JPWO2007129587A1 - 分子配向装置及び分子配向方法 - Google Patents

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ゆき子 森
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Abstract

試料搭載部(20)と、探針(11)を有する加工部(10)、試料搭載部(20)及び/又は加工部(10)とを相対的に走査させる探針X,Y走査部(62)、試料搭載部(20)及び/又は加工部(10)を所定の周波数で微小振動させる発振部(30)、加工部(10)の振幅等を検出する検出部(40)、検出部(40)にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出部(50)、微小信号検出部(50)にて抽出された信号に基づき探針(11)と試料表面との距離を制御する位置制御部(60)、を備える分子配向装置(100)によれば、探針の走査により発生する摩擦力の影響を軽減し、試料と探針との間の距離を正確に制御でき、より精度の高い微細加工を行うことができる。

Description

本発明は、分子配向装置及び分子配向方法に関し、特に、微小領域における微粒子又は微結晶あるいは分子の配向特性を制御する場合に用いられる分子配向装置及び分子配向方法に関するものである。
近年、有機物質や無機物質等の薄膜において、当該薄膜を構成する微粒子又は微結晶あるいは分子の配向特性を制御する技術が開発されている。このような技術は、例えば、ナノメートルオーダーの微小領域に情報を記録・再生する高密度記録媒体等をはじめとした、様々な応用が可能であり、その開発動向に注目が集まっている。
このような状況のなか、本発明者らは、特許文献1に示すように、原子間力顕微鏡装置(以下、単にAFMと称する場合もある)等を用いて薄膜の微小領域における分子等の配向特性を制御する方法を独自に開発している。この技術の概要を説明すると以下の通りである。
すなわち、製膜途中又は製膜後の膜全体又は膜内の任意の部分に、例えば、AFMの探針等の鋭利な先端形状を有する部材を膜表面に接触させて力を加えた状態で、当該部材を膜面内で走査することにより、膜を構成する分子・原子又は微粒子を走査方向に配向させることができる技術である。この技術を用いれば、分子等を膜面内の任意の方向に配向させることができ、膜の構造の制御が可能となる。
ところで、従来のAFMでは試料表面を走査し観察する場合、一般的にカンチレバーの探針と試料との間の距離が制御される。なお、カンチレバーとは、微細な探針が固定された矩形板バネのことであり、その長手方向をX方向、短手方向をY方向とし、探針と試料との対向する向きをZ方向と称する。この場合、カンチレバーの探針と試料との間の距離は、カンチレバーの探針のZ方向位置と換言できる。
AFMにおいて、上述のように探針のZ方向位置、すなわちカンチレバーのZ方向の変位(ここで「Z方向の変位」とはX方向の反りと同様に検出される)を制御するのは、カンチレバーと試料との間の距離が一定でないと、試料表面を正確に観察できないためである。
また、特許文献2には、走査型プローブ顕微鏡を用いて、高S/N比で精度よく試料表面の測定を行う技術が開示されている。具体的には、カンチレバーの自由振動の共振周波数又は、この近傍の実質的に共振周波数に等しい周波数で試料を加振した状態で、カンチレバーを試料表面に軽く接触しながら試料表面の形状を測定する技術である。
国際公開WO2004/026459号公報(2004年4月1日公開) 特開2001−13155号公報(2001年1月19日公開)
上述したように、上記特許文献1に開示の技術は、全く新規な技術思想に基づく微細加工法を提案するものである。しかしながら、上記特許文献1には、当該微細加工を行うための装置やその制御方法等の具体的な構成については、特に言及されていない。
それゆえ、本発明者らは、より正確な微細加工を実現すべく、上記特許文献1に開示の技術において、上述したAFMで用いられている探針・試料間距離(探針のZ方向位置)の制御方法を用いることを試みた。しかし、上記特許文献1に開示の技術において、上述したAFMの制御方法を単純に適用しても、「分子等を膜面内の任意の方向に配向加工する」効果が十分に達成し得ないということがわかった。
このような課題は従前、全く考慮されていなかった。つまり、このような課題が存在すること自体、全く知られていなかった。
そこで、本発明者らは、上記課題の原因の究明を行った。その結果、分子等の配向結果の品質が、探針の走査方向に依存する傾向がみられることが明らかとなった。具体的な一例として、上述したAFMにおける探針・試料間距離の制御方法では、探針を走査することにより、試料と探針との間に摩擦力が発生する。そして、この発生した摩擦力の影響が混入してしまうゆえに、カンチレバーの反り(ここでは代表してX方向の反りを用いて説明する)が純粋に試料表面の凹凸のみに依存しないことを見出した。つまり、本発明者らは、探針走査がX方向成分を含む場合には、その割合に応じて、走査による摩擦力の影響が混入してしまい、探針のZ方向位置を正確に制御できず、その結果として膜の分子等の配向加工を正確に行うことができないという課題をはじめて明らかにした。
この摩擦力の影響はAFMを用いた通常の像観察においても存在すると考えられるが、これまではほとんど考慮されてこなかった。しかし、上記特許文献1等に開示の「分子の配向特性を制御・加工する技術」では、一般的なAFMによる像観察の場合に比して、上記摩擦力の影響が非常に大きくなり、微細加工の結果に大きな影響を及ぼすと考えられる。
なお、例えば、上記特許文献2に開示の技術をそのまま特許文献1に開示の技術に適用しても、上記の問題は解決できない。具体的には、上述したように、上記特許文献2に開示の技術は、カンチレバーが試料の表面に軽く接触した状態で走査する場合において、検出信号のS/N比を高くして高精度の測定を行うべく、カンチレバーの自由振動の共振周波数又はこの近傍の実質的に共振周波数に等しい周波数で試料を加振させる技術である。つまり、特許文献2に開示の技術は、カンチレバーの振動振幅を大きくするために、あえて共振点又はその近傍の周波数で試料を振動させている。
しかしながら、上述したように、特許文献1のような微細加工を行う場合、試料とカンチレバーの探針との間に大きな相互作用の力が発生する。そして、この相互作用の力の影響により、カンチレバーの周波数特性、共振特性が変化してしまう。このため、共振点又はその近傍の周波数でカンチレバーまたは試料を振動させると、カンチレバーの探針と試料との間の距離を正確に制御できないという問題がある。
このため、有機物質や無機物質等の薄膜において、当該薄膜を構成する微粒子又は微結晶あるいは分子の配向特性を制御する技術に関して、試料と鋭利な探針との間の距離を正確に制御するための全く新規な技術の開発が必要である。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述したような探針の走査により発生する摩擦力の影響を軽減し、試料と探針との間の距離を正確に制御でき、より精度の高い微細加工を行うための分子配向装置及び分子配向方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、(i) 探針又は試料を高周波で微小振動させることにより、両者の間に微小な摩擦力を発生させ、それによる加工部(例えば、カンチレバー等)の反りを、微小振動検出回路(例えば、ロックインアンプ等)を介して測定することで、目的の信号(微小振動)以外のノイズ成分(分子の配向加工のための探針走査により発生するカンチレバーの反りによる信号)をカットし、その測定値を基にすることにより、探針のZ方向位置を正確に制御できること、を見出した。さらに、(ii) 薄膜を構成する微粒子又は微結晶あるいは分子の配向特性を制御する技術において、カンチレバーの長手方向(X方向)の反りの大きさを基に探針・試料間の距離を制御する場合、それと直交方向であるカンチレバーの短手方向(Y方向)に走査することにより、探針のZ方向位置を正確に制御できること、を見出した。そして、上記(i)又は(ii)に開示の技術によれば、微粒子や分子等の配向特性を良好に制御できることを確認し、本願発明を完成させるに至った。本発明は、かかる新規知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
