JPWO2008146686A1 - 酵素含有カプセル及び核酸の増幅キット - Google Patents

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Abstract

本発明は、試料からタンパク質を失活させて該試料中の核酸を増幅するために用いられる酵素含有カプセル、該酵素含有カプセルを有する核酸の増幅キット、及び該酵素含有カプセルを用いた核酸の増幅方法を提供することを課題とする。本発明は、融点が60〜95℃であり、非タンパク質性物質を皮膜成分とし、内部に耐熱性酵素を含有することを特徴とする酵素含有カプセル、前記酵素含有カプセルとタンパク質分解酵素とを有する核酸の増幅キット、及び前記酵素含有カプセルを用いる核酸の増幅方法を提供する。

Description

本発明は、タンパク質と核酸を含有する試料から、タンパク質を失活させた後、該試料中の核酸を増幅するために用いられる酵素含有カプセル、該酵素含有カプセルを有する核酸の増幅キット、及び該酵素含有カプセルを用いた核酸の増幅方法に関する。
近年の遺伝子工学技術や分子生物学の進歩に伴い、試料中に含まれる核酸の解析は、学術研究の分野のみならず、医療分野においても広く行われるようになってきている。例えば、遺伝病、癌、感染症、生活習慣病等の診断のために、生体試料中のゲノムDNAやmRNA等の核酸の解析が行われている。通常は、生体試料中に含まれる核酸は微量であるため、解析対象となる標的核酸を増幅することにより解析が行われることが多い。
生体試料中には、タンパク質をはじめとする様々な物質が含まれているが、これらの物質は、核酸増幅反応の阻害要因となり得る。特にタンパク質には、核酸分解活性や、核酸増幅に用いられる酵素等の阻害活性を有するものが多く、高精度かつ高感度に標的核酸を増幅するためには、生体試料中のタンパク質の失活や除去を行うことが好ましい。このため、通常、核酸抽出等の前処理がなされた生体試料を用いて核酸増幅は行われる。
このような前処理方法については、種々の方法が開示されている。核酸を抽出する前処理方法として、例えば、フェノール抽出法や、シリカゲル粒子カラムを用いた抽出法等がある。ここで、フェノール抽出法とは、(a)生体試料に界面活性剤を添加して細胞を溶解し、プロテイナーゼKでタンパク質を消化する、(b)フェノールを用いた抽出操作によりタンパク質の除去を行う、(c)エタノールを加えてDNAを沈殿させることにより、DNAを抽出する、という方法である(例えば、非特許文献1参照)。また、シリカゲル粒子カラムを用いた抽出法とは、(a)生体試料に界面活性剤を添加して細胞を溶解し、プロテイナーゼKでタンパク質を消化する、(b)該消化処理後の生体試料をシリカゲル粒子カラムに通すことにより、核酸をシリカゲル粒子に吸着させる、(c)その後、溶出液を用いてカラムから核酸を溶出することにより、核酸を抽出する、という方法である。前記シリカゲル粒子カラムを用いた方法は、市販のキット等により広く用いられており、前記シリカゲル粒子を磁性粒子とした核酸抽出用全自動機も市販されている。
上記方法とは異なり、生体試料中の核酸増幅阻害物質に対する中和作用物質の添加や加熱等の処理をすることにより、核酸を抽出しない前処理方法もある。該方法として、例えば、試料中にポリアミンを添加する方法(例えば、特許文献1参照)、ジチオスレイトールを添加する方法(例えば、特許文献2参照)、硫酸化多糖を添加する方法(例えば、特許文献3参照)、ポリアミン、ジチオスレイトール、及び硫酸化多糖を添加する方法(例えば、特許文献4参照)アルブミンを添加する方法(例えば、特許文献5参照)、多価アルコール及び/又は硫酸アンモニウムを添加する方法(例えば、特許文献6参照)、陰イオンを含有した繰り返し構造を持つ高分子化合物(ポリアニオン)及び/又はその不溶性高分子を添加する方法(例えば、特許文献7参照)等がある。また、核酸合成を行う前に、試料を添加した遺伝子増幅反応液を耐熱酵素の熱安定性が保たれる温度、例えば70℃〜90℃で5〜20分処理を行う方法(例えば、特許文献8参照)や、従来多用されているpHよりも高いpH条件下、つまり、25℃温度条件下でのpHが8.9以上の反応液中でPCRを行う方法(例えば、特許文献9参照)等がある。
また、RNAを鋳型として核酸増幅を行う場合の前処理方法として、例えば、組織細胞溶解液のpHを2.5〜5とし、反応阻害物と相互作用するカオトロピック塩を加えて処理することにより、RNA分解や増幅反応阻害を抑制する方法(例えば、特許文献10参照)等がある。その他、例えば、単に生体試料を煮沸処理するボイリング法等がある(例えば、非特許文献1参照)。
蛋白質核酸酵素、共立出版、1996年、第41巻、第5号、p453〜456 特開平6−277061号公報 特開2000−93175号公報 特開2000−93176号公報 特開2001−8680号公報 特開2001−8685号公報 特開2000−352982号公報 特開2005−323617号公報 特開平11−113573号公報 特開2003−174878号公報 特開2001−8680号公報 特許第3313358号 特許第3433929号 特表2000−515397号公報 特開2004−315466号公報
