JPWO2009139352A1 - 1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法および精製方法 - Google Patents

1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法および精製方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、高価なフッ素ガスを効率的に利用し、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを工業的に安価で効率よく製造する方法を提供すること、および低温でフッ素化反応を実施することにより、C−C開裂による低沸点物の生成および過剰フッ化物の生成などの副反応が起こりにくく、安定して1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造することができる方法を提供することを目的とする。本発明の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法は、溶媒の存在下、複数の反応器を用いて、無触媒で、1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させるに際して、一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入することを特徴としている。

Description

本発明は、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法および精製方法に関する。さらに詳しくは本発明は、半導体用エッチングガス等として注目されているヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの合成原料等として有用な1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法および1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを精製する方法に関する。
1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンは、半導体の微細加工に使用されるエッチングガスとして注目されているヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの合成原料等として重要な化合物である。従来、この1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法としては、以下の特許文献に記載されている方法が知られている。
特開2006−342059号公報(特許文献1)には、CClX12−CClX3−CClX4−CClX56(Xは水素原子またはフッ素原子)で表される化合物を液相中でフッ素と反応させることによって1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法が記載されている。この方法では、溶媒としてペルフルオロアルカン類、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロポリエーテル類、塩素化炭化水素、およびペルフルオロアルキルアミン類を用いると特許文献1には記載されている。また1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンをフッ素化反応の溶媒として用いたときには、溶媒と生成物の分離が不要になる利点があるので特に好ましいと特許文献1には記載されている。しかし、この方法では反応原料を溶媒で希釈して低濃度でフッ素化反応を実施しており、工業的に経済的かつ効率よく目的物を製造するという点で課題が残されている。
ところで、通常、有機化合物とフッ素ガスを無触媒下で直接反応させる方法においては、高価なフッ素ガスをいかに効率的に無駄なく使用できるかが目的物を経済的に製造するための重要なポイントである。しかしながら、上記特許文献1においてはこのフッ素ガスの利用率について何ら検討がなされていない。
したがって、このことからも特許文献1に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法には、工業的に安価で効率よく目的物を製造するという点で課題が残されている。
また、1,2,3,4−テトラクロロブタンには光学異性体などの異性体が存在することが知られている。異性体を区別せず、混合物の状態で希釈剤あるいは溶媒として使用する場合には、これらの異性体の中で融点の高い異性体を基準に反応温度が設定されることが多い。従って、液相反応を実施する場合、液状を保って反応させるためには反応温度をある程度高温に確保しなければならない場合がある。このようにすると、フッ素化反応におけるC−C開裂により低沸分等の生成副反応が進行して目的物の収率が低下し、または、過剰にフッ素化反応が進行してしまうなどの問題が起こる。
したがって、上記のフッ素ガスの有効利用のほかに、高収率での製造も併せて解決すべき課題である。
特開2006−342059号公報
本発明は、高価なフッ素ガスを効率的に利用し、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを工業的に安価で効率よく製造する方法を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、低温でフッ素化反応を実施することにより、C−C開裂による低沸点物の生成および過剰フッ化物の生成などの副反応が起こりにくく、安定して1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造することができる方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、生成した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを効率的に精製する方法を提供することを目的としている。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[10]に関する。
