JPWO2009078386A1 - 組織形態保持および核酸品質保持に優れた新規標本作製法 - Google Patents

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Abstract

組織形態の保持と核酸(特にRNA)の質の保持を両立する標本作製方法を開発することを目的する。さらに該方法で作製された標本よりマイクロダイセクション法によって所望の細胞を採取し、所望の細胞の遺伝子発現を解析することを目的とする。以下の工程を含む凍結または未凍結の全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)の標本作製方法:1)目的とする臓器または組織をPFA液で固定する;2)AMeX法によるパラフィン包埋を行う。

Description

発明の属する技術分野
本発明は、組織形態の保持および核酸の品質保持に優れた、組織の標本作製法に関する。さらに詳しくは、本発明は、PFA液による固定とAMeX法によるパラフィン包埋法を併用した組織の標本作製法に関する。本発明はまた上記作製法で得られる組織標本、該組織標本中の細胞におけるmRNAの品質検定方法、および該組織標本を用いる、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析に適したサンプルの作製方法に関する。
臨床サンプルあるいは動物実験サンプルを用いたGene Chip(DNAマイクロアレイ)による遺伝子発現解析を行う場合、ある程度の大きさの組織片から核酸を抽出し、解析に用いるのが一般的であった。しかし組織片中には標的とする細胞以外の種々の細胞が含まれるため、これら種々の細胞を包括した解析となっていた。この点を改善するため、病理組織学的手法によって作製された薄切切片上から標的とする特定の細胞を採取(マイクロダイセクション)し用いる方法が開発された。近年では複数のメーカーから専用の機器が販売され、広く用いられるようになって来ている。
マイクロダイセクションには、OCTコンパウンドなどに包埋された凍結組織サンプルを薄切して用いる方法が一般的である。凍結組織サンプルによる薄切切片(凍結切片)は新鮮な組織片に凍結処理を加えただけであり、核酸の質の保持に優れている。しかしながら、凍結切片は組織形態の保持が悪く、使用する組織あるいは標的とする細胞の種類によっては細胞識別能が不十分である場合が多い。例えば、前立腺癌組織のように正常部位、過形成部位、前癌部位(PIN; prostatic intraepithelial neoplasia)、癌部位が混在する場合、癌細胞のみを識別して採取する事は非常に困難であった。一方、従来から行われてきたホルマリン固定パラフィン切片では良好な組織形態の保持を実現できる反面、固定およびプロセッシング過程における核酸の分解・劣化が甚だしく、質の良い核酸(RNA)を用いた精度の高い遺伝子発現解析が不可能であった。
組織を固定する行為は、タンパクや核酸を変性させる方法でもあることから、組織形態の保持と核酸の劣化の防止はいわば相反する課題となる。発明者らは以前、組織形態の保持と抗原タンパクの維持という背反する課題を、長年研究を重ねPLP-AMeX法を開発する事で解決した(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)。PLP(Periodate-lysine-paraformaldehyde)固定液は、免疫反応への影響を最小限にして組織形態を保持するため、免疫組織化学的染色を目的とした凍結切片を作製するために開発されたものである(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。ここで、PLP固定液は、過ヨウ素酸塩−リジン−パラホルムアルデヒドからなる固定液をいい、一般的組成は、0.01M NaIO4 - 0.075M リジン - 0.0375M リン酸緩衝液 - 2% パラホルムアルデヒドである。パラホルムアルデヒド濃度は適宜調節することができ、一般には1 - 6 %の範囲で使用する。一方AMeX(acetone, methyl benzoate and xylene method)法は、Satoらにより開発された比較的新しいパラフィン包埋法(非特許文献6、非特許文献7)で、通常のパラフィン切片では検出が困難な抗原も可能である事が報告されている。
特開2002-82026 Suzuki M et. al., Histol Histopathol 1999; 46: 679-86 Suzuki M et al., Exp Anim 1998; 47: 211-14 McLean IW et al., J Histochem Cytochem 1974; 22: 1077-83 Sisson Sp et al., J Histochem Cytochem 1980; 28: 441-52 Rantala I et al., J Histochem Cytochem 1982; 30: 932-37 Sato Y et al., Am J Pathol 1986; 125: 431-35 Sato Y et al., Am J Pathol 1992; 140: 775-79
以上に述べた従来の標本作製法では組織形態の保持と核酸の質の保持を両立することは困難であった。本発明は組織形態の保持と核酸(特にRNA)の質の保持を両立する標本作製方法を開発することを目的する。さらに該方法で作製された標本よりマイクロダイセクション法によって所望の細胞を採取し、所望の細胞の遺伝子発現を解析することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、PFA(paraformaldehyde)固定法とAMeX法によるパラフィン包埋法を併用することによって、組織形態の保持と核酸(特にRNA)の質の保持に優れた標本を作製できることを発見した。
