本発明は、照射された光によって情報が記録又は再生される光記録媒体、及び当該光記録媒体の製造方法に関し、特に3つ又は4つの情報記録面を備える光記録媒体の層間隔の構造に関するものである。
高密度及び大容量の光情報記録媒体として市販されているものでDVDやBD(Blu−rayディスク)と呼ばれる光ディスクがある。このような光ディスクは画像、音楽及びコンピュータデータを記録する記録媒体として、最近急速に普及しつつある。また、記録容量をさらに増やすために、特許文献1に示すような複数の記録層を有する光ディスクも提案されている。
図13は、従来の光記録媒体及び光ピックアップの構成を示す図である。光記録媒体401は、光記録媒体401の表面401zに最も近い第1情報記録面401aと、光記録媒体401の表面401zに二番目に近い第2情報記録面401bと、光記録媒体401の表面401zに三番目に近い第3情報記録面401cと、光記録媒体401の表面401zから最も遠い第4情報記録面401dとを含む。
光源1から出射された発散性のビーム70は、焦点距離f1が15mmのコリメートレンズ53を透過し、偏光ビームスプリッタ52に入射する。偏光ビームスプリッタ52に入射したビーム70は、偏光ビームスプリッタ52を透過し、4分の1波長板54を透過して円偏光に変換される。その後、ビーム70は、焦点距離f2が2mmの対物レンズ56で収束ビームに変換され、光記録媒体401の透明基板を透過し、光記録媒体401内部に形成された第1情報記録面401a、第2情報記録面401b、第3情報記録面401c及び第4情報記録面401dのいずれかの上に集光される。
対物レンズ56は、第1情報記録面401aと第4情報記録面401dとの中間の深さ位置で球面収差が0になる様に設計されている。球面収差補正部93は、コリメートレンズ53の位置を光軸方向に移動させる。これにより、第1〜第4情報記録面401a〜401dに集光する場合に発生する球面収差は除去される。
アパーチャ55は、対物レンズ56の開口を制限し、対物レンズ56の開口数NAを0.85としている。第4情報記録面401dで反射されたビーム70は、対物レンズ56及び4分の1波長板54を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ52で反射される。偏光ビームスプリッタ52で反射されたビーム70は、焦点距離f3が30mmの集光レンズ59を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ57を経て、光検出器320に入射する。ビーム70には、シリンドリカルレンズ57を透過する際、非点収差が付与される。
光検出器320は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれの受光部は、受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号に基づいて、非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、プッシュプル法によるトラッキング誤差(以下TEとする)信号、及び光記録媒体401に記録された情報(以下RFとする)信号が生成される。FE信号及びTE信号は、所望のレベルに増幅されるとともに、位相補償が行われた後、アクチュエータ91及び92に供給されて、フォーカス制御及びトラッキング制御が行われる。
ここで、仮に、光記録媒体401の表面401zと第1情報記録面401aとの間の厚みt1、第1情報記録面401aと第2情報記録面401bとの間の厚みt2、第2情報記録面401bと第3情報記録面401cとの間の厚みt3、及び第3情報記録面401cと第4情報記録面401dとの間の厚みt4が全て同じ長さである場合には以下の様な問題が発生する。
例えば、第4情報記録面401dに情報を記録又は再生するために、第4情報記録面401dにビーム70を集光したとき、ビーム70の一部は、第3情報記録面401cで反射する。第3情報記録面401cから第4情報記録面401dまでの距離と、第3情報記録面401cから第2情報記録面401bまでの距離とは同じである。そのため、第3情報記録面401cで反射したビーム70の一部は、第2情報記録面401bの裏側に結像し、第2情報記録面401bの裏側からの反射光は、再び第3情報記録面401cで反射する。その結果、第3情報記録面401c、第2情報記録面401bの裏側及び第3情報記録面401cで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
さらに、第2情報記録面401bから第4情報記録面401dまでの距離と、第2情報記録面401bから光記録媒体401の表面401zまでの距離とも同じである。そのため、第2情報記録面401bで反射したビーム70の一部は、光記録媒体401の表面401zの裏側に結像し、表面401zの裏側からの反射光は、再び第2情報記録面401bで反射する。その結果、第2情報記録面401b、表面401zの裏側及び第2情報記録面401bで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
この様に、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に、他層の裏側に結像した反射光が重なって混入し、情報の記録又は再生に支障をきたすという問題がある。このような光は干渉性が高く、受光素子上で干渉による明暗分布を形成する。さらに、この明暗分布は、光ディスク面内の中間層の微少な厚みばらつきによる他層反射光の位相差変化に応じて変動するため、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させてしまう。以後、本明細書では、上記の問題を裏焦点課題と呼ぶ。
これを防ぐために、特許文献1には、各情報記録面の間の層間距離を光記録媒体401の表面401zから順番に徐々に長くなる様に設定し、本来読み出すべき第4情報記録面401dにビーム70を集光させたときに、同時に、ビーム70の一部が第2情報記録面401bの裏側及び表面401zの裏側に結像しないようにする方法が開示されている。ここで、厚みt1〜t4はそれぞれ±10μmの製造ばらつきを有している。厚みt1〜t4は、各々がばらついた場合にも異なる距離になる様に設定する必要がある。そのため、厚みt1〜t4の距離の差は例えば20μmに設定される。この場合、厚みt1〜t4は、それぞれ40μm、60μm、80μm及び100μmとなり、第1情報記録面401aから第4情報記録面401dまでの総層間厚みt(=t2+t3+t4)は240μmである。
また、表面401zから第1情報記録面401aまでのカバー層の厚みと、第4情報記録面401dから第1情報記録面401aまでの厚みとが等しい場合、第4情報記録面401dで反射した光は表面401zで焦点を結び、表面401zで反射する。表面401zを反射した光は、再び第4情報記録面401dで反射した後に光検出器320へ導かれる。このような表面401zの裏側で結像する光束は、他の情報記録面の裏側で結像する光束のようなピット又はマークに関する情報を有していない。しかしながら、記録層が多層化された場合、表面401zの裏側で反射した光束の光量は、他の情報記録面の裏側で反射した光束の光量と同程度の大きさがある。そのため、表面401zの裏側で反射した光束と、記録又は再生の対象となる情報記録面を反射した光束との干渉は、他の情報記録面の裏側で反射した光束と同じように発生し、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させる虞がある。
このような課題を考慮し、特許文献2では、光ディスクの情報記録層(情報記録面)の間隔を提案している。この特許文献2では、下記の構造を開示している。
光記録媒体は、4つの情報記録面を有し、光記録媒体の表面に近い側から第1情報記録面〜第4情報記録面としている。表面から第1情報記録面までの距離は47μm以下である。第1情報記録面から第4情報記録面までの各情報記録面間の中間層の厚みは、11〜15μmと、16〜21μmと、22μm以上との組み合わせからなる。表面から第4情報記録面までの距離は100μmである。表面から第1情報記録面までの距離が47μm以下であり、さらに表面から第4情報記録面までの距離が100μmである。
しかしながら、特許文献2において最適として示されるディスク構造は、表面から第1情報記録面までの距離(=t1)が47μm以下である。厚みt1は可能な限り厚く設定することによって、光ディスクの表面に傷や汚れがある場合の情報再生信号劣化量を低く抑えることが望ましい。4層ディスクにおいて、表面から第4情報記録面までの距離を標準的には100μmとした上で、厚みt1を可能な限り厚く設定できる構造が望まれる。また、3つの情報記録面を有する3層ディスクについても最適な構造の提案が望まれている。
特開2001−155380号公報
特開2008−117513号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる光記録媒体及び光記録媒体の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る光記録媒体は、4つの情報記録面を有した光記録媒体であって、前記光記録媒体の表面と、前記光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面との間の厚みをt1、前記第1の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面との間の厚みをt2、前記第2の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に三番目に近い第3の情報記録面との間の厚みをt3、及び、前記第3の情報記録面と、前記光記録媒体の表面から最も遠い第4の情報記録面との間の厚みをt4、と定義したときに、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たす。
本発明によれば、4つの情報記録面を有した光記録媒体は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たすので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明の実施の形態1に係る光記録媒体及び光ピックアップの概略構成を示す図である。
本発明の実施の形態1に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第4情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第2情報記録面及び表面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面、第1情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。
各情報記録層の反射率がほぼ等しい光記録媒体における層間厚みとジッターとの関係を示す図である。
本発明の実施の形態2に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
第3情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面からの反射光を示す図である。
第3情報記録面にビームを集光した場合の第2情報記録面及び第1情報記録面からの反射光を示す図である。
第3情報記録面にビームを集光した場合の第1情報記録面及び表面からの反射光を示す図である。
従来の光記録媒体及び光ピックアップの構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(実施の形態1)
以下、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体及び光ピックアップの概略構成を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体の層構成を示す図である。光ピックアップ201は、波長λが405nmのレーザ光を光記録媒体40に照射し、光記録媒体40に記録された信号を再生する。なお、図1に示す光ピックアップ201の構成は、図13に示す光ピックアップの構成とほぼ同じであるので、詳細な説明は省略する。
光記録媒体40には4つの情報記録面が形成されている。図2に示すように、光記録媒体40は、光記録媒体40の表面40zに近い側から順に、第1情報記録面40a、第2情報記録面40b、第3情報記録面40c及び第4情報記録面40dを有する。
光記録媒体40は、さらに、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45を有している。カバー層42の厚みt1は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層43の厚みt2は、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層44の厚みt3は、すなわち、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間の基材の厚みを表し、第3中間層45の厚みt4は、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面40zから第2情報記録面40bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面40zから第3情報記録面40cまでの間の距離を表し、距離d4(≒t1+t2+t3+t4)は、表面40zから第4情報記録面40dまでの間の距離を表している。
ここで、情報記録面が4面である場合の課題について説明する。まず、一つ目の課題として、多面反射光による干渉について図3〜図7を用いて説明する。図3は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第4情報記録面40dからの反射光を示す図であり、図4は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図であり、図5は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第2情報記録面40b及び表面40zからの反射光を示す図であり、図6は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c、第1情報記録面40a及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図である。
図3のように、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光された光束は、情報記録層(情報記録面)の半透過性により、以下の複数の光ビームに分岐される。
すなわち、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光する光束は、図3のように第4情報記録面40dで反射するビーム70と、図4のように第3情報記録面40cで反射し、第2情報記録面40bの裏側で焦点を結んで反射し、再び第3情報記録面40cで反射するビーム71(情報記録層の裏焦点光)と、図5のように第2情報記録面40bで反射し、表面40zの裏側で焦点を結んで反射し、再び第2情報記録面40bで反射するビーム72(表面の裏焦点光)と、図6のように表面及び情報記録面の裏側で焦点は結ばないが、第3情報記録面40c、第1情報記録面40aの裏側及び第2情報記録面40bの順で反射したビーム73とに分岐される。
例えば、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)と、第3情報記録面40cと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt3)とが等しい場合、ビーム70とビーム71とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。同様に、第4情報記録面40dと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt4+厚みt3)と、第2情報記録面40bと表面40zとの間の距離(厚みt2+厚みt1)とが等しい場合、ビーム70とビーム72とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。また、第2情報記録面40bと第1情報記録面40aとの間の距離(厚みt2)と、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)とが等しい場合、ビーム70とビーム73とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。
ビーム70に対して多面反射光であるビーム71〜73の光量は小さいが、各ビームは、等しい光路長と等しい光束径とで光検出器320に入射するため、各ビームの干渉による影響は大きくなる。また、光検出器320での受光量は、微少な情報記録層間の厚みの変化によって大きく変動し、安定な信号を検出することが困難となる。
図7は、層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。なお、図7では、ビーム70と、ビーム71、ビーム72又はビーム73との光量比を100:1とし、かつカバー層42及び第1中間層43の屈折率がいずれも1.57である場合の層間厚みの差に対するFS信号振幅を示している。図7において、横軸は層間厚みの差を示し、縦軸はFS信号振幅を示している。FS信号振幅は、ビーム70のみの反射光を光検出器320で受光したときのDC光量で規格化した値である。また、層間厚みの差とは、中間層同士の厚みの差、及びカバー層と中間層と厚みの差を表す。図7のように、層間厚みの差が1μm以下になるとFS信号が急激に変動することがわかる。
