本発明は、レーザ光等のコヒーレント光(可干渉性を有する光)を用いた光源装置、照明装置及び画像表示装置に関するものである。
レーザ光源等のコヒーレント光源(コヒーレント光を生成する光源)は、画像表示装置、測定機器、半導体基板上での回路作製に利用される露光・リソグラフ装置などに利用される。プロジェクタなどに用いられているランプ光源と比較した場合、レーザを用いたレーザ光源は、寿命が長く、発光効率が高く、指向性が強いため、光利用効率を高めやすい。また、画像表示装置として利用する場合、レーザ光源は、単色性を示すため、色再現領域が大きく、鮮やかな画像の表示が可能である。
一方、光源としてレーザ光源を用いた画像表示装置、計測装置、露光装置及び照明装置において、スペックルノイズが発生する。例えば、画像表示装置により形成された虚像を観測者が鑑賞する場合には、観測者の網膜上においては、スクリーンの各領域からの光が重なって画像が形成される。このとき、このスクリーン上の異なる領域を経た光同士が複雑な位相関係で重ねられ、レーザ光は、高いコヒーレンシ(可干渉性)を有していることから、互いに干渉し合うこととなる。このような干渉によって、干渉パターンが形成されてしまうため、意図しない光強度分布(スペックルノイズ)として、表示画像の画質低下を招く。同様に、計測装置や露光装置用の光源としてレーザ光源を用いた場合、レーザ光のコヒーレンシのため、対象面において光強度が不均一となる。
上記のスペックルノイズは、コヒーレンシを有するレーザ光を画像表示装置、計測装置、露光装置などの光源として用いる場合に共通の課題であり、これまでにも、スペックルノイズを低減させるための種々の試みがなされてきた。
例えば、特許文献1、2に記載されるように、回転拡散板を用いたものが提案されている。これらの構成では、光源から出射されたレーザの光路上に拡散板が配設され、拡散板が高速で回転され、レーザが拡散板を透過する。この拡散板が高速回転されることによって、コヒーレント光であるレーザ光により発生される干渉パターンを分裂させ、この干渉パターンをスクリーン上において高速に動き回らせることによって平均化し、スペックルノイズを低減している。
すなわち、これらの構成においては、実際に干渉パターンが消失するわけではなく、複数の異なる(互いに相関の無い)干渉パターンが重ね合わされることで、あたかもスペックルノイズが消失したかのように見えるのである。
しかしながら、これらの構成では、大掛かりで機械的な回転機構や、振幅が100μmを超える振動機構等を必要とするため、騒音が発生する。また、駆動に大きな電力を消費するため、装置全体としての消費電力が増大する。
特開2007−233371号公報
特開2004−144936号公報
本発明の目的は、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる光源装置を提供することである。
本発明の一局面に従う光源装置は、コヒーレント光によって被照明体を照明する光源装置であって、前記コヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンを変動させるパターン変動部とを備え、前記パターン変動部は、前記コヒーレント光源と前記被照明体との間で且つ前記コヒーレント光の光路上に配設され、フォトリフラクティブ効果を発現するフォトリフラクティブ結晶と、前記フォトリフラクティブ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを変動させる変動部とを含む。
上記の光源装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明の実施の形態1による光源装置の構成の一例を示す概念図である。
コヒーレント光の出力変動の一例を示す図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
コヒーレント光の光強度分布の変動の一例を示す図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態2による光源装置の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態3による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態4による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態5による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
音響光学効果や、カー効果及びポッケルス効果のような電気光学効果を発現する結晶を用いてコヒーレント光の偏光を変動させる変動部を用いることにより、被照射面におけるコヒーレント光の干渉パターンを変動させることが可能となる。これにより、従来から課題となっていた騒音や消費電力の増加を引き起こす、大掛かりな回転機構や振動機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
しかしながら、これらを用いる場合、高電圧や超音波の発生源が必要となる。そのため、結晶に入射するコヒーレント光の光強度分布、強度(例えば、最大強度又は平均強度)、偏光方向、及び波長の少なくとも一つを変動させることにより、被照射面におけるコヒーレント光の干渉パターンを変動させる変動部を用いることがより望ましい。なお、光強度分布を変動させる方法としては、例えば、コヒーレント光の入射位置を変動させたり、コヒーレント光自身の光強度分布を変動させたりしてもよい。また、入射するコヒーレント光自身の出力、偏光方向、又は波長を変動させてもよい。
ここで、結晶に入射するコヒーレント光の光強度分布、強度、偏光方向、又は波長を変動させることにより、コヒーレント光の干渉パターンを変動させる変動部としては、入射した光の強度に応じてレンズパワーが変化する熱レンズ効果や、入射した光の空間的光強度分布に応じて屈折率分布が発生するフォトリフラクティブ(以降、『PR』とする)効果などを発現する結晶を利用する変動部を用いることができる。
上記の熱レンズ効果やPR効果を利用した変動部を用いることにより、照射面上に形成される干渉パターンを高速に変化させ、スペックルノイズを低減させることが可能となる。また、上記の熱レンズ効果やPR効果を利用した変動部を用いることにより、電気光学効果や音響光学効果を用いた場合に必要となる高電圧や超音波の発生源が不要となる。さらに、従来から課題となっていた騒音や消費電力の増加を引き起こす、回転機構や大掛かりな振動機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
特に、PR効果は、低パワーの光に対しても、大きな屈折率の変化を発生させることが可能となり、数十mW程度以下の低出力レーザ光源を用いた画像表示装置、計測装置、露光装置、及び照明装置において、熱レンズ効果を用いる場合に比べて、スペックルノイズを低減する効果が大きくなり、PR効果を用いることがより望ましい。
以下、上記のPR効果や熱レンズ効果を用いた本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、画像表示装置、計測装置、露光装置、及び照明装置等に共通して用いられ、それらの装置において課題となるスペックルノイズを低減することを可能とする、光源装置について示す。
図1は、本発明の実施の形態1の光源装置の構成の一例を示す概念図であり、本光源装置は、少なくとも、レーザ光源101と、PR結晶102とからなり、さらに、必要に応じて、集光レンズ103、フィールドレンズ104及び振動部105を備える。レーザ光源101から出射されたレーザ光(コヒーレント光)は、集光レンズ103により集光された後、PR効果を発現する材料からなるPR結晶102に入射し、PR結晶102がPR効果を発生させることにより、レーザ光の屈折率の変化が誘起される。この屈折率の変化により、照射面上におけるレーザ光の干渉パターンが変動し、スペックルノイズが低減される。
ここで、レーザ光源101として、半導体レーザ、固体レーザ、ファイバーレーザ等のいかなるレーザを用いた場合においても、そのレーザの波長に対してPR効果を発現するPR結晶102を用いる限り、本実施の形態は、上記の効果を発揮する。
但し、強度、波長、偏光方向、及び光強度分布が一定の光をPR結晶の同一箇所に入射させ続けると、PR結晶内の屈折率の変化量は、時間とともに減少し、ついには屈折率が変化しなくなる。この結果、スペックルノイズの低減効果も減少してしまう。このため、本願発明者らは、屈折率の変化量の減少について鋭意検討を行った結果、PR結晶内に入射する光の強度、波長、偏光方向、及び光強度分布のうち少なくとも一つを変動させることにより、PR結晶内の屈折率の変化量を回復させることが可能となることを見出した。この点に関しては、後述する熱レンズ結晶等も同様である。
ここで、屈折率の変化量が初期の変化量の10%以下に低下するまでの時間を、PR飽和時間とすると、PR飽和時間より短い周期で、PR結晶内に入射する光の強度、波長、偏光方向、及び光強度分布のうち少なくとも一つを変化させることが望ましい。これによって、従来から課題となっていた騒音や、消費電力の増加を引き起こす、回転機構や大掛かりな振動機構を必要とせず、スペックルノイズの十分な低減効果を持続的に得ることが可能となる。
また、PR効果は、PR結晶に入射するコヒーレント光の強度が大きいほど、高速な屈折率の変化を引き起こし、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られるが、その分だけPR飽和時間が短くなるため、用途に応じてPR結晶に入射するコヒーレント光の強度を調整することが望ましい。
また、PR結晶とコヒーレント光との相互作用距離(PR結晶の入射面から出射面までの距離)が長いほど、PR飽和時間が長くなり、同時にスペックルノイズの低減効果も大きくなる。
また、PR結晶は、PR効果を発現するレーザ光の波長や、PR効果による屈折率の変化量及び応答速度などが異なるため、用途(入射レーザ出力、波長、光強度分布、必要な応答速度等)に応じて、スペックルノイズの十分な低減効果が得られる最適なPR結晶を選定することが望ましい。以下に、PR結晶102に好適に用いられるPR結晶の例について具体的に説明する。
まず、LiNbO3やLiTaO3のような強誘電体は、可視領域から紫外領域までの光に対してPR効果を発現し、非常に大きな屈折率の変化を発生させるPR結晶である。また、LiNbO3は、他のPR結晶に比べて非常に安価であり、画像表示装置として用いる場合に特に望ましい。さらに、LiNbO3にFeやMnイオンを添加することにより、LiNbO3は、より高速なPR効果を発現するため、FeやMnイオンを添加しない場合より、スペックルノイズの低減効果を高めることが可能となる。
ここで、LiNbO3にFeを添加する場合、添加濃度が高いほど、屈折率の変化量が大きくなるが、PR飽和時間が短くなり、一方、添加濃度が低いほど、屈折率の変化量が小さくなるが、PR飽和時間が長くなる。例えば、PR飽和時間が0.1μs以下になると、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、波長、偏光方向、及び光強度分布を10MHz以上の周波数で変化させることが必要となり、変調に複雑な構成が必要となる。
このため、Feの添加濃度は、0.1%未満であることが望ましく、この場合、PR飽和時間が1μsを越えるため、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、波長、偏光方向、又は光強度分布を変動させる変動部をより簡単な構成で実現することができる。また、Feの添加濃度は、0.002%以上であることが望ましく、0.004%以上であることがより望ましく、これにより、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られる。さらに、Feの添加濃度は、0.01%以上であることが望ましく、これにより、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、十分な屈折率の変化量が得られる。
また、Feの添加濃度をX%とすると、入射するレーザ光の強度を、−0.1922・ln(X)−0.1963(W/cm2)以上とすることにより、スペックルノイズの更に大きな低減効果を得ることが可能となる。但し、レーザ光の強度を23MW/cm2未満とすることが望ましく、これによって、LiNbO3のPR効果の経時的な劣化を抑制し、2万時間以上の長寿命化が可能となる。さらに、レーザ光の強度を11MW/cm2未満とすることがより望ましく、これによって、6万時間以上の長寿命化が可能となる。
次に、PVK:DMNPAA:ECZ:TNF、PVK:TNF:DMNPAA:BisCzPR系などの有機材料は、安価で容易に作製できるPR結晶であり、赤の波長域の光に対してPR効果を発現し、屈折率の変化量が大きいため、スペックルノイズのより大きな低減効果を得ることが可能となる。また、上記の有機材料からなるPR結晶は、PR飽和時間もmsオーダーであり、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、波長、偏光方向、又は光強度分布をkHzオーダーの周波数で変動させる変動部を簡単な構成で実現することができるとともに、スペックルノイズの低減効果を持続させることが可能となる。
また、上記の有機材料からなるPR結晶を用いる場合、入射するレーザ光の強度は、入射面の少なくとも一部で1.2W/cm2以上であることが望ましく、この場合、よりスペックルノイズ低減効果が増大し、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られる。また、入射するレーザ光の強度は、入射面の少なくとも一部で3.1W/cm2以上であることがより望ましく、これによって、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、スペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られる。また、経時劣化によるPR効果の低下を抑制するため、入射するレーザ光の強度は、200kW/cm2未満であることが望ましい。
次に、GaAs、GaP、GaN、InPのような化合物半導体や、Bi12SiO20(BSO)、Bi12TiO20(BTO)などのシレナイト系結晶も、可視光に対してPR効果をもつPR結晶であり、LiNbO3結晶に比べて、発生する屈折率の変化量は小さいが、応答速度がmsオーダーからμsオーダーまでの範囲にあり、非常に早いため、特に、計測装置、及び露光装置の光源として用いる場合に、スペックルノイズの低減効果が大きい。
また、入射するレーザ光に対して、PR結晶102の入射端IE(入射面)及び出射端EE(対向面)における反射率が2%以下となるように、入射端IE及び出射端EEは、光学研磨されるとともに、入射端IE及び出射端EEに反射防止膜を形成していることが望ましい。これにより、光の利用効率を高めることが可能となる。
但し、PR結晶102の出射端EEでは、レーザ光の一部を反射させることが望ましく、少なくとも入射端IEより出射端EEでの反射率が高いことが望ましい。これにより、PR結晶102での光損失を最小限に抑え、且つ、PR結晶102内の屈折率の変化の影響によって光強度分布を変動させたレーザ光の一部が、出射端EEにおいて反射し、再びPR結晶102内の屈折率の変化を励起するため、屈折率の変化量が増大する。つまり、屈折率の変化が停止することなく、長時間変動し続けるので、スペックルノイズのより大きな低減効果がより長く持続的に得られる。具体的には、出射端EEでの反射率は、1%以上7%未満であることが望ましく、これによって、光の利用効率の低下を抑えながら、スペックルノイズの低減効果を増大させることが可能となる。
また、PR結晶102の入射端IE及び出射端EE以外の側面は、入射したレーザ光をPR結晶102内に全反射させるようにすることが好ましい。この場合、レーザ光が側面で反射されることにより、PR結晶102内の干渉効果が増加し、屈折率の変化が増大するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。
また、PR結晶内では、入射するレーザ光自身の光強度分布により屈折率の変化が発生し、出力が同じでも、結晶内の光強度勾配が急であるほど、大きな屈折率差が高速に変化する。これにより、スペックルノイズの低減効果も増大する。このため、PR結晶102の入射端IEにおける光強度勾配が大きいことが望ましい。これを満たすため、本実施の形態では、例えば、集光レンズ103を用いて、PR結晶102の入射端IE付近に集光点を有するように、レーザ光を集光している。
この場合、レーザ伝搬方向LPに垂直な面内でレーザ光の強度が最大となる位置から、そのレーザ光の強度の最大値の1/e2となる最寄の位置までの距離をビーム径とすると、PR結晶102の入射端IEにおけるビーム径が100μm以下になり、大きな屈折率差が高速に変化するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。この結果、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズの低減が可能となる。
但し、ビーム径が小さすぎると、出射光のNAが大きくなりすぎるために、光利用効率が低下してしまう。このため、ビーム径は、2μm以上であることが望ましい。また、PR結晶102の入射端IEすなわち入射面におけるビーム径が50μm以下の場合は、PR結晶102の出射端EEすなわち出射面を、曲率半径60mm以下の凸面に成形し、出射光の発散を軽減することが望ましく、これによって、より光学系の小型化が可能となる。
更に、PR結晶内において入射するレーザ光の光強度分布が変化することにより、PR結晶内の屈折率の変化をより増大させ、スペックルノイズのより大きな低減効果を得ることが可能である。このため、本実施の形態では、例えば、振動部105によりPR結晶102をレーザ伝搬方向LPに直交する方向に振動させ、レーザ光の入射位置を変動させている。具体的には、PR結晶102は、レーザ伝搬方向LPに直交する方向に振動可能に支持され、振動部105としては、例えば、一軸のみ振動する安価な振動素子、例えば、圧電素子を用いることができる。
