以下、発明を実施するための最良の形態として、本発明の記録装置及び方法、コンピュータプログラム、並びに記録媒体に係る実施形態の説明を進める。
(記録装置の実施形態)
本発明の記録装置の実施形態は、任意の記録速度で記録媒体にデータパターンを記録する記録装置であって、第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる所定の第1基準ストラテジにより記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第1記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第1最適ストラテジを算出する第1ストラテジ算出手段と、前記第1記録速度と前記第1記録速度とは異なる第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2基準ストラテジを算出する第2ストラテジ算出手段と、前記第2記録速度で記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2最適パワーを算出する第2パワー算出手段と、前記第2記録速度で、前記第2最適パワーで且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2基準ストラテジのうち前記データパターンの少なくとも一部を記録するためのストラテジを調整することで、前記第2記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第2最適ストラテジを算出する第3ストラテジ算出手段と、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異の夫々に基づいて、前記第1記録速度及び前記第2記録速度とは異なる第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適ストラテジを算出する第4ストラテジ算出手段とを備える。
本発明の記録装置に係る実施形態によれば、例えばレーザ光等が記録媒体に照射され、その結果、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録媒体に記録される。
ここで、本実施形態に係る記録装置においては、記録手段によるデータパターンの記録動作(特に、記録媒体が備えるユーザデータエリアないしはデータ記録エリアへのデータパターンの記録動作)と並行して、以下に説明する記録補償動作が行われる。
まず、第1ストラテジ算出手段の動作により、記録補償動作用の記録動作(つまり、記録補償動作用の試し書き動作)が第1記録速度で行われ、第1記録速度でデータパターンを記録するために最適なストラテジである第1最適ストラテジが算出される。このとき、第1ストラテジ算出手段は、任意の初期ストラテジを第1基準ストラテジとしてデータパターンを記録すると共に該記録されたデータパターンのジッタを測定し、測定されたジッタが所望の条件を満たすように初期ストラテジを調整していく。その結果、第1最適ストラテジが算出される。
続いて、第2ストラテジ算出手段の動作により、第1基準ストラテジに対してクロック周期変換処理が施され、第2基準ストラテジが算出される。ここでは、第1記録速度と第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理が施されることにより、第2記録速度でデータパターンを記録するための第2基準ストラテジが算出される。尚、本実施形態における「クロック周期変換処理」とは、異なる2種類の記録速度(一の記録速度と他の記録速度)におけるクロックの差異(例えば、クロックのパルス幅の変化率等)に応じて、一の記録速度におけるストラテジのパルス幅を変換し、他の記録速度におけるストラテジを得る処理に相当する。例えば、第1記録速度におけるクロックのパルス幅と第2記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率がA%(但し、Aは実数)である場合には、第1記録速度におけるストラテジのパルス幅を略A%変化させる処理が、クロック周期変換処理の一例としてあげられる。
その後、第2パワー算出手段の動作により、レーザ光のパワーを決定するための記録動作(つまり、パワー決定用の試し書き動作)が第2記録速度で行われ、第2記録速度でデータパターンを記録するための最適なレーザ光のパワーである第2最適パワーが算出される。ここでは、例えば、アシンメトリやβ値が最適となるような(例えば、第2記録速度で記録されたデータパターンのアシンメトリやβ値が、第1記録速度で記録されたデータパターンのアシンメトリやβ値と略同一となるような)パワーが、第2最適パワーとして算出される。
また、第3ストラテジ算出手段の動作により、第2最適パワー且つ第2基準ストラテジのレーザ光の照射による記録補償動作用の記録動作(つまり、記録補償動作用の試し書き動作)が第2記録速度で行われ、第2記録速度でデータパターンを記録するために最適なストラテジである第2最適ストラテジが算出される。このとき、第3ストラテジ算出手段は、記録されたデータパターンのジッタを測定し、測定されたジッタが所望の条件を満たすように第2基準ストラテジを調整していく。この結果、第2最適ストラテジが算出される。
その後、第4ストラテジ算出手段の動作により、第1基準ストラテジと第1最適ストラテジとの差異及び第2基準ストラテジと第2最適ストラテジとの差異に基づいて、第3記録速度でデータパターンを記録するために最適なストラテジである第3最適ストラテジが算出される。言い換えれば、第1基準ストラテジと第1最適ストラテジとの差異及び第2基準ストラテジと第2最適ストラテジとの差異に基づく推定処理ないしは補間処理等により、第3最適ストラテジが算出される。
これにより、第1記録速度及び第2記録速度で記録補償動作用の試し書き動作を行うことにより算出される第1最適ストラテジ及び第2最適ストラテジから、より高速な第3記録速度で記録補償動作用の試し書き動作を行うことなく、第3最適ストラテジを算出することができる。このため、例えば記録媒体の内周側エリア(例えば、後述する内周側PCA(Power Calibration Area))で実現不可能な記録速度でデータパターンを記録するための最適ストラテジを算出する際に特に有効である。
更に、本実施形態では特に、第2最適ストラテジを算出するために、アシンメトリが最適となる第2最適パワーのレーザ光を用いて、記録補償動作用の記録動作が行われる。このため、第2基準ストラテジのうち短マークを記録するためのストラテジについては、ジッタを所望の条件におさめるための調整量が小さくなる又は0となる場合が発生し得る(例えば、第1記録速度の記録と同じアシンメトリやβ値になるように第2最適パワーを選べば、短マークストラテジの調整量は0となる)。このため、第2基準ストラテジのうちデータパターンの少なくとも一部(例えば、長マーク)を記録するためのストラテジを調整すれば十分であり、第2基準ストラテジのうちデータパターンの他の一部(例えば、短マーク)を記録するためのストラテジを調整する必要がなくなる場合が発生し得る。このため、記録補償動作の負荷を相対的に低減させることができる。つまり、背景技術において提示された技術のように、エネルギーを一定にするための複雑且つ高負荷な波形変換を行う必要がなくなるため、記録装置の負荷を相対的に低減させることができる。
本発明の記録装置に係る実施形態一の態様では、前記第4ストラテジ算出手段は、前記第1記録速度及び前記第3記録速度との差異に応じた前記クロック変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで得られる第3基準ストラテジを、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異を線形補完することで得られる差異だけ調整することで、前記第3最適ストラテジを算出する。
この態様によれば、第1記録速度及び第2記録速度の夫々における基準ストラテジと最適ストラテジとの差異を線形補完すれば、第3記録速度における基準ストラテジと最適ストラテジとの差異を算出することができることを利用して、比較的容易に第3最適ストラテジを算出することができる。
上述の如く第3基準ストラテジを調整する記録装置の態様では、前記データパターンは、第1長さのマーク、並びに前記第1長さのマークの前後に配置される第2長さのスペース及び第3長さのスペースを含んでおり、前記第4ストラテジ算出手段は、(i)前記第1最適ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジの、前記第1基準ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジに対するシフト量及び(ii)前記第2最適ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジの、前記第2基準ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジに対するシフト量の夫々に基づいて、前記第3基準ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジを調整するように構成してもよい。
このように構成すれば、あらゆるデータパターンを記録するためのストラテジを含む第3最適ストラテジを好適に算出することができる。
上述の如く第3基準ストラテジを調整する記録装置の態様では、第1記録速度はM倍速であり、第2記録速度はN倍速であり、前記第3記録速度はC倍速であり、前記第1最適ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジの、前記第1基準ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジに対するシフト量がm1(k)及びm2(k)であり、前記第2最適ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジの、前記第2基準ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジに対するシフト量がn1(k)及びn2(k)であるとした場合、前記第4ストラテジ算出手段は、前記第3基準ストラテジのうち前後に前記第2長さのスペース及び前記第3長さのスペースが配置された前記第1長さのマークを記録するためのストラテジの両端のエッジを、夫々、(n1(k)−m1(k))×C/(N−M)+(N×m1(k)−M×n1(k))/(N−M)及び(n2(k)−m2(k))×C/(N−M)+(N×m2(k)−M×n2(k))/(N−M)だけシフトさせるように調整するように構成してもよい。
このように構成すれば、あらゆるデータパターンを記録するためのストラテジを含む第3最適ストラテジを好適に算出することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第1基準ストラテジは、前記第1最適ストラテジである。
この態様によれば、第1基準ストラテジを別途用意する必要がなくなるため、第1基準ストラテジと第1最適ストラテジの差分を計算する必要もなくなるため、記録装置の処理を相対的に簡略化することができる。つまりこの態様では、2つの異なる記録速度で行われた別個独立に行われる記録補償動作の結果を用いるのではなく、第1記録速度で行われた記録補償動作の結果を変換して得られるストラテジを用いて、第2記録速度で記録補償動作が行われる。従って、記録補償動作をより好適に行うことができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第1記録速度で記録された前記データパターンの読み取り結果に基づいて、前記第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第1最適パワーを算出する第1パワー算出手段と、前記第1最適パワー及び前記第2最適パワーに基づいて、前記第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適パワーを算出する第3パワー算出手段とを更に備える。
この態様によれば、第1記録速度及び第2記録速度の夫々における最適パワーを線形補完することにより、比較的容易に第3記録速度における最適パワーを算出することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記クロック周期変換処理は、前記第2記録速度におけるクロックに対する前記第2基準ストラテジの形状を、前記第1記録速度におけるクロックに対する前記第1基準ストラテジの形状に対して相似とならしめる。
この態様によれば、第1記録速度におけるクロックのパルス幅と第2記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率がB%(但し、Bは実数)である場合には、第1記録速度におけるストラテジのパルス幅をB%変化させる処理が、クロック周期変換処理として行われる。
尚、第1記録速度及び第2記録速度でのストラテジを対象とする場合に限らず、第3記録速度でのストラテジを対象としてもクロック周期変換処理が行われることは言うまでもない。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記クロック周期変換処理は、前記第2記録速度におけるクロックに対する前記第2基準ストラテジの形状を、前記第1記録速度におけるクロックに対する前記第1基準ストラテジの形状に対して相似とならしめると共に所定の比率で前記第2基準ストラテジに含まれる所定のパルスのパルス幅を広げる又は狭める。