なお、図5のビーム72と同様に、カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みの総和(t2+t3+t4)との差が1μm以下になってもFS信号の変動などの問題が生じる。
二つ目の課題として、隣接する情報記録面間の層間距離が小さすぎると、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を受けるため、所定値以上の層間距離が必要となる。そこで、層間厚みについて検討し、最小となる層間厚みを決定する。図8は、各情報記録層の反射率がほぼ等しい光ディスクにおける層間厚みとジッターとの関係を示す図である。図8において、横軸は層間厚みを示し、縦軸はジッター値を示している。層間厚みが薄くなるに従ってジッターは劣化する。変曲点は約8μmとなっており、層間厚みが8μm以下の場合、急激なジッターの劣化が起こる。
また、一般的に光ディスクの製造上、各情報記録層の反射率は、1.5倍程度異なる場合がある。例えば、再生又は記録の対象となる情報記録層の反射率に対し、他の情報記録層の反射率が1.5倍である場合、干渉による情報記録層への影響は光の振幅比で√1.5倍となるため、層間厚みに対するジッターは図8の破線のようになる。すなわち、層間厚みの最小値を、8μmから2μm増やした10μm以上に設定すれば、他の情報記録層の迷光の光検出器での光量密度は反射率1.5×(8/10)2=0.96となり、他の情報記録層の反射効率の増加分を相殺することができる。結論として、層間厚みの最小値は10μmが最適である。
図2を用いて、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体40の構成について説明する。本実施の形態1では、製造上の厚みバラツキを考慮した上で、他の情報記録層又はディスク表面からの反射光の悪影響を解決するために、以下の条件が確保できるように4層ディスク(光記録媒体40)の構造を設定する。
条件(1):カバー層42の厚みt1は、従来の光ディスクのカバー層より厚くするため、50μmより大きくする(t1>50μm)。
条件(2):カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みt2〜t4の総和(t2+t3+t4)との差は、1μm以上確保する。距離d4の標準値は、市場のBDと同じ100μmにすることが望ましい。t1>50μmという条件(1)と組み合わせると、光記録媒体40は、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たすことになる。
条件(3):カバー層42の厚みt1と第1中間層43の厚みt2との和(t1+t2)と、第2中間層44の厚みt3と第3中間層45の厚みt4との和(t3+t4)との差は、1μm以上確保する。この条件(3)は、条件(1)及び(2)を満たせば自動的に満たされることが明らかである。
条件(4):厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差は、いずれも1μm以上である。
条件(5):層間厚み(中間層の厚み)の最小値は、先に述べたように、10μm以上必要である。そのため、厚みt2,t3,t4は、いずれも10μm以上である。
条件(6):厚みt3は、厚みt4よりも大きく、厚みt4は、厚みt2よりも大きくする。第2情報記録面40bは、第1情報記録面40aと第3情報記録面40cとに挟まれている。第3情報記録面40cは、第2情報記録面40bと第4情報記録面40dとに挟まれている。第2情報記録面40bと第3情報記録面40cとはいずれも、両側の隣接する2面からのクロストーク信号の影響を受けるため、クロストークを少なくする工夫が必要である。第2情報記録面40b及び第3情報記録面40cの情報を再生する際の他の情報記録面からのクロストークは、いずれも、第2中間層44(厚みt3)を厚くすることによって、減らすことが可能である。従って、厚みt3を最も厚くすることが望ましい。また、それぞれの情報記録面と、表面40zとの距離は、薄い程チルトマージンが広くなる。この点、第1中間層43の厚みt2は薄く、第3中間層45の厚みt4は厚い方が好ましい。以上の考察から、厚みt2,t3,t4は、t3>t4>t2を満たす。
条件(7):表面40zから、表面40zから最も遠い第4情報記録面40dまでの距離d4は、概ね100μmとする。これにより、現在市販されている光ディスクの中で最も大容量であるBD(Blu−ray Disc)と互換性を持たせると共に、チルトマージン等のシステムマージンも充分に確保できるという利点を得ることができる。
以下、上記の条件(1)〜(7)のもとで、カバー層厚み及び中間層厚みにおける製造上許される誤差又はばらつきを最も大きくできる構造について考える。
カバー層42及び第1中間層43〜第3中間層45の製造バラツキを一律に±eμmとする。この場合、上記条件(1)〜(7)を満たす各層間厚みt2〜t4の中心値は、上限値及び下限値を考慮して、下記の(1)〜(3)式のようになる。
t2=10+e(μm)・・・(1)
t4=(t2+e)+1+e=10+3e+1(μm)・・・(2)
t3=(t4+e)+1+e=10+5e+2(μm)・・・(3)
条件(2)を満たすためには、厚みt1の下限値は、厚みt2〜t4の上限値の和よりも1μm厚くする必要があるので、下記の(4)式より、t1=34+13eとなる。
t1−e=(t2+t3+t4+3e)+1(μm)=(10+e)+(10+5e+2)+(10+3e+1)+3e+1=34+12e・・・(4)
厚みt1〜t4の和は、条件(7)から、100μmである。そのため、ばらつきeは、下記の(5)式より、e=33/22=1.5(μm)となる。
t1+t2+t3+t4=(10+e)+(10+5e+2)+(10+3e+1)+(34+13e)=67+22e=100(μm)・・・(5)
また、厚みt1〜t4及び距離d1〜d4の標準値は、それぞれ以下のようになる。
t1=53.5(μm)
t2=11.5(μm)
t3=19.5(μm)
t4=15.5(μm)
d1=t1=53.5(μm)
d2=d1+t2=65.0(μm)
d3=d2+t3=84.5(μm)
d4=100(μm)
ここで、カバー層厚みt1及び各層間厚みt2〜t4の製造時のばらつき上限を一律としたとき、このばらつき内に各厚みが入っていれば、必ず条件(1)〜(7)が満足される。いわば、ばらつきeは十分条件である。たとえ、厚みt1の誤差がばらつきeを超えていても、他の中間層の厚みが基準値に近く、条件(1)〜(7)を満たせば信号品質は確保できる。また、フォーカス引き込み動作の際に、良好なフォーカスエラー信号品質を得るためには、表面40zから各情報記録層までの距離が一定の誤差内になければならない。
従って、4つの情報記録面を有した光記録媒体40は、光記録媒体40の表面40zから、前記光記録媒体の表面に最も近い第1情報記録面40aまでの距離をd1、光記録媒体40の表面40zから、光記録媒体40の表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bまでの距離をd2、光記録媒体40の表面40zから、光記録媒体40の表面40zに三番目に近い第3情報記録面40cまでの距離をd3、光記録媒体40の表面40zから、光記録媒体40の表面40zから最も遠い第4情報記録面40dまでの距離をd4、光記録媒体40の表面40zと第1情報記録面40aとの間の厚みをt1(=d1)、第1情報記録面40aと第2情報記録面40bとの間の厚みをt2(=d2−d1)、第2情報記録面40bと第3の情報記録面40cとの間の厚みをt3(=d3−d2)、第3情報記録面40cと第4情報記録面40dとの間の厚みをt4(=d4−d3)、距離d1、d2、d3、d4の公差をそれぞれE1、E2、E3、E4と定義したときに、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、53.5μm−E1≦d1≦53.5μm+E1、65.0μm−E2≦d2≦65.0μm+E2、84.5μm−E3≦d3≦84.5μm+E3、及び、100.0μm−E4≦d4≦100.0μm+E4を満たすことが望ましい。
この場合、光記録媒体40の表面40zの裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面40a〜40dでの反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体40の表面40zと、光記録媒体40の表面40zに最も近い第1情報記録面40aとの間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体40の表面40zに傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
公差E1は、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると6μmであることが必要である。
さらに、公差E1が5μmであれば、表面40zに最も近い第1情報記録面40aへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
さらに、公差E1は、カバー層42の厚みt1の誤差だけで決まり、他の中間層の厚みの影響を受けない。そのため、光記録媒体40を高精度に作ることが可能であることを考慮すると、公差E1を3μmとして、表面40zに最も近い第1情報記録面40aへのより安定したフォーカス引き込みを可能とすることもできる。
また、公差E2も、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると6μmであることが必要である。
さらに、公差E2が5μmであれば、表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
公差E1を最低限の3μmとし、厚みt2の誤差を先に考察したばらつきe=1.5μmとすれば、公差E2は4.5μm程度まで低くすることは可能である。この場合、表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bへのさらに安定したフォーカス引き込みが可能である。
公差E3及び公差E4も、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると6μmであることが必要である。さらに、公差E3及び公差E4が5μmであれば、表面40zに三番目に近い第3情報記録面40c、及び表面40zから最も遠い第4情報記録面40dへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
従って、最も望ましい光記録媒体40の構成は、50.5μm≦d1≦56.5μm、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、及び、94.0μm≦d4≦106.0μmとなる。
さらに、t3−t4≧1μm、かつ、t4−t2≧1μmであるので、厚みt2,t4は、厚みt3より1μm以上薄いという制限がある。しかし、厚みt3の上限はこの条件には現れていない。厚みt3の上限はt3=d3−d2から読み取ることができる。距離d3は、84.5μm−E3以上、84.5μm+E3以下であり、距離d2は、65.0μm−E2以上、65.0μm+E2以下であるので、厚みt3の最大値は、E3+E2+19.5μmである。
例えば、公差E3と公差E2とをいずれも6μmとしたときは、厚みt3の最大値は31.5μmになる。しかし、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cへのフォーカスジャンプ時には、あらかじめジャンプ先の第3情報記録面40cに球面収差量を合わせておかなければ、フォーカスエラー信号の振幅及び感度が劣化して、安定にフォーカス制御を再開できない。そのため、厚みt3の公差は高々6μmに抑えることが望ましい。従って、厚みt3は、t3≦25.5μmとすることが望ましい。
さらに、厚みt3の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができるので、厚みt3は、t3≦24.5μmとすることがより望ましい。さらに、光記録媒体(光ディスク)の製造可能な範囲を考えても、厚みt3の公差は2.5μm程度に抑えることが可能であるので、厚みt3は、t3≦22.0μmとすることがより望ましい。
第2中間層44の厚みt3と同様に、第1中間層43の厚みt2及び第3中間層45の厚みt4の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。そのため、厚みt2は、下限の10.0μm以上、16.5μm(11.5μm+5μm)以下であり、厚みt3は、19.5μm±5μm、つまり、14.5μm以上、24.5μm以下であり、厚みt4は、11μm(=厚みt2の下限+1μm)以上、20.5μm(15.5μm+5μm)以下であることが望ましい。なお、t1=d1であるので、厚みt1は、50.5μm以上、56.5μm以下であることが望ましい。
上記の条件は、良好な情報信号を安定に再生するために必要な条件である。カバー層及び各中間層の厚みt1〜t4の様々な組み合わせのうち、上記条件を満たす組み合わせが、光記録媒体40に許される構造ということになる。しかし、カバー層及び各中間層の厚みt1〜t4の組み合わせによって条件への適否を判断するよりも、カバー層及び各中間層の厚みt1〜t4の公差を狭い範囲に収めて製造することにより、組み合わせを考慮することなく条件に適した光ディスクを製造するほうが、製造上の目標値を簡単に設定しやすく、条件設定が容易になるというメリットがある。一方、上記のように性能上問題のない範囲を明確にすることにより、目標値から多少逸脱して製造された光記録媒体であっても、良品であることが判別でき、製品歩留まりを高くすることができるので、製品コストを低く抑えることができるという効果が得られる。
次に、別の視点として、製造上実現可能な中間層の厚みの公差と、その公差が、上記の裏焦点問題回避及び層間クロストーク問題回避の十分条件となる層構造とは、いかなるものかについて考えた。我々が製造上実現可能な中間層の厚み公差を実験的に検討したところ、中間層の厚み公差が+1.5μmであれば、大量生産可能であることが判明した。層間クロストーク問題回避の観点から、厚みt2の最小値は10μmである。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt2の標準値は11.5μm以上でなければならない。最後に、裏焦点問題回避のため、t1−(t2+t3+t4)≧1を考慮しなければならないことを考慮して、中間層の厚みの標準値は必要最小限に設定する。従って、厚みt2の標準値は11.5μmとなる。さらに、1.5μmの製造公差を標準値よりも厚い側に確保すると、厚みt2の上限は13μmとなる。
裏焦点問題回避の観点から、t4−t2≧1μmでなければならないので、厚みt4の最小値は14μmとなる。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt4の標準値は15.5μm以上でなければならないので、厚みt4の標準値は15.5μmとする。さらに1.5μmの製造公差を標準値よりも厚い側に確保すると、厚みt4の上限は17μmとなる。
さらに、裏焦点問題回避の観点から、t3−t4≧1μmでなければならないので、厚みt3の最小値は18μmとなる。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt3の標準値は19.5μm以上でなければならないので、厚みt3の標準値は19.5μmとする。さらに、1.5μmの製造公差を標準値よりも厚い側に確保すると、厚みt3の上限は21μmとなる。
さらに、裏焦点問題回避の観点から、t1−(t2+t3+t4)≧1でなければならない。1.5μmの製造公差を確保すると、厚みt2、厚みt3及び厚みt4の上限値はそれぞれ、13μm、17μm及び21μmなので、これらの和(t2+t3+t4)の上限値は、51μmである。従って、t1−(t2+t3+t4)≧1の条件は、カバー層42の厚みt1の下限値が52μmであれば満足される。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt1の標準値は53.5μm以上でなければならない。
ここで、距離d4の標準値を100μmにすることを考慮する。距離d4は、厚みt1〜t4の総和である。厚みt1の標準値を53.5μmとしても、ここまで考えてきた厚みt2〜t3の標準値と加えると100μmに達する。従って、各標準値はこれ以上厚く設定する余地がない。そのため、厚みt1、厚みt2、厚みt3及び厚みt4の標準値は、それぞれ、53.5μm、11.5μm、15.5μm及び19.5μmとする。これらの厚みの標準値は、1.5μmの製造公差を確保し、かつ、層間クロストーク問題と裏焦点問題とを回避し、かつ、距離d4の標準値を100μmとする唯一の解であることが、このような考察からも判明した。
従って、厚みt1の標準範囲は、52.0μm以上、55.0μm以下であり、厚みt2の標準範囲は、10.0μm以上、13.0μm以下であり、厚みt3の標準範囲は、18.0μm以上、21.0μm以下であり、厚みt4の標準範囲は、14.0μm以上、17.0μm以下であることが望ましい。
換言すれば、厚みt1の標準値は、53.5μmであり、厚みt2の標準値は、11.5μmであり、厚みt3の標準値は、19.5μmであり、厚みt4の標準値は、15.5μmであり、各厚みt1〜t4の誤差は、それぞれ±1.5μm以内に抑えることが望ましい。
