JPWO2010134551A1 - 気液混合液 - Google Patents

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Abstract

液体中に気体が長期間に亘って安定な気泡となって存在する気液混合液を提供する。水素結合を形成する分子からなる液体中に気泡が存在する気液混合液であって、液体の気泡との界面における分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの液体を構成する分子の水素結合の距離よりも短いものとする。気泡界面における水素結合の距離が短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した液体分子で取り囲むことができ、気泡を液体中に安定に存在させることができる。液体としては、水や、O−H結合、N−H結合、(ハロゲン)−H結合、S−H結合のいずれか一種以上を有する分子からなる液体、カルボキシル基を有する分子からなる液体などが用いられる。

Description

本発明は、液体中に気体が安定な気泡となって存在する気液混合液に関するものである。
従来、微細な気泡が液体中に分散された気液混合液が知られている。特に、マイクロオーダーサイズの気泡が水に混合されたマイクロバブル水や、ナノオーダーサイズの気泡が水に混合されたナノバブル水は、気泡のサイズが通常の気泡に比べて極めて小さく、そのため特異な性質を有しており、様々な分野での利用が試みられている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、液体中の微細な気泡は、溶解したり合体したりすることにより消滅しやすく液体中に安定に存在させることが難しかった。そのため、液体に気体を連続的に供給してバブリングしたり、強度の力をかけて撹拌して気泡を発生させ、その発生した気泡が消滅しないように液体を使用したりすることが行われている。また、気泡がナノオーダー程度になり、気泡のサイズが微細になればなるほど、気泡が生成しにくいと共に消滅しやすくなり、気泡を分散した液体を利用することが一層難しかった。
特許文献2〜4には、微小気泡を急激に縮小させてナノバブルを安定化させることが開示されている。これらの文献の方法では、強度の力をかけてマイクロバブルの一部を縮小させ、気液界面に吸着したイオンと静電気的な引力により、界面近傍の水溶液に引き寄せられた反対符号を持つ両方のイオンが微小な体積の中に高濃度に濃縮することにより、微小気泡周囲を取り囲む殻の働きをし、微小気泡内の気体の水溶液への拡散を阻害することによってナノバブルを安定化させている。しかし、ナノバブルを安定化させるために、気液界面において静電気的な力を生成する必要があるため電解質の存在が不可欠であり、純水など、電解性物質が溶解していない溶液などではナノバブルを安定に存在させることができなかった。
また、マイクロバブルの一部のみを縮小させるため、ナノバブルの分布量が少なく効果が得られにくいという問題もあった。さらに、気泡の周囲を取り囲んだイオンでナノバブルを安定化させているため、気泡を溶解させたり合体させたりして気泡の安定状態を制御することが容易にできず、気液混合液の利用が限定されたものであった。
また、特許文献5には、水を電気分解した後、超音波を印加することによりナノ気泡を発生させることが開示されている。しかし、水の電気分解では気体が水素と酸素に限られ、また電気分解による気体の生成量は少なく、さらに生成した気泡が安定化されていないために気泡の自己収縮と拡散・溶解が短時間で生じて、気泡を長期間に亘って安定に維持することができなかった。
特開2008−156320号公報 特開2005−245817号公報 特開2005−246293号公報 特開2005−246294号公報 特開2003−334548号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、液体中に気体が高密度で長期間に亘って安定な気泡となって存在する気液混合液を提供することを目的とするものである。
本発明の気液混合液は、水素結合を形成する分子からなる液体中に気泡が存在する気液混合液であって、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの液体を構成する分子の水素結合の距離よりも短いことを特徴とするものである。
上記の気液混合液にあっては、液体が水であることが好ましい。
また、上記の気液混合液にあっては、液体が、O−H結合、N−H結合、(ハロゲン)−H結合、S−H結合のいずれか一種以上を有する分子からなる液体であることが好ましい。
また、上記の気液混合液にあっては、液体がカルボキシル基を有する分子からなる液体であることが好ましい。
また、上記の気液混合液にあっては、気液混合液に含有されている気体の濃度が、液体の飽和溶解濃度以上であることが好ましい。
また、上記の気液混合液にあっては、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることが好ましい。
本発明の気液混合液によれば、気泡界面における水素結合の距離が短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した液体分子で取り囲むことができ、この水素結合を形成した液体分子は強固な殻となって気泡を包み込むので、気泡同士が衝突しても崩壊することがないのと共に液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗でき、気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく安定に存在させることができるものである。そして、この水素結合は長期間に亘って安定であるので、気泡が安定に存在した気液混合液を長期間に亘って利用することが可能となるものである。また、ナノオーダーサイズの気泡を、従来レベルより遙かに超えた密度で生成し気液混合液に安定して存在させることが可能となるものである。
窒素と水を用いた気液混合液と窒素飽和水との赤外吸収スペクトルの差分を示すグラフである。 気液混合液中に含まれる気体容量を示すグラフである。 走査型電子顕微鏡(SEM)による気液混合液の写真である。 気液混合液製造装置の一例を示す概略図であり、(a)は全体の概略図、(b)は一部の概略図である。 (a)〜(c)はそれぞれ、気液混合液製造装置の一部を示す概略図である。 (a)〜(d)はそれぞれ、気液混合液製造装置の一部を示す概略図である。 気液混合液製造装置の一部を示す概略図である。 気液混合液製造装置の他の一例を示す概略図である。 気液混合液を利用した気体利用システムの一例を示す概略図である。 気液混合液を利用した気体利用システムの他の一例を示す概略図である。 気液混合液における気泡の気液界面の概念説明図である。 気液混合液の安定性を示すグラフである。 気液混合液により気体を利用するモデルを示す概念説明図である。
以下、発明を実施するための形態について説明する。
本発明の気液混合液には水素結合を形成する分子からなる液体が用いられる。水素結合とは、電気陰性度の大きい原子と水素原子とを有している分子において、水素原子が他の分子の電気陰性度の大きい原子に接近し、系が安定化する結合のことである。そして、気液混合液を形成する液体中には気泡が存在し、この気泡の周囲、すなわち気泡との界面に存在する液体分子においては、分子の水素結合の距離が、この液体が常温常圧(25℃、1気圧(0.1013MPa))であるときの液体を構成する分子の水素結合の距離よりも短いものとなっている。このように、気液混合液が常温常圧の条件で存在する場合において、気泡界面における水素結合の距離が常温常圧での通常の水素結合の距離よりも短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した液体分子で取り囲むことになる。そして、この水素結合を形成した液体分子は強固な殻となって気泡を包み込む。それによって、気泡同士が衝突しても崩壊することがなくなり、また、液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗できるので、気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく保持することができるものである。つまり、従来の表面張力で安定している気泡とは異なるものである。
