JP5060666B2 - 酵素及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なホスホリパーゼBおよびその製造方法に関する。
ホスホリパーゼBは、グリセロールリン脂質に作用し、リゾリン脂質あるいはグリセロール−3−リン酸ないしグリセロール−3−ホスホコリンなどのグリセロール−3−リン酸エステル化合物を生成する酵素であり、酵素番号E.C.3.1.1.5として知られている。ホスホリパーゼはリン脂質を加水分解する酵素の総称である。リン脂質(グリセロールリン脂質)は、グリセロールの一方のα位(sn−1位)及びβ位(sn−2位)のヒドロキシル基に脂肪酸がエステル結合しており、他方のα位のヒドロキシル基にリン酸基を介してコリン、エタノールアミン、イノシトール等が結合している化合物である。
グリセロールリン脂質におけるグリセロール基のα位の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼA1と称し、グリセロール基のβ位の脂肪酸エステル基を加水分解する酵素をホスホリパーゼA2と称する。また、ホスホリパーゼA1活性及びホスホリパーゼA2活性を併有する酵素をホスホリパーゼB(PLB)と称する。
また、リン脂質中のα位又はβ位の脂肪酸アシル基のうち、一方のみが除去されたリン脂質をリゾリン脂質と称し、リゾリン脂質に作用して、残っている脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素も、分解生成物が前記PLBの場合と同じであるため、PLBに含められる。なお、リゾリン脂質への作用は、リゾホスホリパーゼ活性と称せられる。
他方、リン脂質のグリセロール基とリン酸基との間のエステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼC(PLC)と称する。また、リン酸基とコリンやエタノールアミン等との間の結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼD(PLD)と称する。
上記のようにPLBはリゾホスホリパーゼ活性も併せ持っており、動植物やペニシリウム属の糸状菌、大腸菌、又は酵母などにその存在が知られている。しかしながら、PLBは、リゾレシチンに対する活性は強い一方でジアシル体であるリン脂質に対する作用は極めて弱く、通常のリン脂質を効率よく加水分解する点においては実用的でなかった。また、公知のPLBはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、又はホスファチジルイノシトール等のリン脂質に幅広く作用することが報告されているのみであり、基質特異性を有するものではなかった(非特許文献1、2)。さらに、これら既知のPLBは生産性が極めて低いものであった。
ホスファチジルイノシトールは、大豆レシチンに含まれるものであり、細胞の情報伝達と深く関与していることが数多く報告されてきた。近年、ホスファチジルイノシトールの摂取が血中のトリアシルグリセロール(TG)濃度を減少させ、HDL−C(高比重リポタンパク質コレステロール、一般に言う善玉コレステロール)濃度を上昇させることが報告されている(非特許文献3、4)。そのため、その代謝誘導体であるリゾホスファチジルイノシトールおよびグリセリルホスフォリルイノシトールと共にその生理作用が注目されている。
また、リゾホスファチジルエタノールアミンは、神経細胞栄養物質として、神経細胞の分化誘導作用、および、神経細胞をアポトーシスから保護する作用(アポトーシス抑制作用)を持つことが報告されている(非特許文献5、6)。この他にも、リゾホスファチジルエタノールアミンには、移所運動活性抑制作用、神経活性化作用、細胞保護作用、中枢神経沈静化作用が認められたことが報告されている(非特許文献6)。これらの報告より、リゾホスファチジルエタノールアミンは、虚血性脳障害後に起こるアルツハイマー病や、神経細胞死のような脳神経系の障害に対する予防や治療に期待されている。
さらに、リゾホスファチジルイノシトールは抗カビ作用を持つことも報告されている(特許文献1)。また、リゾホスファチジン酸は、血管収縮作用(非特許文献7)や、強い細胞増殖作用とDNA合成促進作用があることが知られている(非特許文献8)。また、リゾホスファチジルセリンは、肥満細胞の活性化(アレルギーやアトピー性皮膚炎)に関与していることが報告されている(非特許文献7)。また、リゾホスファチジルグリセロールは、麺類改質剤として優れた麺の改質作用を有することが報告されている(特許文献2)。この他にも、リゾホスファチジルグリセロールには強い界面活性作用があり、強い起泡作用を有することが知られている。例えば、強力な乳化力によるO/W乳化の強化、O/W系エマルションの熱安定性の向上、保存性に優れたエマルションの形成、蛋白質や澱粉との優れた結合性、抗菌効果、優れた保湿性、抗酸化作用が知られている。
大豆リゾレシチンは、(1)O/W乳化性が強い、(2)酸性下及び塩類存在下でのエマルジョン安定性が高い、(3)蛋白質との結合や澱粉との結合能で優れた効果を発揮する、(4)離型作用が優れている、等の特徴を有しているところから、近年、その需要が高まっていることが記載されている(特許文献3)。
ホスファチジルエタノールアミンは、大豆レシチンや卵黄レシチンなどに含まれるリン脂質の一成分であり、乳化物の安定化作用があることが知られている。また、卵黄レシチンに存在するホスファチジルエタノールアミンの、特にβ位(sn−2位)には、不飽和脂肪酸が多く結合しており、この不飽和脂肪酸が遊離すると苦みの素となる。したがって、食品加工においては、特にホスファチジルエタノールアミンの加水分解は生じないことが望ましいと言える。しかしながら、これまでにこの目的に適した酵素は見出されていない。
また、グリセロール−3−ホスホコリンは、認知症予防などが期待されている(特許文献4)。この特許文献4では、キャンディダ・シリンドラッセ由来ホスホリパーゼBが報告されているが、このものにおいて分解作用はリパーゼ活性によるものである。また、この文献で、その他に、ペニシリウム・ノタツムとジクティオスレリウム・ディスコイデウム由来のホスホリパーゼBも報告されている。
しかしながら、これらのホスホリパーゼBはすべて糸状菌由来のもので、培養液中への酵素生産に時間を要するといった問題点や、得られる酵素の力価(生産量)が低いなどの問題点がある。さらに、これらの酵素は糸状菌由来であるが故に、その作用pHが酸性域に偏っているため、食品工業などの分野への利用に適していない。
特開平6−256366号公報 特開2008−11745号公報 特開平10−287686号公報 国際公開第2007/010892号
Biochimica BiophysicaActa (1974) 369, 245-253 Biochimica BiophysicaActa (1975) 403, 412-424 Biochem. J (2004) 382, 441-449 Jim W. Burgessら、Journal of Lipid Research(46) 350-355 関口昭博、仁科淳良、群馬産業技術センター研究報告23-28(2006) 関口昭博、仁科淳良、群馬産業技術センター研究報告29-34(2006) 小林哲幸、室伏きみ子、蛋白質 核酸 酵素(1999)44, 1118-1125 室伏きみ子、蛋白質 核酸 酵素(1993)38, 1396-1401
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、新規なPLBおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、新規なPLB(酵素)を得ることを目的として、該酵素を生産する微生物を検索した結果、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物から新規な性質を有するPLBを見出した。
[酵素]
本発明に係る酵素は、リン脂質のsn−1位およびsn−2位のアシル基を加水分解して、リゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む酵素である。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
上記の酵素の好ましい形態は、ジミリストイルホスファチジン酸を基質としたときに、pH8.4で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH7.2からpH10.0の範囲内で50%以上の加水分解活性を示す。
上記の酵素の好ましい形態は、ジミリストイルホスファチジン酸を基質としたときに、pH8.4で50℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、ホスファチジルコリンに対して95%以上、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルグリセロールに対して20%以上、ホスファチジルセリンに対して25%以上であり、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、トリステアリンおよびジパルミトイルグリセリドに対してほぼ0%である基質特異性を有する。
上記の酵素の好ましい形態は、アミノ酸配列から算出した等電点が6.2〜6.6の範囲内である。
上記の酵素の好ましい形態は、SDS−PAGEで測定した場合の分子量が38,000〜40,000の範囲内であり、アミノ酸組成より分析した場合の分子量が41,000〜43,000の範囲内である。
上記の酵素の好ましい形態は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
[ポリヌクレオチド]
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記の酵素をコードするポリヌクレオチドである。
上記のポリヌクレオチドの好ましい形態は、以下の(a)又は(c)記載のポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは
(c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
上記のポリヌクレオチドの好ましい形態は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
[ベクター]
本発明に係るベクターは、上記のポリヌクレオチドを含むベクターである。
[形質転換体]
本発明に係る形質転換体は、上記のポリヌクレオチドまたは上記のベクターが導入され、リン脂質からリゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素を産生する能力を保有する形質転換体である。
上記の形質転換体の好ましい形態は、前記形質転換体の宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である。
[酵素の製造方法]
本発明に係る酵素の製造方法は、リン脂質に作用し、該リン脂質を加水分解してリゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素を製造する方法であって、上記のポリヌクレオチドまたは上記のベクターを宿主に導入して、該酵素を産生する形質転換体を得る工程;および、該形質転換体を培養して該酵素を産生させる工程;を含む製造方法である。
上記の酵素の製造方法の好ましい形態は、前記宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である。
本発明によれば、酵素活性の高い新規なホスホリパーゼBを提供することが可能になる。さらに、該酵素を微生物によって効率よく生産する方法を提供することができる。それにより、金属塩の添加なしでも高いPLB活性を有し、リン脂質に対して基質特異性を有する新規なリン脂質加工剤を得ることができる。また、リゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−ホスホコリンなどのグリセロール−3−リン酸エステル化合物を、効率良く製造することができる。また、純度の高い、ホスファチジルエタノールアミン、グリセロール−3−リン酸、又は、グリセロール−3−ホスホコリンを効率良く製造することができる。
ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)培養液から得られた精製画分についてのSDS−PAGE解析の結果を示す電気泳動写真である。 pHが8.4である場合の酵素活性を基準(100%)とした、種々のpHでのストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素についてのホスホリパーゼBの相対活性を示すグラフである。 反応温度が50℃である場合の酵素活性を基準(100%)とした、種々の温度でのストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素についてのホスホリパーゼBの相対活性を示すグラフである。 pHが8.4、30分間の条件で、種々の温度での処理後のストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素についての残存活性を示すグラフである。 pHが8.4、温度が37℃の条件で処理した後のストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素についての時間ごとの残存活性を示すグラフである。 4℃で3時間の条件で、種々のpHでの処理後のストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素についての残存活性を示すグラフである。 ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来のホスホリパーゼB遺伝子を含む領域の塩基配列および構造遺伝子についての推定アミノ酸配列の一部を示す図である。 ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来のホスホリパーゼB遺伝子を含む領域の塩基配列および構造遺伝子についての推定アミノ酸配列の一部(図7Aの続き)を示す図である。
[酵素]
本明細書において、酵素とは、精製酵素に限定されず、粗精製物、固定化物なども含む。酵素の精製は、例えば、微生物の培養液を用いて、硫安沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーなどの、当業者に周知の方法を用いて行われる。それにより、種々の精製度の酵素(ほぼ単一までに精製された酵素を含む)が得られ得る。
本明細書において、微生物とは、野性株、変異株(例えば、紫外線照射などにより誘導されたもの)、あるいは、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝子工学的手法により誘導される組換え体などのいずれの株であってもよい。組換え体などの遺伝子操作された微生物は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版(Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されるような、当業者に公知な技術を用いて容易に作成され得る。微生物の培養液とは、微生物菌体を含む培養液、および遠心分離などにより微生物菌体を除いた培養液の両方を意味する。
[ホスホリパーゼB]
グリセロールリン脂質中のグリセロール基のα位(sn−1位)の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼA1と称し、グリセロール基のβ位(sn−2位)の脂肪酸エステル基を加水分解する酵素をA2と称する。また、ホスホリパーゼA1活性及びホスホリパーゼA2活性を併有する酵素をホスホリパーゼB(PLB)と称する。すなわち、PLBは、α位とβ位の両方に酵素活性を有する。
したがって、PLBは、リン脂質からリゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−ホスホコリンなどのグリセロール−3−リン酸エステル化合物の少なくとも1種以上、好ましくは3種全てを生成する酵素である。
PLB活性は、例えば、以下のようにして確認され得るが、確認方法はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、酵素反応の結果、生成する遊離脂肪酸量を測定することにより、PLB活性を確認することができる。
具体的な手法としては、まず、10%(w/v)トライトン(Triton)X−100(ナカライテスク(株)製)10mLにジミリストイルホスファチジン酸1g(フナコシ製)を溶解し、10%(w/v)ジミリストイルホスファチジン酸を調製する。この10%(w/v)ジミリストイルホスファチジン酸0.005mLに、0.2M トリス−塩酸緩衝液(pH8.4)0.025mLと、0.5M EDTA二ナトリウム(和光純薬工業(株)製)0.002mLと、蒸留水0.063mLとを加える。そして、37℃で5分間予備加温した後、酵素活性を確認する試料0.005mLを添加し、37℃で5分間反応させる。酵素反応後、100℃で5分間加熱し、反応を停止させる。反応停止後、反応液5μL中に含まれる遊離脂肪酸量を、例えば遊離脂肪酸測定キットである「NEFA Cテストワコー」(和光純薬工業(株)製)を用いて、キットに添付の指示書に記載のとおりに測定する。1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素量を、1単位とする。
本発明における酵素は、リン脂質のsn−1位およびsn−2位のアシル基を加水分解して、リゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含むものである。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
上記の酵素は、例えば、緩衝液として、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.1〜5.6)、ビストリス−塩酸緩衝液(pH5.6〜7.2)、トリス−塩酸緩衝液(pH7.2〜8.8)、および、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.8〜10.5)、を用いて、上記のホスファチジン酸と酵素とを反応条件下におくと、そのpH範囲内(pH4.1〜10.5)でPLB活性を示し得る。至適pHは、pH8〜8.8付近とすることができる。
上記の酵素は、例えば、上記のようにジミリストイルホスファチジン酸と酵素とを37℃にて5分間反応させた条件下でpH8.4における加水分解活性を100%とした場合、pH7.2からpH10.0の範囲内で50%以上の活性を示すことが好ましい。
上記の酵素は、例えば、上記のようにジミリストイルホスファチジン酸と酵素との反応条件下においては、約20〜65℃で作用し得る。至適温度は、この範囲内にあり得る。好ましくは約37〜60℃の範囲内であり、より好ましくは45〜55℃の範囲内であり、さらにより好ましくは約50℃である。
上記の酵素は、例えば、160mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.4)で30分間処理した場合、4℃から45℃まででは、ほぼ活性の低下が見られず安定であり得、そして好ましくは、50℃でも80%程度(例えば75%)以上の活性が残存している。
上記の酵素は、例えば、緩衝液としてトリス−塩酸緩衝液(pH8.4)を用いて、上記のリン脂質と酵素溶液とを反応条件下におくと、10mMのEDTAによって阻害を受けず、EDTAを添加しない場合とほぼ同一の活性を示すことが好ましい。また、10mM Ca2+の存在下では、約90%の活性(例えば85〜95%程度の活性)を示すことが好ましい。一方、10mMのMg2+、Mn2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe3+、Fe2+では活性が阻害され得るものである。
