以下、本発明に係る光情報記録装置を添付図面を参照して詳細に説明する。尚、本発明は、以下説明する実施形態に限らず適宜変更可能である。
図1は、本発明に係る記録パルスの構成と記録条件決定の全体フローを示す概念図である。同図(a)に示すように、本発明に係る記録パルス10は、該記録パルスの先端に位置するトップパルス12と、該トップパルスに続く後続パルス14とで構成される。
ここで、記録パルス10の長さをn’Tとすると、トップパルス12はm’Tの長さを有し、後続パルス14は(n−m)Tの長さを有する。本実施形態では、m=3、n=3〜11および14の値をとるものとする。Tは光ディスクシステムにて定義された単位時間であり、その周期はクロック信号によって決定される。
記録パルス10の条件は、同図(b)に示す一連のフローを実行することによって決定される。このフローは、光情報記録装置(以下、「記録装置」または「ドライブ」という)に光情報記録媒体(以下、「メディア」または「ディスク」という)を装填した状態でのテスト記録を伴って実行される。
同図(b)に示すように、記録パルス10の条件を決定する際には、まず、m’T長のパルス条件を決定し(ステップS100)、その後、このm’T長の条件を利用して、m’T長のパルス条件と(n−m)T長のパルス条件との比率となるm’T/(n−m)Tを求める(ステップS200)。その後、この比率に基づいてnTパルスを構成し(ステップS300)、最後に位相ずれ補正を行ってn’T長の記録パルスの条件を決定する(ステップS400)。
図2は、本発明に係るドライブの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、このドライブ100は、レーザ発振器103から出力されたレーザ光を用いて、メディア50に対する情報の記録再生を行う。
メディア50に対して情報の記録を行う場合は、所望の記録情報に対応した記録信号をエンコーダ101でEFM方式で符号化し、この符号化した記録データをストラテジ回路102に加える。
ここで、このストラテジ回路102には、所定のストラテジの各種設定パラメータが設定されており、該ストラテジ回路102は、ストラテジの各種設定パラメータを補正して、レーザ発振器103から出力されるレーザ光の強度やパルス幅を制御し、所望の記録状態が得られるであろう記録パルスを生成する。
ストラテジ回路102で形成された記録パルスは、レーザ発振器103に加えらえ、レーザ発振器103は、この記録パルスに対応して出力レーザ光を制御し、この制御されたレーザ光をレンズ104、ハーフミラー105、レンズ106を介して線速一定若しくは回転速度一定で回転するメディア50に照射し、これによりメディア50に、所望の記録データに対応したピット、ランド列からなる記録パターンが記録される。
一方、メディア50上に記録された情報の再生を行う場合は、レーザ発振器103から一様な再生レーザ光がレンズ104、ハーフミラー105、レンズ106を介して線速一定若しくは回転速度一定で回転するメディア50に照射される。
この時、再生レーザ光は、記録時にレーザ発振器103から出力されるレーザ光よりも強度の弱い再生レーザ光が用いられ、この再生レーザ光によるメディア50からの反射光は、レンズ106、ハーフミラー105、レンズ107を介して受光部108で受光され、電気信号に変換される。
受光部108から出力される電気信号は、メディア50に記録されたピット、ランドからなる記録パターンに対応している。この受光部108から出力される電気信号は、同期信号検出回路109で該電気信号に含まれるウォブル成分から所定周期のクロック信号が生成され、その後、2値化回路110で2値化され、さらにデコーダ111でデコードされて再生信号として出力される。
このように、ドライブとメディアで構成された記録システムの記録品位は、ドライブの特性ばらつきとメディアの特性ばらつきに左右されるため、この影響を前述のストラテジが吸収することで記録品位の向上が図られる。尚、メディアとしては、CD−RやDVD−Rに代表される色素型メディアやCD−RWやDVD−RWに代表される相変化型のメディア等の各種光情報記録媒体の適用が可能である。
以下、上述したドライブが実行する図1(b)に示した記録パルス条件決定フローの詳細を説明する。
(m’T条件の決定)
図3は、図1に示したm’T決定フローの詳細な実行手順を示すフローチャートである。同図に示すように、前述のドライブ100は、該ドライブの初期設定を行うまでステップS110〜S114までを実行し、次に、テスト記録の条件を決めるまでのステップS116〜S122までを実行し、その後、決定した条件でテスト記録を行うステップS124を実行し、その結果に基づいてmTパルスの条件を決定するステップS126を実行する。以下、これら各ステップの詳細を説明する。
(基準条件の決定)
図3に示すステップS110では、まず、任意の標準的なメディアを用いて記録速度を変化させながらテスト記録を行い、1つのパルス幅と3つのパワー値を基準条件として求める。3つのパワー値としては、上記テスト記録の結果、ジッタが最小となった値と、その前後に位置する2つのパワー値を用いることが望ましい。前後2つのパワー値としては、ジッタ良否の基準となる閾値近傍の値を用いることが好ましい。ここで求めた基準条件が後の記録品位検査の際に利用される。
(基準閾値の決定)
後述するように、本発明ではジッタ閾値以下の領域をテスト記録条件の範囲(以下、「テスト領域」という)として設定することを意図しているため、この判断基準となる閾値を決定する必要がある。閾値の値としては、ドライブやメディアの種類に応じて標準的な値を用意しておいても良いが、ジッタの許容領域のミニマムラインを示す閾値は、図2に示したピックアップを構成する光学系部品やその他の要素の状態によって変化し、また、メディアを記録する速度によっても変化する。
従って、この閾値も実際に使用するドライブとメディアの組み合わせごとに求め、より的確な判断基準を持たせることで、より的確なテスト領域の設定を行うことが推奨される。
もっとも、この閾値をドライブとメディアの組み合わせごとに設定することは、記録工程の増加要因にもなるため、ドライブ個体ごとのバラツキが閾値変動の主要因と仮定して、ドライブ製造時に個体ごとに適した閾値を記憶領域115に格納しておいても良い。
図4は、図3に示す基準閾値の決定ステップの詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、基準閾値の決定は、所定の記録条件による記録再生を行い、その結果に基づいてシステムとしての基準値を決定し、該基準値から所定のマージンを確保した値をテスト領域決定の際に使用する閾値とすることで行われる。以下、各ステップを順に説明する。
まず、記録条件設定を行うステップS150を実行し、このステップでは、パルス幅、パワー、記録再生速度、記録アドレス等の記録再生に必要な条件を所定のパターン用意し、この記録条件をドライブに設定した後、該ドライブ内に基準メディアを装填する。基準メディアとしては、各種のメディアがある中から特性が標準的なものを選ぶことが望ましい。
次に、上記のステップS150で設定した記録条件で装填した基準メディアに対して、記録と再生を行うステップS152を実行し、各記録条件における記録再生特性値、例えばジッタを取得する。ここで取得する特性値としては記録品位を示す値を選択する。
続いて、上記ステップS152で取得した記録再生特性値から最良の値、例えば、ジッタの最小値を求め、これをシステム基準値とするステップS154を実行する。これにより、当該ドライブで最適値に近いと思われるジッタ値が基準値として設定される。尚、この基準値はジッタ最適点ではなく、所定の閾値と交差する2点の中間値、即ちパワーマージンの中間値としても良い。
最後に、上記ステップS154で決定したシステム基準値に対して、所定の係数α(α>1とすることが望ましい)を掛け合わせた値を閾値として算出するステップS156を実行する。これにより、システム基準値に対して所定のマージンを持たせた形で判断が行われる。即ち、システム基準値を用いた閾値の算出は、閾値=システム基準値×αで行われ、係数αとしては、およそ1.5程度の値を用いることが望ましい。尚、この係数αはドライブやメディアの種類に応じて適切な値を設定すれば良く、α=0.8〜1.2のようにシステム基準値に近い値を設定しても良いし、α=2.0〜3.0のように、大きめに設定しても良い。
図5は、図4に示したフローの一実施例を示す概念図である。同図に示す例は、記録品位を示す特性値としてジッタ値を用い、W1〜W4までの各パルス幅に対してパワーをP1〜P6まで変化させて、再生特性202−1〜202−4までを得たときの例である。同図に示す例では、パルス幅W1〜W4とパワーP1〜P6が記録条件となり、最も低いジッタ値が得られた再生特性102−3の極がシステム基準値となり、このシステム基準値に例えば1.5を乗じて得られた値が閾値となる。尚、同図中のマトリクス内に示された矢印はテスト条件を変化させる方向を示し、以下の説明においても同様の意味で使用する。
図6は、図4に示したフローの一実施例を示す概念図である。同図に示す例は、記録品位を示す特性値としてジッタ値を用い、W1〜W4までの各パルス幅ごとにパワーの変化範囲を変えて、再生特性202−1〜202−4までを得たときの例である。同図に示す例では、最も低いジッタ値が得られた再生特性202−2の極がシステム基準値となり、このシステム基準値に例えば1.5を乗じて得られた値が閾値となる。このように、閾値の決定は、パルス幅ごとにパワー条件を変更して求めることも可能である。
図7は、ドライブごとに閾値を求める場合の例を示す概念図である。ドライブの個体ばらつきに応じた閾値設定が所望される場合には、同図に示すように、各ドライブ100−1〜100−5のそれぞれで共通の基準メディア50を記録再生し、各ドライブごとに固有の閾値1〜5を記憶させておく。
尚、閾値の設定工程を簡易化したい場合は、標準的なドライブ数個のそれぞれで共通の基準メディアを記録再生して得られた閾値1〜5の平均を取り、この平均閾値を他のドライブの閾値として使用してもよい。
このとき、平均閾値を求めるために使用したドライブは、同一設計のものでも、完全に同一設計ではなく類似設計のものであっても良い。また、これらドライブの閾値として平均閾値を使用することも可能である。さらに、一度求めた平均閾値を、以後製造される同一または類似設計のドライブの閾値として汎用的に使用しても良い。また、バラツキを持った複数台のドライブを意図的に用意し、これらの平均値を求めてもよい。
(記録装置の初期設定)
以上説明した図3のステップS110およびステップS112で求めた基準条件と基準閾値をドライブ100内の記録領域115に格納するステップS114を実行する。この工程はドライブ100の製造時に行っておくことが望ましい。
(記録対象メディアの装填)
続いて、ステップS114の初期設定が完了したドライブ100内に、情報記録を行うメディア50を装填するステップS116を実行する。
(基準条件による記録再生)