さらに本発明者らは組織バンクの組織の利用において大変意義のある技術開発を行った。一般的な組織バンクおいて、組織サンプルは凍結保存されたもの (SNAP-Frozenサンプル)が主流であり、これらは主に核酸やタンパク質の抽出に用いられてきた。またSNAP-Frozen サンプルを用いた凍結切片の作製が一般的には可能であるが、通常のパラフィン切片に比べて組織形態の保持が悪く細胞識別が充分に行えないことが多くある。本発明者らは、SNAP-FrozenサンプルをPFA-AMeX-Paraffin法によって処理する事で、核酸(特にRNA)の品質を損なうことなく、組織形態の保持にも優れたパラフィンブロックの作製が行えることも発見した。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)以下の工程を含む凍結または未凍結の全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)の標本作製方法:
1)目的とする臓器または組織をPFA液で固定する;
2)AMeX法によるパラフィン包埋を行う。
(2)PFA液による固定を浸漬により行う(1)記載の方法。
(3)AMeX法によるパラフィン包埋を行った後に、薄切切片を作製する工程をさらに含む(1)または(2)記載の方法。
(4)得られた薄切切片の脱パラフィンおよび親水化の工程をさらに含む(3)記載の方法。
(5)組織染色、免疫組織化学的染色又は酵素組織化学的染色をさらに行う(4)記載の方法。
(6)前立腺組織の標本作製方法である(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前立腺癌組織の標本作製方法である(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載の方法によって得られる、全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)の標本。
(9)前立腺組織標本である(8)記載の標本。
(10)前立腺癌組織標本である(8)記載の標本。
(11)以下の工程を含む臓器又は組織標本中の細胞におけるmRNAの品質検定方法:
1)(1)〜(7)のいずれかに記載の方法によって得られる臓器又は組織標本より所望の細胞を採取する;
2)採取した所望の細胞からtotal RNAを抽出する;
3)抽出されたtotal RNAより逆転写反応を行いcDNAを合成する;
4)合成したcDNAを鋳型としてβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域をPCRにより増幅する;
5)増幅されたβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域の産物量比を算出して、3 末端側領域/5 末端側領域のPCR産物の比が一定値以下となるものを良好なmRNAの品質を有すると判断する。
(12)臓器又は組織標本より所望の細胞をマイクロダイセクションによって採取する(11)記載の方法。
(13)以下の工程を含むDNAマイクロアレイ用サンプルの作製方法:
1)(1)〜(7)のいずれかに記載の方法によって得られる臓器又は組織標本より所望の細胞を採取する;
2)採取した所望の細胞から以下の方法によって細胞中のmRNAの品質検定を行う;
a)採取した所望の細胞からtotal RNAを抽出する;
b)抽出されたtotal RNAより逆転写反応を行いcDNAを合成する;
c)合成したcDNAを鋳型としてβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域をPCRにより増幅する;
d)増幅されたβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域の産物量比を算出して、3 末端側領域/5 末端側領域のPCR産物の比が一定値以下となるものを良好なmRNAの品質を有すると判断する;
3)ステップ2)の方法で良好なmRNAの品質を有すると判断された細胞からtotal RNAを抽出し、これからcDNAを合成し、さらに cRNAを合成する。
(14)(12)の方法で得られたサンプルを用いて、DNAマイクロアレイで階層的クラスタリング解析を行う方法。
PFA固定法とAMeX法によるパラフィン包埋法を併用したPFA-AMeX-Paraffin法は組織の形態保持と核酸の質の保持の両方に優れた標本作製方法であり、本方法は凍結組織では細胞の識別が不十分であるような組織(例えば前立腺癌組織)において、組織の形態観察を行いマイクロダイセクション法により目的とする細胞を採取し、さらにそれらの細胞の遺伝子発現解析をDNAマイクロアレイを用いて行う際に、極めて有用であることが示された。
さらに本発明者らは凍結保存されたサンプル(SNAP-Frozen サンプル)をPFA-AMeX-Paraffin法によって処理することにより、核酸の品質を損なうことなく、組織形態の保持にも優れたパラフィンブロックの作製が行えることを見出した。これによりPFA-AMeX-Paraffin法は一般的な組織バンク(組織サンプルは通常凍結保存されている)の凍結組織から核酸の質を損なうことなく、組織形態保持に優れたパラフィンブロック作製に極めて有用であることが示された。
