以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
本発明は、Bicarbonateトランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAが導入された細胞を高濃度メトトレキセート(MTX)の存在下で培養し、生存する細胞から所望のポリペプチドを高産生する細胞を選択することを含む、所望のポリペプチドを高産生する細胞の作製方法を提供する。
本発明の方法において、Bicarbonateトランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAが導入された細胞を高濃度MTXの存在下で培養する。高濃度とは、通常のMTXによる細胞選抜後の継代培養時に、増幅された遺伝子が安定に維持される濃度(CHO細胞であれば約20nM程度)の2倍以上、例えば、Bicarbonateトランスポーター未導入株が継代培養3週間後に90%以上死滅する濃度であり、細胞によっては異なるが、CHO DXB11s細胞など、組換タンパク質の製造に用いられるCHO細胞の場合、通常50 nM以上が適当であり、好ましくは80nM以上、さらに好ましくは100 nM以上である。
Bicarbonateトランスポーターを強発現する細胞には、所望のポリペプチドをコードするDNAが導入される。
所望のポリペプチドは特に限定されず、抗体(例えば、抗IL-6レセプター抗体、抗IL-6抗体、抗グリピカン-3抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗GPIIb/IIIa抗体、抗TNF抗体、抗CD25抗体、抗EGFR抗体、抗Her2/neu抗体、抗RSV抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、抗IgE抗体、抗CD11a抗体、抗VEGF抗体、抗VLA4抗体など)や生理活性タンパク質(顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、インターフェロン、IL-1やIL-6等のインターロイキン、t-PA、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固因子、PTHなど)など如何なるポリペプチドでもよいが、特に抗体が好ましい。抗体は、天然抗体、Fab、scFv、sc(Fv)2などの低分子化抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの如何なる抗体であってもよい。
Bicarbonateトランスポーターは、炭酸水素アニオン(HCO3 -)または炭酸アニオン(CO3 2-)を排出するとともに、塩素アニオンや硫酸アニオンなどを取り込む、交換輸送機能をもつ膜蛋白である。Bicarbonateトランスポーターとしては、SLC4アニオンエクスチェンジャー、SLC26アニオンエクスチェンジャーなどを例示することができる。
SLC4アニオンエクスチェンジャーは、細胞内pHホメオスタシスおよび細胞容積を制御する膜蛋白である。現在、10種(SLC4A1(AE1),SLC4A2(AE2), SLC4A3(AE3), SLC4A4(NBCe1), SLC4A5(NBCe2),SLC4A7(NBCn1), SLC4A8(kNBC3), SLC4A9(NBCn2), SLC4A10(NBCn3), SLC4A11(NaBC1))のSLC4 ファミリーが知られており、少なくとも1種以上のアイソフォームが存在する。また、それぞれは、Na+非依存的に電荷的中性なCl-とHCO3 -のエクスチェンジャーであるSLC4A1(AE1)、SLC4A2(AE2)、ALC4A3(AE3)、ALC4A9(NBCn2またはAE4)、起電性のALC4A4(NBCe1)、ALC4A5(NBCe2)、電荷的中性なNa+とHCO3 -の共輸送体であるALC4A7(NBCn1)、Na+依存的に電荷的中性なCl-とHCO3 -のエクスチェンジャーであるALC4A8(kNBC3)、ALC4A10(NBCn3)、起電性のNa+とBorateの共輸送体であるALC4A11(NaBC1)などと異なる機能を有している。これらは局所特異的な作用を有する。たとえばAE1の場合、極性をもつ上皮細胞においては経上皮分泌や酸塩基の再吸収に寄与し、鱒の赤血球においてはosmolyte輸送を促進する。SLC4アニオンエクスチェンジャーとしては、SLC4A1(AE1),SLC4A2(AE2), SLC4A3(AE3), SLC4A4(NBCe1), SLC4A5(NBCe2), SLC4A7(NBCn1), SLC4A8(kNBC3), SLC4A9(NBCn2), SLC4A10(NBCn3), SLC4A11(NaBC1)などを例示することができるが、AE1が好ましい。
SLC26アニオンエクスチェンジャーは、ほとんどすべての臓器系で作用する多機能な膜タンパクであり、硫酸アニオン、ヨウ素アニオン、蟻酸アニオン、しゅう酸アニオン、塩素アニオン、ヒドロキシルアニオン、炭酸水素アニオンなどの交換輸送をおこなうものや、塩素イオンチャネル、あるいはアニオン依存性分子モーターが存在する。種々のアニオンのホメオスタシスに関与していると考えられ、10種(SLC26A1, SLC26A2, SLC26A3, SLC26A4, SLC26A5, SLC26A6, SLC26A7,SLC26A8, SLC26A9, SLC26A11)のアニオンエクスチェンジャーファミリーが知られている。たとえば、ヒドロキシルアニオン、炭酸水素アニオンのトランスポーターであるSLC26A3, SLC26A4, SLC26A6, SLC26A9は、SLC4アニオンエクスチェンジャーと同様に膜内外のpHを制御している。腎臓で発現しているのは、SLC26A1, SLC26A2, SLC26A4, SLC26A6, SLC26A9, SLC26A11である。SLC26A1は硫酸アニオンとシュウ酸アニオン輸送を、SLC26A6は塩化ナトリウムを取り込むために、種々のアニオンを交換輸送する。SLC26A1は腎石症、SLC26A4とSLC26A6は高血圧症、SLC26A5は難聴の病因となる。SLC26A7はSLC26A4と同様に酸塩基のホメオスタシスや血圧制御に関与する。SLC26アニオンエクスチェンジャーとしては、SLC26A1、SLC26A2、SLC26A3、SLC26A4、SLC26A5、SLC26A6、SLC26A7、SLC26A8、SLC26A9、SLC26A11などを例示することができる。
Bicarbonate トランスポーターを強発現する細胞は、天然の細胞と比較してBicarbonateトランスポーターの発現量が増加している細胞であれば特に限定されない。天然の細胞は特に限定されないが、例えばCHO細胞など組換えタンパク質を製造する際に宿主として用いられている細胞を挙げることができる。
細胞に強発現させるBicarbonateトランスポーターは、如何なる生物由来のBicarbonateトランスポーターでもよく、特に限定されない。具体的には、ヒト、またはマウス、ラット、ハムスターなどのげっ歯類、チンパンジー、ウシ、ウマ、イヌ、オオカミなどの哺乳類、ニワトリなどの鳥類、ゼブラフィッシュ、ウナギなどの魚類、ショウジョウバエなどの昆虫類などの生物由来のBicarbonateトランスポーターが挙げられ、ヒト、げっ歯類或いは宿主細胞と同じ種由来のBicarbonateトランスポーターであることが好ましく、例えば、Bicarbonateトランスポーターを強発現させる細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)である場合には、ヒト或いはハムスター由来のBicarbonateトランスポーターであることが好ましい。
Bicarbonateトランスポーターを強発現する細胞は動物細胞、植物細胞、酵母などの真核細胞;大腸菌、枯草菌などの原核細胞など如何なる細胞でもよいが、組換えタンパク質を製造する際に宿主として用いられている培養細胞が適当であり、動物細胞が好ましく、特にCHO細胞、COS細胞などの哺乳動物細胞が好ましい。哺乳動物細胞としてはヒト、チンパンジーなどの霊長類、マウス、ラット、ハムスターなどのげっ歯類、その他が挙げられ、ヒト、げっ歯類であることが好ましく、特にCHO細胞が好ましい。また、所望のポリペプチドを製造するためには、特にdhfr欠失CHO細胞(例えば、CHO細胞DXB11株、CHO細胞DG44株など)が好ましい。dhfr欠失CHO細胞はヒポキサンチンとチミジンに対する要求性があるので、ヒポキサンチンとチミジンを含まない培地(以下「HT不含培地」と標記)では生育できないが、DHFR遺伝子を持つ組換えベクターで形質転換することによりHT不含培地で生育可能となる。従って、dhfr欠失CHO細胞を宿主とすれば、ヒポキサンチンとチミジンに対する要求性を利用して、形質転換細胞を選別することができるので便利である。
Bicarbonateトランスポーターを強発現する細胞としては、例えば、Bicarbonateトランスポーター遺伝子(例えば、SLC4アニオンエクスチェンジャー遺伝子、SLC26アニオンエクスチェンジャー遺伝子など)が人為的に導入された細胞を挙げることができる。Bicarbonateトランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞は当業者に公知の方法により作製することが可能であり、例えばBicarbonateトランスポーター遺伝子をベクターに組込み、該ベクターを細胞に形質転換することにより作製することが可能である。さらに、本明細書では遺伝子活性化技術(例えば、国際公開第WO94/12650号パンフレット参照)により内因性Bicarbonateトランスポーター遺伝子が活性化され、その結果、Bicarbonateトランスポーターが強発現した細胞もBicarbonateトランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞に包含される。
細胞に導入するSLC4アニオンエクスチェンジャー遺伝子としては、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードする以下の(a)〜(e)のいずれかのDNAを挙げることもできる。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつSLC4アニオンエクスチェンジャー活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c) 配列番号2のアミノ酸配列と50%以上の相同性を有し、かつSLC4アニオンエクスチェンジャー活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d) 配列番号1の塩基配列を有するDNA
(e) 配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSLC4アニオンエクスチェンジャー活性を有するポリペプチドをコードするDNA
SLC4アニオンエクスチェンジャー活性とは、細胞内pHの恒常性や細胞容積を維持させるため、培地中のCl-やSO4 2-取り込み、細胞内のHCO3 -やBorateを排出する活性を包含する概念である。
