JPWO2007094338A1 - 機能性分光フィルタの作成方法 - Google Patents

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Abstract

それを装着することによって観察者の色覚特性(色の識別のしやすさ)を変化させることを可能とし、それを用いて色覚異常者にとって識別しやすい配色をデザインするための機能性分光フィルタを提供する。多層膜を備えた機能性分光フィルタを、色覚特性が所望パターンとなるように色覚理論を用いて求めた薄膜設計(最適化法)にしたがって作成する。指定した複数色のうちの2色を組み合わせた組み合わせについて、各組み合わせにおける色差をあらかじめ与えられた色差に近づける。又は、特定の組み合わせに対しては、色差を小さくするか、若しくは、色差を大きくする。

Description

本発明は、機能性分光フィルタの作成方法に関する。特に、本発明は、色覚異常者の色覚補正のため、逆に、色覚正常者に色覚異常者の不便さを体験させて色覚異常者に対する理解を深めるためのツール(道具)として好適な透過型の機能性分光フィルタの作成方法に係る発明である。
ここでは、透過型の機能性分光フィルタの場合を主として例に採り説明するが、反射型(鏡型)の機能性分光フィルタの場合でも同様である。
ここでいうツールとは、例えば、カメラ、フォトダイオード、モノクロカメラ等の撮像装置の前面或いは内部に配置するフィルタ、テレビ、モニター、各種光源等の光学系の前面或いは内部に配置するフィルタ、及び、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ等、特に限定されず、例えば、単にガラス板或いはプラスチック板等のみの場合も考えられる。
色覚異常者は、日本人男性の20人に1人(約5%)、白人男性の12人に1人(約8%)といわれている。色覚異常者は、色覚正常者に存在する3つの錐体視細胞のいずれかが異常であるか欠如しているため、色覚異常となる。赤錐体視細胞に障害のある場合を第1色覚異常、緑錐体視細胞に障害のある場合を第2色覚異常、青錐体視細胞に障害のある場合を第3色覚異常という。
これらのうち第3色覚異常は、数百万人に一人と頻度が低いため、通常、色覚異常とは、第1・第2色覚異常を意味する。
第1色覚異常者及び第2色覚異常者は、赤錐体と緑錐体との感度曲線が似ているため、色の見えや、弁別が困難となる色の組み合わせ(混合色)がよく似ている。第1色覚異常者及び第2色覚異常者は、赤と緑の組み合わせに対し、それらの違いを感ずることが困難とされている。
今日では、身の回りにある種々の印刷物・掲示物・電子画像等において、情報の強調などを目的として、配色に様々な工夫がなされている。しかし、色覚正常者にとっては、その配色は色の区別が容易であるため情報認識が容易であっても、色覚異常者にとっては、その配色は色の区別が困難であるため、情報の認識が困難であり、情報認識のバリア(障害)となることが多い。
この問題を解決するために、特許文献1・2・3では、色覚異常補正(矯正)眼鏡や色覚改善・変更手段等が提案されている。
これらの眼鏡や手段等の方法は、色覚異常者が色の差を感じにくかった特定の色の組み合わせに対し、透過色を補正することによって、それらの区別を改善するものである。
そして、いずれの方法も、三種類の錐体視細胞の最も感度の高い波長帯の透過率のみを制御するものであり、可視光線域の全ての波長帯に対して制御するものではない。
このため、色覚異常者が識別し難いとされていた色の組み合わせに対しては、一定の効果があるが、透過波長帯の制御が不完全であるため、別の色の組み合わせに対しては効果を得難くなることがある。
また、これらの方法では、透過光に色がついてしまい、例えば、全体的に赤みがかって見えてしまうことがある。この結果、日常生活上、違和感を覚え、疲労を感じることが多くなる。
そして昨今、世界的な規模でバリアフリーデザイン更にはユニバーサルデザインの要請が強くなりつつある。例えば、公共施設において、エレベータ・階段昇降機の設置、ノンステップバス、車椅子用のトイレ、障害者用車・電話ボックス等、種々の取り組みがなされている。
すなわち、ユニバーサルデザインの思想は、障害者(異常者)の障害を治療ないし改善するのではなく、正常者・障害者ともに区別なく生活できることを施設・建造物の設計時点から考慮することを目的とする。
このため、どのような状況が障害者にとって不便と感じるかを知ることが必要となる。
