JP5330334B2 - 食品用酵素剤 - Google Patents
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Description
従来、動物および微生物がホスホリパーゼCを生産することが知られている。動物由来の酵素は主としてホスファチジルイノシトール選択的なホスホリパーゼCである。また、微生物のなかでは細菌、放線菌、酵母およびカビ由来のホスホリパーゼCが知られている。細菌、放線菌および酵母が生産するホスホリパーゼCは、ホスファチジルイノシトール選択的あるいはホスファチジルコリン選択的なものがほとんどである。
レシチンは、動物、植物、菌類に広く分布している代表的なグリセロリン脂質である。グリセロリン脂質とは、1,2−ジアシルグリセロールの3位にホスホリル塩基が共有結合している化合物である。塩基としては、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトールおよびグリセロール等が含まれており、その組成割合は由来により異なる。レシチンはグリセロリン脂質に含有される概念として用いるものとする。
レシチンを酵素により部分的に加水分解し、新たな性質を付与する検討も行われている。この際に用いられる酵素がホスホリパーゼ類であり、ホスホリパーゼA,B,C,Dが知られている。グリセロリン脂質の1位あるいは2位の脂肪酸を選択的に加水分解するのがホスホリパーゼAである。非選択的に加水分解するのがホスホリパーゼB、ジアシルグリセロールとホスホリル塩基に加水分解するのがホスホリパーゼC、ホスファチジン酸と塩基に分解するのがホスホリパーゼDである。
スフィンゴリン脂質は、グリセロリン脂質とともに、リン脂質を構成している。
スフィンゴリン脂質の代表はスフィンゴミエリンであり、セラミドの1級アルコールにコリンリン酸がリン酸ジエステル結合した化合物である。動物の臓器に広く含まれている。母乳にも含有されることから、乳児用粉ミルクに配合されることもある。
スフィンゴミエリンにホスホリパーゼCを作用させるとコリンリン酸がはずれ、セラミドが生成する。セラミドは保湿成分として、化粧品に広く使用されている。また、アトピー性皮膚炎はセラミドが不足することにより惹起されるという報告がある。
ホスホリパーゼCを用いることにより、下図に示すように水の存在下でレシチンからジアシルグリセロールを生産することができる。
ここで用いられるホスホリパーゼCには、様々なグリセロリン脂質を加水分解することが求められる。たとえば大豆レシチンにはホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンを主として、ホスファチジルグリセロールあるいはホスファチジルイノシトール等も含まれていることが知られている。また、卵黄由来レシチンにはホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンが主として含まれている。したがって、用いられるホスホリパーゼCは、これらを区別無く加水分解することが望ましい。
ホスホリパーゼCの用途には、例えば、パンの冷凍保存生地焼成時に、その表面で発生する老化、梨肌の緩和や食用油精製工程の改善がある。
大豆・菜種等から食用油を製造する際には、着色あるいは食味の劣化の原因となるため、レシチンは除去されるべき物質である。この目的のために、従来ホスホリパーゼAを用いてレシチンを部分的に加水分解し、リゾレシチンとすることで水溶性にして除去する方法が検討されてきた。
動物、細菌、放線菌あるいは酵母が生産するホスホリパーゼCは、主としてホスファチジルイノシトールあるいはホスファチジルコリン選択的であり、様々な基質を分解する必要がある食品工業における使用には向かない。さらに、動物起源の酵素剤は、宗教的に受け入れられない国および地域があり、汎用性にも問題がある。さらに、ホスホリパーゼCを生産する細菌は、病原性を示すものがほとんどであり、安全性に問題がある。
このようなホスホリパーゼCを提供することは、この技術分野において非常に関心の高いことであった。
(1) 糸状菌によって産生され、酸性から中性のpHにおいて活性を示し、かつ、リン脂質以外のリン酸エステルを実質的に加水分解しないホスホリパーゼCを含有する食品用酵素剤であって、至適pHがpH3乃至pH6の範囲にあり、SDS−PAGE電気泳動法にて分子量約87,000を示し、配列番号1〜3で示される部分アミノ酸配列を有するホスホリパーゼCを含有することを特徴とする食品用酵素剤。
(2) ホスホリパーゼCが、ホスファチジルイノシトール特異的ではない、(1)に記載の食品用酵素剤。
(3) ホスホリパーゼCが、卵黄由来ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100%とした場合における加水分解活性が、ホスファチジン酸に対しては30%以下、グリセロホスホリルコリンに対しては15%以下、パラニトロフェニルリン酸に対しては10%以下である、(1)または(2)に記載の食品用酵素剤。
