JPWO2008105509A1 - 選抜工程を経ないアグロバクテリウム菌による形質転換植物の作成方法 - Google Patents

選抜工程を経ないアグロバクテリウム菌による形質転換植物の作成方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、新規のアグロバクテリウム菌による形質転換植物の作成方法を提供することを目的とする。本発明の形質転換方法は、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、(i)3,6−ジクロロ−o−アニシン酸、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸および/または2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸を含む共存培地で培養する共存工程、および(ii)(i)で得られた組織を選抜薬剤を含む再分化培地で培養し再分化させる再分化工程を含み、ここで、共存培養後の組織をオーキシンを含む培地で培養し形質転換体を薬剤選抜する選抜工程を、共存工程と再分化工程の間に含まないことを特徴の1つとする。

Description

本出願は、2007年2月28日に出願された日本国特許出願2007−49172に基づく優先権を主張する。
本発明は、新規のアグロバクテリウム菌による形質転換植物の作成方法に関する。
主要穀類であるトウモロコシ、イネなどの単子葉植物の形質転換方法としては、従来より、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などが知られている。しかし、これらの物理的遺伝子導入方法は多コピーの遺伝子が導入されてしまう、遺伝子の挿入がインタクトな形でなされない、形質転換植物に奇形や不稔が多くみられるなどの問題を有する。
アグロバクテリウム細菌を用いた遺伝子導入法は、双子葉植物の形質転換法として普遍的に用いられている。アグロバクテリウム属細菌の宿主は双子葉植物のみに限られ、単子葉植物には寄生しないとされている(非特許文献1)が、アグロバクテリウムにより単子葉植物を形質転換する試みがなされている。
Grimsley et al.はアグロバクテリウムのT−DNAの中にトウモロコシストリークウイルス(Maize streak virus)のDNAを挿入したものをトウモロコシ生長点に接種したところ、トウモロコシストリークウイルスの感染を確認したことを報告している。トウモロコシストリークウイルスのDNAを接種しただけでは、このような感染症状が認められないことから、上の観察はアグロバクテリウムがトウモロコシにDNAを導入することができることを示すものと解釈している(非特許文献2)。しかし、ウイルスは核ゲノムに組み込まれなくても増殖する可能性があるので、この結果はT−DNAが核に組み込まれたものを示すものではない。Grimsley et al.はさらに感染効率はトウモロコシの茎頂の生長点に接種したときが最も高く(非特許文献3)、感染にはアグロバクテリウムのプラスミドのVir C遺伝子が必須であることを示した(非特許文献4)。
Gould et al.はトウモロコシの生長点に針で傷を付けた後、カナマイシン抵抗性遺伝子とGUS遺伝子を持った強病原性アグロバクテリウムEHA1を接種し、処理後の生長点をカナマイシンで選抜したところ、抵抗性を示す植物を得た。この後代の種子が導入した遺伝子を持つことを確認するためサザン分析を行ったところ、一部の種子で導入遺伝子が確認された(非特許文献5)。このことは、アグロバクテリウム処理された生長点からカナマイシン選抜により得られた植物体には形質転換細胞と非形質転換細胞が混在していたことを示す(キメラ現象)。
Mooney et al.は、アグロバクテリウムを用いてコムギの胚にカナマイシン抵抗性遺伝子の導入を試みた。まず、胚を酵素で処理することにより、細胞壁に傷を付け、その後アグロバクテリウムを接種した。処理したカルスのうち極めて少数のカナマイシン抵抗性と思われるカルスが増殖したが、このカルスから植物体の再生はできなかった。また、カナマイシン抵抗性遺伝子の存在をサザン分析で確認したところ、全ての抵抗性カルスで導入遺伝子の構造変異がみられた(非特許文献6)。
Raineri et al.はイネの胚盤に傷を付けた後、強病原性のアグロバクテリウムA281(pTiBo542)をイネの8品種に処理したところ、日本晴、藤坂5号の2品種で腫瘍状の組織の増殖がみられた。さらに、T−DNAからホルモン合成遺伝子を除いたTiプラスミドにカナマイシン抵抗性遺伝子とGUS遺伝子を挿入したプラスミドを持つアグロバクテリウムをイネの胚に接種したところカナマイシン抵抗性カルスの増殖がみられた。この抵抗性カルスでは、GUS遺伝子の発現が認められたが、形質転換植物を得ることはできなかった。これらのことから、アグロバクテリウムのT−DNAがイネの細胞に導入されたと解釈している(非特許文献7)。
このように、イネ、トウモロコシ、コムギ等のイネ科の作物でもアグロバクテリウムによる遺伝子導入が可能であることを示唆する研究報告がなされていたが、何れも再現性に問題があるほか、導入した遺伝子の確認についても不完全で、説得できる結果が示されていなかった(非特許文献8)。
Chan et al.は2,4−D共存下で2日間培養したイネ未熟胚に付傷後、ジャガイモ懸濁培養細胞を含む培地中でnpt II遺伝子とGUS遺伝子を持ったアグロバクテリウムを接種した。処理した未熟胚をG418添加培地上で培養したところ、誘導されたカルスから再分化植物体が得られた。再分化植物体およびその後代の植物体でのGUS遺伝子の所在をサザン分析で確認したところ、再分化当代、後代いずれの植物体でも導入遺伝子の存在が認められたことを報告している(非特許文献9)。この結果は、アグロバクテリウムによるイネの形質転換を支持するものであるが、形質転換効率は1.6%と非常に低く、供試した未熟胚数250に対し、正常な生長を示した再生植物体は1個体にすぎなかった。イネの未熟胚を摘出するには多大な労力を要するため、このように低い形質転換効率では実用的なレベルにあるとは言い難い。
近年、強病原性アグロバクテリウムの病原性遺伝子の一部を有するスーパーバイナリーベクターの利用により、イネ、トウモロコシなどの単子葉植物においても、安定して、高効率で形質転換のなされることが報告された(非特許文献10および11)。これらの報告では、アグロバクテリウムによる形質転換は、安定して、高効率で形質転換がなされる他に、得られた形質転換植物に変異が少なく、導入された遺伝子はコピー数が少なく、かつインタクトな形のものが多いという利点をもつとしている。イネ、トウモロコシでの成功に続いて、主要な穀類であるコムギ(非特許文献12)、オオムギ(非特許文献13)およびソルガム(非特許文献14)でのアグロバクテリウムによる形質転換の報告がなされた。
