JPWO2008012881A1 - 圧延ラインの材質予測および材質制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、加熱、加工、および、冷却の各条件に対し、加熱温度目標値、加工後の寸法目標値、冷却速度目標値などが製品仕様毎に長年に亘る経験に基づいて決められ、これを達成するように、温度制御および寸法制御を行う方法が一般的であった。ところが、近年、製品仕様への要求の高度化、多様化が著しく、経験に基づく決め方ではこれら目標値を必ずしも適正に決めることができず、所望の材質が得られないケースが生じてきていた。
2 上位計算機
3 設定制御用計算機
4 材質検査システム
5 圧延実績情報収集機能
6 プロセス情報補完機能
7 材質予測機能
8 材質制御機能
9 圧延材
10 圧延スタンド
11 水冷装置
12 入側温度計
13 出側温度計
14 圧延ロール
15 圧延モデル
16 シミュレータ
17 圧延モデル学習機能
18 材質モデル学習機能
19 材質モデル
20 加熱炉
21 スケールブレーカ
22、23 粗圧延機
24 出側温度計
25 クロップシア
26 スケールブレーカ
27 仕上圧延機
28 ランアウトテーブル
29 巻取り機
30 出側温度計、板圧計等
31 既存の計算機
32 別の計算機
圧延ライン1における設定制御は、まず上位計算機2でどのような製品を製造するかを決め、その製品仕様、例えば厚み、幅、断面形状等の情報を含んだ圧延命令を設定制御用計算機3に送る。設定制御用計算機3では、所望の製品品質を実現するために必要な設定計算、制御計算を行い、圧延ライン1を制御する。このとき、設定制御用計算機3では、一般に、圧延モデル等による予測計算が必要になるため、圧延モデルを内在し、またそのモデルを適応修正するために予測した値と圧延実績値を比較することが一般に行われている。
このため圧延実績値を収集したり、管理する機能が必要であり、圧延実績情報収集機能5として実現する。この圧延実績情報収集機能5は、圧延材の位置情報を収集したり、圧延材の進行に合わせて、圧延ラインに設定された温度計、ロードセル、板厚計、板幅計、板クラウン計などのセンサで測定した値を収集する。収集したデータは、圧延材の全長に渡るデータとして保管されたり、時々刻々の情報として表示するために使用する。この圧延実績情報収集機能5は、設定制御用計算機3の中に実現されている場合もあるし、別の計算機の中に実現されている場合もある。例えば既存の圧延ライン1にすでに圧延実績情報収集機能5と等価なものがあればそれを利用してもよい。
この発明における圧延実績情報収集機能5の必要条件は、それぞれのセンサで測定したデータや、圧延材の位置情報をリアルタイムでプロセス情報補完機能6に送ることが可能であることが望ましい。しかし、リアルタイムではなく、多少の遅れを伴っても構わない。
プロセス情報補完機能6は、圧延実績情報収集機能5だけでは測定できないデータ・情報またはセンサから得られるデータ・情報より詳しい圧延プロセス、冷却プロセス等の圧延ライン1で起こる現象を模擬する機能である。プロセス情報補完機能6は、シミュレータで実現することができ、動的な圧延現象を表現できる圧延モデルを用いて、圧延や冷却のプロセスを数値で再現する。
材質予測機能7は、圧延実績情報収集機能5で獲得したデータや情報、プロセス情報補完機能6で計算した詳細な圧延、冷却等に関する中間情報、および圧延材が圧延、冷却等のプロセスを経て製品となった圧延材(製品)のデータや情報を材質検査システム4により入力し、それらの情報に基づいて材質を予測する。材質を予測するモデルは、従来から用いられているような、圧延ライン1のセンサ情報等が示す入出力情報から材質を予測するモデルではなく、微小時間の変化で材質の変化を現わすことのできるモデルを使用する必要がある。材質予測機能7には、圧延材が圧延、冷却等のプロセスを経て製品となったら、圧延材(製品)を材質検査システム4により検査し、材質検査結果を入力している。
材質制御機能8は、材質予測機能7において予測された材質を用いて、所望の材質を実現する圧延条件を算出し、その圧延条件を設定制御用計算機3に与える。