上記の酵素は、pH8.4の条件下で上記のように該酵素と基質とを50℃にて5分間反応させた場合、ジミリストイルホスファチジン酸が基質である場合に対する加水分解活性を100%とすると、ホスファチジルコリン(PC)に対して95%以上、ホスファチジルイノシトール(PI)、及び、ホスファチジルグリセロール(PG)に対して20%以上、ホスファチジルセリン(PS)に対して25%以上の活性を有することが好ましい。また、同じ条件において、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、トリステアリンおよびジパルミトイルグリセリドに対する活性がほぼ0%(例えば5%以下、3%以下、又は1%以下、あるいは検出限界以下)であることが好ましい。このような基質特異性を有することが好ましいものである。
上記の酵素は、電気泳動条件などにより若干変化し得るが、SDS−PAGEにおける分子量が38,000〜40,000の範囲内(例えば、約39,000、又は、38,900)を示すことが好ましい。また、上記の酵素は、アミノ酸組成から計算した分子量が、41,000〜43,000の範囲内であることが好ましい。例えば、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684株由来の天然の酵素では、SDS−PAGEにおける分子量が約39,000、具体的には38,900を示す。このストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684株由来の天然の酵素では、そのアミノ酸組成から計算した分子量は約42,000である。
上記の酵素は、6.2〜6.6の範囲内(例えば6.4)の等電点を示すことが好ましい。酵素の等電点は、そのアミノ酸配列から、GENETYXにより算出され得る。
上記の酵素、すなわちホスホリパーゼBの一態様は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるものである。ホスホリパーゼBは、好ましくは配列番号2の31位から412位までのアミノ酸配列(本明細書では、「配列番号2に記載内のアミノ酸配列」ともいう)を有する。
上記の酵素は、PLB活性を有する限り、配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号2に記載内のアミノ酸配列に対して、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する酵素であっても良い。当業者であれば、例えば、部位特異的変異導入法(NucleicAcid Res.,1982年,10巻,pp.6487;Methods inEnzymol.,1983年,100巻,pp.448;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,ColdSpring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.1989年;PCR:APractical Approach,IRL Press,1991年,pp.200)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより、タンパク質の構造を改変することができる。本明細書において、置換、欠失、挿入、および/または付加することができるアミノ酸残基数は、通常50以下、例えば30以下、あるいは20以下、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0〜3である。また、アミノ酸の変異は、人工的に変異させた酵素のみならず、自然界において変異した酵素も、PLB活性を有する限り、上記の酵素(PLB)に含まれる。
配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号2に記載内のアミノ酸配列に対して、相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質も、PLB活性を有する限り、上記の酵素(PLB)に含まれる。PLBは、好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号2に記載内のアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。
タンパク質の相同性の(ホモロジー)検索は、例えばSWISS−PROT、PIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベース、またはDDBJ、EMBL、あるいはGene−BankなどのDNAデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。タンパク質の活性の確認は、上記に記載の手順を利用して行い得る。
PLBの供給源は特に限定されるものではないが、PLBは、微生物などの生体細胞から得ることができる。そのような微生物としては、例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が挙げられる。好ましくは、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)、ストレプトマイセス・チャッタノゲンシス(Streptomyces chattanoogensis)およびストレプトマイセス・リディカス(Streptomyces lydicus)が挙げられる。これらの菌株は近縁であることから同種の活性のPLBが得られると考えられる。
例えば、上記ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684(受託番号:NITE BP−1015)は適当な栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理したものをPLB酵素製剤として製造することができる。
また、ストレプトマイセス・チャッタノゲンシス(Streptomyces chattanoogensis)NBRC12754でもNA684株と同様の活性が得られることを実験で確認している。したがって、ストレプトマイセス・エスピーNA684とストレプトマイセス・チャッタノゲンシスとは同様の活性を示すものである。
PLB酵素製剤の製造に用い得る微生物はストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684に限られるものではなく、ストレプトマイセス属に属し、かつ、PLBを生産し得る微生物であってもよい。また、それらの生物種の天然または人為的変異株や、PLB活性の発現に必要な遺伝子断片を人為的に取り出し、それを組み入れた他の生物種であってもPLBの製造に用いることができる。また、ストレプトマイセス属に属さなくても、上記のPLBを生産し得る微生物であれば、それを用いることもできる。
ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684を用いたPLB酵素製剤を例に挙げて、その製造について説明する。
この菌は栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理する、あるいはこの処理物を固定化するなどして酵素製剤を製造することができる。さらに具体的に説明すると、まず、この菌を適当な培地、例えば適当な炭素源、窒素源、無機塩類を含む培地中で培養し、該酵素を分泌させる。ここで炭素源としては、澱粉および澱粉加水分解物、グルコース、シュークロースなどの糖類、グリセロールなどのアルコール類、および有機酸(例えば、酢酸およびクエン酸)またはその塩(例えば、ナトリウム塩)などが挙げられる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉などの有機窒素源および硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの無機窒素化合物挙げられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、リン酸1カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、塩化カルシウム、硫酸第1鉄などが挙げられる。炭素源の濃度は、例えば1〜20%(w/v)、好ましくは1〜10%(w/v)の範囲である。窒素源の濃度は、例えば1〜20%(w/v)、好ましくは1〜10%(w/v)の範囲である。培養温度は、上記の酵素が安定であり、そして培養される微生物が十分に生育できる温度であることが好ましく、例えば、20〜37℃であることが好ましい。培養時間は、上記酵素が十分に生産される時間であることが好ましく、例えば、1〜7日間程度であることが好ましい。培養は、好ましくは、好気的な条件下で、例えば、通気攪拌または振とうしながら行うことができる。
PLBは、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈殿や硫安などによる塩析など);陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィー;キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適当に組み合わせることにより精製することができる。例えば、上記微生物の培養上清を回収した後、硫安沈殿、さらに陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及び/又は、陽イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより精製することができる。これにより、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)において、ほぼ単一バンドにまで精製することができる。すなわち、上記酵素(PLB)は、HPLC分析およびゲル濾過クロマトグラフィー分析により、単量体と推定できる。
ところで、既知のPLBおよび前記の特許文献4にあるPLBは生産性が極めて低く、特許文献4に記載のキャンディダ・シリンドラッセに至っては培養上清中に0.2U/mlしか生産することができない。一方、上記のPLBによれば、13.7U/ml以上(ジミリストイルホスファチジン酸に対して)という極めて高い酵素活性を示す培養上清および新規なホスホリパーゼBを提供することが可能になる。
