以下、発明を実施するための最良の形態として、本発明の記録装置及び方法に係る実施形態の説明を進める。
(記録装置の実施形態)
本発明の記録装置に係る実施形態は、内周側エリア及び該内周側エリアの外周側に位置するユーザデータエリアを備える記録媒体に所望のデータパターンを記録する記録手段と、前記記録手段により前記データパターンが記録されることが予定される前記ユーザデータエリア内のエリア部分である記録予定エリア部分に前記データパターンを記録する前に、前記記録予定エリア部分に前記データパターンを記録する際に用いられる最適パワーを算出する第1算出手段と、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記最適パワーで前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御する第1制御手段と、前記第1制御手段の制御により記録された前記データパターンを読み取ることで、前記記録予定エリア部分の記録感度と前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分の記録感度との差異を考慮して、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分において前記記録手段の記録条件を調整する際に用いられる調整用パワーを算出する第2算出手段と、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記調整用パワーで前記記録条件を調整するための前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御する第2制御手段と、前記第2制御手段の制御により記録された前記データパターンを読み取ることで読取信号を取得する読取手段と、前記読取信号のジッタを測定する測定手段と、前記測定手段により測定される前記ジッタが所望の条件を満たすように前記記録条件を調整する調整手段と、前記最適パワー及び前記調整手段により調整された前記記録条件を用いて、前記記録予定エリア部分への前記データパターンの記録を開始するように記録手段を制御する第3制御手段とを備える。
本発明の記録装置に係る実施形態によれば、記録手段の動作により、レーザ光等が記録媒体に照射される。その結果、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録媒体に記録される。
ここで、本実施形態に係る記録装置においては、記録手段によるユーザデータエリアへのデータパターンの記録動作の前に、以下に説明する動作が行われる。
まず、第1算出手段の動作により、記録予定エリア部分にデータパターンを記録する際に用いられるレーザ光の最適パワーが算出される。
その後、第1制御手段の制御により、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分(つまり、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないユーザデータエリアのエリア部分)に最適パワーのレーザ光が照射され、その結果、データパターンが記録される。
その後、第2算出手段の動作により、第1制御手段の制御により記録されたデータパターンが読み取られる。この読取結果は、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分(言い換えれば、記録条件を調整するためのデータパターンが記録されるエリア部分であって、記録補償動作が行われるエリア部分)の記録感度を直接的に又は間接的に示している。他方で、第1算出手段の動作により記録される試し書き用のデータパターンの読取結果は、記録予定エリア部分の記録感度を直接的に又は間接的に示している。このため、記録予定エリア部分の記録感度と、記録補償動作が行われるエリア部分の記録感度との差異が判明する。第2算出手段は、この記録感度の差異を考慮して、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分において記録条件を調整する際に用いられる調整用パワーを算出する。
その後、実際に記録補償動作が行われる。具体的には、まず、第2制御手段の制御により、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、調整パワーのレーザ光が照射され、その結果、記録手段の記録条件を調整するためのデータパターンが記録される。つまり、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないユーザデータエリアのエリア部分に、記録手段の記録条件を調整するためのデータパターンが記録される。
その後、読取手段の動作により、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に記録されたデータパターンが読み取られる。その結果、読取信号が取得される。その後、測定手段の動作により、読取信号のジッタが検出される。その後は、調整手段の動作により、検出されるジッタが所望の条件を満たすように、記録手段における記録条件が調整される。
記録条件の調整がなされた後、第3制御手段の制御により、ユーザデータエリアへのデータパターンの記録が実際に開始される。この場合、レーザ光のパワーは、第1算出手段により算出された最適パワーに設定され、記録条件は、調整手段により調整された記録条件に設定される。
これにより、記録条件の調整がなされた後に記録されるデータパターンを読み取ることで得られる読取信号のジッタは、所望の条件を満たしている。従って、読取信号の読取品質(言い換えれば、記録品質ないしは再生品質)を向上させることができる。
特に、本実施形態においては、記録条件を調整するためのデータパターンを記録する前に(つまり、記録補償動作を行う前に)、記録予定エリア部分の記録感度と記録補償動作が行われるエリア部分の記録感度との差異を考慮して、レーザ光のパワーが補正される。
ここで、記録感度の差異を考慮することなく、記録予定エリア部分での最適パワーを用いて、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分で記録補償動作を行う(つまり、記録条件を調整するためのデータパターンを記録する)動作について検討する。この場合、記録予定エリア部分での最適パワーが、記録補償動作が行われるエリア部分においても最適であるとは限らないため、記録補償動作が行われるエリア部分において最適でないパワーで記録補償動作が行われることになりかねない。これは、記録条件の好適な調整を行うという目的から見れば好ましくない。
しかるに、本実施形態では、上述の如く記録感度の差異を考慮して、記録補償動作を行うためのレーザ光のパワーが算出されるため、記録補償動作が行われるエリア部分において最適な調整パワーで記録補償動作が行われる。その一方で、実際にユーザデータエリアに記録されるべきデータに応じたデータパターンを記録する際には、第1算出手段により算出された最適パワー及び調整手段により調整された記録条件が用いられるため、ユーザデータエリアにデータパターンを好適に記録することができる。つまり、データパターンの記録品質を悪化させることなく、データパターンを記録することができる。
加えて、本実施形態においては、最内周側又は最外周側に配置されるPCA等のエリア部分と比較して、実際にデータパターンが記録されるユーザデータエリアのエリア部分(つまり、記録予定エリア部分)により近いエリア部分にデータパターンを記録することにより、記録補償動作を行うことができる。このため、記録補償動作が行われるエリア部分の特性(例えば、記録感度)と実際に記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分との特性(例えば、記録感度)とが大きくかけ離れる事態は少なくなる。これにより、最内周側又は最外周側に配置されるPCA等のエリア部分において記録補償動作を行う場合と比較して、記録補償動作により最適化された記録条件が、実際にデータパターンが記録されるエリア部分においても好適である又は最適である可能性が高くなる。つまり、より好適な態様で記録補償動作を行うことにより、より好適に記録条件を最適化することができる。従って、記録補償動作により最適化された記録条件を用いて、ユーザデータエリアにデータパターンを好適に記録することができる。
尚、本実施形態では、上述した記録感度を考慮した補正により、記録予定エリア部分と、記録補償動作が行われるエリア部分とが離れた位置に存在していたとしても、特段の問題は生じないと考えられる。しかしながら、記録予定エリア部分の特性と記録補償動作が行われるエリア部分との特性が近ければ近いほど好ましいという事実を考慮すれば、記録予定エリア部分と記録補償動作が行われるエリア部分とがより近接する関係にある方が好ましい。この点において、本実施形態では、より一層好適な記録補償動作を行うことができるという大きな効果を享受することができる。
また、上述した背景技術(特に、特許文献3)では、OPC用の特別なデータパターンが記録される。このため、特別なデータパターンが記録されるエリア部分を記録予定エリア部分に近づけることは、該特別なデータパターンを再生装置が誤って読み取ってしまった場合に動作の暴走を招きかねないことを考慮すると、好ましくない。一方で、本実施形態によれば、記録補償動作を行うためには、通常のデータパターンが記録される。このため、通常のデータパターンが記録されるエリア部分を記録予定部分に近づけることにより再生装置が該データパターンを読み取ってしまったとしても、動作の暴走を招くことはない。この点においても、本実施形態によれば、背景技術と比較して、十分に優れた効果を享受することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の一の態様では、前記第2算出手段は、前記第1制御手段の制御により記録された前記データパターンの記録特性が最適となるような前記調整用パワーを算出する。
この態様によれば、記録予定エリア部分の記録感度と記録補償動作が行われるエリア部分との記録感度との差異を考慮して、記録補償動作が行われるエリア部分において最適な調整パワーで記録補償動作を行うことができる。このため、データパターンの記録品質を向上させることができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第2算出手段は、前記記録予定エリア部分の記録感度と前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分の記録感度との差異が吸収される(言い換えれば、打ち消される)ような前記調整用パワーを算出する。
この態様によれば、記録予定エリア部分の記録感度と記録補償動作が行われるエリア部分との記録感度との差異を考慮して、記録補償動作が行われるエリア部分において最適な調整パワーで記録補償動作を行うことができる。このため、最適パワーで記録された、ユーザデータエリアに記録されるべきデータに応じたデータパターンの記録品質を向上させることができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記第1算出手段は、前記記録予定エリア部分に第1の線速度で前記データパターンを記録する前に、前記内周側エリアにおいて、第1の線速度よりも低速な第2の線速度で試し書き用の前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御することにより、前記記録予定エリア部分に前記第1の線速度で前記データパターンを記録する際に用いられる最適パワーを算出し、前記第1制御手段は、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記最適パワー且つ前記第1の線速度で前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御し、前記第2算出手段は、前記第1制御手段の制御により記録された前記データパターンを読み取ることで、前記記録予定エリア部分の記録感度と前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分の記録感度との差異を考慮して、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分において前記第1の線速度で前記記録手段の記録条件を調整する際に用いられる前記調整用パワーを算出し、前記第2制御手段は、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記調整用パワー且つ前記第1の線速度で前記記録条件を調整するための前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御し、前記第3制御手段は、前記最適パワー及び前記調整手段により調整された前記記録条件を用いて、前記第1の線速度で、前記記録予定エリア部分への前記データパターンの記録を開始するように記録手段を制御する。
