JP5766605B2 - アグロバクテリウム菌を用いた、コムギ属の植物へ遺伝子導入を行う方法、コムギ属の植物の形質転換植物の作成方法 - Google Patents

アグロバクテリウム菌を用いた、コムギ属の植物へ遺伝子導入を行う方法、コムギ属の植物の形質転換植物の作成方法 Download PDF

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Description

本発明は、アグロバクテリウム属細菌を介してコムギ属の植物へ遺伝子導入を行う方法に関する。本発明は更に、アグロバクテリウム属細菌を介して、コムギ属の植物の形質転換植物を作成する方法に関する。
主要穀類であるコムギ、トウモロコシ、イネなどの単子葉植物の形質転換方法としては、従来より、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などが知られている。しかし、これらの物理的遺伝子導入方法は多コピーの遺伝子が導入されてしまう、遺伝子の挿入がインタクトな形でなされない、形質転換植物に奇形や不稔が多くみられるなどの問題を有する。
アグロバクテリウム属細菌を用いた遺伝子導入法は、双子葉植物の形質転換法として普遍的に用いられている。アグロバクテリウム属細菌の宿主は双子葉植物のみに限られ、単子葉植物には寄生しないとされている(非特許文献1)が、アグロバクテリウムにより単子葉植物を形質転換する試みがなされている。
1990年当時、イネ、トウモロコシ、コムギ等のイネ科の作物でもアグロバクテリウムによる遺伝子導入が可能であることを示唆する研究報告がなされたが、何れも再現性に問題があるほか、導入した遺伝子の確認についても不完全で、説得できる結果が示されていなかった(非特許文献2)。
アグロバクテリウム法における改良
近年、強病原性アグロバクテリウムの病原性遺伝子の一部を有するスーパーバイナリーベクターの利用により、イネ、トウモロコシなどの単子葉植物においても、安定して、高効率で形質転換のなされることが報告された(非特許文献3および4)。これらの報告では、アグロバクテリウムによる形質転換は、安定して、高効率で形質転換がなされる他に、得られた形質転換植物に変異が少なく、導入された遺伝子はコピー数が少なく、かつインタクトな形のものが多いという利点をもつとしている。イネ、トウモロコシでの成功に続いて、オオムギ(非特許文献6)およびソルガム(非特許文献7)等でのアグロバクテリウムによる形質転換の報告がなされた。
Ishida et al. (1996)(非特許文献4)は、トウモロコシインブレッドを材料にアグロバクテリウムによる形質転換を行った。その後、引き続きアグロバクテリウムによるトウモロコシの形質転換の報告がなされている(非特許文献8−10)。アグロバクテリウムによるトウモロコシ形質転換の効率を改善する試みとしては、N6基本培地での形質転換細胞の選抜(非特許文献9)、培地へのAgNOおよびカルベニシリンの添加(非特許文献9、11)、共存培地へのシステインの添加(非特許文献10)などがなされてきた。Ishida et al. (2003)(非特許文献11)は共存培養後のトウモロコシ未熟胚をAgNOおよびカルベニシリンを含む培地で選抜することによりトウモロコシの形質転換効率が向上することを報告した。
Hiei et al. (2006)(非特許文献12)はアグロバクテリウムを接種する前のイネおよびトウモロコシの未熟胚に熱処理や遠心処理をすることにより形質転換効率が高まること、およびこれまで形質転換できなかった品種でも形質転換体が得られることを報告した。また、Hiei and Komari (2006)(非特許文献13)は共存培養培地の組成およびゲル化剤を改変することにより、インディカイネでの形質転換効率の高まることを報告した。
このように培地組成や選抜マーカー遺伝子の改変、材料となる植物組織片への前処理などの工夫により、アグロバクテリウムによるイネおよびトウモロコシの形質転換においては、最初の報告に比べ、格段の効率の向上および適応品種の拡大がなされている。
未熟胚の利用
アグロバクテリウムによる単子葉穀物の形質転換の材料として、未熟胚および短期間培養した未熟胚は最適であり、トウモロコシ、コムギ、オオムギなどの作物において、未熟胚はアグロバクテリウム感染の主要なターゲットである(Cheng et al. (2004):非特許文献14)。
主要穀類の中で、トウモロコシおよびソルガムでは、単離直後の未熟胚にアグロバクテリウムを接種、共存培養し、その後、形質転換細胞および形質転換植物の選抜を行っている。(Frame et al. (2006):非特許文献15, Ishida et al. (2007):非特許文献16, Zhao et al. (2000):非特許文献7, Gurel et al. (2009):非特許文献17)。
単離直後の未熟胚を材料としたイネの形質転換においては、アグロバクテリウムを接種し共存培養した後の未熟胚から胚軸が切除されたものを利用している。共存培養後に胚軸を取り除くのは、共存培養中に伸長した芽や根を取り除くためである(Hiei and Komari (2006):非特許文献13, Datta and Datta (2006):非特許文献18)。
また、オオムギではアグロバクテリウムを接種する前の未熟胚から胚軸が切除されるか、あるいは胚軸が付傷され、その後アグロバクテリウムの形質転換に供されている(Tingay et al. (1997):非特許文献6, Sharawat et al. (2007):非特許文献19)。単離したオオムギの未熟胚から胚軸を取り除くのは困難で、申し分のない未熟胚をいつも得るには、数日間の練習が必要である(Jacobsen et al., (2006):非特許文献20)。この煩雑な操作は、未熟胚からのカルス形成率を高めるために行われる(Sharawat et al. (2007):非特許文献19)。
このように上述の穀類では未熟胚を形質転換の材料とする場合、未熟胚からの胚軸の除去の有無、更には胚軸を取り除く場合にはその操作を行う時期が、作物の種類により明瞭に区別されている。
主要穀類の一つであるコムギについても、未熟胚を材料としてアグロバクテリウムによる形質転換植物の作出を試みた報告がされている。
例えば、Cheng et al.(1997)(非特許文献5)により、コムギ(品種Bobwhite)の未熟胚、前培養した未熟胚および未熟胚由来のカルスにアグロバクテリウム菌を接種し、G418を含む培地で形質転換細胞および植物の選抜を行い、0.14から4.3%の効率で形質転換体を得たことが報告されている。その後、アグロバクテリウムによる形質転換コムギ作出の報告がなされたが、Cheng et al.(1997)(非特許文献5)の最初の報告から10年以上経過した今日でもその効率はほとんどの報告で5%未満であり、適応品種も限られている。さらに、既報の結果が再現しにくい、実験により結果がばらつく、良好な植物材料を得ることができる時期が限られるなどの問題がある。
また、コムギに関しては、材料として未熟胚を利用した報告において、胚軸を取り除くとしている報告もあれば、胚軸の切除の操作には言及していないものも多く、一貫性がない(Przetakiewicz et al. (2004):非特許文献21, Jones et al. (2005):非特許文献22, Wan and Layton (2006):非特許文献23, Wu et al. (2008):非特許文献24, Khanna and Daggard (2003):非特許文献25)。このうち、コムギの形質転換において胚軸を取り除く処理を行っているものは、いずれの報告もアグロバクテリウムを接種する前の未熟胚から切除している。
さらに、形質転換の材料となるコムギ未熟胚の胚軸の切除について、Jones et al. (2005):非特許文献22)の文献中に、「未熟胚を使用するとき、早熟な接合子の発芽(precocius zygotic germination)は重要な問題であるが、ダイカンバやアブシジン酸や高濃度の2,4−Dのような植物ホルモンの培養培地への添加により抑制することができる。いくらかの著者は接合子の発芽を防止するために胚軸を除くあるいは付傷することを明言している」という記載がある。上記記載より、コムギの形質転換において未熟胚を使用する場合、植物ホルモン等を使用すれば、未熟胚の発芽の問題は解消され、特に胚軸の処理は必要ないと解される。
また、コムギの未熟種子の標的組織(胚)について、該植物が天然植物環境中に存在する時点においてアグロバクテリウムを接種し、該アグロバクテリウムと共存培養を行い、その後に標的組織の脱分化および再生を介して形質転換植物を得ることが開示されているが、これらの文献中にコムギ未熟胚の胚軸処理についての記載がある(特表2002−541853(特許文献1)、 Risacher et al. (2009):非特許文献33)。特許文献1においては、アグロバクテリウムを接種して該アグロバクテリウムと共存培養をした後に胚軸を削除しているが、当該文献ではGUS(β−グルクロニダーゼ)の発現を評価した後に胚軸を除去している。これは即ち、遺伝子導入がされた後に胚軸を削除することを意味する。加えて特許文献1に開示された技術においては、天然植物環境中、すなわち、コムギ未熟種子の胚がその植物に付着している状態でアグロバクテリウムを接種している。
非特許文献33においては、特許文献1と同様の手法により標的組織(胚)の大きさが約1mmのコムギ未熟種子にアグロバクテリウムを接種した後、未熟種子を穂に付いたまま2から3日間保存している。その後、種子から未熟胚を単離し、アグロバクテリウムを除菌するための抗生物質を含む培地に置床後、5日間培養している。その後、培養後の未熟胚から胚軸を切除し、さらに同培地で7日間培養後、形質転換細胞の選抜、再分化を行なっている。
以上述べてきたように、アグロバクテリウムによるコムギの形質転換において、従来の方法で形質転換植物を得ることはできるものの、同じ単子葉作物のイネやトウモロコシに比して形質転換効率ははるかに低く、実験の再現性にも問題があった。よってさらに高い効率で形質転換体の得られる再現性の高い方法の開発が望まれていた。またコムギにおいて胚軸を切除することについても、その切除を行う時期については種々の報告があり一定した知見が未だ得られていない。
特表2002―541853 WO1998/054961 WO2002/012520 特開2000−023675 WO2002/012521 WO2005/017169 WO2005/017152 WO2007/069643
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本発明は、従来公知のアグロバクテリウム法と比較して高い効率で形質転換することを可能とする、コムギ属(Triticum)の植物へ遺伝子導入を行う方法、および、コムギ属の形質転換植物の作成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究に努めた結果、アグロバクテリウム菌を接種したコムギ属植物の未熟胚または完熟種子の組織を、共存培地で培養する共存工程と同時におよび/または該共存工程に次いで、幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷することにより、従来法に比べて、コムギ属植物の形質転換効率が向上することを見いだし、本発明を想到した。
本発明は、好ましくは以下に記載するような態様により行われるが、これに限定されるものではない。
[態様1]
コムギ属(Triticum)の植物の、未熟胚または完熟種子の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)アグロバクテリウム菌を接種した上記組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行い、
(ii)該共存工程と同時におよび/または該共存工程に次いで、上記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行う、
ことを含む、上記方法。
[態様2]
コムギ属(Triticum)の植物の、形質転換植物の作成方法であって、
(i)アグロバクテリウム菌を接種した、未熟胚または完熟種子の組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行い、
