JPWO2009128318A1 - 芳香族系ポリエステル樹脂及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

金属不純物の含有量が低く、且つ比較的熱的性質や機械的性質に優れる高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂、及び重合触媒として加水分解酵素を用いる環境低負荷型プロセスにより高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の触媒活性が損なわれないような環境下でポリエステル樹脂を合成可能なように、使用するモノマー成分の種類やその配合比を選択し、これらに対して十分な触媒活性を示す加水分解酵素を重合触媒として用い、重縮合の際の温度条件を調整、あるいは予めエステルオリゴマーを調製して重縮合に使用することによって、金属不純物の含有量が低く、且つ熱的性質や機械的性質に比較的優れる高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られる。

Description

関連出願
本出願は、2008年04月17日付け出願の日本国特許出願2008−107743号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
本発明は、金属不純物の含有量が低く、且つ熱的性質や機械的性質に比較的優れる高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂、及び芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法をより環境低負荷なものとするための改良に関する。
現代社会において工業的に最も広く利用されているポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などに代表される芳香族系ポリエステルである。芳香族系ポリエステルがこのように広く利用されている大きな要因として、芳香族ジカルボン酸骨格に起因した、優れた熱的性質や機械的性質を示すことなどが挙げられる。
従来の芳香族系ポリエステル樹脂は、一般に、芳香族系ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオール成分とを仕込み、重金属触媒を作用させて製造されている。ここで、高分子量のポリエステルを得るには、反応系内に存在するカルボン酸とアルコールの官能基数の比率を1:1に近づける必要がある。この目的のため、ジカルボン酸成分に対して過剰に仕込んでおいたジオールの過剰分を、200℃以上の高温、高減圧下で反応系外へ留去させながら重合を進行させ、最終的に官能基の比率を1:1に近づけることによって高分子量化を図っているのが、先の工業的芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法における特徴である。
しかしながら、このような従来の芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法については、例えば、(1)エネルギー多消費型である、(2)金属触媒残渣により環境汚染が引き起こされる、(3)混入した金属触媒残渣によりポリエステル樹脂の性能低下が引き起こされる、など多くの問題点が指摘されている。
これら課題の解決策の一つとして、ポリエステル樹脂製造時の重合触媒を金属触媒に代えて固定化酵素触媒とすることが挙げられる。これによって、比較的温和な条件下での重合が可能になり、省エネルギーな製造プロセスとなるだけでなく、触媒残渣の除去が可能となるため、環境汚染の防止や樹脂の性能低下を防止することができる。酵素を重合触媒とするポリエステルの製造方法に関しては多くの報告があり、構造材料として使用可能な程度の高分子量な樹脂が得られた例も報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、酵素触媒を用いて製造されるポリエステルの報告の多くは、一般に芳香族系ポリエステルと比較して耐熱性や力学的強度に劣る脂肪族系のポリエステルであった。
芳香族系ポリエステルであるポリアルキレンテレフタレートの酵素触媒による製造方法もいくつか報告されている(例えば、非特許文献2,3及び特許文献1参照)ものの、得られた芳香族系ポリエステルの平均分子量はいずれも20,000に満たないものであり、構造材料として使用可能なものではないと推測される。なお、この原因として、ポリエステル重合触媒として通常使用されている加水分解酵素は、元々脂肪酸と脂肪族アルコールからなるエステル結合を分解するものであるため、芳香族系の化合物に対する触媒作用が弱く、このため、高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂を得ることは不可能であると考えられていた。
一方で、芳香族系ポリエステルの一種であるポリアルキレンイソフタレートについては、酵素触媒重合によって比較的高分子量のポリエステル樹脂が得られている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、このポリアルキレンイソフタレート樹脂は、対応するポリアルキレンテレフタレート樹脂やポリアルキレンナフタレート樹脂と比較して、一般に耐熱性に劣るものである。そして、ポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレートなどのようなテレフタル酸もしくはナフタレンジカルボン酸をそのポリエステル骨格に含有する芳香族系ポリエステル樹脂に関し、酵素触媒重合によって高分子量体が得られた例については未だ報告されていない。
Macromolecular Rapid Communication,2006,27,203−207 Biocatalysis,1994,11,263−271 Polymer Journal,1999,31,380−383 Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology,1998,20,328−332 特許第3690028号
本発明は、前記課題点を解決するためになされたものであり、その目的は、金属不純物の含有量が低く、且つ比較的熱的性質や機械的性質に優れる高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂、及び重合触媒として加水分解酵素を用いる環境低負荷型プロセスにより高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の存在下で重縮合させることで、比較的温和な条件下で実施される環境低負荷型合成プロセスによって、金属不純物の含有量が低く、且つ比較的に熱的性質や機械的性質に優れる高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られることを見出した。より詳しくは、芳香族系化合物に対しても十分な触媒活性を示す加水分解酵素を選択し、同時に使用するモノマー成分の種類やその配合比等を適当に選択して、加水分解酵素の触媒活性が損なわれないような環境下で合成可能なように得られるポリエステル樹脂の組成を設計した上で、重縮合の際の温度条件を調整する、あるいは予めエステルオリゴマーを調製して重縮合に使用することによって、従来不可能であると考えられていた高分子量の芳香族系ポリエステルを、加水分解酵素を使用して製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の触媒作用により重合させることによって得られ、重量平均分子量が20000以上であることを特徴とするものである。