この態様によれば、まず、第1算出手段の動作により、第2の線速度で内周側エリアに記録された試し書き用のデータパターンに基づいて、第1の線速度で記録予定エリア部分にデータパターンを記録する際に用いられるレーザ光の最適パワーが算出される。言い換えれば、内周側エリアにおいて実現することができない第1の線速度に代えて、内周側エリアにおいて実現することができる第2の線速度で試し書き用のデータパターンを記録することにより、第1の線速度で記録予定エリアにデータパターンを記録する際に用いられる最適パワーが算出される。
ここでは、第1算出手段は、内周側エリアにおいて実現することができる第2の線速度で記録された試し書き用のデータパターンを読み取った結果に基づいて、内周側エリアにおいて実現することができない第1の線速度で用いられる最適パワーを予測ないしは推測するように構成されてもよい。その場合、後述するように、上述した予測動作を可能とならしめる特別な記録ストラテジ(つまり、記録条件)を用いて試し書き用のデータパターンを記録するように構成してもよい。或いは、試し書き用のデータパターンの記録品質と記録パワーとの相関関係に基づいて、内周側エリア以外のエリア部分の最適パワーを補間により予測するように構成してもよい。
その後、第1制御手段の制御により、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分(つまり、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないユーザデータエリアのエリア部分)に、第1の線速度で最適パワーのレーザ光が照射され、その結果、データパターンが記録される。
その後、第2算出手段の動作により、記録感度の差異を考慮して、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分において第1の線速度で記録条件を調整する際に用いられる調整用パワーを算出する。
その後、実際に記録補償動作が行われる。具体的には、まず、第2制御手段の制御により、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、第1の線速度で調整パワーのレーザ光が照射され、その結果、記録手段の記録条件を調整するためのデータパターンが記録される。つまり、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないユーザデータエリアのエリア部分に、記録手段の記録条件を調整するためのデータパターンが記録される。
その後、読取手段の動作により、記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に記録されたデータパターンが読み取られる。その結果、読取信号が取得される。その後、測定手段の動作により、読取信号のジッタが検出される。その後は、調整手段の動作により、検出されるジッタが所望の条件を満たすように、記録手段における記録条件が調整される。
記録条件の調整がなされた後、第3制御手段の制御により、第1の線速度でユーザデータエリアへの記録されるべきデータに応じたデータパターンの記録が実際に開始される。この場合、レーザ光のパワーは、第1算出手段により算出された最適パワーに設定され、記録条件は、調整手段により調整された記録条件に設定される。
この態様では、前記第1算出手段は、前記第1の線速度で前記記録条件を調整するための前記データパターンを前記内周側エリアに記録することができない場合に、前記最適パワーを算出し、前記第1制御手段は、前記第1の線速度で前記記録条件を調整するための前記データパターンを前記内周側エリアに記録することができない場合に、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記最適パワー且つ前記第1の線速度で前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御し、前記第2算出手段は、前記第1の線速度で前記記録条件を調整するための前記データパターンを前記内周側エリアに記録することができない場合に、前記調整用パワーを算出し、前記第2制御手段は、前記第1の線速度で前記記録条件を調整するための前記データパターンを前記内周側エリアに記録することができない場合に、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記調整用パワー且つ前記第1の線速度で前記記録条件を調整するための前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御するように構成してもよい。
このように構成すれば、内周側に配置された内周側エリア(例えば、PCA)において実現できないような相対的に高速の線速度の場合には、最外周側に配置された外周側エリアにおいて記録補償動作を行うことに代えて、実際に記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるユーザデータのエリア部分(つま、記録予定エリア部分)により近いエリア部分において記録補償動作を行うことができる。このため、記録特性が大きく変化してしまいかねない最外周側のエリア部分において記録補償動作を行う必要がなくなる。このように、より好適な態様で記録補償動作を行うことにより、より好適に記録条件を最適化することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記読取信号の振幅レベルを所定の振幅制限値にて制限して振幅制限信号を取得すると共に、該振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行うことで等化補正信号を取得する振幅制限フィルタリング手段と、前記等化補正信号の前記データパターンを検出する検出手段とを更に備え、前記測定手段は、前記読取手段のジッタとして、前記等化補正信号のジッタを測定し、前記調整手段は、前記検出手段により検出される前記データパターンを参照しながら、前記測定手段により測定される前記ジッタが所望の条件を満たすように前記記録条件を調整する。
この態様によれば、振幅制限フィルタリング手段の動作により、読取信号の振幅レベルが制限される。具体的には、読取信号のうち振幅レベルが振幅制限値の上限よりも大きい又は下限より小さい信号成分は、振幅レベルが振幅制限値の上限又は下限に制限される。他方、読取信号のうち振幅レベルが振幅制限値の上限以下且つ下限以上である信号成分は、振幅レベルが制限されることはない。このように振幅レベルの制限が施された読取信号を、振幅制限信号と称する。更に、振幅制限フィルタリング手段は、振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行う。その結果、読取信号中に含まれる最短データパターン(例えば、情報記録媒体がDVDであれば、ランレングスが3Tのデータパターンであり、情報記録媒体がBlu−ray Discであれば、ランレングスが2Tのデータパターン)の振幅レベルが強調された状態にある等化補正信号が取得される。つまり、振幅制限フィルタリング手段は、いわゆるリミットイコライザと同様の動作を読取信号に対して行う。
その後、測定手段の動作により、読取信号のジッタが測定されることに代えて、等化補正信号のジッタが測定される。つまり、この態様においては、記録媒体からデータパターンを読み取ることで得られる読取信号を直接的に用いてジッタを測定することに代えて、読取信号に対して振幅制限処理及び高域強調フィルタリング処理が施されることで得られる等化補正信号を用いてジッタが測定される。
更に、検出手段の動作により、等化補正信号のデータパターンが検出される。より具体的には、等化補正信号のデータパターンが、いずれのランレングスのデータパターンであるかが検出される。検出されたデータパターンは、調整手段による記録条件の調整動作の際に参照される。
このように、振幅制限フィルタリング手段(つまり、リミットイコライザ)の動作により最短データパターンの振幅レベルが強調された等化補正信号からデータパターンが検出される。このため、仮に読取信号のアシンメトリがどのような状態であったとしても、読取信号中に含まれる最短データパターンがゼロレベルと交差しなくなる不都合を好適に防ぐことができる。その結果、最短データパターンの検出を好適に行うことができる。このため、最短データパターンを記録するための記録条件を好適に調整することができる。これにより、最短データパターンを含む読取信号を参照しながら、記録補償動作を好適に行うことができる。つまり、記録補償前の読取信号におけるアシンメトリの状態に関わらず、記録補償動作を好適に行うことができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記読取信号に所定のオフセット信号を付加することでオフセット付加信号を取得する付加手段を更に備え、前記測定手段は、前記オフセット付加信号の前記ジッタを測定する。
この態様によれば、オフセット付加信号のジッタが測定される。尚、オフセット信号は、記録補償動作後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるような信号が適宜設定されることが好ましい。このため、オフセット信号の付加に応じて、記録補償動作前の読取信号のアシンメトリの状態にかかわらず、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様では、前記測定手段は、前記ジッタとして、前記ジッタのうちの記録される前記データパターンの状態に起因したシフトジッタ成分を測定し、前記調整手段は、前記ジッタとしての前記シフトジッタ成分が前記所望の条件を満たすように前記記録条件を調整する。
この態様によれば、容易に予測することが困難又は不可能なランダムジッタ成分ではなく、記録条件にて左右されるデータパターンの状態に起因したシフトジッタ成分を測定している。従って、記録条件を調整することで、比較的容易に、シフトジッタ成分が所望の条件となるような記録補償動作を好適に行うことができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすように記録条件を調整する記録装置の態様では、前記ジッタが前記所望の条件を満たす状態は、前記シフトジッタ成分が第1所定値以下となる状態であるように構成してもよい。
このように構成すれば、シフトジッタ成分が小さくなるような記録補償動作を好適に行うことができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすように記録条件を調整する記録装置の態様では、前記ジッタが前記所望の条件を満たす状態は、ランレングスが異なる複数種類の前記データパターン毎の前記シフトジッタ成分が略同一となる状態であるように構成してもよい。
このように構成すれば、複数種類のデータパターン(例えば、記録媒体がDVDであれば、ランレングスが3Tから11T及び14Tの10種類のデータパターンであり、記録媒体がBlu−ray Discであれば、ランレングスが2Tから9Tの7種類のデータパターン)毎に、シフトジッタ成分を揃えることができる。つまり、データパターン毎のジッタ分布を狭くすることに代えて、データパターン毎のジッタ分布の平均値(つまり、シフトジッタ成分)を揃えることができる。これにより、好適に且つ比較的容易にジッタを低減させる記録補償動作を行うことができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすように記録条件を調整する記録装置の態様では、前記ジッタが前記所望の条件を満たす状態は、前記ジッタのうちのノイズに起因したランダムジッタ成分が、前記ジッタに占める比率が第2所定値以上となる状態であるように構成してもよい。