(ii)該共存工程と同時におよび/または該共存工程に次いで、上記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行い、
(iii)上記組織をレスティング培地で培養するレスティング工程を行い、そして、
(iv)上記組織を再分化培地で再分化させる工程を行う
ことを含む、上記方法。
[態様3]
前記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷することが、組織から幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を取り除くことである、態様1又は2記載の方法。
[態様4]
前記共存工程と同時におよび/または該共存工程開始後7日以内に、前記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行う、態様1ないし3のいずれか1に記載の方法。
[態様5]
前記共存工程開始後1日ないし3日で、前記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行う、態様1ないし3のいずれか1に記載の方法。
[態様6]
前記共存培地が植物成長調節物質を含まない培地である、態様1ないし5のいずれか1に記載の方法。
[態様7]
以下の形質転換効率向上処理のうち、少なくとも1つを行う、態様1ないし6いずれか1に記載の方法。
a)遠心処理;
b)硝酸銀および/または硫酸銅の共存培地への添加;
c)熱処理;
d)熱及び遠心処理;
e)加圧処理
f)粉体の存在下でアグロバクテリウムを接種する処理;
g)共存培地にシステインを添加する処理
[態様8]
以下の、a)及び/又はb)の形質転換効率向上処理を行う、態様1ないし6いずれか1に記載の方法。
a)遠心処理;
b)硝酸銀および/または硫酸銅の共存培地への添加
[態様9]
上記(iii)レスティング工程と、(iv)再分化工程の間に薬剤選抜工程を含む、態様2ないし8のいずれか1に記載の方法。
[態様10]
(iii)レスティング培地、および/または、薬剤選抜工程の選抜培地が、植物成長調節物質を含む、態様2ないし9いずれか1に記載の方法。
[態様11]
前記アグロバクテリウム菌が、LBA4404、EHA101、EHA105、AGL1C、および58C1からなる群から選択される菌である、態様1ない10のいずれか1に記載の方法。
[態様12]
コムギ属の植物がパンコムギ(T.aestivum)またはマカロニコムギ(T.durum)である、態様1ないし11のいずれか1に記載の方法。
本発明により、高い効率でコムギ属の植物の形質転換を行うことが可能となった。これにより、形質転換した植物体を安定して再現性よく得ることが可能となり、当該植物体を得るためのコストを削減することも可能となる。
図1はアグロバクテリウムを接種したコムギ未熟胚からのカルス形成に、幼根、幼芽、および胚軸の切除が及ぼす影響を示すグラフである。各区36−43の未熟胚を供試した。なお図1の実験においては、アグロバクテリウム接種後、幼根、幼芽、および胚軸の切除まで、コムギ未熟胚を共存培地に置床した。縦軸は未熟胚からのカルス形成指数を、横軸は未熟胚から幼根、幼芽、および胚軸を切除しレスティング培地に置床するまでの、アグロバクテリウム接種後の日数を示す。カルス形成指数は、接種後9日目に個々の未熟胚について、1(胚盤の半分以上がカルス化)、0.5(胚盤の一部がカルス化)、0(カルス形成なし)の3段階で評価した値である。横軸の、「0日」はアグロバクテリウム接種前に胚軸を切除した未熟胚を示す。「2日無切除」は胚軸を切除せずにアグロバクテリウム接種後、胚軸を切除せずにアグロバクテリウム接種後2日目にレスティング培地に置床した未熟胚を示す。 図2はアグロバクテリウムを接種したコムギ未熟胚からのカルス形成に、幼根、幼芽、および胚軸の切除が及ぼす影響を示すグラフである。なお図2の実験においては、何日目に切除を行うかに関わらず、接種して共存培養開始後2日目に、コムギ未熟胚をレスティング培地に置床した。縦軸は未熟胚からのカルス形成指数を、横軸は未熟胚から幼根、幼芽、および胚軸を切除するまでの、アグロバクテリウム接種後の日数を示す。カルス形成指数の求め方は図1と同様である。横軸の、「0日」はアグロバクテリウム接種前に胚軸を切除した未熟胚を示す。「無切除」は胚軸を切除せずにアグロバクテリウム接種後、胚軸を切除せずにアグロバクテリウム接種後2日目にレスティング培地に置床した未熟胚を示す。 図3は、遠心処理の時期が形質転換効率に及ぼす影響を検討した結果を表すグラフである。図3において、A区は未熟胚にアグロバクテリウムを接種する前に、15,000rpm、10分間の遠心処理を行った実験区である。B区は未熟胚にアグロバクテリウムを接種し、幼根、幼芽および胚軸を切除した後に、15,000rpm、10分間の遠心処理を行った実験区である。C区は未熟胚にアグロバクテリウムを接種し、15,000rpm、10分間の遠心処理を行った後に、幼根、幼芽および胚軸の切除を行った実験区である。レスティング培地で5日間培養後の未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した。各区19から25個の未熟胚について評価を行い、その平均値を図3の縦軸に示した。すなわち、図3において縦軸はGUS遺伝子の発現により評価した遺伝子導入効率を示す。 図4は共存培地へ添加した5μMの植物ホルモンの添加が、形質転換効率に及ぼす影響を検討した結果を表すグラフである。図4における3つのカラムは左から、植物ホルモンを添加しない実験区、5μMのカイネチンを添加した実験区、および、5μMの4PUを添加した実験区を、それぞれ示す。レスティング培地で5日間培養後の未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した。各区16から17個の未熟胚について評価を行い、その平均値を図4の縦軸に示した。すなわち、図4において縦軸は各実験区の遺伝子導入効率をGUS遺伝子の発現により評価した結果を示す。 図5は共存培地へ添加した0.5μMの植物ホルモンの添加が、形質転換効率に及ぼす影響を検討した結果を表すグラフである。図5における4つのカラムは左から、植物ホルモンを添加しない実験区、0.5μMの2,4―Dを添加した実験区、0.5μMのピクローラムを添加した実験区、および、0.5μMのダイカンバを添加した実験区を、それぞれ示す。レスティング培地で5日間培養後の未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した。各区10個の未熟胚について評価を行い、その平均値を図5の縦軸に示した。すなわち、図5において縦軸は各実験区の遺伝子導入効率をGUS遺伝子の発現により評価した結果を示す。 図6は共存培地へ添加した5μMの植物ホルモンの添加が、形質転換効率に及ぼす影響を検討した結果を表すグラフである。図6における4つのカラムは左から、植物ホルモンを添加しない実験区、5μMのピクローラムを添加した実験区、5μMの2,4―Dを添加した実験区、および、5μMのダイカンバを5μM添加した実験区を、それぞれ示す。レスティング培地で5日間培養後の未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した。各区18から19個の未熟胚について評価を行い、その平均値を図6の縦軸に示した。すなわち、図6において縦軸は各実験区の遺伝子導入効率をGUS遺伝子の発現により評価した結果を示す。
発明の実施をするための形態
以下に、本発明の構成を具体的に説明する。
本発明は、コムギ属(Triticum)の植物の、未熟胚または完熟種子の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)アグロバクテリウム菌を接種した上記組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行い、
(ii)該共存工程と同時におよび/または該共存工程に次いで、上記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行う、
ことを含む、遺伝子導入方法を提供する。
更に本発明は、コムギ属(Triticum)の植物の、形質転換植物の作成方法であって、
(i)アグロバクテリウム菌を接種した、未熟胚または完熟種子の組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行い、
(ii)該共存工程と同時におよび/または該共存工程に次いで、上記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行い、
(iii)上記組織をレスティング培地で培養するレスティング工程を行い、そして、
(iv)上記組織を再分化培地で再分化させる工程を行う
ことを含む、上記方法を提供する。
本発明において使用可能な植物組織が由来する植物はコムギ属の植物である。なお本明細書における「コムギ属」の植物の例として、それで限定されるものではないが、1粒系のコムギとして、T.aegilopoides、T.thaoudar、および、T.monococcum(1粒コムギ)を、2粒系のコムギとして、T.dicoccoides、T.dicoccum(2粒コムギ、エンマーコムギ)、T.pyromidale、T.orientale(コーランサンコムギ)、T.durum(デュラムコムギ、マカロニコムギ)、T.turgidum(リベットコムギ)、T.polonicum(ポーランドコムギ)、および、T.persicum(ペルシャコムギ)を、並びに3粒系のコムギとして、T.aestivum(普通コムギ、パンコムギ)、T.spelta(スペルトコムギ)、T.compactum(クラブコムギ、密穂コムギ)、T.sphaerococcum(インド矮性コムギ)、T.maha(マカコムギ)、および、T.vavilovii(バビロビコムギ)を挙げることができる。本発明においてパンコムギ(T.aestivum)またはマカロニコムギ(T.durum)は好適であり、パンコムギ(T.aestivum)はとりわけ好適である。
また、本発明において使用可能な植物組織は、未熟胚および完熟種子であり、好ましくは未熟胚である。本明細書において「未熟胚」とは、受粉後の登熟過程にある未熟種子の胚をいう。本発明の方法に供される未熟胚のステージ(熟期)は特に限定されるものではなく、受粉後いかなる時期に採取されたものであってもよいが、受粉後7から21日後のものが好ましい。また本明細書において「完熟種子」とは、受粉後の登熟過程が終了して種子として完熟しているものをいう。
以下、上記の各工程について詳しく説明する。
1.本発明の各工程について
本発明の遺伝子導入方法及び形質転換植物の作成方法は、アグロバクテリウム細菌を利用する。特に明記する工程以外は、公知のアグロバクテリウム細菌を利用した遺伝子導入方法、形質転換方法の各工程に従って行うことが可能である。
(1)共存工程について
本発明において、アグロバクテリウム菌を接種した、未熟胚または完熟種子の組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行う。本工程は、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、アグロバクテリウム菌の共存下にて培養することにより、アグロバクテリウム菌から植物細胞へのDNAの導入を確実にする工程である。
本発明の遺伝子導入方法と形質転換植物の作成方法では、好ましくは、使用可能な植物組織を、コムギ属植物の植物体から単離・採取してから用いる。よって本発明においては、コムギ属植物の植物体から組織(未熟胚、完熟種子)をまず単離・採取し、単離・採取されたその組織にアグロバクテリウム菌の接種を行う。
本発明において、使用する植物組織が未熟胚の場合、その大きさは特に限定される訳ではない。例えば、非特許文献33で用いられているコムギ未熟胚は1mmの大きさであり、また、Jones et al. (2005)(非特許文献34)には、コムギの形質転換に使用する未熟胚の大きさは0.8−1.5mmの大きさでなければならないと記載されている。
