JP2009179724A - 架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】本発明は、N-ビニルカルボン酸アミドと、該N-ビニルカルボン酸アミドに対して、15〜35モル%のN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)と、を共重合させて得られる共重合体の窒素上のアシル基の一部又は全てを除去して得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩であって、リン酸吸着量が2.7〜4.5mmol/gであり、膨潤度が2.0〜5.0である架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を提供する。
【効果】本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、リン酸選択性が高く、塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有し、かつ膨潤度が塩酸セベラマーより小さいことを特徴としており、医薬として使用した場合、膨潤による副作用の低減が期待できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、低膨潤性で高いリン酸吸着量を有する架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩、及びその医薬用途に関する。
腎機能障害患者は、リン排泄の減少によって高リン血症に罹患することが多い。高リン血症はカルシウムやリンの代謝における重篤な異常をきたし、血清カルシウム低下、PTH産生・分泌促進、異所性石灰化、ビタミンD活性化抑制による腎性骨異栄養症を引き起こす。腎不全により透析療法に移行しても、リンの恒常性が維持されない限り上記の病態は持続する。そのため、高リン血症治療は腎不全透析、未透析患者にとって必要不可欠なものである。現在、高リン血症の治療は、食事療法によるか、又は経口リン吸着剤が用いられている。食事療法では高リン血症を改善するには不十分であり、これらの患者の処置にリン吸着剤の使用が日常必要である。
経口リン吸着剤としては、従来アルミニウム塩、あるいはカルシウム塩が広く用いられてきた。摂取したアルミニウムやカルシウムは腸内のリン酸と結合し不溶性のリン酸塩を形成し、吸収を阻害する。しかし、アルミニウム塩の投与はアルミニウムの蓄積をもたらし、脳疾患、骨軟化症などを引き起こすことが問題となっている。また、カルシウムの吸収も高カルシウム血症を引き起こし、大動脈へのカルシウム沈着、異所性石灰化により患者の死期を早めることが問題となっている。また近年炭酸ランタンが上市されたが、ランタンの腸管吸収及び蓄積が認められており、長期安全性の面で懸念がある。
近年、経口リン吸着剤として有機ポリマーのポリアリルアミンの一種である塩酸セベラマーが上市された。上記無機塩による副作用を引き起こさないため、高リン血症の治療に広く用いられている。塩酸セベラマーは特許文献1記載のポリ(アリルアミン/エピクロロヒドリン)であり、製法としては、アリルアミン塩酸塩を重合してポリアリルアミン塩酸塩を得た後、水酸化ナトリウム水溶液中でエピクロロヒドリンと反応させることで架橋を行っている(特許文献1参照)。しかしながら、リン酸吸収の顕著な減少のためには高用量の投与が必要となる。塩酸セベラマーの用量は通常3〜6 g/日、最大9 g/日と設定されている。さらに、胃腸管内で水を吸収して膨潤するため、便秘、腹痛、腹部膨満などの副作用を引き起こすことが問題となっており、腸管穿孔、腸閉塞などの深刻な副作用の報告もある(非特許文献1参照)。副作用の発現頻度には用量依存性が認められている(非特許文献2参照)。この膨潤による副作用のため、リン酸吸収を十分に阻害する必要量の投与が困難な場合が多く、カルシウム製剤との併用を余儀なくされているのが現状である。よって、膨潤を抑えた経口リン吸着剤の開発が期待されている(非特許文献3参照)。
しかしポリアリルアミン等のイオン交換樹脂においては、膨潤度を下げるとイオン交換速度が低下して吸着性能が低下するため、高いリン酸吸着量を維持しながら低膨潤性を実現することは困難である。また、腸内にはリン酸のほかに胆汁酸などの酸が存在し、これらは競合してポリアリルアミン等に吸着する。塩酸セベラマーは胆汁酸に対するリン酸選択性が低い。これはリン酸吸着量を低下させるだけでなく、胆汁酸の吸着により、脂溶性ビタミンの吸収阻害を引き起こす可能性がある(非特許文献1参照)。そのため、リン酸選択性の高いポリマーが経口リン酸吸着剤として望ましい(非特許文献3参照)。
ところで、架橋ポリビニルアミンのリン吸着剤用途としては、N-ビニルアセトアミドとジビニルベンゼンの共重合体を加水分解したものが報告されているが、リン酸吸着量は非常に低く、リン吸着剤として用いるには不利である(特許文献1参照)。N-ビニルアセトアミドの架橋重合体の製造方法としては、アルキレンビス(N-ビニルアセトアミド)を架橋性モノマーとして共重合する方法が報告されている(特許文献2および3参照)。これらは増粘剤、分散安定剤、潤滑剤、液体吸収剤を主な用途としており、膨潤性が高い。このようにして得られた架橋重合体の加水分解については、架橋性モノマー添加量がごく少ないものについて、窒素上のアセチル基の一部を加水分解してアミン塩酸塩としたものが報告されているが(非特許文献4参照)、アシル基の大部分を除去して、低膨潤性の架橋ポリビニルアミンをリン吸着剤として用いた例は報告されていない。
低膨潤性のポリマーを得る方法としては、架橋ポリマー粒子に更に表面架橋処理を行うと、膨潤が抑制されることが示唆されている(特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4は吸水性ポリマーについて開示するものであり、リン吸着能と低膨潤性を併せ持つポリマーについては特許文献4には開示されていない。
特許第3113283号公報 特許第2947637号公報 特許第3042546号公報 特許第3389130号公報 医薬品インタビューフォーム レナジェル(登録商標)錠250 mg 改訂第8版、2005年、p.21 審査報告書 衛研発第3850号(平成14年11月28日) 井上浩義、「今後のリン排泄促進薬・吸収阻害薬」、腎と透析、2003年、55巻、p.941-944 ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:パートA:ポリマー・ケミストリー(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry)、1993年、31巻、p.1153-1160