ここで、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズの低減が可能となるため、レーザ伝搬方向LPに直交する方向にPR結晶102へのレーザ光の入射位置をビーム径の20%以上変動させることが望ましい。また、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、十分な屈折率の変化となるために、レーザ伝搬方向LPに直交する方向にPR結晶102へのレーザ光の入射位置をビーム径の40%以上変動させることがより望ましい。
なお、ビーム径が小さいほど、必要な振幅も小さくなることは言うまでも無く、例えば、10μm程度のビーム径に集光したレーザ光を入射させる場合、上記理由により、レーザ伝搬方向LPに直交する方向に2μm以上、又は4μm以上の振幅で、PR結晶102へのレーザ光の入射位置を振動させることが望ましい。また、振動させる部材は、PR結晶102に特に限定されず、例えば、集光レンズ103に振動を与える場合、必要な振動の幅を更に小さくすることが可能となる。
上記のように、本実施の形態に用いられる振幅は、上記の特許文献1において拡散板に与える振幅に比べて、10分の1程度と小さいため、振動による騒音や消費電力の増加は、ほとんど発生しない。この振動による騒音や消費電力の増加を抑制するため、本実施の形態での振動の振幅は、40μm未満であることが望ましい。また、特許文献1にて用いられる拡散板等では、入射位置が移動している間のみ、スペックルノイズ低減効果が得られるが、本実施の形態のPR結晶102の場合は、入射位置が移動した後、振動が止まっても、一定時間スペックルノイズ低減効果が持続する。このため、本実施の形態では、特許文献1に示すような高速な振動を必要としない。また、安価な振動素子を用いた一軸のみの振動では、振幅が最大となる位置で、入射位置の移動速度が低下してしまうため、拡散板を用いる場合は、スペックルノイズの低減効果が減少するが、本実施の形態のPR結晶102を用いる場合は、この問題も軽減される。
また、下記のように、まったく機械的な動作機構を必要としない方法を用いることでも、PR結晶102内の屈折率の変化をより増大させることが可能である。この場合、振動部105を省略し、PR結晶102を所定位置に固定して保持することができるので、装置の構成をより簡略化することができる。
まず、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光の光強度分布を変動させるようにしてもよい。例えば、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光を横マルチモードのレーザとし、レーザ光源101は、時間的にそのモードを変化させる。また、レーザ光源101として、複数のレーザ光源を用い、複数のレーザ光源からの光をPR結晶102内の同一箇所に入射し、少なくとも一つのレーザ出力を時間的に変動させてもよい。これによって、騒音や消費電力増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
また、PR結晶102の持つ電気光学効果を利用し、PR結晶102に所定の電圧を印加することにより、PR結晶102内のレーザ光の光強度分布を変化させてもよい。これによっても、騒音や消費電力増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。この場合、LiNbO3結晶のように、電気光学定数が大きな結晶を用いることがより望ましい。
また、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光の強度を変動させるようにしてもよい。図2は、コヒーレント光の出力変動の一例を示す図である。コヒーレント光の出力変動としては、図2に示すようにレーザ光の強度が変動し、変動幅W1が平均強度A1の10%以上となることが望ましく、これにより、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、変動幅W1が平均強度A1の30%以上であることがより望ましく、これによって、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズ低減が可能となる。なお、コヒーレント光の出力変動の周期は、必ずしも周期的である必要は無く、図2に示す例では、1回目の出力変動期間C1は、2回目の出力変動期間C2と略同一であるが、3回目及び4回目の出力変動期間C3、C4とは大きく異なっており、3回目の出力変動期間C3は、4回目の出力変動期間C4と異なっている。
また、例えば、集光レンズ103の代わりに熱レンズ効果をもつ結晶を用いて、且つ、レーザ光源101を間欠駆動させることにより、レーザ光の強度を変動させるようにしてもよい。これにより、熱レンズによるレンズパワーがレーザ光の出力変動に依存して変動し、PR結晶102内のビーム径が変動するため、スペックルノイズの低減効果が持続する。これによっても、騒音や消費電力増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
この場合、レーザ光の出力が変動し、レーザ光の強度の変動幅が平均強度の5%以上となることが望ましく、これによって、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られ、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、レーザ光の強度の変動幅が平均強度の15%以上となることがより望ましく、これによって、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズ低減が可能となる。
また、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光の偏光方向を変動させるようにしてもよい。図3は、本発明の実施の形態1に示す光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。図3に示す例では、PR結晶102として、LiNbO3結晶のようにPR効果による屈折率の変化が偏光に依存するPR結晶を用い、レーザ光源101とPR結晶102との間(集光レンズ103とPR結晶102との間)に、液晶801、802からなる液晶デバイス800を挿入し、PR結晶102に入射するレーザ光の偏光を回転させて偏光方向を時間的に変動させている。この場合、騒音や消費電力の増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
また、液晶デバイス800は、少なくとも2つのセル(2つの液晶801、802)からなり、それぞれで偏光の回転角が一致していないことが望ましく、これによって、より効果的なPR効果の回復が可能となる。なお、液晶によるレーザ光の偏光方向の変動方法については、液晶が1セルでも、多セルでも、偏光の回転角が10°以上の幅で変動すればよい。また、この場合の変動周期も、上記の出力変動と同様の周期であることが望ましい。
また、熱レンズ効果をもつ結晶を用いてレーザ光の光強度分布を変動させるようにしてもよい。図4は、コヒーレント光の光強度分布の変動の一例を示す図である。図4に示すように、ある瞬間のPR結晶102入射面での光強度分布が領域901であり、別の瞬間の光強度分布が領域902である場合、2つの領域903、904は、両者が重ならない領域となる。
ここで、2つの領域903、904のうち少なくとも一方の面積が、全体出力の面積(領域901、902の面積)の30%以上となることが好ましい。すなわち、領域901〜904の面積をA1〜A4とすると、A3/A1>0.3又はA4/A2>0.3となることが好ましい。この場合、レーザ光の光強度分布が変動するため、スペックルノイズの低減効果が持続し、上記と同様の効果を得ることができる。また、この場合の変動周期も、同様の理由により上記の変動周期と同様であることが望ましい。なお、光強度分布を変動する方法は、熱レンズ効果をもつ結晶を用いる方法に特に限定されず、例えば、複数のレーザ光源を用いて出力比を変動させるようにしてもよい。
また、PR結晶102として、LiNbO3結晶を用いる場合、LiNbO3結晶を高温に加熱すると、内部のPR効果が減少するため、LiNbO3結晶は、100℃以下で使用することが望ましく、結露によるビームの散乱を防止するため、0℃以上で使用することが望ましい。
また、PR結晶102として、熱レンズ効果とPR効果とを共に発現する結晶を用いても同様の効果が得られる。例えば、LiNbO3などは、可視光から紫外光までの光を入射する場合、入射光のごく一部を吸収して熱レンズ効果を発現するPR結晶である。この場合も、レーザ光源101からの出力を変動させるだけで、スペックルノイズの低減効果が持続する。また、PR結晶102とレーザ光源101との間に熱レンズ効果を発現する結晶を別途設ける必要が無くなる。なお、熱レンズ効果を発現するPR結晶を用いる場合にも、更に、熱レンズ効果又はPR効果を増大させるため、別の熱レンズ結晶又はPR結晶を併用してもよい。
また、レーザ光源101として、出力変動にともなって、出射光のビーム径や光強度分布を変動させるレーザ光源を用いてもよい。この場合も、レーザ光源101から出力変動のあるレーザ光を発振させるだけで、スペックルノイズの低減効果が持続する。また、PR結晶102とレーザ光源101との間に熱レンズ効果を発現する結晶を別途設ける必要がなくなるため、部品点数削減による低コスト化と、装置の小型化とが可能となる。
また、電気光学(EO)素子及び音響光学(AO)素子のうち少なくとも一方からなる偏向素子をコヒーレント光の光軸上に配置し、偏向素子によりコヒーレント光の入射位置を変動させるようにしてもよい。図5は、本発明の実施の形態1に示す光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
図5に示すように、例えば、電界によって屈折率が変化するLiNbO3などの電気光学素子106(及び/又は、応力により屈折率が変化する音響光学素子)をレーザ光源101とPR結晶102の間に設置し、レーザ光の偏向を変えて、PR結晶102内での光強度分布が変化する程度の幅でレーザ光を走査させてもよい。これにより、スペックルノイズの低減効果を持続させることが可能となる。
この場合も、前述の理由により、PR結晶102に入射する位置をビーム径の20%以上変動させることが望ましく、40%以上変動させることがより望ましい。通常、電気光学素子又は音響光学素子のみによって大きな屈折率の変化を発生させることは難しいが、図5に示す例では、電気光学素子又は音響光学素子による小さな変動が、PR結晶102内で大きく複雑な屈折率の変化を発生させるため、スペックルノイズを低減する効果が大きい。
また、一つのPR結晶102に代えて、互いに異なるフォトリフラクティブ効果を発現する複数のPR結晶を用いてもよい。図6は、本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。図6に示す例では、レーザ光源101aは、レーザ光の強度を変動させ、レーザ光源101aから出射してPR結晶102aを通過した光が、PR結晶102aと異なる別のPR結晶102bへ入射する。この場合、PR結晶が一つの場合より、スペックルノイズの低減効果がより増大する。なお、一つ目のPR結晶102aと二つ目のPR結晶102bとは、結晶の材料組成及び形状のうち少なくとも一方が異なり、互いに異なるフォトリフラクティブ効果を発現することが望ましい。例えば、一つ目のPR結晶102aとして、msオーダーの応答速度の遅い材料(PR飽和時間が長い材料)を用い、二つ目のPR結晶102bとして、屈折率の変化量が大きな材料を用いることが望ましく、これにより、スペックルノイズの大きな低減効果を持続的に得ることが可能となる。
再び、図1を参照して、PR結晶102の入射端IE及び出射端EEのうち少なくとも一方に細かい凹凸をつけることが好ましく、この場合、スペックルノイズの軽減と同時に、光強度の均一化も可能となる。例えば、入射端IE及び出射端EEのどちらかを数μmオーダー以下の細かい凹凸面(砂面)とすることで、レーザ光の光強度が均一となる。また、出射端EEをマイクロレンズアレイとなるように加工したり、別の材質で形成したマイクロレンズアレイを入射端IE又は出射端EEに張り合わせるようにしたりしてもよい。この場合、被照射面における照射領域を任意に調節し、光利用効率を高めることが可能となる。
また、入射端IEに凹凸面を設けることが好ましく、この場合、PR結晶102に入射するレーザ光の光強度分布がより細かいパターンとなり、光強度勾配も急になるため、PR効果による屈折率の変化が増大する。また、入射端IE又は出射端EEにμmオーダーの細かい凹凸を設けた複数枚のPR結晶を重ねて用いることが好ましく、この場合、1枚目のPR結晶による光強度変動が2枚目のPR結晶による光強度変動を増加させるため、スペックルノイズの軽減効果が増大する。
上記の各方法を用いた場合、機械的な動作機構を必要とせず、振動や消費電力の増加を低下させない。但し、屈折率の変化を回復させるために、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布を変動させる場合、本光源装置が用いられる装置の観測時間、露光時間、計測時間等との関係を考慮して、強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期を定めることが望ましい。
例えば、計測装置などに用いる場合で、写真フィルム、CCDカメラ、又はCMOSカメラなどを用いて画像を撮影する場合は、撮影時間内のレーザ光の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であればよい。また、露光装置として用いる場合は、露光時間内の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であればよい。つまり、レーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期は、少なくとも撮影時間以下、又は露光時間以下であることが望ましく、変動周期の整数倍が、撮影時間、又は露光時間となることが望ましい。
また、動画撮影などの実時間観測の場合、あるいは目視で均一性が認められる程度が必要な場合は、レーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期は、最低限として、人間の目の応答速度30Hz程度に対応する30周期/秒程度以上、すなわち、30Hz以上であることが望ましいが、ちらつきを減少させるためには、60Hz以上であることがより望ましく、数十cmからの近距離からの視聴でも、スペックルノイズの影響が軽減できるように、120Hz以上であることがさらに望ましく、長時間の視聴でもスペックルノイズの影響を軽減できるように、300Hz以上であることが最も望ましい。
また、動画のフレーム周波数を300Hz以上とする場合は、そのフレーム周波数の整数倍又は5倍以上の周波数で、レーザ光の強度、偏光方向、又は光強度分布を変動させることが望ましい。これによって、1フレーム内の光強度が面内で均一となるため、画質の低下を抑制することができる。
ここで、上記の変動周期としては、必ずしも完全に周期的である必要は無く、例えば、30Hzの場合、すべての周期が完全に30Hzに一致する場合に特に限定されず、30Hz未満の周期又は30Hzより高い周期を含むものであっても、基本周波数が30Hzであればよく、他の周波数も同様である。例えば、レーザ光の強度を変動させる場合、60Hz以上の周波数で10%以上の変動幅が必要な変動とは、少なくとも1/60秒間ごとの変動幅が10%以上である変動であればよい。更に、光強度分布や偏光方向を変動させる、望ましい条件に関しても、同様のことが言えることは言うまでもない。
また、本光源装置では、拡散された光が過度に拡大しないように、フィールドレンズ104を用いている。この場合、過度の拡大を抑制することで、画像表示装置、計測装置、又は露光装置として用いる場合に、装置の小型化が可能となる。また、PR結晶102に入射するビーム径が小さく、PR結晶102の厚みが薄いほど、ビーム品質の低下を軽減することが可能となるため、PR結晶102以降の光学系の小型化が可能となる。
このため、PR結晶102の厚みは、2mm以下であることが望ましく、小型プロジェクタ用の光源として用いることが可能なサイズに、光源装置を小型化することが可能となる。この場合、PR結晶102としては、薄くても十分なスペックルノイズ低減効果を実現する強誘電体や有機材料からなるPR結晶を用いることがより望ましい。また、LiNbO3結晶を用いる場合は、FeやMnイオンを添加してPR効果によるスペックルノイズの低減効果をより大きくさせることが望ましい。また、前述のようにPR結晶102に振動を与えるなど、屈折率の変化を増大させる方法を併用することが更に望ましい。
また、PR結晶から出射するレーザ光の光軸上に導光部材を配置し、この導光部材によりレーザ光の拡散を抑制するようにしてもよい。図7は、本発明の実施の形態1による光源装置の他の一例として、導光体を用いた光源装置の構成を示す概念図である。図7に示す例では、導光体201が、PR結晶102から出射するレーザ光の光軸上に配置される。導光体201は、ロッドインテグレータ等から構成され、光の拡散を抑制する。この場合、液晶デバイスなどの空間変調素子を用いたレーザプロジェクタ用の光源に、本光源装置を用いるときに、光利用効率を高めることができる。
また、導光体201を省略するとともに、PR結晶102に代えて、レーザ伝搬方向LPに長く、且つレーザ伝搬方向LPに垂直な断面積が小さいPR結晶を用いてもよい。この場合、PR結晶の側面にてレーザ光を全反射させることにより、PR結晶自身がロッドインテグレータとしての役割を果たすことも可能である。また、PR結晶長を長くすることにより、コヒーレント光が受けるPR効果も増大し、スペックルノイズの低減効果も増す。
更に、ロッドインテグレータの断面積を細くし、側面でのコヒーレント光の反射を増加させることにより、PR結晶内の干渉効果が増加し、屈折率の変化が増大するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。ここで、ロッドインテグレータの断面積は、9mm2以下とすることが望ましい。この場合、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、ロッドインテグレータの断面積は、1mm2以下にすることが望ましい。この場合、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、スペックルノイズの低減が可能となる。
