JPWO2008044290A1 - Ms/ms質量分析装置 - Google Patents
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Abstract
本願は、真空排気される分析室(10)内に設置されるコリジョンセル(20)の内部を、連通開口(22)が設けられた隔壁(21)で前方室(23)と後方室(24)とに区画し、前者を開裂領域(A1)、後者収束領域(A2)としたMS/MS質量分析装置を開示する。開裂領域(A1)、および収束領域(A2)のそれぞれで、プリカーサイオンの開裂に最適なガス圧、およびクーリングによるイオンの収束に最適なガス圧を実現し、開裂効率およびイオン収束効率を共に高めることができる。
Description
本発明は、特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンを衝突誘起解離(CID=Collision-induced dissociation)により開裂させ、これにより生成するプロダクトイオン(フラグメントイオン)の質量分析を行うMS/MS質量分析装置に関する。
分子量が大きな物質の同定やその構造の解析を行うために、質量分析の1つの手法としてMS/MS分析(又はタンデム分析とも言う)という手法が知られている。図12は特許文献1、2などに開示されている従来のMS/MS質量分析装置の概略構成を示す図である。
このMS/MS質量分析装置では、図示しない真空ポンプにより真空排気される分析室10の内部にあって、分析対象の試料をイオン化してイオンを生成するイオン源11と最終的にイオンを検出してイオン量に応じた検出信号を出力する検出器16との間に、それぞれ4本のロッド電極から成る3段の四重極12、13、15が配置されている。第1段四重極12には直流電圧U1と高周波電圧V1・cosωtとを合成した電圧±(U1+V1・cosωt)が印加され、これにより発生する電場の作用により、イオン源11で生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有する目的イオンのみがプリカーサイオンとして選別されて第1段四重極12を通過する。
第2段四重極13は密閉性が高いコリジョンセル(衝突室)14内に収納されており、コリジョンセル14内にはCIDガスとして例えばArガスなどが導入される。第1段四重極12から送られて来たプリカーサイオンはコリジョンセル14内でArガスと衝突し、CIDによる開裂を生じてプロダクトイオンを生成する。この開裂の態様は様々であるため、通常、1種類のプリカーサイオンから質量電荷比の異なる複数種のプロダクトイオンが生成され、これらプロダクトイオンがコリジョンセル14を出て第3段四重極15に導入される。また、全てのプリカーサイオンが開裂するとは限らないから、プリカーサイオンがそのまま第3段四重極15に送り込まれることもある。
第3段四重極15には直流電圧U3と高周波電圧V3・cosωtとを合成した電圧±(U3+V3・cosωt)が印加され、これにより発生する電場の作用により、特定の質量電荷比を有するプロダクトイオンのみが選別されて第3段四重極15を通過し、検出器16に到達する。第3段四重極15に印加する直流電圧U3及び高周波電圧V3・cosωtを適宜変化させることで第3段四重極15を通過し得るイオンの質量電荷比を走査し、目的イオンの開裂により生じたプロダクトイオンの質量スペクトルを得ることができる。
上記構成においてコリジョンセル14は、プリカーサイオンをCIDガスと衝突させて開裂を促進させるほか、大きな運動エネルギを持つイオンをCIDガス(実際にはクーリングガスとして機能する)に接触させて運動エネルギを減衰させ、つまりはイオンのクーリングを行って発散を防止しながら次段へと効率良く輸送する機能も有する。即ち、コリジョンセル14はCIDの機能とクーリングによる収束の機能とを併せ持つが、実際にはその2つの機能を達成するのに適したガス圧条件は同一ではない。しかしながら、従来のMS/MS質量分析装置では、コリジョンセル14内で上記2つの機能を達成するためにそれらの機能を共にほぼ満足できる程度にガス圧を妥当な値に設定している。また、特にCIDの起こり易さはイオン通過方向(通常はイオン光軸Cに沿う方向)のコリジョンセル14の長さにも依存するから、設定されたガス圧の下で或る程度十分なCIDやクーリングが行えるようにコリジョンセル14のサイズを設計するようにしている。具体的には、従来の一般的なMS/MS質量分析装置では、イオン光軸Cに沿った方向のコリジョンセル14の長さは150〜200mm程度とされており、コリジョンセル14内のガス圧は数mTorrとなるようにCIDガス供給量が制御されるようになっている。