本発明の目的は、高いリン酸吸着量と低い膨潤度を有する架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を提供することにある。
本発明者は、一般式〔1〕:
Figure 2009179724
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又はメチル基を示す。]
で表されるN-ビニルカルボン酸アミドと、上記N-ビニルカルボン酸アミドに対して、15〜35モル%の一般式〔2〕:
Figure 2009179724
[式中、R3は、水素又はメチル基であり、R4は、炭素数3〜10のアルキレン基を示す。]
で表されるN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)と、を共重合させて得られる共重合体の窒素上のアシル基の一部または全てを除去して得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩が、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、上記一般式〔1〕で表されるN-ビニルカルボン酸アミドと、上記N-ビニルカルボン酸アミドに対して15〜35モル%の上記一般式〔2〕で表されるN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)と、を共重合させて得られる共重合体の窒素上のアシル基の一部又は全てを除去して得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩であって、リン酸吸着量は、2.7〜4.5mmol/gであり、膨潤度は、2.0〜5.0である架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を提供する。
また、本発明は、上記本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩のアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物を反応させて得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩であって、リン酸吸着量が2.7〜4.5mmol/gであり、膨潤度が2.0〜5.0である架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を提供する。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、リン酸選択性が高く、塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有し、かつ膨潤度が塩酸セベラマーより小さいことを特徴としており、医薬として使用した場合、膨潤による副作用の低減が期待できる。また、上記架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩のアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物を反応させて得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩も同様にリン酸選択性が高く、塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有し、かつ膨潤度が塩酸セベラマーより小さいことを特徴としており、医薬として使用した場合、膨潤による副作用の低減が期待できる。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、一般式〔1〕:
Figure 2009179724
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又はメチル基を示す。]
で表されるN-ビニルカルボン酸アミドと、架橋性モノマーとして、上記N-ビニルカルボン酸アミドに対して15〜35モル%の式〔2〕:
Figure 2009179724
[式中、R3は、水素又はメチル基を示し、R4は、炭素数3〜10のアルキレン基を示す。]
で表されるN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)と、を共重合させた後、この共重合体の窒素上のアシル基の一部又は全てを除去して得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩である。
モノマーとしては、上記一般式〔1〕で表されるN-ビニルカルボン酸アミドを用いる。R1としては、水素又はメチル基であり、水素がより好ましい。R2としては、水素又はメチル基である。
本発明では、架橋性モノマーとして上記一般式〔2〕で表されるN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)を用いる。R3としては、水素又はメチル基である。R4としては、炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、1,6-ヘキシレン、1,7-へプチレン、1,8-オクチレン、1,9-ノニレン、1,10-デシレンなどが挙げられるが、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、1,6-ヘキシレンがより好ましく、1,4-ブチレンが最も好ましい。
架橋性モノマーであるN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)の添加量は、モノマーであるN-ビニルカルボン酸アミドに対して15〜35モル%であり、20〜35モル%がより好ましく、20〜30モル%が最も好ましい。15モル%未満では得られるポリマーの膨潤度が大きくなるため、経口リン吸着剤として使用する場合、好ましくない。また、架橋剤添加量が35モル%を上回ると経済的に不利であり、好ましくない。架橋剤添加量が15〜35モル%であれば、膨潤度が5.0以下のポリマーが得られ、特許第3113283号公報に示される方法で合成した塩酸セベラマーの膨潤度6.2を大きく下回る。
