JPWO2008050774A1 - テトラサイクリン誘導型遺伝子発現細胞株および条件的遺伝子ノックアウト細胞株の製造方法ならびにその用途 - Google Patents

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Abstract

細胞の種類にかかわらずTc系化合物の存在・非存在により目的遺伝子の発現が調節される、いわゆるTc誘導型遺伝子発現細胞株を、簡便に優れた効率でスクリーニングする方法の提供を目的とする。宿主細胞のゲノムに目的遺伝子を導入するための目的遺伝子発現用ベクターと、テトラサイクリンの存在または非存在によってtetオペレーター配列への結合および非結合がスイッチするトランスアクチベーターを発現するTA発現用ベクターとを準備する。目的遺伝子発現用ベクターは、tetオペレーター配列およびプロモーター配列の下流であって、目的遺伝子のコード配列と選択マーカーのコード配列との間にバイシストロニック性制御配列を配置したベクターである。これらのベクターを宿主細胞に導入し、前記目的遺伝子発現用ベクターの選択マーカーが発現した細胞株を選択する。これによってTcで目的遺伝子の発現を制御できる誘導型遺伝子発現細胞株が得られる。

Description

本発明は、テトラサイクリン(以下、「Tc」という)誘導型遺伝子発現細胞株の製造方法およびその用途に関する。
遺伝子産物の機能を研究する方法として、近年、テトラサイクリン(以下、「Tc」という)やその類縁体の有無によって、細胞中における目的遺伝子の発現を人為的に制御(スイッチONまたはスイッチOFF)するシステム(以下、「Tc誘導型遺伝子発現系」ともいう)が広く使用されている。Tcやその類縁体は、以下、あわせて「Tc系化合物」という。このような遺伝子発現系には、例えば、前記Tc系化合物の非存在により目的遺伝子の転写を誘導し、前記Tc系化合物の存在により目的遺伝子の転写を抑制する、いわゆる「Tet−Off発現系」と、前記Tc系化合物の存在により目的遺伝子の転写を誘導し、前記Tc系化合物の非存在により目的遺伝子の転写を抑制する、いわゆる「Tet−On発現系」がある。このようなシステムが機能する細胞であれば、必要な時に、親株と同様に目的遺伝子を発現させ、必要な時に、前記目的遺伝子の発現を抑制できるため、例えば、表現型の変化等により目的遺伝子や遺伝子産物の機能を解析することが可能となる。
前者のTet−Off発現系は、Tetリプレッサー(以下、「TetR」という)の性質、すなわち、前記Tc系化合物の非存在下でtetオペレーター配列に結合し、且つ、前記Tc系化合物の存在下でtetオペレーター配列に結合しないという性質を利用したシステムである。このシステムでは、通常、トランスアクチベーター(以下、「TA」という)を発現するtTA発現用ベクターと、目的遺伝子を導入する目的遺伝子発現用ベクターとが使用される。前記tTA発現用ベクターにおける前記TAは、通常、TetRと単純ヘルペスウィルス16の転写活性化ドメインとの融合タンパク質(以下、「tTA」という)である。また、目的遺伝子発現用ベクターは、tetオペレーターと最小プロモーターユニットを含むプロモーター領域を有している。これらのベクターを導入した宿主細胞を培養する際、前記Tc系化合物が非存在であれば、発現した融合タンパク質tTAは、前記プロモーター領域内のtetオペレーターに結合できるため、目的遺伝子の転写が誘導される(スイッチ−On)。他方、前記Tc系化合物が存在すると、前記Tc系化合物は発現した誘導タンパク質tTAに結合する。この複合体におけるtTAは、前記プロモーター領域内のtetオペレーターに結合できないため、結果的に、目的遺伝子の転写が抑制される(スイッチ−Off)。
後者のTet−On発現系は、rTetリプレッサー(以下、「rTetR」という)の性質、すなわち、前記Tc系化合物の存在下でtetオペレーター配列に結合し、且つ、前記Tc系化合物の非存在下でtetオペレーター配列に結合しないという性質を利用したシステムである。このシステムにおいても、通常、TA発現用ベクターと目的遺伝子発現用ベクターとが使用される。前記TA発現用ベクターにおけるTAは、rTetRと単純ヘルペスVP16の転写活性化ドメインとの融合タンパク質(以下、「rtTA」という)である。これらのベクターを導入した宿主細胞を培養する際、前記Tc系化合物が存在すると、前記Tc系化合物は発現した誘導タンパク質rtTAに結合する。この複合体は前記プロモーター領域内のtetオペレーターに結合するため、目的遺伝子の転写が誘導される(スイッチ−On)。他方、発現し融合タンパク質rtTAは、単独でtetオペレーター配列に結合できない。このため、前記Tc系化合物が非存在であると、rtTAは前記プロモーター領域内のtetオペレーター配列に結合できず、結果的に、目的遺伝子の転写が抑制される(スイッチ−Off)。そして、これらの遺伝子発現系が機能する細胞株の製造において、各種ベクターが宿主細胞に導入されているか否かは、通常、薬剤耐性マーカー等の選択マーカーを利用したスクリーニングによって確認されている(特許文献1)。
しかしながら、このように前記Tc系化合物の存在・非存在によって制御される遺伝子発現系は、どのような細胞にでも、同じように適用できるものではないといわれている。実際に、具体例として、初期胚細胞、生殖系列細胞、初代培養細胞、血球系細胞、神経系細胞等について、このTc誘導型遺伝子発現系が機能する細胞株が得難いことが問題視されている。特に、近年、高効率な遺伝子ターゲティングが可能であることからヒトpre−B細胞であるNalm−6細胞が注目されている。しかしながら、このNalm−6細胞においても、Tc誘導型遺伝子発現系が機能する細胞株が得難いことが問題視されている。
特表平11−506901号公報
本発明者らは、細胞の種類によって、Tc誘導型遺伝子発現系が機能する細胞株(以下、「誘導型遺伝子発現株」という)が得られていないという問題を解決するにあたって、以下に示すように、TA発現用ベクターや目的遺伝子発現用ベクターを宿主細胞に導入した際における、細胞株のスクリーニング方法に着目した。
従来法では、まず、宿主細胞に対してTA発現用ベクターの導入処理を行った後、前記ベクターの薬剤耐性等の選択マーカーによって、前記TA発現用ベクターが導入された株を選択している。しかしながら、本工程で選択される複数の細胞株は、いずれもTA発現用ベクターが導入されていることは明らかであるが、細胞株の間で、発現誘導時における遺伝子の発現活性(発現量)に極めて大きなバラツキが発生することがわかった。これは、以下に示す、発現誘導を確認するためのコントロールベクターを用いたアッセイから明らかとなった。すなわち、Tet−Off発現系のスクリーニングにおいて、同じ方法によって得られた、TA発現用ベクターが導入された複数の細胞株に、Tc系化合物の非存在下でルシフェラーゼの発現が誘導されるコントロールベクター(例えば、商品名pTRE2−Luc、Clontech社製)を導入した場合、各細胞株によってルシフェラーゼの発現量が全く異なるという結果を示した。このように発現活性にバラツキの問題があるということは、前記選択された細胞株に対して、さらに目的遺伝子発現用ベクターが導入されても、実際に、発現誘導時に目的遺伝子の発現を制御できるか否かは不明ということである。しかしながら、Tc誘導型遺伝子発現系は、前述のように、所望の際には、発現誘導により親株と同様に目的遺伝子を発現することが必要である。このため、発現誘導時における発現活性が、例えば、親株と比較してあまりに低い細胞株は、Tc誘導型遺伝子発現系が機能しているとは言い難く、また、発現活性があまりに低いと、発現誘導時における表現型が親株と異なるおそれもある。このため、従来法では、前記TA発現用ベクターの選択マーカーによって、前記ベクターが導入された細胞株を選択するだけでは足りず、得られた複数の細胞株について、前述のコントロールベクター(ルシフェラーゼ発現ベクター)を用いたアッセイが必要不可欠となっている。このアッセイにより、十分なルシフェラーゼ発現量を示す細胞株を選別し、選別された細胞株に対して、続いて、目的遺伝子発現用ベクターの導入を行う。しかしながら、前記コントロールベクターを用いたアッセイにより、ルシフェラーゼが高発現することが確認された細胞株であっても、目的遺伝子発現用ベクターが導入されるだけでなく、実際に、発現誘導時において、目的遺伝子の発現が制御されなければならない。さらに、発現誘導時に、目的遺伝子を十分に発現する細胞株が得られたとしても、非発現誘導時において、目的遺伝子の発現量が速やかに消失しなければ、結果的に、目的遺伝子についてTc誘導型遺伝子発現系が機能している目的の細胞株が得られたことにはならない。このため、目的遺伝子発現用ベクターの選択マーカーによって、前記ベクターが導入された細胞株を選択するだけでは足りず、選択された細胞株について、Tc系化合物による目的遺伝子の発現制御の有無を確認することが不可欠である。このように、従来法においては、目的のTc誘導型遺伝子発現細胞株を得るために、各ベクターを導入した後、それぞれの選択マーカーによる選択だけでなく、ルシフェラーゼ発現量のアッセイによる、さらなる選別工程が必須となっている。これに加えて、目的遺伝子発現量のアッセイも必須である。したがって、例えば、Tc誘導型遺伝子発現細胞株の構築が報告されている細胞であっても、従来法では、その取得に非常に手間と時間がかかる。
さらに、前述の血球系細胞等のように、実際に目的の誘導型遺伝子発現細胞株が得られていない細胞に関しては、より多大な時間を要することとなる。すなわち、このような細胞に関しては、目的の誘導型遺伝子発現細胞株が得られるまで、延々と膨大な数の細胞株について、前述したルシフェラーゼ発現量のアッセイや目的遺伝子発現量のアッセイを行う必要がある。しかし、このような細胞は、そもそも目的の誘導型遺伝子発現細胞株が得られる確率自体が低いと考えられるため、膨大な数の細胞株についてアッセイを行っても、それらの細胞株の中に目的の遺伝子発現細胞株が含まれる可能性も極めて低い。このように、目的の細胞株が含まれる可能性が極めて低いにもかかわらず、前記各ベクターが導入された膨大な数の細胞株について、ルシフェラーゼ発現量や目的遺伝子の発現制御の有無を確認しなければならないため、多大な時間を要し極めて効率が悪い。また、前記各ベクターの導入が確認された大量の細胞株について、網羅的に発現量等のアッセイを行う必要があるという選択効率の悪さが一因となって、目的の遺伝子発現細胞株を検出するに到っていないとも考えられる。
そこで、本発明者らは、例えば、ルシフェラーゼ発現量を確認しなくとも、目的のTc誘導型遺伝子発現細胞株である可能性が高い候補株をスクリーニングできる簡便な方法があれば、例えば、Tc誘導型遺伝子発現細胞株が得られる確率自体が極めて低い細胞であっても、効率良くスクリーニングを行うことができると考えた。つまり、各種ベクターが導入された細胞株に関して、前述のように網羅的に発現量に関するアッセイを行わなくても、目的の細胞株である可能性が高い候補株をスクリーニングできる方法があれば、その方法で選別された細胞株についてのみ、例えば、最終的に、Tc系化合物の存在下または非存在下における目的遺伝子の発現制御を確認すれば足りる。このため、極めて優れた効率で、目的のTc誘導型遺伝子発現株をスクリーニングし、結果的に、極めて優れた効率で、目的のTc誘導型遺伝子発現株の製造を行うことができると考えた。
そこで、本発明は、細胞の種類にかかわらず、Tc系化合物の存在・非存在により目的DNAの発現が調節可能な、いわゆるTc誘導型DNA発現細胞株を、簡便に優れた効率でスクリーニングする方法、ならびに、Tc誘導型DNA発現細胞株の製造方法の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のスクリーニング方法は、Tc系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNA発現細胞株のスクリーニング方法であって、前記Tc系化合物は、TcまたはTc類縁体であり、下記(A)および(B)工程を含むことを特徴とする。
(A) 宿主細胞に、トランスアクチベーター発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入処理を行う工程であり;
トランスアクチベーター発現用ベクターは、
トランスアクチベーターをコードするポリヌクレオチド配列、および、前記トランスアクチベーターをコードするポリヌクレオチド配列の転写を制御するプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列の制御下において、前記トランスアクチベーターをコードするポリヌクレオチド配列が配置されているベクターであり、
前記トランスアクチベーターは、前記Tc系化合物の存在または非存在によってtetオペレーター配列への結合および非結合がスイッチするタンパク質であって、Tetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質、または、リバースTetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質であり;
前記目的DNA発現用ベクターは、
tetオペレーター配列、目的DNA配列、前記目的DNA配列の転写を制御するプロモーター配列、バイシストロニック性制御配列および選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列を含み、前記tetオペレーター配列および前記プロモーター配列の制御下において、前記目的DNA配列と前記選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列との間に前記バイシストロニック性制御配列が配置されているベクターである;
前記工程
(B) 前記トランスアクチベーター発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入処理を行った宿主細胞から、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択する工程
また、本発明の製造方法は、Tc系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNA発現細胞株の製造方法であって、本発明の誘導型DNA発現細胞株のスクリーニング方法により、誘導型DNA発現細胞株を得ることを特徴とする。
本発明の製造方法は、Tc系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法であって、前記Tc系化合物は、TcまたはTc類縁体であり、下記(a)〜(c)工程を含むことを特徴とする。
