JP4500000B2 - カプセル用皮膜組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラクタンを使用した新規なカプセル用皮膜組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カプセルは、食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などの分野において広く用いられている。
ソフトカプセルは流動体である有効成分を2枚のフィルムを張り合わせる事で被覆し固形化するものであるが、その際に製剤性に関わるフィルム同士の接着効率、形状安定に関わる皮膜強度、保存安定性が要求され評価の対象となる。従来のソフトカプセルの皮膜としては、上記のような性質において優れた機能特性があり、さらにヒトの消化器管内で容易に崩壊して内容物の放出が得られるなどの利点からゼラチンをゲル化したものが使用されている。
また、その他のカプセル剤としてハードカプセルおよびシームレスカプセルなども広く用いられているが、上記に示した製剤性に関わる接着性以外は同様の評価基準であり、主にゼラチンをゲル化したものが使用されている。
【0003】
しかしながら、昨今の狂牛病問題やアレルギーおよび宗教上の問題などからゼラチン代替物の開発が求められており、カプセルの製造においても例外ではない。そこで従来、ゼラチンに変わる植物性素材を使用したカプセルの提案がされているが、いずれもゼラチン系カプセルと同等の製剤性、強度、保存安定性を示すことが出来ない為、不十分であった。
また、ソフトカプセルの場合、高粘性物質をカプセル充填する場合には、高粘性物質を加熱して粘度を下げなければならないが、ゼラチン系のカプセル用皮膜では、充填する内容物を50℃以上に加温すると皮膜の融解が起こるため、加熱にも限界が有り、十分に高粘性物質を内容物とはしえなかった。また、ゼラチンは親水性が高いため、カプセル内容物に水性物質をそのままの形で配合することが困難である。そこで、水性物質を配合するためにはあらかじめ油類と混ぜ合わせ、油中水型エマルジョンを作る必要があるが、それでも十分ではなく保存安定性が不足していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
それ故、本発明は、上記の課題を解決する、カプセル用皮膜組成物を提供することを目的とする。カプセル用とは、ソフトカプセルのみならず、ハードカプセル、シームレスカプセルなども含み、また、ハードカプセルを密封するための勘合部のシール剤としての使用も含まれる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ゼラチンの代替物としては、熱可逆性ゲルを形成するカラギーナン、寒天、ファーセレラン、フノラン、加工ユーケマ藻類などのガラクタンが、植物性であること及びゲル化温度や融解温度がゼラチンと比べてかなり高いこと、また、水に容易に解けないこと等から、有望と考えた。
そして、ガラクタンを使用してカプセルの製造実験を繰り返したところ、稀に製剤性、強度、保存安定性が良いものが得られることが分かった。しかしながら、再現性は非常に悪かった。
【0006】
上記知見に基づき、鋭意研究の結果、今まで入手していたガラクタンは天然物であり、その分子量や3,6−アンヒドロガラクトース含量は採取場所や時期により異なることに着目し、分子量や3,6−アンヒドロガラクトース含量の点からガラクタンを選定し、あるいは分類したガラクタンを組合せてカプセルの成形を試みたところ、特定の2種類のガラクタンの複合物が、製剤性、強度、保存安定性などの点から、満足できるカプセル皮膜を再現性良く製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明によるガラクタン複合物にグアーガムあるいは/およびデンプン分解物を本発明による範囲内で添加することによってさらに保存安定性、強度などを向上させることが見出された。なお、グアーガムは低分子化されたグアーガム分解物も含まれる。
【0007】
請求項1の発明は、分子量が30万〜70万、3,6−アンヒドロガラクトース含量が20〜30重量%である第1ガラクタンと、分子量が3,000〜25万、3,6−アンヒドロガラクトース含量が30〜40重量%である第2ガラクタンが第1ガラクタン100重量部に対して第2ガラクタンが5〜100重量部の割合で共存し、該2種類のガラクタンが全ガラクタン中少なくとも80重量%を占めるガラクタン複合物と水を含み、リン酸水素二ナトリウムおよびジェランガムを含まないことを特徴とするカプセル用皮膜組成物である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載したカプセル用皮膜組成物において、ガラクタン複合物100重量部に対して、グアーガムからなる架橋剤を最大で60重量部含むことを特徴とするカプセル用皮膜組成物である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載したカプセル用皮膜組成物において、グアーガムとして分子量が1万〜4万のグアーガム分解物を含むことを特徴とするカプセル用皮膜組成物である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載したカプセル用皮膜組成物において、ガラクタン複合物100重量部に対して、デンプン分解物を70〜1250重量部含むことを特徴とするカプセル用皮膜組成物である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明で使用するガラクタンは、分子構造中に主としてD−ガラクトースと3,6−アンヒドロガラクトースの連続から構成されるカラギーナン、寒天、ファーセレラン、フノラン、加工ユーケマ藻類などが含まれる。
ガラクタンとしては、分子量と3,6−アンヒドロガラクトース含量(以下、3,6−AnG含量と略記)の点から分類され、2種類のタイプのガラクタンを含むガラクタン複合物であることが要件である。
【0012】
第1ガラクタンは、分子量が30万〜70万、3,6−AnG含量が20〜30重量%であるガラクタンである。
第2ガラクタンは、分子量が3,000〜25万、3,6−AnG含量が30〜40重量%であるガラクタンである。
第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンが5〜500重量部の割合で共存しており、第1ガラクタン及び第2ガラクタンが、合計で、全ガラクタン中少なくとも80重量%を占めるガラクタン複合物が使用される。
【0013】
分子量の大きさはゾル−ゲル転移速度に大きく影響し、分子量が大きいものほど、ゾル−ゲル転移速度が遅くなる。ゾル−ゲル転移速度が遅ければ、カプセル成形時、半固形状態が維持できるので皮膜同士の接着効率は良くなるが、その一方で従来通りの充填機に掛けるのに十分な皮膜強度(弾力性や引裂き強度)は得られない。
3,6−AnG含量は結晶部と非晶部の比率に大きく影響し、3,6−AnG含量が多いものほど、D−ガラクトースと3,6−AnGの繰り返しの度合いが多くなり、二重らせんを形成し易くなるため、結晶部の割合が増大する。結晶部の割合が増大すれば、皮膜強度は増大するが、その一方でゾル−ゲル転移速度は速くなる。
【0014】
第1ガラクタンは、比較的分子量が大きく且つ3,6−AnG含量が少ないので、接着効率の向上に主に寄与し、第2ガラクタンは、比較的分子量が小さく且つ3,6−AnG含量が多いので、カプセル成型時の皮膜強度の向上に主に寄与している。
従って、第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンを5〜500重量部の割合で共存させることで、カプセル皮膜として必要な各種特性を同時に満足させることができる。
【0015】
ガラクタンとしては、典型的なものは海藻多糖類であり、カラギーナン、寒天、ファーセレラン、フノラン、加工ユーケマ藻類など多数の種類があるが、これらは粘度やゼリー強度の観点から分類されたものであり、分子量や3,6−AnG含量にはバラツキがある。
また、同じ種類の海藻多糖類でも分子量や3,6−AnG含量は海流の変化や海中の酵素の違いによりバラツキがある。例えば、カラギーナンには、κ、ι、λタイプがあるが、これは採取場所毎に分類されたものであり、同じタイプでも分子量や3,6−AnG含量や分子量にバラツキがある。
【0016】
従って、本発明のガラクタン複合物を得る方法を以下に例示的に説明する。
先ず、購入したり、採取した海藻類から抽出することでガラクタン原料を入手したら、そのガラクタン原料からサンプルを採取する。
3,6−AnG含量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて定量する。具体的には、ガラクタンサンプルをアルコールで沈殿分離して得られたガラクタン粉末の吸光度を測定する。そして、レゾルシン法などによって予め作成しておいた3,6−アンヒドロガラクトースと吸光度の検量線を元に、前記赤外吸収スペクトル測定法によって測定した吸光度から3,6−AnG含量を定量する。分子量は、ガラクタンサンプルをゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により定量する。
上記により得られた該ガラクタン原料の分子量と3,6−AnG含量の定量結果を基に、該ガラクタン原料が本発明のガラクタン複合物に該当するか否かを判断し、該当しない場合には、既に別途定量されたガラクタン原料を適量追加して混合することにより本発明のガラクタン複合物とする。
【0017】