[1]溶媒の存在下、複数の反応器を用いて、無触媒で、1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させるに際して、一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入することを特徴とする1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[2]前記複数の反応器が直列に配置され、上流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を下流側の反応器に導入することを特徴とする上記[1]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[3]さらに下流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を上流側の反応器に導入することを特徴とする上記[2]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[4]前記複数の反応器が、直列に配置された2つの反応器であることを特徴とする上記[2]または[3]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[5]前記溶媒がフッ化水素を含むことを特徴とする上記[1]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[6]前記1,2,3,4−テトラクロロブタン100質量%中に、その光学異性体であるdl体が40質量%以上含有されることを特徴とする上記[1]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[7]前記1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとの反応により得られる1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む反応生成液を蒸留塔に導入して、該反応生成液を1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液と前記溶媒を含む液とに分離し、分離した溶媒を含む液を、1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとの反応を行う反応器に戻して循環使用することを特徴とする上記[1]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
[8]上記[1]に記載の方法で得られた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む反応生成液を蒸留塔に導入して、該反応生成液を1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液と前記溶媒を含む液とに分離し、分離した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液の少なくとも一部をアルカリ物質および/または水と接触させることを特徴とする1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法。
[9]前記アルカリ物質および/または水と接触した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液を、さらに多孔質精製剤と接触させることを特徴とする上記[8]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法。
[10]前記多孔質精製剤が、ゼオライトであることを特徴とする上記[9]に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法。
すなわち本発明は、以下の二つの知見に基づいてなされたものである。
(1)溶媒の存在下、複数の反応器を用いて、無触媒で、1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させるに際して、一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入することにより、フッ素ガスを無駄なく使用でき、効率よくしかも経済的に1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造することができる。
(2)こうして得られた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを1つ以上の蒸留塔で分離した後、アルカリ等と接触させ、さらに必要によりゼオライトなどの多孔質精製剤と接触させることにより、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを容易に精製することができる。
本発明によれば、低温領域で1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとの反応を実施でき、C−C開裂による低沸成分の生成を抑制でき、さらに過剰フッ素化反応の進行等が抑制できる。そのため本発明によれば、高価なフッ素ガスを無駄なく使用することができ、効率よくしかも経済的に1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造することができる。