前述のようにコリジョンセル14内のガス圧は必ずしもCID及びクーリングによるイオン収束に最適なように設定されているわけでないため、開裂の効率やイオン収束の効率は最良の状態ではない。これが検出感度の向上を阻む1つの要因となっている。さらにまた、従来の構成では、CIDを十分に行うために、ガス圧をCIDに最適な値にまで上げられないのを補うべくイオン光軸Cに沿う方向にコリジョンセル14を長くしており、このことが装置全体のサイズの小形化を困難にしている。
本発明は上記のような課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、プリカーサイオンの開裂の効率やクーリングによるイオン収束の効率を従来よりもさらに改善することができるとともに、コリジョンセルを小形化することで装置全体の小形化に有利なMS/MS質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、前記プリカーサイオンと外部から供給された所定ガスとを衝突させて衝突誘起解離により該プリカーサイオンを開裂させるとともに前記所定ガスとの衝突によるクーリング作用によりイオンを収束させる開裂/収束部と、前記プリカーサイオンの開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、を真空排気される分析室の内部に配設したMS/MS質量分析装置において、
前記開裂/収束部は、
前記所定ガスにより前記分析室内のガス圧よりも高いガス圧に維持され、前記プリカーサイオンを開裂させる開裂領域と、
前記所定ガスにより前記分析室内のガス圧よりも高いガス圧に維持され、前記開裂領域から送られて来たイオンをクーリングして収束させる収束領域と、
を独立に有することを特徴としている。
前記開裂/収束部は、
前記所定ガスにより前記分析室内のガス圧よりも高いガス圧に維持され、前記プリカーサイオンを開裂させる開裂領域と、
前記所定ガスにより前記分析室内のガス圧よりも高いガス圧に維持され、前記開裂領域から送られて来たイオンをクーリングして収束させる収束領域と、
を独立に有することを特徴としている。
従来、コリジョンセル内部の1つの領域でプリカーサイオンの開裂とイオンのクーリングとを実施していたのに対し、本発明に係るMS/MS質量分析装置では、CIDによる開裂を促進させる開裂領域と、開裂により生成したプロダクトイオンや開裂せずに上記開裂領域を通り抜けたプリカーサイオンなどをクーリングして収束させる収束領域とを空間的に分離し、それぞれの領域におけるガス圧(又は真空度)はCIDとクーリングとに最適又はそれに近い条件に設定される。
このように開裂領域と収束領域とを空間的に分離するための一態様として、イオン入射開口とイオン出射開口とを備える略密閉されたコリジョンセルの内部が連通開口を有する隔壁で前方室と後方室とに区画されて、前方室又は後方室に外部から所定ガスが供給され、前方室内に前記開裂領域、後方室内に前記収束領域が設けられる構成とすることができる。
この構成では、分析室の外部から例えば前方室に供給されたArガス等の所定ガスは前方室内にほぼ拡散すると連通開口を経て後方室に流出し、後方室内にほぼ拡散するとイオン出射開口を経て分析室内に流出する。また前方室に供給された所定ガスの一部はイオン導入開口を経て直接分析室に流出する。分析室内は真空排気されているので、分析室内に流れ込んだ所定ガスは速やかに排出される。この場合、分析室内のガス圧よりも後方室内のガス圧が高く、後方室内のガス圧よりも前方室内のガス圧がさらに高い、というガス圧条件を容易に達成することができる。また、分析室の外部から後方室に所定ガスを供給するようにすれば、分析室内のガス圧よりも前方室内のガス圧が高く、前方室内のガス圧よりも後方室内のガス圧がさらに高い、というガス圧条件を容易に達成することができる。
