JPWO2009008480A1 - 架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途 - Google Patents

架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途 Download PDF

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Abstract

要約高いリン酸吸着能と、低い膨潤度とを併せ持った架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途が開示されている。リン酸二水素アリルアンモニウムと、該リン酸二水素アリルアンモニウムに対して5〜25モル%のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩と、を共重合させて得られ、リン酸吸着量が2.7〜5.0mmol/gであり、膨潤度が2.0〜5.0である、架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩が提供された。この架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、高リン血症の治療薬又は予防薬等として有用である。

Description

本発明は、架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途に関する。
腎機能障害患者は、リン排泄の減少によって高リン血症に罹患することが多い。高リン血症は、カルシウムやリンの代謝における重篤な異常をきたし、血清カルシウムの低下、PTHの産生及び分泌の促進、異所性石灰化並びにビタミンDの活性化抑制による腎性骨異栄養症を引き起こす。腎不全により透析療法に移行しても、リンの恒常性が維持されない限り上記の病態は持続する。このため、高リン血症の治療は、腎不全透析や未透析患者にとって必要不可欠なものである。現在、高リン血症の治療は、食事療法又は経口リン吸着剤による薬物療法によって行われている。しかしながら、食事療法では、高リン血症を改善するには不十分であり、これらの患者の治療には、リン吸着剤の使用が必要であると考えられている。
経口リン吸着剤としては、従来から、アルミニウム塩やカルシウム塩等の無機塩が広く用いられてきた。摂取したアルミニウム塩やカルシウム塩は、腸内のリン酸と結合して不溶性のリン酸塩を形成し、リンの吸収を阻害する。しかし、アルミニウム塩の投与は、アルミニウムの蓄積をもたらし、脳疾患、骨軟化症などを引き起こすことが問題となっている。また、カルシウム塩の投与は、高カルシウム血症を引き起こし、大動脈へのカルシウム沈着及び異所性石灰化により患者の死期を早めることが問題となっている。また、近年では、ランタン塩の一つである炭酸ランタンが上市されたが、ランタンの腸管吸収及び蓄積が認められており、長期投与における安全面が懸念されている。
近年、経口リン吸着剤として有機ポリマーのポリアリルアミンの一種である塩酸セベラマーが上市された。塩酸セベラマーは、上記無機塩の投与で認められた副作用を引き起こさないため、高リン血症の治療に広く用いられている。塩酸セベラマーは、ポリ(アリルアミン/エピクロロヒドリン)であり、製法としては、アリルアミン塩酸塩を重合してポリアリルアミン塩酸塩を得た後、水酸化ナトリウム水溶液中でエピクロロヒドリンと反応させることで架橋を行っている(特許文献1)。
しかしながら、塩酸セベラマーは、リン酸吸収を顕著に減少させるために、高用量の投与が必要とされている。また、塩酸セベラマーは、胃腸管内で水を吸収して膨潤するため、便秘、腹痛、腹部膨満などの副作用を引き起こすことが問題とされており、腸管穿孔、腸閉塞などの深刻な副作用に発展することも報告されている(非特許文献1)。さらに、これらの副作用の発現頻度には、用量依存性が認められている(非特許文献2)。塩酸セベラマーには、膨潤によって引き起こされるこれらの副作用があるため、リン酸吸収を十分に阻害するために必要な量の投与が困難な場合が多く、カルシウム製剤との併用を余儀なくされているのが現状である。よって、塩酸セベラマーに代わる膨潤度の低い経口リン吸着剤の開発が期待されている(非特許文献3)。
また、ポリアリルアミン等のイオン交換樹脂は、膨潤度が低ければイオン交換速度が低下し、リン酸吸着能が低下するため、高いリン酸吸着量を維持しながら低い膨潤度を実現することは困難であると考えられている。さらに、腸内にはリン酸のほかに胆汁酸などの酸が存在し、これらは競合してポリアリルアミン等に吸着することも知られている。
塩酸セベラマーは、胆汁酸に対するリン酸選択性が低いため、腸内では、リン酸吸着量を低下させるだけでなく、胆汁酸の吸着によって、脂溶性ビタミンの吸収阻害を引き起こす可能性がある(非特許文献1)。よって、塩酸セベラマーに代わるリン酸選択性の高い経口リン酸吸着剤の開発が期待されている(非特許文献3)。
ところで、架橋ポリアリルアミンの製法としては、塩酸セベラマーのように、まずポリアリルアミンを合成し、そのポリアリルアミンのアミノ基と複数箇所で反応し得る化合物とを反応させて架橋する方法の他、アリルアミン塩を多官能性モノマーと共重合させる方法が報告されている(特許文献2)。
しかしながら、特許文献2記載の方法では、アリルアミン塩に対する多官能性アリルアミン誘導体の添加量は2モル%以下と記載されており、実施例で得られた架橋ポリアリルアミンは水溶性であるため、経口リン吸着剤としての利用に適当でない。また、得られる架橋ポリアリルアミンの膨潤度に関する記載はなく、膨潤度を低下させる試みは一切されていない。さらに、実施例には、アリルアミン塩酸塩を用いた例しか報告されておらず、重合時に用いる酸の種類によるポリマーの性質の違いについても検討されていない。このことから、特許文献2に記載の架橋ポリアリルアミンは、膨潤度の低い経口リン吸着剤としては利用できないと考えられている。
特許文献3では、ポリアリルアミンを製造する際、そのホモポリマーの合成において、アリルアミンのリン酸塩をモノマーとして重合に用いることが報告されている。しかしながら、この報告には、架橋重合による架橋ポリアリルアミンの合成についての記載はない。
特許文献4では、リン酸塩存在下で重合を行い、リン酸イオンとの親和性を付与したポリマーを得る、いわゆる分子インプリント法を用いたリン吸着剤についての報告がなされており、2-プロパノールなどの希釈剤の存在下、モノマーとリン酸二水素カリウムを混合した後に重合を行うことで、多孔性リン酸インプリントポリマーを得ている。しかしながら、この報告では、モノマーとしてアクリル酸誘導体を用いたもののみが開示されており、アリルアミンを用いたものは開示されていない。また、上記多孔性インプリントポリマーは、リン酸吸着量において塩酸セベラマーに劣り、胆汁酸などの他のイオンとの選択性に関しても調査されていない上、体積の約10倍に膨潤するため、膨潤度の低い経口リン吸着剤としては利用できないと考えられている。
特許文献5では、膨潤度の低いポリマーを得る方法として、架橋ポリマー粒子に表面架橋処理を行うことが報告されている。しかしながら、特許文献5に記載の方法は、吸水性ポリマーについての開示であり、生体内においてリン酸吸着能を発揮するとともに、低い膨潤度も併せ持ったポリマーを開示するものではない。
特許第3113283号公報 特開平10-330427号公報 特公平2−14364号公報 US2005/0276781A1 特開平11−302391号公報 医薬品インタビューフォーム レナジェル(登録商標)錠 250mg 改訂第8版、2005年、p.21 審査報告書 衛研発第3850号(平成14年11月28日) 井上浩義、「今後のリン排泄促進薬・吸収阻害薬」、腎と透析、2003年、55巻、p.941−944
そこで本発明は、高いリン酸吸着能と、低い膨潤度とを併せ持った架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明者らは、経口リン吸着剤について鋭意研究を重ね、リン酸二水素アリルアンモニウムと、架橋剤として、リン酸二水素アリルアンモニウムに対して5〜25モル%のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩と、を共重合させた結果、膨潤度が低く、かつ高いリン酸吸着量を有する架橋ポリアリルアミン及びその酸付加塩を見出すに至った。
すなわち、本発明は、リン酸二水素アリルアンモニウムと、該リン酸二水素アリルアンモニウムに対して5〜25モル%のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩と、を共重合させて得られ、リン酸吸着量が2.7〜5.0mmol/gであり、膨潤度が2.0〜5.0である、架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を提供する。
上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、リン酸吸着量が2.7〜4.8mmol/gであることが好ましく、2.7〜4.5mmol/gであることがより好ましい。
上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物を、アミノ基と反応させることによって表面架橋処理がなされていることが好ましい。
アミノ基と反応する官能基を2個以上有する上記化合物は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素、ジエポキシド又は二塩基酸塩化物であることが好ましく、アクリル酸エステルであることがより好ましい。
上記N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩は、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩であることがより好ましい。
また本発明は、上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を有効成分とする医薬組成物を提供し、さらには、上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を有効成分とする高リン血症の治療薬又は予防薬を提供する。さらに、本発明は、上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の有効量を、高リン血症の治療又は予防が望まれる患者に投与することを含む、高リン血症の治療又は予防方法を提供する。さらに、本発明は、上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の、高リン血症の治療薬又は予防薬の製造のための使用を提供する。さらに、本発明は、上記架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩である高リン血症の治療用又は予防用化合物を提供する。
本発明によれば、高いリン酸吸着能と、低い膨潤度とを併せ持った架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を提供できる。また、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、リン酸選択性が高く、塩酸セベラマー以上のリン酸吸着能を有し、かつ、塩酸セベラマーよりも膨潤度が顕著に低いため、医薬品、特に、高リン血症の治療薬又は予防薬として使用した場合に、リン酸吸収を十分に阻害するのに必要な高用量の投与が可能となり、カルシウム製剤等と併用することなく治療及び予防効果が認められ、便秘、腹痛、腹部膨満などの副作用についても軽減できる。
実施例5における尿中リン排泄試験の結果を示す図である。 実施例6における尿中リン排泄試験の結果を示す図である。 実施例22における尿中リン排泄試験の結果を示す図である。 実施例23における尿中リン排泄試験の結果を示す図である。 実施例24における尿中リン排泄試験の結果を示す図である。 実施例25における腸管付着試験の結果を示す図である。 実施例26における腸管付着試験の結果を示す図である。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、リン酸二水素アリルアンモニウムと、該リン酸二水素アリルアンモニウムに対して5〜25モル%のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩と、を共重合させて得られ、リン酸吸着量が2.7〜5.0mmol/gであり、膨潤度が2.0〜5.0であることを特徴としている。
