JP6080254B2 - グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(gpe)に対して加水分解作用を有する酵素及びその製造方法 - Google Patents

グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(gpe)に対して加水分解作用を有する酵素及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する新規な酵素およびその製造方法に関し、詳細には、グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(GPE)に対して加水分解作用を有する新規な酵素およびその製造方法に関する。
近年、リン脂質、リゾリン脂質およびグリセロール−3−ホスホジエステルに様々な生理作用があることがわかり、これらの化合物とこれらに関連のある酵素が注目されている。グリセロール−3−ホスホジエステルは、ホスホリパーゼA1、A2、Bなどの酵素の作用によって、リン脂質から生成する化合物で、細胞内で代謝に深く関わっていると考えられる。例えば、グリセロール−3−ホスホコリン(以下「GPC」ともいう)は母乳に含まれる安全な成分で、門脈を通過できるため、ホスファチジルコリンに比べて遙かに体内吸収量が高い。また、GPCは中枢作用と末梢作用を有する。中枢作用としては、アルツハイマー型認知症患者の認知機能の改善、学習能力の向上(ラット弁別学習)、及び、ストレスホルモンの分泌を抑制する効果があることがわかっている。末梢作用としては、成長ホルモン分泌促進作用、肝機能障害改善作用、血圧低下作用があることがわかっている。また、GPCはアセチルコリンと同様に血管弛緩作用により、血管を拡張し血圧を下げることがわかっている。さらに、激しい運動後、GPCによって血清コリン濃度減少を抑制することで、競技パフォーマンス低下を改善させる効果が期待できる。また、GPCは、傷害時の修復能向上が期待され、激しい運動により傷ついた筋肉細胞の修復を促進するといった優れた効果を示すことがわかっている(非特許文献1)。また、GPCは、認知症予防などが期待されている(特許文献1)。このように、GPC(グリセロール−3−ホスホコリン)は多くの生理活性を有する物質である。そして、グリセロール−3−ホスホコリンを含め、グリセロール−3−ホスホコリン以外にもグリセロール−3−ホスホジエステルには多くの生理活性があることが予想される。そのようなグリセロール−3−ホスホジエステルの一つとして、グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(以下「GPE」ともいう)が挙げられる。
国際公開第2007/010892号
BIO INDUSTRY、29巻、2号、2012 Glycerylphosphocholinephosphocholine phosphodiesterase activity is reduced in multiple sclerosisplaques, Janzen, L.; Tourtellotte, W.W.; Kanfer J.N.; Exp. Neurol. 109, 243-246(1990) Properties of aZn(2+)-glycerophosphocholine cholinephosphodiesterase from bovine brainmembranes, Sok D.E.; Neurochem. Res. 21, 1193-1199 (1996) Somecharacteristics of sn-glycero 3-phosphocholine diesterases from rat brain,Abra, R.M.; Quinn, P.J.; Biochim. Biophys. Acta 431, 631-639 (1976) Aphosphodiesterase in rat kidney cortex that hydrolysesglycerylphosphorylinositol, Dawson, R.M.C.; Hemington, N.; Biochem. J. 162,241-245 (1977)
グリセロール−3−ホスホジエステル類のうち、GPE(グリセロール−3−ホスホエタノールアミン)やGPC(グリセロール−3−ホスホコリン)は、生理活性や疾患との関連などにおいて重要な分析対象物質である。したがって、これらの物質を選択的に、簡便かつ迅速に定量測定できれば、非常に有効な測定法となる。しかしながら、従来の技術では、煩雑な前処理をともなうHPLCやLC−MSなどを用いた分析法しかなく、分析に時間とコストを要していた。さらに、正確な定量も困難な状況であった。そして、これまでにこの目的に適した酵素は見出されていなかったため、従来の技術ではGPEやGPCを定量する方法が無かった。
グリセロール−3−ホスホジエステルに作用し、グリセロールと、リン酸又はホスホコリン、ホスホエタノールアミンなどのリン酸エステル化合物とを生成する酵素は、ホスホリパーゼCと呼ばれる触媒作用を示す酵素と類似する酵素である。ホスホリパーゼC(以下「PLC」ともいう)は、リン脂質又はその加水分解物(リゾリン脂質など)におけるリン酸基のグリセロール側の結合を加水分解する作用を有する。そのような酵素のなかでも、基質特異的に作用する酵素は、分析など、産業上の利用に特に有用である。そして、グリセロホスホジエステルに基質特異的に作用することによって種々の可能性が期待される。
ホスホリパーゼCに似たような触媒作用を示す酵素として、glycerophosphocholine cholinephosphodiesterase(EC 3.1.4.38)とglycerophosphoinositolinositolphosphodiesterase(EC 3.1.4.43)が知られているが、GPEに作用する酵素の存在は知られていない(酵素データベース「BRENDA」より)。また、非特許文献2にはヒト由来の酵素、非特許文献3にはウシ由来の酵素、非特許文献4にはドブネズミ(英語名ラット)由来の酵素、非特許文献5にはハツカネズミ由来の酵素が開示されている。また、非特許文献5では、ドブネズミ(英語名ラット)Rattus norvegicus由来glycerophosphoinositol inositolphosphodiesteraseが報告されている。しかしながら、これらの酵素はGPCあるいはGPIに選択的に作用するが、すべて動物臓器由来のもので、得られる酵素の力価や生産量が低いことや倫理上の問題などの課題が多く、産業利用は極めて困難である。さらに、金属イオン要求性のため使用において限定的となる(制約を受ける)可能性もある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、特定のグリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する新規な酵素およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記のような新規な酵素を得ることを目的として、該酵素を生産する微生物を検索した結果、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物から新規な性質を有する酵素を見出した。
[酵素]
本発明に係る酵素は、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポ
リペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
上記の酵素の好ましい形態は、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンを基質としたときに、pH8.4で65℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、30℃から70℃の範囲内で40%以上の加水分解活性を示す。
上記の酵素の好ましい形態は、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンを基質としたときに、pH8.4で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH7.2からpH9.5の範囲内で40%以上の加水分解活性を示す。
上記の酵素の好ましい形態は、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンを基質としたときに、pH8.4で65℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、グリセロール−3−ホスホグリセロールに対して10%以下、グリセロール−3−リン酸、グリセロール−3−ホスホコリン、グリセロール−3−ホスホイノシトール、およびグリセロ−3−ホスホセリンに対してほぼ0%、リゾホスファチジルエタノールアミンに対して40%以下、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルグリセロールに対してほぼ0%、エタノールアミン型リゾプラズマローゲンに対して40%以下、コリン型リゾプラズマローゲンに対してほぼ0%、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲンに対してほぼ0%、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびホスファチジン酸に対してほぼ0%である基質特異性を有する。
上記の酵素の好ましい形態は、SDS−PAGEで測定した場合の分子量が60,000〜80,000の範囲内である。
上記の酵素の好ましい形態は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
[ポリヌクレオチド]
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記の酵素をコードする。
上記のポリヌクレオチドの好ましい形態は、以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
上記のポリヌクレオチドの好ましい形態は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
[酵素の製造方法]
本発明に係る酵素の製造方法は、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する酵素を製造する方法であって、上記のポリヌクレオチドを有する微生物から該酵素を産生させる工程を含む。