以下、本発明の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法および精製方法について具体的に説明する。
[1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法]
本発明は、出発原料として1,2,3,4−テトラクロロブタンを用いて、これに溶媒の存在下、無触媒でフッ素ガスを供給して、1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させて1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法である。
<1,2,3,4−テトラクロロブタン>
本発明で出発原料として使用される1,2,3,4−テトラクロロブタンは、例えば、下記の化学式に示すように、工業的に生産されているクロロプレンゴムの製造段階で副生成物として生成する。下記の式(1)はクロロプレンゴムを製造する際の主反応を示す式である。式(2)は式(1)で示す反応が進行する際に同時に進行する副反応の例を示す式である。
Figure 2009139352
従来のクロロプレンゴムの製造では、例えば上記式(2)で示すような副反応により生成する1,2,3,4−テトラクロロブタンは他の副生物(塩素化物)と共に焼却処理等により無害化され廃棄されている。
本発明では、例えば上記のようにクロロプレンゴムの製造工程で副生物として生成し廃棄される1,2,3,4−テトラクロロブタンを分離して回収し、出発原料として使用することができる。
また、クロロプレンゴムの製造工程での中間体である、上記式(1)の反応の生成物である3,4−ジクロロブテン−1の塩素化反応で、1,2,3,4−テトラクロロブタンを得ることもできる(下記式(3)参照)。
Figure 2009139352
上記のようにして得られた1,2,3,4−テトラクロロブタンを出発原料として使用する場合には、該1,2,3,4−テトラクロロブタンは、通常は純度が95モル%以上、より好ましくは98モル%以上である。上記のように純度の高い1,2,3,4−テトラクロロブタンを出発原料として使用することにより、副生成物が少なく分離も容易になり、得られる1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの純度が高くなり、精製工程で過度の設備を必要としないので製造上有利である。
また、1,2,3,4−テトラクロロブタンには、異性体として、メソ体と光学異性体であるdl体とが存在する。
光学異性体であるdl体の融点(mp)は0℃以下(沸点(bp)は約213℃)であり、dl体は室温では液体である。これに対してメソ体の融点は約73℃(沸点は約213℃)であり、メソ体は室温では白色の固体である。
このdl体とメソ体との特性の差を利用して両者をある程度分離することが可能である。
本発明では、出発原料である1,2,3,4−テトラクロロブタン100質量%中に含有される融点の低いdl体の含有率を通常40質量%以上の範囲内にする。このようにdl体の量を制御することにより、必然的にメソ体の含有量は、通常60質量%以下の範囲内になる。このような量でdl体およびメソ体を含有する1,2,3,4−テトラクロロブタンを使用することにより、1,2,3,4−テトラクロロブタンを反応溶媒に溶解する際の温度および反応温度を低く設定することができる。そのため、加熱によるC−C開裂、過剰フッ素化が進行しにくくなり、目的物を高選択率で得ることができる。
<溶媒>
本発明で使用する溶媒(反応溶媒)はフッ素ガスと反応しにくく、反応条件で液体状態を維持することができる化合物であることが望ましい。このような化合物としては、クロロカーボン類やクロロフルオロカーボン類を挙げることができる。
これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。本発明において反応溶媒として使用可能なクロロカーボン類の例としては、テトラクロロメタンおよびヘキサクロロエタンを挙げることができ、クロロフルオロカーボン類の例としてはトリクロロトリフルオロエタンおよびテトラクロロジフルオロエタンを挙げることができる。
このように、炭素原子に結合した水素原子の全部が塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子で置換された化合物は、フッ素ガスと接触しても置換反応が進行しにくく、本発明の製造方法における目的化合物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを効率よく製造することができる。また、本発明の製造方法により製造された1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンそのものも溶媒として使用することができる。上記の、フッ素ガスと反応しにくく、反応条件で液体状態を維持することができる、という条件を満たすからである。
本発明の製造方法で使用される上記のような反応溶媒中にはフッ化水素が含有されていることが好ましい。反応溶媒がフッ化水素を含有することにより、1,2,3,4−テトラクロロブタンから高い選択率で、かつ高い収率で1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造することができる。
本発明で反応溶媒中にフッ化水素を含有させる場合、反応溶媒中に含有されるフッ化水素の量は、通常は反応溶媒100質量%に対して5質量%以上である。そして、本発明では、この反応溶媒中におけるフッ化水素の量が、5〜50質量%の範囲内にあることが好ましい。フッ化水素の量が5質量%に満たない場合には、フッ素化反応の反応速度が遅くなることがある。フッ化水素の量が50質量%以上の場合には反応が進行しやすくなり、C−C開裂等により低沸成分が増加する傾向がある。