Ishida et al.(1996)(非特許文献11)は、トウモロコシインブレッドを材料にアグロバクテリウムによる形質転換を行った。その後、引き続きアグロバクテリウムによるトウモロコシの形質転換の報告がなされている(非特許文献15−21)。アグロバクテリウムによるトウモロコシ形質転換の効率を改善する試みとしては、N6基本培地での形質転換細胞の選抜(非特許文献21)、培地へのAgNO3およびカルベニシリンの添加(非特許文献20および22)、共存培地へのシステインの添加(非特許文献21)などがなされてきた。Ishida et al. (2003)(非特許文献22)は共存培養後のトウモロコシ未熟胚をAgNO3およびカルベニシリンを含む培地で選抜することによりトウモロコシの形質転換効率が向上することを報告した。
このように培地組成や選抜マーカー遺伝子の改変により、アグロバクテリウムによるトウモロコシの形質転換においても効率の向上および適応品種の拡大がなされている。しかし、これまでに報告されているアグロバクテリウムによるトウモロコシの形質転換方法は、そのほとんどが、接種した未熟胚からカルスを誘導し、除草剤の成分や抗生物質を含む培地で形質転換カルスを選択的に増殖させ、得られた形質転換細胞塊を再分化培地に置床するという工程を経て形質転換植物を得ている(非特許文献15−21、23および24)。脱分化組織(カルス)での培養期間は2ヶ月以上の長期におよぶ報告もある(非特許文献20および25)。脱分化状態での長期間の継代培養は体細胞変異を引き起こしやすいことから、なるべく短い期間で再分化植物を得ることができれば、作出された形質転換植物はより原品種に近い形態であることが期待でき、試験研究や新品種育成をする際に大きなメリットとなる。また、短期間で形質転換植物が得られる技術は試験研究や新品種育成の効率的な遂行に寄与する。
さらに脱分化組織での選抜工程は薬剤に耐性を示す形状のよいカルスを顕微鏡下でメスとピンセットにより切り離し、新たな選抜培地および再分化培地に置床するという操作が必要である。この操作は、煩雑で時間がかかり、かつ形状のよいカルスを選別するには相当の熟練を要する。このような選抜培地での選抜工程は、長期間に渡り、操作は煩雑であり、さらに未分化状態での培養は変異を引き起こしやすいというデメリットはあるものの、形質転換植物体を得るためには必須の工程であると考えられている。
アラビドプシスで用いられるインプランタ形質転換法は培養工程を経ないため変異の少ないことが期待できる手法であるが、トウモロコシやイネなどの単子葉植物では適応が困難である。また、茎長組織へのアグロバクテリウムの接種による形質転換植物の作出も報告されているが、効率や再現性に問題があり実用的ではない。
最近、1日間、2,4−Dを含む培地で培養したイネ完熟種子アグロバクテリウムを接種することにより、接種後1ヶ月以内に形質転換植物を得る方法が報告された(非特許文献26)。しかし、この方法も脱分化組織で2週間選抜をする工程を経ている。
特開2000−342255 特開2000−342256 特開2000−23675 特開2000−342253 WO2005/017169 WO2005/017152 De Cleene, M. and De Ley, J. (1976) The host range of crown gall. Bot. Rev. 42:389−466. Grimsley, N., Horn, T., Davis, J.W. and Horn, B. (1987) Agrobacterium−mediated delivery of infectious maize streak virus into maize plants. Nature 325:177−179. Grimsley, N.H., Ramos, C., Hein, T. and Horn, B. (1988) Meristematic tissues of maize plants are most susceptible to Agroinfection with maize streak virus. Bio/technology 6:185−189. Grimsley, N., Horn, B., Ramos, C., Kado, C. and Rogowsky, P. (1989) DNA transfer from Agrobacterium to Zea mays or Brassica by agroinfection is dependent on bacterial virulence functions. Mol. Gen. Genet. 217:309−316. Gould, J., Devey, M., Hasegawa, O., Ulian, E.C., Peterson, G. and Smith, R.H. (1991) Transformation of Zea mays L. using Agrobacterium tumefaciens and shoot apex. Plant Physiol. 95:426−434. Mooney, P.A., Goodwin, P.B., Dennis, E.S. and Llewellyn, D.J. 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本発明は、新規のアグロバクテリウム菌による形質転換植物の作成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究に努めた結果、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、3,6−ジクロロ−o−アニシン酸(ダイカンバ)、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸(ピクロラム)および/または2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)を含む共存培地で培養することにより、従来行われる選抜工程を省略し再分化工程を行っても、前記植物組織は形質転換植物体を得るために十分な再分化率およびビガーを有することを見いだし、本発明を想到した。本発明は、好ましくは以下に記載するような態様により行われるが、これに限定されるものではない。