図2に実際の圧延における温度の変化の様子の一例を示す。圧延材9がNO.i圧延スタンド10iで圧延され、NO.i+1圧延スタンド10i+1に搬送される間に、水冷装置11が設置されているものとする。図2には、位置1から位置4における圧延材9の板厚方向の温度分布を示している。NO.i圧延スタンド10iで圧延される前である位置1における温度分布において、NO.i圧延スタンド10iの入側温度計12による測定値は、圧延材9上側の表面温度である945℃であるが、一般に内部の温度は高いので、その例として内部中心温度が+20℃高いということを図示している。NO.i圧延スタンド10iでの圧延後の出側温度計13による測定値は、圧延材9から圧延ロール14の表面に熱が奪われるために、位置2では圧延材9の温度全体が下がるとともに表面温度と内部の温度差が広がるため、例として上表面温度が925℃、内部中心温度が+30℃高いということを示している。位置3では圧延材9の内部の温度が表面に伝導され、いわゆる復熱されるため、表面と内部の温度差が小さくなる。位置4では、水冷装置11により表面が冷されるため、再び圧延材9全体の温度が下がるとともに表面温度と内部の温度差が+30℃と広がる。
これらの圧延材9の温度変化を捉えるために、圧延ライン1のあらゆる箇所に温度計を設置することは困難であり、また圧延材9内部の温度は推定せざるを得ない。このように温度計で測定した情報だけでは圧延材9の温度変化の様子を的確に把握することは困難である。このためにプロセス情報補完機能6において、圧延や冷却等に関する詳細な情報を計算する。
図3における関係式は以下のようになる。連続系で表せば、(1)式となる。
差分方程式で表せば、(2)式となる。
差分方程式の解き方は一般的な方法を用いればよい。
一方、圧延材と外部との熱伝達が境界条件となり、たとえば(3)式で表される。
なお、添え字R、W、Aはそれぞれ、圧延ロール、冷却水、空気との接触を示し、例えばαR は圧延ロールとの熱伝達係数、rRは圧延ロールとの接触比率を示す。
(3)式も差分方程式に変換して計算機で解くことができる。
図2においては圧延材の板厚方向のノード数を5個、図3においては4個としているが、これは一例であって、一般に、同じ板厚であればノード数を多くすれば精度のよい計算結果が得られる。しかしあまり多すぎても計算負荷が高くなるだけで、精度の向上は鈍化するので、ノード数の選択は事前に検討する必要がある。
上記のように圧延材の温度計算を、圧延材が圧延されるに従って位置を進め、上流から下流に向かって実施する。このように温度計算を行うことで、圧延材の材質に大きな影響がある温度情報を詳細に知ることができる。なお、図2では、例として位置1から位置4までの位置しか記述していないが、より細かな位置での温度計算が必要なことはいうまでもない。
さらに、圧延スタンドにおける圧延材の塑性変形においても、ロールバイト内での変形は幅方向によって異なる。例えば、圧延スタンド入り側で平坦な板を圧延すると、圧延ロールが圧延荷重により撓むため、圧延スタンドの出側では、いわゆる板クラウンのついた状態になる。すなわち板幅方向の中央部と板端部で受ける塑性変形の量が異なる。塑性変形量の差は圧延材の材質に影響を与えるので、考慮する必要がある。
しかしながら、実際の圧延や冷却を現わすためには、圧延モデル15を適正に学習し、圧延モデル15を実際の圧延や冷却等に適応させることが必要である。このため、図4に示すように、圧延モデル学習機能17を備える。例えば(2)(3)式に示した温度モデルの学習は、計算した温度とセンサで測定した温度との比が20%異なったとすれば、(2)式の中の熱伝導率あるいは(3)式の中の熱伝達係数を20%修正する。圧延モデル学習機能17は一般に公表されている方法でも実現することが可能である。
図5は材質予測機能7の材質モデル学習機能18を示している。現状、圧延材の材質の測定は、製鉄所が備えるラボにおける手作業の試験が最も正確であり、ここで測定された材質を正として、材質モデル19を学習する。材質予測モデルでは、最終的に製品の材質予測を行い、ラボ試験で定量的評価がなされる引張り強度、延性等の数値も計算されるので、計算値と実際に測定した値を比較し、材質モデル19のパラメータを修正する。
材質を予測するモデルには、様々なものが提案されており、静的再結晶、静的回復、動的再結晶、動的回復、粒成長などを表す数式群からなるものが広く知られている。一例として、塑性加工技術シリーズ7 板圧延 P198〜229(コロナ社)に掲載されているものがある。同教科書には、理論式とその原典が記載されている。
また実操業データに基づき、統計的処理により導かれた簡易モデルで代用する場合もあり、このような簡易モデルとして、たとえば、材料とプロセスVol. 17(2004)、227((財)日本鉄鋼協会)に掲載されているものがある。
しかしながら、前述のように、上記2つの文献に示されている、従来から用いられているような、圧延ライン1のセンサ情報等が示す入出力情報から材質を予測するモデルではなく、微小時間の変化で材質の変化を表すことのできるモデルを使用する必要がある。
例えば次の文献には、計算機負荷の少ない増分解法による予測計算が示されている。