SLC4アニオンエクスチェンジャー活性は、以下のようにして測定することができる。
SLC4を機能的に発現させた細胞をpH感受性色素であるBCECF-AMで処理し、Cl-やNa+を含む培地と含まない培地を潅流させたときの蛍光強度比較により、細胞内pH(pHi)の変化を測定することができる(Dahl NK. et.al., J Biol Chem 2003; 278:44949-44958; Fujinaga J. et.al., J Biol Chem 1999; 274:6626-6633)。
本発明において、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAとして、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAを用いるとよい。その他にも、配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつSLC4アニオンエクスチェンジャー活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いてもよい。配列番号2のアミノ酸配列は、ヒトAE1のアミノ酸配列である。AE1については、ヒト以外にも、マウス、ラット、チンパンジー、ウシ、ウマ、イヌ、オオカミ、ニワトリ、ゼブラフィッシュなどの配列情報が、マウス GenBanK NM_011403、ラット GeneBank NM_012651、チンパンジー GenBank XM_001151353、ウシ GeneBank NM_181036、ウマ GeneBank NM_001081788、イヌ GenBank AB242566、オオカミGeneBank NM_001048031、ニワトリ GenBank NM_205522、ゼブラフィッシュ GenBanK NM_198338などに登録されているので、それを利用することもできる。他のSLC4アニオンエクスチェンジャーについても、各種のデータベースに配列情報が登録されており、それらを利用してもよい。
配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつSLC4アニオンエクスチェンジャー活性を有するポリペプチドは、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、チンパンジー、ウシ、ウマ、イヌ、オオカミ、ニワトリ、ゼブラフィッシュSLC4アニオンエクスチェンジャー(以下、「ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャー」と記すこともある)と機能的に同等なポリペプチドである。このようなポリペプチドには、例えば、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーの変異体などが含まれる。後述の実施例では、公開されているヒトSLC4アニオンエクスチェンジャー遺伝子(AE1遺伝子)がコードしているアミノ酸911個中、4アミノ酸(L88R、E693G、V712A、H834Y)が置換されている変異体が用いられた。
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーのアミノ酸に適宜変異を導入することにより、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと機能的に同等なポリペプチドを調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。
ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと機能的に同等なポリペプチドとしては、具体的には、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーのアミノ酸配列(例えば、配列番号2のアミノ酸配列)中の1又は2個以上、好ましくは、1個以上30個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が欠失したもの、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーのアミノ酸配列に1又は2個以上、好ましくは、1個以上30個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加したもの、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーのアミノ酸配列中の1又は2個以上、好ましくは、1個以上30個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたもの等が挙げられる。
変異するアミノ酸残基は、特に限定されないが、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
なお、あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、 Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーに1又は複数個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドとしては、例えば、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーを含む融合ポリペプチドが挙げられる。融合ポリペプチドは、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと他のポリペプチドとが融合したものである。融合ポリペプチドを作製する方法は、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーをコードする遺伝子と他のポリペプチドをコードする遺伝子をフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーとの融合に付される他のポリペプチドとしては、特に限定されない。
ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーとの融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6 個のHis (ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc の断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag 、E-tag 、SV40T 抗原の断片、lck tag 、α-tubulinの断片、B-tag 、Protein C の断片、GST (グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP (マルトース結合ポリペプチド)等が挙げられる。
市販されているこれらのポリペプチドをコードする遺伝子をヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーをコードする遺伝子と融合させ、これにより調製された融合遺伝子を発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
また、あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製する当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者であれば、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNA配列(例えば、配列番号1のDNA配列)もしくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAからヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと機能的に同等なポリペプチドを単離することも通常行いうることである。
ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件としては、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、例えば42℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられ、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSである。またより好ましくは、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、2×SSC及び0.1%SDSが挙げられる。これらの条件において、温度を下げる程に高い相同性を有するDNAのみならず、低い相同性しか有していないDNAまでも包括的に得ることができる。逆に、温度を上げる程、高い相同性を有するDNAのみを得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度以外にも塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
これらハイブリダイゼーション技術により単離されるDNAがコードするポリペプチドは、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーとアミノ酸配列において70%以上の同一性を有するものであればよいが、通常、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーとアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、通常、97%以上の同一性、好ましくは98%以上の同一性、さらに好ましくは99%以上の同一性を指す。ポリペプチドの同一性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
ポリペプチドは、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られたポリペプチドが、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと同等の機能を有している限り、それをコードするDNAを本発明で利用することができる。例えば、ポリペプチドを原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来のポリペプチドのアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。また、真核細胞、例えば哺乳動物細胞で発現させた場合、N末端のシグナル配列は除去される。このようなポリペプチドをコードするDNAも本発明で利用することができる。