本発明は、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、(i)3,6−ジクロロ−o−アニシン酸、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸および/または2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸を含む共存培地で培養する共存工程、および(ii)(i)で得られた組織を選抜薬剤を含む再分化培地で培養し再分化させる再分化工程を含み、ここで、共存培養後の組織をオーキシンを含む培地で培養し形質転換体を薬剤選抜する選抜工程を、共存工程と再分化工程の間に含まない、形質転換植物の作成方法を提供する。
本発明の好ましい態様において、共存培地中には3,6−ジクロロ−o−アニシン酸、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸および2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸以外のオーキシン類を含まない。
本発明のさらに好ましい態様において、共存培地中には3,6−ジクロロ−o−アニシン酸以外のオーキシン類を含まない。
また、本発明の好ましい態様において、選抜薬剤は抗生物質または除草剤である。
本発明の好ましい態様において、再分化した植物体が選抜薬剤溶液に浸漬される工程がさらに含まれる。
別の本発明の好ましい態様において、植物組織は単子葉植物の組織由来である。
さらに、本発明の好ましい態様において、植物組織は熱処理および/または遠心処理されている。
また、本発明の好ましい態様において、共存培地は硝酸銀および/または硫酸銅をさらに含む。
以下に、本発明の構成を具体的に説明する。
本発明は、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、(i)3,6−ジクロロ−o−アニシン酸、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸および/または2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸を含む共存培地で培養する共存工程、および(ii)(i)で得られた組織を選抜薬剤を含む再分化培地で培養し再分化させる再分化工程を含み、ここで、共存培養後の組織をオーキシンを含む培地で培養し形質転換体を薬剤選抜する選抜工程を、共存工程と再分化工程の間に含まない、形質転換植物の作成方法を提供する。
アグロバクテリウム菌を用いた植物組織の形質転換は、通常以下の工程により行われる。即ち、(i)植物組織へアグロバクテリウム菌を接種する接種工程、(ii)2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を含む共存培地で培養する共存工程、(iii)2,4−Dおよび選抜薬剤を含む選抜培地で培養する選抜工程、および(iv)選抜薬剤を含む再分化培地で培養する再分化工程である。
上記のような従来の形質転換方法では、共存工程においてオーキシン類としては2,4−Dが多くの場合使用されており、その他のオーキシン類が2,4−Dの代わりに、または2,4−Dと同時に共存培地中で使用することはほとんど行われていなかった。なお、本発明において、「オーキシン」および「オーキシン類」とは、当該技術分野において公知である天然に由来するオーキシンおよび人工的に合成されたオーキシンのいずれをも含み、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、3,6−ジクロロ−o−アニシン酸(ダイカンバ)、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸(picloram;ピクロラム)、2,3,5−トリヨード安息香酸(TIBA)、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)、インドール酢酸(IAA)、インドール酪酸(IBA)およびナフタレン酢酸(NAA)等をいう。
また、従来の共存培地中にオーキシン類として2,4−Dのみを含むアグロバクテリウム菌による形質転換方法では、共存工程の後に形質転換体を遺伝子の導入の有無により選抜する選抜工程が必須である。従来法では、この選抜工程を経なければ、形質転換植物体を得るために十分な形質転換後の再分化率およびビガーを有する植物組織を得ることは困難であった。本発明においては、共存培地中にオーキシン類としてダイカンバ、ピクロラムおよび/または2,4,5−T、好ましくはダイカンバのみを含ませ、共存工程が実行される。このような共存培地の組成を採用することにより、選抜工程を省略し再分化工程をおこなっても、形質転換植物体を得るために十分な形質転換後の再分化率およびビガーを有する植物組織を得ることが可能である。
植物が形質転換されたか否かは、公知の種々の方法により決定可能である。例えば、形質転換する遺伝子をGUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子あるいはGFP遺伝子などのレポーター遺伝子とすることにより、簡便な公知の方法でこれらのレポーター遺伝子の発現部位を目視により形質転換の有無について確認することが可能である。また、抗生物質抵抗性遺伝子や除草剤抵抗性遺伝子などの選抜マーカー遺伝子の発現を抗生物質あるいは除草剤を含む培地で植物細胞を培養することにより、あるいは抗生物質溶液や除草剤溶液を植物に処理することにより、その抵抗性の発現を指標に形質転換の有無を確認することも可能である。
より確実な形質転換がされたか否かの決定は、例えば、サザンハイブリダイゼーション法による植物染色体への導入遺伝子の組み込み、および後代植物での導入遺伝子の発現確認(後代への遺伝)などにより行うことができる。サザンハイブリダイゼーション法は広く知られた方法により行うことができ、例えば、Molecular Cloning (非特許文献29)に記載される方法により行われる。また、後代植物における発現の確認はGUS遺伝子などレポーター遺伝子の発現や除草剤耐性遺伝子など選抜マーカー遺伝子の発現を調査する方法により実行可能である。具体的には、非特許文献11に記載されている方法により行われるが、これに限定されるものではない。
以下において、本発明の植物の形質転換効率を上昇させる方法の各工程について説明する。
(1)アグロバクテリウム菌の接種工程
