である[Almagro et al., FRont Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-1633.]。例えば、CDRグラフティング[Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.]、Re-surfacing[roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.]、およびFRシャッフル[Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.]などが挙げられる。また、ニワトリ由来のCDRを使用した場合は、特開2006-241026号公報に記載の方法でヒト化抗体を作製できる。
また、ヒト抗体は、典型的には、抗体を構成する重鎖の可変領域、重鎖の定常領域、軽鎖の可変領域、および軽鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体である。ヒトに投与した際に免疫原性が少なく、ヒトの疾患治療に使用する際に好適に使用できる。主な作成方法としてはヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法、ファージディスプレイ法などがある。ヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法は、内因性Igをノックアウトしたマウスに機能的なヒトのIg遺伝子を導入すれば、マウス抗体の代わりに多様な抗原結合能を持つヒト抗体が産生される。さらにこのマウスを免疫すればヒトモノクローナル抗体を従来のハイブリドーマ法で得ることが可能である。例えば、Lonberg et al., Int Rev Immunol. 1995;13(1):65-93.に記載の方法で作成できる。ファージディスプレイ法は大腸菌ウイルスの一つであるM13やT7などの繊維状ファージのコート蛋白質(g3pやg10pなど)のN末端側にファージの感染性を失わないよう外来遺伝子を融合蛋白質として発現させるシステムである。例えば、Vaughan et al., Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-314.に記載の方法で作成できる。
本明細書においてLOX-1結合性抗体の重鎖CDR1、重鎖CDR2、または重鎖CDR3は、例えば、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)由来の抗体であってもよいが、特にニワトリであることが好ましい。なぜならば、ニワトリは哺乳類とは系統学的に離れているために、哺乳類が産生できない抗体を効率的に作れる可能性が高いからである[nakamura et al., J Immunol Methods. 2003 Sep;280(1-2):157-164.]。
また、本明細書においてLOX-1結合性抗体は、LOX-1結合性抗体の重鎖CDR領域をコードするDNAと、公知のヒトまたはヒト以外の生物由来の抗体の、重鎖CDR領域を除く領域をコードするDNAとを、当該技術分野で公知の方法に従って、ベクターに連結後、発現させることによって得ることができる。なお、このとき、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法(例えば、抗体のアミノ酸残基をランダムに変異させ、反応性の高いものをスクリーニングする方法、またはファージディスプレイ法など)を用いて、該抗体の重鎖CDR領域を除く領域を最適化することが好ましい。特に、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法、例えば、FRシャッフル[Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.]、またはバーニヤゾーンのアミノ酸残基および/またはパッケージング残基を置換する方法[特開2006-241026、またはFoote et al., J Mol Biol. 1992 Mar 20;224(2):487-499.]を用いて、FR領域を最適化することが好ましい。
または、同様の方法で、本明細書においてLOX-1結合性抗体は、LOX-1結合性抗体の重鎖CDR3領域をコードするDNAと、公知のヒトまたはヒト以外の生物由来の抗体の、重鎖CDR3領域を除く領域をコードするDNAとを、当該技術分野で公知の方法に従って、ベクターに連結後、発現させることによって得ることができる。なお、このとき、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法(例えば、抗体のアミノ酸残基をランダムに変異させ、反応性の高いものをスクリーニングする方法、またはファージディスプレイ法など)を用いて、該抗体の重鎖CDR3領域を除く領域を最適化することが好ましい。特に、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法、例えば、FRシャッフル[Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.]、またはバーニヤゾーンのアミノ酸残基および/またはパッケージング残基を置換する方法[特開2006-241026、またはFoote et al., J Mol Biol. 1992 Mar 20;224(2):487-499.]を用いて、FR領域を最適化することが好ましい。
本明細書においてLOX-1結合性抗体のクラスは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgE、IgX、IgY、IgW、IgNARを含む。なお、該クラスは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEであることが好ましい。なぜならば、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEはヒト由来の抗体が有するクラスであるため、抗体を治療薬として使用した際に、免疫原性が低減される可能性が高いと考えられるためである。また、さらには、該LOX-1結合性抗体はIgG4であることがより好ましい。なぜならば、IgG4であれば生体内において、補体依存性細胞傷害作用(CDC)と抗体依存性細胞障害(ADCC)の影響を受けにくく、抗体を抗原の機能を阻害する効果を利用した治療薬として投与した場合に、抗原の機能を阻害する効果以外の想定外の効果を避けられるためである。
本明細書においてLOX-1結合性抗体は、LOX-1蛋白質のうちN末端細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、Neckドメイン、またはCTLドメインに特異的に結合する、LOX-1結合性抗体を含む。なお、該LOX-1結合性抗体はCTLドメインに特異的に結合する、LOX-1結合性抗体であることが好ましい。なぜならば、CTLドメインは、LOX-1の機能に特に重要なドメインなので、このドメインに抗体を結合させることで、LOX-1の機能を阻害する効果が得られると考えられるからである。そして、LOX-1の機能を阻害する効果を持つ抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、CTLドメインに結合するLOX-1結合性抗体が、LOX-1に対する極めて高い結合速度定数(ka)を有することが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体はCTLドメインに特異的に結合することが好ましい。
本明細書においてLOX-1結合性抗体は、LOX-1蛋白質の野生型または変異型に結合するLOX-1結合性抗体を含むが、該LOX-1蛋白質は野生型であることが好ましい。該LOX-1蛋白質の変異型としては、好ましくは、野生型のアミノ酸配列に対して30%の相同性を有し、より好ましくは40%の相同性を有し、より好ましくは50%の相同性を有し、より好ましくは60%の相同性を有し、より好ましくは70%の相同性を有し、より好ましくは80%の相同性を有し、より好ましくは90%の相同性を有し、特に好ましくは95%の相同性を有していることが好ましい。なぜならば、野生型に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが実証されている、野生型のアミノ酸配列からなるLOX-1に結合するLOX-1結合性抗体に対してより近い機能が得られるためである。
<実施形態2:重鎖CDR3に配列番号4のアミノ酸配列またはその類似配列を含む、LOX-1結合性抗体の作製>
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号4のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、マウス、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号4のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、マウス、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
ここで、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号4に対して80%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。また、該重鎖CDR3は、配列番号4に対して好ましくは85%以上の相同性を有しており、より好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号4に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号4のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号4に対して1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR3は、配列番号4に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号4に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号4のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号4のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1に配列番号8のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、マウス、ブタ、およびウサギに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号8に対して、85%以上の相同性を有しているアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR1は、配列番号8に対して好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR1が、配列番号8に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR1が配列番号8のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号8のアミノ酸配列に対して、1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号8のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号9のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが実証されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、マウス、ブタ、ウサギに交差反応性を示すことが示されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号9に対して、85%以上の相同性を有しているアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号3に対して好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号9に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号9のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号9に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をを有しているLOX-1結合性抗体を含む。また、該重鎖CDR2は、配列番号9に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号9に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号9のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号9のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体を含む。なお、該種が異なる複数種類の哺乳動物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、ヒトの疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーが典型的な疾患モデル動物として使用できる哺乳類であるためである。また、該哺乳動物は、より好ましくはマウス、ラット、ウサギ、ブタのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタが、すでに汎用されているモデル動物であるためである。
さらに、該哺乳動物は、特に好ましくは、ヒト、マウス、ウサギ、およびブタである。なぜならば、後述する実施例で実際に、ヒト、マウス、ウサギ、およびブタ由来のLOX-1蛋白質に結合するLOX-1結合性抗体が得られており、さらに、得られたLOX-1蛋白質のLOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されているからである。
<実施形態3:重鎖CDR3に配列番号5のアミノ酸配列またはその類似配列を含む、LOX-1結合性抗体の作製>
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号5のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒトおよびマウスに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号5のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒトおよびマウスに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