本発明において、N-ビニルカルボン酸アミドとN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)の共重合によって得られる共重合体は、窒素上にアシル基が結合しているため、リン吸着剤として用いるためにはこのアシル基の一部又は全てを、酸、塩基、還元剤などを用いる公知の脱アシル化法によって除去する。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、リン酸吸着量が2.7mmol/g以上、好ましくは2.8mmol/g以上、より好ましくは3.0mmol/g以上である。リン酸吸着量の上限は4.5mmol/gである。実施例に示した通り、特許第3113283号公報に示される方法で合成した塩酸セベラマーのリン酸吸着量が2.7mmol/gであるから、本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩はリン吸着剤として塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有するものである。なお、本明細書におけるリン酸吸着量とは、リン酸とグリココール酸をモル比1対1で含む試液中において試料に吸着除去されたリン酸イオン量を表す。
具体的には、次の方法で測定する。すなわち、試料を0.1mM塩酸中、37℃で1時間撹拌した後、リン酸水素二ナトリウム12水和物及びグリココール酸ナトリウム水溶液をそれぞれ10mM、pH 6.8となるように添加する。なお、試料濃度は1mg/mLとなるようにする。さらに37℃で1時間撹拌した後、遠心分離にて試料を除去し、試料に吸着されなかったリン酸の量を無機リン酸測定試薬(和光純薬株式会社製、ホスファC-テストワコー(登録商標))にて測定し、この測定値から試料に吸着除去されたリン酸イオン量を求める。特許第3113283号公報に記載の評価方法では、胆汁酸を加えずリン酸単独条件でのリン酸吸着量を測定しているが、生体の腸管内には胆汁酸が多く存在し、リン酸と競合して吸着することから、本発明においては、上記のとおり胆汁酸競合条件でのリン酸吸着量によって評価するものとする。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、膨潤度が2.0〜5.0である。膨潤度が5.0を上回ると膨潤による副作用のリスクが高くなる可能性がある。また、膨潤度の下限は2.0である。膨潤度の範囲としては、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは2.5〜3.5の範囲である。実施例に示した通り、特許第3113283号公報に示される方法で合成した塩酸セベラマーの膨潤度が6.2であるから、本発明の架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩は塩酸セベラマーよりも膨潤による副作用が軽減すると考えられる。なお、本明細書における膨潤度とは、乾燥させた試料を過剰量の蒸留水に24時間以上浸漬させた後、固体成分を分離してその重量を測定し、浸漬後の試料重量を乾燥重量で除した値である。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩の膨潤度をさらに低下させる方法として、上記架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩のアミノ基と、アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物(以後、表面架橋剤と記載)を反応させる表面架橋処理によってポリマー粒子の表面付近の架橋密度を上げることで膨潤度を低下させることができ、本表面架橋処理によって得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩についても本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩に含まれる。
本発明で用いる表面架橋剤としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素、ジエポキシド、二塩基酸塩化物などが挙げられる。その中で、アクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素が好ましく、アクリル酸エステル、エピハロヒドリンがより好ましく、エピハロヒドリンが最も好ましい。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2-ヒドロキシプロピル)、アクリル酸グリシジルなどが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)が好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)がより好ましく、アクリル酸メチルが最も好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸(2-ヒドロキシエチル)、メタクリル酸(2-ヒドロキシプロピル)、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられ、エピクロロヒドリンが好ましい。
ジハロゲン化炭化水素としては、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,3-ジブロモプロパン、1,4-ジクロロブタン、1,4-ジブロモブタン、1,4-ジクロロ-2-ブテン、3,4-ジクロロ-1-ブテンなどが挙げられる。ジエポキドとしては、1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
二塩基酸塩化物としては、シュウ酸クロリド、マロン酸クロリド、コハク酸クロリド、グルタル酸クロリド、アジピン酸クロリドなどが挙げられる。
