本発明は、給湯システムに関する。特に、貯湯タンクに貯めた湯を用いて暖房を行うことができる暖房給湯システムに関する。
従来から、暖房機能と給湯機能とを有する貯湯式給湯システムが知られている。例えば、特開2004−183934号公報には、給湯用の湯を貯めるタンクと、そのタンクの外周面に互いに接するように巻き付けられた暖房用の配管および給湯用の配管とを備えた貯湯式給湯システムが記載されている。暖房用の配管を流通する熱媒体(通常は水)と給湯用の配管を流通する湯とが熱交換することにより、暖房用の熱媒体が加熱される。加熱された熱媒体を用いて、室内の暖房を行うことができる。ヒートポンプは、基本的に給湯用の湯を沸かすためにのみ用いられる。
一方、例えば欧州では、図11に示す構成の貯湯式給湯システムが普及している。図11に示す貯湯式給湯システムは、暖房用の湯を貯める第1タンク300と、給湯用の湯を貯める第2タンク302と、第1タンク300の内部に配置されたヒータ308とを備えている。第2タンク302は、その一部が第1タンク300の内部に露出するように第1タンク300に組み付けられている。第1タンク300の湯と第2タンク302の水とが熱交換することにより、第2タンク302の水が加熱される。給湯栓304には第2タンク302の湯が供給され、暖房用のラジエター306には第1タンク300の湯が供給される。
図11に示すシステムによれば、第1タンク300の湯をラジエター306に直接かつ大量に供給できるため、大きい暖房負荷に対しては、タンクを1つのみ有する特開2004−183934号公報のシステムよりも対応しやすい。第2タンク302の容積は第1タンク300の容積よりも少ないが、浴槽に湯を貯める等、短時間に大量の湯を使用する習慣のない地域では、この構成でも湯量不足の心配はほとんどない。なお、近年は、エネルギー消費効率を改善するために、ヒータ308に代えて、ヒートポンプが採用され始めている。
ただし、図11に示すシステムによってもなお、負荷変動および負荷量が大きい寒冷地では、ヒータやヒートポンプの加熱能力を上回る負荷が発生し、十分な暖房効果を得ることができなくなる可能性がある。この問題は、急速暖房が要求される時間帯(例えば朝晩)に特に起こりやすい。
急激な負荷増大への対策としては、暖房用の湯を貯めるタンクの大容積化、タンクに貯める湯の設定温度調節(湯温を高くする)、ヒートポンプの加熱能力の向上、補助ヒータの使用などが挙げられる。しかしながら、タンクの容積を増やすと、タンクから外部への放熱量が増大し、エネルギー消費効率が悪くなる。タンクに貯める湯の設定温度を高くすることにも限界がある。ヒートポンプの加熱能力を大きくすると、コストの高騰が不可避である。補助ヒータは、システムの最大加熱能力を高くする観点からあった方がよいが、補助ヒータへの依存度が高くなればなるほど、エネルギー消費効率に優れるヒートポンプの利点が損なわれる。
こうした事情に鑑み、本発明は、従来のシステムと比べてエネルギー消費効率やコストの面で遜色なく、急激な負荷増大にも対応できる給湯システムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
暖房用の湯を貯める第1タンクと、
少なくとも一部が第1タンク内に露出する形で第1タンクに収容または組み付けられた、給湯栓に供給するべき湯を貯める第2タンクと、
第1タンクの湯を暖房装置に供給し、暖房装置からの湯を第1タンクに戻す暖房循環経路と、
第2タンクの第1タンク内に露出した部分を取り囲む第1伝熱部を含み、第1タンクの湯が第1伝熱部を経由して暖房装置に供給されうるように、第1タンクと暖房循環経路の往路部分とを接続(中継)する第1経路と、
第1伝熱部に沿うように配置された第2伝熱部を含み、第2タンクの湯を第2伝熱部に流通させることによって第2タンクの湯と第1伝熱部を流通する湯とを熱交換させる第2経路と、
を備えた、給湯システムを提供する。
上記本発明の給湯システムによれば、第1経路および第2経路を設けたことにより、第1伝熱部を流通する第1タンクの湯と第2伝熱部を流通する第2タンクの湯との熱交換が促進される。したがって、ヒータやヒートポンプの加熱能力を超えるほど大きい暖房能力が要求される場合、第2タンクの湯を第2経路に循環させると同時に、第1経路を通じて暖房循環経路に第1タンクの湯を導くことにより、第2タンクの湯で暖房装置に供給されるべき第1タンクの湯の補助加熱を効率的に行うことができる。言い換えれば、第2タンクに貯められた給湯用の湯を補助加熱源として有効利用することにより、一時的に、給湯システムの暖房能力を底上げすることができる。したがって、本発明の給湯システムは、従来のシステムと比べてエネルギー消費効率やコストの面で遜色なく、急激な負荷増大にも対応できる。
なお、第1経路および第2経路が設けられておらず、第1伝熱部および第2伝熱部を有さない従来の給湯システム(図11参照)においても、第1タンク300の湯に第2タンク302が浸かっているので、第1タンク300の湯と第2タンク302の湯との間で熱交換は起こる。しかしながら、熱交換を促進する工夫がなされていないので、その熱交換は本発明の場合に比べて緩やかである。そのため、第2タンク302の湯を補助加熱源として有効利用できず、第2タンク302の湯によってシステムの暖房能力を底上げすることは不可能である。
本発明の一実施形態にかかる給湯システムの構成図
第1伝熱管および第2伝熱管の他の配列を示す拡大図
第1伝熱管および第2伝熱管のさらに別の配列を示す拡大図
給湯時の湯の流通経路を説明する図
貯湯時の湯の流通経路を説明する図
暖房時の湯の流通経路を説明する図
暖房時(低負荷)の湯の流通経路を説明する図
暖房および給湯時(通常負荷)の湯の流通経路を説明する図
暖房時(高負荷)の湯の流通経路を説明する図
暖房時(急速負荷)の湯の流通経路を説明する図
給湯システムの変形例の簡単な構成図
従来の給湯システムの簡単な構成図
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる給湯システムの構成図である。給湯システム200は、給湯タンクユニット1と、ヒートポンプ2(ヒートポンプユニット)とを備えている。ヒートポンプ2で加熱された湯は、給湯タンクユニット1の第1タンク5に貯められる。第1タンク5に貯められた湯が暖房装置4を循環する。第1タンク5に貯められた湯で間接的に加熱された第2タンク6の湯が給湯栓3に供給される。暖房装置4は、ラジエターや床暖房などの温水暖房機器によって構成されている。
ただし、暖房装置4は、風呂の追炊き用途等の熱交換器によって構成されていてもよい。つまり、本明細書において、「暖房」は「室内の暖房」に限定されない。暖房装置4は、第1タンク5の湯の熱を水や空気などの対象物に与えることができる装置であればよい。
ヒートポンプ2は、第1タンク5の湯を加熱する手段であって、圧縮機101、凝縮器またはガスクーラとしての水−冷媒熱交換器102、膨張機構としての電動膨張弁103および蒸発器104を備えている。圧縮機101、水−冷媒熱交換器102、電動膨張弁103および蒸発器104が冷媒配管によってこの順番で接続されることによって、冷媒回路が形成されている。ヒートポンプ2の冷媒回路には、二酸化炭素やハイドロフルオロカーボンのような冷媒が充填されている。二酸化炭素を冷媒に用いた場合、水−冷媒熱交換器102において冷媒は超臨界状態となる。ヒートポンプ2によれば、水を90℃程度の高い温度まで加熱することが可能である。なお、電動膨張弁103に代えて、容積式の膨張機を採用し、冷媒の膨張エネルギーを回収しうる構成としてもよい。
給湯タンクユニット1は、暖房用の湯を貯める第1タンク5と、給湯栓3に供給するべき湯を貯める第2タンク6と、それらを収容する筐体7とを備えている。第1タンク5の容積は、第2タンク6の容積よりも大きい。第2タンク6は、上部が第1タンク5から突出し、残部が第1タンク5内に露出する形で第1タンク5に組み付けられている。第1タンク5と第2タンク6とによって二重タンク構造が形成されている。第2タンク6の湯は、第1タンク5の湯によって保温および/または加熱される。第2タンク6は、その全部が第1タンク5に収容されていてもよいが、本実施形態のごとく、第2タンク6の上部が第1タンク5の上部から突出する配置によれば、第2タンク6への各種配管の接続作業が容易であり、製造コストを安くできる。
第1タンク5の湯と第2タンク6の湯とは、基本的に混ざり合うことはない。給湯栓3に供給されるのは、第2タンク6の湯のみである。ヒートポンプ2によって直接加熱されるのは、第1タンク5の湯のみである。第2タンク6の湯は、第1タンク5の上部の空間に貯められた湯によって間接的に加熱される。そのため、市水が硬水の地域でも水−冷媒熱交換器102にスケールが蓄積しにくく、熱交換効率が経年低下しにくい。第1タンク5の湯にブラインが含まれていてもよい。
筐体7の内部において、タンクや配管などの部品は断熱材(例えば耐熱性発泡ポリスチレン)によって被覆されており、放熱が防止されている。
第1タンク5に組み付けられた第2タンク6の底面の高さは、第1タンク5の高さの中間付近にある。第1タンク5の上部の空間は、第1タンク5の側壁と第2タンク6の側壁との間に形成された円筒状の空間であり、この空間の容積が第1タンク5の容積に占める割合は少なく、例えば第1タンク5の容積の半分未満である。夏期等の負荷が小さい時期において、この円筒状の空間だけに高温の湯が貯められるようにすれば、第2タンク6の湯を高温に保ちつつ、第1タンク5の外表面からの放熱を極力抑制することができる。また、この円筒状の空間には、補助ヒータ18が配置されている。特に高い加熱能力が必要となる場合には、この補助ヒータ18を用いて第1タンク5の湯を加熱してもよい。
第1タンク5の湯は、上部から底部に向かって温度成層を形成する。具体的に、第1タンク5の湯の温度は、システムの使用状況や季節にもよるが、上部(第2タンク6の周囲)で50〜90℃、底部で30〜50℃になる。第2タンク6は第1タンク5の上部の空間に貯められた湯で加熱および/または保温されるので、給湯栓3から短時間で大量に湯を出さない限り、第2タンク6の湯の温度は60〜80℃になる。
給湯タンクユニット1は、さらに、暖房循環経路51、第1経路53、第2経路55、ヒートポンプ経路57、給湯経路59および給水経路61を備えている。暖房循環経路51の往路部分、第1経路53およびヒートポンプ経路57は、第1弁機構8を介して相互に接続されている。同様に、第2経路55、給湯経路59および給水経路61は、第2弁機構9を介して相互に接続されている。
弁機構8,9は、湯の流通方向をある1つの方向から別の1つの方向に切り替えることができ、複数の流れを1つの流れに合わせることができ、1つの流れを複数の流れに分けることができる分配弁によって構成されている。本実施形態では、4本の配管が接続される4WAY型の分配弁によって弁機構8,9が構成されているが、より一般的な3WAY型の分配弁を複数個組み合わせることによって、弁機構8,9の各々が構成されていてもよい。なお、図7を参照して後に説明する運転モードを実行する必要がない場合、分配機能を有さない切り替え弁によって弁機構8,9が構成されていてもよい。
暖房循環経路51は、第1タンク5の湯を暖房装置4に供給し、暖房装置4からの湯を第1タンク5に戻すための経路であり、第1往き管23、第2往き管25、ポンプ16および戻り管26によって構成されている。第1タンク5の内部から外部へと延びる第1往き管23によって、第1タンク5と第1弁機構8とが接続されている。第1往き管23による暖房循環経路51の入口は、第1タンク5の上部の空間に位置している。第2往き管25によって、第1弁機構8と暖房装置4とが接続されている。第1往き管23によって暖房循環経路51の往路部分の一部(上流側部分)が構成され、第2往き管25によって暖房循環経路51の往路部分の残部(下流側部分)が構成されている。ポンプ16は、第2往き管25に設けられている。第1タンク5の外部から内部へと延びる戻り管26によって、暖房装置4と第1タンク5とが接続されている。戻り管26による暖房循環経路51の出口は、第1タンク5の底部の空間に位置している。第1タンク5の上部の空間に貯められている湯は、第1往き管23、第1弁機構8および第2往き管25を経由して暖房装置4に供給されうる。暖房装置4で温度が低下した湯は、戻り管26を経由して第1タンク5の底部の空間に戻る。
