JPWO2009157122A1 - Memsデバイス、memsデバイスモジュール及び音響トランスデューサ - Google Patents

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Abstract

半導体基板5上の第1の絶縁膜6の上に、第1の電極3を有する振動膜2が形成されている。振動膜2の上方に、振動膜2との間にエアギャップ11が介在するように、第2の電極4を有する固定膜10が形成されている。半導体基板5と固定膜10の一部分との間に第2の絶縁膜12が設けられている。半導体基板5は、N型の多数キャリアを含む領域を有している。

Description

本発明は、半導体基板を支持基板とし、当該半導体基板上に可動電極及び固定電極を有する音響トランスデューサ等のMEMSデバイス及びそれを搭載するMEMSデバイスモジュールに関する。
従来の電子部品の小型化、高性能化の手段として、半導体技術を応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスが有望視されている。すでに、特許文献1等に示すように、マイクロフォンや加速度センサー等の分野でMEMSデバイスの量産が進んでいる。これらのMEMSデバイスの製造においては、支持基板として半導体基板を用いることにより、半導体集積回路を製造するための製造ライン及びウェーハプロセスを活用することが可能となっている。
特開2007−295516号公報
しかしながら、前述のMEMSデバイス、特に、音響トランスデューサのような容量型素子においてはノイズや感度変動等が生じやすいという問題がある。
前記に鑑み、本発明は、ノイズや感度変動等が生じにくいMEMSデバイスを実現することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本願発明者らは、MEMSデバイスにおいてノイズや感度変動等が生じやすい原因を検討した結果、以下のような知見を得た。
すなわち、電極構造を有するMEMSデバイスを半導体基板上に構成した場合、MIS(Metal Insulator Semiconductor )構造が容易に形成されて寄生容量として作用してしまう。本願発明者らは、このMIS構造における空乏層幅の変動によって生じる変位電流に起因して電位が変動し、その結果、音響トランスデューサのような容量型素子においてノイズや感度変動等が生じていることを見出した。
具体的には、MIS構造における半導体基板界面に分布する界面電荷の極性と当該半導体基板の多数キャリアの極性とが同じである場合、半導体基板中には空乏層(Depletion Layer )が発生する。これらの空乏層は寄生容量の一部として作用するので、空乏層の発生に起因する寄生容量の大きさの変動がノイズ源となり、SN比特性が低下したり、感度が変動したりするという問題が生じる。
例えば、蛍光灯のように発光周波数を持つ光源下においては、キャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが周期的に変動するが、音響トランスデューサのような容量型素子では、この寄生容量の大きさの変動がノイズ源となり、SN比特性が低下する。
同様に、照度の異なる場所間の移動や温度の異なる場所間の移動によってもキャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが変動する結果、ノイズが発生する。特に、安価で広く使用されているp型シリコン基板を音響トランスデューサのような容量型素子の支持基板として使用した場合、基板の洗浄工程等において基板表面に付着する微量のアルミニウムなどに起因する正電荷により、その正電荷の下側に空乏層が形成されるので、温度変化や光強度変化による空乏層幅の変動の影響を受け易くなる。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、具体的には、本発明に係るMEMSデバイスは、半導体基板と、前記半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上に形成され且つ第1の電極を有する振動膜と、前記振動膜との間にエアギャップが介在するように前記振動膜の上方に形成され且つ第2の電極を有する固定膜と、前記半導体基板と前記固定膜の一部分との間に設けられた第2の絶縁膜とを備え、前記半導体基板は、N型の多数キャリアを含む領域を有している。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板はシリコン基板であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板及び前記第1の絶縁膜の所定領域は除去されており、当該所定領域を覆うように前記振動膜が形成されていてもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板と前記第1の絶縁膜とは接しており、前記N型の多数キャリアを含む領域は、少なくとも前記半導体基板における前記第1の絶縁膜との接触部分に設けられていてもよい。この場合、前記半導体基板における前記第1の絶縁膜との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、前記半導体基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高いことが好ましい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記N型の多数キャリアを含む領域にはN型不純物が含まれていることが好ましく、具体的には、前記N型不純物の濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることが好ましい。この場合、前記N型不純物はリン原子又は砒素原子であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板はN型半導体基板であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記第1の絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記第2の絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記エアギャップの高さは、前記振動膜と前記固定膜との間隔に等しくてもよい。
また、本発明に係るMEMSデバイスモジュールは、本発明に係るMEMSデバイスを有するMEMSデバイスモジュールであって、前記MEMSデバイスの上に設けられ且つ音孔を有するカバーを備えている。
本発明に係るMEMSデバイスモジュールにおいて、前記MEMSデバイスと電気的に接続された増幅器をさらに備えていてもよい。
また、本発明に係る音響トランスデューサは、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された可動電極と、前記半導体基板上に形成された固定電極と、前記半導体基板と前記可動電極の一部分との間に設けられた第1の絶縁膜と、前記半導体基板と前記固定電極の一部分との間に設けられた第2の絶縁膜とを備え、前記半導体基板、前記第1の絶縁膜及び前記可動電極は第1のMIS構造を構成し、前記半導体基板、前記第2の絶縁膜及び前記固定電極は第2のMIS構造を構成し、前記半導体基板と前記第1の絶縁膜又は前記第2の絶縁膜との界面には第1の極性を持つ界面電荷が分布し、前記半導体基板は、前記第1の極性とは異なる第2の極性を持つキャリアを多数キャリアとして有している。
本発明に係る音響トランスデューサにおいて、前記半導体基板は、N型の多数キャリアを含む領域を有するシリコン基板であることが好ましい。この場合、前記シリコン基板と前記第1の絶縁膜とは接しており、前記N型の多数キャリアを含む領域は、少なくとも前記シリコン基板における前記第1の絶縁膜との接触部分に設けられていてもよく、具体的には、前記シリコン基板における前記第1の絶縁膜との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、前記シリコン基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高くてもよい。また、この場合、前記シリコン基板はN型シリコン基板であってもよい。
本発明に係る音響トランスデューサにおいて、前記可動電極と前記固定電極とはコンデンサー構造を構成し、音圧に反応して前記可動電極が振動することにより、前記コンデンサー構造の容量が変動してもよい。
本発明によると、音響トランスデューサ等のMEMSデバイスにおいて支持基板である半導体基板にN型の多数キャリアを含む領域を設けることにより、通常の集積回路製造工程で発生するアルミニウム汚染等に起因する正の固定電荷によって寄生MIS構造に空乏層が発生することを抑制することができるので、容量変動によるノイズや感度変動等の発生を防止することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサの断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサの断面図において各部位の容量素子を模式的に示した図である。 図3は、図2に示す本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサの等価回路図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおけるエアギャップ容量Caを持つ容量素子を模式的に示す図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおける寄生容量C3 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおける寄生容量C1 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図7は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおける寄生容量C2 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図8は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C1 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図9は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C2 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図10は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量Cpを持つ容量素子の当該寄生容量Cpが外的刺激(例えば、光)により変化することを説明する図である。 図11は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における外的刺激(例えば、光)とキャリア密度との関係、及び外的刺激と空乏層幅との関係を合わせて説明する図である。 図12(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサを搭載したマイクロフォンモジュールを説明する図であって、図12(a)は上面図であり、図12(b)は断面図であり、図12(c)は回路図である。