しかし、本発明者らは、コムギにおいては、一定以上の大きさを有する方が,形質転換効率が一層向上することを見出した(実施例10)。従って、本発明において使用されるコムギ未熟胚は、一定以上の大きさを有することが好ましい。限定されるわけではないが、アグロバクテリウム接種時のコムギ未熟胚は、1.2mm以上の大きさが好ましく、さらに好ましくは1.5mmを超える大きさであり、最も好ましくは2.2mm以上である。
なお、更に本発明で使用されるコムギ未熟胚の大きさの上限も特に限定されるものではなく、遺伝子導入の対象となるコムギ属植物から得られる最大の未熟胚であってよい。例えばFielder品種から得られる最大の未熟胚は、通常3.0mm程度の大きさであるが、そのような未熟胚も好適に利用することができる。
上記のような植物組織は、形質転換効率を上昇させるための様々な処理がなされていてもよい。このような処理としては、例えば、加熱処理(特許文献2)、遠心処理(特許文献3)、熱および遠心処理(特許文献5)、並びに加圧処理(特許文献6)などがあげられる。このような処理は、アグロバクテリウム菌の接種の前に施される場合も、アグロバクテリウム菌の接種と同時に行われる場合もあり、あるいは、アグロバクテリウム菌の接種の後に施される場合もある。このような形質転換効率を上昇させるための処理は、後に詳細に述べる。
本発明においては、コムギ属植物の組織にアグロバクテリウム菌が接種される。
本明細書で使用する「接種」とは、アグロバクテリウム菌を植物の組織(例えば胚盤)に接触させることをいい、当該技術分野においては種々のアグロバクテリウム菌接種方法が公知である。当該方法としては、例えば、アグロバクテリウム菌を液体培地に懸濁した懸濁液に植物組織を加える方法、共存培地上の植物組織にアグロバクテリウム菌の懸濁液を直接滴下する方法、植物組織中にアグロバクテリウム菌懸濁液を注入する方法、およびアグロバクテリウム菌懸濁液中に植物組織を浸漬し減圧する方法等があげられる。しかしながら、本発明におけるアグロバクテリウム菌の接種方法は、これらの方法に限定されない。
当該アグロバクテリウム菌を接種するにあたり、アグロバクテリウム菌による形質転換効率を改善するために、例えば、アセトシリンゴン、界面活性剤、多孔性セラミックス等の種々の添加剤をアグロバクテリウム菌の懸濁液中に含ませることが可能である。
本発明に使用可能なアグロバクテリウム菌は特に限定されず、アグロバクテリウムによる形質転換法に使用可能な、公知のいずれのアグロバクテリウム菌であってよい。本発明の好ましい態様において、アグロバクテリウム菌は、例えば、LBA4404、EHA101、EHA105、AGL1およびC58C1等であるが、これに限定されない。ベクターにスーパーバイナリーベクター(非特許文献3および4)を使用しない場合には、形質転換効率の観点から、アグロバクテリウムA281(非特許文献31)が有するTiプラスミドpTiBo542を含む菌株を用いることが好ましい。
アグロバクテリウム菌は、アグロバクテリウム菌内のプラスミドのT−DNAの中に挿入された遺伝子を植物のゲノム中に導入する性質を有することが公知である。そのため、本発明で使用可能なアグロバクテリウム菌は、植物内で発現させることを意図する遺伝子をT−DNA中に挿入したプラスミドを有する。そして、当該プラスミドを有するアグロバクテリウム菌を植物組織に接種することにより植物を形質転換することが可能である。これにより、組織中の植物細胞に好ましい形質が付与される。本発明において使用可能なアグロバクテリウム菌用のプラスミドは、例えば、pSB131、U0009B、U0017S、pSB134、pNB131およびpIG121Hm等があげられるが、これに限定される訳ではない。
本工程で使用される培地は、本明細書中では「共存培地」という。共存培地は、植物細胞を培養するために通常使用されるものでよく、例えば、LS無機塩類(非特許文献27)やN6無機塩類(非特許文献28)を基本とする培地等があげられる。また、限定されるものではないが、上記のような一般に組織培養に用いられる培地に含まれる無機塩類および/またはビタミン量を低下させた培地が好ましく、より好ましくは1/5以下に低下させたもの、さらに好ましくは1/10以下に低下させたものであり、具体的には1/10濃度MS培地などを好適に使用することができる。
Ke et al.(2002)(非特許文献30)はオオムギにおいて、植物成長調節物質を含まない共存培地を使用した例を開示している。
しかしそれに限定されるものではなく、本発明において共存培地中に、オーキシン類として2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、ピクローラム、または他のオーキシン類を添加することができる。あるいは、カイネチンや4PUのようなサイトカイニンなど、他の植物成長調節物質を添加することもできる。
なお本発明者らは、下記の実施例1および9に示されるように、共存培地中のオーキシン類の濃度が低い方が、形質転換効率が向上することを見出した。従って、本発明において、共存培地中に含まれるオーキシン類の濃度は特に限定されないが、好ましくは5μM以下、より好ましくは0.5μM以下であり、オーキシン類を全く含まない態様が最も好ましい。
更に形質転換効率を上昇させるために、共存培地中に種々の添加剤を加えることも可能である。このような添加剤としては、例えば、硝酸銀(特許文献4)、硫酸銅(特許文献7)、およびシステイン(非特許文献14)等があげられる。
本工程における「培養」とは、固化した共存培地の上または液体状の共存培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間で生育させることをいう。本発明において、培地の態様は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。共存培地の固化は、当該技術分野において公知の固化剤を添加することにより行うことができ、そのような固化剤としては、例えばアガロース等が知られている。本発明においては、このような固化した共存培地を好適に使用することができる。
本工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは23℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは1日ないし5日、より好ましくは2日である。
(2)幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位の物理的/化学的な損傷を行う工程について
上記の共存工程と同時におよび/または該共存工程に次いで、組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する工程を行う。本発明は、当該工程により、遺伝子導入の効率、および植物の形質転換の効率を上昇させることを特徴の1つとする。
本発明において、「幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的/化学的に損傷する」ための手段は特に限定されるものではなく、様々な物理的処理、および化学的処理が含まれる。限定される訳ではないが、物理的処理には、例えば、
鋭利な刃物(例えばメス)による切除あるいは付傷、鋭利な先端をもつ器具(例えばピンセット)による除去あるいは付傷等が含まれる。化学的処理には、例えば、植物細胞の機能を消失あるいは低減させる酸性、アルカリ性の物質、細胞に毒性を有する除草剤成分等の薬剤による処理、などが含まれる。本発明において、幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的に「取り除く」ことは好ましい態様である。
なお胚は将来植物体になる部分であり、幼根、幼芽、胚軸を含む。胚軸とは、胚の軸となる円柱形の部分であり、その上端から幼芽が、その下端から幼根が発生する。本明細書において幼根、幼芽、胚軸とは、本技術分野で通常に用いられている意味に解されるものである。
また本明細書において、「幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位」(以下、「上記部位」という)とは、幼根、幼芽、胚軸の中の1つ、2つ、または3つの部位から選択された全ての組み合わせを意味する。具体的にはその組み合わせは以下の通りである;1)幼根、2)幼芽、3)胚軸、4)幼根および幼芽、5)幼根および胚軸、6)幼芽および胚軸、7)幼根および幼芽および胚軸。
本発明の対象であるコムギ属植物の場合には共存培養を行っても、その工程中でイネ程には芽や根が伸長することはない。よって本発明において共存培養後に胚軸を取り除く操作を行うと、実際には胚軸からと共に幼根および幼芽も削除されることが多い。しかし、胚軸を削除した際に幼根、幼芽が無傷であると、残された幼根、幼芽が伸長する可能性がある。アグロバクテリウム菌を介した遺伝子導入を行うために、植物組織を脱分化させてカルス化する必要があるので、このように幼根、幼芽が伸長することは好ましくない。よって胚軸と共に幼根、幼芽も削除することは、本発明において好適な態様である。しかし幼根、幼芽が未だ出てきていない状態の胚軸においては、胚軸のみを取り除くことによっても本発明の目的を達成することができる。共存工程と同時におよび/または共存工程に次いで、上記部位を物理的/化学的に損傷する点に本発明の最も顕著な特徴がある。
本明細書において「共存工程に次いで」とは、共存工程の後に行うレスティング工程において、アグロバクテリウム菌の共存下にて培養したコムギ属植物の上記部位を物理的/化学的に損傷することを意味する。
また本明細書において「共存工程と同時に」とは、共存工程を行っている間に上記部位を物理的/化学的に損傷することを意味する。そのような場合も1態様として本発明に包含される。
また本明細書において「共存工程と同時におよび/または共存工程に次いで」とは、
1)共存工程において上記部位を損傷する態様、例えば、共存工程中に、植物組織を共存培地より取り出し、損傷処理を行い、再び共存培地に戻す態様;
2)共存工程後、レスティング工程の前に上記部位を損傷する態様;
3)レスティング工程において上記部位を損傷する態様、例えば、レスティング工程中に、植物組織をレスティング培地より取り出し、損傷処理を行い、再びレスティング培地に戻す態様;
および、
4)上記、1)乃至3)のいずれか複数の段階において上記部位を損傷する態様を意味する。それらの態様は全て本発明に包含される。
上記の損傷を行う時期は限定されるものではないが、共存工程開始後7日以内に行うことは好ましい。共存工程開始後1日ないし3日で行うことは更に好ましい。共存工程開始後1日ないし3日で幼根、幼芽および胚軸を切除すると、切除まで共存培地に置床するか、切除前に下記のレスティング培地に移されているか、とは関係なくカルス誘導率および遺伝子導入効率の向上が見られることが、実施例2と実施例3に示された。
(3)レスティング工程について
本発明の形質転換植物の作成方法においては、上記共存工程の後にさらにレスティング工程、再分化工程を経て、形質転換植物を作成する。
レスティング工程においては、共存工程後に植物組織をレスティング培地で培養する。本工程は、共存工程の後に植物細胞からアグロバクテリウム菌を除くとともに植物細胞の増殖を行う工程である。
本工程で使用される培地は、本明細書中では「レスティング培地」という。レスティング培地は、植物細胞を培養するために通常使用されるものでよく、例えば、LS無機塩類(非特許文献27)やN6無機塩類(非特許文献28)を基本とする培地等があげられる。なお本工程におけるレスティング培地は、好ましくは抗生物質を含む。レスティング培地中に含まれる抗生物質は、下記の選抜工程で用いる選抜用の抗生物質とは異なり、アグロバクテリウムの除菌を目的とする。限定される訳ではないが、抗生物質として、好ましくはセフォタキシムおよび/またはカルベニシリンを使用することができる。
