JP6544430B2 - 質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、差動排気系の構成を採用した質量分析装置に関し、特に、飛行時間型質量分離器やフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離器などが配設される高真空室と、微小なイオン通過穴を有する隔壁で以て該高真空室と隔てられた中真空雰囲気である中真空室とを有する質量分析装置に関する。
質量分析装置の一つとして、Q−TOF型質量分析装置と呼ばれる質量分析装置が知られている。Q−TOF型質量分析装置は、特許文献1等に記載のように、試料由来のイオンから特定の質量電荷比を有するイオンを選択する四重極マスフィルタと、選択されたイオンを衝突誘起解離(CID)によって開裂させるコリジョンセルと、その開裂によって生成されたプロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離して検出する飛行時間型質量分離器と、を備える。飛行時間型質量分離器としては、イオンビームの入射方向と直交する方向にイオンを加速して飛行空間に送り込む直交加速方式の飛行時間型質量分離器が採用されている。
飛行時間型質量分離器では、飛行中のイオンが残留ガスに接触すると、飛行軌道が変化するとともに飛行時間が変化するため質量分解能や質量精度が低下する。そのため、通常、飛行時間型質量分離器は、高い真空度(10-4Paオーダー)に維持される高真空室内に設置される。一方、イオンを解離させるコリジョンセルには連続的に又は間欠的にCIDガスが供給され、そのガスはコリジョンセルから漏れ出す。そのため、コリジョンセルは飛行時間型質量分離器と同じ高真空室ではなく、隔壁で以て高真空室と隔てられる、該高真空室よりもガス圧が高い中真空室内に設置される。そして、その中真空室と高真空室とを隔てる隔壁に形成されたイオン通過穴を通して、コリジョンセル内で生成されたプロダクトイオンが高真空室側へと輸送される。高真空室内の真空度を維持するためイオン通過穴は微小であり、イオンがその微小な穴中を効率良く通過するように、コリジョンセルと隔壁との間には、イオンビームの断面形状を整形しつつイオンを輸送するためのイオン輸送光学系が配置される。
質量分析装置で利用されるイオン輸送光学系の代表例は、特許文献2等に開示されている多重極型高周波イオンガイドである。多重極型高周波イオンガイドは、高周波電場によってイオンを振動させつつ、複数の電極で囲まれる所定の空間にイオンを閉じ込めながら輸送するものである。上述したようにコリジョンセルに供給されるCIDガスのために中真空室内に配置されるイオン輸送光学系では、イオンとガスとの衝突を考慮する必要がある。イオンとガスとの衝突は該イオンのエネルギを奪うクーリング作用をもたらす。高周波電場によってイオンを捕捉する多重極型高周波イオンガイドにおいては、イオンビームを収束させるのに上記クーリング作用は好都合である。即ち、多重極型高周波イオンガイドは、比較的ガス圧が高い中真空室内でコリジョンセルから出射されたイオンを収束し、微小なイオン通過穴に導くには適している。こうしたことから、従来のQ−TOF型質量分析装置において、中真空室内のコリジョンセルと隔壁との間のイオン輸送光学系としては、一般に、多重極型高周波イオンガイドが利用されている。
一方、高真空室内にあって、イオン通過穴が形成されている隔壁と飛行時間型質量分離器の直交加速部との間のイオン輸送光学系の主たる作用は、イオンビームの断面形状の整形とイオンが持つ運動エネルギの調整である。何故なら、イオンが大きな運動エネルギを有したまま直交加速部に導入されると、該直交加速部でのイオンの射出方向の傾きが大きくなりすぎ、飛行空間を通過したイオンが検出器に到達しないおそれがあるからである。残留ガスが殆どない高真空室内では、中真空室内とは異なり、イオンとガスとの接触は殆ど起こらない。そのため、ガスとの衝突によるイオンのクーリング作用は生じず、高周波電場によるイオンの捕捉は殆ど機能しない。そのため、多くの場合、高真空室内のイオン輸送光学系には、直流電場によってイオンの軌道や運動エネルギを制御する静電イオンレンズが用いられる。