本発明では上記のような溶媒を用いて1,2,3,4−テトラクロロブタンのフッ素化を行うため、触媒を用いなくとも、十分な収率で1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造することができる。また、触媒を使用しないことにより、製造反応終了後の触媒の分離操作を省略することもできる。これらの効果は、フッ化水素を含む溶媒を反応溶媒として使用した場合に特に顕著に奏される。
<フッ素ガスの供給>
本発明では溶媒の存在下、複数の反応器を用いて、無触媒で、1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させるに際して、一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入することにより、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造する。
このような反応を行う反応器の構成、配置に特に制限はないが、本発明では、前記複数の反応器を直列に配置し、該反応器に前記溶媒および1,2,3,4−テトラクロロブタンを充填し、フッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させ、上流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を下流側の反応器に導入することが好ましい。このようにフッ素ガスを流通させることにより、無駄なく高価なフッ素ガスを効率的に使用することができる。
一般に、高価なフッ素ガスを効率的に使用するためには1,2,3,4−テトラクロロブタンのフッ素化反応を完結させることが望ましいが、そのためには多量のフッ素ガスを反応器に導入する必要があり、そして反応が完結に近付くほど導入したフッ素が反応する確率は低くなってしまう。そして、反応器内の圧力を一定の範囲に保つため、導入されたガスを排出する必要があり、未反応のフッ素ガスがこれによって排出されてしまうという無駄が生じることが多い。フッ素ガスは高価であるので、このような無駄は工業的に非常に不利である。
本発明者らは、以下の方法により、このような無駄をなくすことができることを今般見出した。
(1)複数の反応器を用いて1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを接触させ、一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入する方法
(2)直列に配置された複数の反応器で1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスを接触させ、上流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を下流側の反応器に導入する方法
(2)の方法が特に好ましい。
上記反応器としては、一般に加熱冷却装置、攪拌装置、液相中にガスを導入する導入口を有するガス吹込みライン、および気相からフッ素ガスなどのガスを排出するガス排出ラインが配置された耐圧容器、例えばオートクレーブを用いることができる。
本発明の製造方法の反応では、反応器内に腐食性の高いフッ素ガスが導入され、さらに反応溶媒中には腐食性の高いフッ化水素が含有されている場合もあることから、反応器、攪拌装置、ガス吹き込みラインなど反応液との接触部分はフッ素あるいはフッ化水素などに対する耐腐食性材料で形成されている。このような耐腐食性を有する材料の例としては、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、中でも例えばハステロイHC、SUSおよびこれらのテフロン(登録商標)ライニング等を挙げることができる。ただし、耐腐食性材料に含まれることもあるニッケルは、フッ化物になることがあり、このフッ化物は、ClとFとの置換反応を促進するため、耐腐食性材料としてはニッケル含有量の低い材料を用いることが好ましい。
また、本発明において、上記の直列に配置された複数の反応器の数に特に制限はないが、二つの反応器を直列に配置すれば、多くの場合高価なフッ素ガスを無駄なく効率的に使用することができる。しかし、下流側の反応器においてもなおフッ素ガス中のフッ素が十分に利用されきらない場合には、さらに下流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を上流側の反応器に導入したり、反応器の数を3つ以上にし、さらに下流側の反応器に未反応のフッ素ガスの一部または全部を導入することが好ましい。
以下、本発明の実施の詳細な態様について、二つの反応器を直列に配置した場合を例にとって説明する。なお、以下の説明において、二つの反応器のうち、上流側の反応器を第一反応器、下流側の反応器を第二反応器と呼ぶ。
2つの反応器を直列に配置し、それぞれの反応器に、出発原料である1,2,3,4−テトラクロロブタンを導入し、さらにこれに上記のような溶媒(反応溶媒)を導入する。この際、反応器内にある出発原料である1,2,3,4−テトラクロロブタンの濃度が、通常は10〜50質量%の範囲内になるように1,2,3,4−テトラクロロブタンを導入する。
このような量の1,2,3,4−テトラクロロブタンを反応溶媒に溶解させてフッ素化反応を行うことにより、以下の三つの利点が得られる。
(1)反応効率がよい。
(2)1,2,3,4−テトラクロロブタン中のメソ体含有量が比較的高い場合であっても、メソ体を溶解するための加熱を行う必要がないかあるいは加熱したとしても加熱温度を低く抑えることができる。
(3)1,2,3,4−テトラクロロブタンのC−C開裂などが生じにくい。
1,2,3,4−テトラクロロブタンおよび反応溶媒を反応器に導入した後、含酸素不純物の生成抑制のために、反応器内の空気を窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどの不活性ガスで置換することが好ましい。