本発明において表面架橋処理によって得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、リン酸吸着量が2.7mmol/g以上、好ましくは2.8mmol/g以上、より好ましくは3.0mmol/g以上である。リン酸吸着量の上限は4.5mmol/gである。実施例に示した通り、特許第3113283号公報に示される方法で合成した塩酸セベラマーのリン酸吸着量が2.7mmol/gであるから、本発明において表面架橋処理によって得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩はリン吸着剤として塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有するものである。
本発明において表面架橋処理によって得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、膨潤度が2.0〜5.0である。膨潤度が5.0を上回ると膨潤による副作用のリスクが高くなる可能性がある。また、膨潤度の下限は2.0である。膨潤度の範囲としては、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。表面架橋処理によって膨潤度が低下することから、さらに副作用が軽減すると考えられる。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、胆汁酸に対するリン酸選択性が高いことも特徴のひとつである。リン酸選択性は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上である。上限としては特に限定されず、大きい方が好ましい。本発明におけるリン酸選択性とは、リン酸吸着量を胆汁酸吸着量で除した値である。胆汁酸吸着量とは、リン酸とグリココール酸をモル比1対1で含む試液中において試料に吸着除去されたグリココール酸イオン量を表す。具体的には、次の方法で測定する。試料を0.1mM塩酸中、37℃で1時間撹拌した後、リン酸水素二ナトリウム12水和物及びグリココール酸ナトリウム水溶液をそれぞれ10mM、pH 6.8となるように添加する。なお、試料濃度は1mg/mLとなるようにする。さらに37℃で1時間撹拌した後、遠心分離にて試料を除去し、試料に吸着されなかったグリココール酸の量を胆汁酸測定試薬(和光純薬株式会社製、総胆汁酸-テストワコー(登録商標))にて測定し、この測定値から試料に吸着除去されたグリココール酸イオン量を求める。
以上のことから、本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、特開平10-330427号公報に開示された方法では得られない、リン吸着剤としての優れた特性を有する。また、特許第3113283号公報に示される方法で合成した塩酸セベラマーと比べて高いリン酸吸着量と、低い膨潤性を有することから、塩酸セベラマーで問題となっている膨潤による副作用を軽減することができる。これは、動物実験において腸管内容物の移動速度あるいは排泄速度を観察することによって示すことが可能である。
本発明の共重合体を製造する際に、重合に用いる溶媒としては、水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等)、エステル系溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン等)、炭化水素系溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等)、その他、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられるが、これに限られない。この中で、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、アセトン、トルエンがより好ましく、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエンが最も好ましい。
重合開始時のモノマー濃度が高いほど膨潤度が低くなり、リン酸選択性も向上する。N-ビニルカルボン酸アミドとN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)の合計濃度は、好ましくは0.7mol/L以上、より好ましく1.0mol/L以上、最も好ましくは1.3mol/L以上である。濃度が高すぎると重合進行時に撹拌が困難になるため、通常3mol/L以下である。
重合開始剤としてはアゾ系ラジカル開始剤が用いられ、公知の物が使用でき、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などが挙げられる。その中で、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチルが好ましく、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 、2,2'-アゾビスイソブチロニトリルがより好ましく、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)が最も好ましい。
重合開始剤添加量は、モノマーに対し0.05〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.2〜2モル%が最も好ましい。
重合温度は通常は30〜150℃であり、溶媒と重合開始剤の種類によって選ばれる。好ましくは50〜120℃の範囲、さらに好ましくは60〜110℃の範囲である。重合時間は重合温度などにより左右されるが、通常は100時間以内で十分である。
重合を行う際、N-ビニルカルボン酸アミドに架橋性モノマーとして末端二重結合を2個有するN,N'-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)を共存させることで、この両末端でポリマー鎖が伸長し、架橋構造を形成する。この際、架橋剤の一部は一方の二重結合が反応せず、二重結合のまま残り、架橋に関与しないことがある。
