本発明は、半導体素子および電子部品を含む半導体モジュールとその製法とに関する。
従来より、半導体パワーモジュール(半導体モジュール)では、半導体パワー素子(半導体パワーモジュールの動作により発熱し、その結果高温となる半導体素子)を冷却してその温度を半導体パワーモジュールの安全動作温度以下に保つために、半導体パワー素子をパッケージ基材(冷却媒体)に接触させるなどの熱設計が行われている。そのため、複数の半導体パワー素子を用いて半導体パワーモジュールを構成する場合には、半導体パワー素子のそれぞれをパッケージ基材に接触させる必要がある。
また、半導体パワーモジュールには、半導体パワー素子と半導体パワー素子を制御する制御回路またはコンデンサなどの受動素子とが同一のパッケージ基材に実装されたモジュールがある。例えば、特許文献1には、図24(a)および(b)に示すように、主回路(半導体素子)83と制御回路82とが同一パッケージ(筐体)81内に収容された電力変換器(半導体モジュール)80が開示されている。図24(a)に示す電力変換器80では、主回路83と制御回路82との間に板状の遮蔽部材88が挿入されており、これにより主回路83が発する熱および電磁ノイズは遮蔽される。
また、図24(b)に示す電力変換器180では、コの字形状に形成された遮蔽部材188が、筐体81内を2分割するようにその筐体81内に配置された構成も開示されている。この構成では、遮蔽部材188は、発熱する主回路83を完全に覆っている。また、遮蔽部材188には、貫通孔が形成されており、この貫通孔には、遮蔽部材188の外に存する制御回路82もしくは受動素子と半導体パワー素子とを電気的に接続するための信号線189、または、遮蔽部材188の外に存する制御回路82もしくは受動素子から半導体パワー素子へ制御シグナルを供給するための信号線189等が通っている。
特開2005−235929号公報
複数の半導体パワー素子を用いて半導体パワーモジュールを構成する場合には、それぞれの半導体パワー素子の放熱を十分行うとともに半導体パワー素子を互いに十分離して間隙を空けて配置することにより、温度上昇を防ぐ必要がある。よって、そのパッケージ基材の実装面としては、半導体パワー素子のそれぞれの下面の面積を加算した面積以上の大きさが必要である。従って、パッケージが非常に大きくなってしまい、半導体パワーモジュールの小型化を図ることが難しい。
また、半導体パワー素子と制御回路または受動素子とが同一のパッケージ基材に実装された半導体パワーモジュールでは、半導体パワーモジュールの動作により実装された部品の温度が上昇した場合に備え、実装される全ての部品は半導体パワー素子の保証温度範囲の上限値において動作可能なことが好ましい。この上限値は例えば120℃程度であり、このような高温においても動作可能な制御回路または受動素子は限られている。よって、実装される部品の選択範囲が狭くなり、半導体パワーモジュールを自由に設計できない。また、高温においても動作可能な制御回路または受動素子は高価な場合もあり、その場合には、半導体パワーモジュールのコストが高くなる。
また、図24(a)に示す電力変換器80では、遮蔽部材88そのものの冷却を効率的に行うことが難しい。つまり、遮蔽部材88は輻射熱を遮蔽できるが、遮蔽部材88自身は冷却されない。そのため、遮蔽部材88の上側に配置された制御回路82などを低温に保つことが困難である。よって、図24(a)に示す電力変換器80では、主回路83が長時間に亘って発した熱を完璧に遮蔽することは難しく、熱分離を完璧に行うことは難しい。
さらに、図24(b)に示す電力変換器180では、主回路83などを実装する場合に、遮蔽部材188に設けたスルーホールを通して制御信号が伝達できるような配線をする必要があり、製造プロセスが複雑になり、電力変換器の生産コストを抑えることが難しい。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体素子が発熱して高温になったとしても、コンデンサまたは制御回路などを低温に保つことができる半導体モジュールを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の半導体モジュールは、実装面を有する冷却媒体と、実装面に実装され、動作時に相対的に多くの熱を発する半導体素子と、実装面に実装され、動作時に相対的に少ない熱を発する電子部品と、半導体素子および電子部品のどちらか一方である対象部品の一部を覆う熱伝導性シート部材とを備えている。熱伝導性シート部材は、実装面に接触している下部と、下部から延び対象部品の第1の側面を覆う側部とを有し、下部の表面積は熱伝導性シート部材の表面積の 1/5 以上である。また、対象部品とは異なる他方の部品は、対象部品に対して熱伝導性シート部材の側部を隔てた反対側に配置されている。
上記構成では、冷却媒体の熱(冷却熱)が、下部を介して熱伝導性シート部材全体に伝達される。これにより、効率よく熱分離を行うことができる。また、対象部品が半導体素子である場合には、半導体素子の発熱による熱伝導性シート部材の温度上昇を抑制できる。
さらに、熱伝導性シート部材の下部の表面積は熱伝導性シート部材の表面積の 1/5 以上であるので、冷却媒体の熱(冷却熱)を熱伝導性シート部材全体に効率良く伝達させることができる。
本明細書では、例えば「対象部品の一部を覆う」とは、熱伝導性シート部材が、対象部品の一部に接するように配置されていることだけでなく、対象部品の表面から離れた位置に配置されていることも意味する。
また、本明細書では、「熱分離」とは、半導体素子と電子部品との間で熱のやりとりが抑制されて遮蔽されていることであり、具体的には、半導体素子が発した熱の電子部品への伝達が小さいことである。
また、「対象部品とは異なる他の部品」は、対象部品が半導体素子である場合には電子部品であり、対象部品が電子部品である場合には半導体素子である。
本発明の半導体モジュールでは、熱伝導性シート部材の熱伝導率は、400 W/(m・K)以上であることが好適である。さらに好適には、熱伝導性シート部材は、グラファイトシートである。
本発明の半導体モジュールでは、熱伝導性シート部材は、側部から延び、対象部品の上面の少なくとも一部を覆う上部をさらに有していてもよい。
後述の好ましい実施形態では、熱伝導性シート部材の下部は、実装面と対象部品の下面との間に挟まれている。この場合、電極端子と、導電性細線とをさらに備え、導電性細線は、対象部品から、熱伝導性シート部材の上部と下部との間を通ってその熱伝導性シート部材の外へ延び、電極端子に接続されていてもよい。
後述のまた別の好ましい実施形態では、熱伝導性シート部材の下部は、実装面において対象部品と他方の部品との間に配置されている。この場合、電極端子と、導電性細線とをさらに備え、導電性細線は、対象部品から、熱伝導性シート部材の上部と実装面との間を通ってその熱伝導性シート部材の外へ延び、電極端子に接続されていてもよい。
本発明の半導体モジュールでは、対象部品と熱伝導性シート部材との間に介在する絶縁部材を備えていることが好ましい。これにより、対象部品と熱伝導性シート部材との短絡を防止することができる。
本発明の半導体モジュールでは、電子部品は、半導体素子の上面よりも上に配置されていてもよい。
本発明の半導体モジュールでは、さらに、実装面と半導体素子の下面との間に配置された放熱板を備えていることが好ましい。これにより、半導体素子が発した熱を放出させることができる。
本発明の第1の半導体モジュールの製造方法は、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するように、熱伝導性シート部材を実装面に配置する工程(a)と、熱伝導性シート部材の第1の部分に、半導体素子および電子部品のどちらか一方である対象部品を実装する工程(b)と、熱伝導性シート部材の第2の部分が対象部品の第1の側面を覆うように熱伝導性シート部材を曲げる工程(c)と、対象部品とは異なる他方の部品を、対象部品に対して熱伝導性シート部材の第2の部分を隔てた反対側に実装する工程(d)とを備えている。
本発明の第2の半導体モジュールの製造方法は、冷却媒体の実装面に、半導体素子および電子部品のどちらか一方である対象部品を実装する工程(a)と、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するとともに第2の部分が対象部品の第1の側面を覆うように熱伝導性シート部材を曲げて、その熱伝導性シート部材を冷却部材の実装面に配置する工程(b)と、対象部品とは異なる他方の部品を、対象部品に対して熱伝導性シート部材の第2の部分を隔てた反対側に実装する工程(c)とを備えている。
本発明の第1または第2の半導体モジュールの製造方法を用いて半導体モジュールを製造すれば、熱伝導性シート部材を冷却媒体の一部に接触させて配置させることができるとともに、対象部品の一部を覆うことができる。よって、熱分離を効率良く行う半導体モジュールを提供することができる。
本発明の第3の半導体モジュールの製造方法は、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するように熱伝導性シート部材を実装面に配置し、熱伝導性シート部材の第1の部分に半導体素子を実装する工程(a)と、半導体素子の上面の上方に電子部品を配置する工程(b)と、第2の部分が半導体素子の上面の少なくとも一部を覆うように熱伝導性シート部材を曲げる工程(c)とを備えている。
本発明の第4の半導体モジュールの製造方法は、冷却媒体の実装面に半導体素子を実装し、半導体素子の上面よりも上に電子部品を配置する工程(a)と、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するとともに第2の部分が半導体素子の上面の少なくとも一部を覆うように熱伝導性シート部材を曲げて、その熱伝導性シート部材を冷却媒体上に配置する工程(b)とを備えている。
本発明の第3または第4の半導体モジュールの製造方法を用いて半導体モジュールを製造すれば、熱伝導性シート部材を冷却媒体の一部に接触させて配置させることができるとともに、半導体素子の一部を覆うことができる。よって、熱分離を効率良く行う半導体モジュールを提供することができる。
本発明の第1乃至第4の半導体モジュールの製造方法では何れの方法においても、熱伝導性シート部材として、熱伝導率が 400 W/(m・K)以上の材質からなるシート部材を用いることが好ましい。
本発明によれば、制御回路や受動素子等の発熱量の少ない電子部品を半導体素子と同一の冷却媒体に実装させ、その半導体素子が発熱して高温になったとしても、電子部品を比較的低温に保つことができる。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す上面図であり、図1(b)は、その側面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態にかかる熱伝導性シート部材の斜視図である。
図3(a)乃至(d)は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体モジュールの製造方法を示す上面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図5は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図6は、本発明の第2の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図7(a)は、本発明の第3の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す上面図であり、図7(b)はその側面図である。
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる熱伝導性シート部材の斜視図である。
図9(a)乃至(c)は、本発明の第3の実施形態にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図10は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図11は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図12は、本発明の第3の実施形態の第3の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図13は、本発明の第3の実施形態の第4の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図14は、本発明の第4の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図15は、本発明の第5の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図16は、本発明の第5の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図17は、熱伝導性シート部材の形状を説明するための図である。
図18(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図19は、本発明の第5の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図20(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図21は、本発明の第5の実施形態の第3の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図22(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態の第3の変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図23は、参考例の半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図24(a)は、従来の半導体モジュールの構成を示す断面図であり、図24(b)は従来の別の半導体モジュールの構成を示す断面図である。
符号の説明
1,81 冷却媒体
2,82 電子部品
3,83 半導体素子
4,84 熱伝導性シート部材
4a 上部
4b 下部
4c 側部
5 導電性細線
6 絶縁部材
7 放熱板
10,20,30,40,50,60,70,80,180 半導体モジュール
11a 実装面
13 電極端子
161 第1の領域
162 第2の領域
163 第3の領域
以下に、本発明の半導体モジュールの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の符号で示す。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
《発明の実施形態1》
図1は実施形態1に係る半導体モジュール10の構成図であり、図1(a)はその上面図であり、図1(b)はその側面図である。なお、図1(b)では、導電性細線5,5,…を省略している。また、図2は、本実施形態における熱伝導性シート部材4の斜視図である。
本実施形態にかかる半導体モジュール10は、冷却媒体1と、半導体素子3と、電子部品2,22と、熱伝導性シート部材4と、導電性細線5,5,…とを備えている。半導体素子3と電子部品2,22とは、それぞれ、冷却媒体1の実装面11aに実装されており、導電性細線5,5,…を介して、例えば冷却媒体1に設けられた電極端子13に電気的に接続されている。熱伝導性シート部材4は、半導体素子3の一部を覆っている。なお、電極端子13に設けられた細かい電極(ブスバー)の図示を省略している。
本実施形態にかかる半導体モジュール10を詳述する。冷却媒体1は、基板11を有しており、電極端子13は、例えば絶縁性を有する部材(不図示)を介して基板11の実装面11aに設けられている。一方、実装面11aとは反対側の面には、複数の冷却用フィン12,12,…が互いに間隔を開けて設けられている。
半導体素子3は、半導体モジュール10を動作させると、多くの熱を発して高温となる部品である。半導体素子3は、特に限定されることなく公知の半導体素子を用いることができ、例えば、ショットキーダイオード、pn接合ダイオード、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)、MESFET(metal semiconductor field-effect transistor)、J−FET(junction Field Effect Transiter)もしくはサイリスタ等を用いることができる。また、半導体素子3は、後述のように、ワイドバンドギャップ半導体素子であることが好ましい。「ワイドバンドギャップ半導体」とは、本明細書では、伝導帯の下端と価電子帯の上端とのエネルギー差(バンドギャップ)が2.0eV以上である半導体を意味する。その具体例としては、炭化珪素(SiC)、GaN・AlN等のIII族窒化物もしくはダイヤモンド等を挙げることができるが、本実施形態では炭化珪素が好適である。
また、半導体素子3は、4つの側面を有している。第1側面(第1の側面)3cは、図1の右側の側面である。第2側面3dは、第1側面3cの隣りに存しており、図1の手前側の側面である。第3側面3eは、第1側面3cの反対側に存しており、図1の左側の側面である。第4側面(不図示)は、第2側面3dの反対側に存しており、図1の奥側の側面である。
半導体素子3と熱伝導性シート部材(後で詳述)4との間には、例えばシリコーン樹脂からなる絶縁部材6が配置されていることが好ましい。一般に、半導体素子の上面には、電極が設けられている場合が多い。そして、熱伝導性シート部材4が熱伝導性のみならず導電性も有する材質からなっていれば、熱伝導性シート部材4がその電極に接触することにより、接触箇所においてショートが発生する。しかし、絶縁部材6を介在させれば、熱伝導性シート部材4とその電極との接触を回避することができ、よって、ショートの発生を防止することができる。
電子部品2,22は、それぞれ、半導体モジュール10を動作させても発熱が小さいのでそれほど高温とはならない部品であり、例えば、半導体素子3を制御するための制御回路を有する制御素子、または、抵抗、コイルもしくはコンデンサなどの受動素子である。電子部品2,22は、それぞれ、高温使用の電子部品に限定されることはなく、市販の様々な電子部品を使うことができる。例えばコンデンサは、チップコンデンサから大容量の電解コンデンサまたはフィルムコンデンサまで、市販の様々なコンデンサを使うことが出来る。
電子部品2は、半導体素子3に対して熱伝導性シート部材4の側部4c(後述)を隔てた反対側に実装されている。電子部品22は、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装されている。
熱伝導性シート部材4について詳述する。まず、熱伝導性シート部材4の構造を示す。
本実施形態にかかる熱伝導性シート部材4は、長手方向の一端(以下単に「熱伝導性シート部材の一端」という。)41に長手方向の他端(以下単に「熱伝導性シート部材の他端」という。)42が接触しない程度に近づくように曲げられており、上部4a、下部4bおよび側部4cを有している。上部4aは他端42側に存在しており、下部4bは一端41側に存在しているので、上部4aは下部4bに接触することなく存在している。また、側部4cは、上部4aと下部4bとの間に存在しており、熱伝導性シート部材4が上述のように曲げられることにより形成された部分であり、半導体素子3の第1側面3cから遠ざかる方向に突出している。