(1)試料を支持する試料搭載手段と、上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す探針を有する加工手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段とを相対的に走査させる走査手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を所定の周波数で微小振動させるための発振手段と、上記加工手段の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する検出手段と、上記検出手段にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出手段と、上記微小信号検出手段にて抽出された信号に基づき上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御手段と、を備える分子配向装置。
(2)上記微小信号検出手段は、上記発振手段による上記微小振動の周波数と略一致する成分のみを選択的に検出するものであり、上記位置制御手段は、上記微小信号検出手段にて検出される信号が略一定となるように上記試料搭載手段及び/又は加工手段の位置を制御するものである(1)に記載の分子配向装置。
(3)上記発振手段は、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を、試料表面と平行な方向あるいは試料表面と垂直な方向のいずれかの方向に、所定の周波数にて微小振動させるものである(1)又は(2)に記載の分子配向装置。
(4)上記加工手段の探針の先端は、上記微小振動の周期において少なくとも1回は試料表面に接触する(1)〜(3)のいずれかに記載の分子配向装置。
(5)上記発振手段が上記加工手段を微小振動させ、かつ上記加工手段を試料表面と垂直な方向に所定の周波数にて微小振動させる場合、上記加工手段の探針の先端は、常に試料の表面に接触した状態である(1)〜(3)のいずれかに記載の分子配向装置。
(6)上記発振手段による微小振動の周波数は、上記加工手段の走査の周波数より高い(1)〜(5)のいずれかに記載の分子配向装置。
(7)上記試料搭載手段及び/又は加工手段は、試料の少なくとも被加工領域の温度を制御する温度制御機構を備える(1)〜(6)のいずれかに記載の分子配向装置。
(8)試料を支持する試料搭載手段に配置された試料表面の任意の微小領域に鋭利な先端形状の探針を備える加工手段及び/又は上記試料搭載手段を相対的に走査させて加工を施し、該微小領域の配向特性を制御する分子配向方法であって、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を所定の周波数で微小振動させる発振工程と、上記加工手段の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する検出工程と、上記検出工程にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出工程と、上記微小信号検出工程にて抽出された信号に基づき上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御工程と、を含む分子配向方法。
(9)上記微小信号検出工程は、上記発振工程による上記微小振動の周波数と略一致する成分のみを選択的に検出する工程であり、上記位置制御工程は、上記微小信号検出工程にて検出される信号が略一定となるように上記試料搭載手段及び/又は加工手段の位置を制御する工程である(8)に記載の分子配向方法。
(10)試料を支持する試料搭載手段と、上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を加工するための探針と、該探針が受ける力を検出するためのセンサとを有する加工手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を相対的に走査させる走査手段と、上記加工手段に設けられたセンサからの情報に基づき、上記探針と試料との間の距離を制御する位置制御手段とを備え、上記センサは、上記探針が走査方向と直交する方向に受ける力を検出するものである分子配向装置。
(11)試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程と、上記加工工程において上記探針が走査方向と直交する方向に受ける力を検出する力検出工程と、上記力検出工程で検出された情報に基づき、上記探針と試料表面との間の距離を制御する位置制御工程と、を有する分子配向方法。
(12)試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程を有し、上記加工工程では、試料表面の凹凸及び/又は加工による摩擦力の変動に関係なく配向加工中の探針と試料間の距離を一定とする分子配向方法。
(13)試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、試料の表面を走査し、該試料表面の表面構造を把握する前走査工程と、鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程を有し、上記加工工程では、上記前走査工程にて得られた表面構造の情報に基づき、上記探針と試料表面間の距離を制御する分子配向方法。
(14)試料を支持する試料搭載手段と、上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す探針を有する加工手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段とを相対的に走査させる走査手段と、上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御手段と、を備えており、上記位置制御手段は、上記探針にて試料の表面を走査し、該試料表面の表面構造を把握する前走査工程を行って得られる表面構造の情報に基づいて、上記探針と試料表面間の距離を制御するものである分子配向装置。
(15)上記発振手段が上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、上記加工手段の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数である(1)に記載の分子配向装置。
(16)上記発振手段が上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、当該加工手段と試料とが接触した際の接触振動の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数である(1)に記載の分子配向装置。
(17)上記発振工程において、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、上記加工手段の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数である(8)に記載の分子配向方法。
(18)上記発振工程において、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、当該加工手段と試料とが接触した際の接触振動の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数である(8)に記載の分子配向方法。
なお、上記分子配向装置又は分子配向方法は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記分子配向装置をコンピュータにて実現させる分子配向装置の制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明に係る分子配向装置又は分子配向方法は、上記の構成を有するゆえに、探針の走査により発生する摩擦力の影響を軽減し、試料と探針との間の距離を正確に制御できる。それゆえ、試料面内の任意の方向に分子を配向加工することができるようになり、より一層、精度の高い微細加工を行うことができるという効果を奏する。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
