JPWO2008136451A1 - スフィンゴミエリナーゼ - Google Patents

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Abstract

本発明によれば、新規なスフィンゴミエリナーゼおよびその製造方法が提供される。本発明のスフィンゴミエリナーゼは、(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチドからなる。1つの実施態様では、本発明の酵素は、スフィンゴミエリンを基質としたときのpH10で37℃にて10分間の加水分解活性を100%とした場合に、pH8からpH12の範囲内で50%以上の加水分解活性を示す。

Description

本発明は、新規なスフィンゴミエリナーゼおよびその製造方法に関する。
スフィンゴミエリナーゼは、スフィンゴミエリンに作用し、セラミドとホスホリルコリンとを生成する酵素であり、酵素番号E.C.3.1.4.12として知られている。近年、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)由来のスフィンゴミエリナーゼの立体構造が解明され、その触媒メカニズムの研究は、動物細胞のスフィンゴミエリナーゼが関与するといわれる細胞の分化、老化、アポトーシスの解明にも重要であると考えられている(ヒデオ アゴウ(Hideo Ago)ら,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),2006年,281巻(23号),pp.16157−16167)。また、スフィンゴミエリンからスフィンゴミエリナーゼによって生成されるセラミドは、皮膚の角質層にある脂質で、肌の保湿に重要な成分であり、化粧品の基材としても知られている。また、セラミドはアトピー性皮膚炎との関連も注目されており、その治療薬としての開発も期待される。
スフィンゴミエリナーゼは、種々の動物組織、脳、肺、肝、腎、副腎、脾、精巣、胎盤などに存在する。
細菌由来では、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)(ヒロオ イケザワ(HIROH IKEZAWA)ら,バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim.Biophys.Acta.),1978年,528巻,pp.247−256)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)(ヘイゼル エム.ドウリー(HAZEL M.DOERY)ら,ジャーナル・オブ・ジェネラル・マイクロバイオロジー(J.Gen.Microbiol.),1965年,40巻,pp.283−296)、リステリア・イワノヴィ(Listeria ivanovii)(ブルーノ ゴンザレス−ゾルン(Bruno Gonzalez−Zorn)ら,モレキュラー・マイクロバイオロジー(Mol.Microbiol.),1999年,33巻,pp.510−523)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)(ルウド ピー.エイ.エム.セガース(RUUD P.A.M.SEGERS)ら,インフェクション・アンド・イミュニティー(Infect Immune.),1990年,58巻,pp.2177−2185)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(イル−チュン チャン(Err−Cheng Chan)ら,バイオケミストリー(Biochemistry),2000年,39巻,pp.4838−4845)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)(ノリユキ スエヨシ(Noriyuki Sueyoshi)ら,ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bacteriol.),2002年,184巻(2号),pp.540−546)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)(ケイタロウ スズキ(Keitarou SUZUKI)ら,バイオサイエンス・バイオテクノロジー・アンド・バイオケミストリー(Biosci.Biotech.Biochem.),1995年,59巻(11号),pp.2081−2086、特開昭58−43786号公報)などに見出されている。このうち、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)(アキヒロ ヤマダ(Akihiro YAMADA)ら,ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur.J.Biochem.),1988年,175巻,pp.213−220)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)(デイビッド シー.コールマン(David C.Coleman)ら,マイクロバイアル・パソジェネシス(Microb.Pathog.),1986年,1巻,pp.549−564)、リステリア・イワノヴィ(Listeria ivanovii)(ブルーノ ゴンザレス−ゾルン(Bruno Gonzalez−Zorn)ら,モレキュラー・マイクロバイオロジー(Mol.Microbiol.),1999年,33巻,pp.510−523)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)(ルウド ピー.エイ.エム.セガース(RUUD P.A.M.SEGERS)ら,インフェクション・アンド・イミュニティー(Infect.Immune.),1990年,58巻,pp.2177−2185)、およびシュードモナス属(Pseudomonas sp.)(ノリユキ スエヨシ(Noriyuki Sueyoshi)ら,ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bacteriol.),2002年,184巻(2号),pp.540−546)由来のスフィンゴミエリナーゼは、それらの遺伝子がクローニングされており、アミノ酸配列も解明されている。
また、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)(ヨシオ ヤマカワ(Yoshio YAMAKAWA)ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),1977年,81巻,pp.115−126)、クロストリジウム・ノヴィ(Clostridium novyi)(リョウ タグチ(RYO TAGUCHI)ら,バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim.Biophys.Acta.),1975年,409巻,pp.75−85およびリョウ タグチ(Ryo TAGUCHI)ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),1977年,82巻,pp.1217−1223)、ストレプトマイセス・ハチジョウエンシス(Streptomyces hachijoensis)(現ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus))(ヨシオ オオカワ(Yoshio OKAWA)ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),1975年,78巻,pp.537−545)由来のホスホリパーゼCが、スフィンゴミエリナーゼ活性を有することが知られている。
さらに、サリニスポラ・トロピカ(Salinispora tropica)およびサリニスポラ・アレニコラ(Salinispora arenicola)のスフィンゴミエリナーゼの遺伝子が報告されているが、その性質は明らかではない。