また、細く長いPR結晶からなる導光体として、PR結晶からなるマルチモードファイバを用いてもよい。PR効果を発現する材料を添加したマルチモードファイバを用いることで、低コスト化が可能となる。また、取り回しがよく、振動や熱など、外部環境の影響を受けにくい光学系を構成することが可能となる。また、前述の通り、ロッドインテグレータ、又はマルチモードファイバの入射端付近にビームを極力絞って入射させることが望ましい。また、PR結晶と導光体(ロッドインテグレータ、マルチモードファイバ)とを一体化する場合、光学部品点数の削減による低コスト化及び小型化に加えて、レーザ光が通過する端面の数を削減することができるので、端面反射による光損失の低減も可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、画像表示装置、計測装置、露光装置、及び照明装置等に共通して用いられ、熱レンズ効果を用いて、それらの装置において課題となるスペックルノイズ低減を可能とする、光源装置について示す。
図8は、本発明の実施の形態2の光源装置の構成の一例を示す概念図であり、本光源装置は、少なくとも、レーザ光源101aと、そこから発振される、所定の波長を有するレーザ光に対して熱レンズ効果を示す熱レンズ結晶501とからなり、さらに、導光体201を備える。レーザ光源101aから出射されたレーザ光(コヒーレント光)を熱レンズ結晶501に入射することにより、熱レンズ結晶501において、レーザ光の一部が吸収され、発生する熱による温度勾配により、屈折率分布が引き起こされる。更に、レーザ光源101aがレーザ光の強度を時間変動させることにより、発生する温度分布と、それによる屈折率分布とが変化するため、被照射面の干渉パターンを変動させることが可能となる。
この熱レンズ効果は、入射するレーザ光のビーム径を絞ることにより、より高速に干渉パターンを変動させることが可能であり、出力変動のみで屈折率の変化が持続するため、単純な構成でスペックルノイズを低減させることが可能となる。また、出力変動が大きいほど、屈折率の変化量が大きくなるため、本実施の形態では、レーザ光の強度の変動幅が平均強度の30%以上であることが好ましく、これによって、液晶ディスプレイ型画像表示装置において、スペックルノイズの十分な低減効果を得ることが可能となる。また、レーザ光の強度の変動幅は、平均強度の80%以上であることがより好ましく、これによって、プロジェクタ型画像表示装置において、スペックルノイズの十分な低減効果を得ることが可能となる。
また、熱レンズ効果は、ビームパス部分の温度分布が安定すると、スペックルノイズの低減効果を失うため、温度分布が安定する期間より短い時間周期で、出力を変動させることが望ましく、これによって、スペックルノイズのより大きな軽減効果を得ることが可能となる。
また、レーザ光と熱レンズ結晶501との相互作用長を長くするほど、より大きな屈折率の変化を発生させることが可能となり、スペックルノイズの低減効果も大きくなる。また、温度分布が安定するまでの時間を長くすることが可能となり、より周期の長い出力変動でも、大きなスペックルノイズ低減効果を持続させることが可能となる。
更に、熱レンズ結晶501内に入射するレーザ光の光強度分布が変化することにより、熱レンズ結晶501内の屈折率の変化(温度分布変化)をより増大させることが可能であり、例えば、実施の形態1と同様に、振動部により熱レンズ結晶501を振動させ、入射位置を変動させてもよい。
この場合、ビーム直径の40%に相当する距離以上の振幅で、ビーム中心を変動させることが望ましく、これにより、スペックルノイズの低減効果が増大し、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズの低減が可能な屈折率の変化となる。更に、ビーム直径の70%に相当する距離以上の振幅で、ビーム中心を変動させることがより望ましく、これにより、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズを低減することが可能な屈折率の変化が可能となる。
また、熱レンズ結晶501として、2光子吸収特性を有する熱レンズ結晶を選定することにより、より入射ビームの中心付近に大きな屈折率勾配を形成することが可能となり、また、出力変動による屈折率勾配の変化量も大きくなる。このため、より少ない光吸収量でも、スペックルノイズの大きな低減効果を得ることが可能となる。
また、ビーム径が小さいほど、望ましい振幅も小さくて済むため、10μm程度のビーム径に集光したレーザ光を熱レンズ結晶501へ入射させることが望ましく、この場合、上記理由により、4μm以上の振幅となる振動を熱レンズ結晶501に与えることが望ましく、7μm以上の振幅となる振動を与えることがより望ましい。この程度の振幅の振動であれば、特別な加振装置を備えなくても、レーザ光源101を冷却するファン等の振動を熱レンズ結晶501に伝える等で十分達成することが可能である。本実施の形態において望ましい振幅は、特許文献1において拡散板に与える振動に比べて、100分の1程度と小さいため、騒音や消費電力の増加はほとんど発生しない。なお、消費電力の増加を抑制するため、本実施の形態における振動の振幅は70μm未満であることが望ましい。
また、下記のように、まったく機械的な動作機構を必要としない方法を用いることでも、熱レンズ結晶501内の屈折率の変化をより増大させることが可能である。例えば、図3に示す光源装置と同様に、熱レンズ結晶501として、LiNbO3結晶やLiTaO3結晶のように熱レンズ効果による屈折率の変化が偏光に依存する結晶を用い、レーザ光源101と熱レンズ結晶501との間に液晶デバイスなどを設置し、入射するレーザの偏光方向を時間的に変化させるようにしてもよい。
また、図5に示す光源装置と同様に、電界により屈折率が変化するLiNbO3などの電気光学素子や、音響光学素子をレーザ光源101と熱レンズ結晶501との間に設置し、レーザ光の偏向を変えて、熱レンズ結晶501内での光強度分布が変動する程度の幅でレーザ光を走査させ、熱レンズ結晶501に入射するレーザ光の光強度分布を変化させてもよい。通常、電気光学素子又は音響光学素子のみによって大きな屈折率の変化を発生させることは難しいが、本例では、小さな屈折率変動による変位が熱レンズ結晶501内で大きな屈折率の変化を励起するため、スペックルノイズを低減することが可能となる。また、音響光学素子を用いた場合についても、同様の効果が得られる。
これらの方法を用いた場合、機械的な動作機構を必要とせず、騒音や消費電力の増加の課題を発生させない。但し、屈折率の変化を増大させるため、出力変動や熱レンズ結晶501内に入射する光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変化を伴う場合は、本光源装置が用いられる装置の観測時間との関係を考慮して、強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期を定めることが望ましい。
例えば、計測装置などに用いる場合で、写真フィルム、CCDカメラ、又はCMOSカメラなどを用いて画像を撮影する場合は、撮影時間内のレーザ光の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であれば、高精度な計測が可能となる。また、露光装置として用いる場合は、露光時間内の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であれば、均一な露光が可能となる。つまり、レーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期は、少なくとも撮影時間以下、又は露光時間以下であることが望ましく、変動周期の整数倍が、撮影時間、又は露光時間となることが望ましい。
また、動画撮影などの実時間観測の場合、あるいは目視で均一性が認められる程度が必要な場合は、最低限として、人間の目の応答速度30Hz程度に対応する30周期/秒程度以上が好ましいが、ちらつきを減少させるためには、60周期/秒以上がより好ましく、数十cmからの近距離からの視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、120周期/秒以上がさらに好ましく、長時間の視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、300周期/秒以上が最も望ましい。さらに、動画のフレーム速度を速くしたい場合は、そのフレーム周波数の整数倍又は5倍以上の周波数で、レーザ光の強度、偏光方向、又は光強度分布を変動させることが好ましく、これによって、フレームごとの光強度分布が均一となり、画質の低下を抑制することが可能となる。
ここで、レーザ光の強度、偏光方向、又は光強度分布の変動は、まったく同様の変化が周期的に繰り返す必要はない。例えば、レーザ光の強度を変動させる場合を例とすると、60周期/秒以上で変動幅10%が必要な変動とは、少なくとも1/60秒間ごとの変動幅が10%以上である変動であればよい。更に、光強度分布や偏光方向を変動させる、望ましい条件に関しても、同様のことが言えることは言うまでもない。
また、液晶デバイスなどの空間変調素子を用いたレーザプロジェクタ用の光源に本光源装置を用いる場合、光利用効率を高めるため、実施の形態1と同様に、熱レンズ結晶501から出射されるレーザ光をロッドインテグレータ等の導光体201に入射してもよい。
また、導光体201を省略するとともに、熱レンズ結晶501に代えて、レーザ伝搬方向LPに長く、且つレーザ伝搬方向LPに垂直な断面積が小さい熱レンズ結晶を用いてもよい。この場合、熱レンズ結晶の側面にてレーザ光を全反射させることにより、熱レンズ結晶自身がロッドインテグレータとしての役割を果たすことも可能である。また、熱レンズ結晶長を長くすることにより、コヒーレント光が受ける熱レンズ効果も増大し、スペックルノイズの低減効果も増すとともに、熱容量が増大し、温度変化(屈折率の変化)が飽和に達するまでの時間が長くなる。また、細く長い熱レンズ結晶からなる導光体として、熱レンズ結晶からなるマルチモードファイバを用いてもよい。
また、ロッドインテグレータの断面積は、3mm2以下とすることが望ましい。この場合、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、ロッドインテグレータの断面積は、0.5mm2以下にすることが望ましい。この場合、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、スペックルノイズの低減が可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、スペックルノイズを低減する画像表示装置について示す。なお、本実施の形態に用いられる光源装置は、主に画像表示装置用の光源として用いられるが、照明装置等にも応用可能である。
図9は、本発明の実施の形態3の画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。図9に示すように、本実施の形態の画像表示装置は、複数のレーザ光源301a、301b、301c、複数のダイクロイックミラー302a、302b、302c、PR結晶303、導光体304及び空間変調素子305を備え、複数のレーザ光源301a、301b、301c、複数のダイクロイックミラー302a、302b、302c、PR結晶303及び導光体304から光源装置が構成される。
複数のレーザ光源301a、301b、301cとして、例えば、レーザ光を用いた画像表示装置用光源として用いる場合に、その画像の色再現性を高めることが可能となる、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)のレーザ光源を用いた場合を例とし、以下に示す。なお、レーザ光源の数及び波長は、以下の例に特に限定されず、2個又は4個以上のレーザ光源を用いる等の種々の変更が可能である。
赤色レーザ光源301a、緑色レーザ光源301b、及び青色レーザ光源301cは、それぞれ赤、緑、青(以降、RGBという)のレーザ光を出射する。三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー302a、b、cを用いて重ね合わされ、PR結晶303に入射する。ここで、ダイクロイックミラー302aは、少なくともレーザ光源301aから出射するレーザ光を反射し、ダイクロイックミラー302bは、レーザ光源301aから出射するレーザ光を透過し、レーザ光源301bから出射するレーザ光を反射する。また、ダイクロイックミラー302cは、レーザ光源301a、301bから出射するレーザ光を透過し、レーザ光源301cから出射するレーザ光を反射する。
本実施の形態では、三色のレーザ光を一つのPR結晶303内に入射し、PR結晶303内の屈折率の変化によりRGBの光を拡散させる。例えば、拡散させたRGBの光は、導光体304に入射した後、空間変調素子305に入射し、スクリーン306に画像が投影される。この結果、光利用効率が高められ、より低消費電力な画像表示装置を実現することが可能となる。
ここで、実施の形態1で示したように、PR結晶303及び導光体304に代えて、PR結晶となる材料を混入させた導光体を用いてもよい。この場合、実施の形態1と同様に、部品点数の削減効果によって、低コスト化が可能となる。また、PR結晶303及び導光体304に代えて、厚みの薄いPR結晶を、空間変調素子305直近に設置する、または、空間変調素子305に貼り付けるようにしてもよく、この場合、画像表示装置全体をより小型化することが可能となる。
また、空間変調素子305は、例えば、液晶デバイスと偏光板とを組み合わせたものやDMD(デジタルミラーデバイス)素子などを用いることができる。図9では、透過型の空間変調素子について記載しているが、反射型であってもよい。
ここで、1つの空間変調素子にRGB三色の光を入射する画像表示装置では、表示画像の色再現性を高めるため、RGB三色の光を出射する方法としては、それぞれDuty33%以下のパルス駆動で、少なくとも一色のレーザ光の発振時間が別の少なくとも一色のレーザ光の発振時間と異なることが望ましい。更に、三色それぞれをDuty30%以下のパルス駆動とし、RGBの間に三色とも発振しない瞬間を設けることが望ましく、これにより、空間変調素子の時間応答性の悪さが引き起こす画像の乱れを軽減することが可能となる。
また、本実施の形態では、RGBそれぞれの波長のレーザ光に対してPR結晶303内に発生する屈折率の分布が異なるため、上記のように、PR結晶303に入射する光の波長が時間的に変化することは、PR結晶内の屈折率の変化を常に引き起こしつづけることになる。このため、RGB三色の光は、PR結晶303内の少なくとも一部において、重なっていることが特に望ましい。この場合、RGB三色の光をPR結晶303に入射することにより、RGB三色の光の各々が単独で入射した場合に比べて、スクリーン306におけるレーザ光の干渉パターンの時間変化を高速化させることができ、スペックルノイズを低減することができる。例えば、PR結晶303の出射端における、RGB三色の光のうちの第1のレーザ光(例えば、赤色レーザ光)と第2のレーザ光(例えば、青色レーザ光)との重なり面積が、第1又は第2のレーザ光の全面積の30%以上であることが好ましい。
但し、PR結晶303の入射面において、G(緑)の光強度が最も高い位置と、B(青)の光強度が最も高い位置とが、2μm以上ずれていることが望ましい。これによって、更にPR効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
また、同一のPR結晶303に入射する光のうち、最も波長が長い光の波長が、最も波長が短い光の波長の1.14倍以上となることが望ましく、この場合、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。この結果、液晶デバイスやDMD素子のような空間変調素子を用いたプロジェクタ型画像表示装置において、より望ましいスペックルノイズ低減効果を実現することが可能となる。また、最も波長が長い光の波長が、最も波長が短い光の波長の1.32倍以上となることがより望ましく、この場合、0.2インチ以下の小型の空間変調素子を用いたプロジェクタ型画像表示装置のスペックルノイズの低減も可能となる。
また、PR結晶303に入射する三色のレーザ光の光強度分布が時間的に変化することにより、PR結晶303内に発生する屈折率の変化が更に増加するため、RGBのレーザ光の少なくとも一つが、他の二つと異なる光強度分布でPR結晶303に入射することが望ましい。例えば、RGBのうち少なくとも一つが、他の二つと異なるビーム径であることが望ましい。また、RGBのうち少なくとも一つがマルチビームであり、PR結晶303の入射端におけるプロファイル(光強度分布)が、他の少なくとも一つと異なることが望ましい。また、PR結晶303内において、RGBのうち少なくとも一つが、他の少なくとも一つと異なるビーム中心(光軸)を有することが望ましい。これらによって、更にスペックルノイズ低減効果は大きくなる。
また、赤色レーザ光源301a、緑色レーザ光源301b、及び青色レーザ光源301cのうち少なくとも一つから出射されるレーザ光の強度の変動幅は、その平均強度の10%以上であることが好ましい。また、赤色レーザ光源301a、緑色レーザ光源301b、及び青色レーザ光源301cのうち第1のコヒーレント光源から出射されるレーザ光と、第1のコヒーレント光源と異なる第2のコヒーレント光源から出射されるレーザ光とは、光強度分布、偏光方向及び強度のうち少なくとも一つが異なることが好ましい。これらの場合、PR効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
また、本実施の形態の画像表示装置に用いられる光源装置を、照明装置用光源として用いる場合、複数の波長のレーザ光源を備えることが望ましく、この場合、任意の色合いの光を発生させる照明装置となる。
なお、本実施の形態では、画像表示装置用光源としてRGBのレーザ光源を用いた光源装置について示したが、レーザ光源の発振波長やレーザ光源の個数が異なっていても、同様の効果が得られることは言うまでもない。例えば、2つの光源から波長の異なる2つのレーザ光を出力したり、一つの光源から波長の異なる2以上のレーザ光を出力したりするようにしてもよい。但し、PR結晶303内の屈折率の変化を増加させるため、二つ以上のレーザ光源を用いることが望ましく、二種類以上の波長のレーザ光源を用いることが更に望ましい。