また、前方室、後方室それぞれの容積、イオン入射開口、イオン出射開口、及び連通開口の開口面積、所定ガスの流入量などを適宜に定めることで、前方室及び後方室内のガス圧を或る程度自由に設定することができる。したがって、開裂領域におけるCIDによるイオンの開裂に最適なガス圧条件、収束領域におけるクーリングによるイオンの収束に最適なガス圧条件をそれぞれ達成することが容易になる。
また、開裂領域及び収束領域にはそれぞれ少なくとも高周波電場(通常はさらに直流電場)を形成するための電極を配置するが、開裂領域及び収束領域にはそれぞれ独立に電圧を印加可能な電極を設けることが望ましい。これによれば、開裂領域と収束領域とにそれぞれ異なる適切な電場を形成することができるので、分析に必要なイオンを発散させずに効率良く利用することができ、検出感度を一層向上させることができる。
本発明に係るMS/MS質量分析装置によれば、プリカーサイオンの開裂の効率が向上するため生成されるプロダクトイオンの量が増加し、さらにこのプロダクトイオンが無駄なく収束されて四重極質量フィルタ等の第2質量分離部まで輸送されるので、最終的に検出器に到達するイオンの量が増加する。これにより、検出感度が向上し、試料の同定や構造解析が容易になる。また、開裂領域においてはクーリングによるイオンの収束条件を考慮することなく高いガス圧を設定できるので、ガス圧を上げた分、イオン光軸に沿った方向の領域長を短くすることができる。それによって、開裂/収束部全体のサイズを従来よりも小さくし、質量分析装置自体の小形化にも有利である。
10…分析室
11…イオン源
12…第1段四重極
15…第3段四重極
16…検出器
20…コリジョンセル
21…隔壁
22…連通開口
23…前方室
24…後方室
25…イオン導入開口
26…イオン出射開口
30…CIDガス供給部
31…バルブ
32〜35…RF+DC電圧発生部
36…制御部
C…イオン光軸
11…イオン源
12…第1段四重極
15…第3段四重極
16…検出器
20…コリジョンセル
21…隔壁
22…連通開口
23…前方室
24…後方室
25…イオン導入開口
26…イオン出射開口
30…CIDガス供給部
31…バルブ
32〜35…RF+DC電圧発生部
36…制御部
C…イオン光軸
[第1実施例]
本発明の一実施例(第1実施例)であるMS/MS質量分析装置について、図面を参照して説明する。図1は第1実施例によるMS/MS質量分析装置の全体構成図、図2は開裂/収束部の詳細断面図、図3はコリジョンセルの前方室内に配置される電極の構成を示す斜視図(a)及びイオン光軸Cに直交する面上での配置図(b)である。図12に示した従来の構成と同じ構成要素については同一符号を付して詳しい説明を省略する。
本発明の一実施例(第1実施例)であるMS/MS質量分析装置について、図面を参照して説明する。図1は第1実施例によるMS/MS質量分析装置の全体構成図、図2は開裂/収束部の詳細断面図、図3はコリジョンセルの前方室内に配置される電極の構成を示す斜視図(a)及びイオン光軸Cに直交する面上での配置図(b)である。図12に示した従来の構成と同じ構成要素については同一符号を付して詳しい説明を省略する。
第1実施例のMS/MS質量分析装置では、第1段四重極(本発明における第1質量分離部に相当)12と第3段四重極(本発明における第2質量分離部に相当)15との間に、図12に示した従来のコリジョンセル14とは構造が異なるコリジョンセル20が本発明における開裂/収束部として配設されている。このコリジョンセル20は、イオン通過用の連通開口22が中央に設けられた隔壁21によりその内部が前方室23と後方室24とに区画されており、前方室23内が開裂領域A1、後方室24内が収束領域A2となっている。
前方室23内には、図3に示すように、イオン光軸Cに直交する面内でイオン光軸Cを取り囲むように4枚の同一径の円板形状の電極271a、271b、271c、271dが配置され、さらにイオン光軸Cに沿う方向に上記4枚の電極271a、271b、271c、271dを1組として平行移動するように所定間隔で複数組(この例では3組)が立設された構造の電極27が設置されている。また、後方室24内にも同様の構成の、但しイオン光軸Cに沿った方向に並ぶ電極枚数は相違する(同じでもよい)電極28が配置されている。これら電極27、28は、図12の構成における第2四重極13のロッド電極に代わるものである。