本発明によれば、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する新規な酵素を提供することが可能になる。特に、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンに対して高い基質特異性を発現する酵素を提供することができる。さらに、該酵素を微生物によって効率よく生産する方法を提供することができる。また、グリセロール−3−ホスホジエステルを効率よく分析することができる。また、グリセロール−3−ホスホジエステルの分解反応を産業的に利用することができる。
pH8.4、温度65℃の条件での酵素活性を基準(100%)とした、種々の温度でのGPE−EPの相対活性を示すグラフである。 pH8.4、温度37℃の条件での酵素活性を基準(100%)とした、種々のpHでのGPE−EPの相対活性を示すグラフである。 GPEを基質とした場合の酵素活性を基準(100%)とした、GPE−EPの基質特異性(加水分解活性の相対比較)を示すグラフである。 pH8.4において30分間の条件で種々の温度で処理した後のGPE−EPについての相対活性を示すグラフである。 温度4℃において3時間の条件で種々のpHで処理した後のGPE−EPについての相対活性を示すグラフである。 金属イオン又はEDTAを添加したときのGPE−EPについての相対活性を示すグラフである。 GPE−EPとGPC−CPとの活性の比較を示すグラフである。 化学物質を添加したときのGPE−EPについての相対活性を示すグラフである。 ヨードアセトアミド添加によるGPE−EPの活性の時間推移を示すグラフである。 Triton X−100の添加によるGPE−EPの活性の変化を示すグラフである。 Triton X−100の添加によるGPE−EPの活性の変化を示すグラフである。
[酵素]
本明細書において、酵素とは、精製酵素に限定されず、粗精製物、固定化物なども含む。酵素の精製は、例えば、微生物の培養液を用いて、硫安沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーなどの、当業者に周知の方法を用いて行われる。それにより、種々の精製度の酵素(ほぼ単一までに精製された酵素を含む)が得られ得る。
本明細書において、微生物とは、野性株、変異株(例えば、紫外線照射などにより誘導されたもの)、あるいは、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝子工学的手法により誘導される組換え体などのいずれの株であってもよい。組換え体などの遺伝子操作された微生物は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版(Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されるような、当業者に公知な技術を用いて容易に作成され得る。微生物の培養液とは、微生物菌体を含む培養液、および遠心分離などにより微生物菌体を除いた培養液の両方を意味する。
[GPE−EP]
グリセロホスホエタノールアミン エタノールアミンホスホジエステラーゼ(Glycerophosphoethanolamine ethanolaminephosphodiesterase、以下「GPE−EP」ともいう)は、ホスホリパーゼC(以下「PLC」ともいう)に類似した酵素活性を示す酵素である。本発明によれば、新規なGPE−EPが得られる。ホスホリパーゼCは、リン脂質及びその加水分解物(リゾリン脂質、グリセロホスホジエステル)に作用し、ホスホジエステル部位におけるグリセロール側のホスホエステル結合を加水分解する作用を有するものである。本発明によるGPE−EPでは、リン脂質やリゾリン脂質に対する活性は高くなく、それらが加水分解したグリセロホスホジエステル化合物に対して特異的に加水分解活性を有する。さらに、本発明によるGPE−EPでは、グリセロホスホジエステル化合物の中でも、グリセロホスホエタノールアミン(GPE)に対して特異的に加水分解作用を示す。グリセロホスホジエステルに対してPLC様の酵素が作用すると、グリセロールと、リン酸又はリン酸エステル化合物とを生成する。GPE−EPでは、GPEに特異的に作用し、グリセロホスホエタノールアミン(GPE)から、グリセロールと、リン酸又はホスホエタノールアミンを生成する。
GPE(グリセロール−3−ホスホエタノールアミン)の化学式を以下に示す。なお、グリセロホスホエタノールアミンは、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンの略称である。また、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンは、別称として、グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、sn−グリセロール−3−ホスホエタノールアミンがある。
Figure 0006080254
GPE−EPは、以下の反応を触媒することができる酵素である。すなわち、GPEは、GPE−EPにより加水分解されて、グリセリンとホスホエタノールアミンとが生成する。
Figure 0006080254
本発明における酵素は基質特異的な作用を有する。本発明では、GPE(グリセロール−3−ホスホエタノールアミン)に対して特異的に作用する酵素(GPE−EP)が得られる。このGPE−EPは、GPE以外のグリセロホスホ化合物(グリセロホスホジエステル)に対する活性はそれほど高くない。
グリセロール−3−ホスホジエステル(以下「GPX」ともいう)は、リン脂質(グリセロールリン脂質)やリゾリン脂質の加水分解によって得られる化合物である。グリセロールリン脂質中のグリセロール基のα位(sn−1位)の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼA1(PLA1)と称し、グリセロール基のβ位(sn−2位)の脂肪酸エステル基を加水分解する酵素をホスホリパーゼA2(PLA2)と称する。また、ホスホリパーゼA1活性及びホスホリパーゼA2活性を併有する酵素をホスホリパーゼB(PLB)と称する。すなわち、PLBは、α位とβ位の両方に酵素活性を有する。したがって、GPE−EPは、ホスホリパーゼA1、A2、Bを利用して、あるいは化学反応等により得られたグリセロール−3−ホスホジエステルに反応し得る。
本発明における酵素は、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含むものである。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
上記の酵素は、例えば、GPEと酵素との反応条件下においては、約20〜75℃の範囲内で作用し得る。至適温度は、この範囲内にあり得る。好ましくは20〜70℃の範囲内であり、より好ましくは37〜70℃の範囲内であり、さらに好ましくは40〜70℃の範囲内であり、さらにより好ましくは45〜70℃の範囲内であり、なおさらにより好ましくは50〜65℃の範囲内である。
上記の酵素は、例えば、GPEを基質としたときに、pH8.4で65℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、30℃から70℃の範囲内で40%以上の加水分解活性を示すことが好ましい。また、50℃から65℃の範囲内で60%以上の加水分解活性を示すことがさらに好ましい。
上記の酵素は、例えば、緩衝液として、Tris−HCl(pH8.4)を用い、37℃又は60℃又は65℃の温度条件にて、GPEと酵素とを反応条件下におくと、GPE−EP活性を示し得る。緩衝液としては、Tris−HCl、Bis−Tris、酢酸−酢酸Na、Glycine−NaOHなどを使用することができる。また、緩衝液として、HEPES緩衝液も使用することができる。
上記の酵素は、例えば、GPEを基質としたときに、pH8.4で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH4.1〜10.5の範囲内で加水分解活性を示し得る。該加水分解活性は、pH7.2からpH9.5の範囲内で40%以上の加水分解活性を示すことが好ましい。また、pH8からpH9の範囲内で80%以上の加水分解活性を示すことがさらに好ましい。至適pHは、pH8.4付近(例えばpH7.5〜9の範囲内)とすることができる。
上記の酵素は、例えば、上記のようにグリセロール−3−ホスホエタノールアミン(GPE)を基質としたときに、pH8.4で65℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、グリセロール−3−ホスホグリセロール(GPG)に対して10%以下、グリセロール−3−リン酸(GPA)、グリセロール−3−ホスホコリン(GPC)、グリセロール−3−ホスホイノシトール(GPI)、およびグリセロ−3−ホスホセリン(GPS)に対してほぼ0%である基質特異性を有することが好ましい。また、該加水分解活性が、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)に対して40%以下、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾホスファチジルセリン(LPS)およびリゾホスファチジルグリセロール(LPG)に対してほぼ0%である基質特異性を有することが好ましい。また、該加水分解活性が、エタノールアミン型リゾプラズマローゲン(LPls−PE)に対して40%以下、コリン型リゾプラズマローゲン(LPls−PC)に対してほぼ0%、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲン(Pls−PE、Pls−PC)に対してほぼ0%である基質特異性を有することが好ましい。また、該加水分解活性が、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセリン(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、およびホスファチジン酸(PA)に対してほぼ0%である基質特異性を有することが好ましい。ここで、加水分解活性がほぼ0%とは、例えば1%以下、0.1%以下、あるいは検出限界以下を意味するものであってよい。また、PAの一例はDMPAであり、PEの一例はDPPE、POPEであり、PCの一例はPOPCである(略称については後述の表3参照)。上記の酵素では、このような基質特異性を有することが好ましいものである。
上記の酵素は、電気泳動条件などにより若干変化し得るが、SDS−PAGEにおける分子量が60,000〜80,000(Da)の範囲内を示すことが好ましい。例えば、ストレプトマイセス属由来の天然の酵素では、SDS−PAGEにおける分子量が約70kDaを示すものが得られている。
上記の酵素、すなわちGPE−EPの一態様は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるものである。