本発明において使用される植物組織はアグロバクテリウム菌を接種される。本明細書で使用する「接種する」とは、アグロバクテリウム菌を植物組織に接触することをいい、当該技術分野においては種々のアグロバクテリウム菌を接種する方法が公知である。当該方法としては、例えば、アグロバクテリウム菌を液体培地に懸濁した懸濁液に植物組織を加える方法、共存培地上の植物組織にアグロバクテリウム菌の懸濁液を直接滴下する方法、植物組織中にアグロバクテリウム菌懸濁液を注入する方法およびアグロバクテリウム菌懸濁液中に植物組織を浸漬し減圧する方法があげられる。しかしながら、本発明において使用されるアグロバクテリウム菌を接種された植物組織は、これらの方法によりアグロバクテリウム菌を接種された植物組織に限定されない。
当該アグロバクテリウム菌の接種工程においては、アグロバクテリウム菌による形質転換効率を改善するために、例えば、アセトシリンゴン、界面活性剤、多孔性セラミックス等の種々の添加剤をアグロバクテリウム菌の懸濁液中に含ませることが可能である。
本発明に使用可能なアグロバクテリウム菌は公知のいずれのアグロバクテリウム菌であってよい。本発明の好ましい態様において、アグロバクテリウム菌は、例えば、LBA4404、EHA101およびAGL1、C58C1等であるが、これに限定はされない。ベクターにスーパーバイナリーベクター(非特許文献10および11)を使用しない場合には、形質転換効率の観点から、アグロバクテリウムA281(非特許文献31)が有するTiプラスミドpTiBo542を含む菌株を用いることが好ましい。
アグロバクテリウム菌は、アグロバクテリウム菌内のプラスミドのT−DNAの中に挿入された遺伝子を植物のゲノム中に導入する性質を有することが公知である。そのため、本発明で使用可能なアグロバクテリウム菌は、発現させることを意図する遺伝子をT−DNA中に挿入したプラスミドを有する。そして、当該プラスミドを有するアグロバクテリウム菌を植物組織に接種することにより植物を形質転換可能である。これにより、組織中の植物細胞に好ましい形質が付与される。本発明において使用可能なアグロバクテリウム菌用のプラスミドは、例えば、pSB131、U0009B、U0017S、pSB134、pNB131およびpIG121Hm等があげられるが、これに限定される訳ではない。アグロバクテリウム菌株にTiプラスミドpTiBo542を含む菌株を使用しない場合には、形質転換効率の観点から、スーパーバイナリーベクター(非特許文献10および11)を使用することが好ましい。
本発明において使用可能な植物組織が由来する植物は、単子葉植物および双子葉植物であり、好ましくは単子葉植物であり、さらに好ましくはトウモロコシ、コムギ、オオムギであり、最も好ましくはトウモロコシである。また、本発明において使用可能な植物組織は、例えば、植物の細胞、葉、根、茎、実、未熟胚、カルス、花芽、完熟種子の発芽部位、その他いずれの部位の植物組織であってよく、好ましくは未熟胚、花芽および完熟種子の発芽部位であり、最も好ましくは未熟胚である。本明細書において、未熟胚とは受粉後の登熟過程にある未熟種子の胚をいう。本発明の方法に供される未熟胚のステージ(熟期)は特に限定されるものではなく、受粉後いかなる時期に採取されたものであってもよい。最も受粉後7から14日後のものが好ましい。
上記のような植物組織は、形質転換効率を上昇させるために様々な処理をされていることもまた可能である。そのような処理としては、例えば、加熱処理(特許文献1)、遠心処理(特許文献2)、熱および遠心処理(特許文献4)、並びに加圧処理(特許文献5)などがあげられる。
(2)共存工程
本工程は、上記のようにアグロバクテリウム菌を接種した植物細胞を、アグロバクテリウム菌の共存下にて、オーキシン類を含む培地で培養することにより、植物細胞へのアグロバクテリウム菌からDNAの導入を確実にする工程である。本工程で使用される培地は、本明細書中では「共存培地」という。共存培地は、植物細胞を培養するために通常使用されるものでよく、例えば、LS無機塩類(非特許文献32)やN6無機塩類(非特許文献33)を基本とする培地、具体的にはLS−AS培地等があげられる。
共存培地中には、従来の形質転換法によれば、オーキシン類として2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)が含まれる。本発明では、共存培地中に3,6−ジクロロ−o−アニシン酸(ダイカンバ)、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸(ピクロラム)および/または2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)を含むことを特徴の1つとする。本発明の好ましい態様においては、共存培地中にダイカンバ、ピクロラムおよび2,4,5−T以外のオーキシン類は含まない。本発明のさらに好ましい態様においては、共存培地中にはダイカンバ以外のオーキシン類は含まない。
ダイカンバ、ピクロラムおよび/または2,4,5−Tの共存培地中における総量は、従来の方法における2,4−Dの量と同様であってよく、好ましくは、0.5−3.0mg/l、さらに好ましくは、0.5−2.5mg/l、より好ましくは、1.0−2.0mg/l、最も好ましくは、1.5mg/lである。
共存培地中には、ダイカンバ、ピクロラムおよび/または2,4,5−T以外にも、形質転換効率を上昇させるために種々の添加剤を加えることも可能である。このような添加剤は、例えば、硝酸銀(特許文献3)、硫酸銅(非特許文献6)、およびシステイン(非特許文献21)等があげられる。
本工程においては、共存培地中にはオーキシン類としてはダイカンバ、ピクロラムおよび/または2,4,5−Tのみであるか、あるいはダイカンバ、ピクロラムおよび/または2,4,5−Tならびにその他のオーキシン類を含む。オーキシン類は一般に植物組織を脱分化させる作用を有するために、本工程において、ほとんどの植物組織は一部または全部が脱分化組織(カルス)となる。本明細書で使用する、「脱分化組織」または「カルス」の用語は、分化した植物組織の一部(外植片)をオーキシン、サイトカイニン等の植物生長調節物質を含む培地で培養することにより得られる組織で、元来の植物組織としての形態を有さない無定形で未分化状態の細胞塊をいう。
したがって、脱分化組織の状態で共存工程を開始する場合、および分化している植物組織が共存工程中にすべてが脱分化および一部が脱分化する場合等の、脱分化組織が関係するいかなる態様も本発明の範囲内である。