この態様によれば、第1記録速度におけるクロックのパルス幅と第2記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率がC%(但し、Cは実数)である場合には、第1記録速度におけるストラテジのパルス幅を(C+α)%(但し、αは実数)変化させる処理が、クロック周期変換処理として行われる。
特に、第1記録速度におけるストラテジのパルス幅を、第1記録速度におけるクロックのパルス幅と第2記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率以上に変化させることで、相対的に高速な第3記録速度でデータパターンを記録する際の第3最適パワーを相対的に低くすることができる。このため、レーザ光を照射するレーザダイオード等の長寿命化を図ることができたり、記録媒体が書換型であれば記録面の劣化を抑制することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記クロック周期変換処理は、前記データパターンに含まれるマークの長さ毎に異なる割合で前記第1基準ストラテジを変換する。
この態様によれば、一のマークを記録するためのストラテジを変化させる度合いと、他のマークを記録するためのストラテジを変化させる度合いとが適宜変えられる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第2パワー算出手段は、OPC(Optimum Power Control)を行うことにより、前記第1記録速度且つ前記第1最適ストラテジで記録された前記データパターンを再生した際の再生信号のアシンメトリまたはベータ値が、前記第2記録速度且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンを再生した際の再生信号のアシンメトリまたはベータ値と同じになるように、前記第2記録速度において、第2基準ストラテジで前記データパターンを記録するパワーを調整するOPC(Optimum Power Control)を行うことにより算出されるパワーを、前記第2最適パワーとして算出する。
この態様によれば、第2基準ストラテジのうち短マークを記録するためのストラテジについては、ジッタを所望の条件におさめるための調整量が小さくなる又は0となる。
上述の如くOPCを行うことにより算出されるパワーを第2最適パワーとして算出する記録装置の態様では、前記第3ストラテジ算出手段は、前記第2基準ストラテジのうち少なくとも長マークの前記データパターンを記録するためのストラテジを調整することで、前記第2最適ストラテジを算出するように構成してもよい。
このように構成すれば、上述したように、第2基準ストラテジのうちデータパターンの少なくとも一部(例えば、長マーク)を記録するためのストラテジを調整すれば十分であるため、記録補償動作の負荷を相対的に低減させることができる。
上述の如くOPCを行うことにより算出されるパワーを第2最適パワーとして算出する記録装置の記録装置の態様では、前記第2パワー算出手段は、前記OPC(Optimum Power Control)を行うことにより算出されるパワーを減少させたパワーを、前記第2最適パワーとして算出するように構成してもよい。
このように構成すれば、線形補完により算出される第3最適パワーをも相対的に低くすることができる。このため、レーザ光を照射するレーザダイオード等の長寿命化を図ることができたり、記録媒体が書換型であれば記録面の劣化を抑制することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第1ストラテジ算出手段は、前記ジッタのうちの記録される前記データパターンの状態に起因したシフトジッタ成分が前記所望の条件を満たすような前記第1最適ストラテジを算出し、前記第3ストラテジ算出手段は、前記ジッタのうちの記録される前記データパターンの状態に起因したシフトジッタ成分が前記所望の条件を満たすような前記第2最適ストラテジを算出する。
この態様によれば、容易に予測することが困難又は不可能なランダムジッタ成分ではなく、ストラテジにより左右されるデータパターンの状態に起因したシフトジッタ成分を測定している。従って、比較的容易に、シフトジッタ成分が所望の条件となるように記録補償動作を好適に行う(つまり、シフトジッタ成分が所望の条件となるような最適ストラテジを好適に算出する)ことができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすような最適ストラテジを算出する記録装置の態様では、前記ジッタが前記所望の条件を満たす状態は、前記シフトジッタ成分が第1所定値以下となる状態であるように構成してもよい。
このように構成すれば、シフトジッタ成分が小さくなるように記録補償動作を好適に行う(つまり、シフトジッタ成分が所望の条件となるような最適ストラテジを好適に算出する)ことができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすような最適ストラテジを算出する記録装置の態様では、前記ジッタが前記所望の条件を満たす状態は、前記ジッタのうちのノイズに起因したランダムジッタ成分が、前記ジッタに占める比率が第2所定値以上となる状態であるように構成してもよい。
ジッタは、ランダムジッタ成分の2乗とシフトジッタ成分の2乗との和の平方根にて示される。このため、ランダムジッタ成分がシフトジッタ成分と比較して大きければ(つまり、ランダムジッタ成分がジッタに占める比率が相対的に大きければ)、シフトジッタ成分を低減しても、ジッタは低減しにくくなる。従って、このように構成すれば、ジッタの低減効果が好適に得られるような記録補償動作を好適に行う(つまり、ジッタの低減効果が好適に得られるような最適ストラテジを好適に算出する)ことができる。言い換えれば、ジッタの低減効果が好適に得られない非効率な記録補償動作が行われる状態を好適に避けることができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすような最適ストラテジを算出する記録装置の態様では、前記ジッタが前記所望の条件を満たす状態は、ランレングスが異なる複数種類の前記データパターン毎の前記シフトジッタ成分が略同一となる状態であるように構成してもよい。
このように構成すれば、複数種類のデータパターン(例えば、記録媒体がDVDであれば、ランレングスが3Tから11T及び14Tの10種類のデータパターンであり、記録媒体がBlu−ray Discであれば、ランレングスが2Tから9Tの7種類のデータパターン)毎に、シフトジッタ成分を揃えることができる。つまり、データパターン毎のジッタ分布を狭くすることに代えて、データパターン毎のジッタ分布の平均値(つまり、シフトジッタ成分)を揃えることができる。これにより、好適に且つ比較的容易にジッタを低減させる記録補償動作を行う(つまり、最適ストラテジを算出する)ことができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記データパターンを読み取ることで読取信号を取得する読取手段と、前記読取信号のジッタを測定する測定手段とを更に備え、前記第1ストラテジ算出手段及び前記第3ストラテジ算出手段の夫々は、前記測定手段により測定される前記ジッタが前記所望の条件を満たすような前記第1最適ストラテジ又は前記第2最適ストラテジを算出する。
この態様によれば、測定手段により測定されるジッタを参照しながら、第1最適ストラテジ又は第2最適ストラテジを好適に算出することができる。
上述の如く読取手段を備える記録装置の態様では、前記読取信号の振幅レベルを所定の振幅制限値にて制限して振幅制限信号を取得すると共に、該振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行うことで等化補正信号を取得する振幅制限フィルタリング手段と、前記等化補正信号の前記データパターンを検出する検出手段とを更に備え、前記測定手段は、前記読取手段のジッタとして、前記等化補正信号のジッタを測定し、前記第1ストラテジ算出手段及び前記第3ストラテジ算出手段の夫々は、前記検出手段により検出される前記データパターンを参照しながら、前記測定手段により測定される前記ジッタが所望の条件を満たすような前記第1最適ストラテジ又は前記第2最適ストラテジを算出する。
この態様によれば、振幅制限フィルタリング手段の動作により、読取信号の振幅レベルが制限される。具体的には、読取信号のうち振幅レベルが振幅制限値の上限よりも大きい又は下限より小さい信号成分は、振幅レベルが振幅制限値の上限又は下限に制限される。他方、読取信号のうち振幅レベルが振幅制限値の上限以下且つ下限以上である信号成分は、振幅レベルが制限されることはない。このように振幅レベルの制限が施された読取信号を、振幅制限信号と称する。更に、振幅制限フィルタリング手段は、振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行う。その結果、読取信号中に含まれる最短データパターン(例えば、情報記録媒体がDVDであれば、ランレングスが3Tのデータパターンであり、情報記録媒体がBlu−ray Discであれば、ランレングスが2Tのデータパターン)の振幅レベルが強調された状態にある等化補正信号が取得される。つまり、振幅制限フィルタリング手段は、いわゆるリミットイコライザと同様の動作を読取信号に対して行う。
その後、測定手段の動作により、読取信号のジッタが測定されることに代えて、等化補正信号のジッタが測定される。つまり、この態様においては、記録媒体からデータパターンを読み取ることで得られる読取信号を直接的に用いてジッタを測定することに代えて、読取信号に対して振幅制限処理及び高域強調フィルタリング処理が施されることで得られる等化補正信号を用いてジッタが測定される。
更に、検出手段の動作により、等化補正信号のデータパターンが検出される。より具体的には、等化補正信号のデータパターンが、いずれのランレングスのデータパターンであるかが検出される。検出されたデータパターンは、記録補償動作の際に(つまり、最適ストラテジを算出する際に)参照される。
このように、振幅制限フィルタリング手段(つまり、リミットイコライザ)の動作により最短データパターンの振幅レベルが強調された等化補正信号からデータパターンが検出される。このため、仮に読取信号のアシンメトリがどのような状態であったとしても、読取信号中に含まれる最短マーク及び最短スペースに係る信号成分がゼロレベルと交差しなくなる不都合を好適に防ぐことができる。その結果、最短マーク及び最短スペースに係る信号成分の検出を好適に行うことができる。このため、最短マーク及び最短スペースを記録するための最適ストラテジを好適に算出することができる。これにより、最短データパターンを含む読取信号を参照しながら、最適ストラテジを好適に算出することができる。つまり、最適ストラテジが算出される前に記録されたデータパターンを読み取ることで得られる読取信号におけるアシンメトリの状態に関わらず、最適ストラテジを好適に算出することができる。
上述の如く読取信号を備える記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記読取信号に所定のオフセット信号を付加することでオフセット付加信号を取得する付加手段を更に備え、前記測定手段は、前記オフセット付加信号の前記ジッタを測定する。
この態様によれば、オフセット信号の付加に応じて、後に図面を参照しながら詳述するように、最適ストラテジが算出される前に記録されたデータパターンを読み取ることで得られる読取信号におけるアシンメトリの状態にかかわらず、最適ストラテジで記録されたデータパターンを読み取ることで得られる読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第3最適ストラテジを直接的に又は間接的に示す記録条件情報を前記記録媒体に記録する記録手段を更に備える。この場合、記録条件情報は、記録装置を識別するための識別情報と対応付けて記録することが好ましい。
この態様によれば、記録装置の識別情報と、記録条件情報とが記録媒体に記録される。このため、記録装置によるデータパターンの記録が行われる際に、当該記録装置の識別情報と対応する記録条件情報を記録媒体から読み取ることで、上述した第3最適ストラテジの算出動作をわざわざ行わなくとも、記録媒体に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
また、記録媒体がブランクである等の理由により、記録媒体に記録条件情報が記録されていなかったとしても、本実施形態においては、上述した第3最適ストラテジの算出動作を好適に行うことができる。そして、この結果得られる第3最適ストラテジを直接的に又は間接的に示す記録条件情報を、記録装置の識別情報と対応させて、記録媒体に記録しておけば、次にデータパターンを記録する際には、上述した第3最適ストラテジの算出動作をわざわざ行わなくとも、記録媒体に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
つまり、この態様によれば、第3最適ストラテジの算出動作を行うことなく又は第3最適ストラテジの算出動作を少なくとも1回行えば、対応する記録装置において、わざわざ第3最適ストラテジを算出しなくとも、記録媒体に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
尚、第3最適ストラテジを直接的に示す記録条件情報としては、第3最適ストラテジそのものが一例としてあげられる。また、第3最適ストラテジを直接的に示す記録条件情報としては、例えば、第3基準ストラテジの調整量や、第1基準ストラテジと第1最適ストラテジとの差異及び第2基準ストラテジと第2最適ストラテジとの差異が一例としてあげられる。