しかし、色覚異常者に対するユニバーサルデザイン(バリアフリー)対応は、他の障害者に対する対応に比して大幅に遅れているのが現状である。この大きな原因は、色覚異常者が感じている不便さを、色覚正常者が直感的に理解し難いことにあると言われている。
こうした問題に対し、色覚異常者に配慮した取り組みとして、近年、一部の自治体等で色覚異常者の感ずる色を色覚シミュレーションソフトウェアによって再現する方法が用いられている。すなわち、色覚正常者が色覚異常者の見ている色彩世界を擬似的に体験し、それを通じて、防災ハザードマップなどの公共印刷物等の配色設計に応用しようとするものである(特許文献4参照)。
こうしたソフトウェアによる画像処理方法は、パーソナルコンピュータ等に画像データを取り込み、専用の画像処理プログラムを使って色覚異常者が識別しにくい色の組み合わせを走査検出する必要がある。したがって、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置によって作成された画像、又は、必然的にデータ処理装置に取り込まれるデータ等に対しては有効である。
しかし、かかるソフトウェアによる画像処理方法は、既に設置されている掲示物・設備・公共表示物や、工業製品等に対しては、一旦、画像データをデータ処理装置に取り込んで走査検出する必要があるため、作業工程が多く、日常的ワークフローへ取り込むことが困難となっている。
また、かかるソフトウェアによる画像処理方法は、結局は、コンピュータディスプレイ上の画像を観察する方法に依らざるを得ないため、視野全体が色覚異常者の感ずる色彩世界とならず、不自由さを実感するには不十分といわざるを得ない。さらに大きな問題としては、予め対象を定め、その写真を撮影するなどの対応が必要となるため、リアルタイム性に欠け、日常生活における不自由を体感するには程遠いという問題がある。
特開平6−18819号公報 特開平9−313521号公報 特表平9−503402号公報 特開2005−167543号公報
本発明は、フィルタを介して受光体の色覚特性を所望パターンに変化させることができ、上記種々の問題点を解決でき、広範な用途に適用できる新規な構成の機能性分光フィルタの作成方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、上記機能性分光フィルタを適用した、簡便で専門的知識を要せず、直感的・体感的に色覚異常者の色識別の不便さを理解でき、しかも実際的な業務におけるワークフローに取り込むことのできる各種ツールを提供することにある。
本発明者らは、上記の問題点を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、受光体の感度波長帯域(眼であれば可視光領域、受光器等であればその感度範囲)の分光透過率を制御すればよいことに着眼して、下記構成の機能性分光フィルタの作成方法に想到した。
透明基材上に多層膜を備えた透過型の分光フィルタの作成方法であって、
該多層膜の分光透過率T(λ)を、分割された波長幅と各波長幅に対応する透過率からなるパラメータ、又は、任意波長での透過率を関数モデルで表したときの関数パラメータp1,p2,・・・,pnを用いて、
T(λ)=T(p1,p2,・・・,pn
と記述し、
指定された複数色からなる対象色群、のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の、前記多層膜を介した、受光体の感度波長帯域における感度特性差(すなわち、色差)、
からなる感度特性差パターンが、所望の感度特性差パターンになるように、前記パラメータp1,p2,・・・,pnを最適化し、
該最適化されたパラメータp1,p2,・・・,pnを用いて記述される最適T(λ)に基づいて、前記透過型の分光フィルタを作成することを特徴とする。
多層透過膜の分光透過率T(λ)を少数(通常、20以下)のパラメータで記述することにより、所望の感度特性パターンを発揮する多層透過膜の分光透過率T(λ)(最適T(λ))の設計が容易となる。
上記最適T(λ)は、下記のようなアルゴリズムに従って、求めることが望ましい。
被観察物における前記対象色群の色数がNのとき、該対象色群の各色の分光反射率Ri(λ)(i=1〜N)と、照明光の分光分布E(λ)とを設定した後、下記性能評価値Aが最大になるまで、下記(0)、(I)、(II)、(III)を、この順に繰り返し、前記性能評価値Aが最大になったときのT(λ)を前記最適T(λ)とする。
(0)前記分光透過率T(λ)を、1回目は前記各パラメータに初期値を設定することにより初期設定し、2回目以降は最適化法に基づいて前記各パラメータを再設定することにより設定する。