上記のようにして出発原料である1,2,3,4−テトラクロロブタンをフッ化水素を含む溶媒に溶解させた後、またはその後に反応器内の空気を不活性ガスで置換した後、上記の第一反応器に、液相中に導入口を有するガス吹き込みラインから、フッ素ガスを導入して1,2,3,4−テトラクロロブタンをフッ素化する。第一反応器の反応後の、未反応のフッ素ガスの一部または全部は気相部に設置されたガス排出ラインより、第二反応器の液相中に導入口を有するガス吹き込みラインへと導入される。また、第二反応器には、上記の第一反応器の反応後の未反応のフッ素ガスに加えて新たにフッ素ガスを導入することも可能である。
ここで第一反応器のガス吹き込みラインから第一反応器に導入されるフッ素ガスは、フッ素ガス単体であってもよいが、通常は前記の不活性ガスで希釈した希釈混合ガスとして導入される。ここで希釈混合ガスを使用する場合には、希釈混合ガス中におけるフッ素ガスの濃度は、通常は30容量%以上であり、40〜70容量%の範囲内にある希釈混合ガスを用いることが好ましい。
すなわち、フッ素濃度が30容量%に満たない希釈混合ガスを用いると反応速度が遅くなり、工業的に不利である場合がある。また、70容量%を超える希釈混合ガスを用いると反応制御が難しくなり、C−C開裂が発生しやすくなり、さらに過剰フッ素化反応などの副反応が進行しやすくなる傾向がある。
したがって、工業的により高い選択率で、さらにより高い収率で1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造するには、希釈混合ガス中におけるフッ素ガスの濃度を30〜70容量%の範囲内に設定することが好ましい。また、この希釈混合ガスは、ガス吹き込みラインから液相中に導入することが好ましい。
第一反応器に導入する希釈混合ガスの供給速度は、フッ素ガスの濃度にもよるが、たとえばフッ素ガスの濃度が40〜50容量%の場合には、通常一分当たりの供給量が第一反応器の体積の1/30〜1/2、好ましくは1/15〜1/4となる速度である。
上記のようにして第一反応器の液相中に導入された、30〜70容量%の濃度範囲内に設定されたフッ素ガスは1,2,3,4−テトラクロロブタンとのフッ素化反応で消費され、第一反応器の気相部より排出される反応後の排出ガスの一部または全部は第二反応器に導入される。前記排出ガスは第一反応器内で反応しなかったフッ素ガスを含んでおり、これが第二反応器で消費される。そして主に希釈ガスが第二反応器の気相部に設置されたガス排出ラインより排出される。フッ素ガスは第二反応器中でほとんどすべてフッ素化に消費されてしまっているからである。第二反応器の排出ガス中に含まれるフッ素ガス濃度は10容量%以下が好ましく、より好ましくは2容量%以下である。
このように第一反応器と第二反応器を直列に配置して使用することにより、高価なフッ素ガスをロスすることなく効率的に使用できる。つまり、第二反応器は第一反応器からロスされるフッ素ガスの回収、有効利用を目的としている。
前述のように上記の第一反応器から排出されるフッ素ガスを含む排出ガスは、そのまま第二反応器の液相部に導入されて第二反応器中の1,2,3,4−テトラクロロブタンのフッ素化反応に使用される。前述のごとく、フッ素濃度が30容量%に満たない場合は、反応速度が遅くなる場合があるため、場合により新たにフッ素ガスを追加導入して反応させることも可能である。
また、第二反応器の容量は第一反応器の容量以下であることが好ましく、第一反応器の容量の2/3以下がより好ましく、またフッ素ガスの吸収効率を上げるため、反応容器は鉛直方向に細長い構造であることが好ましい。
本発明は、溶媒の存在下、複数の反応器を用いて、無触媒で、1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させるに際して、一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入することにより1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法である。好ましくは前記複数の反応器が直列に配置され、上流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を下流側の反応器に導入することにより、高価なフッ素ガスを効率的に使用することができる。すなわち本発明は、高価なフッ素ガスを有効利用する、経済的な1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法である。
なお、前記フッ素化反応の反応温度は、通常−20〜70℃の範囲内、好ましくは0〜50℃の範囲内に設定される。反応温度を上記のように設定することにより、1,2,3,4−テトラクロロブタンのC−C開裂、過剰フッ素化などが生じにくくなる。
また、上記のような温度範囲において、フッ素化反応の反応圧力は、通常は0.1〜2.0MPaの範囲内に設定される。
[1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法]
上記のようにして反応させることにより1,2,3,4−テトラクロロブタンはフッ素化され、少なくともその一部は1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンになる。この1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの大部分は反応溶媒中に溶解して存在するので、上記のように反応させた後の反応生成液には、反応溶媒、フッ化水素、原料としての1,2,3,4−テトラクロロブタン、この反応により生成した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタン、さらには副反応物などが含有されている。
本発明の製造方法の目的物は1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンであるので、上記のようにして得られた反応生成液から目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを分離する必要がある。