本発明において、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAとして、配列番号1の塩基配列を有するDNAを用いてもよい。その他にも、配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつSLC4アニオンエクスチェンジャー活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いてもよい。配列番号1の塩基配列は、ヒトAE1の塩基配列である。AE1については、ヒト以外にも、マウス、ラット、チンパンジー、ウシ、ウマ、イヌ、オオカミ、ニワトリ、ゼブラフィッシュなどの配列情報が、マウス GenBanK NM_011403、ラット GeneBank NM_012651、チンパンジー GenBank XM_001151353、ウシ GeneBank NM_181036、ウマ GeneBank NM_001081788、イヌ GenBank AB242566、オオカミGeneBank NM_001048031、ニワトリ GenBank NM_205522、ゼブラフィッシュ GenBanK NM_198338、などに登録されているので、それを利用することもできる。他のSLC4アニオンエクスチェンジャーについても、各種のデータベースに配列情報が登録されており、それらを利用してもよい。
SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAは、上述したような所望のポリペプチドの in vivo や in vitroにおける生産に利用される他、SLC4アニオンエクスチェンジャーを強発現する細胞の作製に用いることができる。SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAは、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードしうるものであれば、いかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAをコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAは、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、SLC4アニオンエクスチェンジャーを発現している細胞よりcDNAライブラリーを作製し、SLC4アニオンエクスチェンジャーのDNAの配列(例えば、配列番号1)の一部をプローブにしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えばSambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法により調製してもよいし、市販の遺伝子ライブラリーを用いてもよい。また、SLC4アニオンエクスチェンジャーを発現している細胞よりRNAを調製し、SLC4アニオンエクスチェンジャーのDNAの配列(例えば、配列番号1)に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、SLC4アニオンエクスチェンジャーのアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNA ライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
具体的には、次のようにすればよい。まず、SLC4アニオンエクスチェンジャーを発現する細胞、組織などから、mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、 AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、プライマー等を用いて、5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) にしたがい、cDNAの合成および増幅を行うことができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
また、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAにおいては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-74 )。また、SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終止コドン(TAA、TGA、又はTAG)の挿入等が挙げられる。
SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAはまた、配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつSLC4アニオンエクスチェンジャーと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを含む。
ストリンジェントな条件としては、当業者であれば適宜選択することができるが、例えば低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、例えば42℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられ、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSである。またより好ましくは、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、2×SSC及び0.1%SDSが挙げられる。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAを得ることができる。上記のハイブリダイズするDNAは好ましくは天然由来のDNA、例えばcDNA又は染色体DNAであってよい。
これらハイブリダイゼーション技術により単離されるDNAは、通常、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAと塩基配列において高い同一性を有する。SLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAには、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーと機能的に同等なポリペプチドをコードし、ヒト等のSLC4アニオンエクスチェンジャーをコードするDNAと高い同一性を有するDNAも含まれる。高い同一性とは、通常、96%以上の同一性、好ましくは98%以上の同一性、さらに好ましくは99%以上の同一性を指す。塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschulet al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは、例えば、score = 100、wordlength = 12とする。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
細胞に導入するBicarbonateトランスポーター遺伝子としては、SLC26アニオンエクスチェンジャー遺伝子であってもよい。SLC26アニオンエクスチェンジャー遺伝子の塩基配列及びそれがコードするアミノ酸配列情報は、GenBank
AF331525 (ヒトputative SLC26A9)、GenBank NM_052934 (ヒトSLC26A9 variant 1)、GenBank NM_134325(ヒトSLC26A9 variant 2)、GenBank NM_134420(マウスSLC26A6)、GenBank NM_177243(マウスSLC26A9)、GenBank AY240025(ショウジョウバエSlc26d9702)、GenBank AY240023 (ショウジョウバエSlc26d6928)、GenBank AY240022 (ショウジョウバエSlc26d6125)、GenBank AY240021 (ショウジョウバエSlc26d5002)、GenBank AB084425 (ウナギSlc26A6)などに登録されているので、それを利用することができる。
BicarbonateトランスポーターをコードするDNAはベクターに挿入されるとよい。
ベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)などで大量に増幅させ大量調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有することが好ましい。ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。所望のポリペプチドを生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043 )、またはT7プロモーターなどを持っていることが好ましい。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(Pharmacia社製)、「QIAexpress system」(Qiagen社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。ポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
大腸菌を宿主とする場合以外にも、例えば、所望のポリペプチドを製造するために用いられるベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3 (Invitrogen社製)や、pEGF-BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF 、pCDM8 )、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(GIBCO BRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw )、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIpneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」( Invitrogen社製)、pNV11、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)などが挙げられる。
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが好ましく、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。
さらに、遺伝子を安定的に発現させ、かつ、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を目的とする場合には、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pCHOIなど)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられ、また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子等を含むことができる。