本来、上記の条件(1)〜(7)から導き出された光記録媒体が満たすべき条件(以下、必須条件とする)には、複数のパラメータに関連する条件式が複数存在している。そのため、全ての条件を満たすためには、同時に勘案すべき条件が多数存在し、各層の厚みを決定することが非常に難しい。また、各層の条件が必須条件を満たす場合であっても、条件によっては、製造上の誤差が許容されず、実際の製造が非常に困難になる場合がある。
例えば、ある中間層の膜厚を所定の値に設定した場合に、他の中間層の膜厚条件が各条件は満たしているが、許容される誤差が非常に小さくなってしまうといった場合がある。よって、必須条件が判明したとしても、光透過層及び中間層の全てが必須条件を満たすように各層の条件を決定すること、更には、必須条件を満たす場合であっても、製造上の許容誤差が、ある層において極端に小さくならないように各層の条件を設定することは非常に難しい。
そこで、本実施の形態1では、上記の必須条件のみを規定するのではなく、光記録媒体の製造時に考慮すべき条件を推奨条件として規定している。
これにより、同時に勘案する必要があるパラメータ数を減らし、光記録媒体の製造時に各層の目標値を容易に設定することが可能になる。また、ある層だけが極端に許容誤差が小さくなるといった製造上の課題を解決することができる。さらに、各層の許容誤差を全て1.5μm以上にすることができるため、大量生産が可能になる。
なお、4つの情報記録面を有した光記録媒体40の製造方法は、基板上に、カバー層(光透過層)42、第1情報記録面40a、第1中間層43、第2情報記録面40b、第2中間層44、第3情報記録面40c、第3中間層45及び第4情報記録面40dを形成する工程を有する。そして、カバー層42の厚みt1及び第1乃至第3中間層43〜45の厚みt2〜t4が、52.0μm≦t1≦55.0μm、10.0μm≦t2≦13.0μm、18.0μm≦t3≦21.0μm、及び、14.0μm≦t4≦17.0μm、を満たすように、第1乃至第4情報記録面40a〜40d、第1乃至第3中間層43〜45、及びカバー層42が形成される。
また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体40は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たす。また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体40は、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、94.0μm≦d4≦106.0μm、50.5μm≦t1≦56.5μm、10.0μm≦t2≦16.5μm、14.5μm≦t3≦24.5μm、及び、11.0μm≦t4≦20.5μmを満たす。
さらに、厚みt1の標準値は53.5μmであり、厚みt2の標準値は11.5μmであり、厚みt3の標準値は19.5μmであり、厚みt4の標準値は15.5μmであり、カバー層42の厚みt1及び第1乃至第3の中間層43〜45の厚みt2〜t4の公差がそれぞれ1.5μm以下になるように、第1乃至第4情報記録面40a〜40d、第1乃至第3中間層43〜45、及びカバー層42を形成する。
(実施の形態2)
上記の実施の形態1では、4つの情報記録面を有する光記録媒体について説明したが、実施の形態2では、3つの情報記録面を有する光記録媒体について説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
光記録媒体30には3つの情報記録面が形成されている。図9に示すように、光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zに近い側から順に、第1情報記録面30a、第2情報記録面30b及び第3情報記録面30cを有する。光記録媒体30は、さらに、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34を有している。
カバー層32の厚みt1は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層33の厚みt2は、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層34の厚みt3は、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面30zから第2情報記録面30bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面30zから第3情報記録面30cまでの間の距離を表している。
ここで、情報記録面が3面である場合の課題について説明する。まず、一つ目の課題として、多面反射光による干渉について図10〜図12を用いて説明する。図10は、第3情報記録面30cにビームを集光した場合の第3情報記録面30cからの反射光を示す図であり、図11は、第3情報記録面30cにビームを集光した場合の第2情報記録面30b及び第1情報記録面30aからの反射光を示す図であり、図12は、第3情報記録面30cにビームを集光した場合の第1情報記録面30a及び表面30zからの反射光を示す図である。
図10のように、情報を再生又は記録するために第3情報記録面30cに集光された光束は、情報記録層(情報記録面)の半透過性により、以下の複数の光ビームに分岐される。
すなわち、情報を再生又は記録するために第3情報記録面30dに集光する光束は、図10のように第3情報記録面30cで反射するビーム75と、図11のように第2情報記録面30bで反射し、第1情報記録面30aの裏側で焦点を結んで反射し、再び第2情報記録面30bで反射するビーム76(情報記録層の裏焦点光)と、図12のように第1情報記録面30aで反射し、表面30zの裏側で焦点を結んで反射し、再び第1情報記録面30aで反射するビーム77(表面の裏焦点光)とに分岐される。
例えば、第2情報記録面30bと第1情報記録面30aとの間の距離(厚みt2)と、第3情報記録面30cと第2情報記録面30bとの間の距離(厚みt3)とが等しい場合、ビーム75とビーム76とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。同様に、第1情報記録面30aと表面30zとの間の距離(厚みt1)と、第3情報記録面30cと第1情報記録面30aとの間の距離(厚みt2+厚みt3)とが等しい場合、ビーム75とビーム77とはそれぞれ等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。
ビーム75に対して多面反射光であるビーム76,77の光量は小さいが、各ビームは、等しい光路長と等しい光束径とで光検出器320に入射するため、各ビームの干渉による影響は大きくなる。また、光検出器320での受光量は、微少な情報記録層間の厚みの変化によって大きく変動し、安定な信号を検出することが困難となる。
層間厚みの差が1μm以下になるとFS信号が急激に変動するので、光記録媒体30における層間厚みの差は、4層ディスクと同じく1μm以上必要である。
二つ目の課題として、隣接する情報記録面間の層間距離が小さすぎると、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を受けるため、4層ディスクと同様に、層間距離は、10μm以上必要となる。
図9を用いて、本発明の実施の形態2に係る光記録媒体30の構成について説明する。本実施の形態2では、製造上の厚みバラツキを考慮した上で、他の情報記録層又はディスク表面からの反射光の悪影響を解決するために、以下の条件が確保できるように3層ディスク(光記録媒体30)の構造を設定する。
条件(1):カバー層32の厚みt1は、従来の光ディスクのカバー層より厚くするため、50μmより大きくする(t1>50μm)。
条件(2):カバー層32の厚みt1と、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt2,t3の総和(t2+t3)との差は、1μm以上確保する。距離d2の標準値は、市場のBDと同じ100μmにすることが望ましい。t1>50μmという条件(1)と組み合わせると、光記録媒体30は、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすことになる。
条件(3):厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差は、いずれも1μm以上である。
条件(4):層間厚み(中間層の厚み)の最小値は、先に述べたように、10μm以上必要である。そのため、厚みt2,t3は、いずれも10μm以上である。
条件(5):情報記録面と表面30zとの距離が薄い程チルトマージンが広くなる。この点、第1中間層33の厚みt2は薄く、第2中間層34の厚みt3は厚い方が好ましい。以上の考察から、厚みt2,t3は、t3>t2を満たす。
条件(6):表面30zから、表面30zから最も遠い第3情報記録面30cまでの距離d3は、概ね100μmとする。これにより、現在市販されている光ディスクの中で最も大容量であるBD(Blu−ray Disc)と互換性を持たせると共に、チルトマージン等のシステムマージンも充分に確保できるという利点を得ることができる。
以下、上記の条件(1)〜(6)のもとで、カバー層厚み及び中間層厚みにおける製造上許される誤差又はばらつきを最も大きくできる構造について考える。
カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の製造バラツキを一律に±eμmとする。この場合、上記条件(1)〜(6)を満たす各層間厚みt2〜t3の中心値は、上限値及び下限値を考慮して、下記の(6)及び(7)式のようになる。
t2=10+e(μm)・・・(6)
t3=(t2+e)+1+e=10+3e+1(μm)・・・(7)
条件(2)を満たすためには、厚みt1の下限値が、厚みt2,t3の上限値の和よりも1μm厚くする必要があるので、下記の(8)式より、t1=22+7eとなる。
t1−e=(t2+t3+2e)+1(μm)=(10+e)+(10+3e+1)+2e+1=22+6e・・・(8)
厚みt1〜t3の和は、条件(6)から、100μmである。そのため、ばらつきeは、下記の(9)式より、e=57/11≒5.2(μm)となる。
t1+t2+t3=(10+e)+(10+3e+1)+(22+7e)=43+11e=100(μm)・・・(9)
また、厚みt1〜t3の標準値は、それぞれ以下のようになる。
t1=58.3(μm)
t2=15.2(μm)
t3=26.5(μm)
すでに市場において普及している2層BDは、2つの情報記録層の間の中間層の厚みが25μm程度であるので、3層ディスクの厚みt3も、2層BDと同じ厚みを標準値とした方が、再生機及び記録機への対応が容易である。また、中間層の厚みの製造ばらつき、つまり公差は±3μmもあれば、容易にディスクの製造が可能である。そこで、厚みt3は、25±3μmとする。条件(3)及び(5)を考慮した上で、層間クロストークを抑えて良好な再生信号を得るために、第1中間層33の厚みt2をなるべく厚くすると、厚みt2は、18±3μmとなる。カバー層32の厚みt1は、100−(t2+t3)=57(μm)となる。
従って、距離d1(=t1)は、57.0(μm)となり、距離d2(=d1+t2)は、75.0(μm)となり、距離d3は、100(μm)となる。
従って、3つの情報記録面を有した光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに最も近い第1情報記録面30aまでの距離をd1、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに二番目に近い第2情報記録面30bまでの距離をd2、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zから最も遠い第3情報記録面30cまでの距離をd3、光記録媒体30の表面30zと第1情報記録面30aとの間の厚みをt1(=d1)、第1情報記録面30aと第2情報記録面30bとの間の厚みをt2(=d2−d1)、第2の情報記録面30bと第3情報記録面30cとの間の厚みをt3(=d3−d2)、と定義したときに、52.0μm≦t1≦62.0μm、15.0μm≦t2≦21.0μm、22.0μm≦t3≦28.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μmを満たすことが望ましい。
ここで、カバー層32は第1及び第2中間層33,34より厚く、公差も大きくとることが望ましい。そこで、距離d1(カバー層32の厚みt1)の公差は、±5μmとしている。また、距離d2,d3の公差は、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると±6μmであることが必要である。このことを考慮して距離d2,d3の範囲を決めた。
さらに、距離d2,d3の公差が±5μmであれば、記録対象又は再生対象の情報記録面へのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
なお、第1及び第2中間層33,34の厚みt2,t3の公差を5μm迄拡大したとしても、フォーカスジャンプを安定に行うことができ、光記録媒体の製造マージンを広げることもできる。そこで、光記録媒体30は、t3−t2≧1μm、t2≧10μm、t1−(t2+t3)≧1μm、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、52.0μm≦d1≦62.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μmを満たすことが望ましい。この条件の方が、光記録媒体の製造歩留まりをより大きくできるという意味では望ましい。
この場合、光記録媒体30の表面30zの裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面30a〜30cでの反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体30の表面30zと、光記録媒体30の表面30zに最も近い第1情報記録面30aとの間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体30の表面30zに傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
さらに、距離d2,d3の公差が±5μmであれば、表面30zに最も近い第1情報記録面30aへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
また、カバー層32及び各中間層33,34の厚みt1〜t3の組み合わせによって条件への適否を判断するよりも、カバー層32及び各中間層33,34の厚みt1〜t3の公差を狭い範囲に収めて製造することにより、組み合わせを考慮することなく条件に適した光ディスクを製造するほうが、製造上の目標値を簡単に設定し安く、条件設定が容易になるというメリットがある。一方、上記のように性能上問題のない範囲を明確にすることにより、目標値から多少逸脱して製造された光記録媒体であっても、良品であることが判別でき、製品歩留まりを高くすることができるので、製品コストを低く抑えることができるという効果が得られる。
そこで、光記録媒体30の製造公差は、4層の光記録媒体の製造公差の倍の±3μmとして、厚みt1の標準範囲は54以上、60μm以下であり、厚みt2の標準範囲は15μm以上、21μm以下であり、厚みt3の標準範囲は22μm以上、28μm以下であるように光記録媒体30を製造することが望ましい。
厚みt1〜t3がこのような範囲内になるように光記録媒体30を製造すれば、必要な条件はほぼ満たされる。
ただし、全ての厚みt1〜t3が厚い場合、あるいは逆に全ての厚みt1〜t3が薄い場合は、距離d3の誤差が±9μm(=±3μm×3)にまで拡大してしまい、距離d3は94.0μm≦d3≦106.0μmという条件を逸脱してしまう。そのため、この点を考慮すると、厚みt1は、55μm以上、59μm以下であり、厚みt2は、16μm以上、20μm以下であり、厚みt3は、23μm以上、27μm以下であることが最も望ましい。言い換えると、厚みt1は、57±2μmであり、厚みt2は、18±2μmであり、厚みt3は、25±2μmであるように光記録媒体30を製造することが最も望ましい。
なお、3つの情報記録面を有した光記録媒体30の製造方法は、基板上に、カバー層(光透過層)32、第1情報記録面30a、第1中間層33、第2情報記録面30b、第2中間層34及び第3情報記録面30cを形成する工程を有する。そして、カバー層32の厚みt1及び第1及び第2中間層33,34の厚みt2,t3が、55.0μm≦t1≦59.0μm、16.0μm≦t2≦20.0μm、及び、23.0μm≦t3≦27.0μm、を満たすように、第1乃至第3情報記録面30a〜30c、第1及び第2中間層33,34、及びカバー層32が形成される。
また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体30は、t2−t3≧1μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たす。また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体30は、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、及び、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たす。