気液混合液に含まれる気泡の大きさとしては、特に限定されることはないが、微細なものである方が好ましく、マイクロオーダーである1000μm以下のもの(いわゆるマイクロバブル)を用いることが可能であり、またナノオーダーである1〜1000nmのもの(いわゆるナノバブル)を好ましく用いることができる。ナノオーダーサイズの気泡には実質的に浮力が働かないため、気泡が上昇して液体から分離することがないので気泡を長期に亘って安定に存在させることができるものである。この範囲より気泡が小さくても大きくても気泡を安定化させることができなくなるおそれがある。なお、気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができ、気泡の平均粒径は、測定によって得た気泡の粒径を平均して求めることができる。ところで、マイクロバブルが混合された液体は白濁するため目視により判別可能であるが、ナノバブルが混合された液体は無色透明(あるいは液体が有色の場合は液体の色)になり目視では判別することができない。
気液混合液に好ましく用いられる液体の一つは水である。水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に水素結合を形成するものであり、気液混合液の液体として水を用いると、気泡界面において液体中のこの水素結合が強固になって気泡をより安定化させることができる。また、水は、供給源が豊富で安定して得ることができ、また人体に安全で、さらに、気泡が分散した水は応用範囲が広いので、利用価値の高い気液混合液を得ることができるものである。本発明において、水としては純度の高い水に限られることはなく、上下水道、池、海水などをはじめ、あらゆる水を使用することが可能である。すなわち、液体として水を含むものであれば良い。
このように、気液混合液にあっては、液体が水であることが好ましい形態の一つである。その場合、水分子が形成するO…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間の結合が強固になって気泡をより安定化させることができると共に、気泡が分散した水は応用範囲が広いので、利用価値の高い気液混合液を得ることができるものである。
また、液体が、O−H結合、N−H結合、F−H結合やCl−H結合などの(ハロゲン)−H結合、S−H結合のいずれか一種以上を有する分子からなる液体であることも好ましい。これらの結合は、水素原子に対して電気陰性度が十分に大きい原子と水素原子との結合であり、O−H…O、N−H…N、F−H…FやCl−H…Clなどの(ハロゲン)−H…(ハロゲン)、S−H…Sといった強い水素結合を形成し、この水素結合により気泡を取り囲んで気泡を安定化させることができるものである。O−H結合を有する代表的な液体は水であるが、その他、過酸化水素やメタノール、エタノールなどのアルコール、グリセリンなどを例示することができる。また、N−H結合を有する液体としては、アンモニアなどを例示することができる。また、(ハロゲン)−H結合を有するものとしては、F−H結合を有するHF(フッ化水素)、Cl−H結合を有するHCl(塩化水素)を挙げることができる。また、S−H結合を有するものとしてはHS(硫化水素)を挙げることができる。
このように、気液混合液にあっては、液体が、O−H結合、N−H結合、(ハロゲン)−H結合、S−H結合のいずれか一種以上を有する分子からなる液体であることが好ましい形態の一つである。その場合、O−H…O、N−H…N、(ハロゲン)−H…(ハロゲン)、S−H…Sといった強い水素結合により気泡を取り囲んで安定化させることができるので、安定に気泡が存在した気液混合液を得ることができるものである。
液体がカルボキシル基を有する分子からなる液体であることも好ましい。カルボキシル基には、電気陰性度が大きいカルボニルの酸素原子が存在しており、あるカルボキシル基中のカルボニルの酸素原子と他のカルボキシル基中の水素原子とが強い水素結合を形成して気泡を取り囲むので、安定に気泡が存在した気液混合液を得ることができるものである。カルボキシル基を有する分子からなる液体としては、ギ酸、酢酸などのカルボン酸などを例示することができる。
このように、気液混合液にあっては、液体がカルボキシル基を有する分子からなる液体であることが好ましい形態の一つである。その場合、カルボキシル基中の酸素原子と他のカルボキシル基中の水素原子とが強い水素結合を形成して気泡を取り囲むので、安定に気泡が存在した気液混合液を得ることができるものである。
気液混合液に用いる気体としては、特に限定されるものではなく、種々の気体を用いることが可能である。例えば、空気、二酸化炭素、窒素、酸素、オゾン、アルゴン、水素、ヘリウム、メタン、プロパン、ブタンなどの気体を単一で又は混合して用いることができる。
気液混合液に含有されている気体の濃度は、液体の飽和溶解濃度以上であることが好ましい。飽和溶解量又はそれを超える多量の気体を液体中に保持すれば、液体中に含有された高濃度の気体を利用することができ、気液混合液の利用価値を高めることができるものである。さらに好ましくは、気液混合液の液体中には飽和溶解量の気体が溶解しており、その飽和溶解液に気泡が存在しているものである。飽和溶解量で気体が溶解していれば、気泡となった気体を溶解させることなく安定化して気泡として液体中に保持することがより可能となるものである。すなわち、飽和溶解量以上に気体が存在する気液混合液は、液体中に飽和濃度で気体が溶解しており、気泡が崩壊したり溶解したりすることがなく、より安定に気泡を液体中に存在させることができるものである。このように気液混合液に含有されている気体の濃度が高くなると、水素結合の距離を短くした状態で気泡を安定化することができ、また各種の活性(生理活性、洗浄力等)の作用が強力になって、利用価値をさらに上げることができるものである。気液混合液中の気体量は、後述の実施例で示すように気液混合液から気体を分離し、質量変化量から算出することができる。
このように、気液混合液にあっては、気液混合液に含有されている気体の濃度が、液体の飽和溶解濃度以上であることが好ましい。その場合、飽和溶解量又はそれを超える多量の気体を液体中に保持することにより、気泡界面で距離の短くなった水素結合を安定化させると共に、液体中に含有された高濃度の気体を利用することができ、気液混合液の利用価値を高めることができるものである。
また、上記の気液混合液にあっては、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることが好ましい。その場合、気泡が高い内部圧で維持されることによってより強固な界面構造を形成することができ、静置状態においては安定な気泡を形成すると共に、一旦、気液混合液に衝撃が加えられると、内部圧の力により水素結合で形成された液体の殻が崩壊して、気泡が合体して発泡するため、この発泡を利用することができ、気液混合液の利用価値を高めることが可能となるものである。
このように、気泡を形成している気体の圧力、すなわち気泡の内圧は0.12MPa以上であることが好ましいものであるが、さらにヤングラプラスの式(次式)で与えられる気泡の内圧より高い圧力であることが好ましい。
ヤングラプラスの式
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]

気泡の内圧がこのような圧力になると気泡がさらに高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができる。一方、一旦、気液混合液に衝撃が加えられると、内部圧の力の均衡が崩されて水素結合が形成された液体の殻が崩壊し、気泡が合体し発泡して液体中から抜け出ようとするため、この発泡を利用することができるものである。気液混合液中の気泡の内圧は、後述の実施例で示すように気液混合液中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