本工程における「培養」とは、固化した共存培地の上または液体状の共存培地の中に植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間で生育させることをいう。共存培地の固化は、当該技術分野において公知の固化剤を添加することにより行うことができ、そのような固化剤としては、例えばアガロース等が知られている。本工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは1日−10日、より好ましくは7日である。
(3)選抜工程
従来のアグロバクテリウム菌による植物の形質転換方法においては、本工程は必須の工程である。しかしながら、本発明においては、本工程を省略し、続く再分化工程に進むことを特徴の1つとする。したがって、本発明では、本工程は必要とされない工程であるが、従来法との差異を明確にするために、従来法における選抜工程を以下に簡単に説明する。
本工程は、上記共存工程を経た植物組織を、オーキシン類を含む培地で培養し、形質転換体を遺伝子の導入の有無により選抜する工程である。本工程で使用される培地は、本明細書中では「選抜培地」といい、遺伝子の導入の有無により選抜するために選抜薬剤等を含んでいる。
本工程は、従来法においては、培地の成分組成を変更して、複数回繰り返して行われている。例えば、複数回の選抜工程では、選抜薬剤の濃度を各選抜工程で上昇させることにより、薬剤選抜の確実性が増し、形質転換をした植物体を得られる可能性を上昇させることが可能となる。本選抜工程は、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは3回行われる。複数回本工程が行われる場合、本工程は1回につき10日−3週間程度の期間を要し、複数回の選抜工程全体で5−10週間程度を要する。よって、アグロバクテリウム菌による植物の形質転換方法において、本工程は最も時間を要する工程である。
(4)再分化工程
本発明は、以上に記載したように、共存工程における共存培地の組成、および従来必須であると考えられていた選抜工程の省略を特徴とするものである。したがって、本発明における再分化工程は、アグロバクテリウム菌による植物の形質転換方法において一般に行われている方法と同様の方法により行われる。以下に記載する再分化工程は、従来法における方法である。以下の記載は例示のためのものであり、本発明は以下の記載により限定されるものではない。
本工程は、従来法においては選抜工程により選抜された組織を、再分化培地で培養し再分化させる工程である。また、本発明においては、上記共存工程を経た組織を再分化培地で培養し再分化させる工程である。したがって、本工程は、従来法および本発明のいずれにおいても必須の工程である。本工程で使用される培地は、本明細書中では「再分化培地」という。再分化培地は、オーキシン類は含まないが、選抜薬剤は含む。再分化培地として使用可能な培地は、例えば、LS無機塩類やN6無機塩類を基本とする培地、例えば具体的にはLSZ培地等が使用可能である。
本発明においても、再分化培地中には選抜薬剤を含む。形質転換植物の選抜は、選抜薬剤を含む再分化培地で、共存工程を経た植物組織を培養し、選抜薬剤に対する耐性の有無により行うことができる。本発明に使用可能な選抜薬剤は、当該技術分野で通常使用されるものを用いることが可能である。例えば、選抜薬剤としては、抗生物質および/または除草剤を使用可能である。抗生物質としては、例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン、またはブラストサイジンS等が使用可能である。さらに、除草剤としては、例えば、フォスフィノスライシン、ビアラフォス、またはグリホセート等が使用可能である。
本工程のために、アグロバクテリウム菌中のT−DNA中に挿入したDNAは、植物に発現させることを意図する遺伝子のみならず、選抜薬剤に対する耐性遺伝子を含むことが必要である。このような選抜薬剤に対する耐性遺伝子は当該技術分野においては公知である。本工程において、例えばハイグロマイシンを選抜薬剤として含む再分化培地において再分化工程が行われる場合、植物にはアグロバクテリウム菌からハイグロマイシン耐性遺伝子が導入されていることが必要である。
あるいは、形質転換植物の選抜は、植物細胞の糖要求性に基づいて行うことが可能である。植物細胞が利用できる糖はシュークロース、グルコースなどがあるが、マンノースは利用できないことが知られている。したがって、マンノースのみを炭素源とする培地で植物組織を培養すると、利用できる糖がないために植物組織は枯死する。糖要求性に基づく選抜はこの原理を利用するものである。即ち、この選抜方法を利用するためには、アグロバクテリウム菌中のT−DNA中に挿入したDNAは、植物に発現させることを意図する遺伝子のみならず、リン酸化マンノースイソメラーゼ(phosphomannose isomerase:PMI)遺伝子を含むことが必要となる。ここで、PMI遺伝子を導入された植物細胞は、マンノースを炭素源として利用できるようになる。したがって、上記のようなアグロバクテリウム菌により形質転換された植物組織のみが、マンノースのみを炭素源とする培地で生育することが可能となり、これにより形質転換植物組織のみを選抜することが可能となる(非特許文献16)。このような方法は、他の糖についても行うことができる。例えば、キシロースイソメラーゼ遺伝子を導入された植物細胞は炭素源としてキシロースを利用することが可能となるため、このような方法に適用可能である。
したがって、糖要求性に基づき形質転換植物の選抜を行う場合には、植物組織には、アグロバクテリウム菌から通常植物細胞が利用できない糖類を利用可能にする遺伝子が導入されている。このような遺伝子は当該技術分野において公知であり、例えば、PMI遺伝子、キシロースイソメラーゼ遺伝子等が使用可能である。また、再分化培地においては、植物細胞が通常使用可能であり、培地中に通常含まれるシュークロースおよびグルコース等が除かれており、代わりに炭素源としては通常の植物細胞が利用できない糖類のみを含む。ここで、「通常の植物細胞が利用できない糖類」とは、野生型の植物細胞には代謝酵素をコードする遺伝子がないために栄養源とすることのできない糖類をいい、例えば、マンノース、キシロース等が含まれる。
また、容易に検出可能な遺伝子をスクリーニングの指標として導入し、当該遺伝子の発現の有無により選抜することも可能である。このようなスクリーニングの指標となる遺伝子としては、GFP遺伝子等があげられる。これらの遺伝子を発現する細胞・組織を検出する方法は当該技術分野において公知である。また、上記のような遺伝子の発現部位をモニターしながら発現部位を切り分けるなどして選抜することが可能である。