スフィンゴミエリナーゼを産業上利用するにあたっては、動物組織由来ではスフィンゴミエリナーゼを大量生産することは困難であり、細菌由来が望ましいと考えられる。しかし、スフィンゴミエリナーゼを生成する細菌のなかには、病原性が指摘されているものが多く、その応用範囲が限定されかねない。
本発明は、新規なスフィンゴミエリナーゼおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、新規なスフィンゴミエリナーゼを得ることを目的として、該酵素を生産する微生物を検索した結果、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物から新規な性質を有するスフィンゴミエリナーゼを見出した。
さらに本発明者らは、該酵素をコードする遺伝子をクローニングし、その構造を明らかにして、この遺伝子が新規な遺伝子であることを確認した。また、この遺伝子を用いて発現プラスミドを構築し、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物を形質転換することにより、該酵素を効率よく生産する微生物を得た。
本発明は、スフィンゴミエリンに作用し、該スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素を提供し、この酵素は、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドからなる:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解作用を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%の相同性を有し、かつ該加水分解作用を示すポリペプチド。
1つの実施態様では、上記酵素は、スフィンゴミエリンを基質としたときのpH10で37℃にて10分間の加水分解活性を100%とした場合に、pH8からpH12の範囲内で50%以上の加水分解活性を示す。
別の実施態様では、上記酵素は、pH10で37℃にて10分間のスフィンゴミエリンに対する加水分解活性を100%とした場合にホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、およびホスファチジルセリン(PS)に対する活性が5%未満である基質特異性を有する。
別の実施態様では、上記酵素は、等電点が6.1である。
さらに別の実施態様では、上記酵素は、SDS−PAGEで測定した場合の分子量が35,000であり、そしてアミノ酸組成より分析した場合の分子量が32,000である。
なお別の実施態様では、上記酵素は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
本発明はまた、上記酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。
1つの実施態様では、上記ポリヌクレオチドは、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリヌクレオチドである:
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド;または
(c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
別の実施態様では、上記ポリヌクレオチドは、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
本発明はさらに、上記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
本発明はさらに、上記ポリヌクレオチドまたは上記ベクターが導入され、スフィンゴミエリンからセラミドとホスホリルコリンを生成する酵素を産生する能力を保有する形質転換体を提供する。
1つの実施態様では、上記形質転換体の宿主は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である。
本発明はさらに、スフィンゴミエリンに作用し、該スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素を製造する方法を提供し、この方法は、
上記ポリヌクレオチドまたは上記ベクターを宿主に導入して、該酵素を産生する形質転換体を得る工程;および該形質転換体を培養して該酵素を産生させる工程を含む。
1つの実施態様では、上記宿主は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である。
本発明によれば、新規なスフィンゴミエリナーゼが提供される。さらに、該酵素を微生物によって効率よく生産する方法が提供される。
図1は、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)培養液からの精製画分のSDS−PAGE解析の結果を示す電気泳動写真である。
図2は、pHが10である場合の酵素活性を基準とした、種々のpHでのストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来精製酵素のスフィンゴミエリナーゼ活性を示すグラフである。
図3は、反応温度が37℃である場合の酵素活性を基準とした、種々の温度でのストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来精製酵素のスフィンゴミエリナーゼ活性を示すグラフである。
図4は、種々の温度での処理後のストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来精製酵素の残存活性を示すグラフである。
図5は、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)からクローニングしたスフィンゴミエリナーゼ遺伝子のコア領域の塩基配列を示す図である。
図6は、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子を含む領域の塩基配列および構造遺伝子についての推定アミノ酸配列を示す図である。
本発明において、酵素とは、精製酵素に限定されず、粗精製物、固定化物なども含む。酵素の精製は、例えば、微生物の培養液を用いて、硫安沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーなどの、当業者に周知の方法を用いて行われ、種々の精製度の酵素(ほぼ単一までに精製された酵素を含む)が得られ得る。
本発明において、微生物とは、野性株、変異株(例えば、紫外線照射などにより誘導される)、あるいは細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝子工学的手法により誘導される組換え体などのいずれの株であってもよい。組換え体などの遺伝子操作された微生物は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版(Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されるような、当業者に公知な技術を用いて容易に作成され得る。微生物の培養液とは、微生物菌体を含む培養液、および遠心分離などにより微生物菌体を除いた培養液の両方を意味する。
(スフィンゴミエリナーゼ)
本発明は、スフィンゴミエリンに作用し、該スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素(スフィンゴミエリナーゼ)を提供する。
本発明のスフィンゴミエリナーゼの活性は、例えば、以下のようにして確認され得るが、確認方法はこれに限定されない。