次に、ステップS114で設定した条件を用いて、ステップS116で装填したメディア50に記録を行うステップS118を実行する。具体的には、基準条件として定義された1つのパルス幅と3種類のパワー値を用いて3回の記録再生を行い3点のジッタ値を得る。この3点のジッタ値をパワー軸との関係でプロットすると、ドライブ100とメディア50の組み合わせに応じた記録特性の傾向が明らかになる。
(記録品位の検査)
図8は、図3のステップS120で実行した記録品位検査の結果、谷型パターンが得られた例を示す概念図である。同図に示すように、記録品位の検査は、前述までのステップで得られた各基準条件に対するジッタ値と閾値とを用いて行う。同図に示す例は、基準条件としてパワーP1、P2、P3を用いたときの例であり、各パワー値で得られたジッタ値を結ぶ仮想線が谷型のパターンとなる。このような谷型のパターンが得られたときは、ステップS110で使用した基準メディアとステップS116で装填した記録対象メディアとが同感度であり、記録特性が類似していることを意味する。
ここで、同図(a)は谷型パターンの最小値が閾値以下となる例であり、同図(b)は谷型パターンの最小値が閾値以上となる例であり、いずれのパターンにおいても基準メディアと記録対象メディアは同感度と考えられる。このように、基準メディアと記録対象メディアが同感度であった場合は、後述するように、テスト記録で使用する条件は、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域で設定する。
ここで、同図(a)と(b)とでは、各記録ポイントP1、P2、P3でそれぞれ得られた再生値と再生基準値との差分量、即ち、同図の例ではジッタ値とジッタ閾値との差分量が異なり、同図(a)の方が得られた再生値が再生基準値に近くなる。
このことは、同図(a)の方が同図(b)よりも最適条件の発見が容易であると考えられるため、同図(a)の記録特性が得られたときの方が同図(b)の記録特性が得られたときよりも、テスト回数を少なく設定し、より少ないテスト回数でより適した解を見出す構成としても良い。
即ち、再生値と再生基準値との差分量が少なかった場合は、最適条件が前述の基準条件に近くなり、再生値と再生基準値との差分量が多かった場合は、最適条件が前述の基準条件から遠くなるため、テスト回数をより少なくしたい場合には、再生値と再生基準値との差分量に応じてテスト回数を変化させることが望ましい。
図9は、図3のステップS120で実行した記録品位検査の結果、右下がりのパターンが得られた例を示す概念図である。同図に示す例では、P1、P2、P3とパワーが上昇するにつれてジッタ値が下がってゆく右下がりのパターンとなる。このような右下がりのパターンが得られたときは、基準メディアよりも記録対象メディアの方が低感度であることを意味する。
ここで、同図(a)は右下がりパターンの最小値が閾値以下となる例であり、同図(b)は右下がりパターンの最小値が閾値以上となる例であり、いずれのパターンにおいても基準メディアより記録対象メディアの方が低感度であると考えられる。このように、記録メディアの方が低感度であった場合は、後述するように、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域で区画されたテスト領域を高パワー、広パルス幅側にシフトさせてテスト記録を行う。
また、同図に示すような右下がりパターンが得られた場合は、ジッタの最小値がより高パワー側に存在すると考えられるため、P3よりも高パワーで追記を行って、再度記録特性を確認しても良い。この場合、記録回数は1回増えるが記録品位の検査精度を向上させることができる。尚、このパターンが得られた場合も、前述の谷型パターンが得られた場合と同様に、再生値と再生基準値との差分量に応じてテスト回数を変化させても良い。
また、同図に示すような右下がりパターンが得られた場合は、前述の図8に示した谷型のパターンよりも、最適解が基準条件から遠くなると考えられるため、谷型パターンの場合よりもテスト回数を増加させておくことが望ましい。
図10は、図2のステップS120で実行した記録品位検査の結果、右上がりのパターンが得られた例を示す概念図である。同図に示す例では、P1、P2、P3とパワーが上昇するにつれてジッタ値が上がってゆく右上がりのパターンとなる。このような右上がりのパターンが得られたときは、基準メディアよりも記録対象メディアの方が高感度であることを意味する。
ここで、同図(a)は右上がりパターンの最小値が閾値以下となる例であり、同図(b)は右上がりパターンの最小値が閾値以上となる例であり、いずれのパターンにおいても基準メディアより記録対象メディアの方が高感度であると考えられる。このように、記録メディアの方が高感度であった場合は、後述するように、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域で区画されたテスト領域を低パワー、狭パルス幅側にシフトさせてテスト記録を行う。
また、同図に示すような右上がりパターンが得られた場合は、ジッタの最小値がより低パワー側に存在すると考えられるため、P1よりも低パワーで追記を行って、再度記録特性を確認しても良い。この場合、記録回数は1回増えるが記録品位の検査精度を向上させることができる。尚、このパターンが得られた場合も、前述の谷型パターンが得られた場合と同様に、再生値と再生基準値との差分量に応じてテスト回数を変化させても良い。
また、同図に示すような右上がりパターンが得られた場合は、前述の図8に示した谷型のパターンよりも、最適解が基準条件から遠くなると考えられるため、谷型パターンの場合よりもテスト回数を増加させておくことが望ましい。
(テスト領域の決定)
図11は、図3のステップS120で谷型パターンが得られた場合に、ステップS122で実行されるテスト領域決定の一例を示す概念図である。同図に示すように、谷型パターンが得られた場合は、P1、P2、P3のそれぞれで得られたジッタ値が描く近似曲線206と閾値とのクロスポイントをテスト記録で使用するパワーの変化領域とし、この変化領域がパワーレンジとなる。尚、本発明においては、実際にテスト記録で使用するパワーの範囲を「パワーレンジ」と定義し、ジッタが閾値以下となるパワーの範囲を「パワーマージン」と定義する。
ここで、近似曲線206は、パルス幅ごとに異なるため、基準条件で用いたパルス幅をW4とすると、このW4を中心としたパルス幅W1〜W6のそれぞれに対して、パワーP1、P2、P3で記録し、その結果得られた近似曲線206と閾値とのクロスポイントを確認してゆく。これにより同図のマトリクスイメージに示すように、各パルス幅ごとに閾値以下となるパワーレンジが得られ、同図のハッチで示した領域がテスト領域となる。ここで、基準条件として使用したP1、P2、P3のパワー3条件と、パルス幅W4をマトリクス中のイメージで示すと、同図の208−1、208−2、208−3となり、決定されたテスト領域は、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域として設定される。
このように、パルス幅ごとにパワーレンジを求めることで、閾値以下となる領域を集中してテストすることができるため、少ないテスト回数でより適した条件を見出すことが可能になる。
尚、パワーマージンが広く取れた場合には、パワー変化のステップを大きめに設定し、パワーマージンが狭かった場合には、パワー変化のステップを小さく設定することでもテスト回数の低減を図ることができる。例えば、10mWのマージンが取れた場合には、ラフにテストしても最適値が得られるものと仮定して2mWステップで5回のテストを行い、1mWのマージンが取れた場合には、より精密なテストが必要と判断して0.1mWステップで10回テストするような構成も可能である。
図12は、図3のステップS120で右下がりパターンが得られた場合に、ステップS122で実行されるテスト領域決定の一例を示す概念図である。同図に示すように、右下がりパターンが得られた場合は、最適条件がより高パワー側にあると考えられるため、P3よりも高いパワー値P+で追加記録を行い、P1、P2、P3、P+のそれぞれで得られたジッタ値が描く近似曲線206と閾値とのクロスポイントをパワーレンジとする。この処理をパルス幅W1〜W6のそれぞれで行って、同図のマトリクスイメージに示すようなテスト領域を得る。
ここで、上記の手順により決定されたテスト領域は、基準条件208−1、208−2、208−3を中心としたパワー×パルス幅の面領域が高パワー側にシフトされた形となる。この例では、谷型パターンで使用したW1〜W6をそのまま用いたが、右下がりパターンの場合は、低感度傾向にあるため、W1〜W6よりも広いパルス幅領域にシフトさせてパワーレンジを決めても良い。
図13は、図3のステップS120で右上がりパターンが得られた場合に、ステップS122で実行されるテスト領域決定の一例を示す概念図である。同図に示すように、右上がりパターンが得られた場合は、最適条件がより低パワー側にあると考えられるため、P1よりも低いパワー値P+で追加記録を行い、P+、P1、P2、P3のそれぞれで得られたジッタ値が描く近似曲線206と閾値とのクロスポイントをパワーレンジとする。この処理をパルス幅W1〜W6のそれぞれで行って、同図のマトリクスイメージに示すようなテスト領域を得る。
ここで、上記の手順により決定されたテスト領域は、基準条件208−1、208−2、208−3を中心としたパワー×パルス幅の面領域が低パワー側にシフトされた形となる。この例でも谷型パターンで使用したW1〜W6をそのまま用いたが、右上がりパターンの場合は、高感度傾向にあるため、W1〜W6よりも狭いパルス幅領域にシフトさせてパワーレンジを決めても良い。
即ち、上述した手法では、各パルス幅ごとに記録品位の検査が行われ、その結果に基づいて、各パルス幅ごとにテスト回数が決定されるため、テスト回数の低減が期待できる。以上説明した記録品位の検査は、基準条件での記録によるジッタ変化をパターニングすることで行う例であり、より望ましくは、下記に示す8パターンを用いて行うことが推奨される。
図14は、図3のステップS120を8つのパターンを用いて実行する場合の例を示す図である。同図に示すように、パターン1は、谷型、右上がり、右下がり等のどのようなパターンであっても、ジッタの最大値が閾値以下となったときに適用されるパターンである。このパターンが得られたときは、基準メディアと同程度の感度であると見なすとともに、閾値以下となるマージンが広く取れると判断し、パワー条件を低パワー側と高パワー側のそれぞれに拡張する。即ち、このパターン1では、閾値近傍の値が取れていないため、低パワー側と高パワー側の両方に追加記録が行われることになる。
その後、この追加記録の結果得られたジッタ特性を曲線近似し、この近似曲線がジッタ閾値と交差する大小2点の間隔をパワーレンジの基準値とする。
さらに、このパターンが得られたときは、基準値±0.2Tのパルス幅領域をテスト領域として決定し、テスト記録時には、このテスト領域内を0.2Tごとに変化させて最適記録条件の検出を行う。尚、Tは記録ピットの単位時間長を示す。