ここで、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号5に対して75%以上の相同性を有しているアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR3は、配列番号5に対して好ましくは80%以上の相同性を有しており、より好ましくは85%以上の相同性を有しており、より好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号5に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号5のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号5に対して1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR3は、配列番号5に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号5に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号5のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号5のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1に配列番号10のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒトおよびマウスに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号10に対して、90%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR1は、配列番号10に対して好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR1が、配列番号10に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR1が配列番号10のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号10のアミノ酸配列に対して、1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号10のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号11のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、マウスに交差反応性を示すことが示されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号11に対して、85%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号6に対して好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号11に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号11のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号11に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をを有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号11に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号11に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号11のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号11のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体を含む。なお、該種が異なる複数種類の哺乳動物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、ヒトの疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーが典型的な疾患モデル動物として使用できる哺乳類であるためである。また、該哺乳動物は、より好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ブタのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタが、すでに汎用されているモデル動物であるためである。
さらに、該哺乳動物は、特に好ましくは、ヒトおよびマウスである。なぜならば、後述する実施例で実際に、ヒトおよびマウス由来のLOX-1蛋白質に結合するLOX-1結合性抗体が得られており、さらに、得られたLOX-1結合性抗体のLOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されているからである。
<実施形態4:重鎖CDR3に配列番号6のアミノ酸配列またはその類似配列を含む、LOX-1結合性抗体の作製>
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号6のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、およびブタに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号6のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、およびブタに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
ここで、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号6に対して80%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。また、該重鎖CDR3は、配列番号6に対して好ましくは85%以上の相同性を有しており、より好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号6に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号6のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号6に対して1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR3は、配列番号6に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号6に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号6のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号6のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1に配列番号12のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、およびブタに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号12に対して、90%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR1は、配列番号12に対して好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR1が、配列番号12に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR1が配列番号12のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号12のアミノ酸配列に対して、1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号12のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号13のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ウサギ、ブタに交差反応性を示すことが示されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号13に対して、85%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号13に対して好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号13に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号13のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号13に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号13に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号13に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号13のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号13のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体を含む。なお、該種が異なる複数種類の哺乳動物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、ヒトの疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーが典型的な疾患モデル動物として使用できる哺乳類であるためである。また、該哺乳動物は、より好ましくはマウス、ラット、ウサギ、ブタのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタが、すでに汎用されているモデル動物であるためである。
さらに、該哺乳動物は、特に好ましくは、ヒト、ウサギ、およびブタである。なぜならば、後述する実施例で実際に、ヒト、ウサギ、およびブタ由来のLOX-1蛋白質に結合するLOX-1結合性抗体が得られており、さらに、得られたLOX-1結合性抗体のLOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されているからである。
<実施形態5:重鎖CDR3に配列番号7のアミノ酸配列またはその類似配列を含む、LOX-1結合性抗体の作製>
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号7のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒトおよびブタに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3に配列番号7のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒトおよびブタに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
ここで、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号7に対して80%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。また、該重鎖CDR3は、配列番号7に対して好ましくは85%以上の相同性を有しており、より好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号7に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号7のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号7に対して1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR3は、配列番号7に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR3が、配列番号7に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR3が配列番号7のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号7のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1に配列番号14のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒトおよびブタに交差反応性を示すことが実証されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号14に対して、90%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR1は、配列番号14に対して好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR1が、配列番号14に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR1が配列番号14のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号14のアミノ酸配列に対して、1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号14のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号15のアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。このとき、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いLOX-1結合性抗体であることが示されている。また、該LOX-1結合性抗体は、後述する実施例で、LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することが示されている。そのため、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。さらには、後述する実施例で、ヒト、ブタに交差反応性を示すことが示されていることからも、該LOX-1結合性抗体は、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号15に対して、85%以上の相同性を持ったアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号15に対して好ましくは90%以上の相同性を有しており、より好ましくは95%以上の相同性を有しており、より好ましくは98%以上の相同性を有している、アミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号15に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号15のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号15に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をを有しているLOX-1結合性抗体を含む。ここで、該重鎖CDR2は、配列番号15に対して好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、より好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含む。なぜならば、重鎖CDR2が、配列番号15に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例で、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されている、重鎖CDR2が配列番号15のアミノ酸配列からなるLOX-1結合性抗体に対して、より近い機能が得られるためである。