また、本実施の形態に用いられる光源装置が画像表示装置や照明装置として用いられ、目視で均一性が認められる程度が必要な場合、PR結晶303内に入射するレーザ光の光強度分布変動や波長変動の周期は、最低限として、人間の目の応答速度30Hz程度に対応する30周期/秒程度以上が好ましいが、ちらつきを減少させるためには、60周期/秒以上がより好ましく、数十cmからの近距離からの視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、120周期/秒以上がさらに好ましく、長時間の視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、300周期/秒以上が最も望ましい。また、スペックルノイズの低減のために、動画の1フレームとなる時間内に屈折率の変動が停止することがないPR結晶を用いることが望ましい。
また、本実施の形態では、1つの空間変調素子305を用いた画像表示装置について示したが、PR結晶303を透過した三色の光を分離し、それぞれ別の空間表示素子に入射した後、クロスプリズム等で再び三色の画像を結合してもよいことは言うまでもない。また、本実施の形態では、PR結晶を用いた例について示したが、実施の形態2と同様に、熱レンズ結晶を用いてもよく、熱レンズ結晶の場合も、波長の異なる光を同一の熱レンズ結晶内に入射し、少なくとも一つの波長の光強度を変動させることによって、屈折率の変動が停止することなく変化し続けるため、スペックルノイズ低減効果が増大する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、観測者の網膜上に発生するスペックルノイズを低減するスクリーン部材を用いた画像表示装置について示す。図10は、本発明の実施の形態4による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
図10に示すように、本実施の形態の画像表示装置は、プロジェクタ401及びPRスクリーン402を備え、レーザ光源等のコヒーレント光源を用いたプロジェクタ401から出射する光を、PR効果を発現するスクリーン部材であるPRスクリーン402に照射する。プロジェクタ401は、内部のPR結晶を省略する点を除き、上記の実施の形態1、2又は3と同様に構成された光源装置を備え、光源装置は、赤、緑、青のレーザ光を出射するとともに、少なくとも一つのレーザ光の光強度分布及び偏光方向のうち少なくとも一つを変動させる。PRスクリーン402は、PR結晶を含む表示層402aを備え、例えば、従来通りのスクリーン上にPR結晶からなる表示層を形成したり、PR結晶からなる粒子を含む表示層をスクリーン上に塗布したりすることにより、製造されたものである。
PRスクリーン402は、プロジェクタ401と観測者の網膜403との間の光路に設置され、PRスクリーン402がPR効果を発現することにより、観測者の網膜403上に発生する干渉パターンであるスペックルノイズを低減することが可能となる。また、スクリーン上でPR効果を発現することにより、画像表示装置としての視野角の拡大も可能となる。
また、プロジェクタ401として、レーザ走査型のレーザプロジェクタを用いる場合、本実施の形態では、スペクトルノイズの低減が難しいレーザ走査型のレーザプロジェクタのスペクトルノイズ低減も可能となる。レーザ走査型のプロジェクタは、特に消費電力が小さいプロジェクタとして期待されるが、スペクトルノイズの低減が特に難しく、大きな課題となっていたため、本実施の形態の効果はより大きい。また、プロジェクタ401として、空間変調素子を用いて画像を形成するプロジェクタを用いてもよいことはいうまでも無い。この場合は、高輝度なプロジェクタを実現することが可能となる。
また、本実施の形態では、空間変調素子やレーザ走査装置を備えるプロジェクタを用いることによって、PRスクリーン402上の光強度分布は、動画の再生と共に激しく変動するため、屈折率の変化量も増加する。この結果、観測者の網膜403上に発生する干渉パターンを絶えず変化させることができるので、無数の干渉パターンを重ね合わせて平均化したような効果を得ることができ、スペックルノイズを低減することが可能となる。
なお、干渉パターンの変化が止まる瞬間があれば、その分だけ低減効果は低下するが、本実施の形態では、干渉パターンの変化が止まることなく変動し続けることが望ましく、例えば、画像表示装置では、動画1コマ中に複数パターンの干渉パターンが重なり合うことにより、スペックルノイズの低減効果が大きくなる。
また、本実施の形態では、プロジェクタ用のスクリーンとしてPRスクリーン402を用いた例について示したが、例えば、液晶パネルの表面にPR結晶からなる層を備えた液晶ディスプレイや、スクリーンの表面又は裏面にPR結晶からなる層を備えたリアプロジェクションディスプレイについても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
但し、これらの用途にPR結晶からなる層を用いる場合、PR効果を発現する層の厚みが厚すぎると、画像の鮮明さが低下するため、PR効果を発現する層の厚みは、2mm以下とすることが望ましく、これにより、スクリーンから3m程度離れた位置から画像を見た場合に、鮮明な画像を得ることが可能となる。また、1m程度離れた位置から画像を見た場合に、鮮明な画像を得ることが可能となるためには、1mm以下とすることが望ましく、携帯用画像表示装置として用いた場合においても、鮮明な画像を表示することが可能となるためには、0.5mm以下とすることが望ましい。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2にて示した光源装置と同様に構成された光源装置を用いた画像表示装置及び照明装置について示す。図11は、本発明の実施の形態5による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
図11に示すように、液晶表示装置706は、空間変調素子である液晶表示パネル707と、液晶表示パネル707を背面側から照明するバックライト照明装置701とを備え、液晶表示パネル707は、偏光板708及び液晶板709から構成され、バックライト照明装置701は、レーザ光源702、導光部703及び導光板705から構成される。
バックライト照明装置701の光源であるレーザ光源702は、実施の形態1又は実施の形態2の光源装置と同様に構成され、少なくともR(赤)、G(緑)、B(青)のレーザ光をそれぞれ出射するレーザ光源を備える。
ここで、赤色レーザ光源には、波長640nmのAlGaInP/GaAs系材料からなる半導体レーザ装置を、青色レーザ光源には、波長450nmのGaN系材料からなる半導体レーザ装置を用いている。また、緑色レーザ光源は、赤外レーザ光源と非線形光学結晶とから構成され、赤外レーザ光源から出射する赤外レーザを非線形光学結晶に入射し、赤外レーザの第2高調波である緑色レーザに変換し、これによって、緑色光を高効率で生成することが可能となる。
なお、各レーザ光源の構成は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能である。また、実施の形態1又は実施の形態2の光源装置を用いることなく、実施の形態4と同様に、画像表示装置の観測者の網膜上におけるレーザ光の干渉パターンを変化させるようにしてもよい。
バックライト照明装置701では、レーザ光源702からの3色のレーザ光をまとめて導光部703を介して導光板705に導き、導光板705の主面(図示せず)からレーザ光を出射する。液晶表示パネル707は、バックライト照明装置701から出射される光を利用して画像表示を行う。この結果、本実施の形態では、スペックルノイズが軽減され、色再現性に優れた、低消費電力の画像表示装置を実現することができる。
また、ここでは、レーザ光源を用いた画像表示装置として、透過型の液晶パネルを空間変調素子として用いた液晶表示装置について示したが、DMDミラーや反射型LCOSを空間変調素子に用いたプロジェクタなどの画像表示装置であっても、同様の効果を奏することは言うまでもない。また、バックライト照明装置701は、それのみで、実施の形態1又は実施の形態2の光源装置を用いた照明装置となり、レーザ光源702の代わりに所望の波長のレーザ光源を用いることにより、計測装置又は露光装置用の光源として用いることもできる。
また、本明細書にて、上記した各実施の形態に示した構成は一例であって、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることは言うまでもない。本発明では、被照射面における干渉パターンを絶えず変化させることにより、無数の干渉パターンを重ね合わせ、平均化したような効果を得ることができ、スペックルノイズを低減することが可能となる。
但し、干渉パターンの変化が止まる瞬間があれば、その分だけ低減効果は低下するが、干渉パターンの変化が止まることなく変動し続けることにより、例えば、画像表示装置では、動画のフレーム速度より速く干渉パターンが変化し、複数パターンの干渉パターンが重なり合うことにより、スペックルノイズの低減効果が大きくなる。
また、コヒーレント光を用いた画像表示装置として、被照射面における光強度分布を変動させる液晶デバイスのような空間変調素子を用いるが、これらは画像1コマごとにある光強度分布に固定させており、干渉パターンは一定であるため、スペックルノイズの低減効果は少ない。このため、画像表示用の空間変調素子とは別に、画像1コマの間も被照射面における干渉パターンを変化させ続ける手段を備えることでスペックルノイズを低減させる必要がある。
また、上記の説明では、主に画像表示の用途について説明したが、他の用途に本発明を適用することができることは言うまでもない。すなわち、本発明を用いることにより、レーザ光などのコヒーレント光を利用した各種の光学的な測定や画像の作成等において、測定誤差を解消し、また不鮮明な画像の画質を改良できる。従って、本発明は、レーザを利用した各種の測定機器、画像・映像表示機器、半導体基板上での回路作製に利用される露光・リソグラフ装置、照明装置などにきわめて有用である。
上記の各実施の形態から本発明について要約すると、以下のようになる。すなわち、本発明に係る光源装置は、コヒーレント光によって被照明体を照明する光源装置であって、前記コヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンを変動させるパターン変動部とを備え、前記パターン変動部は、前記コヒーレント光源と前記被照明体との間で且つ前記コヒーレント光の光路上に配設され、フォトリフラクティブ効果を発現するフォトリフラクティブ結晶と、前記フォトリフラクティブ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを変動させる変動部とを含む。
この光源装置においては、フォトリフラクティブ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つが変動されるので、フォトリフラクティブ結晶内の屈折率の変化量を回復させることができる。この結果、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、第1のフォトリフラクティブ効果を発現する第1のフォトリフラクティブ結晶と、結晶の材料組成及び形状のうち少なくとも一方が異なり、前記第1のフォトリフラクティブ効果と異なる第2のフォトリフラクティブ効果を発現する第2のフォトリフラクティブ結晶とを含むことが好ましい。
この場合、例えば、第1のフォトリフラクティブ結晶として、フォトリフラクティブ効果の低減に対する応答速度の遅い材料を用い、第2のフォトリフラクティブ結晶として、屈折率の変化量が大きな材料を用いることにより、スペックルノイズの大きな低減効果を持続的に得ることが可能となる。
前記光源装置は、前記フォトリフラクティブ結晶から出射する前記コヒーレント光の光軸上に配置され、前記コヒーレント光の拡散を抑制する導光部材をさらに備えることが好ましい。
この場合、コヒーレント光の拡散が抑制されるので、光利用効率を高めることができる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、Feを添加したLiNbO3からなる結晶であり、前記Feの添加濃度は、0.002%以上0.1%未満であることが好ましい。
この場合、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られるとともに、フォトリフラクティブ効果が低減するまでの時間が1μsを越えるので、変動部をより簡単な構成で実現することができる。
前記変動部は、前記フォトリフラクティブ結晶における前記コヒーレント光の入射位置を振動させる振動部を含み、前記振動部による振動の振幅は、前記フォトリフラクティブ結晶に入射するコヒーレント光のビーム径の20%以上であり、且つ40μm未満であることが好ましい。
この場合、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズの低減が可能となるとともに、振動による騒音や消費電力の増加を抑制することができる。
前記変動部は、前記コヒーレント光の光軸上に配置される偏向素子を含み、前記偏向素子は、電気光学素子及び音響光学素子のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
この場合、電気光学素子又は音響光学素子による小さな変動が、フォトリフラクティブ結晶内で大きく複雑な屈折率の変化を発生させるため、スペックルノイズを十分に低減することができる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、前記コヒーレント光が入射する入射面と、前記入射面に対向する対向面とに、前記コヒーレント光に対する反射防止膜を備え、前記入射面及び前記対抗面以外の面は、前記コヒーレント光を反射することが好ましい。
この場合、レーザ光の利用効率を高めることができるとともに、レーザ光が結晶内部で反射されることにより、フォトリフラクティブ結晶内の干渉効果が増加し、屈折率の変化が増大するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。
前記変動部は、前記コヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを30Hz以上の周期で変動させることが好ましい。
この場合、人間の目が応答できない程度にスペックルノイズを低減することができる。
前記コヒーレント光源は、波長の異なる複数のコヒーレント光を出射する複数のコヒーレント光源を含み、前記複数のコヒーレント光源は、前記複数のコヒーレント光を前記フォトリフラクティブ結晶に入射することにより、前記複数のコヒーレント光の各々が単独で入射した場合に比べて、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンの時間変化を高速化させることが好ましい。
この場合、一つのフォトリフラクティブ結晶内で複数のコヒーレント光が重なり、波長の異なる複数のコヒーレント光に対してフォトリフラクティブ結晶内に発生する屈折率の分布が異なるため、フォトリフラクティブ結晶の屈折率の変化を常に引き起こしつづけることが可能となり、スペックルノイズを持続的に低減することができる。
前記複数のコヒーレント光源のうち少なくとも一つから出射されるコヒーレント光の強度の変動幅は、その平均強度の10%以上であることが好ましい。
この場合、フォトリフラクティブ効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
前記複数のコヒーレント光源のうち第1のコヒーレント光源から出射されるコヒーレント光と、前記第1のコヒーレント光源と異なる第2のコヒーレント光源から出射されるコヒーレント光とは、光強度分布、偏光方向及び強度のうち少なくとも一つが異なることが好ましい。
この場合、フォトリフラクティブ効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
前記複数のコヒーレント光源から出射される複数のコヒーレント光のうち、最も波長の長いコヒーレント光の波長は、最も波長の短いコヒーレント光の波長の1.14倍以上であることが好ましい。
この場合、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、フォトリフラクティブ効果とともに、熱レンズ効果をも発現する結晶を含むことが好ましい。
この場合、フォトリフラクティブ効果及び熱レンズ効果により結晶内の屈折率が大きく変化するので、スペックルノイズを十分に低減することができる。
本発明に係る他の光源装置は、コヒーレント光によって被照明体を照明する光源装置であって、前記コヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンを変動させるパターン変動部とを備え、前記パターン変動部は、前記コヒーレント光源と前記被照明体との間で且つ前記コヒーレント光の光路上に配設され、熱レンズ効果を発現する熱レンズ結晶と、前記熱レンズ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを変動させる変動部とを含む。
この光源装置においては、熱レンズ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つが変動されるので、熱レンズ結晶内の温度分布と、それによる屈折率分布とが変化する。この結果、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明に係る照明装置は、上記の光源装置と、前記光源装置からの光を導く光学系とを備える。
この照明装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明に係る画像表示装置は、上記の光源装置と、空間変調素子と、前記光源装置から出射する光を前記空間変調素子に導く光学系とを備える。
この画像表示装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明に係る他の画像表示装置は、コヒーレント光を出射する光源装置と、前記光源装置からコヒーレント光を照射され、フォトリフラクティブ効果を発現するフォトリフラクティブ結晶を含むスクリーン部材と、前記光源装置は、前記スクリーン部材を照射するコヒーレント光の光強度分布及び偏光方向のうち少なくとも一つを変動させる。
この画像表示装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、観測者の網膜上に発生する干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができるとともに、画像表示装置としての視野角の拡大も可能となる。