本発明に係る分子配向装置の一実施形態を模式的に示す図である。 本発明に係る分子配向装置の他の一実施形態を模式的に示す図である。 本実施例において用いた薄膜の表面構造をAFMにより観察した結果を示す図である。 本実施例において、本発明の一実施形態に係る分子配向装置を用いて行った薄膜の分子配向制御の結果を示す図である。 本実施例において、本発明の一実施形態に係る分子配向装置を用いて行った他の薄膜の分子配向制御の結果を示す図である。 本実施例において、本発明の一実施形態に係る分子配向装置を用いて行った他の薄膜の分子配向制御の結果を示す図である。 本実施例において、本発明の一実施形態に係る分子配向装置を用いて行った他の薄膜の分子配向制御の結果を示す図である。 比較例において、従来のAFM装置を用いて行った他の薄膜の分子配向制御の結果を示す図である。
符号の説明
10 加工部(加工手段)
11 探針
12 温度制御機構
20 試料搭載部(試料搭載手段)
21 温度制御機構
30 発振部(発振手段)
40 検出部(検出手段)
50 微小信号検出部(微小信号検出手段)
60 位置制御部(位置制御手段)
61 制御部
62 探針X,Y走査部(走査手段)
63 探針Z位置制御部
80 検出部(検出手段)
90 位置制御部(位置制御手段)
91 制御部
92 探針X,Y走査部(走査手段)
93 探針Z位置制御部
100 分子配向装置
200 分子配向装置
〔実施の形態1〕
本発明に係る分子配向装置の一実施形態について説明すると以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
すなわち、本発明に係る分子配向装置は、試料搭載手段上に配置された試料表面の任意の微小領域の配向特性を、鋭利な先端形状の探針を有する加工手段を走査させて加工する分子配向装置であって、加工手段の探針と試料との間の距離(探針のZ方向の位置)を正確に制御することができるものであればよい。
具体的な一例として、本分子配向装置は、試料を支持する試料搭載手段と、上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す探針を有する加工手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段とを相対的に走査させる走査手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を相対的に所定の周波数で微小振動させるための発振手段と、上記加工手段の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する検出手段と、上記検出手段にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出手段と、上記微小信号検出手段にて抽出された信号に基づき上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御手段と、を備えるものであればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。
ここで、上記「微小領域の配向特性を制御するための加工」とは、試料表面の分子、微粒子、又は微結晶の少なくともいずれか1つの配向特性を制御することをいう。なお、この「微小領域の配向特性を制御するための加工」については、上述した特許文献1に詳細に説明してある。それゆえ、本明細書での詳細な説明は省略するが、本明細書に記載されていない事項については、適宜、上記特許文献1に開示の記載内容を利用することができることを念のため付言する。
以下、図面を用いて、本発明に係る分子配向装置について、例を挙げて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る分子配向装置の一実施形態の構成を模式的に示す図である。同図に示すように、分子配向装置100は、加工部10,試料搭載部20,発振部30,検出部40,微細信号検出部50,位置制御部60を備えている。
加工部10は、鋭利な先端形状の探針11を有しており、上記加工手段として機能するものである。かかる加工部10としては、上記のような探針11を備えており、試料表面を走査し、微細加工が可能なものであればよく、その具体的な構成については特に限定されないが、例えば、AFMのカンチレバーを用いることが好ましい。また、カンチレバー以外にも、例えば、細い針状の探針部分のみからなる加工部も用いることができる。この場合、探針部分に圧電素子やミラー等のセンサを設けることにより、電気的手段または光学的手段を用いて容易に位置検出に用いることができる。また、加工部10には、温度制御機構12が設けられている。これは、後述する試料搭載部20に設けられている温度制御手段と同様の機能を行うものである。
ここで、上記加工部10として、カンチレバーを用いる場合を例に挙げて、具体的に説明する。カンチレバーとは、微細な探針が固定された矩形板バネのことであり、その長手方向をX方向、短手方向をY方向とし、探針と試料との対向する向きをZ方向とする。図1には、これらX、Y、Z方向を図示してある。この場合、上記「試料70表面と平行な方向」とは、X−Y平面方向と称することができる。また、「試料70表面と垂直な方向」とは、Z方向と称することができる。なお、以下、本明細書において特に言及しない場合は、「X、Y、Z方向」とは、上記の方向のことを示す。
試料搭載部20は、試料70を載置するための試料搭載手段として機能するものであり、試料ステージと称することもできる。かかる試料搭載部20としては、上記機能を有するものであればよく、その構成は特に限定されないが、例えば、AFMや電子顕微鏡等の従来公知の試料ステージを好適に用いることができる。
また、試料搭載部20は、温度制御機構21を備えていることが好ましい。この温度制御機構21を備えることにより、試料70の配向特性を制御するために、試料70を好適な温度まで加温することができる。温度制御機構21の構成についても特に限定されるものではなく、試料の少なくとも被加工領域の温度を制御するものであればよい。このような温度制御機構としては、従来公知のヒータや加熱手段・冷却手段を備えるものを好適に用いることができる。
なお、温度制御機構は、上記試料搭載部だけではなく、例えば、加工部に設けられていてもよい。加工部に温度制御手段を設けることによっても、試料の少なくとも被加工領域の温度を制御することができる。本実施の形態では、加工部10にも温度制御機構12を設けている。このように、試料搭載部と加工部の両方に温度制御機構を設けることがより好ましい。かかる構成によれば、加工部の探針と試料搭載部の両方から試料の温度を制御することができるため、より正確に試料の温度を制御することができる。
また、試料搭載部20は、3次元に移動可能に構成されていることが好ましい。つまり、試料搭載部20は、3次元の移動が可能なように、3次元の走査機構が備えられていることが好ましいといえる。上記の構成によれば、試料70と探針11との相対位置を変化させて、探針11を試料70表面(X−Y方向)に対して走査させたり、探針11と試料70との距離(Z方向)を制御したりすることができる。上記走査機構の構成についても特に限定されるものではなく、従来公知の走査機構を用いることができる。
発振部30は、試料搭載部20又は加工部10を所定の周波数で微小振動させるための発振手段として機能するものであればよく、従来公知の発振装置を用いることができ、その具体的な構成については特に限定されるものではない。より詳細には、発振部30は、試料搭載20又は加工部10を、試料70表面と平行な方向あるいは試料70表面と垂直な方向のいずれかの方向に、微小振動させるものであることが好ましい。また、上記微小振動は、一定の周波数で振動させるものであることが好ましい。なお、発振部30は、微小信号検出部50に対して、発振部30における発振周波数fに関する参照信号を通知するように構成されている。