上部4aは半導体素子3の上面3aを覆っており、下部4bは半導体素子3の下面3bと実装面11aとの間に介在しており、側部4cは半導体素子3の第1側面3cを覆っている。これにより、冷却媒体1の熱(冷却熱)が下部4bを介して熱伝導性シート部材4全体に亘って充分伝達される。そのため、半導体モジュール10の動作により半導体素子3が発熱して高温になったとしても、熱伝導性シート部材4の温度を比較的低温(例えば冷却媒体1の温度)に保つことができる。よって、半導体素子3が発した熱が熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側へ伝達してしまうことを防止でき、電子部品2,22の温度上昇を防止することができる。すなわち、熱分離を効率良く行うことができる。また、冷却媒体1の熱の一部が下部4bを介して半導体素子3に伝達するので、半導体素子3の温度上昇を抑制することができる。さらに、下部4bの表面積は後述のように熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上であるので、冷却媒体の熱(冷却熱)を熱伝導性シート部材4全体に効率良く伝達させることができる。
上述のように、熱伝導性シート部材4は、他端42が一端41に接触しない程度に近づくように曲げられているので、上部4aと下部4bとの間4dから半導体素子3の第2側面3d、第3側面3eおよび第4側面を見ることができる。この領域4dは、熱伝導性シート部材4の一端41にその他端42が接触しない程度に近づけて曲げたときに上部4aと下部4bとの間に存する領域であり、熱伝導性シート部材4に孔を開けて形成された領域ではない。これにより、導電性細線5,5,…を用いて半導体素子3と冷却媒体1等とを電気的に接続させる場合であっても、導電性細線5,5,…を通すための貫通孔を熱伝導性シート部材4にわざわざ形成することなく上部4aと下部4bとの間4dを通して導電性細線5,5,…を設けることができる。
さらに、熱伝導性シート部材4の一端41が他端42に接触していないので、熱伝導性シート部材4をループ状に流れる電流(誘導電流)の発生を抑制することができ、その結果、誘導電流の発生による発熱を抑制できる。
なお、熱伝導性シート部材4の上部4aは、図2に示すように、図1(b)における手前側、奥側および左側の三方において下部4bに接触していない。しかし、例えば、導電性細線5,5,…をその三方のうち何れか二方にのみ設ける場合には、熱伝導性シート部材4の上部4aは、導電性細線5,5,…が設けられていない一方においては下部4bに接触していてもよい。熱伝導性シート部材4は、導電性細線5,5,…に接触しないように曲げられていればよい。
次に、熱伝導性シート部材4の物性(熱伝導率および熱拡散率など)を示す。
熱伝導性シート部材4の熱伝導率は、そのシートの平面方向では 400 W/(m・K)以上であることが好ましく、800 W/(m・K)以上であることがより好ましく、1600 W/(m・K)程度であることが最も好ましく、そのシートの厚み方向では8 W/(m・K)以上であり15 W/(m・K) 以下であることが好ましい。このように熱伝導性シート部材4では、熱伝導率の異方性が大きい方が好ましく、具体的にはシートの厚み方向の熱伝導率がシートの平面方向の熱伝導率の 1/20 以下であることが好ましい。
また、熱伝導性シート部材4の厚みは 0.025 mm 以上 0.3 mm 以下であることが好ましく、その熱拡散率は 3×10-4 m2/s 以上であり 10×10-4 m2/s であることが好ましい。因みに、銅では、熱伝導率が390 W/(m・K)程度であり、熱拡散率が1.4×10-4 m2/s 程度である。また、アルミニウムでは、熱伝導率が230 W/(m・K)程度であり、熱拡散率が0.9×10-4 m2/s 程度である。よって、熱伝導性シート部材4の平面方向の熱伝導率は銅またはアルミニウムの熱伝導率よりも大きく、熱伝導性シート部材4の熱拡散率は銅またはアルミニウムの熱拡散率よりも大きい。
このような熱伝導性シート部材は、従来、ヒートスプレッダーやヒートシンクとして、放熱特性を上げて放熱させるために使用されていた。しかし、本発明では、温度領域を分ける仕切部材として熱伝導性シート部材4を利用しており、発熱素子(半導体素子3)を放熱させるために使用するのではなく、冷却媒体1の温度を伝える冷たい熱分離シート部材として使用している。よって、本発明における熱伝導性シート部材4の用途は、従来の用途とは全く異なる。このような熱伝導性シート部材4を用いて発熱素子の一部を覆うことにより、発熱素子(半導体素子3)近傍では温度が上昇しても、熱伝導性シート部材4を隔てた反対側(電子部品2,22)では、温度上昇を抑制することができる。
例えば、熱伝導性シート部材4として、シートの平面方向の熱伝導率が 400 W/(m・K)であり、シートの厚み方向の熱伝導率が 20 W/(m・K)であり、シートの厚みが 0.1 mm 以下であるシート部材を用いた場合、半導体素子の底面積を 1×1 cm2 とすると、熱伝導性シート部材を伝わる熱量 W は、シート部材の熱伝導度を TC(W/mK)とし、熱伝導方向に垂直な方向におけるシート部材の断面積を S(m2)とし、温度差を K(°K)とし、長さを LL(m)とすると、
W = (TS×S)/(LL×K)・・・・・・・・(1)
と表される。
シート部材の平面方向では、TS = 400であり、S = (1×10-2)×(1×10-4)=1×10-6であるので、シート部材の平面方向を伝わる熱量 W1 は、
W1 = (4×10-4)/(LL×K)・・・・・・・(2)
となる。
シート部材の厚み方向(実装面11aから半導体素子3へ向かう方向)では、TS = 20であり、S = (1×10-2)×(1×10-2)=1×10-4であるので、シート部材の厚み方向を伝わる熱量 W2 は、
W2 = (2×10-3)/(LL×K)・・・・・・・(3)
となり、W2 は W1 の5倍となる。これにより、熱伝導性シート部材4は、シートの厚み方向にはシートの平面方向の5倍の熱量を伝えることが出来ることがわかる。言い換えると、上記式の W1 と W2 とを略同一にするには、シートの厚み方向の面積(実装面11aに接触している熱伝導性シート部材4の面積)がシートの平面方向の面積の 1/5 であればよい。
本実施形態にかかる熱伝導性シート部材4では、冷却媒体1の熱(冷却熱)は、上述のように、まず下部4bに伝達され、その後下部4bから側部4cおよび上部4aへ順に伝達される。すなわち、冷却媒体1の熱は、まず熱伝導性シート部材4の厚み方向に伝達してから(下部4bへの伝達)、熱伝導性シート部材4の平面方向へ伝達する(下部4bから側部4cおよび上部4aへの伝達)。上記算出結果より同一の熱量を伝達するためにはシートの厚み方向の面積がシートの平面方向の面積の 1/5 であればよいので、下部4bの表面積が熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 程度であれば、冷却媒体1の熱を熱伝導性シート部材4の全体に亘って伝達することができる。
下部4bの表面積は、熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 であれば好ましいが、熱接触のことを考慮すれば熱伝導性シート部材4の表面積の 1/4 以上であることが好ましく、熱伝導性シート部材4の表面積の 1/3 以上であることがさらに好ましい。一方、半導体モジュール10の小型化を図るためには、下部4bの表面積は小さい方が好ましい。以上より、冷却媒体1の熱伝導効率(冷却媒体1の冷却効率)の要請と、半導体モジュール10の小型化の要請および使用状況とを考慮に入れて、1/5 を基準値として下部4bの表面積の割合を決定することが好ましい。
なお、本実施形態では、下部4bは冷却媒体1と半導体素子3の下面3bとの間に挟まれているので、下部4bの表面積は必然的に熱伝導性シート部材4の全表面積の 1/5 以上となる、と考えられる。
熱伝導性シート部材4は、上記熱伝導率を有している材質からなることが好ましいが、グラファイトシートからなることが最も好ましい。グラファイトシートは優れた熱伝導性および導電性を有しているので、熱伝導性シート部材4としてグラファイトシートを用いれば、半導体素子3が発する熱を遮断できるだけでなく、半導体素子3のスイッチングにより発生する電磁波のノイズを吸収でき、その結果、半導体素子3の発するノイズを低減できるためである。
上記グラファイトシートとしては、例えば松下電器産業株式会社から「PGSグラファイトシート」として市販されているものまたは株式会社ジェルテックから「スーパーλGS」として市販されているものを用いることができる。上記グラファイトシートでは、シートの平面方向での熱伝導率およびシートの厚み方向での熱伝導率は上記範囲内にある。すなわち、シートの平面方向の熱伝導率は、400 W/(m・K)以上であり、通常800 W/(m・K)程度であり、最良のグラファイトシートでは 1600 W/(m・K)程度である。また、シートの厚み方向の熱伝導率は、8 W/(m・K)以上 15 W/(m・K)以下である。よって、グラファイトシートの熱伝導率の異方性は大きい。
また、グラファイトシートを熱伝導性シート部材4として用いる場合には、シートの厚みおよび熱拡散率が上述の範囲内であるグラファイトシートを用いることが好ましい。
次に、本実施形態にかかる半導体モジュール10の製造方法を示す。図3(a)乃至(d)は、半導体モジュール10の製造方法を示す上面図である。
まず、図3(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに、熱伝導性シート部材4を配置する(工程(a))。そして、熱伝導性シート部材4の一端41側(正確には、一端41側のうち熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上の面積を有する部分(第1の部分))を冷却媒体1の実装面11aに接着する。
接着方法としては、熱伝導性シート部材としてグラファイトシートを用いる場合には、炭化した金属を介してグラファイトシートを実装面に接着させることが好ましい。具体的には、まず、Ti, Mo, W 等の金属をグラファイトシートの下面に蒸着し、蒸着された金属とグラファイトシートとの界面を加熱等して炭化させる。これにより、グラファイトシートの下面に炭化層を介して上記金属層が形成される。次に、上記金属層が実装面11aに接触するようにグラファイトシートを配置し、実装面11aに圧着させる。これにより、グラファイトシートを実装面に確実に接着することができる。
また、圧着させるのではなく、はんだを用いて接着させてもよい。具体的には、まず、はんだとなじみやすい金属(例えば、Al や Cu)からなる金属層と炭化層を形成可能な金属(例えば、Ti,Co等)をグラファイトシートの下面に蒸着し、蒸着された金属とグラファイトシートとの界面を炭化させて炭化層を形成する。その後、はんだ層を上記金属層の上面に設け、そのはんだ層が実装面11aに接触するようにグラファイトシートを配置してもよい。
次に、図3(b)に示すように、熱伝導性シート部材4の上記第1の部分の上に、半導体素子3を実装する(工程(b))。このとき、第3側面3eが第1側面3cよりも熱伝導性シート部材4の一端41側に配置されるように、半導体素子3を実装する。
続いて、導電性細線5,5,…を用いて、半導体素子3と冷却媒体1に設けられた電極端子13とを電気的に接続する。このとき、熱伝導性シート部材4のうち第2および第4側面の周囲の部分4i,4iを跨いで、導電性細線5,5,…をそれぞれ配置する。
それから、図3(c)に示すように、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入してその上面3aを覆う。このとき、半導体素子3の上面3aのみならず導電性細線5,5,…を覆うように、絶縁部材6を注入することが好ましい。
その後、図3(d)に示すように、熱伝導性シート部材4の他端42を持ち上げ、その他端42が一端41の上方に配置されるように熱伝導性シート部材4を曲げる(工程(c))。このとき、熱伝導性シート部材4の他端42を一端41に接触させないようにすることが好ましい。これにより、熱伝導性シート部材4の第2の部分(本実施形態では、側部4c)が半導体素子3の第1側面3cを覆う。それから、電子部品2を、半導体素子3に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装する(工程(d))。また、電子部品22を、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装する。そして、導電性細線5,5,…を用いて、電子部品2,22と冷却媒体1に設けられた電極端子13とをそれぞれ電気的に接続する。これにより、図1に示す半導体モジュール10を製造することができる。
以下では、熱伝導性シート部材を備えていない従来の半導体モジュールおよび図23に示す半導体モジュール(以下、「参考例の半導体モジュール」という)70と比較しながら、本実施形態にかかる半導体モジュール10を説明する。また、半導体素子として、Si素子を用いた場合とワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合との差異を説明する。まず、本実施形態にかかる半導体モジュール10の利点を示す。
従来の半導体モジュールでは、半導体素子が発した熱は、半導体素子の周囲に拡散および伝達する。そのため、半導体素子の周囲に電子部品を実装すると、その電子部品の温度上昇を招来する。電子部品の温度上昇を防止するためには、半導体素子が発した熱が伝達しない程度に半導体素子から充分に離れた位置に、その電子部品を配置することが考えられる。しかし、電子部品をこのように配置すると、半導体モジュールの大型化を招来してしまう。また、導電性細線を用いて半導体素子と電子部品とを電気的に接続する場合、電子部品を半導体素子から充分離れた位置に配置すれば導電性細線が長尺になり、無視できない程度の大きな抵抗が導電性細線に発生してしまう。その結果、導電性細線において損失が生じてしまう。
また、半導体素子が発熱する場合を想定し、高温に耐えうる電子部品を実装することも考えられる。しかし、高温仕様の電子部品を実装すれば、半導体モジュールのコストの低廉化を図ることができない。
参考例の半導体モジュール70では、熱伝導性シート部材74は、冷却媒体1の実装面11aと半導体素子3の下面3bとの間にのみ設けられている。この場合、冷却媒体1からの熱(冷却熱)が半導体素子3に伝わるので、熱伝導性シート部材74の表面積が半導体素子3の下面3bの面積に比べて十分広い場合には、半導体素子3からの発熱による温度上昇の低下を図ることはできる。しかし、上記従来の半導体モジュールと同じように、半導体素子3が発した熱は、拡散および伝達してしまう。
以上より、上記従来の半導体モジュールおよび参考例の半導体モジュール70では、半導体素子の周囲に配置された電子部品の温度上昇を招来し、その温度上昇を回避するためには半導体モジュールの大型化および高コスト化を招来するとともに、長く引き回した導電性細線における損失の発生を招来する。
一方、本実施形態にかかる半導体モジュール10では、上述のように、熱伝導性シート部材4が熱分離を効率良く行うので、半導体素子3の周囲の温度上昇を抑制することができる。よって、半導体素子3から充分離れた位置に電子部品2,22を実装しなくてよいので、半導体モジュール10の小型化を図ることができ、さらには導電性細線5,5,…の短尺化を図ることができるので導電性細線5,5,…における損失の発生を防止することができる。
また、高温仕様の電子部品を用いなくてよいので、半導体モジュール10の低コスト化を図ることができる。
次に、半導体素子として、ワイドバンドギャップ半導体素子を用いる利点を示す。
Siの熱伝導率はそれほど大きな値を示さないので、半導体素子としてSi素子を用いる場合には、半導体モジュールはSi素子が発する熱(動作時においてSi素子に電流を流すことによりそのSi素子が発する熱)を効率的に逃がすように熱設計されることが好ましい。さらに、Si素子は、その温度が150℃以上になると、半導体的な特性が弱まり、電流制御素子として機能しなくなり危険であるので、半導体モジュールは、Si素子において最も電流密度が高い部分での温度が150℃を超えないように熱設計されていることが好ましい。具体的には、動作時のSi素子内部の電流密度が10×104 A/m2 以上である場合には、Si素子での発熱を考慮する必要が生じ、特にSi素子内部の電流密度が50×104 A/m2 以上である場合には、Si素子からの発熱が顕著となり、上記した熱設計が必須となる。
すなわち、半導体素子としてSi素子を用いる場合には、熱設計において熱の放出経路を考えなければならず、熱放出パスとなる冷却媒体にSi素子をきちんと接触させる必要がある。具体的には、Si素子は、ダイボンドと呼ばれる方法を用いて半田などによってパッケージ基材に直接接合されている。そのため、複数のSi素子を備えた半導体モジュールでは、複数のSi素子は、積層されることはなく、互いに重ならないようにパッケージ基材の実装面11aに2次元的に配置されている。よって、パッケージ基材の実装面11aの面積は大きくなり、半導体モジュールの大型化を招来してしまう。
以上をまとめると、半導体素子としてSi素子を用いれば、50×104 A/m2 以上の電流密度の動作では Si-MOSFET はもとより Si-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であっても、損失による発熱が増大するので、Si素子の動作許容の温度150℃程度に保った状態で半導体モジュールを動作させ続けることは難しい。ここで、Si-MOSFETは半導体材料としてSiを用いて形成されたMOSFETであり、Si-IGBTは半導体材料としてSiを用いて形成されたIGBTである。
なお、Si-IGBT は、Si-MOSFETに比べて一桁以上電気抵抗を小さくできる。しかし、IGBTでは温度上昇によりその電気抵抗が減少する。そのため、電圧一定で IGBT を動作させれば、半導体素子を流れる電流量は増加し、IGBT での発熱量のさらなる増大を招来し、熱暴走して場合によっては IGBT の破壊を招来してしまう。このことは、一つのSi-IGBT内部の電流集中による破壊として、または、並列に接続された複数のSi-IGBTの一つへの電流集中による破壊として観測される。
一方、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合、半導体モジュールを小型化するためにワイドバンドギャップ半導体素子を小型化すると、ワイドバンドギャップ半導体素子における電流密度が増加し、その結果、ワイドバンドギャップ半導体素子における発熱量が増加してしまう。このような場合であっても、本実施形態における熱伝導性シート部材4を用いてワイドバンドギャップ半導体素子の一部を覆えば、効率良く熱分離を行うことができる。すなわち、本発明は、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合に特に有効である。
詳細に示すと、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化すると、ワイドバンドギャップ半導体素子からの発熱量は増加する。熱伝導性シート部材を備えていない従来の半導体モジュールでは、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合、電子部品をそのワイドバンドギャップ半導体素子から更に離して配置しなければ、ワイドバンドギャップ半導体素子からの熱が電子部品に伝達してしまう。以上より、従来の半導体モジュールでは、半導体モジュールの小型化を図るためにワイドバンドギャップ半導体素子を小型化したにも関わらず、モジュールの大型化を招来してしまう。
ところが、本実施形態における半導体モジュールでは、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合、電子部品をそのワイドバンドギャップ半導体素子の近くに実装しても、ワイドバンドギャップ半導体素子からの熱は電子部品へ伝達されない。以上より、本実施形態における半導体モジュールでは、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合であっても、電子部品を半導体素子に近づけて実装することができるので半導体モジュールの小型化を図ることができる。