(4) ホスホリパーゼCが、pH7における相対活性が20%以上である、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の食品用酵素剤。
(6) ホスホリパーゼCが、アスペルギルス属によって産生される、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の食品用酵素剤。
(7) ホスホリパーゼCが、アスぺルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)あるいはアスぺルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)によって産生される、(6)に記載の食品用酵素剤。
(8) ホスホリパーゼCが、アスぺルギルス・オリザエFERM BP−10200株またはNBRC 4190株、あるいはアスぺルギルス・タマリIAM 13907株によって産生される、(7)に記載の食品用酵素剤。
1)ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルグリセロールを加水分解する;
2)グリセロホスホリルコリンおよびパラニトロフェニルリン酸を実質的に加水分解しない;
3)卵黄由来レシチンをpH3乃至pH9の範囲で加水分解する;
4)0℃乃至80℃の範囲において3)記載の加水分解活性を有する;
5)温度安定性について、pH4.5において45℃以下の温度で安定である;
6)pH安定性について、pH3乃至pH10の範囲で安定である。
を示す、(1)〜(8)のいずれか1つに記載の食品用酵素剤。
本発明は、酸性から中性のpHにおいて活性を示し、かつ、リン脂質以外のリン酸エステルを実質的に加水分解しないホスホリパーゼCであるか、あるいは酸性から中性のpHにおいて活性を示し、かつ、ホスファターゼ活性を有しないホスホリパーゼCである。
ここで、ホスファチジン酸は、中性脂肪およびグリセロリン脂質の合成中間体であると認識されるため、本願の明細書等においてはグリセロリン脂質(リン脂質)には含まれないものとする。
アスペルギルス・オリザエNBRC 4190株は独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC: NITE Biological Resource Center;〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、ホームページアドレス <http://www.nite.go.jp/>)より入手することができる。
アスペルギルス・タマリIAM 13907(=IAM 13907)株は東京大学分子細胞生物学研究所(IAM: Institute of Molecular and Cellular Biosciences, The University of Tokyo ;〒113−0032 東京都文京区弥生1−1−1、ホームページアドレス <http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/indexe.html>)より入手することができる。
アスペルギルス・オリザエFERM BP−10200株をクリックの文献(Klich, M. A. (2002) Identification of common Aspergillus Centraalbureau voor Schimmelcultures, Utrecht, The Netherlands)に従い、4種類の培地(CYA培地, CY20S培地, CZ培地, MEA培地)に接種して、菌学的性状を観察した。
(K2HPO4 1.0g,*ザペック濃縮液 10ml,イーストエキス 5g,シュークロース 30g,寒天 15g,蒸留水 1000ml)
*ザペック濃縮液(NaNO3 30g, KCl 5g,MgSO4・7H2O 5g,FeSO4・7H2O 0.1g,ZnSO4・7H2O 0.1g,CuSO4・5H2O 0.05g,蒸留水100ml)
(K2HPO4 1.0g,*ザペック濃縮液 10ml,イーストエキス 5g,シュークロース 200g,寒天 15g,蒸留水 1000ml)
(K2HPO4 1.0 g, *ザペック濃縮液 10 ml, シュークロース 30 g, 寒天 17.5 g, 蒸留水 1000 ml)
(モルトエキス 20g,ペプトン 1g,グルコース 20g,寒天 20g,蒸留水 1000ml)
アスペルギルス・オリザエFERM BP−10200株の菌学的性状
CYA培地でのコロニーは、25℃、1週間の培養で直径36−40mmである。コロニーはやや厚く、羊毛状で、中心部では綿毛状となり、中心部から放射状の溝を形成する。菌糸は白色である。分生子は中心部に疎に形成され、灰黄色(4B4)から黄白色(4A2)を呈する。浸出液、菌核は観察されない。裏面は淡黄色(2A4)から白色(2A1)で、中心部から放射状の溝を形成する。可溶性色素は観察されない。