また、前記芳香族系ポリエステル樹脂は、その融点が170℃未満であることが好適である。また、前記芳香族系ポリエステル樹脂において、前記加水分解酵素がリパーゼであることが好適であり、特にリパーゼが担体に固定化された固定化リパーゼであることが好適である。また、前記芳香族系ポリエステル樹脂において、アンチモン、チタン、ゲルマニウム、アルミニウム、亜鉛、スズ、ジルコニウム、マグネシウム及びマンガンといった従来ポリエステル製造の重合触媒として用いられている金属を実質的に含まないことが好適である。
また、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法は、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを用いて、加水分解酵素の存在下、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物を製造するエステルオリゴマー製造工程と、前記工程により得られたエステルオリゴマー混合物を、加水分解酵素の存在下、さらに重縮合させ、重量平均分子量20000以上の芳香族系ポリエステル樹脂を製造するポリエステル樹脂重合工程とを備えることを特徴とするものである。
また、前記芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法において、前記エステルオリゴマー製造工程が、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の存在下、反応開始直後に30〜120℃で5〜6000分間加熱する第一加熱工程であり、前記ポリエステル樹脂重合工程が、前記第一加熱工程の後、加水分解酵素の存在下、さらに70〜180℃で60〜6000分間加熱する第二加熱工程であることが好適である。
また、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法は、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを用いて、加水分解酵素の存在下、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物を製造するエステルオリゴマー製造工程と、前記工程により得られたエステルオリゴマー混合物中から環状のエステルオリゴマーを分離精製して高純度の環状エステルオリゴマー混合物を得る環状エステルオリゴマー精製工程と、前記工程により得られた高純度の環状エステルオリゴマー混合物を、加水分解酵素の存在下、さらに重縮合させ、重量平均分子量20000以上の芳香族系ポリエステル樹脂を製造するポリエステル樹脂重合工程とを備えることを特徴とするものである。
また、前記芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法において、前記エステルオリゴマー製造工程が、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の存在下、30〜120℃で5〜6000分間加熱する工程であり、前記ポリエステル樹脂重合工程が、加水分解酵素の存在下、さらに70〜180℃で60〜6000分間加熱する工程であることが好適である。
本発明によれば、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の触媒活性が損なわれないような環境下でポリエステル樹脂を合成可能なように、使用するモノマー成分の種類やその配合比を選択し、これらに対して、十分な触媒活性を示す加水分解酵素を重合触媒として用い、重縮合の際の温度条件を調整、あるいは予めエステルオリゴマーを調製して重縮合に使用することによって、金属不純物の含有量が低く、且つ熱的性質や機械的性質に比較的優れる高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られる。
試験例3−1により得られた芳香族系ポリエステル樹脂(ポリ(ヘキサメチレンテレフタレート))のH NMRスペクトル分析結果である(300MHz、CDCl)。 エステルオリゴマー混合物に固定化酵素を作用させて得られる芳香族系ポリエステルの重量平均分子量に対し、その混合物中に含まれるジオール(ヘキサメチレングリコール)成分とジカルボン酸(テレフタル酸)成分の比率が与える影響を示した図である。
本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の触媒作用により重合させることによって得られ、重量平均分子量が20000以上であることを特徴とするものである。
本発明において用いられるジカルボン酸成分は、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むものである。本発明に用いられるテレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸あるいはそれらの誘導体の総量は、ジカルボン酸成分の全量に対する比率として、好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上である。前記比率が40モル%以下であると、芳香族系ポリエステル樹脂としての特性を期待しにくい。また、ジカルボン酸成分の全量が、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体であってもかまわない。なお、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、ナフタレンカルボン酸ジメチル、ナフタレンカルボン酸ジエチル等の低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、反応系中での溶解性や溶融性の点から、低級アルキルエステルを使用することが特に好ましい。また、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体以外のジカルボン酸成分としては、酵素触媒によりエステル化反応、またはエステル交換反応が起こり得るものである限り、特に限定されるものではない。その他のジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸等が挙げられる。なお、ジカルボン酸成分は、ジカルボン酸及びジカルボン酸の低級アルキルエステルのいずれに由来するものであってもよい。また、ジカルボン酸ではなく6−ヒドロキシヘキサン酸誘導体や乳酸誘導体、グリコール酸誘導体等のヒドロキシ酸を使用することも可能である。本発明に用いられるジカルボン酸成分は、得られるポリエステル樹脂の所望物性や使用目的に応じて上述のジカルボン酸成分の中から複数のものを適宜選択して用いることができる。
本発明において用いられるジオール成分は、酵素触媒によりエステル化反応、またはエステル交換反応が起こり得るものである限り、特に限定されるものではない。ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族ジオールやシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ナフタレンジオールやビスフェノールA、レゾルシン等の芳香族系ジオール等が挙げられる。本発明に用いられるジオール成分としては、上述のジオール成分のうちから、目的に応じた任意の成分数と配合比を選択することができる。また、必要に応じて、グリセリンやペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールを使用することもできる。