また、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合、その熱伝導率はSiの熱伝導率に比べて数倍以上であり、例えば炭化珪素(SiC)の熱伝導率は490 W/(m・K)程度であり、ダイヤモンドの熱伝導率は2000 W/(m・K) 程度である。このように半導体素子の熱伝導率が高いので、半導体素子からの熱放出効率が高くなり、その結果、半導体素子内において高電流密度部分での温度の上昇を抑えることが出来る。
また、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いて形成された MOSFET を1kV程度の耐圧で使用すると、半導体素子としてSi素子を用いて形成された MOSFET を同耐圧で使用する場合に比べて一桁以上小さい損失を実現でき、半導体素子としてSi素子を用いて形成された IGBT を同耐圧で使用する場合に比べて半分以下の損失を実現できる。このような低損失性により、半導体素子が発する熱量の減少効果を期待できる。
さらに、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子により構成された MOSFET を用いると、半導体素子として Si素子により構成された IGBT を用いた場合を凌駕するほどの高耐圧低損失を達成できるため、 MOSFET の高速性を高電圧大電流制御に活かすことも出来る。つまり、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子により構成された MOSFET を用いれば、半導体素子の応答速度が半導体素子におけるスイッチング時間に対して遅い場合に生ずるスイッチング損失を低減することも出来る。
また、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いて MOSFET を構成すれば、50×104 A/m2 以上の電流密度の電流が流れても半導体素子の発熱を抑えることができ、その結果、半導体モジュールを良好に動作させることができる。よって、半導体モジュールにおいて、複数の半導体素子の少なくとも一つの活性領域がワイドバンドギャップ半導体素子により構成されていることが好ましく、そのような半導体モジュールは、50×104 A/m2 以上の電流密度の電流が流れる場合に適用することが好ましい。
実際、本願発明者は以下のことを確認している。すなわち、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いて MOSFET を構成した場合、50×104 A/m2 以上の電流密度で動作させてワイドバンドギャップ半導体素子を高温に保った場合の方が、ワイドバンドギャップ半導体素子を低温に保っている場合よりも、ワイドバンドギャップ半導体素子の電気抵抗が増大する。一般に、 MOSFET では電圧を一定にして動作させる場合が多いので、ワイドバンドギャップ半導体素子が高温になった結果その電気抵抗が増大すると、ワイドバンドギャップ半導体素子を流れる電流量は減少する。よって、MOSFETでの発熱量が低下する。そのため、上記Si-IGBTにおいて課題であった熱暴走による破壊が起こらず、たとえ発熱によりワイドバンドギャップ半導体素子の温度が200℃以上(さらに400℃以上)に上がっても、MOSFET を安定して良好に動作させることができる。
さらに、本願発明者は、半導体素子が炭化珪素(その中でも4H-SiC)からなる半導体素子であれば、他のワイドバンドギャップ半導体素子と比べて、低損失性、安定性および信頼性等の面で優れていることを確認している。これは、低欠陥密度のウェハが供給されていることに起因し、結晶中の欠陥に起因する絶縁破壊などの問題が起こりにくいことと対応している、と本願発明者は考えている。
以下に、本実施形態にかかる半導体モジュール10が奏する効果をまとめて記載する。
本実施形態にかかる半導体モジュール10は熱分離を効率良く行うことができるので、従来のモジュールに比べて電子部品2を半導体素子3の近くに実装することができる。よって、モジュールの小型化を図ることができ、さらには、モジュールの低コスト化および性能向上を図ることができる。
具体的には、熱伝導性シート部材4が下部4bを有しているので、半導体モジュール10の動作により半導体素子3が高温となっても、熱伝導性シート部材4を冷却媒体1と略同温度に保つことができる。熱伝導性シート部材4が側部4cを有しているので、電子部品2,22への熱の伝達を抑制することができる。熱伝導性シート部材4が上部4aを有しているので、熱分離だけでなく電磁波のノイズを吸収することができる。すなわち、熱伝導性シート部材4が上部4aを有していなくても熱分離を行うことができるが、熱伝導性シート部材4が上部4aを有していれば熱分離を更に効率良く行うことができるとともに電磁波のノイズを吸収することができる。よって、熱伝導性シート部材4は後述の第1および第2の変形例に示す形状であってもよい。
また、熱伝導性シート部材4の上部4aと下部4bとの間4dを通して導電性細線5,5,…を設けることができるので、導電性細線5,5,…を短時間且つ容易に配線することができる。その結果、半導体モジュール10の製造時間の短縮および製造コストの低廉化を図ることができる。
なお、本実施形態では、熱伝導性シート部材は、ある一部分(第1の部分)が、それ以外の一部分(第2の部分)に近づくように曲げられていればよい。例えば、短尺方向の一端に、短尺方向の他端が近づくように曲げられていてもよく、また、長手方向の中程の部分に、長手方向の一端が近づくように曲げられていてもよい。
(第1の変形例)
図4は、実施形態1の第1の変形例にかかる半導体モジュール110の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材114は、下部114bおよび側部114cを有しているが上部を有していない。このように熱伝導性シート部材114が上部を有していなくても側部114cを有しているので、電子部品2,22への熱の伝達を抑制することができ、熱分離を行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール110の製法は、実施形態1に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材114を曲げる工程では、一端41側が下部114bとなり他端42側が側部114cとなるように、熱伝導性シート部材114を曲げる。
(第2の変形例)
図5は、実施形態1の第2の変形例にかかる半導体モジュール210の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材214は、実施形態1に記載のように上部214a、下部214bおよび側部214cを有しているが、その上部214aは、半導体素子3の上面3a全体を覆っていない。このように熱伝導性シート部材214が半導体素子3の上面3a全体を覆っていなくても、熱分離を行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール210の製法は、実施形態1に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材214を曲げる工程では、一端側が下部214bとなり他端側が上部214aとなるように、熱伝導性シート部材214を曲げる。
《発明の実施形態2》
図6は、実施形態2にかかる半導体モジュール20の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本実施形態では、上記実施形態1とは異なり、対象部品が電子部品2であり、対象部品とは異なる他方の部品が半導体素子3である。すなわち、熱伝導性シート部材4は、半導体素子3ではなく電子部品2の一部を覆っている。以下に、具体的に示す。
熱伝導性シート部材4は、上記実施形態1のように、上部4a、下部4bおよび側部4cを有している。上部4aは、電子部品2の上面2aを覆っている。下部4bは電子部品2の下面2bと実装面11aとの間に挟まれており、その表面積は上記実施形態1と同じく熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上である。側部4cは、電子部品2の第1側面(第1の側面)2cを覆っている。そして、半導体素子3は、電子部品2に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装されており、電子部品22は、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装されている。
上記実施形態1と同じく、上部4aは下部4bに接触していないので、導電性細線を通すための孔を熱伝導性シート部材4に形成しなくてもよい。
本実施形態にかかる半導体モジュール20では、半導体素子3が熱伝導性シート部材4に覆われていないので、半導体素子3が発した熱はその周囲へ拡散および伝達する。しかし、電子部品2の一部が熱伝導性シート部材4に覆われており、上記実施形態1と同じく下部4bの表面積は熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上であるので、冷却媒体の熱(冷却熱)を熱伝導性シート部材4全体に効率良く伝達させることができる。よって、半導体素子3が発した熱が電子部品2に伝達することを防止できる。さらに、電子部品22は半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装されているので、半導体素子3が発した熱が電子部品22に伝達することをも防止できる。すなわち、本実施形態にかかる半導体モジュール20であっても、熱分離を効率良く行うことができる。
本実施形態にかかる半導体モジュール20の製法は、上記実施形態1に記載の半導体モジュール10の製法と略同一であるが、上記実施形態1の図3(b)に示す工程では、半導体素子3ではなく電子部品2を熱伝導性シート部材4の一端41側に配置し、図3(c)に示す工程では、絶縁部材を設けない。また、図3(d)に示す工程では、他端42が一端41の上に配置されるように熱伝導性シート部材4を曲げ、その後、半導体素子3を電子部品2に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装する。
以上説明したように、本実施形態にかかる半導体モジュール20は、上記実施形態1の半導体モジュール10と略同一の効果を奏する。
なお、本実施形態は、以下に示す構成であってもよい。
本実施形態のように電子部品2を対象部品とする場合には、冷却媒体1はそれほど優れた冷却能力を有していなくてもよい。一方、上記実施形態1のように発熱する半導体素子3を対象部品とする場合には、冷却媒体1は優れた冷却能力を有していることが好ましく、金属製の冷却媒体を用いる場合には熱伝導率が大きい方が好ましい。
また、本実施形態にかかる半導体モジュールでは、図6に示すように絶縁部材を備えていなくても良い。なぜならば、電子部品の上面には電極が設けられていない場合が多いので、熱伝導性シート部材の一部が電子部品の上面に接触してもその接触箇所においてショートが発生する虞は極めて低いためである。もちろん、上記実施形態1のように絶縁部材を介在させてもよい。
さらに、熱伝導性シート部材は、上記実施形態1における図4に示すように上部を有していなくても良く、同実施形態における図5に示すように電子部品の上面の一部を覆っていても良い。
《発明の実施形態3》
図7は、実施形態3にかかる半導体モジュール30の構成図であり、図7(a)はその上面図であり、図7(b)はその側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。図8は、本実施形態における熱伝導性シート部材4の斜視図である。
本実施形態では、熱伝導性シート部材4は、実施形態1と同じく半導体素子3の一部を覆っているが、半導体素子3の第1側面3cだけでなく第3側面3eも覆っている。以下では、本実施形態における熱伝導性シート部材4を具体的に示す。
本実施形態における熱伝導性シート部材4は、その一端41側および他端42側が実装面11aに接触するように半導体素子3の上から被せられており、上部4aと、下部4bおよび下部4bと、側部4cと、第2の側部4eとを有している。上部4aは、熱伝導性シート部材4の長手方向中央に存在しており、上記実施形態1と同じく半導体素子3の上面3aを覆っている。下部4bおよび下部4bは、それぞれ、実装面のうち半導体素子3の外側に配置されており、熱伝導性シート部材4の一端41側および他端42側に存在している。側部4cおよび第2の側部4eはそれぞれ上記実施形態1と同じく上部4aの一部と下部4bおよび下部4bとの間に存在しており、側部4cは半導体素子3の第1側面3cを覆っており、第2の側部4eは半導体素子3の第3側面3eを覆っている。これにより、冷却媒体1の熱(冷却熱)は、まず下部4bおよび下部4bにそれぞれ伝達され、次に側部4cおよび第2の側部4eへそれぞれ伝達され、その後上部4aへ伝達され、このようにして熱伝導性シート部材4全体に伝達される。すなわち、冷却媒体1の熱は、熱伝導性シート部材4の一端41および他端42から長手方向における中央へ伝達される。
本実施形態にかかる熱伝導性シート部材4では、2つの下部4b,4bの表面積の合計が、上記実施形態1に記載のように、熱伝導性シート部材4の全表面積の 1/5 以上であることが好ましい。
また、上部4aは、実装面11から離れて存在しており、導電性細線5,5,…は、上部4aと実装面11との間4dを通して設けられる。そのため、上記実施形態1と同じく、熱伝導性シート部材4に孔を設けなくても導電性細線5,5,…を設けることができる。
なお、熱伝導性シート部材4の上部4aは、図7(b)における手前側および奥側の二方において実装面11aに接触していない。しかし、例えば導電性細線5,5,…を図7(b)における手前側にのみ設ける場合には、熱伝導性シート部材4の上部4aは、同図における奥側では実装面11aに接触していてもよい。熱伝導性シート部材4は、導電性細線5,5,…に接触しないように曲げられていればよい。
図9(a)乃至(c)は、本実施形態にかかる半導体モジュール30の製造方法を示す上面図である。
まず、図9(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに、はんだ等の導電性接着剤(不図示)を用いて半導体素子3を固定する(工程(a))。その後、導電性細線(不図示)を用いて、冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)と半導体素子3とを電気的に接続する。
次に、図9(b)に示すように、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入し、その上面3aおよび上記導電性細線を覆う。その後、同図に示す矢印の方向から熱伝導性シート部材4を近づけ、絶縁部材6の上に熱伝導性シート部材4を被せる(工程(b))。
このとき、熱伝導性シート部材4の一端41側および他端42側を実装面11aに接触させる一方、熱伝導性シート部材4全体を導電性細線(不図示)には接触させないようにする。なお、上記実施形態1に記載の接着方法を用いて、熱伝導性シート部材4の一端41側および他端42側を実装面11aに接着させることが好ましい。
また、上記実施形態1などで記載したように、熱伝導性シート部材4のうち実装面11aに接触する部分(第1の部分)の面積が熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上となるように、熱伝導性シート部材4を絶縁部材6の上に被せる。
その後、図9(c)に示すように、電子部品2を、半導体素子3に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装する(工程(c))。さらに、電子部品22を、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装する。そして、導電性細線(不図示)を用いて、電子部品2,22と冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)とをそれぞれ電気的に接続する。これにより、図7に示す半導体モジュール30を製造することができる。
このような半導体モジュール30では、上記実施形態1の半導体モジュール10と同じように半導体素子3の発熱による熱伝導性シート部材4の温度上昇を防止することができるので、熱分離を効率よく行うことができる。
なお、上記実施形態1に記載のように、熱伝導性シート部材が上部を有していなくても半導体モジュールは熱分離を効率よく行うことができる。そのため、熱伝導性シート部材は、以下の変形例に示す構成であってもよい。
(第1の変形例)
図10は、実施形態3の第1の変形例にかかる半導体モジュール130の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材134は、下部134bと、側部134cとを有している。側部134cは、半導体素子3の第1側面3cを覆っており、下部134bは、側部134cから延びている。また、電子部品2は、半導体素子3に対して側部134cを隔てた反対側に実装されている。このように熱伝導性シート部材134が上部を有していなくても側部134cを有しているので、熱分離を効率良く行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール130の製法は、実施形態3に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材134を曲げる工程では、一端が下部134bとなり他端が側部134cとなるように、熱伝導性シート部材134を曲げる。
(第2の変形例)
図11は、実施形態3の第2の変形例にかかる半導体モジュール230の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材234は、上部234aと、1つの下部234bと、側部234cとを有している。上部234aは、半導体素子3の上面3a全体を覆っている。側部234cは、上部234aから延び、半導体素子3の第1側面3cを覆っている。下部234bは、側部234cから延びて実装面11aに接触している。このように半導体素子3の第3側部3eが熱伝導性シート部材234に覆われていなくても、半導体素子3の側部3cが熱伝導性シート部材234に覆われていれば、電子部品2,22への熱の伝達を抑制することができる。
本変形例にかかる半導体モジュール230の製法は、実施形態3に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材234を曲げる工程では、一端が下部234bとなり他端が上部234aとなるように、熱伝導性シート部材234を曲げる。
(第3の変形例)
図12は、実施形態3の第3の変形例にかかる半導体モジュール330の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材334は、上部334aと、1つの下部334bと、側部334cと、第2の側部334eとを有している。上部334aは、半導体素子3の上面3a全体を覆っている。側部334cは、半導体素子3の第1側面3cを覆うように上部334aから延びており、第2の側部334eは、半導体素子3の第3側面3eを覆うように上部334aから延びている。下部334bは、実装面11aに接触するように第2の側部334eから延びている。言い換えると、熱伝導性シート部材334は、実施形態3の熱伝導性シート部材4とは異なり、側部334cから延びる下部を有していない。このような場合であっても、下部334bの表面積が熱伝導性シート部材334の表面積の 1/5 以上であれば冷却媒体1の冷却熱を熱伝導性シート部材334に伝達させることができ、よって、熱分離を効率良く行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール330の製法は、実施形態3に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材334を曲げる工程では、一端が側部334cとなり他端が下部334bとなるように、熱伝導性シート部材234を曲げる。