上記の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るためには、モノマーとして、リン酸二水素アリルアンモニウムを使用する。膨潤を抑えながらも高いリン酸吸着能を維持するためには、モノマーとしてアリルアミンのリン酸塩であるリン酸二水素アリルアンモニウムを用いることが重要である。例えば、アリルアミンの塩酸塩である塩化アリルアンモニウムをモノマーとして用いた場合には、得られる架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩のリン酸吸着能が著しく低下するからである。リン酸二水素アリルアンモニウムは、予めアリルアミンとリン酸から調製してもよいし、アリルアミンとリン酸を反応容器中で混合して、そのまま重合反応を行ってもよい。
上記の架橋剤とは、リン酸二水素アリルアンモニウムと共重合できる官能基を2個以上有する多官能性アリルアミン誘導体のことである。
上記の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るためには、架橋剤として、N,N'-ジアリル置換アルキレンジアミンの酸付加塩を使用する。膨潤度が低く、かつ、高いリン酸吸着量を有する架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るためには、架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩を用いることが重要である。例えば、N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン、N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタンまたはN,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタンを用いた場合、得られるポリマーのリン酸吸着量が低下するか、又は膨潤度が高くなるからである。
上記のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンに付加する酸としては、例えば、無機酸として、塩酸、リン酸及び硫酸が、有機酸として、ギ酸及び酢酸が挙げられるが、塩酸、リン酸及び硫酸がより好ましく、リン酸が最も好ましい。N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩は、予めN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンと酸から調製して使用してもよいし、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンと酸を反応容器中で混合して、そのまま重合反応を行ってもよい。
上記のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩の添加量は、モノマーであるリン酸二水素アリルアンモニウムに対して5〜25モル%であり、10〜25モル%がより好ましく、15〜25モル%が最も好ましい。5モル%未満では得られるポリマーの膨潤度が高くなるため、経口リン吸着剤として使用する場合、好ましくない。架橋剤添加量が5〜25モル%であれば、膨潤度が5.0以下のポリマーが得られ、塩酸セベラマーの膨潤度である6.2を大きく下回ることとなる。
上記の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、リン酸吸着量が2.7mmol/g以上、好ましくは2.8mmol/g以上、より好ましくは3.0mmol/g以上、さらに好ましくは4.0mmol/g以上である。なお、リン酸吸着量の上限は、5.0mmol/gであり、好ましくは4.8mmol/g、より好ましくは4.5mmol/gである。実施例に示したように塩酸セベラマーのリン酸吸着量が最大で2.7mmol/gであるから、上記の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、リン吸着剤として塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有するものである。なお、リン酸吸着量とは、リン酸とグリココール酸をモル比1対1で含む試液中で、被測定試料に吸着して除去されたリン酸イオン量を表す。具体的には、次の方法で測定する。すなわち、被測定試料を50mM塩酸中、37℃で1時間撹拌した後、リン酸水素二ナトリウム12水和物及びグリココール酸ナトリウム水溶液をそれぞれ10mMとなるように添加し、溶液中での被測定試料の最終濃度が1mg/mLとなるようにする。さらに、37℃で1時間撹拌した後、15000rpm、25℃、15分の条件で遠心分離(エッペンドルフ社製;冷却遠心機5417R、アングルローターFA-45-24-11)して被測定試料を除去し、被測定試料に吸着されなかったリン酸の量を無機リン酸測定試薬(和光純薬株式会社製;ホスファC-テストワコー(登録商標))で測定(n=3)し、この測定値から被測定試料に吸着したリン酸イオン量、すなわち、リン酸吸着量を求める(検量線作成範囲は無機リン濃度0〜386mg/mL、分光光度計はモレキュラーデバイス社製、SpectraMax Plus)。上記特許文献1(特許第3113283号公報)に記載の評価方法では、グリココール酸などの胆汁酸を加えずリン酸単独条件でのリン酸吸着量を測定しているが、生体の腸管内にはグリココール酸に代表される胆汁酸が多く存在し、リン酸と競合して吸着することから、本発明においては、上記のとおり胆汁酸競合条件でのリン酸吸着量によって評価するものとする。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、膨潤度が2.0〜5.0である。膨潤度が5.0を上回ると膨潤による副作用のリスクが高くなる可能性がある。膨潤度の範囲としては、好ましくは2.0〜4.5、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.0〜3.5である。実施例に示すように塩酸セベラマーの膨潤度が6.2であるから、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は塩酸セベラマーよりも膨潤による副作用が軽減すると考えられる。なお、膨潤度とは、40℃で16時間以上減圧乾燥した被測定試料200mgを蒸留水50mLに24時間以上浸漬させ、直径47mm、孔径0.45マイクロメートルのメンブランフィルター(ミリポア社製、オムニポア)用いて減圧濾過を行って分離された固体成分重量を、乾燥重量(200mg)で除した値である。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の膨潤度をさらに低下させるために、架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩のアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を二個以上有する化合物(以下、「表面架橋剤」と記載)を反応させる表面架橋処理によって架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の粒子の表面付近の架橋密度を上げる方法がある。
本発明で用いる表面架橋剤としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素、ジエポキシド、二塩基酸塩化物などが挙げられるが、アクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素が好ましく、アクリル酸エステル、エピハロヒドリンがより好ましく、アクリル酸エステルが最も好ましい。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2-ヒドロキシプロピル)、アクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)が好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)がより好ましく、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)が最も好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸(2-ヒドロキシエチル)、メタクリル酸(2-ヒドロキシプロピル)、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられるが、エピクロロヒドリンが好ましい。
ジハロゲン化炭化水素としては、例えば、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,3-ジブロモプロパン、1,4-ジクロロブタン、1,4-ジブロモブタン、1,4-ジクロロ-2-ブテン、3,4-ジクロロ-1-ブテンなどが挙げられる。
ジエポキドとしては、例えば、1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
二塩基酸塩化物としては、例えば、シュウ酸クロリド、マロン酸クロリド、コハク酸クロリド、グルタル酸クロリド、アジピン酸クロリドなどが挙げられる。
本発明において表面架橋処理によって得られる架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、リン酸吸着量が2.7mmol/g以上、好ましくは2.8mmol/g以上、より好ましくは3.0mmol/g以上、さらに好ましくは4.0mmol/g以上である。リン酸吸着量の上限は、5.0mmol/gであり、好ましくは4.8mmol/g、より好ましくは4.5mmol/gである。実施例に示した通り、塩酸セベラマーのリン酸吸着量が2.7mmol/gであるから、本発明において表面架橋処理によって得られる架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩はリン吸着剤として塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有するものである。
本発明において表面架橋処理によって得られる架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、膨潤度が2.0〜5.0である。膨潤度が5.0を上回ると膨潤による副作用のリスクが高くなる可能性がある。膨潤度の範囲としては、好ましくは2.0〜4.5、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.0〜3.5である。表面架橋処理によって膨潤度が低下することから、さらに副作用が軽減すると考えられる。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、胆汁酸に対するリン酸選択性が高いことも特徴のひとつである。リン酸選択性は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上である。上限としては特に限定されず、大きい方が好ましいが、本発明においては10以下である。本発明におけるリン酸選択性とは、リン酸吸着量を、胆汁酸吸着量で除した値である。胆汁酸吸着量とは、リン酸とグリココール酸をモル比1対1で含む試液中で、被測定試料に吸着して除去されたグリココール酸イオン量を表す。具体的には、次の方法で測定する。被測定試料を50mM塩酸中、37℃で1時間撹拌した後、リン酸水素二ナトリウム12水和物及びグリココール酸ナトリウム水溶液をそれぞれ10mMとなるように添加し、溶液中での被測定試料の最終濃度が1mg/mLとなるようにする。さらに37℃で1時間撹拌した後、15000rpm、25℃、15分の条件で遠心分離(エッペンドルフ社製;冷却遠心機5417R、アングルローターFA-45-24-11)して被測定試料を除去し、被測定試料に吸着されなかったグリココール酸の量を胆汁酸測定試薬(和光純薬株式会社製、総胆汁酸-テストワコー(登録商標))を用いて測定(n=3)し、この測定値から被測定試料試料に吸着したリン酸イオン量、すなわち、リン酸吸着量を求める(検量線作成範囲は無機リン濃度0〜386mg/mL、分光光度計はモレキュラーデバイス社製、SpectraMax Plus)。
以上のことから、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、上記特許文献2(特開平10-330427号公報)に記載の方法では得られない、経口リン吸着剤としての優れた特性を有する。また、塩酸セベラマーと比べて高いリン酸吸着量と、低い膨潤度を有することから、塩酸セベラマーの医薬用途で問題となっている過度の膨潤による副作用を軽減することができる。当該副作用軽減効果は、動物実験において腸管内容物の移動速度、排泄速度あるいは腸管への付着量を観察することにより確認が可能である。