さらに、厚みt1の標準値は57.0μmであり、厚みt2の標準値は18.0μmであり、厚みt3の標準値は25.0μmであり、カバー層32の厚みt1及び第1及び第2中間層33,34の厚みt2,t3の公差がそれぞれ2.0μm以下になるように、第1乃至第3情報記録面30a〜30c、第1及び第2中間層33,34、及びカバー層32が形成される。
(実施の形態3)
実施の形態3では、3つの情報記録面を有する光記録媒体の別の実施の形態について説明する。フォーカスジャンプを安定に行うことのできる範囲内の中間層の厚みを全て許容することを優先し、厚みt2が薄くなることを許容すれば、光記録媒体をより簡単に、より安価に製造することができる。実施の形態2の考察により、厚みt3の標準値を25μmとし、厚みt3の公差を±5μmとすることによって、厚みt3は、20μm以上、30μm以下とすることができる。
また、厚みt2の上限は、厚みt3の最小厚みより1μm以上薄くすることにより、19μmとすることができる。厚みt2は、厚みt3より薄いので、厚み公差も薄くできる。従って、厚みt2の公差を±4μmとすることにより、厚みt2は、11μm以上、19μm以下とする。厚みt2の標準値は、厚みt2の許容範囲の中間値の15μmとすればよい。
厚みt1の標準値は、t1=100μm−t2−t3から、60μmとなる。厚みt1の公差を±5μmとすることにより、厚みt1は、55μm以上、65μm以下とする。
上記の各中間層の設定条件から、3つの情報記録面を有した光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに最も近い第1の情報記録面30aまでの距離をd1、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに二番目に近い第2の情報記録面30bまでの距離をd2、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zから最も遠い第3の情報記録面30cまでの距離をd3、光記録媒体30の表面30zと第1の情報記録面30aとの間の厚みをt1(=d1)、第1の情報記録面30aと第2の情報記録面30bとの間の厚みをt2(=d2−d1)、第2の情報記録面30bと第3の情報記録面30cとの間の厚みをt3(=d3−d2)と定義したときに、55.0μm≦t1≦65.0μm、11.0μm≦t2≦19.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μmを満たすことが望ましい。
さらに、フォーカス引き込み時の球面収差の設定の容易さを考えると、距離d2,d3の公差が±5μmであれば、表面30zに最も近い第1情報記録面30aへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。そのため、距離d2は、70.0μm以上、80.0μm以下であり、かつ、距離d3は、95.0μm以上、105.0μm以下であることが望ましい。
以上、これらの組み合わせで製造された4つ又は3つの情報記録面を有する光記録媒体により、本来読み出すべき特定の情報記録層の信号面からの反射光に対する影響を抑えることができるため、安定したサーボ信号及び再生信号が得られる大容量光記録媒体を提供することができる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光記録媒体は、4つの情報記録面を有した光記録媒体であって、前記光記録媒体の表面と、前記光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面との間の厚みをt1、前記第1の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面との間の厚みをt2、前記第2の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に三番目に近い第3の情報記録面との間の厚みをt3、及び、前記第3の情報記録面と、前記光記録媒体の表面から最も遠い第4の情報記録面との間の厚みをt4、と定義したときに、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たす。
この構成によれば、4つの情報記録面を有した光記録媒体は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たすので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体において、前記光記録媒体の表面から前記第1の情報記録面までの距離をd1、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、前記光記録媒体の表面から前記第4の情報記録面までの距離をd4、及び、前記距離d1,d2,d3,d4の公差をそれぞれE1,E2,E3,E4と定義したときに、53.5μm−E1≦d1≦53.5μm+E1、65.0μm−E2≦d2≦65.0μm+E2、84.5μm−E3≦d3≦84.5μm+E3、及び、100.0μm−E4≦d4≦100.0μm+E4、を満たし、前記公差E1,E2,E3,E4は、それぞれ6μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、光記録媒体は、53.5μm−E1≦d1≦53.5μm+E1、65.0μm−E2≦d2≦65.0μm+E2、84.5μm−E3≦d3≦84.5μm+E3、及び、100.0μm−E4≦d4≦100.0μm+E4、を満たし、公差E1,E2,E3,E4は、それぞれ6μm以下である。
したがって、公差E1,E2,E3,E4を、それぞれ6μm以下とすることにより、フォーカスエラー信号の劣化を抑制することができ、安定してフォーカス制御を行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記公差E1は3μmであることが好ましい。公差E1は、厚みt1の誤差だけで決まり、他の中間層の厚みの影響を受けない。そのため、公差E1を3μmとすることにより、光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面へフォーカス引き込みをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記公差E2は4.5μmであることが好ましい。この構成によれば、公差E2を4.5μmとすることにより、光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面へのフォーカス引き込みをさらに安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt3は、25.5μm以下であることが好ましい。
第2情報記録面から第3情報記録面へのフォーカスジャンプ時には、あらかじめジャンプ先の第3情報記録面に球面収差量を合わせておかなければ、フォーカスエラー信号の振幅及び感度が劣化して、安定にフォーカス制御を再開できない。そのため、厚みt3の公差は6μmに抑えることが望ましく、厚みt3を25.5μm以下とすることにより、フォーカスエラー信号の劣化を抑制することができ、安定してフォーカス制御を行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt3は、24.5μm以下であることが好ましい。この構成によれば、厚みt3を24.5μm以下とすることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt2は、10.0μm以上、16.5μm以下であり、前記厚みt3は、14.5μm以上、24.5μm以下であり、前記厚みt4は、11.0μm以上、20.5μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、各厚みt2,t3,t4の公差を5μmに抑える、すなわち、厚みt2を、10.0μm以上、16.5μm以下とし、厚みt3を、14.5μm以上、24.5μm以下とし、厚みt4を、11.0μm以上、20.5μm以下とすることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記距離d1は、50μmより大きいことが好ましい。この構成によれば、距離d1を50μmより大きくすることにより、光記録媒体の表面から、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面までの厚みを、従来の光記録媒体のカバー層の厚みよりも厚くすることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、4つの情報記録面を有した光記録媒体の製造方法であって、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層、第3の情報記録面、第3の中間層及び第4の情報記録面を形成する工程を有し、前記光透過層の厚みをt1、前記第1の中間層の厚みをt2、前記第2の中間層の厚みをt3、前記第3の中間層の厚みをt4、と定義したときに、前記光透過層の厚み及び前記第1乃至第3の中間層の厚みが、52.0μm≦t1≦55.0μm、10.0μm≦t2≦13.0μm、18.0μm≦t3≦21.0μm、及び、14.0μm≦t4≦17.0μm、を満たすように前記第1乃至第4の情報記録面、前記第1乃至第3の中間層、及び前記光透過層を形成する。
この構成によれば、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層、第3の情報記録面、第3の中間層及び第4の情報記録面が形成される。そして、光透過層の厚み及び第1乃至第3の中間層の厚みが、52.0μm≦t1≦55.0μm、10.0μm≦t2≦13.0μm、18.0μm≦t3≦21.0μm、及び、14.0μm≦t4≦17.0μm、を満たすように第1乃至第4の情報記録面、第1乃至第3の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らし、かつ光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、前記光記録媒体の表面から前記第4の情報記録面までの距離をd4、と定義したときに、製造された光記録媒体は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たすことが好ましい。
この構成によれば、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たすように光記録媒体が製造されるので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、製造された光記録媒体は、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、94.0μm≦d4≦106.0μm、50.5μm≦t1≦56.5μm、10.0μm≦t2≦16.5μm、14.5μm≦t3≦24.5μm、及び、11.0μm≦t4≦20.5μmを満たすことが好ましい。
この構成によれば、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、94.0μm≦d4≦106.0μm、50.5μm≦t1≦56.5μm、10.0μm≦t2≦16.5μm、14.5μm≦t3≦24.5μm、及び、11.0μm≦t4≦20.5μmを満たすように光記録媒体が製造されるので、厚みt2,t3,t4の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記厚みt1の標準値は53.5μmであり、前記厚みt2の標準値は11.5μmであり、前記厚みt3の標準値は19.5μmであり、前記厚みt4の標準値は15.5μmであり、前記光透過層の厚み及び前記第1乃至第3の中間層の厚みの公差がそれぞれ1.5μm以下になるように、前記第1乃至第4の情報記録面、前記第1乃至第3の中間層、及び前記光透過層を形成することが好ましい。
この構成によれば、厚みt1の標準値は53.5μmであり、厚みt2の標準値は11.5μmであり、厚みt3の標準値は19.5μmであり、厚みt4の標準値は15.5μmであり、光透過層の厚み及び第1乃至第3の中間層の厚みの公差がそれぞれ1.5μm以下になるように、第1乃至第4の情報記録面、第1乃至第3の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、3つの情報記録面を有した光記録媒体であって、前記光記録媒体の表面と、前記光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面との間の厚みをt1、前記第1の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面との間の厚みをt2、及び、前記第2の情報記録面と、前記光記録媒体の表面から最も遠い第3の情報記録面との間の厚みをt3、と定義したときに、t3−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たす。
この構成によれば、3つの情報記録面を有した光記録媒体は、t3−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体において、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、及び、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、と定義したときに、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすことが好ましい。
この構成によれば、光記録媒体は、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすので、厚みt2,t3の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、3つの情報記録面を有した光記録媒体の製造方法であって、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層及び第3の情報記録面を形成する工程を有し、前記光透過層の厚みをt1、前記第1の中間層の厚みをt2、前記第2の中間層の厚みをt3、と定義したときに、前記光透過層の厚み及び前記第1及び第2の中間層の厚みが、55.0μm≦t1≦59.0μm、16.0μm≦t2≦20.0μm、及び、23.0μm≦t3≦27.0μm、を満たすように前記第1乃至第3の情報記録面、前記第1及び第2の中間層、及び前記光透過層を形成する。
この構成によれば、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層及び第3の情報記録面が形成される。そして、光透過層の厚み及び第1及び第2の中間層の厚みが、55.0μm≦t1≦59.0μm、16.0μm≦t2≦20.0μm、及び、23.0μm≦t3≦27.0μm、を満たすように第1乃至第3の情報記録面、第1及び第2の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体において、製造された光記録媒体は、t2−t3≧1μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすことが好ましい。
この構成によれば、t2−t3≧1μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすように光記録媒体が製造されるので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らし、かつ光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することができる。
また、上記の光記録媒体において、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、と定義したときに、製造された光記録媒体は、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.5μm、及び、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすことが好ましい。
この構成によれば、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、及び、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすように光記録媒体が製造されるので、厚みt2,t3の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt1の標準値は57.0μmであり、前記厚みt2の標準値は18.0μmであり、前記厚みt3の標準値は25.0μmであり、前記光透過層の厚み及び前記第1及び第2の中間層の厚みの公差がそれぞれ2.0μm以下になるように、前記第1乃至第3の情報記録面、前記第1及び第2の中間層、及び前記光透過層を形成することが好ましい。
この構成によれば、厚みt1の標準値は57.0μmであり、厚みt2の標準値は18.0μmであり、厚みt3の標準値は25.0μmであり、光透過層の厚み及び第1及び第2の中間層の厚みの公差がそれぞれ2.0μm以下になるように、第1乃至第3の情報記録面、第1及び第2の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明に係る光記録媒体及び光記録媒体の製造方法は、任意の情報記録面への情報の記録又は再生時に他の情報記録面からの反射光の影響を最小限に抑えることにより、サーボ信号及び再生信号への影響を低減することができる。これにより、品質の良い再生信号が得られる、既存ディスクとの互換性を確保しやすい大容量の光記録媒体が提供できる。