(a) 下記(b)工程に先立って、または、下記(b)工程の後に、宿主細胞における内在性標的配列DNAの片アレルのノックアウトを行う工程
(b) 本発明の誘導型DNA発現細胞株の製造方法により、誘導型DNA発現細胞株を製造する工程であり、
目的DNA発現用ベクターが、目的DNA配列として、宿主細胞の内在性標的DNA配列と同じ機能を有する外来性DNA配列を有するベクターである、
前記工程
(c) 前記(b)工程で得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行う工程
本発明の製造方法は、内在性DNAがノックアウトされ、且つ、Tc系化合物の存在または非存在によって発現が調節可能な改変型DNAが導入された改変型DNAノックアウト細胞株の製造方法であって、前記Tc系化合物が、TcまたはTc類縁体であり、下記(l)〜(n)工程を含むことを特徴とする。
(l) 下記(m)工程に先立って、または、下記(m)工程の後に、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行う工程
(m) 本発明の誘導型DNA発現細胞株の製造方法により、誘導型DNA発現細胞株を製造する工程であり、
目的DNA発現用ベクターが、目的DNA配列として、宿主細胞の内在性標的DNA配列の改変型配列を有するベクターである、
前記工程
(n) 前記(m)工程で得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行う工程
本発明において、「目的DNA」および「目的DNA配列」は、特に制限されず、例えば、遺伝子、遺伝子の部分DNA配列、遺伝子を含むDNA配列、機能が不明なDNA配列等があげられる。本発明において、以下、Tc系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNA発現細胞株を「誘導型DNA発現細胞株」といい、そのような機能を「Tc誘導性」または「Tc応答性」ともいう。前記「誘導型DNA発現細胞株」とは、Tc系化合物の非存在下で目的DNAを発現し、且つ、Tc系化合物の存在下で目的DNAの発現を消失する形態(Tet−Off発現系)や、Tc系化合物の存在下で目的DNAを発現し、且つ、Tc系化合物の非存在下で目的DNAの発現を消失する形態(Tet−On発現系)を含む。Tet−Off発現系において、発現の誘導とは、Tc系化合物非存在下の状態であり、発現の非誘導とは、Tc系化合物存在下の状態である。他方、Tet−On発現系において、発現の誘導とは、Tc系化合物存在下の状態であり、非誘導とは、Tc系化合物非存在下の状態である。なお、Tc系化合物の非存在下および存在下のいずれで目的DNAの発現が誘導されるかは、例えば、トランスアクチベーターの種類(tTA融合タンパク質、rtTA融合タンパク質)に依存する。本発明において、発現の消失は、発現の抑制ということもできる。なお、以下、本発明において、「誘導型DNA発現細胞株」は「誘導型遺伝子発現細胞株」、「目的DNA発現用ベクター」は「目的遺伝子発現用ベクター」ともいう。
また、TetRと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質を「tTA融合タンパク質」、これをコードするポリヌクレオチド配列を「tTAコード配列」、rTetRと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質を「rtTA融合タンパク質」、これをコードするポリヌクレオチド配列を「rtTAコード配列」という。また、TAをコードするポリヌクレオチド配列を「TAコード配列」、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列を「選択マーカーコード配列」という。
本発明によれば、前述のような構造のTA発現用ベクターと目的DNA発現用ベクターとを使用することによって、前記(B)工程において、目的の誘導型DNA発現細胞株である確率が極めて高い細胞株を選択することができる。Tet−Off系のスクリーニングの場合、前記(B)工程で選択される細胞株は、Tc系化合物の非存在下で目的DNAを発現し、且つ、Tc系化合物の存在下で目的DNAの発現が抑制されるという挙動を示す細胞株である確率が極めて高い。また、Tet−On系のスクリーニングの場合、前記(B)工程で選択される細胞株は、Tc系化合物の存在下で目的DNAを発現し、且つ、Tc系化合物の非存在下で目的DNAの発現が抑制されるという挙動を示す細胞株である確率が極めて高い。
従来法の場合、前述のように、TA発現用ベクターと目的遺伝子発現用ベクターの導入が確認されても、それは、その細胞株が誘導型遺伝子発現細胞株である可能性を示すものではなかった。このため、単にベクターが導入されたに過ぎない膨大な数の細胞株を一つずつアッセイして、目的とする誘導型遺伝子発現細胞株であるか否かを確認していく以外に方法はなかった。そして、全ての細胞株についてアッセイを行っても、結果的に、発現誘導時に目的遺伝子が十分に発現されない、もしくは、非発現誘導時にも目的遺伝子が発現されてしまう等、目的の誘導型遺伝子発現細胞株が存在しない確率が極めて高かった。このため、多大な時間と労力にもかかわらず、成果が得られないという問題があった。しかしながら、本発明では、前述のような目的遺伝子発現用ベクター(目的DNA発現用ベクター)を使用し、発現誘導時における前記目的遺伝子発現用ベクターの選択マーカーの発現を確認するのみで、以下のことが可能である。まず、第一に、前記選択マーカーの発現確認のみで、TA発現用ベクターと目的遺伝子発現用ベクターの両方が導入された細胞株を選択できる。これは、以下の理由による。TA発現用ベクターが導入されていれば、宿主細胞内でTAが発現する。このため、発現誘導時(例えば、Tet−Off系であればTc系化合物の非存在下、Tet−On系であればTc系化合物の存在下)において、発現TAが目的遺伝子発現用ベクターのtetオペレーターに結合し、前記オペレーター下流のDNA配列の転写が誘導される。したがって、目的遺伝子発現用ベクターの選択マーカーが発現したということは、TA発現用ベクターも導入された細胞株ということである。そして、第二に、前記選択マーカーの発現確認のみで、例えば、Tc系化合物非存在下(Tet−Off)、または、存在下(Tet−On)で、目的遺伝子の一定の発現量が確保されている細胞株であることが確認できる。これは、前記目的遺伝子発現用ベクターにおいて、バイシストロニック性制御配列を介して目的遺伝子と選択マーカーとを配置したことに起因する。すなわち、発現誘導時に目的遺伝子発現用ベクターの選択マーカーが発現しているということは、バイシストロニック性制御配列の制御下にある目的遺伝子(目的DNA)も同様に発現していることを意味するからである。このため、選択マーカーの発現を確認するのみで、目的遺伝子の一定の発現量が確保されていることが確認できる。さらに、第三に、前記選択マーカーの発現量から、目的遺伝子の発現程度を推量することも可能である。従来法では、前述のように、発現誘導時の発現量が十分量である細胞株を選択するために、TA発現用ベクターの導入細胞株について、コントロールベクターを用いたルシフェラーゼアッセイが必須であった。しかしながら、本発明によれば、前記選択マーカーの発現量は、間接的に目的遺伝子の発現量と推量できるため、そのようなアッセイは不要となる。したがって、本発明においては、前記選択マーカーの発現による導入確認によって、同時に、両ベクターが導入されていない細胞株、ならびに、発現誘導時の発現量が低い細胞株を篩いにかけることができる。このため、目的の誘導型遺伝子発現細胞株(誘導型DNA発現細胞株)である確率が極めて高い候補株をスクリーニングできるのである。また、前記(B)工程により選択される細胞株は、Tc応答性を示す目的の誘導型遺伝子発現細胞株である可能性が高い候補株であることから、例えば、前記候補株についてのみTc系化合物による目的遺伝子の発現制御を確認すれば足りる。このため、従来法と比較して、Tc誘導型遺伝子発現細胞株のスクリーニング方法全体を簡便に行うことができる。以上のように、本発明によれば、簡便且つ効率的にスクリーニングが行われることから、例えば、従来よりも短時間で高効率に、人為的に目的遺伝子の必要レベルの発現を維持し、且つ、所望の際にその発現を消失することが可能なTc誘導型遺伝子発現細胞株を得る事が可能となる。さらに、これまで確率的にTc誘導型遺伝子発現細胞株を得ることが困難であった血球系細胞等についても、目的の細胞株が得られる可能性が向上したといえる。したがって、本発明によれば、例えば、これまで十分に研究が進められなかった細胞における遺伝子産物の機能解析等が可能となるため、医薬品開発や臨床診断キットの開発と、生命科学や臨床医学の分野において非常に有用な技術といえる。
図1は、本発明の実施例1におけるベクターの部分的な構成を示す図であり、同図(A)は、TA発現用ベクター、同図(B)は、目的遺伝子発現用ベクターの部分的な構成を示す図である。 図2は、前記実施例1において、hDDM1遺伝子をクローニングした目的遺伝子発現用ベクター(pTRE−tight−NFH−hDDM1−IRES−Puroベクター)を導入したピューロマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図3(a)は、前記実施例1において、Tc添加後のNFH−hDDM1遺伝子を導入したピューロマイシン耐性株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真であり、図3(b)は、前記実施例において、Tc除去後の前記ピューロマイシン耐性株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図4は、実施例2において、Tc存在下、NFH−hDDM1遺伝子を導入したネオマイシン耐性株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図5は、前記実施例2において、NFH−hDDM1遺伝子を導入したネオマイシン耐性株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真であり、同図(a)は、Tc除去後の結果であり、同図(b)は、Tc再添加後の結果である。 図6は、実施例3−1において、Tc非存在下、NFH−hDDM1遺伝子を導入したネオマイシン耐性株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図7は、実施例3−2において、Tc存在下、NFH−hDDM1遺伝子を導入したネオマイシン耐性株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図8は、実施例4におけるTc誘導型ノックアウト細胞株の作製方法の概略を示す模式図である。 図9(A)は、前記実施例4において、内在性hDDM1遺伝子座の遺伝子型を確認したオートラジオグラフィーの写真であり、図9(B)は、hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図10は、前記実施例4において、Tc誘導型ノックアウト細胞株の精製ゲノムの切断パターンを示すオートラジオグラフィーの写真である。 図11(A)は、前記実施例5において、内在性hDDM1遺伝子座の遺伝子型を確認したオートラジオグラフィーの写真であり、図11(B)は、内在性hDDM1タンパク質およびNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。 図12は、前記実施例5において、改変型遺伝子ノックアウト細胞株の精製ゲノムの切断パターンを示すオートラジオグラフィーの写真である。 図13は、実施例6において、改変型遺伝子ノックアウト細胞株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。
<スクリーニング方法>
本発明のスクリーニング方法は、前述のように、様々な宿主細胞についてのTc誘導型DNA発現細胞株のスクリーニングに使用可能である。このため、本発明を適用する細胞の種類は、特に制限されない。前記細胞は、例えば、in vivoの細胞やin vitroで培養された細胞のいずれでもよい。細胞の生物種は、特に制限されず、ヒトをはじめとする哺乳類、酵母等、様々な種があげられる。また、前記細胞は、特に制限されず、例えば、真核細胞があげられ、詳細には、ヒトをはじめとする哺乳類由来の様々な細胞があげられる。より詳細には、例えば、造血幹細胞、胚性肝細胞(ES細胞)、Nalm−6、BALL1、NALM1、Raji等のpre−B細胞ならびにB細胞、T細胞、白血球、単球・マクロファ−ジ、赤血球、血小板等の血球系細胞、血液細胞、筋原細胞、肝細胞、リンパ球、ニューロン細胞、皮膚上皮、気道上皮、受精卵母細胞、各種腫瘍細胞(例えば、HeLa、CHO、MCF、HEK293、HepG2)、神経系細胞等があげられる。この他にも具体例として、例えば、HCT116細胞、ヒトES細胞、ヒト臍帯血幹細胞、ヒト間葉系幹細胞、マウスES細胞、マウスEC細胞、ニワトリDT40細胞、WI-38細胞、NIH3T3細胞、HCT116細胞、Sf9細胞等があげられる。具体例として、Nalm−6細胞は、従来法では、Tet−Off発現系での目的遺伝子の恒常的な高発現(または、Tet−On発現系での目的遺伝子の恒常的な高発現)が困難であったが、本発明によれば、発現誘導時に目的遺伝子を恒常的に発現し、非発現誘導時に目的遺伝子の発現を抑制するTc誘導型遺伝子発現細胞株が得られる。なお、本発明は、これに制限されない。
TA発現用ベクター
本発明のTA発現用ベクターは、TAを発現するベクターであって、前述のように、前記TAコード配列、および、前記TAコード配列の転写を制御するプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列の制御下において、前記TAコード配列が配置されている。
前記TAは、前記Tc系化合物の存在または非存在によってtetオペレーター配列への結合および非結合がスイッチするタンパク質であって、Tetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質(tTA融合タンパク質)、または、リバースTetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質(rtTA融合タンパク質)である。本発明のTA発現用ベクターにおいて、TAがtTA融合タンパク質であるベクターを「tTA発現用ベクター」、TAがrtTA融合タンパク質であるベクターを「rtTA発現用ベクター」という。なお、本発明において、以下、「機能的に配置」、「機能的に結合」とは、それが意図する機能を発揮しうる状態で配置または結合していることを意味する。