ヒト前立腺癌臨床組織凍結組織標本よりの薄切切片のHE染色組織像を顕微鏡で観察した写真である。 ヒト前立腺癌臨床組織PFA-AMeX-Paraffin標本よりの薄切切片のHE染色組織像を顕微鏡で観察した写真である。 前立腺癌および前立腺過形成組織における遺伝子発現プロファイルの階層的クラスタリング解析の結果と各検体の組織形態観察の結果を示した図である。組織形態観察は、前立腺癌取扱い規約第3版(日本泌尿器学会、日本病理学会(編)、金原出版、2001)に記載の基準をもとに判断した。デンドグラム中128、112、133および140は前立腺患者の組織由来のサンプルであったが、組織形態観察した結果、前立腺過形成に該当した。 SNAP-Frozen(凍結)ヒト前立腺癌組織からPFA-AMeX-Paraffin法によって作製された標本よりの薄切切片のHE染色組織像を顕微鏡で観察した写真である。
発明を実施するための形態
本発明の標本作製法が使用できる動物は、その種類を問わず、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など幅広く使用でき、特に哺乳類が好ましい。
本発明において、「全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)」とは、上記動物の全身に分布するあらゆる臓器又は組織であって骨組織などの硬組織を除いたものをいう。本発明の方法に特に適した臓器又は組織は、前立腺組織である。
本発明の方法は、凍結または未凍結の臓器又は組織に用いることができる。したがって、SNAP-Frozenサンプルなどの組織バンクから得られる凍結保存された組織サンプルを含む。
本発明の方法では、動物から摘出した臓器又は組織をまずPFA液で固定する。 PFA液とはパラホルムアルデヒドの1〜6%水溶液にリン酸緩衝液などの緩衝液を加えた細胞固定溶液であり、好ましくは4% PFA固定液(4%パラホルムアルデヒド/0.01M PBS(pH7.4))を用いる。
本発明におけるPFA固定液による固定は、目的とする臓器又は組織を1〜6%、好ましくは4%のパラホルムアルデヒドを含むPFA固定液に、0〜8℃、好ましくは約4℃の温度で、2〜40時間、好ましくは6〜30時間浸漬することにより行うことができる。
次いで、固定した臓器又は組織をリン酸緩衝食塩水などで洗浄する。このとき、観察したい臓器又は組織の部分を切り出した後、洗浄してもよい。
このようにして調製した臓器又は組織を次にAMeX法でパラフィン包埋を行う。AMeX法は、冷アセトン固定、アセトンによる脱水、安息香酸メチルとキシレンによる透徹及びパラフィン包埋を一連の操作とする、パラフィン包埋法である。具体的には、−25〜8℃、好ましくは−20〜6℃のアセトンに2〜24時間、好ましくは4〜16時間浸漬し、次に組織を入れたアセトンを室温に戻す、あるいは室温のアセトンに臓器又は組織を移した後、室温で0.5〜5時間、好ましくは1〜4時間脱水する。次に、安息香酸メチル中に室温で0.5〜3時間、好ましくは0.5〜2時間浸漬、キシレン中に室温で0.5〜3時間、好ましくは0.5〜2時間浸漬して透徹を行い、その後55〜65℃、好ましくは58〜62℃のパラフィンに1〜4時間、好ましくは1〜3時間浸透して包埋する。このようにしてPFA-AMeX法で得られた臓器又は組織のパラフィンブロックは使用時まで低温で保存する。
使用時には、上記で得られたパラフィンブロックを、ミクロトームなどを用いて薄切切片を作製し、さらに薄切切片の脱パラフィン及び親水化を行う。脱パラフィン及び親水化は公知の方法により実施することができる。例えば、脱パラフィンはキシレン、トルエンにより実施し、また親水化はアルコール、アセトンにより実施することができる。
このようにして得られた薄切切片はさらに必要に応じて組織染色、免疫組織化学的染色又は酵素組織化学的染色を行って観察に供する。
本発明の方法で作製した標本を組織染色(特殊染色)するときには、通常のパラフィン包埋切片で可能な染色は何でも使用することができる(例えば、PAS染色、ギムザ染色、トルイジンブルー染色など)。また、免疫組織化学的染色に適した抗体は全て使用可能である(例えば、細胞表面抗原、細胞骨格、細胞外マトリックス、サイトカイン、接着分子などに対する各種抗体)。酵素組織化学的染色は、切片上で可能な染色が使用できる(例えば、ALP、ACP、TRAP、エステラーゼなどの種々の染色)。また、病理組織を染色するには、一般染色として、ヘマトキシリン、エオジン(Hematoxylin-Eosin)染色;膠原線維用として、ワン・ギーソン(Van Gieson)染色、アザン(Azan)染色、マッソントリクローム(Masson Trichrome)染色;弾性線維用として、ワイゲルト(Weigert)染色、エラスチカワンギーソン(Elastica Van Gieson)染色;細網線維・基底膜用として、渡辺の鍍銀染色、PAM染色(Periodic acid methenamine silver stain)などを用いることができる。
本発明はまた、上記方法により得られる全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)の標本を提供する。特に好ましい標本は、前立腺組織、前立腺癌組織であるが、これに限定されない。