CYA培地でのコロニーは、37℃、1週間の培養で直径54−58mmである。コロニーは厚く、羊毛状である。菌糸は白色である。分生子は、中心部に形成され、灰黄色(4B4)から黄白色(4A2)を呈する。浸出液、菌核は観察されない。裏面は薄橙色(4A4)から白色(4A2)で、中心部から放射状の溝を形成する。可溶性色素は観察されない。
14℃から42℃まで生育し、18℃から38℃まで分生子形成が観察された。
1)SDS−PAGE電気泳動法にて分子量約87,000を示す。
2)卵黄由来レシチン(ナカライ・テスク(株)製)をpH3乃至pH9の範囲で加水分解する。
3)0℃乃至80℃の範囲で4)記載の加水分解活性を有する。
4)pH4.5において45℃以下の温度で安定である。
5)pH3乃至pH10の範囲で安定である。
6)2)記載の加水分解活性の最適pHはpH4.5である。
7)3)記載の加水分解活性の最適温度はpH4.5では65℃である。
8)ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルグリセロールを加水分解するが、グリセロホスホリルコリンおよびパラニトロフェニルリン酸を実質的に加水分解しない。
Thr−Ala−Asp−Ser−Ala−Thr−Ala−Ile−Gly−
Tyr−Val−Thr−Pro−Ser−Met(配列番号1)。
Pro(配列番号2)。
Ala(配列番号3)。
1)SDS−PAGE電気泳動法にて分子量約87,000を示す。
2)卵黄由来レシチン(ナカライテスク(株))をpH3乃至pH9の範囲で加水分解する。
3)0℃乃至80℃の範囲で4)記載の加水分解活性を有する。
4)pH4.5において45℃以下の温度で安定である。
5)pH3乃至pH10の範囲で安定である。
アスペルギルス・オリザエFERM BP−10200株またはNBRC 4190株あるいはアスぺルギルス・タマリIAM 13907株を初めとするホスホリパーゼC産生微生物を培地で培養することにより、ホスホリパーゼCを生産することができる。例えば、0.1乃至5.0%ポリペプトン(和光純薬工業(株))、0.1乃至1.0%イーストエクストラクト(日本ベクトン・ディッキンソン(株))に0.05乃至1.0%デオキシコール酸ナトリウムを添加した培地または0.1乃至4.0%ファーマメディア(TRANDERS PROTEIN(株))に0.05から1.0%トライトンX−100(シグマアルドリッチジャパン(株))もしくは0.05乃至0.3%卵黄レシチンを添加した培地あるいは1乃至10%魚粉(池口喜一郎商店)の培地で、16乃至45℃で1乃至15日間、100乃至250rpmで振とう培養する。
1)粗酵素液の調製
滅菌した表2の組成の培地100mlが入っている500ml容の三角フラスコ(種フラスコ)にフィルター滅菌した5%デオキシコール酸ナトリウム溶液1mlおよびアスペルギルス・オリザエFERM BP−10200株の菌体を接種し、26℃にて7日間、170rpmの振とう培養を行った。
ホスホリパーゼCの加水分解活性は以下のようにして測定した。
<1>レシチンの加水分解反応
卵黄レシチン(ナカライテスク(株))1.5gを4%(wt/v)TritonX−100 50mlに溶解した基質溶液60μlに200mM酢酸緩衝液(pH5.5)60μlを加えて37℃で保温した。この混合液に酵素液60μlを加え撹拌して均一にし、37℃で保温して3時間酵素反応を行った。
酵素反応の結果生じるホスホリル塩基をアルカリホスファターゼで加水分解した。<1>で調整した酵素反応液50μlに200mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.0)50μlおよびアルカリホスファターゼ(シグマアルドリッチジャパン(株))1μlを加えて37℃で40分反応を行った。なおこのときブランクとしてアルカリホスファターゼを加えないサンプルも同時に調整した。
<2>の結果生じた無機リン酸をホスファCテストワコー(和光純薬工業(株))で定量した。<2>で得られた反応液100μlにホスファCテストワコーのA液およびB液を各1ml添加し、37℃で20分間反応した。この混合液の750nmにおける吸光度を測定した。ブランクとの差がホスホリパーゼC活性になる。酵素反応1分間当たり1μmolのホスホリル塩基を生成する酵素活性を1単位とした。
1)で得られた粗酵素液1,200mlを10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)8,000mlに対して12時間ずつ8回透析した。これを、予め10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAEトヨパール(東ソー(株))カラム(直径2.2cm×長さ20cm)に添加し、吸着させた。10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)で該カラムを十分洗浄した後、10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)600ml中に0乃至0.2Mの塩化ナトリウムの直線的濃度勾配を作製して該カラムに吸着した成分を溶出させた。卵黄由来レシチン分解活性は塩化ナトリウム濃度が0.05M乃至0.08Mの画分(90ml)に溶出された。これを粗精製酵素画分とした。