この1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの分離精製には、蒸留塔を使用した蒸留による精製方法が有利である。本発明の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法では、好ましくは2つ以上の蒸留塔を用いて、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの蒸留精製を行う。この際、蒸留塔の少なくとも1塔は通常理論段数が15段以上、より好ましくは25段以上であることが必要である。15段未満では、不純物、特にテトラクロロペンタフルオロブタン(C4HCl45)等の分離が不十分であり、15段以上では目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンと前記のテトラクロロペンタフルオロブタンとを十分に分離させることができ、25段以上ではさらに分離性能が向上し好ましい。
前記の分離精製方法としては、例えば1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む反応生成液を輸液ポンプなどを用いて、第一蒸留塔に導入して、低沸点物と高沸点物(反応に用いた溶媒を含む液と1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液)とに分離する方法が挙げられる。目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンは、低沸点物として第一蒸留塔の塔頂より得ることもできるが、通常は高沸点物として第一蒸留塔の塔底より得られ、さらに必要により第二蒸留塔に導入して第二蒸留塔の塔頂より得ることができる。また、必要に応じて第三、第四の蒸留塔により同様に操作することにより精製を行うことが可能である。
こうして得られた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンには、フッ化水素、微量のフッ素ガスなどが混入している場合があるので、この1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンをアルカリ物質および/または水と接触させて、フッ化水素等を除去する。この工程は場合により、第一蒸留塔に導入する前段で実施することも可能であり、また場合により第一蒸留塔と第二蒸留塔との間で実施することも可能である。
本発明で使用されるアルカリ物質の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属化合物や、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物を挙げることができる。これらのアルカリ物質は、通常は水に溶解もしくは分散させて使用される。
こうしたアルカリ物質を1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンと接触させることにより、フッ化水素やフッ素ガスなどの酸性成分は塩を形成して水相に移行する。また1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンには水が殆ど溶解しないため(溶解度は<300wtppm)、二層分離が可能である。
また、上記のようにして水と接触させた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンには微量の水分が含有されるので、多孔質精製剤と接触させて1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタン中に含有される水分を除去することが好ましい。
ここで使用する多孔質精製剤の例としては、炭素質固体材料、アルミナおよびゼオライトなどを挙げることができ、本発明では特にモレキュラーシーブス3A、4A、5Aなどを用いることが好ましい。こうした多孔質精製剤との接触工程の温度は0〜60℃の範囲が好ましい。
このようにして精製された1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの純度は通常98質量%以上、好ましくは99質量%以上である。
そして、出発原料からみた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの収率は通常70モル%以上であり、非常に効率よく、純度の高い1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを得ることができる。
一方、上記のようにして蒸留塔で1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを分離した低沸点物(反応に用いた溶媒を含む液)は、1,2,3,4−テトラクロロブタンをフッ素化する際の反応溶媒として使用可能であり、フッ素化反応を行う反応器に戻して循環使用することもできる。反応溶媒の少なくとも一部を循環使用する際には、低沸点物を必要により精製して循環使用することもできる。
反応溶媒は、上記のようなフッ素化反応によってフッ素化されない、すなわちフッ素を消費しないので、その少なくとも一部を循環使用すると工業的に有利である。
以下、本発明の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法および精製方法を実施例を示して説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<原料例>