前記プロモーターの種類は、特に制限されず、例えば、本発明のスクリーニング方法における宿主細胞の種類に応じて適宜決定できる。前記プロモーターとしては、例えば、CAGプロモーター、CMVプロモーター、actinプロモーター、PGKプロモーター、EF2プロモーター等があげられる。前記宿主細胞がNalm−6の場合、好ましくはCAGプロモーターである。前記CAGプロモーターは、サイトメガロウィルスのエンハンサー配列、ニワトリβ−アクチンプロモーター配列およびウサギβ−グロビンのエクソン配列を含む合成プロモーターとして知られている。前記CAGプロモーターは、例えば、これを構成する前記各配列に基づいてPCRやクローニングによって調製してもよいし、CAGプロモーターを有するプラスミドpCAGGS(Niwa et al.1991,Gene,108:193−200)や市販のベクターから調製することもできる。本発明において、プロモーター配列は、例えば、前記TAコード配列の転写を制御できるように、機能的に配置されていればよい。
前記TA発現用ベクターは、前述のような配列の他に、例えば、polyA付加配列を有していることが好ましい。前記polyA付加配列は、例えば、TAコード配列の下流側(3’末端側)に機能的に配置されていることが好ましい。polyA付加配列とは、一般に、真核細胞のmRNAの3’末端に50〜250ヌクレオチドからなるアデニン・ヌクレオチド鎖(polyA配列)を付加するシグナルであり、polyA配列は、転写直後にpolyAポリメラーゼによって付加され、mRNAを分解から保護する働きを示す。polyA付加配列の種類は、特に制限されず、例えばSV40のpolyA付加配列、β−グロビンのpolyA付加配列等がある。
TetRと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質(tTA融合タンパク質)は、Tc系化合物の非存在下でtetオペレーターに結合して目的DNAの転写を活性化する。このため、tTA発現用ベクターは、いわゆる「Tet−Off発現系」のツールとして有用である。他方、rTetRと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質(rtTA融合タンパク質)は、Tc系化合物の存在下でtetオペレーターに結合して目的DNAの転写を活性化することから、rtTA発現用ベクターは、いわゆる「Tet−On発現系」のツールとして有用である。
tTA融合タンパク質は、TetRと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質である。tTA融合タンパク質を構成するTetRは、特に制限されない。従来公知のものとして、例えば、野生型TetRがあげられ、そのクラス(例えば、A、B、C、D、E)は、特に制限されない。中でも、好ましくはTn10由来の野生型TetRである(Gossen,M et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1992;89:5547−5551)。TetRをコードするポリヌクレオチド配列(以下、「TetRコード配列」)は、例えば、TetRのアミノ酸配列やTetRコード配列に基づいてPCRやクローニング等により調製することができる。TetRコード配列の一例を配列番号5、TetRのアミノ酸配列の一例を配列番号6に示すが、本発明は、これらには制限されない。
前記tTA融合タンパク質における転写活性化ドメインは、転写を直接または間接的に活性化するポリペプチドであり、発現した際に、前記TetRと機能的に結合して融合タンパク質を構成すればよい。したがって、tTAコード配列は、前記転写活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドとTetRコード配列とがインフレームで結合した、融合タンパク質をコードするキメラDNAであることが好ましい。
前記転写活性化ドメインとしては、従来公知のものがあげられ、酸性活性化ドメイン、プロリンリッチ転写活性化ドメイン、セリン/スレオニンリッチ転写活性化ドメイン、グルタミンリッチ活性化ドメインがあげられる。前記酸性活性化ドメインとしては、例えば、単純ヘルペスウイルスビリオンタンパク質16(以下、「VP16」)があげられる。VP16のアミノ酸配列は、例えば、Labow et al.((1990)Mol.Cell Biol.10:3343−3356)、Baim et al.((1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072−5076)等に開示されており、少なくともVP16の全アミノ酸配列のうち、活性化領域であるC末端側364位〜490位の領域(127アミノ酸残基)を含むことが好ましい。VP16をコードするヌクレオチド配列(以下、「VP16コード配列」)は、例えば、VP16のアミノ酸配列やヌクレオチド配列に基づいてPCRやクローニング等により調製してもよいし、前記VP16コード配列を有する市販のベクターから調製することもできる。VP16コード配列の一例を配列番号7、VP16のアミノ酸配列の一例を配列番号8にそれぞれ示すが、本発明はこれらには制限されない。
また、前記転写活性化ドメインとしては、これらの他に、ロイシンジッパードメイン、へリックスループヘリックスドメイン、ジンクフィンガードメイン等もあげられる。
rtTA融合タンパク質は、reverse TetR(rTetR)と転写活性化ドメインの融合タンパク質である。rTetRとしては、特に制限されず、野生型TetRの変異によって結合性が変化したポリペプチド、すなわち、Tc系化合物の存在下でtetオペレーターに結合し、且つ、Tc系化合物の非存在下でtetオペレーターに結合しないポリペプチドであればよい。具体例としては、野生型TetRのアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸が変異したポリペプチドがあげられ、より詳細には、野生型TetR(Tn10由来野生型TetR)のアミノ酸配列における71、95、101および102位のうち少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは4つのアミノ酸が変異したポリペプチドがあげられる。rTetRをコードするポリヌクレオチド配列(以下、「rTetRコード配列」)は、例えば、rTetRのアミノ酸配列やrTetRコード配列に基づいてPCRやクローニング等により調製することができる。なお、rTetRのアミノ酸配列やrTetRコード配列は、例えば、Hillen and Berens(Annual.Rev.Microbiol.1994:48 345−369)やGossen et al.(Science 1995:268 1766−1769)等に報告されている。rTetRコード配列の一例を配列番号9に、rTetRのアミノ酸配列の一例を配列番号10にそれぞれ示すが、本発明はこれらには制限されない。
前記rtTA融合タンパク質における転写活性化ドメインも、前述のtTA融合タンパク質と同様に、転写を直接または間接的に活性化するポリペプチドであり、発現した際に、前記rTetRと機能的に結合して融合タンパク質を構成すればよい。したがって、rtTAコード配列は、前記転写活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドと、rTetRコード配列とがインフレームで結合した、融合タンパク質をコードするキメラDNAであることが好ましい。rtTA融合タンパク質のコード配列は、例えば、rTetRのアミノ酸配列やrTetRコード配列に基づいてPCRやクローニング等により調製してもよいし、市販のベクター(例えば、商品名pTet−Onベクター、Clontech社製等)から調製することもできる。
tTAコード配列の一例を配列番号11、tTA融合タンパク質のアミノ酸配列を配列番号12に、rtTAコード配列の一例を配列番号13に、rtTA融合タンパク質のアミノ酸配列を配列番号14にそれぞれ示すが、本発明はこれらの配列には限定されない。
本発明において、前記Tc系化合物とは、TcおよびTc類縁体のいずれであってもよい。前記Tc類縁体としては、例えば、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリン、シアノテトラサイクリン等があげられる。なお、Tc類縁体に分類されない化合物であっても、本発明におけるTcならびにTc類縁体と同様の機能を示す化合物であれば、前記Tc系化合物に含まれる。また、Tc系化合物としては、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記TA発現用ベクターは、さらに、選択マーカーコード配列を有しても良い。選択マーカーの種類は、特に制限されず、後述するようなものがあげられる。
本発明のTA発現用ベクターの具体例としては、例えば、上流側から、プロモーター配列(例えば、CAGプロモーター配列)およびTAコード配列がこの順序で配置された構造、プロモーター配列、TAコード配列および薬剤耐性マーカーコード配列がこの順序で配置された構造等があげられる。
目的DNA発現用ベクター
本発明の目的DNA発現用ベクターは、宿主細胞のゲノムにトランスフェクションによって目的DNAを導入するためのベクターであり、前述のように、tetオペレーター配列、目的DNA配列、前記目的DNA配列の転写を制御するプロモーター配列、バイシストロニック性制御配列および選択マーカーコード配列を含み、前記tetオペレーター配列および前記プロモーター配列の制御下において、前記目的DNA配列と前記選択マーカーコード配列との間に前記バイシストロニック性制御配列が配置されている。
本発明の目的DNA発現用ベクターにおいて、前記プロモーターの種類は、特に制限されず、例えば、本発明のスクリーニング方法における宿主細胞の生物種に応じて適宜決定できる。前記プロモーター配列としては、例えば、目的DNAの転写を開始する最小プロモーター配列があげられる。「最小プロモーター配列」とは、一般に、転写の開始部位を決定する領域であるが、それ自身が単独で転写を効率的に開始することができない部分的プロモーター配列を意味する。このような最小プロモーター配列の活性は、Tc系化合物で制御されたTAのtetオペレーター配列への結合に依存する。具体例としては、例えば、TAがtTA融合タンパク質の場合は、Tc系化合物の非存在下において、tTA融合タンパク質がtetオペレーター配列へ結合することにより活性化され、また、TAがrTA融合タンパク質の場合は、Tc系化合物の存在下において、rtTA融合タンパク質がtetオペレーター配列へ結合することにより活性化される。
前記最小プロモーター配列としては、特に制限されない。具体例としては、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)由来プロモーターがあげられ、好ましくは、+75〜−53、または、+75〜−31の間のポリヌクレオチド領域が使用できる。最小CMVプロモーターは、例えば、その配列に基づいてPCRやクローニングによって調製してもよいし、最小CMVプロモーターを有する市販のベクター(例えば、商品名pC1−neo、Promega社製)から調製することもできる。最小CMVプロモーターの配列の一例を配列番号1に示すが、本発明はこれに制限されない。この他にも、従来公知の最小プロモーター配列が使用でき、例えば、チミジンキナーゼ(tk)をコードする遺伝子の転写を制御するプロモーター由来の最小プロモーターも使用でき、具体例として、単純ヘルペスウィルス由来のtk最小プロモーターがあげられる(Mc Knight et al.(1984)Cell.37:253−262)。
前記プロモーター配列は、tetオペレーター配列に対して機能的に配置(隣接)されていることが好ましく、通常、tetオペレーター配列の下流側(すなわち3’側)に配置される。具体的には、例えば、tetオペレーター配列へのTA(例えば、tTA融合タンパク質、rtTA融合タンパク質等)の結合により、プロモーター(ならびに、前記プロモーターの下流に位置する目的DNA等)の転写を開始するのに適当な距離で、前記プロモーター配列とtetオペレーター配列とが機能的に配置(結合)されていることが好ましい。プロモーター配列とtetオペレーター配列との距離は、特に制限されないが、プロモーター配列を、例えば、tetオペレーター配列の約200〜400塩基対下流に配置することができる。Tet−Off系のスクリーニングの場合、前記tetオペレーター配列は、例えば、前記Tc系化合物の非存在下で、前記トランスアクチベーターにおけるTetリプレッサーに結合し、且つ、前記Tc系化合物の存在下で、前記トランスアクチベーターにおけるTetリプレッサーに結合しない配列である。また、Tet-On系のスクリーニングの場合、前記tetオペレーター配列は、例えば、前記Tc系化合物の存在下で、前記トランスアクチベーターにおけるリバースTetリプレッサーに結合し、且つ、前記Tc系化合物の非存在下で、前記トランスアクチベーターにおけるリバースTetリプレッサーに結合しない配列である。
本発明の目的DNA発現用ベクターにおいて、前記tetオペレーター配列は、1個でも良いが、複数回連続して配置されていることが好ましい。そのコピー数(連続数)は、例えば、2以上であり、好ましくは2〜10、より好ましくは7である。なお、「tetオペレーター配列」は、特に制限されず、いずれのクラスのtetオペレーター(例えば、A、B、C、D及びE)であってもよく、異なるtetオペレーター配列が連続して配置されていてもよい。また「連続して配置」とは、tetオペレーター配列が直接的に連続して配置されてもよいし、例えば、数個の塩基を介して間接的に連続して配置されてもよい。tetオペレーター配列やこれが連続した配列は、例えば、tetオペレーターのポリヌクレオチド配列に基づいてPCRやクローニング等により調製してもよし、また、tetオペレーター配列を有する市販のベクター(例えば、商品名pTRE−tightベクター、Clontech社製)から調製することもできる。tetオペレーター配列の一例を配列番号2に、tetオペレーター配列を複数個含む配列の一例を配列番号3にそれぞれ示すが、これらには限定されない。