上記の酵素は、GPE−EP活性を有する限り、配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号2に記載内のアミノ酸配列に対して、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する酵素であってもよい。当業者であれば、例えば、部位特異的変異導入法(NucleicAcid Res.,1982年,10巻,pp.6487;Methods inEnzymol.,1983年,100巻,pp.448;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,ColdSpring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.1989年;PCR:APractical Approach,IRL Press,1991年,pp.200)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより、タンパク質の構造を改変することができる。本明細書において、置換、欠失、挿入、および/または付加することができるアミノ酸残基数は、通常50以下、例えば30以下、あるいは20以下、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0〜3である。また、アミノ酸の変異は、人工的に変異させた酵素のみならず、自然界において変異した酵素も、同様の活性を有する限り、上記の酵素(GPE−EP)に含まれる。
配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド(タンパク質)も、GPE−EP活性を有する限り、上記の酵素(GPE−EP)に含まれる。GPE−EPは、好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。
タンパク質の相同性の(ホモロジー)検索は、例えばUniprot、SWISS−PROT、PIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベース、またはDDBJ、EMBL、あるいはGenBankなどのDNAデータベースなどを対象に、BLASTなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。タンパク質の活性の確認は、上記に記載の手順を利用して行い得る。
GPE−EPの供給源は特に限定されるものではないが、GPE−EPは、微生物などの生体細胞から得ることができる。そのような微生物としては、例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が挙げられる。好ましくは、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)が挙げられる。また、近縁の菌株、例えば、ストレプトマイセス・アトラタス(Streptomyces atratus)なども、GPE−EP活性を有する酵素が得られる可能性がある。また、Streptomyces sindenesis、Streptomyces badius、Streptomyces globisporus、Streptomyces pluricolorescens、Streptomyces rubiginosohelvolus、Streptomyces albovinaceus、Streptomyces anulatus、Streptomyces flavofuscus、Streptomyces microflavus、Streptomyces griseorubiginosus、Streptomyces puniceus、Streptomyces floridae、Streptomyces griseolus、Streptomyces halstedii、Streptomyces flavovirens、Streptomyces flavogriseus、Streptomyces pulveraceus、Streptomyces gelaticus、Streptomyces albus subsp. albusなども、GPE−EP活性を有する酵素が得られる可能性がある。また、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)、ストレプトマイセス・チャッタノゲンシス(Streptomyces chattanoogensis)およびストレプトマイセス・リディカス(Streptomyces lydicus)なども、GPE−EP活性を有する酵素が得られる可能性がある。これらの菌株は近縁であることから同種の活性のGPE−EPが得られやすいものと考えられる。
例えば、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株(受託番号:NITE BP−1392)は適当な栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理したものをGPE−EP酵素製剤として製造することができる。
GPE−EP酵素製剤の製造に用い得る微生物はストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株に限られるものではなく、ストレプトマイセス属に属し、かつ、GPE−EPを生産し得る微生物であってもよい。また、それらの生物種の天然または人為的変異株や、GPE−EP活性の発現に必要な遺伝子断片を人為的に取り出し、それを組み入れた他の生物種であってもGPE−EPの製造に用いることができる。また、ストレプトマイセス属に属さなくても、上記のGPE−EPを生産し得る微生物であれば、それを用いることもできる。
ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を用いたGPE−EP酵素製剤を例に挙げて、その製造について説明する。
この菌は栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理する、あるいはこの処理物を固定化するなどして酵素製剤を製造することができる。さらに具体的に説明すると、まず、この菌を適当な培地、例えば適当な炭素源、窒素源、無機塩類を含む培地中で培養し、該酵素を分泌させる。ここで炭素源としては、澱粉および澱粉加水分解物、グルコース、シュークロースなどの糖類、グリセロールなどのアルコール類、および有機酸(例えば、酢酸およびクエン酸)またはその塩(例えば、ナトリウム塩)などが挙げられる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉などの有機窒素源および硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの無機窒素化合物が挙げられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、リン酸1カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、塩化カルシウム、硫酸第1鉄などが挙げられる。炭素源の濃度は、例えば0.1〜20%(w/v)、好ましくは0.4〜10%(w/v)の範囲である。窒素源の濃度は、例えば0.1〜20%(w/v)、好ましくは0.4〜10%(w/v)の範囲である。好ましい培地組成として、具体的には、麦芽エキス1%、グルコース0.4%が挙げられるが、これに限定されるものではない。培養温度は、上記の酵素が安定であり、そして培養される微生物が十分に生育できる温度であることが好ましく、例えば、20〜40℃であることが好ましい。培養時間は、上記酵素が十分に生産される時間であることが好ましく、例えば、1〜7日間程度であることが好ましい。培養は、好ましくは、好気的な条件下で、例えば、通気攪拌または振とうしながら行うことができる。
GPE−EPは、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈殿や硫安などによる塩析など);陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィー;キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適当に組み合わせることにより精製することができる。例えば、上記微生物の培養上清を回収した後、硫安沈殿、さらに陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及び/又は、陽イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより精製することができる。これにより、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)において、ほぼ単一バンドにまで精製することができる。すなわち、上記酵素(GPE−EP)は、SDS−PAGE分析およびゲル濾過クロマトグラフィー分析により、単量体と推定できる。
[GPE−EPをコードするポリヌクレオチド]
本発明におけるポリヌクレオチドは、上記のGPE−EPをコードするものである。このポリヌクレオチドは、好ましくは、以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
上記のポリヌクレオチドは、DNA、RNAなどの天然のポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体を含む人工的な分子であり得る。また、ポリヌクレオチドは、DNA−RNAのキメラ分子であり得る。上記のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1の1位から1983位までの塩基配列を有する。配列番号1に記載の塩基配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードすることができ、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、GPE−EPの好ましい形態を構成する。
上記のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドとしては、上記のような配列番号2に記載のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸を含み、かつGPE−EP活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。当業者であれば、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに部位特異的変異導入法(上述)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりポリヌクレオチドのホモログを得ることが可能である。
ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載した塩基配列情報に基づいて、目的とする遺伝子を、上記の微生物、好ましくは、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物、さらに好ましくは、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株から取得することができる。遺伝子の取得には、PCRやハイブリダイズスクリーニングを用いることができる。あるいは遺伝子の取得には、次世代シーケンスなどによるゲノム解析により得られた情報からインシリコスクリーニングにてORF、遺伝子を探索する手法を用いることができる。
また、ポリヌクレオチドは、DNA合成によって遺伝子の全長を化学的に合成して得ることもできる。また、上記の塩基配列情報に基づいて、上記以外の生物に由来する上記GPE−EPをコードするポリヌクレオチドを取得することもできる。例えば、上記塩基配列もしくはその一部の塩基配列を用いてプローブを設計し、他の生物から調製したDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行うことにより、種々の生物由来のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。
さらに、上記の塩基配列情報に基づいて、DNA Databank of Japan(DDBJ)、EMBL、GenBankなどのDNAに関するデータベースに登録されている配列情報を用いてホモロジーの高い領域からPCR用のプライマーを設計することもできる。このようなプライマーを用い、染色体DNA、プラスミドDNAを含むすべてのDNA(ゲノムDNA)もしくはcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記GPE−EPをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。同様に、環境中から抽出したDNAあるいはRNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記GPE−EPをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、40個、60個、または100個の連続した配列を1つまたは複数選択してプローブを設計し、例えばECL directnucleic acid labeling and detection system(GE Healthcare社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、洗浄条件:42℃、0.5×SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1% SDSの条件であり、さらに好ましくは65℃、0.1×SSC、0.1% SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されるものではない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度など複数の要素があり、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
さらに、上記のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつGPE−EP活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。タンパク質の相同性(ホモロジー)検索は、上記で説明したとおりである。
また、上記のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつGPE−EP活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。塩基配列の配列同一性の決定および検索についても、上記で説明したとおりである。
上記のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドは、遺伝子組換え技術を用いて、同種もしくは異種の宿主中で発現され得る。
[酵素の製造方法]
本発明では、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する酵素を製造する方法が提供される。酵素の製造方法においては、上記で説明したポリヌクレオチドを有する微生物から該酵素を産生させる工程を含んでいる。本発明による方法では、上記で説明したGPE−EPが得られる。上記のポリヌクレオチドを有する微生物は、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株に代表されるストレプトマイセス(Streptomyces)属のように微生物自体が天然に有するものであってもよく、あるいは、変異してポリヌクレオチドを有するものであってもよく、あるいは、ポリヌクレオチドが導入されて有するものであってもよい。
ポリヌクレオチドの導入においては、ベクター、形質転換体などが利用され得る。このベクターは、上記のポリヌクレオチドを含むものである。また、ポリヌクレオチド又はベクターを宿主に導入することにより、グリセロール−3−ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する能力を保有する形質転換体を作製することができる。
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:ALaboratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989年参照)。特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」を参照して行うことができる。
微生物中で、GPE−EPをコードするポリヌクレオチドを発現させるためには、まず微生物中で安定に存在するプラスミドベクターやファージベクターにこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる。そのために、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターをDNA鎖の5’側上流に組み込むことが好ましい。また、転写・翻訳を制御するユニットにあたるターミネーターをDNA鎖の3’側下流に組み込むことが好ましい。より好ましくは、上記プロモーターとターミネーターの両方をそれぞれの部位に組み込む。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用される微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターが用いられる。これらの各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターなどに関しては、「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版」、特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、JohnInnes Foundation、2000年)」などに詳細に記述されており、その方法を利用することが可能である。また、必要に応じてシグナル配列を用いることで細胞外に効率的に分泌生産させることができる。この時使用するシグナル配列は上記のGPE−EPのものでもその他のものでもよい。
形質転換の対象となる宿主は、上記のGPE−EPをコードするポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換されて、GPE−EP活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。例えば、細菌、放線菌、枯草菌、大腸菌、酵母、カビなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発がされている細菌;ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発がされている放線菌;サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発がされている酵母;ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主・ベクター系の開発がされているカビなどが挙げられる。遺伝子組換えの操作の容易性からは大腸菌が好ましく、遺伝子の発現の容易性からは放線菌が好ましい。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、例えば、蚕などの昆虫(Nature315,592−594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種蛋白質を発現させる系が開発されており、これらを利用してもよい。また、小麦胚芽由来の無細胞たんぱく合成系などインビトロ発現系を用いてもよい。
得られた形質転換体は、上記のように酵素製剤(GPE−EP)の製造に用いることができる。具体的には、形質転換体を適当な栄養培地で液体培養して、発現したGPE−EPを細胞外に分泌させ、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理してGPE−EP酵素製剤を製造することができる。
宿主細胞に依存して培養条件は変動し得るが、培養は、同業者が通常用いる条件下で行われ得る。例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属のような放線菌を宿主として用いる場合、チオストレプトンなどの抗生物質を含むトリプチックソイ培地(例えば、ベクトン・ディッキンソン社製)が用いられ得る。形質転換体により産生された酵素は、上述のようにしてさらに精製され得る。
[GPE−EPの利用]
以上のようにして生産され得るGPE−EPは、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンと特異的に反応する酵素である。そのため、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンの分析に用いることができ、定量などを行うことができる。
また、PLA1(ホスホリパーゼA1)、PLA2(ホスホリパーゼA2)、及び、PLB(ホスホリパーゼB)から選ばれる1種以上の酵素と組み合わせることにより、リン脂質やリゾリン脂質から、リン酸、ホスホコリンやホスホエタノールアミンなどを生成することが可能である。これらは、肥料や生理活性物質となり得るもので、これらを積極的に生産させることにも利用可能である。さらには、モノグリセリド、グリセリンを生成させることも可能である。