また、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、腸管への付着が塩酸セベラマーと比べて少ないことを特徴とする。腸管へのポリマー等の付着は腸管運動を妨げる要因となりうるため、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は塩酸セベラマーに比べて便秘などの消化管副作用が軽減されると考えられる。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を製造する際の重合方法としては、溶液重合、逆相懸濁重合、乳化重合、沈殿重合、その他公知の方法が使用できる。重合時にモノマーを溶解させる溶媒としては、例えば、水、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸若しくはギ酸、酢酸などの有機酸の水溶液、又はメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒、あるいはこれらの溶媒から任意の二種以上を混合した混合溶媒が挙げられるが、中でも水又は水と極性溶媒の混合溶媒が好ましい。溶媒の量は、モノマーであるリン酸二水素アリルアンモニウムと架橋剤との合計重量1gに対して0.2mL〜3.0mLが好ましいが、0.3mL〜2.0mLがより好ましく、0.3mL〜1.5mLが最も好ましい。
逆相懸濁重合又は乳化重合のような二相系の重合条件では、モノマー溶液を分散させる分散媒として公知の有機溶媒が使用でき、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、流動パラフィン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル又はこれらの溶媒から任意の二種以上を混合した混合溶媒が使用できるが、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンが好ましく、ヘプタン、オクタンがより好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
逆相懸濁重合又は乳化重合のような二相系の重合条件では、必要に応じて界面活性剤を添加する。界面活性剤としては公知のものが使用でき、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール水添ヒマシ油、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジイソオクチルなどが挙げられるが、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタンがより好ましく、モノラウリン酸ソルビタンが最も好ましい。
得られるポリマーにマクロ細孔を形成するために、メタノール、エタノール、1,1-ジメチルエタノール、オクタノール、2-プロパノール、ヘキサンなどの希釈剤を加えてもよいが、上記希釈剤を加えないほうが好ましい。
重合開始剤としてはアゾ系ラジカル開始剤が用いられる。アゾ系ラジカル開始剤としては公知の物が使用でき、例えば、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などが挙げられるが、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩が好ましく、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物がより好ましく、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩が最も好ましい。
開始剤添加量は、モノマーと架橋剤の合計モル数に対し0.1モル%〜10モル%が好ましく、0.5モル%〜8モル%がより好ましく、0.7モル%〜5モル%が最も好ましい。
重合温度は30℃〜100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましく、40℃〜70℃が最も好ましい。重合時間は重合温度などにより左右されるが、通常は100時間以内で十分である。
リン酸二水素アリルアンモニウムのラジカル重合を行う際、架橋剤として末端二重結合を二個有するN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩を共存させることで、この両末端でポリマー鎖が伸長し、架橋構造を形成する。この際、架橋剤の一部は一方の二重結合が反応せず、二重結合のまま残り、架橋に関与しないことがある。
上記の通りに製造すれば、上記範囲内のリン酸吸着量及び膨潤度を有する本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得ることができる。ただし、採用する反応条件(反応物の濃度、反応温度、反応時間等)によっては、得られる架橋ポリアリルアミンポリマーの性能(リン酸吸着量、膨潤度、リン酸選択性)は上記範囲に入らないこともある。その場合、反応条件を適宜変更することで性能を上記範囲内に調整することができる。また、得られる架橋ポリアリルアミンポリマーの性能が上記範囲内であったとしても、さらに良好な性能を有する架橋ポリアリルアミンポリマーを得る目的で反応条件を変更させてもよい。反応条件と得られる架橋ポリマーの性能との関係については、下記実施例1に記載されている。性能調整のための反応条件の変更方法を具体的に例示すると、例えば、(1) 重合反応時の反応物の濃度を高くする(溶媒量を減少させる)、(2) 重合温度を低くし、反応時間を延長する、(3) ラジカル開始剤を多く使用する、等の方法が挙げられるが、これらに限定されない。(1)を行った場合には、得られる架橋ポリアリルアミンポリマーのリン酸吸着量は若干低下するが、膨潤度は低下しより良好になる。(2)を行った場合には、リン酸吸着量は若干低下するが、リン酸選択性は向上し、また、膨潤度も低下してより良好になる。(3)を行った場合には、リン酸吸着量は若干低下するが、膨潤度は低下してより良好になる。また、モノマー、開始剤の純度を高くすると、ラジカル停止反応が抑制され、膨潤度が低下する。また、得られる架橋ポリアリルアミンまたはその酸付加塩の粒径を小さくするとリン酸吸着量が向上する。
重合反応によって得られる架橋ポリアリルアミンはリン酸塩であるから、リン吸着剤として用いるには、フリー体あるいは他の酸付加塩に変換する必要がある。フリー体への変換は、水洗浄あるいは中和によって行う。中和に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアなどの無機塩基や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシドなどの金属アルコキシドが挙げられる。
フリー体の架橋ポリアリルアミンを塩化して酸付加塩とする場合、塩化に用いる酸としては、リン酸を除く薬学的に許容される酸が使用でき、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、酢酸、安息香酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、塩酸、炭酸、酢酸がより好ましく、塩酸、酢酸が最も好ましい。架橋ポリアリルアミンのアミノ基に対する酸の当量は、1当量以下の任意の量でよいが、0.1当量〜0.8当量がより好ましく、0.1当量〜0.5当量が最も好ましい。また、重合によって得られたリン酸塩の架橋ポリアリルアミンに過剰の酸を作用させることで、フリー体を経由することなく目的とする酸付加塩に変換することもできる。フリー体への変換は、まず水中でポリマーのリン酸塩と水酸化ナトリウム水溶液を反応させた後、濾過してリン酸塩を除き、次に水中で撹拌、洗浄して濾過を行う方法が好ましい。また、酸付加塩とせずに、フリー体のままでもよい。
本発明における表面架橋処理は架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を溶媒に分散させ、反応を行うが、好ましくは架橋ポリアリルアミンのフリー体で反応を行う。
表面架橋剤の添加量は、表面架橋処理する架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の重量に対して1.0重量%〜50重量%の範囲で適宜選択されるが、1.5重量%〜40重量%が好ましく、2.5重量%〜20重量%がより好ましく、2.5重量%〜10重量%が最も好ましい。添加量が多いほど得られるポリマーの膨潤度は低下するが、過度の添加はリン酸吸着量を減少させるため、好ましくない。
表面架橋処理に用いる溶媒は表面架橋剤によって適宜選択される。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールに代表されるアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンに代表される炭化水素系溶媒、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水などの公知の溶媒又はこれらの溶媒から任意の二種以上を混合した混合溶媒が使用できる。
表面架橋処理の温度は、表面架橋剤によって適宜選択されるが、0℃〜80℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましく、20℃〜50℃が最も好ましい。
表面架橋処理の時間は、表面架橋剤や温度によって適宜選択されるが、通常5分〜10時間が好ましい。
表面架橋処理における架橋反応は、表面架橋剤が架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩粒子の表面付近に存在する二個のアミノ基と反応することにより起こる。表面架橋剤の例としてアクリル酸エステル(アクリル酸(2-ヒドロキシエチル))を用いた場合の反応について、スキーム1において説明する。まず、ポリマー粒子表面のアミノ基がアクリル酸エステルにMichael付加する(ステップ1)。次いで、近傍の粒子表面上のアミノ基が、エステルのカルボニル基を攻撃してアミド化が進行する(ステップ2)。これにより、ポリマー粒子表面付近の架橋が強化される。このとき、反応条件によっては、一部の表面架橋剤においてステップ1のみが進行し、架橋が進行しない場合がある。
Figure 2009008480
表面架橋処理の後、必要に応じて架橋ポリアリルアミンを塩化し、酸付加塩とすることができる。塩化は、先に述べたの方法と同様に行う。当該塩化に用いる酸としては、薬学的に許容される酸が使用でき、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、酢酸、安息香酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、塩酸、炭酸、酢酸がより好ましく、塩酸、酢酸が最も好ましい。ポリマーのアミノ基に対する酸の当量は、1当量以下の任意の量でよいが、0.1当量〜0.8当量が好ましく、0.1当量〜0.5当量がより好ましい。また、本発明において得られたポリマーは、必要に応じて粉砕を行う。粉砕の方法としては特に限定されず、乾式、湿式のいずれで粉砕しても良い。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、その高いリン酸吸着量と低い膨潤度から医薬組成物として用いることができ、中でも高リン血症の治療又は予防薬として好ましく用いることができる。この場合、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩をそのまま粉末剤として、又は適当な剤形の医薬組成物として哺乳動物に対して経口投与することにより、架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩に腸内のリン酸が吸着することから、結果として高リン血症の治療又は予防に寄与する。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を有効成分とする医薬組成物の投与剤形としては、例えば、錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤などが挙げられる。上記剤形は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる各種担体を含有するものである。各種担体としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。また必要に応じて、例えば、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤などの添加物を用いることもできる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、D-マンニトール、バレイショ澱粉、ショ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉、ショ糖、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を有効成分とする医薬組成物の有効投与量及び投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状の重篤度によっても異なるが、例えば、通常成人であれば1日当り0.1〜15gを、好ましくは0.5〜9gを食前、食中、あるいは食後に投与することができる。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を有効成分とする医薬組成物は単独で、あるいは炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸ランタンなどの経口リン吸着剤と併用して投与することができる。