(I)前記対象色群の各色の、前記分光透過率T(λ)を有する機能性分光フィルタを通して観察したときの感度特性(すなわち、色感覚)
i=f1(T(λ)Ri(λ)E(λ))
を計算する。
(II)前記感度特性から、前記対象色群のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の感度特性差
ΔEi,j=f2(Ci,Cj
を計算する。
(III)前記分光透過率T(λ)のときの性能評価値Aを、Aが最大のときにT(λ)が最適T(λ)となるように重み係数Wi,jが設定された下記数式に基づいて計算する。
Figure 2007094338
そして、上記において、色差の計算に色差式CIE94を用いるとともに、最適化法としてシミュレーティドアニ−リング法を用いることが望ましい。
所望の感度特性パターンとしては、例えば、対象色群(すなわち、指定された複数色からなる色群)のうちの2色を組み合わせた組み合わせにおける色差(すなわち、組み合わされた2色間の色差)が、特定の組み合わせにおいては小さくなるとともに、他の特定の組み合わせにおいては大きくなるようなものがある。
かかるパターンとして、より具体的には、対象色群を化粧品を塗った部分の複数色と塗らない部分の複数色からなるものとして、化粧品を塗った部分の色同士、及び、化粧品を塗らない部分の色同士では、それぞれ、色差が小さくなり、化粧品を塗った部分の色と化粧品を塗らない部分の色とでは、色差が大きくなるようなものがあり、このパターンによれば、化粧品の塗りむらの見分けが容易になる。
また、所望の感度特性パターンとしては、対象色群のうちの2色を組み合わせた各組み合わせに対する色覚異常者の感じる色差が、大きくなるようにするものもあり、このパターンによれば、色覚異常者が対象色群の各色を見分けるときの見分けが容易になる。
また、対象色群のうちの2色を組み合わせた各組み合わせに対する色覚異常者の感じる色差を、所望の感度特性パターンとして用いることにより、色覚正常者の対象色群の各色に対する見分けの難易が、色覚異常者のそれに近づくようにして、色覚正常者の対象色群の各色の見分けが困難となるようにすることもできる。
上記透過型の機能性分光フィルタの作成方法は、下記構成の反射型(鏡型)の分光フィルタの作成方法にも適用することができる。
不透明基材(透明基材の裏面側に光遮断層を備えたものを含む。)の表面に、又は、透明基材と該透明基材の裏面側に設けられた光遮断層との間に、多層膜を備えた反射型(すなわち、鏡型)の分光フィルタの作成方法であって、
該多層膜の分光反射率M(λ)を、分割された波長幅と各波長幅に対応する反射率からなるパラメータ、又は、任意波長での反射率を関数モデルで表したときの関数パラメータp1,p2,・・・,pnを用いて、
M(λ)=M(p1,p2,・・・,pn
と記述し、
指定された複数色からなる対象色群、のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の、前記多層膜の反射を介した、受光体の感度波長帯域における感度特性差(すなわち、色差)、
からなる感度特性差パターンが、所望の感度特性差パターンになるように、前記パラメータp1,p2,・・・,pnを最適化し、
該最適化されたパラメータp1,p2,・・・,pnを用いて記述される最適M(λ)に基づいて、前記反射型の分光フィルタを作成することを特徴とする。
上記最適M(λ)は、下記のようなアルゴリズムに従って、求めることが望ましい。
被観察物における前記対象色群の色数がNであるとき、該対象色群の分光反射率Ri(λ)(i=1〜N)と、照明光の分光分布E(λ)とを設定した後、下記性能評価値Aが最大になるまで、下記(0)、(I)、(II)、(III)を、この順に繰り返し、前記性能評価値Aが最大になったときのM(λ)を前記最適M(λ)とする。
(0)前記分光反射率M(λ)を、1回目は前記各パラメータに初期値を設定することにより初期設定し、2回目以降は最適化法に基づいて前記各パラメータを再設定することにより設定する。
(I)前記対象色群の各色の、前記分光反射率M(λ)を有する機能性分光フィルタの反射を介して観察したときの感度特性(すなわち、色感覚)
i=f1(M(λ)Ri(λ)E(λ))
を計算する。
(II)前記感度特性から、前記対象色群のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の感度特性差
ΔEi,j=f2(Ci,Cj
を計算する。