酵素を、まず2mg/mlの卵黄由来スフィンゴミエリン(Sigma製)を含む20mM グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)に添加し、これを37℃で10分間インキュベートして、スフィンゴミエリンを加水分解する。次いで、沸騰水中で5分間加熱することにより上記酵素を失活させ、その上清の1/50量を分取する。分取した上清に、50mM グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.6)、1mM 塩化マグネシウム、および0.1ユニット/mlの子ウシ腸由来アルカリホスファターゼ(タカラバイオ社製)からなる溶液を4倍量で加え、37℃で30分間インキュベートし、生成したホスホリルコリンからリン酸を遊離させる。さらに、その遊離リン酸を定量するために、9倍量のBIOMOL GREEN Reagent for Phosphate Detection(BIOMOL Research Laboratories,Inc製)を添加し、室温で30分間放置後、波長620nmの吸光度を測定する。この場合、スフィンゴミエリナーゼの酵素量は、リン酸を標準試料として比色定量し、上記条件において1分間に1μmolのリン酸を生成する酵素量を1ユニットとする。
本酵素は、例えば、緩衝液としてトリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)およびグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9〜13)を用いて上記のスフィンゴミエリンと酵素との反応条件下におくと、そのpH範囲内(pH7〜13)でスフィンゴミエリナーゼ活性を示し得る。至適pHはpH8〜12.5の範囲内にあり得る。好ましくは至適pHが9〜12の範囲内にあり、より好ましくは10〜11の範囲内にあり、さらに好ましくは10付近である。本発明の酵素は、例えば、上記のようにスフィンゴミエリンと酵素とを37℃にて10分間反応させた条件下でpH10における加水分解活性を100%とした場合、pH8からpH12の範囲内で50%以上の活性を示し得る。
本酵素は、例えば、上記のスフィンゴミエリンと酵素との反応条件下では、約20〜40℃で作用し得る。至適温度は、この範囲内にあり得る。好ましくは約30〜40℃の範囲内にあり、より好ましくは35〜40℃の範囲内にあり、さらにより好ましくは約37℃である。
本酵素は、例えば、50mM トリス−マレイン酸緩衝液(pH7.0)で30分間処理した場合、4℃から45℃まででは、ほぼ活性の低下が見られず安定であり得、そして50℃でも70%程度の活性が残存している。
本酵素は、例えば、緩衝液としてトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて上記のスフィンゴミエリンと酵素溶液との反応条件下におくと、1mMのMg2+、Mn2+、およびCo2+で活性が促進され得るが、1mMのZn2+、Fe3+、Al3+、およびEDTAで活性が阻害され得る。
本酵素は、pH10の条件下で該酵素と基質とを37℃にて10分間反応させた場合、スフィンゴミエリンが基質である場合に対する加水分解活性を100%とすると、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、またはホスファチジルセリン(PS)を基質とした場合に対する活性が5%未満である基質特異性を有し得る。
本酵素は、電気泳動条件などにより若干変化し得るが、例えば、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782由来の天然の酵素は、SDS−PAGEにおける分子量が約35,000ダルトンを示す。このストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782由来の天然の酵素は、そのアミノ酸組成から計算した分子量は約32,000ダルトンである。
本酵素は、泳動条件などにより若干変化し得るが、例えば、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782由来の天然の酵素は、Phastgel IEF3−10(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いた等電点電気泳動法により、6.1の等電点を示す。
本発明のスフィンゴミエリナーゼは、好ましくは配列番号2の1位から333位までのアミノ酸配列(本明細書では、「配列番号2に記載のアミノ酸配列」ともいう)を有する。本酵素は、スフィンゴミエリナーゼ活性(例えば、スフィンゴミエリンを加水分解する活性;以下も同様である)を有する限り、配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する酵素であっても良い。当業者であれば、例えば、部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res.,1982年,10巻,pp.6487;Methods in Enzymol.,1983年,100巻,pp.448;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.1989年;PCR:A Practical Approach,IRL Press,1991年,pp.200)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより、タンパク質の構造を改変することができる。本発明において、置換、欠失、挿入、および/または付加することができるアミノ酸残基数は、通常50以下、例えば30以下、あるいは20以下、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0〜3である。また、アミノ酸の変異は、人工的に変異させた酵素のみならず、自然界において変異した酵素も、スフィンゴミエリナーゼ活性を有する限り、本発明のスフィンゴミエリナーゼに含まれる。
配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質も、スフィンゴミエリナーゼ活性を有する限り、本発明のスフィンゴミエリナーゼに含まれる。本発明のスフィンゴミエリナーゼは、好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。タンパク質の相同性の(ホモロジー)検索は、例えばSWISS−PROT、PIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベース、またはDDBJ、EMBL、あるいはGene−BankなどのDNAデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。タンパク質の活性の確認は、上記に記載の手順を利用して行い得る。
本発明のスフィンゴミエリナーゼの供給源は特に限定されないが、微生物などの生体細胞から得ることができる。そのような微生物としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が挙げられる。好ましくはストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782が挙げられる。
例えば、上記ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782は適当な栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理したものをスフィンゴミエリナーゼ酵素製剤として製造することができる。
スフィンゴミエリナーゼ酵素製剤の製造に用い得る微生物は、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NRC12782に限られるものではなく、ストレプトマイセス属に属しかつ本発明のスフィンゴミエリナーゼを生産し得る微生物であればよい。また、それらの生物種の天然または人為的変異株や、スフィンゴミエリナーゼ活性の発現に必要な遺伝子断片を人為的に取り出し、それを組み入れた他の生物種であっても本発明に用いることができる。
ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782を用いたスフィンゴミエリナーゼ酵素製剤を例に挙げて、その製造について説明する。本菌は栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理する、あるいはこの処理物を固定化するなどして酵素製剤を製造することができる。さらに具体的に説明すると、本菌を適当な培地、例えば適当な炭素源、窒素源、無機塩類を含む培地中で培養し、該酵素を分泌させる。ここで炭素源としては、澱粉および澱粉加水分解物、グルコース、シュークロースなどの糖類、グリセロールなどのアルコール類、および有機酸(例えば、酢酸およびクエン酸)またはその塩(例えば、ナトリウム塩)などが挙げられる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉などの有機窒素源および硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの無機窒素化合物挙げられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、リン酸1カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、塩化カルシウム、硫酸第1鉄などが挙げられる。炭素源の濃度は、例えば1〜20%(w/v)、好ましくは1〜10%(w/v)の範囲である。窒素源の濃度は、例えば1〜20%(w/v)、好ましくは1〜10%(w/v)の範囲である。培養温度は、上記の酵素が安定であり、そして培養される微生物が十分に生育できる温度であり、好ましくは20〜37℃である。培養時間は、上記酵素が十分に生産される時間であり、好ましくは1〜7日間程度である。培養は、好ましくは、好気的な条件下で、例えば、通気攪拌または振とうしながら行うことができる。
本発明のスフィンゴミエリナーゼは、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈殿や硫安などによる塩析など);陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィー;キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適当に組み合わせることにより精製することができる。例えば、上記微生物の培養上清を回収した後、硫安沈殿、さらに陰イオン交換クロマトグラフィーを繰り返し行うことによりポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)において、ほぼ単一バンドにまで精製することができる。
(スフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチド)
上記スフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNAなどの天然のポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体を含む人工的な分子であり得る。また、本発明のポリヌクレオチドは、DNA−RNAのキメラ分子であり得る。本発明のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1の1位から999位までの塩基配列(本明細書では、「配列番号1に記載の塩基配列」ともいう)を有する。配列番号1に記載の塩基配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしており、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、本発明のスフィンゴミエリナーゼの好ましい形態を構成する。
本発明のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドとしては、上記のような配列番号2に記載のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸を含み、かつスフィンゴミエリナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。当業者であれば、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに部位特異的変異導入法(上述)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりポリヌクレオチドのホモログを得ることが可能である。
本発明のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドとしてはまた、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズでき、かつスフィンゴミエリナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書中に記載した塩基配列情報に基づいて、目的とする遺伝子を、上記微生物(例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物、好ましくは、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782)から取得することができる。遺伝子の取得には、PCRやハイブリダイズスクリーニングが用いられる。また、DNA合成によって遺伝子の全長を化学的に合成することもできる。上記塩基配列情報に基づいて、上記以外の生物に由来する上記スフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドを取得することもできる。例えば、上記塩基配列もしくはその一部の塩基配列を用いてプローブを設計し、他の生物から調製したDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行うことにより、種々の生物由来のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。上記塩基配列情報に基づいて、DNA Databank of Japan(DDBJ)、EMBL、Gene−BankなどのDNAに関するデータベースに登録されている配列情報を用いてホモロジーの高い領域からPCR用のプライマーを設計することもできる。このようなプライマーを用い、染色体DNAもしくはcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記スフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、40個、60個、または100個の連続した配列を1つまたは複数選択してプローブを設計し、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system(GE Healthcare社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、洗浄条件:42℃、0.5×SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。
より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1% SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1% SDSの条件であり、さらに好ましくは65℃、0.1×SSCおよび0.1% SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されるものではない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度など複数の要素があり、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