本発明を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(参考例1) リン酸二水素アリルアンモニウムの合成
メカニカルスターラー、温度計を備えた三つ口丸底フラスコに、リン酸(85%) 46.1g(0.40mol)とエタノール500mLを仕込み、氷冷下、アリルアミン30.0mL(0.40mol)を加えた。室温で30分撹拌した後、析出した白色結晶を濾別し、エタノールで十分洗浄した。60℃で減圧乾燥することにより、リン酸二水素アリルアンモニウムを59.6g得た。
(参考例2) N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン及びその二リン酸塩の合成
フラスコに、1,3-ジクロロプロパン38.0mL(0.40mol)とアリルアミン300mL(4.00mol)を仕込み、アルゴン雰囲気下内温50〜52℃で16時間加熱撹拌した。過剰のアリルアミンの約半量を減圧留去し、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム48gを水144gに溶解して調製)を加えた。析出した塩を濾過して除き、濾液をさらに約半量まで減圧濃縮した。ジエチルエーテルで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮して油状の粗生成物を得た。この粗生成物を減圧蒸留(42〜44℃/0.3kPa)し、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンを38.4g得た。フラスコに、リン酸(85%) 15.0g(130mmol)とエタノール300mLを仕込み、氷冷下、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン10.0g(65.0mmol)をエタノール20mLに溶解して加えた。室温で30分撹拌した後、析出した白色結晶を濾別し、エタノールで洗浄した。60℃で減圧乾燥することにより、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩を22.6g得た。全量をメタノール175mLに懸濁させて加熱還流下水14mLを加えて溶解させた。室温で撹拌したところ結晶が析出した。-10℃の冷凍庫で1時間静置した後濾過し、氷冷したメタノール/水(100/2 v/v)で洗浄した。続いてエタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥することにより、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩を22.0g得た。
(参考例3) N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン及びその二リン酸塩の合成
フラスコに、1,2-ジクロロエタン7.9mL(0.10mol)とアリルアミン75mL(1.0mol)を仕込み、アルゴン雰囲気下内温50〜52℃で20時間加熱撹拌した。過剰のアリルアミンの約半量を減圧留去し、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム12gを水36gに溶解して調製)を加えた。水を加えて析出した塩を溶解させ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮して油状の粗生成物を得た。この粗生成物を減圧蒸留(85-87℃/1.2kPa)し、N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタンを8.08g得た。
N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン8.41g(60,0mmol)をエタノール300mLに溶解させた。-78℃に冷却し、リン酸(85%) 13.8g(120mmol)をエタノール120mLに溶解させてゆっくり滴下した。30分撹拌した後、析出した白色結晶を濾別し、エタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥することにより、N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン二リン酸塩を19.9g得た。このうち15.0gをメタノール120mLに懸濁させて加熱還流下水12mLを加えて溶解させた。-20℃で撹拌したところ結晶が析出した。濾過し、氷冷したメタノール/水(100/4 v/v)で洗浄した。続いてエタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥することにより、N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン二リン酸塩を10.7g得た。
(参考例4) N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン及びその二リン酸塩の合成
1,4-ジアミノブタン20.0g(227mmol)とトリエチルアミン63.3mL(454mmol)をアセトニトリル230mLに溶解させ、氷冷下撹拌しながら二炭酸ジtert-ブチル99.0g(454mmol)をゆっくり加えた。室温で一時間撹拌した後、-20℃まで冷却した。固体を濾取して減圧乾燥を行い、ブタン-1,4-ジイルジカルバミン酸tert-ブチルの粗生成物を47.1g得た。これをアセトニトリル300mLに60℃で加熱溶解させ、室温で静置したところ針状結晶が析出した。-20℃に冷却した後、結晶を濾取し、ブタン-1,4-ジイルジカルバミン酸ジtert-ブチルを45.6g得た。
ブタン-1,4-ジイルジカルバミン酸ジtert-ブチル21.0g(72.9mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド100mLに懸濁させた。フラスコ内をアルゴンで置換し、臭化アリルを18.9mL(219mmol)加えた。内温40℃で水素化ナトリウム60%鉱油分散物8.74g(219mmol)を少しずつ加えた。その後、内温が10℃〜20℃となるよう氷浴で調節しながら撹拌した。発泡と温度上昇が見られなくなるのを確認した後、水素化ナトリウム60%鉱油分散物2.91g(73mmol)、臭化アリル6.3mL(73mmol)を加え、さらに室温で2時間撹拌した。氷冷し、水をゆっくり加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で2回、水で3回、飽和食塩水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、ブタン-1,4-ジイルビス(アリルカルバミン酸)ジtert-ブチルの粗生成物を油状物として得た。この油状物全量をエタノール220mLに溶解させ、6M塩酸50mLを加え、2.5時間加熱還流させた。液上部に浮かぶオイルの大部分を除いた後、減圧濃縮を行った。エタノール100 mLを加えて濃縮する操作を3回繰り返したところ白色結晶が析出した。氷冷した後濾過し、氷冷したエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥を行い、N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン二塩酸塩を14.8g得た。全量を水100mLに溶解させ、20w/w%水酸化ナトリウム水溶液30mLを加え、ジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。粗生成物を減圧蒸留し(88℃/0.2kPa)、N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタンを8.65g得た。フラスコにリン酸(85%)8.07gを秤取し、エタノール150mL、2-プロパノール75mLを加えて氷冷した。ここにN,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン5.89gをエタノール25mLに溶解させて加えたところ、粘稠な固体が析出した。室温で3日間静置したところ固い塊になった。この塊を砕いて濾過し、エタノールで洗浄した後室温で減圧乾燥を行い、N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタンリン酸塩を12.8g得た。全量をメタノール200mLに懸濁させ、加熱還流下、水25mLを加えた。固体が少し溶け残ったので熱時濾過し、濾液を室温で静置したところ白色結晶が析出した。-10℃の冷凍庫で1時間静置した後、濾過し、メタノール/水(100/4 v/v)で洗浄した。次いでエタノールで洗浄し、50℃で減圧乾燥を行い、N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン二リン酸塩23.1gを得た。
(参考例5) N,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタン及びその二リン酸塩の合成
1,5-ジアミノペンタン7.85g(76.8mmol)とトリエチルアミン21.4mL(154mmol)をアセトニトリル80mLに溶解させ、氷冷下撹拌しながら二炭酸ジtert-ブチル33.6g(154mmol)をゆっくり加えた。室温で一時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。酢酸エチル20mLを加えて60℃で加熱溶解させ、ヘキサン100mLを加えて室温で撹拌したところ結晶が析出した。結晶を濾取し、ペンタン-1,5-ジイルジカルバミン酸ジtert-ブチルを16.1g得た。
ペンタン-1,5-ジイルジカルバミン酸ジtert-ブチル45.4g(150mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド200mLに懸濁させた。フラスコ内をアルゴンで置換し、臭化アリルを38.9mL(450mmol)加えた。内温40℃で水素化ナトリウム60%鉱油分散物18.0g(450mmol)を少しずつ加えた。氷冷し、水をゆっくり加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水で3回、飽和食塩水で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、ペンタン-1,5-ジイルビス(アリルカルバミン酸)ジtert-ブチルの粗生成物を油状物として得た。この油状物全量をエタノール440mLに溶解させ、6M塩酸100mLを加え、1時間加熱還流させた。減圧濃縮を行った後、エタノール200 mLを加えて濃縮する操作を2回繰り返したところ白色結晶が析出した。濾過し、エタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥を行い、N,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタン二塩酸塩を24.5g得た。全量を水100mLに溶解させ、20w/w%水酸化ナトリウム水溶液50gを加え、ジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。粗生成物を減圧蒸留し(64℃/0.1kPa)、N,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタンを7.73g得た。フラスコにリン酸(85%)9.78gを秤取し、エタノール160mLを加えて氷冷した。ここにN,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタン7.73gをエタノール40mLに溶解させて加えたところ、固体が析出した。室温で3日間静置したところ固い塊になった。この塊を砕いて濾過し、エタノールで洗浄した後50℃で減圧乾燥を行い、N,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタンリン酸塩を16.0g得た。全量をメタノール140mLに懸濁させ、加熱還流下、水2.8mLを加えた。固体が少し溶け残ったので熱時濾過し、濾液を室温で静置したところ白色結晶が析出した。濾過し、氷冷したメタノール/水(100/4 v/v)で洗浄した。次いでエタノールで洗浄し、50℃で減圧乾燥を行い、N,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタン二リン酸塩13.1gを得た。