また、該LOX-1結合性抗体は、重鎖CDR2のアミノ酸配列が、配列番号15のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列を有しているLOX-1結合性抗体を含む。
また、該LOX-1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体を含む。なお、該種が異なる複数種類の哺乳動物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、ヒトの疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーが典型的な疾患モデル動物として使用できる哺乳類であるためである。また、該哺乳動物は、より好ましくはマウス、ラット、ウサギ、ブタのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタが、すでに汎用されているモデル動物であるためである。
さらに、該哺乳動物は、特に好ましくは、ヒトおよびブタである。なぜならば、後述する実施例で実際に、ヒトおよびブタ由来のLOX-1蛋白質に結合するLOX-1結合性抗体が得られており、さらに、得られたLOX-1結合性抗体のLOX-1に対する結合速度定数(ka)が極めて高いことが示されているからである。
<実施形態6:LOX-1結合性抗体の効果>
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤を含む。LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することは、LOX-1が関わる心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚のような疾患の予防、または治療に有効であると考えられる。なぜならば、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、またはHonjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、抗LOX-1 mAbsがLOX-1およびoxLDLの結合を阻害機能に伴って、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果を示したことが報告されているためである。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤を含む。LOX-1およびoxLDLの結合を阻害することは、LOX-1が関わる心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚のような疾患の予防、または治療に有効であると考えられる。なぜならば、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、またはHonjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、抗LOX-1 mAbsがLOX-1およびoxLDLの結合を阻害機能に伴って、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果を示したことが報告されているためである。
ここで、結合阻害効果の測定には、ELISA法、FACS分析、BIACOREを用いた方法など、当該技術分野で公知の方法をいずれも使用できる。LOX-1とoxLDLが共存するときの結合を、LOX-1結合性抗体で競合阻害した結果を測定しても良く、またはLOX-1にLOX-1結合性抗体が結合する様態を、LOX-1およびoxLDLの結合阻害の指標として測定しても良い。なお、結合阻害効果の測定は、後述する実施例に記載の方法で測定することが好ましい。
ここで、LOX-1にLOX-1結合性抗体が結合する様態は、解離定数(KD)、結合定数(Ka)、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)で表すことができる。一般的に、抗体の良し悪しを解離定数(KD)、結合定数(Ka)で評価する場合があるが、これらの定数は反応が平衡に達したことを前提とする、静的なパラメータである。ところが、実践においては反応時間が限定されるため、ほとんどの場合、反応は平衡に達しない。したがって、実践における抗原抗体反応は動的なパラメータである結合速度定数(ka)、または解離速度定数(kd)によって評価することが好ましい。測定には、ELISA法(Enzyme Linked Immuno-Sorbent Assay)またはBIACOREシステムを使用できる。ELISA法は比較的低コストで導入でき、最も典型的な手法である。ELISA法は、測定したい物質と特異的に反応する抗体もしくは既知量の抗原を固相化したマイクロプレートに、測定したい物質と酵素標識抗原とを同時に加えて反応させ、プレートに結合した酵素標識物の酵素活性を比色法や蛍光法により計測して、特異的相互作用を測定する方法である。抗体の高い結合能と分子認識能を利用するため、HPLC法等と比較して非常に高感度な検出が可能である。
BIACOREシステムは、動的なパラメータを測定できる優れた測定方法で、センサー表面に生体分子を固定化して、相互作用の相手となる分子を添加することでセンサー表面における特異的相互作用をリアルタイムに測定する。分子標識の必要なしに、特異的相互作用について結合反応から平衡状態および解離反応までをリアルタイムに測定することが可能である。測定操作は、リガンドをセンサー表面に固定化した後、マイクロ流路系を介して反応物質を含む試料溶液を添加することにより、センサー表面でおこる特異的相互作用を微細な質量変化として測定する。その測定原理に表面プラズモン共鳴(Surface plasmonresonance、SPR)とよばれる光学現象を採用することで信頼性のある測定が行える。直接得られた反応速度をもとに、結合速度定数(ka)および解離速度定(kd)を算定でき詳細な解析が可能である[Jonsson et al., Biotechniques. 1991 Nov;11(5):620-7.、Fivash et al., Curr Opin Biotechnol. 1998 Feb;9(1):97-101.、生命科学のための機器分析実験ハンドブック, 羊土社(2007):243-248.]。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤を含む。oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込を阻害することは、LOX-1が関わる心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚のような疾患の予防、または治療に有効であると考えられる。なぜならば、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、Honjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、抗LOX-1 mAbsがoxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害機能に伴って、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果を示したことが報告されているためである。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療薬を含む。WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、Honjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、抗LOX-1 mAbsが、in vivo実験で哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果示したことが報告されており、本実施形態に係るLOX-1結合性抗体においても、同様の疾患に効果があると考えられる。
本明細書において治療とは、疾患または疾患に伴う1つの症状の、予防あるいは症状改善効果を発揮しうることをいう。
また、該LOX-1結合性抗体を治療薬または予防薬として使用する場合、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される1つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが好ましい。または、該LOX-1結合性抗体を直接投与せずに、該LOX-1結合性抗体をコードするポリヌクレオチド、またはベクターを投与することも可能である。
また、該LOX-1結合性抗体を生体に投与する際の投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、眼内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、全身または局部的に投与することができる。投与経路は、好ましくは静脈内投与をあげることができる。該LOX-1結合性抗体が、経口投与後に患部で所望の機能を発揮できる場合には、経口投与が好ましい。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。さらに、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤は該LOX-1結合性抗体、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該LOX-1結合性抗体を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。この担体としては具体的には乳糖、グリセリンなどが例示できる。該LOX-1結合性抗体と、用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤化が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
また、上記予防薬または治療薬は、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
また、投与方法は患者の年齢、症状、対象臓器等などにより適宜選択することができる。該LOX-1結合性抗体または該LOX-1結合性抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重などにより異なる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。また、適切な化学療法薬と併用で投与してもよい。
心血管疾患(Cardiovascular diseases、CVDs)とは、心血管系の病気であり、心筋梗塞、狭心症(不安定狭心症を含む)、弁膜症、大動脈瘤、動脈破裂、閉塞性動脈硬化、急性心筋梗塞症などを含む。また、心血管疾患は、冠動脈疾患(coronary heart disease)、脳血管疾患(cerebrovascular disease)、高血圧症(raised blood pressure)、末梢動脈疾患(peripheral artery disease)、リウマチ性心疾患(rheumatic heart disease)、先天性心疾患(congenital heart disease)、心不全(heart failure)を含む。WHO(世界保健機構)によると、世界で最も多い死亡原因であり、2005年の推定では全世界の死因の30%を意味する1750万人の人々が、心血管疾患が原因で死亡したと報告されている["Cardiovascular diseases" Fact sheet N°317 February 2007, World Health Organization.]。
動脈硬化性疾患とは、動脈の壁が厚くなり血管本来の働きが低下する病気である。動脈硬化には、アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)、細動脈硬化及び中膜硬化が含まれる。本明細書におけるLOX-1結合性抗体を用いた、動脈硬化の予防薬または治療剤は、アテローム性動脈硬化に特に有用である。動脈硬化性疾患としては、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患 、大動脈瘤、大動脈解離 、腎硬化症やそれによる腎不全 、閉塞性動脈硬化症などを含む。
アテローム性動脈硬化は、プラークとして知られる脂肪性、繊維性の堆積物が動脈壁にたまると起こる。プラークは動脈を狭め、心臓、脳、その他の生命にかかわる気管への血液供給を減らし、その結果、アンギナつまり一過性虚血性脳発作を起こす恐れがある。プラークは破裂して血栓ができることがあり、その結果、血流の突然の完全な遮断が起こることがある。心臓ではこの遮断が心臓発作を起こし、脳なら脳卒中が起こる[Bonow et al., Circulation. 2002 Sep 24;106(13):1602-1605.]。
また、脂質の多い血液は粘り気が強くなり、動脈の内壁に付着しやすくなる。そして高血圧、糖尿病、喫煙、ストレスなどによって傷ついた(刺激を受けた)内皮細胞から内膜にまで侵入したコレステロールは酸化、変性し、より動脈硬化を起こしやすいoxLDLとなる。また、傷ついた血管内皮細胞には単球が接着し、内膜に侵入し、マクロファージという細胞に形質転換される。oxLDLは、そのマクロファージに取り込まれて泡沫細胞となり、血管内膜肥厚が生じる。これにより、血液の流れが悪くなり、動脈硬化が起こり、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの原因となる。
血栓症とは、血液の性状変化、血流のうっ滞、血管壁の変化等により、心臓又は血管内で血液が凝固し、血流が止まり、その血管等で養われている部分に生じる病変をいう。その原因は動脈硬化であることが多く脳血栓症や心筋梗塞がその極めて重要な疾患である。血栓症としては、血管内での血液の凝固が要因となって起こる各種疾患を包含するものであり、例えば、脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群等)、不安定狭心症、脳卒中、肺塞栓症についても含む。
血小板減少症とは、血小板の数が減少する症状である。血小板減少症としては、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群を含む。
全身性炎症反応症候群(Sytemic Inflammatory Response Syndrome)とは、各種感染症や重症外傷、熱傷により惹起される全身性炎症反応である。全身性炎症反応症候群としては、例えば、敗血症、外傷、熱傷、又は急性膵炎などが含まれ、好ましくは敗血症である。敗血症とは、一般には感染症に起因した全身性炎症反応症候群を意味する。
炎症とは、発赤、腫脹、熱感、疼痛、及び機能障害の徴候を現し、体の局所に加えられた傷害に対して生体組織が起こす防御反応である。炎症を伴う疾患としては、例えば、感染症、関節リウマチ、膠原病、痛風、アレルギー疾患、炎症性腸疾患、間質性肺炎などを含む。