上記フェノール抽出法は、フェノール自体が有害物質であり、好ましい方法であるとは言えない。一方で、上記シリカゲル粒子カラムを用いた抽出法は、生体試料中の主な核酸増幅阻害物質であるタンパク質を分解し失活させるため、核酸増幅のための前処理としては非常に好ましく、広く普及している。しかしながら、タンパク質分解酵素は、核酸増幅に用いられる酵素も分解してしまうため、タンパク質分解酵素処理と核酸抽出処理をした後に、改めて核酸増幅に用いられる酵素を添加して核酸増幅処理を行う必要があり、操作等の工程が多く、時間がかかるという問題がある。
その他、上記の核酸増幅阻害物質に対する中和作用物質の添加や加熱等の処理を、核酸と分離せずに行う前処理方法では、生体試料中の核酸増幅阻害物質自体を失活させていないため、核酸増幅阻害物質による阻害作用の抑制が不十分であるという問題がある。また、上記ボイリング法では、煮沸処理によりタンパク質を失活させることができるが、煮沸条件等によりタンパク質の変性が不十分となる場合が多く、不確実である。
本発明は、タンパク質と核酸を含有する試料から、容易かつ簡便に、タンパク質を失活させて該試料中の核酸を増幅するために用いられる酵素含有カプセル、該酵素含有カプセルを有する核酸の増幅キット、及び該酵素含有カプセルを用いた核酸の増幅方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、核酸増幅に用いられる耐熱性酵素を、予めカプセルに封入しておくことにより、該耐熱性酵素を保護しつつ、タンパク質分解酵素処理を行うことができること、及び、タンパク質分解後に加熱処理をすることにより、当該カプセルを溶解させて該耐熱性酵素を試料溶液中に放出させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の酵素含有カプセルは、下記の構成をとる。
(1)融点が60〜95℃の非タンパク質性物質を含む皮膜により、耐熱性酵素を封入した酵素含有カプセル。
(2)前記非タンパク質性物質が生分解性プラスチックである、前記(1)に記載の酵素含有カプセル。
(3)前記生分解性プラスチックが脂肪族ポリエステル又はその共重合体である、前記(2)に記載の酵素含有カプセル。
(4)前記脂肪族ポリエステル又はその共重合体が融点60℃のポリカプロラクトン、又は融点95℃のポリブチレンサクシネートアジペートである、前記(3)に記載の酵素含有カプセル。
(5)前記耐熱性酵素が、不凍性溶媒に溶解させた状態で封入されていることを特徴とする前記(1)に記載の酵素含有カプセル。
(6)前記耐熱性酵素が、核酸の増幅に用いられる酵素であることを特徴とする前記(1)に記載の酵素含有カプセル。
(7)核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドを該カプセル内に更に封入した前記(6)に記載の酵素含有カプセル。
(8)核酸の増幅に用いるためのプライマーを該カプセル内に更に封入した前記(6)に記載の酵素含有カプセル。
本発明の核酸の増幅キットは、下記の構成をとる。
(9)前記(6)〜(8)のいずれか一つに記載の酵素含有カプセル;及びタンパク質分解酵素を含む核酸の増幅キット。
(10)1又は複数の核酸増幅反応用容器を含み、当該容器のそれぞれの内部に、
前記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル;及びタンパク質分解酵素を含有する酵素反応用緩衝液;を有する核酸の増幅キット。
(11)1又は複数の核酸増幅反応用容器を含み、当該容器のそれぞれの内部に、前記(6)〜(8)のいずれか一つに記載の酵素含有カプセル;並びに融点が30〜50℃の非タンパク質性物質を含む皮膜により、タンパク質分解酵素及び酵素反応用緩衝液を封入したカプセル;を有する核酸の増幅キット。
(12)前記耐熱性酵素が、不凍性溶媒に溶解させた状態で前記カプセル内に封入されていることを特徴とする前記(11)に記載の核酸の増幅キット。
(13)前記酵素反応用緩衝液が、さらに核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドを含むことを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の核酸の増幅キット。
(14)前記酵素反応用緩衝液が、さらに核酸の増幅に用いるためのプライマーを含むことを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の核酸の増幅キット。
(15)前記タンパク質分解酵素がプロテイナーゼKであることを特徴とする前記(9)〜(11)の何れか一つに記載の核酸の増幅キット。
本発明の核酸の増幅方法は、下記の構成をとる。
(16)核酸増幅用反応容器内に、前記(6)〜(8)のいずれか一つに記載の酵素含有カプセル;増幅対象の核酸を含む試料;及び適宜、反応基質、プライマー、酵素反応用緩衝液;を導入する工程;並びに、該容器内で核酸の増幅反応を行う工程;を含む核酸の増幅方法。
(17)前記核酸の増幅反応を行う工程が、前記酵素含有カプセルの皮膜を、60℃〜100℃の温度で溶融させる工程;及び55℃〜100℃の温度で核酸の増幅反応を行う工程;を含む、前記(16)に記載の核酸の増幅方法。
(18)(a)タンパク質及び増幅対象の核酸を含む試料、前記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル、タンパク質分解酵素、並びに、適宜、反応基質、プライマー、及び酵素反応用緩衝液を混合し、反応溶液を調製する工程;(b)前記反応溶液を、30℃〜60℃の温度で0〜15分間加熱する工程;(c)前記の加熱された反応溶液を、更に60〜100℃の温度で0〜15分間加熱する工程;並びに(d)前記反応溶液を用いて、核酸の増幅反応を行う工程;を有する核酸の増幅方法。