ここで、基準値となるパルス幅をパルス条件1とし、拡張した2点をパルス条件2および3とすると、パターン1のパルス条件2および3は±0.2T拡張された後のパルス幅となる。このパルス幅の条件変更に伴って、テスト条件として使用するパワーレンジにも若干の変更を行う。
即ち、パルス幅を0.1T変更したときは、パワーレンジの基準値×(1−0.05×1)mWを当該パルス幅におけるパワーレンジとし、パルス幅を0.2T変更したときは、パワーレンジの基準値×(1−0.05×2)mWを当該パルス幅におけるパワーレンジとし、パルス幅を−0.1T変更したときは、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−1))mWを当該パルス幅におけるパワーレンジとする。
よって、このパターン1に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
尚、本発明では、上記(1)に示した基準条件は、実際のテスト記録で使用しなくても良い。
パターン2は、谷型パターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値以下であるときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアと同感度であると判断し、基準値±0.1Tをパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン2に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−1))mW
(3)パルス幅の基準値+0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+1))mW
パターン3は、谷型パターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアと同感度、かつメディアの素性差が大きいと判断し、基準値±0.2Tをパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン3に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
パターン4は、右下がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値以下であるときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりやや低感度であると判断し、基準値、+0.1Tおよび+0.2Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン4に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値+0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+1))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
パターン5は、右下がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりかなり低感度であると判断し、基準値、+0.2Tおよび+0.4Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン5に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.4T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+4))mW
パターン6は、右上がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値以下となったときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりやや高感度であると判断し、基準値、−0.1Tおよび−0.2Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン6に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−1))mW
(3)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
パターン7は、右上がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりかなり高感度であると判断し、基準値、−0.2Tおよび−0.4Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン7に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値−0.4T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−4))mW
パターン8は、山型パターンが得られた場合であって、ジッタの最大値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、異常パターンであると判断し、基準値±0.2Tをパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン8に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
尚、以上説明した8つのパターンのうち、基準メディアに最も近くなるパターン2以外のパターンが検出された場合は、再生誤動作によるものでないことを確認するために、このパターンの基になった記録結果を再度再生し、ジッタを再検出する構成としても良い。この場合、再度の再生によりパターン2以外の特性が検出された場合は、図14に示す条件に従って、記録条件の追加と拡張を行えば良い。
ここで、上記再生誤動作の確認を行った結果、パターン8が検出された場合は、記録誤動作の可能性が考えられるため、追加記録およびパルス幅の拡張を行う前に、パルス幅の基準値で再度記録を行う。この再記録結果を再生してもパターン8となった場合は、追加記録、即ち、パルス条件1のマージン測定を行うためのパワー拡張は行わずに、パルス条件の拡張、即ち、パルス条件2および3の拡張を行う。これらパルス条件2および3の拡張に応じたパワーの拡張は前述の手法で行えば良い。
即ち、パターン8の場合、パルス条件1ではマージンが取れず、拡張の基準となるパワーレンジを求めることができないため、初期のパワー条件範囲を基準となるパワーレンジとして設定する。
(テスト領域の決定:近似法によるパワーレンジの決定)
前述の手順を実行することにより、少ないテスト回数で最適解を得るに有効なテスト領域が決定されるが、このテスト領域決定の際に重要となるパワーレンジの決定手法について以下説明を加える。
本発明では可能な限り少ないテスト回数で最適解発見の精度を上げたいため、閾値以下の領域にテスト条件を集中させることは前述したとおりである。この考え方に基づけば、テスト記録の際に使用されるパワーレンジは、閾値に対するマージンを示す大小2点のパワー値から求めればよいこととなる。ここで、閾値に対するマージンとは、その領域であれば、閾値以下の特性値が得られる幅を意味し、大小2点のパワー値とは、このマージンの幅を決める低パワー側の値と、高パワー側の値を意味する。
ここで、各種メディアのテスト記録時間の短縮およびライトワンスメディアのようにテスト記録領域に制限の有るメディアのテスト領域の効率化を考えると、テスト記録に要する記録ポイントはより少ないことが望ましいが、ここで求めるパワーレンジは、最適記録条件の判断基準となる重要なパラメータであるため、高精度であることが望まれる。
このパワーレンジを精度良く求めることは、より選択された領域の集中したテストを意味するため、テスト回数の低減にも寄与する。例えば、0.1mWに1回の頻度でテスト記録を行う場合には、パワーレンジが1mWだと10回のテスト記録が行われ、2mWだと20回のテスト記録が行われるため、パワーレンジを絞ることがテスト回数の低減に寄与することになる。
そこで、本発明では、記録再生信号の記録品位が記録パワーに対して最適点を極値とする2次曲線的な変化を描くことに着目し、数点の記録ポイントを用いて特性曲線を近似算出することで、求めたいマージン量を得る手法を提唱する。このような近似手法を適用することにより、数点の記録ポイントでパワーレンジを高精度かつ容易に求めることが可能になり、テスト回数の低減が図られる。
図15は、図3のステップS122で使用されるパワーレンジを曲線近似によって求める方法を説明した概念図である。同図に示すように、近似を行うにあたっては、まず、記録特性の判断基準とするジッタ値が閾値近傍となる低パワー側のaおよび高パワー側のcの2点と、これらの間に位置し、かつ、これらa、cおよび閾値のいずれの値よりも小さなジッタ値となるbを選択する。即ち、ここで選択されるa、b、cは、下記の関係を有することになる。
a>b、c>b、閾値>b
ここで、上記の閾値近傍は、同図に示すように、閾値からある幅を持った上限値と下限値の間として定義し、望ましくは、上限値を閾値の40%、下限値を閾値の5%に設定する。その後、これらa,b,cの値を2次関数で近似し、該2次関数と閾値がクロスする大小2点の差分をパワーレンジとする。尚、閾値近傍として定義する範囲は、−5%〜+40%や−10%〜30%等、記録ポイントの間隔等を考慮して適宜変更可能である。
図16は、図3のステップS122で使用されるパワーレンジを曲線近似によって求める別の例を説明した概念図である。同図に示すように、A、B、Cの3条件でのみでは、前述の「a>b、c>b、閾値>b」の条件を満たす関係が得られなかった場合、高パワー側のDを追記することで、閾値近傍の値を得ることが望ましい。
さらに、同図に示すように、B>Cの関係がある場合は、Bを用いずに、A、C、Dの3点で近似式を算出することが望ましい。
このとき記録ポイント3点と閾値の関係は、「A>C、D>C、閾値>C」となり、近似曲線を描くに適した関係となるため、3点近似で高精度な近似曲線を得ることができる。尚、Dに示した追加記録条件は、追記前の記録ポイントが示すA>B、B>Cおよび閾値によって決定すれば良い。
また、図15とは逆に、低パワー側に閾値近傍の値がなかった場合は、Aより低パワー条件で追記を行えば良く、記録ポイントと閾値の関係によっては、適宜1点以上の記録条件を追加しても良い。
また、追加記録条件で用いるパワーの範囲は、所定のパワーステップに対して一定の変化を持たせても良いし、予めパワーの変動に対するジッタ変動の関係を求めておき、その関係からパワー条件を設定しても良い。
尚、上記記録条件の追加を行っても、パワーレンジを求めるに十分な記録ポイントが得られない場合は、上述と同様の手順により再度記録条件の追加を行って記録ポイントを変更する。