[PLBをコードするポリヌクレオチド]
本発明におけるポリヌクレオチドは、上記のPLBをコードするものである。このポリヌクレオチドは、好ましくは、以下の(a)又は(c)記載のポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは
(c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
上記のポリヌクレオチドは、DNA、RNAなどの天然のポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体を含む人工的な分子であり得る。また、ポリヌクレオチドは、DNA−RNAのキメラ分子であり得る。上記のPLBをコードするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1の1位から1239位までの塩基配列(本明細書では、「配列番号1に記載の塩基配列」ともいう)を有する。配列番号1に記載の塩基配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしており、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、PLBの好ましい形態を構成する。
上記のPLBをコードするポリヌクレオチドとしては、上記のような配列番号2に記載のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸を含み、かつPLB活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。当業者であれば、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに部位特異的変異導入法(上述)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりポリヌクレオチドのホモログを得ることが可能である。
上記のPLBをコードするポリヌクレオチドとしてはまた、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズでき、かつPLB活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。
ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載した塩基配列情報に基づいて、目的とする遺伝子を、上記の微生物、好ましくは、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物、さらに好ましくは、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684から取得することができる。遺伝子の取得には、PCRやハイブリダイズスクリーニングを用いることができる。
また、ポリヌクレオチドは、DNA合成によって遺伝子の全長を化学的に合成して得ることもできる。また、上記の塩基配列情報に基づいて、上記以外の生物に由来する上記PLBをコードするポリヌクレオチドを取得することもできる。例えば、上記塩基配列もしくはその一部の塩基配列を用いてプローブを設計し、他の生物から調製したDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行うことにより、種々の生物由来のPLBをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。
さらに、上記の塩基配列情報に基づいて、DNA Databank of Japan(DDBJ)、EMBL、Gene−BankなどのDNAに関するデータベースに登録されている配列情報を用いてホモロジーの高い領域からPCR用のプライマーを設計することもできる。このようなプライマーを用い、染色体DNAもしくはcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記PLBをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。同様に、環境中から抽出したDNAあるいはRNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記PLBをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、40個、60個、または100個の連続した配列を1つまたは複数選択してプローブを設計し、例えばECL directnucleic acid labeling and detection system(GE Healthcare社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、洗浄条件:42℃、0.5×SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。
より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1% SDSの条件であり、さらに好ましくは65℃、0.1×SSC、0.1% SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されるものではない。
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度など複数の要素があり、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
さらに、上記のPLBをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつPLB活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。タンパク質の相同性(ホモロジー)検索は、上記で説明したとおりである。
また、上記のPLBをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつPLB活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。塩基配列の配列同一性の決定および検索についても、上記で説明したとおりである。
上記のPLBをコードするポリヌクレオチドは、遺伝子組換え技術を用いて、同種もしくは異種の宿主中で発現され得る。
[ベクターおよび形質転換体]
本発明におけるベクターは、上記のポリヌクレオチドを含むものである。また、ポリヌクレオチド又はベクターを宿主に導入することにより、リン脂質に作用し、リゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−ホスホコリンなどのグリセロール−3−リン酸エステル化合物のいずれか1種以上を生成する酵素を産生する能力を保有する形質転換体を作製することができる。
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:ALaboratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989年参照)。特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」を参照して行うことができる。
微生物中で、PLBをコードするポリヌクレオチドを発現させるためには、まず微生物中で安定に存在するプラスミドベクターやファージベクターにこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる。そのために、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターをDNA鎖の5’側上流に組み込むことが好ましい。また、転写・翻訳を制御するユニットにあたるターミネーターをDNA鎖の3’側下流に組み込むことが好ましい。より好ましくは、上記プロモーターとターミネーターの両方をそれぞれの部位に組み込む。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用される微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターが用いられる。これらの各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターなどに関しては、「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版」、特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、JohnInnes Foundation、2000年)」などに詳細に記述されており、その方法を利用することが可能である。また、必要に応じてシグナル配列を用いることで細胞外に効率的に分泌生産させることができる。この時使用するシグナル配列は上記のPLBのものでもその他のものでも良い。
形質転換の対象となる宿主は、上記のPLBをコードするポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換されて、PLB活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。例えば、細菌、放線菌、枯草菌、大腸菌、酵母、カビなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発がされている細菌;ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発がされている放線菌;サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発がされている酵母;ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発がされているカビなどが挙げられる。遺伝子組換えの操作の容易性からは大腸菌が好ましく、遺伝子の発現の容易性からは放線菌が好ましい。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、例えば、蚕などの昆虫(Nature315,592−594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種蛋白質を発現させる系が開発されており、これらを利用してもよい。