気泡との界面における液体分子の水素結合の距離としては、用いる液体により適宜設定され得るものであるが、常温常圧での水素結合の距離を100%とした場合に、99%以下であることが好ましい。水素結合の距離がこの範囲になることにより、気泡を水素結合の硬い殻で取り囲んで安定化させることができるものである。水素結合の距離がこれより長いと気泡を安定化させて存在させることができなくなるおそれがある。原子間距離を考慮すると、水素結合の距離の下限は95%である。気液混合液中の気泡界面における水素結合の距離は、後述の実施例で示すように、気液混合液の赤外吸収スペクトル(IR)を解析することにより算出することができる。
ところで、水素結合の距離が上記の距離にある水は、通常、氷やハイドレート結晶構造になるものであるが、本発明の気液混合液においては、気泡界面において局所的に上記のような距離の短い水素結合を形成し、それ以外の液体中は通常の水素結合を形成している。すなわち、気泡界面では距離の短い水素結合により液体分子の硬い殻を形成して、気泡同士が合体することや消滅することを防止すると共に、気泡界面以外では通常の状態で液体が存在して常温常圧では流動性を確保しており、安定な気泡が存在している液体を利用しやすくするものである。
また本発明の気液混合液は、液体として水を用いた場合、ゼータ電位がマイナスとなり、例えば、後述の実施例では、体積1cm中に存在する気泡界面の面積は0.6乃至1.2m程度となる。このような特性を各分野で利用することも可能である。
次に、本発明の気液混合液の製造について説明する。
気液混合液の製造にあっては、気体が注入された液体を0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP/t(ΔP:圧力増加量、t:時間)で加圧する。その際、加圧により液体の圧力を0.15MPa以上にする。その後、該液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP/t(ΔP:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が混合された液体を生成することができる。
図4は、気液混合液を製造する装置の一例を示す概略図である。この気液混合液製造装置は、液体を圧送して連続的に気液混合液を製造する装置であり、液体貯留槽12から大気圧(0.1MPa)で保持されている液体を取り出し圧送して加圧する加圧部1と、液体に気体を供給する気体供給部2と、供給された気体を微細な気泡にして液体と混合させる気液混合部3と、気液混合部3中の液体に存在する大きな気泡を除去する脱気泡部4と、脱気泡部4により大きな気泡が取り除かれた液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させる減圧部5と、減圧された液体を吐出する吐出部7とを備え、各部は流路6に接続して設けられている。
加圧部1は気液混合部3に液体を圧送するものであり、例えば、この装置のように、液体貯留槽12から液体を吸い上げるポンプ11などで構成できるが、水道配管等、液体を加圧して送り出す配管などで構成することもできる。気体供給部2は、流路6に接続されることにより液体に気体を供給するものであり、例えば気体として空気を供給する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路6に接続して気体供給部2を形成することができる。あるいは気体として酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路6に接続して気体供給部2を形成することもできる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部2をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。流路6への気体供給部2の接続位置は、気液混合部3よりも上流側の位置であればよく、この装置のように加圧部1より上流側の流路6に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路6に接続するようにしてもいずれでもよい。
気液混合部3は圧送された液体とこの液体に供給された気体とを混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできる。この装置のように気体供給部2が加圧部1より上流側の流路6にある場合は、ポンプ11などで構成された加圧部1を気液混合部3と兼用してもよい。
気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。また、気液混合部3をベンチュリ管で構成することも好ましい。その場合、簡単な構成で液体を急激に加圧・混合することができる。
気液混合部3内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に結合距離が短くなった水素結合が形成され、この水素結合の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。
上記のような加圧部1及び気液混合部3により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には液体分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP/t(ΔP:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から脱気泡部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
図4(b)は、ポンプ11の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ11aは回転体21の回転により液体を加圧するものであり、回転体21に取り付けられた回転翼22が連続的に回転してポンプ入口26からポンプ流路室23を介してポンプ出口27への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図において白抜き矢印は液体の流れ方向を示し、実線矢印は回転体21の回転方向を示している。このポンプ11aでは4枚の回転翼22が備えられている。また回転体21の回転軸25は、円筒状に形成されたポンプ壁24の円筒中心よりもポンプ出口27側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸21の偏心によりポンプ流路室23の第二流路室23bの容積は、第一流路室23aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室23の容積が順次小さくなっている。
そして、ポンプ流路室23に送り出された液体は、回転翼22で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡Bが細分化されて微細なナノサイズの気泡Bが生成される。すなわち、回転体21の回転と共に第一流路室23aから第二流路室23bに送られた液体は、ポンプ流路室23の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力によりナノサイズの気泡Bが生成される。また、図示のポンプ11aでは、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡B)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細なナノサイズの気泡(B)になる。ここで、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離Lは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体21を用いたポンプ11aによれば、回転体21で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断してナノサイズの気泡を形成することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液をより確実に生成することができるものである。