第1四重極12にはRF+DC電圧発生部32から、直流電圧U1と高周波電圧V1・cosωtとを合成した電圧±(U1+V1・cosωt)、或いはこれにさらに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加され、第3四重極15にはRF+DC電圧発生部35から、直流電圧U3と高周波電圧V3・cosωtとを合成した電圧±(U3+V3・cosωt)、或いはこれにさらに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。これは従来と同じである。また、前方室23内に配置された電極27にはRF+DC電圧発生部33から、直流バイアス電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加され、後方室24内に配置された電極28にはRF+DC電圧発生部34から、直流バイアス電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加される。RF+DC電圧発生部32、33、34、35で発生する電圧は制御部36により制御される。
具体的には、例えば図3(b)に示した4枚の電極板271a〜271dでは、イオン光軸Cを挟んで対向する2枚の電極板271aと271c、271bと271dがそれぞれ接続され、互いに極性の異なる高周波電圧が周方向に隣接する電極板に印加される。また、直流バイアス電圧は第1四重極12、第3四重極15に印加される直流バイアス電圧の値などに応じて適宜に決められる。但し、図1の構成では、イオン光軸Cに沿った方向に並ぶ電極板(例えば271a、272a、273a)には同一の電圧が印加されるようになっているが、イオン光軸Cに沿って直流バイアス電圧を段階的に変えることにより、イオンを加速するような直流電場を形成するようにしてもよい。これは前方室23、後方室24のいずれでも同様である。基本的に、電極27、28にそれぞれ印加される高周波電圧により形成される高周波電場によって、通過しようとするイオンはイオン光軸C付近に近付くように収束される。
CIDガスやクーリングガスとして機能するArガスは、CIDガス供給部30からバルブ31を介してコリジョンセル20の前方室23に供給される。前方室23は基本的にイオン入射開口25と連通開口22以外は密閉されており、分析室10内は真空排気されていて低いガス圧(高い真空度)が維持されているため、前方室23に流れ込んだArガスはイオン入射開口25を経て分析室10内に漏れ出すとともに連通開口22を経て後方室24内に漏れ出す。後方室24は連通開口22を除くと基本的にイオン出射開口26以外は密閉されているため、後方室24に流れ込んだArガスはイオン出射開口26を経て分析室10内に漏れ出す。分析室10内の容積は前方室23、後方室24に比較して格段に大きく、しかも速やかに真空排気が行われるため、上述したようなArガスの流れによって、前方室23内のガス圧P1、後方室24内のガス圧P2、分析室10内のガス圧P3の関係はP1>P2>P3となる。
ガス圧P3は分析室10内を真空排気する真空ポンプの能力によりほぼ決まるが、ガス圧P1、P2はArガスの供給流量、前方室23及び後方室24のそれぞれの容積、イオン入射開口25、イオン出射開口26及び連通開口22の面積などによって決まり、こららの構造的な設計や制御における設定により或る程度自由に決めることが可能である。ここでは一例として、イオン光軸Cに沿った方向の前方室23の長さL1を30mmとして前方室23内のガス圧P1を5mTorrに設定し、イオン光軸Cに沿った方向の後方室24の長さL2を50mmとして後方室24内のガス圧P2を2mTorrに設定しておくものとする。但し、これらの値はこれに限るものではなく、適宜に変更し得る。
上記構成のMS/MS質量分析装置の特徴的な動作を説明する。イオン源11から出射した各種のイオンの中で第1四重極12では特定の質量電荷比を有するイオンがプリカーサイオンとして選別され、イオン入射開口25を通して前方室23内に導入される。前方室23内部のガス圧は上述のように相対的に高くArガスの存在密度が高いため、前方室23に導入されたプリカーサイオンとArガスとは高い確率で衝突する。これにより、プリカーサイオンの開裂は高い効率で以て促進され、開裂の態様によって様々なプロダクトイオンが生成される。前方室23内の電極27に印加される高周波電圧により形成される高周波電場の作用によって、開裂により生成された各種プロダクトイオンは発散せずにイオン光軸C付近に収束し、連通開口22を通して後方室24へと送られる。