得られた形質転換体は、上記のように酵素製剤(PLB)の製造に用いることができる。具体的には、形質転換体を適当な栄養培地で液体培養して、発現したPLBを細胞外に分泌させ、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理してPLB酵素製剤を製造することができる。
宿主細胞に依存して培養条件は変動し得るが、培養は、同業者が通常用いる条件下で行われ得る。例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属のような放線菌を宿主として用いる場合、チオストレプトンを含むトリプチックソイ培地(例えば、ベクトン・ディッキンソン社製)が用いられ得る。形質転換体により産生された酵素は、上述のようにしてさらに精製され得る。
[PLBの利点]
以上のようにして生産され得るPLBの好ましい形態の利点について、以下、説明する。
(1)従来のPLB(旭化成ファーマテック社製PLB)はリパーゼ活性を有するのに対し、上記のPLBはリパーゼ活性を有していない。このことから、食品などに含まれる中性脂質(グリセリド)に作用して食品品質を低下させることがなく、リン脂質のみに作用させることができる。その結果、食品品質をより向上させることが期待できる。
(2)上記の手法で製造する場合、培養日数が短期間ですみ、かつ高活性を示すことから、生産性が高い。
(3)従来のPLBはカルシウムイオンなどの金属イオンが無いと触媒活性が低いために、食品加工においては食品素材に金属塩を添加して酵素処理する必要があった。これに対して、上記のPLBでは、酵素反応に金属塩の添加が不要である。そのため、そのまま食品素材を加工することができ、使用範囲が広がるとともに金属塩による食品品質の劣化の防止、安全性の向上が期待できる。さらに、反応器を用いて酵素処理を行う場合、金属塩の添加が不要なため反応器に缶石が付着することがなく、メンテナンスが容易でランニングコストが低く抑えられる。
(4)従来のPLB(旭化成ファーマテック社製PLB)はPI(ホスファチジルイノシトール)に作用しないのに対し、上記のPLBはPIに作用可能である。このように、上記のPLBは、PE(ホスファチジルエタノールアミン)以外のリン脂質にも作用することが可能で、特に、PA(ホスファチジン酸)とPC(ホスファチジルコリン)によく作用する。特徴的なのは、PEに作用しない点であり、この性質を利用すれば粗リン脂質からPEのみを残存させ、その純度を高めることが可能である。これによって、高純度のPEを製造することが可能である。また、多くの様々なリン脂質(例えば大豆レシチンなど)に作用することから、使用範囲が広く、さまざまなグリセロール−3−リン酸エステル化合物の製造が可能となる。
(5)上記のPLBは、pH7.2〜10.0の範囲において最大活性に対して50%以上の活性を示すことから、従来のPLBに比べて使用できるpH範囲が極めて広く、中性からアルカリ性の条件下で使用できる。そのため、反応制御がしやすく、広範な応用範囲が期待できる。
(6)上記のPLBは、37〜60℃の範囲を超える範囲で50%以上の活性を示すことから、従来のPLBに比べて使用できる温度範囲が広い。特に、60℃以上でも相当の活性を示すことから高温処理も可能である。したがって、反応制御がしやすく、広範な応用範囲が期待できる。
(7)上記のPLBは、還元剤や阻害剤、界面活性剤などによって阻害を受けにくい。そのため、反応制御がしやすい。
(8)従来のPLB(旭化成ファーマテック社製PLB)の安定pHはpH5〜9であるのに対し、上記のPLBの安定pHはpH4〜10.5である。したがって、取り扱いが容易である。
(9)従来のPLB(旭化成ファーマテック社製PLB)の安定温度は55℃であるのに対し、上記のPLBの安定温度は45〜50℃である。したがって、より低温で酵素を失活させることが可能である。
(10)NBRC標準株(ストレプトマイセス・チャッタノゲンシス(Streptomyces chattanoogensis)NBRC12754)でも活性が認められた。そのため、種レベルでの請求が可能である。
[PLBの利用]
以下に、PLBの好ましい形態についての利用方法を説明する。
(1)PLBは、細胞膜を分解できる。そして、PLBは、細胞を溶解させる。したがって、卵黄汚れや血液汚れなどの洗浄剤をはじめとする細胞分解剤あるいは細胞溶解剤に利用できる。
(2)リゾリン脂質は極めて乳化特性に優れているため、様々な分野に利用できる乳化剤あるいは界面活性剤となる。また、リゾリン脂質は、近年様々な生理作用が発見されているため医薬品やサプリメントとして利用可能性がある。したがって、上記のPLBを利用して、様々な高機能リゾリン脂質が製造可能である。
(3)油脂の精製において、不純物となるリン脂質を上記PLBを利用して効率良く分解し、油脂からの物理的な分離を可能にする。
(4)PLBをパン生地や麺生地などの小麦粉に加えることで、小麦粉中に元々含まれているリン脂質をリゾレシチンやグリセロール−3−ホスホコリン等に変換する。生地中でリゾレシチンやグリセロール−3−ホスホコリン等が生成することで、蛋白質や澱粉と結合してグルテンの網目構造の形成を助け、パンや麺の物性を改善したり、老化を防止したりする。
(5)化粧品材料として優れた特性、効果を示す環状ホスファチジン酸はリゾリン脂質から製造することが可能である。したがって、上記PLBを利用すれば、効率的に環状ホスファチジン酸が製造可能になる。
(6)グリセロール−3−ホスホコリンは、認知症予防などが期待される。その他のグリセロール−3−リン酸エステル化合物にも高機能が期待できる。よって、上記のPLBでは高機能のグリセロール−3−リン酸エステルを製造できる。
(7)グリセロール−3−リン酸は、解糖系の代謝中間体である。そのため、上記のPLBでは、代謝を亢進する可能性を有するグリセロール−3−リン酸を製造することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[PLBの酵素活性の測定方法]
本実施例において、酵素活性の測定は、基本的には、以下のように行った。この方法を、以下、「PLB活性標準測定方法」という。この方法では、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用いた場合を例示する。
10%(w/v)トライトン(Triton)X−100(ナカライテスク(株)製)10mLにジミリストイルホスファチジン酸1g(フナコシ製)を溶解し、10%(w/v)ジミリストイルホスファチジン酸を調製した。この10%(w/v)ジミリストイルホスファチジン酸0.005mLに、0.2M トリス−塩酸緩衝液(pH8.4)0.025mLと、0.5M EDTA二ナトリウム(和光純薬工業(株)製)0.002mLと、蒸留水0.063mLとを加えた。そして、37℃で5分間予備加温した後、酵素を含む試料0.005mLを添加し、37℃で5分反応させた。酵素反応後、100℃で5分間加熱し、酵素反応を停止させた。反応停止後、反応液5μL中に含まれる遊離脂肪酸量を、遊離脂肪酸測定キットである「NEFA Cテストワコー」(和光純薬工業(株)製)を用いて、キットに添付の指示書に記載のとおりに測定した。1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素量を、1単位とした。
[実施例1:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来酵素の精製]
(a)培養
NB培地「1% ペプトン(べクトン・ディンキンソン社製)、1%肉エキス(極東製薬工業(株)製)、0.5% 塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)、pH7.2」300mLを調製し、500mL容三角フラスコに100mlずつ分注して、さらに1%大豆レシチンと0.1%ツィーン(Tween)80を添加した後、121℃で15分間蒸気殺菌を行った。予め平板培地に生育したストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684のコロニーを適当量とり、トリプチックソイ培地(べクトン・ディンキンソン社製)5mLを入れたφ18試験管(18×180mm)に接種し、28℃で良好な生育が得られるまで振とう培養した。この培養液を先の滅菌した培地100mLに1mlずつ接種し、28℃で108時間振とう培養した。遠心分離機を用いて、この培養液から上清を回収した。
(b)硫安分画
上記(a)で回収した培養上清に、80%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(10,000rpm、30分、4℃)により回収した。この沈殿を可溶化し、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で透析し、粗酵素液を得た。
(c)DEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
上記(b)で得られた粗酵素液を、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「DEAE−Toyopearl 650Mカラム」(内径26mm、高さ55mm、東ソー社製)にアプライした。同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(d)HiTrap Qカラムクロマトグラフィー