本発明において重合触媒として用いられる加水分解酵素は、選択されるモノマー、もしくはオリゴマーのエステル化反応、及びエステル交換反応を促進させ得るものである限り、特に限定されるものではない。例えば、公知の菌株由来の加水分解酵素から選択することができ、なかでもカルボキシルエステラーゼ(EC3.1.1.1:carboxylesterase)やリパーゼ(EC3.1.1.3:triacylglycerol lipase)を好適に用いることができる。また、加水分解酵素の耐熱性や得られる芳香族系ポリエステル樹脂との分別のし易さ等の観点から、前記加水分解酵素は担体に固定化された固定化加水分解酵素であることが好適である。加水分解酵素の固定化の手法は特に限定されるものではなく、公知の固定化手法による固定化加水分解酵素を用いることができる。より具体的には、Candida antarctica由来のリパーゼ及びカルボキシルエステラーゼが固定化された固定化酵素であるNovozym 435(ノボザイム社製;多孔質アクリル樹脂に固定化された固定化リパーゼ)が、特に好適な加水分解酵素として挙げられる。
また、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、その製造段階において、使用するモノマーや重合反応により生成するオリゴマー又はポリマーが溶融あるいは溶解した状態で、加水分解酵素を作用させて得られることを特徴とする。このため、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、加水分解酵素の触媒活性が損なわれないような環境下で合成可能なように、使用するモノマー成分の種類やその配合比が調整されていることが必要となる。より具体的には、得られる芳香族系ポリエステル樹脂の融点が170℃未満となるようにモノマー成分の種類やその配合比が調整されることが望ましい。このようなモノマー成分の組み合わせとしては、特に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸/ヘキサメチレングリコール、テレフタル酸/デカメチレングリコール、2,6−ナフタレンジカルボン酸/デカメチレングリコール、2,6−ナフタレンジカルボン酸/ドデカメチレングリコール等の組み合わせが挙げられる。また、得られるポリエステル樹脂の融点が170℃未満となる範囲であれば、先に列挙したような他のジカルボン酸成分やジオールを適当量含んでいても構わない。なお、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のより高融点な芳香族系ポリエステル樹脂を選択すると、反応により生成するポリマーが溶融あるいは溶解できるような過酷な反応条件とする必要がある。しかしながら、そうした過酷な条件下では加水分解酵素の触媒活性が顕著に減少するために高分子量体が得られにくい。なお、融点は公知の方法によって測定することが可能であり、例えば、示差走査熱量計(DSC−60:島津製作所社製)を用い、窒素雰囲気下10℃/minで昇温させて測定することができる。本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂の融点は、より好ましくは165℃未満、さらに好ましくは160℃未満である。なお、以上に説明したような加水分解酵素の触媒活性が損なわれないような環境は、使用される加水分解酵素の耐性(耐熱性、耐薬品性等)によって大きく支配されるものであり、例えば、将来的に(出願時点では存在しない)高耐熱性を有する加水分解酵素が開発されたとすれば、本発明の方法を用いて、より高融点の芳香族系ポリエステル樹脂を得ることも可能である。
また、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が20000以上のものである。分子量が20000未満であると、例えば、構造材として使用する場合に要求される耐熱性や力学的特性に劣る。なお、重量平均分子量は公知の方法によって測定することが可能であり、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することが可能である。GPCによる重量平均分子量測定条件としては、例えば以下のものが挙げられる。
カラム:Shodex K−804(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計 RI−980(日本分光社製)
溶離液:クロロホルム:エタノール=99:1(vol/vol)
流速:1.0ml/min
温度:37℃
標準試料:TSK standard POLYSTYRENE(東ソー社製)
本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、より好ましくは25000以上であり、さらに好ましくは30000以上である。
また、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、重金属触媒に変えて加水分解酵素を用いて製造するものであるため、例えば、アンチモンやチタン、ゲルマニウムやアルミニウム、亜鉛、スズ、ジルコニウム、マグネシウム、マンガンといった芳香族系ポリエステル樹脂の製造に従来使用されている金属触媒由来の金属不純物を実質的に含んでいない。したがって、本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂は、これらの金属不純物の総含有量について、金属元素換算で25ppm未満を容易に達成し得るものである。一方で、従来使用されている金属触媒を用いて製造したポリエステル樹脂においては、使用した触媒金属の残渣を除くことが極めて困難であるため、ポリエステル樹脂中には、製造時に仕込んだ触媒金属のほぼ全量が含まれてしまうこととなり、この場合、環境汚染や樹脂の性能低下を招く恐れがある。この残存触媒金属の量は適当な酸処理や再沈殿処理によって軽減することはできるものの、完全に取り除くことは極めて困難であり、経済的な面からも好ましくない。金属不純物含有量は公知の方法によって測定することが可能であるが、例えば、誘起結合プラズマ発光分析装置(ICP発光分析装置P−4010:日立製作所社製)を用いて測定することが可能である。また、本発明にかかるポリエステル樹脂中におけるそれぞれの金属不純物の総含有量は、具体的には、金属元素換算で25ppm未満であり、より好ましくは20ppm未満、さらに好ましくは15ppm未満である。
本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法においては、加水分解酵素の存在下、意図的に合成条件を操作して、予め重量平均分子量20000未満の鎖状、もしくは環状のエステルオリゴマー混合物を合成し、その後、このエステルオリゴマー混合物に対して加水分解酵素を作用させ、さらに重縮合させることによって、重量平均分子量20000以上のポリエステルを得ることを特徴とする。重量平均分子量20000未満のエステルオリゴマー混合物を予め調製することにより、重縮合反応終了時点における反応系内のジカルボン酸成分とジオール成分の量比(モル比)を制御しやすく(すなわち、反応系内に存在するカルボン酸とアルコールの官能基数の比率を1:1に近づけやすく)なる。これによって、芳香族系ポリエステル樹脂をより高分子量なものとすることができ、さらにその分子量を制御しやすくなる。なお、エステルオリゴマー製造工程と、これに続くポリエステル樹脂重合工程は、同一反応容器内で合成条件を変化させて行なうことも可能であり、あるいは、予め加水分解酵素を用いてエステルオリゴマー混合物を製造しておき、別途、このエステルオリゴマー混合物に加水分解酵素を作用させてポリエステル樹脂を製造することも可能である。