本発明によれば、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを低減することができるので、本発明は、レーザ光等のコヒーレント光を用いた光源装置、照明装置及び画像表示装置などにきわめて有用である。
本発明は、レーザ光等のコヒーレント光(可干渉性を有する光)を用いた光源装置、照明装置及び画像表示装置に関するものである。
レーザ光源等のコヒーレント光源(コヒーレント光を生成する光源)は、画像表示装置、測定機器、半導体基板上での回路作製に利用される露光・リソグラフ装置などに利用される。プロジェクタなどに用いられているランプ光源と比較した場合、レーザを用いたレーザ光源は、寿命が長く、発光効率が高く、指向性が強いため、光利用効率を高めやすい。また、画像表示装置として利用する場合、レーザ光源は、単色性を示すため、色再現領域が大きく、鮮やかな画像の表示が可能である。
一方、光源としてレーザ光源を用いた画像表示装置、計測装置、露光装置及び照明装置において、スペックルノイズが発生する。例えば、画像表示装置により形成された虚像を観測者が鑑賞する場合には、観測者の網膜上においては、スクリーンの各領域からの光が重なって画像が形成される。このとき、このスクリーン上の異なる領域を経た光同士が複雑な位相関係で重ねられ、レーザ光は、高いコヒーレンシ(可干渉性)を有していることから、互いに干渉し合うこととなる。このような干渉によって、干渉パターンが形成されてしまうため、意図しない光強度分布(スペックルノイズ)として、表示画像の画質低下を招く。同様に、計測装置や露光装置用の光源としてレーザ光源を用いた場合、レーザ光のコヒーレンシのため、対象面において光強度が不均一となる。
上記のスペックルノイズは、コヒーレンシを有するレーザ光を画像表示装置、計測装置、露光装置などの光源として用いる場合に共通の課題であり、これまでにも、スペックルノイズを低減させるための種々の試みがなされてきた。
例えば、特許文献1、2に記載されるように、回転拡散板を用いたものが提案されている。これらの構成では、光源から出射されたレーザの光路上に拡散板が配設され、拡散板が高速で回転され、レーザが拡散板を透過する。この拡散板が高速回転されることによって、コヒーレント光であるレーザ光により発生される干渉パターンを分裂させ、この干渉パターンをスクリーン上において高速に動き回らせることによって平均化し、スペックルノイズを低減している。
すなわち、これらの構成においては、実際に干渉パターンが消失するわけではなく、複数の異なる(互いに相関の無い)干渉パターンが重ね合わされることで、あたかもスペックルノイズが消失したかのように見えるのである。
特開2007−233371号公報
特開2004−144936号公報
しかしながら、これらの構成では、大掛かりで機械的な回転機構や、振幅が100μmを超える振動機構等を必要とするため、騒音が発生する。また、駆動に大きな電力を消費するため、装置全体としての消費電力が増大する。
本発明の目的は、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる光源装置を提供することである。
本発明の一局面に従う光源装置は、コヒーレント光によって被照明体を照明する光源装置であって、前記コヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンを変動させるパターン変動部とを備え、前記パターン変動部は、前記コヒーレント光源と前記被照明体との間で且つ前記コヒーレント光の光路上に配設され、フォトリフラクティブ効果を発現するフォトリフラクティブ結晶と、前記フォトリフラクティブ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを変動させる変動部とを含む。
上記の光源装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明の実施の形態1による光源装置の構成の一例を示す概念図である。
コヒーレント光の出力変動の一例を示す図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
コヒーレント光の光強度分布の変動の一例を示す図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態2による光源装置の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態3による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態4による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
本発明の実施の形態5による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
音響光学効果や、カー効果及びポッケルス効果のような電気光学効果を発現する結晶を用いてコヒーレント光の偏光を変動させる変動部を用いることにより、被照射面におけるコヒーレント光の干渉パターンを変動させることが可能となる。これにより、従来から課題となっていた騒音や消費電力の増加を引き起こす、大掛かりな回転機構や振動機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
しかしながら、これらを用いる場合、高電圧や超音波の発生源が必要となる。そのため、結晶に入射するコヒーレント光の光強度分布、強度(例えば、最大強度又は平均強度)、偏光方向、及び波長の少なくとも一つを変動させることにより、被照射面におけるコヒーレント光の干渉パターンを変動させる変動部を用いることがより望ましい。なお、光強度分布を変動させる方法としては、例えば、コヒーレント光の入射位置を変動させたり、コヒーレント光自身の光強度分布を変動させたりしてもよい。また、入射するコヒーレント光自身の出力、偏光方向、又は波長を変動させてもよい。
ここで、結晶に入射するコヒーレント光の光強度分布、強度、偏光方向、又は波長を変動させることにより、コヒーレント光の干渉パターンを変動させる変動部としては、入射した光の強度に応じてレンズパワーが変化する熱レンズ効果や、入射した光の空間的光強度分布に応じて屈折率分布が発生するフォトリフラクティブ(以降、『PR』とする)効果などを発現する結晶を利用する変動部を用いることができる。
上記の熱レンズ効果やPR効果を利用した変動部を用いることにより、照射面上に形成される干渉パターンを高速に変化させ、スペックルノイズを低減させることが可能となる。また、上記の熱レンズ効果やPR効果を利用した変動部を用いることにより、電気光学効果や音響光学効果を用いた場合に必要となる高電圧や超音波の発生源が不要となる。さらに、従来から課題となっていた騒音や消費電力の増加を引き起こす、回転機構や大掛かりな振動機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
特に、PR効果は、低パワーの光に対しても、大きな屈折率の変化を発生させることが可能となり、数十mW程度以下の低出力レーザ光源を用いた画像表示装置、計測装置、露光装置、及び照明装置において、熱レンズ効果を用いる場合に比べて、スペックルノイズを低減する効果が大きくなり、PR効果を用いることがより望ましい。
以下、上記のPR効果や熱レンズ効果を用いた本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、画像表示装置、計測装置、露光装置、及び照明装置等に共通して用いられ、それらの装置において課題となるスペックルノイズを低減することを可能とする、光源装置について示す。
図1は、本発明の実施の形態1の光源装置の構成の一例を示す概念図であり、本光源装置は、少なくとも、レーザ光源101と、PR結晶102とからなり、さらに、必要に応じて、集光レンズ103、フィールドレンズ104及び振動部105を備える。レーザ光源101から出射されたレーザ光(コヒーレント光)は、集光レンズ103により集光された後、PR効果を発現する材料からなるPR結晶102に入射し、PR結晶102がPR効果を発生させることにより、レーザ光の屈折率の変化が誘起される。この屈折率の変化により、照射面上におけるレーザ光の干渉パターンが変動し、スペックルノイズが低減される。
ここで、レーザ光源101として、半導体レーザ、固体レーザ、ファイバーレーザ等のいかなるレーザを用いた場合においても、そのレーザの波長に対してPR効果を発現するPR結晶102を用いる限り、本実施の形態は、上記の効果を発揮する。
但し、強度、波長、偏光方向、及び光強度分布が一定の光をPR結晶の同一箇所に入射させ続けると、PR結晶内の屈折率の変化量は、時間とともに減少し、ついには屈折率が変化しなくなる。この結果、スペックルノイズの低減効果も減少してしまう。このため、本願発明者らは、屈折率の変化量の減少について鋭意検討を行った結果、PR結晶内に入射する光の強度、波長、偏光方向、及び光強度分布のうち少なくとも一つを変動させることにより、PR結晶内の屈折率の変化量を回復させることが可能となることを見出した。この点に関しては、後述する熱レンズ結晶等も同様である。
ここで、屈折率の変化量が初期の変化量の10%以下に低下するまでの時間を、PR飽和時間とすると、PR飽和時間より短い周期で、PR結晶内に入射する光の強度、波長、偏光方向、及び光強度分布のうち少なくとも一つを変化させることが望ましい。これによって、従来から課題となっていた騒音や、消費電力の増加を引き起こす、回転機構や大掛かりな振動機構を必要とせず、スペックルノイズの十分な低減効果を持続的に得ることが可能となる。
また、PR効果は、PR結晶に入射するコヒーレント光の強度が大きいほど、高速な屈折率の変化を引き起こし、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られるが、その分だけPR飽和時間が短くなるため、用途に応じてPR結晶に入射するコヒーレント光の強度を調整することが望ましい。
また、PR結晶とコヒーレント光との相互作用距離(PR結晶の入射面から出射面までの距離)が長いほど、PR飽和時間が長くなり、同時にスペックルノイズの低減効果も大きくなる。
また、PR結晶は、PR効果を発現するレーザ光の波長や、PR効果による屈折率の変化量及び応答速度などが異なるため、用途(入射レーザ出力、波長、光強度分布、必要な応答速度等)に応じて、スペックルノイズの十分な低減効果が得られる最適なPR結晶を選定することが望ましい。以下に、PR結晶102に好適に用いられるPR結晶の例について具体的に説明する。
まず、LiNbO3やLiTaO3のような強誘電体は、可視領域から紫外領域までの光に対してPR効果を発現し、非常に大きな屈折率の変化を発生させるPR結晶である。また、LiNbO3は、他のPR結晶に比べて非常に安価であり、画像表示装置として用いる場合に特に望ましい。さらに、LiNbO3にFeやMnイオンを添加することにより、LiNbO3は、より高速なPR効果を発現するため、FeやMnイオンを添加しない場合より、スペックルノイズの低減効果を高めることが可能となる。
ここで、LiNbO3にFeを添加する場合、添加濃度が高いほど、屈折率の変化量が大きくなるが、PR飽和時間が短くなり、一方、添加濃度が低いほど、屈折率の変化量が小さくなるが、PR飽和時間が長くなる。例えば、PR飽和時間が0.1μs以下になると、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、波長、偏光方向、及び光強度分布を10MHz以上の周波数で変化させることが必要となり、変調に複雑な構成が必要となる。
このため、Feの添加濃度は、0.1%未満であることが望ましく、この場合、PR飽和時間が1μsを越えるため、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、波長、偏光方向、又は光強度分布を変動させる変動部をより簡単な構成で実現することができる。また、Feの添加濃度は、0.002%以上であることが望ましく、0.004%以上であることがより望ましく、これにより、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られる。さらに、Feの添加濃度は、0.01%以上であることが望ましく、これにより、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、十分な屈折率の変化量が得られる。
また、Feの添加濃度をX%とすると、入射するレーザ光の強度を、−0.1922・ln(X)−0.1963(W/cm2)以上とすることにより、スペックルノイズの更に大きな低減効果を得ることが可能となる。但し、レーザ光の強度を23MW/cm2未満とすることが望ましく、これによって、LiNbO3のPR効果の経時的な劣化を抑制し、2万時間以上の長寿命化が可能となる。さらに、レーザ光の強度を11MW/cm2未満とすることがより望ましく、これによって、6万時間以上の長寿命化が可能となる。
次に、PVK:DMNPAA:ECZ:TNF、PVK:TNF:DMNPAA:BisCzPR系などの有機材料は、安価で容易に作製できるPR結晶であり、赤の波長域の光に対してPR効果を発現し、屈折率の変化量が大きいため、スペックルノイズのより大きな低減効果を得ることが可能となる。また、上記の有機材料からなるPR結晶は、PR飽和時間もmsオーダーであり、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、波長、偏光方向、又は光強度分布をkHzオーダーの周波数で変動させる変動部を簡単な構成で実現することができるとともに、スペックルノイズの低減効果を持続させることが可能となる。
また、上記の有機材料からなるPR結晶を用いる場合、入射するレーザ光の強度は、入射面の少なくとも一部で1.2W/cm2以上であることが望ましく、この場合、よりスペックルノイズ低減効果が増大し、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られる。また、入射するレーザ光の強度は、入射面の少なくとも一部で3.1W/cm2以上であることがより望ましく、これによって、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、スペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られる。また、経時劣化によるPR効果の低下を抑制するため、入射するレーザ光の強度は、200kW/cm2未満であることが望ましい。
次に、GaAs、GaP、GaN、InPのような化合物半導体や、Bi12SiO20(BSO)、Bi12TiO20(BTO)などのシレナイト系結晶も、可視光に対してPR効果をもつPR結晶であり、LiNbO3結晶に比べて、発生する屈折率の変化量は小さいが、応答速度がmsオーダーからμsオーダーまでの範囲にあり、非常に早いため、特に、計測装置、及び露光装置の光源として用いる場合に、スペックルノイズの低減効果が大きい。
また、入射するレーザ光に対して、PR結晶102の入射端IE(入射面)及び出射端EE(対向面)における反射率が2%以下となるように、入射端IE及び出射端EEは、光学研磨されるとともに、入射端IE及び出射端EEに反射防止膜を形成していることが望ましい。これにより、光の利用効率を高めることが可能となる。
但し、PR結晶102の出射端EEでは、レーザ光の一部を反射させることが望ましく、少なくとも入射端IEより出射端EEでの反射率が高いことが望ましい。これにより、PR結晶102での光損失を最小限に抑え、且つ、PR結晶102内の屈折率の変化の影響によって光強度分布を変動させたレーザ光の一部が、出射端EEにおいて反射し、再びPR結晶102内の屈折率の変化を励起するため、屈折率の変化量が増大する。つまり、屈折率の変化が停止することなく、長時間変動し続けるので、スペックルノイズのより大きな低減効果がより長く持続的に得られる。具体的には、出射端EEでの反射率は、1%以上7%未満であることが望ましく、これによって、光の利用効率の低下を抑えながら、スペックルノイズの低減効果を増大させることが可能となる。
また、PR結晶102の入射端IE及び出射端EE以外の側面は、入射したレーザ光をPR結晶102内に全反射させるようにすることが好ましい。この場合、レーザ光が側面で反射されることにより、PR結晶102内の干渉効果が増加し、屈折率の変化が増大するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。
また、PR結晶内では、入射するレーザ光自身の光強度分布により屈折率の変化が発生し、出力が同じでも、結晶内の光強度勾配が急であるほど、大きな屈折率差が高速に変化する。これにより、スペックルノイズの低減効果も増大する。このため、PR結晶102の入射端IEにおける光強度勾配が大きいことが望ましい。これを満たすため、本実施の形態では、例えば、集光レンズ103を用いて、PR結晶102の入射端IE付近に集光点を有するように、レーザ光を集光している。
この場合、レーザ伝搬方向LPに垂直な面内でレーザ光の強度が最大となる位置から、そのレーザ光の強度の最大値の1/e2となる最寄の位置までの距離をビーム径とすると、PR結晶102の入射端IEにおけるビーム径が100μm以下になり、大きな屈折率差が高速に変化するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。この結果、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズの低減が可能となる。
但し、ビーム径が小さすぎると、出射光のNAが大きくなりすぎるために、光利用効率が低下してしまう。このため、ビーム径は、2μm以上であることが望ましい。また、PR結晶102の入射端IEすなわち入射面におけるビーム径が50μm以下の場合は、PR結晶102の出射端EEすなわち出射面を、曲率半径60mm以下の凸面に成形し、出射光の発散を軽減することが望ましく、これによって、より光学系の小型化が可能となる。
更に、PR結晶内において入射するレーザ光の光強度分布が変化することにより、PR結晶内の屈折率の変化をより増大させ、スペックルノイズのより大きな低減効果を得ることが可能である。このため、本実施の形態では、例えば、振動部105によりPR結晶102をレーザ伝搬方向LPに直交する方向に振動させ、レーザ光の入射位置を変動させている。具体的には、PR結晶102は、レーザ伝搬方向LPに直交する方向に振動可能に支持され、振動部105としては、例えば、一軸のみ振動する安価な振動素子、例えば、圧電素子を用いることができる。