さらに、本発明のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつスフィンゴミエリナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。タンパク質の相同性(ホモロジー)検索は、上で説明したとおりである。また、本発明のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつスフィンゴミエリナーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。塩基配列の配列同一性の決定および検索についても、上で説明したとおりである。
上記スフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドは、遺伝子組換え技術を用いて、同種もしくは異種の宿主中で発現され得る。
(ベクターおよび形質転換体)
本発明によれば、上記ポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。また、上記ポリヌクレオチドまたは上記ベクターを宿主に導入することにより、スフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素を産生する能力を保有する形質転換体を作製することもできる。
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989年参照)。特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」を参照して行うことができる。微生物中で、本発明のスフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドを発現させるためには、まず微生物中で安定に存在するプラスミドベクターやファージベクターにこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる。そのために、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを本発明のDNA鎖の5’側上流に、より好ましくはターミネーターを3’側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用される微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターが用いられる。これらの各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターなどに関しては、「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版」、特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」などに詳細に記述されている。
形質転換の対象となる宿主は、上記スフィンゴミエリナーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換されて、スフィンゴミエリナーゼ活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌;ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌;サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母;ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビなどが挙げられる。遺伝子組換えの操作の容易性からは大腸菌が好ましく、遺伝子の発現の容易性からは放線菌が好ましい。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、例えば、蚕などの昆虫(Nature 315,592−594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種蛋白質を発現させる系が開発されており、これらを利用してもよい。
得られた形質転換体は、上記のように酵素製剤の製造に用いることができる。具体的には、形質転換体を適当な栄養培地で液体培養して、発現したスフィンゴミエリナーゼを細胞外に分泌させ、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理してスフィンゴミエリナーゼ酵素製剤を製造することができる。宿主細胞に依存して培養条件は変動し得るが、培養は、同業者が通常用いる条件下で行われ得る。例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属のような放線菌を宿主として用いる場合、チオストレプトンを含むトリプチックソイ培地(例えば、ベクトン・ディッキンソン社製)が用いられ得る。形質転換体により産生された酵素は、上述のようにしてさらに精製され得る。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(スフィンゴミエリナーゼの酵素活性の測定方法)
本実施例において、酵素活性の測定は、基本的には、以下のように行った:
まず2mg/mlの卵黄由来スフィンゴミエリン(Sigma製)および酵素溶液を含む20mM グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)を、37℃で10分間インキュベートして、スフィンゴミエリンを加水分解した。次いで、沸騰水中で5分間加熱することにより上記酵素を失活させ、その上清の1/50量を分取した。分取した上清に、50mM グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.6)、1mM 塩化マグネシウム、および0.1ユニット/mlの子ウシ腸由来アルカリホスファターゼ(タカラバイオ社製)からなる溶液を4倍量で加え、37℃で30分間インキュベートし、生成したホスホリルコリンからリン酸を遊離させた。さらに、その遊離リン酸を定量するために、9倍量のBIOMOL GREEN Reagent for Phosphate Detection(BIOMOL Research Laboratories,Inc製)を添加し、室温で30分間放置後、波長620nmの吸光度を測定した。なお、本実施例のスフィンゴミエリナーゼについては、リン酸を標準試料として比色定量し、上記条件において1分間に1μmolのリン酸を生成する酵素量を1ユニットとした。
(実施例1:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来酵素の精製)
(a)培養
ポリペプトン(日本製薬製)1%(w/v)、肉エキス(鰹由来、和光純薬製)1%(w/v)、グルコース1%(w/v)、および塩化ナトリウム0.3%(w/v)からなる培地4Lを調製し、3L容バッフル付き三角フラスコに500mlずつ分注して、121℃で20分間蒸気殺菌を行った。予め「Genetic Manipulation of Streptomyces.A Laboratory Manual.」DA Hopwood,MJ Bibb,KF Chater,T Kieser,CJ Bruton,HM Kieser,DJ Lydiate,CP Smith,JM WardおよびH Schrempf,出版元The John Innes Foundation,1985年の方法で調製しておいたストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782(独立行政法人製品評価技術基盤機構より入手)の胞子懸濁液を0.1mlずつ接種し、30℃で60時間振とう培養した。この培養液をADVANTEC製No2濾紙を用いて濾過することにより、上清を回収した。
(b)硫安分画