ところで、本出願人は、グリセロホスホジエステルのうちGPCとGPEに対して基質特異的に作用する酵素グリセロホスホコリン コリンホスホジエステラーゼ(GPC−CP)を得ている。このGPC−CPは、ストレプトマイセス属の菌から得られており、具体的にはストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)から得られている。菌株としてはストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株が利用される。GPC−CPは、GPE−EPとは異なる手法によって得られ得る。このようなGPC−CPと上記のGPE−EPとを組み合わせた酵素の利用も可能である。例えば、GPC−CPとGPE−EPとを組み合わせることにより、GPC及びGPEの定量、並びにGPC及びGPE以外のグリセロホスホジエステルの定量などを行うことができる。また、GPC−CPとGPE−EPとの反応性(加温条件、pH条件、金属塩存在条件、化学物質存在条件)の違いを利用することもできる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)由来酵素の精製]
ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を培養し、その培養上清について、硫安分画、陰イオン交換、疎水相互作用、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。以下に詳細を示す。
(a)培養
ISP2培地「1%麦芽エキス(べクトン・ディッキンソン社製)、0.4%酵母エキス(オリエンタル酵母工業(株)製)、0.4%グルコース(和光純薬工業(株)製)、pH7.2」500mLを調製し、500mL容三角フラスコに100mlずつ分注して、さらに0.1〜1mM 程度のTween 80などの生化学用界面活性剤を添加した後、121℃で15分間蒸気殺菌を行った。予め終濃度10%(w/v)グリセロールでストックしたストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を適当量とり、ISP2培地5mLを入れたφ18試験管(18×180mm)に接種し、28℃で良好な生育が得られるまで振とう培養した。この培養液を先の滅菌した培地100mLに1mlずつ接種し、28℃で72時間振とう培養した。遠心分離機を用いて、この培養液から上清(Supernatant)を回収した。
(b)硫安分画
上記(a)で回収した培養上清に、80%飽和量となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(10,000rpm、30分、4℃)により回収した(AS沈殿)。この沈殿を1M硫酸アンモニウムを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で可溶化し、粗酵素液を得た。
(c)TOYOPEARL PPG−600M
上記(b)で得られた粗酵素液を同緩衝液で予め平衡化した「TOYOPEARL PPG−600M」(20ml)カラム(東ソーバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウム(1Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(d)HiTrap Q HP カラムクロマトグラフィー
上記(c)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えた。これを、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「HiTrap Q」(5ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(e)HiTrap Plenyl HP カラムクロマトグラフィー
上記(d)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、1M硫酸アンモニウムを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えた。これを、同緩衝液で予め平衡化した「HiTrap Plenyl HP」(5ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウム(1Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
(f)RESOURCE PHE
上記(e)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、1M硫酸アンモニウムを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えた。これを、同緩衝液で予め平衡化した「RESOURCE PHE」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄して得られた素通り画分を活性画分として回収した。
(g)Mono Q カラムクロマトグラフィー
上記(f)で得られた活性画分をViva spinを用い濃縮脱塩した。これに、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えた。これを、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「Mono Q」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
以上のようにして、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株より、精製酵素(GPE−EP)を得た。なお、精製酵素が単一であることは、分子量測定において単一のバンドが測定されたことで確認した。また、この酵素は、SDS−PAGE分析およびゲル濾過クロマトグラフィー分析によっても単量体と推定された。
表1に、GPE−EP精製における収量、収率等を示す。
Figure 0006080254
なお、表1における活性は、下記に示す「酵素活性標準測定方法」において、pH8.4、温度60℃の条件で酵素反応を行ったときのものである。
[GPE−EPの分子量の測定]
(分子量)
上記によって得た精製酵素(GPE−EP)について、SDS−PAGE(12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)により分子量を解析した。
溶出画分の電気泳動によるSDS−PAGEの解析の結果、溶出画分において、単一のバンドが観察され、精製酵素(ポリペプチド)の分子量は約70,000であった。なお、分子質量の単位はDa(ダルトン)である。よって、kDa表記では、この酵素の分子質量は約70kDaとなる。
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)由来酵素(GPE−EP)の特性評価]
(酵素活性(GPE−EP活性))
本実施例において、酵素活性の測定は、基本的には、以下のような方法をベースとして行った。この方法を、以下、「酵素活性標準測定方法」という。この方法では、GPE(グリセロホスホエタノールアミン)に代表されるGPX(グリセロホスホジエステル)を基質として用いた場合を例示する。
基質(GPXなど)を所定量(4mM)、Triton X−100を0.1%(w/v)含んだ、Tris−HCl緩衝液(pH8.4、各温度条件)50mMの溶液に、精製酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、合計量25μLとなる反応液を調製した。そして、この反応液を5分間、所定の温度(37℃又は60℃又は65℃など)の温度条件にて撹拌し、酵素反応を行った。酵素反応における、基質量、温度、pHは各実験で示すように適宜選択した。
酵素反応の後、アルカリホスファターゼ処理(AP処理)として、酵素反応液5μLに、APを1μL、AP緩衝液(pH9.6、温度56℃)を94μL加え、合計100μLにし、10分間、56℃の温度条件にて撹拌し、酵素反応を停止させた。次に、呈色反応として、酵素反応停止後の液(AP反応液)にBiomol Green (BMG)を加えて呈色液を調製し、20分、室温で撹拌することにより、呈色反応を行った。BMGの呈色液は、AP反応液25μLにBMG225μLを加えて合計250μLにする呈色液、又は、AP反応液75μLにBMG150μLを加えて合計225μLにする呈色液、のいずれかを、酵素活性の度合に応じて適宜選択した。そして、BMGによる呈色液について波長620nmでの吸光度を吸光度測定機により測定した。BMGでは、遊離したリン酸が呈色し、定量される。
表2(表2A〜表2D)に、上記の各反応における反応液組成を示す。
Figure 0006080254
Figure 0006080254
Figure 0006080254
Figure 0006080254
(酵素学的性質)
上記の精製酵素(GPE−EP)の酵素学的性質について検討した。
(1)作用温度
基質(GPE)を4mM、Tris−HCl(pH8.4)を50mM、Triton X−100を0.1%(w/v)含む溶液に、精製酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、合計量25μLとなる反応液を調製した。この反応液を各温度条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図1は、種々の反応温度での酵素活性を、反応温度が65℃である場合の活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図1のグラフに示されるように、この酵素は、少なくとも20〜75℃で活性を発揮し、そして反応の至適温度は50〜70℃の範囲内であり、好ましくは50〜65℃付近であった。
(2)作用pH
基質(GPE)を4mM、酢酸−酢酸Na、Bis−Tris、Tris−HCl、又は、Glycine−NaOHから選ばれる緩衝液(各pH)を50mM、Triton X−100を0.1%(w/v)含む溶液に、精製酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、合計量25μLとなる反応液を調製した。この反応液を各pH条件にて温度37℃、5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
各pH条件は次の通りである。
酢酸−酢酸Na緩衝液:pH4.1、pH5、pH5.6。
Bis−Tris緩衝液:pH5.6、pH6.5、pH7.2。
Tris−HCl緩衝液:pH7.2、pH8、pH8.4、pH9。