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る音響トランスデューサの断面図である。
図1に示すように、支持基板であるN型のシリコン基板5の上にシリコン酸化膜6が形成されている。シリコン基板5及びシリコン酸化膜6の積層構造は、その周辺部を残すように除去されており、それによってメンブレン領域(基板除去領域)7が形成されている。すなわち、メンブレン領域7は、後述する振動膜2が外部から圧力を受けて振動することを可能とするためにシリコン基板5が選択的に(周辺部を残すように)除去されてなる領域である。シリコン酸化膜6上にはメンブレン領域7を覆うように振動膜2が形成されている。振動膜2には、メンブレン領域7の空洞に通じるリークホール9が形成されている。振動膜2は、下部電極(振動電極)を構成する導電膜から構成されてもよいし、又は当該導電膜及び絶縁膜を含む多層膜から構成されてもよい。特に、振動膜2が、永久電荷を保持するエレクトレット膜を含む場合には、エレクトレットコンデンサーを構成できる。本実施形態では、振動膜2は、ポリシリコン膜などの導電膜からなる下部電極3と、その上に形成されたシリコン酸化膜などからなる絶縁膜2Bと、絶縁膜2Bの下面及び上面(側面を含む)をそれぞれ覆うシリコン窒化膜などからなる絶縁膜2A及び2Cとから構成されている。また、シリコン酸化膜6上には、下部電極3を構成する導電膜からなる引出し配線8が形成されている。
また、振動膜2の上方には固定膜10が配置されている。固定膜10は、上部電極(固定電極)を構成する1つの導電膜から構成されてもよいし、又は当該導電膜及び絶縁膜を含む多層膜から構成されてもよい。特に、固定膜10が、永久電荷を保持するエレクトレット膜を含む場合には、エレクトレットコンデンサーを構成できる。本実施形態では、固定膜10は、ポリシリコン膜などの導電膜からなる上部電極4と、上部電極4の下面及び上面(側面を含む)をそれぞれ覆うシリコン窒化膜などからなる絶縁膜10A及び10Bとから構成されている。
また、振動膜2の一部分の上及びシリコン酸化膜6の上には、固定膜10を支持するためのシリコン酸化膜12が形成されている。
また、振動膜2と固定膜10とシリコン酸化膜12とによって囲まれるようにエアギャップ11が設けられている。尚、エアギャップ11は、少なくともメンブレン領域7の上側全体に亘って形成されている。本実施形態では、エアギャップ11は、シリコン酸化膜12を部分的に除去することによって形成されている。また、エアギャップ11の高さ(エアギャップ長)は、振動膜2と固定膜10との間隔に等しい。
また、エアギャップ11上の固定膜10には、エアギャップ11に通じる複数のアコースティックホール1が形成されている。アコースティックホール1は、振動膜2を振動させる空気の通り穴としての役割を果たす。
また、シリコン酸化膜12には、シリコン酸化膜6上の引出し配線8が露出するように開口部13が設けられている。図示は省略しているが、下部電極3は引出し配線8を介して外部回路に接続されている。
次に、本実施形態の音響トランスデューサの動作について説明する。本実施形態の音響トランスデューサにおいて、アコースティックホール1を通して、振動膜2が上方(外部)から音圧を受けると、その音圧に応じて振動膜2が機械的に上下に振動する。ここで、下部電極3及び上部電極4をそれぞれ電極とする平行平板型のコンデンサー構造が形成されているために、振動膜2が振動すると、下部電極3と上部電極4との電極間距離が変化し、コンデンサーの容量(Ca)が変化する。一方、当該コンデンサーに蓄えられる電荷量(Qa)が一定であるという条件下で、容量(Ca)が変化(以下、容量Caの変化量をΔCaとする)すると、下記(式1)の関係より、下部電極3と上部電極4との間の電圧(Va)に下記(式2)のような変化(以下、電圧Vaの変化量をΔVaとする)が生じる。
Qa=Ca×Va ・・・ (式1)
ΔVa=Qa/ΔCa ・・・ (式2)
すなわち、空気振動が機械振動に変換されることにより、音圧変化が電圧変化ΔVaに変換される。これが、本実施形態の音響トランスデューサの動作原理である。ところが、従来の音響トランスデューサにおいては、各種の寄生容量が変動することにより、前述のような理想的な電圧変化を出力として得ることができない。
次に、音響トランスデューサの特性を表す感度について説明する。可聴音域における音響トランスデューサの感度Sの一般式は、下記(式3)で表される。
S=α×Ca×Va×P×(1/S0 ) ・・・ (式3)
(式3)において、αは比例係数を表し、Caは可動部であるエアギャップ容量((エアギャップ面積/エアギャップ長)に比例する)を表し、Vaはエアギャップ間電圧を表し、Pは音圧を表し、S0 は振動膜スティフネス(動きにくさ)を表している。(式3)からも分かるように、Caは感度の良し悪しを左右する主要なパラメータの一つである。しかし、従来の音響トランスデューサにおいては、各種の寄生容量が変動することにより、理想的な感度特性を実現することができない。
以下、従来の音響トランスデューサに対する本実施形態の音響トランスデューサの優位点を、音響トランスデューサの各部位における容量素子(寄生容量を含む)の観点から説明する。
まず、本実施形態の音響トランスデューサの各部位における容量素子について詳しく説明する。
図2は、本実施形態の音響トランスデューサの断面図において各部位の容量素子を模式的に示した図である。図2において、14はエアギャップ容量Caを持つ容量素子を、15は上部電極4、シリコン酸化膜12、シリコン酸化膜6及びシリコン基板5から構成されるMIS構造の寄生容量素子(容量値C1 )を、16は下部電極3、シリコン酸化膜6及びシリコン基板5から構成されるMOS構造の寄生容量素子(容量値C2 )を、17は上部電極4、シリコン酸化膜12及び下部電極3から構成されるMOS構造の寄生容量素子(容量値C3 )をそれぞれ表している。
図3は、図2に示す本実施形態の音響トランスデューサの等価回路図である。図3に示す回路は、容量素子14(エアギャップ容量Ca)、容量素子15(寄生容量C1 )、容量素子16(寄生容量C2 )、容量素子17(寄生容量C3 )、下部電極3(電圧Vmic)、上部電極4(グランド電圧)、及びシリコン(Si)基板5から構成されている。ここで、下部電極3の電圧Vmicが電気信号として増幅器等の次段の回路に出力される。また、シリコン基板5の裏面は、グランド電位となるプリント基板22に直接貼り付けられるが(図12(b)参照)、シリコン基板5とプリント基板22との接触抵抗値が微小な電圧変化に対して大きいため、シリコン基板5の電圧を考慮する必要は無い。従って、図3に示す回路においては、上部電極4と下部電極3との間に、容量素子14と、容量素子17と、容量素子15及び16の直列容量とが並列に接続されていることになる。そこで、上部電極4と下部電極3との間の合計容量Cmic(仮想的な単一の容量素子18の容量)を近似的に下記(式4)で表すことができる。
Cmic=Ca+C3 +{(C1 ×C2 )/(C1 +C2 )} ・・・ (式4)
(式4)に示すように、振動膜2の振動によりエアギャップ容量Caが変動すると、それに伴い、Cmicも変動するため、下部電極3の電圧Vmicも変動することになる。すなわち、エアギャップ容量Caの変動が、下部電極3の電圧の変動となり、それが信号成分として次段回路に入力されることになる。一方、寄生容量であるC1 、C2 、C3 が変動する場合にも、C1 、C2 、C3 の変動に伴い、Cmicも変動するため、下部電極3の電圧Vmicも変動することになる。ここで、C1 、C2 、C3 は、それぞれの容量素子構造から音圧では変動せずに音圧以外の要因で変動するので、C1 、C2 、C3 の変動に起因するCmicの変動分は、下部電極3の電圧Vmicのノイズ成分となって次段回路に入力されることになる。すなわち、本来、音響トランスデューサ出力として、エアギャップ容量Caの変動に比例した出力信号を下部電極3に取り出したいところ、寄生容量であるC1 、C2 、C3 が大きく変動すると、この本来の目的を達成することができなくなる。
ところで、寄生容量のうちC1 及びC2 は、シリコン基板5と上部電極4又は下部電極3との間にそれぞれ形成されたMIS容量の容量値であって、これらの容量値の大きさは温度の変化や外部からの光の変化に伴って変動する。また、図3に示す等価回路において、下部電極3から見て、寄生容量のうちC1 及びC2 は上部電極4までの間に直列に接続された容量素子(15及び16)の容量であるため、C1 及びC2 の直列合成容量値が変動すると、合成容量Cminが変動して、下部電極3の電圧Vmicにノイズ成分が生じてしまう。
それに対して、本実施形態によれば、支持基板として、電子が多数キャリアであるn型のシリコン基板5を使用することにより、寄生容量C1 及びC2 を有するMIS構造において、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面の正電荷に起因して空乏層が生じることを抑制することができる。従って、入射光の強度変動や温度変動によって空乏層の幅が変動することがないので、ノイズの発生や温度変動による感度変動等を抑制することができる。
図4は、本実施形態の音響トランスデューサにおけるエアギャップ容量Caを持つ容量素子(容量素子14)を模式的に示す図である。図4に示すように、エアギャップ容量Caは、容量電極である上部電極4及び下部電極3によって、エアギャップ11並びに絶縁膜2A、2B、2C及び10Aが挟まれることによって生じるので、下記(式5)が成り立つ。
1/Ca=1/Cair+1/Ci ・・・ (式5)