また、発振部30における「所定の周波数」とは、加工部10の探針11が試料表面を走査する際の周波数より、高い周波数であることが好ましい。発振部30が試料搭載部20を振動させる場合、探針11が試料表面を走査する際の周波数に比べて、10倍〜100万倍高い周波数であることが好ましく、さらには100倍〜10万倍高いことがより好ましい。一方、発振部30が加工部10(及び/又は探針11)を振動させる場合、探針11が試料表面を走査する際の周波数に比べて、10倍〜1000万倍高い周波数であることが好ましく、さらには100倍〜100万倍高いことがより好ましい。
また、発振部30における上記「所定の周波数」は、加工部10の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数であることが好ましい。中でも、加工部10と試料70とが接触した際の接触振動の共振周波数以外の周波数であることがより好ましい。なお、接触振動の共振周波数とは、カンチレバーの先端部(探針)および根元部分が振動の節となり、カンチレバー本体の中間部分が腹となる振動を意図する。
これは、本実施の形態のような微細加工を行う場合、試料70と加工部10の探針11との間に大きな相互作用力が発生し、この相互作用力の影響により、加工部10の周波数特性、共振特性が変化してしまう。このため、上述の共振周波数又はその近傍の周波数で加工部10または試料70を振動させると、加工部10の探針11と試料70表面との間の距離を正確に制御することが困難である。その一方、上述の共振周波数またはその近傍の周波数以外で微小振動させると、相互作用力の影響を受けて加工部10の周波数特性が変化しないため、加工部10の探針11と試料70表面との間の距離をより精密に制御することができる。
検出部40は、加工部10(又は探針11)の振動状態を検出する検出手段として機能するものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、「振動状態」とは、例えば、振幅(A)、位相(φ)、又は振幅位相(Acosφ)を挙げることができ、少なくともこれらの成分のうちいずれかの成分を検出することができる構成であればよい。検出部40としては、上記の目的に合致する従来公知の検出機構を用いることができ、特に限定されるものではない。
例えば、加工部10としてカンチレバーを用いる場合、図1に示すように、検出部40としては、従来公知のAFMに用いられているような、レーザ光をカンチレバーの背面に照射し、反射光を光検出器にて検出するという検出機構を用いることができる。なお、検出部40は、この構成に限られるものではなく、加工部10の形状等に応じて、適宜変更可能であることはいうまでもない。
微小信号検出部50は、検出部40にて検出した信号のうち、発振部30における所定の周波数と一致する特定の成分のみを選択的に検出する微小信号検出手段として機能するものである。つまり、微小信号検出部50は、発振部30における特定の周波数と一致する、周波数、振幅、位相、振幅位相等のみを検出できるものであればよい。かかる目的に合致した各種様々な部材を用いることができ、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、ロックインアンプの他、バンドパスフィルタ及び整流回路の組み合わせ等を好適に用いることができる。
また、微小信号検出部50は、位置制御部60に対して、信号を通知する構成となっている。図1では、この信号を信号Sとして表す。
位置制御部60は、上述した微小信号検出部50にて検出した信号が略一定となるように、試料搭載部の位置を制御し、探針11と試料70との間の距離を制御する位置制御手段として機能するものである。
本実施の形態では、位置制御部60は、制御部61,探針X・Y走査部62,探針Z位置制御部63を備えている。
制御部61は、微小信号検出部50にて検出した信号が略一定となるように、試料搭載部20の位置を制御するために、探針Z位置制御部63に指示を行うものであり、従来公知の制御回路、演算装置、パーソナルコンピューター等を好適に用いることができる。探針Z位置制御部63は、制御部61からの指示に応じて、試料搭載部20について、Z方向の位置を制御する(移動させる)ための走査機構である。
また、探針X・Y走査部62は、試料搭載部20を移動させ、試料70をX−Y平面内で移動させるための走査手段である。本実施の形態では、加工部10の探針11は、固定されている構成であるため、上記の走査機構により、探針11が試料70の表面を走査できる。これにより、試料70表面の任意の微小領域の配向特性を、探針11を有する加工部10を走査させて加工することができる。
試料70は、有機又は無機材料から構成される薄膜であればよく、その具体的な構成については、特に限定されるものではない。かかる試料としては、例えば、上記特許文献1に開示されている種々の薄膜試料を好適に用いることができる。
次に、本分子配向装置100の動作について説明する。本実施の形態に係る分子配向装置100の動作方式として、少なくとも以下(I)〜(IV)の4つの方式がある。
(I)試料搭載部20を試料70の表面方向(X−Y平面)に微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させ、走査する方式。
(II)試料搭載部20を試料70の表面と垂直な方向(Z方向)に微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させ、走査する方式。
(III)加工部10(又は探針11)を試料70の表面方向(X−Y平面)に微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させ、走査する方式。
(IV)加工部10(又は探針11)を試料70の表面と垂直な方向(Z方向)に微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させ、走査する方式。
動作方式(I)について説明すると以下の通りである。
まず、試料搭載部20上に試料70を載置し、温度制御機構21を用いて試料70を加工に最適な温度に設定する。なお、加工に最適な温度制御については、上記特許文献1に記載されており、これを参酌すればよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、発振部30を用いて、試料搭載部20を、試料70表面(X−Y平面)方向に、所定の周波数fにて微小振動させる。なお、試料搭載部20の振動方向はX−Y平面内の任意の方向であればよく、その具体的な方向は特に限定されない。
続いて、試料搭載部20を微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させる。探針11が試料70表面に接触すると、試料70を介して加工部10も、微小振動することになる。ここで、上記微小振動に起因する探針11の振動状態を、微小振動検出部50を通して検知する(検出した信号Sと称する)。
次いで、試料70の分子等を配向させたい方向に探針11または試料搭載20を相対的に走査させる。
このとき、位置制御部60が、上記信号Sが略一定となるように、探針11のZ方向位置を制御する。探針11の位置制御は、位置制御部60の各構成を用いて行うことができる。
次に動作方式(II)について説明する。
まず、試料搭載部20上に試料70を載置し、温度制御機構21を用いて試料70を加工に最適な温度に設定する。次に、発振部30を用いて、試料搭載部20を、試料70表面に対して垂直な方向(Z方向)に、所定の周波数fにて微小振動させる。
続いて、試料搭載部20を微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させる。探針11が試料70表面に接触すると、試料70を介して加工部10も、微小振動することになる。ここで、上記微小振動に起因する探針11の振動状態を、微小振動検出部50を通して検知する(検出した信号Sと称する)。
次いで、試料70の分子等を配向させたい方向に探針11または試料搭載20を相対的に走査させる。具体的な一例として、探針X・Y走査部62を用いて、試料搭載部20を移動させることにより、探針11をもって試料70表面上を走査させる。
このとき、位置制御部60が、上記信号Sが略一定となるように、探針11のZ方向位置を制御する。探針11の位置制御は、位置制御部60の各構成を用いて行うことができる。