第1経路53は、第1往き管23とは異なるルートで第1タンク5の湯を暖房循環経路51の第2往き管25に導くための経路である。さらに、第1経路53は、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5に戻すための経路でもある。第1経路53は、第1伝熱管10によって構成されている。第1伝熱管10によって、第2タンク6の第1タンク5内に露出した部分を取り囲む第1伝熱部10aが形成されている。第1タンク5の湯が第1伝熱部10aを経由して暖房装置4に供給されうるように、第1タンク5と暖房循環経路51の往路部分(第2往き管25)とが第1経路53によって接続されている。第1タンク5の内部における第1経路53の開口の位置は、第1タンク5の側壁と第2タンク6の側壁との間における第1タンク5の上部の空間に定められている。第1タンク5の上部の空間に貯められた湯は、第1伝熱管10、第1弁機構8および第2往き管25を経由して暖房装置4に供給されうる。第1経路53の第1タンク5の外部における部分に圧力逃がし弁13が設けられている。
第2経路55は、第2タンク6の湯を循環させる経路であるとともに、第2タンク6の湯を給湯経路59に導くための経路でもある。第2経路55は、第2伝熱管11、ポンプ15および配管34によって構成されている。第2伝熱管11によって、第1伝熱部10aに沿うように配置された第2伝熱部11aが形成されている。第2伝熱管11による第2経路55の入口の位置は、第2タンク6の底部の空間に定められている。ポンプ15は、第2伝熱部11aと第2弁機構9との間に位置するように、第2伝熱管11に設けられている。第2タンク6の外部から内部へと延びる配管34によって、第2弁機構9と第2タンク6とが接続されている。配管34による第2経路55の出口の位置は、第2タンク6の上部の空間に定められている。配管34から分岐する形で圧力逃がし弁12が設けられている。
このように、第2経路55は、第2タンク6の底部の空間に貯められた湯を第2伝熱部11aに流通させた後、第2タンク6の上部の空間へと戻す循環経路を形成している。第2弁機構9を介して、給湯経路59と第2経路55とが接続されているので、第2伝熱管11を流通後の湯を給湯経路59に供給することもできる。
図1に示すように、第1経路53の第1伝熱部10aと第2経路55の第2伝熱部11aとは互いに接している。したがって、第1経路53を流通する湯と、第2経路55を流通する湯とを、これら伝熱部10a,11aにおいて熱交換させることができる。つまり、第1伝熱管10を流通する湯によって第2伝熱管11を流通する湯を効率的に加熱できる。逆に、第2伝熱管11を流通する湯によって第1伝熱管10を流通する湯を効率的に加熱することもできる。前者の場合において、第1伝熱管10を流通する湯は、ヒートポンプ2で加熱されて第1タンク5に戻る湯である。ヒートポンプ2で加熱された高温の湯で、第2伝熱管11を流通する第2タンク6の湯を加熱できる。後者の場合において、第1伝熱管10を流通する湯は、第1タンク5から暖房装置4に直接供給されるべき湯である。第2伝熱管11を流通する第2タンク6の高温の湯で、第1タンク5から暖房装置4に向かう途中の湯を加熱できる。また、伝熱管10,11には、第2タンク6からの放熱を抑制する効果もある。
図1の例において、第1伝熱管10および第2伝熱管11は、ともに一重管であり、第1伝熱管10の外径と第2伝熱管11の外径とは等しい。第2タンク6と第2伝熱管11とによって第1伝熱管10が挟まれるように、第1伝熱管10が第2タンク6に巻き付けられ、さらに、第1伝熱管10の上から第2伝熱管11が第2タンク6に巻き付けられている。言い換えれば、第2伝熱管11は、第1伝熱管10を介して間接的に第2タンク6に巻き付けられている。
より詳細には、第2タンク6の高さ方向に関して隣り合う部分同士が互いに密着しあう形で第1伝熱管10が直接かつ螺旋状に第2タンク6に巻き付けられている。さらに、第1伝熱管10と第2伝熱管11とが径方向の複数箇所で接するように、第2伝熱管11が第1伝熱管10の上から螺旋状に第2タンク6に巻き付けられている。すなわち、第1伝熱管10および第2伝熱管11は、それぞれが密着巻の形態を有し、伝熱部10a,11aを形成する部分が二重コイルの形になっている。このような構成によれば、伝熱面積を十分に確保することができるとともに、熱交換効率を高めることができる。
第1伝熱管10は、伝熱部10aを形成する部分が第2タンク6に溶接またはロウ付けされることによって第2タンク6に固定されていてもよい。これにより、熱抵抗を小さくすることができる。同様の理由により、第2伝熱管11は、伝熱部11aを形成する部分が第1伝熱管10に溶接またはロウ付けされることによって第1伝熱管10に固定されていてもよい。
第1伝熱管10の外径と第2伝熱管11の外径とが異なっていてもよい。第1伝熱管10と第2伝熱管11との位置関係も両者が接している限り特に限定されない。例えば、第2伝熱管11が第2タンク6に直接かつ螺旋状に巻き付けられ、第2タンク6に巻き付けられた第2伝熱管11の上から第1伝熱管10が第2タンク6に間接的に巻き付けられていてもよい。
また、図2Aに示すように、第1伝熱管10と第2伝熱管11とが第1タンク5の高さ方向に関して交互に並ぶように、第1伝熱管10および第2伝熱管11の各々が第2タンク6に直接かつ螺旋状に巻き付けられていてもよい。このようにしても、上記と同様の効果が得られる。
さらに、図2Bに示すように、大径の第1伝熱管10の内部に小径の第2伝熱管11が通された二重管が第2タンク6に螺旋状に巻き付けられていてもよい。このようにしても、上記と同様の効果が得られる。図2Bの例において、第1伝熱管10と第2伝熱管11との位置関係が内外で入れ替わってもよい。
ただし、第2伝熱管11と第2タンク6とによって第1伝熱管10が挟まれる図1の例によれば、第1伝熱管10が第2伝熱管11および第2タンク6の両方に接している。そのため、第2伝熱管11が内側で第1伝熱管10が外側となる例(図示省略)よりも熱交換を効率よく行うことができる。図1の位置関係を採用すれば、第1伝熱管10から第2伝熱管11へと熱が移動する際には、第1伝熱管10から第2タンク6の外壁にも熱が移動する。第2伝熱管11から第1伝熱管10へと熱が移動する際には、第2タンク6の外壁からも第1伝熱管10へと熱が移動する。つまり、第2タンク6の外壁を伝熱面として積極的に利用することにより、熱交換効率の向上を図ることができる。また、図1の例によれば、第1伝熱管10および第2伝熱管11が高さ方向に最密に配列しているので、図2Aの例よりも熱交換に寄与する伝熱部10a,11aの長さを稼ぐのに有利である。また、図1の例によれば、二重管の例(図2B)よりもコスト面で有利である。
なお、伝熱部10a,11aは、それらの内部を湯が流通可能であり、かつ熱交換が効率よく行われるものであればよく、伝熱管10,11によって形成されることは必須ではない。ただし、コストや生産性を考慮すれば、本実施形態のようにするのがよい。
次に、ヒートポンプ経路57は、第1タンク5の湯をヒートポンプ2に導くための経路である。ヒートポンプ経路57は、配管24およびその配管24に設けられたポンプ14によって構成されている。配管24の上流端は第1タンク5に接続されている。配管24によるヒートポンプ経路57の入口の位置は、第1タンク5の底部の空間に定められている。一方、配管24の下流端は第1弁機構8に接続されている。つまり、第1経路53と、ヒートポンプ経路57の下流端と、暖房循環経路51の往路部分とが相互に接続されている。これにより、ヒートポンプ2で加熱した湯を暖房装置4に直接供給しうる。ヒートポンプ2で加熱した湯を暖房装置4に直接供給する構成によれば、圧力損失を小さく抑えることができ、ポンプ14,16の省電力化を見込める。放熱ロスも少ない。
さらに、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5に戻すための経路として、第1経路53を利用可能である。このような構成によれば、ヒートポンプ経路57を第1タンク5の内部まで延ばす必要がないので、ヒートポンプ経路57の長さの短縮化を図ることができる。また、第1タンク5を貫通する配管の数の増加を回避できる。
具体的に、第1経路53、ヒートポンプ経路57および暖房循環経路51の往路部分の接続箇所に第1弁機構8が設けられている。第1経路53を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とを第1弁機構8で合流させ、暖房循環経路51(第2往き管25)へと導くことができる。この運転モードによれば、ヒートポンプ2の加熱能力に第1タンク5に予め貯められた湯の暖房能力が上乗せされるので、ヒートポンプ2の加熱能力を超えるほど高い暖房能力が要求される場合に有効である。
上記運転モードにおいて、第2タンク6の湯を第2経路55に循環させることによって、第2タンク6の湯と、第1経路53を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯との熱交換を促進できる。これにより、第2タンク6の湯の熱を補助加熱源として利用でき、瞬間的な暖房能力をさらに高めることができる。
さらに、上記運転モードにおいて、第1往き管23を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、第1経路53を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とを第1弁機構8で合流させ、暖房循環経路51の第2往き管25へと導くこともできる。
また、第1弁機構8を制御することによって、第1往き管23を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯のみを第1弁機構8で合流させて暖房循環経路51の第2往き管25へと導くモードでの運転も可能である。つまり、第1経路53を使用しない。この運転モードにおいても、ヒートポンプ2の加熱能力に第1タンク5に予め貯められた湯の暖房能力が上乗せされる。
次に、給水経路61は、第2タンク6に市水を補給するとともに、給湯経路59に供給されるべき湯の温度調節を行うための経路である。給水経路61は、給水管31、分岐給水管32および減圧弁19を有する。給水管31によって、外部の水道管(図示せず)と第2弁機構9とが接続されている。分岐給水管32は、給水管31から分岐して第2タンク6の内部に延びており、先端の開口の位置が第2タンク6の底部の空間に定められている。給湯栓3を開いて第2タンク6の湯を消費すると、給水管31および分岐給水管32を経由して第2タンク6の底部の空間に市水が補給される。市水は、第2タンク6の湯が消費されると直ちに補給されてもよいし、ある程度消費されたらその消費分または所定量が補給されるようにしてもよい。配管34の開口の位置を第2タンク6の中央部付近の空間に定めると、市水の補給をせずに第2タンク6の湯を相当量連続使用できる。