(式5)において、Cairはエアギャップ11による容量値、Ciは絶縁膜2A、2B、2C及び10Aによる容量値である。
図5は、本実施形態の音響トランスデューサにおける寄生容量C3 を持つ容量素子(容量素子17)を模式的に示す図である。図5に示すように、寄生容量C3 は、容量電極である上部電極4及び下部電極3によって、絶縁膜2A、2C、10A及びシリコン酸化膜12が挟まれることによって生じるので、下記(式6)が成り立つ。
1/C3 =1/Ci ・・・ (式6)
(式6)において、Ciは絶縁膜2A、2C、10A及びシリコン酸化膜12による容量値である。
図6は、本実施形態の音響トランスデューサにおける寄生容量C1 を持つ容量素子(容量素子15)を模式的に示す図である。図6に示すように、寄生容量C1 は、容量電極である上部電極4及びN型のシリコン基板5(電子が多数キャリアとなる)によって、絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12が挟まれることによって生じるので、下記(式7)が成り立つ。
1/C1 =1/Ci ・・・ (式7)
(式7)において、Ciは絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12による容量値である。
本実施形態に係る音響トランスデューサによると、図6に示すように、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍において、シリコン酸化膜6内に正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、シリコン基板5内にN型の多数キャリア27が蓄積されて界面電荷24と電気的釣り合いを保つため、空乏層は発生しない。その結果、音圧以外の要因による寄生容量C1 の変動を抑制することができるので、振動膜2の振動に伴う下部電極3の電圧変動にノイズ成分が含まれることを抑制できるという効果が得られる。
図7は、本実施形態の音響トランスデューサにおける寄生容量C2 を持つ容量素子(容量素子16)を模式的に示す図である。図7に示すように、寄生容量C2 は、容量電極である下部電極3及びN型のシリコン基板5(電子が多数キャリアとなる)によって、シリコン酸化膜6が挟まれることによって生じるので、下記(式8)が成り立つ。
1/C2 =1/Ci ・・・ (式8)
(式8)において、Ciはシリコン酸化膜6による容量値である。
本実施形態に係る音響トランスデューサによると、図7に示すように、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍において、シリコン酸化膜6内に正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、シリコン基板5内にN型の多数キャリア27が蓄積されて界面電荷24と電気的釣り合いを保つため、空乏層は発生しない。すなわち、本実施形態に係る音響トランスデューサによると、シリコン基板5がN型であって多数キャリアが電子であるため、支持基板としてP型シリコン基板を用いる場合と比較して、シリコン酸化膜6内に形成される正の電荷を持つ界面電荷24に対応して、負の電荷を持つ多数キャリア27がシリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍に集まりやすくなるので、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍のシリコン基板5には空乏層が発生しなくなる。従って、界面電荷24と多数キャリア27との電気的釣り合いが保たれるので、照度の異なる場所間の移動や温度の異なる場所間の移動によっても、キャリア平衡状態は保たれることになる。その結果、音圧以外の要因による寄生容量C2 の変動を抑制することができるので、振動膜2の振動に伴う下部電極3の電圧変動にノイズ成分が含まれることを抑制できるという効果が得られる。
以下、比較例として、本実施形態に係る音響トランスデューサのシリコン基板5をP型のシリコン基板5Aに代替した場合における寄生容量C1 及びC2 について説明する。
図8は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C1 を持つ容量素子(容量素子15)を模式的に示す図である。図8に示すように、寄生容量C1 は、容量電極である上部電極4及びP型のシリコン基板5A(ホールが多数キャリアとなる)によって、絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12が挟まれることによって生じる。また、図8に示すように、シリコン酸化膜6とP型のシリコン基板5Aとの界面近傍において、シリコン酸化膜6内に正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、P型のシリコン基板5A内には、界面電荷24の影響により空乏層26が形成される。ここで、空乏層26内には負の電荷を持つアクセプター原子25が存在しており、このアクセプター原子25と界面電荷24とによって電気的釣り合いが保たれるので、下記(式9)が成り立つ。
1/C1 =1/Ci+1/Csi ・・・ (式9)
(式9)において、Csiは空乏層26による容量値であり、Ciは絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12による容量値である。
図9は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C2 を持つ容量素子(容量素子16)を模式的に示す図である。図9に示すように、寄生容量C2 は、容量電極である下部電極3及びP型のシリコン基板5A(ホールが多数キャリアとなる)によって、シリコン酸化膜6が挟まれることによって生じる。また、図9に示すように、シリコン酸化膜6とP型のシリコン基板5Aとの界面近傍において、シリコン酸化膜6内には正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、P型のシリコン基板5A内には、界面電荷24の影響により空乏層26が形成される。ここで、空乏層26内には負の電荷を持つアクセプター原子25が存在しており、このアクセプター原子25と界面電荷24とによって電気的釣り合いが保たれるので、下記(式10)が成り立つ。
1/C2 =1/Ci+1/Csi ・・・ (式10)
(式10)において、Csiは空乏層26による容量値であり、Ciはシリコン酸化膜6による容量値である。
次に、図8及び図9に示した比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)の寄生容量素子に光や熱などの外的刺激が加わった場合における挙動や特性への影響について説明する。図10は、空乏層を有する比較例の音響トランスデューサにおける寄生容量Cpを持つ容量素子の当該寄生容量Cpが外的刺激(例えば、光)により変化することを説明する図である。ここで、寄生容量Cpを持つ容量素子の構造は、基本的に、図9に示す寄生容量C2 を持つ容量素子の構造と同じである。また、図11は、空乏層を有する比較例の音響トランスデューサにおける外的刺激(例えば、光)とキャリア密度との関係、及び外的刺激と空乏層幅との関係を合わせて説明する図である。
図10に示すように、寄生容量Cpは、容量電極である電極3A及びP型のシリコン基板5A(ホールが多数キャリアとなる)によって、シリコン酸化膜6Aが挟まれることによって生じる。また、図10に示すように、シリコン酸化膜6AとP型のシリコン基板5Aとの界面近傍において、シリコン酸化膜6A内には正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、P型のシリコン基板5A内には、界面電荷24の影響により空乏層26が形成される。ここで、空乏層26内には負の電荷を持つアクセプター原子25が存在しており、このアクセプター原子25と界面電荷24とによって電気的釣り合いが保たれるので、下記(式11)が成り立つ。
1/Cp=1/Ci+1/Csi ・・・ (式11)
(式11)において、Csiは空乏層26による容量値であり、Ciはシリコン酸化膜6Aによる容量値である。
また、Csiについては下記(式12)で表すことができる。
Csi=(εsi×ε0/Xp)×S ・・・ (式12)
(式12)において、εsiはシリコンの比誘電率であり、ε0は真空の誘電率であり、Xpは空乏層の幅であり、Sは空乏層の面積である。
(式11)に示すように、空乏層容量Csiは寄生容量Cpの一部として作用するが、例えば蛍光灯のように発光周波数を持つ光源下においては、図11に示すように、光源のON、OFFに伴うキャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが周期的に変動する。このため、音響トランスデューサのような容量型素子では、この寄生容量の大きさの変動がノイズ源となり、SN比特性が低下する。
同様に、照度の異なる場所間の移動や温度の異なる場所間の移動によってもキャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが変動する結果、ノイズが発生する。
例えば、空乏層を有する寄生容量素子を含む比較例の音響トランスデューサの容量Cmicを下記(式13)のように表す。
Cmic=Ca+Cp ・・・ (式13)
(式13)において、Caはエアギャップ容量であり、Cpは空乏層を有する寄生容量素子の容量値である。
このような比較例の音響トランスデューサに対して音圧が加えられると同時に、光や熱などの刺激によって空乏層幅Xpに変調が加えられるような環境下ではCmicは下記(式14)のように表すことができる。
Cmic=Ca+ΔCa+Cp+ΔCp ・・・ (式14)
(式14)において、ΔCaは音圧に反応して発生する信号成分であり、ΔCpは光や熱などの外的刺激によって発生するノイズ成分である。
それに対して、本実施形態では、MEMSデバイスの支持台としてN型のシリコン基板5を用いることにより、図6及び図7に示す寄生容量素子の構造を実現し、それによって、(式14)においてΔCpで表されるノイズ成分を除去することができる。
具体的には、(式4)及び(式14)より、本実施形態の音響トランスデューサにおいて音圧に加えて光や熱などの外的刺激がある場合におけるCmicを下記(式15)のように表すことができる。
Cmic=Ca+ΔCa+C3 +ΔC3 +{((C1 +ΔC1 )×(C2 +ΔC2 ))
/((C1 +ΔC1 )+(C2 +ΔC2 ))} ・・・ (式15)