本工程におけるレスティング培地中には、好ましくは、植物成長調節物質を含む。植物成長調節物質としては好ましくは、オーキシン類に属するピクローラムおよび/または2,4−Dが含まれる。オーキシン類は一般に植物組織を脱分化させる作用を有するために、本工程および続く選抜工程において、ほとんどの植物組織は一部または全部が脱分化組織(カルス)となる。本明細書で使用する、「脱分化組織」または「カルス」の用語は、分化した植物組織の一部(外植片)をオーキシンおよびサイトカイニン等の植物成長調節物質を含む培地で培養することにより得られる組織で、元来の植物組織としての形態を有さない無定形で未分化状態の細胞塊をいう。したがって、脱分化組織の状態でレスティング工程を開始する場合、および分化している植物組織がレスティング工程中または続く選抜工程中にすべてが脱分化および一部が脱分化する場合等の、脱分化組織が関係するいかなる態様も本発明の範囲内である。
本工程における「培養」とは、固化したレスティング培地の上または液体状のレスティング培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間で生育させることをいう。本発明において、培地の態様は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。レスティング培地の固化は、当該技術分野において公知の固化剤を添加することにより行うことができ、そのような固化剤としては、例えばアガロース等が知られている。本工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは1日−10日、より好ましくは5日である。
(4)選抜工程
以下に記載する選抜工程および再分化工程は、アグロバクテリウム菌による植物の形質転換方法において一般に行われている方法である。なお本発明の形質転換植物の作成方法において、この選抜工程は必須のものではない。例えば、後に述べる形質転換向上処理をした場合には、選抜工程を経なくても目的とする形質転換体を得ることができるからである。なお選抜工程を行う場合、以下の記載は例示のためのものであり、本発明は以下の記載により限定されるものではない。
本工程は、上記工程により得られた組織から、形質転換体を遺伝子導入の有無により選抜する工程である。本工程で使用される培地は、本明細書中では「選抜培地」という。選抜培地として使用可能な培地は、例えば、LS無機塩類(非特許文献27)やN6無機塩類(非特許文献28)を基本とする培地、例えば具体的にはLSD1.5培地等があげられる。
一般的なアグロバクテリウム菌を用いた形質転換法によれば、選抜培地中には、オーキシン類、好ましくは2,4−Dおよび/またはピクローラムが添加される。本発明においても、選抜培地が植物成長調節物質を含むのは、好ましい態様である。本選抜工程で使用されるオーキシン類は特に限定されず、好ましくは2,4−Dおよび/またはピクローラムである。さらに、必要に応じて、種々の添加物を加えることが可能である。
形質転換植物の選抜は、例えば、適当な選抜薬剤を含む選抜培地で、上記共存工程および/またはレスティング工程を経た植物を培養し、選抜薬剤に対する耐性の有無により行うことができる。本工程に使用可能な選抜薬剤は、当該技術分野で通常使用されるものを用いることが可能である。例えば、選抜薬剤としては、抗生物質または除草剤を使用可能である。抗生物質としては、例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン、またはブラストサイジンS等が使用可能である。さらに、除草剤としては、例えば、フォスフィノスライシン、ビアラフォスまたはグリホセート等が使用可能である。
本選抜工程を行うためには、アグロバクテリウム菌中のT−DNA中に挿入したDNAは、植物に発現させることを意図する遺伝子のみならず、例えば、選抜薬剤に対する耐性遺伝子等を含むことが必要である。このような選抜薬剤に対する耐性遺伝子は当該技術分野においては公知である。本工程において、例えばハイグロマイシンを含む選抜培地において選抜を行う場合、植物には、植物内で発現させることを意図する遺伝子に加え、ハイグロマイシン耐性遺伝子が導入されていることが必要である。
あるいは、形質転換植物の選抜は、植物細胞の糖要求性に基づいて行うことが可能である。植物細胞が利用できる糖にはシュークロース、グルコースなどがあるが、マンノースは利用できないことが知られている。したがって、マンノースのみを炭素源とする培地で植物組織を培養すると、利用できる糖がないために植物組織は枯死する。糖要求性に基づく選抜はこの原理を利用するものである。即ち、この選抜方法を利用するためには、アグロバクテリウム菌中のT−DNA中に挿入したDNAは、植物に発現させることを意図する遺伝子のみならず、リン酸化マンノースイソメラーゼ(phosphomannose isomerase:PMI)遺伝子を含むことが必要となる。ここで、PMI遺伝子を導入された植物細胞は、マンノースを炭素源として利用できるようになる。したがって、上記のようなアグロバクテリウム菌により形質転換された植物組織のみが、マンノースのみを炭素源とする培地で生育することが可能となり、これにより形質転換植物組織のみを選抜することが可能となる(非特許文献8)。このような方法は、他の糖についても行うことができる。例えば、キシロースイソメラーゼ遺伝子を導入された植物細胞は炭素源としてキシロースを利用することが可能となるため、このような方法に適用可能である。
また、容易に検出可能な遺伝子をスクリーニングの指標として導入し、当該遺伝子の発現の有無により選抜することも可能である。このようなスクリーニングの指標となる遺伝子としては、GFP遺伝子等があげられる。これらの遺伝子を発現する細胞・組織を検出する方法は当該技術分野において公知である。
本工程は、培地の成分組成を変更して、複数回繰り返して行うことも可能である。例えば、複数回の選抜工程では、選抜薬剤の濃度を各選抜工程で上昇させることにより、薬剤選抜の確実性が増し、形質転換植物体を得られる可能性を上昇させることが可能となる。本選抜工程は、好ましくは少なくとも1回、より好ましくは2回行われる。また、複数回選抜工程を行う場合には、選抜薬剤を含む培地で培養した組織のうち増殖した部分を切り取り、当該増殖部分のみを次の選抜工程に供することにより、効率よく形質転換組織を獲得することも可能である。
本工程における「培養」とは、固化した選抜培地の上または液体状の選抜培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間にて生育させることをいう。本発明において、培地の態様は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。選抜培地の固化は、上記のように例えばアガロース等により行うことが可能である。本工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、例えば、2回選抜工程が行われる場合には、1次選抜は2週間、そして2次選抜は3週間の計5週間行われる。また、複数回の選抜工程全体では好ましくは3−8週間、より好ましくは4−6週間行われる。また、複数回の選抜を行う場合には、各回毎に培養期間、温度および明暗条件を変更することも可能である。
(5)再分化工程
レスティング培地で培養した組織を、必要ならば選抜した後に、再分化培地で再分化させる工程を行う。本工程で使用される培地は、本明細書中では「再分化培地」という。再分化培地は、オーキシン類は含まない。
再分化培地としては、例えば、LS無機塩類やN6無機塩類を基本とする培地、例えば具体的にはLSZ培地等があげられる。
再分化培地は選抜薬剤を含んでもよい。本工程において使用可能な選抜薬剤は、選抜工程において定義したものと同様である。しかしながら、本工程において必ずしも選抜工程で用いた選抜薬剤と同じ選抜薬剤を用いなくとも良い。その場合には、植物にはアグロバクテリウム菌から、2種類以上の選抜薬剤に対する耐性遺伝子が導入されている必要がある。
本発明における「再分化」とは、全部または一部が脱分化していた植物組織が、再び元の植物組織または植物体の性質を獲得することをいう。共存工程および/または選抜工程中にオーキシン類を使用すると、植物組織の全部または一部が脱分化する。したがって、本工程に供することにより、脱分化組織が再分化し、完全な形質転換植物体を得ることが可能となる。
本工程における「培養」とは、固化した再分化培地の上または液体状の再分化培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間にて生育させることをいう。本発明において、培地の態様は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。再分化培地の固化は、上記のように例えばアガロース等により行うことが可能である。本工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは16−24時間/日の照明下で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは7日−21日、より好ましくは14日である。
2.本発明で用いられる形質転換向上処理について
また本発明の遺伝子導入方法と形質転換植物の作成方法において、以下に述べる形質転換向上処理を行ってもよい。本明細書において「形質転換向上処理」とは、形質転換効率の向上を達成するための処理をいう。このような形質転換向上処理としては、限定されるものではないが、例えば以下のようなものあるいはこれらの組み合わせが含まれる。このような処理は、アグロバクテリウム菌の接種の前に施される場合も、アグロバクテリウム菌の接種と同時に行われる場合もあり、あるいは、アグロバクテリウム菌の接種の後に施される場合もあり、アグロバクテリウム菌の接種の後においては胚軸を切除する前後のいずれかで行ってもよい。
a)遠心処理(参照:WO2002/012520:特許文献3)、
b)硝酸銀および/または硫酸銅の共存培地への添加(参照:AgNO(Zhao et al. 2001:非特許文献9、Ishida et al. 2003:非特許文献11、特許文献4);CuSO(WO2005/017152:特許文献7))、
c)熱処理(参照:WO1998/054961:特許文献2)、
d)熱及び遠心処理(参照:WO2002/012521:特許文献5)、
e)加圧処理(参照:WO2005/017169:特許文献6)、
f)粉体の存在下でアグロバクテリウムを接種する処理(参照:WO2007/069643:特許文献8)、ならびに、
g)共存培地にシステインを添加する処理(Frame et al. 2002:非特許文献10)。
このうち、遠心処理、熱処理、熱及び遠心処理、加圧処理、粉体の添加はいずれも遺伝子導入効率を向上させる処理であり、硝酸銀、硫酸銅の添加はカルス誘導率を向上させる効果がある。また、再分化培地への硫酸銅の添加は再分化効率を向上させる。
限定されるわけではないが、遠心処理は、例えばWO2002/012520(特許文献3)に記載の方法を用いて行うことができる。例えば、植物材料をアグロバクテリウム菌と接触させる前に、100Gないし25万G、好ましくは、500Gないし20万G、更に好ましくは1000Gないし15万Gの遠心加速度で、1秒間ないし4時間、更に好ましくは1秒間ないし2時間処理する。
また、遠心処理は、共存工程の後に行ってもよい。本発明者らは、コムギについて遠心処理を行うと、カルス誘導率を向上させる効果があることを見出した。この場合の遠心処理の条件は、特許文献3に記載の条件と同様でよい。具体的には、通常100G〜25万G、500G〜20万G、好ましくは1000G〜15万G、最も好ましくは1100G〜11万G程度の遠心加速度範囲で行われる。また、遠心処理の時間は、遠心加速度に応じて適宜選択されるが、通常1秒間以上行うことが好ましい。遠心時間の上限は特にないが、通常、10分間程度で目的を達成することができ、1秒間ないし4時間、更に好ましくは1秒間ないし2時間処理する。また、遠心処理時間は、遠心加速度が大きい場合には極く短い時間、例えば1秒以下でも遺伝子導入効率を有意に向上させることができる。一方、遠心加速度が小さい場合には、遠心処理を長く行うことにより遺伝子導入効率を有意に向上させることができる。なお、適切な遠心処理条件は、ルーチンな実験により容易に設定することができる。
以上述べたように遠心処理は、共存培養の前に行ってもよく、あるいは、共存培養の後に、胚軸を切除する前後のいずれかで行ってもよい。したがって、本発明において、共存培養前および/または共存培養後に植物材料の遠心処理を行うことは、好適な態様である。