本発明の方法で得られる臓器または組織標本は、臓器または組織標本中の細胞におけるtotal RNAの定量とmRNA品質の検定に用いることができる。組織標本から所望の細胞を採取するにはマイクロダイセクション法、特にレーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いることが好ましい。LMD法は、顕微鏡にレーザー照射装置が接続された機器を使って、顕微鏡下で組織切片を観察しながら、切片上の標的とする細胞塊をレーザーによって切り出し、採取、回収することのできる新しい研究ツールである。この手法は、生体組織から標的細胞群を採取することができるため、生体内において特定の遺伝子が、組織を構成する様々な細胞のうち、どの細胞にどれだけ発現しているのかを正確に知ることができる。マイクロダイセクションを行う機器として、例えばAS-LMDシステム(Leica Microsystems社製)を用いることができる。
次いで採取した所望の細胞から公知の方法によりtotal RNAを抽出してこれを定量することができる。また、RNA定量後、オリゴdTプライマーと逆転写酵素を用いてmRNAを逆転写し、cDNAを合成する。合成したcDNAを鋳型としてβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域をPCRにより増幅して、増幅されたβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域の産物量比を算出することにより、total RNAの劣化を検定したり、あるいはmRNA品質の検定を行うことができる。β-アクチンは、どの組織・細胞でも多量に発現している遺伝子であるため、いろいろな組織・細胞に含まれるRNAの品質を比べる際の、指標として用いることができる。本発明では、3 末端側領域/5 末端側領域のPCR産物の比が一定値以下となるものを良好なmRNAの品質を有すると判断する。3 末端側領域/5 末端側領域のPCR産物の比は好ましくは、20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
本発明はさらに、上記方法によってmRNA品質が良好であると判断されたサンプルを用いてDMAマイクロアレイ用サンプルを作製することができる。mRNA品質が良好であると判断されたサンプルのtotal RNAから、例えばAffymetrix社の提供する標準的な方法でラベル化cRNAプローブを作製し、DMAマイクロアレイを用いて遺伝子発現データを取得して、クラスタリング解析を行うことができる。
例えば、階層的クラスタリング(階層的クラスタ解析手法)では、類似度でデータを階層的に分類し、その結果は樹形図で表現することができる。この手法を用いると細かい分類から大まかな分類までクラスタ間の包含関係が理解しやすい。後述する実施例に示すように、PFA-AMeX-Paraffin法で作製した標本から得られた細胞を用いた場合には、前立腺癌検体間と前立腺過形成検体間では、遺伝子発現パターンが異なっており、前立腺癌検体群と前立腺過形成検体群が独立のクラスターとして分かれた。一方、前立腺癌検体同士、また前立腺過形成検体同士では類似性の高い遺伝子発現パターンであった。さらに、前立腺癌の中でも形態的観察より低分化型腺癌、中分化型腺癌と判定された検体において、低分化型腺癌検体同士、あるいは中分化型腺癌検体同士のほうが、遺伝子発現パターンの類似性がより高いことが判り、形態観察で低分化と判定された検体が先にクラスターを形成する結果となっており、形態観察の結果を忠実に反映する遺伝子発現パターンが得られていた。
一般的な組織バンクにおいて、組織サンプルは凍結保存されたもの (SNAP-Frozenサンプル)が主流であり、これらは主に核酸やタンパク質の抽出に用いられてきた。また組織形態観察についてはSNAP-Frozen サンプルを用いた凍結切片の作製が一般的には可能であるが、通常のパラフィン切片に比べて組織形態の保持に難点があった。このため、SNAP-Frozenサンプル(凍結組織)についてPFA-AMeX-Paraffin法により標本を作製し、該標本の組織形態保持およびmRNA品質について評価を行った。その結果、SNAP-Frozen(凍結) サンプルからPFA-AMeX-Praffin法によって作製された標本のパラフィン薄切切片では、未凍結組織より作製されたPFA-AMeX-Praffin標本のパラフィン薄切切片とほぼ同等の組織形態識別が可能であり、また未凍結サンプルより作製された標本とほぼ同等の品質のmRNAが保持されていることが確認できた。
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、実施例の態様に限定されず、さまざまな変更、修飾が当業者には可能である。本発明はこれらの変更、修飾を含むことを意図する。
なお、以下の実施例においては、全ての検体に関して、患者からのIC(Informed Consent)が得られ、研究目的の利用が同意されたものを用いた。
実施例1:標本作製
(1)PLP-AMeX Paraffin法もしくはPFA-AMeX Paraffin法による標本作製および組織形態の観察
摘出した組織を研究目的に使用することを同意した前立腺癌もしくは前立腺肥大症の患者の組織を使用した。入手したサンプルは、約5mm3大にトリミングし、4℃のPLP固定液(0.01 M 過ヨウ素酸塩 , 0.075 M リジン、0.0375M リン酸緩衝液、4%パラホルムアルデヒド)、もしくは4% PFA固定液(4%パラホルムアルデヒド/0.01M PBS(pH7.4))中で16時間から24時間固定した。固定したサンプルは、0.01M PBS溶液で洗浄処理(4℃、2時間)した後に、アセトンによる脱水処理(4℃、overnightおよび室温、30分4回)を行い、メチルベンゾエートによる処理(室温、30分2回)、キシレンによる透徹処理(室温、30分2回)を行った。その後、60℃のパラフィン液に浸漬(40分3回)し、パラフィン包埋処理を行い、4℃で保存した。