本発明にかかる芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法の具体例として、例えば、以下のような製法を例示できる。
製法例1
1)テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分とを、加水分解酵素の存在下、反応開始直後に30〜120℃で5〜6000分間加熱する。
上記第一加熱工程の反応温度の下限は、エステルオリゴマーの生成効率により規定される。つまり、加熱温度が30℃未満であると、使用するモノマーの少なくとも一成分が溶融あるいは溶解できなかったり、加水分解酵素による触媒効率が十分に高くならなかったりするため、エステル化反応が進行しないか、あるいは反応に長時間を要する場合がある。一方で、温度の上限は、使用するジカルボン酸成分やジオール成分の昇華もしくは気化温度、及び加水分解酵素の触媒活性が維持される温度範囲により規定される。つまり、上記加熱温度が120℃を超えると、ジカルボン酸成分やジオール成分の昇華や気化がエステル化反応よりも優先的に起こり、エステルオリゴマー中のジカルボン酸成分とジオール成分との存在比を効率的に1:1に近づけることが困難となるため、高分子量なポリエステル樹脂が得られ難くなる。なお、上記第一加熱工程の加熱温度は、好ましくは35〜115℃であり、さらに好ましくは40〜110℃である。
また、上記第一加熱工程の加熱時間は、5〜6000分間である。加熱時間が5分間未満であると反応時間が短すぎ、エステルオリゴマーが十分に生成することができないため、つづく重縮合反応において反応系内のジカルボン酸成分とジオール成分の量比(モル比)を制御することができず、結果として高分子量のポリエステル樹脂を得ることが出来ない。一方で、6000分間を超える加熱は生産効率の観点から好ましくない。なお、上記第一加熱工程の加熱時間は、好ましくは30〜5000分間であり、さらに好ましくは60〜4000分間である。
2)前記加熱工程の後、加水分解酵素の存在下、さらに70〜180℃で60〜6000分間加熱する。
上記第二加熱工程において、加熱温度は70〜180℃の範囲である。加熱温度が180℃を超えると、酵素の触媒活性が著しく損なわれることで収率の低下を招いたり分子量の増大が妨げられたりする。また省エネルギー・排出CO量の削減等といった環境負荷低減の観点からも好ましくない。一方で、70℃未満では、比較的高い融点をもつ芳香族系ポリエステルを溶融させることができないことから、酵素との十分な接触頻度を与えることができず、高分子量のポリエステルは得られにくい。なお、第二加熱工程の加熱温度は、好ましくは75〜175℃であり、さらに好ましくは80〜170℃である。ここで、例えば、融点140〜170℃程度の芳香族系ポリエステル樹脂を得ようとする際、80℃未満の加熱では、十分に高分子量なものが得られない場合がある。
また、第二加熱工程の加熱時間は、60〜6000分間である。加熱時間が60分間未満であると、エステル化反応が十分に進まないため高分子量のポリエステル樹脂が得られない場合がある。また、6000分間を超える加熱は生産効率の観点から好ましくない。なお、第二加熱工程の加熱時間は、好ましくは90〜5000分間であり、さらに好ましくは120〜4000分間である。
なお、上記第一加熱工程と、第二加熱工程とでは、それぞれ規定される温度範囲内であれば、同一の加熱温度として連続して反応を行なってもよい。より具体的には、70〜120℃の範囲であれば、両加熱工程を同一の加熱温度で連続して行なうことができる。この場合において、加熱時間はそれぞれ規定される時間の和の範囲内であればよく、それぞれの加熱工程が明確に区別されている必要はない。他方、上記第一及び第二加熱工程間において温度を変化させる場合、その昇温速度は特に限定される訳ではなく、徐々に昇温しても、あるいは急速に昇温しても構わない。さらに、両加熱工程においては、それぞれ規定の温度範囲内であれば、絶えず温度を変化させて反応を行なっても構わない。
ここで、上記第一の加熱工程においては、30〜120℃という比較的低い温度範囲で予め加熱を行なうため、ジカルボン酸成分やジオール成分の昇華や気化が抑制されながらエステル化反応が進行し、鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物が形成される。そして、このエステルオリゴマー混合物においては、ジカルボン酸成分とジオール成分とが約1:1の量比(モル比)で存在する。また、これらのエステルオリゴマー混合物中の種々のエステルオリゴマーはさらなる加熱によって昇華や気化により系から損なわれることもほとんどない。このため、エステルオリゴマー製造工程で得られたエステルオリゴマー混合物を用いた際には、これらの量比が1:1から大幅に逸脱することなく、ポリエステルの重縮合反応を進行させることができる。そしてこの結果、従来の酵素触媒重合法では得ることのできなかった高分子量な芳香族系ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。これに対して、例えば、反応開始直後に120℃以上に加熱した場合には、ジカルボン酸成分やジオール成分が昇華もしくは気化してしまい、それらの量比が大きく逸脱するため、高分子量のポリエステル樹脂を得ることはできなくなる。
また、昇華性の高いモノマーなどを使用する際には、上記製法だけで完全に昇華を抑制することは難しい。そこで、このような場合には、加圧系での製造や、昇華しやすいモノマーを予め過剰に仕込んで製造することも可能である。
また、上記製法は同一反応容器内で第一加熱工程と第二加熱工程を連続して行なうものであるが、予めエステルオリゴマー混合物を製造しておいて、別途、ポリエステル樹脂の重合反応に用いることも可能である。この製法は昇華しやすいモノマーを選択した場合に特に有効であり、さらに高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られやすくなる。以下、このような製法について説明する。
製法例2
1)テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分を、加水分解酵素の存在下、有機溶媒中で所定時間、所定温度で加熱し、その後加水分解酵素をろ別した後、溶媒を完全に留去して、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物を製造する。
上記エステルオリゴマー製造工程においては、加水分解酵素の存在下、有機溶媒中で30〜120℃で5〜6000分間加熱を行なえばよい。より好ましくは35〜120℃で30〜5000分間、さらに好ましくは40〜115℃で60〜4000分間加熱を行なう。
なお、上記エステルオリゴマー製造工程において使用する有機溶媒は、各モノマーや目的とする組成をもったエステルオリゴマー混合物を得る過程で生成する中間体を十分に溶解させ得るものであり、選択する反応系において著しく速く気化するものでなく、且つ使用する加水分解酵素の触媒活性が劇的に損なわれるものでなければ自由に選択することができる。使用可能な有機溶媒の種類は、使用するモノマーの種類によっても異なるが、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、クメン等が挙げられる。また、使用する有機溶媒の添加量は、上記を満たすものであれば特に制限されるものでないが、ジカルボン酸成分総量の濃度が1〜10000mMとなるように添加するのが好ましい。1mM未満であると反応溶媒の量が多くなるだけでなく、エステルオリゴマー化が十分に進行しないことから、下記のポリエステル樹脂製造工程においてジカルボン酸やジオールの昇華や気化を抑制することができない。また、10000mM以上とするとモノマーやエステルオリゴマーを十分に溶解させにくくなる。