「バイシストロニック性制御配列」とは、バイシストロニック性を実現する制御配列を意味し、「バイシストロニック性」とは、1つのmRNAから2つの機能しうるタンパク質が発現することを意味する。前記バイシストロニック性制御配列としては、例えば、リボソーム内部認識部位(IRES:Internal Ribosomal Entry Site)配列があげられる。
バイシストロニック性制御配列は、IRES配列であることが好ましい。本発明の目的DNA発現用ベクターでは、例えば、プロモーター配列の下流において、前記目的DNA配列と選択マーカーコード配列との間にバイシストロニック性制御配列(例えば、IRES配列)が配置されていることが好ましい。前記目的DNA配列と前記選択マーカーコード配列との位置関係は特に制限されない。例えば、IRES配列を介して、上流側に目的DNA配列、下流側に選択マーカーコード配列が機能的に配置されてもよいし、上流側に選択マーカーコード配列、下流側に目的DNA配列が機能的に配置されてもよい。中でも、上流側から、目的DNA配列、IRES配列および選択マーカーコード配列がこの順序で配置されていることが好ましい。この順序であれば、例えば、前記目的DNA配列の転写後に、引き続き、前記選択マーカーを転写することができる。このため、例えば、選択マーカーの発現が確認された場合には、非常に高い信頼性で、目的DNA配列も発現していると判断することができる。前記IRES配列としては、特に制限されないが、例えば、脳心筋炎ウイルス(Encephalo Myocarditis Virus:ECMV)由来のIRES配列が好ましい。IRES配列は、例えば、米国特許第4,937,190号、特表2002−514086(P2002−514086A)号公報、特表2001−500021(P2001−500021A)号公報等に記載されている。IRES配列は、例えば、IRESのポリヌクレオチド配列に基づいてPCRやクローニング等により合成してもよいし、IRES配列を有する市販のベクターから調製することもできる。脳心筋炎ウイルス由来のIRES配列の一例を配列番号4に例示するが、これには制限されない。
前述のように、IRES配列の下流側に選択マーカーコード配列が配置されている場合、例えば、選択マーカーコード配列の下流側(3’末端側)に、さらに、polyA付加シグナルが結合してもよい。polyA付加配列の種類は、特に制限されず、例えば、SV40のpolyA付加配列、β−グロビンのpolyA付加配列等がある。
前記選択マーカーコード配列としては、特に制限されず、公知の薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー、細胞表面レセプターマーカー等のマーカーをコードする配列があげられる。前記薬剤耐性マーカーとしては、特に制限されず、例えば、ネオマイシン耐性マーカー、ゼオシン耐性マーカー、ピューロマイシン耐性マーカー、ハイグロマイシン耐性マーカー、ヒスチジノール耐性マーカー等があげられる。前記蛍光タンパク質マーカーとしては、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)、EGFP(変異型GFP:Enhanced GFP)、d2EGFP(destabilized variant of EGFP(2hr half−life:短半減期)等があげられる。また、酵素マーカーとしては、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等があげられる。これらの選択マーカーコード配列は、その配列にしたがってPCR等により合成してもよいし、前記選択マーカーコード配列を有する市販のベクター(例えば、商品名pC1−neo、Promega社製)から調製することもできる。なお、前記TA発現用ベクターが選択マーカーを有する場合、目的DNA発現用ベクターの選択マーカーと前記TA発現用ベクターの選択マーカーとは、異なるマーカーであることが好ましい。
本発明の目的DNA発現用ベクターにおいて、前記目的DNAの種類は、何ら制限されず、目的に応じて適宜設定できる。目的DNAとしては、例えば、遺伝子、遺伝子の部分配列、遺伝子を含む配列、機能が不明なDNA配列等があげられる。具体例としては、後述のように、例えば、宿主細胞の内在性遺伝子のノックアウトが目的の場合は、前記内在性遺伝子やその部分配列と同じ配列もしくは同じ機能を有する配列等を、目的DNA配列とすることができる。また、後述のように、タグを付加したり、塩基を置換、欠失、付加等した改変型遺伝子の導入が目的の場合は、例えば、内在性遺伝子やその部分配列にタグを付加したり、内在性遺伝子やその部分配列の塩基を置換、欠失、付加等させた改変型DNA配列を、目的配列とすることができる。
本発明の目的DNA発現用ベクターの具体例としては、例えば、上流側から、tetオペレーター配列が複数回(2回以上、例えば、7回)連続した配列、プロモーター配列(例えば、最小CMVプロモーター配列)、目的DNA配列、IRES配列および薬剤耐性マーカーコード配列が、この順序で配置された構造があげられる。なお、本発明の目的DNA発現用ベクターは、この例には限定されない。
また、本発明の目的DNA発現用ベクターとしては、前述のように目的DNA配列を含むベクター(以下、「第1の目的DNA発現用ベクター」ともいう)の他に、以下に示す第2のベクターがあげられる。すなわち、本発明の第2のDNA発現用ベクターは、tetオペレーター配列、目的DNA配列を結合可能なクローニングサイト、前記クローニングサイトに導入される目的DNA配列の転写を制御するプロモーター配列、バイシストロニック性制御配列および選択マーカーコード配列を含み、前記tetオペレーター配列および前記プロモーター配列の制御下において、前記クローニングサイトと前記選択マーカーコード配列との間に前記バイシストロニック性制御配列が配置されている。目的DNA配列に代えて、クローニングサイトを有する以外は、前記本発明の第1の目的DNA発現用ベクターと同様である。
本発明の第2の目的DNA発現用ベクターは、例えば、本発明のスクリーニング方法への適用に先立って、前記クローニングサイトに目的DNA配列を連結させればよい。これにより得られるベクターが、前述の第1の目的DNA発現用ベクターである。
本発明の第2の目的DNA発現用ベクターにおいて、前記クローニングサイトは、特に制限されず、目的DNA配列を連結できればよく、また、目的DNA配列を連結した際に、前記プロモーター配列の制御下で前記目的DNAの転写が起こる位置であればよい。前記クローニングサイトは、目的DNA配列の末端配列の種類にかかわらず、連結を容易に行えることから、いわゆるマルチクローニングサイト(MCS)とすることが好ましい。前記クローニングサイトに連結する目的DNAは、任意に決定でき、例えば、種類や由来等は何ら制限されない。
本発明のスクリーニング方法は、前述のように、下記(A)および(B)工程を含む。
(A) 宿主細胞に、TA発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入処理を行う工程
(B) 前記TA発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入処理を行った宿主細胞から、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択する工程
前記(A)工程において、TA発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターは、従来と同様に、宿主細胞に別々に導入(逐次導入)してもよいが、後述のように、従来法とは異なり、同時に導入(共導入)する方法も可能である。
前記(B)工程において、発現誘導時に前記選択マーカーを発現する細胞株を選択することが好ましい。tTA発現ベクターを用いるTet−Off系のスクリーニングの場合、前記発現誘導時とは、例えば、Tc系化合物の非存在下の状態である。具体的には、前記(B)工程において、導入処理を行った前記宿主細胞から、前記Tc系化合物の非存在下で、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーを発現する細胞株を選択することが好ましい。また、rtTA発現用ベクターを用いるTet−On系のスクリーニングの場合、前記発現誘導時とは、例えば、Tc系化合物の存在下の状態である。具体的には、前記(B)工程において、導入処理を行った前記宿主細胞から、前記Tc系化合物の存在下、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーを発現する細胞株を選択することが好ましい。
本発明のスクリーニング方法について、以下に、具体的に説明する。なお、本発明は、これらの形態に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
第1の実施形態として、共導入を行う例を説明する。
本発明においては、よりスクリーニング工程の短縮化、簡便化できることから、前記両ベクターを共導入することが好ましい。従来法においては、前述のように、TA発現用ベクターが導入された細胞株について、コントロールベクターを用いたルシフェラーゼ発現のアッセイを行って、高発現の細胞株を選別する必要がある。このため、TA発現用ベクターと目的DNA発現用ベクターとを導入する2段階の導入処理が必須であった。しかしながら、本発明によれば、前述のルシフェラーゼアッセイが不要であるため、1段階の導入処理(共導入)も可能である。そして、前述のように、前記目的DNA発現用ベクターの選択マーカーの発現を確認するのみで、目的の細胞株である可能性の高い候補株を選別することができる。
(A)TA発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入
目的の宿主細胞に、前記TA発現用ベクターと目的DNA発現用ベクターとを共導入する。これにより前記TA発現用ベクターと目的DNA発現用ベクターが宿主細胞のゲノムに導入される。前記ベクターは、例えば、in vivoおよびin vitroのいずれで細胞に導入してもよい。導入方法は、特に制限されないが、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラントランスフェクョン法、エレクトロポレーション法があげられる。また、この他にも、レトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター等を用いた方法等があげられ、これによって、例えば、in vivoで細胞に導入することもできる。
本発明において、「Tet−Off発現系」の細胞株のスクリーニングを行う場合は、TA発現ベクターとしてtTA発現用ベクターを使用し、「Tet−On発現系」の細胞株のスクリーニングを行う場合は、TA発現ベクターとしてrtTA発現用ベクターを使用する。
(B)ベクター導入細胞株の選択
続いて、共導入処理を行った宿主細胞から、前記目的DNA発現用ベクターの選択マーカーが発現した細胞株を、目的DNAも同時に発現している細胞株とみなして選択する。tTA発現用ベクターを使用したTet−Off発現系のスクリーニングの場合は、例えば、前記宿主細胞を前記Tc系化合物の非存在下で培養し、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択することが好ましい。また、rtTA発現ベクターを使用したTet−On発現系のスクリーニングの場合は、例えば、前記宿主細胞を前記Tc系化合物の存在下で培養し、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択することが好ましい。TA発現用マーカーが選択マーカーを有する場合は、例えば、前記TA発現用ベクターの選択マーカーと前記目的DNA発現用ベクターの選択マーカーの両方が発現した細胞株を選択してもよい。このようにして選択された細胞株が、前述のようにTc誘導型DNA発現細胞株の可能性が高い候補株である。
前記選択マーカーが発現した細胞株の選択方法は、特に制限されず、前記選択マーカーの種類に応じて適宜決定できる。具体例として、前記選択マーカーが薬剤耐性マーカーの場合は、例えば、対応する薬剤を添加した培地で、導入処理を行った宿主細胞を培養し、成育した細胞株を前記導入細胞株として選択することができる。宿主細胞の培養方法は、特に制限されず、その種類に応じて適宜決定できる(以下、同様)。Tet−On発現系のスクリーニングの場合は、前記培地に、さらにTc系化合物を添加することが好ましい。前記培地におけるTc系化合物の量は、例えば、テトラサイクリンの場合は、1μg/ml〜3μg/mlの範囲である。
前記TA発現用ベクターは、前述のように、さらに選択マーカーコード配列を有していてもよい。この場合、前記(B)工程において、前記(A)工程の処理を行った宿主細胞から、前記TA発現用ベクターにおける選択マーカーと前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーとが発現した細胞株を選択してもよい。
(第2の実施形態)
つぎに、第2の実施形態として、逐次導入を行う例を説明する。
(A)TA発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入
目的の宿主細胞に、前記TA発現用ベクターの導入処理を行い、続いて、目的DNA発現用ベクターの導入処理を行う。これによって、前記TA発現用ベクターと目的DNA発現用ベクターとが宿主細胞のゲノムに導入される。導入方法は、制限されず、前述と同様である(以下、同様)。逐次導入の場合、前記(A)工程において、一方のベクターを導入した後に、他方のベクターを導入すればよく、その順序は制限されない。例えば、目的DNA発現用ベクターの導入処理を行った後に、TA発現用ベクターの導入処理を行ってもよい。
また、逐次導入の場合、例えば、宿主細胞に前記TA発現用ベクターを導入した後、TA発現用ベクターが導入された細胞株のスクリーニングを行い、スクリーニングされた細胞株に、続いて、目的DNA発現用ベクターの導入処理を行ってもよい。前記スクリーニング方法は、特に制限されない。例えば、前述のように、前記TA発現用ベクターがさらに選択マーカーコード配列を有する場合は、導入処理を行った宿主細胞から、前記選択マーカーを発現する細胞株を選択することができる。さらに、選択した細胞について、Tc系化合物の存在時または非存在時においてコントロール遺伝子の発現が誘導されるコントロールベクター(例えば、商品名pTRE2−Luc、Clontech社製)を用いた、ルシフェラーゼアッセイを行ってもよい。アッセイの結果、発現誘導時にルシフェラーゼを発現する細胞株を選択することで、例えば、より優れた確率で誘導型DNA発現細胞株のスクリーニングを行うことができる。