ジッタは、ランダムジッタ成分の2乗とシフトジッタ成分の2乗との和の平方根にて示される。このため、ランダムジッタ成分がシフトジッタ成分と比較して大きければ(つまり、ランダムジッタ成分がジッタに占める比率が相対的に大きければ)、シフトジッタ成分を低減しても、ジッタは低減しにくくなる。従って、このように構成すれば、記録条件の調整によってジッタの低減効果が好適に得られるような記録補償動作を行うことができる。言い換えれば、記録条件の調整によってジッタの低減効果が好適に得られない非効率な記録補償動作が行われる状態を好適に避けることができる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすように記録条件を調整する記録装置の態様では、前記測定手段は、ゼロレベルとなる点に最も近接する前記読取信号又は前記等化補正信号のサンプル値の前記データパターン毎の平均値を、前記シフトジッタ成分として測定するように構成してもよい。
このように構成すれば、シフトジッタ成分を好適に且つ比較的容易に測定することが出きる。
上述の如くシフトジッタ成分が所望の条件を満たすように記録条件を調整する記録装置の態様では、前記調整手段は、ランレングスが異なる複数種類の前記データパターンのうち前記シフトジッタ成分が相対的に大きいデータパターンを記録する際の前記記録条件から優先的に調整するように構成してもよい。
このように構成すれば、データパターン毎の記録条件をランダムに調整する構成と比較して、より効率的にジッタを低減させることができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様は、前記記録手段は、レーザ光を照射することで前記データパターンを記録し、前記記録条件は、前記レーザ光又は該レーザ光を駆動するための駆動パルスのパルス幅及び振幅の少なくとも一つである。
このように構成すれば、レーザ光又は駆動パルスのパルス幅や振幅を調整することで、記録補償動作を好適に行うことができる。
本発明の記録装置に係る実施形態の他の態様は、前記記録手段は、前記調整手段により調整された前記記録条件を記録する。この場合、記録条件は、記録装置を識別するための識別情報と対応付けて記録することが好ましい。
この態様によれば、記録装置の識別情報と、記録条件とが記録媒体に記録される。このため、記録装置によるデータパターンの記録が行われる際に、当該記録装置の識別情報と対応する記録条件を記録媒体から読み取り且つ記録手段の記録条件として用いることで、記録条件をわざわざ調整しなくても、記録媒体に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
また、記録媒体がブランクである等の理由により、記録媒体に記録条件が記録されていなかったとしても、本実施形態においては、上述したように記録補償動作を好適に行うことができる。そして、この結果得られる記録条件を、記録装置の識別情報と対応させて、記録媒体に記録しておけば、次にデータパターンを記録する際には、わざわざ記録条件を調整しなくても、記録媒体に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
つまり、この態様によれば、調整手段による記録条件の調整を行うことなく又は少なくとも1回記録条件の調整を行えば、対応する記録装置において、わざわざ記録条件を調整しなくても、記録媒体に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
(記録方法の実施形態)
本発明の記録方法に係る実施形態は、内周側エリア及び該内周側エリアの外周側に位置するユーザデータエリアを備える記録媒体に所望のデータパターンを記録する記録手段を備える記録装置における記録方法であって、前記記録手段により前記データパターンが記録されることが予定される前記ユーザデータエリア内のエリア部分である記録予定エリア部分に前記データパターンを記録する前に、前記記録予定エリア部分に前記データパターンを記録する際に用いられる最適パワーを算出する第1算出工程と、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記最適パワーで前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御する第1制御工程と、前記第1制御工程の制御により記録された前記データパターンを読み取ることで、前記記録予定エリア部分の記録感度と前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分の記録感度との差異を考慮して、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分において前記記録手段の記録条件を調整する際に用いられる調整用パワーを算出する第2算出工程と、前記記録予定エリア部分の外周側の端部よりも更に外周側のエリア部分に、前記調整用パワーで前記記録条件を調整するための前記データパターンを記録するように前記記録手段を制御する第2制御工程と、前記第2制御工程の制御により記録された前記データパターンを読み取ることで読取信号を取得する読取工程と、前記読取信号のジッタを測定する測定工程と、前記測定工程により測定される前記ジッタが所望の条件を満たすように前記記録条件を調整する調整工程と、前記最適パワー及び前記調整工程により調整された前記記録条件を用いて、前記記録予定エリア部分への前記データパターンの記録を開始するように記録手段を制御する第3制御工程とを備える。
本発明の記録方法に係る実施形態によれば、上述した本発明の記録装置に係る実施形態が享受することができる各種効果と同様の効果を享受することができる。
尚、上述した本発明の記録装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明の記録方法に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされよう。
以上説明したように、本発明の記録装置に係る実施形態によれば、記録手段と、第1算出手段と、第1制御手段と、第2算出手段と、第2制御手段と、読取手段と、測定手段と、調整手段と、第3制御手段とを備える。本発明の情報記録方法に係る実施形態によれば、第1算出工程と、第1制御工程と、第2算出工程と、第2制御工程と、読取工程と、測定工程と、調整工程と、第3制御工程とを備える。従って、より好適な態様で記録補償動作を行うことにより、より好適にストラテジを最適化することができる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(1)第1実施例
初めに、図1から図21を参照して、本発明の記録装置に係る第1実施例について説明する。
(1−1)基本構成
初めに、図1を参照して、第1実施例に係る記録装置の基本構成について説明を進める。ここに、図1は、第1実施例に係る記録装置1の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施例に係る記録装置1は、スピンドルモータ10と、ピックアップ(PU:Pick Up)11と、HPF(High Pass Filter)12と、A/D変換器13と、プリイコライザ(Pre Equalizer)14と、2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ調整回路21と、CPU22とを備えている。
ピックアップ11は、本発明における「記録手段」及び「読取手段」の一具体例を構成しており、スピンドルモータ10によって回転する光ディスク100の記録面にレーザ光LBを照射した際の反射光を光電変換して、光ディスク100に記録されたデータパターに応じた読取信号RRFを生成する。また、ピックアップ11は、記録ストラテジ設定回路21において設定される記録ストラテジに応じたレーザ光LBを光ディスク100の記録面に照射することで、光ディスク100に対してデータパターンを記録する。
HPF12は、ピックアップ11より出力される読取信号RRFの低域成分を除去し、その結果得られる読取信号RHCをA/D変換器13へ出力する。
A/D変換器13は、不図示のPLL(Phased Lock Loop)等から出力されるサンプリングクロックに応じて読取信号RRFをサンプリングし、その結果得られる読取サンプル値系列RSをプリイコライザ14へ出力する。
プリイコライザ14は、ピックアップ11及び光ディスク100から構成される情報読取系の伝送特性に基づく符号間干渉を除去し、その結果得られる読取サンプル値系列RSCを2値化回路16、遅延回路18の夫々へ出力する。
2値化回路16は、読取サンプル値系列RSCに対して2値化処理を行い、その結果得られる2値化信号を復号回路17及びパターン判別回路19の夫々へ出力する。
復号回路17は、2値化信号に対して復号処理等を行い、その結果得られる再生信号を、ディスプレイやスピーカ等の外部再生機器へ出力する。その結果、光ディスク100に記録されたデータパターンに応じたデータ(例えば、映像データや音声データ等)が再生される。
遅延回路18は、2値化回路16及びパターン判別回路20の夫々における処理に要する時間に相当する遅延を読取サンプル値系列RSCに付加した後に、該読取サンプル値系列RSCを平均化回路19へ出力する。つまり、遅延回路18の動作により、プリイコライザ14から出力される読取サンプル値系列RSC中の各サンプル値が、該サンプル値のデータパターン判別結果が入力されるタイミングと同一のタイミングで平均化回路19へ入力される。
平均化回路19は、本発明における「測定手段」の一具体例を構成しており、読取サンプル値系列RSCのジッタを測定する。平均化回路19の詳細については、後に詳述する(図9参照)。
パターン判別回路20は、本発明における「検出手段」の一具体例を構成しており、2値化回路16から出力される2値化信号に基づいて、データパターンの判別を行う。つまり、パターン判別回路20に入力される2値化信号が、どのデータパターンの2値化信号であるかを判別する。判別結果は、平均化回路19へ出力される。
記録ストラテジ調整回路21は、本発明における「調整手段」の一具体例を構成しており、平均化回路19において測定されたジッタに基づいて、データパターン毎の記録ストラテジを調整する。つまり、記録補償動作を行う。
CPU22は、本発明における「第1制御手段」、「第2制御手段」、「第3制御手段」、「第1算出手段」及び「第2算出手段」の一具体例を構成しており、記録装置1を構成する上述の各種構成要素を制御することにより、記録装置1の全体の動作を制御する。
(1−2)光ディスク
続いて、図2を参照して、第1実施例に係る記録装置1の記録動作の対象となる光ディスク100の基本構成について説明する。ここに、図2は、光ディスク100の基本構造を示した概略平面図であり、該光ディスク100の半径方向における記録領域構造の図式的概念図である。
図2に示されるように、光ディスク100は、例えば、DVDと同じく直径12cm程度のディスク本体上の記録面に、センターホール101を中心として、本発明における「内周側エリア」の一具体例を構成する内周側PCA(Power Calibration Area)111、RMA(Recording Management Area)112、リードインエリア113、本発明における「ユーザデータエリア」の一具体例を構成するデータ記録エリア114、リードアウトエリア115及び外周側PCA116が設けられている。そして、例えばセンターホール101を中心にスパイラル状或いは同心円状に、例えばグルーブトラック及びランドトラックが交互に設けられている。また、このトラック上には、データパターンがECCブロックという単位で分割されて記録される。ECCブロックは、エラー訂正可能なデータ管理単位である。また、本実施例においては、光ディスク100は、一度のみデータパターンを記録することが可能な追記型記録媒体であることが好ましい。