上述したQ−TOF型質量分析装置以外にも、1Pa程度の中真空領域から隔壁に設けたイオン通過穴を通して高真空領域へとイオンを輸送する差動排気方式の質量分析装置がある。例えば、飛行時間型質量分析装置のイオン源としてエレクトロスプレイイオン源などの大気圧イオン源を用いた質量分析装置や、飛行時間型質量分離器と同様に、残留ガスが性能に悪影響を及ぼすおそれがあるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析装置などでも、Q−TOF型質量分析装置と同様の差動排気系の構成が採られる。こうした質量分析装置においても、真空度が異なる二つの真空領域をまたいでイオンを輸送するために、隔壁を挟んだ前段の中真空領域側に多重極型高周波イオンガイドが用いられ、その後段の高真空領域側には静電イオンレンズが用いられることが多い。
しかしながら、中真空室内又は中真空領域中に配置される多重極型高周波イオンガイドはイオンの輸送効率は高いものの、電極の数が多く、それら多数の電極の形状や配置にも高い機械的精度が要求される。また、複数の電極にそれぞれ印加される電圧の条件も複雑であるため、多重極型高周波イオンガイドに電圧を印加する電圧源の構成も複雑である。こうしたことから一般に、多重極型高周波イオンガイドは静電イオンレンズに比べると格段にコストが高くなるという問題がある。
特開2002−110081号公報 英国特許第2481749号明細書
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、イオン通過穴が形成された隔壁を挟んで中真空領域と高真空領域とを有する差動排気方式の質量分析装置において、中真空領域側に配置されるイオン輸送光学系の電極の構造や印加電圧の条件を単純化しながら高いイオン透過率を実現することができる質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、イオン通過穴が形成された隔壁で隔てられた中真空領域と高真空領域とを有する差動排気方式の質量分析装置であって、中真空領域中に配設された前段イオン光学系から発したイオンを前記イオン通過穴を通して高真空領域中に導き、該高真空領域中に配設された後段イオン光学系に導入するイオン輸送経路を有する質量分析装置において、
a)前記前段イオン光学系と前記隔壁との間に配置され、その入口側に設けられた、微小なイオン通過開口を有し前段イオン光学系からイオンを引き出して加速する加速電極と、該加速電極と前記前段イオン光学系との間にあって該前段イオン光学系から引き出されたイオンが前記加速電極のイオン通過開口を通過するように収束させる収束電極と、を含む、静電イオンレンズである前段イオン輸送光学系と、
b)前記隔壁と前記後段イオン光学系との間に配置された静電イオンレンズである後段イオン輸送光学系と、
c)前記前段イオン光学系、前記前段イオン輸送光学系、前記隔壁、及び前記後段イオン輸送光学系を構成する部材にそれぞれ直流電圧を印加する電圧印加部であって、前記前段イオン光学系と前記加速電極との間の領域にイオンを加速する加速電場を形成し、該領域中の収束電極付近にはイオンを収束させる電場を形成し、前記加速電極と前記隔壁との間の領域にはイオンが持つ運動エネルギを維持しつつ該イオンを前記イオン通過穴に収束させる収束電場を形成し、前記隔壁と前記後段イオン光学系との間の領域には、前記加速電場でイオンに与えられた運動エネルギに比べて小さい運動エネルギを減じる減速電場を形成するように、各部に電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
ここで、中真空領域とは1〜0.01Pa程度の範囲のガス圧、高真空領域とは0.001(=10- 3)Pa程度以下のガス圧である状態をいうものとする。
本発明に係る質量分析装置の一態様は、前段イオン光学系がイオンを衝突誘起解離によって開裂させるコリジョンセル、また後段イオン光学系が直交加速式飛行時間型質量分離器における直交加速部であるQ−TOF型質量分析装置である。
本発明に係る質量分析装置の別の態様は、前段イオン光学系がコリジョンセル、後段イオン光学系がフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離器であるQ−FTICR型質量分析装置である。
本発明に係る質量分析装置のさらに別の態様は、前段イオン光学系がリニアイオントラップなどのイオン保持部、後段イオン光学系が直交加速式飛行時間型質量分離器における直交加速部であって、イオン源がエレクトロスプレイイオン源等の大気圧イオン源である飛行時間型質量分析装置である。