ここで、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズの低減が可能となるため、レーザ伝搬方向LPに直交する方向にPR結晶102へのレーザ光の入射位置をビーム径の20%以上変動させることが望ましい。また、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、十分な屈折率の変化となるために、レーザ伝搬方向LPに直交する方向にPR結晶102へのレーザ光の入射位置をビーム径の40%以上変動させることがより望ましい。
なお、ビーム径が小さいほど、必要な振幅も小さくなることは言うまでも無く、例えば、10μm程度のビーム径に集光したレーザ光を入射させる場合、上記理由により、レーザ伝搬方向LPに直交する方向に2μm以上、又は4μm以上の振幅で、PR結晶102へのレーザ光の入射位置を振動させることが望ましい。また、振動させる部材は、PR結晶102に特に限定されず、例えば、集光レンズ103に振動を与える場合、必要な振動の幅を更に小さくすることが可能となる。
上記のように、本実施の形態に用いられる振幅は、上記の特許文献1において拡散板に与える振幅に比べて、10分の1程度と小さいため、振動による騒音や消費電力の増加は、ほとんど発生しない。この振動による騒音や消費電力の増加を抑制するため、本実施の形態での振動の振幅は、40μm未満であることが望ましい。また、特許文献1にて用いられる拡散板等では、入射位置が移動している間のみ、スペックルノイズ低減効果が得られるが、本実施の形態のPR結晶102の場合は、入射位置が移動した後、振動が止まっても、一定時間スペックルノイズ低減効果が持続する。このため、本実施の形態では、特許文献1に示すような高速な振動を必要としない。また、安価な振動素子を用いた一軸のみの振動では、振幅が最大となる位置で、入射位置の移動速度が低下してしまうため、拡散板を用いる場合は、スペックルノイズの低減効果が減少するが、本実施の形態のPR結晶102を用いる場合は、この問題も軽減される。
また、下記のように、まったく機械的な動作機構を必要としない方法を用いることでも、PR結晶102内の屈折率の変化をより増大させることが可能である。この場合、振動部105を省略し、PR結晶102を所定位置に固定して保持することができるので、装置の構成をより簡略化することができる。
まず、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光の光強度分布を変動させるようにしてもよい。例えば、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光を横マルチモードのレーザとし、レーザ光源101は、時間的にそのモードを変化させる。また、レーザ光源101として、複数のレーザ光源を用い、複数のレーザ光源からの光をPR結晶102内の同一箇所に入射し、少なくとも一つのレーザ出力を時間的に変動させてもよい。これによって、騒音や消費電力増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
また、PR結晶102の持つ電気光学効果を利用し、PR結晶102に所定の電圧を印加することにより、PR結晶102内のレーザ光の光強度分布を変化させてもよい。これによっても、騒音や消費電力増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。この場合、LiNbO3結晶のように、電気光学定数が大きな結晶を用いることがより望ましい。
また、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光の強度を変動させるようにしてもよい。図2は、コヒーレント光の出力変動の一例を示す図である。コヒーレント光の出力変動としては、図2に示すようにレーザ光の強度が変動し、変動幅W1が平均強度A1の10%以上となることが望ましく、これにより、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、変動幅W1が平均強度A1の30%以上であることがより望ましく、これによって、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズ低減が可能となる。なお、コヒーレント光の出力変動の周期は、必ずしも周期的である必要は無く、図2に示す例では、1回目の出力変動期間C1は、2回目の出力変動期間C2と略同一であるが、3回目及び4回目の出力変動期間C3、C4とは大きく異なっており、3回目の出力変動期間C3は、4回目の出力変動期間C4と異なっている。
また、例えば、集光レンズ103の代わりに熱レンズ効果をもつ結晶を用いて、且つ、レーザ光源101を間欠駆動させることにより、レーザ光の強度を変動させるようにしてもよい。これにより、熱レンズによるレンズパワーがレーザ光の出力変動に依存して変動し、PR結晶102内のビーム径が変動するため、スペックルノイズの低減効果が持続する。これによっても、騒音や消費電力増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
この場合、レーザ光の出力が変動し、レーザ光の強度の変動幅が平均強度の5%以上となることが望ましく、これによって、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られ、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、レーザ光の強度の変動幅が平均強度の15%以上となることがより望ましく、これによって、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズ低減が可能となる。
また、レーザ光源101からPR結晶102へ入射するレーザ光の偏光方向を変動させるようにしてもよい。図3は、本発明の実施の形態1に示す光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。図3に示す例では、PR結晶102として、LiNbO3結晶のようにPR効果による屈折率の変化が偏光に依存するPR結晶を用い、レーザ光源101とPR結晶102との間(集光レンズ103とPR結晶102との間)に、液晶801、802からなる液晶デバイス800を挿入し、PR結晶102に入射するレーザ光の偏光を回転させて偏光方向を時間的に変動させている。この場合、騒音や消費電力の増大の原因となる機械的な動作機構を必要とせず、スペックルノイズを低減することが可能となる。
また、液晶デバイス800は、少なくとも2つのセル(2つの液晶801、802)からなり、それぞれで偏光の回転角が一致していないことが望ましく、これによって、より効果的なPR効果の回復が可能となる。なお、液晶によるレーザ光の偏光方向の変動方法については、液晶が1セルでも、多セルでも、偏光の回転角が10°以上の幅で変動すればよい。また、この場合の変動周期も、上記の出力変動と同様の周期であることが望ましい。
また、熱レンズ効果をもつ結晶を用いてレーザ光の光強度分布を変動させるようにしてもよい。図4は、コヒーレント光の光強度分布の変動の一例を示す図である。図4に示すように、ある瞬間のPR結晶102入射面での光強度分布が領域901であり、別の瞬間の光強度分布が領域902である場合、2つの領域903、904は、両者が重ならない領域となる。
ここで、2つの領域903、904のうち少なくとも一方の面積が、全体出力の面積(領域901、902の面積)の30%以上となることが好ましい。すなわち、領域901〜904の面積をA1〜A4とすると、A3/A1>0.3又はA4/A2>0.3となることが好ましい。この場合、レーザ光の光強度分布が変動するため、スペックルノイズの低減効果が持続し、上記と同様の効果を得ることができる。また、この場合の変動周期も、同様の理由により上記の変動周期と同様であることが望ましい。なお、光強度分布を変動する方法は、熱レンズ効果をもつ結晶を用いる方法に特に限定されず、例えば、複数のレーザ光源を用いて出力比を変動させるようにしてもよい。
また、PR結晶102として、LiNbO3結晶を用いる場合、LiNbO3結晶を高温に加熱すると、内部のPR効果が減少するため、LiNbO3結晶は、100℃以下で使用することが望ましく、結露によるビームの散乱を防止するため、0℃以上で使用することが望ましい。
また、PR結晶102として、熱レンズ効果とPR効果とを共に発現する結晶を用いても同様の効果が得られる。例えば、LiNbO3などは、可視光から紫外光までの光を入射する場合、入射光のごく一部を吸収して熱レンズ効果を発現するPR結晶である。この場合も、レーザ光源101からの出力を変動させるだけで、スペックルノイズの低減効果が持続する。また、PR結晶102とレーザ光源101との間に熱レンズ効果を発現する結晶を別途設ける必要が無くなる。なお、熱レンズ効果を発現するPR結晶を用いる場合にも、更に、熱レンズ効果又はPR効果を増大させるため、別の熱レンズ結晶又はPR結晶を併用してもよい。
また、レーザ光源101として、出力変動にともなって、出射光のビーム径や光強度分布を変動させるレーザ光源を用いてもよい。この場合も、レーザ光源101から出力変動のあるレーザ光を発振させるだけで、スペックルノイズの低減効果が持続する。また、PR結晶102とレーザ光源101との間に熱レンズ効果を発現する結晶を別途設ける必要がなくなるため、部品点数削減による低コスト化と、装置の小型化とが可能となる。
また、電気光学(EO)素子及び音響光学(AO)素子のうち少なくとも一方からなる偏向素子をコヒーレント光の光軸上に配置し、偏向素子によりコヒーレント光の入射位置を変動させるようにしてもよい。図5は、本発明の実施の形態1に示す光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。
図5に示すように、例えば、電界によって屈折率が変化するLiNbO3などの電気光学素子106(及び/又は、応力により屈折率が変化する音響光学素子)をレーザ光源101とPR結晶102の間に設置し、レーザ光の偏向を変えて、PR結晶102内での光強度分布が変化する程度の幅でレーザ光を走査させてもよい。これにより、スペックルノイズの低減効果を持続させることが可能となる。
この場合も、前述の理由により、PR結晶102に入射する位置をビーム径の20%以上変動させることが望ましく、40%以上変動させることがより望ましい。通常、電気光学素子又は音響光学素子のみによって大きな屈折率の変化を発生させることは難しいが、図5に示す例では、電気光学素子又は音響光学素子による小さな変動が、PR結晶102内で大きく複雑な屈折率の変化を発生させるため、スペックルノイズを低減する効果が大きい。
また、一つのPR結晶102に代えて、互いに異なるフォトリフラクティブ効果を発現する複数のPR結晶を用いてもよい。図6は、本発明の実施の形態1による光源装置の他の構成の一例を示す概念図である。図6に示す例では、レーザ光源101aは、レーザ光の強度を変動させ、レーザ光源101aから出射してPR結晶102aを通過した光が、PR結晶102aと異なる別のPR結晶102bへ入射する。この場合、PR結晶が一つの場合より、スペックルノイズの低減効果がより増大する。なお、一つ目のPR結晶102aと二つ目のPR結晶102bとは、結晶の材料組成及び形状のうち少なくとも一方が異なり、互いに異なるフォトリフラクティブ効果を発現することが望ましい。例えば、一つ目のPR結晶102aとして、msオーダーの応答速度の遅い材料(PR飽和時間が長い材料)を用い、二つ目のPR結晶102bとして、屈折率の変化量が大きな材料を用いることが望ましく、これにより、スペックルノイズの大きな低減効果を持続的に得ることが可能となる。
再び、図1を参照して、PR結晶102の入射端IE及び出射端EEのうち少なくとも一方に細かい凹凸をつけることが好ましく、この場合、スペックルノイズの軽減と同時に、光強度の均一化も可能となる。例えば、入射端IE及び出射端EEのどちらかを数μmオーダー以下の細かい凹凸面(砂面)とすることで、レーザ光の光強度が均一となる。また、出射端EEをマイクロレンズアレイとなるように加工したり、別の材質で形成したマイクロレンズアレイを入射端IE又は出射端EEに張り合わせるようにしたりしてもよい。この場合、被照射面における照射領域を任意に調節し、光利用効率を高めることが可能となる。
また、入射端IEに凹凸面を設けることが好ましく、この場合、PR結晶102に入射するレーザ光の光強度分布がより細かいパターンとなり、光強度勾配も急になるため、PR効果による屈折率の変化が増大する。また、入射端IE又は出射端EEにμmオーダーの細かい凹凸を設けた複数枚のPR結晶を重ねて用いることが好ましく、この場合、1枚目のPR結晶による光強度変動が2枚目のPR結晶による光強度変動を増加させるため、スペックルノイズの軽減効果が増大する。
上記の各方法を用いた場合、機械的な動作機構を必要とせず、振動や消費電力の増加を発生させない。但し、屈折率の変化を回復させるために、PR結晶内に入射するレーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布を変動させる場合、本光源装置が用いられる装置の観測時間、露光時間、計測時間等との関係を考慮して、強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期を定めることが望ましい。
例えば、計測装置などに用いる場合で、写真フィルム、CCDカメラ、又はCMOSカメラなどを用いて画像を撮影する場合は、撮影時間内のレーザ光の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であればよい。また、露光装置として用いる場合は、露光時間内の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であればよい。つまり、レーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期は、少なくとも撮影時間以下、又は露光時間以下であることが望ましく、変動周期の整数倍が、撮影時間、又は露光時間となることが望ましい。
また、動画撮影などの実時間観測の場合、あるいは目視で均一性が認められる程度が必要な場合は、レーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期は、最低限として、人間の目の応答速度30Hz程度に対応する30周期/秒程度以上、すなわち、30Hz以上であることが望ましいが、ちらつきを減少させるためには、60Hz以上であることがより望ましく、数十cmからの近距離からの視聴でも、スペックルノイズの影響が軽減できるように、120Hz以上であることがさらに望ましく、長時間の視聴でもスペックルノイズの影響を軽減できるように、300Hz以上であることが最も望ましい。
また、動画のフレーム周波数を300Hz以上とする場合は、そのフレーム周波数の整数倍又は5倍以上の周波数で、レーザ光の強度、偏光方向、又は光強度分布を変動させることが望ましい。これによって、1フレーム内の光強度が面内で均一となるため、画質の低下を抑制することができる。
ここで、上記の変動周期としては、必ずしも完全に周期的である必要は無く、例えば、30Hzの場合、すべての周期が完全に30Hzに一致する場合に特に限定されず、30Hz未満の周期又は30Hzより高い周期を含むものであっても、基本周波数が30Hzであればよく、他の周波数も同様である。例えば、レーザ光の強度を変動させる場合、60Hz以上の周波数で10%以上の変動幅が必要な変動とは、少なくとも1/60秒間ごとの変動幅が10%以上である変動であればよい。更に、光強度分布や偏光方向を変動させる、望ましい条件に関しても、同様のことが言えることは言うまでもない。
また、本光源装置では、拡散された光が過度に拡大しないように、フィールドレンズ104を用いている。この場合、過度の拡大を抑制することで、画像表示装置、計測装置、又は露光装置として用いる場合に、装置の小型化が可能となる。また、PR結晶102に入射するビーム径が小さく、PR結晶102の厚みが薄いほど、ビーム品質の低下を軽減することが可能となるため、PR結晶102以降の光学系の小型化が可能となる。
このため、PR結晶102の厚みは、2mm以下であることが望ましく、小型プロジェクタ用の光源として用いることが可能なサイズに、光源装置を小型化することが可能となる。この場合、PR結晶102としては、薄くても十分なスペックルノイズ低減効果を実現する強誘電体や有機材料からなるPR結晶を用いることがより望ましい。また、LiNbO3結晶を用いる場合は、FeやMnイオンを添加してPR効果によるスペックルノイズの低減効果をより大きくさせることが望ましい。また、前述のようにPR結晶102に振動を与えるなど、屈折率の変化を増大させる方法を併用することが更に望ましい。
また、PR結晶から出射するレーザ光の光軸上に導光部材を配置し、この導光部材によりレーザ光の拡散を抑制するようにしてもよい。図7は、本発明の実施の形態1による光源装置の他の一例として、導光体を用いた光源装置の構成を示す概念図である。図7に示す例では、導光体201が、PR結晶102から出射するレーザ光の光軸上に配置される。導光体201は、ロッドインテグレータ等から構成され、光の拡散を抑制する。この場合、液晶デバイスなどの空間変調素子を用いたレーザプロジェクタ用の光源に、本光源装置を用いるときに、光利用効率を高めることができる。
また、導光体201を省略するとともに、PR結晶102に代えて、レーザ伝搬方向LPに長く、且つレーザ伝搬方向LPに垂直な断面積が小さいPR結晶を用いてもよい。この場合、PR結晶の側面にてレーザ光を全反射させることにより、PR結晶自身がロッドインテグレータとしての役割を果たすことも可能である。また、PR結晶長を長くすることにより、コヒーレント光が受けるPR効果も増大し、スペックルノイズの低減効果も増す。
更に、ロッドインテグレータの断面積を細くし、側面でのコヒーレント光の反射を増加させることにより、PR結晶内の干渉効果が増加し、屈折率の変化が増大するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。ここで、ロッドインテグレータの断面積は、9mm2以下とすることが望ましい。この場合、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、ロッドインテグレータの断面積は、1mm2以下にすることが望ましい。この場合、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、スペックルノイズの低減が可能となる。