本実施形態に係るLOX-1結合性抗体は、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の診断薬を含む。WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、Honjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、抗LOX-1 mAbsが、in vivo実験で哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果示したことが報告されている。そして、例えば、標準細胞、被検細胞、被検血清、または上記いずれかの疾患における病態細胞におけるLOX-1発現の濃度を、抗LOX-1 mAbsの結合様態によって測定、比較することで上記疾患の診断が可能になる。例えば、Hayashida et al., Circulation. 2005 Aug 9;112(6):812-8. Epub 2005 Aug 1. によると、急性冠症候群(acute coronary syndrome、ACS)の患者由来の血清から、蛋白質切断によってリリースされた可溶性フォームのLOX-1 (sLOX-1)が検出されている。この場合、血清中のsLOX-1の濃度を、抗LOX-1 mAbsで測定することで、ACSの診断が可能になる。
ここで、診断薬として使用した際の検出方法は特に限定されないが、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法などを挙げることができる。好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいものはELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)(例えば、sandwich ELISA)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。
該LOX-1結合性抗体を用いた典型的な検出方法としては、例えば、該LOX-1結合性抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い該LOX-1結合性抗体と被検試料中のLOX-1蛋白質を結合させた後に洗浄して、該LOX-1結合性抗体を介して支持体に結合したLOX-1蛋白質を検出することにより、被検試料中のLOX-1蛋白質の検出を行う方法を挙げることができる。
該LOX-1結合性抗体を介して支持体に結合したLOX-1蛋白質の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された該LOX-1結合性抗体を用いる方法を挙げることができる。例えば、支持体に固定された該LOX-1結合性抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、標識物質で標識された該LOX-1結合性抗体を接触させ、さらに標識抗体を用いて標識物質を検出し、LOX-1の指標とする。
該LOX-1結合性抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。
以下、実施形態1〜6に係る作用効果について説明する。
本発明の実施形態は、重鎖CDR3として、a)配列番号1のアミノ酸配列、b)アミノ酸配列a)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、c)アミノ酸配列a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、d)アミノ酸配列a)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、上記重鎖CDR3に加えて、重鎖CDR1として、e)配列番号2のアミノ酸配列、f)アミノ酸配列e)に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列、g)アミノ酸配列e)において1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、h)アミノ酸配列e)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2として、i)配列番号3のアミノ酸配列、j)アミノ酸配列i)に対して85%以上の相同性を有するアミノ酸配列、k)アミノ酸配列i)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、l)アミノ酸配列i)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、またはoxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤が得られる効果がある。または、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、もしくは血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある
本発明の他の実施形態は、ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、LOX-1結合性抗体である。これによるとヒト、ウサギ、およびブタの、心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、ニワトリ抗体、ニワトリ−ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体からなる群から選ばれる1種以上の抗体である、LOX-1結合性抗体である。これによると、特に、ニワトリ−ヒトキメラ抗体またはヒト化抗体は、ヒトへの免疫原性を低減させる効果があるため、有用である。
本発明の他の実施形態は、上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体または上記ヒト化抗体のサブクラスが、IgG4である、LOX-1結合性抗体である、LOX-1結合性抗体である。これによると、IgG4であるので、生体内において補体依存性細胞傷害作用(CDC)と抗体依存性細胞障害(ADCC)の影響を受けにくく、該抗体をLOX-1の機能を阻害する効果を利用した治療薬として投与した場合に、LOX-1の機能を阻害する効果以外の想定外の効果を避けられる効果があるため、有用である。
本発明の他の実施形態は、LOX-1蛋白質のうちCTLドメインに特異的に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、該抗体がLOX-1の機能に重要であるCTLドメインに結合するため、効果的にLOX-1の機能を抑制する効果がある。
本発明の他の実施形態は、LOX-1蛋白質の野生型または変異型に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1蛋白質に変異が生じている場合にも、該抗体が結合できる効果がある。
本発明の他の実施形態は、抗体断片である、LOX-1結合性抗体である。これによると、抗体が抗体全長より小さいため生体に投与した場合の免疫原性を低減できる、または/および生体に投与した場合の安定性が上昇する効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、LOX-1に対する中和抗体である、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、またはoxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤が得られる効果がある。または、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、モノクローナル抗体である、LOX-1結合性抗体である。これによると、該抗体がLOX-1蛋白質を高い特異性で認識する効果がある。
本発明の他の実施形態は、LOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドである。これによると、当該技術分野で公知の方法を用いて、LOX-1結合性抗体を得られる。
本発明の他の実施形態は、LOX-1結合性抗体をコードするポリヌクレオチド、またはその一部を含む、ベクターである。これによると、当該技術分野で公知の方法を用いて、LOX-1結合性抗体を得られる。
本発明の他の実施形態は、LOX-1結合性抗体を含む、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤である。これによると、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤が得られる効果がある。または、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、もしくは血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、LOX-1結合性抗体を含む、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤である。これによると、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、LOX-1結合性抗体を含む、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療薬である。これによると、生体に該抗体を投与することで、上記疾患の治療効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、LOX-1結合性抗体を含む、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の診断薬である。これによると、当該技術分野で公知の方法を用いることで、上記疾患の診断効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、重鎖CDR3として、m)配列番号4のアミノ酸配列、n)アミノ酸配列m)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、o)アミノ酸配列m)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、p)アミノ酸配列m)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、ヒト、マウス、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、LOX-1結合性抗体である。これによるとヒト、マウス、ウサギ、およびブタの、心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、重鎖CDR3として、q)配列番号5のアミノ酸配列、r)アミノ酸配列q)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、s)アミノ酸配列q)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、t)アミノ酸配列q)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、ヒト、マウス由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、LOX-1結合性抗体である。これによるとヒトおよびマウスの、心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、重鎖CDR3として、u)配列番号6のアミノ酸配列、v)アミノ酸配列u)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、w)アミノ酸配列u)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、x)アミノ酸配列u)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、LOX-1結合性抗体である。これによるとヒト、ウサギおよびブタの、心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、重鎖CDR3として、y)配列番号7のアミノ酸配列、z)アミノ酸配列y)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、a’)アミノ酸配列y)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、b’)アミノ酸配列y)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体である。これによると、LOX-1およびoxLDLの結合阻害剤、oxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
本発明の他の実施形態は、ヒト、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、LOX-1結合性抗体である。これによるとヒトおよびブタの、心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の、治療薬または診断薬が得られる効果がある。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1:組換えLOX-1と組換えLOX-1発現細胞の調整>
(1−1)組換えLOX-1の産生と精製
組換えヒトLOX-1(アミノ酸61-273; rhLOX-1)とその欠失変異体(アミノ酸137-273; delta Neck)、組換えマウスLOX-1(マウスLOX-1のアミノ酸188-363; rmLOX-1)、組換えラビットLOX-1(ラビットLOX-1のアミノ酸101-278; rrLOX-1)、組換えブタLOX-1(ブタLOX-1のアミノ酸61-274; rpLOX-1)を、6×Histidine tag (His tag)融合蛋白質の状態でそれぞれのLOX-1を合成するために使用できる、pcDNA4/myc-HisA (Invitrogen, USA)によって生成した。詳細は、Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12. に記載されている方法で行った。組換え蛋白質をFReeStyle 293 Expression System (Invitrogen)によって産生し、Probond protein purification kit (Invitrogen)で精製し、分子量をSDS-PAGEで確認した。精製蛋白質をBiotin Labeling Kit-NH2 (Dojindo, Japan)でビオチン化した。なお、本研究で使用したPCRプライマーは表1に示した。
(1−1)組換えLOX-1の産生と精製
組換えヒトLOX-1(アミノ酸61-273; rhLOX-1)とその欠失変異体(アミノ酸137-273; delta Neck)、組換えマウスLOX-1(マウスLOX-1のアミノ酸188-363; rmLOX-1)、組換えラビットLOX-1(ラビットLOX-1のアミノ酸101-278; rrLOX-1)、組換えブタLOX-1(ブタLOX-1のアミノ酸61-274; rpLOX-1)を、6×Histidine tag (His tag)融合蛋白質の状態でそれぞれのLOX-1を合成するために使用できる、pcDNA4/myc-HisA (Invitrogen, USA)によって生成した。詳細は、Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12. に記載されている方法で行った。組換え蛋白質をFReeStyle 293 Expression System (Invitrogen)によって産生し、Probond protein purification kit (Invitrogen)で精製し、分子量をSDS-PAGEで確認した。精製蛋白質をBiotin Labeling Kit-NH2 (Dojindo, Japan)でビオチン化した。なお、本研究で使用したPCRプライマーは表1に示した。
(1−2)組換えLOX-1のSDS-PAGE