Incremental Formulation for the Prediction of Micro-structural Change in Multi-pass Hot Forming
ISIJ International Vol. 39 (1999)、 No. 2、 pp. 171-175
Jun YANAGIMOTO and Jinshan Liu
材質予測モデルにおいては、各工程における金属素材の各相の粒径、体積分率等を求めることができる。各相とは、鉄鋼ではオーステナイト、フェライト、パーライト、マルテンサイトなどの状態を言う。製品となってからは、これらの粒径、体積分率等に基づいて、材質の指標としての、引っ張り強度、延性、などの数値に変換して、実際のラボ試験におけるそれらの数値と比較することができる。
図6と図7に材質制御の2つの態様を示す。図6、図7における圧延ラインは、加熱炉20、スケールブレーカ21、粗圧延機2基(R1)(R2)22、23、出側温度計24、クロップシア25、スケールブレーカ26、仕上圧延機7基27、ランアウトテーブル28、巻取り機1基29の例を示す。
図6は、1本の圧延材の中において、上流工程、例えば粗圧延工程にて圧延実績情報収集機能5でセンサ情報等を収集し、プロセス情報補完機能6で圧延の詳細な中間情報を計算で求め、材質予測機能7において、粒径、体積分率等を計算し、これを入力情報として、仕上圧延機27における所望の粒径、体積分率等になるような目標圧延材温度、目標加工量等を求める。これらを用いて、設定制御用計算機3ではすでに計算している設定・制御の諸量を再度計算するか、修正を施す。
図7は、図6とは若干異なり、圧延終了後の情報を出側温度計、板厚計等30を用いて、次に圧延される圧延材の設定制御を修正するものである。図6と図7では、少なくともいずれか一方を実施する。
これにより、圧延実績情報収集機能とプロセス情報補完機能とを別の計算機で実現することにより、操業や既存の機能に外乱を与えることなく新しい機能を付加することができる。
Claims (4)
- 金属素材を所定の温度に加熱し圧延する熱間圧延ラインで製造される圧延材の厚みや幅などの寸法形状および圧延材の温度を制御する装置であって、
熱間圧延ラインおよび圧延材の状態を測定するセンサ、熱間圧延ラインを制御する制御装置から得られる圧延実績情報を収集する圧延実績情報収集機能と、
前記圧延実績情報、機械諸元などの固定情報、圧延材の厚みや幅等の目標情報に基づいて、圧延実績情報としては収集できない圧延ラインの中間状態を示すプロセス中間情報を予測するプロセス情報補完機能と、
前記圧延実績情報および前記プロセス中間情報に基づき、前記圧延実績情報および前記プロセス中間情報の進行に同期しながら圧延材の材質を予測する材質予測機能と、
予測した材質を目標とする材質に一致させるように制御する材質制御機能と、
を備えたことを特徴とする圧延ラインの材質予測および材質制御装置。 - 金属素材を所定の温度に加熱し圧延する熱間圧延ラインで製造される圧延材の厚みや幅などの寸法形状および圧延材の温度を制御する装置であって、
熱間圧延ラインおよび圧延材の状態を測定するセンサ、熱間圧延ラインを制御する制御装置から得られる圧延実績情報を収集する圧延実績情報収集機能と、
前記圧延実績情報、機械諸元などの固定情報、圧延材の厚みや幅等の目標情報に基づいて、圧延実績情報としては収集できない圧延ラインの中間状態を示すプロセス中間情報を予測するプロセス情報補完機能と、
前記圧延実績情報および前記プロセス中間情報に基づき、前記圧延実績情報および前記プロセス中間情報の進行に同期しながら圧延材の材質を予測する材質予測機能と、
予測した材質を目標とする材質に一致させるように制御する材質制御機能と、を備え、 前記圧延実績情報収集機能と前記プロセス情報補完機能は別の計算機で実現されることを特徴とする圧延ラインの材質予測および材質制御装置。 - プロセス情報補完機能は、圧延モデルに基づくシミュレータにより構成され、また圧延の進行により実行され、前記圧延モデルの精度を向上させるために、圧延実績情報を用いて圧延モデルの学習を行う圧延モデル学習機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧延ラインの材質予測および材質制御装置。
- 材質予測機能は、材質の状態変化を表す材質モデルに基づき、また圧延の進行により実行することができるもので、前記材質モデルの精度を向上させるために、圧延後測定される材質情報を用いて材質モデルの学習を行う材質モデル学習機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧延ラインの材質予測および材質制御装置。
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