(B)ベクター導入細胞株の選択
前記導入処理を行った宿主細胞から、前記目的DNA発現用ベクターの選択マーカーが発現した細胞株を、目的DNAも同時に発現している細胞株とみなして選択する。tTA発現用ベクターを使用したTet−Off発現系のスクリーニングの場合は、例えば、前記宿主細胞を前記Tc系化合物の非存在下で培養し、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択することが好ましい。また、rtTA発現ベクターを使用したTet−On発現系のスクリーニングの場合は、例えば、前記宿主細胞を前記Tc系化合物の存在下で培養し、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択することが好ましい。このようにして選択された細胞株が、前述のようにTc誘導型DNA発現細胞の可能性が高い候補株である。前記選択は、前記目的DNA発現用ベクターにおける前記選択マーカーが発現した細胞株を選択することにより行える。
(第3の実施形態)
第3の実施形態として、本発明は、さらに下記(C)工程を有してもよい。
(C) 前記(B)工程において選択した細胞株について、前記Tc系化合物の存在下および非存在下における、目的DNAの発現をアッセイする工程
このように、前記(B)工程で選択された細胞株について、Tc系化合物の存在下・非存在下での目的DNAの発現を確認することで、人為的に目的DNAの発現が調節可能なTc誘導型DNA発現細胞株であるか否か、いわゆる「Tc誘導性(Tc応答性)」を確認できる。したがって、本実施形態によれば、候補株の中から、目的の誘導DNA発現細胞株を取得することができる。このような方法によれば、人為的に目的DNAの発現を調節できる誘導型DNA発現細胞株を、効率的に得ることが可能である。
前記(C)工程としては、例えば、下記(C1)工程または(C2)工程があげられる。(C1)工程は、「Tet−Off発現系」のスクリーニングにおける工程であり、前記(B)工程で選択された細胞株から、前記Tc系化合物の非存在下で目的DNAを発現し、存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株を選択する。また、(C2)工程は、「Tet−On発現系」のスクリーニングにおける工程であり、前記(B)工程で選択された細胞株から、前記Tc系化合物の存在下で目的DNAが発現し、非存在下で目的DNAの発現が消失する細胞株を選択する。目的DNAの発現時の発現活性は、特に制限されないが、例えば、親株(例えば、未処理の宿主細胞株)の内在性DNAの発現を100%とした場合、25〜400%であることが好ましく、より好ましくは、50〜200%であり、最も好ましくは、100%であり、恒常的に発現することが好ましい。また、目的DNAの発現消失(抑制)時の発現活性は、例えば、親株(例えば、未処理の宿主細胞株)の内在性DNAの発現を100%とした場合、50%以下であることが好ましく、より好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、検出限界以下であり、特に好ましくは0%であり、恒常的に発現が抑制されていることが好ましい。
前記アッセイにおいて、使用するTc系化合物の種類や量、方法は、特に制限されず、従来公知の方法に基づいて適宜決定できる。一般に、培地に添加するTc系化合物の量は、例えば、テトラサイクリンの場合は、1μg/ml〜3μg/mlの範囲である。「Tet−Off発現系」のスクリーニングを行う場合、例えば、Tc系化合物を含まない培地での培養によって、目的DNAの発現を誘導し、続いて、前記培地にTc系化合物を添加することで、発現の誘導を中止する。また、「Tet−On発現系」のスクリーニングを行う場合は、例えば、Tc系化合物を含有する培地での培養によって、目的DNAの発現を誘導し、前記培地からTc系化合物を除去することで、発現の誘導を中止する。また、Tc系化合物の再除去や、再添加によって、誘導性をより厳密に確認することも好ましい。
プロモーターの種類は、前述のように、制限されず、宿主細胞に応じて適宜決定できる。プロモーターの選択方法は、何ら制限されないが、例えば、以下のように行うことができる。すなわち、任意のプロモーターを配置したTA発現用ベクターを準備し、これを宿主細胞に導入して、前述のようにTA発現用ベクターが導入された細胞株を選択する。そして、この選択した宿主細胞にコントロールベクターを導入する。前記コントロールベクターは、例えば、コントロール遺伝子のコード配列を備え、Tc系化合物の存在時または非存在時においてコントロール遺伝子の発現が誘導されるベクターである。具体例としては、前述のようにコントロール遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子が導入されたベクターがあげられる。そして、前記コントロールベクターを導入した宿主細胞について、前記Tc系化合物の存在時または非存在時におけるコントロール遺伝子の発現をアッセイする。その結果、例えば、発現誘導時に高いルコントロール遺伝子の発現(例えば、ルシフェラーゼ活性)を示し、非発現誘導時に前記発現が抑制された場合に、使用したプロモーターを好ましいプロモーターとして選択できる。なお、例示した方法は、好ましいプロモーターの選択に行うのであって、本発明において必須の工程ではなく、本発明を制限しない。
<誘導型DNA発現細胞株の製造方法>
本発明の誘導型DNA発現細胞株の製造方法は、Tc系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNA発現細胞株の製造方法であって、本発明の誘導型DNA発現細胞株のスクリーニング方法により、誘導型DNA発現細胞株を得ることを特徴とする。
本発明は、本発明のスクリーニング方法を含んでいればよく、その他の構成や条件は何ら制限されない。本発明によれば、人為的に目的DNA(例えば、目的遺伝子)の発現を調節できる誘導型DNA発現細胞株(例えば、誘導型遺伝子発現細胞株)を、効率的に得ることが可能になる。本発明は、中でも、前記(A)および(B)工程に加えて、前記(C)工程を含む本発明のスクリーニング方法を含むことが好ましい。なお、具体的な方法や条件等は、前記本発明のスクリーニング方法と同様である。
本発明により得られる誘導型DNA発現細胞株は、Tc系化合物の存在または非存在により、目的DNAの発現(転写)をON−OFFと切り替えることが可能である。このため、本発明の誘導型DNA発現細胞株は、例えば、遺伝子産物の機能解析のツールとして使用できる。具体例としては、例えば、遺伝子産物が細胞の成育や生存に必要な場合、所望の時点まで目的遺伝子の発現を誘導し、所定の時点で目的遺伝子の発現を消失させる。そして、発現を誘導した際の表現型と発現を消失させた際の表現型の変化を確認することによって、目的遺伝子の産物であるタンパク質の機能を解析することが可能である。
<誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法>
本発明の誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法は、Tc系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法であって、前記Tc系化合物は、TcまたはTc類縁体であり、下記(a)〜(c)工程を含むことを特徴とする。
(a) 下記(b)工程に先立って、または、下記(b)工程の後に、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行う工程
(b) 本発明の製造方法により、誘導型DNA発現細胞株を製造する工程であり、
目的DNA発現用ベクターが、目的DNA配列として、宿主細胞の内在性標的DNA配列と同じ機能を有する外来性DNA配列を有するベクターである、
前記工程
(c) 前記(b)工程で得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行う工程
前記(b)工程は、本発明のスクリーニング方法ならびに誘導型DNA発現細胞株の製造方法に該当する。このため、これらの工程に関しては、例えば、前述と同様にして行うことができる。本発明は、中でも、前記(A)および(B)工程に加えて、前記(C)工程を含む本発明のスクリーニング方法を含むことが好ましい。
本発明における前記目的DNA発現用ベクターは、前記目的DNA配列として、前記外来性DNA配列を有するベクターである。前記外来性配列は、特に制限されず、例えば、内在性標的DNA配列と同じ機能を有するDNA配列があげられる。したがって、例えば、内在性標的DNA配列と同一の配列でもよいし、内在性標的DNA配列と比較して、例えば、数個の塩基が置換、欠失または付加された配列や、例えば、相同性が70〜100%の配列等であってもよい。好ましくは、内在性標的DNA配列と同一のDNA配列である。また、内在性標的DNA配列は、例えば、内在性標的遺伝子の全長でもよいし、全長を含む配列、全長の部分配列でもよい。なお、ノックアウトの対象となる内在性標的DNAは、何ら制限されない。
本発明において、両アレルのノックアウトの順序は、特に制限されない。例えば、前記(b)工程に先立って、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行い、前記(b)工程の後、得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行うことができる。また、前記(b)工程の後、得られた細胞株における内在性標的DNA配列の両アレルのノックアウトを順次行ってもよい。
アレルのノックアウト方法は、特に制限されず、例えば、宿主細胞の有する相同組換え機構を利用した従来公知の方法が採用できる。具体例としては、ターゲティングベクターとして、例えば、薬剤耐性コード配列が、内在性標的DNA配列(例えば、内在性標的遺伝子)と相同な2つのポリヌクレオチド配列で挟まれた構造であるベクターを準備し、前記ターゲティングベクターを宿主細胞に導入処理する方法がある。前記ターゲティングベクターを宿主細胞に導入すると、前記宿主細胞の有する相同組換え機構により、宿主細胞の内在性標的DNA配列と前記ターゲティングベクターの薬剤耐性コード配列を交換させる反応が起きる。これによって、導入処理を行った宿主細胞は、内在性標的DNA配列を欠失し、前記ターゲティングベクター由来の薬剤耐性マーカー配列を獲得する。そして、内在性標的DNA配列がノックアウトされた前記宿主細胞は、薬剤耐性を獲得した細胞として選択することができる。
アレルのノックアウト方法は、特に制限されず、例えば、ターゲティングベクターを宿主細胞に導入処理し、宿主細胞が有する相同組換え機構を利用して、相同組換えにより内在性標的配列をノックアウトする方法があげられる。具体例としては、ターゲティングベクターにdTA等の毒性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を付加する方法(ネガティブセレクション)、遺伝子操作によって宿主細胞の相同組換え機構やDNA修復機構を一過的に人為的に操作する方法等がある。これらの方法を単独で、または組み合わせることによって、内在性標的DNA(例えば、内在性標的遺伝子)のノックアウトを行うことができる。
本発明において、前記(c)工程の後、さらに、下記(d)工程を有することが好ましい。これによって、ノックアウトされる内在性標的DNAだけでなく、導入された外来性DNA配列も発現されない細胞株を調製することができる。
(d) 前記(c)工程において得られた細胞株を、前記Tc系化合物の存在下または非存在下で、前記外来性DNA配列の発現を消失させる工程
前記(b)工程における前記誘導型DNA発現細胞株が、前記Tc系化合物の非存在下で、目的DNAを発現し、前記Tc系化合物の存在下で、目的DNAの発現を消失する細胞株の場合、以下のようにして前記外来性DNA配列の発現を消失させることが好ましい。まず、前記Tc系化合物の非存在下で、内在性標的DNA配列(例えば、内在性標的遺伝子)の両アレルがノックアウトされた細胞株を得る。この細胞株は、Tc系化合物が非存在下において、前記外来性DNA配列(例えば、外来性遺伝子)を発現する細胞株である。そして、この細胞株について、前記(d)工程において、前記Tc系化合物を存在下とすることで、外来性DNA配列の発現を消失させることが好ましい。他方、前記(b)工程における前記誘導型DNA発現細胞株が、前記Tc系化合物の存在下で、目的DNAを発現し、前記Tc系化合物の非存在下で、目的DNAの発現を消失する細胞株の場合、以下のようにして前記外来性DNAの発現を消失させることが好ましい。まず、前記Tc系化合物の存在下で、内在性標的DNA配列(例えば、内在性標的遺伝子)の両アレルがノックアウトされた細胞株を得る。この細胞株は、Tc系化合物の存在下において、前記外来性DNA配列(例えば、外来性遺伝子)を発現する細胞株である。そして、この細胞について、前記(d)工程において、前記Tc系化合物を非存在下とすることで、外来性DNA配列の発現を消失させることが好ましい。Tc系化合物の存在下とは、例えば、培地へのTc系化合物の添加により行うことができ、また、Tc系化合物の非存在下とは、例えば、培地へのTc系化合物の未添加、もしくは、培地からのTc系化合物の除去により行うことができる。
標的とする遺伝子が細胞の生存に必須である場合、単純なノックアウトによっては細胞が致死となり、ノックアウト細胞株を取得できないという問題がある。しかしながら、本発明の方法によれば、Tc系化合物の存在または非存在により目的遺伝子(外来性遺伝子)の発現を制御することが可能である。このため、例えば、外来性遺伝子の発現の維持により致死を防止した状態で、内在性標的遺伝子の両アレルのノックアウトを行えば、致死となることなく、ノックアウト細胞株を得ることができる。そして、このようにして得られたノックアウト細胞株は、反対にTc系化合物の存在または非存在により外来性標的遺伝子の発現をオフにできるため、標的遺伝子の表現型の解析が可能になる。このように、本発明によれば、これまで十分に研究が進められなかった細胞における、いわゆる必須遺伝子を含む遺伝子産物の機能解析等が可能となるため、本発明は、医薬品開発や臨床診断キットの開発と、生命科学や臨床医学の分野において非常に有用な技術といえる。また、本発明の誘導型DNAノックアウト細胞株は、例えば、抗体のネガティブコントロールとして使用できる。新規の抗体の作製においては、その有効性を確認するために、抗原を発現しないネガティブコントロールが求められている。しかしながら、例えば、単に前記抗原をコードする遺伝子をノックアウトしたのみでは、前記遺伝子が生育に必須な場合に細胞が致死となるという問題がある。このため、少なくとも従来法が機能しない細胞種においてでは、そのような細胞株を構築することが困難であった。これに対して、本発明の製造方法によれば、前述のように、細胞が致死となることなく、目的の遺伝子、つまり、抗原をコードする遺伝子をノックアウトし、且つ、所望の際に前記抗原の発現を消失させることができる。このため、本発明の誘導型遺伝子ノックアウト細胞株は、抗原の発現を消失させることで、前述のネガティブコントロールとして使用することが可能である。