また、細く長いPR結晶からなる導光体として、PR結晶からなるマルチモードファイバを用いてもよい。PR効果を発現する材料を添加したマルチモードファイバを用いることで、低コスト化が可能となる。また、取り回しがよく、振動や熱など、外部環境の影響を受けにくい光学系を構成することが可能となる。また、前述の通り、ロッドインテグレータ、又はマルチモードファイバの入射端付近にビームを極力絞って入射させることが望ましい。また、PR結晶と導光体(ロッドインテグレータ、マルチモードファイバ)とを一体化する場合、光学部品点数の削減による低コスト化及び小型化に加えて、レーザ光が通過する端面の数を削減することができるので、端面反射による光損失の低減も可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、画像表示装置、計測装置、露光装置、及び照明装置等に共通して用いられ、熱レンズ効果を用いて、それらの装置において課題となるスペックルノイズ低減を可能とする、光源装置について示す。
図8は、本発明の実施の形態2の光源装置の構成の一例を示す概念図であり、本光源装置は、少なくとも、レーザ光源101aと、そこから発振される、所定の波長を有するレーザ光に対して熱レンズ効果を示す熱レンズ結晶501とからなり、さらに、導光体201を備える。レーザ光源101aから出射されたレーザ光(コヒーレント光)を熱レンズ結晶501に入射することにより、熱レンズ結晶501において、レーザ光の一部が吸収され、発生する熱による温度勾配により、屈折率分布が引き起こされる。更に、レーザ光源101aがレーザ光の強度を時間変動させることにより、発生する温度分布と、それによる屈折率分布とが変化するため、被照射面の干渉パターンを変動させることが可能となる。
この熱レンズ効果は、入射するレーザ光のビーム径を絞ることにより、より高速に干渉パターンを変動させることが可能であり、出力変動のみで屈折率の変化が持続するため、単純な構成でスペックルノイズを低減させることが可能となる。また、出力変動が大きいほど、屈折率の変化量が大きくなるため、本実施の形態では、レーザ光の強度の変動幅が平均強度の30%以上であることが好ましく、これによって、液晶ディスプレイ型画像表示装置において、スペックルノイズの十分な低減効果を得ることが可能となる。また、レーザ光の強度の変動幅は、平均強度の80%以上であることがより好ましく、これによって、プロジェクタ型画像表示装置において、スペックルノイズの十分な低減効果を得ることが可能となる。
また、熱レンズ効果は、ビームパス部分の温度分布が安定すると、スペックルノイズの低減効果を失うため、温度分布が安定する期間より短い時間周期で、出力を変動させることが望ましく、これによって、スペックルノイズのより大きな軽減効果を得ることが可能となる。
また、レーザ光と熱レンズ結晶501との相互作用長を長くするほど、より大きな屈折率の変化を発生させることが可能となり、スペックルノイズの低減効果も大きくなる。また、温度分布が安定するまでの時間を長くすることが可能となり、より周期の長い出力変動でも、大きなスペックルノイズ低減効果を持続させることが可能となる。
更に、熱レンズ結晶501内に入射するレーザ光の光強度分布が変化することにより、熱レンズ結晶501内の屈折率の変化(温度分布変化)をより増大させることが可能であり、例えば、実施の形態1と同様に、振動部により熱レンズ結晶501を振動させ、入射位置を変動させてもよい。
この場合、ビーム直径の40%に相当する距離以上の振幅で、ビーム中心を変動させることが望ましく、これにより、スペックルノイズの低減効果が増大し、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズの低減が可能な屈折率の変化となる。更に、ビーム直径の70%に相当する距離以上の振幅で、ビーム中心を変動させることがより望ましく、これにより、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置において、スペックルノイズを低減することが可能な屈折率の変化が可能となる。
また、熱レンズ結晶501として、2光子吸収特性を有する熱レンズ結晶を選定することにより、より入射ビームの中心付近に大きな屈折率勾配を形成することが可能となり、また、出力変動による屈折率勾配の変化量も大きくなる。このため、より少ない光吸収量でも、スペックルノイズの大きな低減効果を得ることが可能となる。
また、ビーム径が小さいほど、望ましい振幅も小さくて済むため、10μm程度のビーム径に集光したレーザ光を熱レンズ結晶501へ入射させることが望ましく、この場合、上記理由により、4μm以上の振幅となる振動を熱レンズ結晶501に与えることが望ましく、7μm以上の振幅となる振動を与えることがより望ましい。この程度の振幅の振動であれば、特別な加振装置を備えなくても、レーザ光源101aを冷却するファン等の振動を熱レンズ結晶501に伝える等で十分達成することが可能である。本実施の形態において望ましい振幅は、特許文献1において拡散板に与える振動に比べて、100分の1程度と小さいため、騒音や消費電力の増加はほとんど発生しない。なお、消費電力の増加を抑制するため、本実施の形態における振動の振幅は70μm未満であることが望ましい。
また、下記のように、まったく機械的な動作機構を必要としない方法を用いることでも、熱レンズ結晶501内の屈折率の変化をより増大させることが可能である。例えば、図3に示す光源装置と同様に、熱レンズ結晶501として、LiNbO3結晶やLiTaO3結晶のように熱レンズ効果による屈折率の変化が偏光に依存する結晶を用い、レーザ光源101aと熱レンズ結晶501との間に液晶デバイスなどを設置し、入射するレーザの偏光方向を時間的に変化させるようにしてもよい。
また、図5に示す光源装置と同様に、電界により屈折率が変化するLiNbO3などの電気光学素子や、音響光学素子をレーザ光源101aと熱レンズ結晶501との間に設置し、レーザ光の偏向を変えて、熱レンズ結晶501内での光強度分布が変動する程度の幅でレーザ光を走査させ、熱レンズ結晶501に入射するレーザ光の光強度分布を変化させてもよい。通常、電気光学素子又は音響光学素子のみによって大きな屈折率の変化を発生させることは難しいが、本例では、小さな屈折率変動による変位が熱レンズ結晶501内で大きな屈折率の変化を励起するため、スペックルノイズを低減することが可能となる。また、音響光学素子を用いた場合についても、同様の効果が得られる。
これらの方法を用いた場合、機械的な動作機構を必要とせず、騒音や消費電力の増加の課題を発生させない。但し、屈折率の変化を増大させるため、出力変動や熱レンズ結晶501内に入射する光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変化を伴う場合は、本光源装置が用いられる装置の観測時間との関係を考慮して、強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期を定めることが望ましい。
例えば、計測装置などに用いる場合で、写真フィルム、CCDカメラ、又はCMOSカメラなどを用いて画像を撮影する場合は、撮影時間内のレーザ光の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であれば、高精度な計測が可能となる。また、露光装置として用いる場合は、露光時間内の平均出力が同程度で光強度が面内で均一であれば、均一な露光が可能となる。つまり、レーザ光の強度、偏光方向、及び光強度分布の変動周期は、少なくとも撮影時間以下、又は露光時間以下であることが望ましく、変動周期の整数倍が、撮影時間、又は露光時間となることが望ましい。
また、動画撮影などの実時間観測の場合、あるいは目視で均一性が認められる程度が必要な場合は、最低限として、人間の目の応答速度30Hz程度に対応する30周期/秒程度以上が好ましいが、ちらつきを減少させるためには、60周期/秒以上がより好ましく、数十cmからの近距離からの視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、120周期/秒以上がさらに好ましく、長時間の視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、300周期/秒以上が最も望ましい。さらに、動画のフレーム速度を速くしたい場合は、そのフレーム周波数の整数倍又は5倍以上の周波数で、レーザ光の強度、偏光方向、又は光強度分布を変動させることが好ましく、これによって、フレームごとの光強度分布が均一となり、画質の低下を抑制することが可能となる。
ここで、レーザ光の強度、偏光方向、又は光強度分布の変動は、まったく同様の変化が周期的に繰り返す必要はない。例えば、レーザ光の強度を変動させる場合を例とすると、60周期/秒以上で変動幅10%が必要な変動とは、少なくとも1/60秒間ごとの変動幅が10%以上である変動であればよい。更に、光強度分布や偏光方向を変動させる、望ましい条件に関しても、同様のことが言えることは言うまでもない。
また、液晶デバイスなどの空間変調素子を用いたレーザプロジェクタ用の光源に本光源装置を用いる場合、光利用効率を高めるため、実施の形態1と同様に、熱レンズ結晶501から出射されるレーザ光をロッドインテグレータ等の導光体201に入射してもよい。
また、導光体201を省略するとともに、熱レンズ結晶501に代えて、レーザ伝搬方向LPに長く、且つレーザ伝搬方向LPに垂直な断面積が小さい熱レンズ結晶を用いてもよい。この場合、熱レンズ結晶の側面にてレーザ光を全反射させることにより、熱レンズ結晶自身がロッドインテグレータとしての役割を果たすことも可能である。また、熱レンズ結晶長を長くすることにより、コヒーレント光が受ける熱レンズ効果も増大し、スペックルノイズの低減効果も増すとともに、熱容量が増大し、温度変化(屈折率の変化)が飽和に達するまでの時間が長くなる。また、細く長い熱レンズ結晶からなる導光体として、熱レンズ結晶からなるマルチモードファイバを用いてもよい。
また、ロッドインテグレータの断面積は、3mm2以下とすることが望ましい。この場合、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズ低減が可能となる。また、ロッドインテグレータの断面積は、0.5mm2以下にすることが望ましい。この場合、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置においても、スペックルノイズの低減が可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、スペックルノイズを低減する画像表示装置について示す。なお、本実施の形態に用いられる光源装置は、主に画像表示装置用の光源として用いられるが、照明装置等にも応用可能である。
図9は、本発明の実施の形態3の画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。図9に示すように、本実施の形態の画像表示装置は、複数のレーザ光源301a、301b、301c、複数のダイクロイックミラー302a、302b、302c、PR結晶303、導光体304及び空間変調素子305を備え、複数のレーザ光源301a、301b、301c、複数のダイクロイックミラー302a、302b、302c、PR結晶303及び導光体304から光源装置が構成される。
複数のレーザ光源301a、301b、301cとして、例えば、レーザ光を用いた画像表示装置用光源として用いる場合に、その画像の色再現性を高めることが可能となる、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)のレーザ光源を用いた場合を例とし、以下に示す。なお、レーザ光源の数及び波長は、以下の例に特に限定されず、2個又は4個以上のレーザ光源を用いる等の種々の変更が可能である。
赤色レーザ光源301a、緑色レーザ光源301b、及び青色レーザ光源301cは、それぞれ赤、緑、青(以降、RGBという)のレーザ光を出射する。三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー302a、302b、302cを用いて重ね合わされ、PR結晶303に入射する。ここで、ダイクロイックミラー302aは、少なくともレーザ光源301aから出射するレーザ光を反射し、ダイクロイックミラー302bは、レーザ光源301aから出射するレーザ光を透過し、レーザ光源301bから出射するレーザ光を反射する。また、ダイクロイックミラー302cは、レーザ光源301a、301bから出射するレーザ光を透過し、レーザ光源301cから出射するレーザ光を反射する。
本実施の形態では、三色のレーザ光を一つのPR結晶303内に入射し、PR結晶303内の屈折率の変化によりRGBの光を拡散させる。例えば、拡散させたRGBの光は、導光体304に入射した後、空間変調素子305に入射し、スクリーン306に画像が投影される。この結果、光利用効率が高められ、より低消費電力な画像表示装置を実現することが可能となる。
ここで、実施の形態1で示したように、PR結晶303及び導光体304に代えて、PR結晶となる材料を混入させた導光体を用いてもよい。この場合、実施の形態1と同様に、部品点数の削減効果によって、低コスト化が可能となる。また、PR結晶303及び導光体304に代えて、厚みの薄いPR結晶を、空間変調素子305直近に設置する、または、空間変調素子305に貼り付けるようにしてもよく、この場合、画像表示装置全体をより小型化することが可能となる。
また、空間変調素子305は、例えば、液晶デバイスと偏光板とを組み合わせたものやDMD(デジタルミラーデバイス)素子などを用いることができる。図9では、透過型の空間変調素子について記載しているが、反射型であってもよい。
ここで、1つの空間変調素子にRGB三色の光を入射する画像表示装置では、表示画像の色再現性を高めるため、RGB三色の光を出射する方法としては、それぞれDuty33%以下のパルス駆動で、少なくとも一色のレーザ光の発振時間が別の少なくとも一色のレーザ光の発振時間と異なることが望ましい。更に、三色それぞれをDuty30%以下のパルス駆動とし、RGBの間に三色とも発振しない瞬間を設けることが望ましく、これにより、空間変調素子の時間応答性の悪さが引き起こす画像の乱れを軽減することが可能となる。
また、本実施の形態では、RGBそれぞれの波長のレーザ光に対してPR結晶303内に発生する屈折率の分布が異なるため、上記のように、PR結晶303に入射する光の波長が時間的に変化することは、PR結晶内の屈折率の変化を常に引き起こしつづけることになる。このため、RGB三色の光は、PR結晶303内の少なくとも一部において、重なっていることが特に望ましい。この場合、RGB三色の光をPR結晶303に入射することにより、RGB三色の光の各々が単独で入射した場合に比べて、スクリーン306におけるレーザ光の干渉パターンの時間変化を高速化させることができ、スペックルノイズを低減することができる。例えば、PR結晶303の出射端における、RGB三色の光のうちの第1のレーザ光(例えば、赤色レーザ光)と第2のレーザ光(例えば、青色レーザ光)との重なり面積が、第1又は第2のレーザ光の全面積の30%以上であることが好ましい。
但し、PR結晶303の入射面において、G(緑)の光強度が最も高い位置と、B(青)の光強度が最も高い位置とが、2μm以上ずれていることが望ましい。これによって、更にPR効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
また、同一のPR結晶303に入射する光のうち、最も波長が長い光の波長が、最も波長が短い光の波長の1.14倍以上となることが望ましく、この場合、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。この結果、液晶デバイスやDMD素子のような空間変調素子を用いたプロジェクタ型画像表示装置において、より望ましいスペックルノイズ低減効果を実現することが可能となる。また、最も波長が長い光の波長が、最も波長が短い光の波長の1.32倍以上となることがより望ましく、この場合、0.2インチ以下の小型の空間変調素子を用いたプロジェクタ型画像表示装置のスペックルノイズの低減も可能となる。
また、PR結晶303に入射する三色のレーザ光の光強度分布が時間的に変化することにより、PR結晶303内に発生する屈折率の変化が更に増加するため、RGBのレーザ光の少なくとも一つが、他の二つと異なる光強度分布でPR結晶303に入射することが望ましい。例えば、RGBのうち少なくとも一つが、他の二つと異なるビーム径であることが望ましい。また、RGBのうち少なくとも一つがマルチビームであり、PR結晶303の入射端におけるプロファイル(光強度分布)が、他の少なくとも一つと異なることが望ましい。また、PR結晶303内において、RGBのうち少なくとも一つが、他の少なくとも一つと異なるビーム中心(光軸)を有することが望ましい。これらによって、更にスペックルノイズ低減効果は大きくなる。
また、赤色レーザ光源301a、緑色レーザ光源301b、及び青色レーザ光源301cのうち少なくとも一つから出射されるレーザ光の強度の変動幅は、その平均強度の10%以上であることが好ましい。また、赤色レーザ光源301a、緑色レーザ光源301b、及び青色レーザ光源301cのうち第1のコヒーレント光源から出射されるレーザ光と、第1のコヒーレント光源と異なる第2のコヒーレント光源から出射されるレーザ光とは、光強度分布、偏光方向及び強度のうち少なくとも一つが異なることが好ましい。これらの場合、PR効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
また、本実施の形態の画像表示装置に用いられる光源装置を、照明装置用光源として用いる場合、複数の波長のレーザ光源を備えることが望ましく、この場合、任意の色合いの光を発生させる照明装置となる。
なお、本実施の形態では、画像表示装置用光源としてRGBのレーザ光源を用いた光源装置について示したが、レーザ光源の発振波長やレーザ光源の個数が異なっていても、同様の効果が得られることは言うまでもない。例えば、2つの光源から波長の異なる2つのレーザ光を出力したり、一つの光源から波長の異なる2以上のレーザ光を出力したりするようにしてもよい。但し、PR結晶303内の屈折率の変化を増加させるため、二つ以上のレーザ光源を用いることが望ましく、二種類以上の波長のレーザ光源を用いることが更に望ましい。