ここで、本実施形態のように、寄生素子C1 及びC2 を図6及び図7に示す構造にすることによって、光や熱などの外的刺激に起因する容量変動を抑制することができる。この場合、Cmicを下記(式16)のように表すことができる。
Cmic=Ca+ΔCa+C3 +{((C1 ×C2 )/(C1 +C2 )}
=Ca+ΔCa+Cp ・・・ (式16)
すなわち、(式16)に示すように、外的刺激によるノイズ成分を除去することができる。
尚、本実施形態の音響トランスデューサにおいて、支持基板として、N型のシリコン基板5を用いたが、これに代えて、P型(真性でもよい:以下同じ)シリコン基板を用いると共に当該P型シリコン基板におけるシリコン酸化膜6との界面又はその近傍にN型不純物含有領域を設けた場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、N型不純物含有領域を設けることにより、N型の多数キャリアを含む領域を形成することができる。この場合、P型シリコン基板におけるシリコン酸化膜6との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、P型シリコン基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高いことが好ましい。このようにすると、P型シリコン基板とシリコン酸化膜6との界面近傍のP型シリコン基板に空乏層が形成されないようにすることができるので、光や熱などの外的刺激による空乏層容量の変動を抑制することができる結果、外的刺激に起因するノイズ成分を確実に除去することができる。ここで、本発明による効果を確実に得るためには、前記N型不純物含有領域のN型不純物濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることが好ましい。また、前記N型不純物含有領域に含まれるN型不純物としては、リン原子又は砒素原子等を用いることができる。
また、本実施形態の音響トランスデューサにおいて、支持基板として用いるN型のシリコン基板5におけるシリコン酸化膜6との接触部分のN型不純物濃度を、その他の部分のN型不純物濃度と比べてより高くしてもよい。このようにすると、前述の本実施形態の効果をより顕著に得ることができる。すなわち、シリコン基板5とシリコン酸化膜6との界面近傍のシリコン基板5に空乏層が形成されないようにすることができるので、光や熱などの外的刺激による空乏層容量の変動を抑制することができる結果、外的刺激に起因するノイズ成分を確実に除去することができる。ここで、本発明による効果を確実に得るためには、N型のシリコン基板5に設ける高濃度N型不純物領域のN型不純物濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることが好ましい。また、前記高濃度N型不純物領域に追加的に導入するN型不純物としては、リン原子又は砒素原子等を用いることができる。
ところで、音響トランスデューサが搭載されたマイクロフォンモジュールにおいて、音響トランスデューサを覆うカバーに貫通孔(音孔)が設けられていると、光に起因する空乏層容量の変動が大きくなると考えられる。すなわち、カバーに形成された貫通孔を通して、光が直接的に音響トランスデューサに当たるからである。従って、このような場合には、本実施形態に係る音響トランスデューサが特に有利となる。
以下、本実施形態に係る音響トランスデューサが搭載されたマイクロフォンモジュールの具体的構成について、図面を参照しながら説明する。
図12(a)〜(c)は、本実施形態の音響トランスデューサを搭載したマイクロフォンモジュールを説明する図であって、図12(a)は上面図であり、図12(b)は断面図であり、図12(c)は回路図である。尚、図12(c)において、図2に示す本実施形態の音響トランスデューサの等価回路と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
図12(a)及び(b)に示すように、本実施形態のマイクロフォンモジュールにおいては、プリント基板22上に本実施形態の音響トランスデューサ19と増幅器20とが搭載されていると共に、音響トランスデューサ19と増幅器20とを覆うようにカバー23が設けられている。カバー23には、音響トランスデューサ19(具体的には固定膜10(図1参照))の上方に位置する貫通孔(音孔)21が設けられている。すなわち、貫通孔21を音響トランスデューサ19の直上に設けると、マイクロフォンモジュール内で音圧が減衰することなく音響トランスデューサ19に伝わるので、マイクロフォンモジュールを高感度化することができる。さらに、本実施形態に係る音響トランスデューサ19の支持基板であるシリコン基板5(図1参照)には空乏層が形成されていないため、蛍光灯のように発光周波数を持つ光源、照度の異なる場所間の移動、及び温度の異なる場所間の移動等によるノイズの発生や感度変動等を抑制することができる。
図12(c)に示す回路においては、下部電極3に生じる電圧信号Vmicが増幅器20に入力されると、当該信号が増幅されてマイクロフォンモジュールの電気信号Vmodとして出力される。その際においても、本実施形態に係る音響トランスデューサ19のシリコン基板5には空乏層が形成されないため、下部電極3に生じる電圧信号Vmicにノイズ成分が含まれることがないので、電圧信号Vmicが増幅されたとしても、マイクロフォンモジュールのSN比が低下することがないという効果が得られる。
尚、本実施形態において、容量型の音響トランスデューサを対象として説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の変形及び応用が可能である。すなわち、本実施形態に係る音響トランスデューサと基本構成を同じくする他のMEMSデバイス、例えば圧力センサなどに対して本発明を適用した場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、本願においては、例えばCMOS(complementary metal-oxide semiconductor )等の製造プロセス技術を利用して多数のチップが同時に製造されている基板(ウェハ)を分割することによって、容量型の音響トランスデューサや圧力センサなどのデバイスを製造する技術をMEMS技術と称し、このようなMEMS技術を用いて製造されたデバイスをMEMSデバイスと称する。また、容量型の音響トランスデューサや圧力センサなどのMEMSデバイス以外の様々なデバイスについても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で本発明が適用可能であることは言うまでもない。
以上に説明したように、本発明は音響トランスデューサ等のMEMSデバイスに関し、支持基板である半導体基板にN型の多数キャリアを含む領域を設けることによって、寄生容量変動に起因するノイズ発生等を防止できるという効果が得られるので、シリコンウェーハ等を使用した高性能且つ高品質のMEMSデバイスを広く社会に供給することを可能とする。
1 アコースティックホール
2 振動膜
2A 絶縁膜
2B 絶縁膜(エレクトレット膜)
2C 絶縁膜
3 下部電極
3A 電極
4 上部電極
5 シリコン基板(N型のシリコン基板)
5A シリコン基板(P型のシリコン基板)
6 シリコン酸化膜
6A シリコン酸化膜
7 メンブレン領域
8 引出し配線
9 リークホール
10 固定膜
10A 絶縁膜
10B 絶縁膜
11 エアギャップ
12 シリコン酸化膜
13 開口部
14 容量素子(エアギャップ容量素子)
15 寄生容量素子
16 寄生容量素子
17 寄生容量素子
18 容量素子(上部電極・下部電極間容量素子)
19 音響トランスデューサ
20 増幅器
21 貫通孔(音孔)
22 プリント基板
23 カバー
24 正の電荷を持つ界面電荷
25 負の電荷を持つアクセプター原子
26 空乏層
27 負の電荷を持つ多数キャリア
本発明は、半導体基板を支持基板とし、当該半導体基板上に可動電極及び固定電極を有する音響トランスデューサ等のMEMSデバイス及びそれを搭載するMEMSデバイスモジュールに関する。
従来の電子部品の小型化、高性能化の手段として、半導体技術を応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスが有望視されている。すでに、特許文献1等に示すように、マイクロフォンや加速度センサー等の分野でMEMSデバイスの量産が進んでいる。これらのMEMSデバイスの製造においては、支持基板として半導体基板を用いることにより、半導体集積回路を製造するための製造ライン及びウェーハプロセスを活用することが可能となっている。
特開2007−295516号公報
しかしながら、前述のMEMSデバイス、特に、音響トランスデューサのような容量型素子においてはノイズや感度変動等が生じやすいという問題がある。
前記に鑑み、本発明は、ノイズや感度変動等が生じにくいMEMSデバイスを実現することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本願発明者らは、MEMSデバイスにおいてノイズや感度変動等が生じやすい原因を検討した結果、以下のような知見を得た。
すなわち、電極構造を有するMEMSデバイスを半導体基板上に構成した場合、MIS(Metal Insulator Semiconductor )構造が容易に形成されて寄生容量として作用してしまう。本願発明者らは、このMIS構造における空乏層幅の変動によって生じる変位電流に起因して電位が変動し、その結果、音響トランスデューサのような容量型素子においてノイズや感度変動等が生じていることを見出した。
具体的には、MIS構造における半導体基板界面に分布する界面電荷の極性と当該半導体基板の多数キャリアの極性とが同じである場合、半導体基板中には空乏層(Depletion Layer )が発生する。これらの空乏層は寄生容量の一部として作用するので、空乏層の発生に起因する寄生容量の大きさの変動がノイズ源となり、SN比特性が低下したり、感度が変動したりするという問題が生じる。
例えば、蛍光灯のように発光周波数を持つ光源下においては、キャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが周期的に変動するが、音響トランスデューサのような容量型素子では、この寄生容量の大きさの変動がノイズ源となり、SN比特性が低下する。