また、ライトワンスメディアのようにテスト記録領域に制限のある場合や、膨大なテスト時間の使用を回避するため、上記再度記録条件の追加回数に上限値を持たせても良く、記録条件の追加によって記録パワーがレーザ出力値を超えないように、追記パワーの上限値を持たせておいても良い。
また、上述の例では、3点近似によりパワーレンジを求めたが、最も閾値に近い2点を選択し、これら2点がそれぞれ示す大小2点のパワー値の差分よりパワーレンジを決定しても良い。
その他、閾値近傍の2点を選択する手法としては、閾値をまたぐ大小2点が見つかるまでパワーを変化させて記録し、該記録した中で最も閾値に近い2点を選択しても、この2点をそのまま選択しても良い。この方法については以下詳細な説明を加える。
(テスト領域の決定:サンプリングによるパワーレンジの決定)
図17は、図3のステップS122で使用されるパワーレンジをサンプリングによって求める例を説明した概念図である。同図に示す例では、前述した3点近似ではなく、閾値に近い値が得られるまでパワーを徐々に変化させて、閾値に近い大小2点のパワー値を基準にパワーレンジが求められる。
つまり、同図に示すように、記録パワーをP1からP2、P3・・・と順に増加させて記録再生を行い、閾値以上の値が得られたパワー値P6まで記録再生を繰り返す。この処理のイメージをマトリクスで示すと、パワー変化はP1〜P6まで行うが、パワーレンジは、閾値に最も近い低パワー側のP2と高パワー側のP6との間となる。このように、閾値をまたぐ2点を選択することによってもパワーレンジを決定することができる。
ここで、閾値に近い大小2点を選択する方法としては、下記のような形態を適宜選択して使用することができる。
1)パワーマージンを成す大小2点を選択する方法、即ち、再生基準値を満たすパワー領域内であって、夫々再生基準値と最も近い2点を選択
2)パワーマージンのやや外にはなるが再生基準に最も近い2点を選択
3)低パワー側で再生基準値を跨ぐ大小2点を選択
4)高パワー側で再生基準値を跨ぐ大小2点を選択
5)低パワー側および高パワー側で再生基準値を跨ぐ形となる2点であって、夫々再生基準値と最も近い2点を選択
また、上記各手法により選択した2点を用いて記録特性を近似し、再生基準値と交差する大小2点を求めても良い。
(m’T/(n−m)T比率の決定)
図18は、図1(b)に示したステップS200の比率決定で使用するテスト用記録パルスの例を示す概念図である。同図(a)は、単一のパルスパターンで構成されたシングルパルスを用いる場合の例であり、同図(b)は、複数のパルスパターンで構成されたマルチパルスを用いる場合の例である。同図に示すように、シングルパルス10−1およびマルチパルス10ー2は、記録パルスの先頭に配置されたトップパルス12と、それに続く後続パルス14とで構成され、後続パルス14は、記録パルスの最後尾に配置された後端パルス14を備える。
ここで、メインパワーPWが示す高さで記録パルス全体のエネルギー量が規定され、トップパルス幅Ttopが示す長さで記録ピット先端に与える初段のエネルギー量が規定される。このメインパワーPWは、記録パルス10−1、10ー2の中で最も高い値とすることが望ましく、トップパルスの幅Ttopは、3Tの長さを有する最短記録ピットに対応した幅を有する。この最短幅の記録パルスが最も出現確率が高く、記録品位への影響が大きいため、まずは、前述したm’T条件決定フローによって、このトップパルス12のパワーPWと幅Ttopの最適条件を確定させる。
続いて、m’T/(n−m)T比率決定フローによって、後続パルス14の条件決定を行う。後続パルスの条件としては、シングルパルス10−1の場合には、同図(a)に示すように、メインパワーPWよりもPWDだけ低い低パワー領域を設け、この量を規定することで、記録ピットが涙型になることを防止する。同様に、マルチパルス10−2の場合には、同図(b)に示すように、先頭パルス12と後端パルス14との間に位置する中間パルスの幅Tmpを規定するか、または、TmpとTsmpのデューティ比を規定することで、記録ピットが涙型になることを防止する。これら後続パルスの条件決定は、トップパルスの条件を基準として行われる。
図19は、 図1(b)に示したステップS200の比率決定フローの実行手順を示すフローチャートである。同図に示すように、図2に示したドライブは、まず最初に、ストラテジ回路102が実行する記録ストラテジの各種パラメータを設定するために、メディア50に対して(n−m)Tの条件を変更した複数の記録パターンによるテスト記録を行う(ステップS210)。このときmTパルスの条件は、前述のm’T条件決定フローで得られた値に固定しておく。、
その後、このテスト記録により形成された記録パターンを再生し(ステップS212)、その結果として2値化回路110から得られた再生2値化信号を記録ずれ検出部112が所定クロックに同期したカウンタで計数して(ステップS214)、該再生2値化信号に含まれたピットおよびランドの長さを計数データとして記録領域115に格納する(ステップS216)。
その後、記録ずれ検出部112は、記録領域115に蓄積された計数データを用いて、計数値ごとの出現頻度を示すヒストグラムを作成し(ステップS218)、このヒストグラムからピット長とランド長の判定基準となる計数結果の閾値を決定する(ステップS220)。
その後、記録ずれ検出部112は、前記閾値を基準に記録領域115に格納された計数データの中から特定のピット/ランドパターンを含む複数種の特定パターンを検索し(ステップS222)、この特定パターンに含まれた同一ピット長と思われる計数結果を平均化するとともに、同一ランド長と思われる計数結果を平均化して、特定パターンを構成する各ピットと各ランドの平均長を求める(ステップS224)。
その後、記録ずれ検出部112は、抽出した複数の特定パターンのうちの一つを抽出パターンに設定し、この抽出パターンに含まれる対象記録ピットの長さを基準長と比較して(ステップS226)、記録パルスに対するピットの長さずれ量を検出する(ステップS228)。
その後、演算式導出部113は、記録ずれ検出部112が検出したずれ量に基づいて、最適ストラテジを決定するための演算式を導出し、ストラテジ決定部114は、この演算式導出部113が導出した演算式を用いて各種パラメータの制御結果を予測し(ステップS230)、この予測結果に基づいて、図18に示したPWDまたはTmpを決定し、これをストラテジ回路102に設定する(ステップS232)。
図20は、図19に示したテスト記録から再生データの計数までの動作概念を示す概念図である。同図に示すように、まず、テスト記録が行われると、同図(a)に示すような記録ピットが光ディスク上に形成される。そして、この記録ピットを再生すると、同図(b)に示すように、この記録ピットに対応した再生RF信号が得られる。この再生RF信号を2値化すると、同図(c)に示したような再生2値化信号が得られ、この2値化信号の極性反転間のパルス長を同図(d)に示すようなクロック信号で計数すると、同図(e)に示したような計数結果が得られる。
図21は、図19に示した計数結果の格納イメージを示す概念図である。同図に示すようにクロック信号で計数された2値化信号は、極性反転部を区切りとして、その計数結果がピット、ランドの区別とともに記憶領域115に設けられたテーブル内に順次時系列で格納される。この同図に示すテーブルは、後に検索可能なアドレスが付された状態で格納される。
図22は、図19に示したヒストグラム作成のイメージを示す概念図である。同図に示すように、計数値の出現頻度をグラフ化するとヒストグラムが得られ、ピットとランドをそれぞれ区別してヒストグラムを作成すると、同図(a)に示したピットの計数傾向を示すピットヒストグラムと、同図(b)に示したランドの計数傾向を示すランドヒストグラムの2種類を得ることができる。このように、光ディスクでは基準クロックに対する各単位長nT(n=3、4、5、・・・14)の長さが必然的に決まるため、各単位長nTに対して、出現頻度分布の山が得られることになる。
図23は、図19に示した閾値決定のイメージを示す概念図である。同図に示すように、ヒストグラム中の各山と山の間に形成された谷の部分が各単位長nTの長さ判定閾値として使用できるため、ピットヒストグラムおよびランドヒストグラムのそれぞれについて、ピット長の判断基準となるピット長閾値と、ランド長の判断基準となるランド長閾値を設定する。
図24は、図23に示した手法によって得られた閾値の例を示す概念図である。同図(a)に示すように、各ピット長の境界ごとにピット長閾値が定義され、同図(b)に示すように、各ランド長の境界ごとにランド長閾値が定義される。同図(a)に示す例では、2Tと3Tの境界となる閾値は「計数値=2」となり、3Tと4Tの境界となる閾値は「計数値=9」となり、以降、14Tと15Tの境界まで設定される。また、同図(b)に示す例では、2Tと3Tの境界となる閾値は「計数値=2」となり、3Tと4Tの境界となる閾値は「計数値=10」となる。以降、14Tと15Tの境界まで設定される。
次に、図19に示した特定パターンの検索(ステップS222)からずれ量の検出(ステップS228)までの各工程の詳細について説明を加える。これらの工程は、記録ずれ検出部112における各種ずれの検出原理に基づいて行われる。
図25は、ピットバランスによるずれ量を検出するための記録パターンの一例を示す図である。ここで、ピットバランスとは、前述のトップパルスと後続パルスのバランスを示す。同図に示すように、ピットバランスによるずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTが連続するパターンを含み、固定ランドLyTのランド長および固定ランドLzTのランド長を固定して、可変ピットPxTのピット長を、同図(b)から同図(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ランド長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの可変長のピットPyTの長さを測定すると、この可変長のピットPyTの長さは、理想の記録状態ではそれぞれ理想のピット長に対応するはずである。
しかし、この可変長のピットPyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ランドLxTのランド長およびランドLzTのランド長は固定されているので、この可変長のピットPyTの規定長さからのずれ量は記録時のストラテジにおける3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tの記録パルスに対する長さずれ量に対応することになる。
したがって、あるストラテジを用いてテスト記録を行い、この記録パルスによるテスト記録の再生パターンから、同図(b)〜(f)に示すように、可変長のピットPyTの記録結果と各ピットの基準長とを比較し、各ピット長の理想の長さからのずれ量を検出すれば、各ピット長の長さずれ量を検出することができる。