本発明に係る質量分析装置において、コリジョンセル等の前段イオン光学系から出射したイオンは、該前段イオン光学系と加速電極との間の領域に形成されている加速電場によって該前段イオン光学系から引き出され大きな運動エネルギを付与される。中真空領域は隔壁で隔てられた高真空領域に比べると残留ガスが多く、特に前段イオン光学系がコリジョンセルである場合には、該コリジョンセル内に連続的又は間欠的にCIDガスが導入されるため、該コリジョンセルからのCIDガスの漏れ出しが多い。中真空領域において、こうしたガスは隔壁に形成されているイオン通過穴に向かうが、そのガスは加速電極に形成されている微小なイオン通過開口を通り抜けにくいので、加速電極と隔壁との間の領域に存在するガスを減らすことができる。
上述したように上記加速電場により、イオンは大きな運動エネルギを付与された状態で加速電極以降の前段イオン輸送光学系を通過する。そのため、イオンと残留ガスとの衝突が生じたとしても散逸しにくく、収束電場によって適切にイオン通過穴付近に収束され、該イオン通過穴を効率良く通過する。なお、加速電極と隔壁との間でイオンが残留ガスと数回程度衝突しても、該イオンが持つ運動エネルギが後段イオン光学系に入射する際に必要とされる運動エネルギよりも必ず大きくなるように、加速電場によってイオンに付与される運動エネルギの大きさを設定しておくとよい。加速電場によってイオンに過剰な運動エネルギが付与された場合でも、イオンがイオン通過穴を通過して残留ガスの影響が殆どない高真空領域に導入された直後に減速電場によって運動エネルギは奪われ、適度な運動エネルギを有する状態に調整されて直交加速部などの後段イオン光学系に導入される。
このように本発明に係る質量分析装置では、隔壁に形成されたイオン通過穴にイオンを収束させる作用を有する前段イオン輸送光学系の入口側に設けた加速電極によって、イオンと同方向に進むガス流を阻止するとともに、該加速電極手前の加速電場で残留ガスとの衝突に十分耐え得るだけの運動エネルギを付与しているので、残留ガスとの衝突の影響が無視できない中真空領域でも静電イオンレンズのみでイオンを効率良く輸送することができる。イオンの輸送に高周波電場を利用した多重極型高周波イオンガイドに比べて静電イオンレンズでは電極の構造や電極に電圧を印加する電圧源の構成が簡単になり、また電極自体の寸法精度や配置の精度も緩くて済む。そのため本発明に係る質量分析装置によれば、装置のコストダウンを図りつつ、高真空領域へと送り込むイオンの量を増加させ、分析感度や精度の向上を図ることができる。
本発明の一実施例であるQ−TOF型質量分析装置の全体構成図。 本実施例のQ−TOF型質量分析装置におけるコリジョンセルと直交加速部との間のイオン光学系の構成及びイオン光軸上におけるイオンが持つ運動エネルギの変化を示す図。 本実施例のQ−TOF型質量分析装置におけるコリジョンセルと直交加速部との間のイオン軌道のシミュレーション結果を示す図。
本発明の一実施例であるQ−TOF型質量分析装置について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のQ−TOF型質量分析装置の全体構成図である。
本実施例のQ−TOF型質量分析装置は多段差動排気系の構成を有している。即ち、チャンバ1内には、略大気圧雰囲気であるイオン化室2と、最も真空度の高い(つまりはガス圧が低い)高真空室6と、それら二つの室の間で、段階的に真空度が高くなる第1乃至第3なる三つの中間真空室3、4、5と、が配設されている。図示しないが、イオン化室2以外は、ロータリポンプ、又はロータリポンプとターボ分子ポンプとの組み合わせによって真空排気されている。
イオン化室2には、エレクトロスプレイイオン化(ESI)を行うためのESIスプレー10が設けられている。目的化合物を含む試料液がESIスプレー10に供給されると、該スプレー10先端で片寄った電荷を付与されて略大気中に噴霧された液滴から化合物由来のイオンが生成される。生成された各種イオンは加熱キャピラリ11を通して第1中間真空室3へ送られ、イオンガイド12により収束されてスキマー13を通して第2中間真空室4へ送られる。イオンはさらにオクタポール型のイオンガイド14により収束されて第3中間真空室5へ送られる。
第3中間真空室5内には、四重極マスフィルタ15と、多重極型イオンガイド17が内部に配設されたコリジョンセル16と、が設置されている。試料由来の各種イオンは四重極マスフィルタ15に導入され、四重極マスフィルタ15を構成する各電極に印加されている電圧に応じた特定の質量電荷比を有するイオンのみが該四重極マスフィルタ15を通り抜ける。このイオンはプリカーサイオンとしてコリジョンセル16に導入され、コリジョンセル16内に外部から供給されるCIDガスとの接触によってプリカーサイオンは解離し、各種のプロダクトイオンが生成される。