そして、グルーブトラックは、一定の振幅及び空間周波数で揺動されている。即ち、グルーブトラックは、ウォブリングされており、そのウォブルの周期は所定値に設定されている。ランドトラック上にはプリフォーマットアドレスを示すランドプリピット(LPP:Land Pre Pit)と呼ばれるピットが形成されている。この2つのアドレッシング(即ち、ウォブル及びランドプリピット)により記録中のディスク回転制御や記録クロックの生成を行うと共に、記録アドレス等のデータパターン記録に必要な情報を得ることができる。尚、グルーブトラックのウォブルを周波数変調や位相変調など所定の変調方式により変調することによりプリフォーマットアドレスを予め記録するようにしてもよい。
尚、第1実施例においては、光ディスク100は、外周側に進むにつれて線速度が高速になるZCLV(Zone Constant Linear Velocity)を採用していることが好ましい。但し、他の方式(例えば、CLVや、CAV(Constant Angular Velocity)や、ZCAV(Zone CAV)等)を採用してもよい。
また、図4及び図5を参照しながら後に詳述するが、第1実施例においては、光ディスク100は、上述した各エリアのうちリードインエリア113がプリ記録されていてもよいし、或いはプリ記録されていなくともよい。
リードインエリア113がプリ記録されている場合には、リードインエリア113中のCDZ(Control Data Zone)に、データ記録エリア114の最外周側の端部のアドレスであるLRA(Last Recorded Address)がプリ記録されていてもよい。つまり、データ記録エリア114の大きさが予め定められているように構成してもよい。また、ランドプリピットもLRAを示すことができるが、この場合、CDZにプリ記録されているLRAとランドプリピットが示すLRAとは一致する。
他方で、リードインエリア113がプリ記録されていない場合には、データ記録エリア114の大きさは予め定められていないように構成してもよい。この場合、データ記録エリア114にデータパターンが記録された後、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されたエリア部分の最外周側の端部のアドレスが、LRAとしてCDZ中に記録される。また、リードアウトエリア115は、データ記録エリア114のうちデータパターンが記録されたエリア部分の最外周側の端部から外周側に広がるように形成される。他方で、リードインエリア113がプリ記録されていない場合であっても、ランドプリピットは、予めデフォールトのデータ記録エリア114の最外周側の端部のアドレスであるLRAを示している。この場合、CDZ中に記録されるLRAとランドプリピットが示すLRAとは一致しないことがある。
このように、リードインエリア113がプリ記録されているか否かに応じて、データ記録エリア114の最外周側の端部の位置が変動し得るが、第1実施例においては、リードインエリア113の最外周側の端部からランドプリピットが示すLRAが示す位置までの間のエリア部分が、本発明における「ユーザデータエリア」の一具体例に相当するものとして説明を進める。言い換えれば、リードインエリア113の最外周側の端部からランドプリピットが示すLRAが示す位置までの間のエリア部分が、データ記録エリア114に相当するものとして説明を進める。
もちろん、リードインエリア113がプリ記録されているか否かに関わらず、上述したエリア構成を有する光ディスク100であれば、後述する動作を行うことで、後述する効果を得ることができることは言うまでもない。
(1−3)動作例
続いて、図3を参照して、第1実施例に係る記録装置1の動作例(特に、記録補償動作)について説明する。ここに、図3は、第1実施例に係る記録装置1の動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
初めに、データ記録エリア114へのデータパターンの記録前に(或いは、ある線速度で初めて記録を行う前に)、CPU22の動作により、現在適用されている線速度が、記録補償動作を行うためのデータパターンの記録を内周側PCA111において行うことが可能な線速度であるか否かが判定される(ステップS101)。
ステップS101における判定の結果、現在適用されている線速度が、記録補償動作を行うためのデータパターンの記録を内周側PCA111において行うことが可能な線速度であると判定された場合には(ステップS101:Yes)、CPU22の動作により、内周側PCA111が、記録補償動作を行うためのエリア部分(つまり、記録補償エリア)に設定される(ステップS102)。その後、内周側PCA111又は外周側PCA116においてOPCが行われる(ステップS103)。その後、ステップS103におけるOPCにより算出された最適パワーのレーザ光で、ステップS102において設定された記録補償エリアにデータパターンが記録されることにより、記録補償動作が行われる(ステップS109)。尚、記録補償動作については、図9を参照しながら、後に詳述する。
他方、ステップS101における判定の結果、現在適用されている線速度が、記録補償動作を行うためのデータパターンの記録を内周側PCA111において行うことが可能な線速度でないと判定された場合には(ステップS101:No)、続いて、CPU22の動作により、記録予定のデータパターンを記録するために必要なエリア部分が算出される(ステップS104)。言い換えれば、記録予定のデータパターンのサイズが算出される。更に言い換えれば、データ記録エリア114のうちデータパターンが記録されることが予定されるエリア部分が識別される。
その後、CPU22の動作により、ステップS104における算出結果に基づいて、データパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在するか否かが判定される(ステップS105)。
ステップS105における判定の結果、データパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在すると判定された場合には(ステップS105:Yes)、CPU22の動作により、データ記録エリア114のうちデータパターンが記録される予定のないエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される(ステップS106)。つまり、データ記録エリア114のうちデータパターンが記録される予定であるエリア部分(つまり、記録予定エリア部分)の外周側の端部よりも外周側のエリア部分であって且つデータ記録エリア114中に存在するエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。
他方、ステップS105における判定の結果、データパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在しないと判定された場合には(ステップS105:No)、CPU22の動作により、データ記録エリア114よりも外周側のエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される(ステップS106)。
ここで、図4及び図5を参照しながら、図3のステップS106及びステップS107における記録補償動作を行うためのエリア部分の設定動作についてより詳細に説明を進める。ここに、図4は、リードインエリア113がプリ記録されている光ディスク100を対象とする、記録補償動作を行うためのエリア部分の設定の例を概念的に示すエリア構造図であり、図5は、リードインエリア113がプリ記録されていない光ディスク100を対象とする、記録補償動作を行うためのエリア部分の設定の例を概念的に示すエリア構造図である。
図4(a)に示すように、リードインエリア113がプリ記録されている光ディスク100においては、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在する場合には、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。言い換えれば、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部よりも外周側のエリア部分であって且つCDZにプリ記録されたLRAが示すエリア部分よりも内周側のエリア部分(より具体的には、その一部)が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。
図4(b)に示すように、リードインエリア113がプリ記録されている光ディスク100においては、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在しない場合には、データ記録エリア114よりも外周側のエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。言い換えれば、CDZにプリ記録されたLRAが示すエリア部分よりも外周側のエリア部分(より具体的には、その一部)が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。
図5(a)に示すように、リードインエリア113がプリ記録されていない光ディスク100においては、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在する場合には、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。言い換えれば、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部よりも外周側のエリア部分であって且つランドプリピットが示すLRA(つまり、ランドプリピットにアサインされたLRA)が示すエリア部分よりも内周側のエリア部分(より具体的には、その一部)が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。この場合、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないエリア部分は、本来であれば、リードアウトエリア属性を有するパディングデータパターン(例えば00hデータパターン)等でパディングされ、再生装置に対してはリードアウトエリア115として扱われる。第1実施例においては、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないエリア部分であって且つ記録補償動作に使用されないエリア部分のみが、リードアウトエリア属性を有するパディングデータパターンでパディングされる。
図5(b)に示すように、リードインエリア113がプリ記録されていない光ディスク100においては、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されないエリア部分がデータ記録エリア114中に存在しない場合には、データ記録エリア114よりも外周側のエリア部分(より具体的には、その一部)が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。言い換えれば、ランドプリピットが示すLRAが示すエリア部分よりも外周側のエリア部分が、記録補償動作を行うためのエリア部分に設定される。
尚、データ記録エリア114中に記録補償動作を行うためのエリア部分を設定する際には、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部との位置関係を考慮しながら、記録補償動作を行うためのエリア部分を設定することが好ましい。このような設定動作について、図6を参照しながらより詳細に説明する。ここに、図6は、記録補償動作を行うためのエリア部分の設定の他の例を概念的に示すエリア構造図である。
図6(a)に示すように、記録補償動作を行うためのエリア部分は、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部に相対的に近接するように設定されることが好ましい。言い換えれば、記録補償動作を行うためのエリア部分は、CDZにプリ記録された又はランドプリピットが示すLRAが示すデータ記録エリア114の外周側の端部よりも、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部の方に近接するように設定されることが好ましい。