BicarbonateトランスポーターをコードするDNA(ベクターに組み込まれていてもよい)が導入される宿主細胞としては特に制限はなく、例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。BicarbonateトランスポーターをコードするDNAが導入された宿主細胞に所望のポリペプチドをコードするDNAを導入すれば、この宿主細胞は、Bicarbonateトランスポーターを強発現することができ、所望のポリペプチドの生産を増加させることができる。BicarbonateトランスポーターをコードするDNAが導入された宿主細胞には、ALTをコードするDNA(ベクターに組み込まれていてもよい)がさらに導入されてもよい。BicarbonateトランスポーターをコードするDNAが導入された宿主細胞に所望のポリペプチドをコードするDNAとALTをコードするDNAを導入することにより、所望のポリペプチドの産生量を向上させることができる。ポリペプチド製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
Bicarbonateトランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞を用いて所望のポリペプチドを製造する場合、Bicarbonateトランスポーター遺伝子と所望のポリペプチドをコードする遺伝子の導入の順序は特に制限されず、Bicarbonateトランスポーター遺伝子を導入した後に所望のポリペプチドをコードする遺伝子を導入してもよいし、所望のポリペプチドをコードする遺伝子を導入した後にBicarbonateトランスポーター遺伝子を導入してもよい。又、Bicarbonateトランスポーター遺伝子と所望のポリペプチドをコードする遺伝子を同時に導入してもよい。
Bicarbonateトランスポーター遺伝子及び所望のポリペプチドをコードする遺伝子の導入は単一のベクターにより同時に導入してもよいし、複数のベクターを用いて別々に導入してもよい。
Bicarbonateトランスポーターを強発現する細胞は、さらに、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を強発現してもよい。
ALTは、本来、アラニンのアミノ基を2-オキソグルタル酸に転移させ、グルタミン酸を生成させる酵素として知られているが、CHO細胞などの宿主細胞内で強発現させることにより、アラニンからピルビン酸やグルタミン酸を生合成する反応を促進できれば、TCA回路での代謝や、糖新生によるグルコース生成に利用されて、細胞の培養挙動が改善し、所望のポリペプチドの高生産が期待される。
ALTを強発現する細胞は、天然の細胞と比較してALTの発現量が増加している細胞であれば特に限定されない。天然の細胞は特に限定されないが、例えばCHO細胞など組換えタンパク質を製造する際に宿主として用いられている細胞を挙げることができる。
ALTを強発現する細胞としては、例えば、ALT遺伝子が人為的に導入された細胞を挙げることができる。ALT遺伝子が人為的に導入された細胞は当業者に公知の方法により作製することが可能であり、例えば、ALT遺伝子をベクターに組込み、該ベクターを細胞に形質転換することにより作製することが可能である。さらに、本明細書では遺伝子活性化技術(例えば、国際公開第WO94/12650号パンフレット参照)により内因性ALT遺伝子が活性化され、その結果、ALTが強発現した細胞もALT遺伝子が人為的に導入された細胞に包含される。
細胞に強発現させるALTは、如何なる生物由来のALTでもよく特に限定されない。具体的には、ヒト、マウス、ラット、イヌ、アフリカツメガエル、ショウジョウバエ、センチュウ、日本米、原子紅藻、パン酵母、糸状菌Ashbya gossypii、真菌Candida albicans、分裂酵母、真菌Aspergillus nidulans、真菌Aspergillus fumigatus、清酒麹菌Aspergillus oryzae、真菌Cryptococcus neoformans、細胞性粘菌 Dictyostelium discoideum、Trypanosoma brucei、細胞内寄生性原虫Leishmania major、赤痢アメーバEntamoeba histolytica又は細胞内寄生性原虫Trypanosoma cruziなどのALTが公知であり、これらを利用することができるが、ヒト、げっ歯類或いは宿主細胞と同じ種由来のALTであることが好ましく、例えば、ALTを強発現させる細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)である場合には、ヒト或いはハムスター由来のALTであることが好ましい。ヒト、マウス、酵母などのALTは、Variant(ALT1とALT2)が存在する。ALT2は、ALT1に対してアミノ酸レベルで80%以上の相同性がある。後述の実施例及び参考例では、ALT1を強制発現させた。
細胞に導入するALT遺伝子としては、ALTをコードする以下の(a2)〜(e2)のいずれかのDNAを挙げることができる。
(a2) KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human):2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME:2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME:2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA
(b2) KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつALT活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c2) KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG /ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のアミノ酸配列と70%以上の同一性を有し、かつALT活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d2) KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140の塩基配列を有するDNA
(e2) KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi:506529.430、KEGG / ENZYME:2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつALT活性を有するポリペプチドをコードするDNA
ALT活性とは、アミノ酸とα-ケト酸との間のアミノ基転移を触媒する酵素活性を包含する概念である。
ALT活性は、以下のようにして測定することができる。
自動分析用アラニンアミノトランスフェラーゼ測定試薬(ランピア リキッド S-ALT 承認番号20900AMZ00597000)や、Rajamohan F. et.al. Protein Expression and Purification (2006) 48, 81-89 で示された方法を用いてALT活性値を求める。
本発明において、ALTをコードする遺伝子として、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAを用いるとよい。その他にも、上記アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつALT活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いてもよい。配列表の配列番号3及び4は、それぞれ、ヒトALT1をコードする遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列(KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875)を示す。
KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつALT活性を有するポリペプチドは、ヒト、マウス、ラット、イヌ、アフリカツメガエル、ショウジョウバエ、センチュウ、日本米、原子紅藻、パン酵母、糸状菌Ashbya gossypii、真菌Candida albicans、分裂酵母、真菌Aspergillus nidulans、真菌Aspergillus fumigatus、清酒麹菌Aspergillus oryzae、真菌Cryptococcus neoformans、細胞性粘菌Dictyostelium discoideum、Trypanosoma brucei、細胞内寄生性原虫Leishmania major、赤痢アメーバEntamoeba histolytica又は細胞内寄生性原虫Trypanosoma cruzi ALT(以下、「ヒト等のALT」と記すこともある)と機能的に同等なポリペプチドである。このようなポリペプチドには、例えば、ヒト等のALTの変異体などが含まれる。WO2009/020144の実施例及び参考例では、公開されているヒトALT1遺伝子がコードしているアミノ酸496個中、4アミノ酸(R53S、Q72R、F286S、M332K)が置換されている変異体が用いられた。
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、ヒト等のALTのアミノ酸に適宜変異を導入することにより、ヒト等のALTと機能的に同等なポリペプチドを調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。
ヒト等のALTと機能的に同等なポリペプチドとしては、具体的には、ヒト等のALTのアミノ酸配列(例えば、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG /ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のアミノ酸配列)中の1又は2個以上、好ましくは、1個以上30個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が欠失したもの、ヒト等のALTのアミノ酸配列に1又は2個以上、好ましくは、1個以上30個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加したもの、ヒト等のALTのアミノ酸配列中の1又は2個以上、好ましくは、1個以上30個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたもの等が挙げられる。
変異するアミノ酸残基は、特に限定されないが、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