硝酸銀および/または硫酸銅の共存培地への添加は、例えば、Zhao et al. 2001(非特許文献9)、Ishida et al. 2003(非特許文献11)、WO2005/017152に記載されている。硝酸銀および/または硫酸銅は、例えば、1μMないし50μM、好ましくは1μMないし10μMの濃度で、共存培地に添加しうる。
熱処理は例えばWO1998/054961(特許文献2)に記載の方法を用いて行うことができる。例えば、植物材料をアグロバクテリウム菌と接触させる前に、33℃ないし60℃、好ましくは37℃ないし52℃で、5秒間ないし24時間、好ましくは1分間ないし24時間、処理する。
熱及び遠心処理は例えばWO2002/012521(特許文献5)に記載の方法を用いて行うことができる。熱処理及び遠心処理の条件は、例えば上述した条件を採用しうる。
加圧処理は、例えばWO2005/017169(特許文献6)に記載の方法を用いて行うことができる。加圧処理は、限定されるわけではないが、好ましくは1.7気圧ないし10気圧の範囲、より好ましくは2.4気圧ないし8気圧の範囲で行われる。
また加圧処理は、共存工程の後に行ってもよい。本発明者らは、コムギについて加圧処理を行うと、カルス誘導率を向上させる効果があることを見出した。この場合の加圧処理の条件は、特許文献6に記載の方法と同様でよい。また、加圧処理は、共存培養の前に行ってもよく、または、共存培養の後に、胚軸を切除する前後のいずれかで行ってもよい。したがって、本発明において、共存培養前および/または共存培養後に植物材料の加圧処理を行うことは、好適な態様である。
粉体の存在下でアグロバクテリウムを接種する処理は、例えばWO2007/069643(特許文献8)に記載の方法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、アグロバクテリウム懸濁液と粉体を混合して植物材料に接種する、あるいは、植物と粉体を混合してこれにアグロバクテリウムを接種する、といった方法で行う。粉体は、限定されるものではないが、多孔質の粉体、グラスウール、または活性炭であり、好ましくは多孔性セラミックス、グラスウールまたは活性炭、さらに好ましくはハイドロキシアパタイト、シリカゲル、グラスウールである。
共存培地にシステインを添加する処理では、システインを10mg/lないし1g/l、好ましくは50mg/lないし750mg/l、より好ましくは100mg/lないし500mg/lで、共存培地に添加しうる。
当業者は、これらの処理を適切なタイミング・条件で行うことができる。また、これらを適宜組み合わせることは、形質転換効率向上のために一層好ましい。従って、好ましい形質転換向上処理は、遠心処理、共存培地にAgNOおよび/またはCuSOを添加する処理、熱処理、熱及び遠心処理、加圧処理、粉体の存在下でアグロバクテリウムを接種する処理、あるいは共存培地にシステインを添加する処理、またはこれらの組み合わせである。なお下記の実施例に示したように、遠心処理と、共存培地にAgNOおよび/またはCuSOを添加する処理を組み合わせることは、本発明の好ましい態様である。
3.本発明の方法による効果
本発明の遺伝子導入方法と本発明の形質転換植物の作成方法により、高い効率でコムギ属植物の形質転換を行うことができる。よって植物の形質転換効率の向上が達成される。
本明細書において「形質転換効率が高い」とは、高い効率で目的遺伝子が植物細胞へ導入されること、未熟胚等から高い効率でカルスが誘導されること、形質転換カルスから高い効率で再分化が起こること、を包含する概念である。また本明細書において「形質転換効率が向上する」とは、目的遺伝子の植物細胞への導入効率が向上すること、未熟胚等からのカルス誘導率が向上すること、形質転換カルスからの再分化効率が向上すること、を包含する概念である。なお後に述べる実施例2において、本発明の遺伝子導入方法と本発明の形質転換植物の作成方法は、従来の方法と比較して、カルス形成率の向上と遺伝子導入効率の向上を達成することができることが、実際に示されている。
それらに加えて本発明の遺伝子導入方法と本発明の形質転換植物の作成方法により、植物の形質転換効率の再現性が高い、形質転換の実験毎のバラツキが少ない、安定して形質転換植物を獲得できる、などの有利な効果も得ることができる。これらの効果も広義においては、上記の「形質転換効率が高い」、および「形質転換効率が向上する」、という概念に包含される。
植物組織に遺伝子導入がされたか否かは、公知の種々の方法により決定可能である。例えば、形質転換する遺伝子をGUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子あるいはGFP遺伝子などのレポーター遺伝子として利用し、簡便な公知の方法でこれらのレポーター遺伝子の発現部位を目視することにより形質転換の有無について確認することが可能である。また、抗生物質抵抗性遺伝子や除草剤抵抗性遺伝子などの選抜マーカー遺伝子を利用して、抗生物質あるいは除草剤を含む培地で植物細胞を培養することにより、あるいは抗生物質溶液や除草剤溶液を植物に処理することにより、その抵抗性の発現を指標に形質転換の有無を確認することも可能である。
遺伝子導入がされたか否かを決定するためのより確実な方法は、例えば、サザンハイブリダイゼーション法による植物染色体への導入遺伝子の組み込み、および後代植物での導入遺伝子の発現確認(後代への遺伝)などである。サザンハイブリダイゼーション法は広く知られた方法により行うことができ、例えば、Molecular Cloning (非特許文献26)に記載される方法により行われる。また、後代植物における発現の確認はGUS遺伝子などレポーター遺伝子の発現や除草剤抵抗性遺伝子など選抜マーカー遺伝子の発現を調査する方法により実行可能である。具体的には非特許文献4に記載されているが、これに限定されるものではない。
遺伝子導入効率は、当業者に一般に使用されている計算方法により決定することができる。例えば、遺伝子導入された植物組織数を、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織数で除することにより算出することが可能である。
カルス形成率については、例えば、目視によりカルスが形成されたか否かを段階的に評価して平均値をとってもよい。例えば、後述の実施例のように未熟胚からのカルス形成を1(胚盤の半分以上がカルス化)、0.5(胚盤の一部がカルス化)、0(カルス形成なし)の3段階で評価してもよい(後述の実施例におけるカルス形成指数)。あるいは、カルスが形成された数を、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織数で除することにより算出してもよい。
形質転換カルスからの再分化効率についても、例えば、カルス形成率と同様に、再分化が生じた数を、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織数で除することにより算出し、求めてもよい。
以下、実施例によって本発明を説明するが、実施例は例証のためのものであり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲の記載に基づいて判断される。さらに、当業者は本明細書の記載に基づいて、容易に修正、変更を加えることが可能である。
実施例1
共存培地組成が遺伝子導入効率に及ぼす効果
材料および方法
開花後14日目のパンコムギ(品種:Bobwhite)の未熟胚(大きさ1.5−2.5mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8)で1回洗浄した。遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA101(pIG121Hm)(非特許文献3)を懸濁し接種源とした。遠心処理した未熟胚に接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴンを含むCo−Cul共存培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8、固化剤は8g/lアガロース)および5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤が上になるように置床した。対照の培地は0.5mg/l 2,4−Dおよび2.2mg/l ピクローラムを含むCo−Cul共存培地とした。
23℃、暗黒下で2日間培養した未熟胚からメスとピンセットで幼根、幼芽、および胚軸を取り除き、MS無機塩およびMSビタミン、40g/lマルトース、0.5g/l グルタミン、0.1g/l カゼイン加水分解物、0.75g/l 塩加マグネシウム6水和物、1.95g/l MES、pH5.8固化剤は2g/lゲルライト、100mg/l アスコルビン酸、5μM AgNO、250mg/l カルベニシリン、100mg/l セフォタキシム、2.2mg/l ピクローラム、0.5mg/l 2,4−Dを含むレスティング培地に置床し、25℃、暗黒下で5日間培養した。未熟胚を0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH 6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を調査した。
結果
植物成長調節物質として2,4−Dおよびピクローラムを含む対照の共存培地で培養した未熟胚はX−glucによる染色後、GUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットは染色した25の未熟胚のいずれでも全くみられなかった。これに対し、植物成長調節物質を含まない共存培地で培養した未熟胚では,18の未熟胚のうち3つの未熟胚で直径1mm以上の青色のスポットがみられた。さらに硝酸銀および硫酸銅を添加した植物成長調節物質を含まない共存培地で培養した未熟胚では18の未熟胚のうち7つの未熟胚で直径1mm以上の青色のスポットがみられた。
このように、共存培地から植物成長調節物質を除くことにより、遺伝子導入効率が高まり、硝酸銀、硫酸銅を添加することにより、さらに遺伝子導入が促進されることが明らかとなった。
実施例2
幼根、幼芽および胚軸の切除がカルス形成と遺伝子導入効率に及ぼす効果(切除まで共存培地に置床)
材料および方法
開花後14日目のパンコムギ(品種:Bobwhite)の未熟胚(大きさ1.5−2.5 mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8)で1回洗浄した。遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA101(pIG121Hm)(非特許文献3)を懸濁し接種源とした。遠心処理した未熟胚に接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。対照の未熟胚はメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除いた後、アグロバクテリウムを接種した。その他の未熟胚は幼根、幼芽および胚軸を付けたままアグロバクテリウムを接種した。100μMアセトシリンゴン、5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8、固化剤は8g/lアガロース)にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤が上になるように置床した。23℃、暗黒下で共存培養した。
共存培養開始後1、2、3日目にそれぞれ約40個の未熟胚からメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除き、MS無機塩およびMSビタミン、40g/lマルトース、0.5g/l グルタミン、0.1g/l カゼイン加水分解物、0.75g/l 塩加マグネシウム6水和物、1.95g/l MES、pH5.8、固化剤は2g/lゲルライト、100mg/l アスコルビン酸、5μM AgNO、250mg/l カルベニシリン、100mg/l セフォタキシム、2.2mg/l ピクローラム、0.5mg/l 2,4−Dを含むレスティング培地に置床した。アグロバクテリウムを接種する前に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた対照の未熟胚は共存培養開始後2日目にレスティング培地に置床した。また、一部の未熟胚は幼根、幼芽および胚軸を除かずに共存培養開始後2日目にレスティング培地に置床した。25℃、暗黒下で7−9日間培養した後、未熟胚からのカルス形成を1(胚盤の半分以上がカルス化)、0.5(胚盤の一部がカルス化)、0(カルス形成なし)の3段階で評価した(カルス形成指数)。