(2)PFA-Paraffin法による標本作製
摘出した組織を研究目的に使用することを同意した前立腺癌もしくは前立腺肥大症の患者の組織を使用した。入手したサンプルは、約5mm3大にトリミングし、4℃のPFA固定液中で16時間から24時間固定した。固定したサンプルは、エタノールによる段階的な脱水処理(70% エタノール 室温2 時間、80% エタノール 室温1.5 時間、90% エタノール 室温 1.5 時間、95% エタノール 室温1.5 時間、100% エタノール 室温2 時間3回)およびキシレンによる透徹処理(キシレン 室温1時間2回、室温1.5時間1回)を行った。その後、60℃のパラフィン液に浸漬(1.5時間1回、2時間2回)し、パラフィン包埋処理を行い、室温で保存した。
(3)NBF-Paraffin法による標本作製
摘出した組織を研究目的に使用することを同意した前立腺癌もしくは前立腺肥大症の患者の組織を使用した。入手したサンプルは、約5mm3大にトリミングし、4℃の20%NBF固定液(20%ホルマリン/0.1M PB(pH7.4))中で16時間から24時間固定した。固定したサンプルは、エタノールによる段階的な脱水処理(70% エタノール 室温2 時間、80% エタノール 室温1.5 時間、90% エタノール 室温 1.5 時間、95% エタノール 室温1.5 時間、100% エタノール 室温2 時間3回)およびキシレンによる透徹処理(キシレン 室温1時間2回、室温1.5時間1回)を行った。その後、60℃のパラフィン液に浸漬(1.5時間1回、2時間2回)し、パラフィン包埋処理を行い、室温で保存した。
(4)凍結標本作製
摘出した組織を研究目的に使用することを同意した前立腺癌もしくは前立腺肥大症の患者の組織を使用した。入手したサンプルは、約5mm3大にトリミングし、プラスティック製皿(クリオモルド(登録商標)、サクラファインテック社製)に充たしたOCTコンパウンド(サクラファインテック社製)中に埋め、ドライアイスおよびアセトンで周囲を満たし冷却したヘキサン液面に浮かべ、OCTコンパウンドを冷却し固めた。作製した凍結ブロックはプラスティック製皿ごとヘキサンを入れたプラスティック製容器に移し、−80℃に保管した。
(5)ヒト前立腺癌培養細胞(LNCaP細胞)組織よりの標本作製
超免疫不全マウス(NOG マウス)にLNCap細胞(ヒト前立腺癌in vitro/in vivo細胞株)を移植し、移植後54日から67日目にマウスより採取し、約5mm3にトリミングした後、前述の4つの標本作製方法(PFA-AMeX-Paraffin法、PFA-Paraffin法、NBF-Paraffin法、未固定凍結法)に従って処理を行い、それぞれの標本を作製した。
実施例2:組織形態の観察
PFA-AMeX-paraffin法により作製したパラフィンブロックよりの薄切切片作製および染色には市販されている一般的な機器、試薬類を使用した。具体的にはパラフィン薄切切片は、一般的な方法に従ってパラフィンブロックより4 μm厚のパラフィン切片を作製し、AS-LMDシステム(Leica Microsystems社製)用のフォイル付フレームにマウント後、乾燥させた。キシレンによる脱パラフィン処理(室温15 秒 2回)およびアセトンによる親水処理(室温15 秒2回)を行った後、RNase-free水で水洗し、マイヤー・ヘマトキシリン液(室温 10秒)に浸漬した。再度RNase-free水で水洗し、エオジン液(室温10秒)に浸漬後、エタノールによる脱水処理(100% エタノール、室温10秒)を行った。ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色を行った切片を乾燥後に、AS-LMDシステムの顕微鏡下で組織形態を観察した。
未固定凍結法により作製したOCT-compound包埋凍結組織ブロックよりの薄切切片作製、染色には、一般的な機器、試薬類を使用した。具体的には凍結薄切切片は、一般的な方法に従って凍結ブロックより6 μm厚の凍結切片を作製し、AS-LMDシステム(Leica Microsystems社製)用のフォイル付フレームにマウントした。メタノールによる固定処理(室温5分)を行った後、RNase-free水で水洗し、マイヤー・ヘマトキシリン液(室温 30秒)に浸漬した。再度RNase-free水で水洗し、エオジン液(室温30秒)に浸漬後、エタノールによる脱水処理(100% エタノール、室温10秒)を行った。HE染色を行った凍結切片を乾燥後にAS-LMDシステムの顕微鏡下で組織形態を観察した。
凍結切片およびPFA-AMeX法によるパラフィン切片の前立腺癌の組織形態を比較したところ、凍結切片では(図1)、前立腺上皮細胞の核および核仁の形態、基底細胞の識別が難しく、前立腺癌とそれ以外の病変(PIN、過形成病変)との識別が困難であった。それに対し、PFA-AMeX法によるパラフィン切片では(図2)、上記所見が明瞭に確認できるため、前立腺癌の識別が可能であった。
実施例3:4種の標本作製法により作製した標本からのtotal RNA抽出、定量およびmRNA品質の比較
NOGマウスに移植したヒト前立腺癌培養細胞(LNCaP細胞)の同一腫瘍組織を用いて前述の4つの標本作製方法(未固定凍結法、PFA-AMeX-Praffin法、PFA-Paraffin法、NBF-Paraffin法)で標本を作製し、その薄切切片からtotal RNAを抽出し、mRNA品質の比較を行った。