後方室24では前方室23内よりは低いものの比較的高い密度でArガスが存在しているため、後方室24内に送り込まれたプロダクトイオンは高い確率でArガスに接触し、イオンが持つ運動エネルギーは減衰する。即ち、プロダクトイオンや開裂せずに前方室23を通過したプリカーサイオンのクーリングが行われ、後方室24内の電極28に印加される高周波電圧により形成される高周波電場の作用を受け易くなる。これにより、後方室24に導入されたイオンは殆ど発散することなくイオン光軸C近傍に効率的に収束され、イオン出射開口26を通して引き出されて第3段四重極15に送り込まれる。したがって、開裂により生成したプロダクトイオンを無駄にすることなく質量分析に供することができる。第3段四重極15ではこの送り込まれた各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンが選別され、検出器16に到達して検出される。
以上のように本実施例のMS/MS質量分析装置では、コリジョンセル20にあって互いに区画された前方室23及び後方室24で、それぞれ最適又はそれに近いガス圧の条件の下でイオンの開裂とクーリングによるイオンの収束とを独立に実現することができる。また、ガス圧のみならず、電極27、28も分離されているので、印加電圧もイオンの開裂とクーリングによるイオンの収束とにそれぞれ適した値に設定することができる。したがって、従来のように同一の空間内でイオンの開裂とクーリングによるイオンの収束とを実現していた場合に比較して、開裂の効率を高めてプロダクトイオンの生成量を増加させることができるとともに、生成したプロダクトイオンを無駄にしないように後段に輸送して質量分析に供することができる。これにより、プロダクトイオンの検出感度が向上するから、例えば質量スペクトル上に現れるピークの高さが高くなり、試料の同定や構造の解析が容易に行えるようになる。
なお、上記説明では前方室23内のガス圧を後方室24内のガス圧よりも高く設定していたが、CIDガスを後方室24に導入することにより、ガス圧の高低を逆にすることもできる。
[第2実施例]
本発明の他の実施例(第2実施例)であるMS/MS質量分析装置について、図面を参照して説明する。この第2実施例では上記第1実施例と開裂/収束部の構成が異なるだけであるので、この構成を図4により説明する。
本発明の他の実施例(第2実施例)であるMS/MS質量分析装置について、図面を参照して説明する。この第2実施例では上記第1実施例と開裂/収束部の構成が異なるだけであるので、この構成を図4により説明する。
図4に示すように、第1実施例における前方室23と同程度の長さL1を持つコリジョンセル40の内部が開裂領域A1であり、収束領域A2はコリジョンセル40に形成されたイオン出射開口42の外側近傍で分析室10内と同一空間に設けられている。CIDガスはコリジョンセル40内に供給され、これによりコリジョンセル40内のガス圧はP1に維持される。またCIDガスはイオン出射開口42から分析室10内に噴出し、これにより電極28で囲まれる空間に周囲よりもガス圧の高い(ガス圧P2)領域を形成してこれが収束領域A2として機能する。なお、イオン入射開口41からも分析室10内にCIDガスが噴出するから、好ましくは、イオン出射開口42の面積をイオン入射開口41の面積よりも大きくする等により、後方側へより多量のCIDガスが噴出するような構成としておくとよい。
[変形例]
第1及び第2実施例のMS/MS質量分析装置において、開裂領域A1、収束領域A2にそれぞれ設置される電極27、28の構造は図3に記載のものに限らず、従来知られている各種構造を含み、様々に変形が可能である。具体的には、例えば図12で説明したような、四重極の構成や、さらにロッド電極の数を増やした六重極、八重極などの多重極の構成としてもよい。また、図5〜図10にそれぞれ示すような変形例を用いてもよい。これら変形例はいずれもイオン光軸Cに沿った方向に電位勾配を持つ直流電場を形成し、それによってイオンを加速することが可能な構成である。なお、図5〜図9の構成は例えば米国特許第55847386号明細書などに開示されているものであり、図10の構成は例えば特許3379485号公報などに開示されているものである。