上記(c)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えた。これを、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「HiTrap Q」(5ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(e)RESOURCE PHEカラムクロマトグラフィー
上記(d)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮脱塩した。これに、1M硫酸アンモニウムを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えた。1M硫酸アンモニウムを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で予め平衡化した「RESOURCE PHE」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウム(1Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(f)Mono Sカラムクロマトグラフィー
上記(e)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮脱塩した。これに、20mM メス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH6.0)を加えた。20mM メス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH6.0)で予め平衡化した「Mono S」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから0.5Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(g)SDS−PAGE
上記(e)で溶出した活性画分を集めてSDS−PAGE(12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)により解析した。
図1は、この溶出画分のSDS−PAGEによる解析の結果を示す電気泳動写真である。レーン1(図の左側)は、分子量マーカーであり、レーン2(図の右側)は、溶出画分のバンドを示す。図1に示すように、溶出画分において、単一のバンドが観察された。
以上のようにして、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684株より、電気泳動的に単一に精製された酵素を得た。
この酵素は、HPLC分析およびゲル濾過クロマトグラフィー分析により、単量体と推定された。
[実施例2:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来酵素の性質の測定]
(PLB活性)
実施例1で得た精製酵素と、基質として1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジンコリンとを「PLB活性標準測定方法」の反応条件で酵素反応を行った。
その後、反応液をクロロホルム/メタノール(2/1,v/v)で抽出した。抽出液をガスクロマトグラフィー分析して、加水分解により生じた脂肪酸を定量分析することで、PLB活性を有することを確認した。
(酵素学的性質)
実施例1で得た精製酵素の酵素学的性質について検討した。
(1)作用pH
緩衝液として酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.1〜5.6)、ビストリス−塩酸緩衝液(pH5.6〜7.2)、トリス−塩酸緩衝液(pH7.2〜8.8)、又は、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.8〜10.5)、を用いてpHを変化させたこと以外は、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、PLB活性を測定した。その結果、実施例1で得た酵素は、反応の至適pHが8〜8.8であることが分かった。
図2は、種々の反応pHでの酵素活性を、反応pHが8.4である場合の酵素活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図2のグラフから分かるように、この酵素は、pH7.2からpH10.0という広い範囲で最大活性(100%)に対して相対的な活性が50%以上の活性を示した。
(2)作用温度
酵素反応の際の反応温度を変化させたこと以外は、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、PLB活性を測定した。
図3は、種々の反応温度での酵素活性を、反応温度が50℃である場合の活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図3のグラフに示されるように、この酵素は、20〜65℃で活性を発揮し、そして反応の至適温度は50℃付近(例えば45〜55℃)であった。
(3)温度安定性
実施例1で得た精製酵素を160mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.4)中で、種々の温度で30分間処理した後の残存活性を、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、pH8.4で50℃にて5分間で測定した。温度処理前の酵素活性を基準(100%)として、各温度処理後の酵素活性の残存割合として残存活性を示した。
図4は、種々の温度での処理後の酵素の残存活性を示すグラフである。図4のグラフに示されるように、この酵素は、4℃から45℃までの温度での処理後では、処理前の90%以上の活性が残存していた。50℃の処理後では、処理前の80%程度(約75〜80%)の活性が残存していた。
また、実施例1で得た精製酵素を50mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.4)中で、37℃で60分まで処理する間の残存活性を、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、pH8.4で50℃にて5分間で測定した。温度処理前の酵素活性を基準(100%)として、各時間処理後(10分ごと)の酵素活性の残存割合として残存活性を示した。
図5は、種々の時間での処理後の酵素の残存活性を示すグラフである。図5のグラフに示されるように、この酵素は、温度37℃では60分の処理後でも、処理前と同程度の活性が残存していた。
(4)pH安定性
実施例1で得た精製酵素を40mMの各緩衝液(「作用pH」の欄参照)中で、種々のpHで4℃、3時間処理した後の残存活性を、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、pH8.4で50℃にて5分間で測定した。処理前の酵素活性を基準(100%)として、各処理後の酵素活性の残存割合として残存活性を示した。
図6は、種々のpHでの処理後の酵素の残存活性を示すグラフである。図6のグラフに示されるように、この酵素は、pH4.1から10.5まで活性が残存していた。
(5)各種金属塩およびEDTA等の化学物質の影響
酵素反応の際に、各種金属イオン又はEDTAを添加して、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、pH8.4で50℃にて5分間でPLB活性を測定した。
表1は、10mMのEDTAを添加した条件を100%としたときの、各種添加物を添加した相対活性の結果である。実施例1で得た酵素は、10mMのEDTA、並びに、2mMのヨードアセタミド、2−メルカプトエタノール、PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)、及び、SDSによって阻害を受けず添加しない場合とほぼ同一の活性を示した。また、カルシウムイオン(10mM Ca2+)存在下では、約90%の活性を示した。一方、10mMのMg2+、Mn2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe3+、Fe2+、および、2mMのジチオトレイトールで活性が阻害され得ることが確認された。
Figure 0005060666
(6)基質特異性
ジミリストイルホスファチジン酸の代わりに各種リン脂質を基質として用いたこと以外は、上記「PLB活性標準測定方法」の方法に従って、PLB活性を測定した。
表2は、ジミリストイルホスファチジン酸を基質としてpH8.4で50℃にて5分間での加水分解活性を100%とした場合の相対活性の結果である。実施例1で得た酵素は、表2に示すような基質特異性を示した。
Figure 0005060666
(7)分子量
SDS−PAGE法(12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)に従って、実施例1で得た精製酵素の分子量を測定した結果、精製酵素の分子量は約39,000であった(図1)。なお、単位はDa(ダルトン)である。
(8)等電点
Genetyxを用いて酵素のアミノ酸配列に基づいて酵素の等電点を予測した結果、酵素の等電点は6.4であった。
[実施例3:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来酵素のN末端アミノ酸配列の解析]
実施例1で得た精製酵素を用いて、プロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列の解析を行った。また、nanoLC−MS/MSにより内部アミノ酸配列の解析を行った。解析から、この精製酵素のN末端アミノ酸配列は、配列番号3に示すものであることが確認された。また、内部アミノ酸配列は、配列番号4、5、6に示すものであることが確認された。なお、配列番号3は、配列番号2の31位からに示される配列となっている(1〜30位が分泌シグナル配列で成熟(精製)酵素では除去されている)。また、配列番号4は、配列番号2の187位からに示される配列となっている。また、配列番号5は、配列番号2の327位からに示される配列となっている。なお、配列番号2における335位のアミノ酸、すなわち、配列番号5の9位のアミノ酸が一致していないのは、nanoLC−MS/MSによるデノボアミノ酸配列解析ではLeuとIleが判別できなかったためである。また、配列番号6は、配列番号2の145位からに示される配列となっている。