なお、上記動作方式(I),(II)では、発振部30が試料搭載部20を微小振動させる。このような場合、加工部10は、直接振動することなく、探針11が試料70と接触することにより、はじめて微小振動することになる。ここで、分子配向装置100では、加工部10の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する構成であり、特に、検出部40にて検出した信号のうち、発振部30の所定の周波数に一致する特定の信号のみを検出することを特徴としている。つまり、本分子配向装置100では、加工部10の振幅等を検出するため、加工部10が微小振動することが好ましい。そこで、上記動作方式(I),(II)では、加工部10の探針11の先端は、振動周期に少なくとも1回、より好ましくは常に試料の表面に接触した状態であることが好ましいといえる。
次いで動作方式(III)について説明する。
まず、試料搭載部20上に試料70を載置し、温度制御機構21及び/又は12を用いて試料70を加工に最適な温度に設定する。次に、発振部30を用いて、加工部10(探針11)を、試料70表面(X−Y平面)方向に、所定の周波数fにて微小振動させる。なお、加工部10(探針11)の振動方向はX−Y平面内の任意の方向であればよく、その具体的な方向は特に限定されない。
続いて、加工部10(探針11)を微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させる。このときの微小振動に起因する探針11の振動状態を、微小振動検出部50を通して検知する(検出した信号Sと称する)。
次いで、試料70の分子等を配向させたい方向に探針又は試料搭載部を相対的に走査させる。具体的な一例として、探針X・Y走査部62を用いて、試料搭載部20を移動させることにより、探針11をもって試料70表面上を走査させる。
このとき、位置制御部60が、上記信号Sが略一定となるように、探針11のZ方向位置を制御する。探針11の位置制御は、位置制御部60の各構成を用いて行うことができる。探針の振動周期において少なくとも1回試料と接触していればよい。
次に動作方式(IV)について説明する。
まず、試料搭載部20上に試料70を載置し、温度制御機構21を用いて試料70を加工に最適な温度に設定する。次に、発振部30を用いて、加工部10(探針11)を、試料70表面に対して垂直な方向(Z方向)に、所定の周波数fにて微小振動させる。
続いて、加工部10(探針11)を微小振動させた状態で、探針11を試料70表面に接触させる。このときの上記微小振動に起因する探針11の振動状態を、微小振動検出部50を通して検知する(検出した信号Sと称する)。
次いで、試料70の分子等を配向させたい方向に探針を走査させる。具体的な一例として、探針X・Y走査部62を用いて、試料搭載部20を移動させることにより、探針11をもって試料70表面上を走査させる。
このとき、位置制御部60が、上記信号Sが略一定となるように、探針11のZ方向位置を制御する。探針11の位置制御は、位置制御部60の各構成を用いて行うことができる。
なお、上記動作方式(IV)の動作の場合、AFMにおけるダイナミックモードと類似の構成となる。しかしながら、AFMのダイナミックモードは、試料とカンチレバーの探針との接触をできるだけ避け、試料のダメージを軽減するための動作モードである。一方、本発明の分子配向装置では、試料と探針とが接触することが前提となっている。これは、試料と探針とが接触しなければ、試料の分子等の配向性を制御できないためである。このため、上記(IV)の動作方式とAFMのダイナミックモードとは、その技術思想において大きく異なっているといえる。
つまり、発振部30が、加工部10を微小振動させるものであって、かつ加工部10を試料70表面と垂直な方向に、所定の周波数にて微小振動させるものである場合、加工部10の探針11の先端は、常に試料の表面に接触した状態であることが好ましいといえる。
以上のように、本分子配向装置は、加工部(探針)又は試料搭載部を高周波で微小振動させることにより、両者の間に微小な摩擦力を発生させる。そして、この微小な摩擦力により生じる加工部の反りを、微小信号検出部を介して測定することで、目的の信号(微小振動に由来する信号)以外のノイズ成分(配向加工のための探針走査により発生する摩擦力による加工部の反りによる信号)をカットすることができる。そして、上記の目的の信号(微小振動に由来する信号)の測定値を基準とすることにより、探針のZ方向位置を正確に制御することができる。それゆえ、本分子配向装置によれば、探針走査に伴って発生する摩擦力の影響を受けることなく、探針におけるZ方向の位置制御を高精度で行うことができる。
また、本発明には分子配向方法も含まれる。本発明に係る分子配向方法は、試料を支持する試料搭載手段に配置された試料表面の任意の微小領域に鋭利な先端形状の探針を備える加工手段及び/又は上記試料搭載手段を相対的に走査させて加工を施し、該微小領域の配向特性を制御する分子配向方法であって、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を所定の周波数で微小振動させる発振工程と、上記加工手段の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する検出工程と、上記検出工程にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出工程と、上記微小信号検出工程にて抽出された信号に基づき上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御工程と、を含むものであればよく、その他の工程、条件、使用機器等の具体的な構成については、特に限定されるものではない。
上記分子配向方法は、例えば、上述した分子配向装置により実施できる。本分子配向方法の説明は、実質的に上述した分子配向装置の説明と重複するため、ここではその詳細な説明を省略する。つまり、上記分子配向装置について説明した事項は、適宜、分子配向方法にも適用可能であり、本方法においても様々に組み合わせることができる。なお、本発明に係る分子配向方法によっても、上述した分子配向装置と同様の効果を得ることができることはいうまでもない。
〔実施の形態2〕
上記実施形態1では、加工部(探針)又は試料搭載部を高周波で微小振動させ、当該微小振動に依存する加工部の反りのみを検出する分子配向装置の一実施形態について説明した。本実施形態では、上記実施形態1とは異なり、加工部又は試料搭載部の微小振動を行わない分子配向装置の一実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施の形態では、上記実施形態1との相違点について説明するものとする。
本実施の形態に係る分子配向装置は、試料を支持する試料搭載手段と、上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を加工するための探針と、該探針が受ける力を検出するためのセンサとを有する加工手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を相対的に走査させる走査手段と、上記加工手段に設けられたセンサからの情報に基づき、上記探針と試料との間の距離を制御する位置制御手段とを備え、上記センサは、上記探針が走査方向と直交する方向に受ける力を検出するものであればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。
以下、図面を用いて、本発明に係る分子配向装置の各構成部材について、例を挙げて詳細に説明する。
図2は、本発明に係る分子配向装置の他の一実施形態の構成を模式的に示す図である。同図に示すように、分子配向装置200は、加工部10,温度制御機構12、温度制御機構21,試料搭載部20,検出部80,位置制御部90を備えている。
加工部10は従来公知のいわゆるカンチレバーであってよく、また、カンチレバー以外にも探針部分に圧電素子やミラー等のセンサを設けることにより、探針に働く力を電気的または光学的に検出する構造であってもよい。また、加工部10は、温度制御機構12を備えている。温度制御機構12は、試料70の少なくとも被加工領域の温度を制御するものであればよい。
検出部80は、加工部10または探針11に加わる力を検出する。また、検出部80はその検出結果を後述の位置制御部90へ送る構成であればよい。また、検出部80は、上記センサと協働して機能するものでもある。つまり、検出部80は、上記センサと協働して、探針11が走査方向と直交する方向に受ける力を検出するものであるといえる。