第3中間真空室5と高真空室6とを隔てる隔壁22を挟んで、その前方には、収束電極18、加速電極19、及び静電イオンレンズ系20を含む前段イオン輸送光学系21が配置され、その後方には、静電イオンレンズ系である後段イオン輸送光学系23が配置されている。また、高真空室6内には、後段イオン輸送光学系23のほか、イオン射出源である直交加速部24と、反射器26及びバックプレート27を備えた飛行空間25と、イオン検出器28と、が設けられている。直交加速部24は、イオン入口電極241、押し出し電極242、引き出し電極243を含む。
後で詳しく述べるが、コリジョンセル16内で生成されたプロダクトイオンは、イオン光軸Cに沿って、収束電極18、加速電極19、及び静電イオンレンズ系20を経て、隔壁22に形成されている微小なイオン通過穴22aを通り抜け、後段イオン輸送光学系23を経て直交加速部24に導入される。
直交加速部24にX軸方向に導入されたイオンは、所定のタイミングで押し出し電極242及び引き出し電極243に印加された電圧によってZ軸方向に加速されることで飛行を開始する。直交加速部24から射出されたイオンはまず自由飛行したあと反射器26及びバックプレート27により形成される反射電場で折り返され、再び自由飛行してイオン検出器28に到達する。イオンが直交加速部24を出発した時点からイオン検出器28に到達するまでの飛行時間はイオンの質量電荷比に依存する。したがって、イオン検出器28による検出信号を受けた図示しないデータ処理部は、各イオンの飛行時間を質量電荷比に換算し、その換算結果に基づいて質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトルを作成する。
制御部30は上記のような分析を実行するに際して予め決められたシーケンスに従って制御信号を電圧生成部31へと送り、電圧生成部31は制御信号に基づいて所定の電圧を生成し各電極等へと印加する。
なお、本実施例のQ−TOF型質量分析装置において、四重極マスフィルタ15でイオンの選択を行わずコリジョンセル16内でイオンの解離操作を行わないことで、解離していないイオンの質量分析、つまりは通常の質量分析を行うこともできる。
本実施例のQ−TOF型質量分析装置は、コリジョンセル16から直交加速部24までイオンを輸送するためのイオン光学系の構成に特徴を有する。
図2(a)は図1中のコリジョンセル16と直交加速部24との間のイオン光学系の構成、図2(b)はイオン光軸C上におけるイオンが持つ運動エネルギの変化を示す図である。
コリジョンセル16の出口の直後に配設されている収束電極18は、イオン光軸Cを中心とした大きな円形状開口を有する平板状電極である。その後方に配設されている加速電極19は、イオン光軸Cを中心とした微小なイオン通過開口19aを有する平板状電極である。また、静電イオンレンズ系20及び後段イオン輸送光学系23はそれぞれ1又は複数のイオン光軸Cを中心とした大きな円形状開口を有する平板状電極から成る。これら各電極のほか、コリジョンセル16の出口電極16a、隔壁22、直交加速部24のイオン入口電極241にはそれぞれ、電圧生成部31から所定の直流電圧が印加される。
いま説明の便宜上、測定対象であるイオンは正イオンであるとするが、測定対象が負イオンである場合には電圧の極性等を反転して考えればよいことは明らかである。
加速電極19には、コリジョンセル16の出口電極16aに印加される電圧に対し負方向に大きな電圧が印加される。これにより、コリジョンセル16の出口電極16aと加速電極19との間の領域には、コリジョンセル16内から正イオンを引き出して加速する、つまりは大きな運動エネルギを付与する加速電場が形成される。一方、収束電極18にはイオンと同極性の、つまり正の適宜の直流電圧が印加され、これによって収束電極18の開口付近には収束電場が形成される。
収束電極18の開口は大きいため、収束電場は該開口の近傍を通過しようとするイオンをイオン光軸Cに近づくようにその軌道を曲げる作用を有するが、イオン光軸C付近を通過するイオンには殆ど収束電場の作用は及ばない。また、加速電場は収束電極18の開口の内側にも作用するため、コリジョンセル16から引き出されたイオンは加速電場によって加速されつつイオン光軸C付近に収束し、加速電極19の微小なイオン通過開口19aを効率良く通過する。コリジョンセル16内には連続的に又は間欠的にCIDガスが供給され、そのガスはコリジョンセル16の出口からその外側(第3中間真空室5内)へと流出し、隔壁22方向へと向かうガス流が形成される。しかしながら、上述したように加速電極19に形成されているイオン通過開口19aは微小であるため、ガス流は通過しにくく、加速電極19と隔壁22との間の領域の残留ガスは第3中間真空室5内の他の領域よりも少なくなる。そのため、イオン通過開口19aを通過したイオンが残留ガスに衝突する機会は加速電極19によるガスの阻止がない場合に比べれば少なくなる。