給湯経路59は、出湯管35およびその出湯管35に設けられたポンプ17によって構成されている。出湯管35により、第2弁機構9と給湯栓3とが接続されている。第2経路55の第2伝熱管11、第2弁機構9および給湯経路59を経由して、第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することができる。ポンプ15を停止し、ポンプ17を作動することにより、配管34から第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することもできる。さらに、給水経路61を流れる市水と、第2タンク6の湯とを第2弁機構9において適切な比率で混合することにより、適切な温度に調節された湯を給湯栓3に供給することができる。給水経路61を流れる市水のみを給湯栓3に供給することもできる。
次に、給湯システム200の制御回路について説明する。
図1に示すように、給湯システム200は、各種温度センサ39〜50、入力端末63およびコントローラ65を備えている。入力端末63は、マイクロコンピュータ、ユーザーの入力操作によって給湯温度や暖房の強さを設定するための入力部、および、湯の使用状況や暖房の強さを表示するモニタ等によって構成されている。コントローラ65は、システムの制御プログラムを実行するマイクロコンピュータあるいはDSP(digital signal processor)によって構成されている。入力端末63とコントローラ65とは、通信可能に接続されている。各種温度センサ39〜50の検出結果(検出信号)は、コントローラ65に与えられる。コントローラ65は、各種温度センサ39〜50の検出結果に基づき、給湯温度や暖房の強さが入力端末63で予め設定された条件に近づくように、PI制御などの公知の手法によってポンプ14〜17、第1弁機構8、第2弁機構9、ヒートポンプ2および補助ヒータ18の制御を行う。
ヒートポンプ経路57の水−冷媒熱交換器102への入口近傍には、入水温度センサ39が設けられ、同出口近傍に出湯温度センサ40が設けられている。入水温度センサ39および出湯温度センサ40の検出結果から、水−冷媒熱交換器102の入口の湯の温度と出口の湯の温度との差を算出できる。湯の温度差とポンプ14の回転数とから、ヒートポンプ2の加熱能力をリアルタイムで算出できる。算出した加熱能力が必要とされる加熱能力に近づくように、ヒートポンプ2の制御を行ってもよい。
ヒートポンプ2の蒸発器104には蒸発温度センサ41が設けられ、圧縮機101の出口部には吐出温度センサ42が設けられている。蒸発温度センサ41および吐出温度センサ42の検出結果に基づき、ヒートポンプ2の効率が最大化されるように電動膨張弁103の開度および圧縮機101の回転数が制御される。通常、ヒートポンプ2は、効率が最もよくなる定格能力またはその近傍の能力で運転される。
第1タンク5の外壁面には、高さ方向に沿って複数のタンク温度センサ45,46,47が設けられている。タンク温度センサ45,46,47によって第1タンク5に貯められた湯の高さ方向の温度分布、言い換えれば、湯量(蓄熱量に対応する)を検出することができる。タンク温度センサ45,46,47の検出結果に基づいてヒートポンプ2の運転を制御することにより、適温および適量の湯を第1タンク5に貯めることができ、第2タンク6の湯を適温に保つことができる。なお、このようなタンク温度センサ45,46,47は、第1タンク5の内壁面に設けられていてもよいし、第1タンク5の内部において第2タンク6の外壁面に設けられていてもよい。
給水経路61には、市水の温度を検出する市水温度センサ44が設けられている。給湯経路59には、給湯栓3に供給される直前の湯の温度を検出する第1給湯温度センサ43が設けられている。第2経路55には、第2伝熱管11を経由して第2弁機構9に入る直前の湯の温度を検出する第2給湯温度センサ48が設けられている。給湯温度センサ43,48の検出結果に基づき、第2弁機構9が制御され、第2タンク6の湯と市水との混合比率が調節される。暖房循環経路51の第2往き管25には、暖房装置4に供給されるべき湯の温度を検出する第1暖房温度センサ49が設けられている。暖房循環経路51の戻り管26には、暖房装置4から第1タンク5に戻される湯の温度を検出する第2暖房温度センサ50が設けられている。暖房温度センサ49,50の検出結果は、予め設定された暖房の強さとともに、暖房負荷の大小を判断するためのデータとして用いることができる。
次に、給湯システム200のいくつかの運転モードについて説明する。ただし、これらの運転モードは一例にすぎず、本発明はこれらによって何ら限定されない。各運転モードにおいて、第1弁機構8および第2弁機構9のアクチュエータは、図示の流れが形成されるようにコントローラ65によって制御される。
<<給湯>>
図3に示す運転モードは、給湯負荷がヒートポンプ2の加熱能力の範囲内にあるときに実行されうる給湯モードである。図中の太線によって湯(または市水)の流れが示されている。暖房装置4はオフである。給湯栓3を開けると、第2経路55の配管34、第2弁機構9および給湯経路59を経由して第2タンク6の湯が給湯栓3に供給される。第2タンク6の湯は、第2弁機構9において給水経路61からの市水と混合され、入力端末63で予め設定された温度に調節される。使用した湯と同量の市水が分岐給水管32を通じて第2タンク6の底部の空間に補給される。なお、配管34に代えて第2伝熱管11を経由して第2タンク6の湯を給湯栓3に供給してもよいし、配管34および第2伝熱管11の両方を経由して第2タンク6の湯を給湯栓3に供給してもよい。給湯温度センサ43,48で湯温をモニタし、最適な経路で湯が供給されるように制御すればよい。
第2タンク6に市水が補給されると、ヒートポンプ2が起動し、第1タンク5の湯を加熱する。ヒートポンプ2で加熱された湯は、第1経路53を経由して第1タンク5の上部の空間に戻される。これにより、第2タンク6の湯が間接的に加熱される。給湯栓3が閉じられた場合、次に図4を参照して説明する貯湯モードに移行する。なお、第2タンク6の湯を大量に消費した場合には、給湯負荷が単独でヒートポンプ2の加熱能力を超える可能性がある。この場合は、加熱能力の不足分を補助ヒータ18で補う高負荷給湯モードで運転を行ってもよい。
<<貯湯>>
図4に示す運転モードは、ヒートポンプ2を作動して第1タンク5の湯を加熱する貯湯モードである。第1タンク5の湯を加熱することによって、第2タンク6の湯が間接的に加熱される。この貯湯モードは、給湯栓3が閉じられているときに実行されうる。例えば、第1タンク5の外壁面に設けられたタンク温度センサ45,46,47の検出結果に基づいて、第1タンク5および/または第2タンク6の湯量(蓄熱量)を推定し、推定した湯量が所定値を下回った場合にヒートポンプ2を起動し、第1タンク5の湯の加熱を開始する。図4に示すように、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1経路53によって第1タンク5に戻しながら、第2タンク6の湯を第2経路55に循環させる。第2経路55を流通する湯と、ヒートポンプ2で加熱された湯とが、伝熱部10a,11aにおいて熱交換し、第2タンク6の湯が迅速に適温まで加熱される。
図11に示す従来のシステムでは、第2タンク302の湯を大量に消費し、第2タンク302に市水が補給され、第2タンク302の湯の温度が低下すると、第2タンク302の湯の温度を再び適温まで加熱するのに長い時間を要する。つまり、湯を短時間で大量に消費した場合に湯切れが発生する可能性を否定できない。第2タンク302の湯を昇温するのに長い時間を要するという問題は、ヒートポンプやヒータの加熱能力の問題だけでなく、第2タンク302の湯を第1タンク300の湯で間接的に加熱するという、二重タンク構造を採用した給湯システムの本質的な部分にも起因している。
これに対し、本実施形態の給湯システム200によれば、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1経路53によって第1タンク5に戻す。この際、第2経路55に第2タンク6の湯を循環させると、第1経路53を流通する湯と第2経路55を流通する湯とが、伝熱部10a,11aにおいて熱交換する。強制対流を生かした熱交換が行われることにより、従来のシステム(図11)よりも短時間で第2タンク6の湯を昇温することができる。また、第2タンク6の湯が流通する第2伝熱部11aは、第1タンク5の上部の空間に貯められた湯に浸かっている。このことも、第2タンク6の湯の迅速な昇温に寄与する。
<<暖房(通常負荷)>>
図5に示す運転モードは、第2タンク6の湯の量(蓄熱量)が十分にあり、暖房負荷がヒートポンプ2の加熱能力の範囲内(例えば定格能力の70〜130%の範囲内)にあるときに実行されうる通常暖房モードである。この通常暖房モードでは、ヒートポンプ2で加熱した湯のみを用いて暖房が行われる。ヒートポンプ2の加熱能力が、要求される暖房能力に一致するように、ヒートポンプ2の電動膨張弁102の開度、圧縮機101の回転数が制御される。
ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯は、第1弁機構8および暖房循環経路51の第2往き管25を経由して暖房装置4に供給される。暖房装置4を循環した湯は、暖房循環経路51の戻り管26を経由して第1タンク5の底部の空間に戻される。ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5に戻さずに暖房装置4に直接供給するので、より高温の湯を暖房装置4に供給できる。また、ポンプ14,16の負荷を小さくすることができる。
なお、外気温が低い場合、ヒートポンプ2の蒸発器104が着霜するので、予め定めたタイミングで除霜処理を行う必要が生ずる。除霜処理の実行中は、ヒートポンプ2で湯を加熱することができない。したがって、除霜処理の実行中には、次に図6を参照して説明するように、第1タンク5に貯められた湯を暖房装置4に供給してもよい。このようにすれば、暖房効果が途切れず、ユーザーの快適性が向上する。
<<暖房(低負荷)>>
図6に示す運転モードは、第1タンク5の湯の量(蓄熱量)が十分にあり、暖房負荷が非常に小さい場合に実行されうる低負荷暖房モードである。具体的に、この低負荷暖房モードは、暖房負荷がヒートポンプ2の定格能力の所定比率(例えば70%)を下回った場合に実行されうる。さらに、ヒートポンプ2の除霜処理の実行中において実行してもよい。
暖房負荷が非常に小さい場合に、図5に示す通常暖房モードを選択すると、ヒートポンプ2を定格能力から大きく外れた能力で運転する必要性が生じる。ヒートポンプ2にとって、定格能力から大きく外れた能力での運転は、効率がよくない。したがって、暖房負荷が十分に小さい場合には、ヒートポンプ2を停止し、第1タンク5に貯められた湯で暖房を賄うとよい。
第1タンク5の湯は、第1往き管23および第1伝熱管10(第1経路53)の少なくとも一方を経由して第2往き管25に導かれる。第1タンク5の内部において、第1往き管23の開口の位置と、第1伝熱管10の開口の位置とは、高さ方向に関して差がある。したがって、暖房装置4に供給するべき湯の温度の微調節が必要なときは、第1往き管23を経由して第2往き管25に導かれる第1タンク5の湯と、第1伝熱管10を経由して第2往き管25に導かれる第1タンク5の湯とを、第1弁機構8において所定比率で混合してもよい。これにより、適切な温度に調節された湯が暖房装置4に供給されうる。
具体的に、本実施形態においては、第1往き管23の開口と、第1伝熱管10(第1経路53)の開口との位置関係が次のように定められている。すなわち、第1経路53が、第1往き管23の開口よりも下方において、第1タンク5の上部の空間に向かって開口している。第1タンク5の内部には、温度成層が形成されているので、第1往き管23から取得する第1タンク5の湯と、第1経路53を構成する第1伝熱管10から取得する第1タンク5の湯との温度は相違する。したがって、暖房負荷の大きさに応じて、第1往き管23のみから第1タンク5の湯を取得するのか、第1伝熱管10(第1経路53)のみから第1タンク5の湯を取得するのか、あるいは両方から取得して第1弁機構8で混合するのかを、選択することができる。言い換えれば、適切な温度の湯を暖房装置4に供給することができる。