上記エステルオリゴマー製造工程において、加水分解酵素の存在下、モノマー成分を有機溶媒中で所定時間、所定温度で加熱することによって、エステル化反応、もしくはエステル交換反応が進み、目的とする重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマーの混合物を得ることができる。なお、生成するエステルオリゴマー混合物の重量平均分子量や組成は、ジカルボン酸成分とジオール成分の仕込み比や加熱温度、加熱時間、基質濃度、酵素量などを変化させることによっても適宜調整することが可能である。
2)前記工程により得られたエステルオリゴマー混合物を、加水分解酵素の存在下、さらに所定時間、所定温度で加熱して重縮合させ、重量平均分子量20000以上の芳香族系ポリエステル樹脂を製造する。
上記ポリエステル樹脂重合工程は製法例1の第二加熱工程と同様に、具体的には、70〜180℃で60〜6000分間加熱を行えばよい。より好ましくは75〜175℃で90〜5000分間、さらに好ましくは80〜170℃で120〜4000分間加熱を行なう。
ここで、上記エステルオリゴマー製造工程において得られるエステルオリゴマー混合物は、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマーである。この製法例2では、各モノマーや生成するオリゴマーが有機溶媒に溶解していることから、製法例1のものと比較して、より昇華や気化を防ぎやすく、量比(モル比)を約1:1に制御しやすくなり、結果として、さらに高分子量なポリエステル樹脂が得られやすくなる。また、同様の理由から、より昇華しやすいモノマーを使用する際や昇華性が異なる複数のジカルボン酸成分やジオール成分を使用する際に適している。また、予めエステルオリゴマーを調製しておく本製法によれば、重合反応開始時から終了時までジカルボン酸成分とジオール成分との量比(モル比)が約1:1で保持されるため、従来の金属触媒を用いた製法のように、ポリエステルの重合反応の際に上記量比が特定の範囲に収まるように、例えば、加熱温度を200℃以上の高温としたり、あるいは極度の減圧操作などを行ったりする必要がない。
また、環状のエステルオリゴマーにおいては、ジカルボン酸成分とジオール成分との量比(モル比)は完全に1:1である。したがって、さらに高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂を望む際には、上記ポリエステル樹脂製造工程に使用するエステルオリゴマー混合物中に環状のエステルオリゴマーがより多く含まれていることが好ましい。
このため、以上のようにして得られたエステルオリゴマー混合物に対して、環状オリゴマーを分離精製し、得られた高純度の環状オリゴマー混合物を用いて、ポリエステル樹脂の重合反応に用いることも可能である。以下、このような製法について説明する。
製法例3
1)テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを用いて、加水分解酵素の存在下、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物を製造する。
上記エステルオリゴマー製造工程については、製法例2の場合と同様である。
ただし、上記エステルオリゴマー製造工程において、高純度の環状エステルオリゴマーをより簡便に得るために、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分との仕込み量比(モル比)は、いずれかを若干過剰とすることが好ましい。例えば、ジカルボン酸成分としてその低級アルキルエステルを使用する際には、ジオール成分を過剰にすることが好ましく、その仕込み量比(モル比)は、ジカルボン酸:ジオール=1:1.01〜1:1.70、より好ましくは1:1.05〜1:1.60の範囲にすることが好ましい。低級アルキルエステルをモノマーとした場合、上記エステルオリゴマー混合物中には、目的とする環状エステルオリゴマーの他に、その両末端が(a)水酸基−アルキルエステル、(b)水酸基−水酸基、(c)アルキルエステル−アルキルエステルの3種類の鎖状オリゴマーが含まれている。そこで、若干ジオール成分の仕込み量を多くすることによって、環状のエステルオリゴマーとの分離が比較的困難な(c)の両末端がアルキルエステル−アルキルエステルの鎖状オリゴマーの生成を抑制する。これにより高純度の環状オリゴマーを分離精製することが容易となる。この際選択するジカルボン酸成分とジオール成分の仕込み量比(モル比)を調整することで、環状オリゴマー精製工程後に得られる高純度環状エステルオリゴマー混合物中の(c)の鎖状体の量(つまりジカルボン酸成分とジオール成分の量比)を、厳密に、しかも容易に制御することができ、結果としてポリエステル樹脂製造工程後に任意の平均分子量をもった芳香族系ポリエステル樹脂を調製することもできる。また、ジカルボン酸成分のモノマーとして低級アルキルエステルでなく、ジカルボン酸を使用する際には、ジオール成分に対してジカルボン酸成分を過剰に使用することも可能である。
2)前記工程により得られたエステルオリゴマー混合物中から環状オリゴマーを分離精製して高純度の環状オリゴマー混合物を得る。
上記環状オリゴマー分離工程は、特に限定されるものではなく、カラムクロマトグラフィー、再結晶など公知の手法を用いることができるが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーが好適なものとして挙げられる。なお、カラム充填剤や溶離液等は従来公知のものを適宜使用することができる。また、前述のように、ジカルボン酸成分とジオール成分との仕込み量比(モル比)を適宜選択することによって、目的の組成をもった環状エステルオリゴマーの分離精製がより容易になり、高純度の環状エステルオリゴマーを比較的高収率で得ることができる。なお、分離精製後の環状エステルオリゴマーの純度は、前述のように、目的とする芳香族系ポリエステル樹脂の分子量に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、通常ジカルボン酸成分とジオール成分の量比(モル比)にして0.95〜1.05程度であり、好ましくは0.99〜1.01程度である。
3)前記工程により得られた環状エステルオリゴマーを、加水分解酵素の存在下、さらに重縮合させて、重量平均分子量20000以上の芳香族系ポリエステル樹脂を製造する。
上記ポリエステル樹脂重合工程については、製法例2の場合と同様である。
ここで、上記環状エステルオリゴマー分離工程によって得られる高純度な環状エステルオリゴマー混合物を用いた本製法においては、ジカルボン酸成分とジオール成分との量比(モル比)がほぼ完全に1:1で保持されるため、従来の酵素触媒法では決して得ることのできなかった高分子量な芳香族系ポリエステル樹脂を比較的容易に得ることが可能となる。また、従来の金属触媒を用いた製法のように、ポリエステルの重合反応の際に上記量比が特定の範囲に収まるように、例えば、加熱温度を200℃以上の高温としたり、あるいは極度の減圧下で反応させたりする必要がない。また、この製法を用いることで、重合反応時の原料の供給量や加熱温度・加熱時間等の条件を細かく調整することなく、容易に任意の平均分子量をもった芳香族系ポリエステル樹脂が得られる。