なお、あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、 Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
ヒト等のALTに1又は複数個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドとしては、例えば、ヒト等のALTを含む融合ポリペプチドが挙げられる。融合ポリペプチドは、ヒト等のALTと他のポリペプチドとが融合したものである。融合ポリペプチドを作製する方法は、ヒト等のALTをコードする遺伝子と他のポリペプチドをコードする遺伝子をフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。ヒト等のALTとの融合に付される他のポリペプチドとしては、特に限定されない。
ヒト等のALTとの融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6 個のHis (ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc の断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag 、E-tag 、SV40T 抗原の断片、lck tag 、α-tubulinの断片、B-tag 、Protein C の断片、GST (グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP (マルトース結合ポリペプチド)等が挙げられる。
市販されているこれらのポリペプチドをコードする遺伝子をヒト等のALTをコードする遺伝子と融合させ、これにより調製された融合遺伝子を発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
また、あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製する当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者であれば、ヒト等のALTをコードするDNA配列(例えば、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のDNA配列)もしくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAからヒト等のALTと機能的に同等なポリペプチドを単離することも通常行いうることである。
ヒト等のALTと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件としては、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、例えば42℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられ、好ましくは50℃、2×SSC 、0.1%SDSである。またより好ましくは、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、2×SSC及び0.1%SDSが挙げられる。これらの条件において、温度を下げる程に高い相同性を有するDNAのみならず、低い相同性しか有していないDNAまでも包括的に得ることができる。逆に、温度を上げる程、高い相同性を有するDNAのみを得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度以外にも塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
これらハイブリダイゼーション技術により単離されるDNAがコードするポリペプチドは、ヒト等のALTとアミノ酸配列において70%以上の同一性を有するものであればよいが、通常、ヒト等のALTとアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、通常、97%以上の同一性、好ましくは98%以上の同一性、さらに好ましくは99%以上の同一性を指す。ポリペプチドの同一性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
ポリペプチドは、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られたポリペプチドが、ヒト等のALTと同等の機能を有している限り、それをコードするDNAを本発明で利用することができる。例えば、ポリペプチドを原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来のポリペプチドのアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。また、真核細胞、例えば哺乳動物細胞で発現させた場合、N末端のシグナル配列は除去される。このようなポリペプチドをコードするDNAも本発明で利用することができる。
本発明において、ALTをコードするDNAとして、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma rucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140の塩基配列を有するDNAを用いてもよい。その他にも、上記塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつALT活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いてもよい。
ALTをコードするDNAは、上述したような所望のポリペプチドの in vivo や in vitroにおける生産に利用される他、ALTを強発現する細胞の作製に用いることができる。ALTをコードするDNAは、ALTをコードしうるものであれば、いかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、ALTをコードするDNAをコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
ALTをコードするDNAは、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、ALTを発現している細胞よりcDNAライブラリーを作製し、ALTのDNAの配列(例えば、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のDNA配列)の一部をプローブにしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えばSambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法により調製してもよいし、市販の遺伝子ライブラリーを用いてもよい。また、ALTを発現している細胞よりRNAを調製し、ALTのDNAの配列(例えば、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii (Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140のDNA配列)に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、ALTをコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、ALTのアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNA ライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
具体的には、次のようにすればよい。まず、ALTを発現する細胞、組織などから、mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、 AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、プライマー等を用いて、5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) にしたがい、cDNAの合成および増幅を行うことができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
また、ALTをコードするDNAにおいては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-74 )。また、ALTをコードするDNAは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終止コドン(TAA、TGA、又はTAG)の挿入等が挙げられる。
ALTをコードするDNAはまた、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 2875、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Homo sapiens (human): 84706、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 76282、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Mus musculus (mouse): 108682、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Rattus norvegicus (rat): 81670、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Canis familiaris (dog): 609510、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Xenopus laevis (African clawed frog): 444533、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Drosophila melanogaster (fruit fly): Dmel_CG1640、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Caenorhabditis elegans (nematode): C32F10.8、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4342210、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Oryza sativa japonica (Japanese rice): 4348524、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cyanidioschyzon