なお、第1タンク5の湯の量(蓄熱量)が所定値を下回った場合には、ヒートポンプ2の定格能力またはその近傍の能力での運転を開始し、第1タンク5の湯を加熱するとよい。このとき、暖房装置4には、次に図7を参照して説明するように、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1弁機構8において分配し、分配された湯を供給することができる。また、暖房装置4から第1タンク5に戻される湯の温度が所定温度以下となった場合に、ヒートポンプ2を起動するようにしてもよい。
あるいは、暖房装置4への湯の供給を一時的に停止してもよい。そして、第1タンク5の湯の量(蓄熱量)が十分になったら、ヒートポンプ2の運転を停止し、再び第1タンク5に貯められた湯で暖房を賄う。このようなON−OFF制御を行うことにより、ヒートポンプ2をより多くの時間、定格能力で運転することができる。この結果、インバータで圧縮機101の回転数を制御することによって暖房負荷の大小に対応するよりもエネルギー消費効率がよくなる。
<<暖房+給湯(通常負荷)>>
図7に示す運転モードは、第2タンク6の湯の量(蓄熱量)が不十分であり、暖房負荷と給湯負荷の合計が、ヒートポンプ2の定格能力の近傍(例えば定格能力の70〜130%の範囲内)にあるときに実行されうる通常負荷モードである。簡単にいえば、図3の給湯モードと、図6の暖房モードとの組み合わせである。給湯栓3への湯の供給は、図3を参照して説明した通りに行われる。
ヒートポンプ2で加熱された湯は、第1弁機構8において、暖房装置4に直接供給される画分と、第1経路53を経由して第1タンク5に戻される画分とに分配される。これにより、暖房装置4を作動させながら、第2タンク6の湯を積極的に加熱できる。分配比率は、例えば、要求される暖房能力に応じて定めるとよい。給湯栓3が閉じている場合には、図4を参照して説明したように、第2経路55に第2タンク6の湯を循環させてもよい。そのようにすれば、伝熱部10a,11aにおいて、第1経路53を流通する湯と、第2経路55を流通する湯とが熱交換し、第2タンク6の湯が迅速に昇温する。
図4,図5および図7を参照して説明したように、本実施形態の給湯システム200によれば、ヒートポンプ2で加熱した湯の全量を第1経路53によって第1タンク5に戻すモード(図4)と、ヒートポンプ2で加熱した湯の全量のみを暖房装置4に直接供給するモード(図5)と、ヒートポンプ2で加熱した湯の一部を暖房装置4に直接供給しつつ残部を第1経路53によって第1タンク5に戻すモード(図7)とから選ばれる少なくとも1つのモードでの運転がさらに可能である。各モードの利点は、各図を参照して説明した通りである。各モードの選択は、コントローラ65が弁機構8,9を適切に制御することによって実現される。
<<暖房(高負荷)>>
図8に示す運転モードは、暖房負荷がヒートポンプ2の最大加熱能力(例えば定格能力の130%)を超える場合に実行されうる高負荷暖房モードである。第1往き管23を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とが、第1弁機構8において適切な比率で混合され、暖房循環経路51の第2往き管25に導かれる。このようにすれば、ヒートポンプ2の最大加熱能力に第1タンク5の湯による加熱能力が上乗せされるので、一時的に、ヒートポンプ2の最大加熱能力を超える加熱能力が発揮されうる。
なお、第1往き管23に代えて、第1経路53を経由して第1タンク5の湯を第2往き管25に導くようにしてもよい。また、この高負荷暖房モードの実行中においても、図3を参照して説明した給湯モードを並列して実行でき、第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することができる。
<<暖房(急速負荷)>>
図9に示す運転モードは、暖房負荷がヒートポンプ2の最大加熱能力(例えば130%)を超え、かつ朝晩のような急速暖房を要する時間帯に実行されうる急速暖房モードである。第1往き管23および第1経路53(第1伝熱管10)を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とが、第1弁機構8において適切な比率で混合され、暖房循環経路51の第2往き管25に導かれる。これと同時に、第2経路55に第2タンク6の湯を循環させる。
すると、伝熱部10a,11aにおいて、第1経路53を流通する第1タンク5の湯と、第2経路55を流通する第2タンク6の湯とが熱交換する。つまり、第2タンク6の湯で暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯の補助加熱を行うことができる。ヒートポンプ2の最大加熱能力に、第1タンク5の湯による加熱能力と第2タンク6の湯による加熱能力とが上乗せされるので、一時的に、ヒートポンプ2の最大加熱能力を大幅に超える加熱能力が発揮されうる。なお、第1往き管23を使用せず、第1経路53(第1伝熱管10)とヒートポンプ経路57を使用して第1タンク5の湯を暖房装置4に供給してもよい(図示省略)。
図9を参照して説明した急速暖房モードの実行中においても、第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することができる。具体的には、第2伝熱管11を経由して第2弁機構9に導かれた第2タンク6の湯を給湯経路59に導くことができる。
<<その他>>
図8を参照して説明した高負荷暖房モードでの運転が予め定められた時間を超えて継続する場合には、抵抗加熱式の補助ヒータ18で第1タンク5の湯を加熱するようにしてもよい。同様に、図9を参照して説明した急速暖房モードでの運転が予め定められた時間を超えて継続する場合には、補助ヒータ18で第1タンク5の湯を加熱するようにしてもよい。
本実施形態において、第1タンク5の内部における補助ヒータ18の位置は、第1タンク5の側壁と第2タンク6の側壁との間に形成された第1タンク5の上部の空間に定められている。そして、補助ヒータ18の周囲において、第1往き管23および第1経路53を構成する第1伝熱管10が開口している。第1往き管23の開口は、高さ方向に関して補助ヒータ18の上端と下端との間に位置している。第1伝熱管10の開口は、補助ヒータ18よりも下方に位置し、補助ヒータ18と向かい合っている。このような位置関係によれば、第1往き管23および/または第1伝熱管10から第1タンク5の湯を取得するときに、補助ヒータ18の周囲の対流が促進され、熱伝達率を高めることができる。この結果、補助ヒータ18での熱効率を高めながら、第1往き管23および/または第1伝熱管10から第1タンク5の湯を取得できるので、給湯システム200の最大暖房能力がより一層高まる。
図8および図9を参照して説明した運転モードでは、負荷の大きさがヒートポンプ2の最大加熱能力を超える。したがって、こうした運転モードを適切に選択および実行できるように、給湯負荷と暖房負荷との合計がヒートポンプ2の加熱能力(好ましくは定格能力)に収まっている時間帯において、第1タンク5の湯および第2タンク6の湯を十分に加熱しておくとよい。そのような時間帯は、深夜から早朝の時間帯(例えばAM2時〜AM6時)であってもよいし、コントローラ65によって推定された時間帯であってもよい。例えば、一定期間(例えば過去数日間)の運転履歴に基づき、給湯負荷と暖房負荷との合計がヒートポンプ2の加熱能力(好ましくは定格能力)に収まっている時間帯を推定するプログラムがコントローラ65によって実行されてもよい。
また、負荷の大きさは、各種温度センサの検出結果、季節条件、時間帯、暖房の設定温度、給湯の設定温度などのデータに基づいて判断することができる。また、これらのデータ群から選ばれる少なくとも1つのデータを検索キーとして用い、コントローラ65のメモリに予め記憶されたデータベースを参照することによって、種々の運転モードの中から1または複数の運転モードを選択し、実行するようにしてもよい。
例えば、通常暖房モードで運転を行っているときに、暖房循環経路51の戻り管26に設けられた第2暖房温度センサ50の検出結果が、所定条件を満足した(所定値を下回った)場合に、高負荷暖房モードへと移行することができる。また、例えば、第2伝熱管11に設けられた第2給湯温度センサ48の検出結果が所定条件を満足した(所定値を下回った)場合に、ヒートポンプ2を起動し、図3および図4を参照して説明した貯湯モードを実行することができる。ヒートポンプ2が既に作動中であり、ヒートポンプ2で加熱した湯が暖房装置4に直接供給されている場合には、ヒートポンプ2で加熱した湯の一部を第1弁機構8で分配して第1経路53に供給し、第2タンク6の湯の昇温を促進することができる(図7の通常負荷モード)。暖房運転が停止中であれば、ヒートポンプ2で加熱した湯の全量を第1経路53を経由して第1タンク5に戻すことができる(図4の貯湯モード)。
<<変形例>>
図10に示すように、第1経路53は、第1弁機構8に接続された側とは反対側における第1伝熱管10の端部が接続された第3弁機構38と、第1タンク5の底部の空間の湯を第1伝熱管10に導く下部配管36と、第1タンク5の上部の空間の湯を第1伝熱管10に導く上部配管37と、をさらに有していてもよい。第1タンク5における上部配管37の開口の位置は、暖房循環経路51の第1往き管23の開口と概ね同じ高さに設定するとよい。第3弁機構38は、3WAY式の分配弁であってもよいし、流通方向を切り替える機能のみを有する切り替え弁であってもよい。
このような構成によれば、第1タンク5の上部の空間に貯められた高温の湯と、第1タンク5の底部の空間に貯められた低温の湯とのいずれかを、第1経路53を経由して暖房循環経路51に導くことができる。さらに、弁機構38が分配弁であれば、高温の湯と低温の湯とを所望の比率で混合することにより、所望の温度の湯を第1伝熱管10を経由して暖房循環経路51に導くことができる。
また、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5の上部の空間に戻すこともできるし、底部の空間に戻すこともできる。例えば、第2タンク6の湯量(蓄熱量)が十分あり、第1タンク5の暖房用の湯の加熱を目的としてヒートポンプ2を作動する場合には、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5の上部の空間に戻すようにしてもよい。一方、貯湯モード(図4参照)で第2タンク6の湯との熱交換によって温度が低くなった湯は、第1タンク5の底部の空間に戻すようにしてもよい。このようにすれば、第1タンク5の内部の温度勾配をなるべく急峻に保つことができる。第1タンク5の底部付近の湯温が低いと、水−冷媒熱交換器102での熱交換効率が高くなり、ヒートポンプ2の成績係数が高くなるので好ましい。
また、第1タンク5に注水口と排水口とが設けられていてもよい。このようにすれば、第1タンク5の水量を調節することが可能となる。暖房装置4を使用しない期間(例えば夏期)において第2タンク6の放熱ロスを抑制するために、第1タンク5の水位を所定の高さ(例えば第2タンク6の底面よりも下)まで低下させることが可能となる。また、第1タンク5の水量を調節可能とするために、第1タンク5の水を一時的に退避させるバッファタンクが設けられていてもよい。例えば、ヒートポンプ経路57に3方弁を設け、その3方弁にバッファタンクを接続すればよい。第1タンク5の水位を低くする場合、第1タンク5の底部に貯められた湯を第1経路53に循環させることによって第2タンク6の湯を加熱してもよいし、第2タンク6の内部に専用の補助ヒータを設け、この補助ヒータによって第2タンク6の湯を加熱してもよい。