(19)前記タンパク質分解酵素が、融点が30℃〜50℃の非タンパク質性物質を含む皮膜によりその内部に封入されたものであり、前記工程(b)を当該融点〜60℃の温度で行う、前記(18)に記載の核酸の増幅方法。
(20)前記工程(b)において、前記工程(a)において得られた反応溶液を、45〜55℃に加熱することを特徴とする前記(18)に記載の核酸の増幅方法。
(21)前記タンパク質分解酵素が、不凍性溶媒に溶解された状態で前記皮膜内に封入されている、前記(19)に記載の核酸の増幅方法。
本発明の酵素含有カプセルは、核酸増幅に用いられる耐熱性酵素を封入することでこれを保護しているので、タンパク質分解酵素による処理の後、カプセルを溶融させることで該タンパク質酵素を失活させつつ、該耐熱性酵素をカプセル外に出すができるため、タンパク質分解酵素処理から核酸増幅処理までを、1の核酸増幅反応用容器内で行うことができ、迅速に核酸増幅を行うことができる。特に、本発明の核酸の増幅キットを用いることにより、非常に容易かつ簡便に核酸増幅を行うことができる。
本発明の核酸の増幅方法では、タンパク質分解酵素処理から核酸増幅処理までの工程で必要な全試薬を、予め1の核酸増幅反応用容器に分注し、途中の工程で分注や試薬の添加等の操作を行わなくてもよいため、コンタミネーションのおそれや、感染性試料を用いた場合の二次感染のおそれ等を顕著に低減することができる。また、該耐熱性酵素をカプセルから放出させるための加熱処理により、試料溶液中のタンパク質を変性させることができるため、試料溶液中のタンパク質を、従来に無く効果的に失活させ得ることが期待できる。
実施例1と比較例1で得られたPCR済み反応溶液を、アガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色して得られたバンドパターンを模式的に表した図である。図中、「実施例」は実施例1で得られたPCR済み反応溶液を泳動したレーンを、「比較例」は比較例1で得られたPCR済み反応溶液を泳動したレーンを、「M」はマーカーを泳動したレーンを、それぞれ示している。また、矢印アは、238bpのバンドを示す。
本発明における核酸とは、増幅が望まれる核酸であって、増幅反応において鋳型となり得るものであれば、特に限定されるものではない。DNAであってもよく、RNAであってもよく、RNAから逆転写酵素を用いて合成されたcDNAであってもよい。また、ヒト等の生物由来のものであってもよく、合成されたものであってもよい。
本発明における試料とは、核酸を含有する試料であれば、特に限定されるものではないが、夾雑物としてのタンパク質を含むものであってもよい。例えば、血液や体液等の生体試料、培養細胞や培養液等の培養物等がこれに含まれる。
本発明の酵素含有カプセルは、融点が60〜95℃の非タンパク質性物質を含む皮膜により、耐熱性酵素を封入したことを特徴とするものである。なお、本発明におけるカプセル(皮膜)の融点とは、カプセルが加熱処理によって溶解する時の温度を意味し、非タンパク質性物質とは、タンパク質分解酵素により分解されない物質、すなわちタンパク質分解酵素耐性を有する物質を意味する。
本発明の酵素含有カプセルは、耐熱性酵素が、非タンパク質性物質を皮膜成分とするカプセルの内部に封入された状態である。したがってこの状態で本発明の酵素含有カプセルを添加した試料に対してタンパク質分解酵素によるタンパク質分解処理を行っても、本発明の酵素含有カプセルに含有されている耐熱性酵素を分解や失活させることがない。つまり、本発明の酵素含有カプセルにおいて、カプセルは、耐熱性酵素をタンパク質分解酵素の影響から保護する保護膜の役割を果たすものである。また、皮膜となる非タンパク質性物質の融点を60〜95℃としているため、本発明の酵素含有カプセルは、加熱により溶解させることができる。このため、該タンパク質分解処理後、該試料を加熱することで該タンパク質分解酵素を失活させるとともに、皮膜により保護されていた耐熱性酵素をカプセルから容易に放出させることができる。放出された耐熱性酵素は、試料中の核酸増幅反応に用いることができる。
本発明の酵素含有カプセルの皮膜成分は、融点が60〜95℃であり、かつ、非タンパク質性物質であれば、特に限定されるものではない。融点が60〜95℃であることにより、カプセルの溶解時に、通常用いられるタンパク質分解酵素を失活させることができる。また、核酸の増幅方法が、RNAを鋳型とするNASBA法のように、二本鎖核酸を一本鎖核酸にする変性工程等を含まない方法である場合には、融点が60〜70℃のカプセルであることが好ましい。耐熱性の条件が緩和され、本発明の酵素含有カプセルに含有させ得る耐熱性酵素の種類が増えるためである。より好ましくは、本発明の酵素含有カプセルにおける非タンパク性物質は、タンパク質分解酵素耐性を有する、生分解性プラスチックである。更に好ましくは当該生分解性プラスチックは、脂肪族ポリエステル又はその共重合体である。更に好ましくは当該脂肪族ポリエステル又はその共重合体は、融点60℃のポリカプロラクトン、又は融点95℃のポリブチレンサクシネートアジペートである。 また、本発明の酵素含有カプセルのカプセル成分の種類や濃度等は、使用するタンパク質分解酵素や耐熱性酵素の種類等を考慮して、所望の融点を得られるように、適宜決定することができる。該カプセル成分は、一種類の非タンパク質性物質からなるものであってもよく、二種類以上の非タンパク質性物質の混合物からなるものであってもよい。