ポンプ11の回転体21の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度以上の気体を液体に注入させて水素結合距離が短縮したナノサイズの気泡を確実に生成することができるものである。
加圧部1及び気液混合部3による加圧は、加圧部1又は気液混合部3を複数設けて、複数回加圧することができる。液体を送りながら複数回加圧することにより、加圧を複数のポンプ11やベンチュリ管によって行うことができ、液体を強力に加圧して、気泡界面の構造が強固な気液混合液を生成することができるものである。具体的には、加圧部1を図4のようにポンプ11で構成すると共に、気液混合部3を一つ又は二つ以上のポンプ11又はベンチュリ管で構成することができるものである。
脱気泡部4は上記のようにして気体が混合された液体から、比較的大きな気泡を取り除くものであり、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので、この除去された気体を気体除去部8により取り除くことができる。浮力により上昇する気泡としてはマイクロオーダーサイズ、すなわち直径1μmを超えるサイズの気泡であり、このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固な気液混合液を得ることができるものである。
脱気泡部4としては、具体的には、図5のような構成にすることができる。(a)は、気液混合部3と連続して地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、気液混合部3と連続すると共に気液混合部3と合わせた形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、気液混合部3とは別体にし、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。
減圧部5は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部5を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部5で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。減圧部5は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP/t(ΔP:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を取り出すことができるものである。
減圧部5としては、図6のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路6や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路6や、(c)のように加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P、P、・・・)大気圧(P)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路6や、(d)のように流路6に設けられた複数の圧力調整弁9などにより構成することができる。
例えば図6(a)又は(b)のような減圧部5を用いた場合、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmにし、減圧部5を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部5は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部5に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、最高減圧速度2000MPa/sec以下で、ナノサイズの気泡を消滅させることなく1.0MPa減圧することができ、気液混合液を大気圧にまで減圧することができるものである。
吐出部7は、減圧された液体を吐出するものである。なお、図7のように、この吐出部7と減圧部5との間に、加圧部1における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路10を設けることもできる。すなわち、減圧部5を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部1からの押し込み圧によって気液混合部3内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路10を流路6に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路10を設ければ気泡を安定化させたまま気液混合液を吐出することができるものである。
上記のように構成された気液混合液製造装置にあっては、加圧部1で液体を圧送し、気体供給部2により液体に気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、加圧部1及び気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP/t(ΔP:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から脱気泡部4へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、脱気泡部4で気液混合液中のナノサイズを超える気泡を取り除いた後、該液体を減圧部5及び下流側の流路6に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP/t(ΔP:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を生成することができ、本発明の気液混合液を得ることができるものである。
気液混合部3における圧力は適宜設定され得るものであるが、絶対圧0.1MPa(大気圧)を超えることが好ましい。それにより、水素結合の距離を確実に短くすることができる。また気液混合部3よりも下流側の流路6は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気液混合液を吐出することができ、細路により流路6を構成する場合のような配管の詰まりを防止して、気液混合液を利用しやすくすることができる。
図8は、気液混合液を製造する装置の他の一例を示す概略図である。この気液混合液製造装置は、加圧部1と気液混合部3とが兼用されて気液混合槽13として構成されており、この気液混合槽13において気体が供給された液体を0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP/t(ΔP:圧力増加量、t:時間)で加圧して、液体の圧力を0.15MPa以上にすることにより界面構造の強固な気泡が含有される気液混合液をバッチ式で生成し、この気液混合液から大きな気泡を脱気泡部4で取り除いた後、この気液混合液を減圧部5に送り出してその圧力を最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP/t(ΔP:減圧量、t:時間)で大気圧まで減圧し、吐出部7から気液混合液を吐出するようにしたものである。閉鎖系である気液混合槽13にはバッチ式で液体と気体とが送り出されて加圧されるとともに、気液混合槽13に設けられた撹拌翼14などにより撹拌されて液体Lqと気体とが高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に結合距離が短くなった水素結合が形成され、この水素結合の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。そして、生成した気液混合液を図4の装置と同じように構成された脱気泡部4、減圧部5及び吐出部7に送り出すことにより、本発明の気液混合液を得ることができるものである。