近年、測定機器とデータ処理装置の進歩によってGPCにて分画された成分をFT−IRで測定することが可能なオンラインSEC−FTIR法が開発されている。この方法を用いれば、ガラクタン原料の各分子量分画における3,6−AnG含量を測定することができるので、分子量と3,6−AnG含量の範囲が該当するガラクタン原料(即ち、本発明のガラクタン複合物に該当するガラクタン原料)を選定できる。
なお、本発明では、ガラクタン複合物は第1ガラクタンと第2ガラクタンのみの組み合わせで達成できる。しかしながら、副原料として他の成分を配合することも可能であり、副原料としては副皮膜剤、可塑剤、金属封鎖剤、着色剤、矯味剤、香料等がある。副皮膜剤としてはグアーガム、グアーガム分解物、デンプン分解物、澱粉、加工澱粉、小麦蛋白、プルラン、コラーゲン、セルロースおよびセルロース誘導体などの高分子物質が考えられ、その場合には、固形分が増加することから、カプセルが乾燥後、必要な膜厚を維持でき、カプセル強度の一層の向上が図れる。なかでも、グアーガムあるいはグアーガム分解物とデンプン分解物が特異な効果を示すことからより好ましい。
【0018】
本発明で使用するグアーガムは、マメ科の植物であるグアの種子から得られるガラクトマンナンの一種である。
これを添加することで、ガラクタン複合物が作る網目構造(二重らせん凝集領域)同士をさらに架橋し、網目構造を補強できる。また、架橋構造を形成する速度が緩やかであることからゲル化速度を著しく速めることはないがゲル化後には皮膜強度があがるので、接着効率を阻害することなくカプセル強度とカプセル同士の耐付着性を向上させる事が出来る。耐付着性とは、カプセル保存中の吸湿によるカプセル同士の、あるいは保存容器への付着に対する耐性であり保存安定性にかかわる。ガラクトマンナンにはローカストビーンガムやタラガムもあるが、これらの併用はゲル化速度を著しく速くしてしまうので好ましくない。
好ましい添加量は、ガラクタン複合物100重量部に対して、最大で60重量部である。
60重量部を上限としたのは、上限値を超えて添加すると、溶解液の流動性の低下、カプセル充填前の皮膜の伸展性が不足し、且つゾル−ゲル転移点が上昇しカプセル充填時に接着不良を生じやすくなる、などのデメリットが発生するからである。
【0019】
また、グアーガムの中では、グアーガム分解物が特に好ましい。
グアーガム分解物とはグアーガムを酵素等を利用して分解し、精製したものであり、分子量は1万〜4万であるものをいう。グアーガム分解物は溶解性が高いため、皮膜組成物を溶解させたときの粘度を極端に上げることなくガラクタンの架橋点を増やすことができるので、有効に網目構造の補強効果を出すことができる。
【0020】
本発明で使用するデンプン分解物は、網目構造中に分散配置させ網目構造の隙間を埋めることで気密性を高める緻密化剤として特異な働きを示す。気密性とは、カプセル保存中に充填されている内溶液を漏出や酸化から守り気密保存する性質のことであり保存安定性にかかわる。
デンプン分解物の分子量は20,000以下である事が好ましい。
ガラクタンのゲルはピラノース環を有する網目構造なので、ゼラチンほど緻密ではないが、デンプン分解物の分子量がこの範囲であれば、網目構造中に分散配置させることで、網目構造の隙間をうまく埋めることができる。その結果、カプセルの気密性が良くなり保存安定性を向上させることができる。また、グアーガムあるいはグアーガム分解物との相乗効果により耐付着性も向上させることができる。
好ましい添加量は、ガラクタン複合物100重量部に対して70〜1250重量部である。
1250重量部を上限としたのは、これを超えるとデンプン分解物が分離して、ガラクタン皮膜としての均質性が損なわれるからである。均質性が損なわれると、カプセルの保存中に、その境界部分が割れ易くなる。
【0021】
可塑剤として、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール等の糖アルコールを適宜配合して、過乾燥による割れ防止やカプセル乾燥後の艶だし効果などを担わせることもできる。また、可塑剤の添加量を増やせば、カプセルに弾力性を与えて食感を変えることもできる。
好ましい添加量は、ガラクタン複合物100重量部に対して、30〜1250重量部である。
【0022】
この他、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸等、又はこれらの塩等のような公知の金属封鎖剤を適宜添加してもよいが、必須ではない。
【0023】
皮膜液中の含水量は、全重量中、30〜70重量%が好ましい。
カプセル皮膜中の含水量は、ゼラチン系皮膜液と同じ5〜30重量%が好ましい。
【0024】
本発明の組成物をカプセル用皮膜として用いるカプセルは、特にソフトカプセルの場合、ゼラチン系ソフトカプセル用のロータリーダイ式充填機を使用して製造できる。