なお、以上に説明した芳香族系ポリエステル樹脂の製造工程においては、いずれも溶媒を用いない系で行なうことが、より容易に高分子量体を得やすいことから好ましい。しかしながら、得られるポリエステル樹脂に期待する物性などに応じて、任意で溶媒を用いた反応系を選択することもできる。溶媒を使用する場合は、各モノマーやオリゴマー、さらには生成するポリマーを十分に溶解させ得るものであり、選択する反応系において著しく速く気化するものでなく、かつ使用する酵素の触媒活性が劇的に損なわれるもの等でなければ自由に選択できる。このような溶媒としては、トルエン、キシレン、アニソール、クメンなどが例示できる。
また、水やアルコールといったカルボニル基と反応し得る化学種が反応系中に多く存在すると、目的とする高分子量のポリエステル樹脂が得られないものの、反応系内にこれらがまったく存在しないと酵素触媒によるエステル化反応が進行しないため、これら濃度の制御が必要となる。この制御においては、目的とする濃度が達成されうる限り特に制限なく公知の手法を用いることができる。例えば、用いる原料や酵素、溶媒、反応容器等に対して物理的もしくは化学的手法を用いた乾燥操作を行なうことが可能であり、具体的には、加熱下で減圧する、不活性ガスを流す、合成ゼオライトなどの分子ふるい効果を有する被吸着物質を反応系に対して接触、もしくは非接触で作用させる等の手法が例示できる。さらに目的に応じて、水などを添加して制御することも可能である。
以上のようにして得られる本発明の芳香族系ポリエステル樹脂は、加水分解酵素を用いて製造したものであるにもかかわらず、重量平均分子量が20000以上であり、熱的性質や機械的性質に比較的優れているため、構造材料として特に好適に使用することができる。また、金属触媒を用いていないため、得られる樹脂中に従来ポリエステル製造のために用いられているような触媒金属元素を実質的に含まないものとして得ることが可能である。このため、金属の流出などによる環境汚染を防止することができ、さらには金属不純物に起因するポリエステル樹脂の性能低下も生じにくい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
まず本発明者らは、テレフタル酸ジメチル(ジカルボン酸成分)とヘキサメチレングリコール(ジオール成分)とを用い、さらに重合触媒として加水分解酵素(固定化加水分解酵素;Novozym 435)を用いて対応する芳香族系ポリエステル樹脂の製造を製法例1に従って行なった(試験例1−1〜1−5)。なお、芳香族系ポリエステル樹脂の製造の手順は、概略以下に示すとおりである。
[芳香族系ポリエステルの合成]
所定の合成原料(ジカルボン酸成分及びジオール成分)を所定の比率で仕込み、あらかじめ乾燥処理した固定化リパーゼ(Novozym 435,Candida属由来リパーゼ及びカルボキシルエステラーゼ:ノボザイム社製)を合成原料に対して100質量%添加した。この反応容器の上部に乾燥済みのモレキュラーシーブスを入れた容器を装着し、直ちに密閉後、所定の温度に加熱し、所定の時間撹拌を行った。その後、室温まで放冷し、クロロホルムを加えて生成物を溶解させ固定化酵素をろ別した。ろ液を濃縮したのちこれを室温にてトルエンへ滴下して、得られた沈殿をろ過にて回収後、乾燥させ目的とする芳香族系ポリエステル樹脂を得た。
試験例1−1〜1−3においては、テレフタル酸ジメチルとヘキサメチレングリコールの仕込み量比を各種変更し、90℃で5時間加熱した後、1時間かけて140℃へと昇温し、さらに42時間撹拌を行なった。また、試験例1−4においては、固定化酵素を添加せずに同様の操作を行なった。また、試験例1−5においては、反応開始直後から140℃に加熱し、48時間撹拌を行なった。
上記試験例により得られた生成物については、H NMR(VARIAN NMR300:VARIAN社製)を用いて構造を確認し、重量平均分子量及び分子量分布はGPC(カラム:Shodex K−804(昭和電工社製)、検出器:示差屈折計 RI−980(日本分光社製)、溶離液:クロロホルム:エタノール=99:1(vol/vol)、流速:1.0ml/min、温度:37℃、標準試料:TSK standard POLYSTYRENE(東ソー社製))により評価した。結果を下記表1に示す。
Figure 2009128318
上記表1に示されるように、テレフタル酸ジメチルとヘキサンメチレングリコールとを、加水分解酵素の存在下、予め90℃で5時間加熱し、さらに140℃で42時間加熱した試験例1−1〜1−3においては、重量平均分子量が33,000〜52,000といった高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が高い収率で得られることが明らかとなった。
これに対して、加水分解酵素を添加しなかった試験例1−4では、重縮合反応がまったく進行せず、ポリエステルを得ることはできなかった。さらに、反応開始直後に140℃に加温した試験例1−5においても、ポリエステルは得られなかった。
試験例1−1と試験例1−4との比較から、本発明の芳香族系ポリエステルの生成は加水分解酵素の触媒作用によるものであることが理解される。また、試験例1−5ではポリエステルが全く得られなかったが、これはテレフタル酸ジメチル及びヘキサメチレングリコールが昇華もしくは気化してしまい、ジカルボン酸成分とジオール成分、及び触媒である加水分解酵素が反応系内で互いにうまく接触できなかったためであると考えられる。これに対し、90℃程度の比較的低温で加熱したのち、140℃程度の比較的高温に加熱した試験例1−1〜1−3では、高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られ、その平均分子量は、テレフタル酸ジメチルと比較して若干気化しやすいヘキサメチレングリコールをわずかに過剰に用いた試験例1−2が最も高いものとなった。これらの結果から、高分子量の芳香族系ポリエステルの製造には、反応系内でのカルボン酸成分とジオール成分の量比(モル比)の制御が極めて重要であることが理解される。すなわち、試験例1−1〜1−3においては、第一の加熱工程によりエステルオリゴマー化が十分に進行し、これによって第二の加熱工程においても十分に昇華が抑制でき、また、エステルオリゴマー混合物中のジカルボン酸成分とジオール成分との量比(モル比)が約1:1に保持されていたことから、重縮合反応がスムーズに進行し、この結果、高分子量の芳香族系ポリエステルが高収率で得られているものと考えられる。
さらに本発明者らは、複数のジカルボン酸成分(テレフタル酸ジメチル及び2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル)を用いて同様の試験を行なった。結果を下記表2に示す。
Figure 2009128318
上記表2に示されるように、テレフタル酸ジメチルと2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとをジカルボン酸成分として用いた試験例1−6においても、上記試験例と同様に、重量平均分子量が35,000である高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が高い収率で得られた。
さらに本発明者らは、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とする芳香族系ポリエステルの合成を同様に試みた。結果を下記表3に示す。
Figure 2009128318