(III)前記分光反射率M(λ)のときの性能評価値Aを、Aが最大のときにM(λ)が最適M(λ)となるように重み係数Wi,jが設定された下記数式に基づいて計算する。
Figure 2007094338
上記方法で作成した透過型及び反射型の機能性分光フィルタは加工して、1)眼鏡又はコンタクトレンズ又は眼内レンズとして具現化させて眼用光学製品としたり(但し、透過型のみ)、2)カメラ、フォトダイオード等の撮像装置の受光体部に組み込んで光学撮影装置としたり、さらには、3)ハロゲンランプ、蛍光灯、標準光源等の発光部に組み込んで光源装置としたりすることができる。当然、これらを光学撮影装置と光源装置とを適宜組み合わせることも可能である。
本発明における透過型の機能性分光フィルタの分光透過率を求めるためのアルゴリズムを示すフローシートである。 実施例1で用いた分光フィルタのモデル図である。 実施例1において最適化により得られた分光透過率(実線)と膜設計シミュレーションにより得られた分光透過率(点線)を示すグラフ図である。 D15色票の2色の組み合わせに対する色差を擬似表示したものである。 パネルD15テストのシミュレーション結果図である。 実施例2において最適化により得られた分光透過率(実線)と膜生成シミュレーションにより得られた分光透過率(点線)を示すグラフである。 実施例3において最適化により得られた分光透過率(実線)と膜生成シミュレーションにより得られた分光透過率(点線)を示すグラフである。 実施例4において最適化により得られた分光透過率(実線)と膜生成シミュレーションにより得られた分光透過率(点線)を示すグラフである。 本発明における反射型の機能性分光フィルタの分光反射率を求めるためのアルゴリズムを示すフローシートである。 反射型の分光フィルタの各例を示すモデル断面図である。 実施例5において最適化により得られた分光反射率(実線)と膜生成シミュレーションにより得られた分光反射率(点線)を示すグラフである。
符号の説明
10、10A 不透明基材
12 多層膜
14 ガラス基材
16 光遮断膜(光遮断層)
以下、本発明の機能性分光フィルタ(以下、単に「分光フィルタ」という。)の作成方法に係る実施形態について説明する。
本発明に係る透過型及び反射型の機能性分光フィルタは、各種ツールとして、使用可能である。
ここでツールとは、例えば、カメラ、フォトダイオード、モノクロカメラ等の撮像装置の前面若しくは背面や内部の受光部(受光体)に配置する分光フィルタ、又は、テレビ、モニター、各種光源等の光学系の前面若しくは背面や内部の発光部に配置する分光フィルタ、さらには、透過型の分光フィルタの場合は、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の眼用製品など、特に限定されず、例えば、単にガラス板又はプラスチック板等のみの場合も含む。
本発明に係る分光フィルタは、透明基材又は不透明基材(透明基材の裏面側に光遮断層を備えたものを含む。)の上面に、若しくは、透明基材と光遮断層との間に、多層膜(多層薄膜)を備えたものを前提とする。
ここで、「透明基材」の「透明」とは、本発明の目的を達成できる光透過率を有する状態であればよく、無色透明ばかりでなく、有色透明、さらには、半透明も含む。
また、「透明基材」としては、例えば、下記無機ガラス(i)、有機ガラス(ii)を使用できる。
(i)ソーダ石灰ガラス、ほうけい酸ガラス、クラウンガラス、フリントガラス、バリウムクラウンガラス、バリウムフリントガラス、ランタンクラウンガラス、ランタンフリントガラス、等。
(ii)アクリル系、ポリカーボネート系、ポリスルフォン系、ポリチオウレタン系、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート系、ポリエステル系、セルロース系、等。
また、不透明基材としては、金属基材、プラスチック基材、セラミック基材、紙基材等、透過光を遮断でき、且つ、多層膜を形成可能な表面を備えるものであれば、特に限定されない。なお、このときの基材色は特に限定されない。多層膜の設計により基材色の色の影響をなくすことができるためである。また、後述の実施例の如く、ガラス基材の裏面を摺りガラス状とするとともに遮光膜を形成したものを不透明基材として該不透明基材の表面に多層膜を形成したり、透明基材の裏面側に遮光膜を設けて、該遮光膜と透明基材の間に、即ち、遮光膜の上に、多層膜を形成したりすることもできる。