(第4の変形例)
図13は、実施形態3の第4の変形例にかかる半導体モジュール40の構成を示す側面図である。
本変形例では、対象部品が電子部品2である。半導体モジュール40は、実施形態3の製法と略同一の製法に従って製法され、実施形態3と同じく熱分離を効率良く行うことができる。
なお、本変形例のように熱伝導性シート部材4を用いて電子部品2を覆う場合、その熱伝導性シート部材4の形状は、実施形態3の第1乃至第3の変形例に示す形状であってもよい。
《発明の実施形態4》
図14は、実施形態4にかかる半導体モジュール50の構成図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本実施形態にかかる半導体モジュール50は、上記実施形態1と異なり、放熱板7を備えている。以下に具体的に示す。
本実施形態における放熱板7は、例えば、GaNまたはAl2O3からなる板であり、半導体素子3の下面3bと熱伝導性シート部材4の下部4bとの間に挟まれて配置されており、半導体素子3が発した熱を拡散させる。これにより、半導体素子3が発した熱を放熱板7において拡散させることができるので、上記実施形態1乃至3の場合に比べて半導体素子3の温度上昇を防止することができる。また、熱伝導性シート部材4は、冷却媒体1の実装面11aおよび放熱板7の下面7bに接触しているが、半導体素子3には直接接触していない。そのため、上記実施形態1または3のように熱伝導性シート部材4が半導体素子3に直接接触している場合に比べて、冷却媒体1の冷却能力が小さくても熱伝導性シート部材4の温度上昇を防止することができる。
また、放熱板7が絶縁材料(例えばGaNまたはAl2O3)からなる場合には、半導体素子3の下面3bに設けられた電極と熱伝導性シート部材4との間を絶縁することができ、その結果、半導体素子3のアースと冷却媒体1のアースとを別々にとることができる。これにより、本実施形態にかかる半導体モジュール50は、熱遮蔽効果だけでなくノイズ遮蔽効果を奏することもできる。
本実施形態にかかる半導体モジュール50の製法は、上記実施形態1の半導体モジュール10の製法と略同一であるが、図3(b)に示す工程では、熱伝導性シート部材4の一端41側の上に放熱板7を配置し、はんだ等の導電性接着剤を介して放熱板7の上に半導体素子3を固定する。
なお、本実施形態は、以下に示す構成であってもよい。
放熱板7は、上記実施形態3にかかる半導体モジュール30に設けられていても良く、その場合には、半導体素子3の下面3bと実装面11aとの間に介在されていることが好ましい。これにより、上述のように放熱板7において半導体素子3が発する熱を拡散させることができ、半導体素子3の温度上昇を抑制することができる。
また、放熱板7は、上記実施形態2および上記実施形態3の第4の変形例のように対象部品が電子部品2である場合であっても、半導体素子3の下面3bと実装面11aとの間に介在されていてもよい。これにより、放熱板7において半導体素子3が発する熱を拡散させることができるので、上記実施形態2および上記実施形態3の第4の変形例のように放熱板7が設けられていない場合に比べて、半導体素子3の温度上昇を防止することができる。
さらに、熱伝導性シート部材は、上記実施形態1の第1の変形例(図4)に示すように上部を有していなくても良く、同実施形態の第2の変形例(図5)に示すようにその上部が半導体素子の上面の一部を覆っていても良い。また、熱伝導性シート部材は、上記実施形態3およびその変形例に示す形状であってもよい。
《発明の実施形態5》
図15は、実施形態5にかかる半導体モジュール60の構成図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本実施形態にかかる半導体モジュール60は、上記実施形態4にかかる半導体モジュール50と略同一であるが、電子部品2と半導体素子3との相対的な位置関係を異にする。以下に、具体的に示す。
本実施形態にかかる半導体モジュール60では、冷却媒体1の実装面11aには支柱61が立てられており、支柱61には、第2の基板62が冷却媒体1の基板11と略平行となるように固定されている。第2の基板62には、電子部品2が実装されている。
なお、支柱61および第2の基板62は、冷却媒体1と略同一の材質(金属)からなってもよく、冷却媒体1とは異なる材質(例えば樹脂)からなってもよい。第2の基板62には電子部品2が設けられるので、支柱61および第2の基板62が冷却機能を有していなくてもよいからである。
本実施形態における熱伝導性シート部材4は、上記実施形態1および4に記載のように半導体素子3の一部を覆っている。そのため、熱分離を効率良く行うことができるので、図15に示すように半導体素子3の上方に電子部品2を配置しても、電子部品2への熱伝達を抑制することができる。
本実施形態にかかる半導体モジュール60は、上記実施形態1に記載の製法に従って製造することができる。
なお、半導体モジュールは、上記実施形態1乃至3に記載のように放熱板7を備えていなくてもよい。また、半導体モジュールは、以下の変形例に示す構成であってもよい。
(第1の変形例)
図16は、実施形態5の第1の変形例にかかる半導体モジュール160の構成を示す側面図である。図17は、熱伝導性シート部材164の上部164aの形状を説明するための図である。なお、図16では、導電性細線を省略している。また、図17では、図を明瞭にするため、絶縁部材、放熱部材および冷却媒体1の冷却用フィンを省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材164の上部164aは、実施形態5とは異なり半導体素子3の上面3a全体を覆っていない。以下に、具体的に示す。
上部164aは、第1の領域161と第2の領域162とで挟まれた第3の領域163(図17に示す斜線領域)内に存在している。第1の領域161は、半導体素子3の第1側面(第1の側面)3cと電子部品2の第1側面(第1の側面)2cとを結んで形成される領域であり、第2の領域162は、半導体素子3の第3側面(第2の側面)3eと電子部品2の第3側面(第2の側面)2eとを結んで形成される領域である。
ここで、上記実施形態1等に記載のように、半導体素子3の第1側面3cは、熱伝導性シート部材164の側部164cに覆われている側面であり、半導体素子3の第3側面3eは、その第1側面3cとは反対側の側面である。また、図17に示すように、電子部品2の第1側面2cは、電子部品2の側面のうち半導体素子3の第1側面3cを正面から見たときに正面に配置された側面であり、電子部品2の第3側面2eは、その第1側面2cとは反対側の側面である。
このように熱伝導性シート部材164の上部164aの一部が第3の領域163内に存在しているので、熱伝導性シート部材が半導体素子の上面を覆っていない場合に比べて、半導体素子3からの熱が電子部品2へ伝達することを阻止でき、熱分離を行うことができる。
図18(a)および(b)は、本変形例にかかる半導体モジュール160の製造方法を示す側面図である。
まず、図18(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに支柱61および第2の基板62が取り付けられた本体を用意する。そして、他端42側が一端41側よりも支柱61寄りとなるように熱伝導性シート部材164を実装面11aに配置する。それから、熱伝導性シート部材164の一端41側(正確には、一端41側のうち熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上の面積を有する部分(第1の部分))に、第1側面3cが第3側面3eよりも支柱61寄りとなるように半導体素子3を実装する。その後、導電性細線(不図示)を用いて半導体素子3と冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続し、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入して上面3aおよびその導電性細線を覆う。
次に、第2の基板62に、第1側面2cが第3側面2eよりも支柱61寄りとなるように電子部品2を実装し(工程(b))、導電性細線(不図示)を用いて電子部品2と第2の基板62に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続する。
続いて、図18(b)に示すように、熱伝導性シート部材164の他端42が第3の領域163内に存在するように、熱伝導性シート部材164を曲げる(工程(c))。これにより、熱伝導性シート部材164の第2の部分(本変形例では、熱伝導性シート部材164の側部164c)が半導体素子3の第1側面3cを覆うように配置され、本変形例にかかる半導体モジュール160を製造することができる。
なお、本変形例では、電子部品が半導体素子の直上に配置されていてもよい。この場合、熱伝導性シート部材は、本変形例のように曲げられていても良く、実施形態5に記載のように曲げられていても良い。
(第2の変形例)
図19は、実施形態5の第2の変形例にかかる半導体モジュール260の構成を示す側面図である。
本変形例では、熱伝導性シート部材164は、実施形態5の第1の変形例と同様に上部164a、下部164bおよび側部164cを有している。しかし、側部164cは、同変形例とは異なり、支柱61に対して半導体素子3を隔てた反対側に存在している。これにより、半導体素子3と支柱61との間に、側部164cを設けるためのスペースを用意しなくてもよいので、実施形態5の第1の変形例と比べて半導体素子3を支柱61に近づけて実装することができる。よって、本変形例では、実施形態5の第1の変形例に比べて、半導体モジュールの小型化を図ることができる。
なお、図16と図19とを比較すると、半導体素子3は、図16では、第1側面3cが第3側面3eよりも支柱61寄りとなるように実装されているが、図19では、第3側面3eが第1側面3cよりも支柱61寄りとなるように実装されている。これは、本明細書において、半導体素子の第1側面を、熱伝導性シート部材の側部に覆われている側面として定義しているためである。また、電子部品2は、図16では、第1側面2cが第3側面2eよりも支柱61寄りとなるように実装されているが、図19では、第3側面2eが第1側面2cよりも支柱61寄りとなるように実装されている。これは、本明細書では、電子部品の第1側面を、半導体素子の第1側面を正面から見たときに正面に配置されている電子部品の側面として定義しているためである。
図20(a)および(b)は、本変形例にかかる半導体モジュール260の製造方法を示す側面図である。なお、以下では、実施形態5の第1の変形例における製法との相違点を主に示す。
図20(a)に示す工程では、図18(a)に示す工程とは異なり、一端41側が他端42側よりも支柱61寄りとなるように、熱伝導性シート部材164を実装面11aの上に配置する。
図20(b)に示す工程では、図18(b)に示す工程と同じく、熱伝導性シート部材164の他端42が第3の領域163内に存在するように、熱伝導性シート部材164を曲げる(工程(c))。これにより、本変形例にかかる半導体モジュール260を製造することができる。
なお、半導体素子3の発熱による支柱61の温度上昇を防止するためには、実施形態5の第1の変形例に示す構成をとることが好ましいが、半導体モジュールの小型化および製造の簡便化を図るためには、本変形例に示す構成をとることが好ましい。
(第3の変形例)
図21は、実施形態5の第3の変形例にかかる半導体モジュール360の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材364は、上部364a、下部364bおよび側部364cを有している。上部364aは、実施形態5の第1の変形例に記載の上部164aと同じく、第3の領域163内に存在している。また、下部364bは、上記実施形態3と同じく実装面11aにおいて半導体素子3の外側に存在している。このような場合であっても、熱分離を行うことができる。
図22(a)および(b)は、本変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す図である。
まず、図22(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに支柱61および第2の基板62が取り付けられた本体を用意する。そして、実装面11aに半導体素子3を実装し、電子部品2を第2の基板62に実装する(工程(a))。その後、導電性細線(不図示)を用いて、半導体素子3と冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続し、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入して、上面3aおよびその導電性細線(不図示)を覆う。また、導電性細線を用いて、電子部品2と第2の基板62に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続する。
次に、図22(b)に示すように、熱伝導性シート部材364を用いて半導体素子3の第1側面3cを覆う。このとき、熱伝導性シート部材364の一端41側を冷却媒体1の実装面11aに接触させ、熱伝導性シート部材364の他端42が第3の領域163内に存在するように熱伝導性シート部材364を曲げる(工程(b))。本変形例においても、熱伝導性シート部材364のうち実装面11aに接触している部分の面積が熱伝導性シート部材364の表面積の 1/5 以上となるように、熱伝導性シート部材364を設けることが好ましい。これにより、本変形例にかかる半導体モジュール360を製造することができる。
なお、熱伝導性シート部材の形状は、上記実施形態3(図7)や上記実施形態3の第2および第3の変形例(図11、図12)に示す形状であってもよい。また、熱伝導性シート部材は、側部が支柱に対して半導体素子を隔てた反対側に存在するように、曲げられていても良い。
《その他の実施形態》
上記実施形態1乃至5は、以下に示す構成であってもよい。
冷却媒体は、冷却用フィンを有する代わりに、基板を冷却するための冷却経路を有していても良い。その冷却経路では、水や油などの液体を用いてもよく、空気を用いてもよい。また、冷却媒体は、上記冷却経路が基板内に埋め込まれた構成であってもよい。
半導体モジュールは、パッケージにより封止されていてもよく、パッケージとしては、公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、樹脂封止パッケージ、セラミックパッケージ、金属パッケージもしくはガラスパッケージ等が挙げられる。
上記実施形態1、2、4および5に示すように熱伝導性シート部材の下部の上に対象部品を実装する場合、この下部に孔が開いていても良い。下部に孔が形成されていると、はんだなどの導電性接着剤を孔に充填させ、その導電性接着剤を介して対象部品を冷却媒体に固定することができる。なお、上記実施形態1に記載のように、孔が形成された下部の表面積はその全表面積の 1/5 以上であることが好ましい。
半導体モジュールにおける半導体素子および電子部品の個数は、上記記載に限定されない。いずれの場合であっても、半導体素子と電子部品との間において熱分離を行うことができるように、熱伝導性シート部材を用いて半導体素子または電子部品の一部を覆えばよい。
熱伝導性シート部材は、一枚のシートが曲げられているとしたが、複数枚のシート部材を有していてもよい。この場合には、上部、下部および側部が相異なるシート部材からなり、それらのシート部材が互いに接続されていることが好ましい。
上記実施形態1および3乃至5において、電子部品を実装するタイミングは上記タイミングに限定されない。
本実施例では、上記実施形態1乃至4の半導体モジュールを動作させた場合に、半導体素子および電子部品の温度変化を調べた。
(実施例1)
実施例1では、上記実施形態1にかかる半導体モジュールと実質的に同一の半導体モジュール(以下、「本実施例の半導体モジュール」と記す)を用いた。また、図23に示す参考例の半導体モジュールを用いた。
本実施例の半導体モジュールを、上記実施形態1に記載の方法に従って製造した。このとき、図3(a)に示す工程において用意する熱伝導性シート部材には孔が開いており、図3(b)に示す工程では孔にはんだを充填させ、孔を蓋するように半導体素子を設けた。
一方、参考例の半導体モジュールでは、半導体素子と電子部品との間の距離を、本実施例の半導体モジュールにおける半導体素子と電子部品との間の距離と略同一に設定した。すなわち、本実施例で用いた参考例の半導体モジュールでは、上記距離は図23に示すその距離よりも短かった。
その後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、本実施例の半導体モジュールおよび参考例の半導体モジュールを動作させた。動作終了後、各モジュールにおける半導体素子および電子部品の温度を測定した。すると、本実施例の半導体モジュールでは、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。一方、参考例の半導体モジュールでは、電子部品の温度は110℃程度であった。
また、熱伝導性シート部材を配置していない半導体モジュールと、本実施例の半導体モジュールとを準備し、各々のモジュールの半導体素子を 100 kHz でスイッチングさせ、半導体モジュールから 5 cm 離れた位置において電子ノイズを測定した。すると、熱伝導性シート部材を配置することにより、電子ノイズを一桁以上小さくすることができた。
(実施例2)
実施例2では、上記実施形態2にかかる半導体モジュールを用いた。すなわち、図6に示す半導体モジュールを用いた。
まず、上記実施形態2にかかる半導体モジュールを製造後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、半導体モジュールを動作させた。動作終了後、半導体素子および電子部品の温度を測定すると、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。
(実施例3)
実施例3では、上記実施形態3にかかる2つの半導体モジュール、すなわち、図7に示す半導体モジュールと図13に示す半導体モジュールとを用いた。
まず、上記実施形態3に記載の方法に従って図7および図13に示す半導体モジュールを製造後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、半導体モジュールをそれぞれ動作させた。動作終了後、半導体素子および電子部品の温度を測定すると、図7に示す半導体モジュールでは、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。図13に示す半導体モジュールでは、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下であった。
(実施例4)
実施例4では、上記実施形態4にかかる半導体モジュールと実質的に同一の半導体モジュールを用いた。すなわち、図14に示す半導体モジュールを用いた。
まず、上記実施形態4にかかる半導体モジュールを製造した。このとき、上記実施例1に記載するように、熱伝導性シート部材には孔が開いており、孔にはんだを充填させその孔を蓋するように半導体素子を配置した。その後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、半導体モジュールをそれぞれ動作させた。動作終了後、半導体素子および電子部品の温度を測定すると、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。
以上、実施例1乃至4に示すように、電子部品の温度上昇を阻止でき、半導体素子の温度上昇を小さく抑えることができた。