(a)で回収した培養上清に30%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(7500rpm、30分、4℃)により除去した。さらに、該溶液に60%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(7500rpm、30分、4℃)により集めた。この沈殿を20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)60mlに溶解し、同一緩衝液で透析し、粗酵素液を得た。
(c)DEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
(b)で得られた粗酵素液を、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したDEAE−Toyopearl 650Mカラム(内径26mm、高さ200mm、東ソー社製)にアプライした。同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから0.8Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(d)RESOURCE Qカラムクロマトグラフィー
(c)で得られた活性画分を集め、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析し脱塩した。これを、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したRESOURCE Q(6ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから0.8Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。溶出した活性画分を集めてSDS−PAGE(12.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)により解析した。図1は、この溶出画分のSDS−PAGEによる解析の結果を示す電気泳動写真である。レーン1は、分子量マーカーであり、レーン2は、溶出画分のバンドを示す。その結果、単一のバンドが観察された(図1)。
このようにして、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782より、電気泳動的に単一に精製された酵素を得た。
(実施例2:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来酵素の性質の測定)
上記の実施例1で得た精製酵素のスフィンゴミエリナーゼ活性を上記方法で測定し、スフィンゴミエリナーゼ活性を有することを確認した。この精製酵素の酵素学的性質について検討した。
(1)作用pH:緩衝液としてトリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)およびグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9〜13)を用いてpHを変化させたこと以外は、上記方法に従って、スフィンゴミエリナーゼ活性を測定した。その結果、この酵素は、反応の至適pHが10であることが分かった。図2は、種々の反応pHでの酵素活性を、反応pHが10である場合の酵素活性を基準とする相対活性として示したグラフである。図2から分かるように、この酵素は、pH8からpH12のアルカリ性の広い範囲で最大活性の50%以上の活性を示した。
(2)作用温度:酵素とスフィンゴミエリンとの反応温度を変化させたこと以外は、上記方法に従って、スフィンゴミエリナーゼ活性を測定した。図3は、種々の反応温度での酵素活性を、反応温度が37℃である場合の活性を基準とする相対活性として示したグラフである。図3に示されるように、この酵素は、20〜40℃で活性を発揮し得、そして反応の至適温度は37℃付近であった。
(3)温度安定性:精製酵素を50mM トリス−マレイン酸緩衝液(pH7.0)中で、種々の温度で30分間処理した後の残存活性を、上記方法に従って測定した。温度処理前の酵素活性を基準として、各温度処理後の酵素活性の残存割合として示した。図4は、種々の温度での処理後の酵素の残存活性を示すグラフである。図4に示されるように、この酵素は、4℃から45℃までの温度での処理後では、処理前の90%以上の活性が残存していた。50℃の処理後では、処理前の70%程度の活性が残存していた。
(4)各種金属塩およびEDTAの影響:酵素とスフィンゴミエリンとの反応の際に各種金属イオンまたはEDTAを添加して、スフィンゴミエリナーゼ活性を測定した。この際に、金属塩の沈殿を防ぐために、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)をトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に変更した。その結果を、金属塩を添加しない条件を100とした相対活性で表1に示す。この酵素は、Zn2+、Fe3+、Al3+、およびEDTAによって阻害を受けた。
(5)基質特異性:スフィンゴミエリンの代わりに各種リン脂質を基質として用いたこと以外は、上記方法に従って、スフィンゴミエリナーゼ活性を測定した。その結果を、スフィンゴミエリンを基質とした場合を100とした相対活性で表2に示す。この酵素は、表2に示すような基質特異性を示した。
(6)分子量:SDS−PAGE法(12.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)に従って、精製酵素の分子量を測定した結果、精製酵素の分子量は約35,000であった(図1)。
(7)等電点:Phastgel IEF3−10(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いた等電点電気泳動法により、精製酵素の等電点を測定した結果、精製酵素の等電点は6.1であった。
(実施例3:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来酵素のN末端アミノ酸配列の解析)
上記実施例1で得た精製酵素を用いて、プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列の解析を行った。上記精製酵素のN末端アミノ酸配列は配列番号3に示すとおりであった。
(実施例4:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782の染色体DNAの分離)
ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)NBRC12782を、トリプチックソイ培地(ベクトン・ディンキンソン社製)5mlを用いて28℃で4日間培養し、集菌した。次いで、この菌体を、0.15M NaCl、0.1M EDTA(pH8.0)、および8mg/ml リゾチームからなる溶液800μlに懸濁し、37℃で45分間処理した後、さらに−80℃で10分間処理した。次に、これに1%(w/v)SDS、0.1M NaCl、および0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)からなる溶液6mlを添加し、60℃で20分間処理した後、氷冷した。この溶液4.5mlにフェノール/クロロホルム混合液4mlを加えて攪拌し、遠心分離により水相を3ml分取した。この水相に6mlのエタノールを添加混合してDNAを回収し、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液900μlに溶解した。これに、RNaseAを20μg/mlとなるように加え、37℃で1時間処理した後、フェノール/クロロホルム混合液900μlを加えて攪拌し、遠心分離により、水相を600μl分取した。この水相に3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)60μlおよびエタノール1.2mlを添加混合し、DNAを回収した。このDNAを70%(v/v)エタノールに10分間浸漬した後、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液600μlに溶解した。