上記多層膜を形成する薄膜材質の組合せとしては、多層膜とした場合、光学的な透過率又は反射率を低減させたり増大させたりすることができる屈折率を備えたものなら特に限定されず、例えば、下記のような(i)無機酸化物(金属酸化物)、(ii)無機ハロゲン化物(金属ハロゲン化物)、(iii)単体金属、を使用できる。
(i)チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、アンチモン、イットリウム、インジウム、錫、ランタン、マグネシウム、アルミニウム、ハフニウム、ネオジウム、珪素、亜鉛、鉄、等の酸化物又はそれらを複数含む複合酸化物。
(ii)マグネシウム、ナトリウム、ランタン、アルミニウム、リチウム等のハロゲン化物。
(iii)珪素、ゲルマニウム、金、銀、銅、ニッケル、白金、鉄等の単体又はそれらを複数含む混合体(合金、焼結体を含む。)。
上記多層膜は、汎用の薄膜形成技術、例えば、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、等の乾式めっき(PVD)、又は湿式めっき(CVD)により形成できる。
そして、上記多層膜の分光透過率T(λ)を、分割された波長幅と各波長幅に対応する透過率からなるパラメータ、又は、任意波長での透過率を関数モデルで表したときの関数パラメータp1,p2,・・・,pnを用いて、
T(λ)=T(p1,p2,・・・,pn
と記述し、
指定された複数色からなる対象色群、のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の、前記多層膜を介した、受光体の感度波長帯域における感度特性差(すなわち、色差)、
からなる感度特性差パターンが、所望の感度特性差パターンになるように、前記パラメータp1,p2,・・・,pnを最適化し、
該最適化されたパラメータp1,p2,・・・,pnを用いて記述される最適T(λ)に基づいて、前記透過型の分光フィルタを作成する。
ここで、受光体とは、人の眼では、網膜視細胞であり、撮影機器においては光検知部である。
また、感度波長帯域とは、人の目では、可視光線波長帯域(可視部)(約380〜780nm)であるが、撮影機器等においては、可視部より波長の短い紫外線部(下限:約1nm)、及び、可視部より波長の長い赤外線部(上限:約1mm)にも及ぶ。
そして、本発明に係る機能性分光フィルタは、ツールを通して(すなわち、多層膜を介して)見ることによって、任意に指定された複数色からなる対象色群のうちの2色を組み合わせた組み合わせについて、各組み合わせにおける色差をあらかじめ公知の色差値に近づけるようにすること(教師データありの場合に相当)、又は、特定の組み合わせにおける色差を、小さくし、若しくは、大きくすること(教師データなしの場合に相当)を特徴とする。
つぎに、本発明における最適T(λ)を求めるアルゴリズム(計算手順)を図1に示すフローシートに従って説明をする。
まず、被観察物に照射される照明光、例えば太陽光・蛍光灯光・白熱灯光、の波長λにおける分光分布強度をE(λ)とし、被観察物の波長λにおける分光反射率をR(λ)とする。そして、被観察部位の色に対応して複数の色を指定する。ここで、指定する色の数N(Nは2以上の自然数)は、2〜2000の範囲から、設計目的(要求精度)に応じて適宜選定できるが、通常、汎用パソコンで計算可能な範囲で、精度と計算速度を考慮すれば、例えば、10〜20が望ましい。
よって、被観察物から与えられる反射光の分光分布強度は、Ri(λ)E(λ) で表される。ここで、Ri(λ)は、被観察物の波長λにおける色信号(色番号)i(i=1〜N;iは自然数)の色の部位の分光反射率である。
次に、分光フィルタの分光透過率T(λ)を、透過率及び波長幅からなる少数のパラメータ{p1,p2,・・・pn}で記述する(図2参照)。
ここで、パラメータ数nは、1以上(n=1は透過率のみ)で、設計目的(要求精度)に応じて適宜選定する。なお、パラメータ数の上限は、特に限定されず、例えば、感光波長帯域を可視光部(380〜780nm)とし波長幅(階級幅)を1nmとして、階段関数(図2参照)を用いれば、パラメータ数799(波長幅:399、透過率:400)のような三桁以上も可能であるが、最適T(λ)を得るのに膨大な計算量を必要とし、実際的ではない。パラメータ数は、上記と同様、汎用パソコンで計算可能なパラメータ数とし、精度・計算速度を考慮すれば、例えば、n=4〜20、さらには、6〜15が望ましい。
すると、被観察物を分光透過率T(λ) を有する分光フィルタを通して観察したときの色信号(色番号)iの部位における色分光分布は、T(λ)Ri(λ)E(λ)となる。