本発明は、給湯システムに関する。特に、貯湯タンクに貯めた湯を用いて暖房を行うことができる暖房給湯システムに関する。
従来から、暖房機能と給湯機能とを有する貯湯式給湯システムが知られている。例えば、特開2004−183934号公報には、給湯用の湯を貯めるタンクと、そのタンクの外周面に互いに接するように巻き付けられた暖房用の配管および給湯用の配管とを備えた貯湯式給湯システムが記載されている。暖房用の配管を流通する熱媒体(通常は水)と給湯用の配管を流通する湯とが熱交換することにより、暖房用の熱媒体が加熱される。加熱された熱媒体を用いて、室内の暖房を行うことができる。ヒートポンプは、基本的に給湯用の湯を沸かすためにのみ用いられる。
一方、例えば欧州では、図11に示す構成の貯湯式給湯システムが普及している。図11に示す貯湯式給湯システムは、暖房用の湯を貯める第1タンク300と、給湯用の湯を貯める第2タンク302と、第1タンク300の内部に配置されたヒータ308とを備えている。第2タンク302は、その一部が第1タンク300の内部に露出するように第1タンク300に組み付けられている。第1タンク300の湯と第2タンク302の水とが熱交換することにより、第2タンク302の水が加熱される。給湯栓304には第2タンク302の湯が供給され、暖房用のラジエター306には第1タンク300の湯が供給される。
図11に示すシステムによれば、第1タンク300の湯をラジエター306に直接かつ大量に供給できるため、大きい暖房負荷に対しては、タンクを1つのみ有する特開2004−183934号公報のシステムよりも対応しやすい。第2タンク302の容積は第1タンク300の容積よりも少ないが、浴槽に湯を貯める等、短時間に大量の湯を使用する習慣のない地域では、この構成でも湯量不足の心配はほとんどない。なお、近年は、エネルギー消費効率を改善するために、ヒータ308に代えて、ヒートポンプが採用され始めている。
ただし、図11に示すシステムによってもなお、負荷変動および負荷量が大きい寒冷地では、ヒータやヒートポンプの加熱能力を上回る負荷が発生し、十分な暖房効果を得ることができなくなる可能性がある。この問題は、急速暖房が要求される時間帯(例えば朝晩)に特に起こりやすい。
急激な負荷増大への対策としては、暖房用の湯を貯めるタンクの大容積化、タンクに貯める湯の設定温度調節(湯温を高くする)、ヒートポンプの加熱能力の向上、補助ヒータの使用などが挙げられる。しかしながら、タンクの容積を増やすと、タンクから外部への放熱量が増大し、エネルギー消費効率が悪くなる。タンクに貯める湯の設定温度を高くすることにも限界がある。ヒートポンプの加熱能力を大きくすると、コストの高騰が不可避である。補助ヒータは、システムの最大加熱能力を高くする観点からあった方がよいが、補助ヒータへの依存度が高くなればなるほど、エネルギー消費効率に優れるヒートポンプの利点が損なわれる。
こうした事情に鑑み、本発明は、従来のシステムと比べてエネルギー消費効率やコストの面で遜色なく、急激な負荷増大にも対応できる給湯システムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
暖房用の湯を貯める第1タンクと、
少なくとも一部が第1タンク内に露出する形で第1タンクに収容または組み付けられた、給湯栓に供給するべき湯を貯める第2タンクと、
第1タンクの湯を暖房装置に供給し、暖房装置からの湯を第1タンクに戻す暖房循環経路と、
第2タンクの第1タンク内に露出した部分を取り囲む第1伝熱部を含み、第1タンクの湯が第1伝熱部を経由して暖房装置に供給されうるように、第1タンクと暖房循環経路の往路部分とを接続(中継)する第1経路と、
第1伝熱部に沿うように配置された第2伝熱部を含み、第2タンクの湯を第2伝熱部に流通させることによって第2タンクの湯と第1伝熱部を流通する湯とを熱交換させる第2経路と、
を備えた、給湯システムを提供する。
上記本発明の給湯システムによれば、第1経路および第2経路を設けたことにより、第1伝熱部を流通する第1タンクの湯と第2伝熱部を流通する第2タンクの湯との熱交換が促進される。したがって、ヒータやヒートポンプの加熱能力を超えるほど大きい暖房能力が要求される場合、第2タンクの湯を第2経路に循環させると同時に、第1経路を通じて暖房循環経路に第1タンクの湯を導くことにより、第2タンクの湯で暖房装置に供給されるべき第1タンクの湯の補助加熱を効率的に行うことができる。言い換えれば、第2タンクに貯められた給湯用の湯を補助加熱源として有効利用することにより、一時的に、給湯システムの暖房能力を底上げすることができる。したがって、本発明の給湯システムは、従来のシステムと比べてエネルギー消費効率やコストの面で遜色なく、急激な負荷増大にも対応できる。
なお、第1経路および第2経路が設けられておらず、第1伝熱部および第2伝熱部を有さない従来の給湯システム(図11参照)においても、第1タンク300の湯に第2タンク302が浸かっているので、第1タンク300の湯と第2タンク302の湯との間で熱交換は起こる。しかしながら、熱交換を促進する工夫がなされていないので、その熱交換は本発明の場合に比べて緩やかである。そのため、第2タンク302の湯を補助加熱源として有効利用できず、第2タンク302の湯によってシステムの暖房能力を底上げすることは不可能である。
本発明の一実施形態にかかる給湯システムの構成図
第1伝熱管および第2伝熱管の他の配列を示す拡大図
第1伝熱管および第2伝熱管のさらに別の配列を示す拡大図
給湯時の湯の流通経路を説明する図
貯湯時の湯の流通経路を説明する図
暖房時の湯の流通経路を説明する図
暖房時(低負荷)の湯の流通経路を説明する図
暖房および給湯時(通常負荷)の湯の流通経路を説明する図
暖房時(高負荷)の湯の流通経路を説明する図
暖房時(急速負荷)の湯の流通経路を説明する図
給湯システムの変形例の簡単な構成図
従来の給湯システムの簡単な構成図
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる給湯システムの構成図である。給湯システム200は、給湯タンクユニット1と、ヒートポンプ2(ヒートポンプユニット)とを備えている。ヒートポンプ2で加熱された湯は、給湯タンクユニット1の第1タンク5に貯められる。第1タンク5に貯められた湯が暖房装置4を循環する。第1タンク5に貯められた湯で間接的に加熱された第2タンク6の湯が給湯栓3に供給される。暖房装置4は、ラジエターや床暖房などの温水暖房機器によって構成されている。
ただし、暖房装置4は、風呂の追炊き用途等の熱交換器によって構成されていてもよい。つまり、本明細書において、「暖房」は「室内の暖房」に限定されない。暖房装置4は、第1タンク5の湯の熱を水や空気などの対象物に与えることができる装置であればよい。
ヒートポンプ2は、第1タンク5の湯を加熱する手段であって、圧縮機101、凝縮器またはガスクーラとしての水−冷媒熱交換器102、膨張機構としての電動膨張弁103および蒸発器104を備えている。圧縮機101、水−冷媒熱交換器102、電動膨張弁103および蒸発器104が冷媒配管によってこの順番で接続されることによって、冷媒回路が形成されている。ヒートポンプ2の冷媒回路には、二酸化炭素やハイドロフルオロカーボンのような冷媒が充填されている。二酸化炭素を冷媒に用いた場合、水−冷媒熱交換器102において冷媒は超臨界状態となる。ヒートポンプ2によれば、水を90℃程度の高い温度まで加熱することが可能である。なお、電動膨張弁103に代えて、容積式の膨張機を採用し、冷媒の膨張エネルギーを回収しうる構成としてもよい。
給湯タンクユニット1は、暖房用の湯を貯める第1タンク5と、給湯栓3に供給するべき湯を貯める第2タンク6と、それらを収容する筐体7とを備えている。第1タンク5の容積は、第2タンク6の容積よりも大きい。第2タンク6は、上部が第1タンク5から突出し、残部が第1タンク5内に露出する形で第1タンク5に組み付けられている。第1タンク5と第2タンク6とによって二重タンク構造が形成されている。第2タンク6の湯は、第1タンク5の湯によって保温および/または加熱される。第2タンク6は、その全部が第1タンク5に収容されていてもよいが、本実施形態のごとく、第2タンク6の上部が第1タンク5の上部から突出する配置によれば、第2タンク6への各種配管の接続作業が容易であり、製造コストを安くできる。
第1タンク5の湯と第2タンク6の湯とは、基本的に混ざり合うことはない。給湯栓3に供給されるのは、第2タンク6の湯のみである。ヒートポンプ2によって直接加熱されるのは、第1タンク5の湯のみである。第2タンク6の湯は、第1タンク5の上部の空間に貯められた湯によって間接的に加熱される。そのため、市水が硬水の地域でも水−冷媒熱交換器102にスケールが蓄積しにくく、熱交換効率が経年低下しにくい。第1タンク5の湯にブラインが含まれていてもよい。
筐体7の内部において、タンクや配管などの部品は断熱材(例えば耐熱性発泡ポリスチレン)によって被覆されており、放熱が防止されている。
第1タンク5に組み付けられた第2タンク6の底面の高さは、第1タンク5の高さの中間付近にある。第1タンク5の上部の空間は、第1タンク5の側壁と第2タンク6の側壁との間に形成された円筒状の空間であり、この空間の容積が第1タンク5の容積に占める割合は少なく、例えば第1タンク5の容積の半分未満である。夏期等の負荷が小さい時期において、この円筒状の空間だけに高温の湯が貯められるようにすれば、第2タンク6の湯を高温に保ちつつ、第1タンク5の外表面からの放熱を極力抑制することができる。また、この円筒状の空間には、補助ヒータ18が配置されている。特に高い加熱能力が必要となる場合には、この補助ヒータ18を用いて第1タンク5の湯を加熱してもよい。
第1タンク5の湯は、上部から底部に向かって温度成層を形成する。具体的に、第1タンク5の湯の温度は、システムの使用状況や季節にもよるが、上部(第2タンク6の周囲)で50〜90℃、底部で30〜50℃になる。第2タンク6は第1タンク5の上部の空間に貯められた湯で加熱および/または保温されるので、給湯栓3から短時間で大量に湯を出さない限り、第2タンク6の湯の温度は60〜80℃になる。
給湯タンクユニット1は、さらに、暖房循環経路51、第1経路53、第2経路55、ヒートポンプ経路57、給湯経路59および給水経路61を備えている。暖房循環経路51の往路部分、第1経路53およびヒートポンプ経路57は、第1弁機構8を介して相互に接続されている。同様に、第2経路55、給湯経路59および給水経路61は、第2弁機構9を介して相互に接続されている。
弁機構8,9は、湯の流通方向をある1つの方向から別の1つの方向に切り替えることができ、複数の流れを1つの流れに合わせることができ、1つの流れを複数の流れに分けることができる分配弁によって構成されている。本実施形態では、4本の配管が接続される4WAY型の分配弁によって弁機構8,9が構成されているが、より一般的な3WAY型の分配弁を複数個組み合わせることによって、弁機構8,9の各々が構成されていてもよい。なお、図7を参照して後に説明する運転モードを実行する必要がない場合、分配機能を有さない切り替え弁によって弁機構8,9が構成されていてもよい。