本発明の酵素含有カプセルにおいては、耐熱性酵素が、不凍性溶媒に溶解させた状態でカプセルに封入されていることが好ましい。不凍性溶媒に溶解させることにより、カプセル内部の耐熱性酵素の酵素活性を損なうことなく、本発明の酵素含有カプセルを0℃以下で保存することができるためである。ここで、不凍性溶媒とは、氷点下でも凍らない溶媒を意味する。該不凍性溶媒は、通常酵素等の保存に用いられている溶媒であれば、特に限定されるものではなく、耐熱性酵素の種類等を考慮して適宜決定することができる。該不凍性溶媒として、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等がある。
本発明の酵素含有カプセルに含有される耐熱性酵素は、特に限定されるものではないが、核酸の増幅に用いられる酵素であることが好ましい。本発明における核酸の増幅は、好ましくは試料中の核酸を鋳型とし、ヌクレオチドの相補性を用いて塩基鎖を伸長することにより、該試料中の核酸を増幅する方法である。該方法として、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acids Suquence Based Amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法(例えば、特許文献11参照)、ICAN(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)法(例えば、特許文献12参照)等がある。
本発明における核酸の増幅に用いられる耐熱性酵素(以下、核酸増幅用耐熱性酵素という)は、通常60℃以上の温度条件下における核酸増幅反応に用いられる耐熱性酵素であれば、特に限定されるものではない。該核酸増幅用耐熱性酵素として、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性RNAポリメラーゼ、耐熱性RNAヌクレアーゼ等がある。また、本発明の酵素含有カプセルに含有される耐熱性酵素の濃度は、該耐熱性酵素の種類や酵素活性等を考慮して、適宜決定することができる。
本発明の酵素含有カプセルは、耐熱性酵素の酵素活性を損なうことなく、カプセル内部に封入することができる方法であれば、いずれの方法を用いても製造することができる。例えば、特許文献13(カプセル化におけるまたはそれに関する改良)において開示されている方法を用いることにより、本発明の酵素含有カプセルを製造することができる。また、本発明の酵素含有カプセルの形状や大きさは、反応容器中に添加し得る形状等であれば、特に限定されるものではない。
本発明の酵素含有カプセルは、含有する耐熱性酵素の活性を損なわない限り、耐熱性酵素以外の耐熱性物質を含有することができる。例えば、本発明の酵素含有カプセルが、核酸増幅用耐熱性酵素を含有する場合には、核酸の増幅に用いるための他の試薬等を含有することができる。特に、核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドやプライマーを含有することが好ましい。ヌクレオチド等を予め耐熱性酵素と共にカプセルに含有させておくことにより、別途分注する操作を省略することができるためである。
本発明の核酸の増幅キットは、本発明の酵素含有カプセルと、タンパク質分解酵素とを有することを特徴とする。該タンパク質分解酵素は、非耐熱性酵素であれば、特に限定されるものではなく、通常タンパク質の分解に用いられるいずれの酵素であってもよい。該タンパク質分解酵素は、酵素活性における至適温度が60℃未満の非耐熱性酵素であることが好ましく、プロテイナーゼKであることが特に好ましい。タンパク質分解酵素活性に優れており、かつ汎用されており、入手が容易であるためである。
本発明の核酸の増幅キットはさらに1又は複数の核酸増幅反応用容器を含み、当該容器のそれぞれの内部に、上記タンパク質分解酵素によるタンパク質分解反応や、上記酵素含有カプセルに含有されている耐熱性酵素による酵素反応において必要な試薬等を有していてもよい。例えば、該タンパク質分解酵素は、酵素反応用緩衝液に溶解した状態でキットに含ませることができる。該酵素反応用緩衝液は、タンパク質分解反応と、該耐熱性酵素による酵素反応の双方に適した緩衝液であることが好ましい。タンパク質分解反応終了後、反応溶液のpHや塩濃度等を新たに調整することなく、該耐熱性酵素による酵素反応を行うことができるためである。タンパク質分解反応に適した緩衝液の組成と、該耐熱性酵素による酵素反応に適した緩衝液の組成が、大きく異なる場合には、緩衝液の組成を調整するための塩類等を含有するカプセルを調製し、該カプセルを、酵素含有カプセルと共に、タンパク質分解酵素を含有する酵素反応用緩衝液に添加しておくことにより、タンパク質分解反応終了後、反応溶液の調整操作を省略することができる。なお、酵素含有カプセル中の耐熱性酵素の酵素活性を損なうおそれが小さい場合には、緩衝液調整のための塩類等を酵素含有カプセルに含有させることもできる。
また、各核酸増幅反応用容器中には、一のタンパク質分解反応及びその後の核酸増幅反応に必要な量の酵素含有カプセル、タンパク質分解酵素、及び酵素反応用緩衝液が含まれていることが好ましい。酵素含有カプセル等の分注操作を省略することができるためである。ここで、一の核酸増幅反応に必要な酵素含有カプセル量は、カプセル中の核酸増幅用耐熱性酵素の種類や濃度、溶媒の種類や容量、核酸増幅反応における反応溶液の容量等を考慮して、適宜決定することができる。反応溶液中に溶解したカプセルの皮膜成分や溶媒が、核酸増幅反応に与える影響を抑えることができるため、酵素含有カプセルの容量は、核酸増幅反応時の反応溶液量の1/10以下であることが好ましい。