本発明は、照射された光によって情報が記録又は再生される光記録媒体、及び当該光記録媒体の製造方法に関し、特に3つ又は4つの情報記録面を備える光記録媒体の層間隔の構造に関するものである。
高密度及び大容量の光情報記録媒体として市販されているものでDVDやBD(Blu−rayディスク)と呼ばれる光ディスクがある。このような光ディスクは画像、音楽及びコンピュータデータを記録する記録媒体として、最近急速に普及しつつある。また、記録容量をさらに増やすために、特許文献1に示すような複数の記録層を有する光ディスクも提案されている。
図13は、従来の光記録媒体及び光ピックアップの構成を示す図である。光記録媒体401は、光記録媒体401の表面401zに最も近い第1情報記録面401aと、光記録媒体401の表面401zに二番目に近い第2情報記録面401bと、光記録媒体401の表面401zに三番目に近い第3情報記録面401cと、光記録媒体401の表面401zから最も遠い第4情報記録面401dとを含む。
光源1から出射された発散性のビーム70は、焦点距離f1が15mmのコリメートレンズ53を透過し、偏光ビームスプリッタ52に入射する。偏光ビームスプリッタ52に入射したビーム70は、偏光ビームスプリッタ52を透過し、4分の1波長板54を透過して円偏光に変換される。その後、ビーム70は、焦点距離f2が2mmの対物レンズ56で収束ビームに変換され、光記録媒体401の透明基板を透過し、光記録媒体401内部に形成された第1情報記録面401a、第2情報記録面401b、第3情報記録面401c及び第4情報記録面401dのいずれかの上に集光される。
対物レンズ56は、第1情報記録面401aと第4情報記録面401dとの中間の深さ位置で球面収差が0になる様に設計されている。球面収差補正部93は、コリメートレンズ53の位置を光軸方向に移動させる。これにより、第1〜第4情報記録面401a〜401dに集光する場合に発生する球面収差は除去される。
アパーチャ55は、対物レンズ56の開口を制限し、対物レンズ56の開口数NAを0.85としている。第4情報記録面401dで反射されたビーム70は、対物レンズ56及び4分の1波長板54を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ52で反射される。偏光ビームスプリッタ52で反射されたビーム70は、焦点距離f3が30mmの集光レンズ59を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ57を経て、光検出器320に入射する。ビーム70には、シリンドリカルレンズ57を透過する際、非点収差が付与される。
光検出器320は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれの受光部は、受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号に基づいて、非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、プッシュプル法によるトラッキング誤差(以下TEとする)信号、及び光記録媒体401に記録された情報(以下RFとする)信号が生成される。FE信号及びTE信号は、所望のレベルに増幅されるとともに、位相補償が行われた後、アクチュエータ91及び92に供給されて、フォーカス制御及びトラッキング制御が行われる。
ここで、仮に、光記録媒体401の表面401zと第1情報記録面401aとの間の厚みt1、第1情報記録面401aと第2情報記録面401bとの間の厚みt2、第2情報記録面401bと第3情報記録面401cとの間の厚みt3、及び第3情報記録面401cと第4情報記録面401dとの間の厚みt4が全て同じ長さである場合には以下の様な問題が発生する。
例えば、第4情報記録面401dに情報を記録又は再生するために、第4情報記録面401dにビーム70を集光したとき、ビーム70の一部は、第3情報記録面401cで反射する。第3情報記録面401cから第4情報記録面401dまでの距離と、第3情報記録面401cから第2情報記録面401bまでの距離とは同じである。そのため、第3情報記録面401cで反射したビーム70の一部は、第2情報記録面401bの裏側に結像し、第2情報記録面401bの裏側からの反射光は、再び第3情報記録面401cで反射する。その結果、第3情報記録面401c、第2情報記録面401bの裏側及び第3情報記録面401cで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
さらに、第2情報記録面401bから第4情報記録面401dまでの距離と、第2情報記録面401bから光記録媒体401の表面401zまでの距離とも同じである。そのため、第2情報記録面401bで反射したビーム70の一部は、光記録媒体401の表面401zの裏側に結像し、表面401zの裏側からの反射光は、再び第2情報記録面401bで反射する。その結果、第2情報記録面401b、表面401zの裏側及び第2情報記録面401bで反射した反射光が、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に混入してしまう。
この様に、本来読み出すべき第4情報記録面401dからの反射光に、他層の裏側に結像した反射光が重なって混入し、情報の記録又は再生に支障をきたすという問題がある。このような光は干渉性が高く、受光素子上で干渉による明暗分布を形成する。さらに、この明暗分布は、光ディスク面内の中間層の微少な厚みばらつきによる他層反射光の位相差変化に応じて変動するため、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させてしまう。以後、本明細書では、上記の問題を裏焦点課題と呼ぶ。
これを防ぐために、特許文献1には、各情報記録面の間の層間距離を光記録媒体401の表面401zから順番に徐々に長くなる様に設定し、本来読み出すべき第4情報記録面401dにビーム70を集光させたときに、同時に、ビーム70の一部が第2情報記録面401bの裏側及び表面401zの裏側に結像しないようにする方法が開示されている。ここで、厚みt1〜t4はそれぞれ±10μmの製造ばらつきを有している。厚みt1〜t4は、各々がばらついた場合にも異なる距離になる様に設定する必要がある。そのため、厚みt1〜t4の距離の差は例えば20μmに設定される。この場合、厚みt1〜t4は、それぞれ40μm、60μm、80μm及び100μmとなり、第1情報記録面401aから第4情報記録面401dまでの総層間厚みt(=t2+t3+t4)は240μmである。
また、表面401zから第1情報記録面401aまでのカバー層の厚みと、第4情報記録面401dから第1情報記録面401aまでの厚みとが等しい場合、第4情報記録面401dで反射した光は表面401zで焦点を結び、表面401zで反射する。表面401zを反射した光は、再び第4情報記録面401dで反射した後に光検出器320へ導かれる。このような表面401zの裏側で結像する光束は、他の情報記録面の裏側で結像する光束のようなピット又はマークに関する情報を有していない。しかしながら、記録層が多層化された場合、表面401zの裏側で反射した光束の光量は、他の情報記録面の裏側で反射した光束の光量と同程度の大きさがある。そのため、表面401zの裏側で反射した光束と、記録又は再生の対象となる情報記録面を反射した光束との干渉は、他の情報記録面の裏側で反射した光束と同じように発生し、サーボ信号及び再生信号の品質を著しく低下させる虞がある。
このような課題を考慮し、特許文献2では、光ディスクの情報記録層(情報記録面)の間隔を提案している。この特許文献2では、下記の構造を開示している。
光記録媒体は、4つの情報記録面を有し、光記録媒体の表面に近い側から第1情報記録面〜第4情報記録面としている。表面から第1情報記録面までの距離は47μm以下である。第1情報記録面から第4情報記録面までの各情報記録面間の中間層の厚みは、11〜15μmと、16〜21μmと、22μm以上との組み合わせからなる。表面から第4情報記録面までの距離は100μmである。表面から第1情報記録面までの距離が47μm以下であり、さらに表面から第4情報記録面までの距離が100μmである。
特開2001−155380号公報
特開2008−117513号公報
しかしながら、特許文献2において最適として示されるディスク構造は、表面から第1情報記録面までの距離(=t1)が47μm以下である。厚みt1は可能な限り厚く設定することによって、光ディスクの表面に傷や汚れがある場合の情報再生信号劣化量を低く抑えることが望ましい。4層ディスクにおいて、表面から第4情報記録面までの距離を標準的には100μmとした上で、厚みt1を可能な限り厚く設定できる構造が望まれる。また、3つの情報記録面を有する3層ディスクについても最適な構造の提案が望まれている。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる光記録媒体及び光記録媒体の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る光記録媒体は、4つの情報記録面を有した光記録媒体であって、前記光記録媒体の表面と、前記光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面との間の厚みをt1、前記第1の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面との間の厚みをt2、前記第2の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に三番目に近い第3の情報記録面との間の厚みをt3、及び、前記第3の情報記録面と、前記光記録媒体の表面から最も遠い第4の情報記録面との間の厚みをt4、と定義したときに、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たす。
本発明によれば、4つの情報記録面を有した光記録媒体は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たすので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の実施の形態1に係る光記録媒体及び光ピックアップの概略構成を示す図である。
本発明の実施の形態1に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第4情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第2情報記録面及び表面からの反射光を示す図である。
第4情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面、第1情報記録面及び第2情報記録面からの反射光を示す図である。
層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。
各情報記録層の反射率がほぼ等しい光記録媒体における層間厚みとジッターとの関係を示す図である。
本発明の実施の形態2に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
第3情報記録面にビームを集光した場合の第3情報記録面からの反射光を示す図である。
第3情報記録面にビームを集光した場合の第2情報記録面及び第1情報記録面からの反射光を示す図である。
第3情報記録面にビームを集光した場合の第1情報記録面及び表面からの反射光を示す図である。
従来の光記録媒体及び光ピックアップの構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(実施の形態1)
以下、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体及び光ピックアップの概略構成を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体の層構成を示す図である。光ピックアップ201は、波長λが405nmのレーザ光を光記録媒体40に照射し、光記録媒体40に記録された信号を再生する。なお、図1に示す光ピックアップ201の構成は、図13に示す光ピックアップの構成とほぼ同じであるので、詳細な説明は省略する。
光記録媒体40には4つの情報記録面が形成されている。図2に示すように、光記録媒体40は、光記録媒体40の表面40zに近い側から順に、第1情報記録面40a、第2情報記録面40b、第3情報記録面40c及び第4情報記録面40dを有する。
光記録媒体40は、さらに、カバー層42、第1中間層43、第2中間層44及び第3中間層45を有している。カバー層42の厚みt1は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層43の厚みt2は、第1情報記録面40aから第2情報記録面40bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層44の厚みt3は、すなわち、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cまでの間の基材の厚みを表し、第3中間層45の厚みt4は、第3情報記録面40cから第4情報記録面40dまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面40zから第1情報記録面40aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面40zから第2情報記録面40bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面40zから第3情報記録面40cまでの間の距離を表し、距離d4(≒t1+t2+t3+t4)は、表面40zから第4情報記録面40dまでの間の距離を表している。
ここで、情報記録面が4面である場合の課題について説明する。まず、一つ目の課題として、多面反射光による干渉について図3〜図7を用いて説明する。図3は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第4情報記録面40dからの反射光を示す図であり、図4は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図であり、図5は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第2情報記録面40b及び表面40zからの反射光を示す図であり、図6は、第4情報記録面40dにビームを集光した場合の第3情報記録面40c、第1情報記録面40a及び第2情報記録面40bからの反射光を示す図である。
図3のように、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光された光束は、情報記録層(情報記録面)の半透過性により、以下の複数の光ビームに分岐される。
すなわち、情報を再生又は記録するために第4情報記録面40dに集光する光束は、図3のように第4情報記録面40dで反射するビーム70と、図4のように第3情報記録面40cで反射し、第2情報記録面40bの裏側で焦点を結んで反射し、再び第3情報記録面40cで反射するビーム71(情報記録層の裏焦点光)と、図5のように第2情報記録面40bで反射し、表面40zの裏側で焦点を結んで反射し、再び第2情報記録面40bで反射するビーム72(表面の裏焦点光)と、図6のように表面及び情報記録面の裏側で焦点は結ばないが、第3情報記録面40c、第1情報記録面40aの裏側及び第2情報記録面40bの順で反射したビーム73とに分岐される。
例えば、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)と、第3情報記録面40cと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt3)とが等しい場合、ビーム70とビーム71とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。同様に、第4情報記録面40dと第2情報記録面40bとの間の距離(厚みt4+厚みt3)と、第2情報記録面40bと表面40zとの間の距離(厚みt2+厚みt1)とが等しい場合、ビーム70とビーム72とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。また、第2情報記録面40bと第1情報記録面40aとの間の距離(厚みt2)と、第4情報記録面40dと第3情報記録面40cとの間の距離(厚みt4)とが等しい場合、ビーム70とビーム73とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。
ビーム70に対して多面反射光であるビーム71〜73の光量は小さいが、各ビームは、等しい光路長と等しい光束径とで光検出器320に入射するため、各ビームの干渉による影響は大きくなる。また、光検出器320での受光量は、微少な情報記録層間の厚みの変化によって大きく変動し、安定な信号を検出することが困難となる。
図7は、層間厚みの差とFS信号振幅との関係を示す図である。なお、図7では、ビーム70と、ビーム71、ビーム72又はビーム73との光量比を100:1とし、かつカバー層42及び第1中間層43の屈折率がいずれも1.57である場合の層間厚みの差に対するFS信号振幅を示している。図7において、横軸は層間厚みの差を示し、縦軸はFS信号振幅を示している。FS信号振幅は、ビーム70のみの反射光を光検出器320で受光したときのDC光量で規格化した値である。また、層間厚みの差とは、中間層同士の厚みの差、及びカバー層と中間層と厚みの差を表す。図7のように、層間厚みの差が1μm以下になるとFS信号が急激に変動することがわかる。