それでも、高真空室6と比べれば加速電極19と隔壁22との間の領域には残留ガスが多く存在するため、ここを通過するイオンは残留ガスとの衝突が避けられない。そこで、このQ−TOF型質量分析装置では、イオンが直交加速部24に入射する際に必要な運動エネルギに比べて十分に大きい運動エネルギを上記加速電場によってイオンに付与するように、加速電極19とコリジョンセル16の出口電極16aとの電圧差を大きく設定している。加速電極19を通り抜けたイオンは大きな運動エネルギを有しているため、残留ガスに衝突してもそれによって大きく軌道を変えることなく、また大きく運動エネルギを失うこともなく、静電イオンレンズ系20に印加される正の電圧によって形成される収束電場の作用でイオン光軸C付近に収束される。このようにして、真空度がそれほど高くない第3中間真空室5内において、単純な構成の静電イオンレンズ系20を用いながら、イオンを効率良く収束させてイオン通過穴22aを通過させることができる。
高真空室6内では、後段イオン輸送光学系23に印加される電圧によって減速電場が形成されており、図2(b)に示すように、この電場によってイオンの運動エネルギは急速に所定の運動エネルギまで減じられる。また、同時に、イオンビームの断面のサイズや形状は、直交加速部24に導入するのに適した状態に成形される。即ち、イオンビームの成形やイオンが持つ運動エネルギの調整は、イオンとガスとの衝突が無視できる高真空室6内で行われる。これによって、隔壁22を挟んだ前方の第3中間真空室5内、後方の高真空室6内のいずれにおいても、静電イオンレンズを利用したイオンの高効率輸送が実現でき、より多くの量のイオンを直交加速部24へと導入することが可能となる。
図3は、上述したイオン光学系におけるイオン軌道をシミュレーションした結果を示す図である。図中に記載のように、シミュレーション条件として、コリジョンセル16内のガス圧:1Pa、第3中間真空室5内のガス圧:0.1Pa、高真空室6内のガス圧:10-4Paとした。また、図3には示していない直交加速部へ入射するイオンの運動エネルギを5eVと想定し、コリジョンセル16の出口電極16aの電位0Vに対し、後段イオン輸送光学系23の最終段のレンズ電極の電位を−5Vに設定した。一方、加速電極19の電位を−60Vに設定し、加速電極19を通過した後のイオンは60eVという、最終的な運動エネルギに比べて格段に大きな運動エネルギで以て中真空領域を通過する(つまりはイオン通過穴22aを通過する)ようにした。また、ここに示している全ての電極は円形状の開口を有する単純なアパーチャ電極とした。
図3では、高真空室6内の最終段のレンズ電極まで到達したイオンの軌道を濃い色の線で、途中で消失してしまうイオンの軌道を薄い色の線で示している。このイオン軌道のシミュレーションでは、真空度に応じたイオンと中性ガスとの衝突を考慮している。幾つかのイオンは、加速電極19の後方の第3中間真空室5内において中性ガスとの衝突によって軌道が変化し、隔壁22に衝突する等してイオン通過穴22aを通過できていないものの、殆どのイオンはイオン通過穴22aを通過して高真空室6側へと輸送されている。本発明者の概略的な計算によれば、加速電極19を通過した後のイオン透過率は90%程度とかなり高い。即ち、本実施例におけるイオン光学系では、ガスとの衝突がある中真空領域において、高周波電場を利用しない静電イオンレンズ系のみで以て十分なイオン透過率が達成されていると結論付けることができる。
上記実施例は本発明をQ−TOF型質量分析装置に適用したものであるが、本発明は、中真空領域と高真空領域とが隔壁で隔てられた差動排気系の構成を採用した、様々な構成の質量分析装置に適用可能である。
例えば、ICRセル内でイオンを回転運動させてその運動による誘導電流を測定するフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析装置では、イオンが残留ガスに接触して振動が減衰すると分解能が制約を受ける。そのため、飛行時間型質量分離器と同様に、ICRセルを高真空室内に設置する必要があり、コリジョンセル内で開裂により生成されたイオンをICRセルに導入して質量分析を行う場合には、上記実施例と同様に、コリジョンセルを中真空領域に、ICRセルを高真空領域に配置する必要がある。したがって、コリジョンセルとICRセルとの間に、上記実施例と同様のイオン光学系を適用することができる。