以上説明したように、本発明は、半導体素子と電子部品などとを一体化することができ、低損失、小型且つ低コストの半導体モジュールを提供することが可能となる。本発明の半導体モジュールは、例えば、炭化珪素、GaN、ダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体素子により構成される半導体素子を備えた半導体モジュールに用いると好適である。
本発明は、半導体素子および電子部品を含む半導体モジュールとその製法とに関する。
従来より、半導体パワーモジュール(半導体モジュール)では、半導体パワー素子(半導体パワーモジュールの動作により発熱し、その結果高温となる半導体素子)を冷却してその温度を半導体パワーモジュールの安全動作温度以下に保つために、半導体パワー素子をパッケージ基材(冷却媒体)に接触させるなどの熱設計が行われている。そのため、複数の半導体パワー素子を用いて半導体パワーモジュールを構成する場合には、半導体パワー素子のそれぞれをパッケージ基材に接触させる必要がある。
また、半導体パワーモジュールには、半導体パワー素子と半導体パワー素子を制御する制御回路またはコンデンサなどの受動素子とが同一のパッケージ基材に実装されたモジュールがある。例えば、特許文献1には、図24(a)および(b)に示すように、主回路(半導体素子)83と制御回路82とが同一パッケージ(筐体)81内に収容された電力変換器(半導体モジュール)80が開示されている。図24(a)に示す電力変換器80では、主回路83と制御回路82との間に板状の遮蔽部材88が挿入されており、これにより主回路83が発する熱および電磁ノイズは遮蔽される。
また、図24(b)に示す電力変換器180では、コの字形状に形成された遮蔽部材188が、筐体81内を2分割するようにその筐体81内に配置された構成も開示されている。この構成では、遮蔽部材188は、発熱する主回路83を完全に覆っている。また、遮蔽部材188には、貫通孔が形成されており、この貫通孔には、遮蔽部材188の外に存する制御回路82もしくは受動素子と半導体パワー素子とを電気的に接続するための信号線189、または、遮蔽部材188の外に存する制御回路82もしくは受動素子から半導体パワー素子へ制御シグナルを供給するための信号線189等が通っている。
特開2005−235929号公報
複数の半導体パワー素子を用いて半導体パワーモジュールを構成する場合には、それぞれの半導体パワー素子の放熱を十分行うとともに半導体パワー素子を互いに十分離して間隙を空けて配置することにより、温度上昇を防ぐ必要がある。よって、そのパッケージ基材の実装面としては、半導体パワー素子のそれぞれの下面の面積を加算した面積以上の大きさが必要である。従って、パッケージが非常に大きくなってしまい、半導体パワーモジュールの小型化を図ることが難しい。
また、半導体パワー素子と制御回路または受動素子とが同一のパッケージ基材に実装された半導体パワーモジュールでは、半導体パワーモジュールの動作により実装された部品の温度が上昇した場合に備え、実装される全ての部品は半導体パワー素子の保証温度範囲の上限値において動作可能なことが好ましい。この上限値は例えば120℃程度であり、このような高温においても動作可能な制御回路または受動素子は限られている。よって、実装される部品の選択範囲が狭くなり、半導体パワーモジュールを自由に設計できない。また、高温においても動作可能な制御回路または受動素子は高価な場合もあり、その場合には、半導体パワーモジュールのコストが高くなる。
また、図24(a)に示す電力変換器80では、遮蔽部材88そのものの冷却を効率的に行うことが難しい。つまり、遮蔽部材88は輻射熱を遮蔽できるが、遮蔽部材88自身は冷却されない。そのため、遮蔽部材88の上側に配置された制御回路82などを低温に保つことが困難である。よって、図24(a)に示す電力変換器80では、主回路83が長時間に亘って発した熱を完璧に遮蔽することは難しく、熱分離を完璧に行うことは難しい。
さらに、図24(b)に示す電力変換器180では、主回路83などを実装する場合に、遮蔽部材188に設けたスルーホールを通して制御信号が伝達できるような配線をする必要があり、製造プロセスが複雑になり、電力変換器の生産コストを抑えることが難しい。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体素子が発熱して高温になったとしても、コンデンサまたは制御回路などを低温に保つことができる半導体モジュールを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の半導体モジュールは、実装面を有する冷却媒体と、実装面に実装され、動作時に相対的に多くの熱を発する半導体素子と、実装面に実装され、動作時に相対的に少ない熱を発する電子部品と、半導体素子および電子部品のどちらか一方である対象部品の一部を覆う熱伝導性シート部材とを備えている。熱伝導性シート部材は、実装面に接触している下部と、下部から延び対象部品の第1の側面を覆う側部とを有し、下部の表面積は熱伝導性シート部材の表面積の 1/5 以上である。また、対象部品とは異なる他方の部品は、対象部品に対して熱伝導性シート部材の側部を隔てた反対側に配置されている。
上記構成では、冷却媒体の熱(冷却熱)が、下部を介して熱伝導性シート部材全体に伝達される。これにより、効率よく熱分離を行うことができる。また、対象部品が半導体素子である場合には、半導体素子の発熱による熱伝導性シート部材の温度上昇を抑制できる。
さらに、熱伝導性シート部材の下部の表面積は熱伝導性シート部材の表面積の 1/5 以上であるので、冷却媒体の熱(冷却熱)を熱伝導性シート部材全体に効率良く伝達させることができる。
本明細書では、例えば「対象部品の一部を覆う」とは、熱伝導性シート部材が、対象部品の一部に接するように配置されていることだけでなく、対象部品の表面から離れた位置に配置されていることも意味する。
また、本明細書では、「熱分離」とは、半導体素子と電子部品との間で熱のやりとりが抑制されて遮蔽されていることであり、具体的には、半導体素子が発した熱の電子部品への伝達が小さいことである。
また、「対象部品とは異なる他の部品」は、対象部品が半導体素子である場合には電子部品であり、対象部品が電子部品である場合には半導体素子である。
本発明の半導体モジュールでは、熱伝導性シート部材の熱伝導率は、400 W/(m・K)以上であることが好適である。さらに好適には、熱伝導性シート部材は、グラファイトシートである。
本発明の半導体モジュールでは、熱伝導性シート部材は、側部から延び、対象部品の上面の少なくとも一部を覆う上部をさらに有していてもよい。
後述の好ましい実施形態では、熱伝導性シート部材の下部は、実装面と対象部品の下面との間に挟まれている。この場合、電極端子と、導電性細線とをさらに備え、導電性細線は、対象部品から、熱伝導性シート部材の上部と下部との間を通ってその熱伝導性シート部材の外へ延び、電極端子に接続されていてもよい。
後述のまた別の好ましい実施形態では、熱伝導性シート部材の下部は、実装面において対象部品と他方の部品との間に配置されている。この場合、電極端子と、導電性細線とをさらに備え、導電性細線は、対象部品から、熱伝導性シート部材の上部と実装面との間を通ってその熱伝導性シート部材の外へ延び、電極端子に接続されていてもよい。
本発明の半導体モジュールでは、対象部品と熱伝導性シート部材との間に介在する絶縁部材を備えていることが好ましい。これにより、対象部品と熱伝導性シート部材との短絡を防止することができる。
本発明の半導体モジュールでは、電子部品は、半導体素子の上面よりも上に配置されていてもよい。
本発明の半導体モジュールでは、さらに、実装面と半導体素子の下面との間に配置された放熱板を備えていることが好ましい。これにより、半導体素子が発した熱を放出させることができる。
本発明の第1の半導体モジュールの製造方法は、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するように、熱伝導性シート部材を実装面に配置する工程(a)と、熱伝導性シート部材の第1の部分に、半導体素子および電子部品のどちらか一方である対象部品を実装する工程(b)と、熱伝導性シート部材の第2の部分が対象部品の第1の側面を覆うように熱伝導性シート部材を曲げる工程(c)と、対象部品とは異なる他方の部品を、対象部品に対して熱伝導性シート部材の第2の部分を隔てた反対側に実装する工程(d)とを備えている。
本発明の第2の半導体モジュールの製造方法は、冷却媒体の実装面に、半導体素子および電子部品のどちらか一方である対象部品を実装する工程(a)と、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するとともに第2の部分が対象部品の第1の側面を覆うように熱伝導性シート部材を曲げて、その熱伝導性シート部材を冷却部材の実装面に配置する工程(b)と、対象部品とは異なる他方の部品を、対象部品に対して熱伝導性シート部材の第2の部分を隔てた反対側に実装する工程(c)とを備えている。
本発明の第1または第2の半導体モジュールの製造方法を用いて半導体モジュールを製造すれば、熱伝導性シート部材を冷却媒体の一部に接触させて配置させることができるとともに、対象部品の一部を覆うことができる。よって、熱分離を効率良く行う半導体モジュールを提供することができる。
本発明の第3の半導体モジュールの製造方法は、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するように熱伝導性シート部材を実装面に配置し、熱伝導性シート部材の第1の部分に半導体素子を実装する工程(a)と、半導体素子の上面の上方に電子部品を配置する工程(b)と、第2の部分が半導体素子の上面の少なくとも一部を覆うように熱伝導性シート部材を曲げる工程(c)とを備えている。
本発明の第4の半導体モジュールの製造方法は、冷却媒体の実装面に半導体素子を実装し、半導体素子の上面よりも上に電子部品を配置する工程(a)と、表面積の 1/5 以上の面積を有する第1の部分が冷却媒体の実装面に接触するとともに第2の部分が半導体素子の上面の少なくとも一部を覆うように熱伝導性シート部材を曲げて、その熱伝導性シート部材を冷却媒体上に配置する工程(b)とを備えている。
本発明の第3または第4の半導体モジュールの製造方法を用いて半導体モジュールを製造すれば、熱伝導性シート部材を冷却媒体の一部に接触させて配置させることができるとともに、半導体素子の一部を覆うことができる。よって、熱分離を効率良く行う半導体モジュールを提供することができる。
本発明の第1乃至第4の半導体モジュールの製造方法では何れの方法においても、熱伝導性シート部材として、熱伝導率が 400 W/(m・K)以上の材質からなるシート部材を用いることが好ましい。
本発明によれば、制御回路や受動素子等の発熱量の少ない電子部品を半導体素子と同一の冷却媒体に実装させ、その半導体素子が発熱して高温になったとしても、電子部品を比較的低温に保つことができる。
以下に、本発明の半導体モジュールの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の符号で示す。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
《発明の実施形態1》
図1は実施形態1に係る半導体モジュール10の構成図であり、図1(a)はその上面図であり、図1(b)はその側面図である。なお、図1(b)では、導電性細線5,5,…を省略している。また、図2は、本実施形態における熱伝導性シート部材4の斜視図である。
本実施形態にかかる半導体モジュール10は、冷却媒体1と、半導体素子3と、電子部品2,22と、熱伝導性シート部材4と、導電性細線5,5,…とを備えている。半導体素子3と電子部品2,22とは、それぞれ、冷却媒体1の実装面11aに実装されており、導電性細線5,5,…を介して、例えば冷却媒体1に設けられた電極端子13に電気的に接続されている。熱伝導性シート部材4は、半導体素子3の一部を覆っている。なお、電極端子13に設けられた細かい電極(ブスバー)の図示を省略している。
本実施形態にかかる半導体モジュール10を詳述する。冷却媒体1は、基板11を有しており、電極端子13は、例えば絶縁性を有する部材(不図示)を介して基板11の実装面11aに設けられている。一方、実装面11aとは反対側の面には、複数の冷却用フィン12,12,…が互いに間隔を開けて設けられている。
半導体素子3は、半導体モジュール10を動作させると、多くの熱を発して高温となる部品である。半導体素子3は、特に限定されることなく公知の半導体素子を用いることができ、例えば、ショットキーダイオード、pn接合ダイオード、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)、MESFET(metal semiconductor field-effect transistor)、J−FET(junction Field Effect Transiter)もしくはサイリスタ等を用いることができる。また、半導体素子3は、後述のように、ワイドバンドギャップ半導体素子であることが好ましい。「ワイドバンドギャップ半導体」とは、本明細書では、伝導帯の下端と価電子帯の上端とのエネルギー差(バンドギャップ)が2.0eV以上である半導体を意味する。その具体例としては、炭化珪素(SiC)、GaN・AlN等のIII族窒化物もしくはダイヤモンド等を挙げることができるが、本実施形態では炭化珪素が好適である。
また、半導体素子3は、4つの側面を有している。第1側面(第1の側面)3cは、図1の右側の側面である。第2側面3dは、第1側面3cの隣りに存しており、図1の手前側の側面である。第3側面3eは、第1側面3cの反対側に存しており、図1の左側の側面である。第4側面(不図示)は、第2側面3dの反対側に存しており、図1の奥側の側面である。
半導体素子3と熱伝導性シート部材(後で詳述)4との間には、例えばシリコーン樹脂からなる絶縁部材6が配置されていることが好ましい。一般に、半導体素子の上面には、電極が設けられている場合が多い。そして、熱伝導性シート部材4が熱伝導性のみならず導電性も有する材質からなっていれば、熱伝導性シート部材4がその電極に接触することにより、接触箇所においてショートが発生する。しかし、絶縁部材6を介在させれば、熱伝導性シート部材4とその電極との接触を回避することができ、よって、ショートの発生を防止することができる。
電子部品2,22は、それぞれ、半導体モジュール10を動作させても発熱が小さいのでそれほど高温とはならない部品であり、例えば、半導体素子3を制御するための制御回路を有する制御素子、または、抵抗、コイルもしくはコンデンサなどの受動素子である。電子部品2,22は、それぞれ、高温使用の電子部品に限定されることはなく、市販の様々な電子部品を使うことができる。例えばコンデンサは、チップコンデンサから大容量の電解コンデンサまたはフィルムコンデンサまで、市販の様々なコンデンサを使うことが出来る。
電子部品2は、半導体素子3に対して熱伝導性シート部材4の側部4c(後述)を隔てた反対側に実装されている。電子部品22は、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装されている。
熱伝導性シート部材4について詳述する。まず、熱伝導性シート部材4の構造を示す。
本実施形態にかかる熱伝導性シート部材4は、長手方向の一端(以下単に「熱伝導性シート部材の一端」という。)41に長手方向の他端(以下単に「熱伝導性シート部材の他端」という。)42が接触しない程度に近づくように曲げられており、上部4a、下部4bおよび側部4cを有している。上部4aは他端42側に存在しており、下部4bは一端41側に存在しているので、上部4aは下部4bに接触することなく存在している。また、側部4cは、上部4aと下部4bとの間に存在しており、熱伝導性シート部材4が上述のように曲げられることにより形成された部分であり、半導体素子3の第1側面3cから遠ざかる方向に突出している。
上部4aは半導体素子3の上面3aを覆っており、下部4bは半導体素子3の下面3bと実装面11aとの間に介在しており、側部4cは半導体素子3の第1側面3cを覆っている。これにより、冷却媒体1の熱(冷却熱)が下部4bを介して熱伝導性シート部材4全体に亘って充分伝達される。そのため、半導体モジュール10の動作により半導体素子3が発熱して高温になったとしても、熱伝導性シート部材4の温度を比較的低温(例えば冷却媒体1の温度)に保つことができる。よって、半導体素子3が発した熱が熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側へ伝達してしまうことを防止でき、電子部品2,22の温度上昇を防止することができる。すなわち、熱分離を効率良く行うことができる。また、冷却媒体1の熱の一部が下部4bを介して半導体素子3に伝達するので、半導体素子3の温度上昇を抑制することができる。さらに、下部4bの表面積は後述のように熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上であるので、冷却媒体の熱(冷却熱)を熱伝導性シート部材4全体に効率良く伝達させることができる。
上述のように、熱伝導性シート部材4は、他端42が一端41に接触しない程度に近づくように曲げられているので、上部4aと下部4bとの間4dから半導体素子3の第2側面3d、第3側面3eおよび第4側面を見ることができる。この領域4dは、熱伝導性シート部材4の一端41にその他端42が接触しない程度に近づけて曲げたときに上部4aと下部4bとの間に存する領域であり、熱伝導性シート部材4に孔を開けて形成された領域ではない。これにより、導電性細線5,5,…を用いて半導体素子3と冷却媒体1等とを電気的に接続させる場合であっても、導電性細線5,5,…を通すための貫通孔を熱伝導性シート部材4にわざわざ形成することなく上部4aと下部4bとの間4dを通して導電性細線5,5,…を設けることができる。
さらに、熱伝導性シート部材4の一端41が他端42に接触していないので、熱伝導性シート部材4をループ状に流れる電流(誘導電流)の発生を抑制することができ、その結果、誘導電流の発生による発熱を抑制できる。
なお、熱伝導性シート部材4の上部4aは、図2に示すように、図1(b)における手前側、奥側および左側の三方において下部4bに接触していない。しかし、例えば、導電性細線5,5,…をその三方のうち何れか二方にのみ設ける場合には、熱伝導性シート部材4の上部4aは、導電性細線5,5,…が設けられていない一方においては下部4bに接触していてもよい。熱伝導性シート部材4は、導電性細線5,5,…に接触しないように曲げられていればよい。
次に、熱伝導性シート部材4の物性(熱伝導率および熱拡散率など)を示す。
熱伝導性シート部材4の熱伝導率は、そのシートの平面方向では 400 W/(m・K)以上であることが好ましく、800 W/(m・K)以上であることがより好ましく、1600 W/(m・K)程度であることが最も好ましく、そのシートの厚み方向では8 W/(m・K)以上であり15 W/(m・K) 以下であることが好ましい。このように熱伝導性シート部材4では、熱伝導率の異方性が大きい方が好ましく、具体的にはシートの厚み方向の熱伝導率がシートの平面方向の熱伝導率の 1/20 以下であることが好ましい。
また、熱伝導性シート部材4の厚みは 0.025 mm 以上 0.3 mm 以下であることが好ましく、その熱拡散率は 3×10-4 m2/s 以上であり 10×10-4 m2/s であることが好ましい。因みに、銅では、熱伝導率が390 W/(m・K)程度であり、熱拡散率が1.4×10-4 m2/s 程度である。また、アルミニウムでは、熱伝導率が230 W/(m・K)程度であり、熱拡散率が0.9×10-4 m2/s 程度である。よって、熱伝導性シート部材4の平面方向の熱伝導率は銅またはアルミニウムの熱伝導率よりも大きく、熱伝導性シート部材4の熱拡散率は銅またはアルミニウムの熱拡散率よりも大きい。