ロータリーダイ式充填機を使用すると、加温可能な溶解釜に保管された皮膜液が供給ホースによりスプレダーボックスへ流し込まれ、そこからキャスティングドラムへ重力落下により流延され、ドラム中で冷却されることでカプセル剤のゾル−ゲル転移性を利用しカプセル成形用の皮膜が作成される。その皮膜はドラムから剥がされ、ローラーを伝って、二つのロール上の金型へと供給される。そこで、2枚のフィルムがセグメントにより再加温され充填物の注入が同時に行われ、皮膜のゾル−ゲル転移性を利用し、打ち抜かれながらヒートシールされ内容物を充填、密封される。また、打ち抜かれた後のネットは充填機下部に存在するローラーに引っ張られ、皮膜に適度なテンションを与えている。打ち抜かれたカプセルはその後、乾燥機に供給され、乾燥工程を経て完成品となる。
【0025】
【実施例】
(検体の作製)
検体1〜6の検体(皮膜液)を調製した。
以下の表にそれぞれの配合量を示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004500000
【0027】
【表2】
Figure 0004500000
【0028】
検体1〜3は本発明品である。検体1は、第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンが100重量部の割合で共存するガラクタン複合物100重量部に対してグリセリン50重量部含む皮膜組成物である。検体2は、第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンが60重量部の割合で共存するガラクタン複合物100重量部に対してグアーガム分解物33重量部、グリセリン50重量部含む皮膜組成物である。検体3は、第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンが60重量部の割合で共存するガラクタン複合物100重量部に対してグアーガム分解物33重量部、デンプン分解物133重量部、グリセリン50重量部含む皮膜組成物である。
検体4は、第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンが600重量部の割合で共存するガラクタン複合物100重量部に対してグリセリン50重量部含む皮膜組成物であり、第1ガラクタンと第2ガラクタンの割合が本発明の範囲外で調製した皮膜組成物(比較品)である。
検体5は、第1ガラクタン100重量部に対し第2ガラクタンが3重量部の割合で共存する市販のιカラギーナンで、溶解液の粘度、皮膜強度および融点について検体1と同等に近づけることができる製品を選定し調製した皮膜組成物(比較品)である。
検体6は、従来のゼラチン系皮膜液である。
【0029】
各検体を溶解釜に入れて加温し、攪拌しながら完全に溶解した。その後、真空ポンプにて脱泡処理して最終的な皮膜液とした。
【0030】
(ソフトカプセルの調製)
各検体を使用して、ロータリーダイ式充填機を使用してカプセル成形を行い、乾燥室にて乾燥させ、最終品のソフトカプセルを製造した。
各ソフトカプセルとも充填内容物としてはサフラワー油(粘度:50mPa・s、室温)、硬化油(融点:60℃)、油中水型エマルジョン(粘度:35,000mPa・s、室温)の3つとした。硬化油を充填する際は65℃に加温しカプセル充填に適した流動性とした。
完成品のソフトカプセルの所望の設定態様は、以下の通りとした。
カプセル形状:オバール型(長径:12.00mm、短径:6.90mm)
充填量:250mg
膜厚:0.40mm
皮膜中の含水量:8重量%
【0031】
(1)製剤性
カプセル成形後の接着状態、形状を観察し製剤性について評価した。
【0032】
【表3】
Figure 0004500000
【0033】
上記表から、検体1〜3(本発明品)はいずれも良好であったが、検体4は第1ガラクタンが不足しているため十分な接着性が得られなく成型性に問題があった。また、検体5は市販されているιカラギーナンを使用し、粘度、皮膜強度、融点を検体1と同等に近づけても同様の成型性が得られなかった。
検体6はサフラワー油の充填はなんら問題なく成型性が得られたが、硬化油は温度を上げて充填したため、まれに変形球が見られた。原因として、高温による部分的な皮膜の融解が起こったためと考えられる。
【0034】
(4)耐熱性
充填内容物がサフラワー油と油中水型エマルジョンのソフトカプセルを16週間6号ガラス瓶に10個ずつ入れ、冷所(5℃)および高温下(50℃)で保存し、内容物の漏れ、割れによる破損数を観察した。なお、観察する前には室温・常圧の状態に1時間放置した。
【0035】
【表4】
Figure 0004500000
【0036】
上記表から、検体1〜3(本発明品)は、サフラワー油、油中水型エマルジョンいずれを充填した場合でも検体4、5に比べ破損数が少なく耐熱性が良好である。
また、油中水型エマルジョンについては検体1〜3(本発明品)に比べ検体6は破損数が多かった。これは検体保存中、内容物の油中水型エマルジョン中の水分がゼラチン製の皮膜を部分的に融解させたものと考えられる。本発明の皮膜は耐水性がゼラチン製皮膜より極めて高いため高温下の長期の保管でもなんら影響を受けていない。