本発明の酵素含有カプセル内の溶媒が、不凍性溶媒である場合には、本発明の核酸の増幅キットは、0℃以下で凍結した状態や、凍結乾燥した状態で保存することができる。例えば、本発明の核酸の増幅キットを0℃以下で凍結保存することにより、冷蔵保存する場合よりも、酵素活性を損なうことなく、長期間保存することができる。凍結した状態で保存する場合には、タンパク質分解酵素の酵素活性を保護するため、凍結融解を繰り返さないことが好ましい。
同様に、タンパク質分解酵素を、不凍性溶媒に溶解させた状態で別途カプセルに含有させることにより、タンパク質分解酵素の酵素活性をより効果的に保護することができる。このようなタンパク質分解酵素を封入するカプセルの皮膜成分は、カプセル内の溶媒や内容物に対して不溶性であり、融点が30〜50℃である非タンパク質性物質であることが好ましい。カプセルの融点が30〜50℃程度であること、すなわち、封入されているタンパク質分解酵素を用いたタンパク質分解処理に適した温度以下であることにより、凍結保存時には、不凍性溶媒に溶解させた状態を維持し、タンパク質分解処理に適した温度では、カプセルが溶解し、タンパク質分解酵素を反応溶液中に放出することができる。このような皮膜成分として、例えば、3,6−アンヒドロガラクトースを含むガラクタンとグアーガムとデンプンの混合物等がある(例えば、特許文献14参照)。
例えば、本発明の核酸の増幅キットが、核酸増幅用耐熱性酵素を含有する酵素含有カプセルを有する核酸の増幅キットである場合には、酵素含有カプセルを内部に有する核酸増幅反応用容器と、タンパク質分解酵素を含有する酵素反応用緩衝液とを有するキットであることが好ましい。該酵素反応用緩衝液が、該タンパク質分解酵素によるタンパク質分解反応と、該核酸増幅用耐熱性酵素による核酸増幅反応の双方に適した緩衝液であることが、より好ましい。さらに、核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドやプライマーを含むキットであることが特に好ましい。ヌクレオチドやプライマーは、タンパク質分解酵素に耐性であり、かつタンパク質分解反応に特に影響しないため、酵素反応用緩衝液に含有させていてもよく、酵素含有カプセルに含有させていてもよい。その他、タンパク質分解酵素をカプセルに含有させる場合には、ヌクレオチドやプライマーは、タンパク質分解酵素と同じカプセルに含有させていてもよい。
本発明の核酸の増幅方法は、本発明の酵素含有カプセルを用いる核酸の増幅方法であれば、特に限定されるものではない。増幅対象となる試料中にタンパク質が存在しない場合や存在する場合のそれぞれにおいても利用することができる。前者の場合、核酸増幅用反応容器内に、本発明の酵素含有カプセル、増幅対象の核酸を含む試料、並びに適宜、反応基質、プライマー、及び酵素反応用緩衝液を導入する工程を行い、次いで当該容器内で核酸の増幅反応を行う工程を組み合わせることで、核酸を増幅することができる。より具体的には、前記核酸の増幅反応を行う工程が、前期酵素含有カプセルの皮膜を、60℃〜100℃の温度、0〜15分間で溶融させ、ついで、55℃〜100℃の温度で核酸の増幅反応を行う工程とすることができる。一方、増幅対象となる試料中にタンパク質が存在する場合には、本発明の核酸の増幅方法により、容易かつ簡便に、試料中のタンパク質を失活させた後に、該試料中の核酸を増幅することができる。例えば、以下のようにして、タンパク質と核酸を含有する試料中の核酸を増幅することができる。
まず、工程(a)として、タンパク質及び核酸を含有する試料、本発明の酵素含有カプセル、タンパク質分解酵素、並びに、適宜、反応基質、プライマー、及び酵素反応用緩衝液を混合し、反応溶液を調製する。この時、核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドや核酸の増幅に用いるためのプライマー等の、タンパク質分解反応のみならず、その後の核酸増幅反応において必要な試薬を全て添加することが好ましい。全工程に必要な試薬を予め添加し、混合することにより、途中の工程で試薬を添加する操作が不要となり、操作の利便性や迅速性を向上させ、コンタミネーションや二次感染のおそれを低減することができる。なお、ヌクレオチドやプライマーは、反応溶液中に添加して溶解させてもよく、酵素含有ゲルに核酸増幅用耐熱性酵素と共に含有させた状態で添加してもよい。また、酵素反応用緩衝液、ヌクレオチド、プライマー等のタンパク質分解反応や核酸増幅反応に用いられる試薬は、特に限定されるものではなく、通常核酸の増幅を行う場合に用いられるものを、通常用いられる量で用いることができる。
次に、工程(b)として、工程(a)において得られた反応溶液を、30℃〜60℃の温度で0〜15分間加熱する。該タンパク質分解酵素を用いたタンパク質分解処理に適した温度に該反応溶液を加熱することにより、該試料に含まれているタンパク質を効果的に分解することができる。このとき、該タンパク質分解酵素は、非タンパク質性物質(融点が30〜50℃)を皮膜成分とするカプセルに含まれるものとすることができる。この場合、工程(b)の温度処理により該皮膜成分が溶解し、該タンパク質分解酵素が、該試料中のタンパク質に作用する。例えばタンパク質分解酵素として、プロテイナーゼKを用いる場合には、前記工程(a)において得られた反応溶液を、45〜55℃に加熱することが特に好ましい。プロテイナーゼKの酵素活性を高く維持できるためである。