Glycine−NaOH緩衝液:pH9、pH9.5、pH10、pH10.5。
図2は、種々の反応pHでの酵素活性を、反応pHが8.4である場合の酵素活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図2のグラフから分かるように、この酵素は、pH4.1からpH10.5という広い範囲で活性を発揮し、そして、反応の至適pHは、8.4付近(例えば7〜10)であった。
(3)基質特異性
基質(GPE等)を4mM、Tris−HCl(pH8.4、65℃)を50mM、Triton X−100を0.1%(w/v)含む溶液に、精製酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、合計量25μLとなる反応液を調製した。この反応液を65℃にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図3は、基質として次に示すものを用いたときの酵素活性を示すグラフである。このグラフでは、GPE(グリセロホスホエタノールアミン)を100%としたときの相対活性を示している。
グラフ中の基質の詳細
LPls−PC: 下記Pls−PCのリゾ体、「Lyso−PlsPC」ともいう
LPLs−PE: 下記Pls−PEのリゾ体、「Lyso−PlsPE」ともいう
Pls−PC: コリン型プラズマローゲン
Pls−PE: エタノールアミン型プラズマローゲン
GPS: グリセロ−3−ホスホセリン
GPI: グリセロ−3−ホスホイノシトール
GPG: グリセロ−3−ホスホグリセロール
GPE: グリセロ−3−ホスホエタノールアミン
GPC: グリセロ−3−ホスホコリン
GPA: グリセロ−3−リン酸
LPS: PSのリゾ体(表3参照)
LPI: PIのリゾ体(表3参照)
LPG: PGのリゾ体(表3参照)
LPE: PEのリゾ体(表3参照)
LPC: PCのリゾ体(表3参照)
LPA: PAのリゾ体(表3参照)
PS: L−α−ホスファチジルセリン(L-α-Phosphatidylserine)、「POPS」ともいう
PI: L−α−ホスファチジルイノシトール(L-α-Phosphatidylinositol)
PG: 1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホ−(1−rac−グリセロール)(1,2-Diacyl-sn-glycero-3-phospho-(1-rac-glycerol))、「POPG」ともいう
POPE: 1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Diacyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)
DPPE: 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)
POPC: 1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diacyl-sn-glycero-3-phosphocholine)
DMPA: 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロール−3−ホスフェート(1,2-Dimyristoyl-sn-glycerol-3-phosphate)
表3に、基質の正式名称及び入手先、酵素反応における相対活性の結果の詳細を示す。
Figure 0006080254
図3のグラフ、及び、表3の結果より、上記の精製酵素は、基質特異的に作用し、GPE−EP活性を示すことが確認された。
具体的には、GPE−EPの加水分解活性は、グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(GPE)を基質としたときの活性を100%とすると、グリセロール−3−ホスホグリセロール(GPG)に対して10%以下、グリセロール−3−リン酸(GPA)、グリセロール−3−ホスホコリン(GPC)、グリセロール−3−ホスホイノシトール(GPI)、およびグリセロ−3−ホスホセリン(GPS)に対してほぼ0%であった。また、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)に対して40%以下、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾホスファチジルセリン(LPS)およびリゾホスファチジルグリセロール(LPG)に対してほぼ0%であった。また、エタノールアミン型リゾプラズマローゲン(LPls−PE)に対して40%以下、コリン型リゾプラズマローゲン(LPls−PC)に対してほぼ0%、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲン(Pls−PE、Pls−PC)に対してほぼ0%であった。また、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセリン(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、およびホスファチジン酸(PA)に対してほぼ0%であった。なお、PAの一例はDMPAであり、PEの一例はDPPE、POPEであり、PCの一例はPOPCであり、これらがグラフで示されている。
ここで、表3において、「自作」とあるのは、自作で基質を作製したものである。自作で作製した基質は、いわゆるグリセロホスホジエステル(別称:グリセロール−3−ホスホジエステル、以下「GPX」ともいう)である。このグリセロホスホジエステルは、sn−1に脂肪酸を有するリゾリン脂質に、ホスホリパーゼBを作用させることにより得られる。グリセロホスホジエステル(グリセロール−3−ホスホジエステル)は、次の化学式に示す構造を有する。
Figure 0006080254
上記のグリセロホスホジエステル(GPX)における置換基Xは、表4に示される構造のものである。
Figure 0006080254
上記のグリセロホスホジエステル(GPX)の調製は次のように行った。まず、40mMリゾリン脂質(LPX)、1%(w/v)Triton X−100、1%(v/v)ホスホリパーゼBを含む50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.4)で3時間の酵素反応を行って、基質を100%反応させた。これをクロロホルム・メタノール(2/1、体積比)抽出し、水層を回収した。
これにより、GPX含有液が得られた。酵素活性測定には10%(体積比)のGPX含有液を用いた。表5に、PLBによる酵素反応の反応組成を示す。
Figure 0006080254
(4)温度安定性
Tris−HCl(pH8.4)50mMに、精製酵素(GPE−EP)を20%(v/v)となるように加え、各温度で30分間保温した。基質(GPE)を0.8mM、Tris−HCl(pH8.4)を50mM、Triton X−100を0.5%(w/v)含む溶液に、各温度での処理後の酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、合計量25μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH8.4、温度60℃の条件にて20分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図4は、pH8.4、各温度での処理後の酵素の活性を、温度4℃で処理して酵素反応したときの活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図4のグラフに示されるように、この酵素は、4℃から65℃までの温度での処理後では、活性が確認されており、処理前の80%以上の活性が維持されていた。
(5)pH安定性
酢酸−酢酸Na、Bis−Tris、Tris−HCl、又は、Glycine−NaOHから選ばれる緩衝液(各pH)50mMに、精製酵素(GPE−EP)を20%(v/v)となるように加え、各pHで4℃条件下、3時間処理した。その後、基質(GPE)を0.8mM、Tris−HCl(pH8.4)を50mM、Triton X−100を0.5%(w/v)含む溶液に、各pHでの処理後の酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、合計量25μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH8.4、温度60℃の条件にて20分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図5は、種々のpHでの処理後の酵素の活性を、Glycine−NaOHによりpH9でpH処理を行って酵素反応したときの活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図5のグラフに示されるように、この酵素は、少なくともpH4から10.2までのpH処理後においても活性が確認され、pH6以上のpH処理では80%以上の活性が確認された。
(6)金属イオンおよびEDTAの影響
基質(GPE)を4mM、Tris−HCl(pH8.4、65℃)を50mM、Triton X−100を0.1%(w/v)含む溶液に、精製酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、さらに各種金属イオン又はEDTAを2mM添加して、合計量25μLとなる反応液を調製した。ここで、金属イオンとしては金属塩化物(MCl:Mは金属、nは1又は2)を加えるようにした。この反応液をpH8.4、温度65℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図6は、添加物(金属イオン及びEDTA)を添加していない条件(control)を100%としたときの、各種添加物を添加した相対活性の結果である。上記の酵素は、Fe2+、Cu2+、Ca2+、Mg2+、Co2+、Na、K、EDTA、の存在下では、金属イオンを添加していない場合(control)とほぼ同等の活性を示した。また、Mn2+の存在下では、若干活性が低下する傾向が見られた。また、Zn2+の存在下では活性が大きく低下し、活性阻害が見られた。
図7は、上記の酵素GPE−EPと酵素GPC−CPとの酵素活性の比較を示すグラフである。この実験に用いたGPC−CPは、本出願人によって発見された酵素であり、ポリペプチドにより構成されている(日本国特許出願:特願2012−234401)。GPC−CPは、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株の培養液からGPE−EPとは異なる画分として得られたものである。GPC−CPを発現する遺伝子配列を配列番号25に示す。GPC−CPのアミノ酸配列を配列番号26に示す。なお、GPC−CP発現遺伝子及びCPC−CPを構成するポリペプチドは、80%以上、好ましくは90%以上の相同性(配列同一性)を示すものであってもよい。GPC−CPの酵素反応は次のように行った。