なお、本発明を適用する細胞の種類は、何ら制限されず、例えば、前述のような細胞種があげられ、中でも、標的組換えが実施可能な細胞種や、IRESが機能する細胞種に適用できる。標的組換えが実施可能な細胞種としては、例えば、Nalm−6細胞、HCT116細胞、ヒトES細胞、マウスES細胞、マウスEC細胞、ニワトリDT40細胞等が一例としてあげられ、これ以外にも各種真核細胞が該当する。IRESが機能する細胞種としては、例えば、Nalm−6細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、WI-38細胞、NIH3T3細胞、CHO細胞、HCT116細胞、ヒトES細胞、ヒト臍帯血幹細胞、ヒト間葉系幹細胞、マウスES細胞、マウスEC細胞、ニワトリDT40細胞、Sf9細胞等が一例としてあげられるが、これには制限されず、広範な生物種の細胞があげられる。
<改変型DNA誘導型ノックアウト細胞株の製造方法>
本発明の改変型DNA誘導型ノックアウト細胞株の製造方法は、内在性DNAがノックアウトされ、且つ、Tc系化合物の存在または非存在によって発現が調節可能な内在性DNAの改変型DNAが導入された改変型DNAノックアウト細胞株の製造方法であって、前記Tc系化合物が、TcまたはTc類縁体であり、下記(l)〜(n)工程を含むことを特徴とする。
(l) 下記(m)工程に先立って、または、下記(m)工程の後に、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行う工程
(m) 本発明の製造方法により、誘導型DNA発現細胞株を製造する工程であり、
目的DNA発現用ベクターが、目的DNA配列として、宿主細胞の内在性標的DNA配列の改変型DNA配列を有するベクターである、前記工程
(n) 前記(m)工程で得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行う工程
前記(m)工程は、本発明のスクリーニング方法ならびに誘導型DNA発現細胞株の製造方法に該当する。このため、これらの工程に関しては、例えば、前述と同様にして行うことができる。本発明は、中でも、前記(A)および(B)工程に加えて、前記(C)工程を含む本発明のスクリーニング方法を含むことが好ましい。
前記目的発現用ベクターは、目的DNA配列として、前記改変型DNA配列を有する以外は、前述と同様である。前記改変型DNA配列は、特に制限されないが、例えば、前記内在性標的DNA配列の変異型DNA配列や、前記内在性標的DNA配列にタグを融合させた配列(タグ融合型DNA配列)や、他の生物種の機能的ホモログDNA配列等があげられる。前記内在性標的DNAとしては、例えば、内在性遺伝子、内在性遺伝子を含む配列、内在性遺伝子の部分配列があげられる。前記変異型DNA配列としては、例えば、標的タンパク質(内在性遺伝子がコードするタンパク質)の変異型(変異型タンパク質)をコードする配列があげられる。前記タグの種類は、特に制限されず、例えば、GFP(Green Fluorescence Protein)等の蛍光タンパク質のコード配列や、Flagタグ、HAタグ等があげられる。なお、ノックアウトの対象となる内在性標的DNAの種類は、何ら制限されない。
本発明において、両アレルのノックアウトの順序は、特に制限されない。例えば、前記(m)工程に先立って、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行い、前記(m)工程の後、得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行うことができる。また、前記(m)工程の後、得られた細胞株における内在性標的DNA配列の両アレルのノックアウトを順次行ってもよい。
本発明において、前記(n)工程の後、導入DNAの発現を消失させる場合には、下記(o)工程を有することが可能である。これによって、ノックアウトされる内在性標的DNA配列(例えば、内在性遺伝子)だけでなく、導入された改変型DNA配列(例えば、改変型遺伝子)も発現されない細胞株を調製することができる。
(o) 前記(n)工程において得られた細胞株を、前記Tc系化合物の存在下または非存在下で、前記外来性DNA配列の発現を消失させる工程
前記(o)工程は、前述した、本発明の誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法における前記(d)工程と同様にして行うことができる。また、アレルのノックアウトも、本発明の誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法で説明した方法と同様にして行える。
本発明の方法によれば、例えば、細胞が致死となることなく、内在性標的DNAの両アレルのノックアウトを行うことができ、且つ、導入した改変型の外来性DNAは、Tc系化合物の存在または非存在により発現を制御できる。このような方法により改変型の外来性DNAを導入した改変型細胞株を用いれば、例えば、機能が不明であるタンパク質ドメインの解析や、様々なタンパク質修飾の生理的意義を明らかにすることが可能である。また、本発明によれば、改変型DNAとして、各種タグを融合させた標的タンパク質のコード配列を導入することも可能である。これによって、例えば、生細胞における標的タンパク質の動態観察や、標的タンパク質の相互作用因子を抗体アフィニティカラムによって精製すること等ができる。さらに、本発明により得られる改変型DNA誘導型ノックアウト細胞株は、例えば、抗体のネガティブコントロールとして使用できる。従来法では、ネガティブコントロールの構築に前述のような問題があった。これに対して、本発明の製造方法によれば、前述のように、細胞が致死となることなく、目的の遺伝子、つまり、抗原をコードする遺伝子をノックアウトし、且つ、所望の際に前記抗原の発現を消失させることができる。このため、本発明の誘導型遺伝子ノックアウト細胞株は、抗原の発現を消失させることで、前述のネガティブコントロールとして使用することが可能である。さらに、抗原部位となる特定の領域やアミノ酸のみを改変した変異型標的タンパク質を発現誘導できるため、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、アセチル化、メチル化、ユビキチン化等)を受けた特異的な部位を認識するような抗体を作成し、そのネガティブコントロールとして利用する場合の価値は高い。このため、本発明によれば、医薬品開発や臨床診断キットの開発と、生命科学や臨床医学の分野において非常に有用な技術といえる。
なお、本発明を適用する細胞の種類は、何ら制限されず、例えば、前述のような細胞種があげられ、中でも、前記標的組換えが実施可能な細胞種や今後の技術の進展により標的組換えの実施が可能となる細胞種、前記IRESが機能する細胞種に適用できる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されない。
[実施例1]
Nalm−6細胞について、「Tet−Off発現系」の細胞株のスクリーニングを行った。
tTA発現用ベクター
pIRESneo3ベクターのCMVプロモーターを、pCAGGSベクター由来のCAGプロモーターに置き換え、マルチクローニングサイトにpTet−Offベクター由来のtTAをクローニングした。得られたベクターをpCAG−tTA−IRES−Neoベクターという。これをtTA発現用ベクターとして使用した。図1(A)に、tTA発現用ベクターの一部を図示する。同図において、pCAGは、CAGプロモーターを示す、tTAは、tTAコード配列をそれぞれ示す。
目的遺伝子発現用ベクター
pMXs−IPベクター由来のIRES−Puro配列を、pTRE−Tightベクターのマルチクローニングサイト下流にクローニングし、さらに、前記マルチクローニングサイトに、NFH−hDDM1をコードする配列をクローニングした。前記NFH−hDDM1は、N末端に2つのエピトープタグ(FlagタグおよびHAタグ)を付加したヒトDDM1遺伝子である(以下、同様)。得られたベクターを、pTRE−tight−NFH−hDDM1−IRES−Puroベクターという。これを目的遺伝子発現用ベクターとして使用した。図1(B)に、pTRE−tight−NFH−hDDM1−IRES−Puroベクターの一部を図示する。同図において、Puroは、ピューロマイシン耐性マーカーのコード配列、Oは、tetオペレーター配列が7回連続した配列、PminCMVは、最小CMVプロモーターをそれぞれ示す。
目的遺伝子の導入
まず、Nalm−6細胞にtTA発現用ベクターを導入した。tTA発現用ベクターの導入は、遺伝子導入システム(商品名Nucleofector(登録商標)、Amaxa社製)および前記システム専用の遺伝子導入試薬を用いて、以下の方法により行った。
指数増殖中のNalm−6細胞(約2×10個)を用意し、これに前記遺伝子導入試薬および前記tTA発現用ベクター2μgを加え、前記遺伝子導入システムを用いて処理した。処理の終了後、37℃に温めておいたES培地4mlを前記細胞に添加し、24時間、37℃で、COインキュベータ内に静置した。
24時間静置後の細胞を、細胞濃度が約5×10cells/mlになるように、終濃度1.4mg/mlでG418を含有するES培地で希釈し、この細胞懸濁液を96ウェルプレートにまいた(200μl細胞懸濁液/ウェル、1×10cells/ウェル)。このプレートを、2週間、37℃で、COインキュベータ内に静置した。2週間後、G418に耐性を示した細胞株をtTA安定発現株として得た。
続いて、得られたクローン株(tTA安定発現株)にpTRE−Tight−Lucベクター(商品名、Clontech社製)を導入して、24時間培養を行った。なお、ベクターの導入方法ならびに培養方法は、薬剤無添加のES培地を使用する以外は、前述と同様である。
ここで、得られた培養細胞から従来公知の方法により細胞抽出液を調製し、2×10細胞に相当するルシフェラーゼ活性を測定した。tTAの発現(またはrtTAの発現)を誘導するプロモーターは、特に制限されず、宿主細胞として使用する細胞種によって選択できる。そこで、このルシフェラーゼアッセイにより、Nalm−6細胞におけるtTAの発現を誘導するプロモーターの検定を行った。ルシフェラーゼ活性の測定には、試薬としてLuciferase Assay System(商品名、Promega社製)、ルミノメーターとして、Lumat LB 9507(商品名、BERTHOLD TECHNOLOGIES社製)を使用した。細胞抽出液を添加しない前記試薬のみを用いてルシフェラーゼ活性を測定し、この値をバックグラウンドとした。この結果を、下記表1に示す。前記表に示すように、得られた細胞株クローンは、いずれも高いルシフェラーゼ活性を示した。この結果から、Nalm−6細胞においては、CAGプロモーターが、tTA(またはrtTA)の発現誘導に有効であることがわかった。
Figure 2008050774
前記細胞株クローンの中で最もルシフェラーゼ活性が高い細胞株(前記表においてCAG clone 8)に、目的遺伝子をクローニングした目的遺伝子発現用ベクター(pTRE−tight−NFH−hDDM1−IRES−Puroベクター)を、前記tTA発現用ベクターと同様の方法により導入した。導入処理を行った細胞株クローンを、さらに、終濃度0.2μg/mlのピューロマイシンを含有するES培地において、37℃で2週間培養し、生育したピューロマイシン耐性細胞株を、前記目的遺伝子発現用ベクターが導入された細胞株クローンとして選択した。
選択したピューロマイシン耐性細胞株のうち任意の11株について、抗体を用いた一般的なウェスタンブロットにより、目的遺伝子からのタンパク質発現の有無を確認した。
まず、前記各細胞株から調製した溶解物を7重量%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、泳動した前記ゲル中のタンパク質をニトロセルロースメンブレンに移した。このニトロセルロースメンブレンに一次抗体を添加して、抗原抗体反応を行った後、さらに二次抗体を添加して、抗原(hDDM1タンパク質に付加したHAエピトープ)に結合した一次抗体と添加した二次抗体との抗原抗体反応を行った。そして、前記ニトロセルロースメンブレンを検出試薬と接触させたのち、化学発光をX線フィルムに感光させて、目的タンパク質(NFH−hDDM1タンパク質)を検出した。なお、電気泳動において、各レーンに等量のタンパク質が泳動されていることを示すために、ローディングコントロールとして、α−HA抗体により生じるバックグランドのシグナルを、あわせて検出した。この結果を図2に示す。同図は、複数のピューロマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1遺伝子の発現(タンパク質発現)を示す写真である。同図に示すように、11株のピューロマイシン耐性細胞株のうち、10株についてNFH−hDDM1の発現が確認された。この結果から、10/11という極めて高い確率で、目的遺伝子が導入され且つ発現誘導により発現している細胞株が得られることがわかった。
Tc誘導性の確認
図2におけるClone No.5のピューロマイシン耐性細胞株について、Tcの添加による目的遺伝子の発現抑制(NFH−hDDM1タンパク質の発現抑制)、ならびに、Tc除去による目的遺伝子の再発現(NFH−hDDM1タンパク質の再発現)を確認した。