上記表3に示されるように、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを主たるジカルボン酸成分として用いた実施例1−7においても、上記試験例と同様に、重量平均分子量29,000の高分子量の芳香族系ポリエステルが高収率で得られた。
つづいて本発明者らは、製法例2に従って、ジカルボン酸成分とジオール成分に対して有機溶媒中で加水分解酵素を作用させ、予めエステルオリゴマー混合物を調製し、これをさらに加水分解酵素の存在下、加熱・重縮合させることによって、対応する芳香族系ポリエステル樹脂の製造を試みた(試験例2−1〜2−4)。なお、エステルオリゴマー混合物の製造の手順は、概略以下に示すとおりである。
[エステルオリゴマー混合物の合成]
等モルのテレフタル酸ジメチルエステルと各種のアルキレングリコールを仕込み、あらかじめ乾燥処理を施した固定化リパーゼ(Novozym 435,Candida属由来リパーゼ:ノボザイム社製)をモノマーの総量に対して100質量%添加した。さらにここへトルエンをテレフタル酸ジメチルの濃度が25mMとなる量添加した後、この反応容器の上部に乾燥済みのモレキュラーシーブスを入れたガラス管を装着し、直ちに密閉後、90℃にて48時間撹拌を行った。反応終了後、この溶液を室温まで放冷した後、固定化酵素をろ別し、得られたろ液を乾燥させ目的とするエステルオリゴマー混合物を得た。
試験例2−1においては、以上のようにして得られたエステルオリゴマー混合物を、濃度50g/Lとなるようにトルエン中に希釈し、固定化酵素の存在下、100℃で48時間加熱撹拌を行なった。その後、室温まで放冷し、クロロホルムを加えて生成物を溶解させ固定化酵素をろ別した。ろ液を濃縮したのちこれを室温にてトルエンへ滴下して、得られた沈殿をろ過にて回収後、乾燥させ目的とする芳香族系ポリエステル樹脂を得た。試験例2−2〜2−4においては、ジオール成分を各種変化させてエステルオリゴマー混合物の調製を行い、次いで固定化酵素の存在下、140℃で48時間加熱撹拌し、重縮合反応を行なった。その後の操作は試験例2−1と同様である。
また、上記試験例により得られた生成物については、H NMR(VARIAN NMR300:VARIAN社製)、及びMALDI−TOF MASS(Ultraflex:BRUKER社製)を用いて構造を確認し、重量平均分子量及び分子量分布はGPC(カラム:Shodex K−804(昭和電工社製)、検出器:示差屈折計 RI−980(日本分光社製)、溶離液:クロロホルム:エタノール=99:1(vol/vol)、流速:1.0ml/min、温度:37℃、標準試料:TSK standard POLYSTYRENE(東ソー社製))により評価した。結果を下記表4に示す。
Figure 2009128318
上記表4に示されるように、予め加水分解酵素を用いて製造したエステルオリゴマー混合物をトルエン中に添加し、加熱・重縮合反応を行った試験例2−1においては、重量平均分子量21,000の高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られ、有機溶媒中で重縮合反応を行なう場合であっても本発明は十分に適用可能であることを確認した。また、ジオール成分を各種変化させたエステルオリゴマー混合物を用いた試験例2−2〜2−4においても、重量平均分子量51,000〜54,000といった高分子量な芳香族系ポリエステル樹脂が、高い収率で得られることが明らかとなった。また、試験例2−4においては、ジオール成分の仕込み量比と良く一致した組成比を有する芳香族系ランダムコポリエステル樹脂が得られた。
さらに本発明者らは、製法例3に従い、エステルオリゴマー混合物中から環状オリゴマーのみを精製した高純度環状オリゴマー混合物を用いて、上記試験と同様にして、対応する芳香族系ポリエステル樹脂の製造を試みた(試験例3−1,3−2)。ここで用いた高純度環状オリゴマーは、ジカルボン酸成分とジオール成分との量比がH NMR上で1.000:1.000である。なお、高純度環状オリゴマーの製造の手順は、概略以下に示すとおりである。
[高純度環状オリゴマー混合物の合成]
テレフタル酸ジメチルとこれに対して1.30モル等量のアルキレングリコールを加え、反応温度を105℃にした以外は上記エステルオリゴマー混合物の合成と同様にしてエステルオリゴマー混合物を得た。つづいて、この混合物に対し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、該当分画を回収後、濃縮、乾燥操作を施し目的とする高純度環状オリゴマー混合物を得た。
試験例3−1においては、ジオール成分としてヘキサメチレングリコールを用いて上記高純度環状オリゴマー混合物を調製し、固定化酵素の存在下、140℃で48時間加熱撹拌し、重縮合反応を行なった。また、試験例3−2においては、デカメチレングリコールを用いて上記高純度環状オリゴマー混合物を調製し、固定化酵素の存在下、120℃で48時間加熱撹拌し、重縮合反応を行なった。その後の操作は、試験例2−1〜2−4と同様である。
また、上記試験例により得られた生成物については、H NMR(VARIAN NMR300:VARIAN社製)、及びMALDI−TOF MASS(Urtraflex:BRUKER社製)を用いて構造を確認し、重量平均分子量及び分子量分布はGPC(カラム:Shodex K−804(昭和電工社製)、検出器:示差屈折計 RI−980(日本分光社製)、溶離液:クロロホルム:エタノール=99:1(vol/vol)、流速:1.0ml/min、温度:37℃、標準試料:TSK standard POLYSTYRENE(東ソー社製))を用いて測定した。結果を下記表5に示す。また、試験例3−1で得られた芳香族系ポリエステル樹脂であるポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)のH NMR測定結果を図1に示す。
Figure 2009128318
上記表5に示されるように、高純度に調製した環状オリゴマー混合物を用いて重縮合反応を行った試験例3−1及び3−2においては、重量平均分子量130,000〜140,000という非常に高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂が得られることが明らかとなった。これは、ここで用いた環状オリゴマーにおいては、ジカルボン酸成分とジオール成分の量比(モル比)がほぼ完全に1:1であり、重縮合反応中においてもこの比率が維持されているためと考えられる。
また本発明者らは、テレフタル酸ジメチルとヘキサメチレングリコールとの仕込み量比(モル比)を様々にして、高純度環状オリゴマーの製造を実施した。そして、得られた両末端アルキルエステル―アルキルエステルの鎖状オリゴマーを様々な比率で含有するエステルオリゴマー混合物に対し、ポリエステル製造工程を試験例3−1と同様に行った。これにより、ポリエステル製造工程に用いる高純度環状エステルオリゴマー中のジカルボン酸成分/ジオール成分の比率が、ポリエステル製造工程後に得られる芳香族系ポリエステルの分子量に与える影響について調査した。結果をまとめたものを図2に示す。なお、図中[H]/[T](mol/mol)は、高純度環状オリゴマー混合物中のヘキサメチレングリコール成分/テレフタル酸成分の量比(モル比)を表す。