基質(GPC)8mMと、HEPES緩衝液(pH7.2、37℃)50mMとの溶液に、精製酵素(GPC−CP)を10%(v/v)となるように加え、さらに各種金属イオン又はEDTAを2mM添加して、合計量50μLとなる反応液を調製した。ここで、金属イオンとしては金属塩化物を加えるようにした。この反応液をpH7.2、温度37℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、GPE−EPにおける「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図7に示すように、GPE−EPとGPC−CPとでは、Cu2+の存在下における活性が大きく異なっている。すなわち、GPE−EPでは活性がほぼ100%維持されているのに対し、GPC−CPでは活性がほぼ0%まで低下している。また、Co2+の存在下における活性も異なっている。
ここで、既知のGPC−CP酵素(ウシ脳由来、ラット脳由来、マウス脳由来)は、金属イオン要求性であることが分かっている。これに対し、上記の酵素(GPE−EP及びGPC−CP)は金属イオン非存在下においても活性を有しており、さらにEDTA存在下でも活性を維持している。よって、上記の酵素は金属イオン非要求性と考えられる。
(7)化学物質の影響
基質(GPE)を4mM、Tris−HCl(pH8.4、65℃)を50mM、Triton X−100を0.1%(w/v)含む溶液に、精製酵素(GPE−EP)を10%(v/v)となるように加え、さらに各種化学物質を2mM添加して、合計量25μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH8.4、温度65℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
図8は、化学物質を添加していない条件(control)を100%としたときの、各種化学物質を添加した相対活性の結果である。上記の酵素GPE−EPは、IAA(ヨードアセタミド)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)の存在下では、化学物質を添加していない場合(control)とほぼ同等の活性を示した。また、2−ME(2−メルカプトエタノール)、DTT(ジチオトレイトール)の存在下では、わずかながら活性が低下する傾向が見られた。
図9は、IAA(ヨードアセタミド)存在下に酵素を保持した後、酵素反応を行ったときの活性の変化を示すグラフである。この酵素反応では、上記の実験において、Tris−HClと精製酵素(GPE−EP)とIAAとを混合し、所定時間経過した後、基質(GPE)を加え、酵素反応を行った。
図9に示すように、IAA処理後においても酵素活性は100%維持されていることが確認された。
(8)可溶化剤(Triton X−100)の影響
酵素反応における可溶化剤(Triton X−100)の影響を調べるため、Triton X−100の添加量を変えて酵素反応を行った。
図10は、Triton X−100を0.1%(w/v)添加したときと、Triton X−100を添加しなかったときとの比較を示すグラフである。この実験では、反応温度の条件を変化させて種々の温度で酵素反応を行った。このグラフに示すように、Triton X−100を添加したときの方が、酵素活性が高かった。
図11は、Triton X−100の添加量を変化させて種々の添加量で酵素反応を行った結果を示すグラフである。グラフでは、0.1%(w/v)の場合を100%(基準)としている。このグラフに示すように、Triton X−100の添加量が0.1%(w/v)であるときに酵素活性が高かった。
[精製酵素のN末端アミノ酸配列の解析]
上記の精製酵素GPE−EPについて、SDS−PAGE後、エレクトロブロッティングを行い、目的とする酵素をPVDF膜に転写した。これをプロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列の解析を行った。解析から、この精製酵素のN末端アミノ酸配列は、配列番号3に示すものであることが確認された。
[精製酵素の内部アミノ酸配列の解析]
上記の精製酵素について、SDS−PAGE後、目的とする酵素を切り出し、トリプシンを用いてゲル内消化を行った。そして、得られたペプチドサンプルについて質量分析計(nanoLC−MS/MS)により内部アミノ酸配列の解析を行った。これにより、内部アミノ酸配列は、配列番号4、5、6、7、8に示すものであることが確認された。
ここで、配列番号4は、配列番号2の274位からに示される配列となっている。また、配列番号5は、配列番号2の422位からに示される配列となっている。また、配列番号6は、配列番号2の510位からに示される配列となっている。また、配列番号7は、配列番号2の407位からに示される配列となっている。また、配列番号8は、配列番号2の94位からに示される配列となっている。なお、nanoLC−MS/MSによるデノボアミノ酸配列解析ではLeuとIleとが判別できないため、これらのアミノ酸が一部一致していない箇所がある。
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株の染色体DNAの分離]
ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を、2.5M塩化マグネシウム100μl、20%グリシン1.25mlYEME培地(ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、麦芽エキス0.3%、グルコース1%、スクロース34%)50mlを用いて28℃で3日間培養し、集菌した。
次いで、この菌体を、75mM NaCl、25mM EDTA、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)および1mg/mlリゾチームからなる溶液5mlに懸濁し、37℃で1時間処理した。これに、10%(w/v)SDSを750μl、proteinase Kを3.75mg添加し、55℃で2時間処理した。この溶液に5M NaCl2mlとクロロホルム5mlを加えて攪拌し、遠心分離により水相を5ml分取した。
この水相に3mlのイソプロパノールを添加混合してDNA画分を回収し、70%エタノール1mlでリンスした後、遠心分離を行った。この沈殿を回収し、減圧乾燥した後、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液500μlに溶解し55℃で一晩放置した。これに、RNaseAを0.1mg/mlとなるように加え、37℃で20分間処理した後、0.8MのNaClを含む13%PEG溶液を500μl加え攪拌し、4℃、1時間静置後、遠心分離により沈殿を回収した。この沈殿を1mMEDTA を含む10mM トリス−塩酸緩衝液(pH 7.5)500μlで溶解した。これにフェノール/クロロホルム混合液500μlを加えて攪拌し、遠心分離により、水相を500μl分取した。
この水相に3M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)50μLおよび100%エタノール1mlを添加混合し、DNAを回収した。
このDNAを70%(v/v)エタノールに10分間浸漬した後、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液200μlに溶解した。
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPE−EP遺伝子のコア領域のクローニング]
GPE−EPのN末端および内部アミノ酸配列とストレプトマイセス属の使用コドンに基づいて、プライマーを設計した。
プライマー(primer)の作製にあたっては、上記のN末端配列(配列番号3)及び上記の5つの内部アミノ酸配列(配列番号4〜8)をピックアップした。プライマー設計にあたっては、これらのアミノ酸配列中の適宜の配列を利用した。
N末端アミノ酸配列情報を「Sense primer」とし、内部アミノ酸配列情報を「Antisenseprimer」とした。縮重コドンに関しては、Streptomyces属におけるコドン使用頻度が高いコドンを選択し、プライマー設計を行った。また、コドン使用頻度が同等のものに関しては、混合塩基プライマーとした。また、質量分析では分別が難しいLeuとIleを除外した。これにより、センスプライマー(Sense primer)として、PCR用の縮重オリゴヌクレオチドプライマーS1(配列番号9)を設計した。また、5種のアンチセンスプライマー(Antisense primer)として、配列番号4から設計した「primer A1−1」(配列番号10)と、配列番号5から設計した「primer A1−2」(配列番号11)と、配列番号6から設計した「primer A1−3」(配列番号12)と、配列番号7から設計した「primer A1−4」(配列番号13)と、配列番号8から設計した「primer A1−5」(配列番号14)と、を設計した。ここで、配列中のsはcまたはgを表し、wはaまたはtを表している。
次に上記のプライマーを用いて、PCRを行った。PCRの反応液組成は次のとおりである。
上記[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株の染色体DNAの分離]で得た鋳型染色体DNA50ng、2×KOD FX Buffer 12.5μL、プライマー各300nM、dNTPs各0.4mMおよびKOD FX DNA Polymerase 0.5ユニットに、蒸留水を全量25μlとなるように添加した。
PCR反応条件は次のとおりである。
ステップ1:94℃、2分;
ステップ2:98℃、10秒;
ステップ3:68℃、45秒;
ステップ2からステップ3を30サイクル繰り返す;
ステップ4:68℃、1分。
上記のプライマーを用いたPCRによって、約1250bpの特異的な増幅産物を得た。
このPCR反応液についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的の約1250bpのバンド部分を切り出し、pGEM−T Easy Vector SystemI(Promega)を用いて、pGEM−T Easy Vectorに結合させ、大腸菌を形質転換した。形質転換株をアンピシリン50μg/mlを含むLB培地(トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム0.4%、pH7.2)で培養し、Miniprep DNA Purification Kit(TaKaRa製)を用いてDNAシーケンス用のプラスミドを抽出・精製した。