merolae: CMM066C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YLR089C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Saccharomyces cerevisiae: YDR111C、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Ashbya gossypii(Eremothecium gossypii): AGOS_AGR085W、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Candida albicans: CaO19_346、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Schizosaccharomyces pombe: SPBC582.08、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus nidulans: AN1923.2、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus fumigatus: AFUA_6G07770、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Aspergillus oryzae: AO090003000164、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Cryptococcus neoformans JEC21: CNG01490、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Dictyostelium discoideum: DDB_0232139、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma brucei: Tb927.1.3950、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Leishmania major: LmjF12.0630、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 233.t00009、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 /Entamoeba histolytica: 24.t00016、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.420、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 506529.430、KEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.120又はKEGG / ENZYME: 2.6.1.2 / Trypanosoma cruzi: 510889.140の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつALTと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを含む。
ストリンジェントな条件としては、当業者であれば適宜選択することができるが、例えば低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、例えば42℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられ、好ましくは50℃、2×SSC 、0.1%SDSである。またより好ましくは、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、2×SSC及び0.1%SDSが挙げられる。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAを得ることができる。上記のハイブリダイズするDNAは好ましくは天然由来のDNA、例えばcDNA又は染色体DNAであってよい。
これらハイブリダイゼーション技術により単離されるDNAは、通常、ヒト等のALTをコードするDNAと塩基配列において高い同一性を有する。ALTをコードするDNAには、ヒト等のALTと機能的に同等なポリペプチドをコードし、ヒト等のALTをコードするDNAと高い同一性を有するDNAも含まれる。高い同一性とは、通常、96%以上の同一性、好ましくは98%以上の同一性、さらに好ましくは99%以上の同一性を指す。塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは、例えば、score = 100、wordlength = 12とする。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
Bicarbonateトランスポーターを強発現する細胞には、所望のポリペプチドをコードするDNAと共に、DHFR遺伝子が導入されるとよい。DHFR遺伝子は、MTXによって細胞内でのコピー数が増幅され(遺伝子増幅)、細胞はMTX耐性になる。Bicarbonateトランスポーターを強発現する細胞は、所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFRをコードするDNAとを含む1つの分子(例えば、ベクター)によって共形質転換されたものであるとよい。DHFR遺伝子に所望のポリペプチドをコードするDNAをつないだ組換えベクターを細胞に導入し、この細胞をMTXの存在下で培養すると、遺伝子増幅によって所望のポリペプチドを高産生する細胞が得られる。DHFR遺伝子はいかなる生物由来のものであってもよく、それらのDNA配列は公知であるから(マウス GenBank V00734、 ラットGenBank AF318150、ヒト GenBank J00140)、その情報に従って、DHFR遺伝子を調製し、ベクターに導入することができる。また、DHFR遺伝子が導入された発現ベクター(pOptiVECTM-TOPO(登録商標)ベクター、INVITROGEN社)が市販されているので、それを利用してもよい。
Bicarbonateトランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞を宿主として用いる場合、Bicarbonateトランスポーター遺伝子を細胞に導入した後に所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFRをコードするDNAを導入してもよいし、その逆に、所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFRをコードするDNAを細胞に導入した後にBicarbonateトランスポーター遺伝子を導入してもよいし、Bicarbonateトランスポーター遺伝子と所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFRをコードするDNAを同時に細胞に導入してもよい。
Bicarbonateトランスポーター遺伝子(場合によっては、ALT遺伝子も)及び所望のポリペプチドをコードするDNAの導入は単一のベクターにより同時に導入してもよいし、複数のベクターを用いて別々に導入してもよい。
また、所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFR遺伝子は単一のベクターに導入されてもよいし、別々のベクターに導入されてもよい。遺伝子増幅によって高発現細胞株を効率よく樹立するためには、所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFR遺伝子は単一のベクターに導入することが好ましい。遺伝子の増幅効率を上げるためには、DHFR遺伝子は転写効率の低いプロモーター(例えば、SV40プロモーター)の下流につなぎ、所望のポリペプチドをコードするDNAは転写効率の高いプロモーター(例えば、CMVプロモーター、SRαプロモーター、EF-1αプロモーターなど)の下流につなぐことが好ましい。所望のポリペプチドをコードするDNAとDHFR遺伝子を別々のベクターに導入する場合には、共導入法で宿主細胞内に導入するとよい。この場合、所望のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだベクターはDHFR遺伝子を組み込んだベクターより過剰量(通常2〜40倍程度の過剰量)で宿主細胞内に導入するとよい。
CHO細胞におけるポリペプチド発現ベクター構築にあたっては、CMV immediate-earlyエンハンサー/プロモーター領域や典型的なKozak配列 (-6 GCCR (R=A/G) CCAUGG +4)(配列番号5)、薬剤耐性遺伝子マーカー(neomycin, hygromaicin, puromicinなど)の利用、さらにN末端側への分泌シグナルペプチド配列(MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号6)など)の付加を考慮するとよい。
発現ベクターは適当な制限酵素で切断し、直鎖にしてから宿主細胞に導入するとよい。直鎖にすることによって、目的とする遺伝子の発現ユニットが宿主細胞の染色体に組み込まれやすくなる。遺伝子導入方法は特に限定されるものではなく、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などのいずれの方法であってもよい。NUCLEOFECTOR(AMAXA社)で遺伝子導入すれば、多コピー導入も可能である。
宿主細胞への遺伝子導入を行った後、選択培地での培養を行い、目的の遺伝子が導入された細胞を選択するとよい。例えば、薬剤耐性遺伝子を持つベクターに所望のポリペプチドをコードするDNAを挿入し、宿主細胞を形質転換した後、薬剤含有培地で培養すれば、生存した細胞を形質転換細胞として選択することができる。また、DHFR遺伝子を持つベクターに所望のポリペプチドをコードするDNAを挿入し、宿主細胞としてdhfr欠失CHO細胞を形質転換した場合には、HT不含培地で培養することにより、生存した細胞を形質転換細胞として選択することができる。培地としては、CHO-S-SFMII /CD-CHO混合培地(Invitrogen社)などを用いることができる。形質転換細胞の培養を続け、適当な時間経過後(通常、14〜21日くらい)に目的とするポリペプチドの産生量を測定する。産生量の高い細胞をMTX処理する。MTX処理する形質転換細胞は、ポリペプチドの産生量が高い他、増殖が速いことが好ましい。増殖速度は、継代培養時の生細胞数測定により比較することができる。