また、共存培養開始後2日目に胚軸を取り除いた未熟胚とアグロバクテリウムを接種する前に胚軸を取り除いた対照の未熟胚の一部を0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を調査した。
結果
1)カルス形成
カルス形成の結果を図1に示す。図1において、縦軸は未熟胚からのカルス形成を、横軸は未熟胚から幼根、幼芽および胚軸を切除しレスティング培地に置床するまでの、アグロバクテリウム接種後の日数を示す。共存培養開始後1日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除き、レスティング培地に置床した未熟胚が最も高いカルス形成率を示した。幼根、幼芽および胚軸を取り除くまでの期間が長くなるに従い、カルス形成率は低下した。共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取らずにレスティング培地に置床した未熟胚(図1:2日無切除)よりも、同日に幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからレスティング培地に置床した未熟胚の方が高いカルス形成率を示した。また、幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからアグロバクテリウムを接種した未熟胚(図1:0日)からはほとんどカルス形成が見られなかった。
幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからアグロバクテリウムを接種した未熟胚でのカルス形成指数0.10(図1:0日)、幼根、幼芽および胚軸を切り取らずにレスティング培養した未熟胚でのカルス形成指数0.33(図1:2日無切除)に対し、共存培養開始後1日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚でのカルス形成指数が0.51(図1:1日)であったことから、アグロバクテリウム接種前に幼根、幼芽および胚軸を切り取る従来法に比べ5倍、胚軸を切り取らない従来法に比べ1.5倍、カルス形成率が上昇した。
2)遺伝子導入効率
幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからアグロバクテリウムを接種した未熟胚でGUS遺伝子を発現したのは18未熟胚中1未熟胚であった。これに対し、共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取った未熟胚では19未熟胚中15未熟胚でGUS遺伝子の発現がみられた。
実施例3
幼根、幼芽および胚軸の切除がカルス形成と遺伝子導入効率に及ぼす効果(何日目に切除を行うかに関わらず、接種して共存培養開始後2日目にレスティング培地に置床)
材料および方法
開花後14日目のパンコムギ(品種:Bobwhite)の未熟胚(大きさ1.5−2.5 mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8)で1回洗浄した。遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA101(pIG121Hm)(非特許文献3)を懸濁し接種源とした。遠心処理した未熟胚に接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴン、5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8、固化剤は8g/lアガロース)にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤が上になるように置床した。23℃、暗黒下で共存培養した。
共存培養開始後0、1、2、3、4、5日目にそれぞれ15から16個の未熟胚からメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除いた。共存培養開始直後(0日目)に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚はCo−Cul共存培地で2日間培養後、MS無機塩およびMSビタミン、40g/lマルトース、0.5g/l グルタミン、0.1g/l カゼイン加水分解物、0.75g/l 塩加マグネシウム6水和物、1.95g/l MES、pH5.8、固化剤は2g/lゲルライト、100mg/l アスコルビン酸、5μM AgNO、250mg/l カルベニシリン、100mg/l セフォタキシム、2.2mg/l ピクローラム、0.5mg/l 2,4−Dを含むレスティング培地に置床した。
なお本実施例では、何日目に切除を行うかに関わらず、接種して共存培養開始後2日目にレスティング培地に置床した。共存培養開始後1日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚はCo−Cul共存培地でさらに1日間培養後、レスティング培地に置床した。共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚は、幼根、幼芽および胚軸を取り除いた直後にレスティング培地に置床した。その他の未熟胚は幼根、幼芽および胚軸をつけたまま共存培養開始後2日目に全てレスティング培地に置床した。レスティング培地に置床後1、2、3日目(すなわち共存培養開始後3、4、5日目)に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚は引き続きレスティング培地で培養した。また、一部の未熟胚は幼根、幼芽および胚軸を除かずに共存培養開始後2日目にレスティング培地に置床した(無切除)。25℃、暗黒下で接種から7日間培養した後、未熟胚からのカルス形成を1(胚盤の半分以上がカルス化)、0.5(胚盤の一部がカルス化)、0(カルス形成なし)の3段階で評価した(カルス形成指数)。
カルス形成評価後の未熟胚を0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を示す未熟胚の数を調査した。
結果
1)カルス形成
カルス形成の結果を図2に示す。図2において、縦軸は未熟胚からのカルス形成指数を、横軸は未熟胚から幼根、幼芽、および胚軸を切除するまでの、アグロバクテリウム接種後の日数を示す。共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除き、レスティング培地に置床した未熟胚が最も高いカルス形成指数を示した。その後、幼根、幼芽および胚軸を取り除くまでの期間が長くなるに従い、カルス形成率は低下した。共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取らずにレスティング培地に置床した未熟胚(無切除)は共存培養開始後5日目に幼根、幼芽および胚軸を切除した未熟胚と同等のカルス形成指数を示した。また、幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからアグロバクテリウムを接種した未熟胚は共存培養直後に幼根、幼芽および胚軸を切除した未熟胚(0日目)と同等のカルス形成指数を示した。
幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからアグロバクテリウムを接種した未熟胚や共存培養直後に幼根、幼芽および胚軸を切除した未熟胚でのカルス形成指数は0.23(図2:0日)であり、幼根、幼芽および胚軸を切り取らずにレスティング培養した未熟胚でのカルス形成指数は0.10(図2:無切除)であった。一方、共存培養開始後1日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚でのカルス形成指数は0.40(図2:1日)であった。共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚でのカルス形成指数は0.80(図2:2日)であった。共存培養開始後3日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚でのカルス形成指数は0.30(図2:3日)であった。共存培養開始後4日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚でのカルス形成指数は0.13(図2:4日)であった。共存培養開始後5日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いた未熟胚でのカルス形成指数は0.06(図2:5日)であった。よって2日目に幼根、幼芽および胚軸を取り除いたデータと比較すると(図2:2日)、アグロバクテリウム接種前に幼根、幼芽および胚軸を切り取る従来法に比べて3.5倍(図2:0日)、胚軸を切り取らない従来法に比べて8倍(図2:無切除)、カルス形成率が上昇した。
2)遺伝子導入効率
共存培養直後に幼根、幼芽および胚軸を切り取ってからアグロバクテリウムを接種した未熟胚でGUS遺伝子を発現したのは15未熟胚中1未熟胚であった。これに対し、共存培養開始後2日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取った未熟胚では15未熟胚中8未熟胚でGUS遺伝子の発現がみられた。共存培養開始後3日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取った未熟胚では15未熟胚中11未熟胚でGUS遺伝子の発現がみられた。共存培養開始後4日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取った未熟胚では15未熟胚中9未熟胚でGUS遺伝子の発現がみられた。共存培養開始後5日目に幼根、幼芽および胚軸を切り取った未熟胚では16未熟胚中7未熟胚でGUS遺伝子の発現がみられた。幼根、幼芽および胚軸を切り取らずにレスティング培養した未熟胚では15未熟胚中GUS遺伝子を発現したのは3未熟胚であった。
実施例4
形質転換植物の作出
材料および方法
人工気象室KG−206SHL(小糸工業株式会社)、空調機付温室、通常のガラス温室でそれぞれ栽培した開花後14日目のパンコムギ(品種:Bobwhite)の未熟胚(大きさ1.5−2.5mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8)で1回洗浄した。遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA101(pIG121Hm)(非特許文献3)を懸濁し接種源とした。遠心処理した未熟胚に接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴン、5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地(1/10濃度のMS無機塩およびMSビタミン、10g/lグルコース、0.5g/l MES、pH5.8、固化剤は8g/lアガロース)にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤が上になるように置床した。23℃、暗黒下で共存培養した。
共存培養後開始後2日目に未熟胚からメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除き、MS無機塩およびMSビタミン、40g/lマルトース、0.5g/l グルタミン、0.1g/l カゼイン加水分解物、0.75g/l 塩加マグネシウム6水和物、1.95g/l MES、pH5.8、固化剤は2g/lゲルライト、100mg/l アスコルビン酸、5μM AgNO、250mg/l カルベニシリン、100mg/l セフォタキシム、2.2mg/l ピクローラム、0.5mg/l 2,4−Dを含むレスティング培地に置床した。25℃、暗黒下で5日間培養した後、レスティング培地に15mg/lのハイグロマイシンを添加した1次選抜培地に未熟胚を置床した。同条件で2週間培養した後、レスティング培地に30mg/lのハイグロマイシンを添加した2次選抜培地に未熟胚を置床した。