(記録方法の実施形態)
本発明の記録方法に係る実施形態は、任意の記録速度で記録媒体にデータパターンを記録する記録方法であって、第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる所定の第1基準ストラテジにより記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第1記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第1最適ストラテジを算出する第1ストラテジ算出工程と、前記第1記録速度と前記第1記録速度とは異なる第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2基準ストラテジを算出する第2ストラテジ算出工程と、前記第2記録速度で記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2最適パワーを算出する第2パワー算出工程と、前記第2記録速度で、前記第2最適パワーで且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2基準ストラテジのうち前記データパターンの少なくとも一部を記録するためのストラテジを調整することで、前記第2記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第2最適ストラテジを算出する第3ストラテジ算出工程と、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異の夫々に基づいて、前記第1記録速度及び前記第2記録速度とは異なる第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適ストラテジを算出する第4ストラテジ算出工程とを備える。
本発明の記録方法に係る実施形態によれば、上述した本発明の記録装置に係る実施形態が享受することができる各種効果と同様の効果を享受することができる。
尚、上述した本発明の記録装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明の記録方法に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
(コンピュータプログラムの実施形態)
本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態は、任意の記録速度で記録媒体にデータパターンを記録する記録装置であって、第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる所定の第1基準ストラテジにより記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第1記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第1最適ストラテジを算出する第1ストラテジ算出手段と、前記第1記録速度と前記第1記録速度とは異なる第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2基準ストラテジを算出する第2ストラテジ算出手段と、前記第2記録速度で記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2最適パワーを算出する第2パワー算出手段と、前記第2記録速度で、前記第2最適パワーで且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2基準ストラテジのうち前記データパターンの少なくとも一部を記録するためのストラテジを調整することで、前記第2記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第2最適ストラテジを算出する第3ストラテジ算出手段と、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異の夫々に基づいて、前記第1記録速度及び前記第2記録速度とは異なる第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適ストラテジを算出する第4ストラテジ算出手段とを備える記録装置(即ち、上述した本発明の記録装置に係る実施形態(但し、その各種態様を含む))に備えられたコンピュータを制御する記録制御用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータを、前記第1ストラテジ算出手段、前記第2ストラテジ算出手段、前記第2パワー算出手段、前記第3ストラテジ算出手段及び前記第4ストラテジ算出手段の少なくとも一部として機能させる。
本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態によれば、当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、通信手段を介してコンピュータにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の記録装置に係る実施形態を比較的簡単に実現できる。
尚、上述した本発明の記録装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
本発明のコンピュータプログラム製品に係る実施形態は、任意の記録速度で記録媒体に
データパターンを記録する記録装置であって、第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる所定の第1基準ストラテジにより記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第1記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第1最適ストラテジを算出する第1ストラテジ算出手段と、前記第1記録速度と前記第1記録速度とは異なる第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2基準ストラテジを算出する第2ストラテジ算出手段と、前記第2記録速度で記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2最適パワーを算出する第2パワー算出手段と、前記第2記録速度で、前記第2最適パワーで且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2基準ストラテジのうち前記データパターンの少なくとも一部を記録するためのストラテジを調整することで、前記第2記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第2最適ストラテジを算出する第3ストラテジ算出手段と、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異の夫々に基づいて、前記第1記録速度及び前記第2記録速度とは異なる第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適ストラテジを算出する第4ストラテジ算出手段とを備える記録装置(即ち、上述した本発明の記録装置に係る実施形態(但し、その各種態様を含む))に備えられたコンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、前記第1ストラテジ算出手段、前記第2ストラテジ算出手段、前記第2パワー算出手段、前記第3ストラテジ算出手段及び前記第4ストラテジ算出手段のうち少なくとも一部として機能させる。
本発明のコンピュータプログラム製品に係る実施形態によれば、当該コンピュータプログラム製品を格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラム製品をコンピュータに読み込めば、或いは、例えば伝送波である当該コンピュータプログラム製品を、通信手段を介してコンピュータにダウンロードすれば、上述した本発明の記録装置に係る実施形態を比較的容易に実施可能となる。更に具体的には、当該コンピュータプログラム製品は、上述した本発明の記録装置に係る実施形態として機能させるコンピュータ読取可能なコード(或いはコンピュータ読取可能な命令)から構成されてよい。
尚、上述した本発明の記録装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラム製品に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
(記録媒体の実施形態)
本発明の記録媒体に係る第1実施形態は、任意の記録速度で記録媒体にデータパターンを記録する記録装置であって、第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる所定の第1基準ストラテジにより記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第1記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第1最適ストラテジを算出する第1ストラテジ算出手段と、前記第1記録速度と前記第1記録速度とは異なる第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2基準ストラテジを算出する第2ストラテジ算出手段と、前記第2記録速度で記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2最適パワーを算出する第2パワー算出手段と、前記第2記録速度で、前記第2最適パワーで且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2基準ストラテジのうち前記データパターンの少なくとも一部を記録するためのストラテジを調整することで、前記第2記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第2最適ストラテジを算出する第3ストラテジ算出手段と、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異の夫々に基づいて、前記第1記録速度及び前記第2記録速度とは異なる第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適ストラテジを算出する第4ストラテジ算出手段とを備える記録装置(即ち、上述した本発明の記録装置に係る実施形態(但し、その各種態様を含む)により算出された前記第3最適パワーを直接的に又は間接的に示す記録条件情報を記録するための記録条件記録エリアを備える。この場合、記録条件情報は、当該記録条件情報に対応する記録装置を識別するための識別情報と対応付けて記録することが好ましい。
本発明の記録媒体に係る第2実施形態は、任意の記録速度で記録媒体にデータパターンを記録する記録装置であって、第1記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる所定の第1基準ストラテジにより記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第1記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第1最適ストラテジを算出する第1ストラテジ算出手段と、前記第1記録速度と前記第1記録速度とは異なる第2記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理を前記第1基準ストラテジに施すことで、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2基準ストラテジを算出する第2ストラテジ算出手段と、前記第2記録速度で記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第2最適パワーを算出する第2パワー算出手段と、前記第2記録速度で、前記第2最適パワーで且つ前記第2基準ストラテジで記録された前記データパターンの読取結果に基づいて、前記第2基準ストラテジのうち前記データパターンの少なくとも一部を記録するためのストラテジを調整することで、前記第2記録速度で記録される前記データパターンのジッタが所望の条件を満たすような第2最適ストラテジを算出する第3ストラテジ算出手段と、前記第1基準ストラテジと前記第1最適ストラテジとの差異及び前記第2基準ストラテジと前記第2最適ストラテジとの差異の夫々に基づいて、前記第1記録速度及び前記第2記録速度とは異なる第3記録速度で前記データパターンを記録するために用いられる第3最適ストラテジを算出する第4ストラテジ算出手段とを備える記録装置により算出された前記第3最適ストラテジにより前記データパターンが記録される。
本発明の記録媒体に係る各実施形態によれば、記録装置の識別情報と、記録条件情報とが記録媒体に記録される。このため、記録装置によるデータパターンの記録が行われる際に、当該記録装置の識別情報と対応する記録条件情報を記録媒体から読み取ることで、上述した第3最適ストラテジの算出動作をわざわざ行わなくとも、記録媒体に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
また、記録媒体がブランクである等の理由により、記録媒体に記録条件情報が記録されていなかったとしても、本実施形態においては、上述した第3最適ストラテジの算出動作を好適に行うことができる。そして、この結果得られる第3最適ストラテジを直接的に又は間接的に示す記録条件情報を、記録装置の識別情報と対応させて、記録媒体に記録しておけば、次にデータパターンを記録する際には、上述した第3最適ストラテジの算出動作をわざわざ行わなくとも、記録媒体に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