なお、図5のビーム72と同様に、カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みの総和(t2+t3+t4)との差が1μm以下になってもFS信号の変動などの問題が生じる。
二つ目の課題として、隣接する情報記録面間の層間距離が小さすぎると、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を受けるため、所定値以上の層間距離が必要となる。そこで、層間厚みについて検討し、最小となる層間厚みを決定する。図8は、各情報記録層の反射率がほぼ等しい光ディスクにおける層間厚みとジッターとの関係を示す図である。図8において、横軸は層間厚みを示し、縦軸はジッター値を示している。層間厚みが薄くなるに従ってジッターは劣化する。変曲点は約8μmとなっており、層間厚みが8μm以下の場合、急激なジッターの劣化が起こる。
また、一般的に光ディスクの製造上、各情報記録層の反射率は、1.5倍程度異なる場合がある。例えば、再生又は記録の対象となる情報記録層の反射率に対し、他の情報記録層の反射率が1.5倍である場合、干渉による情報記録層への影響は光の振幅比で√1.5倍となるため、層間厚みに対するジッターは図8の破線のようになる。すなわち、層間厚みの最小値を、8μmから2μm増やした10μm以上に設定すれば、他の情報記録層の迷光の光検出器での光量密度は反射率1.5×(8/10)2=0.96となり、他の情報記録層の反射効率の増加分を相殺することができる。結論として、層間厚みの最小値は10μmが最適である。
図2を用いて、本発明の実施の形態1に係る光記録媒体40の構成について説明する。本実施の形態1では、製造上の厚みバラツキを考慮した上で、他の情報記録層又はディスク表面からの反射光の悪影響を解決するために、以下の条件が確保できるように4層ディスク(光記録媒体40)の構造を設定する。
条件(1):カバー層42の厚みt1は、従来の光ディスクのカバー層より厚くするため、50μmより大きくする(t1>50μm)。
条件(2):カバー層42の厚みt1と、第1中間層43〜第3中間層45の厚みt2〜t4の総和(t2+t3+t4)との差は、1μm以上確保する。距離d4の標準値は、市場のBDと同じ100μmにすることが望ましい。t1>50μmという条件(1)と組み合わせると、光記録媒体40は、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たすことになる。
条件(3):カバー層42の厚みt1と第1中間層43の厚みt2との和(t1+t2)と、第2中間層44の厚みt3と第3中間層45の厚みt4との和(t3+t4)との差は、1μm以上確保する。この条件(3)は、条件(1)及び(2)を満たせば自動的に満たされることが明らかである。
条件(4):厚みt1,t2,t3,t4のうちの任意の2値の互いの差は、いずれも1μm以上である。
条件(5):層間厚み(中間層の厚み)の最小値は、先に述べたように、10μm以上必要である。そのため、厚みt2,t3,t4は、いずれも10μm以上である。
条件(6):厚みt3は、厚みt4よりも大きく、厚みt4は、厚みt2よりも大きくする。第2情報記録面40bは、第1情報記録面40aと第3情報記録面40cとに挟まれている。第3情報記録面40cは、第2情報記録面40bと第4情報記録面40dとに挟まれている。第2情報記録面40bと第3情報記録面40cとはいずれも、両側の隣接する2面からのクロストーク信号の影響を受けるため、クロストークを少なくする工夫が必要である。第2情報記録面40b及び第3情報記録面40cの情報を再生する際の他の情報記録面からのクロストークは、いずれも、第2中間層44(厚みt3)を厚くすることによって、減らすことが可能である。従って、厚みt3を最も厚くすることが望ましい。また、それぞれの情報記録面と、表面40zとの距離は、薄い程チルトマージンが広くなる。この点、第1中間層43の厚みt2は薄く、第3中間層45の厚みt4は厚い方が好ましい。以上の考察から、厚みt2,t3,t4は、t3>t4>t2を満たす。
条件(7):表面40zから、表面40zから最も遠い第4情報記録面40dまでの距離d4は、概ね100μmとする。これにより、現在市販されている光ディスクの中で最も大容量であるBD(Blu−ray Disc)と互換性を持たせると共に、チルトマージン等のシステムマージンも充分に確保できるという利点を得ることができる。
以下、上記の条件(1)〜(7)のもとで、カバー層厚み及び中間層厚みにおける製造上許される誤差又はばらつきを最も大きくできる構造について考える。
カバー層42及び第1中間層43〜第3中間層45の製造バラツキを一律に±eμmとする。この場合、上記条件(1)〜(7)を満たす各層間厚みt2〜t4の中心値は、上限値及び下限値を考慮して、下記の(1)〜(3)式のようになる。
t2=10+e(μm)・・・(1)
t4=(t2+e)+1+e=10+3e+1(μm)・・・(2)
t3=(t4+e)+1+e=10+5e+2(μm)・・・(3)
条件(2)を満たすためには、厚みt1の下限値は、厚みt2〜t4の上限値の和よりも1μm厚くする必要があるので、下記の(4)式より、t1=34+13eとなる。
t1−e=(t2+t3+t4+3e)+1(μm)=(10+e)+(10+5e+2)+(10+3e+1)+3e+1=34+12e・・・(4)
厚みt1〜t4の和は、条件(7)から、100μmである。そのため、ばらつきeは、下記の(5)式より、e=33/22=1.5(μm)となる。
t1+t2+t3+t4=(10+e)+(10+5e+2)+(10+3e+1)+(34+13e)=67+22e=100(μm)・・・(5)
また、厚みt1〜t4及び距離d1〜d4の標準値は、それぞれ以下のようになる。
t1=53.5(μm)
t2=11.5(μm)
t3=19.5(μm)
t4=15.5(μm)
d1=t1=53.5(μm)
d2=d1+t2=65.0(μm)
d3=d2+t3=84.5(μm)
d4=100(μm)
ここで、カバー層厚みt1及び各層間厚みt2〜t4の製造時のばらつき上限を一律としたとき、このばらつき内に各厚みが入っていれば、必ず条件(1)〜(7)が満足される。いわば、ばらつきeは十分条件である。たとえ、厚みt1の誤差がばらつきeを超えていても、他の中間層の厚みが基準値に近く、条件(1)〜(7)を満たせば信号品質は確保できる。また、フォーカス引き込み動作の際に、良好なフォーカスエラー信号品質を得るためには、表面40zから各情報記録層までの距離が一定の誤差内になければならない。
従って、4つの情報記録面を有した光記録媒体40は、光記録媒体40の表面40zから、前記光記録媒体の表面に最も近い第1情報記録面40aまでの距離をd1、光記録媒体40の表面40zから、光記録媒体40の表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bまでの距離をd2、光記録媒体40の表面40zから、光記録媒体40の表面40zに三番目に近い第3情報記録面40cまでの距離をd3、光記録媒体40の表面40zから、光記録媒体40の表面40zから最も遠い第4情報記録面40dまでの距離をd4、光記録媒体40の表面40zと第1情報記録面40aとの間の厚みをt1(=d1)、第1情報記録面40aと第2情報記録面40bとの間の厚みをt2(=d2−d1)、第2情報記録面40bと第3の情報記録面40cとの間の厚みをt3(=d3−d2)、第3情報記録面40cと第4情報記録面40dとの間の厚みをt4(=d4−d3)、距離d1、d2、d3、d4の公差をそれぞれE1、E2、E3、E4と定義したときに、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、53.5μm−E1≦d1≦53.5μm+E1、65.0μm−E2≦d2≦65.0μm+E2、84.5μm−E3≦d3≦84.5μm+E3、及び、100.0μm−E4≦d4≦100.0μm+E4を満たすことが望ましい。
この場合、光記録媒体40の表面40zの裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面40a〜40dでの反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体40の表面40zと、光記録媒体40の表面40zに最も近い第1情報記録面40aとの間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体40の表面40zに傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
公差E1は、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると6μmであることが必要である。
さらに、公差E1が5μmであれば、表面40zに最も近い第1情報記録面40aへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
さらに、公差E1は、カバー層42の厚みt1の誤差だけで決まり、他の中間層の厚みの影響を受けない。そのため、光記録媒体40を高精度に作ることが可能であることを考慮すると、公差E1を3μmとして、表面40zに最も近い第1情報記録面40aへのより安定したフォーカス引き込みを可能とすることもできる。
また、公差E2も、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると6μmであることが必要である。
さらに、公差E2が5μmであれば、表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
公差E1を最低限の3μmとし、厚みt2の誤差を先に考察したばらつきe=1.5μmとすれば、公差E2は4.5μm程度まで低くすることは可能である。この場合、表面40zに二番目に近い第2情報記録面40bへのさらに安定したフォーカス引き込みが可能である。
公差E3及び公差E4も、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると6μmであることが必要である。さらに、公差E3及び公差E4が5μmであれば、表面40zに三番目に近い第3情報記録面40c、及び表面40zから最も遠い第4情報記録面40dへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
従って、最も望ましい光記録媒体40の構成は、50.5μm≦d1≦56.5μm、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、及び、94.0μm≦d4≦106.0μmとなる。
さらに、t3−t4≧1μm、かつ、t4−t2≧1μmであるので、厚みt2,t4は、厚みt3より1μm以上薄いという制限がある。しかし、厚みt3の上限はこの条件には現れていない。厚みt3の上限はt3=d3−d2から読み取ることができる。距離d3は、84.5μm−E3以上、84.5μm+E3以下であり、距離d2は、65.0μm−E2以上、65.0μm+E2以下であるので、厚みt3の最大値は、E3+E2+19.5μmである。
例えば、公差E3と公差E2とをいずれも6μmとしたときは、厚みt3の最大値は31.5μmになる。しかし、第2情報記録面40bから第3情報記録面40cへのフォーカスジャンプ時には、あらかじめジャンプ先の第3情報記録面40cに球面収差量を合わせておかなければ、フォーカスエラー信号の振幅及び感度が劣化して、安定にフォーカス制御を再開できない。そのため、厚みt3の公差は高々6μmに抑えることが望ましい。従って、厚みt3は、t3≦25.5μmとすることが望ましい。
さらに、厚みt3の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができるので、厚みt3は、t3≦24.5μmとすることがより望ましい。さらに、光記録媒体(光ディスク)の製造可能な範囲を考えても、厚みt3の公差は2.5μm程度に抑えることが可能であるので、厚みt3は、t3≦22.0μmとすることがより望ましい。
第2中間層44の厚みt3と同様に、第1中間層43の厚みt2及び第3中間層45の厚みt4の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。そのため、厚みt2は、下限の10.0μm以上、16.5μm(11.5μm+5μm)以下であり、厚みt3は、19.5μm±5μm、つまり、14.5μm以上、24.5μm以下であり、厚みt4は、11μm(=厚みt2の下限+1μm)以上、20.5μm(15.5μm+5μm)以下であることが望ましい。なお、t1=d1であるので、厚みt1は、50.5μm以上、56.5μm以下であることが望ましい。
上記の条件は、良好な情報信号を安定に再生するために必要な条件である。カバー層及び各中間層の厚みt1〜t4の様々な組み合わせのうち、上記条件を満たす組み合わせが、光記録媒体40に許される構造ということになる。しかし、カバー層及び各中間層の厚みt1〜t4の組み合わせによって条件への適否を判断するよりも、カバー層及び各中間層の厚みt1〜t4の公差を狭い範囲に収めて製造することにより、組み合わせを考慮することなく条件に適した光ディスクを製造するほうが、製造上の目標値を簡単に設定しやすく、条件設定が容易になるというメリットがある。一方、上記のように性能上問題のない範囲を明確にすることにより、目標値から多少逸脱して製造された光記録媒体であっても、良品であることが判別でき、製品歩留まりを高くすることができるので、製品コストを低く抑えることができるという効果が得られる。
次に、別の視点として、製造上実現可能な中間層の厚みの公差と、その公差が、上記の裏焦点問題回避及び層間クロストーク問題回避の十分条件となる層構造とは、いかなるものかについて考えた。我々が製造上実現可能な中間層の厚み公差を実験的に検討したところ、中間層の厚み公差が+1.5μmであれば、大量生産可能であることが判明した。層間クロストーク問題回避の観点から、厚みt2の最小値は10μmである。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt2の標準値は11.5μm以上でなければならない。最後に、裏焦点問題回避のため、t1−(t2+t3+t4)≧1を考慮しなければならないことを考慮して、中間層の厚みの標準値は必要最小限に設定する。従って、厚みt2の標準値は11.5μmとなる。さらに、1.5μmの製造公差を標準値よりも厚い側に確保すると、厚みt2の上限は13μmとなる。
裏焦点問題回避の観点から、t4−t2≧1μmでなければならないので、厚みt4の最小値は14μmとなる。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt4の標準値は15.5μm以上でなければならないので、厚みt4の標準値は15.5μmとする。さらに1.5μmの製造公差を標準値よりも厚い側に確保すると、厚みt4の上限は17μmとなる。
さらに、裏焦点問題回避の観点から、t3−t4≧1μmでなければならないので、厚みt3の最小値は18μmとなる。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt3の標準値は19.5μm以上でなければならないので、厚みt3の標準値は19.5μmとする。さらに、1.5μmの製造公差を標準値よりも厚い側に確保すると、厚みt3の上限は21μmとなる。
さらに、裏焦点問題回避の観点から、t1−(t2+t3+t4)≧1でなければならない。1.5μmの製造公差を確保すると、厚みt2、厚みt3及び厚みt4の上限値はそれぞれ、13μm、17μm及び21μmなので、これらの和(t2+t3+t4)の上限値は、51μmである。従って、t1−(t2+t3+t4)≧1の条件は、カバー層42の厚みt1の下限値が52μmであれば満足される。1.5μmの製造公差を確保するためには、厚みt1の標準値は53.5μm以上でなければならない。
ここで、距離d4の標準値を100μmにすることを考慮する。距離d4は、厚みt1〜t4の総和である。厚みt1の標準値を53.5μmとしても、ここまで考えてきた厚みt2〜t3の標準値と加えると100μmに達する。従って、各標準値はこれ以上厚く設定する余地がない。そのため、厚みt1、厚みt2、厚みt3及び厚みt4の標準値は、それぞれ、53.5μm、11.5μm、15.5μm及び19.5μmとする。これらの厚みの標準値は、1.5μmの製造公差を確保し、かつ、層間クロストーク問題と裏焦点問題とを回避し、かつ、距離d4の標準値を100μmとする唯一の解であることが、このような考察からも判明した。
従って、厚みt1の標準範囲は、52.0μm以上、55.0μm以下であり、厚みt2の標準範囲は、10.0μm以上、13.0μm以下であり、厚みt3の標準範囲は、18.0μm以上、21.0μm以下であり、厚みt4の標準範囲は、14.0μm以上、17.0μm以下であることが望ましい。
換言すれば、厚みt1の標準値は、53.5μmであり、厚みt2の標準値は、11.5μmであり、厚みt3の標準値は、19.5μmであり、厚みt4の標準値は、15.5μmであり、各厚みt1〜t4の誤差は、それぞれ±1.5μm以内に抑えることが望ましい。