[実施例4:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684の染色体DNAの分離]
ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684を、YEME培地(0.3%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.3%麦芽エキス、1%グルコース、34%シュークロース、5mM MgCl、0.5%グリシン)30mlを用いて28℃で4日間培養し、集菌した。
次いで、この菌体を、75mM NaCl、25mM EDTA、20mM トリス−塩酸(pH7.5)および1mg/mlリゾチームからなる溶液5mlに懸濁し、37℃で一晩処理した。これに、10%(w/v)SDSを750μl、proteinase Kを5mg添加し、55℃で2時間処理した。この溶液にクロロホルム7.5mlを加えて攪拌し、遠心分離により水相を5ml分取した。
この水相に3mlのイソプロパノールを添加混合してDNA画分を回収し、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液500μlに溶解した。これに、RNaseAを20μg/mlとなるように加え、37℃で1時間処理した後、0.8MのNaClを含む13%PEG溶液を500μl加え攪拌し、遠心分離により、水相を500μl分取した。これにフェノール/クロロホルム混合液500μlを加えて攪拌し、遠心分離により、水相を500μl分取した。
この水相に3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)50μLおよびエタノール1mlを添加混合し、DNAを回収した。
このDNAを70%(v/v)エタノールに10分間浸漬した後、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液200μlに溶解した。
[実施例5:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684由来PLB遺伝子のコア領域のクローニング]
PLBのN末端および内部アミノ酸配列とストレプトマイセス属の使用コドンに基づいて、PCR用の縮重オリゴヌクレオチドプライマーS1センスプライマー「primer S1」(配列番号7)、及び、3種のA1アンチセンスプライマーとして「primer A1−1」(配列番号8)、「primer A1−2」(配列番号9)、「primer A1−3」(配列番号10)を設計した。ここで、配列中のsはcまたはgを表し、wはaまたはtを表し、kはgまたはtを表している。
PCRの反応液組成は次のとおりである。
実施例4で得た鋳型染色体DNA50ng、2×MightyAmp Buffer 25μL、プライマー各300nM、およびMightyAmp DNA Polymerase 1.25ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。
PCR反応条件は次のとおりである。
ステップ1:98℃、2分;
ステップ2:98℃、10秒;
ステップ3:66℃、30秒;
ステップ2からステップ3を30サイクル繰り返す;
ステップ4:66℃、1分30秒。
配列番号7〜10を用いたPCRによって、約500bpの特異的な増幅産物を得た。
このPCR反応液についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的の500bpのバンド部分を切り出し、pGEM−T Easy Vector SystemI(Promega)を用いて、pGEM−T Easy Vectorに結合させ、大腸菌を形質転換した。形質転換株をアンピシリン50μg/mlを含むLB培地(トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム0.4%、pH7.2)で培養し、Miniprep DNA Purification Kit(TaKaRa製)を用いてDNAシーケンス用のプラスミドを抽出・精製した。
続いて、ベクター(pGEM−T Easy Vector)に由来するT7プライマーおよびSP6プライマーを用いて自動シークエンサーによって、挿入断片の塩基配列を決定した。この塩基配列を、配列番号11に示す。
[実施例6:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来PLB遺伝子のコア領域周辺のクローニング]
実施例5で決定した遺伝子配列の周辺領域の配列を明らかにするために、インバースPCRによりその上流側と下流側を含むDNA断片を増幅した。
実施例4で得た染色体DNAをSalIで完全消化し、Ligation high Ver.2(Toyobo社製)により自己閉環化させた。これを鋳型にして、ホスホリパーゼBの部分遺伝子配列に基づいて作製したセンスプライマーSE1「primer SE1」(配列番号12)とアンチセンスプライマーAN1「primer AN1」(配列番号13)とを用いて、Inverse PCRを行った。
PCRの反応液組成は次のとおりである。
鋳型DNA 200ng、2×MightyAmp Buffer 25μl、プライマー各300nM、およびMightyAmp DNA Polymerase 1.25ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。
PCR反応条件は次のとおりである。
ステップ1:98℃、2分;
ステップ2:98℃、10秒;
ステップ3:68℃、5分;
ステップ2からステップ3を20サイクル繰り返す;
ステップ4:68℃、2分。
このPCRによって、約4,000bpの特異的な増幅産物が得られ、これをpMD20−Tベクター(TaKaRa製)にてクローニングし、塩基配列を決定した。
実施例5で決定した塩基配列と併せて上記で決定した塩基配列に基づいて、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来PLB遺伝子を含む領域の塩基配列を決定した(配列番号14の上段)。さらに、構造遺伝子部分についてその塩基配列からアミノ酸配列を推定した(配列番号14の下段、及び、配列番号15)。
図7A及び図7B(以下、まとめて図7という)は、この決定したPLB遺伝子を含む領域の塩基配列、および、この塩基配列から推定される構造遺伝子の推定アミノ酸配列を示しており、上段に塩基配列、下段に推定アミノ酸配列を示している。なお、図7の配列は、DDBJ ACCESSION No.AB602789として非公開登録済みである。
図7に示す配列解析の結果から、PLBをコードする構造遺伝子は1,146bpのヌクレオチド(終止コドンを含めると1,149bp)からなり、382残基のアミノ酸をコードしていることが明らかとなった。この382残基は、配列番号14(図7)のアミノ酸配列の31位〜412位である。配列番号14(図7)のアミノ酸配列の1〜30位が分泌シグナル配列である。
実施例3にて決定したストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素のN末端および内部アミノ酸配列が、上記の推定アミノ酸配列中に存在し、ほぼ完全に一致していた(図7中に下線で示す)。
すなわち、配列番号3のアミノ酸配列は、配列番号14(図7)のアミノ酸配列の31位からに示される配列となっている。また、配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号14(図7)のアミノ酸配列の187位からに示される配列となっている。また、配列番号5のアミノ酸配列は、配列番号14(図7)のアミノ酸配列の327位からに示される配列となっている。ただし、配列番号14(図7)のアミノ酸配列における335位のアミノ酸「Ile」は、配列番号5のアミノ酸配列の9位のアミノ酸では「Leu」となっている。これは、nanoLC−MS/MSではLeuとIleが判別できないために、Leuと判定されたためである。また、配列番号6のアミノ酸配列は、配列番号14(図7)のアミノ酸配列の145位からに示される配列となっている。

配列類似性検索プログラムBLASTおよびFASTAを用いることにより、上記の推定アミノ酸配列を4種類のタンパク質配列データベース(PTR、PRF、 UNI−PROTおよびSWISS−PROT)内の配列と比較した。その結果、上記推定アミノ酸配列は、Streptomyces sp. C.のPutative uncharacterized protein(DDBJ ACCESSION No.D9VPC7)と44%一致した。 また、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来の精製酵素(すなわちPLB)は、この推定アミノ酸配列のアミノ酸組成に基づいて計算したところ、約42,000の分子量を有することが推定された。
[実施例7:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来PLB遺伝子を含む組換えプラスミドの作製]
放線菌においてストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来PLBを発現させるために、形質転換に用いる組換えプラスミドを作製した。
まず、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来PLBの構造遺伝子の上流域配列にNheI部位を付加したセンスプライマーS2「primer S2」(配列番号16)、および、この構造遺伝子の下流域配列にBglII部位を付加したアンチセンスプライマーA2「primer A2」(配列番号17)を設計した。次いで、これらのプライマーを用いて、実施例4で得た染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。