同条件で3週間培養した後、30mg/lのハイグロマイシンを添加したLSZ培地(非特許文献4)に置床し、25℃、照明下で2週間培養した。再分化した植物を15mg/lのハイグロマイシンを添加したLSF培地(非特許文献16)に置床し同条件で2週間培養した。発根のみられた植物をハイグロマイシンを含まないLSF培地に置床し、1−2週間培養した。十分に発根した植物を土を入れたポットに移植し、人工気象機中で栽培した。再分化した植物の葉の一部を0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を調査した。
結果
2008年の4月から5月、2008年の12月から2009年の3月に合計7回の試験を行った。結果を表1に示す。材料のコムギは人工気象室(人工気象機)、空調機付温室(空調温室)、通常のガラス温室(通常温室)で栽培したものから採取した。表1において、接種した未熟胚の数を(A)に、ハイグロマイシンに抵抗性、GUS陽性の植物個体数を(B)に、(B)/(A)で示される形質転換効率を一番右の欄に、それぞれ示す。
いずれの試験においても接種した未熟胚から、ハイグロマイシンに抵抗性を示す1から2個体の独立の再分化植物が得られた。得られた植物のいずれもGUS遺伝子を発現し、遺伝子導入がされた形質転換植物であることが示された。これらの形質転換植物はいずれも正常な形態を示し、かつ稔性を有していた。このように本法により、異なる時期、異なる環境で栽培された植物を材料とした場合でも安定して形質転換コムギの得られることが明らかとなった。
Figure 0005766605
実施例5 サザン分析
材料および方法
実施例3で得られたGUS遺伝子の発現を示す形質転換植物の葉から、小鞠らの方法(非特許文献29)に従いDNAを抽出した。抽出したDNAに制限酵素HindIIIで処理し、GUS遺伝子をプローブとしたサザン法による導入遺伝子の検出を行った。サザン法はMolecular Cloning (非特許文献26)に記載の方法に従って行った。
結果
いずれの形質転換体もGUSプローブにハイブリダイズするバンドを示した。そのパターンは形質転換体ごとに異なり、導入遺伝子が植物の染色体上にランダムに挿入されていることが示された。GUS陽性を示した個体のバンド数は1−3本で、挿入された導入遺伝子のコピー数はいずれも少ないことが明らかとなった。1から3の各コピー数でGUS遺伝子が導入されたT0植物の個体数を表2に示す。
Figure 0005766605
実施例6 導入遺伝子の後代への遺伝
材料および方法
実施例3で得られた形質転換植物を栽培しT1種子を得た。これらの種子を培養土に播種し、温室で栽培した。播種後11日目の幼苗から葉を切り取り、200mg/lのハイグロマイシンを含むELA培地(非特許文献16)に差し込んだ。25℃、照明下で6日間培養後、葉片を観察し、緑色(ハイグロマイシン抵抗性)と黄色(ハイグロマイシン感受性)の判定を行った。
結果
調査した4系統のいずれも後代植物においてハイグロマイシン抵抗性と感受性の分離を示した。分離比はいずれも3:1を示し、メンデルの法則に従って導入遺伝子が後代植物に遺伝していることが確認された(表3)。
Figure 0005766605
参考例 従来法によるコムギ形質転換の追試
材料および方法
1)Wan and Layton(2006)の従来法
従来法として、Wan and Layton(2006)(非特許文献23)の方法に従い、パンコムギ(品種:Bobwhite)を材料に、採取直後の未熟胚およびCM4C培地(MS無機塩およびMSビタミン、0.5g/l グルタミン、0.1g/l カゼイン加水分解物、0.75g/l 塩加マグネシウム6水和物、40g/lマルトース、0.5mg/l 2,4−D、2.2mg/l ピクローラム、1.95g/l MES、pH5.8、固化剤は2g/lゲルライト、100mg/l アスコルビン酸)で2日間培養した未熟胚(前培養未熟胚)に、MS無機塩とMSビタミンの濃度を1/10に減じたCM4C液体培地にEHA101(pIG121Hm)を懸濁し、接種した。接種後の未熟胚および前培養未熟胚をMS無機塩とMSビタミンの濃度を1/10に減じたCM4C培地に10g/lグルコースおよび200μMアセトシリンゴンを添加した共存培地に置床した。
共存培養後の未熟胚および前培養未熟胚を0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を調査した。
Wan and Layton(2006)の方法については、当該文献が記載されている書籍の序文に、当該書籍に記載されている各プロトコルは各分野のリーダーやベテランが提供する最も効果的な実験方法である旨が記載されている(非特許文献32)。
結果
Wan and Layton(2006)の方法において、遺伝子導入を行った結果を表4に示す。表4において、GUS++は未熟胚が複数の青色スポットを示したことを、GUS+は未熟胚が1つの青色スポットを示したことを、それぞれ示す。Wan and Layton(2006)の方法で接種した未熟胚および前培養未熟胚ではGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットは供試した組織のいずれでも全くみられなかった。
このように従来法の追試を行ったが、供試した材料への遺伝子導入を再現することはできなかった。
Figure 0005766605
実施例7
遠心処理の時期が形質転換植物の作出に及ぼす効果
材料および方法
pIG121HmをテンプレートにBglII−Icat_Fw(5’-ACT CTA GAA CAT AGA TCT CTA CAG GGT AAA TTT CTA G-3’:配列番号1)とBamHI−GNos_Rv(5’-TTT GGA TCC GCG TCG ACG CGT CGA CGC GTC CTA GAA GCT AAT T-3’ :配列番号2)のプライマーセットでPCRを行い、Icat−GUS−Tnos断片を得た。このPCR産物を電気泳動、切り出し、β−agarase処理により精製し、pUC19/SmaIベクターにクローニングし「pUC−IcatGusTnos」を得た。このpUC−IcatGusTnosをBamHI + BglI + BglIIで消化し、IcatGusTnos/BamHI + BglII断片を回収して、pIG121Hm/BamHI + BAPベクターにクローニングした。得られたコンストラクトをシークエンスし、P35S−HPTを欠落させたことを確認したものを「pIG121del」とした。
pSB200をテンプレートにBamHI−Pubi_Fw(5’-ACT CTA GAA CAT AGA TCT CTA CAG GGT AAA TTT CTA G-3’ :配列番号3)とBar−Iubi_Rv(5’-TCG TTC TGG GTC CAT ATC TCA TTG CCC CCC GGG ATG CTC TAG AGT C-3’ :配列番号4)のプライマーセットでPCRを行い、Fragment Aを得た。次にpCR−35SBARをテンプレートにIubi−Bar_Fw(5’-GGG GGG CAA TGA GAT ATG GAC CCA GAA CGA CGC CCG GCC GAC ATC-3’ :配列番号5)とpIG121−Bar_Rv(5’- CTT Tgg atc ccg gtc ggc tac tac tcT CAG ATC TCG GTG ACG GG-3’ :配列番号6)のプライマーセットでPCRを行い、Fragment Bを得た。Fragment AとBを電気泳動、切り出し、β−agarase処理により精製し、両者を混合したものをテンプレートとしてBamHI−Pubi_FwとpIG121−Bar_RvのプライマーセットでPCRを行い、Pubi−Iubi−BAR断片を得た。このPCR産物を電気泳動、切り出し、be−ta−agarase処理により精製し、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit for Sequencing (Invitrogen)でクローニングして「pCR4−PubiIubiBAR」を得た。pCR4−PubiIubiBARをBamHI−HFで消化し、電気泳動、切り出し、β−agarase処理により精製したものをLigationして「pIG121−PubiIubiBAR」を得た。pIG121−PubiIubiBARをEHA105(Hood et al. (1993) Transgenic Research 2:208−218)に導入してEHA105(pIG121−PubiIubiBAR)を得た。
空調機付温室で栽培した開花後14日目のパンコムギ(品種:Fielder)の未熟胚(大きさ1.5−3.0mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地で1回洗浄した。未熟胚を約50個ずつA、B、Cの3つの区に分けそれぞれ以下の方法で接種、共存培養および胚軸の切除を行った。A区の未熟胚はInf液体培地で1回洗浄後、Inf液体培地中で遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。B、C区の未熟胚は、同液体培地中で10分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA101(pIG121Hm)を懸濁し接種源とした。A、B、C区の未熟胚のそれぞれに接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴン、5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を、胚盤が上になるように置床した。23℃、暗黒下で共存培養した。
共存培養後開始後2日目にA区の未熟胚からメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除き、レスティング培地(組成は実施例1に記載)に置床した。同じくB区の未熟胚はメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除いた後、LS−inf液体培地中で15,000rpm、10分間の遠心処理を行い、その後レスティング培地に置床した。C区の未熟胚は、LS−inf液体培地中で15,000rpm、10分間の遠心処理を行なった後、メスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除き、レスティング培地に置床した。A、B、C区全ての未熟胚を25℃、暗黒下で5日間培養した後、一部の未熟胚を採取し、0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。
リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した。残りの未熟胚はレスティング培地に5mg/lのフォスフィノスライシン(PPT)を添加した1次選抜培地に未熟胚を置床した。同条件で2週間培養した後、レスティング培地に10mg/lのPPTを添加した2次選抜培地に未熟胚を置床した。
同条件で3週間培養した後、5mg/lのPPTを添加したLSZ培地に置床し、25℃、照明下で2週間培養した。再分化した植物を5mg/lのPPTを添加したLSF培地に置床し同条件で2週間培養した。発根のみられた再分化個体を形質転換体としてその数を調査した。
結果
レスティング培養5日目に各試験区の未熟胚の一部を採取しGUS遺伝子の発現を行った結果を図3に示す。なお図3における縦軸はGUS遺伝子の発現により表した遺伝子導入効率を示す。いずれの区も供試した半数以上の未熟胚がGUS遺伝子の発現を示し、遺伝子導入の程度はいずれの区も同等であった。これらのことから、本法において遠心処理は、アグロバクテリウムを接種する前に行っても、共存培養後に行ってもよく、また、共存培養後においては、胚軸を切り取る前、切り取った後のいずれにおいて行ってもよいことが示された。