検出部80としては、上記の目的に合致する従来公知の検出機構を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、加工部10としてカンチレバーを用いる場合、図2に示すように、従来公知のAFMに用いられているようなレーザ光をカンチレバーの背面に照射し、反射光を光検出器にて検出するという検出機構を用いることができる。なお、検出部80は、この構成に限られるものではなく、加工部10の形状等に応じて、適宜変更可能である。
位置制御部90は、加工部10における長手方向の反りの大きさを基準として、探針11と試料70との間の距離を制御する位置制御手段として機能するものである。さらに、位置制御部90は、加工部10を試料70に対して、走査させる走査手段としても機能するものである。本実施の形態では、位置制御部90は、制御部91,探針X・Y走査部92,探針Z位置制御部93を備えている。
制御部91は、上記検出部80からの信号に従って、加工部10における長手方向の反りの大きさを基準として、探針11と試料70との間の距離を制御するために、探針Z位置制御部93に指示を行うものであり、従来公知の制御回路、演算装置、パーソナルコンピューター等を好適に用いることができる。探針Z位置制御部93は、制御部91からの指示に応じて、試料搭載部20のZ方向の位置を制御し、加工部10の探針11と試料70とのZ方向の距離を制御するための走査機構である。
また、探針X・Y走査部92は、試料搭載部20を移動させ、探針11と試料70との相対位置をX−Y平面内で移動させるための走査手段である。本実施の形態では、加工部10の探針11は、固定されている構成であるため、上記の構成により、探針11が試料70の表面を走査できる。これにより、試料70表面の任意の微小領域の配向特性を、探針11を有する加工部10を走査させて加工することができる。つまり、探針X・Y走査部92は、試料搭載部20を移動させることにより、加工部10(探針11)を試料70に対して、加工部10の短手方向に走査させるものであると換言できる。
かかる探針X・Y走査部92の具体的な構成は、上記の目的に合致する構成であればよく、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、電子顕微鏡や表面粗さ計における試料ステージを挙げることができる。かかる試料ステージは、X−Y平面において縦移動・横移動・回転移動、及びこれらを適宜組み合わせて、試料70を自由に移動させることができるものである。
このような試料搭載部20及び位置制御部90によれば、探針11と試料70との相対位置を細かく単位、かつ高精度で移動させることができる。このため、探針11をもって、試料70の任意の微小領域を正確に走査させることができる。それゆえ、試料70の任意の位置・任意の形状の領域で、分子又は微結晶等を規則正しく配列させることができるという利点がある。さらに、本分子配向装置200は、上記実施形態1と異なり、微小振動を起こすための発振部や特定の信号のみを検出するための微小信号検出部等の部材を設ける必要が無い。このため、低コスト化、小型化を達成することができる。
上記の分子配向装置によれば、試料(薄膜)を構成する微粒子又は微結晶あるいは分子の配向特性を制御する技術において、探針が試料と平行な面内で走査方向と直交方向に受ける力を基準にZ方向の距離を制御することにより探針のZ方向性世をより性格に行うことができる、例えばカンチレバーの長手方向(X)の反りの大きさを基に探針・試料間の距離を制御し、かつカンチレバーの短手方向(Y方向)に走査する構成がその一例である。これにより、走査に伴って生じた摩擦力によって、発生するカンチレバーの長手方向(X)の反りの影響を無視でき、探針のZ方向位置を正確に制御できる。
それゆえ、本分子配向装置によれば、探針走査に伴って発生する摩擦力の影響を受けることなく、探針におけるZ方向の位置制御を高精度で行うことができる。
また、本発明には分子配向方法も含まれる。本発明に係る分子配向方法は、試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程と、上記加工工程において上記探針が走査方向と直交する方向に受ける力を検出する力検出工程と、上記力検出工程で検出された情報に基づき、上記探針と試料表面との間の距離を制御する位置制御工程と、を有するものであればよく、その他の工程、条件、使用機器等の具体的な構成については、特に限定されるものではない。
上記分子配向方法は、例えば、上述した分子配向装置により実施できる。本分子配向方法の説明は、実質的に上述した分子配向装置の説明と重複するため、ここではその説明を省略する。上記分子配向装置について説明した事項は、適宜、分子配向方法にも適用可能であり、本方法においても様々に組み合わせることができる。なお、本発明に係る分子配向方法によっても、上述した分子配向装置と同様の効果を得ることができることはいうまでもない。
また、本発明には、分子配向装置又は分子配向方法として、例えば、試料表面の凹凸及び加工による摩擦力の変動に関係なく配向加工中の探針・試料間距離を一定とする構成のものが含まれていてもよい。具体的な一例として、探針のZ方向位置の制御を行うフィードバックゲインを下げて、試料表面の凹凸や摩擦力の影響により探針のZ方向の位置を制御する応答性を落とした構成のものが考えられる。また、試料の表面を予めスキャン(観察)しておき、試料表面の大まかな構造を把握した後、その表面構造に応じて探針を走査させる構成であってもよい。勿論、この場合、配向性制御のための走査時には、探針のZ方向位置を制御するフィードバックは行わない。
すなわち、本発明に係る分子配向方法は、試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程を有し、上記加工工程では、試料表面の凹凸及び/又は加工による摩擦力の変動に関係なく配向加工中の探針と試料間の距離を一定とするものであればよい。
上記分子配向装置又は分子配向方法は、例えば、試料表面の凹凸が少ない場合などに好適に用いることができる。上記分子配向装置では、探針と試料との間の距離(探針のZ方向位置)を制御する必要が無いため、例えば、微小信号検出部や発振部を設ける必要が無い。このため、装置の小型化、コストダウンを図ることができる。
すなわち、本発明に係る分子配向方法は、試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、試料の表面を走査し、該試料表面の表面の凹凸構造を把握する前走査工程と、鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程とを有し、上記加工工程では、上記前走査工程にて得られた表面構造の情報に基づき、上記探針と試料表面間の距離を制御するものであればよい。
また、本発明には、上記の分子配向方法を実施するための装置として、試料を支持する試料搭載手段と、上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す探針を有する加工手段と、上記試料搭載手段及び/又は加工手段とを相対的に走査させる走査手段と、上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御手段と、を備えており、上記位置制御手段は、上記探針にて試料の表面を走査し、該試料表面の表面構造を把握する前走査工程を行って得られる表面の凹凸構造の情報に基づいて、上記探針と試料表面間の距離を制御するものである分子配向装置が含まれる。
なお、上述した2つの実施の形態では、位置制御部60又は90は、試料搭載部20の位置を制御する構成として説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、位置制御部60又は90が、試料搭載部20のX、Y、Z方向の位置ではなく、加工部10や探針11の位置を制御し移動させる構成であってもよい。ただし、装置の構成の容易さや操作性、装置の大型化を避ける等の理由で、試料搭載部20の位置を移動させるような、本実施形態の構成がより好ましい。