本発明における「再分化」とは、全部または一部が脱分化していた植物組織が、再び元の植物組織または植物体の性質を獲得することをいう。本発明においては、共存培地中のオーキシン類の作用により、ほとんどのアグロバクテリウム菌を接種した植物組織の全部または一部において脱分化している。したがって、再分化工程に供することにより、脱分化組織が再分化することにより、完全な形質転換植物体を得ることが可能となる。植物が再分化したか否かは植物の形態を観察することにより容易に決定可能である。例えば、脱分化組織から茎や葉のような特定の分化した植物器官が現れるか否かにより決定することが可能である。
本明細書において、「ビガー」とは、再分化した植物の生育の旺盛さをいう。植物のビガーは当該技術分野で行われる公知の測定方法を用いて測定することが可能である。例えば、トウモロコシの場合は、再分化工程後に、再分化の見られなかった形質転換植物組織を0点、再分化した茎葉の最大長が5mm未満の形質転換植物組織を1点、再分化した茎葉の最大長が5mm以上2cm未満の形質転換植物組織を2点、そして再分化した茎葉の最大長が2cm以上の形質転換植物組織を3点、とスコアリングしすべての形質転換植物組織の平均値を計算することにより求めることが可能である。ビガーの評価方法はこれに限定されることなく評価対象等に依存して、適当な修正を周知の方法に加えることも可能である。
本工程における「培養」とは、固化した再分化培地の上または液体状の再分化培地の中に植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間にて生育させることをいう。再分化培地の固化は、上記のように例えば寒天等により行うことが可能である。本工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは16−24時間/日の照明下で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは7日−21日、より好ましくは14日である。
所望により、本工程の後に、再分化した植物体を選抜薬剤の溶液に浸漬し次の工程に進むことにより、形質転換をした植物体を得られる可能性をさらに上昇させることが可能である。植物体が選抜薬剤の溶液をはじくことを防ぐために、選抜薬剤の溶液に浸漬する際に、再分化した植物体を、例えば減圧処理および/または界面活性剤処理等で処理することが可能である。
本工程の後においては、当該技術分野において公知の方法を用いることにより容易に完全な形質転換植物体を得ることが可能である。
本発明により、アグロバクテリウム菌による植物の形質転換方法において、共存工程後に行われる選抜工程を省略することが可能となった。図3に記載するように、共存培地中にオーキシン類として2,4−Dのみを加え、選抜工程を省略した場合では、再分化率は15.8%、再分化植物のビガーは0.3と非常に低いものであり、この程度の再分化率およびビガーでは形質転換植物体を得るのは非常に困難である。一方、共存培地中にオーキシン類としてダイカンバのみを加え、選抜工程を省略した場合では、再分化率は97.4%、再分化植物のビガーは2.3といずれも非常に高いものであり、選抜工程を経なくとも実用上十分に形質転換植物体を得ることが可能である。
従来、選抜工程は複数回、多くの場合3回行われており、1回につき10日から3週間程度の期間を要していた。よって、本発明により、従来法よりもはるかに短い期間で形質転換植物体を得ることが可能となった。
図1は共存培養後の未熟胚からの植物体の再分化率および再分化植物のビガーに及ぼすオーキシンの種類の影響を示すグラフである。各区25未熟胚を供試した。棒グラフ(縦軸左)は再分化植物のビガーを、折れ線グラフ(縦軸右)は再分化率(各区で再分化のみられた未熟胚の数を接種未熟胚数で除した)を、横軸は共存培養培地に含まれるオーキシンの種類をそれぞれ示す。共存培地中のオーキシンの濃度はいずれも1.5mg/lとした。再分化植物のビガーは再分化のみられなかった未熟胚を0、再分化した茎葉の最大長が5mm未満の未熟胚を1、5mm以上2cm未満の未熟胚を2、2cm以上の未熟胚を3として評価した値である。 図2はアグロバクテリウム菌系LBA4404 (U0009B)が保持するプラスミドU0009Bの構造を示す図である。
プラスミド名: U0009B.prj
プラスミドサイズ: 12347bp
図3は共存培養後の未熟胚からの植物体の再分化率および再分化植物のビガーに及ぼすダイカンバと2,4−Dの割合の影響を示すグラフである。各区38未熟胚を供試した。棒グラフ(縦軸左)は再分化植物のビガーを、折れ線グラフ(縦軸右)は再分化率(各区で再分化のみられた未熟胚の数を接種未熟胚数で除した)を、横軸は共存培養培地に含まれるダイカンバの割合をそれぞれ示す。横軸の数値はダイカンバ 0mg/l, 2.4−D 1.5mg/l(ダイカンバの割合0%)、ダイカンバ 0.375mg/l, 2,4−D 1.125mg/l(ダイカンバの割合25%)、ダイカンバ 0.75mg/l, 2,4−D 0.75mg/l(ダイカンバの割合50%)、ダイカンバ 1.125mg/l, 2,4−D 0.375mg/l(ダイカンバの割合75%)、ダイカンバ 1.5mg/l, 2,4−D 0mg/l(ダイカンバの割合100%)のオーキシンが共存培地に含まれることを示す。再分化植物のビガーは再分化のみられなかった未熟胚を0、再分化した茎葉の最大長が5mm未満の未熟胚を1、5mm以上2cm未満の未熟胚を2、2cm以上の未熟胚を3として評価した値である。 図4はアグロバクテリウム菌系LBA4404(U0017S)が保持するプラスミドU0017Sの構造を示す図である。
プラスミド名: 3428.prj
プラスミドサイズ: 12096bp
以下、実施例によって本発明を説明するが、実施例は例証のためのものであり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲の記載に基づいて判断される。さらに、当業者は本明細書の記載に基づいて、容易に修正、変更を加えることが可能である。
実施例1
種々のオーキシンを添加した共存培地で培養した未熟胚からの植物体の再分化
材料および方法