表5に各区の未熟胚における形質転換効率を示す。表5において、接種した未熟胚の数を(D)に、フォスフィノスライシン(PPT)に抵抗性の植物個体数を(E)に、(E)/(D)で示される形質転換効率を一番右の欄に、それぞれ示す。
いずれの試験においても接種した未熟胚から、PPTに抵抗性を示す独立の再分化植物が20%以上の高い効率で得られた。これらの形質転換植物はいずれも正常な形態を示した。このように本法により、異なる時期(共存培養の前後、あるいは、胚軸を切り取る前後)に遠心処理をした場合でも安定して高い効率で形質転換コムギの得られることが明らかとなった。
Figure 0005766605
実施例8 後代植物におけるサザン分析
材料および方法
実施例3で得られたGUS遺伝子の発現が陽性を示す独立の3系統の形質転換植物およびそれらの形質転換植物を自殖して得られた後代種子から生育したT1世代のGUS遺伝子の発現が陽性あるいは陰性を示すそれぞれの形質転換植物の葉から、小鞠らの方法に従いDNAを抽出した。抽出したDNAに制限酵素HindIIIで処理し、GUS遺伝子をプローブとしたサザン法による導入遺伝子の検出を行った。サザン法はMolecular Cloningに記載の方法に従って行った。
結果
形質転換当代およびT1世代でGUS遺伝子の発現が陽性を示すいずれの形質転換体もGUSプローブにハイブリダイズするバンドを示した。そのパターンは形質転換系統ごとに異なり、また、同一の系統では当代植物とT1植物の示すバンドの数およびサイズはいずれの系統でも同じであった。さらにT1世代でGUS遺伝子の発現が陰性を示す植物ではGUSプローブにハイブリダイズするバンドはいずれの系統でもみられなかった。これらのことから、導入遺伝子が後代植物に安定して遺伝することが分子的に確認された。
実施例9
共存培地への植物ホルモンの添加が形質転換植物の作出に及ぼす効果
材料および方法
空調機付温室で栽培した開花後14日目のパンコムギ(品種:Fielder)の未熟胚(大きさ1.5−3.0mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地で1回洗浄した。Inf液体培地中で遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA101(pIG121Hm)を懸濁し接種源とした。未熟胚のそれぞれに接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴン、5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地に5μMの濃度でカイネチンあるいは4PUを添加した培地、また、0.5μMおよび5μMの各濃度で2,4−D、ダイカンバ、あるいはピクローラムを添加した培地にそれぞれアグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤が上になるように置床した。23℃、暗黒下で共存培養した。対照は、いずれの植物ホルモンも含まないCo−Cul共存培地とした。
共存培養後開始後2日目にメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除き、レスティング培地(組成は実施例1に記載)に置床した。未熟胚を25℃、暗黒下で5日間培養した後、各区より10から19個の未熟胚を採取し、0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液を除いた後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−gluc)および20%メタノール含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、GUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した。
結果
レスティング培養5日目に各試験区の未熟胚の一部を採取しGUS遺伝子の発現を行った結果を図4、5および6に示す。なお図4、5および6における縦軸はGUS遺伝子の発現を個々の未熟胚について、4(胚盤の75%以上で発現)、3(胚盤の50から74%で発現)、2(胚盤の25から49%で発現)、1(胚盤の5から24%で発現)、0.5(胚盤の1から4%で発現)、0(発現なし)の6段階で評価した平均値を示す。すなわち、GUS遺伝子の発現により表した遺伝子導入効率を示す。
図4に示すように、共存培地に5μMの濃度でカイネチンあるいは4PUを添加した試験区ではともにGUS遺伝子の発現を示す未熟胚が得られた。それらの発現の程度は、植物ホルモンを添加しない共存培地で培養した未熟胚での発現に比べわずかに低い値を示した。
図5に示すように、0.5μMの濃度で2,4−D、ピクローラム、ダイカンバをそれぞれ含む共存培地で培養した未熟胚でのGUS遺伝子の発現は、植物ホルモンを添加しない共存培地で培養した未熟胚での発現と同等かわずかに低い値を示した。
図6に示すように、共存培地に5μMの濃度で2,4−D、ピクローラム、ダイカンバをそれぞれ添加した試験区ではいずれもGUS遺伝子を発現する未熟胚が得られた。それらの発現の程度は植物ホルモンを添加しない共存培地で培養した未熟胚での発現に比べいずれも低い値を示した。
これらの結果から、本法において、共存培地へのサイトカイニンおよび低濃度のオーキシンを添加した場合の遺伝子導入効率は、植物ホルモン無添加の共存培地での結果に比べて、同等かやや劣っていることが判った。
以上から、高濃度のオーキシンを添加すると遺伝子導入効率は植物ホルモン無添加の培地に比べ低下することが明らかとなった。
実施例10
未熟胚の大きさが形質転換植物の作出に及ぼす効果
材料および方法
実施例7と同様にベクターEHA105(pIG121−PubiIubiBAR)を作製した。空調機付温室で栽培した開花後14日目のパンコムギ(品種:Fielder)の未熟胚(大きさ1.2−3.0mm)を無菌的に採取し、Inf液体培地で1回洗浄した。Inf液体培地中で遺伝子導入効率を高めるための前処理(7,500rpm、10分間の遠心処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むInf液体培地に約1.0x10cfu/mlでアグロバクテリウム菌系 EHA105(pIG121−PubiIubiBAR)を懸濁し接種源とした。未熟胚のそれぞれに接種源を加え、30秒間撹拌した後、5分間室温で静置した。100μMアセトシリンゴン、5μM AgNOおよび5μM CuSOを含むCo−Cul共存培地にアグロバクテリウムを接種した未熟胚を大きさにより1.2−1.8mm、1.8−2.2mmおよび2.2−3.0mmのそれぞれの実験区に分け、胚盤が上になるように置床した。23℃、暗黒下で共存培養した。
共存培養後開始後2日目にメスとピンセットで幼根、幼芽および胚軸を取り除き、レスティング培地(組成は実施例1に記載)に置床した。未熟胚を25℃、暗黒下で5日間培養した。レスティング培地に5mg/lのフォスフィノスライシン(PPT)を添加した1次選抜培地に未熟胚を置床した。同条件で2週間培養した後、レスティング培地に10mg/lのPPTを添加した2次選抜培地に未熟胚を置床した。
同条件で3週間培養した後、5mg/lのPPTを添加したLSZ培地に置床し、25℃、照明下で2週間培養した。再分化した植物を5mg/lのPPTを添加したLSF培地に置床し同条件で2週間培養した。発根のみられた植物をハイグロマイシンを含まないLSF培地に置床し、1−2週間培養後、発根し旺盛に生育する再分化個体を形質転換体としてその数を調査した。
結果
表6に各区の未熟胚における形質転換効率を示す。表6において、接種した未熟胚の数を(A)に、PPTに抵抗性の植物個体数を(B)に、(B)/(A)で示される形質転換効率を一番右の欄に、それぞれ示す。
いずれの実験区においても接種した未熟胚から、PPTに抵抗性を示す独立した再分化植物が得られた。特に接種時の大きさが2.2−3.0mmの未熟胚では接種した未熟胚の70%以上から形質転換植物が得られ、本法により極めて高い効率で形質転換を達成することができることが明らかとなった。
Figure 0005766605

Claims (11)

  1. コムギ属(Triticum)の植物の、未熟胚または完熟種子の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
    (i)アグロバクテリウム菌を接種した上記組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行い、
    (ii)該共存工程と同時におよび/または該共存工程開始後5日以内に、上記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的または化学的に損傷する工程を行う、
    ことを含む、上記方法。
  2. コムギ属(Triticum)の植物の、形質転換植物の作成方法であって、
    (i)アグロバクテリウム菌を接種した、未熟胚または完熟種子の組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行い、
    (ii)該共存工程と同時におよび/または該共存工程開始後5日以内に、上記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的または化学的に損傷する工程を行い、
    (iii)上記組織をレスティング培地で培養するレスティング工程を行い、そして、
    (iv)上記組織を再分化培地で再分化させる工程を行う
    ことを含む、上記方法。
  3. 前記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的または化学的に損傷することが、組織から幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を取り除くことである、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記共存工程開始後1日ないし3日で、前記組織において幼根、幼芽、および胚軸から選択される1またはそれ以上の部位を物理的または化学的に損傷する工程を行う、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記共存培地が植物成長調節物質を含まない培地である、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  6. 以下の形質転換効率向上処理のうち、少なくとも1つを行う、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
    a)遠心処理;
    b)硝酸銀および/または硫酸銅の共存培地への添加;
    c)熱処理;
    d)熱及び遠心処理;
    e)加圧処理
    f)粉体の存在下でアグロバクテリウムを接種する処理;
    g)共存培地にシステインを添加する処理
  7. 以下の、a)及び/又はb)の形質転換効率向上処理を行う、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
    a)遠心処理;
    b)硝酸銀および/または硫酸銅の共存培地への添加
  8. 上記(iii)レスティング工程と、(iv)再分化工程の間に薬剤選抜工程を含む、請求項2ないしのいずれか1項に記載の方法。
  9. (iii)レスティング培地、および/または、薬剤選抜工程の選抜培地が、植物成長調節物質を含む、請求項2ないしのいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記アグロバクテリウム菌が、LBA4404、EHA101、EHA105、AGL1C、および58C1からなる群から選択される菌である、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  11. コムギ属の植物がパンコムギ(T.aestivum)またはマカロニコムギ(T.durum)である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
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