図26は、ピットバランスずれ検出で使用される特定パターン検索用のテーブル構成を示す概念図である。ピットバランスずれの検出を行う場合には、特定パターンごとに設定されたランドLxT、ピットPyT、ランドLzTに関する閾値範囲を基準に、図2の記憶領域115内に格納されたデータを検索し(図19のステップS222に相当)、該閾値を満たすデータ列を抽出する。
その後、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTのぞれぞれに該当する計数結果を分別し、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTごとに平均値を求める(図19のステップS224に相当)。この計数結果の平均値を用いて、図25に示したパターン比較を行えば、各ピット長における前側位相ずれ量が得られる。
図27は、計数結果の絶対比較により長さずれ量を検出する場合の具体例を示す概念図である。同図に示すように、理想の基準長との比較でずれ量を検出する場合は、まず記憶領域内に格納されたデータ群の中から、同図(a)に示した特定パターンを検索抽出し、同図(b)および(c)に示すように、比較対象となる部位に対する両者の計数値を比較する。同図に示す例では、ピット3Tが比較部位になるため、特定パターンの計数結果である同図(c)に示す「9」と、基準長に相当する計数結果である同図(d)に示す「8」との差分を求め、得られた差分「1」が3Tピットのずれ量になる。
図28は、図19に示した制御量予測の実行例を示すフローチャートである。同図に示すように、制御量の予測は、記録条件の異なるS1とS2の2種以上の条件でテスト記録を行い(ステップS250)、その結果得られた記録ピットを再生し(ステップS252)、その結果得られた再生パターンの比較によって、条件S1に対応するずれ量D1と、条件S2に対応するずれ量D2とを求め(ステップS254)、これらS1およびS2とD1およびD2との関係を直線近似し(ステップS256)、該直線を用いて最適補正量を決定する(ステップS258)一連の手順を実行することによって行われる。
ところで、上記のように検出されるずれ量D1およびD2は、ストラテジの各種設定パラメータにより変動する。そして、このストラテジの各種設定パラメータにより変動するずれ量D1およびD2は、解析の結果ほぼ直線状に変化することが解明された。
すなわち、上記記録ずれ検出部112で検出されるそれぞれのテスト記録におけるずれ量は、最小二乗法に基づき近似された直線状の変化として捉えることができることになる。
そこで、本実施形態に係るドライブにおいては、例えば、2回のテスト記録を行った場合には、ストラテジの各種設定パラメータと検出したずれ量D1およびD2との直線関係に着目して最適なストラテジを決定することができる。もっとも、本発明では、直線近似に替えて曲線で近似しても良い。
即ち、シングルパルスの場合にはPWDが、マルチパルスの場合はTmpが記録条件S1およびS2で変化させる代表的なパラメータとなり、これらのパラメータをS1、S2と変化させて、その影響をD1、D2として検出し、これら4点を用いて直線近似を行い、該直線を用いてずれがキャンセルできる補正量を得る。
図29は、PWDを変化させる場合の記録条件S1、S2の変化とずれ量D1、D2との関係を示す概念図である。ここで、同図(a)に示す記録パルスは、PWDをS1だけ変化させた記録パルスS1であり、同図(b)に示す記録パルスは、PWDをS2だけ変化させた記録パルスS2であり、これらの2条件を使用してテスト記録を行う。
その結果、同図(a)の記録パルスに対応して同図(a1)に示すパターンS1が得られ、同図(b)の記録パルスに対応して同図(b1)に示すパターンS2が得られる。ここで、パターンS1は、制御量S1に対応してD1のすれ量が生じ、パターンS2は、制御量S2に対応してD2のずれが生じる。
制御量S1およびS2に対するずれ量D1およびD2がわかれば、どのパラメータに関してどれだけの制御量を持たせれば、どれだけのずれが生じるかが予測可能となるため、これらの関係を利用して、制御量の予測と補正値の決定を行う。
図30は、シングルパルスの形状に関する直線近似を利用した長さずれ補正の一例を示す概念図である。当該長さずれに対する補正量PWDを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス長を基準波形nTとしたとき、同図(b)に示すように、PWDだけパルスの中央を欠いた波形でテスト記録を行い、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の長さずれΔを検出する。
同図に示す例では、このPWDの変化をS1=+0.3とS2=+0.1の2種類行い、その結果得られた長さずれΔをずれ量D1=+0.1およびD2=−0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量PWDに対する制御結果Δの関係を直線で近似し、この直線を利用して長さずれがキャンセルできる補正量PWD=+0.2を最適補正値として決定する。このとき、トップパルスの条件は変化させずに固定しておく。
このように、ストラテジの変化S1、S2とずれ量の変化D1、D2との関係は、変化点を少なくとも2点求めれば、直線または曲線による近似が可能になるため、この直線を用いてずれ量が零になる最適補正量を求めることができる。
具体的には、ストラテジSを数点変化させたときのずれ量Dを求め、このときのストラテジSとずれ量Dとの関係を一般式「D=a×S+b」に代入し、連立方程式を解くことにより定数a、bを求め、最終的に理想のずれ量Dに対応するストラテジSを求め、このストラテジSを図1に示したストラテジ回路102に設定することにより記録パルスの最適補正を行う。
例えば、図2に示した記録ずれ検出部112で、あるストラテジS1を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD1、他のストラテジS2を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD2であるとすると、
D1=a×S1+b
D2=a×S2+b
からaおよびbを算出し、該算出したaおよびbを用いた関数
S=(D−b)/a
を求め、この関数に、記録品位を改善させるための、例えば、イコライザ等において生じる初期的な出力ずれ等を補正するための出力ずれ量Dを代入することで最適ストラテジSを決定する。
図31は、マルチパルスの形状に関する直線近似を利用した長さずれ補正の一例を示す概念図である。当該長さずれに対する補正量Tmpを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス長を基準波形nTとしたとき、同図(b)に示すように、中間パルス長をTmpとした波形でテスト記録を行い、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の長さずれΔを検出する。このとき、トップパルスの条件は変化させずに固定しておく。
同図に示す例では、このTmpの変化をS1=+0.3とS2=+0.1の2種類行い、その結果得られた長さずれΔをずれ量D1=+0.1およびD2=−0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量Tmpに対する制御結果Δの関係を直線で近似し、この直線を利用して長さずれがキャンセルできる補正量Tmp=+0.2を最適補正値として決定する。
図32は、補正量PWDとTmpを格納するためのテーブル構造を示す概念図である。同図(a)に示すように、補正量PWDおよびTmpは、補正対象となるピット長ごとに定義される。例えば、補正対象ピットが3Tである場合の補正量PWDは、図中「PW3」と示した領域に補正量が格納され、補正対象ピットが3Tである場合の補正量Tmpは、図中「Tm3」と示した領域に補正量が格納される。以下、4T、5T、・・・14Tまで3Tと同様に格納される。
図33は、図1のステップS300で実行されるnTパルスの構成概念を示す概念図である。同図(a)に示すように、例えば5Tピットを形成する場合の記録データは、クロック信号5周期分の長さを有するnTの長さを有するパルス信号として出力される。この記録データに対して補正後のパルスは、同図(b)および(c)に示すように、m’Tのトップパルスで始まり、n’Tの長さを有するパルス信号として出力され、シングルパルスの場合は、(n−m)Tパルス内にPWDが定義され、マルチパルスの場合は、(n−m)Tパルス内にTmpが定義される。
このとき、PWDおよびTmpは、トップパルスの条件を固定して求められた値であるため、mTパルスの条件を基準とした最適m’T/(n−m)T比率に準拠した値となる。その結果、トップパルスと後続パルスとで構成されるnTパルスは、記録品位の向上に望ましい値となる。ただし、この時点では未だ位相条件は定義されていないため、後述する位相条件の決定に関するフローをさらに実行することで最適化されたストラテジを得る。
(位相ずれ補正)
図34は、図1(b)に示したステップS400の位相ずれ補正で使用するテスト用記録パルスの例を示す概念図である。同図(a)は、単一のパルスパターンで構成されたシングルパルスを用いる場合の例であり、同図(b)は、複数のパルスパターンで構成されたマルチパルスを用いる場合の例である。
同各図に示すように、シングルパルス10−1とマルチパルス10−2のいずれの場合も、記録パルスの位相条件として、トップパルス12の開始位置を調整するTtoprと、後端パルス16の終了位置を調整するTlastを設定する。これらの値を調整することで、記録後のピット長がより最適化される。尚、これらの位相条件は、前述までのフローで決定されたトップパルスの条件と後続パルスの条件とを基準としたテスト記録を行うことで決定される。
図35は、図1(b)に示したステップS400の位相条件決定フローの実行手順を示すフローチャートである。同図に示すように、図2に示したドライブは、まず最初に、メディア50に対して、mTパルスと(n−m)Tパルスとで構成されるnTパルスの位相条件を変更した複数の記録パターンによるテスト記録を行う(ステップS410)。このとき、mTパルスの条件および(n−m)Tパルスの条件は、前述までのフローで得られた値に固定しておく。、
その後、このテスト記録により形成された記録パターンを再生し(ステップS412)、その結果として2値化回路110から得られた再生2値化信号を記録ずれ検出部112が所定クロックに同期したカウンタで計数して(ステップS414)、該再生2値化信号に含まれたピットおよびランドの長さを計数データとして記録領域115に格納する(ステップS416)。
その後、記録ずれ検出部112は、記録領域115に蓄積された計数データを用いて、計数値ごとの出現頻度を示すヒストグラムを作成し(ステップS418)、このヒストグラムからピット長とランド長の判定基準となる計数結果の閾値を決定する(ステップS420)。