暖房循環経路51は、第1タンク5の湯を暖房装置4に供給し、暖房装置4からの湯を第1タンク5に戻すための経路であり、第1往き管23、第2往き管25、ポンプ16および戻り管26によって構成されている。第1タンク5の内部から外部へと延びる第1往き管23によって、第1タンク5と第1弁機構8とが接続されている。第1往き管23による暖房循環経路51の入口は、第1タンク5の上部の空間に位置している。第2往き管25によって、第1弁機構8と暖房装置4とが接続されている。第1往き管23によって暖房循環経路51の往路部分の一部(上流側部分)が構成され、第2往き管25によって暖房循環経路51の往路部分の残部(下流側部分)が構成されている。ポンプ16は、第2往き管25に設けられている。第1タンク5の外部から内部へと延びる戻り管26によって、暖房装置4と第1タンク5とが接続されている。戻り管26による暖房循環経路51の出口は、第1タンク5の底部の空間に位置している。第1タンク5の上部の空間に貯められている湯は、第1往き管23、第1弁機構8および第2往き管25を経由して暖房装置4に供給されうる。暖房装置4で温度が低下した湯は、戻り管26を経由して第1タンク5の底部の空間に戻る。
第1経路53は、第1往き管23とは異なるルートで第1タンク5の湯を暖房循環経路51の第2往き管25に導くための経路である。さらに、第1経路53は、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5に戻すための経路でもある。第1経路53は、第1伝熱管10によって構成されている。第1伝熱管10によって、第2タンク6の第1タンク5内に露出した部分を取り囲む第1伝熱部10aが形成されている。第1タンク5の湯が第1伝熱部10aを経由して暖房装置4に供給されうるように、第1タンク5と暖房循環経路51の往路部分(第2往き管25)とが第1経路53によって接続されている。第1タンク5の内部における第1経路53の開口の位置は、第1タンク5の側壁と第2タンク6の側壁との間における第1タンク5の上部の空間に定められている。第1タンク5の上部の空間に貯められた湯は、第1伝熱管10、第1弁機構8および第2往き管25を経由して暖房装置4に供給されうる。第1経路53の第1タンク5の外部における部分に圧力逃がし弁13が設けられている。
第2経路55は、第2タンク6の湯を循環させる経路であるとともに、第2タンク6の湯を給湯経路59に導くための経路でもある。第2経路55は、第2伝熱管11、ポンプ15および配管34によって構成されている。第2伝熱管11によって、第1伝熱部10aに沿うように配置された第2伝熱部11aが形成されている。第2伝熱管11による第2経路55の入口の位置は、第2タンク6の底部の空間に定められている。ポンプ15は、第2伝熱部11aと第2弁機構9との間に位置するように、第2伝熱管11に設けられている。第2タンク6の外部から内部へと延びる配管34によって、第2弁機構9と第2タンク6とが接続されている。配管34による第2経路55の出口の位置は、第2タンク6の上部の空間に定められている。配管34から分岐する形で圧力逃がし弁12が設けられている。
このように、第2経路55は、第2タンク6の底部の空間に貯められた湯を第2伝熱部11aに流通させた後、第2タンク6の上部の空間へと戻す循環経路を形成している。第2弁機構9を介して、給湯経路59と第2経路55とが接続されているので、第2伝熱管11を流通後の湯を給湯経路59に供給することもできる。
図1に示すように、第1経路53の第1伝熱部10aと第2経路55の第2伝熱部11aとは互いに接している。したがって、第1経路53を流通する湯と、第2経路55を流通する湯とを、これら伝熱部10a,11aにおいて熱交換させることができる。つまり、第1伝熱管10を流通する湯によって第2伝熱管11を流通する湯を効率的に加熱できる。逆に、第2伝熱管11を流通する湯によって第1伝熱管10を流通する湯を効率的に加熱することもできる。前者の場合において、第1伝熱管10を流通する湯は、ヒートポンプ2で加熱されて第1タンク5に戻る湯である。ヒートポンプ2で加熱された高温の湯で、第2伝熱管11を流通する第2タンク6の湯を加熱できる。後者の場合において、第1伝熱管10を流通する湯は、第1タンク5から暖房装置4に直接供給されるべき湯である。第2伝熱管11を流通する第2タンク6の高温の湯で、第1タンク5から暖房装置4に向かう途中の湯を加熱できる。また、伝熱管10,11には、第2タンク6からの放熱を抑制する効果もある。
図1の例において、第1伝熱管10および第2伝熱管11は、ともに一重管であり、第1伝熱管10の外径と第2伝熱管11の外径とは等しい。第2タンク6と第2伝熱管11とによって第1伝熱管10が挟まれるように、第1伝熱管10が第2タンク6に巻き付けられ、さらに、第1伝熱管10の上から第2伝熱管11が第2タンク6に巻き付けられている。言い換えれば、第2伝熱管11は、第1伝熱管10を介して間接的に第2タンク6に巻き付けられている。
より詳細には、第2タンク6の高さ方向に関して隣り合う部分同士が互いに密着しあう形で第1伝熱管10が直接かつ螺旋状に第2タンク6に巻き付けられている。さらに、第1伝熱管10と第2伝熱管11とが径方向の複数箇所で接するように、第2伝熱管11が第1伝熱管10の上から螺旋状に第2タンク6に巻き付けられている。すなわち、第1伝熱管10および第2伝熱管11は、それぞれが密着巻の形態を有し、伝熱部10a,11aを形成する部分が二重コイルの形になっている。このような構成によれば、伝熱面積を十分に確保することができるとともに、熱交換効率を高めることができる。
第1伝熱管10は、伝熱部10aを形成する部分が第2タンク6に溶接またはロウ付けされることによって第2タンク6に固定されていてもよい。これにより、熱抵抗を小さくすることができる。同様の理由により、第2伝熱管11は、伝熱部11aを形成する部分が第1伝熱管10に溶接またはロウ付けされることによって第1伝熱管10に固定されていてもよい。
第1伝熱管10の外径と第2伝熱管11の外径とが異なっていてもよい。第1伝熱管10と第2伝熱管11との位置関係も両者が接している限り特に限定されない。例えば、第2伝熱管11が第2タンク6に直接かつ螺旋状に巻き付けられ、第2タンク6に巻き付けられた第2伝熱管11の上から第1伝熱管10が第2タンク6に間接的に巻き付けられていてもよい。
また、図2Aに示すように、第1伝熱管10と第2伝熱管11とが第1タンク5の高さ方向に関して交互に並ぶように、第1伝熱管10および第2伝熱管11の各々が第2タンク6に直接かつ螺旋状に巻き付けられていてもよい。このようにしても、上記と同様の効果が得られる。
さらに、図2Bに示すように、大径の第1伝熱管10の内部に小径の第2伝熱管11が通された二重管が第2タンク6に螺旋状に巻き付けられていてもよい。このようにしても、上記と同様の効果が得られる。図2Bの例において、第1伝熱管10と第2伝熱管11との位置関係が内外で入れ替わってもよい。
ただし、第2伝熱管11と第2タンク6とによって第1伝熱管10が挟まれる図1の例によれば、第1伝熱管10が第2伝熱管11および第2タンク6の両方に接している。そのため、第2伝熱管11が内側で第1伝熱管10が外側となる例(図示省略)よりも熱交換を効率よく行うことができる。図1の位置関係を採用すれば、第1伝熱管10から第2伝熱管11へと熱が移動する際には、第1伝熱管10から第2タンク6の外壁にも熱が移動する。第2伝熱管11から第1伝熱管10へと熱が移動する際には、第2タンク6の外壁からも第1伝熱管10へと熱が移動する。つまり、第2タンク6の外壁を伝熱面として積極的に利用することにより、熱交換効率の向上を図ることができる。また、図1の例によれば、第1伝熱管10および第2伝熱管11が高さ方向に最密に配列しているので、図2Aの例よりも熱交換に寄与する伝熱部10a,11aの長さを稼ぐのに有利である。また、図1の例によれば、二重管の例(図2B)よりもコスト面で有利である。
なお、伝熱部10a,11aは、それらの内部を湯が流通可能であり、かつ熱交換が効率よく行われるものであればよく、伝熱管10,11によって形成されることは必須ではない。ただし、コストや生産性を考慮すれば、本実施形態のようにするのがよい。
次に、ヒートポンプ経路57は、第1タンク5の湯をヒートポンプ2に導くための経路である。ヒートポンプ経路57は、配管24およびその配管24に設けられたポンプ14によって構成されている。配管24の上流端は第1タンク5に接続されている。配管24によるヒートポンプ経路57の入口の位置は、第1タンク5の底部の空間に定められている。一方、配管24の下流端は第1弁機構8に接続されている。つまり、第1経路53と、ヒートポンプ経路57の下流端と、暖房循環経路51の往路部分とが相互に接続されている。これにより、ヒートポンプ2で加熱した湯を暖房装置4に直接供給しうる。ヒートポンプ2で加熱した湯を暖房装置4に直接供給する構成によれば、圧力損失を小さく抑えることができ、ポンプ14,16の省電力化を見込める。放熱ロスも少ない。
さらに、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5に戻すための経路として、第1経路53を利用可能である。このような構成によれば、ヒートポンプ経路57を第1タンク5の内部まで延ばす必要がないので、ヒートポンプ経路57の長さの短縮化を図ることができる。また、第1タンク5を貫通する配管の数の増加を回避できる。
具体的に、第1経路53、ヒートポンプ経路57および暖房循環経路51の往路部分の接続箇所に第1弁機構8が設けられている。第1経路53を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とを第1弁機構8で合流させ、暖房循環経路51(第2往き管25)へと導くことができる。この運転モードによれば、ヒートポンプ2の加熱能力に第1タンク5に予め貯められた湯の暖房能力が上乗せされるので、ヒートポンプ2の加熱能力を超えるほど高い暖房能力が要求される場合に有効である。
上記運転モードにおいて、第2タンク6の湯を第2経路55に循環させることによって、第2タンク6の湯と、第1経路53を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯との熱交換を促進できる。これにより、第2タンク6の湯の熱を補助加熱源として利用でき、瞬間的な暖房能力をさらに高めることができる。
さらに、上記運転モードにおいて、第1往き管23を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、第1経路53を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とを第1弁機構8で合流させ、暖房循環経路51の第2往き管25へと導くこともできる。
また、第1弁機構8を制御することによって、第1往き管23を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯のみを第1弁機構8で合流させて暖房循環経路51の第2往き管25へと導くモードでの運転も可能である。つまり、第1経路53を使用しない。この運転モードにおいても、ヒートポンプ2の加熱能力に第1タンク5に予め貯められた湯の暖房能力が上乗せされる。
次に、給水経路61は、第2タンク6に市水を補給するとともに、給湯経路59に供給されるべき湯の温度調節を行うための経路である。給水経路61は、給水管31、分岐給水管32および減圧弁19を有する。給水管31によって、外部の水道管(図示せず)と第2弁機構9とが接続されている。分岐給水管32は、給水管31から分岐して第2タンク6の内部に延びており、先端の開口の位置が第2タンク6の底部の空間に定められている。給湯栓3を開いて第2タンク6の湯を消費すると、給水管31および分岐給水管32を経由して第2タンク6の底部の空間に市水が補給される。市水は、第2タンク6の湯が消費されると直ちに補給されてもよいし、ある程度消費されたらその消費分または所定量が補給されるようにしてもよい。配管34の開口の位置を第2タンク6の中央部付近の空間に定めると、市水の補給をせずに第2タンク6の湯を相当量連続使用できる。