上記の組換えヒトLOX(rhLOX-1)、組換えマウスLOX(rmLOX-1)、組換えラビットLOX(rrLOX-1)、組換えブタLOX(rpLOX-1)、delta Neck(rhLOX-1の欠失変異体)は、それぞれFReeStyle 293-F細胞で産生した。これらの組換えLOX-1蛋白質は、非還元状態下のSDS-PAGEにおいて、それぞれ、約62 kDa、約40 kDa、約20 kDa、約22 kDa、約30 kDaのバンドとして検出された(図2A)。なお、rhLOX-1とdelta Neckについては、還元状態下のSDS-PAGEにおいて、半分の分子量のバンドが検出可能であった。この結果は、rhLOX-1とdelta Neckが、Cys140を通じて、ジスルフィド結合によってクロスリンクしていることを示している。
上記の組換えヒトLOX(rhLOX-1)、組換えマウスLOX(rmLOX-1)、組換えラビットLOX(rrLOX-1)、組換えブタLOX(rpLOX-1)、delta Neck(rhLOX-1の欠失変異体)は、それぞれFReeStyle 293-F細胞で産生した。これらの組換えLOX-1蛋白質は、非還元状態下のSDS-PAGEにおいて、それぞれ、約62 kDa、約40 kDa、約20 kDa、約22 kDa、約30 kDaのバンドとして検出された(図2A)。なお、rhLOX-1とdelta Neckについては、還元状態下のSDS-PAGEにおいて、半分の分子量のバンドが検出可能であった。この結果は、rhLOX-1とdelta Neckが、Cys140を通じて、ジスルフィド結合によってクロスリンクしていることを示している。
また、ヒトoxLDLへの結合活性を示した蛋白質において、ネガティブコントロールのLDLでは結合活性が見られなかった(図2B)。この結果は、組換えタンパク質が正確な構造と機能を備えていることを示している。rmLOX-1、rrLOX-1、rpLOX-1はモノマーを形成しているため、還元、非還元状態下において同様のバンドが検出された。組換えLOX-1(ヒト、マウス、ラビット、ブタ)は、ブロードなバンドか、または2本のバンドが検出された(図2A)。それらにおける分子量の違いは、LOX-1がputative N-glycosylation signalsを含んでいることから、おそらく糖鎖修飾のためと考えられる。
なお、図2は、SDS-PAGEのプロファイルと、組換えLOX-1の活性を示している。a)は、rhLOX-1 (レーン1)、delta Neck (レーン 2)、rmLOX-1 (レーン3)、rrLOX-1 (レーン4)、rpLOX-1 (レーン5)の、SDS-PAGEのプロファイルである。組換え蛋白質を、ニッケルアフィニティクロマトグラフィーによって293-F細胞の上清から精製した。すべてのサンプルを非還元状態下のSDS-PAGEに供し、CBBRで染色した。右の数字は分子量(kDa)を示す。b)は、oxLDL (黒)、LDL (ネガティブコントロール、白)、BSA (コントロール、グレイ)、それぞれへのrhLOX-1とdelta Neckの活性を、ビオチンでラベルされたrhLOX-1でコートされたプレート、またはビオチンで染色されたdelta Neckでコートされたプレートを用いたELASAによって測定した。データは、3回の独立した試験の標準偏差を意味する。
<実施例2:ファージディスプレイの構築と抗LOX-1抗体の取得>
(2−1)rhLOX-1に対するニワトリscFv mAbsのファージディスプレイライブラリの構築
ニワトリscFv mAbsをニワトリのファージディスプレイによって生成した。詳細は、Nakamur et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-814. に記載の方法に従った。1ヶ月、H-B15近交系ニワトリを、等量のalum solution (ALUM)内のrhLOX-1 (50 μg/ml/chicken)によって腹腔免疫した。ニワトリに、3週間の間隔ごとに同じ抗原とALUM を一緒に、3回追加の腹腔免疫の注入を受けさせた。最後の注入の4日後、免疫したニワトリから脾臓細胞を単離した。脾臓細胞からRNAを抽出し、免疫グロブリンの可変領域(VHとVL)遺伝子を増幅させ、scFvファージライブラリを構築した。
(2−1)rhLOX-1に対するニワトリscFv mAbsのファージディスプレイライブラリの構築
ニワトリscFv mAbsをニワトリのファージディスプレイによって生成した。詳細は、Nakamur et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-814. に記載の方法に従った。1ヶ月、H-B15近交系ニワトリを、等量のalum solution (ALUM)内のrhLOX-1 (50 μg/ml/chicken)によって腹腔免疫した。ニワトリに、3週間の間隔ごとに同じ抗原とALUM を一緒に、3回追加の腹腔免疫の注入を受けさせた。最後の注入の4日後、免疫したニワトリから脾臓細胞を単離した。脾臓細胞からRNAを抽出し、免疫グロブリンの可変領域(VHとVL)遺伝子を増幅させ、scFvファージライブラリを構築した。
(2−2)rhLOX-1またはrmLOX-1に対するパンニングセレクション
rhLOX-1で免疫したニワトリ由来のファージディスプレイscFvライブラリを、rhLOX-1または、rmLOX-1に対してパンニングした。rhLOX-1に特異的な抗体をセレクションするために、rhLOX-1の100 μl (10 μg/ml)をMaxisorp Nunc-Immuno module (NUNC, USA)にコートした。ELISAプレートを事前にphosphate-buffered saline (PBS)中の2% (w/v) non-fat dried milk powder (EuroClon, Italia)で、1時間、室温でブロッキングした。rmLOX-1に対してセレクションするために、ビオチンラベルした100 μl (5 μg/ml)のrmLOX-1をNunc Immobilizer Streptavidin plates (NUNC)にコートした。パンニングセレクションをNakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-814. に記載の方法で行った。
rhLOX-1で免疫したニワトリ由来のファージディスプレイscFvライブラリを、rhLOX-1または、rmLOX-1に対してパンニングした。rhLOX-1に特異的な抗体をセレクションするために、rhLOX-1の100 μl (10 μg/ml)をMaxisorp Nunc-Immuno module (NUNC, USA)にコートした。ELISAプレートを事前にphosphate-buffered saline (PBS)中の2% (w/v) non-fat dried milk powder (EuroClon, Italia)で、1時間、室温でブロッキングした。rmLOX-1に対してセレクションするために、ビオチンラベルした100 μl (5 μg/ml)のrmLOX-1をNunc Immobilizer Streptavidin plates (NUNC)にコートした。パンニングセレクションをNakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-814. に記載の方法で行った。
(2−3)組換えニワトリIgY (rIgY)とニワトリ−ヒトキメラIgG4抗体(キメラIgG)の作製
上記実験で得られた、ファージディスプレイしたニワトリ抗体由来のVH遺伝子とVL遺伝子とを用いて、ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGを生成した。その際、Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-74. と、Nishibori et al., Mol Immunol. 2006 Feb;43(6):634-42. に記載の方法に従って、プラスミドベクターを軽鎖、重鎖それぞれの構築のために使用した。構築したプラスミドDNAを、FuGENE HD transfect reagent を使用して、COS-7細胞、またはFReeStyle 293-F細胞(Invitrogen)にトランスフェクトした。
上記実験で得られた、ファージディスプレイしたニワトリ抗体由来のVH遺伝子とVL遺伝子とを用いて、ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGを生成した。その際、Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-74. と、Nishibori et al., Mol Immunol. 2006 Feb;43(6):634-42. に記載の方法に従って、プラスミドベクターを軽鎖、重鎖それぞれの構築のために使用した。構築したプラスミドDNAを、FuGENE HD transfect reagent を使用して、COS-7細胞、またはFReeStyle 293-F細胞(Invitrogen)にトランスフェクトした。
(2−4)組換えLOX-1の検出
組換えLOX-1の検出のためのウエスタンブロッティングを行った。組換えLOX-1を非還元状態下のSDS-PAGEに供し、1時間、350 mAの電流でImmun-Blot PVDF membrane (Bio-Rad、USA)に転写した。上記membraneを、ニワトリ抗LOX-1 rIgYの存在下で 1時間、室温でインキュベートし、ECL plus (GE Healthcare, UK)によって検出した。化学発光シグナルをLAS-3000 (Fuji Film、Japan)によって分析した。ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGの検出のためのウエスタンブロッティングを、Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-174. と、Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12. に記載の方法で行った。Horseradish peroxidase (HRP)でラベルされた抗ニワトリIgG-Fabフラグメント(Bethyl, USA)を、ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGの検出のために使用した。ニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGの検出のために、マウス抗ヒトIgG4抗体(BD Biosciences, USA)を1次抗体に、HRPでラベルされたマウスIgG抗体(Southern Biotech, USA)を2次抗体として使用した。ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGをECL plus and LAS-3000で検出した。
組換えLOX-1の検出のためのウエスタンブロッティングを行った。組換えLOX-1を非還元状態下のSDS-PAGEに供し、1時間、350 mAの電流でImmun-Blot PVDF membrane (Bio-Rad、USA)に転写した。上記membraneを、ニワトリ抗LOX-1 rIgYの存在下で 1時間、室温でインキュベートし、ECL plus (GE Healthcare, UK)によって検出した。化学発光シグナルをLAS-3000 (Fuji Film、Japan)によって分析した。ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGの検出のためのウエスタンブロッティングを、Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-174. と、Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12. に記載の方法で行った。Horseradish peroxidase (HRP)でラベルされた抗ニワトリIgG-Fabフラグメント(Bethyl, USA)を、ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGの検出のために使用した。ニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGの検出のために、マウス抗ヒトIgG4抗体(BD Biosciences, USA)を1次抗体に、HRPでラベルされたマウスIgG抗体(Southern Biotech, USA)を2次抗体として使用した。ニワトリ抗LOX-1 rIgYとニワトリ-ヒトキメラ抗LOX-1 IgGをECL plus and LAS-3000で検出した。
上記のように、rhLOX-1で免疫したニワトリの脾臓細胞を使用することによって、scFvファージライブラリ(5.0×108 cfu)を構築した。rhLOX-1に対する6回転のパンニングセレクション後、scFvファージライブラリの濃度の特異性をELISAによって検出した。5回もしくは6回パンニングしたライブラリ由来の207個のファージクローンのうち、113個はrhLOX-1と反応した。ポジティブクローンにおける核酸配列解析の結果、これらのクローンは、50個の独立したクローンのサブクラスに分けることができることが示された。同様のファージディスプレイライブラリを使用した、rmLOX-1に対するパンニングセレクションでは、5回もしくは6回パンニングしたライブラリ由来の2個の独立したクローンがセレクションされた。結果的に、定量的な調査のためのrIgYとして、全部で52個のクローンを構築した。
<実施例3:rIgYの交差反応性の評価>
(3−1)ELISAによるrIgYの交差反応性の評価
Nunc Immobilizer Streptavidin plateのウェルを、carbonate buffer (pH 9.5)の存在下、1時間、室温で、50 μl (1 μg/ml)のビオチンラベルしたrhLOX-1、delta Neck、rmLOX-1、 rrLOX-1、rpLOX-1、BSA(コントロールの抗原として)によって、それぞれコートした。PBS-Tで洗浄後、それぞれのニワトリ抗LOX-1 rIgYを1 μg/ml加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、結合した抗体を、HRPでラベルされたヤギ抗ニワトリIgG (H+L) (Kirkeggaard and Perry Laboratories, USA)を使用して検出した。PBS-Tで洗浄後、o-phenylene diamine sulfate (OPD, Sigma, USA)を加え、Model 680 microplate reader (Bio-Rad)を使用して490 nmの吸光度を測定した。ヒト抗ヒトLOX-1 mAb TS-92[Hu et al., Biochem Biophys Res Commun. 2003 Aug 8;307(4):1008-1012.]をポジティブコントロールとして使用した。
(3−1)ELISAによるrIgYの交差反応性の評価
Nunc Immobilizer Streptavidin plateのウェルを、carbonate buffer (pH 9.5)の存在下、1時間、室温で、50 μl (1 μg/ml)のビオチンラベルしたrhLOX-1、delta Neck、rmLOX-1、 rrLOX-1、rpLOX-1、BSA(コントロールの抗原として)によって、それぞれコートした。PBS-Tで洗浄後、それぞれのニワトリ抗LOX-1 rIgYを1 μg/ml加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、結合した抗体を、HRPでラベルされたヤギ抗ニワトリIgG (H+L) (Kirkeggaard and Perry Laboratories, USA)を使用して検出した。PBS-Tで洗浄後、o-phenylene diamine sulfate (OPD, Sigma, USA)を加え、Model 680 microplate reader (Bio-Rad)を使用して490 nmの吸光度を測定した。ヒト抗ヒトLOX-1 mAb TS-92[Hu et al., Biochem Biophys Res Commun. 2003 Aug 8;307(4):1008-1012.]をポジティブコントロールとして使用した。