(参考例6) 塩酸セベラマーの合成
フラスコに濃塩酸173mLを入れ、内温5〜10℃でアリルアミン120g(2.10mol)を滴下した。滴下終了後、70℃のオイルバスで加熱しながら90mLの液体を減圧留去した。系内を3回アルゴンで置換した後、30分アルゴンをバブリングした。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩2.40g(8.85mmol)を水5.4mLに懸濁させたものを加え、内温50℃で24時間撹拌した。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩2.40g(8.85mmol)を水5.4mLに懸濁させたものを加え、内温50℃でさらに44時間撹拌した。水48mLを加えて室温まで冷却し、メタノール2Lに撹拌しながらゆっくり注いだ。得られた白色固体を濾過した。固体をメタノール2Lに加えて1時間撹拌し、濾過する操作を2回繰り返した。得られた固体を50℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、ポリアリルアミン塩酸塩を111g得た。
得られたポリアリルアミン塩酸塩25.0gを200mLビーカーに秤取し、水100mLに溶解した。メカニカルスターラーで撹拌しながら水酸化ナトリウム7.12gを加えたところ、pH10となった。内温25℃でエピクロロヒドリン2.50mLを加えて撹拌したところ、23分後に固化した。撹拌を止め、25℃で18時間静置した。2-プロパノール75mLを加えてゲルを砕き、濾過した。固体を水340mLに加えて1時間撹拌し、濾過する操作を3回行った。2-プロパノール600mLに加えて1時間撹拌し、濾過した。30℃の真空オーブンで37時間乾燥し、白色固体25.7gを得た。これを凍結粉砕し、塩酸セベラマーを得た。
所望のリン酸吸着能を有する塩酸セベラマーが合成されたことを確認するため、上記特許文献1記載のin vitro評価方法に準じて、塩酸セベラマーのリン酸単独条件でのリン酸吸着量を評価した。具体的には、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム12水和物を用い、それぞれの濃度が30mM、80mM、12mMである溶液を調製し、1M塩酸を加えてpH7にあわせて試験液とし、次いで塩酸セベラマー20mgを三角フラスコにとって上記試験液10mLを添加し、37℃水浴で3時間撹拌した。撹拌後のpHは8〜9となるので、1M塩酸でpH7にした上で、この懸濁液を少量採取して遠心分離器(エッペンドルフ社製、冷却遠心機5417R、アングルローターFA-45-24-11)にて塩酸セベラマーを除去し、塩酸セベラマーに吸着されなかったリン酸の量を無機リン酸測定試薬(和光純薬株式会社製、ホスファC-テストワコー(登録商標))を用いて測定(n=3)し、この測定値から塩酸セベラマーに吸着したリン酸イオン量、すなわち、リン酸吸着量を求めた(検量線作成範囲は無機リン濃度0〜386mg/mL、分光光度計はモレキュラーデバイス社製、SpectraMax Plus)。この結果、リン酸単独条件でのリン酸吸着量は3.4±0.5mmol/gであり、特許文献1に記載のリン酸吸着量(3.1mmol/g)と同等であることがわかった。
次に、得られた塩酸セベラマーの膨潤度とリン酸吸着能のin vitro評価を以下に示す方法で行った。
[試料の膨潤度測定試験]
40℃で16時間以上減圧乾燥した被測定試料200mgを蒸留水50mLに24時間以上浸漬させ、直径47mm、孔径0.45マイクロメートルのメンブランフィルター(ミリポア社製、オムニポア)用いて減圧濾過を行って分離された固体成分重量を、乾燥重量(200mg)で除した値で示した。
[リン酸吸着量及び胆汁酸吸着量測定試験]
被測定試料10mgを50mM塩酸1mL中で、37℃で1時間撹拌した後、リン酸水素二ナトリウム12水和物及びグリココール酸ナトリウム水溶液がそれぞれ11.1mMである混合溶液を9mL加えた。さらに37℃で1時間撹拌した後、遠心分離器(エッペンドルフ社製、冷却遠心機5417R、アングルローターFA-45-24-11)にて被測定試料を除去し(15000rpm、25℃、15分)、被測定試料に吸着されなかったリン酸及びグリココール酸の量をそれぞれ無機リン酸測定試薬(和光純薬株式会社製、ホスファC-テストワコー(登録商標))及び胆汁酸測定試薬(和光純薬株式会社製、総胆汁酸-テストワコー(登録商標))を用いて測定(n=3)し、この測定値から被測定試料に吸着したリン酸イオン量、すなわち、リン酸吸着量を求める(検量線作成範囲は無機リン濃度0〜386mg/mL、分光光度計はモレキュラーデバイス社製、SpectraMax Plus)。リン酸選択性は、リン酸吸着量を胆汁酸吸着量で除した値で示した。
塩酸セベラマーの評価結果を表1に示す。リン酸選択性は1.2と低く、膨潤度は6.2であった。
Figure 2009008480
(実施例1) 種々の条件でのリン酸二水素アリルアンモニウムの架橋共重合と解塩、塩酸塩化
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るための重合を、種々の条件下で行った。表2に、各重合条件の溶媒量、重合開始剤量、重合温度、重合時間を示す。なお、各条件における重合及び得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩の塩酸塩化は、以下の手順で行った。フラスコにリン酸二水素アリルアンモニウム6.20gとN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩2.80g、所定量の溶媒(水)を仕込み、50℃のオイルバスで加熱し、溶解させた。系内をアルゴンで3回置換した後、所定量の重合開始剤(2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩)を加え、所定の重合温度で所定の重合時間加熱撹拌した。得られた固体を砕いて濾取し、水、次いでエタノールで十分洗浄した。60℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンリン酸塩の白色粉末を得た。こうして得た架橋ポリアリルアミンリン酸塩を水(ポリマー1gに対し約2.5mL)に分散させ、撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液(ポリマー1gに対し約4mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。濾液が中性になるまで水で洗浄した後、エタノールで洗浄した。60℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンフリー体を得た。得た架橋ポリアリルアミンフリー体0.40gと水8mLをフラスコに仕込み、撹拌しながら濃塩酸4mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。濾液が中性になるまで水で洗浄した後、エタノールで十分洗浄した。60℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン塩酸塩を得た。
得られた各ポリアリルアミン塩酸塩を、参考例6と同様に評価した。結果を表2に示す。重合を55℃、15時間で行った場合(参考例7、実施例1−2、実施例1−4)と、45℃、61時間で行った場合(実施例1−1、実施例1−3、実施例1−5)を比較すると、45℃、61時間で行った場合、リン酸吸着量はやや低下するものの、リン酸選択性が向上し、膨潤度も低下していた。開始剤を倍量に増やすと、リン酸吸着量はやや低下したものの、膨潤度の低下が見られた(実施例1−2、実施例1−3)。溶媒として用いる水を半分に減じても膨潤度の低下が見られた(実施例1−4、実施例1−5)。反応温度、反応時間、溶媒量、開始剤添加量を最適化することで、高いリン酸吸着量を有し、膨潤度の低い架橋ポリアリルアミン塩酸塩を得ることができた。
Figure 2009008480
a) モノマーと架橋剤の合計モル数に対するモル%
(実施例2) 種々の架橋剤添加量でのリン酸二水素アリルアンモニウムの架橋共重合と解塩、塩酸塩化
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るための重合を、表3記載の種々の架橋剤添加量で行った。なお、各条件における重合及び得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩の塩酸塩化は、以下の手順で行った。フラスコにリン酸二水素アリルアンモニウム6.20gと所定量の架橋剤(N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩)、水4mLを仕込み、50℃のオイルバスで加熱し、溶解させた。系内をアルゴンで3回置換した後、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.11gを加え、内温45〜47℃で64時間加熱撹拌した。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩添加後数時間で反応系は固まり、撹拌は停止した。得られた固体を砕いて濾取し、水、次いでエタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンリン酸塩の白色粉末を得た。こうして得た架橋ポリアリルアミンリン酸塩を水(ポリマー1gに対し約5mL)に分散させ、撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液(ポリマー1gに対し約4mL)を加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取し、濾液が中性になるまで水で洗浄した。次に水中で一晩撹拌して濾過し、エタノールで洗浄した。減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンフリー体を得た。得られた架橋ポリアリルアミンフリー体0.40gと水8mLをフラスコに仕込み、撹拌しながら濃塩酸2mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。濾液が中性になるまで水で洗浄した後、エタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン塩酸塩を得た。
得られた各ポリアリルアミン塩酸塩を参考例6と同様に評価した。結果を表3に示す。架橋剤添加量2モル%では、膨潤度が大きく、本発明の目的を達成できなかったが、添加剤を増やすとともに膨潤度は低下し、それに従いリン酸選択性も向上し、架橋剤添加量が5モル%以上では膨潤度が5.0を下回った。しかし、架橋剤添加量を30モル%としても20モル%の場合と比べて膨潤度の低下は見られず、架橋が効率的に進行していないものと考えられた。
Figure 2009008480
(実施例3) 種々の架橋剤添加量でのリン酸二水素アリルアンモニウムの架橋共重合と解塩、塩酸塩化(再結晶精製品の架橋剤を使用)
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るための重合を、表4記載の種々の架橋剤添加量で行った。なお、各条件における重合及び得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩の塩酸塩化は、モノマーであるリン酸二水素アリルアンモニウム、溶媒である水、及び開始剤である2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩の量を表4の記載に従い適宜変更したこと、並びに所定量の架橋剤として再結晶精製をしたN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。