なお、分光透過率T(λ)は、実施例1では、図2に示すような階段関数を用いて計算したが、実施例2〜4の如くスプライン関数、さらには、シグモイド関数を用いて計算することも可能である。ここで、シグモイド関数とは、連続モデルを示す関数で、例えば、パラメータ数をp1,p2,p3の3個とした場合、f(x)=p3/[1+exp(p1・x+p2)]で示される。
色番号iの色における色分光分布T(λ)Ri(λ)E(λ)を、任意の検出器、例えば、眼、カメラ、フォトダイオード等の任意の受光器(受光体)を通したときに得られる感度特性(すなわち、色番号iの色に対する感度特性)を、Ciとすると、
i=f1(T(λ)Ri(λ)E(λ))
となる。
観察者が人(すなわち、受光体が眼)の場合、この感度特性Ciを計算するために使用する関数f1を、公知の色を表す関数を用いて表現することができる。例えば、CIE94表色系、JIS Z 8701に定義されているXYZ表色系、JIS Z 8729に定義されているL*a*b*表色系及びL*u*v*表色系、或いは、Yxy、Yu'v'、RGB、CMYK、HVC等で表される表色系を用いることができる。
また、カメラ、フォトダイオード等の受光器の場合には、この感度特性Ciを計算するために、電流値、温度、光量等の値を使用できるが、これらに限定されずに各種各様のものを使用することができる。
色番号i、jの色に対する感度特性Ci、Cjの全ての組み合わせに対して、次式により色差ΔEi,jを計算する。
Figure 2007094338
観察者が人の場合には、色差を計算するために使用する関数fを、公知の色差を表す関数を用いて表現することができ、例えば、CIE(国際照明委員会)が推奨するCIE94色差式(後述の数式8)を精度の見地から使用するが、CIE1976色差式(JIS Z 8730)でもよい。
また、カメラ、フォトダイオード等の受光器の場合には、出力である電圧や電流の差、差の二乗値、あるいは差の絶対値を用いることができる。
以下、教師データ(目標値)ありの場合(i)と教師データなしの場合(ii)に分けて説明する。
(i)教師データありの場合
フィルタを通して見たときの色差値ΔEi,jが、公知の色差値(目標値)ΔEt i,jにどの程度近いかをあらわす評価値ei,j
Figure 2007094338
で表す。
関数f3はこれら2つの色差値の差の二乗、差の絶対値、又は、相対誤差値、に負符号を付けたもの、あるいは相関値を用いることができるが、この2つの色差値が似通っていれば評価値が大きくなるような関数であれば、特に制限されない。
評価値ei,jに対し、任意の重み係数Wi,j を乗じて合計した、
Figure 2007094338
で表される値を、分光フィルタの性能を表す性能評価値Aとする。
重み係数は、例えば、色覚補正フィルタの場合は、色覚異常者の区別し難い色の組み合わせ程、ウエイト(重み)を大きくすることにより、区別し難かった色の組み合わせを重視した最適T(λ)の設計が容易となる。すなわち、数式5において、特に再現精度を重視する色の組み合わせに対してはWi,j の値を大きくすればよい。
(ii)教師データなしの場合
教師データなしの場合には、評価値ei,jを、
i,j=f3−1(ΔEi,j
で表す。ΔEi,jは、フィルタを通して見たときの色差値である。関数f3−1は、例えば色差値の二乗、色差値の絶対値、色差値と公知の色差値との相対値を用いる等、色差値ΔEi,jが大きければ評価値ei,jが大きくなるような関数であれば、特に制限されない。
教師データなしの場合の性能評価値Aは、上記数式5で表される値とする。数式5において、色の違いを小さくしたい色の組み合わせに対してWi,j<0とし、色の違いをより大きくしたい組み合わせに対してはWi,j >0とすればよい。
教師データなしの場合で指定色を3色(N=3)とした例について説明する。
各色番号1、2、3の感度特性C1、C2、C3の感度特性差はΔE1,2、ΔE2,3、ΔE1,3で表される。ここでは、色番号1と2、2と3とはなるべく違う色に見えるように、フィルタを通して観察したときの各感度特性C1とC2、C2とC3との差、すなわち、ΔE1,2、ΔE2,3は大きくし、色番号3と1とはなるべく近い色に見えるように、C3とC1との感度特性差ΔE1,3を小さくするものとする。
各感度特性をCIE1976に規定されるL*a*b*表色系で表すと、C1=(L1*,a1*,b1*)、C2=(L2*,a2*,b2*)、C3=(L3*,a3*,b3*)となる。これらの感度特性を用いて、各色番号間の評価値e1,2、e2,3、e1,3を、一般的な色差式を用いて計算すると、