本来、上記の条件(1)〜(7)から導き出された光記録媒体が満たすべき条件(以下、必須条件とする)には、複数のパラメータに関連する条件式が複数存在している。そのため、全ての条件を満たすためには、同時に勘案すべき条件が多数存在し、各層の厚みを決定することが非常に難しい。また、各層の条件が必須条件を満たす場合であっても、条件によっては、製造上の誤差が許容されず、実際の製造が非常に困難になる場合がある。
例えば、ある中間層の膜厚を所定の値に設定した場合に、他の中間層の膜厚条件が各条件は満たしているが、許容される誤差が非常に小さくなってしまうといった場合がある。よって、必須条件が判明したとしても、光透過層及び中間層の全てが必須条件を満たすように各層の条件を決定すること、更には、必須条件を満たす場合であっても、製造上の許容誤差が、ある層において極端に小さくならないように各層の条件を設定することは非常に難しい。
そこで、本実施の形態1では、上記の必須条件のみを規定するのではなく、光記録媒体の製造時に考慮すべき条件を推奨条件として規定している。
これにより、同時に勘案する必要があるパラメータ数を減らし、光記録媒体の製造時に各層の目標値を容易に設定することが可能になる。また、ある層だけが極端に許容誤差が小さくなるといった製造上の課題を解決することができる。さらに、各層の許容誤差を全て1.5μm以上にすることができるため、大量生産が可能になる。
なお、4つの情報記録面を有した光記録媒体40の製造方法は、基板上に、カバー層(光透過層)42、第1情報記録面40a、第1中間層43、第2情報記録面40b、第2中間層44、第3情報記録面40c、第3中間層45及び第4情報記録面40dを形成する工程を有する。そして、カバー層42の厚みt1及び第1乃至第3中間層43〜45の厚みt2〜t4が、52.0μm≦t1≦55.0μm、10.0μm≦t2≦13.0μm、18.0μm≦t3≦21.0μm、及び、14.0μm≦t4≦17.0μm、を満たすように、第1乃至第4情報記録面40a〜40d、第1乃至第3中間層43〜45、及びカバー層42が形成される。
また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体40は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たす。また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体40は、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、94.0μm≦d4≦106.0μm、50.5μm≦t1≦56.5μm、10.0μm≦t2≦16.5μm、14.5μm≦t3≦24.5μm、及び、11.0μm≦t4≦20.5μmを満たす。
さらに、厚みt1の標準値は53.5μmであり、厚みt2の標準値は11.5μmであり、厚みt3の標準値は19.5μmであり、厚みt4の標準値は15.5μmであり、カバー層42の厚みt1及び第1乃至第3の中間層43〜45の厚みt2〜t4の公差がそれぞれ1.5μm以下になるように、第1乃至第4情報記録面40a〜40d、第1乃至第3中間層43〜45、及びカバー層42を形成する。
(実施の形態2)
上記の実施の形態1では、4つの情報記録面を有する光記録媒体について説明したが、実施の形態2では、3つの情報記録面を有する光記録媒体について説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る光記録媒体の層構成を示す図である。
光記録媒体30には3つの情報記録面が形成されている。図9に示すように、光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zに近い側から順に、第1情報記録面30a、第2情報記録面30b及び第3情報記録面30cを有する。光記録媒体30は、さらに、カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34を有している。
カバー層32の厚みt1は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の基材の厚みを表し、第1中間層33の厚みt2は、第1情報記録面30aから第2情報記録面30bまでの間の基材の厚みを表し、第2中間層34の厚みt3は、第2情報記録面30bから第3情報記録面30cまでの間の基材の厚みを表している。
また、距離d1(≒t1)は、表面30zから第1情報記録面30aまでの間の距離を表し、距離d2(≒t1+t2)は、表面30zから第2情報記録面30bまでの間の距離を表し、距離d3(≒t1+t2+t3)は、表面30zから第3情報記録面30cまでの間の距離を表している。
ここで、情報記録面が3面である場合の課題について説明する。まず、一つ目の課題として、多面反射光による干渉について図10〜図12を用いて説明する。図10は、第3情報記録面30cにビームを集光した場合の第3情報記録面30cからの反射光を示す図であり、図11は、第3情報記録面30cにビームを集光した場合の第2情報記録面30b及び第1情報記録面30aからの反射光を示す図であり、図12は、第3情報記録面30cにビームを集光した場合の第1情報記録面30a及び表面30zからの反射光を示す図である。
図10のように、情報を再生又は記録するために第3情報記録面30cに集光された光束は、情報記録層(情報記録面)の半透過性により、以下の複数の光ビームに分岐される。
すなわち、情報を再生又は記録するために第3情報記録面30dに集光する光束は、図10のように第3情報記録面30cで反射するビーム75と、図11のように第2情報記録面30bで反射し、第1情報記録面30aの裏側で焦点を結んで反射し、再び第2情報記録面30bで反射するビーム76(情報記録層の裏焦点光)と、図12のように第1情報記録面30aで反射し、表面30zの裏側で焦点を結んで反射し、再び第1情報記録面30aで反射するビーム77(表面の裏焦点光)とに分岐される。
例えば、第2情報記録面30bと第1情報記録面30aとの間の距離(厚みt2)と、第3情報記録面30cと第2情報記録面30bとの間の距離(厚みt3)とが等しい場合、ビーム75とビーム76とは等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。同様に、第1情報記録面30aと表面30zとの間の距離(厚みt1)と、第3情報記録面30cと第1情報記録面30aとの間の距離(厚みt2+厚みt3)とが等しい場合、ビーム75とビーム77とはそれぞれ等しい光路長と光束径とで光検出器320に入射する。
ビーム75に対して多面反射光であるビーム76,77の光量は小さいが、各ビームは、等しい光路長と等しい光束径とで光検出器320に入射するため、各ビームの干渉による影響は大きくなる。また、光検出器320での受光量は、微少な情報記録層間の厚みの変化によって大きく変動し、安定な信号を検出することが困難となる。
層間厚みの差が1μm以下になるとFS信号が急激に変動するので、光記録媒体30における層間厚みの差は、4層ディスクと同じく1μm以上必要である。
二つ目の課題として、隣接する情報記録面間の層間距離が小さすぎると、隣接する情報記録面からのクロストークの影響を受けるため、4層ディスクと同様に、層間距離は、10μm以上必要となる。
図9を用いて、本発明の実施の形態2に係る光記録媒体30の構成について説明する。本実施の形態2では、製造上の厚みバラツキを考慮した上で、他の情報記録層又はディスク表面からの反射光の悪影響を解決するために、以下の条件が確保できるように3層ディスク(光記録媒体30)の構造を設定する。
条件(1):カバー層32の厚みt1は、従来の光ディスクのカバー層より厚くするため、50μmより大きくする(t1>50μm)。
条件(2):カバー層32の厚みt1と、第1中間層33及び第2中間層34の厚みt2,t3の総和(t2+t3)との差は、1μm以上確保する。距離d2の標準値は、市場のBDと同じ100μmにすることが望ましい。t1>50μmという条件(1)と組み合わせると、光記録媒体30は、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすことになる。
条件(3):厚みt1,t2,t3のうちの任意の2値の互いの差は、いずれも1μm以上である。
条件(4):層間厚み(中間層の厚み)の最小値は、先に述べたように、10μm以上必要である。そのため、厚みt2,t3は、いずれも10μm以上である。
条件(5):情報記録面と表面30zとの距離が薄い程チルトマージンが広くなる。この点、第1中間層33の厚みt2は薄く、第2中間層34の厚みt3は厚い方が好ましい。以上の考察から、厚みt2,t3は、t3>t2を満たす。
条件(6):表面30zから、表面30zから最も遠い第3情報記録面30cまでの距離d3は、概ね100μmとする。これにより、現在市販されている光ディスクの中で最も大容量であるBD(Blu−ray Disc)と互換性を持たせると共に、チルトマージン等のシステムマージンも充分に確保できるという利点を得ることができる。
以下、上記の条件(1)〜(6)のもとで、カバー層厚み及び中間層厚みにおける製造上許される誤差又はばらつきを最も大きくできる構造について考える。
カバー層32、第1中間層33及び第2中間層34の製造バラツキを一律に±eμmとする。この場合、上記条件(1)〜(6)を満たす各層間厚みt2〜t3の中心値は、上限値及び下限値を考慮して、下記の(6)及び(7)式のようになる。
t2=10+e(μm)・・・(6)
t3=(t2+e)+1+e=10+3e+1(μm)・・・(7)
条件(2)を満たすためには、厚みt1の下限値が、厚みt2,t3の上限値の和よりも1μm厚くする必要があるので、下記の(8)式より、t1=22+7eとなる。
t1−e=(t2+t3+2e)+1(μm)=(10+e)+(10+3e+1)+2e+1=22+6e・・・(8)
厚みt1〜t3の和は、条件(6)から、100μmである。そのため、ばらつきeは、下記の(9)式より、e=57/11≒5.2(μm)となる。
t1+t2+t3=(10+e)+(10+3e+1)+(22+7e)=43+11e=100(μm)・・・(9)
また、厚みt1〜t3の標準値は、それぞれ以下のようになる。
t1=58.3(μm)
t2=15.2(μm)
t3=26.5(μm)
すでに市場において普及している2層BDは、2つの情報記録層の間の中間層の厚みが25μm程度であるので、3層ディスクの厚みt3も、2層BDと同じ厚みを標準値とした方が、再生機及び記録機への対応が容易である。また、中間層の厚みの製造ばらつき、つまり公差は±3μmもあれば、容易にディスクの製造が可能である。そこで、厚みt3は、25±3μmとする。条件(3)及び(5)を考慮した上で、層間クロストークを抑えて良好な再生信号を得るために、第1中間層33の厚みt2をなるべく厚くすると、厚みt2は、18±3μmとなる。カバー層32の厚みt1は、100−(t2+t3)=57(μm)となる。
従って、距離d1(=t1)は、57.0(μm)となり、距離d2(=d1+t2)は、75.0(μm)となり、距離d3は、100(μm)となる。
従って、3つの情報記録面を有した光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに最も近い第1情報記録面30aまでの距離をd1、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに二番目に近い第2情報記録面30bまでの距離をd2、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zから最も遠い第3情報記録面30cまでの距離をd3、光記録媒体30の表面30zと第1情報記録面30aとの間の厚みをt1(=d1)、第1情報記録面30aと第2情報記録面30bとの間の厚みをt2(=d2−d1)、第2の情報記録面30bと第3情報記録面30cとの間の厚みをt3(=d3−d2)、と定義したときに、52.0μm≦t1≦62.0μm、15.0μm≦t2≦21.0μm、22.0μm≦t3≦28.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μmを満たすことが望ましい。
ここで、カバー層32は第1及び第2中間層33,34より厚く、公差も大きくとることが望ましい。そこで、距離d1(カバー層32の厚みt1)の公差は、±5μmとしている。また、距離d2,d3の公差は、フォーカスエラー信号の劣化度合いを考慮すると±6μmであることが必要である。このことを考慮して距離d2,d3の範囲を決めた。
さらに、距離d2,d3の公差が±5μmであれば、記録対象又は再生対象の情報記録面へのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
なお、第1及び第2中間層33,34の厚みt2,t3の公差を5μm迄拡大したとしても、フォーカスジャンプを安定に行うことができ、光記録媒体の製造マージンを広げることもできる。そこで、光記録媒体30は、t3−t2≧1μm、t2≧10μm、t1−(t2+t3)≧1μm、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、52.0μm≦d1≦62.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μmを満たすことが望ましい。この条件の方が、光記録媒体の製造歩留まりをより大きくできるという意味では望ましい。
この場合、光記録媒体30の表面30zの裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面30a〜30cでの反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体30の表面30zと、光記録媒体30の表面30zに最も近い第1情報記録面30aとの間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体30の表面30zに傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
さらに、距離d2,d3の公差が±5μmであれば、表面30zに最も近い第1情報記録面30aへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。
また、カバー層32及び各中間層33,34の厚みt1〜t3の組み合わせによって条件への適否を判断するよりも、カバー層32及び各中間層33,34の厚みt1〜t3の公差を狭い範囲に収めて製造することにより、組み合わせを考慮することなく条件に適した光ディスクを製造するほうが、製造上の目標値を簡単に設定し安く、条件設定が容易になるというメリットがある。一方、上記のように性能上問題のない範囲を明確にすることにより、目標値から多少逸脱して製造された光記録媒体であっても、良品であることが判別でき、製品歩留まりを高くすることができるので、製品コストを低く抑えることができるという効果が得られる。
そこで、光記録媒体30の製造公差は、4層の光記録媒体の製造公差の倍の±3μmとして、厚みt1の標準範囲は54以上、60μm以下であり、厚みt2の標準範囲は15μm以上、21μm以下であり、厚みt3の標準範囲は22μm以上、28μm以下であるように光記録媒体30を製造することが望ましい。
厚みt1〜t3がこのような範囲内になるように光記録媒体30を製造すれば、必要な条件はほぼ満たされる。
ただし、全ての厚みt1〜t3が厚い場合、あるいは逆に全ての厚みt1〜t3が薄い場合は、距離d3の誤差が±9μm(=±3μm×3)にまで拡大してしまい、距離d3は94.0μm≦d3≦106.0μmという条件を逸脱してしまう。そのため、この点を考慮すると、厚みt1は、55μm以上、59μm以下であり、厚みt2は、16μm以上、20μm以下であり、厚みt3は、23μm以上、27μm以下であることが最も望ましい。言い換えると、厚みt1は、57±2μmであり、厚みt2は、18±2μmであり、厚みt3は、25±2μmであるように光記録媒体30を製造することが最も望ましい。
なお、3つの情報記録面を有した光記録媒体30の製造方法は、基板上に、カバー層(光透過層)32、第1情報記録面30a、第1中間層33、第2情報記録面30b、第2中間層34及び第3情報記録面30cを形成する工程を有する。そして、カバー層32の厚みt1及び第1及び第2中間層33,34の厚みt2,t3が、55.0μm≦t1≦59.0μm、16.0μm≦t2≦20.0μm、及び、23.0μm≦t3≦27.0μm、を満たすように、第1乃至第3情報記録面30a〜30c、第1及び第2中間層33,34、及びカバー層32が形成される。
また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体30は、t2−t3≧1μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たす。また、上記の製造方法によって製造された光記録媒体30は、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、及び、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たす。
さらに、厚みt1の標準値は57.0μmであり、厚みt2の標準値は18.0μmであり、厚みt3の標準値は25.0μmであり、カバー層32の厚みt1及び第1及び第2中間層33,34の厚みt2,t3の公差がそれぞれ2.0μm以下になるように、第1乃至第3情報記録面30a〜30c、第1及び第2中間層33,34、及びカバー層32が形成される。
(実施の形態3)
実施の形態3では、3つの情報記録面を有する光記録媒体の別の実施の形態について説明する。フォーカスジャンプを安定に行うことのできる範囲内の中間層の厚みを全て許容することを優先し、厚みt2が薄くなることを許容すれば、光記録媒体をより簡単に、より安価に製造することができる。実施の形態2の考察により、厚みt3の標準値を25μmとし、厚みt3の公差を±5μmとすることによって、厚みt3は、20μm以上、30μm以下とすることができる。