得られた各ポリアリルアミン塩酸塩の評価を参考例6と同様に評価した。結果を表4に示す。架橋剤添加量2モル%では、膨潤度が高く、本発明の目的を達成できなかったが、添加量を増やすとともに膨潤度は低下し、それに従いリン酸選択性も向上し、架橋剤添加量が5モル%以上では膨潤度が5.0を下回った。架橋剤添加量を30モル%としても20モル%の場合と比べて膨潤度の低下は見られなかった。
Figure 2009008480
a) モノマーと架橋剤の合計モル数に対するモル%
(比較例1) 種々の架橋剤を用いたリン酸二水素アリルアンモニウムの架橋共重合と解塩、塩酸塩化
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩を得るための重合を、表5記載の種々の架橋剤及び架橋剤添加量で行った。なお、各条件における重合及び得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩の塩酸塩化は、架橋剤及び架橋剤添加量を表5の記載に従い適宜変更した選択した以外は、実施例2と同様に行った。
得られた各ポリアリルアミン塩酸塩を参考例6と同様に評価した。結果を表5に示す。架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩を5%用いた実施例3−1のデータを並記した。架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン、N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン又はN,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタンそれぞれの二リン酸塩を用いた場合には架橋剤添加量が5モル%〜30%のいずれにおいても膨潤度が大きくなり、本発明の目的を達成できない。このことから、架橋剤としてはN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩を用いる必要がある。
Figure 2009008480
(注) C2: N,N'-ジアリル-1,2-ジアミノエタン二リン酸塩、C3: N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩、C4: N,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン二リン酸塩、C5: N,N'-ジアリル-1,5-ジアミノペンタン二リン酸塩
(実施例4) 塩酸減量の検討
架橋ポリアリルアミン塩酸塩は、リン酸を吸着すると同時に塩酸を放出する。過剰の塩酸放出は過塩素性アシドーシスを引き起こす可能性があるため、塩酸塩化の程度はできるだけ低いことが好ましい。そこで、表3に示した実施例2−4の条件で得た架橋ポリアリルアミンフリー体(架橋剤20モル%使用)を用いて、アミノ基の一部を塩酸塩にした場合の効果を確認した(アミノ基の約3分の2が塩酸塩化された架橋ポリアリルアミンを、以下「架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩」と記載する)。
(1)完全塩酸塩(実施例4−1)
実施例2−4の条件で得た架橋ポリアリルアミンフリー体3.00gを水60mLに分散させ、室温で濃塩酸30mLを加えた。1.5時間撹拌した後、固体を濾取した。濾液が中性を示すまで水で洗浄した後、エタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン塩酸塩を4.84g得た。
(2)2/3塩酸塩(実施例4−2)
実施例2−4の条件で得た架橋ポリアリルアミンフリー体0.35gを水4.0mLに分散させ、室温で1M塩酸3.7mLを加えた。1時間撹拌した後、固体を濾取した。水で洗浄した後、エタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を0.53g得た。
得られたポリアリルアミン塩酸塩を参考例6と同様に評価した。結果を表6に示す。膨潤度、リン酸吸着量、リン酸選択性は塩酸塩化の程度の差異に関わらず同等であり、塩化に用いる塩酸の等量数を3分の2に減らすことが可能であることが明らかとなった。なお、表には示していないが、解塩時に架橋ポリアリルアミンフリー体を水中で一晩撹拌する操作により、ポリマーの粒径を小さくできた場合には、リン酸吸着量を4.79mmol/gまで高めることができた(胆汁酸吸着量は1.21mmol/g、リン酸選択性は4.0、膨潤度は4.0)。
Figure 2009008480
(比較例2) 塩化アリルアンモニウムの架橋重合体との比較
本発明のモノマーであるリン酸二水素アリルアンモニウムに代えて、アリルアミンの塩酸塩である塩化アリルアンモニウムを用いて重合を行った。なお、重合及び得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩の塩酸塩化は、モノマーとして塩化アリルアンモニウム3.74g(40mmol)を用いたこと、及び架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二塩酸塩1.82g(8mmol)を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。得られた架橋ポリアリルアミン塩酸塩を参考例6と同様に評価した。結果を表7に示す。モノマーとしてリン酸二水素アリルアンモニウムを用いたことのみが相違する架橋ポリアリルアミン塩酸塩(実施例2−4)に比べ、モノマーに塩化アリルアンモニウムを用いて得られた架橋ポリアリルアミン塩酸塩はリン酸選択性が低下し、リン酸吸着量が低下した。このことから、本発明のモノマーとしてはアリルアミンのリン酸塩であるリン酸二水素アリルアンモニウムを用いる必要があることが明らかとなった。
Figure 2009008480
(参考例11) リン酸二水素カリウムを用いた分子インプリント法の適用(その1)
上記特許文献4(US2005/0276781A1)に記載のリン酸インプリントの方法が、本発明で用いるアリルアミンに適用可能であるか確認すべく、特許文献4に記載の方法に従い、アリルアミンを用いたリン酸インプリントポリマーの合成を試みた。フラスコにアリルアミン3.0mL(40mmol)とN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン1.23 g(8mmol)を入れ、2-プロパノールあるいは水を2mL加えた。ここにリン酸二水素カリウムを0.71g(5.2mmol)加えて室温で3時間撹拌した。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.108g(0.4mmol)を加え、系内をアルゴンで3回置換した後、50℃で60時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水を加えるとどちらも均一な溶液となり、水不溶性のポリマーは得られなかった。この結果より、特許文献4記載の条件で、リン酸二水素カリウム存在下アリルアミンを重合させることは不可能であり、特許文献4に記載のリン酸インプリントの方法は、本発明で用いるアリルアミンに適用不可能であることが明らかとなった。
(参考例12) リン酸二水素カリウムを用いた分子インプリント法の適用(その2)
上記特許文献4で分子インプリントに用いているリン酸二水素カリウムを、アリルアミンと架橋剤に含まれるアミノ基に対して1当量用い、アミノ基すべてを塩化して、重合を試みた。フラスコにアリルアミン3.0mL(40mmol)とN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン1.23g(8mmol)を入れ、水を4mL加えた。ここにリン酸二水素カリウムを7.62g(56mmol)加えたところ、白色の固体が析出して撹拌困難となった。室温で3時間静置した後、水を4mL加えて50℃で加熱撹拌し、溶解させた。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.108g(0.4mmol)を加え、系内をアルゴンで3回置換した後、50℃で110時間加熱撹拌した。固体の生成は見られなかった。室温に冷却した後、水を加えても均一な溶液となり、水不溶性のポリマーは得られなかった。この結果より、アリルアミンのリン酸塩を重合させてポリマーを得るためには、アリルアミンとリン酸二水素カリウムを混合して得られるリン酸水素アリルアンモニウムカリウムは不適であった。本発明の解決しようとする課題を達成するためには、アリルアミンとリン酸を1対1で混合して得られるリン酸二水素アリルアンモニウムを用いることが必須であり、この場合に初めて所望の架橋ポリアリルアミンが得られることが明らかとなった。
(実施例5) 正常ラットにおける尿中リン排泄試験
(試験用サンプルの合成とin vitro評価)
フラスコにリン酸二水素アリルアンモニウム46.5g(300mmol)とN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩21.0g(60mmol)、水30.0mLを仕込み、系内をアルゴンで3回置換した後、50℃のオイルバスで加熱し、溶解させた。系内をアルゴンで1回置換した後、室温で30分間アルゴンをバブリングした。撹拌しながら2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.814g(3mmol)を加え、内温47℃で65.5時間加熱した。加熱開始後数時間で固化し、撹拌が停止した。得られた固体を砕いて濾取し、水、次いでエタノールで十分洗浄した。60℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンリン酸塩の白色粉末を51.7g得た。得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩51.0gを水75mLに分散させ、撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液200gを加えた。塩が析出したため水75mLを加え、室温で30分撹拌した後、固体を濾取し、水で洗浄した。固体を三角フラスコに移し、水500mLを加えて室温で14時間撹拌した。固体を濾取し、水で洗浄した後エタノールで洗浄した。60℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンフリー体を17.5g得た。得た架橋ポリアリルアミンフリー体4.50gと水50.0mLを丸底フラスコに仕込み、撹拌しながら1M塩酸47.8mLを加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を6.51g得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩5.00gを凍結粉砕し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩凍結粉砕品4.94gを得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩凍結粉砕品を参考例6と同様に評価した。結果を表8に示す。比較例3として、参考例6の塩酸セベラマーの評価結果を示す。
Figure 2009008480
(In vivo試験)
SD系ラット(SPF、雄性、6週齢、日本エスエルシー)を1日8時間の時間制限給餌及び1日10gの給餌量で個別飼育を行った。約1週間の馴化の後、実施例5のポリマー又は塩酸セベラマー(比較例3(参考例6))を飼料中に0.3重量%あるいは1重量%になるよう混ぜて3日間、混餌投与した。コントロール群には飼料のみを給餌した。3日間の混餌投与期間中は毎日24時間蓄尿を行い、1日尿中リン排泄量を測定し、3日間の総和を求めた。尿中リン排泄量の低下は架橋ポリアリルアミン塩酸塩又は塩酸セベラマーによるリン吸着効果を示す。
結果を図1に示す。実施例5の架橋ポリアリルアミン塩酸塩は、コントロール群と比較して用量依存的かつ有意なリン排泄量の低下を示し、塩酸セベラマーと同程度の尿中リン排泄低下作用を示した。したがって、実施例5の架橋ポリアリルアミン塩酸塩は塩酸セベラマーと比べて膨潤度が低いにもかかわらず、塩酸セベラマーと同程度のリン吸着効果を有することが示された。
(比較例4) 架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン二リン酸塩を用いたポリマーの合成
比較例1−8の架橋ポリアリルアミン塩酸塩の合成過程で得られる架橋ポリアリルアミンフリー体(架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン二リン酸塩をモノマーに対して5モル%使用)を用いて合成した。架橋ポリアリルアミンフリー体3.30gと水37mLを丸底フラスコに仕込み、撹拌しながら1M塩酸37.4mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を4.60g得た。