上記の通りに製造すれば、上記した範囲内のリン酸吸着量及び膨潤度を有する本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を得ることができる。ただし、採用する反応条件(反応溶媒、反応物の濃度、反応温度、反応時間等)によっては、得られる架橋ポリアリルアミンの性能(リン酸吸着量、膨潤度、リン酸選択性)は上記範囲に入らないこともある。その場合、反応条件を適宜変更することで性能を上記範囲内に調整することができる。また、得られる架橋ポリビニルアミンの性能が上記範囲内であったとしても、さらに良好な性能を有する架橋ポリビニルアミンを得る目的で反応条件を変更させてもよい。例えば、重合反応時の反応物の濃度を高くすると、得られる架橋ポリビニルアミンのリン酸吸着量、リン酸選択性が向上し、膨潤度は低下しより良好になる。また、モノマー、開始剤の純度を高くすると、ラジカル停止反応が抑制され、膨潤度が低下する。
リン吸着剤として用いるために、N-ビニルカルボン酸アミドとN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)の共重合体の窒素上のアシル基の一部又は全てを、酸、塩基、還元剤などを用いる公知の脱アシル化法によって除去する。例えば、ポリマーを塩酸に分散させ、数日間加熱還流することで、アシル基の大部分が加水分解された、架橋ポリビニルアミン塩酸塩が得られる。
架橋ポリビニルアミンが酸付加塩として得られた場合、必要に応じて、例えば、部分酸付加塩にする、他の酸付加塩に変換する、あるいは表面架橋処理を行うためには、フリー体に変換する、必要がある。フリー体への変換は、水洗浄あるいは中和によって行う。中和に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアなどの無機塩基や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシドなどの金属アルコキシドが挙げられる。
フリー体のポリマーを適当な酸を用いて酸付加塩とする場合、塩化に用いる酸としては、薬学的に許容される酸が使用でき、具体例として塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、酢酸、安息香酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、塩酸、炭酸、酢酸が好ましく、塩酸が最も好ましい。ポリマーのアミノ基に対する酸の当量は、0.1〜1当量が好ましく、より好ましくは0.3〜1当量である。
本発明における表面架橋処理として、架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩のアミノ基に表面架橋剤を反応させる場合、上記架橋ポリビニルアミンのフリー体又はその酸付加塩を溶媒に分散させ、反応を行うが、好ましくは架橋ポリビニルアミンのフリー体で反応を行う。
表面架橋剤の添加量は、表面架橋処理するポリマーの重量に対して1.0〜50重量%、好ましくは1.5〜40重量%、より好ましくは2.5〜30重量%、最も好ましくは2.5〜20重量%である。添加量が多いほど得られるポリマーの膨潤度は低下するが、多すぎるとリン酸吸着量が減少するので好ましくない。
表面架橋処理に用いる溶媒は表面架橋剤によって適宜選択されるが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールに代表されるアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンに代表される炭化水素系溶媒、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水などの公知の溶媒が使用でき、またそれらの混合溶媒を用いてもよい。
表面架橋処理の温度は、表面架橋剤によって適宜選択されるが、0℃ないし80℃、好ましくは20℃ないし60℃、さらに好ましくは20℃ないし50℃である。
表面架橋処理の時間は、表面架橋剤や温度に左右されるが、通常、5分〜10時間の範囲である。
表面架橋処理における架橋反応は、表面架橋剤がポリマー粒子の表面付近に存在する2個のアミノ基と反応することにより起こる。表面架橋剤の例としてアクリル酸エステル(アクリル酸メチル)を用いた場合の反応について、以下のスキーム1において説明する。
Figure 2009179724
まず、ポリマー粒子表面のアミノ基がアクリル酸エステルにMichael付加する(ステップ1)。次いで、近傍の粒子表面上のアミノ基が、エステルのカルボニル基を攻撃してアミド化が進行する(ステップ2)。これにより、ポリマー粒子表面付近の架橋が強化される。このとき、反応条件によっては、一部の架橋剤においてステップ1のみが進行し、架橋が進行しない場合がある。
表面架橋処理の後、必要に応じて酸を作用させて酸付加塩とする。塩化に用いる酸としては、薬学的に許容される酸が使用でき、具体例として塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、酢酸、安息香酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、塩酸、炭酸、酢酸が好ましく、塩酸が最も好ましい。ポリマーのアミノ基に対する酸の当量は、0.1〜1当量が好ましく、より好ましくは0.3〜1当量である。
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、その高いリン酸吸着量と低い膨潤度から医薬組成物として用いることができ、中でも高リン血症の治療または予防薬として好ましく用いることができる。この場合、本発明の医薬組成物をそのまま粉末剤として、又は適当な剤形の医薬組成物として哺乳動物に対して経口的に投与することにより、腸内のリン酸の吸収が阻害されることで高リン血症の治療または予防に寄与する。
本発明の医薬組成物の投与のための剤形としては、具体的には錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤などが挙げられる。かかる剤形は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる各種担体を含有するものである。各種担体としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤などの添加物を用いることもできる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、D-マンニトール、バレイショ澱粉、ショ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