受粉後7から14日目のトウモロコシ(品種:A188)の未熟胚(大きさ1.0−1.5mm)を無菌的に採取し、LS−inf液体培地(非特許文献11)で1回洗浄した。遺伝子導入効率を高めるための前処理(46℃、3分間の熱処理および15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むLS−inf液体培地に約1.0x109cfu/mlでアグロバクテリウム菌系LBA4404(pSB134)(非特許文献27)を懸濁し接種源とした。熱・遠心処理した未熟胚に接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)を除き、5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地(非特許文献11、固化剤は8g/lアガロース)に1.5mg/lの濃度で2,4,5−T(2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸)、ピクロラム(4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸)、TIBA(2,3,5−トリヨード安息香酸)、ダイカンバ(3,6−ジクロロ−o−アニシン酸)をそれぞれ添加した共存培地にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤が上になるように置床した。対照の培地は5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地(固化剤は8g/lアガロース)とした。
25℃、暗黒下で7日間培養した未熟胚を10μM CuSO4、30mg/lハイグロマイシンを含むLSZ培地(非特許文献11)に置床し、25℃、照明下で約2週間培養した。植物体の再分化のみられた未熟胚の数および再分化植物のビガーを調査した。
結果
TIBA以外のオーキシンを含む共存培地で培養した未熟胚からは、いずれも70%以上の高い効率で植物体の再分化がみられた。再分化培地に未熟胚を置床後2週間目に再分化した植物体の生育程度を0(生育停止)から3(旺盛に増殖)の4段階に評価した。その結果、2,4−Dを含む共存培地で培養した未熟胚から再分化した植物は、ダイカンバ、ピクロラムおよび2,4,5−Tをそれぞれ含む共存培地で培養した未熟胚から再分化した植物に比べ生育が劣った(図1)(表1)。
Figure 2008105509
実施例2
共存培地中のダイカンバと2,4−Dが再分化に及ぼす影響
材料および方法
pSB11(非特許文献28)を基本骨格とするベクターに必要なエレメントを付加し、図2、配列番号1のベクターU0009Bを構築した。実施例1と同様の方法でアグロバクテリウム菌系LBA4404(U0009B)を接種した未熟胚(品種A188)を培地中のオーキシンをダイカンバ 0mg/l,2.4−D 1.5mg/l(ダイカンバの割合0%)、ダイカンバ 0.375mg/l, 2,4−D 1.125mg/l(ダイカンバの割合25%)、ダイカンバ 0.75mg/l, 2,4−D 0.75mg/l(ダイカンバの割合50%)、ダイカンバ 1.125mg/l, 2,4−D 0.375mg/l(ダイカンバの割合75%)、ダイカンバ 1.5mg/l, 2,4−D 0mg/l(ダイカンバの割合100%)にそれぞれ改変した5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地(固化剤は8g/lアガロース)に置床した。25℃、暗黒下で7日間培養した未熟胚を10μM CuSO4、30mg/lハイグロマイシンを含むLSZ培地(非特許文献11)に置床し、25℃、照明下で約2週間培養した。植物体の再分化のみられた未熟胚の数および再分化植物のビガーを調査した。
結果
いずれの共存培地で培養した未熟胚からも植物体の再分化はみられたが、共存培地中のダイカンバの割合が高いほど再分化率は高く、再分化した植物の生育も旺盛であった(図3)。
実施例3
再分化培地中のハイグロマイシン濃度が形質転換効率に及ぼす効果
材料および方法
実施例1と同様の方法でアグロバクテリウム菌系LBA4404(pSB134)を接種した未熟胚(品種A188)を2,4−Dを除き、5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地(非特許文献11、固化剤は8g/lアガロース)に1.5mg/lの濃度でダイカンバを添加した共存培地に置床した。
25℃、暗黒下で3日間培養した後、10μM CuSO4および0,15,30,50,75mg/lのハイグロマイシンをそれぞれ含むLSZ培地(非特許文献11)に置床し、25℃、照明下で約2週間培養した。植物体の再分化のみられた未熟胚の数および再分化植物でのGUS遺伝子の発現を調査した。
結果
ハイグロマイシンを含まない再分化培地では置床したすべての未熟胚から植物体の再分化がみられた。しかし、そのほとんどがGUS遺伝子の発現を示さず、発現を示す個体はいずれもドット状あるいはストライプ状の発現で葉全体で一様にGUS発現を示す個体はみられなかった。ハイグロマイシン15mg/lを含む再分化培地で再分化した植物も同様の結果を示した。30mg/l以上のハイグロマイシンを含む再分化培地に置床した未熟胚では、15mg/lのハイグロマイシンあるいはハイグロマイシンを含まない培地に比べ再分化率は低かった。しかし、再分化のみられた植物の多くがGUS遺伝子の発現を示し、葉全体で一様な発現を示す個体も、接種した未熟胚の9.1−19.0%でみられた。また、ハイグロマイシンを30mg/l以上含む培地で再分化した植物のうち、葉が緑色と白色のストライプ状を呈する個体がみられた。これらの個体をGUSアッセイすると、緑色を呈する部分でのみGUS遺伝子の発現がみられた(表2)。
Figure 2008105509
実施例4
ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子を選抜マーカーとした形質転換
材料および方法
pSB11を基本骨格とするベクターに必要なエレメントを付加し、図4、配列番号2のベクターU0017Sを構築した。実施例1と同様の方法でアグロバクテリウム菌系LBA4404(U0017S)を接種した未熟胚(品種A188)を2,4−Dを除き、5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地(非特許文献11、固化剤は8g/lアガロース)に1.5mg/lの濃度でダイカンバを添加した共存培地に置床した。
25℃、暗黒下で3日間培養した後、10μM CuSO4および2mg/lのブラストサイジンSを含むLSZ培地(非特許文献11)に置床し、25℃、照明下で約2週間培養した。植物体の再分化のみられた未熟胚の数および再分化植物でのGUS遺伝子の発現を調査した。
結果