PCRの反応液組成は次のとおりである。
鋳型染色体DNA 200ng、10×PCR Buffer 15μl、プライマー 各500nM、dNTP混合物 各0.3mM、MgCl 1.25mM、DMSO 3%、およびKOD DNA Polymerase 2.5ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。
PCR反応条件は次のとおりである。
ステップ1:98℃、2分;
ステップ2:98℃、15秒;
ステップ3:65℃、2秒;
ステップ4:74℃、30秒;
ステップ2からステップ4を30サイクル繰り返す;
ステップ5:74℃、1分30秒。
このPCRにより約1200bpの特異的な増幅産物が得られた。
この増幅された断片をNheIとBglIIで消化し、発現ベクターである放線菌プラスミドのNheI−BglII部位に挿入して、組換えプラスミドを得た。ここで、シグナル配列とターミネーターは、ホスホリパーゼ酵素遺伝子のものを用いたが、別の遺伝子由来のものを適宜組み合わせて用いても良い。
[実施例8:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来PLB遺伝子を発現する組換え放線菌の作製]
実施例7で得た組換えプラスミドを用いて、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」に記載の方法に従い、プロトプラスト化された放線菌ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326を形質転換し、組換え放線菌を得た。
[実施例9:ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)由来ホスホリパーゼB遺伝子を発現する組換え放線菌の酵素活性測定]
実施例8で得た組換え放線菌を、20μg/mLのチオストレプトンを含む100mLのトリプチックソイ培地(ベクトン・ディッキンソン社製)で培養した。得られた培養液から遠心分離(15000rpm、5分、4℃)にて上清を回収し、80%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた。4℃で16時間放置し、遠心分離(15000rpm、15分、4℃)にて、沈殿を回収した。回収した沈殿を10mlの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を外液として透析を行い、15mlの酵素溶液を得た。
この酵素溶液の酵素活性を、上記「PLB活性標準測定方法」に記載した酵素活性の測定方法に従って、ジミリストイルホスファチジン酸を基質として用い、pH8.4で50℃で酵素活性を測定した。その結果、100U/ml(下限は60U/ml)を超える強い活性を示す培養上清が得られた。また、透析後の酵素溶液(15ml)の酵素活性はさらに強い活性(770U/ml以上)を示した。なお、ベクターであるプラスミドをそのまま用いて形質転換した放線菌では、PLB活性は検出されなかった。
[菌種の特定]
上記の実施例で用いたストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684は、生理性状試験と、塩基配列に基いた16S rDNA塩基配列解析との結果によって、菌種が特定された。
本発明によれば、新規なPLBおよびその製造方法が提供される。PLBをリン脂質に作用させて生成されるリゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−ホスホコリンなどのグリセロール−3−リン酸エステル化合物は、食品および化粧品の基材などとして有用である。本発明による酵素は、PE以外のリン脂質によく作用することが可能で、特に、PAとPCによく作用する。PEにほとんど作用しない性質を利用すれば粗リン脂質からPEのみを残存させ、その純度を高めることが可能である。これによって、高純度のPEを製造することが期待できる。また、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)は抗カビ剤、リゾホスホグリセロール(LPG)は起泡力安定剤、澱粉の老化防止剤、麺類の改質剤、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE):神経栄養作用(ストレス、うつ、認知症など)、リゾホスファチジン酸(LPA):受精卵着床の促進(着床改善薬)、毛の形成(育毛)、強い細胞増殖作用、リゾホスファチジルセリン(LPS):肥満細胞の活性化を促進(アレルギーやアトピーに関与)など多くの生理活性を示すリゾレシチンを製造するのに有効である。さらに、食品素材に本発明による酵素を混合し、素材中に存在するリン脂質を加水分解することでその素材の機能性を高めたり、物性を改良することが可能となる。
本発明による酵素を用いて製造可能なグリセロール−3−ホスホコリン(GPC)は認知症予防などが期待されている。また、グリセロール−3−ホスホイノシトール(GPI)は善玉コレステロール増加効果が認められるなど有用性が期待できる。
寄託機関の名称:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)
寄託機関のあて名:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
寄託の日付:2011年1月26日
受託番号:NITE BP−1015
配列番号1:PLB(ポリペプチド)
配列番号2:PLB発現遺伝子
配列番号3:PLBのN末端配列
配列番号4:PLBの内部配列
配列番号5:PLBの内部配列
配列番号6:PLBの内部配列
配列番号7:プライマーS1
配列番号8:プライマーA1−1
配列番号9:プライマーA1−2
配列番号10:プライマーA1−3
配列番号11:PLB発現遺伝子の内部配列
配列番号12:プライマーSE1
配列番号13:プライマーAN1
配列番号14:PLB発現遺伝子
配列番号15:PLB(ポリペプチド)
配列番号16:プライマーS2
配列番号17:プライマーA2

Claims (14)

  1. リン脂質のsn−1位およびsn−2位のアシル基を加水分解して、リゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、酵素:
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
  2. ジミリストイルホスファチジン酸を基質としたときに、pH8.4で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH7.2からpH10.0の範囲内で50%以上の加水分解活性を示す、請求項1に記載の酵素。
  3. ジミリストイルホスファチジン酸を基質としたときに、pH8.4で50℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、ホスファチジルコリンに対して95%以上、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルグリセロールに対して20%以上、ホスファチジルセリンに対して25%以上であり、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、トリステアリンおよびジパルミトイルグリセリドに対してほぼ0%である基質特異性を有する、請求項1または2に記載の酵素。
  4. アミノ酸配列から算出した等電点が6.2〜6.6の範囲内である、請求項1から3のいずれかに記載の酵素。
  5. SDS−PAGEで測定した場合の分子量が38,000〜40,000の範囲内であり、アミノ酸組成より分析した場合の分子量が41,000〜43,000の範囲内である、請求項1から4のいずれかに記載の酵素。
  6. ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項1から5のいずれかに記載の酵素。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の酵素をコードする、ポリヌクレオチド。
  8. 以下の(a)又は(c)記載のポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは
    (c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
  9. ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド。
  10. 請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
  11. 請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載のベクターが導入され、リン脂質からリゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素を産生する能力を保有する、形質転換体。
  12. 前記形質転換体の宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である、請求項11に記載の形質転換体。
  13. リン脂質に作用し、該リン脂質を加水分解してリゾリン脂質、グリセロール−3−リン酸、及び、グリセロール−3−リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素を製造する方法であって、
    請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載のベクターを宿主に導入して、該酵素を産生する形質転換体を得る工程;および
    該形質転換体を培養して該酵素を産生させる工程;
    を含む、製造方法。
  14. 前記宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である、請求項13に記載の製造方法。
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