つまり、この態様によれば、第3最適ストラテジの算出動作を行うことなく又は少なくとも1回第3最適ストラテジの算出動作を行えば、対応する記録装置において、わざわざ第3最適ストラテジを算出しなくとも、記録媒体に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
尚、記録条件は、記録媒体に予め記録されていてもよいし、或いは記録動作に伴って適宜記録されてもよい。
尚、上述した本発明の記録装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明の記録媒体に係る各実施形態も各種態様を採ることが可能である。
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされよう。
以上説明したように、本発明の記録装置に係る実施形態によれば、第1ストラテジ算出手段と、第2ストラテジ算出手段と、第2パワー算出手段と、第3ストラテジ算出手段と、第4ストラテジ算出手段とを備える。本発明の記録方法に係る実施形態によれば、第1ストラテジ算出工程と、第2ストラテジ算出工程と、第2パワー算出工程と、第3ストラテジ算出工程と、第4ストラテジ算出工程とを備える。本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態によれば、コンピュータを本発明の記録装置に係る実施形態として機能させる。本発明の記録媒体に係る第1実施形態によれば、上述の記録装置により算出された第3最適ストラテジを直接的に又は間接的に示す記録条件情報を記録するための記録条件記録エリアを備える。本発明の記録媒体に係る第2実施形態によれば、上述の本発明の記録装置により算出された第3最適ストラテジによりデータパターンが記録される。従って、より好適に任意の記録速度での最適ストラテジを求めることができる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(1)第1実施例
初めに、図1から図21を参照して、本発明の記録装置に係る第1実施例について説明する。
(1−1)基本構成
初めに、図1を参照して、第1実施例に係る記録装置の基本構成について説明を進める。ここに、図1は、第1実施例に係る記録装置1の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施例に係る記録装置1は、スピンドルモータ10と、ピックアップ(PU:Pick Up)11と、HPF(High Pass Filter)12と、A/D変換器13と、プリイコライザ(Pre Equalizer)14と、2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ調整回路21と、CPU22とを備えている。
ピックアップ11は、本発明における「記録手段」及び「読取手段」の一具体例を構成しており、スピンドルモータ10によって回転する光ディスク100の記録面にレーザ光LBを照射した際の反射光を光電変換して、光ディスク100に記録されたデータパターに応じた読取信号RRFを生成する。また、ピックアップ11は、記録ストラテジ設定回路21において設定される記録ストラテジに応じたレーザ光LBを光ディスク100の記録面に照射することで、光ディスク100に対してデータパターンを記録する。
HPF12は、ピックアップ11より出力される読取信号RRFの低域成分を除去し、その結果得られる読取信号RHCをA/D変換器13へ出力する。
A/D変換器13は、不図示のPLL(Phased Lock Loop)等から出力されるサンプリングクロックに応じて読取信号RRFをサンプリングし、その結果得られる読取サンプル値系列RSをプリイコライザ14へ出力する。
プリイコライザ14は、ピックアップ11及び光ディスク100から構成される情報読取系の伝送特性に基づく符号間干渉を除去し、その結果得られる読取サンプル値系列RSCを2値化回路16へ出力する。
2値化回路16は、読取サンプル値系列RSCに対して2値化処理を行い、その結果得られる2値化信号を復号回路17及びパターン判別回路19の夫々へ出力する。
復号回路17は、2値化信号に対して復号処理等を行い、その結果得られる再生信号を、ディスプレイやスピーカ等の外部再生機器へ出力する。その結果、光ディスク100に記録されたデータパターンに応じたデータ(例えば、映像データや音声データ等)が再生される。
遅延回路18は、2値化回路16及びパターン判別回路20の夫々における処理に要する時間に相当する遅延を読取サンプル値系列RSCに付加した後に、該読取サンプル値系列RSCを平均化回路19へ出力する。つまり、遅延回路18の動作により、プリイコライザ14から出力される読取サンプル値系列RSC中の各サンプル値が、該サンプル値のデータパターン判別結果が入力されるタイミングと同一のタイミングで平均化回路19へ入力される。
平均化回路19は、本発明における「測定手段」の一具体例を構成しており、読取サンプル値系列RSCのジッタを測定する。平均化回路19の詳細については、後に詳述する(図6参照)。
パターン判別回路20は、本発明における「検出手段」の一具体例を構成しており、2値化回路16から出力される2値化信号に基づいて、データパターンの判別を行う。つまり、パターン判別回路20に入力される2値化信号が、どのデータパターンの2値化信号であるかを判別する。判別結果は、平均化回路19へ出力される。
記録ストラテジ調整回路21は、CPU22と共に本発明における「第1ストラテジ算出手段」及び「第3ストラテジ算出手段」の一具体例を構成しており、平均化回路19において測定されたジッタに基づいて、データパターン毎の記録ストラテジを調整する。つまり、記録補償動作を行う。
CPU22は、本発明における「第1ストラテジ算出手段」、「第2ストラテジ算出手段」、「第1パワー算出手段」、「第2パワー算出手段」、「第3パワー算出手段」、「第3ストラテジ算出手段」及び「第4ストラテジ算出手段」の一具体例を構成しており、記録装置1を構成する上述の各種構成要素を制御することにより、記録装置1の全体の動作を制御する。
(1−2)光ディスク
続いて、図2を参照して、第1実施例に係る記録装置1の記録動作の対象となる光ディスク100の基本構成について説明する。ここに、図2は、光ディスク100の基本構造を示した概略平面図であり、該光ディスク100の半径方向における記録領域構造の図式的概念図である。
図2に示されるように、光ディスク100は、例えば、DVDと同じく直径12cm程度のディスク本体上の記録面に、センターホール101を中心として、本発明における「内周側エリア」の一具体例を構成する内周側PCA(Power Calibration Area)111、RMA(Recording Management Area)112、リードインエリア113、本発明における「ユーザデータエリア」の一具体例を構成するデータ記録エリア114、リードアウトエリア115及び外周側PCA116が設けられている。そして、例えばセンターホール101を中心にスパイラル状或いは同心円状に、例えばグルーブトラック及びランドトラックが交互に設けられている。また、このトラック上には、データパターンがECCブロックという単位で分割されて記録される。ECCブロックは、エラー訂正可能なデータ管理単位である。また、本実施例においては、光ディスク100は、一度のみデータパターンを記録することが可能な追記型記録媒体(つまり、DAO)であってもよいし、複数回データパターンを記録することが可能な書換型記録媒体であってもよい。
そして、グルーブトラックは、一定の振幅及び空間周波数で揺動されている。即ち、グルーブトラックは、ウォブリングされており、そのウォブルの周期は所定値に設定されている。ランドトラック上にはプリフォーマットアドレスを示すランドプリピット(LPP:Land Pre Pit)と呼ばれるピットが形成されている。この2つのアドレッシング(即ち、ウォブル及びランドプリピット)により記録中のディスク回転制御や記録クロックの生成を行うと共に、記録アドレス等のデータパターン記録に必要な情報を得ることができる。尚、グルーブトラックのウォブルを周波数変調や位相変調など所定の変調方式により変調することによりプリフォーマットアドレスを予め記録するようにしてもよい。
(1−3)第1動作例
続いて、図3を参照して、第1実施例に係る記録装置1の第1動作例(特に、記録補償動作)について説明する。ここに、図3は、第1実施例に係る記録装置1の第1動作例における動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、CPU22の制御の下に、Mx(但し、M≧1)の記録速度でOPC処理が行われる(ステップS101)。つまり、Mxの記録速度で内周側PCA111にOPCパターンが記録されることにより、Mxの記録速度でデータパターンを記録するためのレーザ光LBの最適パワー(以降、適宜“Mx最適パワー”と称する)が算出される。尚、Mx最適パワーは、本発明における「第1最適パワー」の一具体例に相当する。
尚、Mxの記録速度は、内周側PCA111にデータパターンを記録する際に実現可能な記録速度である。例えば、光ディスク100がDVDである場合には、Mxの記録速度として、4xの記録速度が一例としてあげられる。
続いて、CPU22の制御の下に、Mxの記録速度で記録補償動作が行われる(ステップS102)。
ここで、図4を参照して、記録補償動作についてより詳しく説明する。ここに、図4は、記録補償動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、CPU22の制御の下に、所定の初期ストラテジを用いて、Mxの記録速度で内周側PCA111に記録補償用のデータパターンが記録される(ステップS201)。
その後、CPU22の制御を受ける平均化回路19の動作により、ステップS201において記録されたデータパターンのジッタが測定される(ステップS202)。
ここで、図5及び図6を参照して、ジッタを測定する際の動作及びジッタを測定するための平均化回路19について説明する。ここに、図5は、平均化回路19によるジッタの測定動作を読取サンプル値系列RSC上で概念的に示す波形図であり、図6は、平均化回路19の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図5に示すように、第1実施例においては、平均値回路19は、ジッタを測定するために、まず、データパターン毎に、読取サンプル値系列RSCのゼロクロス点付近のサンプル値(図5中、黒丸にて示すサンプル値であって、以降適宜“ゼロクロスサンプル値”と称する)と、ゼロレベルとの間の差分(つまり、振幅方向のエッジシフト)を測定する。読取信号RRFに符号間干渉がなければ、クロックCLKのタイミングでゼロレベルと概ね一致するサンプル値がゼロクロスサンプル値となるが、読取信号RRFに符合間干渉があれば、クロックCLKのタイミングでゼロレベルに最も近づくサンプル値がゼロクロスサンプル値となる。
このような動作を行うために、平均値回路19は、図6に示すように、トリガ生成部1911と、トータルジッタ測定ブロック191と、n個の個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nと、全体シフトジッタ成分測定回路193とを備えている。個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nの数は、データパターンの種類の組み合わせ数と一致している。つまり、光ディスク100がDVDであれば、データランレングス長は10種類(3Tから11T、14T)ある。各マーク長に対し、前後のスペース長の組み合わせパターンで個別シフトジッタを分類することができる。例えば、前スペース長と各マーク長の組み合わせは、100通り、後スペース長と各マーク長の組み合わせも、100通りあり、全部でn=200通りになる。有効瞳径とデータランレングスを鑑み、6T以上のマーク/スペースとの組み合わせパターンでは同一の符号間干渉が発生する為、6T以上のデータを同一グループとして扱うと、n=32に減らすことができる。光ディスク100がBlu−ray Discであれば、データランレングス長は8種類(2Tから9T)あり、各マーク長に対する前後スペース長の組み合わせパターンn=8*8*2=128通りになる。DVD同様、有効瞳径とデータランレングスを鑑み、5T以上のデータを同一グループとして扱うと、n=32に減らすことができる。そして、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nは、夫々が対応するデータパターンの個別シフトジッタ成分を測定する。
遅延回路18より出力される読取サンプル値系列RSCは、ABS回路1912、並びにn個の加算器1923−1〜1923−nに入力される。また、パターン判別回路20より出力されるパターン判別結果は、トリガ生成部1911に入力される。
トリガ生成部1911においては、パターン判別回路20より出力されるパターン判別結果に応じて、データパターン毎に区別されると共にデータパターンが入力されるタイミングでハイレベル(又はローレベル)になるトリガ信号を生成する。トリガ信号は、OR回路1917、n個のサンプルホールド(S/H)回路1924−1〜1914−n、及びn個のカウンタ1925−1〜1925−nに入力される。