MTX処理とは、例えば、高濃度のMTXを添加した培地で培養(好ましくは、継代培養)することである。高濃度とは、通常のMTXによる細胞選抜後の継代培養時に、増幅された遺伝子が安定に維持される濃度 (CHO細胞であれば約20nM程度)の2倍以上、例えば、Bicarbonateトランスポーター未導入株が継代培養3週間後に90%以上死滅する濃度であり、細胞によっては異なるが、CHO DXB11s細胞など、組換タンパク質の製造に用いられるCHO細胞の場合、通常50 nM以上が適当であり、好ましくは80nM以上、さらに好ましくは100 nM以上である。培養期間は、7〜35日が適当であり、14〜28日が好ましく、21〜28日がより好ましい。
MTXを高濃度で添加した培地で形質転換細胞を培養するにあたっては、MTXの濃度を段階的に増加させていくとよい。例えば、MTX濃度が10 nMの培地で14〜21日培養し、MTX濃度が100nMの培地で14〜28日培養する。
MTXの濃度を変えて培養する工程毎に、高産生細胞株を選択するとよい。また、MTXを高濃度で添加した培地で培養することによって細胞増殖がみられなくなった場合には、MTXを低濃度で添加した培地に戻して培養を続けることによって細胞増殖を回復させるとよい。
MTXを高濃度で添加する培地としては、CHO-S-SFMII /CD-CHO混合培地(Invitrogen社)などを用いることができる。
MTX処理前の形質転換細胞株がほぼ均一である場合も、MTX処理によって多様性を獲得するため、均一ではなくなる。均一ではなくなった細胞群のポリペプチド産生量の総和が、MTX処理前のほぼ均一な細胞株の産生量よりも高くなるのである。多様性を獲得した細胞群から、高産生株のみをクローン化することは可能である。例えば、96well plateを用いたlimiting dilution法(限界希釈法)やセルソーターによるシングルセルクローニングが有効である。いずれも従来公知の方法を用いることができる。
本発明のBicarbonateトランスポーターを強発現する細胞は、後述の実施例からも明らかなように、MTXに対して優れた耐性能を有しており、通常のMTXによる選抜濃度よりも高い濃度で選抜することが可能でありる。
このように高濃度のMTXを処理して得られた本発明の細胞群から、通常のMTX処理では得ることのできない、或いは得ることの非常に難しい、所望のポリペプチドの高産生株を効率よく多数得ることができる。よって、本発明のBicarbonateトランスポーター強発現細胞は、MTX選抜に用いる形質転換細胞として極めて有用である。
したがって、本発明は、上記の方法により作製された、所望のポリペプチドを高産生する細胞も提供する。細胞は不均一な細胞群であってもよいし、クローン化された均一な細胞株であってもよい。
また、本発明は、上記の方法により作製された細胞を培養することを含む、ポリペプチドの製造方法も提供する。さらに、本明細書では遺伝子活性化技術(例えば、国際公開第WO94/12650号パンフレット参照)により、該細胞の内因性の所望のポリペプチドをコードする遺伝子が活性化されることにより、所望のポリペプチドを産生する細胞を用いて、所望のポリペプチドを製造することも可能である。
細胞の培養には、通常の細胞(好ましくは、動物細胞)培養で使用されている培地を用いることができる。これらには通常、アミノ酸、ビタミン類、脂質因子、エネルギー源、浸透圧調節剤、鉄源、pH緩衝剤を含む。これらの成分の含量は、通常、アミノ酸は0.05−1500mg/L、ビタミン類は0.001−10mg/L、脂質因子は0−200mg/L、エネルギー源は1−20g/L、浸透圧調節剤は0.1−10000mg/L、鉄源は0.1−500mg/L、pH緩衝剤は1−10000mg/Lの範囲が適当であるが、これらに限定されず、培養する細胞の種類、所望のポリペプチド(例えば、抗体など)の種類などにより適宜決定できる。
上記成分のほか、例えば、微量金属元素、界面活性剤、増殖補助因子、ヌクレオシドなどを添加しても良い。これらの成分の含量は、通常、微量金属元素は0.00001−200mg/L、界面活性剤は0−5000mg/L、増殖補助因子は0.05−10000μg/Lおよびヌクレオシドは0.001−50mg/Lの範囲が適当であるが、これらに限定されず、培養する細胞の種類、所望のポリペプチドの種類などにより適宜決定できる。
具体的には、例えば、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-オルニチン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン等、好ましくはL-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-シスチン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン等のアミノ酸類;i−イノシトール、ビオチン、葉酸、リポ酸、ニコチンアミド、ニコチン酸、p-アミノ安息香酸、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキサール、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、塩酸チアミン、ビタミンB12、アスコルビン酸等、好ましくはビオチン、葉酸、リポ酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキサール、リボフラビン、塩酸チアミン、ビタミンB12、アスコルビン酸等のビタミン類;塩化コリン、酒石酸コリン、リノール酸、オレイン酸、コレステロール等、好ましくは塩化コリン等の脂質因子;グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース等、好ましくはグルコース等のエネルギー源;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム等、好ましくは塩化ナトリウム等の浸透圧調節剤;EDTA鉄、クエン酸鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄等、好ましくは塩化第二鉄、EDTA鉄、クエン酸鉄等の鉄源類;炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、HEPES、MOPS等、好ましくは炭酸水素ナトリウム等のpH緩衝剤を含む培地を例示できる。
上記成分のほか、例えば、硫酸銅、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、塩化ニッケル、塩化スズ、塩化マグネシウム、亜ケイ酸ナトリウム等、好ましくは硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム等の微量金属元素;Tween80、プルロニックF68等の界面活性剤;および組換え型インスリン、組換え型IGF-1、組換え型EGF、組換え型FGF、組換え型PDGF、組換え型TGF-α、塩酸エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、レチノイン酸、塩酸プトレッシン等、好ましくは亜セレン酸ナトリウム、塩酸エタノールアミン、組換え型IGF-1、塩酸プトレッシン等の増殖補助因子;デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、アデノシン、シチジン、グアノシン、ウリジン等のヌクレオシドなどを添加してもよい。なお上記培地の好適例においては、ストレプトマイシン、ペニシリンGカリウム及びゲンタマイシン等の抗生物質や、フェノールレッド等のpH指示薬を含んでいても良い。
培地のpHは培養する細胞により異なるが、一般的にはpH6.8〜7.6、多くの場合pH7.0〜7.4が適当である。
培地は、市販の動物細胞培養用培地、例えば、D-MEM (Dulbecco's Modified Eagle Medium)、 D-MEM/F-12 1:1 Mixture (Dulbecco's Modified Eagle Medium : Nutrient Mixture F-12)、 RPMI1640、CHO-S-SFM II(Invitrogen社)、 CHO-SF (Sigma-Aldrich社)、 EX-CELL 301 (JRH biosciences社)、CD-CHO (Invitrogen社)、 IS CHO-V (Irvine Scientific社)、 PF-ACF-CHO (Sigma-Aldrich社)などの培地を用いることも可能である。又、培地は無血清培地であってもよい。
細胞がCHO細胞である場合、CHO細胞の培養は当業者に公知の方法を用いて行うことができる。例えば、通常、気相のCO2濃度が0−40%、好ましくは、2−10%の雰囲気下、30−39℃、好ましくは37℃程度で、培養することが可能である。
所望のポリペプチドを産生するために適当な細胞の培養期間は、通常1日〜3ヶ月であり、好ましくは1日〜2ヶ月、さらに好ましくは1日〜1ヶ月である。
また、動物細胞培養用の各種の培養装置としては、例えば発酵槽型タンク培養装置、エアーリフト型培養装置、カルチャーフラスコ型培養装置、スピンナーフラスコ型培養装置、マイクロキャリアー型培養装置、流動層型培養装置、ホロファイバー型培養装置、ローラーボトル型培養装置、充填槽型培養装置等を用いて培養することができる。
培養は、バッチ培養(batch culture)、流加培養(fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)などのいずれの方法を用いてもよいが、流加培養又は連続培養が好ましく、流加培養がより好ましい。
本発明の方法により製造されたポリペプチドが医薬として利用可能な生物学的活性を有する場合には、このポリペプチドを医薬的に許容される担体又は添加剤と混合して製剤化することにより、医薬品を製造することができる。
医薬的に許容される担体及び添加剤の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製されたポリペプチドを溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
ポリペプチドの有効投与量は、ポリペプチドの種類、治療や予防の対象とする疾患の種類、患者の年齢、疾患の重篤度などにより適宜選択される。例えば、ポリペプチドが抗グリピカン抗体である場合、抗グリピカン抗体の有効投与量(例えば、抗癌剤)は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、これらの投与量に制限されるものではない。
ポリペプチドの投与方法は、経口、非経口投与のいずれでも可能であるが、好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などによる全身又は局所投与)、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられる。
本発明の他の実施態様として、Bicarbonateトランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAが導入された細胞を高濃度MTXで処理することにより、該細胞によるポリペプチド産生量を増強する方法が提供される。
本発明の別の実施態様として、細胞にBicarbonateトランスポーターを強発現させることを含む、高濃度メトトレキセートの存在下での培養において、高い生存率を有する細胞の作製方法が提供される。