同様に、照度の異なる場所間の移動や温度の異なる場所間の移動によってもキャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが変動する結果、ノイズが発生する。特に、安価で広く使用されているp型シリコン基板を音響トランスデューサのような容量型素子の支持基板として使用した場合、基板の洗浄工程等において基板表面に付着する微量のアルミニウムなどに起因する正電荷により、その正電荷の下側に空乏層が形成されるので、温度変化や光強度変化による空乏層幅の変動の影響を受け易くなる。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、具体的には、本発明に係るMEMSデバイスは、半導体基板と、前記半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上に形成され且つ第1の電極を有する振動膜と、前記振動膜との間にエアギャップが介在するように前記振動膜の上方に形成され且つ第2の電極を有する固定膜と、前記半導体基板と前記固定膜の一部分との間に設けられた第2の絶縁膜とを備え、前記半導体基板は、N型の多数キャリアを含む領域を有している。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板はシリコン基板であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板及び前記第1の絶縁膜の所定領域は除去されており、当該所定領域を覆うように前記振動膜が形成されていてもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板と前記第1の絶縁膜とは接しており、前記N型の多数キャリアを含む領域は、少なくとも前記半導体基板における前記第1の絶縁膜との接触部分に設けられていてもよい。この場合、前記半導体基板における前記第1の絶縁膜との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、前記半導体基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高いことが好ましい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記N型の多数キャリアを含む領域にはN型不純物が含まれていることが好ましく、具体的には、前記N型不純物の濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることが好ましい。この場合、前記N型不純物はリン原子又は砒素原子であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記半導体基板はN型半導体基板であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記第1の絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記第2の絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。
本発明に係るMEMSデバイスにおいて、前記エアギャップの高さは、前記振動膜と前記固定膜との間隔に等しくてもよい。
また、本発明に係るMEMSデバイスモジュールは、本発明に係るMEMSデバイスを有するMEMSデバイスモジュールであって、前記MEMSデバイスの上に設けられ且つ音孔を有するカバーを備えている。
本発明に係るMEMSデバイスモジュールにおいて、前記MEMSデバイスと電気的に接続された増幅器をさらに備えていてもよい。
また、本発明に係る音響トランスデューサは、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された可動電極と、前記半導体基板上に形成された固定電極と、前記半導体基板と前記可動電極の一部分との間に設けられた第1の絶縁膜と、前記半導体基板と前記固定電極の一部分との間に設けられた第2の絶縁膜とを備え、前記半導体基板、前記第1の絶縁膜及び前記可動電極は第1のMIS構造を構成し、前記半導体基板、前記第2の絶縁膜及び前記固定電極は第2のMIS構造を構成し、前記半導体基板と前記第1の絶縁膜又は前記第2の絶縁膜との界面には第1の極性を持つ界面電荷が分布し、前記半導体基板は、前記第1の極性とは異なる第2の極性を持つキャリアを多数キャリアとして有している。
本発明に係る音響トランスデューサにおいて、前記半導体基板は、N型の多数キャリアを含む領域を有するシリコン基板であることが好ましい。この場合、前記シリコン基板と前記第1の絶縁膜とは接しており、前記N型の多数キャリアを含む領域は、少なくとも前記シリコン基板における前記第1の絶縁膜との接触部分に設けられていてもよく、具体的には、前記シリコン基板における前記第1の絶縁膜との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、前記シリコン基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高くてもよい。また、この場合、前記シリコン基板はN型シリコン基板であってもよい。
本発明に係る音響トランスデューサにおいて、前記可動電極と前記固定電極とはコンデンサー構造を構成し、音圧に反応して前記可動電極が振動することにより、前記コンデンサー構造の容量が変動してもよい。
本発明によると、音響トランスデューサ等のMEMSデバイスにおいて支持基板である半導体基板にN型の多数キャリアを含む領域を設けることにより、通常の集積回路製造工程で発生するアルミニウム汚染等に起因する正の固定電荷によって寄生MIS構造に空乏層が発生することを抑制することができるので、容量変動によるノイズや感度変動等の発生を防止することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサの断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサの断面図において各部位の容量素子を模式的に示した図である。 図3は、図2に示す本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサの等価回路図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおけるエアギャップ容量Caを持つ容量素子を模式的に示す図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおける寄生容量C3 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおける寄生容量C1 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図7は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサにおける寄生容量C2 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図8は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C1 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図9は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C2 を持つ容量素子を模式的に示す図である。 図10は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量Cpを持つ容量素子の当該寄生容量Cpが外的刺激(例えば、光)により変化することを説明する図である。 図11は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における外的刺激(例えば、光)とキャリア密度との関係、及び外的刺激と空乏層幅との関係を合わせて説明する図である。 図12(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサを搭載したマイクロフォンモジュールを説明する図であって、図12(a)は上面図であり、図12(b)は断面図であり、図12(c)は回路図である。
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る音響トランスデューサについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る音響トランスデューサの断面図である。
図1に示すように、支持基板であるN型のシリコン基板5の上にシリコン酸化膜6が形成されている。シリコン基板5及びシリコン酸化膜6の積層構造は、その周辺部を残すように除去されており、それによってメンブレン領域(基板除去領域)7が形成されている。すなわち、メンブレン領域7は、後述する振動膜2が外部から圧力を受けて振動することを可能とするためにシリコン基板5が選択的に(周辺部を残すように)除去されてなる領域である。シリコン酸化膜6上にはメンブレン領域7を覆うように振動膜2が形成されている。振動膜2には、メンブレン領域7の空洞に通じるリークホール9が形成されている。振動膜2は、下部電極(振動電極)を構成する導電膜から構成されてもよいし、又は当該導電膜及び絶縁膜を含む多層膜から構成されてもよい。特に、振動膜2が、永久電荷を保持するエレクトレット膜を含む場合には、エレクトレットコンデンサーを構成できる。本実施形態では、振動膜2は、ポリシリコン膜などの導電膜からなる下部電極3と、その上に形成されたシリコン酸化膜などからなる絶縁膜2Bと、絶縁膜2Bの下面及び上面(側面を含む)をそれぞれ覆うシリコン窒化膜などからなる絶縁膜2A及び2Cとから構成されている。また、シリコン酸化膜6上には、下部電極3を構成する導電膜からなる引出し配線8が形成されている。
また、振動膜2の上方には固定膜10が配置されている。固定膜10は、上部電極(固定電極)を構成する1つの導電膜から構成されてもよいし、又は当該導電膜及び絶縁膜を含む多層膜から構成されてもよい。特に、固定膜10が、永久電荷を保持するエレクトレット膜を含む場合には、エレクトレットコンデンサーを構成できる。本実施形態では、固定膜10は、ポリシリコン膜などの導電膜からなる上部電極4と、上部電極4の下面及び上面(側面を含む)をそれぞれ覆うシリコン窒化膜などからなる絶縁膜10A及び10Bとから構成されている。
また、振動膜2の一部分の上及びシリコン酸化膜6の上には、固定膜10を支持するためのシリコン酸化膜12が形成されている。