その後、記録ずれ検出部112は、前記閾値を基準に記録領域115に格納された計数データの中から特定のピット/ランドパターンを含む複数種の特定パターンを検索し(ステップS422)、この特定パターンに含まれた同一ピット長と思われる計数結果を平均化するとともに、同一ランド長と思われる計数結果を平均化して、特定パターンを構成する各ピットと各ランドの平均長を求める(ステップS424)。
その後、記録ずれ検出部112は、抽出した複数の特定パターンのうちの一つを基準パターンに設定し、この基準パターンと他のパターンとを比較して(ステップS426)、下記のずれ量をそれぞれ独立に検出する(ステップS428)。
1)記録パルスに対するピットの前側位相ずれ量
2)記録パルスに対するピットの後側位相ずれ量
3)熱干渉による記録パルスからのピットずれ量
その後、演算式導出部113は、記録ずれ検出部112が検出したずれ量に基づいて、最適ストラテジを決定するための演算式を導出し、ストラテジ決定部114は、この演算式導出部113が導出した演算式を用いて各種パラメータの制御結果を予測し(ステップS430)、この予測結果に基づいて、図34に示したTtoprおよびTlastを決定し、これをストラテジ回路102に設定する(ステップS432)。
ここで、ステップS410のテスト記録からステップS424の平均化までの手順は、前述の図20〜図24までに示した手法と同様に行われるため、ここでは詳細な説明を省略する。
図36は、各ピット長における前側位相ずれ量を検出するための記録パターンおよび再生パターンの一例を示す概念図である。同図に示すように、各ピット長における前側位相ずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、固定ピットPxT、固定ランドLyT、可変ピットPzTが連続するパターンを含み、固定ピットPxTのピット長と固定ランドLyTのランド長を固定して、可変ピットPzTのピット長を、同図(b)から(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ピット長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの固定ランドLyTの長さを測定すると、この固定ランドLyTの長さは、理想の記録状態では一定になるはずである。しかし、この固定ランドLyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ピットPxTのピット長は固定されているので、この固定ランドLyT長の理想の規定長さのずれ量は記録時のストラテジにおける3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tの記録パルスに対する前側位相ずれ量に対応することになる。
従って、可変ピットPzTが3Tとなる同図(b)のパターンを基準パターンに設定し、同図(c)〜(f)までの残りのパターンを比較パターンに設定し、これら比較パターンの固定ランドLyTの長さと、基準パターンの固定ランドLyTの長さとを比較すると、同各図に示すように、基準パターンに対する前側位相ずれ量FPS4T〜FPS7Tが得られる。
ここで、各ずれ量FPS3T〜FPS7Tは、ある部位を基準とした相対的な値として検出できれば良いため、基準パターンの前側位相ずれ量FPS3Tは零と定義しても良く、また、理想の長さからのずれ量として検出しても良い。また、同図(b)のパターンに替えて、同図(c)〜(f)に示したパターンのいずれかを基準パターンに設定しても良い。
図37は、各ピット長における後側位相ずれ量を検出するための記録パターンおよび再生パターンの一例を示す概念図である。同図に示すように、各ピット長における後側位相ずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、可変ピットPxT、固定ランドLyT、固定ピットPzTが連続するパターンを含み、固定ランドLyTのランド長と固定ピットPzTのピット長とを固定して、可変ピットPxTのピット長を、同図(b)から(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ピット長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの固定ランドLyTの長さを測定すると、この固定ランドLyTの長さは、理想の記録状態では一定になるはずである。しかし、この固定ランドLyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ピットPzTのピット長は固定されているので、この固定ランドLyT長の理想の規定長さのずれ量は記録時のストラテジにおける3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tの記録パルスに対する後側位相ずれ量に対応することになる。
従って、可変ピットPxTが3Tとなる同図(b)のパターンを基準パターンに設定し、同図(c)〜(f)までの残りのパターンを比較パターンに設定し、これら比較パターンの固定ランドLyTの長さと、基準パターンの固定ランドLyTの長さとを比較すると、同各図に示すように、基準パターンに対する後側位相ずれ量RPS4T〜RPS7Tが得られる。
ここで、各ずれ量RPS3T〜RPS7Tは、ある部位を基準とした相対的な値として検出できれば良いため、基準パターンの後側位相ずれ量RPS3Tは零と定義しても良く、また、理想の長さからのずれ量として検出しても良い。また、同図(b)のパターンに替えて、同図(c)〜(f)に示したパターンのいずれかを基準パターンに設定しても良い。
図38は、熱干渉によるピットずれ量を検出するための記録パターンの一例を示す図である。同図に示すように、熱干渉によるピットずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTが連続するパターンを含み、固定ピットPyTのピット長および固定ランドLzTのランド長を固定して、可変ランドLxTのランド長を、同図(b)から同図(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ランド長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの固定ピットPyTの長さを測定すると、この固定長のピットPyTの長さは、理想の記録状態では一定になるはずである。しかし、この固定ピットPyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ランドLzTのランド長は固定されているので、この固定ピットLyTの理想の規定長さのずれ量は、可変ランドLxTの直前に形成されたピットの熱干渉によるずれ量に対応することになる。
従って、可変ランドLxTが3Tとなる同図(b)のパターンを基準パターンに設定し、同図(c)〜(f)までの残りのパターンを比較パターンに設定し、これら比較パターンの固定ピットPyTの長さと、基準パターンの固定ピットPyTの長さとを比較すると、同各図に示すように、基準パターンに対する前側位相ずれ量HID3T〜HID7Tが得られる。
ここで、各ずれ量HID3T〜HID7Tは、ある部位を基準とした相対的な値として検出できれば良いため、基準パターンの前側位相ずれ量HID3Tは零と定義しても良く、また、理想の長さからのずれ量として検出しても良い。また、同図(b)のパターンに替えて、同図(c)〜(f)に示したパターンのいずれかを基準パターンに設定しても良い。
図39は、ピット前位相ずれ検出と後位相ずれ検出で使用される特定パターン検索用のテーブル構成を示す概念図である。ピット前位相ずれの検出を行う場合には、特定パターンごとに設定されたピットPxT、ランドLyT、ピットPzTに関する同図(a)に示した閾値範囲を基準に、図2の記憶領域115内に格納されたデータを検索し(図35のステップS422に相当)、該閾値を満たすデータ列を抽出する。
その後、ピットPxT、ランドLyT、ピットPzTのぞれぞれに該当する計数結果を分別し、ピットPxT、ランドLyT、ピットPzTごとに平均値を求める(図35のステップS424に相当)。この計数結果の平均値を用いて、前述のパターン比較を行えば、各ピット長における前側位相ずれ量が得られる。同図(b)は、ピット後位相ずれの検出を行う場合の閾値例であるが、考え方と動作は、ピット前位相ずれの検出を行う場合と同様である。
図40は、ピット干渉ずれ検出で使用される特定パターン検索用のテーブル構成を示す概念図である。同図に示すように、ピット干渉ずれの検出は、図39を用いて説明したピット前位相ずれおよび後位相ずれと同様の手法で行われる。
図41は、計数結果の相対比較によりずれ量を検出する場合の具体例を示す概念図である。同図は、ピット前位相ずれを検出する場合の例であるが、他のずれ量を検出する場合も同様の手法で行われる。ずれ量を検出する場合は、まず記憶領域内に格納されたデータ群の中から、同図(a)および(b)に示した基準パターンと比較パターンを検索抽出し、同図(c)および(d)に示すように、本来固定長であるはずの部位に対する計数値を比較する。同図に示す例では、ランドLyTが比較部位になるため、基準パターンの計数結果である同図(c)に示す「12」と、比較パターンの計数結果である同図(d)に示す「11」との差分を求め、得られた差分「1」がずれ量FPS4Tの値となる。
図42は、図35に示した制御量の予測によるTtopr、Tlast決定の実行例を示すフローチャートである。同図に示すように、制御量の予測は、記録条件の異なるS1とS2の2種以上の条件でテスト記録を行い(ステップS450)、その結果得られた記録ピットを再生し(ステップS452)、その結果得られた再生パターンの比較によって、条件S1に対応するずれ量D1と、条件S2に対応するずれ量D2とを求め(ステップS454)、これらS1およびS2とD1およびD2との関係を直線近似し(ステップS456)、該直線を用いて最適なTtoprとTlastを決定する(ステップS458)一連の手順を実行することによって行われる。
図43は、記録条件S1、S2の変化とずれ量D1、D2との関係を示す概念図である。同図(a)に示す記録パルスを「PzT=3T」の基準パルスとすると、比較対象となる「PzT=4T」の記録パルスは、PzTの先端をS1変化させた同図(b)の記録パルスS1と、PzTの先端をS2変化させた同図(c)の記録パルスS2の2条件でテスト記録を行う。
その結果、同図(a)の記録パルスに対応して同図(a1)に示す基準パターンが得られ、同図(b)の記録パルスに対応して同図(b1)に示す比較パターンS1が得られ、同図(c)の記録パルスに対応して同図(c1)に示す比較パターンS2が得られる。ここで、比較パターンS1は、制御量S1に対応してD1のすれ量が生じ、比較パターンS2は、制御量S2に対応してD2のずれが生じる。
制御量S1およびS2に対するずれ量D1およびD2がわかれば、どのパラメータに関してどれだけの制御量を持たせれば、どれだけのずれが生じるかが予測可能となるため、これらの関係を利用して、制御量の予測と補正値の決定を行う。