この画分を精製酵素溶液とした。
12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGE電気泳動法(Laemmli, U.K., Nature, 227, 680(1970)参照)により、精製酵素の分子量を求めた。標準タンパク質として次のものを用いた:a.ホスホリラーゼ(phosphorylase)、分子量94,000:b.アルブミン(albumin)、分子量67,000:c.オバルブミン(ovalbumin)、分子量43,000:d.カルボニック・アンヒドラーゼ(carbonic anhydrase)、分子量30,000:e.トリプシン・インヒビター(trypsin inhibitor)、分子量20,100:f.α−ラクタルブミン(α-lactalbumin)、分子量14,400。
精製酵素は分子量約87,000の単一バンドを示した。
1)粗酵素液の調製
表2に示した組成の培地100mlが入っている500ml容の三角フラスコ(種フラスコ)にフィルター滅菌した5%デオキシコール酸ナトリウム溶液1mlおよびアスぺルギルス・タマリIAM 13907株の菌体を接種し、26℃にて5日間、170rpmの振とう培養を行った。培養終了後、4℃、10,000×Gにて10分間の遠心分離を行った。得られた上清を粗酵素液とした。
実施例1. 3)と同様に精製を行い、精製酵素溶液を得た。
実施例1. 4)と同じ方法で測定した。
精製酵素は分子量約87,000の単一バンドを示した。
1)粗酵素液の調製
滅菌した表3の組成の培地100mlが入っている500ml容の三角フラスコ(種フラスコ)にアスペルギルス・オリザエNBRC 4190株の菌体を接種し、26℃にて7日間、170rpmの振とう培養を行った。
1)で得られた粗酵素液600mlを10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)8,000mlに対して12時間ずつ5回透析した。これを、予め10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAEトヨパール(東ソー(株))カラム(直径2.2cm×長さ20cm)に添加し、吸着させた。10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)で該カラムを十分洗浄した後、10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)600ml中に0乃至0.6Mの塩化ナトリウムの直線的濃度勾配を作製して該カラムに吸着した成分を溶出させた。卵黄由来レシチン分解活性は塩化ナトリウム濃度が0.30M乃至0.35Mの画分(50ml)に溶出された。これを粗精製酵素画分とした。
この画分を精製酵素溶液とした。
実施例1の4)と同じ方法で測定した。
精製酵素は分子量約87,000の単一バンドを示した。
精製した酵素溶液を約1mg/ml程度まで限外濾過膜(ザルトリウス(株)VIVASPIN2、分子量分画1万)を用いて濃縮した。濃縮酵素液150μlにDenature buffer(6M塩酸グアニジン、10mM EDTA、0.1M炭酸水素アンモニウムpH7.8)150μlおよび50mM ジチオスレイトール6μlを加え、95℃で10分間反応させた。室温まで冷却後、反応液にDenature buffer溶液に溶解した50mMヨードアセトアミド30μlを加え、暗所室温で1時間反応させた。この溶液を20mM炭酸水素アンモニウム(pH8.0)で予め平衡化しておいたHitrap Desalting(アマシャムバイオサイエンス(株))カラムに添加した後、20mM炭酸水素アンモニウム(pH8.0)にて溶出させた。溶出量が1.5ml乃至2.5mlの画分に溶出した溶液を凍結乾燥し、20mM炭酸水素アンモニウム(pH8.0)100μlに溶解した。得られた溶液にトリプシン(Modified、プロメガ(株))60ユニットを加え、37℃で18時間酵素反応させた。反応液を高速液体クロマトグラフィー(日立製作所(株))にかけて分解アミノ酸のピークを分離した。分離条件を以下に示す。
A buffer:0.1%TFA/Water
B buffer:0.1%TFA/Acetonitril
グラジエント:10→70%B 2%/ml
Flow:1ml/分
Tyr−Val−Thr−Pro−Ser−Met(配列番号1)。
Pro(配列番号2)。
Ala(配列番号3)。
1)全RNAの精製
アスぺルギルス・オリザエNBRC 4190株を液体培地(2% ポリペプトン、0.5% イースト エクストラクト、0.02% リン酸水素2カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム)20mlで26℃、1日間前培養した。その後、液体培地(5%魚粉)に1%植菌し、26℃で4日間培養した。培養した菌体を吸引集菌し、−80℃で冷やした乳鉢(オートクレーブ滅菌済)に移した。液体窒素を加えながら、乳棒で菌体を破砕し、粉末状にした。完全に粉末状になった菌体をRNeasy Plant Mini Kit(キアゲン(株))を用いて全RNAの精製を行った。905ng/μlの濃度の溶液が、50μl得られた。