本発明の医薬組成物の有効投与量及び投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状の重篤度によっても異なるが、通常成人1日当り0.1〜20gを、好ましくは0.5〜12gを食前、食中、あるいは食後に投与することができる。
本発明の医薬組成物は、単独で、あるいは炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸ランタンなどの経口リン吸着剤と併用して投与することができる。
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
(参考例1) N,N’-1,4-ブチレンビス(N-ビニルアセトアミド)の合成
文献[ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:パートA:ポリマー・ケミストリー(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry),1997年,第35巻,p.3377-3384.]に従い、合成した。1Lの三ツ口フラスコに水素化ナトリウム18.9g(60%鉱物油分散物、472mmol)を秤取し、アルゴン雰囲気下N,N-ジメチルホルムアミド360mLを加えて分散させた。これを氷冷し、N-ビニルアセトアミド40.2g(472mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド50mLに溶解させて滴下した。その後、1,4-ジブロモブタン52.0g(241mmol)を滴下し、室温で終夜撹拌した。水10mLを加え、ロータリーエバポレーターでN,N-ジメチルホルムアミドの大部分を留去した。水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物を油状物として得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/2〜1/3又はクロロホルム/2-プロパノール=40/1〜20/1)を繰り返し、N,N’-1,4-ブチレンビス(N-ビニルアセトアミド)を白色結晶として28.1g得た(収率53%)。
(参考例2) 塩酸セベラマーの合成
特許第3113283号公報に従って、ポリ(アリルアミン/エピクロロヒドリン)、すなわち塩酸セベラマーの合成を行った。メカニカルスターラーを装着した300mLセパラブルフラスコに塩酸173mLを入れ、内温5〜10℃でアリルアミン120g(2.10mol)を滴下した。滴下終了後、70℃のオイルバスで加熱しながら90mLの液体を減圧留去した。系内を3回アルゴンで置換した後、30分アルゴンをバブリングした。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩2.40g(8.85mmol)を水5.4mLに懸濁させたものを加え、内温50℃で24時間撹拌した。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩2.40g(8.85mmol)を水5.4mLに懸濁させたものを加え、内温50℃でさらに44時間撹拌した。水48mLを加えて室温まで冷却し、メタノール2Lに撹拌しながらゆっくり注いだ。得られた白色固体を濾過した。固体をメタノール2Lに加えて1時間撹拌し、濾過する操作を2回繰り返した。得られた固体を50℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、ポリアリルアミン塩酸塩を111g得た。
得られたポリアリルアミン塩酸塩25.0gを200mLビーカーに秤取し、水100mLに溶解した。メカニカルスターラーで撹拌しながら水酸化ナトリウム7.12gを加えたところ、pH10となった。内温25℃でエピクロロヒドリン2.50mLを加えて撹拌したところ、23分後に固化した。撹拌を止め、25℃で18時間静置した。2-プロパノール75mLを加えてゲルを砕き、濾過した。固体を水340mLに加えて1時間撹拌し、濾過する操作を3回行った。2-プロパノール600mLに加えて1時間撹拌し、濾過した。30℃の真空オーブンで37時間乾燥し、白色固体25.7gを得た。これを凍結粉砕し、評価に用いる塩酸セベラマー合成品を得た。
特許第3113283号公報記載のとおりのポリマーが合成できているかを確認するため、特許第3113283号公報記載のin vitro評価方法を模倣し、リン酸単独条件でのリン酸吸着量を評価した。炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム12水和物を用い、それぞれの濃度が30mM、80mM、12mMである溶液を調製し、1N塩酸を加えてpH7にあわせて試験液とした。試料20mgを30mL三角フラスコにとり、ここへ上記試験液10mLを添加し、37℃水浴で3時間撹拌した。本条件下で撹拌後、pHが8〜9となるので、1N塩酸でpH7にした。試料サンプルから少量採取して遠心分離し、試料に吸着されなかったリン酸の量を無機リン酸測定試薬(和光純薬株式会社製、ホスファC-テストワコー(登録商標))にて測定し、この測定値から試料に吸着除去されたイオン量を求めた。その結果、リン酸単独条件でのリン酸吸着量は3.4±0.5mmol/g(N=3)となり、特許第3113283号公報記載のリン酸吸着量である3.1mmol/gと同等の性能を有することがわかった。
得られた塩酸セベラマー合成品の膨潤度とリン酸吸着能のin vitro評価を以下に示す方法で行った。
[試料の膨潤度測定試験]
よく乾燥させた試料を過剰量の蒸留水に24時間以上浸漬させ、減圧濾過により固体成分を分離し、その重量を測定した。膨潤度は浸漬後の試料重量を乾燥重量で除した値で示した。
[リン酸吸着量および胆汁酸吸着量測定試験]
体内環境を模倣した系として、ポリマー0.1mM塩酸中、37℃で1時間撹拌した後、リン酸水素二ナトリウム12水和物及びグリココール酸ナトリウム水溶液をそれぞれ10mM、pH6.8となるように添加した。なお、試料濃度は1mg/mLとなるようにした。さらに37℃で1時間撹拌した後、遠心分離にて試料を除去し、試料に吸着されなかったリン酸及びグリココール酸の量をそれぞれ無機リン酸測定試薬(和光純薬株式会社製、ホスファC-テストワコー(登録商標))及び胆汁酸測定試薬(和光純薬株式会社製、総胆汁酸-テストワコー(登録商標))にて測定し、この測定値から試料に吸着除去されたそれぞれのイオン量を求めた。リン酸選択性は、リン酸吸着量を胆汁酸吸着量で除した値で示した。