(3−2)ヒト、ラビット、ブタの組換えLOX-1発現細胞の調製
ヒトLOX-1をコードしたcDNAをTet-On Gene Expression vector pTRE2hyg (Clontech Laboratories, USA)にサブクローニングした。プラスミドをLipofectamin2000 tansfection reagent (Invitrogen)によって、製品説明書に従って、CHO-K1 Tet-On cells (Clontech Laboratories)にトランスフェクトした。安定な形質転換体を、400 μg/ml hygromycin B (Wako, Japan)を添加したHam’s F12/10% fetal bovine serum (FBS)の存在下で選択した。そして、doxycycline (Wako)に応答してLOX-1が発現した細胞を選択した。なお、試験の前に、LOX-1の発現を1 μg/ml doxycylineで24時間誘導した。ラビットとブタのcDNAを、哺乳類の発現ベクターであるpEF6V5-HisA (Invitrogen)にそれぞれサブクローニングした。プラスミドをFuGENE HD transfect reagent (Roche Diagnostics, Switzerland)によって、CHO-K1細胞にそれぞれトランスフェクトした。8 μg/ml blasticidin S (Invitrogen)を添加したHam’s F12/10% FBSの存在下で、安定なLOX-1発現細胞を選択した。
ヒトLOX-1をコードしたcDNAをTet-On Gene Expression vector pTRE2hyg (Clontech Laboratories, USA)にサブクローニングした。プラスミドをLipofectamin2000 tansfection reagent (Invitrogen)によって、製品説明書に従って、CHO-K1 Tet-On cells (Clontech Laboratories)にトランスフェクトした。安定な形質転換体を、400 μg/ml hygromycin B (Wako, Japan)を添加したHam’s F12/10% fetal bovine serum (FBS)の存在下で選択した。そして、doxycycline (Wako)に応答してLOX-1が発現した細胞を選択した。なお、試験の前に、LOX-1の発現を1 μg/ml doxycylineで24時間誘導した。ラビットとブタのcDNAを、哺乳類の発現ベクターであるpEF6V5-HisA (Invitrogen)にそれぞれサブクローニングした。プラスミドをFuGENE HD transfect reagent (Roche Diagnostics, Switzerland)によって、CHO-K1細胞にそれぞれトランスフェクトした。8 μg/ml blasticidin S (Invitrogen)を添加したHam’s F12/10% FBSの存在下で、安定なLOX-1発現細胞を選択した。
(3−3)FACS分析によるrIgYの交差反応性の評価
組換え抗体と、LOX-1を発現したCHO細胞とを一緒に、0.1% FBSと0.1% NaN3 (FACS buffer)を含むPBSの存在下において、4℃で1時間インキュベートした。FACS bufferで洗浄後、細胞を、FITCでラベルされた抗ニワトリIgG (H+L)、またはFITCでラベルされた抗ヒトIgG (H+L) (Southern Biotech, USA)と一緒に、4℃で30分間インキュベートした。傾向をFACSCalibur (BD, USA)によって分析した。
組換え抗体と、LOX-1を発現したCHO細胞とを一緒に、0.1% FBSと0.1% NaN3 (FACS buffer)を含むPBSの存在下において、4℃で1時間インキュベートした。FACS bufferで洗浄後、細胞を、FITCでラベルされた抗ニワトリIgG (H+L)、またはFITCでラベルされた抗ヒトIgG (H+L) (Southern Biotech, USA)と一緒に、4℃で30分間インキュベートした。傾向をFACSCalibur (BD, USA)によって分析した。
上記のように、異なる哺乳類種由来の組換えLOX-1において、CTLまたはNeckドメインを認識するファージディスプレイ技術によって得た52個のニワトリ抗体を調査した。組換えLOX-1に対する52個のrIgY抗体を、ELISAとFACSによって評価した。52個のクローンのうち、HUC5-34、HUC5-40、HUC6-34、HUC6-41はrhLOX-1に反応し、delta Neckは反応しなかった(図3A)。この結果は、それら4つのドメインが、LOX-1のNeckドメインを認識すること(抗Neckドメインクローン)を示唆している。残りのクローンは、rhLOX-1とdelta Neckの両方と類似の強度で反応しており、このことはそれらのクローンがCTLドメインを認識することを示している。52個のクローンのうち、HUC52、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-48の7個は、ラビットLOX-1とブタLOX-1の両方と交差反応性を示した(図3B)。HUC5-9は、rpLOX-1と交差反応性を示した(図3B)。rmLOX-1に対するパンニングによってセレクションされたHUC3-1とHUC3-48の2個のクローンは、rmLOX-1と反応した。興味深いことには、HUC3-48は、試験に用いたすべての種由来のLOX-1に対して反応した(図3B)。ウエスタンブロッティングによると、それらのクローンは、試験に用いたすべての種由来の組換えLOX-1に反応しなかったが、そのことは、それらのクローンがエピトープの立体構造を認識していることを示している。事実、それらのクローンは、FACS 分析によると、LOX-1を発現した細胞と反応した。試験したクローンは、いずれも、BSAとワイルドタイプのCHO細胞と反応しなかった。
なお、図3は、組換えLOX-1に対するrIgY抗体の活性を示している。a)は、hLOX-1とdelta NECK に対するrIgY抗体の活性を示している。rIgYs (1 μg/ml)を、ビオチン化したrhLOX-1 (黒)、delta Neck (白)、BSA (ネガティブコントロール、)でコートしたウェルに加えた。b) は、4種由来のLOX-1に対する52個のrIgY抗体の交差反応性を示している。rIgYs (1 μg/ml)を、ビオチン化したrhLOX-1 (黒)、rpLOX-1 (白)、rrLOX-1 (グレイ) or rmLOX-1 (影)でコートされたウェルに加えた。52個のクローンのうち、7個はrLOX-1 and/or rpLOX-1に交差反応性を示し、2個はrmLOX-1を認識した。
(3−4)交差反応性と重鎖CDRの共通性
また、交差反応性が見られた上記HUC52、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48について、抗原に対する特異性を決定する領域である重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3のアミノ酸配列を表2に示す。なお、表2中の「-」は、配列を整理するために挿入したギャップを表す。
また、交差反応性が見られた上記HUC52、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48について、抗原に対する特異性を決定する領域である重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3のアミノ酸配列を表2に示す。なお、表2中の「-」は、配列を整理するために挿入したギャップを表す。
これらのうち、HUC52、HUC5-90、HUC6-92の3つの抗体(クローン)は、同一の重鎖CDR3の配列CAYSSGYDCDGSS(配列番号1)を持ち、かつヒト、ウサギ、ブタに交差反応性を持つという共通性が見られた。また、HUC52、HUC5-90、HUC6-92の3つの抗体は、重鎖CDR1の配列DYGMG(配列番号2)も短い配列ではあるが一致しており、重鎖CDR2はHUC6-92が2箇所異なるアミノ酸を持つ以外はすべて一致していた。
さらに、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63の3つの抗体についても、同一の重鎖CDR3の配列AADGWYWDADIADL(配列番号6)を持ち、かつヒト、ウサギ、ブタに交差反応性を持つという共通性が見られた。また、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63の3つの抗体は、重鎖CDR1の配列SHNMG(配列番号12)も短い配列ではあるが一致しており、重鎖CDR2の配列SIS-TGSRTAYGAAVK(配列番号13)も一致していた。
なお、重鎖CDR(重鎖CDR1、重鎖CDR2、および重鎖CDR3)のアミノ酸配列の相同性は、HUC52の重鎖CDRに対して、HUC5-9は66.7%であり、HUC5-44は38.9%であり、HUC5-53は38.9%であり、HUC5-63は38.9%であり、HUC5-90は100%であり、HUC6-92は94.1%であり、HUC3-1は28.9%であり、HUC3-48は21.6%の相同性であった。同様に、HUC52の重鎖CDRに対して、上記実験で調査した残り41個のクローンの重鎖CDRは、いずれにも73.5%以下の相同性であった。
なお、重鎖CDR3のアミノ酸配列の相同性は、HUC52のCDR3に対して、HUC5-9は60%であり、HUC5-44は6.7%であり、HUC5-53は6.7%であり、HUC5-63は6.7%であり、HUC5-90は100%であり、HUC6-92は100%であり、HUC3-1は0%であり、HUC3-48は11.8%の相同性であった。同様に、HUC52の重鎖CDR3に対して、上記実験で調査した残り41個のクローンの重鎖CDR3は、いずれにも56.5%以下の相同性であった。
なお、重鎖CDR2のアミノ酸配列の相同性は、HUC52のCDR2に対して、HUC5-9は62.5%であり、HUC5-44は68.8%であり、HUC5-53は68.8%であり、HUC5-63は68.8%であり、HUC5-90は100%であり、HUC6-92は87.5%であり、HUC3-1は62.5%であり、HUC3-48は50%の相同性であった。同様に、HUC52の重鎖CDR3に対して、上記実験で調査した残り41個のクローンの重鎖CDR2は、いずれにも81.3%以下の相同性であった。
なお、重鎖FR(重鎖FR1、重鎖FR2、重鎖FR3、および重鎖FR4)のアミノ酸配列はすべてのクローン間で相同性が高かった。例えば、HUC52の重鎖FRに対して、HUC5-9は92.3%であり、HUC5-44は91.2%であり、HUC5-53は91.2%であり、HUC5-63は91.2%であり、HUC5-90は100%であり、HUC6-92は98.9%であり、HUC3-1は91.2%であり、HUC3-48は89.0%の相同性であった。同様に、HUC52の重鎖FRに対して、上記実験で調査した残り41個のクローンの重鎖FRは、いずれにも86.8%以上の相同性であった。
また、軽鎖CDR(CDR1、軽鎖CDR2、および軽鎖CDR3)のアミノ酸配列はすべてのクローン間で相同性が低かった。例えば、HUC52の軽鎖CDRに対して、HUC5-9は58.6%であり、HUC5-44は48.5%であり、HUC5-53は54.8%であり、HUC5-63は43.3%であり、HUC5-90は60.7%であり、HUC6-92は61.3%であり、HUC3-1は41.4%であり、HUC3-48は43.3%の相同性であった。同様に、HUC52の軽鎖CDRに対して、上記実験で調査した残り41個のクローンの軽鎖CDRは、いずれにも69.0%以下の相同性であった。
なお、同様に軽鎖CDR3のアミノ酸配列もすべてのクローン間で相同性が低かった。例えば、HUC52の軽鎖CDR3に対して、HUC5-9は41.7%であり、HUC5-44は25.0%であり、HUC5-53は58.3%であり、HUC5-63は33.3%であり、HUC5-90は54.5%であり、HUC6-92は54.5%であり、HUC3-1は25.0%であり、HUC3-48は16.7%の相同性であった。同様に、HUC52の軽鎖CDR3に対して、上記実験で調査した残り41個のクローンの軽鎖CDR3は、いずれにも70%以下の相同性であった。
(3−5)結果の考察
一般的に、重鎖の可変領域であるVHが抗原に対する特異性、親和性に大きく寄与していることが知られている。例えば、リゾチームで免疫化したマウス脾臓からVH遺伝子を抽出増殖し、大腸菌でVHのみを単独で発現させたところ、その断片はVLがなくても顕著な抗原に対する親和性を保持していることが報告されている[Ward et al., Nature. 1989 Oct 12;341(6242):544-546.]。
一般的に、重鎖の可変領域であるVHが抗原に対する特異性、親和性に大きく寄与していることが知られている。例えば、リゾチームで免疫化したマウス脾臓からVH遺伝子を抽出増殖し、大腸菌でVHのみを単独で発現させたところ、その断片はVLがなくても顕著な抗原に対する親和性を保持していることが報告されている[Ward et al., Nature. 1989 Oct 12;341(6242):544-546.]。
また、一般的に、VHの構成要素である重鎖CDRが、抗原に対する特異性を決定する上で最も重要な領域であり、特に重鎖CDR3が大きな役割を果たしているとされている。CDRは抗原に対する特異性を決定する領域であるため、抗体間でアミノ酸配列が大きく異なり、超可変領域ともよばれている。なお、CDRを除くFv領域はフレームワーク(FR)と呼ばれ、抗体間で比較的よく保存されている[Kabat et al.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983.]。
加えて、現在、市販されている抗体医薬品においては、ヒトに治療薬として投与した際の免疫原性(毒性)を低減させる目的で、抗体のアミノ酸配列をヒト由来のものに置き換える方法がとられている。その代表的なものが、マウス抗体の「CDRのみ」をヒト抗体Fvに移植して作製する、ヒト化抗体である[Immunol. Today, 14, 243, 1993, Int Rev Immunol 10, 241, 1993.]。例えば、一般名:トラスツマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、アダリムマブなどがヒト化抗体として販売され、抗体医薬品市場のシェアの多くを有している。このことからも、CDR領域が、抗体の機能を特徴付ける上で極めて重要な領域であることがわかる。
そして、上記の実験結果において、各クローンの反応性と、重鎖CDRのアミノ酸配列との間に相関性が見られている。このことから、抗LOX-1 mAbsであるHUC52、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48は、重鎖CDRのアミノ酸配列によってLOX-1蛋白質に対する反応性(交差反応性および親和性)が特徴付けられていると考えられる。
また、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3のうち、重鎖CDR3のアミノ酸配列が最も各クローンの反応性との相関性が高い。さらに、HUC52およびHUC5-90と、HUC6-92との間において、重鎖CDR3は同一であるが重鎖CDR2には2箇所のアミノ酸の違いがある。したがって、特に重鎖CDR3のアミノ酸配列によってLOX-1蛋白質に対する反応性が特徴付けられていると考えられる。なお、重鎖CDR1はアミノ酸が5つしかなく、重鎖CDR1のみで反応性を特徴付けるにはアミノ酸配列が短すぎると考えられる。