5'RACE法および3'RACE法にて遺伝子配列の解読をおこなった。具体的には、5'RACE Systemおよび3'RACESystem(いずれもインビトロジェン(株))を使用し、ポリメラーゼとしてEx TaqTM(タカラバイオ(株))を用いてPCRをおこなった。このときに使用したPCRプライマーは、5'側の遺伝子配列増幅用に5'-GGCCACGCGTCGACTAGTAC-3'および5'-GACAGTGTAGTCGAGCACAGCGAA-3'、3'側の遺伝子配列増幅用に5'-GACTCTGCCACCGCAATCGGCTA-3'および5'-GGCCACGCGTCGACTAGTAC-3'を用いた。PCRサイクルは、94℃・5分、(94℃・30秒、55℃・30秒、72℃・2分30秒)×30、72℃・10分、4℃で増幅した。5'側の遺伝子配列約1200b.p.、3'側の遺伝子配列約800b.p.の長さのDNAが増幅された。
1)酵素反応
精製した酵素溶液を限外濾過膜(ザルトリウス(株)VIVASPIN2、分子量分画1万)を用いて濃縮した。濃縮酵素液20μlに、蒸留水15μl、0.25mMリン酸緩衝液(pH7.5)10μlおよび1M 2-メルカプトエタノール/2%ドデシル硫酸ナトリウム溶液2.5μlを加え、95℃にて5分間反応した。急冷後、15%Triton X-100(シグマアルドリッチジャパン(株))2.5μlを加え、グリコペプチダーゼF(シグマアルドリッチジャパン(株))10ユニットを加えて、37℃にて20時間反応した。
実施例1の4)と同じ方法で測定した。
酵素反応後の分子量約63,000の単一バンドを示した。
実施例1の3)で得られた精製酵素液について、活性測定を行なった。
実施例1の2)に示した方法に拠った。ただし酵素反応時間は37℃、10分間とした。また、緩衝液は次のものを用いた:pH2.3乃至pH3.7の場合、グリシン−塩酸緩衝液:pH3.3乃至pH6.2の場合、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液:pH6.1乃至pH8.0の場合、MOPS緩衝液:pH8.2乃至pH9.2の場合、Atkins−Pantin緩衝液。最も活性が高かったpH条件での加水分解活性を100%とし、各pHにおける酵素の加水分解活性を相対値として図1に記載した。至適pHはクエン酸緩衝液中pH4.5付近であった。
クエン酸緩衝液pH4.5における温度活性を測定した。測定法は実施例1の2)に示した方法に拠った。ただし酵素反応時間は37℃、20分間とした。最も活性が高かった温度条件での加水分解活性を100%とし、各温度における酵素の加水分解活性を相対値として図2に記載した。至適温度は65℃付近であった。
精製酵素溶液を種々の温度で30分間処理した後、その残存加水分解活性を測定した。あらかじめ処理温度に保持した25mMクエン酸緩衝液(pH4.5)90μlに、精製酵素液10μlを加え撹拌して均一にし、30分間保温した。実施例1で作製した卵黄レシチン溶液60μlに200mMクエン酸緩衝液(pH4.5)60μlを加え37℃に保持し、加温処理した酵素液60μlを加え、37℃で30分間酵素反応を行った。遊離ホスホリル塩基の定量は実施例1の2)にしたがった。最も高い残存加水分解活性を100%とし、各温度における加水分解活性を相対値として図3にまとめた。pH4.5において少なくとも60℃以下の温度で安定であった。
精製酵素液30μlに、以下に述べる各pHの200mM緩衝液30μlを添加し、37℃にて30分間保温した。緩衝液は次のものを用いた:pH2.7乃至pH3.2の場合、グリシン−塩酸緩衝液:pH3.5乃至pH6.1の場合、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液:pH6.3乃至pH7.9の場合、MOPS緩衝液:pH8.3乃至pH10.8の場合、Atkins−Pantin緩衝液。200mMクエン酸緩衝液(pH4.5)60μl、および実施例1の2)記載の卵黄レシチン溶液60μlの混合液に、加温した酵素混合液60μlに水60μlを加えた溶液のうち60μlを加え撹拌して均一にし、37℃で10分間酵素反応を行った。遊離ホスホリル塩基の定量は実施例1の2)にしたがった。最も高い残存加水分解活性を100%とし、各pHにおける加水分解活性を相対値として図4にまとめた。pH3乃至pH10の範囲で安定であった。
次に、基質選択性を測定した。実施例1の3)で調製した精製酵素液を用いた。測定方法は実施例1の2)に拠った。ただし、酵素反応は200mMクエン酸緩衝液pH4.5中で37℃で保温して10分間行った。卵黄由来ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100%としたときの、相対活性を表4に示す。