工業的に生産されている1,3−ブタジエンの塩素化反応を行い、主として3,4−ジクロロブテン−1および1,4−ジクロロブテン−2を生成させた。1,4−ジクロロブテン−2を異性化反応により3,4−ジクロロブテン−1とし、副生物を蒸留により分離して3,4−ジクロロブテン−1を得た。これをガスクロマトグラフィ−にて分析したところ、3,4−ジクロロブテン−1の純度は99.3モル%であった。この3,4−ジクロロブテン−1を無溶媒下で塩素ガスにより塩素化し、得られた混合物を蒸留により分離精製して、1,2,3,4−テトラクロロブタンを得た。これをガスクロマトグラフィ−で分析したところ、純度は99.1モル%であり、dl体/メソ体の割合は約49/51であった。
[実施例1]
第一反応器として内容積1000mlのSUS304製(テフロン(登録商標)ライニング)反応器を用いた。この反応器中に、溶媒としてテトラクロロメタン380gにフッ化水素20gを溶解させたものと、上記<原料例>で得られた1,2,3,4−テトラクロロブタンを100g仕込み、窒素ガスを圧力1.0MPaで導入し、漏れテストを行った後、窒素ガスをパージし、攪拌しながら温度を35℃に保った。
その後、第一反応器の気相部に設けられた出口ガス(排出ライン)ラインを第二反応器の入り口に接続した。第二反応器としては、内容積1000mlのSUS304製(テフロン(登録商標)ライニング)反応器を用いた。この反応器中に、溶媒としてテトラクロロメタン380gにフッ化水素20gを溶解させたものと、上記<原料例>で得られた1,2,3,4−テトラクロロブタンを100g仕込み、窒素ガスを圧力1.0MPaで導入し、漏れテストを行った後、窒素ガスをパージし、攪拌しながら温度を30℃に保った。
その後、第一反応器を35℃に保ち撹拌しながら、反応器内に装着されたガス導入管より、液相部に窒素ガスで希釈された50容量%フッ素ガスを圧力0.2MPa、供給速度100ml/minで連続的に供給しながら反応を開始した。反応開始から約5時間後、第一反応器出口(ガス排出ライン)ガス中のフッ素ガス濃度は5容量%(残りは主として窒素ガス)であった。
この第一反応器の出口ガス(ガス排出ライン)を連続的に第二反応器の液相部に導入した。第二反応器は反応温度30℃に保ち撹拌しながら第一反応器の出口から導入されたガスを反応させたところ、第二反応器の出口(ガス排出ライン)ガス中にはフッ素ガスが全く検出されなかった。
その後、反応開始から約21時間経過後、第一反応器出口(ガス排出ライン)ガス中のフッ素ガス濃度は30容量%(残りは主として窒素ガス)であった。一方第二反応器の出口ガスを分析したところ、第二反応器出口ガス中にはフッ素ガスが全く検出されなかった。
この時点(反応開始後21時間)で一旦供給ガス(50容量%フッ素ガス)の供給を停止し、第一反応器の生成物の分析を行ったところ、目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの収率(<生成した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンのモル数>/<供給した1,2,3,4−テトラクロロブタンのモル数>、以下同様)は74モル%であった。この時点で第一反応器および第二反応器のフッ素ガス利用率は約100%であった。
その後、供給ガス(50容量%フッ素ガス)を前記のように供給しながら反応を再開した。反応開始から約32時間後、第一反応器出口ガス中のフッ素ガス濃度は約50容量%であり、第一反応器の反応が終了した。また、この時点で第二反応器の出口ガス中のフッ素ガス濃度は0.1容量%以下であった。この時点で供給ガス(50容量%フッ素ガス)の供給を停止し、第一反応器の生成物の分析をおこなったところ、目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの収率は78モル%であった。
結果から明らかなように、反応器を2つ用いることにより高価なフッ素ガスをロスなく効率的に使用でき、目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを高収率で得ることができる。
[実施例2]
[実施例1]の条件で反応を繰り返して得られた粗1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む溶液を蒸留塔(理論段数15段)に仕込んで蒸留した。得られた高沸点物を水酸化カリウム水溶液と接触させ、ゼオライト(モレキュラ−シ−ブス4A)を用いて18℃で脱水処理した。該処理を経た高沸点物を蒸留塔(理論段数25段)に仕込み、分離精製を行い目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンと主としてテトラクロロメタンを得た。これをガスクロマトグラフィ−で分析したところ、1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの純度は約99.8質量%であった。
[実施例3]
第一反応器として内容積1000mlのSUS製反応器を用いた。この中に、溶媒として[実施例2]で得られた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタン380gにフッ化水素20gを溶解させたものと、<原料例>で得られた1,2,3,4−テトラクロロブタンを100g仕込み、窒素ガスを圧力1.0MPaで導入して漏れテストを行った後、窒素ガスをパージし、撹拌しながら温度を40℃に保った。
その後、第一反応器の気相部に設けられた出口ガス(排出ライン)ラインを第二反応器の入り口に接続した。第二反応器としては、内容積1000mlのSUS304製反応器をもちいた。この中に、溶媒として[実施例2]で得られた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタン300gにフッ化水素20gを溶解させたものと、<原料例>で得られた1,2,3,4−テトラクロロブタンを80g仕込み、第一反応器と同様に漏れテストを行った後、撹拌しながら35℃に保った。
その後、第一反応器を40℃に保ち撹拌しながら、反応器内に装着されたガス導入管より液相部に窒素ガスで希釈された40容量%フッ素ガスを圧力0.2MPa、供給速度100ml/minで連続的に供給しながら反応を開始した。