タンパク質分解反応終了後、工程(c)として、工程(b)において得られた反応溶液を、60〜100℃の温度で0〜15分間加熱する。該加熱処理により、該酵素含有カプセルを溶解させ、核酸増幅用耐熱性酵素を該反応溶液中に放出させることができる。また、該加熱処理により、タンパク質分解酵素は変性し、失活するため、放出された核酸増幅用耐熱性酵素は、分解されることなく、核酸の増幅に用いることができる。さらに、該加熱処理により、該試料に含まれている非耐熱性タンパク質も変性させることができる。つまり、本発明の核酸の増幅方法においては、核酸増幅反応における主要な阻害要因である試料中のタンパク質を、酵素処理と加熱処理により、非常に効果的に失活させることができる。
さらに、工程(d)として、工程(c)において得られた反応溶液を用いて、核酸の増幅を行うことにより、該試料中の目的の核酸を増幅することができる。核酸の増幅は、該核酸増幅用耐熱性酵素を用いて、通常行われている方法により、行うことができる。また、核酸増幅反応における反応条件等は、増幅の目的である核酸の長さやプライマーの種類等を考慮して、適宜決定することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ポリカプロラクトン(融点:60℃)を皮膜成分とし、特許文献13に記載されている製法を用いて、DNAポリメラーゼを含有する酵素含有カプセルを調製した。具体的には、ポリカプロラクトンに対して、N−メチルピロリドンを用いて部分的に溶媒和させることにより、ポリカプロラクトンを軟化させ、内包させる1μLのDNAポリメラーゼ溶液(1unit)をリザーバーから供給して酵素含有カプセル1を得た。なお、該DNAポリメラーゼ溶液は、DNAポリメラーゼKODplus(1unit、東洋紡社製)の50%グリセロール溶液を用いた。
次に、抗凝固剤(EDTA−2K)入りヒト血液(抗凝固剤処理全血)を試料とし、得られた酵素含有カプセル1を用いて、PCRを行った。具体的には、配列番号1の塩基配列を有するプライマー1と、配列番号2の塩基配列を有するプライマー2とを用いて、ハウスキーピング遺伝子の1つであるGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子を鋳型とし、238bpの核酸を増幅した。
まず、PCR用チューブに、1個の酵素含有カプセル1、5μLの10×酵素反応用緩衝液(200mM Tris−HCl、500mM KCl、80mM MgCl)、0.5μLのdNTP(20mM)、1μLのプライマー1(15μM)、1μLのプライマー2(15μM)、1μLのプロテイナーゼK(20mg/mL)、及び40.5μLの滅菌済純水を添加して混合した後、1μLの抗凝固剤処理全血を添加して、反応溶液を調製した。
次に、該反応溶液を、50℃で10分間加熱した。さらに、該反応溶液を、94℃で5分間加熱した後、94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で30秒間を30サイクル繰り返すことによりPCRを行った。PCR済み反応溶液を、アガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色することにより、目的の238bpの核酸が増幅されているか否かを確認した。
[比較例1]
酵素含有カプセル1に代えて、1μLのDNAポリメラーゼKODplus(1unit、東洋紡社製)を用いて、実施例1と同様にして、GAPDH遺伝子の238bpの核酸を増幅した。具体的には、以下のように行った。
まず、PCR用チューブに、1μLのDNAポリメラーゼKODplus、5μLの10×酵素反応用緩衝液(200mM Tris−HCl、500mM KCl、80mM MgCl)、0.5μLのdNTP(20mM)、1μLのプライマー1(15μM)、1μLのプライマー2(15μM)、及び41.5μLの滅菌済純水を添加して混合した後、1μLの抗凝固剤処理全血を添加して、反応溶液を調製した。
次に、該反応溶液を、50℃で10分間加熱した。さらに、該反応溶液を、94℃で5分間加熱した後、94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で30秒間を30サイクル繰り返すことによりPCRを行った。PCR済み反応溶液を、アガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色することにより、目的の238bpの核酸が増幅されているか否かを確認した。
図1は、実施例1と比較例1で得られたPCR済み反応溶液を、アガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色して得られたバンドパターンを模式的に表した図である。図中、「実施例」は実施例1で得られたPCR済み反応溶液を泳動したレーンを、「比較例」は比較例1で得られたPCR済み反応溶液を泳動したレーンを、「M」はマーカーを泳動したレーンを、それぞれ示している。また、矢印アは、238bpのバンドを示す。図1から明らかであるように、実施例1のPCR済み反応溶液では、目的の238bpの核酸が増幅されていたが、比較例1では増幅された核酸は検出できなかった。これは、比較例1では、プロテアーゼKを反応溶液中に添加すると、DNAポリメラーゼが失活するため、実施例1とは異なり、増幅阻害物質であるタンパク質が除去されなかったためと推察される。実施例1において増幅された核酸が検出されたことから、本発明の酵素含有カプセルは、プロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素の影響を受けないこと、及び、通常PCRにおいて行われる変性工程と同じ加熱処理(94℃5分間)によって、反応溶液中にDNAポリメラーゼが溶出され、PCRが行われることが明らかである。