続いて、トータルジッタ測定ブロック191の動作について説明する。ABS回路1912より出力されるゼロクロスサンプル値の絶対値は、加算器1912において加算される。加算結果は、サンプルホールド回路1914において、いずれかのトリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となるタイミングで(つまり、いずれかのデータパターンがトータルジッタ測定ブロック191に入力されるタイミングで)サンプルホールドされる。その結果は、割算器1916へ出力されると共に、加算器1913へフィードバックされる。このため、割算器1916へは、全データパターンのゼロクロスサンプル値の絶対値の和が出力される。他方、カウンタ1915において、トリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となった回数(つまり、トータルジッタ測定ブロック191に入力されたデータパターンの数)がカウントされている。カウント結果は、割算器1916へ出力される。割算器1916においては、ゼロクロスサンプル値の絶対値の和が、入力されたデータパターンの数で除算される。その結果、ゼロクロスサンプル値の絶対値の平均値が出力される。本実施例においては、ゼロクロスサンプル値の絶対値の平均値が、トータルジッタ(つまり、ランダムジッタ成分とシフトジッタ成分とを考慮した全体としてのジッタ)となる。
続いて、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nの動作について説明する。ここでは、光ディスク100がDVDであり、ランレングスが3Tスペースの後の3Tマークのデータパターンのゼロクロスサンプル値に対応する個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1の動作について説明する。加算器1923−1とサンプルホールド回路1924−1の作用により、ランレングスが3Tスペースの後の3Tマークのデータパターンに対応するトリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となるタイミングで(つまり、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプルが個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1に入力されるタイミングで)、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプルがサンプルホールドされる。その結果は、割算器1926−1へ出力されると共に、加算器1923−1へフィードバックされる。つまり、加算器1923−1においては、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値のみが積算され、割算器1926−1へは、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値の和が出力される。他方、カウンタ1925−1において、トリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となった回数(つまり、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1に入力された3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプルの数)N(1)がカウントされている。カウント結果は、割算器1926−1へ出力される。割算器1926−1においては、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値の和が、入力されたN(1)で除算される。その結果、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値の平均値S(1)が出力される。この動作は、他の個別シフトジッタ成分測定ブロック192−2〜192−nにおいても、対応するデータパターン毎に行われる。本実施例においては、データパターン毎のゼロクロスサンプル値の平均値が、個別シフトジッタ成分S(1)〜S(n)となる。
データパターン毎の個別シフトジッタ成分S(1)〜S(n)は、全体シフトジッタ成分測定回路193へも出力される。また、トリガ信号がハイレベルとなった回数N(1)〜N(n)もまた、全体シフトジッタ成分測定回路193へ出力される。全体シフトジッタ成分測定回路193においては、数式1に示す演算処理を行うことで、データパターン毎の個別シフトジッタ成分の出現確率を考慮した、全体としてのシフトジッタ成分が出力される。
再び図4において、続いて、CPU22の制御の下に、ステップS202において測定されたジッタのうちの個別シフトジッタ成分が、第1閾値よりも小さいか否かが判定される(ステップS203)。この判定は、データパターン毎に行われる。つまり、この判定は、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nにおいて測定された個別シフトジッタ成分の夫々について行われる。具体的には、光ディスク100がDVDであり、6T以上を同一グループとして扱うと、3Tマークについては、前スペースのランレングスが3Tのデータパターンにおける判定と、前スペースのランレングスが4Tのデータパターンにおける判定と、前スペースのランレングスが5Tのデータパターンにおける判定と、前スペースのランレングスが6T以上のデータパターンにおける判定とが行われる。同様に、4T以上のマークについても、前スペースが3T、4T、5T、6T以上のデータパターンにおける判定が行われる。3T、4T、5T、6T以上のマークに対して、後スペースのランレングスが3T、4T、5T、6T以上のデータパターンにおける判定が行われる。6T以上を統一グループとして扱ったが、タンジェンシャルチルトによるコマ収差等の影響まで記録補償するのであれば、その影響のでるデータパターンまで扱っても良いし、3Tから11T、14Tを個別に扱っても良い。他方、光ディスク100がBlu−ray Discであり、5T以上を同一グループとして扱うと、2T、3T、4T、5T以上のマークについては、前スペースまたは後スペースが2T、3T、4T、5T以上のデータパターンにおける判定が行われる。5T以上を統一グループとして扱ったが、DVD同様、タンジェンシャルチルトによるコマ収差等の影響まで記録補償するのであれば、その影響のでるデータパターンまで扱っても良いし、2Tから9Tを個別に扱っても良い。
尚、第1閾値は、全てのデータパターンに共通の値を用いてもよいし、データパターン毎に(或いは、複数のデータパターンを含むグループ毎に)個別の値を用いてもよい。また、具体的な第1閾値の値は、例えば、ジッタに占めるランダムジッタ成分の比率が所定値(例えば、後述するように概ね80%)以上となる状態を実現できるように設定されることが好ましい。尚、トータルジッタに対するランダムジッタ成分の比率が概ね80%以上となるように記録補償動作を行ってもよいが、トータルジッタをより多く低減するためには、トータルジッタに対するランダムジッタ成分の比率が概ね90%以上となるように記録補償動作を行ってもよい。
ステップS203における判定の結果、少なくとも1つの又は全てのデータパターンのシフトジッタ成分が第1閾値よりも小さいと判定された場合には(ステップS203:Yes)、CPU22の制御の下に、記録補償動作を終了する。
他方、ステップS203における判定の結果、少なくとも1つの又は全てのデータパターンのシフトジッタ成分が第1閾値よりも小さくないと判定された場合には(ステップS203:No)、記録補償動作である初期ストラテジの調整動作が行われる(ステップS204)。
ここでは、第1閾値よりも小さくないと判定されたシフトジッタ成分に対応するデータパターンに対して記録補償動作を行ってもよいし、第1閾値よりも小さくないと判定されたシフトジッタ成分に対応するデータパターンに加えて、第1閾値よりも小さいと判定されたシフトジッタ成分に対応するデータパターンに対しても記録補償動作を行ってもよい。
ここで、図7を参照して、図4のステップS204における記録補償動作について説明する。ここに、図7は、記録補償動作前のデータパターン毎のジッタ分布及び全体としてのジッタ分布、並びに記録補償動作後のデータパターン毎のジッタ分布及び全体としてのジッタ分布の夫々の状態を概念的に示すグラフである。データパターン毎の分布の平均値が個別シフトジッタ成分となる。
図7に示すように、第1実施例においては、データパターン毎の個別シフトジッタ成分のばらつきをなくすような記録補償動作が行われる。より具体的には、図7の左側に示すように、データパターン毎のジッタの分布が、縦方向の矢印にて示すクロックの立ち上がり点を基準としてばらつきを有している場合には、図7の右側に示すように、データパターン毎のジッタの分布がクロックの立ち上がり点に向かってシフトするように、記録補償動作が行われる。言い換えれば、データパターン毎のジッタの分布が、クロックの立ち上がり点において又はその近傍付近において揃うように、記録補償動作が行われる。更に言い換えれば、データパターン毎のジッタの分布が同一となるように、記録補償動作が行われる。その結果、全体としてのジッタの分布(つまり、トータルジッタの分布)は、クロックの立ち上がり位置等を中心として正規分布となる。つまり、本実施例における記録補償動作においては、データパターン毎のジッタの分布の幅を狭くすることに代えて(言い換えれば、ランダムジッタ成分を低減することに代えて)、データパターン毎のジッタの分布の平均値をそろえている。これは、データパターン毎の個別シフトジッタ成分を低減させる動作に相当する。
データパターン毎の個別シフトジッタ成分を低減するために、記録ストラテジ調整回路21は、例えば図8から図10に示すようにストラテジを調整する。ここに、図8は、ストラテジの調整動作の第1態様を概念的に示すタイミングチャートであり、図9は、ストラテジの調整動作の第2態様を概念的に示すタイミングチャートであり、図10は、ストラテジの調整動作の第3態様を概念的に示すタイミングチャートである。
例えば、図8に示すように、データパターン(記録データ)を記録するためのレーザ光の波形を規定する記録パルス(つまり、ストラテジ)のパルス幅を調整するように構成してもよい。
また、図9に示すように、データパターン(記録データ)を記録するためのレーザ光の波形を規定する記録パルス(つまり、ストラテジ)の振幅(例えば、トップパルスの振幅Poや、ミドルパルスの振幅Pmや、ボトムパルスの振幅Pb)を調整するように構成してもよい。ここでは、図9の一番上の記録パルスにて示すように、ランレングスが3T及び4Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが5T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。或いは、図9の上から2番目の記録パルスにて示すように、ランレングスが3Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが4Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが5Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが6T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。或いは、図9の上から3番目の記録パルスにて示すように、ランレングスが3Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが4Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが5T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。或いは、図9の上から4番目の記録パルスにて示すように、ランレングスが3Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが4T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。
また、図10に示すように、記録パルスがキャッスル型以外であっても、図9に示す場合と同様に、データパターン(記録データ)を記録するためのレーザ光の波形を規定する記録パルス(つまり、ストラテジ)の振幅を調整するように構成してもよい。
もちろん、図8に示すような記録パルスのパルス幅の調整と、図9及び図10に示すような記録パルスの振幅の調整とを適宜組み合わせることで、ストラテジの調整を行ってもよいことは言うまでもない。
再び図3において、ステップS102による動作の結果、本発明における「第1基準ストラテジ」の一具体例を構成する初期ストラテジ(以降、適宜“Mx基準ストラテジ”と称する)が調整されることで、Mxの記録速度でデータパターンを記録するための最適ストラテジ(以降、適宜“Mx最適ストラテジ”と称する)が生成される。
尚、本実施例では、Mx最適ストラテジをMx基準ストラテジとして扱うことで、後述するようにMx最適ストラテジとMx基準ストラテジとの差分を計算しない構成を採用している。この意味において、Mx最適ストラテジは、本発明における「第1最適ストラテジ」及び「第1基準ストラテジ」の一具体例に相当する。