塩酸セベラマー合成品の評価結果を表1に示す。リン酸選択性は低く、膨潤度は6.2であった。
Figure 2009179724
(実施例1) 種々の溶媒を用いたN-ビニルアセトアミドの架橋共重合と得られた共重合体の加水分解による架橋ポリビニルアミン塩酸塩の合成
シュレンク管にN-ビニルアセトアミド0.26g(3.0mmol)とN,N’-1,4-ブチレンビス(N-ビニルアセトアミド)0.13g(0.6mmol)を入れ、系内をアルゴンで置換した。表3に示した溶媒を3mL入れ、3分間アルゴンをバブリングした。65℃のオイルバスに浸けて撹拌しながら、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)2.5mg(0.015mmol)を加え、加熱撹拌を24時間継続した。生成した固体を濾取し、減圧乾燥を行った。得られた共重合体を50mLナスフラスコに入れ、水1.5mLに分散させ、濃塩酸1.5mLを加えた。64時間加熱還流した後、固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアミン塩酸塩を得た。
得られたポリビニルアミン塩酸塩の評価を参考例2に示した方法で行った結果を表2に示す。溶媒として酢酸エチル、アセトン、トルエンを用いた場合にリン酸吸着量は高く、膨潤度は低くなった。
Figure 2009179724
(実施例2) エステル系溶媒を用いたN-ビニルアセトアミドの架橋共重合と得られた共重合体の加水分解による架橋ポリビニルアミン塩酸塩の合成
シュレンク管にN-ビニルアセトアミド0.34g(4.0mmol)とN,N’-1,4-ブチレンビス(N-ビニルアセトアミド)0.18g(0.8mmol)あるいは0.27g(1.2mmol)を入れ、系内をアルゴンで置換した。表3に示した溶媒を入れ、3分間アルゴンをバブリングした。65℃のオイルバスに浸けて撹拌しながら、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)2.5mg(0.015mmol)を加え、加熱撹拌を24時間継続した。生成した固体を濾取し、減圧乾燥を行った。得られた共重合体を50mLナスフラスコに入れ、水1.5mLに分散させ、濃塩酸1.5mLを加えた。64時間加熱還流した後、固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアミン塩酸塩を得た。
得られたポリビニルアミン塩酸塩の評価を参考例2に示した方法で行った結果を表3に示す。いずれも高いリン酸吸着量を示した。高濃度の方が高いリン酸吸着量、高いリン酸選択性を示し、膨潤度も低下した。架橋性モノマーの量を増やすと、膨潤度が低下し、リン酸選択性が向上した。
Figure 2009179724
(実施例3) 架橋ポリビニルアミンの表面架橋処理
100mL二口フラスコにN-ビニルアセトアミド3.4g(40mmol)とN,N’-1,4-ブチレンビス(N-ビニルアセトアミド)1.8g(0.8mmol)を入れ、系内をアルゴンで置換した。酢酸エチル(24mL)を入れ、20分間アルゴンをバブリングした。65℃のオイルバスに浸けて撹拌しながら、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)33mg(0.2mmol)を酢酸エチル6mLに溶解させて5分間アルゴンをバブリングしたものを加え、加熱撹拌を20時間継続した。生成した固体を濾取し、減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアセトアミドを5.4g得た。得られた架橋ポリビニルアセトアミド全量を300mLナスフラスコに入れ、水80mLに分散させ、濃塩酸80mLを加えた。64時間加熱還流した後、固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアミン塩酸塩を4.6g得た。この架橋ポリビニルアミン塩酸塩の評価を参考例2に示した方法で行った結果を表4に示す(実施例3-1)。膨潤度は5.0であった。
得た架橋ポリビニルアミン塩酸塩4.2gを200mLナスフラスコに入れ、水80mLに分散させ、20%水酸化ナトリウム水溶液20mLを加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取した。濾液が中性になるまで水で洗浄した後、エタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥を行い、ポリビニルアミンフリー体を2.5g得た。
試験管にポリビニルアミンフリー体0.20gを入れ、エタノール4mLに分散させた。表4に示す表面架橋剤をエタノール2mLに溶解させて加え、1時間加熱還流した。固体を濾取し、エタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥した。得られたポリマーを50mLナスフラスコに入れて水5mLに分散させ、氷冷下1mol/Lの塩酸を表4に示した量加え、室温で1時間撹拌した。固体を濾取し、エタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアミン表面架橋処理品2/3塩酸塩を得た。
この架橋ポリビニルアミン(表面架橋処理品)2/3塩酸塩の評価を参考例2に示した方法で行った結果を表4に示す(実施例3-2〜実施例3-9)。いずれの表面架橋剤を用いた場合も表面架橋処理によって膨潤度が低下した。
Figure 2009179724
(実施例4) エピクロロヒドリンを用いた架橋ポリビニルアミンの表面架橋処理