(実施例5:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子のコア領域のクローニング)
スフィンゴミエリナーゼのN末端アミノ酸配列およびストレプトマイセス属の使用コドンに基づいて、PCR用の縮重オリゴヌクレオチドプライマーS1センスプライマー(配列番号4)を設計した。
また、細菌由来スフィンゴミエリナーゼのアミノ酸配列が、ウシDNaseIのアミノ酸配列と高い相同性を示すことがわかり、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)由来のスフィンゴミエリナーゼおよびウシDNaseIのアミノ酸配列を比較した結果、C末端に近い領域でSDHYPからなるアミノ酸配列を共有していた(ヨウ マツオ(YO MATSUO)ら,プロテイン・サイエンス(Protein Science),1996年,5巻,pp.2459−2467)。このアミノ酸配列SDHYPおよびストレプトマイセス属の使用コドンに基づいて、PCR用の縮重オリゴヌクレオチドプライマーA1アンチセンスプライマー(配列番号5)を設計した。ここで、配列中のSはCまたはGを表す。
PCRの反応液組成は次のとおりである。上記実施例4で得た鋳型染色体DNA168ng、10×PCR Buffer for KOD−plus−5μl、プライマー 各300nM、dNTP混合物 各0.2mM、MgSO 1mM、DMSO 3%、およびKOD−plus−DNA Polymerase 1.0ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。PCR反応条件は次のとおりである。ステップ1;94℃、2分;ステップ2;94℃、15秒;ステップ3;55℃(サイクルごとに1℃ずつ低く設定する)、30秒;ステップ4;68℃、1分;ステップ2からステップ4を20サイクル繰り返す;ステップ5;94℃、15秒;ステップ6;40℃、30秒;ステップ7;68℃、1分;ステップ5からステップ7を30サイクル繰り返す;ステップ8;68℃、3分。PCRによって、約800bpの特異的な増幅産物を得た。
このPCR反応液についてアガロース電気泳動を行い、目的の800bpのバンド部分を切り出し、TOPO Blunt Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen製)を用いて、pCR4−TOPOベクターに結合させ、大腸菌JM109を形質転換した。形質転換株をカナマイシン50μg/mlを含むLB培地(ペプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%、pH7.0)で培養し、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen製)を用いてDNAシーケンス用のプラスミドを抽出・精製した。続いて、pCR4−TOPOベクターに由来するT7プライマーおよびM13 reverseプライマーを用いて自動シークエンサーによって、挿入断片の塩基配列を決定した。この塩基配列を図5および配列番号12に示す。
(実施例6:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子のコア領域周辺のクローニング)
上記の実施例5で決定した遺伝子配列の周辺領域の配列を明らかにするために、その上流側と下流側とに分けて、それぞれをPCRにより増幅した。
(a)上流側のクローニング
上記実施例4で得た染色体DNAをSau3AIで完全消化し、TaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(タカラバイオ社製)に付属のSau3AI Cassetteを連結させてライブラリーを作製した。これを鋳型にして、キットに付属のCassette Primer C1とスフィンゴミエリナーゼの部分遺伝子配列に基づいて作製したアンチセンスプライマーAN1(配列番号6)とを用いて、1回目のPCR増幅を行った。PCRの反応液組成は次のとおりである。鋳型染色体DNA 500ng、10×EX Taq Buffer 5μl、プライマー 各2μM、dNTP混合物 各0.2mM、DMSO 3%、およびTaKaRa EX Taq HS Polymerase 2.5ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。PCR反応条件は次のとおりである。ステップ1;94℃、2分;ステップ2;94℃、30秒;ステップ3;55℃、30秒;ステップ4;72℃、1分30秒;ステップ2からステップ4を30サイクル繰り返す;ステップ5;72℃、2分。次いで、このPCR反応液を鋳型として、キットに付属のCassette Primer C2とスフィンゴミエリナーゼの部分遺伝子配列に基づいて作製したアンチセンスプライマーAN2(配列番号7)とを用いて、2回目のPCR増幅を行った。約400bpの特異的な増幅産物が得られ、これをpCR4−TOPOベクターにサブクローニングし、塩基配列を決定した。
(b)下流側のクローニング
上記実施例4で得た染色体DNA100ngをNaeIで完全消化し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いてセルフライゲーションさせて、ライブラリーを作製した。これを鋳型にして、スフィンゴミエリナーゼの部分遺伝子配列に基づいて作製したセンスプライマーSC1(配列番号8)およびアンチセンスプライマーAC2(配列番号9)を用いて、いわゆるインバースPCR増幅を行った。PCRの反応液組成は次のとおりである。鋳型染色体DNA 100ng、10×PCR Buffer for KOD−plus−5μl、プライマー 各300nM、dNTP混合物 各0.2mM、MgSO 1mM、DMSO 3%、およびKOD−plus−DNA Polymerase 1.0ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。PCR反応条件は次のとおりである。ステップ1;94℃、3分;ステップ2;94℃、15秒;ステップ3;68℃、1分;ステップ2からステップ3を35サイクル繰り返す;ステップ4;68℃、3分。PCRによって、約400bpの特異的な増幅産物が得られ、これをpCR4−TOPOベクターにサブクローニングし、塩基配列を決定した。
上記実施例5で決定した塩基配列と併せて上記(a)および(b)で決定した塩基配列に基づいて、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子を含む領域の塩基配列を決定し(配列番号13)、さらに構造遺伝子部分についてその塩基配列からアミノ酸配列を推定した(配列番号14)。図6は、この決定したスフィンゴミエリナーゼ遺伝子を含む領域の塩基配列、およびこの塩基配列の下段に、構造遺伝子の推定アミノ酸配列を示す。図6に示す配列解析の結果から、スフィンゴミエリナーゼをコードする構造遺伝子は999bpのヌクレオチドからなり、333残基のアミノ酸をコードしていることが明らかとなった。上記実施例3にて決定したストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来精製酵素のN末端アミノ酸配列が、上記推定アミノ酸配列中に存在し、完全に一致した(図6中に下線で示す)。
配列類似性検索プログラムBLASTおよびFASTAを用いることにより、上記推定アミノ酸配列を4種類のタンパク質配列データベース(PTR、PRF、UNI−PROTおよびSWISS−PROT)内の配列と比較した。その結果、上記推定アミノ酸配列は、Salinispora tropica CNB−440株のスフィンゴミエリン・ホスホジエステラーゼ(スフィンゴミエリナーゼ)と52%の類似性を示した。