以上のことから、検体1〜3(本発明品)はソフトカプセルを保存するのに好ましくない環境である冬場の低温下、夏場の高温下に保存されても、安定性を維持でき、且つ水を含む油中水型エマルジョンでも安定に保管できる。
【0037】
(5)気密性
充填内容物がサフラワー油で、種々の皮膜組成物を使用したソフトカプセルを16週間6号ガラス瓶に5個ずつ入れ、高温下(50℃)の経時的な油臭の発現を官能評価で比較した。
【0038】
【表5】
Figure 0004500000
【0039】
上記表から、検体3のデンプン分解物を含む本発明品はゼラチンカプセルに匹敵する気密性があることが証明された。
【0040】
(6)付着性
高温多湿下におけるソフトカプセルの付着度合いを観察するために6号ガラスサンプル瓶に充填内容物がサフラワー油のソフトカプセルを20個ずつ入れ、開栓状態で40℃、75%RHの恒温槽にて48時間保存し、室温に戻した後に該サンプル瓶を次に示す状態にした場合の該サンプル瓶から脱離し落下したソフトカプセルの数をもって各検体の付着性を判定した。この場合、少ない衝撃で落下したソフトカプセルの数が多いほど付着性が少ないソフトカプセルであることを示している。
a)サンプル瓶を静かに逆さにする。
b)サンプル瓶を静かに逆さにして机上1cmから落とす。
c)サンプル瓶を静かに逆さにして机上3cmから落とす。
d)サンプル瓶を静かに逆さにして机上5cmから落とす。
【0041】
【表6】
Figure 0004500000
【0042】
上記表から、検体1〜3(本発明品)は良好でありグアーガム分解物、デンプン分解物が入ることによってさらに耐付着性が向上することがわかる。また、検体2,3については、ゼラチンを使用した検体6よりも評価が良く、耐付着性が本発明品は優れていることが分かる。
【0043】
(7)強度
カプセル強度を評価するため、48時間減圧(700mmHg、(=93.3kPa))乾燥したカプセル10個について、破壊強度を硬度計にて測定した。
【0044】
【表7】
Figure 0004500000
【0045】
上記表から検体1〜3(本発明品)は十分な強度を示しているのに対し検体4、5は20kg以下で漏れや割れが発生し、過乾燥状態でのカプセル強度が維持できない事がわかる。また、検体2、3はグアーガム分解物が含まれているため、カプセル皮膜の網目構造を架橋することで強度が上がったためと考えられゼラチン系カプセルに匹敵する強度が得られた。
以上のことから、本発明品のソフトカプセルは冬場の湿度が低い時期などに衝撃による割れ、漏れなどによる問題を解決することが出来た。
【0046】
【発明の効果】
本発明の組成物をカプセル皮膜とするカプセルは、ゼラチン系カプセルと同等の製剤性、強度、保存安定性等を示すので、昨今の狂牛病騒ぎにより勃発した牛由来の素材を植物性素材で代替したいというニーズに十分に応えることが出来る。
また、本発明の組成物は従来のゼラチン系皮膜液では充填困難であった低温帯で高粘度を示すものや油中水滴型のエマルジョンでも問題なくカプセル内容物として封入できる。
本発明のカプセル用皮膜組成物によれば、その皮膜液を従来のゼラチン系皮膜液用のロータリーダイ式充填機を供給して再現性高くソフトカプセルを製造できる。また、ハードカプセル、シームレスカプセルも従来の製造方法を適用することができ、また、ハードカプセルを密封するためのシール剤としても使用できることはいうまでもない。

Claims (4)

  1. 分子量が30万〜70万、3,6−アンヒドロガラクトース含量が20〜30重量%である第1ガラクタンと、分子量が3,000〜25万、3,6−アンヒドロガラクトース含量が30〜40重量%である第2ガラクタンが第1ガラクタン100重量部に対して第2ガラクタンが5〜100重量部の割合で共存し、該2種類のガラクタンが全ガラクタン中少なくとも80重量%を占めるガラクタン複合物と水を含み、リン酸水素二ナトリウムおよびジェランガムを含まないことを特徴とするカプセル用皮膜組成物。
  2. 請求項1に記載したカプセル用皮膜組成物において、ガラクタン複合物100重量部に対して、グアーガムからなる架橋剤を最大で60重量部含むことを特徴とするカプセル用皮膜組成物。
  3. 請求項2に記載したカプセル用皮膜組成物において、グアーガムとして分子量が1万〜4万のグアーガム分解物を含むことを特徴とするカプセル用皮膜組成物。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載したカプセル用皮膜組成物において、ガラクタン複合物100重量部に対して、デンプン分解物を70〜1250重量部含むことを特徴とするカプセル用皮膜組成物。
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