これらの結果から、本発明の酵素含有カプセルを用いることにより、DNAポリメラーゼ等の耐熱性酵素の酵素活性に影響を及ぼすことなく、全血等の生体試料のタンパク質分解処理を行うことができること、及び、タンパク質分解反応とその後の核酸増幅反応のための反応溶液の調製が一回で行うことができるため、迅速に試料中の核酸を増幅できることが明らかである。
まず、実施例1と同様にして、1μLのDNAポリメラーゼ溶液(1unit)を調製した。
ポリカプロラクトン(融点:60℃)を皮膜成分とし、特許文献13に記載されている製法を用いて、DNAポリメラーゼを含有する酵素含有カプセルを調製した。具体的には、ポリカプロラクトンに対して、N−メチルピロリドンを用いて部分的に溶媒和させることにより、ポリカプロラクトンを軟化させ、内包させる3.5μLの酵素溶液をリザーバーから供給して酵素含有カプセル2を得た。なお、該酵素溶液は、3.5μL中に、1μLの該DNAポリメラーゼ溶液(1unit)、0.5μLのdNTP(20mM)、1μLのプライマー1(15μM)、1μLのプライマー2(15μM)の混合溶液である。
酵素含有カプセル1に代えて、酵素含有カプセル2を用いて、実施例1と同様にして、GAPDH遺伝子の238bpの核酸を増幅した。具体的には、以下のように行った。
まず、PCR用チューブに、1個の酵素含有カプセル2、5μLの10×酵素反応用緩衝液(200mM Tris−HCl、500mM KCl、80mM MgCl)、1μLのプロテイナーゼK(20mg/mL)、及び40.5μLの滅菌済純水を添加して混合した後、1μLの抗凝固剤処理全血を添加して、反応溶液を調製した。
次に、該反応溶液を、50℃で10分間加熱した。さらに、該反応溶液を、94℃で5分間加熱した後、94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で30秒間を30サイクル繰り返すことによりPCRを行った。PCR済み反応溶液を、アガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色することにより、目的の238bpの核酸が増幅されているか否かを確認した。
この結果、実施例1で得られたPCR済み反応溶液と同様に、238bpの核酸が増幅されていることが確認できた。
ガラクタン複合物とグアーガムとデンプンの混合物(ガラクタン混合物、融点:50℃)を皮膜成分とし、特許文献14に記載されている製法を用いて、プロテイナーゼKを含有するカプセル(以下、プロテイナーゼK含有カプセルという)を調製した。ガラクタン混合物は、重量比として、ガラクタン複合物:グアーガム:デンプン=100:33:133である混合物である。また、ガラクタン複合物は、分子量が30万〜70万、3,6−アンヒドロガラクトース含量が20〜30重量%である第1ガラクタンと、分子量が3,000〜25万、3,6−アンヒドロガラクトース含量が30〜40重量%である第2ガラクタンが、第1ガラクタン100重量部に対して第2ガラクタンが60重量部の割合である複合物である。具体的には、前記混合物に対して、ロータリーダイ式充填機を用いて、内包させる1μLのプロテイナーゼK溶液(20mg/mL)をリザーバーから供給してプロテイナーゼK含有カプセルを得た。なお、1μLのプロテイナーゼK(40mg/mL)を、1μLの100%グリセロールに溶解させたものを、該プロテイナーゼK溶液として用いた。
実施例1で得た酵素含有カプセル1と、プロテイナーゼK含有カプセルを用いて、実施例1と同様にして、GAPDH遺伝子の238bpの核酸を増幅した。具体的には、以下のように行った。
まず、PCR用チューブに、1個の酵素含有カプセル1、1個のプロテイナーゼK含有カプセル、5μLの10×酵素反応用緩衝液(200mM Tris−HCl、500mM KCl、80mM MgCl)、0.5μLのdNTP(20mM)、1μLのプライマー1(15μM)、1μLのプライマー2(15μM)、及び40.5μLの滅菌済純水を添加して混合した後、1μLの抗凝固剤処理全血を添加して、反応溶液を調製した。
次に、該反応溶液を、50℃で10分間加熱した。さらに、該反応溶液を、94℃で5分間加熱した後、94℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で30秒間を30サイクル繰り返すことによりPCRを行った。PCR済み反応溶液を、アガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色することにより、目的の238bpの核酸が増幅されているか否かを確認した。
この結果、実施例1で得られたPCR済み反応溶液と同様に、238bpの核酸が増幅されていることが確認できた。この結果から、50℃の加熱処理により、プロテイナーゼK含有カプセルが溶解し、内部のプロテイナーゼKが反応溶液中に放出され、試料中のタンパク質を効果的に失活させたことが明らかである。したがって、本発明の酵素含有カプセルと、タンパク質分解酵素を含有させたカプセルを用いることによっても、迅速に試料中の核酸を増幅できることが明らかである。