或いは、図6(b)に示すように、記録補償動作を行うためのエリア部分は、記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部に隣接するように設定されることが好ましい。
但し、図6(b)に示すように、記録補償動作を行うためのエリア部分は、記録補償動作を行うためのエリア部分と記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分の外周側の端部との間に、所定の大きさ(例えば、1ECCブロックから数ECCブロック程度)の空きスペースが設けられるように設定されることが好ましい。
再び図3において、その後、記録補償動作を行うためのレーザ光LBのパワーが算出される(ステップS108)。
ここで、図7を参照して、記録補償動作を行うためのレーザ光LBのパワーの算出動作について説明する。ここに、図7は、記録補償動作を行うためのレーザ光LBのパワーの算出動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図7に示すように、初めに、CPU22の制御の下に、内周側PCA111においてAOPC動作が行われる(ステップS301)。これにより、記録予定エリア部分に記録されるべきデータに応じたデータパターンを記録する際に用いられる最適パワーが算出される。
尚、AOPC動作は、光ディスク100の記録面の特性の相違(例えば、内周側、中周側及び外周側の夫々の感度の相違)や線速度の相違等を考慮することにより、内周側PCA111又は外周側PCA116において実現不可能な線速度(例えば、記録速度が8xに相当する線速度)でのレーザ光LBの最適パワーを、内周側PCA111又は外周側PCA116におけるOPC動作により算出する動作である。つまり、光ディスク100の外周側に向かうほど線速度が増加する一方で、相対的に低速な線速度しか実現できない内周側PCA111でOPCが行われるという不都合を解消するための、特別なOPC動作である。このAOPCによれば、内周側PCA111において行われるOPCの結果に基づいて、光ディスク100の全面に渡る記録特性を実質的に推測することができる。ここで、光ディスク100の外周側に向かうほど線速度が増加することを考慮すれば、光ディスク100の半径位置と線速度とを対応付けることにより、光ディスク100上で実現可能な線速度に対応する記録特性を実質的に推測することができる。その結果、光ディスク100の任意のエリア部分にデータパターンを記録する際に(言い換えれば、任意の線速度でデータパターンを記録する際に)用いられる最適パワーを推測することができる。詳細は、国際公開第WO2005/043515号パンフレットを参照されたい。
但し、AOPCに限らずとも、内周側PCA111又は外周側PCA116において実現不可能な線速度(例えば、記録速度が8xに相当する線速度)でのレーザ光LBの最適パワーを、内周側PCA111又は外周側PCA116におけるOPC動作又はその他の演算により算出する動作であれば、ステップS108の動作として採用することができる。例えば、内周側PCA111及び外周側PCA116の夫々においてOPCを行うと共に、これら2つのPCAで行われたOPCの結果から、これら2つのPCAの間に位置するエリア部分にデータパターンを記録する際に用いられる最適パワーを、補間処理等により算出するように構成してもよい。
その後、CPU22の制御の下に、ステップS301におけるAOPCにより算出された最適パワーで、記録補償エリアにデータパターンが記録される(ステップS302)。その後、記録されたデータパターンは読み取られ、記録特性(例えば、ジッタやアシンメトリ等)が測定される。
その後、CPU22の制御の下に、記録予定エリア部分の記録感度と、記録補償エリアの記録感度との差異が算出される(ステップS303)。具体的には、ステップS301におけるAOPCの結果は、記録予定エリア部分の記録感度を直接的に又は間接的に示しており、ステップS302におけるデータパターンの記録の結果は、記録補償エリアの記録感度を直接的に又は間接的に示している。このため、ステップS301における結果と、ステップS302における結果とを比較することで、記録予定エリア部分の記録感度と、記録補償エリアの記録感度との差異を算出することができる。ここでは、記録予定エリア部分の記録感度と、記録補償エリアの記録感度との差異が直接的に算出されてもよい。或いは、記録予定エリア部分の記録感度と記録補償エリアの記録感度との差異が、記録予定エリア部分の記録特性と記録補償エリアの記録特性との差異により間接的に示されることを考慮して、記録予定エリア部分の記録特性と記録補償エリアの記録特性との差異を算出することで、記録予定エリア部分の記録感度と記録補償エリアの記録感度との差異が間接的に算出されてもよい。
その後、CPU22の制御の下に、記録予定エリア部分の記録感度と、記録補償エリアの記録感度との差異に基づいて、記録補償エリアで記録補償動作を行う際に用いられる記録補償動作を行うためのレーザ光LBのパワーが算出される(ステップS304)。
ここで、図8を参照して、記録補償エリアで記録補償動作を行う際に用いられるレーザ光LBのパワー(つまり、記録補償動作を行うためのレーザ光LBのパワー)の算出動作についてより詳細に説明する。ここに、図8は、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定であるエリア部分(記録予定エリア部分)における記録特性と、記録補償動作が行われるエリア部分(記録補償エリア)における記録特性とを概念的に示すグラフである。尚、図8では、「中周」が記録予定エリア部分に相当し、「外周」が記録補償エリアに相当するものとして説明を進める。
図8(a)には、一般的な光ディスク100の中周及び外周の夫々におけるジッタ対パワーの相関を示すグラフが示されている。図8(a)に示すように、中周と外周とでは、中周での記録感度と外周での記録感度との差異に起因して、最適パワー(言い換えれば、ジッタが最小となるパワー)が異なる。具体的には、中周での最適パワーが30mWである一方で、外周での最適パワーは31.5mWとなる。このため、AOPCで求められた最適パワー(つまり、図8(a)における中周での最適パワー)で記録補償エリア(つまり、図8(a)における外周)において記録補償動作を行ったとしても、最適な記録条件(つまり、記録ストラテジ)が得られるとは限らないと考えられる。
ここで、一般的な光ディスク100の中周及び外周の夫々におけるジッタ対アシンメトリの相関を示す図8(b)のグラフによれば、中周において記録するか又は外周において記録するか否かに関わらず、中周及び外周の夫々においてアシンメトリを同一にすれば、(例えば、概ね0にすれば)、ジッタが向上することが分かる。第1実施例では、このような特徴を有効に利用して、補償用パワーを算出する。具体的には、中周(記録予定エリア部分)での最適パワーのアシンメトリと同一のアシンメトリを外周(記録補償エリア)において実現するパワーを、記録補償動作を行うためのパワーとして算出する。
具体的には、ステップS302の動作により記録されたデータパターンを読み取ることで、図8(c)に示すように、外周(記録補償エリア)におけるパワー対アシンメトリの相関が得られる。ここで、中周での最適パワー(AOPCにより得られた最適パワー)が、アシンメトリが0となる30mWであるとする。この場合、同じパワーでは、外周(記録補償エリア)においてアシンメトリが−0.05に変化する。このため、内周(記録予定エリア部分)の記録感度と外周(記録補償エリア)の記録感度の差異(例えば、アシンメトリの差異)に応じて、中周(記録予定エリア部分)での最適パワーのアシンメトリと同一のアシンメトリ0を外周(記録補償エリア)において実現するパワーである31.4mWを、記録補償動作を行うためのパワーに設定する。
再び図3において、その後、記録補償動作が行われる(ステップS109)。より具体的には、ステップS101においてYesと判定された場合には、ステップS103のOPCにより算出されたパワーのレーザ光LBを用いて、ステップS102において設定された記録補償エリアにおいて記録補償動作が行われる。一方、ステップS101においてNoと判定され且つステップS105においてYesと判定された場合には、ステップS108により算出されたパワーのレーザ光LBで、ステップS106において設定された記録補償エリアにおいて記録補償動作が行われる。他方、ステップS101においてNoと判定され且つステップS105においてNoと判定された場合には、ステップS108により算出されたパワーのレーザ光LBで、ステップS107において設定された記録補償エリアにおいて記録補償動作が行われる。
記録補償動作の後、CPU22の制御の下に、設定された線速度にて記録が開始される(ステップS110)。つまり、ステップS103又は図7のステップS301において算出された最適パワーで且つステップS109において設定された最適記録条件(最適ストラテジ)のレーザ光LBを照射することで、データパターンの記録が開始される。その後、CPU22の動作により、記録動作を終了するか否かが判定される(ステップS111)。
ステップS111における判定の結果、記録動作を終了すると判定された場合には(ステップS111:Yes)、記録動作を終了する。
他方、ステップS111における判定の結果、記録動作を終了しないと判定された場合には(ステップS111:No)、続いて、CPU22の動作により、線速度が変更されるか否かが判定される(ステップS112)。
ステップS112における判定の結果、線速度が変更されると判定された場合には(ステップS112:Yes)、ステップS101へ戻り、ステップS101以降の動作が繰り返される。
他方、ステップS112における判定の結果、線速度が変更されないと判定された場合には(ステップS112:No)、ステップS111へ戻り、記録動作が継続される。
続いて、図9を参照して、図3のステップS109における記録補償動作についてより詳細に説明を進める。ここに、図9は、図3のステップS109における記録補償動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図9に示すように、初めに、CPU22の制御の下に、図3のステップS102、ステップS106又はステップS107において設定された記録補償動作を行うためのエリア部分に、データパターンが記録される(ステップS201)。ここで記録されるデータパターンは、記録補償動作を行うためのデータパターンであるが、OPCパターンのような特別なデータパターンではなく、データ記録エリア114に記録される通常のデータパターンと同様のデータパターンである。その後、平均化回路19の動作により、ジッタが測定される(ステップS202)。
ここで、図10及び図11を参照して、ジッタを測定する際の動作及びジッタを測定するための平均化回路19について説明する。ここに、図10は、平均化回路19によるジッタの測定動作を読取サンプル値系列RSC上で概念的に示す波形図であり、図11は、平均化回路19の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図10に示すように、第1実施例においては、平均値回路19は、ジッタを測定するために、まず、データパターン毎に、読取サンプル値系列RSCのゼロクロス点付近のサンプル値(図10中、黒丸にて示すサンプル値であって、以降適宜“ゼロクロスサンプル値”と称する)と、ゼロレベルとの間の差分(つまり、振幅方向のエッジシフト)を測定する。読取信号RRFに符号間干渉がなければ、クロックCLKのタイミングでゼロレベルと概ね一致するサンプル値がゼロクロスサンプル値となるが、読取信号RRFに符合間干渉があれば、クロックCLKのタイミングでゼロレベルに最も近づくサンプル値がゼロクロスサンプル値となる。