100mL三口フラスコにN-ビニルアセトアミド6.4g(75mmol)とN,N’-1,4-ブチレンビス(N-ビニルアセトアミド)5.0g(23mmol)を入れ、系内をアルゴンで置換した。酢酸エチル(30mL)を入れ、20分間アルゴンをバブリングした。オイルバスに浸けて撹拌しながら加熱還流し、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)62mg(0.38mmol)を酢酸エチル10mLに溶解させて5分間アルゴンをバブリングしたものを加え、加熱撹拌を22時間継続した。生成した固体を濾取し、減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアセトアミドを11.2g得た。得られた架橋ポリビニルアセトアミド11.0gを500mLナスフラスコに入れ、水220mLに分散させ、濃塩酸80mLを加えた。64時間加熱還流した後、固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄した。減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアミン塩酸塩を9.8g得た。この架橋ポリビニルアミン塩酸塩の評価を参考例2に示した方法で行った結果を表5に示す(実施例4-1)。膨潤度は3.3であった。
得た架橋ポリビニルアミン塩酸塩9.3gを500mLナスフラスコに入れ、水200mLに分散させ、20%水酸化ナトリウム水溶液50mLを加えた。室温で1時間撹拌した後、固体を濾取した。濾液が中性になるまで水で洗浄した後、エタノールで洗浄した。室温で減圧乾燥を行い、ポリビニルアミンフリー体を5.9g得た。
得たポリビニルアミンフリー体3.0gを200mLナスフラスコに入れ、ヘキサン70mLに分散させた。52℃のオイルバスで加熱撹拌しながらエピクロロヒドリン0.27gをヘキサン15mLに溶解させたものを加え、1時間加熱撹拌を継続した。固体を濾取し、ヘキサンで洗浄し、室温で減圧乾燥した。得られたポリマーを300mLナスフラスコに入れて水72mLに分散させ、氷冷下1mol/Lの塩酸を72mL加え、室温で1時間撹拌した。固体を濾取し、水、次いでエタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥を行い、架橋ポリビニルアミン表面架橋処理品塩酸塩を4.3g得た。
この架橋ポリビニルアミン(表面架橋処理品)塩酸塩の評価を参考例2に示した方法で行った結果を表5に示す(実施例4-2)。表面架橋処理によって膨潤度が低下し、リン酸選択性が著しく向上した。
Figure 2009179724
本発明の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩は、リン酸選択性が高く、塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有し、かつ膨潤度が塩酸セベラマーより小さいことを特徴としており、医薬として使用した場合、膨潤による副作用の低減が期待できる。また、上記の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩のアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物を反応させて得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩についても、リン酸選択性が高く、塩酸セベラマー以上のリン酸吸着量を有し、かつ膨潤度が塩酸セベラマーより小さいことを特徴としており、医薬として使用した場合、膨潤による副作用の低減が期待できる。

Claims (8)

  1. 一般式〔1〕:
    Figure 2009179724
    [式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又はメチル基を示す。]
    で表されるN-ビニルカルボン酸アミドと、
    前記N-ビニルカルボン酸アミドに対して、15〜35モル%の一般式〔2〕:
    Figure 2009179724
    [式中、R3は、水素又はメチル基を示し、R4は、炭素数3〜10のアルキレン基を示す。])で表されるN,N’-アルキレンビス(N-ビニルカルボン酸アミド)と、
    を共重合させて得られる共重合体の窒素上のアシル基の一部又は全てを除去して得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩であって、
    リン酸吸着量は、2.7〜4.5mmol/gであり、膨潤度は、2.0〜5.0である、架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩。
  2. 請求項1記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩のアミノ基に、前記アミノ基と反応する官能基を2個以上有する化合物を反応させて得られる架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩であって、
    リン酸吸着量は、2.7〜4.5mmol/gであり、膨潤度は、2.0〜5.0である、架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩。
  3. アミノ基と反応する官能基を2個以上有する前記化合物は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エピハロヒドリン、ジハロゲン化炭化水素、ジエポキシド又は二塩基酸塩化物である、請求項2記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩。
  4. アミノ基と反応する官能基を2個以上有する前記化合物は、アクリル酸エステル又はエピハロヒドリンである、請求項2記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩。
  5. アミノ基と反応する官能基を2個以上有する前記化合物は、エピクロロヒドリンである、請求項2記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩。
  6. 前記一般式〔1〕におけるR1は、水素である、請求項1〜5いずれか1項記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を有効成分として含有する医薬組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項記載の架橋ポリビニルアミン又はその酸付加塩を有効成分として含有する高リン血症の治療又は予防薬。
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