また、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来精製酵素(すなわちスフィンゴミエリナーゼ)は、この推定アミノ酸配列のアミノ酸組成に基づいて計算したところ、約32000ダルトンの分子量を有すると推定された。
(実施例7:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドの作製)
放線菌においてストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼを発現させるために、形質転換に用いる組換えプラスミドを作製した。
まず、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼの構造遺伝子の上流域配列にBglII部位を付加したセンスプライマーS2(配列番号10)、および該構造遺伝子の下流域配列にBglII部位を付加したアンチセンスプライマーA2(配列番号11)を設計した。次いで、これらのプライマーを用いて、上記実施例4で得た染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRの反応液組成は次のとおりである。鋳型染色体DNA 168ng、10×PCR Buffer for KOD−plus−5μl、プライマー 各300nM、dNTP混合物 各0.2mM、MgSO 1mM、DMSO 5%、およびKOD−plus−DNA Polymerase 1.0ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。PCR反応条件は次のとおりである。ステップ1;94℃、2分;ステップ2;94℃、15秒;ステップ3;68℃、1分;ステップ2からステップ3を30サイクル繰り返す;ステップ4;68℃、2分。このPCRにより約1200bpの特異的な増幅産物が得られた。この増幅された断片をBglIIで消化し、放線菌プラスミドpIJ702(ATCC35287、American Type Culture Collectionより入手)のBglII部位に挿入して、組換えプラスミドpIJ702−SMaseを得た。
(実施例8:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子を発現する組換え放線菌の作製)
実施例7で得た組換えプラスミドpIJ702−SMaseを用いて、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」に記載の方法に従い、プロトプラスト化された放線菌ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326を形質転換し、組換え放線菌ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326(pIJ702−SMase)を得た。
(実施例9:ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)由来スフィンゴミエリナーゼ遺伝子を発現する組換え放線菌の酵素活性測定)
実施例8で得た組換え放線菌を、20μg/mlのチオストレプトンを含む100mlのトリプチックソイ培地(ベクトン・ディッキンソン社製)で培養した。得られた培養液から遠心分離(15000rpm、5分、4℃)にて上清を回収し、60%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた。4℃で16時間放置し、遠心分離にて(15000rpm、15分、4℃)沈殿を回収した。回収した沈殿を500μlの20mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)を外液として透析を行い、0.9mlの酵素溶液を得た。この酵素溶液中の酵素活性を、上記スフィンゴミエリナーゼの酵素活性の測定方法に従って測定した。その結果、酵素溶液の酵素活性は10.2ユニット/mlであった。なお、ベクターであるプラスミドpIJ702を用いて形質転換した放線菌ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326(pIJ702)では、スフィンゴミエリナーゼ活性は検出されなかった。
本発明によれば、新規なスフィンゴミエリナーゼおよびその製造方法が提供される。スフィンゴミエリナーゼをスフィンゴミエリンに作用させて生成されるセラミドは、化粧品の基材などとして有用である。
[配列表]

Claims (14)

  1. スフィンゴミエリンに作用し、該スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドからなる、酵素:
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
  2. スフィンゴミエリンを基質としたときのpH10で37℃にて10分間の加水分解活性を100%とした場合に、pH8からpH12の範囲内で50%以上の加水分解活性を示す、請求項1に記載の酵素。
  3. pH10で37℃にて10分間のスフィンゴミエリンに対する加水分解活性を100%とした場合にホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、およびホスファチジルセリンに対する活性が5%未満である基質特異性を有する、請求項1または2に記載の酵素。
  4. 等電点が6.1である、請求項1から3のいずれかに記載の酵素。
  5. SDS−PAGEで測定した場合の分子量が35,000であり、そしてアミノ酸組成より分析した場合の分子量が32,000である、請求項1から4のいずれかに記載の酵素。
  6. ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項1から5のいずれかに記載の酵素。
  7. 請求項1から6のいずれかの項に記載の酵素をコードするポリヌクレオチド。
  8. 以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリヌクレオチドである、請求項7に記載のポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド;または
    (c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
  9. ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド。
  10. 請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  11. 請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載のベクターが導入され、スフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素を産生する能力を保有する形質転換体。
  12. 前記形質転換体の宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である、請求項11に記載の形質転換体。
  13. スフィンゴミエリンに作用し、該スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生成する酵素を製造する方法であって、
    請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載のベクターを宿主に導入して、該酵素を産生する形質転換体を得る工程;および
    該形質転換体を培養して該酵素を産生させる工程
    を含む、方法。
  14. 前記宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である、請求項13に記載の製造方法。
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