また、本実施の形態に用いられる光源装置が画像表示装置や照明装置として用いられ、目視で均一性が認められる程度が必要な場合、PR結晶303内に入射するレーザ光の光強度分布変動や波長変動の周期は、最低限として、人間の目の応答速度30Hz程度に対応する30周期/秒程度以上が好ましいが、ちらつきを減少させるためには、60周期/秒以上がより好ましく、数十cmからの近距離からの視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、120周期/秒以上がさらに好ましく、長時間の視聴でも、目に負担をかけないようにするためには、300周期/秒以上が最も望ましい。また、スペックルノイズの低減のために、動画の1フレームとなる時間内に屈折率の変動が停止することがないPR結晶を用いることが望ましい。
また、本実施の形態では、1つの空間変調素子305を用いた画像表示装置について示したが、PR結晶303を透過した三色の光を分離し、それぞれ別の空間表示素子に入射した後、クロスプリズム等で再び三色の画像を結合してもよいことは言うまでもない。また、本実施の形態では、PR結晶を用いた例について示したが、実施の形態2と同様に、熱レンズ結晶を用いてもよく、熱レンズ結晶の場合も、波長の異なる光を同一の熱レンズ結晶内に入射し、少なくとも一つの波長の光強度を変動させることによって、屈折率の変動が停止することなく変化し続けるため、スペックルノイズ低減効果が増大する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、観測者の網膜上に発生するスペックルノイズを低減するスクリーン部材を用いた画像表示装置について示す。図10は、本発明の実施の形態4による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
図10に示すように、本実施の形態の画像表示装置は、プロジェクタ401及びPRスクリーン402を備え、レーザ光源等のコヒーレント光源を用いたプロジェクタ401から出射する光を、PR効果を発現するスクリーン部材であるPRスクリーン402に照射する。プロジェクタ401は、内部のPR結晶を省略する点を除き、上記の実施の形態1、2又は3と同様に構成された光源装置を備え、光源装置は、赤、緑、青のレーザ光を出射するとともに、少なくとも一つのレーザ光の光強度分布及び偏光方向のうち少なくとも一つを変動させる。PRスクリーン402は、PR結晶を含む表示層402aを備え、例えば、従来通りのスクリーン上にPR結晶からなる表示層を形成したり、PR結晶からなる粒子を含む表示層をスクリーン上に塗布したりすることにより、製造されたものである。
PRスクリーン402は、プロジェクタ401と観測者の網膜403との間の光路に設置され、PRスクリーン402がPR効果を発現することにより、観測者の網膜403上に発生する干渉パターンであるスペックルノイズを低減することが可能となる。また、スクリーン上でPR効果を発現することにより、画像表示装置としての視野角の拡大も可能となる。
また、プロジェクタ401として、レーザ走査型のレーザプロジェクタを用いる場合、本実施の形態では、スペックルノイズの低減が難しいレーザ走査型のレーザプロジェクタのスペックルノイズ低減も可能となる。レーザ走査型のプロジェクタは、特に消費電力が小さいプロジェクタとして期待されるが、スペックルノイズの低減が特に難しく、大きな課題となっていたため、本実施の形態の効果はより大きい。また、プロジェクタ401として、空間変調素子を用いて画像を形成するプロジェクタを用いてもよいことはいうまでも無い。この場合は、高輝度なプロジェクタを実現することが可能となる。
また、本実施の形態では、空間変調素子やレーザ走査装置を備えるプロジェクタを用いることによって、PRスクリーン402上の光強度分布は、動画の再生と共に激しく変動するため、屈折率の変化量も増加する。この結果、観測者の網膜403上に発生する干渉パターンを絶えず変化させることができるので、無数の干渉パターンを重ね合わせて平均化したような効果を得ることができ、スペックルノイズを低減することが可能となる。
なお、干渉パターンの変化が止まる瞬間があれば、その分だけ低減効果は低下するが、本実施の形態では、干渉パターンの変化が止まることなく変動し続けることが望ましく、例えば、画像表示装置では、動画1コマ中に複数パターンの干渉パターンが重なり合うことにより、スペックルノイズの低減効果が大きくなる。
また、本実施の形態では、プロジェクタ用のスクリーンとしてPRスクリーン402を用いた例について示したが、例えば、液晶パネルの表面にPR結晶からなる層を備えた液晶ディスプレイや、スクリーンの表面又は裏面にPR結晶からなる層を備えたリアプロジェクションディスプレイについても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
但し、これらの用途にPR結晶からなる層を用いる場合、PR効果を発現する層の厚みが厚すぎると、画像の鮮明さが低下するため、PR効果を発現する層の厚みは、2mm以下とすることが望ましく、これにより、スクリーンから3m程度離れた位置から画像を見た場合に、鮮明な画像を得ることが可能となる。また、1m程度離れた位置から画像を見た場合に、鮮明な画像を得ることが可能となるためには、1mm以下とすることが望ましく、携帯用画像表示装置として用いた場合においても、鮮明な画像を表示することが可能となるためには、0.5mm以下とすることが望ましい。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2にて示した光源装置と同様に構成された光源装置を用いた画像表示装置及び照明装置について示す。図11は、本発明の実施の形態5による画像表示装置の構成の一例を示す概念図である。
図11に示すように、液晶表示装置706は、空間変調素子である液晶表示パネル707と、液晶表示パネル707を背面側から照明するバックライト照明装置701とを備え、液晶表示パネル707は、偏光板708及び液晶板709から構成され、バックライト照明装置701は、レーザ光源702、導光部703及び導光板705から構成される。
バックライト照明装置701の光源であるレーザ光源702は、実施の形態1又は実施の形態2の光源装置と同様に構成され、少なくともR(赤)、G(緑)、B(青)のレーザ光をそれぞれ出射するレーザ光源を備える。
ここで、赤色レーザ光源には、波長640nmのAlGaInP/GaAs系材料からなる半導体レーザ装置を、青色レーザ光源には、波長450nmのGaN系材料からなる半導体レーザ装置を用いている。また、緑色レーザ光源は、赤外レーザ光源と非線形光学結晶とから構成され、赤外レーザ光源から出射する赤外レーザを非線形光学結晶に入射し、赤外レーザの第2高調波である緑色レーザに変換し、これによって、緑色光を高効率で生成することが可能となる。
なお、各レーザ光源の構成は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能である。また、実施の形態1又は実施の形態2の光源装置を用いることなく、実施の形態4と同様に、画像表示装置の観測者の網膜上におけるレーザ光の干渉パターンを変化させるようにしてもよい。
バックライト照明装置701では、レーザ光源702からの3色のレーザ光をまとめて導光部703を介して導光板705に導き、導光板705の主面(図示せず)からレーザ光を出射する。液晶表示パネル707は、バックライト照明装置701から出射される光を利用して画像表示を行う。この結果、本実施の形態では、スペックルノイズが軽減され、色再現性に優れた、低消費電力の画像表示装置を実現することができる。
また、ここでは、レーザ光源を用いた画像表示装置として、透過型の液晶パネルを空間変調素子として用いた液晶表示装置について示したが、DMDミラーや反射型LCOSを空間変調素子に用いたプロジェクタなどの画像表示装置であっても、同様の効果を奏することは言うまでもない。また、バックライト照明装置701は、それのみで、実施の形態1又は実施の形態2の光源装置を用いた照明装置となり、レーザ光源702の代わりに所望の波長のレーザ光源を用いることにより、計測装置又は露光装置用の光源として用いることもできる。
また、本明細書にて、上記した各実施の形態に示した構成は一例であって、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることは言うまでもない。本発明では、被照射面における干渉パターンを絶えず変化させることにより、無数の干渉パターンを重ね合わせ、平均化したような効果を得ることができ、スペックルノイズを低減することが可能となる。
但し、干渉パターンの変化が止まる瞬間があれば、その分だけ低減効果は低下するが、干渉パターンの変化が止まることなく変動し続けることにより、例えば、画像表示装置では、動画のフレーム速度より速く干渉パターンが変化し、複数パターンの干渉パターンが重なり合うことにより、スペックルノイズの低減効果が大きくなる。
また、コヒーレント光を用いた画像表示装置として、被照射面における光強度分布を変動させる液晶デバイスのような空間変調素子を用いるが、これらは画像1コマごとにある光強度分布に固定させており、干渉パターンは一定であるため、スペックルノイズの低減効果は少ない。このため、画像表示用の空間変調素子とは別に、画像1コマの間も被照射面における干渉パターンを変化させ続ける手段を備えることでスペックルノイズを低減させる必要がある。
また、上記の説明では、主に画像表示の用途について説明したが、他の用途に本発明を適用することができることは言うまでもない。すなわち、本発明を用いることにより、レーザ光などのコヒーレント光を利用した各種の光学的な測定や画像の作成等において、測定誤差を解消し、また不鮮明な画像の画質を改良できる。従って、本発明は、レーザを利用した各種の測定機器、画像・映像表示機器、半導体基板上での回路作製に利用される露光・リソグラフ装置、照明装置などにきわめて有用である。
上記の各実施の形態から本発明について要約すると、以下のようになる。すなわち、本発明に係る光源装置は、コヒーレント光によって被照明体を照明する光源装置であって、前記コヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンを変動させるパターン変動部とを備え、前記パターン変動部は、前記コヒーレント光源と前記被照明体との間で且つ前記コヒーレント光の光路上に配設され、フォトリフラクティブ効果を発現するフォトリフラクティブ結晶と、前記フォトリフラクティブ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを変動させる変動部とを含む。
この光源装置においては、フォトリフラクティブ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つが変動されるので、フォトリフラクティブ結晶内の屈折率の変化量を回復させることができる。この結果、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、第1のフォトリフラクティブ効果を発現する第1のフォトリフラクティブ結晶と、結晶の材料組成及び形状のうち少なくとも一方が異なり、前記第1のフォトリフラクティブ効果と異なる第2のフォトリフラクティブ効果を発現する第2のフォトリフラクティブ結晶とを含むことが好ましい。
この場合、例えば、第1のフォトリフラクティブ結晶として、フォトリフラクティブ効果の低減に対する応答速度の遅い材料を用い、第2のフォトリフラクティブ結晶として、屈折率の変化量が大きな材料を用いることにより、スペックルノイズの大きな低減効果を持続的に得ることが可能となる。
前記光源装置は、前記フォトリフラクティブ結晶から出射する前記コヒーレント光の光軸上に配置され、前記コヒーレント光の拡散を抑制する導光部材をさらに備えることが好ましい。
この場合、コヒーレント光の拡散が抑制されるので、光利用効率を高めることができる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、Feを添加したLiNbO3からなる結晶であり、前記Feの添加濃度は、0.002%以上0.1%未満であることが好ましい。
この場合、液晶ディスプレイにおけるスペックルノイズを低減可能な屈折率の変化量が得られるとともに、フォトリフラクティブ効果が低減するまでの時間が1μsを越えるので、変動部をより簡単な構成で実現することができる。
前記変動部は、前記フォトリフラクティブ結晶における前記コヒーレント光の入射位置を振動させる振動部を含み、前記振動部による振動の振幅は、前記フォトリフラクティブ結晶に入射するコヒーレント光のビーム径の20%以上であり、且つ40μm未満であることが好ましい。
この場合、液晶ディスプレイ等におけるスペックルノイズの低減が可能となるとともに、振動による騒音や消費電力の増加を抑制することができる。
前記変動部は、前記コヒーレント光の光軸上に配置される偏向素子を含み、前記偏向素子は、電気光学素子及び音響光学素子のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
この場合、電気光学素子又は音響光学素子による小さな変動が、フォトリフラクティブ結晶内で大きく複雑な屈折率の変化を発生させるため、スペックルノイズを十分に低減することができる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、前記コヒーレント光が入射する入射面と、前記入射面に対向する対向面とに、前記コヒーレント光に対する反射防止膜を備え、前記入射面及び前記対抗面以外の面は、前記コヒーレント光を反射することが好ましい。
この場合、レーザ光の利用効率を高めることができるとともに、レーザ光が結晶内部で反射されることにより、フォトリフラクティブ結晶内の干渉効果が増加し、屈折率の変化が増大するため、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。
前記変動部は、前記コヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを30Hz以上の周期で変動させることが好ましい。
この場合、人間の目が応答できない程度にスペックルノイズを低減することができる。
前記コヒーレント光源は、波長の異なる複数のコヒーレント光を出射する複数のコヒーレント光源を含み、前記複数のコヒーレント光源は、前記複数のコヒーレント光を前記フォトリフラクティブ結晶に入射することにより、前記複数のコヒーレント光の各々が単独で入射した場合に比べて、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンの時間変化を高速化させることが好ましい。
この場合、一つのフォトリフラクティブ結晶内で複数のコヒーレント光が重なり、波長の異なる複数のコヒーレント光に対してフォトリフラクティブ結晶内に発生する屈折率の分布が異なるため、フォトリフラクティブ結晶の屈折率の変化を常に引き起こしつづけることが可能となり、スペックルノイズを持続的に低減することができる。
前記複数のコヒーレント光源のうち少なくとも一つから出射されるコヒーレント光の強度の変動幅は、その平均強度の10%以上であることが好ましい。
この場合、フォトリフラクティブ効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
前記複数のコヒーレント光源のうち第1のコヒーレント光源から出射されるコヒーレント光と、前記第1のコヒーレント光源と異なる第2のコヒーレント光源から出射されるコヒーレント光とは、光強度分布、偏光方向及び強度のうち少なくとも一つが異なることが好ましい。
この場合、フォトリフラクティブ効果を増大させることが可能となり、スペックルノイズの低減が難しいプロジェクタ型の画像表示装置のスペックルノイズ低減が可能となる。
前記複数のコヒーレント光源から出射される複数のコヒーレント光のうち、最も波長の長いコヒーレント光の波長は、最も波長の短いコヒーレント光の波長の1.14倍以上であることが好ましい。
この場合、スペックルノイズのより大きな低減効果が得られる。
前記フォトリフラクティブ結晶は、フォトリフラクティブ効果とともに、熱レンズ効果をも発現する結晶を含むことが好ましい。
この場合、フォトリフラクティブ効果及び熱レンズ効果により結晶内の屈折率が大きく変化するので、スペックルノイズを十分に低減することができる。
本発明に係る他の光源装置は、コヒーレント光によって被照明体を照明する光源装置であって、前記コヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、前記被照明体の表面における前記コヒーレント光の干渉パターンを変動させるパターン変動部とを備え、前記パターン変動部は、前記コヒーレント光源と前記被照明体との間で且つ前記コヒーレント光の光路上に配設され、熱レンズ効果を発現する熱レンズ結晶と、前記熱レンズ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つを変動させる変動部とを含む。
この光源装置においては、熱レンズ結晶に入射されるコヒーレント光の光強度分布、偏光方向、波長及び強度のうち少なくとも一つが変動されるので、熱レンズ結晶内の温度分布と、それによる屈折率分布とが変化する。この結果、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明に係る照明装置は、上記の光源装置と、前記光源装置からの光を導く光学系とを備える。
この照明装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明に係る画像表示装置は、上記の光源装置と、空間変調素子と、前記光源装置から出射する光を前記空間変調素子に導く光学系とを備える。
この画像表示装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができる。
本発明に係る他の画像表示装置は、コヒーレント光を出射する光源装置と、前記光源装置からコヒーレント光を照射され、フォトリフラクティブ効果を発現するフォトリフラクティブ結晶を含むスクリーン部材とを備え、前記光源装置は、前記スクリーン部材を照射するコヒーレント光の光強度分布及び偏光方向のうち少なくとも一つを変動させる。
この画像表示装置においては、騒音及び消費電力が小さく、且つ、観測者の網膜上に発生する干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを持続的に低減することができるとともに、画像表示装置としての視野角の拡大も可能となる。
本発明によれば、騒音及び消費電力が小さく、且つ、照射面における干渉パターンを時間的に変化させることによってスペックルノイズを低減することができるので、本発明は、レーザ光等のコヒーレント光を用いた光源装置、照明装置及び画像表示装置などにきわめて有用である。