図44は、直線近似を利用した前側位相ずれ補正の一例を示す概念図である。前側位相ずれに対する補正量Ttopを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス位置を基準位相φとしたとき、同図(b)に示すように、Ttopだけパルスの位置をずらした波形でテスト記録を行い(記録条件S1、S2に相当)、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の位相ずれΔφtopを検出する(ずれ量D1、D2に相当)。
同図に示す例では、このTtopの変化をS1=+0.1とS2=+0.3の2種類行い、その結果得られた検出位相Δφtopをずれ量D1=−0.1およびD2=+0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量Ttopに対する制御結果Δφtopの関係を直線で近似し、この直線を利用して位相ずれがキャンセルできる補正位相Ttop=+0.2を最適補正値として決定する。
このように、ストラテジの変化S1、S2とずれ量の変化D1、D2との関係は、変化点を少なくとも2点求めれば、直線または曲線による近似が可能になるため、この直線を用いてずれ量が零になる最適補正量を求めることができる。
具体的には、ストラテジSを数点変化させたときのずれ量Dを求め、このときのストラテジSとずれ量Dとの関係を一般式「D=a×S+b」に代入し、連立方程式を解くことにより定数a、bを求め、最終的に理想のずれ量Dに対応するストラテジSを求め、このストラテジSを図1に示したストラテジ回路102に設定することにより記録パルスの最適補正を行う。
例えば、図1に示した記録ずれ検出部112で、あるストラテジS1を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD1、他のストラテジS2を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD2であるとすると、
D1=a×S1+b
D2=a×S2+b
からaおよびbを算出し、該算出したaおよびbを用いた関数
S=(D−b)/a
を求め、この関数に、記録品位を改善させるための、例えば、イコライザ等において生じる初期的な出力ずれ等を補正するための出力ずれ量Dを代入することで最適ストラテジSを決定する。
なお、この最適ストラテジSを求める関数は、3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tに対応して求めることができる。また、この最適ストラテジSを求める関数は、記録速度に対応してそれぞれ求めることもできる。
図45は、直線近似を利用した後側位相ずれ補正の一例を示す概念図である。後側位相ずれに対する補正量Tlastを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス位置を基準位相φとしたとき、同図(b)に示すように、Tlastだけパルスの位置をずらした波形でテスト記録を行い、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の位相ずれΔφlastを検出する。
同図に示す例では、このTlastの変化をS1=−0.1とS2=−0.3の2種類行い、その結果得られた検出位相Δφlastをずれ量D1=+0.1およびD2=−0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量Tlastに対する制御結果Δφlastの関係を直線で近似し、この直線を利用して位相ずれがキャンセルできる補正位相Tlast=−0.2を最適補正値として決定する。
図46は、補正量TtopとTlastを格納するためのテーブル構造を示す概念図である。同図(a)に示すように、補正量Ttopは、補正対象となるピット長ごとに、該各ピットの前方ランド長との組み合わせで定義される。例えば、補正対象ピットが3Tであり、該ピットの前方ランドが3Tである場合は、図中「3−3」と示した領域に補正量が格納され、補正対象ピットが4Tであり、該ピットの前方ランドが3Tである場合は、図中「3−4」と示した領域に補正量が格納される。以下、5T、・・・14Tまで3Tおよび4Tと同様に格納される。
また、同図(b)に示すように、補正量Tlastは、補正対象となるピット長ごとに、該各ピットの後方ランド長との組み合わせで定義される。例えば、補正対象ピットが3Tであり、該ピットの後方ランドが3Tである場合は、図中「3−3」と示した領域に補正量が格納され、補正対象ピットが4Tであり、該ピットの後方ランドが3Tである場合は、図中「3−4」と示した領域に補正量が格納される。以下、5T、・・・14Tまで3Tおよび4Tと同様に格納される。
図47は、補正後のシングルパルスの例を示す概念図である。同各図に示すように、同図(a)に示す記録データを光ディスク上に記録する場合には、各ピット長ごとに最適な補正値が適用されたストラテジが設定される。例えば、3Tピットを記録する場合には、同図(b)に示すように、図46に示したテーブルより前方のランド長に応じて3Tピットの前端補正値Ttopを読み出すとともに、後方ランド長に応じて3Tピットの後端補正値Tlastを読み出して、記録パルスの前端および後端を当該TtopおよびTlastで補正する。
また、4Tピット以上を補正する場合は、同図(c)〜(f)に示すように、TtopおよびTlastに加えて、該当ピット長のPWD補正値を図32のテーブルから読み出し、当該PWDの値に応じたパルス形状の補正を行う。
図48は、補正後のマルチパルスの例を示す概念図である。同各図に示すように、マルチパルスの場合には、前述の図47に示したシングルパルスのPWD補正値に替えて、Tmp補正値を図32のテーブルから読み出し、当該Tmpの値に応じたパルス形状の補正を行う。その他はシングルパルスの場合と同様である。
尚、以上説明した実施形態では、最適ストラテジSを求める関数に、ずれ量Dを代入することで最適ストラテジSを決定したが、これに替えて、上記関数から求めた補正テーブルを用意し、この補正テーブルに基づき最適ストラテジSを決定するように構成してもよい。
また、上記最適ストラテジの設定処理は、光ディスクの種別を変更する毎に、あるいは、記録速度を変更する毎に行っても良く、さらに、上記最適ストラテジの設定処理で決定された最適ストラテジの条件を光ディスクの種別および記録速度に対応させてメモリに記憶しておき、再度同一の種別の光ディスクで記録を行う場合、あるいは、同一の記録速度で記録を行う場合は、このメモリに記憶した最適ストラテジを読み出して使用する構成としてもよい。
図49は、メディアの内外周と実行可能な記録速度との関係を示す概念図である。同図に示すように、メディア50は、内周側に設けられたテスト領域52と、内周から外周にかけて設けられた記録領域54とを備え、記録条件を決定する際のテスト記録は、この内周側に設けられたテスト領域52内で行われる。
ここで、スピンドルモータの回転限界等の要因によって、内周側で可能な記録速度と外周側で可能な記録速度とでは差が生じる。例えば、DVD−Rを例に取ると、現在のスピンドルモータの能力では、最外周では16倍速の記録が可能であるが、内周に設けられたテスト領域52では6倍速が限界となる。
よって、同図に示すように、テスト領域52内では1倍速〜6倍速までが実行可能な記録速度となり、記録領域54内では1倍速〜16倍速までが実行可能な記録速度になるが、前述してきたように、ストラテジの設定条件は、テスト記録によって定めるため、6倍速までの条件しか実測することができない。そこで、本発明は、テスト領域で実行不能な高速記録に対する記録条件の設定手法を提供する。
図50は、図18に示した記録パルスを高速記録に適用する場合の構成例を示す概念図である。高速記録を行う場合には、同各図に示した記録パルスのパワーPWとデューティDutyを制御することにより、図2に示したレーザ発振器103のパワー上限内で可能な限り記録速度を低下させずに高速記録を維持させる。
ここで、同各図に示すように、記録パルスのデューティは、トップパルス幅Ttopの長さで規定される図中「Duty」で示した長さで定義しても良く、記録パルス全体の長さで規定される図中「Duty’」で示した長さで定義しても良い。
前述したように、メインパワーPWが示す高さで記録パルス全体のエネルギー量が規定され、トップパルス幅Ttopが示す長さで記録ピット先端に与える初段のエネルギー量が規定されため、記録速度の向上に伴ってメインパワーPWがレーザ発振器103のパワー上限を超える可能性がある場合には、該上限値内でパワーを抑えつつ、トップパルス幅Ttopの長さを増加することで、高速記録に必要なエネルギー量を確保する。
トップパルスの幅Ttopは、3Tの長さを有する最短記録ピットに対応した幅を有する。この最短幅の記録パルスが最も出現確率が高く、記録品位への影響が大きいため、記録パルスのデューティを増加する場合は、まず、トップパルスの幅Ttopの長さを増加し、それでも対応が難しい場合は、記録パルス全体の長さを増加する。
図51は、テスト記録が可能な低速記録で得られたパワーおよびデューティを利用して、テスト記録が困難な高速記録のパワーおよびトップパルスの長さで規定されたデューティを求める概念を示す概念図である。同図(a)に示すように、例えば、テスト記録可能な6倍速の記録速度で実際にテスト記録を行い、その結果得られた条件が同図に示すようなパワーPWとデューティDutyである場合には、同図(b)に示すように、テスト記録困難な16倍速の記録速度のパワーとデューティは、6倍速で得られた各条件にαとβをそれぞれ加算することによって求めることができる。
図52は、テスト記録が可能な低速記録で得られたパワーおよびデューティを利用して、テスト記録が困難な高速記録のパワーおよび記録パルスの長さで規定されたデューティを求める概念を示す概念図である。同図に示すように、記録パルスのデューティは該記録パルス全体の長さで定義しても良い。
図53は、テスト記録によって得られたパワーおよびデューティの条件からテスト記録困難な速度におけるパワーおよびデューティを予測する第1の手法を示した概念図である。同図(a)は、記録速度の上昇に対するデューティの変化を示し、同図(b)は、記録速度の上昇に対するパワーの変化を示す。
同図(b)に示すように、記録速度を上昇させる場合には、速度の上昇に伴ってパワーの増加が必要になるが、図中点線で示したレーザ発振器のパワー上限値以上のパワーを使用することは望ましくないため、この上限値を超えると予想された場合には、パワー条件を低下させるとともに、このパワーを低下させた分、同図(a)に示すようにデューティを増加する。
例えば、同図(b)に示すように、4倍速と6倍速のテスト記録で該各速度における最適パワーが得られた場合には、記録速度に対するパワーの上昇傾斜は、同図中の実線で示した傾斜になるため、テスト記録困難な8倍速以上のパワー条件は、図中の点線で示した傾斜の延長線を利用して求めることができるが、同図に示すように、この延長戦を利用して求めたパワーがレーザ発振器のパワー上限値を超える場合には、当該記録速度におけるパワー条件は、レーザ発振器のパワー上限値以下に設定し、必要なエネルギー量は同図(a)に示すようにデューティを増加することによって確保する。