次に、気液混合液中の気体を利用する「気液混合液の利用方法」について説明する。
本発明の気液混合液は、上記のように、気泡が水素結合の殻で覆われたものであるが、この水素結合の殻は外力によって崩壊するものであり、外力を付与することにより気体を発生させ、この発生した気体を種々の用途に利用することができるものである。すなわち、水素結合の強固な殻で気体が包み込まれ、安定に液体中に保持された気泡は内圧が高くなっており、外力が与えられると気泡が崩壊して気体を発生させて液体に溶解したり液体から放出したりする。この発生した気体を種々の用途に利用するこができるので、大量の気体を液体中に保持することができると共に、液体から効率よく気体を発生させて利用することができるものである。
気液混合液に与える外力としては、温度を変化させる温度制御や、超音波、赤外線、マイクロ波の照射などが挙げられる。これらの外力を付与することによって、気液混合液中の気体を効率よく発生させることが可能である。
図9は、気液混合液を利用した気体利用システムの一例である。気体利用システムは、液体中に気体がナノサイズの気泡になって存在する気液混合液を生成し、その気液混合液から気体を発生させて、気泡となって存在する気液混合液中の気体を液体に溶解したり放出したりして、気体を利用するものである。
この気体利用システムでは、気体がナノサイズの気泡となって液体に混合された気液混合液を生成する気液混合液生成装置30と、気液混合液生成装置30によって生成された気液混合液に外力を与え、気泡を崩壊させて気体を液体に溶解したり液体から気体を発生させたりする外力供与部31とを備えている。気液混合液生成装置30と外力供与部31とは連続して配置されており、そのため、この気体利用システムでは、気液混合液の生成と気体の利用とを簡単に行うことができる。
気液混合液生成装置30は、気液混合液を生成するものであり、図4や図8の気液混合液製造装置と同様の構成のものを用いることができる。図示では気液混合液を連続して生成する図4の装置とほぼ同じ構成の装置となっているが、図4の装置と異なっている点について説明する。
この気液混合液生成装置30は、流路6を装置外部にある液体供給源16に接続する配管連結部18を備えている。この配管連結部18は、開閉して水量や水圧を調節できる調節弁などによって構成されるものである。また、液体供給源16は液体貯留槽12や水道配管16aなどによって構成されている。また、加圧部1と気液混合部3とは同体となってポンプ11により構成されている。また、気体除去部8と気体供給部2との間には気体返入部15が設けられている。気体返入部15は、気体除去部8からの気体を気体供給部2に返して再び入れるためのものであり、気体を送る管体などで形成されるものである。図示の形態では、気体返入部15は気体供給部2の気体経路に接続してある。このように気体返入部15を設けることにより、気泡にならなかった気体を捨てることなく有効利用することができ、しかも気体として有害なものや危険なものを用いた場合には気体が外部に漏れて環境を汚染したり危険を招いたりすることを防ぐことができるものである。
外力供与部31は、気液混合液生成装置30によって生成された気液混合液に外力を与え、気液混合液中の気泡を崩壊させて気体を発生させて、気体を液体に溶解したり液体から気体を放散させたりするものである。液体中に気泡となった気体をそのまま用いて洗浄や殺菌や酸素供給などに利用しようとしても、気体が気泡となっているために気体が対象物と接触せず、所望の効果が得られない可能性がある。また、気体は気泡となって安定に存在しているのでそのままの状態では気体を取り出すことができない。しかし、この外力供与部31で外力を与えることにより、液体中に気泡となって保持された気体が液体に多量に溶解し、また、ナノサイズの気泡が合体してマイクロサイズ以上の気泡となった気体が液体から放出し、この溶解したり放出したりした気体を利用することができるものである。
図9の形態では、外力供与部31は、気液混合液を貯留する容器33と気液混合液に外力を付与する外力付与手段32とを備えて構成されており、気液混合液生成装置30で生成したナノサイズの気泡を含む気液混合液は、容器33に所望量バッチ式で送られる。外力付与手段32としては、温度制御、超音波、赤外線、マイクロ波、撹拌などの手段を用いて気液混合液に外力を衝撃として与えるものにすることができる。例えば、外力付与手段32としては、温度制御手段を用いる場合はヒーターなどの加温器や冷却熱交換器で構成し、超音波を用いる場合は超音波振動子で構成し、赤外線を用いる場合は赤外線照射器で構成し、マイクロ波を用いる場合はマイクロ波発振子で構成することができる。
温度制御で外力を与える場合、気液混合液を加温したり冷却したりして気液混合液の温度を変化させる。
加温により外力を与える場合、ヒーターなどの加温手段をオンにして常温常圧で貯留された気液混合液の温度を上昇させる。温度が上昇された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また気体が液体から放出するものである。加温する温度としては、気体発生の速度に合わせて適宜に設定し得るものであるが、例えば、急激に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、貯留している気液混合液を10〜30℃程度以上に上昇するように加温し、徐々に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、貯留している気液混合液を1〜10℃程度以上に上昇するように加温する。
また、冷却により外力を与える場合、冷却熱交換器をオンにして常温常圧で貯留された気液混合液の温度を低下させる。温度が低下された気液混合液は、冷却により気体の飽和溶解濃度が上がり気泡が崩壊して液体に気体がより多く溶解するようになる。冷却する温度としては、例えば、気液混合液の温度が1〜30℃程度で温度が低下するように冷却する。また、加温と冷却を交互に行って外力を与えてもよい。
このように、温度制御により気体を発生させることにより、簡単に気体を発生させて利用することができるものである。すなわち、気液混合液を常温で製造した場合には、気液混合液を加温や冷却することによりナノサイズの気泡を崩壊させて気体を溶解したり放出したりすることができる。また、気液混合液を低温状態で製造した場合には、この気液混合液を常温に戻すことによりナノサイズの気泡を崩壊させて気体を溶解したり放出したりすることができる。したがって、気液混合液の温度をコントロールするだけで気体の保持と発生を制御することができるものである。
また、超音波により外力を与える場合、超音波発生器をオンにすると超音波振動子から気液混合液に超音波振動が与えられ、振動された気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。超音波の周波数としては、周波数16KHz以上2.4GHz未満であることが好ましい。周波数の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
このように、超音波で外力を与えることにより、気体を簡単に発生させて利用することができるものである。また、超音波はオンとオフの切替を容易に行って外力を瞬時に与えることができ、気液混合液中の気体を必要な量や時間だけ得ることが可能であり、また、超音波の強力な衝撃により気体を急激に発生させることが可能であり、気体の発生を簡単に制御することができるものである。
また、赤外線により外力を与える場合、赤外線照射器をオンにすると照射口から気液混合液に赤外線が与えられ、赤外線が照射された気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。赤外線の波長としては、波長3〜1000μmであることが好ましい。波長の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