また、上記実施例のように、四重極マスフィルタやコリジョンセルを用いる代わりに、例えばリニア型イオントラップの機能を有するイオンガイドを中真空領域に配置し、該イオンガイドで一時的に保持したイオンを該イオントラップから吐き出して飛行時間型質量分離器に導入して質量分析を行うような場合でも、上記実施例と同様のイオン光学系は有用である。即ち、多段差動排気系の構成を採用し、最終段の真空室に飛行時間型質量分離器やICRセルなどを配置する、つまりは最終段の真空室の真空度がかなり高い質量分析装置では一般に、本発明を適用して上記のような効果を得ることができる。
また、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…チャンバ
2…イオン化室
3…第1中間真空室
4…第2中間真空室
5…第3中間真空室
6…高真空室
10…ESIスプレー
11…加熱キャピラリ
12、14…イオンガイド
13…スキマー
15…四重極マスフィルタ
16…コリジョンセル
16a…出口電極
17…多重極型イオンガイド
18…収束電極
19…加速電極
20…静電イオンレンズ系
21…前段イオン輸送光学系
22…隔壁
22a…イオン通過穴
23…後段イオン輸送光学系
24…直交加速部
241…イオン入口電極
242…押し出し電極
243…引き出し電極
25…飛行空間
26…反射器
27…バックプレート
28…イオン検出器
30…制御部
31…電圧生成部
C…イオン光軸

Claims (4)

  1. イオン通過穴が形成された隔壁で隔てられた中真空領域と高真空領域とを有する差動排気方式の質量分析装置であって、中真空領域中に配設された前段イオン光学系から発したイオンを前記イオン通過穴を通して高真空領域中に導き、該高真空領域中に配設された後段イオン光学系に導入するイオン輸送経路を有する質量分析装置において、
    a)前記前段イオン光学系と前記隔壁との間に配置され、その入口側に設けられた、微小なイオン通過開口を有し前段イオン光学系からイオンを引き出して加速する加速電極と、該加速電極と前記前段イオン光学系との間にあって該前段イオン光学系から引き出されたイオンが前記加速電極のイオン通過開口を通過するように収束させる収束電極と、を含む、静電イオンレンズである前段イオン輸送光学系と、
    b)前記隔壁と前記後段イオン光学系との間に配置された静電イオンレンズである後段イオン輸送光学系と、
    c)前記前段イオン光学系、前記前段イオン輸送光学系、前記隔壁、及び前記後段イオン輸送光学系を構成する部材にそれぞれ直流電圧を印加する電圧印加部であって、前記前段イオン光学系と前記加速電極との間の領域にイオンを加速する加速電場を形成し、該領域中の収束電極付近にはイオンを収束させる電場を形成し、前記加速電極と前記隔壁との間の領域にはイオンが持つ運動エネルギを維持しつつ該イオンを前記イオン通過穴に収束させる収束電場を形成し、前記隔壁と前記後段イオン光学系との間の領域には、前記加速電場でイオンに与えられた運動エネルギに比べて小さい運動エネルギを減じる減速電場を形成するように、各部に電圧を印加する電圧印加部と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置であって、
    前記前段イオン光学系はイオンを衝突誘起解離によって開裂させるコリジョンセル、前記後段イオン光学系は直交加速式飛行時間型質量分離器における直交加速部であることを特徴とする質量分析装置。
  3. 請求項1に記載の質量分析装置であって、
    前記前段イオン光学系はイオンを衝突誘起解離によって開裂させるコリジョンセル、前記後段イオン光学系はフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離器であることを特徴とする質量分析装置。
  4. 請求項1に記載の質量分析装置であって、
    前記前段イオン光学系はイオン保持部、前記後段イオン光学系は直交加速式飛行時間型質量分離器における直交加速部であって、イオンを生成するイオン源は大気圧イオン源であることを特徴とする質量分析装置。
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