また、振動膜2と固定膜10とシリコン酸化膜12とによって囲まれるようにエアギャップ11が設けられている。尚、エアギャップ11は、少なくともメンブレン領域7の上側全体に亘って形成されている。本実施形態では、エアギャップ11は、シリコン酸化膜12を部分的に除去することによって形成されている。また、エアギャップ11の高さ(エアギャップ長)は、振動膜2と固定膜10との間隔に等しい。
また、エアギャップ11上の固定膜10には、エアギャップ11に通じる複数のアコースティックホール1が形成されている。アコースティックホール1は、振動膜2を振動させる空気の通り穴としての役割を果たす。
また、シリコン酸化膜12には、シリコン酸化膜6上の引出し配線8が露出するように開口部13が設けられている。図示は省略しているが、下部電極3は引出し配線8を介して外部回路に接続されている。
次に、本実施形態の音響トランスデューサの動作について説明する。本実施形態の音響トランスデューサにおいて、アコースティックホール1を通して、振動膜2が上方(外部)から音圧を受けると、その音圧に応じて振動膜2が機械的に上下に振動する。ここで、下部電極3及び上部電極4をそれぞれ電極とする平行平板型のコンデンサー構造が形成されているために、振動膜2が振動すると、下部電極3と上部電極4との電極間距離が変化し、コンデンサーの容量(Ca)が変化する。一方、当該コンデンサーに蓄えられる電荷量(Qa)が一定であるという条件下で、容量(Ca)が変化(以下、容量Caの変化量をΔCaとする)すると、下記(式1)の関係より、下部電極3と上部電極4との間の電圧(Va)に下記(式2)のような変化(以下、電圧Vaの変化量をΔVaとする)が生じる。
Qa=Ca×Va ・・・ (式1)
ΔVa=Qa/ΔCa ・・・ (式2)
すなわち、空気振動が機械振動に変換されることにより、音圧変化が電圧変化ΔVaに変換される。これが、本実施形態の音響トランスデューサの動作原理である。ところが、従来の音響トランスデューサにおいては、各種の寄生容量が変動することにより、前述のような理想的な電圧変化を出力として得ることができない。
次に、音響トランスデューサの特性を表す感度について説明する。可聴音域における音響トランスデューサの感度Sの一般式は、下記(式3)で表される。
S=α×Ca×Va×P×(1/S0 ) ・・・ (式3)
(式3)において、αは比例係数を表し、Caは可動部であるエアギャップ容量((エアギャップ面積/エアギャップ長)に比例する)を表し、Vaはエアギャップ間電圧を表し、Pは音圧を表し、S0 は振動膜スティフネス(動きにくさ)を表している。(式3)からも分かるように、Caは感度の良し悪しを左右する主要なパラメータの一つである。しかし、従来の音響トランスデューサにおいては、各種の寄生容量が変動することにより、理想的な感度特性を実現することができない。
以下、従来の音響トランスデューサに対する本実施形態の音響トランスデューサの優位点を、音響トランスデューサの各部位における容量素子(寄生容量を含む)の観点から説明する。
まず、本実施形態の音響トランスデューサの各部位における容量素子について詳しく説明する。
図2は、本実施形態の音響トランスデューサの断面図において各部位の容量素子を模式的に示した図である。図2において、14はエアギャップ容量Caを持つ容量素子を、15は上部電極4、シリコン酸化膜12、シリコン酸化膜6及びシリコン基板5から構成されるMIS構造の寄生容量素子(容量値C1 )を、16は下部電極3、シリコン酸化膜6及びシリコン基板5から構成されるMOS構造の寄生容量素子(容量値C2 )を、17は上部電極4、シリコン酸化膜12及び下部電極3から構成されるMOS構造の寄生容量素子(容量値C3 )をそれぞれ表している。
図3は、図2に示す本実施形態の音響トランスデューサの等価回路図である。図3に示す回路は、容量素子14(エアギャップ容量Ca)、容量素子15(寄生容量C1 )、容量素子16(寄生容量C2 )、容量素子17(寄生容量C3 )、下部電極3(電圧Vmic)、上部電極4(グランド電圧)、及びシリコン(Si)基板5から構成されている。ここで、下部電極3の電圧Vmicが電気信号として増幅器等の次段の回路に出力される。また、シリコン基板5の裏面は、グランド電位となるプリント基板22に直接貼り付けられるが(図12(b)参照)、シリコン基板5とプリント基板22との接触抵抗値が微小な電圧変化に対して大きいため、シリコン基板5の電圧を考慮する必要は無い。従って、図3に示す回路においては、上部電極4と下部電極3との間に、容量素子14と、容量素子17と、容量素子15及び16の直列容量とが並列に接続されていることになる。そこで、上部電極4と下部電極3との間の合計容量Cmic(仮想的な単一の容量素子18の容量)を近似的に下記(式4)で表すことができる。
Cmic=Ca+C3 +{(C1 ×C2 )/(C1 +C2 )} ・・・ (式4)
(式4)に示すように、振動膜2の振動によりエアギャップ容量Caが変動すると、それに伴い、Cmicも変動するため、下部電極3の電圧Vmicも変動することになる。すなわち、エアギャップ容量Caの変動が、下部電極3の電圧の変動となり、それが信号成分として次段回路に入力されることになる。一方、寄生容量であるC1 、C2 、C3 が変動する場合にも、C1 、C2 、C3 の変動に伴い、Cmicも変動するため、下部電極3の電圧Vmicも変動することになる。ここで、C1 、C2 、C3 は、それぞれの容量素子構造から音圧では変動せずに音圧以外の要因で変動するので、C1 、C2 、C3 の変動に起因するCmicの変動分は、下部電極3の電圧Vmicのノイズ成分となって次段回路に入力されることになる。すなわち、本来、音響トランスデューサ出力として、エアギャップ容量Caの変動に比例した出力信号を下部電極3に取り出したいところ、寄生容量であるC1 、C2 、C3 が大きく変動すると、この本来の目的を達成することができなくなる。
ところで、寄生容量のうちC1 及びC2 は、シリコン基板5と上部電極4又は下部電極3との間にそれぞれ形成されたMIS容量の容量値であって、これらの容量値の大きさは温度の変化や外部からの光の変化に伴って変動する。また、図3に示す等価回路において、下部電極3から見て、寄生容量のうちC1 及びC2 は上部電極4までの間に直列に接続された容量素子(15及び16)の容量であるため、C1 及びC2 の直列合成容量値が変動すると、合成容量Cminが変動して、下部電極3の電圧Vmicにノイズ成分が生じてしまう。
それに対して、本実施形態によれば、支持基板として、電子が多数キャリアであるn型のシリコン基板5を使用することにより、寄生容量C1 及びC2 を有するMIS構造において、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面の正電荷に起因して空乏層が生じることを抑制することができる。従って、入射光の強度変動や温度変動によって空乏層の幅が変動することがないので、ノイズの発生や温度変動による感度変動等を抑制することができる。
図4は、本実施形態の音響トランスデューサにおけるエアギャップ容量Caを持つ容量素子(容量素子14)を模式的に示す図である。図4に示すように、エアギャップ容量Caは、容量電極である上部電極4及び下部電極3によって、エアギャップ11並びに絶縁膜2A、2B、2C及び10Aが挟まれることによって生じるので、下記(式5)が成り立つ。
1/Ca=1/Cair+1/Ci ・・・ (式5)
(式5)において、Cairはエアギャップ11による容量値、Ciは絶縁膜2A、2B、2C及び10Aによる容量値である。
図5は、本実施形態の音響トランスデューサにおける寄生容量C3 を持つ容量素子(容量素子17)を模式的に示す図である。図5に示すように、寄生容量C3 は、容量電極である上部電極4及び下部電極3によって、絶縁膜2A、2C、10A及びシリコン酸化膜12が挟まれることによって生じるので、下記(式6)が成り立つ。
1/C3 =1/Ci ・・・ (式6)
(式6)において、Ciは絶縁膜2A、2C、10A及びシリコン酸化膜12による容量値である。
図6は、本実施形態の音響トランスデューサにおける寄生容量C1 を持つ容量素子(容量素子15)を模式的に示す図である。図6に示すように、寄生容量C1 は、容量電極である上部電極4及びN型のシリコン基板5(電子が多数キャリアとなる)によって、絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12が挟まれることによって生じるので、下記(式7)が成り立つ。
1/C1 =1/Ci ・・・ (式7)
(式7)において、Ciは絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12による容量値である。
本実施形態に係る音響トランスデューサによると、図6に示すように、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍において、シリコン酸化膜6内に正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、シリコン基板5内にN型の多数キャリア27が蓄積されて界面電荷24と電気的釣り合いを保つため、空乏層は発生しない。その結果、音圧以外の要因による寄生容量C1 の変動を抑制することができるので、振動膜2の振動に伴う下部電極3の電圧変動にノイズ成分が含まれることを抑制できるという効果が得られる。
図7は、本実施形態の音響トランスデューサにおける寄生容量C2 を持つ容量素子(容量素子16)を模式的に示す図である。図7に示すように、寄生容量C2 は、容量電極である下部電極3及びN型のシリコン基板5(電子が多数キャリアとなる)によって、シリコン酸化膜6が挟まれることによって生じるので、下記(式8)が成り立つ。
1/C2 =1/Ci ・・・ (式8)
(式8)において、Ciはシリコン酸化膜6による容量値である。
本実施形態に係る音響トランスデューサによると、図7に示すように、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍において、シリコン酸化膜6内に正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、シリコン基板5内にN型の多数キャリア27が蓄積されて界面電荷24と電気的釣り合いを保つため、空乏層は発生しない。すなわち、本実施形態に係る音響トランスデューサによると、シリコン基板5がN型であって多数キャリアが電子であるため、支持基板としてP型シリコン基板を用いる場合と比較して、シリコン酸化膜6内に形成される正の電荷を持つ界面電荷24に対応して、負の電荷を持つ多数キャリア27がシリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍に集まりやすくなるので、シリコン酸化膜6とシリコン基板5との界面近傍のシリコン基板5には空乏層が発生しなくなる。従って、界面電荷24と多数キャリア27との電気的釣り合いが保たれるので、照度の異なる場所間の移動や温度の異なる場所間の移動によっても、キャリア平衡状態は保たれることになる。その結果、音圧以外の要因による寄生容量C2 の変動を抑制することができるので、振動膜2の振動に伴う下部電極3の電圧変動にノイズ成分が含まれることを抑制できるという効果が得られる。