(1)薄切切片よりのtotal RNAの抽出
PFA-AMex-Paraffin法、PFA-Paraffin法、NBF-Paraffin法で作製した標本のパラフィン薄切切片をそれぞれ別々のチューブ(0.2mL)に回収し、脱パラフィン処理(キシレン、室温15秒3回)および親水処理(100%エタノール、室温15秒)を行った後、薄切切片を乾燥させた。その後Lysis buffer 205 μL(溶解バッファー、20 mM Tris-HCl, 20mM EDTA, 1% SDS, 500 μg/mL Proteinase K)を加え、採取組織を回収したチューブを加熱処理(60℃、16時間および95℃、10分)をした後に、冷却し、45μLのRNase-free waterを加え、さらに750 μLのTrizol-LS (invitrogen社)を加えた。Trizol-LS添加後、室温で5分間放置し、200 μLのChloroform-Isoamyl alcohol液を加え、10分間室温で放置後遠心した。上清を回収し、50μLの 3M NaOAcと4μLの5 mg/mLのグリコーゲンを加え、攪拌後500 μLのイソプロピルアルコールを加え、10分間室温で放置後、遠心した。上清を除き、1 mLの75%エタノールを加えペレットをリンスした。さらに100%エタノールでリンスした後、ペレットを風乾後、14 μLのRNase-free waterを加え、RNAペレットを融解し、−80℃で保存した。
凍結法により作製した標本の薄切切片からはRNeasy MinElute Kit(QIAGEN社)を用いてtotal RNAを抽出し、−80℃で保存した。
(2)total RNAの定量とmRNA品質の検定
total RNA量はRiboGreen RNA Quantification Kit (Molecular Probes社)を用いて定量した。RNA定量後、5 ngのRNAを別のチューブへ小分けしDNase処理し混入しているDNAを分解した後、オリゴdTプライマーと逆転写酵素(Superscript II RNase H- reverse Transcriptase; Invitorogen社)を用いてmRNAを逆転写し、ヒトβ-actin mRNA(X00351,1761bp)(cDNAの配列を配列番号1に示す)の5プライムサイド(増幅領域:1369位-1521位,153bp)と3プライムサイド(増幅領域:1600位-1758位、159bp)のプライマーを用いて増幅し、サイバーグリーンを用いて双方のPCR産物を定量した。
5'側(1369-1521、153bp)のPCRを行うプライマーとして以下のものを用いた。
5'-ACAATGTGGCCGAGGACTTT-3' (1369-1388, 20mer)(配列番号:2)
5'-TGTGTGGACTTGGGAGAGGA-3' (1521-1502, 20mer)(配列番号:3)
3'側(1600-1758、159bp)のPCRを行うプライマーとして以下のものを用いた。
5'-TTGTTTTATTTTGAATGATGAGCCTTCGT-3' (1600-1628, 29mer)(配列番号:4)
5'-GGTGTGCACTTTTATTCAACTGGTC-3' (1758-1734, 25mer)(配列番号:5)
基礎検討から、5プライム領域の増幅産物が1ユニット以上、3プライム領域の増幅産物が15 ユニット以上、3 プライム領域/5 プライム領域のPCR産物の比が20以下のRNAサンプルは信頼性の高いGene Chipデータ(Affymetrix Human X3P arrayで% present-call 値(array上に搭載されている遺伝子のうち何%の遺伝子が“発現している”と判断されたかを示す値)が30%以上となるもの)が取得できる事が確認されており、これらの値を基準値として、サンプルの良否を判定した。
(3)4種の標本作製方法で作製した標本におけるmRNA品質の比較
4種の標本作製方法で作製した標本におけるmRNA品質の比較の結果を表1に示す。
Figure 2009078386
3プライム領域/5プライム領域のPCR産物の比の平均値は、凍結切片では1.14、PFA-AMeX-Paraffin法で処理したサンプルでは2.78、NBF-Paraffin法で処理したサンプルは4.27となった。PFA-Paraffin法で処理したサンプルは、3プライムサイドが劣化によりPCR産物が増幅されずPCR産物の比が取れなかった。なお、PCR反応におけるゲノムDNA混入の可能性を除外するため、逆転写反応を行わずにPCRを行ったところ、逆転写反応を行わなかったサンプルではPCR増幅産物は得られず、PCR増幅産物が逆転写反応で作られたcDNA由来であることが確認された。
この結果、4種の標本作製法で作製した標本におけるmRNAの質は、凍結処理法が最も良く、次いでPFA-AMeX-Paraffin法、その次がNBF-Paraffin法であり、PFA-Paraffin法が最も悪いことが判った。
実施例4:PFA-AMeX-Paraffin法とPFA-Paraffin法で作製したヒト前立腺癌組織標本のmRNA品質の比較
PFA-AMeX-Paraffin法またはPFA-Paraffin法により作製されたヒト前立腺癌組織標本のmRNA品質比較を行うため、ヒト前立腺癌組織PFA-AMeX-Paraffin標本79検体、ヒト前立腺癌組織PFA-Paraffin69検体より薄切切片を作製し、実施例3に記載の方法でtotal RNAの抽出、定量およびmRNA品質の検定を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2009078386