尚、デューティを増加する場合は、同図(a)中に点線で示したテスト記録可能な速度のデューティを基準として、これに必要な量を加算する形で増加後のデューティを決定する。このように、パワー上限値を超えると予想される場合は、パワーを低下させてデューティを増加することで、最高記録速度を拡大することができる。
図54は、テスト記録によって得られたパワーおよびデューティの条件からテスト記録困難な速度におけるパワーおよびデューティを予測する第2の手法を示した概念図である。同図(a)は、記録速度の上昇に対するデューティの変化を示し、同図(b)は、記録速度の上昇に対するパワーの変化を示す。
同各図に示す手法は、記録速度毎に予めデューティ条件を記録速度の上昇に伴って段階的に増加する設定としておき、この設定したデューティ条件を利用して高速記録時のパワー条件を予測する場合の例である。
この手法では、レーザ出力の上限値に達するか否かに拘わらず、記録速度の上昇に伴ってデューティ条件を増加することにより、レーザ出力の上限値以下のパワーで最高記録速度の拡大が図られる。
図55は、テスト記録によって得られたパワーおよびデューティの条件からテスト記録困難な速度におけるパワーおよびデューティを予測する第1の実行手順例を示したフローチャートである。同図に示すように、本手順によりテスト領域で実測不能な高速記録条件を設定する場合には、まず、記録対象とするメディアのテスト領域を用いて、テスト記録が可能な2倍速〜6倍速までのいずれか一つの速度または任意の複数の速度によるテスト記録を行い、該各速度のパワーとデューティを設定する(ステップS500)。
次に、上記テスト記録によって得られた2倍速〜6倍速までのパワーとデューティの変化係数を利用して、テスト領域で実行困難な8倍速〜16倍速までの各速度におけるパワーとデューティを予測する(ステップS502)。
次に、上記予測したパワーがレーザ発振器の上限値を超えている場合には(ステップS504でYES)、当該記録速度におけるパワーを低下させ、デューティを増加する(ステップS506)。一方、上記予測したパワーがレーザ発振器の上限値以下である場合には(ステップS504でNO)、当該パワーを当該記録速度における条件として決定し処理を終了する。
続いて、ステップS506で増加したデューティがデューティ上限値を超えている場合には(ステップS508でYES)、記録速度を低下させることでパワー上限とデューティ上限を満たす条件での記録を行う(ステップS510)。ここで、デューティ上限値としては、符号長の識別に影響する許容デューティとして各符号長ごとに予め設定された値が用いられる。一方、上記増加したデューティが上限値以下である場合には(ステップS508でNO)、当該デューティを当該記録速度における条件として決定し処理を終了する。
図56は、図55に示したステップS500の実行例を示すデータ図である。同図に示すように、まず、テスト領域を用いて記録可能な速度、例えば6倍速のパワーPWと、各符号長におけるデューティDuty3T〜Duty7Tを実測する。その結果得られた最適パワー値p1と、最適デューティ値a1〜a5をドライブのメモリに記憶する。
図57は、図55に示したステップS502の実行例を示すデータ図である。同図に示すように、6倍速の最適条件を実測した後は、この6倍速の条件を基準に各速度で必要なエネルギー量を加算または減算して、各速度における記録条件を予測する。
例えば、4倍速のパワーは6倍速のパワーよりも低く設定されるため、6倍速のパワーがpである場合には、4倍速のパワーとしては、この6倍速のパワーから係数2だけ減算したパワーを設定する。また、8倍速のパワーは6倍速のパワーよりも高く設定されるため、8倍速のパワーとしては、6倍速のパワーpに2を加算したパワーを設定する。尚、各速度におけるデューティ条件は6倍速で得られた値がそのまま設定される。
図58は、図55に示したステップS504およびS506の実行例を示すデータ図である。同図に示すように、前述の手順で予測した12倍速以上のパワーがレーザ発振器の上限値p+4を超える場合は、12倍速以上の予測パワーをp+4まで低下させるとともに、該パワーを低下させた速度におけるデューティ条件を速度上昇率に応じて増加する。図59は、テスト記録によって得られたパワーおよびデューティの条件からテスト記録困難な速度におけるパワーおよびデューティを予測する第2の実行手順例を示したフローチャートである。同図に示すように、本手順によりテスト領域で実測不能な高速記録条件を設定する場合には、まず、記録対象とするメディアのテスト領域を用いて、テスト記録が可能な2倍速〜6倍速までのいずれか一つの速度または任意の複数の速度によるテスト記録を行い、該各速度のパワーとデューティを設定する(ステップS600)。
次に、上記テスト記録によって得られた2倍速〜6倍速までのパワーとデューティの変化係数を利用して、テスト領域で実行困難な8倍速〜16倍速までの各速度におけるパワーとデューティを予測する(ステップS602)。
次に、上記予測したパワーがレーザ発振器の上限値を超えている場合には(ステップS604でYES)、当該記録速度におけるパワーを低下させる(ステップS606)。一方、上記予測したパワーがレーザ発振器の上限値以下である場合には(ステップS604でNO)、当該パワーを当該記録速度における条件として決定し処理を終了する。
続いて、ステップS606で増加したパワーが依然としてパワー上限値を超えている場合には(ステップS608でYES)、デューティを増加する(ステップS610)。
続いて、ステップS610で増加したデューティがデューティ上限値を超えている場合には(ステップS612でYES)、記録速度を低下させることでパワー上限とデューティ上限を満たす条件での記録を行う(ステップS614)。一方、上記増加したデューティが上限値以下である場合には(ステップS612でNO)、当該デューティを当該記録速度における条件として決定し処理を終了する。
図60は、テスト記録によって得られたパワーおよびデューティの条件からテスト記録困難な速度におけるパワーおよびデューティを予測する第3の実行手順例を示したフローチャートである。同図に示すように、本手順によりテスト領域で実測不能な高速記録条件を設定する場合には、まず、テスト領域で実行可能な少なくとも2つの記録速度、例えば、4倍速と6倍速を用いたテスト記録により、当該各速度における最適パワーとデューティを求める(ステップS620)。
その後、上記2点のパワーおよびデューティを用いて関数近似を行い(ステップS622)、この近似した関数を利用して、テスト領域で実測不能な速度、例えば8倍速〜16倍速までのパワーとデューティを予測する(ステップS624)。
図61は、図60に示したステップS622およびS624の実行例を示すデータ図である。同図に示すように、ステップS620のテスト記録を実行した結果、パワーPWおよびデューティDutyの値として、4倍速=8、6倍速=10がそれぞれ得られた場合には、これらの値を例えば、指数関数「y=A*ln(x)+B y:補正量、x:記録速度」の変数xに代入し、最小二乗法により、A=5.5298、B=0.0361を得る。
その結果得られた「y=5.5298*ln(x)+0.0361」の変数xに各記録速度を代入すれば、各記録速度におけるパワーおよびデューティ値yを得ることができる。この例では、それぞれ8倍速=12、12倍速=14、16倍速=15のパワーおよびデューティ値が得られる。
図62は、記録パワーの上限値とマージンの関係を示した概念図である。同図(a)はパワーとβまたはアシンメトリとの関係を示し、同図(b)はβまたはアシンメトリと記録品位との関係を示す。ここで、同各図中の最適パワーPoが前述した各手順により予測される最適記録パワーに該当するが、実際には同図(b)に示すように、許容される記録品位は、最適パワーPoに対して幾らかのマージン量を持つ。このマージン量は、同図(b)中に示した閾値以下の領域で定義することができる。
そこで、最適パワーPoがレーザ出力の上限値Plimit以上となる条件であっても、即座にレーザ出力の上限以下の記録パワーに可能な記録速度に低下させるのではなく、このマージン範囲内の許容レベルまで記録パワーを低下させることで、最高記録速度の拡大を図る。
上記許容レベルの設定は、直接記録パワーを用いても良いが、同図(a)に示すように、記録パワーと相関関係にあるβやアシンメトリといった指標を用いて決定することが望ましく、また、この許容レベルは、予め設定された値であっても良く、実際のデータ記録に先立って行うテスト記録結果から導出した値を用いても良い。
図63は、記録パワーとデューティの関係を示した概念図である。記録に必要なエネルギー量は、記録速度に比例して増加するため、テスト記録可能な4倍速、6倍速によるテスト記録結果を利用して、パワーとデューティの関係を求め、この関係を利用して、テスト記録が困難な8倍速以上のパワーとデューティを予測することも可能である。
例えば、テスト記録可能な4倍速および6倍速でテスト記録を行い、その結果得られた図中の黒丸で示す値を利用して、図中の直線で示したパワーとデューティの関係を求めておくとともに、テスト記録が困難な8倍速〜16倍速までの各速度における最適パワーを速度ごとに予め仮設定しておき、前記パワーとデューティの関係を利用して、テスト記録が困難な各速度におけるデューティを求めることで、同図中の白丸で示す値を得ることができるため、テスト記録が可能な低速の記録条件から、テスト記録が困難な高速の記録条件を好適に予測することができる。
同様に、テスト記録可能な4倍速および6倍速でテスト記録を行い、その結果得られた図中の黒丸で示す値を利用して、図中の直線で示したパワーとデューティの関係を求めておくとともに、テスト記録が困難な8倍速〜16倍速までの各速度における最適デューティを速度ごとに予め仮設定しておき、前記パワーとデューティの関係を利用して、テスト記録が困難な各速度におけるパワーを求めることで、同図中の白丸で示す値を得ることができるため、テスト記録が可能な低速の記録条件から、テスト記録が困難な高速の記録条件を好適に予測することができる。
尚、上記パワーとデューティの関係は、式や係数として求めておくことが望ましく、また、各記録速度におけるデューティ条件は、テスト記録可能な記録速度条件で導出した最適値に固定してもよいし、記録速度毎に変化させてもよい。
10…記録パルス、12…トップパルス、14…後続パルス、16…後端パルス、50…メディア、52…テスト領域、54…記録領域、100…ドライブ、101…エンコーダ、102…ストラテジ回路、103…レーザ発振器、104…レンズ、105…ハーフミラー、106…レンズ、107…レンズ、108…受光部、109…同期信号検出回路、110…2値化回路、111…デコーダ、112…記録ずれ検出部、113…演算式導出部、114…ストラテジ決定部、115…記憶領域、200…テスト領域、202…再生特性、204…記録条件、206…近似曲線、208…基準条件