このような動作を行うために、平均値回路19は、図11に示すように、トリガ生成部1911と、トータルジッタ測定ブロック191と、n個の個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nと、全体シフトジッタ成分測定回路193とを備えている。個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nの数は、データパターンの種類の組み合わせ数と一致している。つまり、光ディスク100がDVDであれば、データランレングス長は10種類(3Tから11T、14T)ある。各マーク長に対し、前後のスペース長の組み合わせパターンで個別シフトジッタを分類することができる。例えば、前スペース長と各マーク長の組み合わせは、100通り、後スペース長と各マーク長の組み合わせも、100通りあり、全部でn=200通りになる。有効瞳径とデータランレングスを鑑み、6T以上のマーク/スペースとの組み合わせパターンでは同一の符号間干渉が発生する為、6T以上のデータを同一グループとして扱うと、n=32に減らすことができる。光ディスク100がBlu−ray Discであれば、データランレングス長は8種類(2Tから9T)あり、各マーク長に対する前後スペース長の組み合わせパターンn=8*8*2=128通りになる。DVD同様、有効瞳径とデータランレングスを鑑み、5T以上のデータを同一グループとして扱うと、n=32に減らすことができる。そして、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nは、夫々が対応するデータパターンの個別シフトジッタ成分を測定する。
遅延回路18より出力される読取サンプル値系列RSCは、ABS回路1912、並びにn個の加算器1923−1〜1923−nに入力される。また、パターン判別回路20より出力されるパターン判別結果は、トリガ生成部1911に入力される。
トリガ生成部1911においては、パターン判別回路20より出力されるパターン判別結果に応じて、データパターン毎に区別されると共にデータパターンが入力されるタイミングでハイレベル(又はローレベル)になるトリガ信号を生成する。トリガ信号は、OR回路1917、n個のサンプルホールド(S/H)回路1924−1〜19124−n、及びn個のカウンタ1925−1〜1925−nに入力される。
続いて、トータルジッタ測定ブロック191の動作について説明する。ABS回路1912より出力されるゼロクロスサンプル値の絶対値は、加算器1912において加算される。加算結果は、サンプルホールド回路1914において、いずれかのトリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となるタイミングで(つまり、いずれかのデータパターンがトータルジッタ測定ブロック191に入力されるタイミングで)サンプルホールドされる。その結果は、割算器1916へ出力されると共に、加算器1913へフィードバックされる。このため、割算器1916へは、全データパターンのゼロクロスサンプル値の絶対値の和が出力される。他方、カウンタ1915において、トリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となった回数(つまり、トータルジッタ測定ブロック191に入力されたデータパターンの数)がカウントされている。カウント結果は、割算器1916へ出力される。割算器1916においては、ゼロクロスサンプル値の絶対値の和が、入力されたデータパターンの数で除算される。その結果、ゼロクロスサンプル値の絶対値の平均値が出力される。本実施例においては、ゼロクロスサンプル値の絶対値の平均値が、トータルジッタ(つまり、ランダムジッタ成分とシフトジッタ成分とを考慮した全体としてのジッタ)となる。
続いて、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nの動作について説明する。ここでは、光ディスク100がDVDであり、ランレングスが3Tスペースの後の3Tマークのデータパターンのゼロクロスサンプル値に対応する個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1の動作について説明する。加算器1923−1とサンプルホールド回路1924−1の作用により、ランレングスが3Tスペースの後の3Tマークのデータパターンに対応するトリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となるタイミングで(つまり、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプルが個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1に入力されるタイミングで)、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプルがサンプルホールドされる。その結果は、割算器1926−1へ出力されると共に、加算器1923−1へフィードバックされる。つまり、加算器1923−1においては、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値のみが積算され、割算器1926−1へは、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値の和が出力される。他方、カウンタ1925−1において、トリガ信号がハイレベル(又はローレベル)となった回数(つまり、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1に入力された3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプルの数)N(1)がカウントされている。カウント結果は、割算器1926−1へ出力される。割算器1926−1においては、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値の和が、入力されたN(1)で除算される。その結果、3Tスペース後の3Tマークの境界ゼロクロスサンプル値の平均値S(1)が出力される。この動作は、他の個別シフトジッタ成分測定ブロック192−2〜192−nにおいても、対応するデータパターン毎に行われる。本実施例においては、データパターン毎のゼロクロスサンプル値の平均値が、個別シフトジッタ成分S(1)〜S(n)となる。
データパターン毎の個別シフトジッタ成分S(1)〜S(n)は、全体シフトジッタ成分測定回路193へも出力される。また、トリガ信号がハイレベルとなった回数N(1)〜N(n)もまた、全体シフトジッタ成分測定回路193へ出力される。全体シフトジッタ成分測定回路193においては、数式1に示す演算処理を行うことで、データパターン毎の個別シフトジッタ成分の出現確率を考慮した、全体としてのシフトジッタ成分が出力される。
再び図9において、続いて、CPU22の制御の下に、ステップS202において測定されたジッタのうちの個別シフトジッタ成分が、第1閾値よりも小さいか否かが判定される(ステップS203)。この判定は、データパターン毎に行われる。つまり、この判定は、個別シフトジッタ成分測定ブロック192−1〜192−nにおいて測定された個別シフトジッタ成分の夫々について行われる。具体的には、光ディスク100がDVDであり、6T以上を同一グループとして扱うと、3Tマークについては、前スペースのランレングスが3Tのデータパターンにおける判定と、前スペースのランレングスが4Tのデータパターンにおける判定と、前スペースのランレングスが5Tのデータパターンにおける判定と、前スペースのランレングスが6T以上のデータパターンにおける判定とが行われる。同様に、4T以上のマークについても、前スペースが3T、4T、5T、6T以上のデータパターンにおける判定が行われる。3T、4T、5T、6T以上のマークに対して、後スペースのランレングスが3T、4T、5T、6T以上のデータパターンにおける判定が行われる。6T以上を統一グループとして扱ったが、タンジェンシャルチルトによるコマ収差等の影響まで記録補償するのであれば、その影響のでるデータパターンまで扱っても良いし、3Tから11T、14Tを個別に扱っても良い。他方、光ディスク100がBlu−ray Discであり、5T以上を同一グループとして扱うと、2T、3T、4T、5T以上のマークについては、前スペースまたは後スペースが2T、3T、4T、5T以上のデータパターンにおける判定が行われる。5T以上を統一グループとして扱ったが、DVD同様、タンジェンシャルチルトによるコマ収差等の影響まで記録補償するのであれば、その影響のでるデータパターンまで扱っても良いし、2Tから9Tを個別に扱っても良い。
尚、第1閾値は、全てのデータパターンに共通の値を用いてもよいし、データパターン毎に(或いは、複数のデータパターンを含むグループ毎に)個別の値を用いてもよい。また、具体的な第1閾値の値は、例えば、ジッタに占めるランダムジッタ成分の比率が所定値(例えば、後述するように概ね80%)以上となる状態を実現できるように設定されることが好ましい。尚、トータルジッタに対するランダムジッタ成分の比率が概ね80%以上となるように記録補償動作を行ってもよいが、トータルジッタをより多く低減するためには、トータルジッタに対するランダムジッタ成分の比率が概ね90%以上となるように記録補償動作を行ってもよい。
ステップS203における判定の結果、少なくとも1つの又は全てのデータパターンのシフトジッタ成分が第1閾値よりも小さいと判定された場合には(ステップS203:Yes)、動作を終了する。
他方、ステップS203における判定の結果、少なくとも1つの又は全てのデータパターンのシフトジッタ成分が第1閾値よりも小さくないと判定された場合には(ステップS203:No)、記録補償動作であるストラテジの調整動作が行われる(ステップS204)。
ここでは、第1閾値よりも小さくないと判定されたシフトジッタ成分に対応するデータパターンに対して記録補償を行ってもよいし、第1閾値よりも小さくないと判定されたシフトジッタ成分に対応するデータパターンに加えて、第1閾値よりも小さいと判定されたシフトジッタ成分に対応するデータパターンに対しても記録補償を行ってもよい。
ここで、図12を参照して、図9のステップS204における記録補償動作について説明する。ここに、図12は、記録補償前のデータパターン毎のジッタ分布及び全体としてのジッタ分布、並びに記録補償後のデータパターン毎のジッタ分布及び全体としてのジッタ分布の夫々の状態を概念的に示すグラフである。データパターン毎の分布の平均値が個別シフトジッタ成分となる。
図12に示すように、第1実施例においては、データパターン毎の個別シフトジッタ成分のばらつきをなくすような記録補償動作が行われる。より具体的には、図12の左側に示すように、データパターン毎のジッタの分布が、縦方向の矢印にて示すクロックの立ち上がり点を基準としてばらつきを有している場合には、図12の右側に示すように、データパターン毎のジッタの分布がクロックの立ち上がり点に向かってシフトするように、記録補償動作が行われる。言い換えれば、データパターン毎のジッタの分布が、クロックの立ち上がり点において又はその近傍付近において揃うように、記録補償動作が行われる。更に言い換えれば、データパターン毎のジッタの分布が同一となるように、記録補償動作が行われる。その結果、全体としてのジッタの分布(つまり、トータルジッタの分布)は、クロックの立ち上がり位置等を中心として正規分布となる。つまり、本実施例における記録補償動作においては、データパターン毎のジッタの分布の幅を狭くすることに代えて(言い換えれば、ランダムジッタ成分を低減することに代えて)、データパターン毎のジッタの分布の平均値をそろえている。これは、データパターン毎の個別シフトジッタ成分を低減させる動作に相当する。
データパターン毎の個別シフトジッタ成分を低減するために、記録ストラテジ調整回路21は、例えば図13から図15に示すように記録ストラテジを調整する。ここに、図13は、記録ストラテジの調整動作の第1の態様を概念的に示すタイミングチャートであり、図14は、記録ストラテジの調整動作の第2の態様を概念的に示すタイミングチャートであり、図15は、記録ストラテジの調整動作の第3の態様を概念的に示すタイミングチャートである。
例えば、図13に示すように、データパターン(記録データ)を記録するためのレーザ光の波形を規定する記録パルス(つまり、記録ストラテジ)のパルス幅を調整するように構成してもよい。