続いて、CPU22の制御の下に、ステップS102において生成されたMx最適ストラテジに対して、Mxの記録速度とNx(但し、N≧1であり且つN≠M)の記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理が施される。その結果、Nxの記録速度でデータパターンを記録するための基準ストラテジ(以降、適宜“Nx基準ストラテジ”と称する)が生成される(ステップS103)。同様に、CPU22の制御の下に、ステップS102において生成されたMx最適ストラテジに対して、Mxの記録速度とCx(但し、C≧1であり且つC>Nであり且つC>M)の記録速度との差異に応じたクロック周期変換処理が施される。その結果、Cxの記録速度でデータパターンを記録するための基準ストラテジ(以降、適宜“Cx基準ストラテジ”と称する)が生成される(ステップS103)。尚、Nx基準ストラテジは、本発明における「第2基準ストラテジ」の一具体例に相当し、Cx基準ストラテジは、本発明における「第3基準ストラテジ」の一具体例に相当する。
尚、Nxの記録速度は、内周側PCA111にデータパターンを記録する際に実現可能な記録速度である。例えば、光ディスク100がDVDである場合には、Nxの記録速度として、6xの記録速度が一例としてあげられる。他方で、Cxの記録速度は、内周側PCA111にデータパターンを記録する際に実現不可能な記録速度である。例えば、光ディスク100がDVDである場合には、Cxの記録速度として、8xの記録速度が一例としてあげられる。
ここで、図11を参照して、クロック周期変換処理について説明する。ここに、図11は、クロック周期変換処理の態様を、データパターン、クロック及びストラテジと対応付けて概念的に示すタイミングチャートである。尚、図11では、Mx最適ストラテジに対してクロック周期変換処理を行うことで、Nx基準ストラテジを生成する例について説明する。
図11に示すように、クロック周期変換処理は、Mxの記録速度におけるクロックとNxの記録速度におけるクロックとの差異(例えば、クロックのパルス幅の変化率等)に応じて、Mx最適ストラテジのパルス幅を変換し、Nx基準ストラテジを得る処理に相当する。具体的には、図11の上側に示すように、Mxの記録速度におけるクロックのパルス幅(つまり、1クロックに相当する1T)は、Nxの記録速度におけるクロックのパルス幅よりも大きい。この差異に応じて、Mx最適ストラテジのパルス幅を小さくすることで、Nx基準ストラテジが生成される。より具体的には、クロック周期変換処理により生成されるNx基準ストラテジのNxの記録速度でのクロックに対する形状は、Mx最適ストラテジのMxの記録速度におけるクロックに対する形状と、概ね相似の関係を有している。言い換えれば、Mxの記録速度におけるクロックのパルス幅とNxの記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率がB%(但し、Bは実数)である場合には、クロック周期変換処理によりMx最適ストラテジのパルス幅がB%変化させられ、その結果、Nx基準ストラテジが生成される。
尚、図11では、Mx最適ストラテジに対してクロック周期変換処理を行うことで、Nx基準ストラテジを生成する例について説明している。しかしながら、異なる2種類の記録速度(一の記録速度と他の記録速度)におけるクロックの差異(例えば、クロックのパルス幅の変化率等)に応じて、一の記録速度におけるストラテジのパルス幅を変換し、他の記録速度におけるストラテジを得る処理全般が、本実施例における「クロック周期変換処理」に含まれることは言うまでもない。
再び図3において、続いて、CPU22の制御の下に、Nxの記録速度でOPC処理が行われる(ステップS104)。つまり、Nxの記録速度で内周側PCA111にOPCパターンが記録されることにより、Nxの記録速度でデータパターンを記録するためのレーザ光LBの最適パワー(以降、適宜“Nx最適パワー”と称する)が算出される。尚、Nx最適パワーは、本発明における「第2最適パワー」の一具体例に相当する。
ここでは特に、Mxの記録速度且つMx最適ストラテジで記録されたデータパターンのアシンメトリまたはβ値が、Nxの記録速度且つNx基準ストラテジで記録されたデータパターンのアシンメトリまたはβ値と同じになるようNx最適パワーが算出される。
続いて、CPU22の制御の下に、Nxの記録速度で記録補償動作が行われる(ステップS105)。この記録補償動作は、基本的には、ステップS102における記録補償動作と同様である。但し、ここでは、Nx最適パワー且つNx基準ストラテジのレーザ光LBがNxの記録速度で内周側PCA111に照射されることで、記録補償用のデータパターンが記録される。その結果、Nx基準ストラテジが調整されることで、Nxの記録速度でデータパターンを記録するための最適ストラテジ(以降、適宜“Nx最適ストラテジ”と称する)が生成される。尚、Nx最適ストラテジは、本発明における「第2最適ストラテジ」の一具体例に相当する。
その後、CPU22の制御の下に、ステップS103において生成されたNx基準ストラテジと、ステップS105において生成されたNx最適ストラテジとの差分が算出される(ステップS106)。ここで、図12及び図13を参照して、Nx基準ストラテジとNx最適ストラテジとの差分の算出動作についてより詳細に説明する。ここに、図12は、データパターンの種類毎に算出されるNx基準ストラテジとNx最適ストラテジとの差分を示す説明図であり、図13は、データパターンの種類毎に算出されるNx基準ストラテジとNx最適ストラテジとの差分及びMx基準ストラテジとMx最適ストラテジとの差分を示す説明図である。
図12に示すように、データパターンは、マークと該マークの前後に位置する2つのスペース(つまり、前スペース及び後スペース)の組み合わせにより示すことができる。このとき、マークの前エッジのずれ量及び後エッジのずれ量の夫々が、Nx基準ストラテジとNx最適ストラテジとの差分として算出される。つまり、(i)Nx基準ストラテジで記録されたマークの前エッジの、Nx最適ストラテジで記録されたマークの前エッジに対するずれ量、及び(ii)Nx基準ストラテジで記録されたマークの後エッジの、Nx最適ストラテジで記録されたマークの後エッジに対するずれ量の夫々が、Nx基準ストラテジとNx最適ストラテジとの差分として算出される。または、図12のデータパターン分類方法で、図11のNx基準ストラテジを記録補償によりどの程度動かしたかを差分として算出しても良い。
この算出動作は、マークと該マークの前後に位置する2つのスペースのランレングス長に応じて、ランレングスの組み合わせの数だけ行われる。
具体的には、ランレングスが3Tのマークの前エッジのずれ量は、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。つまり、Nx最適ストラテジで記録された3Tのマークの前エッジの、Nx基準ストラテジで記録された3Tマークの前エッジに対するずれ量が、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。同様に、ランレングスが4Tのマークの前エッジのずれ量は、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。同様に、ランレングスが5Tのマークの前エッジのずれ量は、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。同様に、ランレングスが6T以上のマークの前エッジのずれ量は、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。
その結果、図13の左下側に示すように、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された3Tマークの前エッジの、Nx基準ストラテジで記録された3Tマークの前エッジに対するずれ量がn(1)、n(5)、n(9)及びn(13)として算出される。同様に、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された4Tマークの前エッジの、Nx基準ストラテジで記録された4Tマークの前エッジに対するずれ量がn(2)、n(6)、n(10)及びn(14)として算出される。同様に、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された5Tマークの前エッジの、Nx基準ストラテジで記録された5Tマークの前エッジに対するずれ量がn(3)、n(7)、n(11)及びn(15)として算出される。同様に、前スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された6T以上のマークの前エッジの、Nx基準ストラテジで記録された6T以上のマークの前エッジに対するずれ量がn(4)、n(8)、n(12)及びn(16)として算出される。
同様に、ランレングスが3Tのマークの後エッジのずれ量は、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。つまり、Nx最適ストラテジで記録された3Tのマークの後エッジの、Nx基準ストラテジで記録された3Tマークの後エッジに対するずれ量が、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。同様に、ランレングスが4Tのマークの後エッジのずれ量は、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。同様に、ランレングスが5Tのマークの後エッジのずれ量は、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。同様に、ランレングスが6T以上のマークの後エッジのずれ量は、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々において算出される。
その結果、図13の右下側に示すように、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された3Tマークの後エッジの、Nx基準ストラテジで記録された3Tマークの後エッジに対するずれ量がn’(1)、n’(5)、n’(9)及びn’(13)として算出される。同様に、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された4Tマークの後エッジの、Nx基準ストラテジで記録された4Tマークの後エッジに対するずれ量がn’(2)、n’(6)、n’(10)及びn’(14)として算出される。同様に、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された5Tマークの後エッジの、Nx基準ストラテジで記録された5Tマークの後エッジに対するずれ量がn’(3)、n’(7)、n’(11)及びn’(15)として算出される。同様に、後スペースのランレングスが3Tである場合、4Tである場合、5Tである場合及び6T以上である場合の夫々における、Nx最適ストラテジで記録された6T以上のマークの後エッジの、Nx基準ストラテジで記録された6T以上のマークの後エッジに対するずれ量がn’(4)、n’(8)、n’(12)及びn’(16)として算出される。
尚、第1実施例においては、Mx最適ストラテジに対してクロック周期変換処理を施すことでNx基準ストラテジを生成している。しかしながら、Mx最適ストラテジとは別個に、Mx基準ストラテジを用意し、Mx基準ストラテジに対してクロック周期変換処理を施すことでNx基準ストラテジを生成するように構成してもよい。この場合、図3のステップS106においては、Nx基準ストラテジとNx最適ストラテジとの差分に加えて、図13の左上及び右上に示すように、Mx基準ストラテジとMx最適ストラテジとの差分を算出することが好ましい。尚、Mx最適ストラテジに対してクロック周期変換処理を施すことでNx基準ストラテジを生成している場合には、図13の左上及び右上に示す全ての値(つまりm(k)及びm’(k)、1≦k≦16)は0となる。
再び図3において、続いて、CPU22の動作により、Mx最適パワー及びNx最適パワーに基づいて、Cxの記録速度でデータパターンを記録するためのレーザ光LBの最適パワー(以降、適宜“Cx最適パワー”と称する)が算出される(ステップS108)。
ここで、図14を参照して、Mx最適パワー及びNx最適パワーに基づいて、Cx最適パワーを算出する動作について説明する。ここに、図14は、Mx最適パワー及びNx最適パワーに基づいて、Cx最適パワーを算出する動作を概念的に示すグラフである。
図14に示すように、Mx最適パワーとNx最適パワーとを線形補間することで、Cx最適パワーが算出される。ここでは線形補間を行っているが、他の補間処理を行うことで、Cx最適パワーが算出されてもよいことは言うまでもない。
再び図3において、続いて、CPU22の動作により、Cxの記録速度でデータパターンを記録するための最適ストラテジ(以降、適宜“Cx最適ストラテジ”と称する)が生成される(ステップS108)。ここでは、図12及び図13を参照して説明した差分に基づいてCx基準ストラテジが調整されることで、Cx最適ストラテジが生成される。
具体的には、Nx基準ストラテジで記録されたマークの前エッジの、Nx最適ストラテジで記録されたマークの前エッジに対するずれ量に基づいて、Cx基準ストラテジのパルスの前エッジが調整されると共に、Nx基準ストラテジで記録されたマークの後エッジの、Nx最適ストラテジで記録されたマークの後エッジに対するずれ量に基づいて、Cx基準ストラテジのパルスの後エッジが調整される。
このCx基準ストラテジのパルスの調整も、マークと該マークの前後に位置する2つのスペースのランレングス長に応じて、ランレングスの組み合わせの数だけ行われる。つまり、前スペースのランレングスがjT(但し、3≦j≦14)である場合における、Nx最適ストラテジで記録されたkT(但し、3≦j≦14)マークの前エッジの、Nx基準ストラテジで記録されたkTマークの前エッジに対するずれ量に基づいて、前スペースのランレングスがjTである場合における、kTマークを記録するためのCx基準ストラテジのパルスの前エッジが調整される。同様に、後スペースのランレングスがjTである場合における、Nx最適ストラテジで記録されたkTマークの後エッジの、Nx基準ストラテジで記録されたkTマークの後エッジに対するずれ量に基づいて、前スペースのランレングスがjTである場合における、kTマークを記録するためのCx基準ストラテジのパルスの後エッジが調整される。他のランレングスのマークパターンについても同様である。