また、FR(FR1、FR2、FR3、FR4)のアミノ酸配列の相同性が、すべてのクローン間で高かったことから、FRのアミノ酸配列が、抗LOX-1 mAbsのLOX-1に対する反応性において、重要ではないと考えられる。加えて、すべてのクローン間において、軽鎖CDR(軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、軽鎖CDR3)および軽鎖CDR3のアミノ酸配列に共通性がないことから、軽鎖CDRのアミノ酸配列が、抗LOX-1 mAbsのLOX-1に対する反応性において、重要ではないと考えられる。
また、上記の事実から、重鎖CDRを除く抗LOX-1 mAbsのアミノ酸配列、または重鎖CDR3を除く抗LOX-1 mAbsのアミノ酸配列を、他の抗体由来の配列に変換した場合にも、抗LOX-1 mAbsの反応性を維持することが可能であると考えられる。変換した場合の有利な効果としては、例えば、治療薬としてヒトに投与する場合に、ヒト由来の配列に変換することで免疫原性を低減させることができると考えられる。なお、このとき、抗LOX-1 mAbsの反応性を上げるために、当該分野で公知の方法(例えば、抗体のアミノ酸残基をランダムに変異させ、反応性の高いものをスクリーニングする方法、またはファージディスプレイ法など)を用いて、変換した領域を最適化することが好ましい。FR領域を変換する場合には、例えば、FRシャッフル[Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-60. Epub 2007 Jan 22.]、またはバーニヤゾーンのアミノ酸残基および/またはパッケージング残基を置換する方法[特開2006-241026、またはFoote et al., J Mol Biol. 1992 Mar 20;224(2):487-499.]を用いて、FR領域を最適化することができると考えられる。
<実施例4:oxLDLおよびLOX-1蛋白質のmAbによる結合阻害分析>
(4−1)oxLDL と組換えLOX-1蛋白質の結合におけるmAbによる阻害分析
Kakutani et al., Biochem Biophys Res Commun. 2001 Mar 23;282(1):180-185. に記載の方法に従って阻害分析をおこなった。ビオチンでラベルされたrhLOX-1 (50 ng/well)を、50 μl of carbonate buffer の存在下で、室温で1時間インキュベートすることによってNunc Immobilizer Streptavidinプレートに固定した。PBSで洗浄後、rIgY (1 μg/ml)、TS-92 (ポジティブコントロール、1 μg/ml)、抗2,4-dinitrophenyl (DNP) rIgY (ネガティブコントロール、1 μg/ml)[Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12.]をrhLOX-1でコートしたウェルにそれぞれ加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。PBSで洗浄後、プレートを、20% (vol/vol) newborn calf serum (NBCS, Gibco, USA)を含むPBS 存在下の50 μlのヒトoxLDL (3 μg/ml)と一緒に4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSで洗浄後、oxLDLを検出するために、1% (w/v) BSAを含むPBSで1000倍に薄めたHRP-sheep anti-human ApoBポリクローナル抗体(The Binding Site, UK)と一緒に室温で2時間インキュベートした。PBSで洗浄後、50 μlのSureBlue Reserve TMB Microwell Peroxidase Substrate (Kirkegaard & Perry Laboratories, USA)と一緒にプレートを室温で5分間インキュベートすることで、ペルオキシダーゼ反応を開始した。反応は、0.1 M塩酸と0.3 M硫酸を加えることによって終了した。ペルオキシダーゼ活性は450 nmの波長を測定することによって検出した。
(4−1)oxLDL と組換えLOX-1蛋白質の結合におけるmAbによる阻害分析
Kakutani et al., Biochem Biophys Res Commun. 2001 Mar 23;282(1):180-185. に記載の方法に従って阻害分析をおこなった。ビオチンでラベルされたrhLOX-1 (50 ng/well)を、50 μl of carbonate buffer の存在下で、室温で1時間インキュベートすることによってNunc Immobilizer Streptavidinプレートに固定した。PBSで洗浄後、rIgY (1 μg/ml)、TS-92 (ポジティブコントロール、1 μg/ml)、抗2,4-dinitrophenyl (DNP) rIgY (ネガティブコントロール、1 μg/ml)[Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12.]をrhLOX-1でコートしたウェルにそれぞれ加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。PBSで洗浄後、プレートを、20% (vol/vol) newborn calf serum (NBCS, Gibco, USA)を含むPBS 存在下の50 μlのヒトoxLDL (3 μg/ml)と一緒に4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSで洗浄後、oxLDLを検出するために、1% (w/v) BSAを含むPBSで1000倍に薄めたHRP-sheep anti-human ApoBポリクローナル抗体(The Binding Site, UK)と一緒に室温で2時間インキュベートした。PBSで洗浄後、50 μlのSureBlue Reserve TMB Microwell Peroxidase Substrate (Kirkegaard & Perry Laboratories, USA)と一緒にプレートを室温で5分間インキュベートすることで、ペルオキシダーゼ反応を開始した。反応は、0.1 M塩酸と0.3 M硫酸を加えることによって終了した。ペルオキシダーゼ活性は450 nmの波長を測定することによって検出した。
(4−2)oxLDLとLOX-1発現細胞との結合におけるmAbによる阻害分析
LOX-1が発現しているCHO細胞を、10% NBCSを含むHam’s F12存在下で、抗LOX-1抗体と一緒に37度で1時間インキュベートした。1時間後、さらに、1,1'-dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate (DiI, Molecular Probes, USA)でラベルされたoxLDL (3 μg/ml)を加え、2時間インキュベートした。上記細胞を3回、PBSで洗浄し、PBS 存在下の4% (v/v) paraformaldehydeで20分間固定した。細胞核を、5 μg/mlのDAPI (Sigma)によって対比染色し、蛍光顕微鏡で観察した。
LOX-1が発現しているCHO細胞を、10% NBCSを含むHam’s F12存在下で、抗LOX-1抗体と一緒に37度で1時間インキュベートした。1時間後、さらに、1,1'-dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate (DiI, Molecular Probes, USA)でラベルされたoxLDL (3 μg/ml)を加え、2時間インキュベートした。上記細胞を3回、PBSで洗浄し、PBS 存在下の4% (v/v) paraformaldehydeで20分間固定した。細胞核を、5 μg/mlのDAPI (Sigma)によって対比染色し、蛍光顕微鏡で観察した。
上記のように、52個の抗LOX-1抗体の中和活性を、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184. Epub 2005 Jun 16.に記載の方法に従って試験した。52個のクローンのうち44個は中和活性を示しており、このことはoxLDLの結合に必須であるCTLドメインを認識していることを示唆している。LOX-1のNeckドメインはoxLDLとLOX-1の結合に重要ではないが、抗NeckドメインクローンであるHUC5-34、HUC5-40、HUC6-34、HUC6-41は(図3A)、わずかにoxLDLの結合を阻害した。rhLOX-1の分子量(MW)は約62 kDa (図2A, lane 1)で、rIgYは約250 kDaである。rhLOX-1よりも分子量が4倍高いことから、抗Neckドメインクローンはおそらく立体的な阻害を示していると考えられる。2個のクローン(ラビットLOX-1とブタLOX-1への交差反応性を持つHUC52、試験に用いたすべての種のLOX-1を認識するHUC3-48)について、キメラIgG 抗体を再構築した(図4)。補体活性化を伴うIgエフェクター機能と、抗体依存性細胞障害(ADCC)を避けるために、IgG4サブクラスを選択した。それらキメラ抗体は、それらのオリジナルのrIgYフォームと類似の反応を示した(図5)。阻害実験では、LOX-1を発現しているCHO細胞を用いて行った。動物種の試験にもかかわらず、2個のキメラIgGがLOX-1を発現しているCHO細胞と反応し(図6A)、oxLDLとLOX-1を発現しているCHO細胞との結合をブロックした(図6B)。HUC3-48は同様に、マウスLOX-1を発現した細胞に対して阻害活性を示した。
なお、図4は、組換えニワトリ抗体と、ニワトリ−ヒトキメラ抗体のウエスタンブロッティングを示している。rIgY (レーン1)とchimeric IgG (レーン2)を、それぞれ非還元状態下の10% SDS-polyacrylamide gelに供した。抗ニワトリIgG-Fabと抗ヒトIgG4を抗体の検出のために使用した。右の数字は分子量(kDa)を示す。H2L2は抗体の全長を表し、HLはその半分の分子量を示す。
図5は、抗LOX-1抗体によるoxLDLとLOX-1の結合阻害を示している。rhLOX-1を捕獲分子として使用した。rIgY (closed square)とchimeric IgG (open square)は、oxLDLとLOX-1の結合への阻害比率を示した。抗ヒトApoB antibodyを使用した。抗DNP rIgYをネガティブコントロールとして使用し、標準として比較した。
図6は、LOX-1を発現した細胞に対するキメラIgGの反応性とブロッキング活性を示している。a)では、LOX-1を発現したCHO細胞を、キメラIgG (1 μg/ml)と一緒にインキュベートし、FITCでラベルされた抗ヒトIgGで検出した。FACSによって蛍光を分析した。b)では、Human a)、rabbit b) 、pig c)、それぞれのLOX-1を発現したCHO細胞を、キメラIgG (5 μg/ml) と一緒にインキュベートした。DiIでラベルされたoxLDL (3 μg/ml)を加え、2時間インキュベートした。その後、細胞を4% (v/v) paraformaldehydeに固定した。細胞をDAPIで比較染色し、蛍光顕微鏡で観察した。
(4−3)結果の考察
上記HUC52と上記HUC3-48において、LOX-1を発現しているCHO細胞と反応し、マウスLOX-1を発現した細胞に対してoxLDL結合の阻害活性を示した。このことは、LOX-1が関わる心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚のような疾患の予防、または治療に有効であると考えられる。なぜならば、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、またはHonjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、LOX-1およびoxLDLの結合阻害機能を持った抗LOX-1 mAbsが、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果を示したことが報告されているためである。
上記HUC52と上記HUC3-48において、LOX-1を発現しているCHO細胞と反応し、マウスLOX-1を発現した細胞に対してoxLDL結合の阻害活性を示した。このことは、LOX-1が関わる心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚のような疾患の予防、または治療に有効であると考えられる。なぜならば、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、またはHonjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において、LOX-1およびoxLDLの結合阻害機能を持った抗LOX-1 mAbsが、哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果を示したことが報告されているためである。
さらには、HUC52およびHUC3-48と同様の方法で作製し、ELISA(図3)によって類似の結合力が確認されている、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1についても、LOX-1を発現しているCHO細胞と反応し、マウスLOX-1を発現した細胞に対してoxLDL結合の阻害活性を示すことが考えられる。そのため、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1についても、上記疾患の治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
また、上記の実験結果から、ブタ、ウサギ、マウスのうち、1種または2種もしくはすべてに交差反応性を持ち、かつヒトLOX-1に特異的に結合する9つのmAbs(HUC52、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48)が得られた。これら交差反応性を持つ9つのmAbs(9つのクローン)は、いずれも治療薬や診断薬の開発において有用なmAbsであると考えられる。また、交差反応性を重視した場合、9つのmAbsの中でもマウスに交差反応性を持つHUC-3-1とHUC3-48が、特に有用なmAbsであると考えられる。なぜならば、マウスは、入手および取り扱いが容易で、ヒトの種々の疾患のモデル動物として最も汎用されている動物であり、発現解析、治療薬、診断薬の効果を検証するために重要なモデル動物であるからである。そして、LOX-1が関わるヒトの心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患においても、マウスはきわめて重要な疾患モデル動物である。例えば、ApoE-knockoutマウスは、原発性高脂血症の動物モデルとしてや、LOX-1の機能分析に使用されている[Sato et al., Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):303-309. Epub 2008 Feb 12.]。そのため、交差反応性を重視した場合、ヒトおよびマウスに交差反応性を示す抗LOX-1 mAbsが、心血管疾患や動脈硬化性疾患等の新規の治療薬や診断薬の開発において、特に好適に使用できると考えられる。
<実施例5:BIACOREを用いたLOX-1と抗LOX-1 mAbsの結合力の評価>
(5−1)LOX-1とHUC52の結合力の評価