図2に示されるように、高純度環状エステルオリゴマー混合物中のジカルボン酸成分/ジオール成分の量比(モル比)が、得られる芳香族系ポリエステル樹脂の分子量に大きく影響していることが確認された。例えば、上記量比がわずか1モル%外れただけであっても、得られる樹脂の重量平均分子量は60,000程度にとどまっていることがわかる。このことから、高分子量の芳香族系ポリエステル樹脂を得るためには、重縮合反応中のジカルボン酸成分/ジオール成分を、かなり高い精度で1:1に制御する必要があると言える。また、エステルオリゴマー製造工程におけるジカルボン酸成分とジオール成分の仕込み量比(モル比)を任意のものとすることで、得られる環状エステルオリゴマー中のジカルボン酸成分とジオール成分との量比を目的に応じて厳密に制御することができ、結果として他の諸条件を変えることなく芳香族系ポリエステルの分子量を厳密に制御できる。これらから、高純度環状エステルオリゴマー混合物の使用が極めて有用であることが理解される。
つづいて、以上のようにして得られた本発明の高分子量芳香族系ポリエステル樹脂について、実使用のための物性試験(熱特性及び機械特性)を行なった。結果を下記表6及び7に示す。
熱特性の評価のうち、ガラス転移点、融点、降温結晶化温度は示差走査熱量計(DSC−60:島津製作所社製)を用い、5%熱重量減少温度は示差熱・熱重量同時測定装置(DTG−60H:島津製作所社製)を用いた。測定は、いずれも窒素雰囲気下10℃/minで温度を変化させて行った。機械特性の評価(引っ張り試験)は、各樹脂をホットプレスして作成した約100μm厚のシートについて、試験部幅を5.0mmとし、長さを30.0mmとするダンベル状に打ち抜いたものを試験片とし、精密万能試験機(オートグラフAGS−J:島津製作所社製)を用いて行った。なお、つかみ具間距離を10mmとし、試験温度は25℃、試験速度は10mm/minとした。
Figure 2009128318
Figure 2009128318
上記表6及び表7に示されるように、加水分解酵素を用いて製造した本発明の芳香族系ポリエステル樹脂においては、従来構造材として使用される高密度ポリエチレンと比較しても遜色の無い熱特性や力学的特性を示した。このことより、本発明の芳香族系ポリエステル樹脂が、構造材としても十分に使用可能であることが確認された。
また、以上のようにして得られた本発明の高分子量芳香族系ポリエステル樹脂について、金属イオン含有量の定量試験を行なった。結果を下記表8に示す。
金属イオン定量試験は、誘起結合プラズマ発光分析装置(ICP発光分析装置P−4010:日立製作所社製)を用いて行なった。濃硫酸へ浸した樹脂サンプル(試験例3−1;ポリヘキサメチレンテレフタレート)に対して、約320℃で還流させながら濃硝酸を作用させるという操作を溶液が透明になるまで繰り返した後、過剰の濃硝酸を加熱留去した。得られた溶液を20℃で純水にてメスアップし、これをサンプル溶液として、ICP発光分析を行なった。
Figure 2009128318
上記表8に示されるように、加水分解酵素を用いて製造した本発明の芳香族系ポリエステル樹脂に含まれる重金属含有量は、測定した全ての金属において検出限界未満となった。このことから、本発明により得られる芳香族系ポリエステル樹脂には金属不純物が極めて少ないことが理解される。このため、金属の流出等による環境汚染を防止することができ、さらには金属不純物に起因するポリエステル樹脂の性能低下も生じにくいものと考えられる。

Claims (9)

  1. テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の触媒作用により重合させることによって得られ、重量平均分子量が20000以上であることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂。
  2. 請求項1に記載の芳香族系ポリエステル樹脂において、融点が170℃未満であることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂。
  3. 請求項1又は2に記載の芳香族系ポリエステル樹脂において、前記加水分解酵素がリパーゼであることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂。
  4. 請求項3に記載の芳香族系ポリエステル樹脂において、前記リパーゼが担体に固定化された固定化リパーゼであることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の芳香族系ポリエステル樹脂において、アンチモン、チタン、ゲルマニウム、アルミニウム、亜鉛、スズ、ジルコニウム、マグネシウム及びマンガンを実質的に含まないことを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂。
  6. テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを用いて、加水分解酵素の存在下、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物を製造するエステルオリゴマー製造工程と、
    前記工程により得られたエステルオリゴマー混合物を、加水分解酵素の存在下、さらに重縮合させて、重量平均分子量20000以上の芳香族系ポリエステル樹脂を製造するポリエステル樹脂重合工程とを備えることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法。
  7. 請求項6に記載の芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法において、前記エステルオリゴマー製造工程が、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の存在下、反応開始直後に30〜120℃で5〜6000分間加熱する第一加熱工程であり、前記ポリエステル樹脂重合工程が、前記第一加熱工程の後、加水分解酵素の存在下、さらに70〜180℃で60〜6000分間加熱する第二加熱工程であることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法。
  8. テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを用いて、加水分解酵素の存在下、重量平均分子量20000未満の鎖状あるいは環状のエステルオリゴマー混合物を製造するエステルオリゴマー製造工程と、
    前記工程により得られたエステルオリゴマー混合物中から環状のエステルオリゴマーを分離精製して高純度の環状エステルオリゴマー混合物を得る環状エステルオリゴマー精製工程と、
    前記工程により得られた高純度の環状エステルオリゴマー混合物を、加水分解酵素の存在下、さらに重縮合させて、重量平均分子量20000以上の芳香族系ポリエステル樹脂を製造するポリエステル樹脂重合工程とを備えることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法。
  9. 請求項8に記載の芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法において、前記エステルオリゴマー製造工程が、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸、あるいはそれらの誘導体を含むジカルボン酸成分とジオール成分とを、加水分解酵素の存在下、30〜120℃で5〜6000分間加熱する工程であり、前記ポリエステル樹脂重合工程が、加水分解酵素の存在下、さらに70〜180℃で60〜6000分間加熱する工程であることを特徴とする芳香族系ポリエステル樹脂の製造方法。
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