また、上述した本発明に係る分子配向装置又は分子配向方法によれば、膜厚1000nm以下の薄膜でもその構造制御が可能である。構造制御を行う微小領域の面積は、1nmの領域刻みも可能である。さらに、この技術により構造制御を行った後、別の薄膜を積層し、再び同様の構造制御を行う。この一連の工程を複数回繰り返すことにより、3次元における構造制御も可能である。こうして、本発明によれば、任意の位置・任意の形状の領域で分子又は微結晶を規則正しく配列させることにより、光学的又は誘電的又は力学的特性に異方性を発現させることが可能になる。
最後に、分子配向装置100又は分子配向装置200の各ブロック、特に位置制御部60及び位置制御部90は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、分子配向装置100又は分子配向装置200は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである分子配向装置100又は分子配向装置200の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記分子配向装置100又は分子配向装置200に供給し、そのコンピュータ(又はCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、分子配向装置100又は分子配向装置200を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
上述した分子配向装置又は分子配向方法を用いて、薄膜表面の任意の微小領域の配向特性を制御する実験を行った。その方法及び結果を以下に示す。
〔実施例1〕
フッ化ビニリデン・三フッ化エチレン共重合体((P(VDF-TrFE))共重合比(VDF/TrFE=75/25)のメチルエチルケトン溶液をグラファイト基板上にスピン塗布した後、140℃で1時間熱処理結晶化して膜厚200nmの薄膜を得た。この膜の表面AFM像を図3に示す。次に、この薄膜を図1に示す構成の分子配向加工装置に設置し膜温度をP(VDF-TrFE)の融点(147℃)直下の142℃に加熱した。この状態で、バネ定数2.4N/mのカンチレバーを用いて分子配向加工を行った。加工に際して、発振器を用いて試料(試料搭載部)をY方向に周波数f=9kHzで振動させた。振動振幅は約1.3nmであった。
次に、試料(試料搭載部)をZ方向に移動し、カンチレバー先端の探針を試料表面に接触させた。この状態でカンチレバーは探針と試料表面の摩擦力によりY方向に周波数fで振動する。この振動をカンチレバー背面に照射したレーザ光の位置の振れとして光検出器で検出した。
図1の構成では光検出器の出力を、ロックインアンプを介することで周波数f(9kHz)の成分のみを取り出している。ロックインアンプの出力としてカンチレバーのY方向振動の振幅信号と位相信号が得られるが、このうちの振幅信号が0.5〜0.9mVとなるように試料のZ方向位置を設定した。
次いで、この振幅信号を探針・試料間のX,Y,Z方向の相対位置を制御するためのコンピュータに入力し、振幅信号が常にこの範囲の値に収束するようにフィードバック制御を行いながら、試料(試料搭載部)をX方向にに2μm走査後Y方向に8nm移動して−X方向に2μm走査した。この動作を256回繰り返して2μm×2μmの領域の分子に配向加工を施した。
加工後、試料温度30℃でAFM観察した加工結果を図4に示す。分子が探針の走査方向(X方向)に良好に配向した結果、Y方向に細長いエッジオン型のラメラ結晶が綺麗に並んで形成されていることが確認された。
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法でフッ化ビニリデン・三フッ化エチレン共重合体((P(VDF-TrFE))共重合比(VDF/TrFE=75/25)の膜厚200nmの薄膜を得た。この薄膜を図1に示す構成の分子配向加工装置に設置し膜温度を142℃に加熱した。この状態で、バネ定数2.4N/mのカンチレバーを用いて分子配向加工を行った。
本実施例2では、加工に際して発振器を用いて試料(試料搭載部)をX方向に周波数f=9kHzで振動させた。また、探針を試料表面に接触させることにより発生するカンチレバーのX方向の振動の振幅信号が0.4〜0.7mVになるように試料のZ方向位置を設定した。次に、この振幅信号を探針・試料間のX,Y,Z方向の相対位置を制御するためのコンピュータに入力し、振幅信号が常にこの範囲の値に収束するようにフィードバック制御を行いながら、試料(試料搭載部)をY方向に2μm走査後X方向に8nm移動して−Y方向に2μm走査した。この動作を256回繰り返して2μm×2μmの領域の分子に配向加工を施した。
加工後、試料温度30℃でAFM観察した加工結果を図5に示す。分子が探針の走査方向(Y方向)に良好に配向した結果、Y方向に細長いエッジオン型のラメラ結晶が綺麗に並んで形成されていることが確認された。
〔実施例3〕
実施例2と同様の試料を図1に示す構成の分子配向加工装置に設置し、膜温度を142℃に加熱した。この状態で、バネ定数2.4N/mのカンチレバーを用いて分子配向加工を行った。実施例3では、加工に際して発振器を用いて試料(試料搭載部)をY方向に周波数f=9kHzで振動させた。また、探針を試料表面に接触させることにより発生するカンチレバーのY方向の振動の振幅信号が0.3〜0.6mVになるように試料のZ方向位置を設定した。
次に、この振幅信号を探針・試料間のX,Y,Z方向の相対位置を制御するためのコンピュータに入力し、振幅信号が常にこの範囲の値に収束するようにフィードバック制御を行いながら、試料をX方向に対して45°の方向(a方向とする)に2μm走査後Y方向に対して45°の方向に8nm移動して−a方向に2μm走査した。この動作を256回繰り返して2μm×2μmの領域の分子に配向加工を施した。
加工後、試料温度30℃でAFM観察した加工結果を図6に示す。分子が探針の走査方向(X方向に対して45°の方向)に良好に配向した結果、Y方向に対して45°の方向に細長いエッジオン型のラメラ結晶が綺麗に並んで形成されていることが確認された。
〔実施例4〕
実施例3と同様の試料を図1に示す構成の分子配向加工装置に設置し膜温度を142℃に加熱した。この状態で、バネ定数2.4N/mのカンチレバーを用いて分子配向加工を行った。実施例4では加工に際して発振器を用いて試料(試料搭載部)をY方向に周波数f=9kHzで振動させた。また、探針を試料表面に接触させることにより発生するカンチレバーのY方向の振動の振幅信号が0.5〜1.0mVになるように試料のZ方向位置を設定した。
次に、この振幅信号を探針・試料間のX,Y,Z方向の相対位置を制御するためのコンピュータに入力し、振幅信号が常にこの範囲の値に収束するようにフィードバック制御を行いながら、試料をY方向に2μm走査後X方向に8nm移動して−X方向に2μm走査した。この動作を256回繰り返して2μm×2μmの領域の分子に配向加工を施した。
加工後、試料温度30℃でAFM観察した加工結果を図7に示す。分子が探針の走査方向(Y方向)に良好に配向した結果、Y方向に細長いエッジオン型のラメラ結晶が綺麗に並んで形成されていることが確認された。
〔比較例1〕
実施例4と同様の試料を、従来のAFM装置に設置し膜温度を142℃に加熱した。この状態で、バネ定数2.4N/mのカンチレバーを用いて分子配向加工を行った。探針を試料表面に接触させ、その時のカンチレバーのX方向の反りが一定になるようにフィードバック制御を加えながら(通常のコンタクトモード)試料をX方向に2μm走査した。そのY方向に8nm移動して−X方向に2μm走査した。この動作を256回繰り返して2μm×2μmの領域の分子に配向加工を施した。
加工後、試料温度30℃でAFM観察した。加工時のカンチレバーの反りの値を変えて上記の加工を行った結果、最も良好であった加工結果を図8に示す。従来のAFM装置を用いた場合には一部の領域では分子が配向されているもののその結果は良好ではない。また、探針位置のZ方向制御が不適切なため非常に膜が破れやすいことが分かった。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、ナノメートルオーダーの微小領域における膜の配向制御が可能となり、例えば、情報を記録・再生する高密度記録媒体等をはじめとした、様々な産業上の分野において応用が可能である。

Claims (18)