このように、赤外線で外力を与えることにより、気体を簡単に発生させて利用することができるものである。また、赤外線はオンとオフの切替を容易に行うことができ、気液混合液中の気体を必要な量や時間だけ得ることが可能となるものである。また、赤外線により気体を徐々に発生させることが可能であり、気体を持続して発生させて利用することができるものである。
また、マイクロ波により外力を与える場合、マイクロ波発生器をオンにするとマイクロ波発振子から気液混合液にマイクロ波の振動が与えられ、振動波を与えられた気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。マイクロ波の周波数としては、周波数915KHz、2.4〜2.5GHz、5.7〜5.9GHzのいずれかであることが好ましい。周波数の範囲がこの範囲を外れると気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
このように、マイクロ波で外力を与えることにより、気体を簡単に発生させて利用することができるものである。また、マイクロ波はオンとオフの切替を容易に行うことができ、気液混合液中の気体を必要な量や時間だけ得ることが可能となるものである。また、マイクロ波により気体を徐々に発生させたり、急激に発生させたりすることが可能であり、気体の発生を簡単に制御することができるものである。
気液混合液にあっては、上記のように、温度制御、超音波、赤外線、マイクロ波などといった外力付与手段32を用いて気液混合液の気泡を崩壊させることによって、気泡として存在している大量の気体をこれらの手段で瞬時に多量に液体に溶解させたり、液体から放出させたりすることができ、簡単に効率よく気体を発生させて利用することができるものである。
なお、図示の形態では、外力付与手段32は気液混合液に接触して設けられているが、外力付与手段32を容器33の外側に設けて容器33の外側から非接触で容器33内部の気液混合液に外力を与えるようにしてもよい。
外力付与手段32による外力の付与は、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。連続的に外力を与える場合は、気液混合液中の大量の気体を一気に発生させて利用することができる。一方、断続的に外力を与える場合は、気体を徐々に溶解したり放出したりすることができ、液体中の気体を持続して利用することができる。
図9のシステムでは、利用したいタイミングで気液混合液に外力を与えて気体を溶解したり放出したりして、オゾンによる殺菌や、精密部品の洗浄や、生体への酸素の供給などに利用することができる。また、気液混合液で気体を長期に閉じ込め、利用したいタイミングで外力を与えて気体を液体から取り出して利用することができ、気体の保存、貯蔵、運搬などに用いることができる。
図10は、本発明の気液混合液を用いた気体の利用方法の実施の形態の他の一例を示す概略図であり、気体利用システムの一例が示されている。このシステムは、気体がナノサイズの気泡となって液体に混合された気液混合液を冷却状態で生成する気液混合液生成装置30と、冷却状態の気液混合液を貯留する容器33とを備えるものである。
気液混合液生成装置30は、図9の装置のものに加えて、液体冷却部17が配管連結部18と気体供給部2との間の液体流路に設けられている。また、このシステムでは、図9のシステムと異なり、外力付与手段32を容器に備えていない。液体冷却部17は、例えば、流路6に冷却熱交換器を巻き付けて取り付けるなどして形成してある。液体供給源16から送られた液体は液体冷却部17で冷却され、冷却された状態のまま気液混合液が生成される。すなわち、気液混合液は常温よりも温度が低い状態で生成される。そして、この冷却状態の気液混合液を吐出部7から容器33に吐出して貯留する。冷却温度としては、液体の温度が常温以下となるようにする程度であればよく、例えば、0〜25℃にすることができる。気液混合液の貯留は、冷却状態を保つように冷却して貯留してもよいし、冷却状態を維持せずに貯留してもよい。冷却したまま貯留すると、気泡を長期に安定に保持することができる。気液混合液を容器33に貯留したまま気体を利用してもよいし、人体や洗浄物などの対象物に気液混合液を吹きつけたりして利用してもよい。そして、外気温や対象物の温度により気液混合液の温度が上昇して液中の気泡が崩壊して気体が溶解し、またマイクロサイズ以上の気泡となって気体が放出する。この発生した気体を種々の用途に利用するものである。
このシステムにあっては、冷却状態の気液混合液が対象物と接触して、対象物の温度で気液混合液の温度を変化させ、対象物の直近で気体が溶解したり発生したりして、気体を利用することができるので、気体利用の効率を向上することができるものである。また、冷却状態の気液混合液を冷却したまま保存しておき、この保存された気液混合液を対象物に与えることもできる。その場合、装置を移動することなく、気液混合液を利用したい場所に移動させて利用することができ、簡単に気体を利用することができる。
上記の気液混合液を用いた気体の利用方法にあっては、気液混合液生成装置30から生成した気液混合液を容器に入れてそのまま外力を付与する気体利用システムを用いた方法を説明したが、気体の利用方法は上記の気体利用システムを用いた方法に限られるものではない。例えば、製造した気液混合液を貯蔵しておき、必要なときに気液混合液を取り出し、外力を付与して気体を発生させるようにしてもよい。
本発明の気液混合液は、二酸化炭素、窒素、酸素、オゾン、アルゴンなどの気体を微細な気泡として液体中に保持するものであり、これらの気体を高濃度で安定に液体中に存在させることができるので、環境分野、製造・産業分野、エネルギー分野、農林水産分野、食品分野、家庭用分野、医療分野や、その他の各種の分野において利用することができるものである。
例えば環境分野では、海、河川、湖、池、ダム湖等の閉鎖水域に、酸素が気泡となって高濃度で存在する気液混合液を供給することによって、水域における酸素存在量を高めて水浄化を行なうことができるものであり、同様に浄化槽、下水道施設、し尿処理施設において、酸素供給に利用することができる。また土壌への酸素供給によって有害物質や油汚染等を処理することができる。
製造・産業分野では、酸素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を噴射や浸漬することによって、精密部品の洗浄などに利用することができる。また、工場排水処理施設に、酸素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を供給することによって、酸素量の向上による排水処理を行なうことができ、あるいはオゾンの気泡が高濃度で存在する気液混合液を供給することによって、排水をオゾン処理することができる。また食品工場での発酵食品の発酵と培養促進のための、酸素供給に利用することができる。また業務用浴場、プール、水族館等の循環水ろ過システムへの酸素やオゾンの供給に利用することができ、工場の塗装工程循環水、工場の洗浄工程循環水、冷却循環水への酸素やオゾン供給による浄化に利用することができる。さらに工場等で発生した有毒ガスを気泡として水に混合させることにより気液混合液を生成して、この高濃度の有毒ガスが存在する気液混合液を処理することにより有毒ガスを処理することもできる。
エネルギー分野では、天然ガス、メタン、ブタン、エタン、プロパン等の炭化水素、酸素、窒素、水素、オゾンなどを気泡として液体中に存在させることにより、これらの気体を安定して高濃度に保持することができる。そして、このような気液混合液を冷却又は圧縮するなどして固形化又はスラリー化することによりガスハイドレートを生成し、このガスハイドレートにより、ガスの運送、生鮮食料品の保存と運搬、植物栽培、炭酸飲料への利用や、燃料としての利用を図ることができる。
農林水産分野では、農業排水、水産排水、畜産排水に酸素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を供給することによって、酸素存在量を向上させて水浄化や汚物の浮上分離に利用することができる。また酸素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を農業用水や水産用水として用いることによって、植物の発芽促進や成長促進、魚介類の成長促進を図ることができる。さらに生簀に高濃度で酸素の気泡が存在する気液混合液を供給することによって、活魚輸送などの際の酸素供給を行なうことができる。また、農業廃水処理にも利用することができる。