このような熱伝導性シート部材は、従来、ヒートスプレッダーやヒートシンクとして、放熱特性を上げて放熱させるために使用されていた。しかし、本発明では、温度領域を分ける仕切部材として熱伝導性シート部材4を利用しており、発熱素子(半導体素子3)を放熱させるために使用するのではなく、冷却媒体1の温度を伝える冷たい熱分離シート部材として使用している。よって、本発明における熱伝導性シート部材4の用途は、従来の用途とは全く異なる。このような熱伝導性シート部材4を用いて発熱素子の一部を覆うことにより、発熱素子(半導体素子3)近傍では温度が上昇しても、熱伝導性シート部材4を隔てた反対側(電子部品2,22)では、温度上昇を抑制することができる。
例えば、熱伝導性シート部材4として、シートの平面方向の熱伝導率が 400 W/(m・K)であり、シートの厚み方向の熱伝導率が 20 W/(m・K)であり、シートの厚みが 0.1 mm 以下であるシート部材を用いた場合、半導体素子の底面積を 1×1 cm2 とすると、熱伝導性シート部材を伝わる熱量 W は、シート部材の熱伝導度を TC(W/mK)とし、熱伝導方向に垂直な方向におけるシート部材の断面積を S(m2)とし、温度差を K(°K)とし、長さを LL(m)とすると、
W = (TS×S)/(LL×K)・・・・・・・・(1)
と表される。
シート部材の平面方向では、TS = 400であり、S = (1×10-2)×(1×10-4)=1×10-6であるので、シート部材の平面方向を伝わる熱量 W1 は、
W1 = (4×10-4)/(LL×K)・・・・・・・(2)
となる。
シート部材の厚み方向(実装面11aから半導体素子3へ向かう方向)では、TS = 20であり、S = (1×10-2)×(1×10-2)=1×10-4であるので、シート部材の厚み方向を伝わる熱量 W2 は、
W2 = (2×10-3)/(LL×K)・・・・・・・(3)
となり、W2 は W1 の5倍となる。これにより、熱伝導性シート部材4は、シートの厚み方向にはシートの平面方向の5倍の熱量を伝えることが出来ることがわかる。言い換えると、上記式の W1 と W2 とを略同一にするには、シートの厚み方向の面積(実装面11aに接触している熱伝導性シート部材4の面積)がシートの平面方向の面積の 1/5 であればよい。
本実施形態にかかる熱伝導性シート部材4では、冷却媒体1の熱(冷却熱)は、上述のように、まず下部4bに伝達され、その後下部4bから側部4cおよび上部4aへ順に伝達される。すなわち、冷却媒体1の熱は、まず熱伝導性シート部材4の厚み方向に伝達してから(下部4bへの伝達)、熱伝導性シート部材4の平面方向へ伝達する(下部4bから側部4cおよび上部4aへの伝達)。上記算出結果より同一の熱量を伝達するためにはシートの厚み方向の面積がシートの平面方向の面積の 1/5 であればよいので、下部4bの表面積が熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 程度であれば、冷却媒体1の熱を熱伝導性シート部材4の全体に亘って伝達することができる。
下部4bの表面積は、熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 であれば好ましいが、熱接触のことを考慮すれば熱伝導性シート部材4の表面積の 1/4 以上であることが好ましく、熱伝導性シート部材4の表面積の 1/3 以上であることがさらに好ましい。一方、半導体モジュール10の小型化を図るためには、下部4bの表面積は小さい方が好ましい。以上より、冷却媒体1の熱伝導効率(冷却媒体1の冷却効率)の要請と、半導体モジュール10の小型化の要請および使用状況とを考慮に入れて、1/5 を基準値として下部4bの表面積の割合を決定することが好ましい。
なお、本実施形態では、下部4bは冷却媒体1と半導体素子3の下面3bとの間に挟まれているので、下部4bの表面積は必然的に熱伝導性シート部材4の全表面積の 1/5 以上となる、と考えられる。
熱伝導性シート部材4は、上記熱伝導率を有している材質からなることが好ましいが、グラファイトシートからなることが最も好ましい。グラファイトシートは優れた熱伝導性および導電性を有しているので、熱伝導性シート部材4としてグラファイトシートを用いれば、半導体素子3が発する熱を遮断できるだけでなく、半導体素子3のスイッチングにより発生する電磁波のノイズを吸収でき、その結果、半導体素子3の発するノイズを低減できるためである。
上記グラファイトシートとしては、例えば松下電器産業株式会社から「PGSグラファイトシート」として市販されているものまたは株式会社ジェルテックから「スーパーλGS」として市販されているものを用いることができる。上記グラファイトシートでは、シートの平面方向での熱伝導率およびシートの厚み方向での熱伝導率は上記範囲内にある。すなわち、シートの平面方向の熱伝導率は、400 W/(m・K)以上であり、通常800 W/(m・K)程度であり、最良のグラファイトシートでは 1600 W/(m・K)程度である。また、シートの厚み方向の熱伝導率は、8 W/(m・K)以上 15 W/(m・K)以下である。よって、グラファイトシートの熱伝導率の異方性は大きい。
また、グラファイトシートを熱伝導性シート部材4として用いる場合には、シートの厚みおよび熱拡散率が上述の範囲内であるグラファイトシートを用いることが好ましい。
次に、本実施形態にかかる半導体モジュール10の製造方法を示す。図3(a)乃至(d)は、半導体モジュール10の製造方法を示す上面図である。
まず、図3(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに、熱伝導性シート部材4を配置する(工程(a))。そして、熱伝導性シート部材4の一端41側(正確には、一端41側のうち熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上の面積を有する部分(第1の部分))を冷却媒体1の実装面11aに接着する。
接着方法としては、熱伝導性シート部材としてグラファイトシートを用いる場合には、炭化した金属を介してグラファイトシートを実装面に接着させることが好ましい。具体的には、まず、Ti, Mo, W 等の金属をグラファイトシートの下面に蒸着し、蒸着された金属とグラファイトシートとの界面を加熱等して炭化させる。これにより、グラファイトシートの下面に炭化層を介して上記金属層が形成される。次に、上記金属層が実装面11aに接触するようにグラファイトシートを配置し、実装面11aに圧着させる。これにより、グラファイトシートを実装面に確実に接着することができる。
また、圧着させるのではなく、はんだを用いて接着させてもよい。具体的には、まず、はんだとなじみやすい金属(例えば、Al や Cu)からなる金属層と炭化層を形成可能な金属(例えば、Ti,Co等)をグラファイトシートの下面に蒸着し、蒸着された金属とグラファイトシートとの界面を炭化させて炭化層を形成する。その後、はんだ層を上記金属層の上面に設け、そのはんだ層が実装面11aに接触するようにグラファイトシートを配置してもよい。
次に、図3(b)に示すように、熱伝導性シート部材4の上記第1の部分の上に、半導体素子3を実装する(工程(b))。このとき、第3側面3eが第1側面3cよりも熱伝導性シート部材4の一端41側に配置されるように、半導体素子3を実装する。
続いて、導電性細線5,5,…を用いて、半導体素子3と冷却媒体1に設けられた電極端子13とを電気的に接続する。このとき、熱伝導性シート部材4のうち第2および第4側面の周囲の部分4i,4iを跨いで、導電性細線5,5,…をそれぞれ配置する。
それから、図3(c)に示すように、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入してその上面3aを覆う。このとき、半導体素子3の上面3aのみならず導電性細線5,5,…を覆うように、絶縁部材6を注入することが好ましい。
その後、図3(d)に示すように、熱伝導性シート部材4の他端42を持ち上げ、その他端42が一端41の上方に配置されるように熱伝導性シート部材4を曲げる(工程(c))。このとき、熱伝導性シート部材4の他端42を一端41に接触させないようにすることが好ましい。これにより、熱伝導性シート部材4の第2の部分(本実施形態では、側部4c)が半導体素子3の第1側面3cを覆う。それから、電子部品2を、半導体素子3に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装する(工程(d))。また、電子部品22を、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装する。そして、導電性細線5,5,…を用いて、電子部品2,22と冷却媒体1に設けられた電極端子13とをそれぞれ電気的に接続する。これにより、図1に示す半導体モジュール10を製造することができる。
以下では、熱伝導性シート部材を備えていない従来の半導体モジュールおよび図23に示す半導体モジュール(以下、「参考例の半導体モジュール」という)70と比較しながら、本実施形態にかかる半導体モジュール10を説明する。また、半導体素子として、Si素子を用いた場合とワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合との差異を説明する。まず、本実施形態にかかる半導体モジュール10の利点を示す。
従来の半導体モジュールでは、半導体素子が発した熱は、半導体素子の周囲に拡散および伝達する。そのため、半導体素子の周囲に電子部品を実装すると、その電子部品の温度上昇を招来する。電子部品の温度上昇を防止するためには、半導体素子が発した熱が伝達しない程度に半導体素子から充分に離れた位置に、その電子部品を配置することが考えられる。しかし、電子部品をこのように配置すると、半導体モジュールの大型化を招来してしまう。また、導電性細線を用いて半導体素子と電子部品とを電気的に接続する場合、電子部品を半導体素子から充分離れた位置に配置すれば導電性細線が長尺になり、無視できない程度の大きな抵抗が導電性細線に発生してしまう。その結果、導電性細線において損失が生じてしまう。
また、半導体素子が発熱する場合を想定し、高温に耐えうる電子部品を実装することも考えられる。しかし、高温仕様の電子部品を実装すれば、半導体モジュールのコストの低廉化を図ることができない。
参考例の半導体モジュール70では、熱伝導性シート部材74は、冷却媒体1の実装面11aと半導体素子3の下面3bとの間にのみ設けられている。この場合、冷却媒体1からの熱(冷却熱)が半導体素子3に伝わるので、熱伝導性シート部材74の表面積が半導体素子3の下面3bの面積に比べて十分広い場合には、半導体素子3からの発熱による温度上昇の低下を図ることはできる。しかし、上記従来の半導体モジュールと同じように、半導体素子3が発した熱は、拡散および伝達してしまう。
以上より、上記従来の半導体モジュールおよび参考例の半導体モジュール70では、半導体素子の周囲に配置された電子部品の温度上昇を招来し、その温度上昇を回避するためには半導体モジュールの大型化および高コスト化を招来するとともに、長く引き回した導電性細線における損失の発生を招来する。
一方、本実施形態にかかる半導体モジュール10では、上述のように、熱伝導性シート部材4が熱分離を効率良く行うので、半導体素子3の周囲の温度上昇を抑制することができる。よって、半導体素子3から充分離れた位置に電子部品2,22を実装しなくてよいので、半導体モジュール10の小型化を図ることができ、さらには導電性細線5,5,…の短尺化を図ることができるので導電性細線5,5,…における損失の発生を防止することができる。
また、高温仕様の電子部品を用いなくてよいので、半導体モジュール10の低コスト化を図ることができる。
次に、半導体素子として、ワイドバンドギャップ半導体素子を用いる利点を示す。
Siの熱伝導率はそれほど大きな値を示さないので、半導体素子としてSi素子を用いる場合には、半導体モジュールはSi素子が発する熱(動作時においてSi素子に電流を流すことによりそのSi素子が発する熱)を効率的に逃がすように熱設計されることが好ましい。さらに、Si素子は、その温度が150℃以上になると、半導体的な特性が弱まり、電流制御素子として機能しなくなり危険であるので、半導体モジュールは、Si素子において最も電流密度が高い部分での温度が150℃を超えないように熱設計されていることが好ましい。具体的には、動作時のSi素子内部の電流密度が10×104 A/m2 以上である場合には、Si素子での発熱を考慮する必要が生じ、特にSi素子内部の電流密度が50×104 A/m2 以上である場合には、Si素子からの発熱が顕著となり、上記した熱設計が必須となる。
すなわち、半導体素子としてSi素子を用いる場合には、熱設計において熱の放出経路を考えなければならず、熱放出パスとなる冷却媒体にSi素子をきちんと接触させる必要がある。具体的には、Si素子は、ダイボンドと呼ばれる方法を用いて半田などによってパッケージ基材に直接接合されている。そのため、複数のSi素子を備えた半導体モジュールでは、複数のSi素子は、積層されることはなく、互いに重ならないようにパッケージ基材の実装面11aに2次元的に配置されている。よって、パッケージ基材の実装面11aの面積は大きくなり、半導体モジュールの大型化を招来してしまう。
以上をまとめると、半導体素子としてSi素子を用いれば、50×104 A/m2 以上の電流密度の動作では Si-MOSFET はもとより Si-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であっても、損失による発熱が増大するので、Si素子の動作許容の温度150℃程度に保った状態で半導体モジュールを動作させ続けることは難しい。ここで、Si-MOSFETは半導体材料としてSiを用いて形成されたMOSFETであり、Si-IGBTは半導体材料としてSiを用いて形成されたIGBTである。
なお、Si-IGBT は、Si-MOSFETに比べて一桁以上電気抵抗を小さくできる。しかし、IGBTでは温度上昇によりその電気抵抗が減少する。そのため、電圧一定で IGBT を動作させれば、半導体素子を流れる電流量は増加し、IGBT での発熱量のさらなる増大を招来し、熱暴走して場合によっては IGBT の破壊を招来してしまう。このことは、一つのSi-IGBT内部の電流集中による破壊として、または、並列に接続された複数のSi-IGBTの一つへの電流集中による破壊として観測される。
一方、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合、半導体モジュールを小型化するためにワイドバンドギャップ半導体素子を小型化すると、ワイドバンドギャップ半導体素子における電流密度が増加し、その結果、ワイドバンドギャップ半導体素子における発熱量が増加してしまう。このような場合であっても、本実施形態における熱伝導性シート部材4を用いてワイドバンドギャップ半導体素子の一部を覆えば、効率良く熱分離を行うことができる。すなわち、本発明は、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合に特に有効である。
詳細に示すと、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化すると、ワイドバンドギャップ半導体素子からの発熱量は増加する。熱伝導性シート部材を備えていない従来の半導体モジュールでは、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合、電子部品をそのワイドバンドギャップ半導体素子から更に離して配置しなければ、ワイドバンドギャップ半導体素子からの熱が電子部品に伝達してしまう。以上より、従来の半導体モジュールでは、半導体モジュールの小型化を図るためにワイドバンドギャップ半導体素子を小型化したにも関わらず、モジュールの大型化を招来してしまう。
ところが、本実施形態における半導体モジュールでは、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合、電子部品をそのワイドバンドギャップ半導体素子の近くに実装しても、ワイドバンドギャップ半導体素子からの熱は電子部品へ伝達されない。以上より、本実施形態における半導体モジュールでは、ワイドバンドギャップ半導体素子を小型化した場合であっても、電子部品を半導体素子に近づけて実装することができるので半導体モジュールの小型化を図ることができる。
また、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合、その熱伝導率はSiの熱伝導率に比べて数倍以上であり、例えば炭化珪素(SiC)の熱伝導率は490 W/(m・K)程度であり、ダイヤモンドの熱伝導率は2000 W/(m・K) 程度である。このように半導体素子の熱伝導率が高いので、半導体素子からの熱放出効率が高くなり、その結果、半導体素子内において高電流密度部分での温度の上昇を抑えることが出来る。
また、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いて形成された MOSFET を1kV程度の耐圧で使用すると、半導体素子としてSi素子を用いて形成された MOSFET を同耐圧で使用する場合に比べて一桁以上小さい損失を実現でき、半導体素子としてSi素子を用いて形成された IGBT を同耐圧で使用する場合に比べて半分以下の損失を実現できる。このような低損失性により、半導体素子が発する熱量の減少効果を期待できる。
さらに、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子により構成された MOSFET を用いると、半導体素子として Si素子により構成された IGBT を用いた場合を凌駕するほどの高耐圧低損失を達成できるため、 MOSFET の高速性を高電圧大電流制御に活かすことも出来る。つまり、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子により構成された MOSFET を用いれば、半導体素子の応答速度が半導体素子におけるスイッチング時間に対して遅い場合に生ずるスイッチング損失を低減することも出来る。
また、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いて MOSFET を構成すれば、50×104 A/m2 以上の電流密度の電流が流れても半導体素子の発熱を抑えることができ、その結果、半導体モジュールを良好に動作させることができる。よって、半導体モジュールにおいて、複数の半導体素子の少なくとも一つの活性領域がワイドバンドギャップ半導体素子により構成されていることが好ましく、そのような半導体モジュールは、50×104 A/m2 以上の電流密度の電流が流れる場合に適用することが好ましい。
実際、本願発明者は以下のことを確認している。すなわち、半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体素子を用いて MOSFET を構成した場合、50×104 A/m2 以上の電流密度で動作させてワイドバンドギャップ半導体素子を高温に保った場合の方が、ワイドバンドギャップ半導体素子を低温に保っている場合よりも、ワイドバンドギャップ半導体素子の電気抵抗が増大する。一般に、 MOSFET では電圧を一定にして動作させる場合が多いので、ワイドバンドギャップ半導体素子が高温になった結果その電気抵抗が増大すると、ワイドバンドギャップ半導体素子を流れる電流量は減少する。よって、MOSFETでの発熱量が低下する。そのため、上記Si-IGBTにおいて課題であった熱暴走による破壊が起こらず、たとえ発熱によりワイドバンドギャップ半導体素子の温度が200℃以上(さらに400℃以上)に上がっても、MOSFET を安定して良好に動作させることができる。
さらに、本願発明者は、半導体素子が炭化珪素(その中でも4H-SiC)からなる半導体素子であれば、他のワイドバンドギャップ半導体素子と比べて、低損失性、安定性および信頼性等の面で優れていることを確認している。これは、低欠陥密度のウェハが供給されていることに起因し、結晶中の欠陥に起因する絶縁破壊などの問題が起こりにくいことと対応している、と本願発明者は考えている。
以下に、本実施形態にかかる半導体モジュール10が奏する効果をまとめて記載する。