まず、終濃度1μg/mlとなるようにTcを添加したES培地で、前記ピューロマイシン耐性細胞株の培養(37℃)を所定時間(Tc添加後0、3、6、12、24、48時間)行った。引続き、遠心による前記Tc含有ES培地の除去と、新たなTc無添加ES培地による培養細胞の洗浄を2回繰り返して、前記培養液からTcを除去し、さらにTc無添加ES培地において所定時間(Tc除去後0、3、6、12、24、48時間)の培養を行った。そして、これらの一連の培養過程において、前記ピューロマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を、前述と同様の間接検出法(ウェスタンブロッティング)により確認した。これらの結果を図3に示す。同図は、ピューロマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1遺伝子の発現(タンパク質発現)を示す写真であり、同図(a)は、Tc添加後の発現抑制を示す結果であり、同図(b)は、Tc除去後の再発現を示す結果である。
同図(a)に示すように、目的遺伝子(NFH−hDDM1遺伝子)が導入されたピューロマイシン耐性細胞株においては、Tc添加後、経時的にNFH−hDDM1の発現量が抑制され、48時間後には、hDDM1タンパク質を示すバンドは確認できなかった。さらに、同図(b)に示すように、TcによってNFH−hDDM1遺伝子の発現が抑制された細胞株において、Tcを除去することによって、経時的にNFH−hDDM1の発現が再度確認された。このことから、本実施例によれば、tTAの発現、目的遺伝子の導入ならびにTcの存在・非存在による目的遺伝子の発現制御が可能であることが証明された。
[実施例2]
Nalm−6細胞について、「Tet−On発現系」の細胞株のスクリーニングを行った。なお、特に示さない限りは、前記実施例1と同様に行った。
rtTA発現用ベクターの構築
pTet−Onベクター由来のrtTAをpCAGGSベクターにクローニングした。得られたベクターをrtTA発現ベクターとして使用した。
目的遺伝子発現用ベクター
pTRE−tight−IRES−NeoベクターのマルチクローニングサイトにNFH−hDDM1遺伝子をクローニングした。得られたベクターを遺伝子発現用ベクターとして使用した。
ベクターの導入
Nalm−6細胞に、前記rtTA発現用ベクターと目的遺伝子発現用ベクターとを共導入した。なお、ベクターの導入方法は、前記実施例1と同様である。そして、導入処理を行ったNalm−6細胞を、ネオマイシン(終濃度1.2mg/ml)とTc(終濃度2μg/ml)とを含むES培地で培養し、複数のネオマイシン耐性の細胞株クローンを得た。
Tc誘導性の確認
(1)Tc存在下
まず、得られたネオマイシン耐性細胞株クローンのうち任意の12株について、前記実施例1と同様にして、NFH−hDDM1タンパク質ならびに内在性hDDM1タンパク質の発現をウェスタンブロッティングにより確認した。これらの結果を図4に示す。同図は、ネオマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1遺伝子の発現(タンパク質発現)を示す。同図に示すように、実施例2では、ネオマイシン耐性株クローン12株の中で、4株がNFH-hDDM1タンパク質を発現した。この結果から、本実施例によれば、極めて高い確率で目的遺伝子を発現できる細胞株を得られることがわかった。
(2)Tc除去およびTc再添加
続いて、NFH−hDDM1タンパク質を発現したネオマイシン耐性細胞株について、Tc除去による発現の消失と、Tc再添加による再発現を確認した。具体的には、NFH−hDDM1タンパク質を発現したネオマイシン耐性細胞株について、前記実施例1と同様にして、培地からTcの除去を行い、除去から48時間経過後、再度、Tcを終濃度2μg/mlとなるように培地に添加した。これらの一連の培養過程において、前記細胞株における、NFH−hDDM1タンパク質の発現を前述の間接検出法により確認した。これらの結果を図5に示す。同図は、ネオマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1遺伝子の発現(タンパク質発現)を示し、同図(a)は、Tcを除去した際の発現抑制を示す結果であり、同図(b)は、Tcを再添加した際の再発現を示す結果である。なお、両図における数字は、Tc除去開始後の経過時間ならびにTc再添加後の経過時間を示す。その結果、同図(a)に示すように、Tc除去から48時間後には、NFH−hDDM1の発現が消失した。そして、同図(b)に示すように、再度Tcを添加することによって、3時間後にはNFH−hDDM1の発現が確認できた。このように、Tet−On発現系においても、同様に目的の誘導型遺伝子発現細胞株が得られることがわかった。
[実施例3]
(実施例3−1)
HeLa細胞について、「Tet−Off発現系」の細胞株のスクリーニングを行った。なお、特に示さない限りは、前記実施例1と同様に行った。
tTA発現用ベクター
pTet−Offベクター由来のtTAをpCAGGSベクターにクローニングした。得られたベクターを、tTA発現ベクターとして使用した。
目的遺伝子発現用ベクター
pTRE−tight−IRES−NeoベクターのマルチクローニングサイトにNFH−hDDM1遺伝子をクローニングした。得られたベクターを遺伝子発現用ベクターとして使用した。
ベクターの導入
HeLa細胞に、前記tTA発現用ベクターと目的遺伝子発現用ベクターとを共導入した。なお、ベクターの導入方法は、前記実施例1と同様である。そして、導入処理を行ったHeLa細胞を、ネオマイシン(終濃度1.2mg/ml)を含む増殖培地(Tc未含有)で培養し、複数のネオマイシン耐性の細胞株クローンを得た。
Tc誘導性のアッセイ
得られたネオマイシン耐性細胞株クローンのうち任意の株について、前記実施例1と同様にして、NFH−hDDM1タンパク質ならびに内在性hDDM1タンパク質の発現をウェスタンブロッティングにより確認した。これらの結果を図6に示す。同図は、ネオマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1遺伝子の発現(タンパク質発現)を示す。同図に示すように、実施例3−1では、ネオマイシン耐性株クローンのうち、十分量のタンパク質が確認された9株が、全てNFH-hDDM1タンパク質の発現を示した。これらの結果から、本実施例によれば、極めて高い確率で目的遺伝子を発現できる細胞株を得られることがわかった。
(実施例3−2)
さらに、HeLa細胞について、「Tet−On発現系」の細胞株のスクリーニングを行った。なお、特に示さない限りは、前記実施例2と同様に行った。
rtTA発現用ベクター
実施例2で作製したrtTA発現用ベクターを使用した。
目的遺伝子発現用ベクター
実施例3−2の遺伝子発現用ベクターとして、前記実施例2で作製したNFH−hDDM1遺伝子を挿入した遺伝子発現用ベクターを使用した。
ベクターの導入
Nalm−6細胞に、前記rtTA発現用ベクターと目的遺伝子発現用ベクターとを共導入した。なお、ベクターの導入方法は、前記実施例1と同様である。そして、導入処理を行ったNalm−6細胞を、ネオマイシン(終濃度1.2mg/ml)とTc(終濃度2μg/ml)とを含むES培地で培養し、複数のネオマイシン耐性の細胞株クローンを得た。
Tc誘導性のアッセイ
ネオマイシン耐性の細胞株クローンについて、実施例2と同様にして、NFH−hDDM1タンパク質ならびに内在性hDDM1タンパク質の発現を確認した。これらの結果を図7に示す。同図は、ネオマイシン耐性細胞株におけるNFH−hDDM1遺伝子の発現(タンパク質発現)を示す。同図に示すように、実施例3−2では、ネオマイシン耐性株クローン6株の中で、5株がNFH-hDDM1タンパク質を発現した。これらの結果から、本実施例によれば、極めて高い確率で目的遺伝子を発現できる細胞株を得られることがわかった。
このように、従来法ではTetシステムが機能しなかったNalm−6細胞において、本発明のシステムが機能することが確認された。また、HeLa細胞は、従来法でもTc応答性の遺伝子発現細胞株を取得できたが、本発明のシステムを用いることで、非常に高効率に目的の細胞株を取得できることがわかった。したがって、Tc誘導型遺伝子発現系が機能しないとされていた種々の培養細胞や初代培養細胞、ヒトの幹細胞等についても、本発明を適用することが可能といえる。また、従来法でも機能するとされていた細胞種でも、より効果的に適用することが可能となった。
[実施例4]
Tc誘導型ノックアウト細胞株の作製を行った。Tc誘導型ノックアウト細胞株の作製方法の概略を図8に示す。
図8に示すように、まず、従来公知の方法により、野生型Nalm−6細胞(野生型細胞)の内在性目的遺伝子の片アレルを破壊し、ヘテロ細胞株(+/−)を作製した。続いて、前記ヘテロ細胞株に、Tc応答性目的遺伝子発現用ベクターおよびtTA発現用ベクターを導入した(+/−;Tc応答性目的遺伝子)。ここで、導入処理を行った細胞を、薬剤を含むES培地(Tc無添加)で培養し、薬剤耐性の細胞株クローンを選択した。続いて、従来公知の方法により、残りの片アレルの内在性目的遺伝子を破壊することによって、Tc誘導型の条件的ノックアウト細胞株を作製した(−/−;Tc応答性目的遺伝子)。本実施例において、前記目的遺伝子は、hDDM1であり、前記Tc応答性目的遺伝子発現用ベクターとして、前記実施例3−1で使用した、NFH−hDDM1遺伝子を挿入した目的遺伝子発現用ベクターを使用し、tTA発現用ベクターとして、前記実施例3−1で使用したtTA発現用ベクターを使用した。また、前記培地に含まれる薬剤は、ピューロマイシンとした。
野生型細胞株、ヘテロ細胞株(+/−)、Tc応答性にhDDM1を発現したヘテロ細胞株(+/−;hDDM1)および条件的ノックアウト細胞株(−/−;hDDM1)について、サザンブロットにより内在性hDDM1遺伝子座の遺伝子型を確認した。この結果を図9(A)に示す。同図は、各細胞株の遺伝子型を示すオートラジオグラフィーである。同図に示すように、最終的に得られた条件的ノックアウト細胞株は、両アレルが破壊されていた。また、これらの細胞株について、hDDM1タンパク質の発現をウェスタンブロットにより確認した。この結果を図9(B)に示す。同図は、各細胞株のhDDM1タンパク質の発現を示す。同図に示すように、最終的に得られた条件的ノックアウト細胞株は、内在性hDDM1遺伝子は両アレルともに破壊されているが、ベクター導入によるhDDM1タンパク質の発現が確認された。さらに、これらの細胞株から精製したゲノムをDNAメチル化に感受性の制限酵素で切断し、サテライト2プローブを用いてサザンブロットを行った。この結果を図10に示す。同図は、各細胞株の精製ゲノムの切断パターンを示すオートラジオグラフィーである。同図に示すように、最終的に得られた条件的ノックアウト細胞株のゲノムは、野生型またはヘテロ細胞株(+/−)と同様の挙動を示したことから、導入したhDDM1が機能的であり、DNAのメチル化が保たれていることがわかった。これらのことから、本実施例の方法によれば、例えば、両アレルをノックアウトすることにより細胞が致死に到るということなく、目的遺伝子をノックアウトし、且つ、Tc非存在とすることで発現を誘導できるTc誘導型ノックアウト細胞株を得られることがわかった。
[実施例5]
内在性遺伝子がノックアウトされ、且つ、Tc系化合物の存在または非存在によって発現を調節可能な改変型遺伝子に置換した改変型遺伝子ノックアウト細胞株の作製を行った。
まず、従来公知の方法により、野生型Nalm−6細胞(野生型細胞)の内在性hDDM1遺伝子の片アレルを破壊し、ヘテロ細胞株(+/−)を作製した。続いて、前記ヘテロ細胞株に、HAエピトープタグを付加した改変型のhDDM1遺伝子(NFH−hDDM1遺伝子)を挿入した遺伝子発現用ベクターおよび前記実施例3−1で使用したtTA発現用ベクターを導入した(+/−;NFH−hDDM1)。なお、前記遺伝子発現用ベクターは、前記実施例1で作製したpTRE−tight−IRES−Puroベクターのマルチクローニングサイトに、前記NFH−hDDM1遺伝子をクローニングすることにより作製した。ここで、導入処理を行った細胞を、前記実施例1と同様に、ピューロマイシンを含むES培地(Tc無添加)で培養し、ピューロマイシン耐性の細胞株クローンを選択した。この細胞株クローンは、Tc応答性(Tet−Off)のNFH−hDDM1遺伝子が導入されている。続いて、従来公知の方法により、残りの片アレルの内在性hDDM1遺伝子を破壊することによって、内在性遺伝子を改変型遺伝子に置換した改変型遺伝子ノックアウト細胞株を作成した(−/−;NFH−hDDM1)。
野生型細胞株、ヘテロ細胞株(+/−)、Tc応答性にNFH−hDDM1を発現したヘテロ細胞株(+/−;NFH−hDDM1)および改変型遺伝子ノックアウト細胞株(−/−;NFH−hDDM1)について、サザンブロットにより内在性hDDM1遺伝子の遺伝子型を確認した。この結果を図11(A)に示す。同図は、各細胞株の遺伝子型を示すオートラジオグラフィーである。同図に示すように、最終的に得られた改変型遺伝子ノックアウト細胞株は、両アレルが破壊されていた。また、これらの細胞株について、NFH−hDDM1タンパク質の発現をウェスタンブロットにより確認した。この結果を図11(B)に示す。同図は、各細胞株の内在性hDDM1タンパク質およびNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す。同図に示すように、最終的に得られた改変型遺伝子ノックアウト細胞株は、内在性hDDM1遺伝子は両アレルともに破壊されているが、ベクター導入によるNFH−hDDM1タンパク質の発現が確認された。さらに、これらの細胞株から精製したゲノムをDNAメチル化に感受性の制限酵素で切断し、サテライト2プローブを用いてサザンブロットを行った。この結果を図12に示す。同図は、各細胞株の精製ゲノムの切断パターンを示すオートラジオグラフィーである。同図に示すように、最終的に得られた改変型遺伝子ノックアウト細胞株のゲノムは、野生型またはヘテロ細胞株(+/−)と同様の挙動を示したことから、導入したNFH−hDDM1遺伝子由来のタンパク質が、内在性hDDM1遺伝子のDNAメチル化を維持する機能を有していることがわかった。これらのことから、本実施例の方法によれば、内在性遺伝子と改変型遺伝子とを入れ替えた細胞株を容易に得ることができる。
[実施例6]
Tc誘導型遺伝子ノックアウト細胞の抗体検証ツールとしての利用可能性を確認した。
前記実施例5と同様にして、内在性hDDM1遺伝子がノックアウトされ、且つ、Tc応答性(Tet-Off)の改変型hDDM1遺伝子(NFH−hDDM1遺伝子)が導入された改変型遺伝子ノックアウト細胞株(−/−;NFH−hDDM1)を作製した。前記改変型遺伝子ノックアウト細胞株を、終濃度2μg/mlとなるようにTcを添加したES培地で培養し、Tc添加後24時間ごとに培養細胞を回収した。回収した細胞株について、α−hDDM1抗体でウェスタンブロットを行った。この結果を、図13に示す。同図は、前記細胞株におけるNFH−hDDM1タンパク質の発現を示す写真である。また、同図において、写真上部の数字は、Tc添加後の日数を示す。同図に示すように、Tcを添加していない0日目では、NFH−hDDM1タンパク質が検出されたが、3日目以降ではNFH−hDDM1タンパク質は検出されなかった。この結果から、α−hDDM1抗体が、ウェスタンブロットに使用可能な抗体であることがわかる。