食品分野では、酸素や二酸化炭素などの気泡が存在する気液混合液を食品加工水や食品洗浄水として利用することができ、また、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性気体の気泡が存在する気液混合液を用いて食品の腐敗防止などに利用することができる。
家庭用分野では、生活排水の浄化槽などに酸素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を供給することによって、酸素量の向上による排水処理を効率良く行なうことができる。また二酸化炭素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を浴槽に供給することによって、炭酸ガス風呂を形成することができる。また、気液混合液を飲料用に、美容用に利用することができる。
医療分野では、酸素の気泡が高濃度で存在する気液混合液や、二酸化炭素の気泡が高濃度で存在する気液混合液を、飲料用、癌治療用、結石破壊用などに利用することができる。
その他の分野では、飲料用の酸素水、飲料用の炭酸水として気液混合液を利用することができる。さらに殺菌用、脱色用、脱臭用、有機物分解用など多分野で使用されるオゾン水として気液混合液を利用することができる。
以下、本発明を実施例により説明する。
〔実施例1〕
[気液混合液の製造]
図4の装置を用いて、液体として純水を用い、気体として後述する各種の気体を用い、気液混合液を生成した。
気液混合装置としては、加圧部1と気液混合部3とがポンプ11で兼用されて構成されたものを用いた。ポンプ11としては回転体21により加圧する図4(b)のようなポンプ11aを用いた。
気体と液体の比(液体に対する気体の注入量)は、容量比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ11の回転体21の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部3から脱気泡部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されて水素結合距離が短くなり強固な気泡界面の構造が形成されるものと考えられる。この条件(加圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
また、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmのものにした。減圧部5としては図6(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部5の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部5よりも下流側の流路6及び延長流路10として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路6と延長流路10とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部5において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で気液混合液を減圧し、さらに、下流側の流路6及び延長流路10において、1MPa/sec、時間0.5秒で気液混合液を減圧し、ホース先端部である吐出部7から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された気液混合液が得られた。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されると共に水素結合距離が短くなり気泡界面の構造が強固になった気液混合液を安定して生成することができるものと考えられる。この条件(減圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
[水素結合の距離]
図1は、液体として純水、気体として窒素を使用した気液混合液(窒素混合水)と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH伸縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように本発明の気液混合液はOH伸縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。
[気体量]
液体として純水を、気体として窒素、水素、メタン、アルゴン、二酸化炭素のいずれかを使用し、この気液混合液中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。気液混合液の製造は、上記と同様に気液混合液製造装置を用いて行った。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
図2は、このようにして測定された気体容量を示すグラフである。各棒グラフの下部領域は、測定された気泡として存在していた気体の量であり、上部領域はヘンリー則に従う気体の飽和溶解量である。グラフに示すように、例えば水素と水を用いた気液混合液の場合、25℃の純水1Lに水素が、飽和溶解量として17.6mL溶解し、528mLの気体が微細な気泡として存在することが確認された。すなわち、気液混合液に含有する気体量は飽和溶解量の30倍であった。また同様に、飽和溶解量に対して気液混合液に含有する気体量は、窒素では36倍、メタンでは17倍、アルゴンでは16倍、二酸化炭素では1.9倍であった。このように、気液混合液は飽和溶解濃度以上の高濃度で気体を液体中に保持することが可能であり、この高濃度の気液混合液を各種の分野に利用することができるものである。
[気泡のサイズ]
上記と同様にして製造した気液混合液を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
図3は、窒素と純水の気液混合液について、SEMにより観測された写真の一例である。同様に写真観察することにより、気体として窒素、水素、メタン、アルゴン、二酸化炭素を用いた場合、いずれも気液混合液の気泡サイズは、直径の分布ピークが100nmであることが確認された。なお、上記の気体と純水の気液混合液の気泡はレーザーを用いた動的散乱法等の粒子径分布測定装置では正確な検知ができなかった。
[気泡の内圧]
気液混合液中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素、メタン、又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
気泡における気体の内部圧力は次の方法で算出される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
そして、気液混合液の密度から気液混合液中の気泡の容積が計算でき、上式から、
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
例えば気体が窒素の場合、
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
w1 + w2 =1リットル (式A)

また、質量については次の関係式が成り立つ。
w1 × 水の密度 + w2÷22.4(リットル)×28(分子量)=測定質量 (式B)
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3

上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、

気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