  1. 試料を支持する試料搭載手段と、
    上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す探針を有する加工手段と、
    上記試料搭載手段及び/又は加工手段とを相対的に走査させる走査手段と、
    上記試料搭載手段及び/又は加工手段を所定の周波数で微小振動させるための発振手段と、
    上記加工手段の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する検出手段と、
    上記検出手段にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出手段と、
    上記微小信号検出手段にて抽出された信号に基づき上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御手段と、
    を備えることを特徴とする分子配向装置。
  2. 上記微小信号検出手段は、上記発振手段による上記微小振動の周波数と略一致する成分のみを選択的に検出するものであり、
    上記位置制御手段は、上記微小信号検出手段にて検出される信号が略一定となるように上記試料搭載手段及び/又は加工手段の位置を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の分子配向装置。
  3. 上記発振手段は、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を、試料表面と平行な方向あるいは試料表面と垂直な方向のいずれかの方向に、所定の周波数にて微小振動させるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分子配向装置。
  4. 上記加工手段の探針の先端は、上記微小振動の周期において少なくとも1回は試料表面に接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分子配向装置。
  5. 上記発振手段が上記加工手段を微小振動させ、かつ上記加工手段を試料表面と垂直な方向に所定の周波数にて微小振動させる場合、
    上記加工手段の探針の先端は、常に試料の表面に接触した状態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分子配向装置。
  6. 上記発振手段による微小振動の周波数は、上記加工手段の走査の周波数より高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分子配向装置。
  7. 上記試料搭載手段及び/又は加工手段は、試料の少なくとも被加工領域の温度を制御する温度制御機構を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の分子配向装置。
  8. 試料を支持する試料搭載手段に配置された試料表面の任意の微小領域に鋭利な先端形状の探針を備える加工手段及び/又は上記試料搭載手段を相対的に走査させて加工を施し、該微小領域の配向特性を制御する分子配向方法であって、
    上記試料搭載手段及び/又は加工手段を所定の周波数で微小振動させる発振工程と、
    上記加工手段の振幅、位相および振幅位相のうち少なくともいずれか一つを検出する検出工程と、
    上記検出工程にて検出した信号のうち、特定成分のみを選択的に抽出する微小信号検出工程と、
    上記微小信号検出工程にて抽出された信号に基づき上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御工程と、
    を含むことを特徴とする分子配向方法。
  9. 上記微小信号検出工程は、上記発振工程による上記微小振動の周波数と略一致する成分のみを選択的に検出する工程であり、
    上記位置制御工程は、上記微小信号検出工程にて検出される信号が略一定となるように上記試料搭載手段及び/又は加工手段の位置を制御する工程であることを特徴とする請求項8に記載の分子配向方法。
  10. 試料を支持する試料搭載手段と、
    上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を加工するための探針と、該探針が受ける力を検出するためのセンサとを有する加工手段と、
    上記試料搭載手段及び/又は加工手段を相対的に走査させる走査手段と、
    上記加工手段に設けられたセンサからの情報に基づき、上記探針と試料との間の距離を制御する位置制御手段とを備え、
    上記センサは、上記探針が走査方向と直交する方向に受ける力を検出するものであることを特徴とする分子配向装置。
  11. 試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、
    鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程と、
    上記加工工程において上記探針が走査方向と直交する方向に受ける力を検出する力検出工程と、
    上記力検出工程で検出された情報に基づき、上記探針と試料表面との間の距離を制御する位置制御工程と、
    を有することを特徴とする分子配向方法。
  12. 試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、
    鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程を有し、
    上記加工工程では、試料表面の凹凸及び/又は加工による摩擦力の変動に関係なく配向加工中の探針と試料間の距離を一定とすることを特徴とする分子配向方法。
  13. 試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す分子配向方法において、
    試料の表面を走査し、該試料表面の表面構造を把握する前走査工程と、
    鋭利な先端形状の探針を上記試料と相対的に走査させて加工する加工工程を有し、
    上記加工工程では、上記前走査工程にて得られた表面構造の情報に基づき、上記探針と試料表面間の距離を制御することを特徴とする分子配向方法。
  14. 試料を支持する試料搭載手段と、
    上記試料表面の任意の微小領域の配向特性を制御するための加工を施す探針を有する加工手段と、
    上記試料搭載手段及び/又は加工手段とを相対的に走査させる走査手段と、
    上記探針と試料表面との距離を制御する位置制御手段と、を備えており、
    上記位置制御手段は、上記探針にて試料の表面を走査し、該試料表面の表面構造を把握する前走査工程を行って得られる表面構造の情報に基づいて、上記探針と試料表面間の距離を制御するものであることを特徴とする分子配向装置。
  15. 上記発振手段が上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、上記加工手段の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数であることを特徴とする請求項1に記載の分子配向装置。
  16. 上記発振手段が上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、当該加工手段と試料とが接触した際の接触振動の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数であることを特徴とする請求項1に記載の分子配向装置。
  17. 上記発振工程において、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、上記加工手段の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数であることを特徴とする請求項8に記載の分子配向方法。
  18. 上記発振工程において、上記試料搭載手段及び/又は加工手段を微小振動させるための所定の周波数は、当該加工手段と試料とが接触した際の接触振動の共振周波数またはその近傍の周波数以外の周波数であることを特徴とする請求項8に記載の分子配向方法。
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