以下、比較例として、本実施形態に係る音響トランスデューサのシリコン基板5をP型のシリコン基板5Aに代替した場合における寄生容量C1 及びC2 について説明する。
図8は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C1 を持つ容量素子(容量素子15)を模式的に示す図である。図8に示すように、寄生容量C1 は、容量電極である上部電極4及びP型のシリコン基板5A(ホールが多数キャリアとなる)によって、絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12が挟まれることによって生じる。また、図8に示すように、シリコン酸化膜6とP型のシリコン基板5Aとの界面近傍において、シリコン酸化膜6内に正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、P型のシリコン基板5A内には、界面電荷24の影響により空乏層26が形成される。ここで、空乏層26内には負の電荷を持つアクセプター原子25が存在しており、このアクセプター原子25と界面電荷24とによって電気的釣り合いが保たれるので、下記(式9)が成り立つ。
1/C1 =1/Ci+1/Csi ・・・ (式9)
(式9)において、Csiは空乏層26による容量値であり、Ciは絶縁膜10A及びシリコン酸化膜6、12による容量値である。
図9は、比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)における寄生容量C2 を持つ容量素子(容量素子16)を模式的に示す図である。図9に示すように、寄生容量C2 は、容量電極である下部電極3及びP型のシリコン基板5A(ホールが多数キャリアとなる)によって、シリコン酸化膜6が挟まれることによって生じる。また、図9に示すように、シリコン酸化膜6とP型のシリコン基板5Aとの界面近傍において、シリコン酸化膜6内には正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、P型のシリコン基板5A内には、界面電荷24の影響により空乏層26が形成される。ここで、空乏層26内には負の電荷を持つアクセプター原子25が存在しており、このアクセプター原子25と界面電荷24とによって電気的釣り合いが保たれるので、下記(式10)が成り立つ。
1/C2 =1/Ci+1/Csi ・・・ (式10)
(式10)において、Csiは空乏層26による容量値であり、Ciはシリコン酸化膜6による容量値である。
次に、図8及び図9に示した比較例の音響トランスデューサ(空乏層を有する音響トランスデューサ)の寄生容量素子に光や熱などの外的刺激が加わった場合における挙動や特性への影響について説明する。図10は、空乏層を有する比較例の音響トランスデューサにおける寄生容量Cpを持つ容量素子の当該寄生容量Cpが外的刺激(例えば、光)により変化することを説明する図である。ここで、寄生容量Cpを持つ容量素子の構造は、基本的に、図9に示す寄生容量C2 を持つ容量素子の構造と同じである。また、図11は、空乏層を有する比較例の音響トランスデューサにおける外的刺激(例えば、光)とキャリア密度との関係、及び外的刺激と空乏層幅との関係を合わせて説明する図である。
図10に示すように、寄生容量Cpは、容量電極である電極3A及びP型のシリコン基板5A(ホールが多数キャリアとなる)によって、シリコン酸化膜6Aが挟まれることによって生じる。また、図10に示すように、シリコン酸化膜6AとP型のシリコン基板5Aとの界面近傍において、シリコン酸化膜6A内には正の電荷を持つ界面電荷24が形成される一方、P型のシリコン基板5A内には、界面電荷24の影響により空乏層26が形成される。ここで、空乏層26内には負の電荷を持つアクセプター原子25が存在しており、このアクセプター原子25と界面電荷24とによって電気的釣り合いが保たれるので、下記(式11)が成り立つ。
1/Cp=1/Ci+1/Csi ・・・ (式11)
(式11)において、Csiは空乏層26による容量値であり、Ciはシリコン酸化膜6Aによる容量値である。
また、Csiについては下記(式12)で表すことができる。
Csi=(εsi×ε0/Xp)×S ・・・ (式12)
(式12)において、εsiはシリコンの比誘電率であり、ε0は真空の誘電率であり、Xpは空乏層の幅であり、Sは空乏層の面積である。
(式11)に示すように、空乏層容量Csiは寄生容量Cpの一部として作用するが、例えば蛍光灯のように発光周波数を持つ光源下においては、図11に示すように、光源のON、OFFに伴うキャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが周期的に変動する。このため、音響トランスデューサのような容量型素子では、この寄生容量の大きさの変動がノイズ源となり、SN比特性が低下する。
同様に、照度の異なる場所間の移動や温度の異なる場所間の移動によってもキャリアの生成消滅によりMIS構造に非平衡状態が生じて空乏層幅が変調を受け、寄生容量の大きさが変動する結果、ノイズが発生する。
例えば、空乏層を有する寄生容量素子を含む比較例の音響トランスデューサの容量Cmicを下記(式13)のように表す。
Cmic=Ca+Cp ・・・ (式13)
(式13)において、Caはエアギャップ容量であり、Cpは空乏層を有する寄生容量素子の容量値である。
このような比較例の音響トランスデューサに対して音圧が加えられると同時に、光や熱などの刺激によって空乏層幅Xpに変調が加えられるような環境下ではCmicは下記(式14)のように表すことができる。
Cmic=Ca+ΔCa+Cp+ΔCp ・・・ (式14)
(式14)において、ΔCaは音圧に反応して発生する信号成分であり、ΔCpは光や熱などの外的刺激によって発生するノイズ成分である。
それに対して、本実施形態では、MEMSデバイスの支持台としてN型のシリコン基板5を用いることにより、図6及び図7に示す寄生容量素子の構造を実現し、それによって、(式14)においてΔCpで表されるノイズ成分を除去することができる。
具体的には、(式4)及び(式14)より、本実施形態の音響トランスデューサにおいて音圧に加えて光や熱などの外的刺激がある場合におけるCmicを下記(式15)のように表すことができる。
Cmic=Ca+ΔCa+C3 +ΔC3 +{((C1 +ΔC1 )×(C2 +ΔC2 ))
/((C1 +ΔC1 )+(C2 +ΔC2 ))} ・・・ (式15)
ここで、本実施形態のように、寄生素子C1 及びC2 を図6及び図7に示す構造にすることによって、光や熱などの外的刺激に起因する容量変動を抑制することができる。この場合、Cmicを下記(式16)のように表すことができる。
Cmic=Ca+ΔCa+C3 +{((C1 ×C2 )/(C1 +C2 )}
=Ca+ΔCa+Cp ・・・ (式16)
すなわち、(式16)に示すように、外的刺激によるノイズ成分を除去することができる。
尚、本実施形態の音響トランスデューサにおいて、支持基板として、N型のシリコン基板5を用いたが、これに代えて、P型(真性でもよい:以下同じ)シリコン基板を用いると共に当該P型シリコン基板におけるシリコン酸化膜6との界面又はその近傍にN型不純物含有領域を設けた場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、N型不純物含有領域を設けることにより、N型の多数キャリアを含む領域を形成することができる。この場合、P型シリコン基板におけるシリコン酸化膜6との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、P型シリコン基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高いことが好ましい。このようにすると、P型シリコン基板とシリコン酸化膜6との界面近傍のP型シリコン基板に空乏層が形成されないようにすることができるので、光や熱などの外的刺激による空乏層容量の変動を抑制することができる結果、外的刺激に起因するノイズ成分を確実に除去することができる。ここで、本発明による効果を確実に得るためには、前記N型不純物含有領域のN型不純物濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることが好ましい。また、前記N型不純物含有領域に含まれるN型不純物としては、リン原子又は砒素原子等を用いることができる。
また、本実施形態の音響トランスデューサにおいて、支持基板として用いるN型のシリコン基板5におけるシリコン酸化膜6との接触部分のN型不純物濃度を、その他の部分のN型不純物濃度と比べてより高くしてもよい。このようにすると、前述の本実施形態の効果をより顕著に得ることができる。すなわち、シリコン基板5とシリコン酸化膜6との界面近傍のシリコン基板5に空乏層が形成されないようにすることができるので、光や熱などの外的刺激による空乏層容量の変動を抑制することができる結果、外的刺激に起因するノイズ成分を確実に除去することができる。ここで、本発明による効果を確実に得るためには、N型のシリコン基板5に設ける高濃度N型不純物領域のN型不純物濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることが好ましい。また、前記高濃度N型不純物領域に追加的に導入するN型不純物としては、リン原子又は砒素原子等を用いることができる。
ところで、音響トランスデューサが搭載されたマイクロフォンモジュールにおいて、音響トランスデューサを覆うカバーに貫通孔(音孔)が設けられていると、光に起因する空乏層容量の変動が大きくなると考えられる。すなわち、カバーに形成された貫通孔を通して、光が直接的に音響トランスデューサに当たるからである。従って、このような場合には、本実施形態に係る音響トランスデューサが特に有利となる。
以下、本実施形態に係る音響トランスデューサが搭載されたマイクロフォンモジュールの具体的構成について、図面を参照しながら説明する。