本発明は、Bicarbonateトランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAが導入された細胞をメトトレキセートの存在下で培養し、生存する細胞から所望のポリペプチドを高産生する細胞を選択することを含む、所望のポリペプチドを高産生する細胞の作製方法を包含する。
また、本発明は、Bicarbonateトランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAが導入された細胞をメトトレキセートで処理することにより、該細胞によるポリペプチド産生量を増強する方法も包含する。
なお、本発明において、「DNAが導入された細胞」とは、遺伝子組み換え技術により外来性DNAが組み込まれた細胞の他、遺伝子活性化技術(例えば、国際公開第WO94/12650号パンフレット参照)により内因性DNAが活性化され、その結果、当該DNAに対応する蛋白質の発現もしくは当該DNAの転写が開始或いは増加した細胞も包含する概念である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕アニオンエクスチェンジャー(AE1)導入による宿主細胞のMTX耐性獲得
pHyg-AE1発現プラスミド(後述の参考例2、図5)をDXB11S宿主細胞にエレクトロポレーション法で導入し、AE1を強発現させたDXB11S/ AE1宿主細胞を作成し、親株のDXB11S宿主細胞とのMTX感受性を比較した。どちらの宿主細胞もHTサプリメント要求性のためHT不含培地で生存できないが、図1に示したように、HT不含培地にMTXを添加しない条件下での生存率の減少は同等であった。しかし、HT不含培地にMTXを10nMあるいは20nM添加した条件下で、DXB11S/AE1宿主細胞の培養2日目の生存率はDXB11S宿主細胞よりも高く、DXB11S/AE1宿主細胞のMTX耐性獲得が示唆された。
〔実施例2〕MTX耐性を獲得したDXB11S/AE1宿主細胞による抗体産生株構築
CHO-S-SFM II馴化されたDXB11S宿主細胞より構築したDXB11S/AE1宿主細胞をCS(CHO-S-SFM II/CD-CHO)馴化することでDXB11y/AE1宿主細胞とし、さらにDXB11S宿主細胞の親株であるCS馴化DXB11y宿主細胞をコントロール細胞として用いることによってFetuinを含まない培地でのTransfectionを可能にし、抗体産生細胞の新株構築をおこなった。抗IL-6R抗体(tocilizumab、商品名 アクテムラ(登録商標))発現プラスミド(pNeo/MRA/CAG-A)(図2) 1μgを15x10e5 個の宿主細胞へAmaxa社nucleofector(Nucleofector kit V、プログラムU-030 )によって導入した。Nuclefection 6時間後にHT不含のCS培地に置換し、96ハーフウェルプレートの各ウェルに7500細胞ずつを播いて、37℃で5% CO2のインキュベーター中で一週間放置したのち、終濃度15nM になるようにMTXを加えてさらに一週間静置培養した。細胞の拡大培養のため、各ウェルの細胞を100μlのHT不含15nM MTX/CS培地を含む96ウェルプレートに移して、さらに8日間静置培養した(計200μl)。拡大培養後、抗体産生量を評価するために、150μlの細胞液を700μlのCS培地を含む24ウェルプレートに移して160rpmで14日間のバッチ培養をおこなった。残りの細胞液(50μl)は150μlのHT不含15nM MTX/CS培地を加えて、継代による拡大培養を続けた。14日後に24ウェルバッチ培養での抗体産生量を定量することで(図3の一次増幅株産生量プロット)、各々の上位5株を選抜した。上位5株の拡大培養は6ウェルプレートまでおこなったのち、96ハーフウェルプレートの各ウェルに1000細胞ずつを播き、HT不含150nM MTX/CS培地存在下(計100μl)で14日間静置培養して、抗体発現ユニットを二次増幅させた。二次増幅細胞の拡大培養のために、各ウェルの高増殖な細胞を最大20株ずつ選抜して(各々計100株以下)、細胞を96ハーフウェルプレートから100μlのHT不含150nM MTX/CS培地を含む96ウェルプレートに移して、さらに11日間静置培養した(計200μl)。上記と同様の手法で、150μlの細胞液を24ウェルバッチ培養し、増殖した細胞の抗体産生量を評価することで、DXB11S/AE1宿主細胞を用いた株構築によって抗体を高産生する細胞株を多く得られることが示された(図3の二次増幅株産生量プロット)。
〔実施例3〕高濃度MTX処理によるAE1強発現抗体産生株の抗体産生量の増加
高濃度MTX(100nM あるいは200nM)存在下、37℃で5% CO2のインキュベーター中で24日間静置培養(10日目と18日目に培地交換のため遠心継代)したのち、もとのMTX濃度(20nM)に戻して22日間静置培養することで細胞増殖を回復させた(T25 flask静置で4継代培養、6 well plate 懸濁で1継代培養、shaker flask 懸濁で1継代培養)。高濃度MTXでの未処理株(20nM MTX存在下での継代細胞)をコントロールとしてshakerを用いた懸濁生産Fed-Batch培養を14日間おこない、抗体産生量を比較した。AE1強発現させたAE株(実施例1のDXB11S/AE1宿主細胞でMTX耐性獲得したもの)、AE1/ALT1共発現株(後述の参考例2のAE1/ALT1共発現株)は、TauTを強発現させたTAUT/ALT1共発現株(WO2009/020144の実施例2のTauT/ALT1共発現株)と同様に、高濃度MTX処理することで抗体産生量の増加がみられた(図4)。
以上の結果は、アニオンエクスチェンジャー遺伝子(AE1)を人為的に発現させることで細胞がMTX耐性を獲得し、高濃度MTX処理により抗体をさらに高産生できることを示唆している。
本発明は、あらゆる抗体産生細胞へ応用可能である。
〔参考例1〕ヒト肝細胞アニオンエクスチェンジャー(Anion Exchanger 1, band 3)遺伝子クローニング
市販のHuman Liver QUICK-Clone cDNA(Clontech社)を鋳型にして、ヒト肝由来Anion Exchanger(AE1)遺伝子をPCR法によって得た。クローニングされた遺伝子は塩基配列を決定し、公開されているヒトAE1との相同性からAE1をコードしていることを確認した。得られたAE1遺伝子は、2733塩基中、8箇所(t263g,t357c,a645t,a672c,c951t,a2078g, t2195c,c2500t)に変異がみられ、コードするアミノ酸は、911個中、4アミノ酸(L88R、E693G, V712A,H834Y)が異なっていた。しかし、13の膜貫通領域をもつトランスポーターと予測されるため(図5)、ヒト肝由来AE1 遺伝子として細胞改変に用いた。
〔参考例2〕ヒトアニオンエクスチェンジャー遺伝子導入による抗体産生量増加
参考例1のPCRクローニングにより取得したヒトAE1(以下AE1)遺伝子にKozak配列を加え、CMVプロモーター発現プラスミドpHyg-AE1(図6)、pPur-AE1(図7)を構築した。pHyg-AE1あるいはAE1遺伝子を含まないpHyg発現プラスミド(Clontech社のpTK5由来のHygromycin耐性遺伝子発現ユニットをpSV2-dhfrプラスミド(ATCC No.37146)に導入したプラスミドを構築後、dhfr発現ユニットを取り除いたものである。)を、親株である抗グリピカン-3抗体産生CHO細胞(国際公開第WO 2006/006693号パンフレットを参照)にエレクトロポレーション法で導入し、Hygromycin(200μg/ml) 存在下、静置培養下で高増殖であった細胞株を拡大したのち、pHyg-AE1細胞株からTotal RNAを調製し、TaqMan法によってヒトAE1を高発現していた5株を選抜した。さらに、振とう培養下で、コントロールであるpHyg導入細胞(4株)と同程度に増殖した4株をヒトAE1導入細胞として、抗体産生量比較をおこなった。初発密度2x105cells/mLの50mlシェーカーフラスコによる流加培養において、シェーカー培養後期12日目のpHyg-AE1導入細胞(4株)の抗グリピカン-3抗体産生量は、pHyg導入細胞(4株)に対して優位であった(t検定 P<0.05, 図8)。
次に、pHyg-AE1導入細胞4株中で最も抗体高産生であったAE1発現株を親株として、Puromycin耐性遺伝子を含むシステインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(CSAD)発現プラスミドpPur-CSAD(WO2008/114673の実施例2、図7), Puromycin耐性遺伝子を含むアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT1)発現プラスミド pPur-ALT1(WO2009/020144の実施例2、図1), コントロールプラスミドpPur(Clontech社のpPUR (a puromycin resistance expression vector))をエレクトロポレーション法で導入した。Puromycin(6μg/ml) 存在下、静置培養下で高増殖であった細胞株を拡大したのち、Total RNAを調製し、新たに導入された遺伝子を高発現していたAE1/CSAD共発現株(9株)、AE1/ALT1共発現株(10株)、AE1/pPur共発現株(8株)を選抜し、抗体産生量および生存率の比較をおこなった。初発密度2x105cells/mLの50mlシェーカーフラスコによる流加培養において、AE1/CSAD共発現株(9株)はコントロールのAE1/pPur共発現株(8株)に対して、シェーカー培養後期10日目の抗グリピカン-3抗体産生量(t検定 P<0.05, 図9)、生存率(t検定 P<0.01, 図10)ともに優位であった。3種類の共発現株中、抗グリピカン-3抗体産生量の最も高かった細胞株はAE1/ALT1共発現株(10株)であり、シェーカー流加培養8日目でコントロールのAE1/pPur共発現株(8株)に対して優位であった(t検定 P<0.01, 図11)。そこで、AE1/ALT1共発現株(10株)中、シェーカー流加培養検討において最も抗体高産生、且つ、ALT1 mRNAを高発現していたAA53 (1497mg/L/8days)を初発10x105cells/mLで1Lジャー流加培養をおこなうと、培養7日目で1.9g /L /7day と短期培養で抗体高産生であった(図12)。培養21日目で5.3g/LであったTauT/ALT1発現株TA41(WO2009/020144の実施例2)は、培養7日目で1.5 g/Lであることから、AA53はTA41以上に短期に抗体を高産生できるポテンシャルを有しており、実生産に適していると考えられる。
以上の結果は、アニオンエクスチェンジャー(AE1)を人為的に強発現させることによって、また、AE1とCSAD又はALT1を同時に強発現させることにより、抗体を高産生する細胞が得られることを示す。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。