実施例2の2)で得られた精製酵素液について、活性測定を行なった。
試験例1.に示した方法に拠った。最も活性が高かったpH条件での加水分解活性を100%とし、各pHにおける酵素の加水分解活性を相対値として図5に記載した。至適pHはpH4.5付近であった。
試験例1.に示した方法に拠った。最も活性が高かった温度条件での加水分解活性を100%とし、各温度における酵素の加水分解活性を相対値として図6に記載した。至適温度は65℃付近であった。
試験例1.に示した方法に拠った。最も高い残存加水分解活性を100%とし、各温度における加水分解活性を相対値として図7にまとめた。pH4.5において45℃以下の温度で安定であった。
試験例1.に示した方法に拠った。最も高い残存加水分解活性を100%とし、各pHにおける加水分解活性を相対値として図8にまとめた。pH3乃至pH10の範囲で安定であった。
試験例1.に示した方法に拠った。卵黄由来ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100%としたときの、相対活性を表5に示す。
実施例3の2)で得られた精製酵素液について、活性測定を行なった。
試験例1.に示した方法に拠った。最も活性が高かったpH条件での加水分解活性を100%とし、各pHにおける酵素の加水分解活性を相対値として図9に記載した。至適pHはpH4.5付近であった。
試験例1.に示した方法に拠った。卵黄由来ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100%としたときの、相対活性を表6に示す。
以上述べたように、本発明のホスホリパーゼCはアスぺルギルス・オリザエFERM BP−10200株またはNBRC 4190株あるいはアスぺルギルス・タマリIAM 13907株由来であり安全性に優れ、様々なグリセロリン脂質を酸性側でも中性付近でも効率よく加水分解する能力を有し、クエン酸緩衝液中でも活性を有するとともにある程度熱的に安定であり、リン脂質以外のリン酸エステルを加水分解しない酵素であり、食品工業および製油工業いずれの分野においても優れた効果をあげられる酵素である。
Claims (9)
- 糸状菌によって産生され、酸性から中性のpHにおいて活性を示し、かつ、リン脂質以外のリン酸エステルを実質的に加水分解しないホスホリパーゼCを含有する食品用酵素剤
であって、至適pHがpH3乃至pH6の範囲にあり、SDS−PAGE電気泳動法にて分子量約87,000を示し、配列番号1〜3で示される部分アミノ酸配列を有するホスホリパーゼCを含有することを特徴とする食品用酵素剤。 - ホスホリパーゼCが、ホスファチジルイノシトール特異的ではない、請求項1記載の食品用酵素剤。
- ホスホリパーゼCが、卵黄由来ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100%とした場合における加水分解活性が、ホスファチジン酸に対しては30%以下、グリセロホスホリルコリンに対しては15%以下、パラニトロフェニルリン酸に対しては10%以下である、請求項1または2記載の食品用酵素剤。
- ホスホリパーゼCが、pH7における相対活性が20%以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の食品用酵素剤。
- グリコペプチダーゼFで処理後、SDS−PAGE電気泳動法にて分子量約63,000の単一バンドを示す、請求項1〜4のいずれか1項記載の食品用酵素剤。
- ホスホリパーゼCが、アスペルギルス属によって産生される、請求項1〜5のいずれか1項記載の食品用酵素剤。
- ホスホリパーゼCが、アスぺルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)あるいはアスぺルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)によって産生される、請求項6記載の食品用酵素剤。
- ホスホリパーゼCが、アスぺルギルス・オリザエFERM BP−10200株またはNBRC 4190株、あるいはアスぺルギルス・タマリIAM 13907株によって産生される、請求項7に記載の食品用酵素剤。
- ホスホリパーゼCが、以下の性質:
1)ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルグリセロールを加水分解する;
2)グリセロホスホリルコリンおよびパラニトロフェニルリン酸を実質的に加水分解しない;
3)卵黄由来レシチンをpH3乃至pH9の範囲で加水分解する;
4)0℃乃至80℃の範囲において3)記載の加水分解活性を有する;
5)温度安定性について、pH4.5において45℃以下の温度で安定である;
6)pH安定性について、pH3乃至pH10の範囲で安定である、
を示す、請求項1〜8のいずれか1項記載の食品用酵素剤。
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