PFA-Paraffin法で作製されたヒト前立腺癌組織標本ではmRNA品質を検定した全検体のうち21.7%のみ (69検体中15検体)が良いmRNA品質であると判定されたのに対し、PFA-AMeX-paraffin法で作製されたヒト前立腺癌組織標本ではmRNA品質を検定した全サンプルのうち67.1%(79サンプル中53サンプル)が良いmRNA品質であると判定された。すなわち、PFA-paraffin組織標本に比べてPFA-AMeX-paraffin組織標本では良いmRNA品質と判定される検体の割合が45.4%向上するという大幅なmRNA品質の改善が確認された。
実施例5:薄切切片からのAS-LMDシステムによる組織の採取および採取組織からのtotal RNA抽出、定量、mRNA品質の検定およびGeneChipデータの取得
(1)AS-LMDシステムによる組織の採取
ヒト前立腺組織については実施例2に記載の方法でPFA-AMeX-paraffin標本を作成し、HE染色を行った薄切切片を乾燥後にAS-LMDシステム(Leica Microsystems社製)によるサンプル採取を行い目的とする細胞を採取した。具体的には、AS-LMDシステムのモニター上に映し出される画像から前立腺癌部および前立腺過形成部を識別し、レーザーで癌部および過形成部をそれぞれ別々のチューブ(0.2 mL)に回収した。チューブにはサンプル(採取組織)よりのtotal RNA 抽出のために、サンプル回収前に30 μLのLysis buffer(溶解バッファー、20 mM Tris-HCl, 20mM EDTA, 1% SDS, 500 μg/mL Proteinase K)を加えておき、サンプル回収後にさらに175 μLの溶解バッファーを加えた。
(2)採取組織からのtotal RNA抽出、定量およびmRNA品質の検定
マイクロダイセクションにより採取した組織からのtotal RNA抽出、定量およびmRNA品質の検定は実施例3に記載の方法と同様に行った。
(3)GeneChipデータの取得
mRNA品質検定において5プライム領域の増幅産物が1ユニット以上、3プライム領域の増幅産物が15ユニット 以上、3 プライム領域/5 プライム領域のPCR産物の比が20以下のRNAサンプルは信頼性の高いGene Chipデータ(Affymetrix Human X3P arrayで% present-call 値が30%以上となるもの)が取得できる事が基礎検討より確認されており、これらの値を基準値として、サンプルの良否を判定した。基準値を満たし、良い品質のmRNAが含まれることを確認したサンプルのtotal RNAからAffymetrix社の提供する標準的な方法でラベル化cRNAプローブを作製し、Human X3P array(Affymetrix社)を用いて遺伝子発現データを取得した。取得した遺伝子発現データのうちPresent-call値が30%以上となるデータを信頼性の高いデータとし、これらについてクラスタリング解析を行った。
実施例6:前立腺癌組織および前立腺過形成組織における遺伝子発現データの解析
実施例5において取得された前立腺癌および前立腺過形成組織における遺伝子発現データについて階層的クラスタリング解析(Hierarchical clustering)を行ない、遺伝子発現パターンの類似性を検討した。具体的にはGeneChipの遺伝子発現においてpresent-call値が30%以上を示した前立腺癌組織11検体および前立腺過形成組織42検体の遺伝子発現データについてGC-RMA法で、シグナル値(遺伝子の発現量を示す値)を算出し、これを対数値に変換し, mean center化(平均化:平均化とはデータセットの中心にプロットの原点を移動することであり、つまり各変数の平均値はゼロとなる。)を行った後、階層的クラスタリングを行なった。階層的クラスタリングはRパッケージ(Rは統計的な計算およびグラフィックのためのフリーソフトウェア)のpvclustパッケージを用いて行った。
クラスタリング解析の結果を図3に示す。図3の樹形図(デンドグラム)で示されるように前立腺癌検体間と前立腺過形成検体間では、遺伝子発現パターンが異なっており、前立腺癌検体群と前立腺過形成検体群が独立のクラスターとして分かれた。一方、前立腺癌検体同士、また前立腺過形成検体同士では類似性の高い遺伝子発現パターンであった。
さらに、前立腺癌の中でも形態的観察より低分化型腺癌、中分化型腺癌と判定された検体において、低分化型腺癌検体同士、あるいは中分化型腺癌検体同士のほうが、遺伝子発現パターンの類似性がより高く、形態観察により低分化型と判定された検体が先にクラスターを形成する結果となっており、形態観察結果を忠実に反映する遺伝子発現パターンが得られていた。同様の実験およびデータ解析を前立腺凍結組織標本を用いて行った場合、PFA-AMeX-Paraffin前立腺組織標本を用いた時のように組織形態観察結果を遺伝子発現パターンが忠実に反映するという結果は得られていない。
実施例7:PFA-AMeX法により処理したSNAP-Frozenサンプルの組織形態およびRNA品質
一般的な組織バンクにおいて、組織サンプルは凍結保存されたもの (SNAP-Frozenサンプル)が主流であり、これらは主に核酸やタンパク質の抽出に用いられてきた。また組織形態観察についてはSNAP-Frozen サンプルを用いた凍結切片の作製が一般的には可能であるが、通常のパラフィン切片に比べて組織形態の保持に難点があった。このため、SNAP-Frozenサンプル(凍結組織)についてPFA-AMeX-Paraffin法により標本を作製し、該標本の組織形態保持およびmRNA品質について評価を行った。