また、図14に示すように、データパターン(記録データ)を記録するためのレーザ光の波形を規定する記録パルス(つまり、記録ストラテジ)の振幅(例えば、トップパルスの振幅Poや、ミドルパルスの振幅Pmや、バイアスパワーの振幅Pb)を調整するように構成してもよい。ここでは、図14の一番上の記録パルスにて示すように、ランレングスが3T及び4Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが5T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。或いは、図14の上から2番目の記録パルスにて示すように、ランレングスが3Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが4Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが5Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが6T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。或いは、図14の上から3番目の記録パルスにて示すように、ランレングスが3Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが4Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが5T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。或いは、図14の上から4番目の記録パルスにて示すように、ランレングスが3Tのデータパターンに対応する記録パルスの振幅と、ランレングスが4T以上のデータパターンに対応する記録パルスの振幅とを別々に調整してもよい。
また、図15に示すように、記録パルスがキャッスル型以外であっても、図14に示す場合と同様に、データパターン(記録データ)を記録するためのレーザ光の波形を規定する記録パルス(つまり、記録ストラテジ)の振幅を調整するように構成してもよい。
もちろん、図13に示すような記録パルスのパルス幅の調整と、図14及び図15に示すような記録パルスの振幅の調整とを適宜組み合わせることで、記録ストラテジの調整を行ってもよいことは言うまでもない。
以上説明したように、本実施例に係る記録装置1によれば、記録補償動作を行うことで、トータルジッタを低減することができる。ここで、図16を参照して、トータルジッタの低減効果について説明する。ここに、図16は、記録補償動作を行うことなく記録されたデータパターンのトータルジッタ及び第1実施例に係る態様で記録補償動作を行った後に記録されたデータパターンのトータルジッタを概念的に示すグラフである。
図16に示すように、記録補償動作を行わない記録装置では、トータルジッタのばらつきが大きい。他方で、記録補償動作を行う記録装置では、記録補償動作を行わない記録装置と比較して、トータルジッタが低減されると共に、トータルジッタのばらつきが小さくなるないしは殆どなくなる。
特に、第1実施例においては、記録補償動作を行う前に(言い換えれば、記録条件を調整するためのデータパターンを記録する前に)、記録予定エリア部分の記録感度と記録補償動作エリアの記録感度との差異を考慮して、記録補償動作を行うためのパワーが算出される。
ここで、図17及び図18を参照して、記録感度の差異を考慮して記録補償動作を行うためのパワーを算出した後に記録補償動作を行った場合の記録特性と、記録感度の差異を考慮することなくOPCで算出された最適パワーを算出した後に記録補償動作を行った場合の記録特性とについて説明する。ここに、図17は、記録感度の差異を考慮することなくOPCで算出された最適パワーを算出した後に記録補償動作を行った場合の記録特性を概念的に示すグラフであり、図18は、記録感度の差異を考慮して記録補償動作を行うためのパワーを算出した後に記録補償動作を行った場合の記録特性を概念的に示すグラフである。
図17のグラフにおいて、「記録補償なし」で示されるグラフは、記録補償を行うことなく中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合の記録特性を示している。「記録補償あり」で示されるグラフは、中周(記録予定エリア)において記録補償を行った後に中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合の記録特性を示している。「記録補償あり(外周)」で示されるグラフは、記録感度の差異を考慮することなく外周(記録補償エリア)で記録補償を行った後に中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合の記録特性を示している。図17に示すように、記録感度の差異を考慮することなく外周(記録補償エリア)で記録補償を行った後に中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合には、中周(記録予定エリア部分)で最適なパワー(つまり、30mWのパワー)により得られる記録特性(ジッタ)は悪化している。
図18のグラフにおいて、「記録補償なし」で示されるグラフは、記録補償を行うことなく中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合の記録特性を示している。「記録補償あり」で示されるグラフは、中周(記録予定エリア)において記録補償を行った後に中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合の記録特性を示している。「記録補償あり(外周)」で示されるグラフは、記録感度の差異を考慮して外周(記録補償エリア)で記録補償を行った後に中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合の記録特性を示している。図18に示すように、記録感度の差異を考慮して外周(記録補償エリア)で記録補償を行った後に中周(記録予定エリア部分)にデータパターンを記録した場合には、中周(記録予定エリア部分)で最適なパワー(つまり、30mWのパワー)により得られる記録特性(ジッタ)は悪化していないことが分かる。
まとめると、記録感度の差異を考慮することなく、記録予定エリア部分での最適パワーを用いて、記録予定エリア部分よりも外周側の記録補償エリアで記録補償動作を行うとすると、記録予定エリア部分での最適パワーが、記録補償エリアにおいても最適であるとは限らない。このため、記録補償エリアにおいて最適でないパワーで記録補償動作が行われることになりかねない。これは、記録条件の好適な調整を行うという目的から見れば好ましくない。しかるに、第1実施例では、記録感度の差異を考慮して、記録補償動作を行うためのレーザ光LBのパワーが算出されるため、記録補償エリアにおいて最適なパワーで記録補償動作が行われる。その一方で、実際に記録予定エリア部分にデータパターンを記録する際には、記録予定エリアにおける最適パワーが用いられるため、記録予定エリア部分にデータパターンを好適に記録することができる。つまり、データパターンの記録品質を悪化させることなく、データパターンを記録することができる。
加えて、第1実施例においては、最内周側PCA111又は最外周側PCA116と比較して、実際にデータパターンが記録されるデータ記録エリア114のエリア部分により近いエリア部分で記録補償動作を行うことができる。このため、記録補償動作が行われるエリア部分の特性と実際にデータパターンが記録されるエリア部分との特性とが大きくかけ離れることはなくなる。これにより、最内周側PCA111又は最外周側PCA116において記録補償動作を行う場合と比較して、記録補償動作により最適化されたストラテジが、実際にデータパターンが記録されるデータ記録エリア114においても好適である又は最適である可能性が高くなる。つまり、より好適な態様で記録補償動作を行うことにより、より好適にストラテジを最適化することができる。従って、記録補償動作により最適化されたストラテジを用いて、データ記録エリア114にデータパターンを好適に記録することができる。
ここで、光ディスク100の記録面上の特性変化がジッタ等に与える影響について、図19から図21を参照して説明する。ここに、図19は、ジッタ及びアシンメトリと、光ディスク100の半径位置とを対応付けたグラフであり、図20は、感度変化の有無とジッタ及びアシンメトリとの関係を概念的に示すグラフであり、図21は、記録補償動作を行わない記録装置により記録されたデータパターンのトータルジッタ及びアシンメトリ並びに外周側PCA116で記録補償動作を行った記録装置1により記録されたデータパターンのトータルジッタ及びアシンメトリを、光ディスク100の半径位置と関連付けて概念的に示す波形図である。
図19に示すように、光ディスク100の外周側PCA116付近では、それ以外のエリア部分と比較して、記録特性が大きく変化している。これは、記録膜の厚さの変化に起因した記録感度の変化によるものであると考えられる。
ここで、光ディスク100の中周部分(言い換えれば、データ記録エリア114の中央付近)の感度を基準として、光ディスク上のエリア部分の記録感度をパーセンテージ(%)により示すとする。ここで、図20(a)は、あるエリア部分において記録補償動作を行った後に、同じエリア部分(言い換えれば、記録補償動作が行われたエリア部分)又はその付近にデータパターンを記録した際の、ジッタ及びアシンメトリの変化を示すグラフである。感度変化量が0%のエリア部分が光ディスク100の中周部分に相当し、感度変化量が−10%のエリア部分が概ね外周側PCA116に相当している。つまり、図20(a)の横軸の感度変化量は、光ディスク100の中周部分を基準とした場合の、記録補償動作を行ったエリア部分の記録感度(或いは、実際にデータパターンが記録されるエリア部分の記録感度)の変化量を示している。図20(a)に示すように、光ディスク100の記録面上で感度変化が発生していたとしても、記録補償動作を行ったエリア部分と同じ又は近接するエリア部分にデータパターンを記録する際には、ジッタが大きく変動することはない。具体的には、外周側PCA116に相当する感度変化量が−10%のエリア部分で記録補償動作を行ったとしても、そこで調整されたストラテジを用いて外周側PCA116にデータパターンを記録する限りは、ジッタは、概ね6.5%程度を維持している。
しかるに、記録補償動作を行ったエリア部分と異なる又は離れたエリア部分にデータパターンを記録する際には、ジッタが大きく変動しかねない。ここで、図20(b)は、あるエリア部分において、記録感度変化が生じた状態で記録補償動作を行った後に、感度変化量が0%の光ディスク100の中周部分にデータパターンを記録した際の、ジッタ及びアシンメトリの変化を示すグラフである。つまり、図20(b)の横軸の感度変化量は、実際にデータパターンが記録されるエリア部分の記録感度を基準とした場合の、録補償動作を行ったエリア部分の記録感度の変化量を示している。図20(b)に示すように、内周側PCA111において記録補償動作を行うことができないために外周側PCA116において記録補償動作を行うとすれば、外周側PCA116とは記録感度が10%程度異なるデータ記録エリア114の殆どのエリア部分において好適な記録を行うことができなくなってしまう。具体的には、外周側PCA116で記録補償動作を行った後に、そこで調整されたストラテジを用いて感度変化量が0%のエリア部分に相当するデータ記録エリア114にデータパターンを記録するとすれば、ジッタは、概ね11%を超えるまでに悪化してしまう。
このように、外周側PCA116で記録補償動作を行った後に、そこで調整されたストラテジを用いてデータ記録エリア116にデータパターンを記録すると、ジッタが悪化してしまうという事実は、図21に示すグラフからも明らかである。
しかるに、本実施例では、内周側PCA111において記録補償動作を行うことができない場合には、データ記録エリア114中で記録補償動作が行われる。従って、最内周側PCA111又は最外周側PCA116において記録補償動作を行う場合と比較して、記録補償動作により最適化されたストラテジが、実際にデータパターンが記録されるデータ記録エリア114においても好適である又は最適である可能性が高くなる。このため、光ディスク100の記録面上で感度変化が発生していたとしても、好適にストラテジを調整し且つ好適な記録動作を担保することができる。