接種した未熟胚のほとんどから植物体の再分化がみられた。これらの植物の葉の一部を切り取りGUSアッセイしたところ、接種した未熟胚の41.3%にあたる19個体で葉全体でのGUS遺伝子の発現を示した。また、14個体はドット状あるいはストライプ状の発現を示し、12個体はGUS陰性であった。このようにブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子を選抜マーカーとした場合も高い効率で形質転換植物が短期間で得られることが示された(表3)。
Figure 2008105509
実施例5
発根培地置床前の選抜圧処理による効果
材料および方法
実施例1と同様の方法でアグロバクテリウム菌系LBA4404(U0009B)を接種した未熟胚(品種A188)を2,4−Dを除き、5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地(非特許文献11、固化剤は8g/lアガロース)に1.5mg/lの濃度でダイカンバを添加した共存培地に置床した。25℃、暗黒下で3日間培養した後、10μM CuSO4および5mg/lのPPTを含むLSZ培地(非特許文献11)に置床し、25℃、照明下で約2週間培養した。植物体の再分化のみられた未熟胚を0.3% Basta溶液に浸漬し、減圧処理した。常圧に戻した後、発根培地に置床し25℃、照明下で培養した。植物体の生育状況を発根培地置床後12日目に、再分化植物のGUS発現を21日目にそれぞれ調査した。
結果
供試した78個体のうち、25個体が置床時のまま生育しないか枯死をした。残りの生育のみられた個体を地上部の生育状態と発根の有無で3つのランクに分けた。地上部の生育が良好と判定された植物は発根の有無に関わらず、ほとんどの個体でGUS遺伝子の発現がみられた。また、地上部の生育が遅延し、発根もみられなかった個体も半数以上がGUS遺伝子の発現を示した。これらのことから、bar遺伝子を選抜マーカーとした形質転換体は再分化後、選抜圧であるPPTを主成分とする除草剤Basta溶液で処理することにより、エスケープ個体を除き、効率的に形質転換植物を選抜できることが明らかとなった(表4)。
Figure 2008105509
実施例6
ドット状、ストライプ状にGUS遺伝子を発現する個体の着位葉別のGUS発現
材料および方法
実施例4で得られたGUS遺伝子の発現を示す形質転換植物を温室で栽培した。開花時の植物の各着位の葉の一部を切り取り、GUSアッセイを行った。
結果
再分化直後のGUSアッセイの結果、葉全体で一様にGUS遺伝子の発現がみられた個体はいずれの着位の葉も同様に一様に強いGUS遺伝子の発現を示した。これに対し、ストライプ状およびドット状の発現を示した個体はいずれの着位の葉もストライプ状あるいはドット状の発現を示した(表5)。
Figure 2008105509
実施例7
後代植物での導入遺伝子の発現
材料および方法
実施例4で得られたGUS遺伝子の発現を示す形質転換植物を温室で栽培した。抽出した雄穂を開花前に取り除き、雌穂から抽出した絹糸に形質転換をしていないA188の花粉を交配した。得られた種子を播種し、播種後7日目の幼苗の葉の一部を切り取り、GUSアッセイを行った。
結果
再分化直後のGUSアッセイにおいて、葉全体で一様にGUS遺伝子の発現がみられた個体の後代植物は葉全体で一様にGUS遺伝子の発現を示す個体とGUS陰性の個体に分離した。その比はいずれも1:1で、導入遺伝子がメンデルの法則に従って後代に遺伝することが示された。また、再分化直後にストライプ状の発現を示した個体の後代植物も葉全体で一様にGUS遺伝子の発現を示す個体とGUS陰性の個体に分離し、ストライプ状にGUS遺伝子を発現する後代植物はみられなかった。GUS陽性と陰性の比はいずれも1:1で、形質転換当代の植物でストライプ状にGUS遺伝子を発現する個体においても導入遺伝子がメンデルの法則に従って後代に遺伝することが示された(表6)。
Figure 2008105509
実施例8
サザン分析
材料および方法
実施例4で得られたGUS遺伝子の発現を示す形質転換植物の葉から小鞠らの方法(非特許文献29)に従いDNAを抽出した。抽出したDNAに制限酵素BamHIを処理し、GUS遺伝子をプローブとしたサザン法による導入遺伝子の検出を行った。サザン法はMolecular Cloning(非特許文献30)に記載の方法に従って行った。
結果
いずれの形質転換体もGUSプローブにハイブリダイズするバンドを示した。そのパターンは形質転換体ごとに異なり、導入遺伝子が植物の染色体上にランダムに挿入されていることが示された。GUS陽性を示した個体のバンド数は1−4本で、挿入された導入遺伝子のコピー数はいずれも少ないことが明らかとなった(表6)。

Claims (8)

  1. アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、(i)3,6−ジクロロ−o−アニシン酸、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸および/または2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸を含む共存培地で培養する共存工程、および(ii)(i)で得られた組織を選抜薬剤を含む再分化培地で培養し再分化させる再分化工程を含み、
    ここで、共存培養後の組織をオーキシンを含む培地で培養し形質転換体を薬剤選抜する選抜工程を、共存工程と再分化工程の間に含まない、形質転換植物の作成方法。
  2. 共存培地中に3,6−ジクロロ−o−アニシン酸、4−アミノ−3,5,6−トリクロロピコリン酸および2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸以外のオーキシン類は含まない、請求項1の方法。
  3. 共存培地中に3,6−ジクロロ−o−アニシン酸以外のオーキシン類は含まない、請求項1または2の方法。
  4. 選抜薬剤が抗生物質、除草剤あるいは通常の植物細胞が利用できない糖類である、請求項1−3のいずれか1項の方法。
  5. 再分化した植物体を選抜薬剤溶液に浸漬する工程をさらに含む、請求項1−4のいずれか1項の方法。
  6. 植物組織が単子葉植物の組織由来である、請求項1−5のいずれか1項の方法。
  7. 植物組織が熱処理および/または遠心処理されている、請求項1−6のいずれか1項の方法。
  8. 共存培地が、硝酸銀および/または硫酸銅をさらに含む、請求項1−7のいずれか1項の方法。
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