なお、上記の計算では、気泡の内部温度が一定(常温)であるとして考えたが、実際の気泡の内部温度は大気の温度(常温)よりも高いことも予想され、その場合、気泡の内部圧は上記算出結果より更に高いことが気体の状態方程式から予測できる。
ところで、一般には、気泡の内圧は次のようにして算出される。気泡は気液相界面間の界面張力により加圧され、この界面張力はヤングラプラスの式(下記式)で導かれる。
ΔP=2σ/r
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
一方、気液混合液中の内部圧力は、表1の通り、例えば窒素の場合6.3MPaであり、この気液混合液はSEM写真にて示されるように直径100nmサイズの気泡が分散しているものであることから、気液混合液の気泡は、ヤングラプラスの式から算出される値の約2倍以上の内部圧力を有していることが確認された。したがって、より強固な界面構造が気泡界面において形成されていると結論づけられた。
Figure 2010134551
図11は、気液混合液が安定化されるメカニズムを説明する概念説明図である。図示のように、気泡Bと液体Lqの界面には水素結合距離が通常よりも短い氷やハイドレートのような強固な水分子の結合で境膜構造(結晶構造体)の保護膜Mが形成されており、気液相互の物質移動が抑制されて気泡が安定な状態になったものと考えられる。そして、窒素、メタン、アルゴンの気液混合液内の気泡(ナノバブル)の内圧は、ヤングラプラスの式から求められる圧力よりも高くなっており約2倍以上である。このように気泡界面の水素結合距離が短く、気泡の内圧が高くなることによって、気泡が安定した気液混合液となるものである。また、気泡の内圧が高いために内圧を上昇させる外力を与えると気泡が崩壊しやすく、気泡を容易に崩壊させて気体を溶解・放出することができ、気体を利用することができるものである。
[気泡の分布量]
気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
気体が窒素の場合、大気中(0.1MPa)に戻した気泡総量が0.56Lであり、気泡の内圧が6.3MPaであるので、水中での気泡総体積量V1は、等温変化と仮定し、PV=constより
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
また、気泡は半径r=50nmの球体であるから、気泡1個当たりの体積V2は
V2=4/3×π×r^3
となる。
以上より、水1L当たりの気泡の個数n=V1÷V2=1.7×10^16個と算出される。
同じように水1L当たりの気泡の個数は、気体がメタンの場合は1.8×10^16個、アルゴンの場合は1.7×10^16個と算出される。
なお、「^」は「乗」の記号であり、例えば「10^n」は、「10n」(10のn乗)のことである。
[気液混合液の安定性]
図12は、空気を純水に混合させて生成した気液混合液について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過してもほぼ一定(6程度)であり、ほとんど変化していないことが分かる。液体には飽和濃度で気体が溶解しているため、飽和濃度を超える気体は気泡になっているものと考えられる。よって、本発明の気液混合液が安定であることが確認された。
[加温による外力]
上記のように製造した気液混合液をヒーターにより加温し、気液混合液の温度を25℃から40℃に昇温すると、温度の上昇に伴ってナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
図13は、気液混合液中の気泡が崩壊するメカニズムを説明する概念説明図である。この図では、気体としてオゾン(O)を用いた場合を示している。ナノサイズの気泡Bは、気液混合液中では(a)のように安定に存在しているが、(b)のように温度制御、超音波、赤外線、マイクロ波等により外力が衝撃として与えられると気泡が崩壊する。その際、気泡の中に存在していた多量の気体は瞬時に液体に溶解し、気体飽和溶解液が生成する。また、気泡が衝突により合体してマイクロサイズ以上の気泡となって浮力によって上昇して気体を放出する。このように気液混合液によれば、多量の気体を気液混合液に蓄えることが可能で、この多量の気体を利用したいタイミングで溶解させたり放出したりして利用することができるものである。
[超音波による外力]
上記のように製造した気液混合液に、40kHzランジュバン型振動子を用い出力100Wで超音波を照射した。時間0.05秒程度の瞬間照射で、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が瞬間的に発生した。数秒間(0.5〜30秒程度)超音波を照射することにより、ほぼ全てのナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が急激に発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
同様に100、200、400、800kHzの超音波発生器で超音波を照射した場合も液体表面から気体が放出されるのが確認できた。一方、2.4GHzの超音波照射では気体の放出が確認できなかった。
[マイクロ波による外力]
2450MHz帯の出力300W〜300kWのマイクロ波電力応用装置を使用し、数秒間(0.1〜20秒程度)照射したところ出力全域で液体表面から気体が放出されるのが確認された。
マグネトロンによるマイクロ波の照射では、液体分子の分子間の振動子が振動エネルギーを吸収し振動するためにエネルギー準位が上がり、水素結合が切れる状態が発生し、気体が放出されると考えられる。周波数915KHzまたは5.7〜5.9GHzのマイクロ波においても気泡の界面の水素結合が不安定になり気泡が崩壊し、液体表面から気体が放出されると考えられる。
[赤外線による外力]
特に波長3μmから1mmまでの遠赤外線は気泡界面で電磁波を吸収し、熱エネルギーが与えられるため強固な水素結合の結合距離が長くなるとともに気泡内部温度が上昇する。このため、気泡が当然に崩壊するのであり、遠赤外線にて気泡を崩壊させ、液体表面から気体を放出できる。
〔実施例2〕
[冷却状態の気液混合液]
図10の気液混合液生成装置30を用い、冷却状態(5℃)で空気と水とを用いた気液混合液を生成した。この気液混合液を常温常圧で大気と接触するように容器に貯留し放置すると、水に対する気体の飽和溶解濃度が1週間以上維持できることが確認できた。すなわち、溶解している気体が液体から徐々に放出されてもナノサイズの気泡が徐々に崩壊して放出された気体量を補って液体に溶解するので、飽和溶解濃度を維持して液体を存在させることができることが確認された。
1 加圧部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 脱気泡部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
17 液体冷却部
21 回転体
30 気液混合液生成装置
31 外力供与部
32 外力付与手段
33 容器

Claims (6)

  1. 水素結合を形成する分子からなる液体中に気泡が存在する気液混合液であって、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの液体を構成する分子の水素結合の距離よりも短いことを特徴とする気液混合液。
  2. 液体が水であることを特徴とする請求項1に記載の気液混合液。
  3. 液体が、O−H結合、N−H結合、(ハロゲン)−H結合、S−H結合のいずれか一種以上を有する分子からなる液体であることを特徴とする請求項1に記載の気液混合液。
  4. 液体がカルボキシル基を有する分子からなる液体であることを特徴とする請求項1に記載の気液混合液。
  5. 気液混合液に含有されている気体の濃度が、液体の飽和溶解濃度以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の気液混合液。
  6. 気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の気液混合液。
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