尚、第1実施例では、上述した記録感度を考慮して記録補償動作を行うためのパワーを算出しているため、記録予定エリア部分と記録補償エリアとが離れた位置に存在していたとしても、特段の問題は生じないと考えられる。しかしながら、記録予定エリア部分の特性と記録補償エリアとの特性が近ければ近いほど好ましいという事実を考慮すれば、記録予定エリア部分と記録補償エリアとがより近接する関係にある方が好ましい。この点において、第実施例では、より一層好適な記録補償動作を行うことができるという大きな効果を享受することができる。
また、上述した背景技術では、データ記録エリア114のうちデータパターンが記録される予定のないエリア部分に、OPC用の特別なデータパターンが記録される。このため、特別なデータパターンが記録されるエリア部分と、データパターンが記録されるエリア部分とを近づけることは、該特別なデータパターンを再生装置が誤って読み取ってしまった場合に動作の暴走を招きかねないことを考慮すると、好ましくない。一方で、第1実施例によれば、記録補償動作を行うためには、データ記録エリア114のうち記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録される予定のないエリア部分に、通常のデータパターンが記録される。このため、通常のデータパターンが記録されるエリア部分を記録されるべきデータに応じたデータパターンが記録されるエリア部分に近づけることにより再生装置が該データパターンを読み取ってしまったとしても、動作の暴走を招くことはない。この点においても、第1実施例によれば、背景技術と比較して、十分に優れた効果を享受することができる。
(2)第2実施例
続いて、図22を参照して、本発明の記録装置に係る第2実施例について説明する。ここに、図22は、第2実施例に係る記録装置2の基本構成を概念的に示すブロック図である。尚、上述した第1実施例に係る情報記録再生装置1と同一の構成については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明については省略する。
図22に示すように、第2実施例に係る記録装置2は、第1実施例に係る記録装置1と同様に、スピンドルモータ10と、ピックアップ11と、HPF12と、A/D変換器13と、プリイコライザ14と、2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ設定回路21と、CPU22とを備えている。
第2実施例に係る記録装置2は特に、プリイコライザ14と遅延回路18及び2値化回路16との間にリミットイコライザ15を備えている。リミットイコライザ15は、本発明における「振幅制限フィルタリング手段」の一具体例を構成しており、符号間干渉を増加させることなく読取サンプル値系列RSCに対して高域強調処理を施し、その結果得られる高域強調読取サンプル値系列RSHを、2値化回路16及び遅延回路18の夫々へ出力する。尚、リミットイコライザ15の動作自体は、従来のリミットイコライザの動作と同一である。その詳細については、特許第3459563号等を参照されたい。
その結果、リミットイコライザ15の後段に位置する2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ調整回路21と、CPU22とは、読取サンプル値系列RSCに代えて、高域強調読取サンプル値系列RSHを用いて動作を行う。
このように、第2実施例によれば、リミットイコライザ15の出力(つまり、高域強調読取サンプル値系列RSH)を用いてパターン判別すると共に、記録補償動作を行っている。つまり、最短データパターンの振幅レベルが強調された状態でパターン判別すると共に、記録補償動作を行っている。仮に読取信号のアシンメトリがどのような状態であったとしても、読取信号中に含まれる最短データパターンがゼロレベルと交差なくなる状態を好適に防ぐことができる。その結果、最短データパターンの検出を好適に行うことができる。これにより、最短データパターンを含む読取信号を参照しながら、記録補償動作を好適に行うことができる。つまり、記録補償前の読取信号におけるアシンメトリの状態に関わらず、記録補償動作を好適に行うことができる。
(3)第3実施例
続いて、図23を参照して、本発明の記録装置に係る第3実施例について説明する。ここに、図23は、第3実施例に係る記録装置3の基本構成を概念的に示すブロック図である。尚、上述した第1実施例に係る情報記録再生装置1及び第2実施例に係る記録装置2と同一の構成については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明については省略する。
図23に示すように、第3実施例に係る記録装置3は、第2実施例に係る記録装置2と同様に、スピンドルモータ10と、ピックアップ11と、HPF12と、A/D変換器13と、プリイコライザ14と、リミットイコライザ15と、2値化回路16と、復号回路17と、遅延回路18と、平均化回路19と、パターン判別回路20と、記録ストラテジ設定回路21と、CPU22とを備えている。
第3実施例に係る記録装置3は特に、夫々が本発明における「付加手段」の一具体例を構成している、加算器23と、リファレンスレベル検出回路24とを備えている。
リファレンスレベル検出回路24は、実際に検出されたアシンメトリと、目標とするアシンメトリとの差分をオフセットOFSとして加算器23へ出力する。加算器では、リファンレンスレベル検出回路24より出力されるOFSが、リミットイコライザ15より出力される高域強調読取サンプル値系列RSHに加えられる。これにより、高域強調読取サンプル値系列RSHにおけるリファレンスレベルを所望の値に設定することができる。
尚、リファレンスレベル検出回路24において読取信号より検出する信号は、上述したアシンメトリに限らず、β値であってもよい。或いは、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号の振幅中心と、ランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号の振幅中心とのずれを示す部分β値であってもよい。或いは、全ての種類のランレングスの記録データ(例えば、光ディスク100がDVDであればランレングス3Tから11T及び14Tの夫々の記録データであり、光ディスク100がBlu−ray Discであればランレングス2Tから9Tの記録データ)に対応する夫々の読取信号の振幅中心(つまり、リファレンスレベルであり、本実施例においてはゼロレベル)に対する、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号の振幅中心の乖離率を示すα値であってもよい。
このような構成を採用することで、第3実施例に係る記録装置3は、リファレンスレベルを変更することができ、その結果、記録補償後の読取信号のアシンメトリを自由に設定することができる。従って、所望のアシンメトリで且つ最適なジッタ値を実現するような記録補償動作を行うことができる。例えば、光ディスク100がDVDであれば、アシンメトリが+5%付近となり且つジッタが最小となる状態を実現するような記録補償動作を行うことができる。同様に、光ディスクがBlu−ray Discであれば、アシンメトリが+2.5%付近となり且つジッタが最小となる状態を実現するような記録補償動作を行うことができる。
また、記録補償前の読取信号のアシンメトリに依存することなく、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるため、記録装置3や光ディスク100の個体差によるアシンメトリのばらつきがあったとしても、良好な記録補償動作を行うことができる。
また、検出されたアシンメトリと目標アシンメトリとの差分に相当するオフセットを加算する構成(つまり、記録補償前のアシンメトリにオフセットを加算することで、記録補償後に所望のアシンメトリを得る構成)を採用しているため、記録補償動作を複数回行うことで記録補償前のアシンメトリが変動する場合であっても、アシンメトリを所望の値に設定することができる。
更に、記録パワー(つまり、記録パルスの振幅)を調整してアシンメトリの調整を行う必要がなくなるため、記録条件の調整動作の簡素化を実現することができると共に、記録条件の調整動作に要する時間を短縮することができる。
尚、第3実施例においては、リミットイコライザ15から出力される高域強調読取サンプル値系列RSHを用いて記録補償動作を行っている。しかしながら、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるという観点からは、リミットイコライザ15から出力される高域強調読取サンプル値系列RSHを用いて記録補償動作を行う必要は必ずしもない。つまり、プリイコライザ14から出力される読取サンプル値系列RSCを用いて記録補償動作を行っても、記録補償後の読取信号のアシンメトリを所望の値に設定することができるという効果を享受することができることは言うまでもない。従って、第3実施例においては、リミットイコライザ15は必ずしも備えていなくともよい。
尚、記録補償動作の結果は、記録動作の都度適宜光ディスク100に記録されてもよい。つまり、ユーザによる記録動作が行われる際に適宜光ディスク100に記録されてもよい。或いは、光ディスク100の製造時に、エンボスピットやプリライト等により予め光ディスク100に記録されていてもよい。この場合、例えば図2において示したRMA112に記録されてもよいし、或いはリードインエリア113内のCDZ(Control Data Zone)に記録されてもよいし、或いは他のエリア部分に記録されてもよい。いずれの場合であっても、上述した効果を好適に享受することができる。この場合、記録補償動作の結果を示す情報を、記録補償動作を行った記録装置1(或いは、2又は3)を識別することができる識別情報と関連付けて記録することが好ましい。
このように、記録補償動作の結果を示す情報や記録補償動作を行った記録装置1を識別することができる識別情報を、光ディスク100に記録することで、記録装置1によるデータパターンの記録が行われる際に、当該記録装置1の識別情報と対応する記録補償動作の結果を光ディスク100から読み取ることができる。このため、読み取った記録補償動作の結果を用いて上述した記録条件を設定すれば、記録補償動作を行わなくても、光ディスク100に対する記録動作において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
また、当該記録装置1の識別情報と対応する記録補償動作の結果が光ディスク100に記録されていない場合であっても、当該記録装置1の識別情報に近い識別情報(言い換えれば、当該記録装置1の特性と似ている他の記録装置の識別情報)と対応する記録補償動作の結果を光ディスク100から読み取り且つ読み取った記録補償動作の結果を用いて上述した記録条件を設定すれば、同様の効果を相応に享受することができる。或いは、当該記録装置1の識別情報に近い識別情報と対応する記録補償動作の結果に基づいて、簡易的な記録補償動作を行っても、同様の効果を相応に享受することができる。
更に、光ディスク100がブランクである等の理由により、光ディスク100に記録補償動作の結果を示す情報が記録されていなかったとしても、上述した各実施例に係る各記録装置を用いれば、記録補償動作を好適に行うことができる。そして、この結果得られる記録条件を、記録装置1の識別情報と対応させて、光ディスク100に記録しておけば、次にデータパターンを記録する際には、わざわざ記録補償動作を行わなくても、光ディスク100に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。
つまり、記録補償動作を行うことなく又は少なくとも1回記録補償動作を行えば、対応する記録装置1において、わざわざ記録補償動作を行わなくても、光ディスク100に対する記録において、上述した各種効果と同様の効果を享受することができる。従って、記録補償動作を行う回数を減少させることができるため、記録補償動作に必要なエリアを節約することができる。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う記録装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。