(実施例6) 正常ラットにおける尿中リン排泄試験(架橋剤の比較)
(試験用サンプルの合成)
実施例3−1の架橋ポリアリルアミン塩酸塩の合成過程で得られる架橋ポリアリルアミンフリー体(架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩をモノマーに対して5モル%使用)を用いて合成した。架橋ポリアリルアミンフリー体2.70gと水30mLを丸底フラスコに仕込み、撹拌しながら1M塩酸30.6mLを加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を3.89g得た。
(In vivo試験)
SD系ラット(SPF、雄性、6週齢、日本エスエルシー)を1日8時間の時間制限給餌及び1日10gの給餌量で個別飼育を行った。約1週間の馴化の後、実施例6の架橋ポリアリルアミン塩酸塩、比較例4の架橋ポリアリルアミン塩酸塩、又は塩酸セベラマー(比較例3(参考例6))を飼料中に1重量%になるよう混ぜて3日間、混餌投与した。コントロール群には飼料のみを給餌した。3日間の混餌投与期間中は毎日24時間蓄尿を行い、1日尿中リン排泄量を測定し、3日間の総和を求めた。尿中リン排泄量の低下は架橋ポリアリルアミン塩酸塩又は塩酸セベラマーによるリン吸着効果を示す。
結果を図2に示す。実施例6の架橋ポリアリルアミン塩酸塩はコントロールに比べて有意なリン排泄量の低下を示し、塩酸セベラマーを越える尿中リン排泄低下作用を示した。一方、比較例4の架橋ポリアリルアミン塩酸塩はコントロールに比べて有意なリン排泄量の低下を示したが、塩酸セベラマーあるいは実施例6の架橋ポリアリルアミン塩酸塩と比較してその作用は弱かった。実施例6の架橋ポリアリルアミン塩酸塩は塩酸セベラマー以上のリン吸着効果を有することが示された。一方、架橋剤としてN,N'-ジアリル-1,4-ジアミノブタン二リン酸塩を用いた比較例4の架橋ポリアリルアミン塩酸塩については実施例6の架橋ポリアリルアミン塩酸塩あるいは塩酸セベラマーに比べてリン吸着効果が低いことが示された。
(実施例7) 表面架橋処理用の架橋ポリアリルアミンフリー体及び架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩合成と架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩のin vitro評価
フラスコにリン酸二水素アリルアンモニウム12.4g(80mmol)とN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩5.60g(16mmol)、水8.0mLを仕込み、系内をアルゴンで3回置換した後、50℃のオイルバスで加熱溶解させた。30分間アルゴンをバブリングした。内温50℃で撹拌しながら2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.814g(3mmol)を加え、内温49〜51℃で64時間加熱した。加熱開始後数時間で固化し、撹拌が停止した。得られた固体を砕いて濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンリン酸塩の白色粉末を15.0g得た。得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩15.0gを水90mLに分散させ、撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液60 mLを加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取し、濾液が中性になるまで水で洗浄した。固体をビーカーに移し、水100mLを加えて室温で16時間撹拌した。固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンフリー体を5.12g得た。
得られた架橋ポリアリルアミンフリー体を試験管に0.25g秤取し、水5.0mLに分散させた。マグネチックスターラーで撹拌しながら、氷冷下1M塩酸2.65mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水で洗浄した後、エタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を0.38g得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を参考例6と同様に評価した。結果を表9に示す。
Figure 2009008480
(実施例8〜12) 架橋ポリアリルアミンフリー体の表面架橋処理における反応条件検討
表面架橋剤としてアクリル酸(2-ヒドロキシエチル)を用い、反応条件を検討した。実施例7で得た架橋ポリアリルアミンフリー体0.25gを表10に示す溶媒4.0mLに分散させ、表10に示す温度で撹拌した。アクリル酸(2-ヒドロキシエチル) 9.2 mg(架橋ポリアリルアミンフリー体に対して3.7重量%)を同じ溶媒2.0mLに溶解させて加えた後、1時間撹拌した。固体を濾取し、反応と同じ溶媒で洗浄し、室温で減圧乾燥を行った。得られたポリマーを水5.0mLに分散させ、氷冷下撹拌しながら1M塩酸2.65mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)を得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)を参考例6と同様に評価した。結果を表10に示す。表面架橋処理を行わなかった場合(実施例7)に比べ、いずれの溶媒を用いた場合も膨潤度が低下した。しかし、リン酸吸着量に大きな相違は見られなかった。
Figure 2009008480
(実施例13〜17) 架橋ポリアリルアミンフリー体の表面架橋処理におけるアクリル酸(2-ヒドロキシエチル)添加量検討
表面架橋剤としてアクリル酸(2-ヒドロキシエチル)を用い、添加量を検討した。実施例7で得た架橋ポリアリルアミンフリー体0.25gをエタノール4.0mLに分散させ、30℃で撹拌した。表11に示した量のアクリル酸(2-ヒドロキシエチル) をエタノール2.0mLに溶解させて加えた後、1時間撹拌した。固体を濾取し、エタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥を行った。得られたポリマーを水5.0mLに分散させ、氷冷下で撹拌しながら1M塩酸2.65mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)を得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)を参考例6と同様に評価した。結果を表11に示す。添加量依存的に膨潤度が低下した。また、添加量依存的にリン酸吸着量が減少した。
Figure 2009008480
(実施例18〜21) アクリル酸メチル又はエピクロロヒドリンを用いた表面架橋処理
実施例7で得た架橋ポリアリルアミンフリー体0.25gをエタノール又はヘプタン4.0mLに分散させ、表12に示す温度で撹拌した。ここへ表面架橋剤としてアクリル酸メチル又はエピクロロヒドリンを表12に示す量で、上記架橋ポリアリルアミンフリー体の分散に用いたのと同じ溶媒2.0mLに溶解してから加え、さらに1時間撹拌した。固体を濾取し、上記表面架橋反応に用いたのと同じ溶媒で洗浄し、室温で減圧乾燥を行った。得られたポリマーを水5.0mLに分散させ、氷冷下で撹拌しながら1M塩酸2.65mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)を得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)の評価を参考例6と同様に評価した。結果を表12に示す。いずれの場合も表面架橋処理を行わない場合(実施例7)に比べ、膨潤度が低下した。
Figure 2009008480
(実施例22) 表面架橋処理ポリマーを用いた正常ラットにおける尿中リン排泄試験
(試験用サンプルの合成とin vitro評価)
実施例7で得た架橋ポリアリルアミンフリー体4.50gをエタノール90.0mLに分散させ、オイルバスで加熱しながら撹拌し、内温を50℃にした。そこへ、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)0.166g(架橋ポリアリルアミンフリー体に対して3.7重量%)をエタノール45mLに溶解させて加えた。0.5時間撹拌した後、固体を濾取し、エタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥した後、水50.0mLに分散させ、氷冷下撹拌しながら1M塩酸47.8mLを加えた。室温で40分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)を6.78g得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)6.00gを凍結粉砕し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)凍結粉砕品5.99gを得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)凍結粉砕品を参考例6と同様に評価した。結果を表13に示す。比較例3として、参考例6で調製した塩酸セベラマーの評価結果を示す。
Figure 2009008480
(In vivo試験)
SD系ラット(SPF、雄性、6週齢、日本エスエルシー)を1日8時間の時間制限給餌及び1日10gの給餌量で個別飼育を行った。約1週間の馴化の後、実施例22の架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)又は塩酸セベラマー (比較例3 (参考例6))を飼料中に0.3重量%あるいは1重量%になるよう混ぜて3日間、混餌投与した。コントロール群には飼料のみを給餌した。3日間の混餌投与期間中は毎日24時間蓄尿を行い、1日尿中リン排泄量を測定し、3日間の総和を求めた。尿中リン排泄量の低下は架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)又は塩酸セベラマーによるリン吸着効果を示す。
結果を図3に示す。実施例22の架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)は、用量依存的かつ有意なリン排泄量の低下を示し、塩酸セベラマーと同程度の尿中リン排泄低下作用を示した。したがって、実施例22の架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩(表面架橋処理品)は塩酸セベラマーと比べて膨潤度が低いにもかかわらず、塩酸セベラマーと同程度のリン吸着効果を有することが示された。
(参考例13)
塩酸セベラマーを有効成分とする製剤であるレナジェル(商標登録)錠(以下、「レナジェル錠)と記載)を粉砕機(A10、Junke&Kunkel IKA Labortechnic)を用いて粉体とした。レナジェル錠粉砕品の評価結果を表14に示す。リン酸選択性は低く、膨潤度は6.7であった。
Figure 2009008480
(実施例23)
(逆相懸濁重合による合成例とin vitro評価)
3L三口フラスコにモノラウリン酸ソルビタン17.9g、ヘプタン1.26kgを入れ、フラスコ内を窒素で置換した。撹拌しながら窒素を30分間バブリングさせた。200mL三口フラスコに2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩12.9g(4.00mmol)と水25mLを入れ、撹拌しながらフラスコ内を窒素で置換した。メカニカルスターラーと温度計を備えた5L四口フラスコにリン酸二水素アリルアンモニウム155g(1.00mol)、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩70.1g(0.200mol)、水75mLを入れて内温50℃で加熱溶解させ、フラスコ内を窒素で置換した。先に調製した2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩の水懸濁液を加え、続いて先に調製したモノラウリン酸ソルビタンのヘプタン溶液を加えた。内温50〜55℃で20時間撹拌した後、室温に冷却した。エタノール500mLを加えて濾過し、エタノール500mLで3回、水500mLで7回、エタノール500mLで2回洗浄した。得られた固体を50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンリン酸塩を218g得た。得られたポリアリルアミンリン酸塩200gと水2Lを5L四口フラスコに入れ、メカニカルスターラーで撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液1.2Lを加えた。室温で1時間撹拌した後、濾過した。水1Lで8回、エタノール250mLで3回洗浄した。得られた固体を55℃で減圧乾燥した。このうち10gを水200mLに懸濁させ、メカニカルスターラーで激しく15時間撹拌し、水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンフリー体を得た。得られた架橋ポリアリルアミンフリー体を20%酢酸塩、40%酢酸塩、塩酸塩へと変換した。