給湯経路59は、出湯管35およびその出湯管35に設けられたポンプ17によって構成されている。出湯管35により、第2弁機構9と給湯栓3とが接続されている。第2経路55の第2伝熱管11、第2弁機構9および給湯経路59を経由して、第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することができる。ポンプ15を停止し、ポンプ17を作動することにより、配管34から第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することもできる。さらに、給水経路61を流れる市水と、第2タンク6の湯とを第2弁機構9において適切な比率で混合することにより、適切な温度に調節された湯を給湯栓3に供給することができる。給水経路61を流れる市水のみを給湯栓3に供給することもできる。
次に、給湯システム200の制御回路について説明する。
図1に示すように、給湯システム200は、各種温度センサ39〜50、入力端末63およびコントローラ65を備えている。入力端末63は、マイクロコンピュータ、ユーザーの入力操作によって給湯温度や暖房の強さを設定するための入力部、および、湯の使用状況や暖房の強さを表示するモニタ等によって構成されている。コントローラ65は、システムの制御プログラムを実行するマイクロコンピュータあるいはDSP(digital signal processor)によって構成されている。入力端末63とコントローラ65とは、通信可能に接続されている。各種温度センサ39〜50の検出結果(検出信号)は、コントローラ65に与えられる。コントローラ65は、各種温度センサ39〜50の検出結果に基づき、給湯温度や暖房の強さが入力端末63で予め設定された条件に近づくように、PI制御などの公知の手法によってポンプ14〜17、第1弁機構8、第2弁機構9、ヒートポンプ2および補助ヒータ18の制御を行う。
ヒートポンプ経路57の水−冷媒熱交換器102への入口近傍には、入水温度センサ39が設けられ、同出口近傍に出湯温度センサ40が設けられている。入水温度センサ39および出湯温度センサ40の検出結果から、水−冷媒熱交換器102の入口の湯の温度と出口の湯の温度との差を算出できる。湯の温度差とポンプ14の回転数とから、ヒートポンプ2の加熱能力をリアルタイムで算出できる。算出した加熱能力が必要とされる加熱能力に近づくように、ヒートポンプ2の制御を行ってもよい。
ヒートポンプ2の蒸発器104には蒸発温度センサ41が設けられ、圧縮機101の出口部には吐出温度センサ42が設けられている。蒸発温度センサ41および吐出温度センサ42の検出結果に基づき、ヒートポンプ2の効率が最大化されるように電動膨張弁103の開度および圧縮機101の回転数が制御される。通常、ヒートポンプ2は、効率が最もよくなる定格能力またはその近傍の能力で運転される。
第1タンク5の外壁面には、高さ方向に沿って複数のタンク温度センサ45,46,47が設けられている。タンク温度センサ45,46,47によって第1タンク5に貯められた湯の高さ方向の温度分布、言い換えれば、湯量(蓄熱量に対応する)を検出することができる。タンク温度センサ45,46,47の検出結果に基づいてヒートポンプ2の運転を制御することにより、適温および適量の湯を第1タンク5に貯めることができ、第2タンク6の湯を適温に保つことができる。なお、このようなタンク温度センサ45,46,47は、第1タンク5の内壁面に設けられていてもよいし、第1タンク5の内部において第2タンク6の外壁面に設けられていてもよい。
給水経路61には、市水の温度を検出する市水温度センサ44が設けられている。給湯経路59には、給湯栓3に供給される直前の湯の温度を検出する第1給湯温度センサ43が設けられている。第2経路55には、第2伝熱管11を経由して第2弁機構9に入る直前の湯の温度を検出する第2給湯温度センサ48が設けられている。給湯温度センサ43,48の検出結果に基づき、第2弁機構9が制御され、第2タンク6の湯と市水との混合比率が調節される。暖房循環経路51の第2往き管25には、暖房装置4に供給されるべき湯の温度を検出する第1暖房温度センサ49が設けられている。暖房循環経路51の戻り管26には、暖房装置4から第1タンク5に戻される湯の温度を検出する第2暖房温度センサ50が設けられている。暖房温度センサ49,50の検出結果は、予め設定された暖房の強さとともに、暖房負荷の大小を判断するためのデータとして用いることができる。
次に、給湯システム200のいくつかの運転モードについて説明する。ただし、これらの運転モードは一例にすぎず、本発明はこれらによって何ら限定されない。各運転モードにおいて、第1弁機構8および第2弁機構9のアクチュエータは、図示の流れが形成されるようにコントローラ65によって制御される。
<<給湯>>
図3に示す運転モードは、給湯負荷がヒートポンプ2の加熱能力の範囲内にあるときに実行されうる給湯モードである。図中の太線によって湯(または市水)の流れが示されている。暖房装置4はオフである。給湯栓3を開けると、第2経路55の配管34、第2弁機構9および給湯経路59を経由して第2タンク6の湯が給湯栓3に供給される。第2タンク6の湯は、第2弁機構9において給水経路61からの市水と混合され、入力端末63で予め設定された温度に調節される。使用した湯と同量の市水が分岐給水管32を通じて第2タンク6の底部の空間に補給される。なお、配管34に代えて第2伝熱管11を経由して第2タンク6の湯を給湯栓3に供給してもよいし、配管34および第2伝熱管11の両方を経由して第2タンク6の湯を給湯栓3に供給してもよい。給湯温度センサ43,48で湯温をモニタし、最適な経路で湯が供給されるように制御すればよい。
第2タンク6に市水が補給されると、ヒートポンプ2が起動し、第1タンク5の湯を加熱する。ヒートポンプ2で加熱された湯は、第1経路53を経由して第1タンク5の上部の空間に戻される。これにより、第2タンク6の湯が間接的に加熱される。給湯栓3が閉じられた場合、次に図4を参照して説明する貯湯モードに移行する。なお、第2タンク6の湯を大量に消費した場合には、給湯負荷が単独でヒートポンプ2の加熱能力を超える可能性がある。この場合は、加熱能力の不足分を補助ヒータ18で補う高負荷給湯モードで運転を行ってもよい。
<<貯湯>>
図4に示す運転モードは、ヒートポンプ2を作動して第1タンク5の湯を加熱する貯湯モードである。第1タンク5の湯を加熱することによって、第2タンク6の湯が間接的に加熱される。この貯湯モードは、給湯栓3が閉じられているときに実行されうる。例えば、第1タンク5の外壁面に設けられたタンク温度センサ45,46,47の検出結果に基づいて、第1タンク5および/または第2タンク6の湯量(蓄熱量)を推定し、推定した湯量が所定値を下回った場合にヒートポンプ2を起動し、第1タンク5の湯の加熱を開始する。図4に示すように、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1経路53によって第1タンク5に戻しながら、第2タンク6の湯を第2経路55に循環させる。第2経路55を流通する湯と、ヒートポンプ2で加熱された湯とが、伝熱部10a,11aにおいて熱交換し、第2タンク6の湯が迅速に適温まで加熱される。
図11に示す従来のシステムでは、第2タンク302の湯を大量に消費し、第2タンク302に市水が補給され、第2タンク302の湯の温度が低下すると、第2タンク302の湯の温度を再び適温まで加熱するのに長い時間を要する。つまり、湯を短時間で大量に消費した場合に湯切れが発生する可能性を否定できない。第2タンク302の湯を昇温するのに長い時間を要するという問題は、ヒートポンプやヒータの加熱能力の問題だけでなく、第2タンク302の湯を第1タンク300の湯で間接的に加熱するという、二重タンク構造を採用した給湯システムの本質的な部分にも起因している。
これに対し、本実施形態の給湯システム200によれば、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1経路53によって第1タンク5に戻す。この際、第2経路55に第2タンク6の湯を循環させると、第1経路53を流通する湯と第2経路55を流通する湯とが、伝熱部10a,11aにおいて熱交換する。強制対流を生かした熱交換が行われることにより、従来のシステム(図11)よりも短時間で第2タンク6の湯を昇温することができる。また、第2タンク6の湯が流通する第2伝熱部11aは、第1タンク5の上部の空間に貯められた湯に浸かっている。このことも、第2タンク6の湯の迅速な昇温に寄与する。
<<暖房(通常負荷)>>
図5に示す運転モードは、第2タンク6の湯の量(蓄熱量)が十分にあり、暖房負荷がヒートポンプ2の加熱能力の範囲内(例えば定格能力の70〜130%の範囲内)にあるときに実行されうる通常暖房モードである。この通常暖房モードでは、ヒートポンプ2で加熱した湯のみを用いて暖房が行われる。ヒートポンプ2の加熱能力が、要求される暖房能力に一致するように、ヒートポンプ2の電動膨張弁102の開度、圧縮機101の回転数が制御される。
ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯は、第1弁機構8および暖房循環経路51の第2往き管25を経由して暖房装置4に供給される。暖房装置4を循環した湯は、暖房循環経路51の戻り管26を経由して第1タンク5の底部の空間に戻される。ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5に戻さずに暖房装置4に直接供給するので、より高温の湯を暖房装置4に供給できる。また、ポンプ14,16の負荷を小さくすることができる。
なお、外気温が低い場合、ヒートポンプ2の蒸発器104が着霜するので、予め定めたタイミングで除霜処理を行う必要が生ずる。除霜処理の実行中は、ヒートポンプ2で湯を加熱することができない。したがって、除霜処理の実行中には、次に図6を参照して説明するように、第1タンク5に貯められた湯を暖房装置4に供給してもよい。このようにすれば、暖房効果が途切れず、ユーザーの快適性が向上する。
<<暖房(低負荷)>>
図6に示す運転モードは、第1タンク5の湯の量(蓄熱量)が十分にあり、暖房負荷が非常に小さい場合に実行されうる低負荷暖房モードである。具体的に、この低負荷暖房モードは、暖房負荷がヒートポンプ2の定格能力の所定比率(例えば70%)を下回った場合に実行されうる。さらに、ヒートポンプ2の除霜処理の実行中において実行してもよい。
暖房負荷が非常に小さい場合に、図5に示す通常暖房モードを選択すると、ヒートポンプ2を定格能力から大きく外れた能力で運転する必要性が生じる。ヒートポンプ2にとって、定格能力から大きく外れた能力での運転は、効率がよくない。したがって、暖房負荷が十分に小さい場合には、ヒートポンプ2を停止し、第1タンク5に貯められた湯で暖房を賄うとよい。
第1タンク5の湯は、第1往き管23および第1伝熱管10(第1経路53)の少なくとも一方を経由して第2往き管25に導かれる。第1タンク5の内部において、第1往き管23の開口の位置と、第1伝熱管10の開口の位置とは、高さ方向に関して差がある。したがって、暖房装置4に供給するべき湯の温度の微調節が必要なときは、第1往き管23を経由して第2往き管25に導かれる第1タンク5の湯と、第1伝熱管10を経由して第2往き管25に導かれる第1タンク5の湯とを、第1弁機構8において所定比率で混合してもよい。これにより、適切な温度に調節された湯が暖房装置4に供給されうる。
具体的に、本実施形態においては、第1往き管23の開口と、第1伝熱管10(第1経路53)の開口との位置関係が次のように定められている。すなわち、第1経路53が、第1往き管23の開口よりも下方において、第1タンク5の上部の空間に向かって開口している。第1タンク5の内部には、温度成層が形成されているので、第1往き管23から取得する第1タンク5の湯と、第1経路53を構成する第1伝熱管10から取得する第1タンク5の湯との温度は相違する。したがって、暖房負荷の大きさに応じて、第1往き管23のみから第1タンク5の湯を取得するのか、第1伝熱管10(第1経路53)のみから第1タンク5の湯を取得するのか、あるいは両方から取得して第1弁機構8で混合するのかを、選択することができる。言い換えれば、適切な温度の湯を暖房装置4に供給することができる。