また、厚みt2の上限は、厚みt3の最小厚みより1μm以上薄くすることにより、19μmとすることができる。厚みt2は、厚みt3より薄いので、厚み公差も薄くできる。従って、厚みt2の公差を±4μmとすることにより、厚みt2は、11μm以上、19μm以下とする。厚みt2の標準値は、厚みt2の許容範囲の中間値の15μmとすればよい。
厚みt1の標準値は、t1=100μm−t2−t3から、60μmとなる。厚みt1の公差を±5μmとすることにより、厚みt1は、55μm以上、65μm以下とする。
上記の各中間層の設定条件から、3つの情報記録面を有した光記録媒体30は、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに最も近い第1の情報記録面30aまでの距離をd1、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zに二番目に近い第2の情報記録面30bまでの距離をd2、光記録媒体30の表面30zから、光記録媒体30の表面30zから最も遠い第3の情報記録面30cまでの距離をd3、光記録媒体30の表面30zと第1の情報記録面30aとの間の厚みをt1(=d1)、第1の情報記録面30aと第2の情報記録面30bとの間の厚みをt2(=d2−d1)、第2の情報記録面30bと第3の情報記録面30cとの間の厚みをt3(=d3−d2)と定義したときに、55.0μm≦t1≦65.0μm、11.0μm≦t2≦19.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μmを満たすことが望ましい。
さらに、フォーカス引き込み時の球面収差の設定の容易さを考えると、距離d2,d3の公差が±5μmであれば、表面30zに最も近い第1情報記録面30aへのより安定したフォーカス引き込みが可能である。そのため、距離d2は、70.0μm以上、80.0μm以下であり、かつ、距離d3は、95.0μm以上、105.0μm以下であることが望ましい。
以上、これらの組み合わせで製造された4つ又は3つの情報記録面を有する光記録媒体により、本来読み出すべき特定の情報記録層の信号面からの反射光に対する影響を抑えることができるため、安定したサーボ信号及び再生信号が得られる大容量光記録媒体を提供することができる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光記録媒体は、4つの情報記録面を有した光記録媒体であって、前記光記録媒体の表面と、前記光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面との間の厚みをt1、前記第1の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面との間の厚みをt2、前記第2の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に三番目に近い第3の情報記録面との間の厚みをt3、及び、前記第3の情報記録面と、前記光記録媒体の表面から最も遠い第4の情報記録面との間の厚みをt4、と定義したときに、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たす。
この構成によれば、4つの情報記録面を有した光記録媒体は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μm、を満たすので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体において、前記光記録媒体の表面から前記第1の情報記録面までの距離をd1、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、前記光記録媒体の表面から前記第4の情報記録面までの距離をd4、及び、前記距離d1,d2,d3,d4の公差をそれぞれE1,E2,E3,E4と定義したときに、53.5μm−E1≦d1≦53.5μm+E1、65.0μm−E2≦d2≦65.0μm+E2、84.5μm−E3≦d3≦84.5μm+E3、及び、100.0μm−E4≦d4≦100.0μm+E4、を満たし、前記公差E1,E2,E3,E4は、それぞれ6μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、光記録媒体は、53.5μm−E1≦d1≦53.5μm+E1、65.0μm−E2≦d2≦65.0μm+E2、84.5μm−E3≦d3≦84.5μm+E3、及び、100.0μm−E4≦d4≦100.0μm+E4、を満たし、公差E1,E2,E3,E4は、それぞれ6μm以下である。
したがって、公差E1,E2,E3,E4を、それぞれ6μm以下とすることにより、フォーカスエラー信号の劣化を抑制することができ、安定してフォーカス制御を行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記公差E1は3μmであることが好ましい。公差E1は、厚みt1の誤差だけで決まり、他の中間層の厚みの影響を受けない。そのため、公差E1を3μmとすることにより、光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面へフォーカス引き込みをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記公差E2は4.5μmであることが好ましい。この構成によれば、公差E2を4.5μmとすることにより、光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面へのフォーカス引き込みをさらに安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt3は、25.5μm以下であることが好ましい。
第2情報記録面から第3情報記録面へのフォーカスジャンプ時には、あらかじめジャンプ先の第3情報記録面に球面収差量を合わせておかなければ、フォーカスエラー信号の振幅及び感度が劣化して、安定にフォーカス制御を再開できない。そのため、厚みt3の公差は6μmに抑えることが望ましく、厚みt3を25.5μm以下とすることにより、フォーカスエラー信号の劣化を抑制することができ、安定してフォーカス制御を行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt3は、24.5μm以下であることが好ましい。この構成によれば、厚みt3を24.5μm以下とすることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt2は、10.0μm以上、16.5μm以下であり、前記厚みt3は、14.5μm以上、24.5μm以下であり、前記厚みt4は、11.0μm以上、20.5μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、各厚みt2,t3,t4の公差を5μmに抑える、すなわち、厚みt2を、10.0μm以上、16.5μm以下とし、厚みt3を、14.5μm以上、24.5μm以下とし、厚みt4を、11.0μm以上、20.5μm以下とすることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記距離d1は、50μmより大きいことが好ましい。この構成によれば、距離d1を50μmより大きくすることにより、光記録媒体の表面から、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面までの厚みを、従来の光記録媒体のカバー層の厚みよりも厚くすることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、4つの情報記録面を有した光記録媒体の製造方法であって、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層、第3の情報記録面、第3の中間層及び第4の情報記録面を形成する工程を有し、前記光透過層の厚みをt1、前記第1の中間層の厚みをt2、前記第2の中間層の厚みをt3、前記第3の中間層の厚みをt4、と定義したときに、前記光透過層の厚み及び前記第1乃至第3の中間層の厚みが、52.0μm≦t1≦55.0μm、10.0μm≦t2≦13.0μm、18.0μm≦t3≦21.0μm、及び、14.0μm≦t4≦17.0μm、を満たすように前記第1乃至第4の情報記録面、前記第1乃至第3の中間層、及び前記光透過層を形成する。
この構成によれば、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層、第3の情報記録面、第3の中間層及び第4の情報記録面が形成される。そして、光透過層の厚み及び第1乃至第3の中間層の厚みが、52.0μm≦t1≦55.0μm、10.0μm≦t2≦13.0μm、18.0μm≦t3≦21.0μm、及び、14.0μm≦t4≦17.0μm、を満たすように第1乃至第4の情報記録面、第1乃至第3の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らし、かつ光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、前記光記録媒体の表面から前記第4の情報記録面までの距離をd4、と定義したときに、製造された光記録媒体は、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たすことが好ましい。
この構成によれば、t3−t4≧1μm、t4−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3+t4)≧1μmを満たすように光記録媒体が製造されるので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、製造された光記録媒体は、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、94.0μm≦d4≦106.0μm、50.5μm≦t1≦56.5μm、10.0μm≦t2≦16.5μm、14.5μm≦t3≦24.5μm、及び、11.0μm≦t4≦20.5μmを満たすことが好ましい。
この構成によれば、60.5μm≦d2≦69.5μm、78.5μm≦d3≦90.5μm、94.0μm≦d4≦106.0μm、50.5μm≦t1≦56.5μm、10.0μm≦t2≦16.5μm、14.5μm≦t3≦24.5μm、及び、11.0μm≦t4≦20.5μmを満たすように光記録媒体が製造されるので、厚みt2,t3,t4の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体の製造方法において、前記厚みt1の標準値は53.5μmであり、前記厚みt2の標準値は11.5μmであり、前記厚みt3の標準値は19.5μmであり、前記厚みt4の標準値は15.5μmであり、前記光透過層の厚み及び前記第1乃至第3の中間層の厚みの公差がそれぞれ1.5μm以下になるように、前記第1乃至第4の情報記録面、前記第1乃至第3の中間層、及び前記光透過層を形成することが好ましい。
この構成によれば、厚みt1の標準値は53.5μmであり、厚みt2の標準値は11.5μmであり、厚みt3の標準値は19.5μmであり、厚みt4の標準値は15.5μmであり、光透過層の厚み及び第1乃至第3の中間層の厚みの公差がそれぞれ1.5μm以下になるように、第1乃至第4の情報記録面、第1乃至第3の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体は、3つの情報記録面を有した光記録媒体であって、前記光記録媒体の表面と、前記光記録媒体の表面に最も近い第1の情報記録面との間の厚みをt1、前記第1の情報記録面と、前記光記録媒体の表面に二番目に近い第2の情報記録面との間の厚みをt2、及び、前記第2の情報記録面と、前記光記録媒体の表面から最も遠い第3の情報記録面との間の厚みをt3、と定義したときに、t3−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たす。
この構成によれば、3つの情報記録面を有した光記録媒体は、t3−t2≧1μm、t2≧10μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体において、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、及び、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、と定義したときに、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすことが好ましい。
この構成によれば、光記録媒体は、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、及び、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすので、厚みt2,t3の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
本発明の他の局面に係る光記録媒体の製造方法は、3つの情報記録面を有した光記録媒体の製造方法であって、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層及び第3の情報記録面を形成する工程を有し、前記光透過層の厚みをt1、前記第1の中間層の厚みをt2、前記第2の中間層の厚みをt3、と定義したときに、前記光透過層の厚み及び前記第1及び第2の中間層の厚みが、55.0μm≦t1≦59.0μm、16.0μm≦t2≦20.0μm、及び、23.0μm≦t3≦27.0μm、を満たすように前記第1乃至第3の情報記録面、前記第1及び第2の中間層、及び前記光透過層を形成する。
この構成によれば、基板上に、光透過層、第1の情報記録面、第1の中間層、第2の情報記録面、第2の中間層及び第3の情報記録面が形成される。そして、光透過層の厚み及び第1及び第2の中間層の厚みが、55.0μm≦t1≦59.0μm、16.0μm≦t2≦20.0μm、及び、23.0μm≦t3≦27.0μm、を満たすように第1乃至第3の情報記録面、第1及び第2の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
また、上記の光記録媒体において、製造された光記録媒体は、t2−t3≧1μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすことが好ましい。
この構成によれば、t2−t3≧1μm、及び、t1−(t2+t3)≧1μmを満たすように光記録媒体が製造されるので、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らし、かつ光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することができる。
また、上記の光記録媒体において、前記光記録媒体の表面から前記第2の情報記録面までの距離をd2、前記光記録媒体の表面から前記第3の情報記録面までの距離をd3、と定義したときに、製造された光記録媒体は、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.5μm、及び、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすことが好ましい。
この構成によれば、52.0μm≦t1≦62.0μm、13.0μm≦t2≦23.0μm、及び、20.0μm≦t3≦30.0μm、69.0μm≦d2≦81.0μm、94.0μm≦d3≦106.0μm、を満たすように光記録媒体が製造されるので、厚みt2,t3の公差を5μmに抑えることにより、フォーカスジャンプをより安定して行うことができる。
また、上記の光記録媒体において、前記厚みt1の標準値は57.0μmであり、前記厚みt2の標準値は18.0μmであり、前記厚みt3の標準値は25.0μmであり、前記光透過層の厚み及び前記第1及び第2の中間層の厚みの公差がそれぞれ2.0μm以下になるように、前記第1乃至第3の情報記録面、前記第1及び第2の中間層、及び前記光透過層を形成することが好ましい。
この構成によれば、厚みt1の標準値は57.0μmであり、厚みt2の標準値は18.0μmであり、厚みt3の標準値は25.0μmであり、光透過層の厚み及び第1及び第2の中間層の厚みの公差がそれぞれ2.0μm以下になるように、第1乃至第3の情報記録面、第1及び第2の中間層、及び光透過層が形成される。
この場合、光記録媒体の表面の裏側で結像するのを防止し、かつ各情報記録面での反射光同士の干渉を減らすことにより、サーボ信号及び再生信号の品質を向上させることができる。また、光記録媒体の表面と、光記録媒体の表面に最も近い情報記録面との間隔を大きく設定することが可能となるので、光記録媒体の表面に傷や汚れがある場合の再生信号の劣化を抑えることができる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明に係る光記録媒体及び光記録媒体の製造方法は、任意の情報記録面への情報の記録又は再生時に他の情報記録面からの反射光の影響を最小限に抑えることにより、サーボ信号及び再生信号への影響を低減することができる。これにより、品質の良い再生信号が得られる、既存ディスクとの互換性を確保しやすい大容量の光記録媒体が提供できる。