本実施形態にかかる半導体モジュール10は熱分離を効率良く行うことができるので、従来のモジュールに比べて電子部品2を半導体素子3の近くに実装することができる。よって、モジュールの小型化を図ることができ、さらには、モジュールの低コスト化および性能向上を図ることができる。
具体的には、熱伝導性シート部材4が下部4bを有しているので、半導体モジュール10の動作により半導体素子3が高温となっても、熱伝導性シート部材4を冷却媒体1と略同温度に保つことができる。熱伝導性シート部材4が側部4cを有しているので、電子部品2,22への熱の伝達を抑制することができる。熱伝導性シート部材4が上部4aを有しているので、熱分離だけでなく電磁波のノイズを吸収することができる。すなわち、熱伝導性シート部材4が上部4aを有していなくても熱分離を行うことができるが、熱伝導性シート部材4が上部4aを有していれば熱分離を更に効率良く行うことができるとともに電磁波のノイズを吸収することができる。よって、熱伝導性シート部材4は後述の第1および第2の変形例に示す形状であってもよい。
また、熱伝導性シート部材4の上部4aと下部4bとの間4dを通して導電性細線5,5,…を設けることができるので、導電性細線5,5,…を短時間且つ容易に配線することができる。その結果、半導体モジュール10の製造時間の短縮および製造コストの低廉化を図ることができる。
なお、本実施形態では、熱伝導性シート部材は、ある一部分(第1の部分)が、それ以外の一部分(第2の部分)に近づくように曲げられていればよい。例えば、短尺方向の一端に、短尺方向の他端が近づくように曲げられていてもよく、また、長手方向の中程の部分に、長手方向の一端が近づくように曲げられていてもよい。
(第1の変形例)
図4は、実施形態1の第1の変形例にかかる半導体モジュール110の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材114は、下部114bおよび側部114cを有しているが上部を有していない。このように熱伝導性シート部材114が上部を有していなくても側部114cを有しているので、電子部品2,22への熱の伝達を抑制することができ、熱分離を行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール110の製法は、実施形態1に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材114を曲げる工程では、一端41側が下部114bとなり他端42側が側部114cとなるように、熱伝導性シート部材114を曲げる。
(第2の変形例)
図5は、実施形態1の第2の変形例にかかる半導体モジュール210の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材214は、実施形態1に記載のように上部214a、下部214bおよび側部214cを有しているが、その上部214aは、半導体素子3の上面3a全体を覆っていない。このように熱伝導性シート部材214が半導体素子3の上面3a全体を覆っていなくても、熱分離を行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール210の製法は、実施形態1に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材214を曲げる工程では、一端側が下部214bとなり他端側が上部214aとなるように、熱伝導性シート部材214を曲げる。
《発明の実施形態2》
図6は、実施形態2にかかる半導体モジュール20の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本実施形態では、上記実施形態1とは異なり、対象部品が電子部品2であり、対象部品とは異なる他方の部品が半導体素子3である。すなわち、熱伝導性シート部材4は、半導体素子3ではなく電子部品2の一部を覆っている。以下に、具体的に示す。
熱伝導性シート部材4は、上記実施形態1のように、上部4a、下部4bおよび側部4cを有している。上部4aは、電子部品2の上面2aを覆っている。下部4bは電子部品2の下面2bと実装面11aとの間に挟まれており、その表面積は上記実施形態1と同じく熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上である。側部4cは、電子部品2の第1側面(第1の側面)2cを覆っている。そして、半導体素子3は、電子部品2に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装されており、電子部品22は、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装されている。
上記実施形態1と同じく、上部4aは下部4bに接触していないので、導電性細線を通すための孔を熱伝導性シート部材4に形成しなくてもよい。
本実施形態にかかる半導体モジュール20では、半導体素子3が熱伝導性シート部材4に覆われていないので、半導体素子3が発した熱はその周囲へ拡散および伝達する。しかし、電子部品2の一部が熱伝導性シート部材4に覆われており、上記実施形態1と同じく下部4bの表面積は熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上であるので、冷却媒体の熱(冷却熱)を熱伝導性シート部材4全体に効率良く伝達させることができる。よって、半導体素子3が発した熱が電子部品2に伝達することを防止できる。さらに、電子部品22は半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装されているので、半導体素子3が発した熱が電子部品22に伝達することをも防止できる。すなわち、本実施形態にかかる半導体モジュール20であっても、熱分離を効率良く行うことができる。
本実施形態にかかる半導体モジュール20の製法は、上記実施形態1に記載の半導体モジュール10の製法と略同一であるが、上記実施形態1の図3(b)に示す工程では、半導体素子3ではなく電子部品2を熱伝導性シート部材4の一端41側に配置し、図3(c)に示す工程では、絶縁部材を設けない。また、図3(d)に示す工程では、他端42が一端41の上に配置されるように熱伝導性シート部材4を曲げ、その後、半導体素子3を電子部品2に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装する。
以上説明したように、本実施形態にかかる半導体モジュール20は、上記実施形態1の半導体モジュール10と略同一の効果を奏する。
なお、本実施形態は、以下に示す構成であってもよい。
本実施形態のように電子部品2を対象部品とする場合には、冷却媒体1はそれほど優れた冷却能力を有していなくてもよい。一方、上記実施形態1のように発熱する半導体素子3を対象部品とする場合には、冷却媒体1は優れた冷却能力を有していることが好ましく、金属製の冷却媒体を用いる場合には熱伝導率が大きい方が好ましい。
また、本実施形態にかかる半導体モジュールでは、図6に示すように絶縁部材を備えていなくても良い。なぜならば、電子部品の上面には電極が設けられていない場合が多いので、熱伝導性シート部材の一部が電子部品の上面に接触してもその接触箇所においてショートが発生する虞は極めて低いためである。もちろん、上記実施形態1のように絶縁部材を介在させてもよい。
さらに、熱伝導性シート部材は、上記実施形態1における図4に示すように上部を有していなくても良く、同実施形態における図5に示すように電子部品の上面の一部を覆っていても良い。
《発明の実施形態3》
図7は、実施形態3にかかる半導体モジュール30の構成図であり、図7(a)はその上面図であり、図7(b)はその側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。図8は、本実施形態における熱伝導性シート部材4の斜視図である。
本実施形態では、熱伝導性シート部材4は、実施形態1と同じく半導体素子3の一部を覆っているが、半導体素子3の第1側面3cだけでなく第3側面3eも覆っている。以下では、本実施形態における熱伝導性シート部材4を具体的に示す。
本実施形態における熱伝導性シート部材4は、その一端41側および他端42側が実装面11aに接触するように半導体素子3の上から被せられており、上部4aと、下部4bおよび下部4bと、側部4cと、第2の側部4eとを有している。上部4aは、熱伝導性シート部材4の長手方向中央に存在しており、上記実施形態1と同じく半導体素子3の上面3aを覆っている。下部4bおよび下部4bは、それぞれ、実装面のうち半導体素子3の外側に配置されており、熱伝導性シート部材4の一端41側および他端42側に存在している。側部4cおよび第2の側部4eはそれぞれ上記実施形態1と同じく上部4aの一部と下部4bおよび下部4bとの間に存在しており、側部4cは半導体素子3の第1側面3cを覆っており、第2の側部4eは半導体素子3の第3側面3eを覆っている。これにより、冷却媒体1の熱(冷却熱)は、まず下部4bおよび下部4bにそれぞれ伝達され、次に側部4cおよび第2の側部4eへそれぞれ伝達され、その後上部4aへ伝達され、このようにして熱伝導性シート部材4全体に伝達される。すなわち、冷却媒体1の熱は、熱伝導性シート部材4の一端41および他端42から長手方向における中央へ伝達される。
本実施形態にかかる熱伝導性シート部材4では、2つの下部4b,4bの表面積の合計が、上記実施形態1に記載のように、熱伝導性シート部材4の全表面積の 1/5 以上であることが好ましい。
また、上部4aは、実装面11から離れて存在しており、導電性細線5,5,…は、上部4aと実装面11との間4dを通して設けられる。そのため、上記実施形態1と同じく、熱伝導性シート部材4に孔を設けなくても導電性細線5,5,…を設けることができる。
なお、熱伝導性シート部材4の上部4aは、図7(b)における手前側および奥側の二方において実装面11aに接触していない。しかし、例えば導電性細線5,5,…を図7(b)における手前側にのみ設ける場合には、熱伝導性シート部材4の上部4aは、同図における奥側では実装面11aに接触していてもよい。熱伝導性シート部材4は、導電性細線5,5,…に接触しないように曲げられていればよい。
図9(a)乃至(c)は、本実施形態にかかる半導体モジュール30の製造方法を示す上面図である。
まず、図9(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに、はんだ等の導電性接着剤(不図示)を用いて半導体素子3を固定する(工程(a))。その後、導電性細線(不図示)を用いて、冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)と半導体素子3とを電気的に接続する。
次に、図9(b)に示すように、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入し、その上面3aおよび上記導電性細線を覆う。その後、同図に示す矢印の方向から熱伝導性シート部材4を近づけ、絶縁部材6の上に熱伝導性シート部材4を被せる(工程(b))。
このとき、熱伝導性シート部材4の一端41側および他端42側を実装面11aに接触させる一方、熱伝導性シート部材4全体を導電性細線(不図示)には接触させないようにする。なお、上記実施形態1に記載の接着方法を用いて、熱伝導性シート部材4の一端41側および他端42側を実装面11aに接着させることが好ましい。
また、上記実施形態1などで記載したように、熱伝導性シート部材4のうち実装面11aに接触する部分(第1の部分)の面積が熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上となるように、熱伝導性シート部材4を絶縁部材6の上に被せる。
その後、図9(c)に示すように、電子部品2を、半導体素子3に対して熱伝導性シート部材4の側部4cを隔てた反対側に実装する(工程(c))。さらに、電子部品22を、半導体素子3に対して電子部品2を隔てた反対側に実装する。そして、導電性細線(不図示)を用いて、電子部品2,22と冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)とをそれぞれ電気的に接続する。これにより、図7に示す半導体モジュール30を製造することができる。
このような半導体モジュール30では、上記実施形態1の半導体モジュール10と同じように半導体素子3の発熱による熱伝導性シート部材4の温度上昇を防止することができるので、熱分離を効率よく行うことができる。
なお、上記実施形態1に記載のように、熱伝導性シート部材が上部を有していなくても半導体モジュールは熱分離を効率よく行うことができる。そのため、熱伝導性シート部材は、以下の変形例に示す構成であってもよい。
(第1の変形例)
図10は、実施形態3の第1の変形例にかかる半導体モジュール130の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材134は、下部134bと、側部134cとを有している。側部134cは、半導体素子3の第1側面3cを覆っており、下部134bは、側部134cから延びている。また、電子部品2は、半導体素子3に対して側部134cを隔てた反対側に実装されている。このように熱伝導性シート部材134が上部を有していなくても側部134cを有しているので、熱分離を効率良く行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール130の製法は、実施形態3に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材134を曲げる工程では、一端が下部134bとなり他端が側部134cとなるように、熱伝導性シート部材134を曲げる。
(第2の変形例)
図11は、実施形態3の第2の変形例にかかる半導体モジュール230の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材234は、上部234aと、1つの下部234bと、側部234cとを有している。上部234aは、半導体素子3の上面3a全体を覆っている。側部234cは、上部234aから延び、半導体素子3の第1側面3cを覆っている。下部234bは、側部234cから延びて実装面11aに接触している。このように半導体素子3の第3側部3eが熱伝導性シート部材234に覆われていなくても、半導体素子3の側部3cが熱伝導性シート部材234に覆われていれば、電子部品2,22への熱の伝達を抑制することができる。
本変形例にかかる半導体モジュール230の製法は、実施形態3に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材234を曲げる工程では、一端が下部234bとなり他端が上部234aとなるように、熱伝導性シート部材234を曲げる。
(第3の変形例)
図12は、実施形態3の第3の変形例にかかる半導体モジュール330の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材334は、上部334aと、1つの下部334bと、側部334cと、第2の側部334eとを有している。上部334aは、半導体素子3の上面3a全体を覆っている。側部334cは、半導体素子3の第1側面3cを覆うように上部334aから延びており、第2の側部334eは、半導体素子3の第3側面3eを覆うように上部334aから延びている。下部334bは、実装面11aに接触するように第2の側部334eから延びている。言い換えると、熱伝導性シート部材334は、実施形態3の熱伝導性シート部材4とは異なり、側部334cから延びる下部を有していない。このような場合であっても、下部334bの表面積が熱伝導性シート部材334の表面積の 1/5 以上であれば冷却媒体1の冷却熱を熱伝導性シート部材334に伝達させることができ、よって、熱分離を効率良く行うことができる。
本変形例にかかる半導体モジュール330の製法は、実施形態3に記載の製法と略同一であるが、熱伝導性シート部材334を曲げる工程では、一端が側部334cとなり他端が下部334bとなるように、熱伝導性シート部材234を曲げる。
(第4の変形例)
図13は、実施形態3の第4の変形例にかかる半導体モジュール40の構成を示す側面図である。
本変形例では、対象部品が電子部品2である。半導体モジュール40は、実施形態3の製法と略同一の製法に従って製法され、実施形態3と同じく熱分離を効率良く行うことができる。
なお、本変形例のように熱伝導性シート部材4を用いて電子部品2を覆う場合、その熱伝導性シート部材4の形状は、実施形態3の第1乃至第3の変形例に示す形状であってもよい。
《発明の実施形態4》
図14は、実施形態4にかかる半導体モジュール50の構成図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本実施形態にかかる半導体モジュール50は、上記実施形態1と異なり、放熱板7を備えている。以下に具体的に示す。
本実施形態における放熱板7は、例えば、GaNまたはAl2O3からなる板であり、半導体素子3の下面3bと熱伝導性シート部材4の下部4bとの間に挟まれて配置されており、半導体素子3が発した熱を拡散させる。これにより、半導体素子3が発した熱を放熱板7において拡散させることができるので、上記実施形態1乃至3の場合に比べて半導体素子3の温度上昇を防止することができる。また、熱伝導性シート部材4は、冷却媒体1の実装面11aおよび放熱板7の下面7bに接触しているが、半導体素子3には直接接触していない。そのため、上記実施形態1または3のように熱伝導性シート部材4が半導体素子3に直接接触している場合に比べて、冷却媒体1の冷却能力が小さくても熱伝導性シート部材4の温度上昇を防止することができる。
また、放熱板7が絶縁材料(例えばGaNまたはAl2O3)からなる場合には、半導体素子3の下面3bに設けられた電極と熱伝導性シート部材4との間を絶縁することができ、その結果、半導体素子3のアースと冷却媒体1のアースとを別々にとることができる。これにより、本実施形態にかかる半導体モジュール50は、熱遮蔽効果だけでなくノイズ遮蔽効果を奏することもできる。
本実施形態にかかる半導体モジュール50の製法は、上記実施形態1の半導体モジュール10の製法と略同一であるが、図3(b)に示す工程では、熱伝導性シート部材4の一端41側の上に放熱板7を配置し、はんだ等の導電性接着剤を介して放熱板7の上に半導体素子3を固定する。
なお、本実施形態は、以下に示す構成であってもよい。
放熱板7は、上記実施形態3にかかる半導体モジュール30に設けられていても良く、その場合には、半導体素子3の下面3bと実装面11aとの間に介在されていることが好ましい。これにより、上述のように放熱板7において半導体素子3が発する熱を拡散させることができ、半導体素子3の温度上昇を抑制することができる。
また、放熱板7は、上記実施形態2および上記実施形態3の第4の変形例のように対象部品が電子部品2である場合であっても、半導体素子3の下面3bと実装面11aとの間に介在されていてもよい。これにより、放熱板7において半導体素子3が発する熱を拡散させることができるので、上記実施形態2および上記実施形態3の第4の変形例のように放熱板7が設けられていない場合に比べて、半導体素子3の温度上昇を防止することができる。
さらに、熱伝導性シート部材は、上記実施形態1の第1の変形例(図4)に示すように上部を有していなくても良く、同実施形態の第2の変形例(図5)に示すようにその上部が半導体素子の上面の一部を覆っていても良い。また、熱伝導性シート部材は、上記実施形態3およびその変形例に示す形状であってもよい。
《発明の実施形態5》
図15は、実施形態5にかかる半導体モジュール60の構成図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本実施形態にかかる半導体モジュール60は、上記実施形態4にかかる半導体モジュール50と略同一であるが、電子部品2と半導体素子3との相対的な位置関係を異にする。以下に、具体的に示す。