より具体的には、Cx基準ストラテジのパルスの前エッジの調整量C(x)は、(n(x)−m(x))×C/(N−M)+(N×m(x)−M×n(x))/(N−M)にて示される。同様に、Cx基準ストラテジのパルスの後エッジの調整量C’(x)は、(n’(x)−m’(x))×C/(N−M)+(N×m’(x)−M×n’(x))/(N−M)にて示される。この場合、xは、図13に示すマーク及び該マークの前後に位置する二つのスペースのランレングスとしてデータパターンを分類した場合一義に特定される変数であり、図13より1≦x≦16であることが分かる。
この結果、マーク及び該マークの前後に位置する二つのスペースのランレングスの組み合わせパターン毎に、Cx基準ストラテジのパルスの前エッジをC(x)だけシフトさせると共に、Cx基準ストラテジのパルスの後エッジをC’(x)だけシフトさせることで、Cx最適ストラテジが生成される。
その後、CPU22の制御の下に、記録が開始される(ステップS109)。例えば、Mxでデータパターンを記録する際には、Mx最適パワー且つMx最適ストラテジのレーザ光LBが光ディスク100に照射される。同様に、Nxでデータパターンを記録する際には、Nx最適パワー且つNx最適ストラテジのレーザ光LBが光ディスク100に照射される。同様に、Cxでデータパターンを記録する際には、Cx最適パワー且つCx最適ストラテジのレーザ光LBが光ディスク100に照射される。
以上説明したように、第1実施例に係る記録装置1によれば、Mx及びNxの夫々の記録速度で記録補償動作を行うことにより算出されるMx最適ストラテジ及びNx最適ストラテジから、より高速なCxの記録速度で記録補償動作を行うことなく、Cx最適ストラテジを生成することができる。このため、例えば光ディスク100の内周側PCA111で実現不可能な記録速度でデータパターンを記録するための最適ストラテジを生成する際に特に有効である。
更に、第1実施例では特に、Nx最適ストラテジを算出するために、アシンメトリまたはβ値が最適となる(例えば、Mx最適パワー且つMx最適ストラテジでデータパターンを記録した場合に得られるアシンメトリまたはβ値と同一となる)Nx最適パワーのレーザ光LBを用いて、記録補償動作が行われる。このため、Nx基準ストラテジのうち短マーク(例えば、3Tマークや4Tマーク等)を記録するためのストラテジについては、ジッタを所望の条件におさめるための調整量が小さくなる又は0となる。このため、Nx基準ストラテジのうちデータパターンの少なくとも一部(例えば、5T以上の長マーク)を記録するためのストラテジを調整すれば十分であり、Nx基準ストラテジのうちデータパターンの他の一部(例えば、3T及び4Tの短マーク)を記録するためのストラテジを調整する必要がなくなる。
これについて、図15及び図16を参照してより詳細に説明する。ここに、図15は、Mx最適ストラテジをMx基準ストラテジとして用いた場合に、Mx基準ストラテジからクロック周期変換処理により算出されるNx基準ストラテジとCx基準ストラテジとを用いてデータパターンを記録した場合のストラテジのずれ量を示しており、(i)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された3Tマークの前エッジと、Mx基準ストラテジで記録された3Tマークの前エッジとの間のずれ量、(ii)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された4Tマークの前エッジと、Mx基準ストラテジで記録された4Tマークの前エッジとの間のずれ量、(iii)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された3Tマークの後エッジと、Mx基準ストラテジで記録された3Tマークの後エッジとの間のずれ量及び(iv)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された4Tマークの後エッジと、Mx基準ストラテジで記録された4Tマークの後エッジに対するずれ量(Shift)を、前スペース(Front Space)のランレングスのパターン毎に且つ記録速度毎に示すグラフであり、図16は、(i)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された5Tマークの前エッジと、Mx基準ストラテジで記録された5Tマークの前エッジとの間のずれ量、(ii)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された6T以上のマークの前エッジと、Mx基準ストラテジで記録された6T以上のマークの前エッジとの間のずれ量、(iii)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された5Tマークの後エッジと、Mx基準ストラテジで記録された5Tマークの後エッジに対するずれ量及び(iv)Mx基準ストラテジ、Nx基準ストラテジ及びCx基準ストラテジの夫々で記録された6T以上のマークの後エッジと、Mx基準ストラテジで記録された6T以上のマークの後エッジとの間のずれ量を、後スペース(Rear Space)のランレングスのパターン毎に且つ記録速度毎に示すグラフである。
図15の左側に示すように、いずれの記録速度(つまり、Mx、Nx及びCx)においても、各基準ストラテジで記録された3Tマーク及び4Tマークの前エッジの、Mx基準ストラテジ(つまり、Mx最適ストラテジ)で記録された3Tマーク及び4Tマークの前エッジに対するエッジのずれ量は、概ね0となっている。同様に、図15の右側に示すように、いずれの記録速度(つまり、Mx、Nx及びCx)においても、各基準ストラテジで記録された3Tマーク及び4Tマークの後エッジの、Mx基準ストラテジで記録された3Tマーク及び4Tマークの後エッジに対するエッジのずれ量は、概ね0となっている。
他方で、図16の左側に示すように、各基準ストラテジで記録された5T以上のマークの前エッジと、Mx基準ストラテジで記録された5T以上のマークの前エッジに対するずれ量は、記録速度が増加するほど大きくなる。同様に、図16の右側に示すように、各基準ストラテジで記録された5T以上のマークの後エッジと、Mx基準ストラテジで記録された5T以上のマークの後エッジに対するずれ量は、記録速度が増加するほど大きくなる。
このため、Nx基準ストラテジのうちデータパターンの一部(例えば、3T及び4Tの短マーク)を記録するためのストラテジを調整しなくとも、Nx基準ストラテジのうちデータパターンの他の一部(例えば、5T以上の長マーク)を記録するためのストラテジを調整すれば、Nx最適ストラテジを好適に生成することができる。このため、記録補償動作の負荷を相対的に低減させることができる。つまり、背景技術において提示された技術のように、エネルギーを一定にするための複雑且つ高負荷な波形変換を行う必要がなくなるため、記録装置1の負荷を相対的に低減させることができる。
これらの結果、第1実施例に係る記録装置1によれば、いずれの記録速度においても、記録速度毎の最適ストラテジを用いてデータパターンが記録されるため、トータルジッタを低減することができる。ここで、図17を参照して、第1実施例におけるトータルジッタの低減効果について説明する。ここに、図17は、第1実施例におけるトータルジッタの低減効果を概念的に示すグラフである。尚、図17においては、Mxの記録速度では、Mx最適ストラテジをMx基準ストラテジとして用いているため、「記録補償あり」で示されるジッタ及び「記録補償なし」で示されるジッタのいずれも、Mx最適ストラテジにより記録されたデータパターンのジッタである。また、Nxの記録速度では、「記録補償あり」で示されるジッタは、Nx最適ストラテジにより記録されたデータパターンのジッタであり、「記録補償なし」で示されるジッタは、Nx基準ストラテジにより記録されたデータパターンのジッタである。また、Cxの記録速度では、「記録補償あり」で示されるジッタは、Cx最適ストラテジにより記録されたデータパターンのジッタであり、「記録補償なし」で示されるジッタは、Cx基準ストラテジにより記録されたデータパターンのジッタである。
図17に示すように、Nx基準ストラテジで記録されたデータパターンのジッタと比較して、Nx最適ストラテジで記録されたデータパターンのジッタは、概ね良好な値(具体的には、6%程度)を有している。同様に、Cx基準ストラテジで記録されたデータパターンのジッタと比較して、Cx最適ストラテジで記録されたデータパターンのジッタは、概ね良好な値(具体的には、6%程度)を有している。つまり、第1実施例により生成されたCx最適ストラテジは、実際にCxの記録速度で記録補償用のデータパターンを記録することで調整されたストラテジと概ね同様のストラテジであるものとみなすことができる。このため、第1実施例によれば、実際にCxの記録速度で記録補償用のデータパターンを記録しなくとも、実際にCxの記録速度で記録補償用のデータパターンを記録することで調整されたストラテジと同様のCx最適ストラテジを好適に生成することができることがわかる。
(1−4)第2動作例
続いて、図18を参照して、第1実施例に係る記録装置1の第2動作例について説明する。ここに、図18は、第2動作例における最適パワーを概念的に示すグラフである。
上述した第1動作例では、第2最適パワーとして、Nxの記録速度でOPCパターンを記録することで得られるパワー(つまり、Nxの記録速度で行われたOPCにより、Mxの記録速度で記録されたデータパターンのアシンメトリまたはβ値と同じアシンメトリまたはβ値が得られるようなパワー)を用いていた。第2動作例においては、第2最適パワーとして、Nxの記録速度でOPCパターンを記録することで得られるパワーを更に減少させたパワーを用いている。このため、第1最適パワーと第2最適パワーとを線形補間することで得られる第3最適パワーも、第1動作例における第3最適パワーよりも小さくなる。
このように、第2動作例によれば、相対的に高速なCxの記録速度での記録時の最適パワーを相対的に小さくすることができる。これにより、レーザ光LBを照射するピックアップ11(より具体的には、ピックアップ11内に備え付けられているレーザダイオード等)の長寿命化を図ることができたり、或いは、光ディスク100が書換型であれば記録面の劣化を抑制することができる。
但し、アシンメトリが最適な値となるパワー(つまり、OPCにより得られるパワー)よりも小さなパワーを第2最適パワーとしているため、Nx基準ストラテジのうち短マーク(例えば、3Tマークや4Tマーク等)を記録するためのストラテジについても、ジッタを所望の条件におさめるための調整量が大きくなる可能性が高くなる。このため、第2動作例においては、Nx最適ストラテジを生成するためには、Nx基準ストラテジのうちデータパターンの少なくとも一部(例えば、5T以上の長マーク)を記録するためのストラテジのみならず、Nx基準ストラテジのうちデータパターンの他の一部(例えば、3T及び4Tの短マーク)を記録するためのストラテジをも調整することが好ましい。
(1−5)第3動作例
続いて、図19及び図20を参照して、第1実施例に係る記録装置1の第3動作例について説明する。ここに、図19は、第3動作例におけるクロック周期変換処理の態様を、データパターン、クロック及びストラテジと対応付けて概念的に示すタイミングチャートであり、図20は、第3動作例における最適パワーを概念的に示すグラフである。
上述した第1動作例では、Nx基準ストラテジのNxの記録速度でのクロックに対する形状と、Mx最適ストラテジのMxの記録速度におけるクロックに対する形状とが、概ね相似の関係を有するようなクロック変換処理が行われていた。言い換えれば、Mxの記録速度におけるクロックのパルス幅とNxの記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率がB%(但し、Bは実数)である場合には、クロック周期変換処理によりMx最適ストラテジのパルス幅がB%変化させられ、その結果、Nx基準ストラテジが生成されていた。第3動作例においては、Mx最適ストラテジのMxの記録速度におけるクロックに対する形状との間に概ね相似の関係を有するようなNxの記録速度におけるストラテジを生成した後、該ストラテジのパルス幅を一定の割合で拡大若しくは縮小する又は一定量だけシフトさせることで、Nx基準ストラテジが生成される。言い換えれば、Mxの記録速度におけるクロックのパルス幅とNxの記録速度におけるクロックのパルス幅との変化率がC%(但し、Cは実数)である場合には、クロック周期変換処理によりMx最適ストラテジのパルス幅が(C+α)%(但し、αは実数)変化させられ、その結果、Nx基準ストラテジが生成される。
このとき、データパターン毎にパルス幅の変化率を変えるように構成してもよい。例えば、図19に示すように、長マークを記録するストラテジのパルス幅の変化率bと、短マークを記録するためのストラテジのパルス幅の変化率aとを異なる値にするように構成してもよい。
ここで、パルス幅を広げるようにクロック周期変換処理を行うことで(つまり、上述の変数αに正の値を設定する又は変化率a及びbを1以上の値に設定することで)、図20に示すように、Nxの記録速度でOPCパターンを記録する(つまり、Nxの記録速度でOPCを行う)ことで得られる第2最適パワーを、第1動作例における第2最適パワーよりも小さくすることができる。このため、第1最適パワーと第2最適パワーとを線形補間することで得られる第3最適パワーも、第1動作例における第3最適パワーよりも小さくなる。従って、第2動作例において説明した各種効果を好適に享受することができる。