なお、第1タンク5の湯の量(蓄熱量)が所定値を下回った場合には、ヒートポンプ2の定格能力またはその近傍の能力での運転を開始し、第1タンク5の湯を加熱するとよい。このとき、暖房装置4には、次に図7を参照して説明するように、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1弁機構8において分配し、分配された湯を供給することができる。また、暖房装置4から第1タンク5に戻される湯の温度が所定温度以下となった場合に、ヒートポンプ2を起動するようにしてもよい。
あるいは、暖房装置4への湯の供給を一時的に停止してもよい。そして、第1タンク5の湯の量(蓄熱量)が十分になったら、ヒートポンプ2の運転を停止し、再び第1タンク5に貯められた湯で暖房を賄う。このようなON−OFF制御を行うことにより、ヒートポンプ2をより多くの時間、定格能力で運転することができる。この結果、インバータで圧縮機101の回転数を制御することによって暖房負荷の大小に対応するよりもエネルギー消費効率がよくなる。
<<暖房+給湯(通常負荷)>>
図7に示す運転モードは、第2タンク6の湯の量(蓄熱量)が不十分であり、暖房負荷と給湯負荷の合計が、ヒートポンプ2の定格能力の近傍(例えば定格能力の70〜130%の範囲内)にあるときに実行されうる通常負荷モードである。簡単にいえば、図3の給湯モードと、図6の暖房モードとの組み合わせである。給湯栓3への湯の供給は、図3を参照して説明した通りに行われる。
ヒートポンプ2で加熱された湯は、第1弁機構8において、暖房装置4に直接供給される画分と、第1経路53を経由して第1タンク5に戻される画分とに分配される。これにより、暖房装置4を作動させながら、第2タンク6の湯を積極的に加熱できる。分配比率は、例えば、要求される暖房能力に応じて定めるとよい。給湯栓3が閉じている場合には、図4を参照して説明したように、第2経路55に第2タンク6の湯を循環させてもよい。そのようにすれば、伝熱部10a,11aにおいて、第1経路53を流通する湯と、第2経路55を流通する湯とが熱交換し、第2タンク6の湯が迅速に昇温する。
図4,図5および図7を参照して説明したように、本実施形態の給湯システム200によれば、ヒートポンプ2で加熱した湯の全量を第1経路53によって第1タンク5に戻すモード(図4)と、ヒートポンプ2で加熱した湯の全量のみを暖房装置4に直接供給するモード(図5)と、ヒートポンプ2で加熱した湯の一部を暖房装置4に直接供給しつつ残部を第1経路53によって第1タンク5に戻すモード(図7)とから選ばれる少なくとも1つのモードでの運転がさらに可能である。各モードの利点は、各図を参照して説明した通りである。各モードの選択は、コントローラ65が弁機構8,9を適切に制御することによって実現される。
<<暖房(高負荷)>>
図8に示す運転モードは、暖房負荷がヒートポンプ2の最大加熱能力(例えば定格能力の130%)を超える場合に実行されうる高負荷暖房モードである。第1往き管23を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とが、第1弁機構8において適切な比率で混合され、暖房循環経路51の第2往き管25に導かれる。このようにすれば、ヒートポンプ2の最大加熱能力に第1タンク5の湯による加熱能力が上乗せされるので、一時的に、ヒートポンプ2の最大加熱能力を超える加熱能力が発揮されうる。
なお、第1往き管23に代えて、第1経路53を経由して第1タンク5の湯を第2往き管25に導くようにしてもよい。また、この高負荷暖房モードの実行中においても、図3を参照して説明した給湯モードを並列して実行でき、第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することができる。
<<暖房(急速負荷)>>
図9に示す運転モードは、暖房負荷がヒートポンプ2の最大加熱能力(例えば130%)を超え、かつ朝晩のような急速暖房を要する時間帯に実行されうる急速暖房モードである。第1往き管23および第1経路53(第1伝熱管10)を経由して暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯と、ヒートポンプ2で加熱された第1タンク5の湯とが、第1弁機構8において適切な比率で混合され、暖房循環経路51の第2往き管25に導かれる。これと同時に、第2経路55に第2タンク6の湯を循環させる。
すると、伝熱部10a,11aにおいて、第1経路53を流通する第1タンク5の湯と、第2経路55を流通する第2タンク6の湯とが熱交換する。つまり、第2タンク6の湯で暖房装置4に供給されるべき第1タンク5の湯の補助加熱を行うことができる。ヒートポンプ2の最大加熱能力に、第1タンク5の湯による加熱能力と第2タンク6の湯による加熱能力とが上乗せされるので、一時的に、ヒートポンプ2の最大加熱能力を大幅に超える加熱能力が発揮されうる。なお、第1往き管23を使用せず、第1経路53(第1伝熱管10)とヒートポンプ経路57を使用して第1タンク5の湯を暖房装置4に供給してもよい(図示省略)。
図9を参照して説明した急速暖房モードの実行中においても、第2タンク6の湯を給湯栓3に供給することができる。具体的には、第2伝熱管11を経由して第2弁機構9に導かれた第2タンク6の湯を給湯経路59に導くことができる。
<<その他>>
図8を参照して説明した高負荷暖房モードでの運転が予め定められた時間を超えて継続する場合には、抵抗加熱式の補助ヒータ18で第1タンク5の湯を加熱するようにしてもよい。同様に、図9を参照して説明した急速暖房モードでの運転が予め定められた時間を超えて継続する場合には、補助ヒータ18で第1タンク5の湯を加熱するようにしてもよい。
本実施形態において、第1タンク5の内部における補助ヒータ18の位置は、第1タンク5の側壁と第2タンク6の側壁との間に形成された第1タンク5の上部の空間に定められている。そして、補助ヒータ18の周囲において、第1往き管23および第1経路53を構成する第1伝熱管10が開口している。第1往き管23の開口は、高さ方向に関して補助ヒータ18の上端と下端との間に位置している。第1伝熱管10の開口は、補助ヒータ18よりも下方に位置し、補助ヒータ18と向かい合っている。このような位置関係によれば、第1往き管23および/または第1伝熱管10から第1タンク5の湯を取得するときに、補助ヒータ18の周囲の対流が促進され、熱伝達率を高めることができる。この結果、補助ヒータ18での熱効率を高めながら、第1往き管23および/または第1伝熱管10から第1タンク5の湯を取得できるので、給湯システム200の最大暖房能力がより一層高まる。
図8および図9を参照して説明した運転モードでは、負荷の大きさがヒートポンプ2の最大加熱能力を超える。したがって、こうした運転モードを適切に選択および実行できるように、給湯負荷と暖房負荷との合計がヒートポンプ2の加熱能力(好ましくは定格能力)に収まっている時間帯において、第1タンク5の湯および第2タンク6の湯を十分に加熱しておくとよい。そのような時間帯は、深夜から早朝の時間帯(例えばAM2時〜AM6時)であってもよいし、コントローラ65によって推定された時間帯であってもよい。例えば、一定期間(例えば過去数日間)の運転履歴に基づき、給湯負荷と暖房負荷との合計がヒートポンプ2の加熱能力(好ましくは定格能力)に収まっている時間帯を推定するプログラムがコントローラ65によって実行されてもよい。
また、負荷の大きさは、各種温度センサの検出結果、季節条件、時間帯、暖房の設定温度、給湯の設定温度などのデータに基づいて判断することができる。また、これらのデータ群から選ばれる少なくとも1つのデータを検索キーとして用い、コントローラ65のメモリに予め記憶されたデータベースを参照することによって、種々の運転モードの中から1または複数の運転モードを選択し、実行するようにしてもよい。
例えば、通常暖房モードで運転を行っているときに、暖房循環経路51の戻り管26に設けられた第2暖房温度センサ50の検出結果が、所定条件を満足した(所定値を下回った)場合に、高負荷暖房モードへと移行することができる。また、例えば、第2伝熱管11に設けられた第2給湯温度センサ48の検出結果が所定条件を満足した(所定値を下回った)場合に、ヒートポンプ2を起動し、図3および図4を参照して説明した貯湯モードを実行することができる。ヒートポンプ2が既に作動中であり、ヒートポンプ2で加熱した湯が暖房装置4に直接供給されている場合には、ヒートポンプ2で加熱した湯の一部を第1弁機構8で分配して第1経路53に供給し、第2タンク6の湯の昇温を促進することができる(図7の通常負荷モード)。暖房運転が停止中であれば、ヒートポンプ2で加熱した湯の全量を第1経路53を経由して第1タンク5に戻すことができる(図4の貯湯モード)。
<<変形例>>
図10に示すように、第1経路53は、第1弁機構8に接続された側とは反対側における第1伝熱管10の端部が接続された第3弁機構38と、第1タンク5の底部の空間の湯を第1伝熱管10に導く下部配管36と、第1タンク5の上部の空間の湯を第1伝熱管10に導く上部配管37と、をさらに有していてもよい。第1タンク5における上部配管37の開口の位置は、暖房循環経路51の第1往き管23の開口と概ね同じ高さに設定するとよい。第3弁機構38は、3WAY式の分配弁であってもよいし、流通方向を切り替える機能のみを有する切り替え弁であってもよい。
このような構成によれば、第1タンク5の上部の空間に貯められた高温の湯と、第1タンク5の底部の空間に貯められた低温の湯とのいずれかを、第1経路53を経由して暖房循環経路51に導くことができる。さらに、弁機構38が分配弁であれば、高温の湯と低温の湯とを所望の比率で混合することにより、所望の温度の湯を第1伝熱管10を経由して暖房循環経路51に導くことができる。
また、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5の上部の空間に戻すこともできるし、底部の空間に戻すこともできる。例えば、第2タンク6の湯量(蓄熱量)が十分あり、第1タンク5の暖房用の湯の加熱を目的としてヒートポンプ2を作動する場合には、ヒートポンプ2で加熱した湯を第1タンク5の上部の空間に戻すようにしてもよい。一方、貯湯モード(図4参照)で第2タンク6の湯との熱交換によって温度が低くなった湯は、第1タンク5の底部の空間に戻すようにしてもよい。このようにすれば、第1タンク5の内部の温度勾配をなるべく急峻に保つことができる。第1タンク5の底部付近の湯温が低いと、水−冷媒熱交換器102での熱交換効率が高くなり、ヒートポンプ2の成績係数が高くなるので好ましい。
また、第1タンク5に注水口と排水口とが設けられていてもよい。このようにすれば、第1タンク5の水量を調節することが可能となる。暖房装置4を使用しない期間(例えば夏期)において第2タンク6の放熱ロスを抑制するために、第1タンク5の水位を所定の高さ(例えば第2タンク6の底面よりも下)まで低下させることが可能となる。また、第1タンク5の水量を調節可能とするために、第1タンク5の水を一時的に退避させるバッファタンクが設けられていてもよい。例えば、ヒートポンプ経路57に3方弁を設け、その3方弁にバッファタンクを接続すればよい。第1タンク5の水位を低くする場合、第1タンク5の底部に貯められた湯を第1経路53に循環させることによって第2タンク6の湯を加熱してもよいし、第2タンク6の内部に専用の補助ヒータを設け、この補助ヒータによって第2タンク6の湯を加熱してもよい。