本実施形態にかかる半導体モジュール60では、冷却媒体1の実装面11aには支柱61が立てられており、支柱61には、第2の基板62が冷却媒体1の基板11と略平行となるように固定されている。第2の基板62には、電子部品2が実装されている。
なお、支柱61および第2の基板62は、冷却媒体1と略同一の材質(金属)からなってもよく、冷却媒体1とは異なる材質(例えば樹脂)からなってもよい。第2の基板62には電子部品2が設けられるので、支柱61および第2の基板62が冷却機能を有していなくてもよいからである。
本実施形態における熱伝導性シート部材4は、上記実施形態1および4に記載のように半導体素子3の一部を覆っている。そのため、熱分離を効率良く行うことができるので、図15に示すように半導体素子3の上方に電子部品2を配置しても、電子部品2への熱伝達を抑制することができる。
本実施形態にかかる半導体モジュール60は、上記実施形態1に記載の製法に従って製造することができる。
なお、半導体モジュールは、上記実施形態1乃至3に記載のように放熱板7を備えていなくてもよい。また、半導体モジュールは、以下の変形例に示す構成であってもよい。
(第1の変形例)
図16は、実施形態5の第1の変形例にかかる半導体モジュール160の構成を示す側面図である。図17は、熱伝導性シート部材164の上部164aの形状を説明するための図である。なお、図16では、導電性細線を省略している。また、図17では、図を明瞭にするため、絶縁部材、放熱部材および冷却媒体1の冷却用フィンを省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材164の上部164aは、実施形態5とは異なり半導体素子3の上面3a全体を覆っていない。以下に、具体的に示す。
上部164aは、第1の領域161と第2の領域162とで挟まれた第3の領域163(図17に示す斜線領域)内に存在している。第1の領域161は、半導体素子3の第1側面(第1の側面)3cと電子部品2の第1側面(第1の側面)2cとを結んで形成される領域であり、第2の領域162は、半導体素子3の第3側面(第2の側面)3eと電子部品2の第3側面(第2の側面)2eとを結んで形成される領域である。
ここで、上記実施形態1等に記載のように、半導体素子3の第1側面3cは、熱伝導性シート部材164の側部164cに覆われている側面であり、半導体素子3の第3側面3eは、その第1側面3cとは反対側の側面である。また、図17に示すように、電子部品2の第1側面2cは、電子部品2の側面のうち半導体素子3の第1側面3cを正面から見たときに正面に配置された側面であり、電子部品2の第3側面2eは、その第1側面2cとは反対側の側面である。
このように熱伝導性シート部材164の上部164aの一部が第3の領域163内に存在しているので、熱伝導性シート部材が半導体素子の上面を覆っていない場合に比べて、半導体素子3からの熱が電子部品2へ伝達することを阻止でき、熱分離を行うことができる。
図18(a)および(b)は、本変形例にかかる半導体モジュール160の製造方法を示す側面図である。
まず、図18(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに支柱61および第2の基板62が取り付けられた本体を用意する。そして、他端42側が一端41側よりも支柱61寄りとなるように熱伝導性シート部材164を実装面11aに配置する。それから、熱伝導性シート部材164の一端41側(正確には、一端41側のうち熱伝導性シート部材4の表面積の 1/5 以上の面積を有する部分(第1の部分))に、第1側面3cが第3側面3eよりも支柱61寄りとなるように半導体素子3を実装する。その後、導電性細線(不図示)を用いて半導体素子3と冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続し、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入して上面3aおよびその導電性細線を覆う。
次に、第2の基板62に、第1側面2cが第3側面2eよりも支柱61寄りとなるように電子部品2を実装し(工程(b))、導電性細線(不図示)を用いて電子部品2と第2の基板62に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続する。
続いて、図18(b)に示すように、熱伝導性シート部材164の他端42が第3の領域163内に存在するように、熱伝導性シート部材164を曲げる(工程(c))。これにより、熱伝導性シート部材164の第2の部分(本変形例では、熱伝導性シート部材164の側部164c)が半導体素子3の第1側面3cを覆うように配置され、本変形例にかかる半導体モジュール160を製造することができる。
なお、本変形例では、電子部品が半導体素子の直上に配置されていてもよい。この場合、熱伝導性シート部材は、本変形例のように曲げられていても良く、実施形態5に記載のように曲げられていても良い。
(第2の変形例)
図19は、実施形態5の第2の変形例にかかる半導体モジュール260の構成を示す側面図である。
本変形例では、熱伝導性シート部材164は、実施形態5の第1の変形例と同様に上部164a、下部164bおよび側部164cを有している。しかし、側部164cは、同変形例とは異なり、支柱61に対して半導体素子3を隔てた反対側に存在している。これにより、半導体素子3と支柱61との間に、側部164cを設けるためのスペースを用意しなくてもよいので、実施形態5の第1の変形例と比べて半導体素子3を支柱61に近づけて実装することができる。よって、本変形例では、実施形態5の第1の変形例に比べて、半導体モジュールの小型化を図ることができる。
なお、図16と図19とを比較すると、半導体素子3は、図16では、第1側面3cが第3側面3eよりも支柱61寄りとなるように実装されているが、図19では、第3側面3eが第1側面3cよりも支柱61寄りとなるように実装されている。これは、本明細書において、半導体素子の第1側面を、熱伝導性シート部材の側部に覆われている側面として定義しているためである。また、電子部品2は、図16では、第1側面2cが第3側面2eよりも支柱61寄りとなるように実装されているが、図19では、第3側面2eが第1側面2cよりも支柱61寄りとなるように実装されている。これは、本明細書では、電子部品の第1側面を、半導体素子の第1側面を正面から見たときに正面に配置されている電子部品の側面として定義しているためである。
図20(a)および(b)は、本変形例にかかる半導体モジュール260の製造方法を示す側面図である。なお、以下では、実施形態5の第1の変形例における製法との相違点を主に示す。
図20(a)に示す工程では、図18(a)に示す工程とは異なり、一端41側が他端42側よりも支柱61寄りとなるように、熱伝導性シート部材164を実装面11aの上に配置する。
図20(b)に示す工程では、図18(b)に示す工程と同じく、熱伝導性シート部材164の他端42が第3の領域163内に存在するように、熱伝導性シート部材164を曲げる(工程(c))。これにより、本変形例にかかる半導体モジュール260を製造することができる。
なお、半導体素子3の発熱による支柱61の温度上昇を防止するためには、実施形態5の第1の変形例に示す構成をとることが好ましいが、半導体モジュールの小型化および製造の簡便化を図るためには、本変形例に示す構成をとることが好ましい。
(第3の変形例)
図21は、実施形態5の第3の変形例にかかる半導体モジュール360の構成を示す側面図である。なお、同図では、導電性細線を省略している。
本変形例では、熱伝導性シート部材364は、上部364a、下部364bおよび側部364cを有している。上部364aは、実施形態5の第1の変形例に記載の上部164aと同じく、第3の領域163内に存在している。また、下部364bは、上記実施形態3と同じく実装面11aにおいて半導体素子3の外側に存在している。このような場合であっても、熱分離を行うことができる。
図22(a)および(b)は、本変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す図である。
まず、図22(a)に示すように、冷却媒体1の実装面11aに支柱61および第2の基板62が取り付けられた本体を用意する。そして、実装面11aに半導体素子3を実装し、電子部品2を第2の基板62に実装する(工程(a))。その後、導電性細線(不図示)を用いて、半導体素子3と冷却媒体1に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続し、半導体素子3の上面3aに絶縁部材6を注入して、上面3aおよびその導電性細線(不図示)を覆う。また、導電性細線を用いて、電子部品2と第2の基板62に設けられた電極端子(不図示)とを電気的に接続する。
次に、図22(b)に示すように、熱伝導性シート部材364を用いて半導体素子3の第1側面3cを覆う。このとき、熱伝導性シート部材364の一端41側を冷却媒体1の実装面11aに接触させ、熱伝導性シート部材364の他端42が第3の領域163内に存在するように熱伝導性シート部材364を曲げる(工程(b))。本変形例においても、熱伝導性シート部材364のうち実装面11aに接触している部分の面積が熱伝導性シート部材364の表面積の 1/5 以上となるように、熱伝導性シート部材364を設けることが好ましい。これにより、本変形例にかかる半導体モジュール360を製造することができる。
なお、熱伝導性シート部材の形状は、上記実施形態3(図7)や上記実施形態3の第2および第3の変形例(図11、図12)に示す形状であってもよい。また、熱伝導性シート部材は、側部が支柱に対して半導体素子を隔てた反対側に存在するように、曲げられていても良い。
《その他の実施形態》
上記実施形態1乃至5は、以下に示す構成であってもよい。
冷却媒体は、冷却用フィンを有する代わりに、基板を冷却するための冷却経路を有していても良い。その冷却経路では、水や油などの液体を用いてもよく、空気を用いてもよい。また、冷却媒体は、上記冷却経路が基板内に埋め込まれた構成であってもよい。
半導体モジュールは、パッケージにより封止されていてもよく、パッケージとしては、公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、樹脂封止パッケージ、セラミックパッケージ、金属パッケージもしくはガラスパッケージ等が挙げられる。
上記実施形態1、2、4および5に示すように熱伝導性シート部材の下部の上に対象部品を実装する場合、この下部に孔が開いていても良い。下部に孔が形成されていると、はんだなどの導電性接着剤を孔に充填させ、その導電性接着剤を介して対象部品を冷却媒体に固定することができる。なお、上記実施形態1に記載のように、孔が形成された下部の表面積はその全表面積の 1/5 以上であることが好ましい。
半導体モジュールにおける半導体素子および電子部品の個数は、上記記載に限定されない。いずれの場合であっても、半導体素子と電子部品との間において熱分離を行うことができるように、熱伝導性シート部材を用いて半導体素子または電子部品の一部を覆えばよい。
熱伝導性シート部材は、一枚のシートが曲げられているとしたが、複数枚のシート部材を有していてもよい。この場合には、上部、下部および側部が相異なるシート部材からなり、それらのシート部材が互いに接続されていることが好ましい。
上記実施形態1および3乃至5において、電子部品を実装するタイミングは上記タイミングに限定されない。
本実施例では、上記実施形態1乃至4の半導体モジュールを動作させた場合に、半導体素子および電子部品の温度変化を調べた。
(実施例1)
実施例1では、上記実施形態1にかかる半導体モジュールと実質的に同一の半導体モジュール(以下、「本実施例の半導体モジュール」と記す)を用いた。また、図23に示す参考例の半導体モジュールを用いた。
本実施例の半導体モジュールを、上記実施形態1に記載の方法に従って製造した。このとき、図3(a)に示す工程において用意する熱伝導性シート部材には孔が開いており、図3(b)に示す工程では孔にはんだを充填させ、孔を蓋するように半導体素子を設けた。
一方、参考例の半導体モジュールでは、半導体素子と電子部品との間の距離を、本実施例の半導体モジュールにおける半導体素子と電子部品との間の距離と略同一に設定した。すなわち、本実施例で用いた参考例の半導体モジュールでは、上記距離は図23に示すその距離よりも短かった。
その後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、本実施例の半導体モジュールおよび参考例の半導体モジュールを動作させた。動作終了後、各モジュールにおける半導体素子および電子部品の温度を測定した。すると、本実施例の半導体モジュールでは、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。一方、参考例の半導体モジュールでは、電子部品の温度は110℃程度であった。
また、熱伝導性シート部材を配置していない半導体モジュールと、本実施例の半導体モジュールとを準備し、各々のモジュールの半導体素子を 100 kHz でスイッチングさせ、半導体モジュールから 5 cm 離れた位置において電子ノイズを測定した。すると、熱伝導性シート部材を配置することにより、電子ノイズを一桁以上小さくすることができた。
(実施例2)
実施例2では、上記実施形態2にかかる半導体モジュールを用いた。すなわち、図6に示す半導体モジュールを用いた。
まず、上記実施形態2にかかる半導体モジュールを製造後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、半導体モジュールを動作させた。動作終了後、半導体素子および電子部品の温度を測定すると、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。
(実施例3)
実施例3では、上記実施形態3にかかる2つの半導体モジュール、すなわち、図7に示す半導体モジュールと図13に示す半導体モジュールとを用いた。
まず、上記実施形態3に記載の方法に従って図7および図13に示す半導体モジュールを製造後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、半導体モジュールをそれぞれ動作させた。動作終了後、半導体素子および電子部品の温度を測定すると、図7に示す半導体モジュールでは、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。図13に示す半導体モジュールでは、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下であった。
(実施例4)
実施例4では、上記実施形態4にかかる半導体モジュールと実質的に同一の半導体モジュールを用いた。すなわち、図14に示す半導体モジュールを用いた。
まず、上記実施形態4にかかる半導体モジュールを製造した。このとき、上記実施例1に記載するように、熱伝導性シート部材には孔が開いており、孔にはんだを充填させその孔を蓋するように半導体素子を配置した。その後、冷却媒体の温度を85℃に設定して、半導体モジュールをそれぞれ動作させた。動作終了後、半導体素子および電子部品の温度を測定すると、半導体素子の温度は120℃程度であり、電子部品の温度は90℃以下に保たれていた。
以上、実施例1乃至4に示すように、電子部品の温度上昇を阻止でき、半導体素子の温度上昇を小さく抑えることができた。
以上説明したように、本発明は、半導体素子と電子部品などとを一体化することができ、低損失、小型且つ低コストの半導体モジュールを提供することが可能となる。本発明の半導体モジュールは、例えば、炭化珪素、GaN、ダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体素子により構成される半導体素子を備えた半導体モジュールに用いると好適である。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す上面図であり、図1(b)は、その側面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態にかかる熱伝導性シート部材の斜視図である。
図3(a)乃至(d)は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体モジュールの製造方法を示す上面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図5は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図6は、本発明の第2の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図7(a)は、本発明の第3の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す上面図であり、図7(b)はその側面図である。
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる熱伝導性シート部材の斜視図である。
図9(a)乃至(c)は、本発明の第3の実施形態にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図10は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図11は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図12は、本発明の第3の実施形態の第3の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図13は、本発明の第3の実施形態の第4の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図14は、本発明の第4の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図15は、本発明の第5の実施形態にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図16は、本発明の第5の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図17は、熱伝導性シート部材の形状を説明するための図である。
図18(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態の第1の変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図19は、本発明の第5の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図20(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態の第2の変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図21は、本発明の第5の実施形態の第3の変形例にかかる半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図22(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態の第3の変形例にかかる半導体モジュールの製造方法を示す側面図である。
図23は、参考例の半導体モジュールの構成を示す側面図である。
図24(a)は、従来の半導体モジュールの構成を示す断面図であり、図24(b)は従来の別の半導体モジュールの構成を示す断面図である。
符号の説明
1,81 冷却媒体
2,82 電子部品
3,83 半導体素子
4,84 熱伝導性シート部材
4a 上部
4b 下部
4c 側部
5 導電性細線
6 絶縁部材
7 放熱板
10,20,30,40,50,60,70,80,180 半導体モジュール
11a 実装面
13 電極端子
161 第1の領域
162 第2の領域
163 第3の領域