ヒトLOX-1に対するHUC52の結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び解離定数(KD)を、市販の測定キットBIACORE X(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて測定した。なお、HUC52は、測定前にヒト−ニワトリキメラ抗体に再構築している。
(5−1)LOX-1とHUC52の結合力の評価
ヒトLOX-1に対するHUC52の結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び解離定数(KD)を、市販の測定キットBIACORE X(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて測定した。なお、HUC52は、測定前にヒト−ニワトリキメラ抗体に再構築している。
操作は、当該キットに添付の取扱い説明書及び実験操作法に従って行った。センサーチップにヒトLOX-1を固定化し、フローセルにHUC52を添加し分析した。抗体の結合量を経時的に測定しセンサーグラムを得た。得られたセンサーグラムのデータに基づき、キットに付随の解析ソフト(BIAevaluation3.0)を用いて、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び解離定数(KD;KD=kd/ka)を算出した。抗ヒトLOX-1抗体であるTS-92 [Hu et al., Biochem Biophys Res Commun. 2003 Aug 8;307(4):1008-12.]と比較した結果を図7に示す。
(5−2)結果の考察
HUC52とTS-92の結合速度定数(ka)は、それぞれ1.91×105 M-1s-1と1.02×105 M-1s-1であり、HUC52の方が顕著に高い値を示している。また、図7から、HUC52とTS-92の反応開始から90秒までの反応曲線は、HUC52の方が顕著に高い上昇曲線を示していることが読み取れる。これらのことから、HUC52はTS-92よりも結合速度が極めて速く、極めて多いヒトLOX-1を結合したことがわかる。
HUC52とTS-92の結合速度定数(ka)は、それぞれ1.91×105 M-1s-1と1.02×105 M-1s-1であり、HUC52の方が顕著に高い値を示している。また、図7から、HUC52とTS-92の反応開始から90秒までの反応曲線は、HUC52の方が顕著に高い上昇曲線を示していることが読み取れる。これらのことから、HUC52はTS-92よりも結合速度が極めて速く、極めて多いヒトLOX-1を結合したことがわかる。
また、HUC52とTS-92の解離速度定数(kd)は、それぞれ67.3×10-5s-1と20.9×10-5s-1であり、解離定数(KD)は、それぞれ3.52 nMと2.05 nMであり、いずれも低い値である。また、図7において、反応開始から90秒までの反応曲線と比較して、反応開始90秒以降の反応曲線は、HUC52とTS-92いずれも同様に緩やかな下降曲線を示していることが読み取れる。これらのことから、HUC52およびTS-92の、ヒトLOX-1からの解離は穏やかであり、解離量も少ないことがわかる。
HUC52は、抗ヒトLOX-1抗体であるTS-92と比較して極めて高い結合速度定数(ka)を示しており、このことは、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、HUC52が、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できることを示唆している。なぜならば、結合速度定数(ka)が大きければ、抗LOX-1抗体がより効率よくLOX-1と反応するため、例えば、抗LOX-1抗体を治療薬の用途として開発、販売する場合において、使用量を低く抑えることができ、開発費の軽減、使用者の経済的な負担軽減や、患者の体力的な負担軽減などの効果が得られるためである。このことは、診断薬など他の用途として開発、販売する際にも同様である。また、実施例4の実験結果より、HUC52がヒト、ウサギ、ブタに交差反応性をもつ結果が出ていることからも、HUC52が治療薬や診断薬の用途として有用であることが考えられる。
また、HUC52と同様の方法で作製し、さらにはELISA(図3)によって類似の結合力が確認されている、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48についても、LOX-1に対する高い結合速度定数(ka)を持つことが考えられる。そのため、LOX-1に対する結合速度定数(ka)が高いHUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48についても、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できると考えられる。
<結果の考察>
上記の実施例1〜6の実験結果から、ブタ、ウサギ、マウスのうち、1種または2種もしくはすべてに交差反応性を持ち、かつヒトLOX-1に特異的に結合する9つのmAbsが得られた。このことは、LOX-1が関わるヒトの心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できる抗LOX-1 mAbsが得られたことを表している。また、ヒトおよびマウスに交差反応性を持つHUC-3-1とHUC3-48は、交差反応性を重視した場合、特に好適に使用できると考えられる。
上記の実施例1〜6の実験結果から、ブタ、ウサギ、マウスのうち、1種または2種もしくはすべてに交差反応性を持ち、かつヒトLOX-1に特異的に結合する9つのmAbsが得られた。このことは、LOX-1が関わるヒトの心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できる抗LOX-1 mAbsが得られたことを表している。また、ヒトおよびマウスに交差反応性を持つHUC-3-1とHUC3-48は、交差反応性を重視した場合、特に好適に使用できると考えられる。
さらに、上記の実施例1〜6の実験結果から、LOX-1に対する高い結合速度定数(ka)を持つ抗LOX-1 mAbsが9つ(HUC52、HUC5-9、HUC5-44、HUC5-53、HUC5-63、HUC5-90、HUC6-92、HUC3-1、HUC3-48)得られた。このことは、LOX-1が関わる心血管疾患や動脈硬化性疾患等のような疾患において、ヒト、ブタ、ウサギ、またはマウスに対する、治療薬や診断薬の用途として好適に使用できる抗LOX-1 mAbsが得られたことを表している。
治療薬として使用する場合は、抗LOX-1 mAbs による、oxLDLおよびLOX-1の結合阻害作用、またはoxLDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害作用よって、治療効果が得られると考えられる。例えば、抗LOX-1 mAbsが、in vivo実験で哺乳動物の動脈硬化性疾患性疾患、心血管疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療効果を示すことが、WO01/064862号公報、Inoue et al., Circ Res. 2005 Jul 22;97(2):176-184、Hinagata et al., Cardiovasc Res. 2006 Jan;69(1):263-271、Honjo et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003 Feb 4;100(3):1274-1279.において報告されている。
また、診断薬として使用する場合は、例えば、標準細胞、被検細胞、被検血清、または上記いずれかの疾患における病態細胞におけるLOX-1発現の濃度を、抗LOX-1 mAbsの結合様態によって測定、比較することで上記疾患の診断が可能になると考えられる。例えば、Hayashida et al., Circulation. 2005 Aug 9;112(6):812-818. Epub 2005 Aug 1. によると、急性冠症候群(acute coronary syndrome、ACS)の患者由来の血清から、蛋白質切断によってリリースされた可溶性フォームのLOX-1 (sLOX-1)が検出されている。この血清中のsLOX-1の濃度を、抗LOX-1 mAbsで測定することで、ACSの診断が可能になると考えられる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
Claims (26)
- 重鎖CDR3として、
a)配列番号1のアミノ酸配列、
b)アミノ酸配列a)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
c)アミノ酸配列a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
d)アミノ酸配列a)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、
LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体において、
重鎖CDR1として、
e)配列番号2のアミノ酸配列、
f)アミノ酸配列e)に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
g)アミノ酸配列e)において1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
h)アミノ酸配列e)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2として、
i)配列番号3のアミノ酸配列、
j)アミノ酸配列i)に対して85%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
k)アミノ酸配列i)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
l)アミノ酸配列i)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
種が異なる複数種類の哺乳動物由来のLOX-1蛋白質に結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
ニワトリ抗体、ニワトリ−ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体からなる群から選ばれる1種以上の抗体である、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項5記載のLOX-1結合性抗体において、
前記ニワトリ−ヒトキメラ抗体または前記ヒト化抗体のサブクラスが、IgG4である、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
前記LOX-1蛋白質のうちCTLドメインに特異的に結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
LOX-1蛋白質の野生型または変異型に結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
抗体断片である、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体が、
モノクローナル抗体である、
LOX-1結合性抗体。 - 請求項1に記載の、LOX-1結合性抗体をコードする塩基配列からなる、ポリヌクレオチド。
- 請求項11に記載のポリヌクレオチド、またはその一部を含む、ベクター。
- 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体を含む、
LOX-1および酸化LDLの結合阻害剤。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体を含む、
酸化LDLのLOX-1発現細胞内への取込阻害剤。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体を含む、
哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の治療薬。 - 請求項15に記載の治療薬において、
前記哺乳動物が、ヒト、ウサギ、またはブタいずれかの生物である、
治療薬。 - 請求項1に記載のLOX-1結合性抗体を含む、
哺乳動物の心血管疾患、動脈硬化性疾患、血栓症、血小板減少症、全身性炎症反応症候群、炎症、または血管内膜肥厚の診断薬。 - 請求項17に記載の治療薬において、
前記哺乳動物が、ヒト、ウサギ、またはブタいずれかの生物である、診断薬。 - 重鎖CDR3として、
m)配列番号4のアミノ酸配列、
n)アミノ酸配列m)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
o)アミノ酸配列m)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
p)アミノ酸配列m)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、
LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体。 - 請求項19に記載のLOX-1結合性抗体が、
ヒト、マウス、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 重鎖CDR3として、
q)配列番号5のアミノ酸配列、
r)アミノ酸配列q)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
s)アミノ酸配列q)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
t)アミノ酸配列q)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、
LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体。 - 請求項21に記載のLOX-1結合性抗体が、
ヒト、マウス由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 重鎖CDR3として、
u)配列番号6のアミノ酸配列、
v)アミノ酸配列u)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
w)アミノ酸配列u)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
x)アミノ酸配列u)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、
LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体。 - 請求項23に記載のLOX-1結合性抗体が、
ヒト、ウサギ、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、
LOX-1結合性抗体。 - 重鎖CDR3として、
y)配列番号7のアミノ酸配列、
z)アミノ酸配列y)に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
a’)アミノ酸配列y)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
b’)アミノ酸配列y)をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされるアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、
LOX-1蛋白質に特異的に結合する、LOX-1結合性抗体。 - 請求項25に記載のLOX-1結合性抗体が、
ヒト、ブタ由来のいずれのLOX-1蛋白質にも結合する、
LOX-1結合性抗体。
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