図12(a)〜(c)は、本実施形態の音響トランスデューサを搭載したマイクロフォンモジュールを説明する図であって、図12(a)は上面図であり、図12(b)は断面図であり、図12(c)は回路図である。尚、図12(c)において、図2に示す本実施形態の音響トランスデューサの等価回路と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
図12(a)及び(b)に示すように、本実施形態のマイクロフォンモジュールにおいては、プリント基板22上に本実施形態の音響トランスデューサ19と増幅器20とが搭載されていると共に、音響トランスデューサ19と増幅器20とを覆うようにカバー23が設けられている。カバー23には、音響トランスデューサ19(具体的には固定膜10(図1参照))の上方に位置する貫通孔(音孔)21が設けられている。すなわち、貫通孔21を音響トランスデューサ19の直上に設けると、マイクロフォンモジュール内で音圧が減衰することなく音響トランスデューサ19に伝わるので、マイクロフォンモジュールを高感度化することができる。さらに、本実施形態に係る音響トランスデューサ19の支持基板であるシリコン基板5(図1参照)には空乏層が形成されていないため、蛍光灯のように発光周波数を持つ光源、照度の異なる場所間の移動、及び温度の異なる場所間の移動等によるノイズの発生や感度変動等を抑制することができる。
図12(c)に示す回路においては、下部電極3に生じる電圧信号Vmicが増幅器20に入力されると、当該信号が増幅されてマイクロフォンモジュールの電気信号Vmodとして出力される。その際においても、本実施形態に係る音響トランスデューサ19のシリコン基板5には空乏層が形成されないため、下部電極3に生じる電圧信号Vmicにノイズ成分が含まれることがないので、電圧信号Vmicが増幅されたとしても、マイクロフォンモジュールのSN比が低下することがないという効果が得られる。
尚、本実施形態において、容量型の音響トランスデューサを対象として説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の変形及び応用が可能である。すなわち、本実施形態に係る音響トランスデューサと基本構成を同じくする他のMEMSデバイス、例えば圧力センサなどに対して本発明を適用した場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、本願においては、例えばCMOS(complementary metal-oxide semiconductor )等の製造プロセス技術を利用して多数のチップが同時に製造されている基板(ウェハ)を分割することによって、容量型の音響トランスデューサや圧力センサなどのデバイスを製造する技術をMEMS技術と称し、このようなMEMS技術を用いて製造されたデバイスをMEMSデバイスと称する。また、容量型の音響トランスデューサや圧力センサなどのMEMSデバイス以外の様々なデバイスについても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で本発明が適用可能であることは言うまでもない。
以上に説明したように、本発明は音響トランスデューサ等のMEMSデバイスに関し、支持基板である半導体基板にN型の多数キャリアを含む領域を設けることによって、寄生容量変動に起因するノイズ発生等を防止できるという効果が得られるので、シリコンウェーハ等を使用した高性能且つ高品質のMEMSデバイスを広く社会に供給することを可能とする。
1 アコースティックホール
2 振動膜
2A 絶縁膜
2B 絶縁膜(エレクトレット膜)
2C 絶縁膜
3 下部電極
3A 電極
4 上部電極
5 シリコン基板(N型のシリコン基板)
5A シリコン基板(P型のシリコン基板)
6 シリコン酸化膜
6A シリコン酸化膜
7 メンブレン領域
8 引出し配線
9 リークホール
10 固定膜
10A 絶縁膜
10B 絶縁膜
11 エアギャップ
12 シリコン酸化膜
13 開口部
14 容量素子(エアギャップ容量素子)
15 寄生容量素子
16 寄生容量素子
17 寄生容量素子
18 容量素子(上部電極・下部電極間容量素子)
19 音響トランスデューサ
20 増幅器
21 貫通孔(音孔)
22 プリント基板
23 カバー
24 正の電荷を持つ界面電荷
25 負の電荷を持つアクセプター原子
26 空乏層
27 負の電荷を持つ多数キャリア

Claims (20)

  1. 半導体基板と、
    前記半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜と、
    前記第1の絶縁膜の上に形成され、且つ第1の電極を有する振動膜と、
    前記振動膜との間にエアギャップが介在するように前記振動膜の上方に形成され、且つ第2の電極を有する固定膜と、
    前記半導体基板と前記固定膜の一部分との間に設けられた第2の絶縁膜とを備え、
    前記半導体基板は、N型の多数キャリアを含む領域を有していることを特徴とするMEMSデバイス。
  2. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記半導体基板はシリコン基板であることを特徴とするMEMSデバイス。
  3. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記半導体基板及び前記第1の絶縁膜の所定領域は除去されており、当該所定領域を覆うように前記振動膜が形成されていることを特徴とするMEMSデバイス。
  4. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記半導体基板と前記第1の絶縁膜とは接しており、
    前記N型の多数キャリアを含む領域は、少なくとも前記半導体基板における前記第1の絶縁膜との接触部分に設けられていることを特徴とするMEMSデバイス。
  5. 請求項4に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記半導体基板における前記第1の絶縁膜との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、前記半導体基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高いことを特徴とするMEMSデバイス。
  6. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記N型の多数キャリアを含む領域にはN型不純物が含まれていることを特徴とするMEMSデバイス。
  7. 請求項6に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記N型不純物の濃度は1×1014cm-3以上で且つ1×1021cm-3以下であることを特徴とするMEMSデバイス。
  8. 請求項6に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記N型不純物はリン原子又は砒素原子であることを特徴とするMEMSデバイス。
  9. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記半導体基板はN型半導体基板であることを特徴とするMEMSデバイス。
  10. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記第1の絶縁膜はシリコン酸化膜であることを特徴とするMEMSデバイス。
  11. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記第2の絶縁膜はシリコン酸化膜であることを特徴とするMEMSデバイス。
  12. 請求項1に記載のMEMSデバイスにおいて、
    前記エアギャップの高さは、前記振動膜と前記固定膜との間隔に等しいことを特徴とするMEMSデバイス。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のMEMSデバイスを有するMEMSデバイスモジュールにおいて、
    前記MEMSデバイスの上に設けられ且つ音孔を有するカバーを備えていることを特徴とするMEMSデバイスモジュール。
  14. 請求項13に記載のMEMSデバイスモジュールにおいて、
    前記MEMSデバイスと電気的に接続された増幅器をさらに備えていることを特徴とするMEMSデバイスモジュール。
  15. 半導体基板と、
    前記半導体基板上に形成された可動電極と、
    前記半導体基板上に形成された固定電極と、
    前記半導体基板と前記可動電極の一部分との間に設けられた第1の絶縁膜と、
    前記半導体基板と前記固定電極の一部分との間に設けられた第2の絶縁膜とを備え、
    前記半導体基板、前記第1の絶縁膜及び前記可動電極は第1のMIS構造を構成し、
    前記半導体基板、前記第2の絶縁膜及び前記固定電極は第2のMIS構造を構成し、
    前記半導体基板と前記第1の絶縁膜又は前記第2の絶縁膜との界面には第1の極性を持つ界面電荷が分布し、
    前記半導体基板は、前記第1の極性とは異なる第2の極性を持つキャリアを多数キャリアとして有していることを特徴とする音響トランスデューサ。
  16. 請求項15に記載の音響トランスデューサにおいて、
    前記半導体基板は、N型の多数キャリアを含む領域を有するシリコン基板であることを特徴とする音響トランスデューサ。
  17. 請求項16に記載の音響トランスデューサにおいて、
    前記シリコン基板と前記第1の絶縁膜とは接しており、
    前記N型の多数キャリアを含む領域は、少なくとも前記シリコン基板における前記第1の絶縁膜との接触部分に設けられていることを特徴とする音響トランスデューサ。
  18. 請求項17に記載の音響トランスデューサにおいて、
    前記シリコン基板における前記第1の絶縁膜との接触部分でのN型の多数キャリアの濃度は、前記シリコン基板のその他の部分でのN型の多数キャリアの濃度と比べて高いことを特徴とする音響トランスデューサ。
  19. 請求項16に記載の音響トランスデューサにおいて、
    前記シリコン基板はN型シリコン基板であることを特徴とする音響トランスデューサ。
  20. 請求項15〜19のいずれか1項に記載の音響トランスデューサにおいて、
    前記可動電極と前記固定電極とはコンデンサー構造を構成し、
    音圧に反応して前記可動電極が振動することにより、前記コンデンサー構造の容量が変動することを特徴とする音響トランスデューサ。
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