(20%酢酸塩(実施例23−1))
架橋ポリアリルアミンフリー体3.00gを水24mLに懸濁させ、酢酸0.574gを水6mLに溶解させて加えた。室温で30分撹拌した後濾過し、水、次いでエタノールで洗浄した。40℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン20%酢酸塩を3.61g得た。
(40%酢酸塩(実施例23−2))
架橋ポリアリルアミンフリー体3.00gを水24mLに懸濁させ、酢酸1.15gを水6mLに溶解させて加えた。室温で30分撹拌した後濾過し、水、次いでエタノールで洗浄した。40℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン20%酢酸塩を4.18g得た。
(塩酸塩(実施例23−3))
架橋ポリアリルアミンフリー体0.200gを水25mLに懸濁させ、濃塩酸1mLを加えた。室温で30分撹拌した後濾過し、水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン塩酸塩を0.293g得た。
得られた架橋ポリアリルアミンの酸付加塩3サンプルを参考例6と同様に評価した。結果を表15に示す。比較例5として、参考例13で調製したレナジェル錠粉砕品の評価結果を示す。いずれの塩もレナジェル錠粉砕品と比べて膨潤度が低く、リン酸吸着量が大きく、リン酸選択性が高かった。
Figure 2009008480
(In vivo試験)
SD系ラット(SPF、雄性、6週齢、日本エスエルシー)を1日8時間の時間制限給餌及び1日10gの給餌量で個別飼育を行った。約1週間の馴化の後、レナジェル錠粉砕品(参考例13)、実施例23−1又は実施例23−2の架橋ポリアリルアミン酢酸塩を飼料中に表16に示した量を混ぜて、3日間混餌投与した。コントロール群には飼料のみを給餌した。レナジェル錠粉砕品中に含まれる塩酸セベラマーを基準とし、フリー体として同じ重量となるようにポリマーの量を設定した。3日間の混餌投与期間中は毎日24時間蓄尿を行い、1日尿中リン排泄量を測定し、3日間の総和を求めた。尿中リン排泄量の低下はポリマーによるリン吸着効果を示す。
結果を図4に示す。実施例23−1及び実施例23−2のポリマーは有意なリン排泄量の低下を示し、レナジェル錠粉砕品(参考例13)と同程度の尿中リン排泄低下作用を示した。したがって、実施例23−1及び実施例23−2のポリマーはレナジェル錠粉砕品と比べて膨潤度が低いにもかかわらず、レナジェル錠粉砕品と同程度のリン吸着効果を有することが示された。
Figure 2009008480
(実施例24)
(沈殿重合による合成例とin vitro評価)
メカニカルスターラーを装着した100mL四口フラスコに、リン酸二水素アリルアンモニウム9.31(60mmol)とN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩4.20g(12mmol)、水12mL、エタノール12mLを仕込み、系内をアルゴンで3回置換した後。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.814g(3mmol)を加え、バス温60〜65℃で20時間加熱撹拌した。得られた固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンリン酸塩の粉末を10.3g得た。得られた架橋ポリアリルアミンリン酸塩9.00gを水54mLに分散させ、マグネチックスターラーで撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液36mLを加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取し、濾液が中性になるまで水で洗浄した。エタノールで洗浄した後50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミンフリー体を3.50g得た。
架橋ポリアリルアミンフリー体2.26gをマグネチックスターラーで撹拌しながら1M塩酸を24mL加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取した。水で洗浄した後、エタノールで十分洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を3.14g得た。得られた架橋ポリアリルアミン2/3塩酸塩を参考例6と同様に評価した。結果を表17に示す。比較例5として、参考例13で調製したレナジェル錠粉砕品の評価結果を示す。沈殿重合により得られたポリマーはレナジェル錠粉砕品と比べて膨潤度が低く、リン酸吸着量が大きく、リン酸選択性が高かった。
Figure 2009008480
(In vivo試験)
SD系ラット(SPF、雄性、6週齢、日本エスエルシー)を1日8時間の時間制限給餌及び1日10gの給餌量で個別飼育を行った。約1週間の馴化の後、レナジェル錠粉砕品(参考例13)中に含まれる塩酸セベラマー又は実施例24のポリマーを飼料中に1重量%になるよう混ぜて3日間、混餌投与した。コントロール群には飼料のみを給餌した。3日間の混餌投与期間中は毎日24時間蓄尿を行い、1日尿中リン排泄量を測定し、3日間の総和を求めた。尿中リン排泄量の低下はポリマーによるリン吸着効果を示す。
結果を図5に示す。実施例24のポリマーは有意なリン排泄量の低下を示し、レナジェル錠粉砕品(参考例13)とほぼ同程度の尿中リン排泄低下作用を示した。したがって、実施例24のポリマーはレナジェル錠粉砕品と比べて膨潤度が低いにもかかわらず、レナジェル錠粉砕品と同程度のリン吸着効果を有することが示された。
(実施例25)
実施例15の方法で合成したアリルアミン型ポリマー又は参考例13で調製したレナジェル錠粉砕品を各々約500 mg秤量し、ポリプロピレン製試験管に入れ、第14改正日本薬局方崩壊試験第2液(0.05 mol/Lリン酸二水素カリウム、0.0236 mol/L水酸化ナトリウム、pH約6.8)にて、50 mg/mL懸濁液を調製した。調製後は、被験物質が沈殿しないようウェイブローター(サーモニクス、WR-40)上で回転させた。Sprague Dawley(SD)ラット(SPF、雄性、7週齢、日本エスエルシー)をエーテル麻酔下にて大腸を摘出し、冷生理食塩液で洗浄したのち5 cmの長さで2本切り出した。予め重量を測定したマウス用ゾンデ(pre)を用いて腸管を反転させ、腸管の両端を縫合糸で結び、ゾンデに固定させ、腸管+ゾンデの重量(pre)を計測した。ウェイブローターで攪拌しておいた各被験物質溶液の入ったポリプロピレン製試験管に、腸管+ゾンデを動かないように入れ、ウェイブローター上で5分間回転させた。5分後に各ポリプロピレン製試験管から腸管+ゾンデを取り出し、腸管+ゾンデの重量(post)及びゾンデの重量(post)を計測した。各被験物質溶液の腸管への付着量は以下の式に従って算出した。
{[腸管+ゾンデ重量(post)]−[腸管+ゾンデ重量(pre)]}−{[ゾンデ(post)]−[ゾンデ(pre)]}
結果を図6に示す。実施例15の方法で合成したポリマー群の大腸への付着重量(実施例25)は、参考例13のレナジェル錠粉砕品群(比較例6)と比較して、有意に低値であった。
(実施例26)
逆相懸濁重合で得たポリマーについて、表面架橋処理をしていないものとしたものについて腸管付着試験を行った。評価するポリマーは実施例23に示した方法で合成した架橋ポリアリルアミンフリー体を用いて合成した。
(表面架橋処理なしのポリマー合成(実施例26−1))
架橋ポリアリルアミンフリー体4.00gを水80mLに懸濁させ、撹拌しながら1M塩酸80mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。50℃で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン塩酸塩を6.45g得た。
(表面架橋処理ありのポリマー合成(実施例26−2))
架橋ポリアリルアミンフリー体4.00gをエタノール80mLに分散させ、30℃で撹拌した。アクリル酸(2-ヒドロキシエチル) 0.370gをエタノール20mLに溶解させて加えた後、30分撹拌した。固体を濾取し、エタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥を行った。得られたポリマーを水80mLに分散させ、氷冷下撹拌しながら1M塩酸80mLを加えた。室温で30分撹拌した後、固体を濾取した。水、次いでエタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥し、架橋ポリアリルアミン塩酸塩(表面架橋処理品)6.70gを得た。
(腸管付着試験)
実施例25に示した方法で腸管付着試験を行った。結果を図7に示す。逆相懸濁重合により得られた架橋ポリアリルアミン塩酸塩(表面架橋処理品)は、表面架橋処理の有無に関わらず大腸への付着重量が参考例13のレナジェル錠粉砕品群(比較例6)と比較して、有意に低値であった。
本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は、高いリン酸吸着能及びリン酸選択性を有し、かつ従来技術よりも膨潤度が顕著に低いことから、便秘、腹痛、腹部膨満などの副作用が少ない医薬品、特に、高リン血症の治療薬又は予防薬として好適である。

Claims (10)

  1. リン酸二水素アリルアンモニウムと、該リン酸二水素アリルアンモニウムに対して5〜25モル%のN,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩と、を共重合させて得られ、
    リン酸吸着量が2.7〜5.0mmol/gであり、
    膨潤度が2.0〜5.0である、
    架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩。
  2. アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物を、アミノ基と反応させることによって表面架橋処理がなされている、請求項1記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩。
  3. アミノ基と反応する官能基を2個以上有する前記化合物は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素、ジエポキシド又は二塩基酸塩化物である、請求項2記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩。
  4. アミノ基と反応する官能基を2個以上有する前記化合物は、アクリル酸エステルである、請求項2記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩。
  5. 前記N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパンの酸付加塩は、N,N'-ジアリル-1,3-ジアミノプロパン二リン酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、を有効成分とする医薬組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩、を有効成分とする、高リン血症の治療薬又は予防薬。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の有効量を、高リン血症の治療又は予防が望まれる患者に投与することを含む、高リン血症の治療又は予防方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の、高リン血症の治療薬又は予防薬の製造のための使用。
  10. 請求項1〜5のいずれか一項記載の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩である高リン血症の治療用又は予防用化合物。
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