反応開始から約5時間後、第一反応器出口(ガス排出ライン)ガス中のフッ素ガス濃度は3容量%(残りは主として窒素ガス)であった。この第一反応器の出口(ガス排出ライン)から出る排出ガスを連続的に第二反応器の液相部に導入し、反応温度35℃で撹拌しながら反応させた。この際、第二反応器の出口(ガス排出ライン)ガス中にはフッ素ガスが全く検出されなかった。
その後、反応開始から約26時間経過後、第一反応器出口(ガス排出ライン)ガス中のフッ素ガス濃度は約22容量%(残りは主として窒素ガス)であった。一方第二反応器の出口ガスを分析したところ、第二反応器出口ガス中にはフッ素ガスが全く検出されなかった。
この時点(反応開始後約26時間)で一旦供給ガス(40容量%フッ素ガス)を停止し、第一反応器の生成物を分析したところ、目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの収率は76モル%であった。この時点で第一反応器および第二反応器のフッ素ガス利用率は約100%であった。
その後、供給ガス(40容量%フッ素ガス)を前記のように供給しながら反応を再開した。反応開始から約45時間後、第一反応器出口ガス中のフッ素ガス濃度は約40容量%であり、第一反応器の反応が終了した。また、この時点で第二反応器の出口ガス中のフッ素ガス濃度は0.1容量%以下であった。
この時点で供給ガス(40容量%フッ素ガス)の供給を停止し、第一反応器の生成物の分析を行ったところ、目的物である1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの収率は80モル%であった。

Claims (10)

  1. 溶媒の存在下、複数の反応器を用いて、無触媒で、1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを反応させるに際して、
    一の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を該一の反応器とは別の反応器に導入することを特徴とする1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  2. 前記複数の反応器が直列に配置され、上流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を下流側の反応器に導入することを特徴とする請求項1に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  3. さらに下流側の反応器から排出される未反応のフッ素ガスの一部または全部を上流側の反応器に導入することを特徴とする請求項2に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  4. 前記複数の反応器が、直列に配置された2つの反応器であることを特徴とする請求項2または3に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  5. 前記溶媒がフッ化水素を含むことを特徴とする請求項1に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  6. 前記1,2,3,4−テトラクロロブタン100質量%中に、その光学異性体であるdl体が40質量%以上含有されることを特徴とする請求項1に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  7. 前記1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとの反応により得られる1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む反応生成液を蒸留塔に導入して、
    該反応生成液を1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液と前記溶媒を含む液とに分離し、
    分離した溶媒を含む液を、1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとの反応を行う反応器に戻して循環使用することを特徴とする請求項1に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの製造方法。
  8. 請求項1に記載の方法で得られた1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む反応生成液を蒸留塔に導入して、
    該反応生成液を1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液と前記溶媒を含む液とに分離し、
    分離した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液の少なくとも一部をアルカリ物質および/または水と接触させることを特徴とする1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法。
  9. 前記アルカリ物質および/または水と接触した1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンを含む液を、さらに多孔質精製剤と接触させることを特徴とする請求項8に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法。
  10. 前記多孔質精製剤が、ゼオライトであることを特徴とする請求項9に記載の1,2,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンの精製方法。
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