本発明の酵素含有カプセルを用いることにより、耐熱性酵素を添加した状態で、タンパク質分解酵素を用いて、試料中のタンパク質を効果的に失活させることができるため、特に生体試料を用いた遺伝子解析等の分野において利用が可能である。

Claims (21)

  1. 融点が60〜95℃の非タンパク質性物質を含む皮膜により、耐熱性酵素を封入した酵素含有カプセル。
  2. 前記非タンパク質性物質が生分解性プラスチックである、請求項1に記載の酵素含有カプセル。
  3. 前記生分解性プラスチックが脂肪族ポリエステル又はその共重合体である、請求項2に記載の酵素含有カプセル。
  4. 前記脂肪族ポリエステル又はその共重合体が融点60℃のポリカプロラクトン、又は融点95℃のポリブチレンサクシネートアジペートである、請求項3に記載の酵素含有カプセル。
  5. 前記耐熱性酵素が、不凍性溶媒に溶解させた状態で封入されていることを特徴とする請求項1に記載の酵素含有カプセル。
  6. 前記耐熱性酵素が、核酸の増幅に用いられる酵素であることを特徴とする請求項1に記載の酵素含有カプセル。
  7. 核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドを該カプセル内に更に封入した請求項6に記載の酵素含有カプセル。
  8. 核酸の増幅に用いるためのプライマーを該カプセル内に更に封入した請求項6に記載の酵素含有カプセル。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル;及び
    タンパク質分解酵素
    を含む核酸の増幅キット。
  10. 1又は複数の核酸増幅反応用容器を含み、
    当該容器のそれぞれの内部に、
    請求項6〜8のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル;及び
    タンパク質分解酵素を含有する酵素反応用緩衝液;
    を有する核酸の増幅キット。
  11. 1又は複数の核酸増幅反応用容器を含み、
    当該容器のそれぞれの内部に、
    請求項6〜8のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル;並びに
    融点が30〜50℃の非タンパク質性物質を含む皮膜により、タンパク質分解酵素及び酵素反応用緩衝液を封入したカプセル;
    を有する核酸の増幅キット。
  12. 前記耐熱性酵素が、不凍性溶媒に溶解させた状態で前記カプセル内に封入されていることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の核酸の増幅キット。
  13. 前記酵素反応用緩衝液が、さらに核酸の増幅に用いるためのヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の核酸の増幅キット。
  14. 前記酵素反応用緩衝液が、さらに核酸の増幅に用いるためのプライマーを含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の核酸の増幅キット。
  15. 前記タンパク質分解酵素がプロテイナーゼKであることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の核酸の増幅キット。
  16. 核酸増幅用反応容器内に、
    請求項6〜8のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル;
    増幅対象の核酸を含む試料;及び
    適宜、反応基質、プライマー、酵素反応用緩衝液;
    を導入する工程;並びに、
    該容器内で核酸の増幅反応を行う工程;
    を含む核酸の増幅方法。
  17. 前記核酸の増幅反応を行う工程が、
    前記酵素含有カプセルの皮膜を、60℃〜100℃の温度で溶融させる工程;及び
    55℃〜100℃の温度で核酸の増幅反応を行う工程;
    を含む、請求項16に記載の核酸の増幅方法。
  18. (a) タンパク質及び増幅対象の核酸を含む試料、請求項6〜8のいずれか一項に記載の酵素含有カプセル、タンパク質分解酵素、並びに、適宜、反応基質、プライマー、及び酵素反応用緩衝液を混合し、反応溶液を調製する工程;
    (b) 前記反応溶液を、30℃〜60℃の温度で0〜15分間加熱する工程;
    (c) 前記の加熱された反応溶液を、更に60〜100℃の温度で0〜15分間加熱する工程;並びに
    (d) 前記反応溶液を用いて、核酸の増幅反応を行う工程;
    を有する核酸の増幅方法。
  19. 前記タンパク質分解酵素が、融点が30℃〜50℃の非タンパク質性物質を含む皮膜によりその内部に封入されたものであり、前記工程(b)を当該融点〜60℃の温度で行う、請求項18に記載の核酸の増幅方法。
  20. 前記工程(b)において、前記工程(a)において得られた反応溶液を、45〜55℃に加熱することを特徴とする請求項18に記載の核酸の増幅方法。
  21. 前記タンパク質分解酵素が、不凍性溶媒に溶解された状態で前記皮膜内に封入されている、請求項19に記載の核酸の増幅方法。
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