続いて、ベクター(pGEM−T Easy Vector)に由来するT7プライマーおよびSP6プライマーを用いて自動シークエンサーによって、挿入断片の塩基配列を決定した。この塩基配列(1254bp)を、配列番号15に示す。
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPE−EP遺伝子のコア領域の上流側及び下流側のクローニング]
上記[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPE−EP遺伝子のコア領域のクローニング]で決定した遺伝子配列の周辺領域の配列を明らかにするために、上記で得た染色体DNAをPstI又はSmaIで完全消化し、Ligation high Ver.2(Toyobo社製)を用いて消化断片を自己閉環させた。これを鋳型にして、GPE−EPの部分遺伝子配列に基づいて作製した二つのインバースPCRプライマー(配列番号16及び配列番号17)を用いて、PCRを行うことでGPE−EPの上流側又は下流側におけるDNA断片を増幅した。
PCRの反応液組成は次のとおりである。
鋳型DNA25ng、2×KOD FX Neo Buffer 12.5μl、プライマー各300nM、dNTPs各0.4mMおよびKOD FX Neo DNA Polymerase 0.5ユニットに、蒸留水を全量25μlとなるように添加した。
PCR反応条件は次のとおりである。
ステップ1:94℃、2分;
ステップ2:98℃、10秒;
ステップ3:69℃、2分40秒;
ステップ2からステップ3を30サイクル繰り返す;
ステップ4:69℃、1分。
このPCRによって、N末端側(上流側)の塩基配列として、配列番号18に示す塩基配列(144bp)が得られた。この配列はシグナル配列である。この塩基配列のコドンに対応するアミノ酸配列を、配列番号19に示す。
また、PCRによって、C末端側(下流側)の塩基配列として、配列番号20に示す塩基配列(729bp)が得られた。
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPE−EP遺伝子の塩基配列の決定]
上記で決定した塩基配列に基づいて、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPE−EP遺伝子を含む領域の塩基配列(2037bp)を決定した(配列番号21)。配列番号22は、この配列(配列番号21)のコドンに対応するアミノ酸配列である。配列番号21からシグナル領域(配列の1位〜54位)を除外し、成熟酵素部分を抽出した塩基配列(1983bp)を決定した(配列番号23の上段)。さらに、構造遺伝子部分についてその塩基配列からアミノ酸配列を推定した(配列番号23の下段、配列番号24)。
配列解析の結果から、GPE−EPをコードする構造遺伝子は1983bpのヌクレオチドからなり、660残基のアミノ酸をコードしていることが明らかとなった。配列番号19のアミノ酸配列が分泌シグナル配列である。
上記にて決定したストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来の精製酵素のN末端および内部アミノ酸配列が、上記の推定アミノ酸配列中に存在し、ほぼ完全に一致していた。
すなわち、配列番号23の上段の塩基配列は、配列番号1の塩基配列となっており、配列番号24のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列に示される配列となっている。配列番号2のアミノ酸配列は、シグナル部分を除いた成熟酵素部分である。そして、配列番号3のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の1位からに示される配列となっている。配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の274位からに示される配列となっている。また、配列番号5のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸配列422位からに示される配列となっている。また、配列番号6のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の510位からに示される配列となっている。また、配列番号7のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の407位からに示される配列となっている。また、配列番号8のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の94位からに示される配列となっている。ただし、nanoLC−MS/MSによるデノボアミノ酸配列解析ではLeuとIleとが判別できないため、これらのアミノ酸が一部一致していない箇所がある。
また、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来の精製酵素(すなわちGPE−EP)は、この推定アミノ酸配列のアミノ酸組成に基づいて計算したところ、約70,000の分子量を有することが推定された。
本発明によれば、新規なGPE−EPおよびその製造方法が提供される。このGPE−EPは、グリセロール−3−ホスホエタノールアミンと特異的に反応するため、その定量が可能である。GPE−EPを用いた定量では、比色定量が可能になり、簡単に定量を行うことができる。グリセロール−3−ホスホエタノールアミンなどのグリセロール−3−リン酸エステル化合物は、医薬品、飲食品、サプリメント(健康補助食品)および化粧品などの配合物質としての有用性が期待できる。なかでも、グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(GPE)はGPCとともに認知症予防などの生理活性作用やさまざまな疾患、体調(妊娠や疲労などの判定)などとの関連性が期待できる。したがって、GPE−EPは、体外診断薬用酵素、グリセロール−3−ホスホエタノールアミン定量用酵素として使用可能である。例えば、血清中などの体内液や飲食品、サプリメント、医薬あるいは薬品などに存在するGPEなどの物質を簡単に正確に定量することが可能になる。
NITE BP−1392
配列番号1:GPE−EP発現遺伝子
配列番号2:GPE−EP(ポリペプチド)
配列番号3:GPE−EPのN末端配列
配列番号4:GPE−EPの内部配列
配列番号5:GPE−EPの内部配列
配列番号6:GPE−EPの内部配列
配列番号7:GPE−EPの内部配列
配列番号8:GPE−EPの内部配列
配列番号9:プライマーS1
配列番号10:プライマーA1−1
配列番号11:プライマーA1−2
配列番号12:プライマーA1−3
配列番号13:プライマーA1−4
配列番号14:プライマーA1−5
配列番号15:GPE−EP発現遺伝子断片(解析結果)
配列番号16:プライマー(インバースPCR)
配列番号17:プライマー(インバースPCR)
配列番号18:GPE−EP発現遺伝子断片(解析結果)
配列番号19:GPE−EPの末端配列
配列番号20:GPE−EP発現遺伝子断片(解析結果)
配列番号21:GPE−EP発現遺伝子(解析結果、シグナル含む)
配列番号22:GPE−EP(シグナル含む)
配列番号23:GPE−EP発現遺伝子(成熟部分のコドン)
配列番号24:GPE−EP(ポリペプチド)
配列番号25:GPC−CP発現遺伝子
配列番号26:GPC−CP(ポリペプチド)

Claims (10)

  1. グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、酵素:
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
  2. グリセロール−3−ホスホエタノールアミンを基質としたときに、pH8.4で65℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、30℃から70℃の範囲内で40%以上の加水分解活性を示す、請求項1に記載の酵素。
  3. グリセロール−3−ホスホエタノールアミンを基質としたときに、pH8.4で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH7.2からpH9.5の範囲内で40%以上の加水分解活性を示す、請求項1又は2に記載の酵素。
  4. グリセロール−3−ホスホエタノールアミンを基質としたときに、pH8.4で65℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、グリセロール−3−ホスホグリセロールに対して10%以下、グリセロール−3−リン酸、グリセロール−3−ホスホコリン、グリセロール−3−ホスホイノシトール、およびグリセロ−3−ホスホセリンに対してほぼ0%、リゾホスファチジルエタノールアミンに対して40%以下、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルグリセロールに対してほぼ0%、エタノールアミン型リゾプラズマローゲンに対して40%以下、コリン型リゾプラズマローゲンに対してほぼ0%、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲンに対してほぼ0%、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびホスファチジン酸に対してほぼ0%である基質特異性を有する、請求項1から3のいずれかに記載の酵素。
  5. SDS−PAGEで測定した場合の分子量が60,000〜80,000の範囲内である、請求項1から4のいずれかに記載の酵素。
  6. ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項1から5のいずれかに記載の酵素。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の酵素をコードする、ポリヌクレオチド。
  8. 以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
    (b)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
  9. ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド。
  10. グリセロール−3−ホスホジエステルに対して基質特異的に加水分解作用を有する酵素を製造する方法であって、
    請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドを有する微生物から該酵素を産生させる工程を含む、酵素の製造方法。
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