第1及び第2実施例のMS/MS質量分析装置において、開裂領域A1、収束領域A2にそれぞれ設置される電極27、28の構造は図3に記載のものに限らず、従来知られている各種構造を含み、様々に変形が可能である。具体的には、例えば図12で説明したような、四重極の構成や、さらにロッド電極の数を増やした六重極、八重極などの多重極の構成としてもよい。また、図5〜図10にそれぞれ示すような変形例を用いてもよい。これら変形例はいずれもイオン光軸Cに沿った方向に電位勾配を持つ直流電場を形成し、それによってイオンを加速することが可能な構成である。なお、図5〜図9の構成は例えば米国特許第55847386号明細書などに開示されているものであり、図10の構成は例えば特許3379485号公報などに開示されているものである。
図5は、主四重極50の入口側及び出口側にそれぞれ4本1組の補助ロッド電極51、52を配置した構成である。この構成では、補助ロッド電極51、52にそれぞれ印加する直流電圧を適宜に設定することで上記のようなイオン加速用の電場を形成することができる。
図6は、主四重極50に4本1組でイオン光軸Cに平行ではなくイオン進行方向に傾斜する補助ロッド電極53を配置した構成である。この構成では、補助ロッド電極53に或る直流電圧を印加すると、イオン光軸C付近では上記のようなイオン加速用の電場を形成することができる。
図7は、各ロッド電極をイオン光軸Cに沿う方向に複数に分割した分割型四重極54の構成である。図8は四重極50を囲むように円筒形状の電極55を2段に設けた構成であり、2つの電極55にそれぞれ印加する直流電圧を適宜に設定することで上記のようなイオン加速用の電場を形成することができる。
図9は円環状の電極56をイオン光軸Cに沿った複数枚並べた構成である。さらに図10は、円板状の電極板の径をイオン光軸Cに沿って順次縮小するとともに、イオン光軸Cに近付くように配置した構成である。
また、開裂領域A1、収束領域A2にそれぞれ設けられる電極27、28は上述したような各種形態の中で同一の形態のものである必要はなく、それぞれ異なる形態のものを用いることができる。こうした例を図11に示す。この例では、コリジョンセル20の構造は第1実施例と同じであるが、前方室23(開裂領域A1)には8本のロッド電極をイオン光軸Cを取り囲むように配置した八重極の構成を用い、後方室24(収束領域A2)には第1実施例と同様の円板状の電極板から成る電極を設けたものである。このように電極27、28の形態の組み合わせは任意である。
また上記実施例や変形例は本発明の一例であるから、上記記載以外について本発明の趣旨の範囲で適宜に変形、追加、修正を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。
Claims (3)
- 各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、前記プリカーサイオンと外部から供給された所定ガスとを衝突させて衝突誘起解離により該プリカーサイオンを開裂させるとともに前記所定ガスとの衝突によるクーリング作用によりイオンを収束させる開裂/収束部と、前記プリカーサイオンの開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、を真空排気される分析室の内部に配設したMS/MS質量分析装置において、
前記開裂/収束部は、
前記所定ガスにより前記分析室内のガス圧よりも高いガス圧に維持され、前記プリカーサイオンを開裂させる開裂領域と、
前記所定ガスにより前記分析室内のガス圧よりも高いガス圧に維持され、前記開裂領域から送られて来たイオンをクーリングして収束させる収束領域と、
を独立に有することを特徴とするMS/MS質量分析装置。 - イオン入射開口とイオン出射開口とを備える略密閉されたコリジョンセルの内部が連通開口を有する隔壁で前方室と後方室とに区画されて、前方室又は後方室に外部から所定ガスが供給され、前方室内に前記開裂領域、後方室内に前記収束領域が設けられて成ることを特徴とする請求項1に記載のMS/MS質量分析装置。
- 前記開裂領域及び前記収束領域にはそれぞれ独立に電圧を印加可能な電極が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のMS/MS質量分析装置。
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