(1)SNAP-Frozen組織からのPFA-AMeX-Paraffin標本作製
摘出した組織を研究目的に使用することを同意した前立腺癌もしくは前立腺肥大症の患者の凍結組織(SNAP-Frozen組織)を使用した。SNAP-Frozenサンプルは、約5mm3大にトリミングし、実施例1のPFA-AMeX-Paraffin法により、標本を作製した。
(2)組織形態の比較
SNAP-Frozen(凍結) サンプルからPFA-AMeX-Praffin法によって作製された標本のパラフィン薄切切片では、HE染色後の形態観察においてわずかに核の空胞化が認められたものの、未凍結組織より作製されたPFA-AMeX-Praffin標本のパラフィン薄切切片とほぼ同等の組織形態識別が可能であった。(図4)
(3)mRNAの品質検定
SNAP Frozen(凍結)サンプルからPFA-AMeX-Paraffin法で作製された標本より、実施例4に記載の方法でtotal RNA抽出、定量およびmRNAの品質検定を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2009078386
mRNA品質検定を行った10検体中7検体(70.0%)が良い品質のmRNAであると判定された。未凍結組織サンプルから作製されたPFA-AMeX-Paraffin標本では67.1%の検体(79検体中53検体)が良い品質のmRNAであると判定されており(実施例4、表2), SNAP Frozen (凍結)サンプルより作製されたPFA-AMeX-Paraffin標本においても未凍結サンプルより作製された標本とほぼ同等の品質のmRNAが保持されていることが確認できた。

Claims (14)

  1. 以下の工程を含む凍結または未凍結の全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)の標本作製方法:
    1)目的とする臓器または組織をPFA液で固定する;
    2)AMeX法によるパラフィン包埋を行う。
  2. PFA液による固定を浸漬により行う請求項1記載の方法。
  3. AMeX法によるパラフィン包埋を行った後に、薄切切片を作製する工程をさらに含む請求項1または2記載の方法。
  4. 得られた薄切切片の脱パラフィンおよび親水化の工程をさらに含む請求項3記載の方法。
  5. 組織染色、免疫組織化学的染色又は酵素組織化学的染色をさらに行う請求項4記載の方法。
  6. 前立腺組織の標本作製方法である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前立腺癌組織の標本作製方法である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られる、全身諸臓器又は組織(硬組織を除く)の標本。
  9. 前立腺組織標本である請求項8記載の標本。
  10. 前立腺癌組織標本である請求項8記載の標本。
  11. 以下の工程を含む臓器又は組織標本中の細胞におけるmRNAの品質検定方法:
    1)請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる臓器又は組織標本より所望の細胞を採取する;
    2)採取した所望の細胞からtotal RNAを抽出する;
    3)抽出されたtotal RNAより逆転写反応を行いcDNAを合成する;
    4)合成したcDNAを鋳型としてβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域をPCRにより増幅する;
    5)増幅されたβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域の産物量比を算出して、3 末端側領域/5 末端側領域のPCR産物の比が一定値以下となるものを良好なmRNAの品質を有すると判断する。
  12. 臓器又は組織標本より所望の細胞をマイクロダイセクションによって採取する請求項11記載の方法。
  13. 以下の工程を含むDNAマイクロアレイ用サンプルの作製方法:
    1)請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる臓器又は組織標本より所望の細胞を採取する;
    2)採取した所望の細胞から以下の方法によって細胞中のmRNAの品質検定を行う;
    a)採取した所望の細胞からtotal RNAを抽出する;
    b)抽出されたtotal RNAより逆転写反応を行いcDNAを合成する;
    c)合成したcDNAを鋳型としてβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域をPCRにより増幅する;
    d)増幅されたβ-アクチンの5末端側と3末端側の領域の産物量比を算出して、3 末端側領域/5 末端側領域のPCR産物の比が一定値以下となるものを良好なmRNAの品質を有すると判断する;
    3)ステップ2)の方法で良好なmRNAの品質を有すると判断された細胞からtotal RNAを抽出し、これからcDNAを合成し、さらに cRNAを合成する。
  14. 請求項13の方法で得られたサンプルを用いて、DNAマイクロアレイで階層的クラスタリング解析を行う方法。
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