以上のように、本発明により得られるTc誘導型遺伝子ノックアウト細胞株や改変型遺伝子ノックアウト細胞株は、例えば、作製した抗体や購入した抗体が、ウェスタンブロット、免疫染色、免疫沈降等の実験に使用可能であるかを判断するツールとして、有用であることがわかった。また、近年、がんの治療薬として抗体医薬品が注目されているが、これらの特異性を検証するツールとしても、Tc誘導型遺伝子ノックアウト細胞株は、極めて有効であるといえる。
本発明によれば、前述のようなTA発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターを使用し、目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーの発現を確認するのみで、Tc系化合物の存在または非存在により目的DNAの発現を制御できない細胞を篩いにかけることができる。このため、目的のTc誘導型DNA発現細胞株である確率が極めて高い候補株をスクリーニングできる。また、本発明により選択される細胞株は、確率が高い候補株であることから、例えば、前記候補株についてのみ、最終的に、Tc系化合物の存在または非存在による目的DNAの発現制御を確認すれば足りる。このため、従来法と比較して、Tc誘導型DNA発現細胞株のスクリーニング方法全体を簡便に行うことができる。このように、本発明によれば、簡便且つ効率的にスクリーニングが行われることから、例えば、従来よりも短時間で目的のTc誘導型DNA発現細胞株を得る事が可能となる。さらに、これまで確率的にTc誘導型DNA発現細胞株を得ることが困難であった血球系細胞等についても、目的の細胞株が得られる可能性が向上したといえる。したがって、本発明によれば、例えば、これまで十分に研究が進められなかった細胞における遺伝子産物の機能解析等が可能となるため、医薬品開発や臨床診断キットの開発と、生命科学や臨床医学の分野において非常に有用な技術といえる。なお、本発明のスクリーニング方法は、例えば、目的のTc誘導型DNA発現細胞株である確率が高い候補細胞株のスクリーニング方法ともいえる。

Claims (22)

  1. テトラサイクリン系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNA発現細胞株のスクリーニング方法であって、
    前記テトラサイクリン系化合物は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類縁体であり、
    下記(A)および(B)工程を含むことを特徴とする選択方法。
    (A) 宿主細胞に、トランスアクチベーター発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入処理を行う工程であり;
    トランスアクチベーター発現用ベクターは、
    トランスアクチベーターをコードするポリヌクレオチド配列、および、前記トランスアクチベーターをコードするポリヌクレオチド配列の転写を制御するプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列の制御下において、前記トランスアクチベーターをコードするポリヌクレオチド配列が配置されているベクターであり、
    前記トランスアクチベーターは、前記テトラサイクリン系化合物の存在または非存在によってtetオペレーター配列への結合および非結合がスイッチするタンパク質であって、Tetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質、または、リバースTetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質であり;
    前記目的DNA発現用ベクターは、
    tetオペレーター配列、目的DNA配列、前記目的DNA配列の転写を制御するプロモーター配列、バイシストロニック性制御配列および選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列を含み、前記tetオペレーター配列および前記プロモーター配列の制御下において、前記目的DNA配列と前記選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列との間に前記バイシストロニック性制御配列が配置されているベクターである;
    前記工程
    (B) 前記トランスアクチベーター発現用ベクターおよび目的DNA発現用ベクターの導入処理を行った宿主細胞から、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーが発現した細胞株を選択する工程
  2. 前記(A)工程において、前記宿主細胞に、前記トランスアクチベーター発現用ベクターと前記目的DNA発現用ベクターとを共導入する、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
  3. 前記トランスアクチベーターが、Tetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質であり、
    前記Tetリプレッサーが、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下でtetオペレーター配列に結合し且つ前記テトラサイクリン系化合物の存在下でtetオペレーター配列に結合しないポリペプチドであり、
    前記(B)工程において、導入処理を行った前記宿主細胞から、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーを発現する細胞株を選択する、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
  4. 前記トランスアクチベーターが、リバースTetリプレッサーと転写活性化ドメインとを含む融合タンパク質であり、
    前記リバースTetリプレッサーが、前記テトラサイクリン系化合物の存在下でtetオペレーター配列に結合し且つ前記テトラサイクリン系化合物の非存在下でtetオペレーター配列に結合しないポリペプチドであり、
    前記(B)工程において、導入処理を行った前記宿主細胞から、前記テトラサイクリン系化合物の存在下、前記目的DNA発現用ベクターにおける選択マーカーを発現する細胞株を選択する、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
  5. 前記宿主細胞が、真核細胞である、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
  6. 前記宿主細胞が、IRESが機能する細胞である、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
  7. 前記宿主細胞が、Nalm−6細胞またはHeLa細胞である、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
  8. さらに、下記(C)工程を有する、請求の範囲1記載のスクリーニング方法。
    (C) 前記(B)工程において選択した細胞株について、前記テトラサイクリン系化合物の存在下および非存在下における、目的DNAの発現をアッセイする工程
  9. 前記(C)工程が、下記(C1)工程および下記(C2)工程のいずれかである、請求項8記載のスクリーニング方法。
    (C1) 前記(B)工程において選択した細胞株から、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下で目的DNAを発現し、前記テトラサイクリン系化合物の存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株を選択する工程
    (C2) 前記(B)工程において選択した細胞株から、前記テトラサイクリン系化合物の存在下で目的DNAを発現し、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株を選択する工程
  10. テトラサイクリン系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNA発現細胞株の製造方法であって、
    請求の範囲1記載の誘導型DNA発現細胞株のスクリーニング方法により、誘導型DNA発現細胞株を得ることを特徴とする製造方法。
  11. テトラサイクリン系化合物の存在または非存在によって目的DNAの発現が調節可能な誘導型DNAノックアウト細胞株の製造方法であって、
    前記テトラサイクリン系化合物は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類縁体であり、
    下記(a)〜(c)工程を含むことを特徴とする製造方法。
    (a) 下記(b)工程に先立って、または、下記(b)工程の後に、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行う工程
    (b) 請求の範囲10記載の製造方法により、誘導型DNA発現細胞株を製造する工程であり、
    目的DNA発現用ベクターが、目的DNA配列として、宿主細胞の内在性標的DNA配列と同じ機能を有する外来性DNA配列を有するベクターである、
    前記工程
    (c) 前記(b)工程で得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行う工程
  12. 前記(c)工程の後、さらに、下記(d)工程を有する、請求の範囲11記載の製造方法。
    (d) 前記(c)工程において得られた細胞株について、前記テトラサイクリン系化合物の存在下または非存在下、前記外来性DNA配列の発現を消失させる工程
  13. 前記誘導型DNA発現細胞株が、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下で目的DNAを発現し、前記テトラサイクリン系化合物の存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株であり、
    前記(d)工程において、前記(c)工程で得られた細胞株について、前記テトラサイクリン系化合物の存在下、前記外来性DNA配列の発現を消失させる、請求の範囲12記載の製造方法。
  14. 前記誘導型DNA発現細胞株が、前記テトラサイクリン系化合物の存在下で目的DNAを発現し、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株であり、
    前記(d)工程において、前記(c)工程で得られた細胞株について、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下、前記外来性DNA配列の発現を消失させる、請求の範囲12記載の製造方法。
  15. 内在性DNAがノックアウトされ、且つ、テトラサイクリン系化合物の存在または非存在によって発現が調節可能な改変型DNAが導入された改変型DNAノックアウト細胞株の製造方法であって、
    前記テトラサイクリン系化合物が、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類縁体であり、
    下記(l)〜(n)工程を含むことを特徴とする製造方法。
    (l) 下記(m)工程に先立って、または、下記(m)工程の後に、宿主細胞における内在性標的DNA配列の片アレルのノックアウトを行う工程
    (m) 請求の範囲10記載の製造方法により、誘導型DNA発現細胞株を製造する工程であり、
    目的DNA発現用ベクターが、目的DNA配列として、宿主細胞の内在性標的DNA配列の改変型DNA配列を有するベクターである、
    前記工程
    (n) 前記(m)工程で得られた細胞株における内在性標的DNA配列の他方の片アレルのノックアウトを行う工程
  16. 前記改変型DNA配列が、前記内在性DNA配列の変異型配列もしくは前記内在性DNA配列とは異なる生物種のホモログの配列、または、前記内在性DNA配列にタグを融合させたタグ融合型配列である、請求の範囲15記載の製造方法。
  17. 前記(n)工程の後、さらに、下記(o)工程を有する、請求の範囲16記載の製造方法。
    (o) 前記(n)工程において得られた細胞株を、前記テトラサイクリン系化合物の存在下または非在下、前記改変型DNA配列の発現を消失させる工程
  18. 前記誘導型DNA発現細胞株が、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下で目的DNAを発現し、前記テトラサイクリン系化合物の存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株であり、
    前記(o)工程において、前記(n)工程で得られた細胞株について、前記テトラサイクリン系化合物の存在下、前記改変型DNA配列の発現を消失させる、請求の範囲17記載の製造方法。
  19. 前記誘導型DNA発現細胞株が、前記テトラサイクリン系化合物の存在下で目的DNAを発現し、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下で目的DNAの発現を消失する細胞株であり、
    前記(o)工程において、前記(n)工程で得られた細胞株について、前記テトラサイクリン系化合物の非存在下、前記改変型DNA配列の発現を消失させる、請求の範囲17記載の製造方法。
  20. 前記宿主細胞が、真核細胞である、請求の範囲10、11および15のいずれか一項に記載の製造方法。
  21. 前記宿主細胞が、標的組換えが可能な細胞である、請求の範囲10、11および15のいずれか一項に記載の製造方法。
  22. 前記宿主細胞が、Nalm−6細胞である、請求の範囲10、11および15のいずれか一項に記載の製造方法。
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