(1−6)第4動作例
続いて、図21を参照して、第1実施例に係る情報記録装置1の第4動作例について説明する。ここに、図21は、第1実施例に係る情報記録装置1の第4動作例の動作の流れを概念的に示すフローチャートである。尚、上述した第1動作例と同一の動作については、同一のステップ番号を付して、その詳細な説明については省略する。
図21に示すように、第4動作例においては、図4が示す記録補償動作の一部の動作が変更される。具体的には、第4動作例においても、第1動作例において説明したステップS201におけるデータパターンの記録が行われる。
その後、平均化回路19の動作により、トータルジッタが測定される(ステップS301)。その後、CPU22の動作により、トータルジッタが第2閾値以下であるか否かが判定される(ステップS302)。ここで用いる第2閾値は、例えば光ディスク100の規格において定められた値であってもよいし、或いは記録動作ないしは再生動作に影響を与えない程度のジッタの値であってもよい。或いは、第2閾値は、例えば12%であってもよいし、10%であってもよいし、8%であってもよいし、それ以下であってもよい。
ステップS302における判定の結果、トータルジッタが第2閾値以下であると判定された場合には(ステップS302:Yes)、記録補償動作を行うことなく、記録補償動作を終了する。
他方、ステップS302における判定の結果、トータルジッタが第2閾値以下でないと判定された場合には(ステップS302:No)、第1動作例において説明したステップS202からステップS204の動作が行われる。
このように、第4動作例によれば、第1動作例によって享受することができる効果と同一の効果を好適に享受することができる。加えて、トータルジッタが第2閾値以下であれば(つまり、トータルジッタが良好であれば)、記録補償動作を必ずしも行う必要がなくなる。このため、情報記録装置1の動作負荷を低減することができる。
(2)第2実施例
続いて、図22を参照して、本発明の記録装置に係る第2実施例について説明する。ここに、図22は、第2実施例に係る記録装置2の基本構成を概念的に示すブロック図である。尚、上述した第1実施例に係る情報記録再生装置1と同一の構成については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明については省略する。
図22に示すように、第2実施例に係る記録装置2は、第1実施例に係る記録装置1と同様に、スピンドルモータ10と、ピックアップ11と、HPF12と、A/D変換器13と、プリイコライザ14と、2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ設定回路21と、CPU22とを備えている。
第2実施例に係る記録装置2は特に、プリイコライザ14と遅延回路18及び2値化回路16との間にリミットイコライザ15を備えている。リミットイコライザ15は、本発明における「振幅制限フィルタリング手段」の一具体例を構成しており、符号間干渉を増加させることなく読取サンプル値系列RSCに対して高域強調処理を施し、その結果得られる高域強調読取サンプル値系列RSHを、2値化回路16及び遅延回路18の夫々へ出力する。尚、リミットイコライザ15の動作自体は、従来のリミットイコライザの動作と同一である。その詳細については、特許第3459563号等を参照されたい。
その結果、リミットイコライザ15の後段に位置する2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ調整回路21と、CPU22とは、読取サンプル値系列RSCに代えて、高域強調読取サンプル値系列RSHを用いて動作を行う。
このように、第2実施例によれば、リミットイコライザ15の出力(つまり、高域強調読取サンプル値系列RSH)を用いてパターン判別すると共に、記録補償動作を行っている。つまり、最短データパターンの振幅レベルが強調された状態でパターン判別すると共に、記録補償動作を行っている。仮に読取信号のアシンメトリがどのような状態であったとしても、読取信号中に含まれる最短データパターンがゼロレベルと交差なくなる状態を好適に防ぐことができる。その結果、最短データパターンの検出を好適に行うことができる。これにより、最短データパターンを含む読取信号を参照しながら、記録補償動作を好適に行うことができる。つまり、記録補償前の読取信号におけるアシンメトリの状態に関わらず、記録補償動作を好適に行うことができる。
(3)第3実施例
続いて、図23及び図24を参照して、本発明の記録装置に係る第3実施例について説明する。ここに、図23は、第3実施例に係る記録装置3の基本構成を概念的に示すブロック図であり、図24は、第3動作例における最適パワーを概念的に示すグラフである。尚、上述した第1実施例に係る情報記録再生装置1及び第2実施例に係る記録装置2と同一の構成については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明については省略する。
図23に示すように、第3実施例に係る記録装置3は、第2実施例に係る記録装置2と同様に、スピンドルモータ10と、ピックアップ11と、HPF12と、A/D変換器13と、プリイコライザ14と、リミットイコライザ15と、2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ設定回路21と、CPU22とを備えている。
第3実施例に係る記録装置3は特に、夫々が本発明における「付加手段」の一具体例を構成している、加算器23と、リファレンスレベル検出回路24とを備えている。
リファレンスレベル検出回路24は、実際に検出されたアシンメトリと、目標とするアシンメトリとの差分をオフセットOFSとして加算器23へ出力する。加算器では、リファンレンスレベル検出回路24より出力されるOFSが、リミットイコライザ15より出力される高域強調読取サンプル値系列RSHに加えられる。これにより、高域強調読取サンプル値系列RSHにおけるリファレンスレベルを所望の値に設定することができる。
尚、リファレンスレベル検出回路24において読取信号より検出する信号は、上述したアシンメトリに限らず、β値であってもよい。或いは、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号の振幅中心と、ランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号の振幅中心とのずれを示す部分β値であってもよい。或いは、全ての種類のランレングスの記録データ(例えば、光ディスク100がDVDであればランレングス3Tから11T及び14Tの夫々の記録データであり、光ディスク100がBlu−ray Discであればランレングス2Tから9Tの記録データ)に対応する夫々の読取信号の振幅中心(つまり、リファレンスレベルであり、本実施例においてはゼロレベル)に対する、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号の振幅中心の乖離率を示すα値であってもよい。
このような構成を採用することで、第3実施例に係る記録装置3は、リファレンスレベルを変更することができ、その結果、記録補償後の読取信号のアシンメトリを自由に設定することができる。従って、所望のアシンメトリで且つ最適なジッタ値を実現するような記録補償動作を行うことができる。例えば、光ディスク100がDVDであれば、アシンメトリが+5%付近となり且つジッタが最小となる状態を実現するような記録補償動作を行うことができる。同様に、光ディスクがBlu−ray Discであれば、アシンメトリが+2.5%付近となり且つジッタが最小となる状態を実現するような記録補償動作を行うことができる。
また、記録補償前の読取信号のアシンメトリに依存することなく、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるため、記録装置3や光ディスク100の個体差によるアシンメトリのばらつきがあったとしても、良好な記録補償動作を行うことができる。
また、検出されたアシンメトリと目標アシンメトリとの差分に相当するオフセットを加算する構成(つまり、記録補償前のアシンメトリにオフセットを加算することで、記録補償後に所望のアシンメトリを得る構成)を採用しているため、記録補償動作を複数回行うことで記録補償前のアシンメトリが変動する場合であっても、アシンメトリを所望の値に設定することができる。
更に、記録パワー(つまり、記録パルスの振幅)を調整してアシンメトリの調整を行う必要がなくなるため、記録条件の調整動作の簡素化を実現することができると共に、記録条件の調整動作に要する時間を短縮することができる。
加えて、図20に示すように、アシンメトリを自由に調整することができるため、OPCにより得られる第1最適パワー及び第2最適パワーの夫々を、第1動作例における第1最適パワー及び第2最適パワーの夫々よりも小さくすることができる。このため、第1最適パワーと第2最適パワーとを線形補間することで得られる第3最適パワーも、第1動作例における第3最適パワーよりも小さくなる。従って、第2動作例において説明した各種効果を好適に享受することができる。
尚、第3実施例においては、リミットイコライザ15から出力される高域強調読取サンプル値系列RSHを用いて記録補償動作を行っている。しかしながら、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるという観点からは、リミットイコライザ15から出力される高域強調読取サンプル値系列RSHを用いて記録補償動作を行う必要は必ずしもない。つまり、プリイコライザ14から出力される読取サンプル値系列RSCを用いて記録補償動作を行っても、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるという効果を享受することができることは言うまでもない。従って、第3実施例においては、リミットイコライザ15は必ずしも備えていなくともよい。
尚、記録補償動作の結果は、ストラテジ情報として光ディスク100に記録されてもよい。或いは、記録補償動作の結果のみならず、各最適ストラテジを直接的に示す又は間接的に示すストラテジ情報が光ディスク100に記録されてもよい。この場合、ユーザによる記録動作が行われる際に適宜光ディスク100に記録されてもよい。或いは、光ディスク100の製造時に、エンボスピットやプリライト等により予め光ディスク100に記録されていてもよい。ここでは、例えば図2において示したRMA112に記録されてもよいし、或いはリードインエリア113内のCDZ(Control Data Zone)に記録されてもよいし、或いは他のエリア部分に記録されてもよい。この場合、ストラテジ情報を、記録補償動作を行った或いは最適ストラテジを生成した記録装置1(或いは、2又は3)を識別することができる識別情報と関連付けて記録することが好ましい。
このように、ストラテジ情報や記録補償動作を行った或いは最適ストラテジを生成した記録装置1を識別することができる識別情報を、光ディスク100に記録することで、記録装置1によるデータパターンの記録が行われる際に、当該記録装置1の識別情報と対応するストラテジ情報を光ディスク100から読み取ることができる。このため、読み取ったストラテジ情報を用いることで、記録補償動作を行わなくても或いは最適ストラテジを改めて生成しなくとも、光ディスク100に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
また、当該記録装置1の識別情報と対応するストラテジ情報が光ディスク100に記録されていない場合であっても、当該記録装置1の識別情報に近い識別情報(言い換えれば、当該記録装置1の特性と似ている他の記録装置の識別情報)と対応するストラテジ情報を光ディスク100から読み取り且つ読み取ったストラテジ情報を用いることで、同様の効果を相応に享受することができる。或いは、当該記録装置1の識別情報に近い識別情報と対応するストラテジ情報に基づいて、簡易的な記録補償動作を行っても、同様の効果を相応に享受することができる。
更に、光ディスク100がブランクである等の理由により、光ディスク100にストラテジ情報が記録されていなかったとしても、上述した各実施例に係る各記録装置を用いれば、記録補償動作を好適に行ったり或いは最適ストラテジを生成することができる。そして、この結果得られるストラテジ情報を、記録装置1の識別情報と対応させて、光ディスク100に記録しておけば、次にデータパターンを記録する際には、わざわざ記録補償動作を行わなくても或いは最適ストラテジを改めて生成しなくとも、光ディスク100に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
つまり、図3に示す動作を行わなくとも或いは図3に示す動作を少なくとも1回行えば、対応する記録装置1において、わざわざ記録補償動作を行わなくても或いは最適ストラテジを改めて生成しなくとも、光ディスク100に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。従って、記録補償動作を行う回数を減少させることができるため、記録補償動作に必要なエリアを節約することができる。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う記録装置及び方法、コンピュータプログラム、並びに記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。