1,2=[(L2 *−L1 *2+(a2 *−a1 *2+(b2 *−b1 *2]1/2
2,3 =[(L3 *−L2 *2+(a3 *−a2 *2+(b3 *−b2 *2]1/2
1,3=[(L3 *−L1 *2+(a3 *−a1 *2+(b3 *−b1 *2]1/2
となる。
また、フィルタの性能を表す性能評価値Aは、下記式で表される。
A=W1,2・e1,2+W2,3・e2,3+W1,3・e1,3
ここで、色の違いを小さくしたい色の組み合わせに対してWi,j<0とし、色の違いをより大きくしたい組み合わせに対してはWi,j >0とすればよいので、W1,2=+1、W2,3=+1、W1,3=−1とすれば、
A=e1,2+e2,3−e1,3
となり、e1,2、e2,3が増大するとAは増大し、e1,3が減少するとAは増大する。したがって、Aが最大値をとるとき、e1,2、e2,3は大きく、e1,3は小さくなっており、すなわち、ΔE1,2、ΔE2,3は大きく、ΔE1,3は小さくなっている。
数式5で定義された性能評価値Aは、分光フィルタの分光透過率特性を表すT(λ)のパラメータp1,p2,・・・,pnの関数として記述される。よって、分光フィルタの透過率を設計するための制約条件0≦T(λ)≦1の下で、性能評価値Aを最大とするパラメータp1,p2,・・・,pnを求めるために、Aを以下のような数式6で記述する。
Figure 2007094338
制約条件としては、0≦T(λ)≦1以外にも、例えば「平均分光透過率を50%以上」或いは「視感度透過率を30%以上」等の条件を付与することが可能であり、特に限定されない。
ここで、上記性能評価値Aを最大にするパラメータp1,p2,・・・,pnを求めるには、各pi(i=1〜n)を微小変化させて、可及的にAが大きくなるような各pを求める必要がある。例えば、波長幅の変化量が5nm以下、透過率の変化量が1%以下であるような微小変化を、多数回行い、可及的にAが大きくなるような各pを求める。性能評価値Aが最大となる分光透過率T(λ)(すなわち、最適T(λ))を求める最適化法は、特に限定されない。例えば、パラメータを確率的最適化法の一種であるシミュレーティッドアニーリング法(以下、「SA法」という。)(参考文献(3))を用いて求めることができる。
SA法は、最適化の一手法であって、アニ−リング(焼き鈍し)工程において、最適な分子配置もつように待つ冷却制御を行うために開発された焼き鈍し法を、計算機上に模擬したものである。焼き鈍し法とは、高温で溶融状態にある物質を徐々に冷却し、欠陥の少ない結晶などの低エネルギーの状態を得る方法である。
SA法の場合(参考文献(3))、最適化の設定回数は、100回〜10万回の範囲から設計目的(要求精度)に応じて適宜選定する。また、最適化終了条件としては、「最適化による性能評価値Aの増分がある一定変化量未満となったときに、最大値と判定する。」や「最適化による性能評価値Aがある設定値以上となったときに、最大値と判定する。」等を挙げることができる。
上記透過型の分光フィルタの場合の説明において、「透過率」を「反射率」に、「T(λ)」を「M(λ)」にそれぞれ読み換えれば、反射型の分光フィルタの場合の説明となる。
図9は、反射型分光フィルタにおける分光反射率を求めるためのアルゴリズムを示すフローシートであり、透過型の分光フィルタにおける分光透過率を求めるためのアルゴリズムを示すフローシートである図1に対応するものである。
本発明に係る機能性分光フィルタによれば、色覚正常者あるいは受光器が、色覚異常者の色覚特性を体験することができるのみならず、上記設計手法のパラメータと関数を適宜設定することによって、観察者の色覚特性を目的に合わせて制御することができる。このため、本発明に係る機能性分光フィルタは、下記のような種々のツール(手段)への適用が期待できる。
1)色覚異常対応ツール(このツールには、主として透過型の分光フィルタを適用する。):
色覚異常者に装着することによって、元々識別しにくかった配色に対して色の見分けを容易にすることのできるツール;色覚正常者が色覚異常者の不便さを理解でき、更に、配色を色覚異常者に配慮したものへ変更する行程でのチェック機能を果たすツール;高齢者にみられる水晶体黄変者が識別しにくい配色に対して色の見分けを容易にすることのできるツール;正常者が水晶体黄変者の不便さを理解することのできるツールなど。
2)化粧分野対応ツール:
肌に化粧を塗るに際して分光特性の違いにより簡易的に塗りムラをチェックするためのツール;化粧を塗った後に、拭いたり汗を流したりした際の化粧崩れをチックするためのツール;化粧を落とした後の化粧残りをチェックするためのツール;洗顔・美顔・美白などをした後の肌の状態をチェックするためのツール;肌状態及び化粧した後の肌の状態を美しく見せるためのツール等。
3)医療分野対応ツール:
(i)尿或いは排便に混ざっている血液を検出するに際して分光特性の違いにより簡易的に検査するためのツール、
(ii)健康度合いを評価するツール、医療用内視鏡で身体内部を検査するに際して、正常な組織と異常な組織とを色相のずれにより簡易的に区別することのできるツール、
(iii)初期段階の虫歯や歯垢の付着や磨き残しの部位を検査するに際して、色相のずれにより簡易的に区別することのできるツール、患者の歯の色に合わせて義歯を選ぶに際して選択しやすくすることのできるツール等、
(iV)目の充血やドライアイ、あるいは、異物混入の状態を検査するに際して、色相の違いを誇張したり又は色相をずらしたりすることにより簡易的に判別することのできるツール等。
4)農業分野対応ツール:
(i)果樹・野菜等の表面色或いは内部を透過した光で簡易的に熟度を判断することができるツール、
(ii)大気や土壌などの環境から影響を受けている植物のストレスを、表面色或いは内部を透過した光で簡易的に検知することのできるツール等、
5)セキュリティ分野対応ツール:
計器類或いはパーソナルコンピュータ等の表示部においてツールを通してのみ表示内容が認識でき、第3者には秘匿可能な機能を有するシステムを実現することのできるツール等。
6)工業分野対応ツール:
例えば自動車などの塗装むらを検出するに際して、簡易的に塗装むらを検出することのできるツール、食品工場などにおいて食品に混入した異物を検出・除去するに際して、異物を検出し易くするツール等
本実施例は、色覚異常者の色識別における不便さを理解でき、しかも実際的な業務におけるワークフローに取り込むことのできるフィルタの作成方法に係る実施例である。
色覚検査で一般的に用いられているD15色票の16色(N=16)を被観察対象色(指定色、すなわち、対象色群)とし、照明光は標準光源であるD65を用いた。
分光フィルタのモデルは、図2に示すように可視光帯域(λ=380〜780nm)を5つの区間に分割し、それぞれの波長幅(width)と、各波長幅に対応する透過率(height)とからなる9つ(width:4+height:5)のパラメータからなる階段関数を用いて、T(λ)=T(p1,p2,・・・,p9)と記述する。これらのパラメータ値は0≦T(λ)≦1を満たすような範囲に制約される。なお、p1〜pは、それぞれwidth1〜4の値であり、p〜pは、それぞれheight1〜5の値である。
次に、色の見えを表す関数としてCIE1976L*a*b*表色系を用い、各色をCi=( Li *,ai *,bi *) [i=1〜16]として表し、色覚異常者の感ずる色差を計算するために、D65標準光源における色群に対して、色覚異常者の色の見えを公知文献[参考文献(1)]による手法を用いて求める。
色差の計算にはCIELAB色空間の不均一性を考慮した色差式であるΔE*94(CIE94)を用いた[参考文献(2)]。例えば、色差
Figure 2007094338
は、次のように定義される。
Figure 2007094338
ここで、ΔL*は明度差、ΔC* abはクロマ差、ΔH* abは色相角差を意味し、SL(明度差補正係数)=1、SC(クロマ差補正係数)=1+0.045C* ab、SH(色相角補正係数)=1+0.015C* ab、 kL=kC=kH=1:補助補正係数、であり、クロマは、C* ab=(C* ab,i* ab,j)1/2で表される。
ΔC* abを求めるには、まず、C* ab,i、C* ab,jを、それぞれ
Figure 2007094338
として求め、これらの差として次式により与える。
Figure 2007094338
また、ΔH* abはΔE* ab
Figure 2007094338
として求めた後、次式により求める。ここで、
ΔL*=|Li *−Lj *|
Δa*=|ai *−aj *|
Δb*=|bi *−bj *|
である。
Figure 2007094338
色覚異常者が感じる色差は、第1色覚異常者と第2色覚異常者のそれぞれについて計算することが可能であるが、本実施例では、色覚異常者が見分け難い色の組み合わせを、正常者が理解することを目的とするため、第1色覚異常者と第2色覚異常者の色差を比較し、小さい方を色覚異常者の色差として用いることとした。すなわち、第1、第2色覚異常者の色差をそれぞれΔEDp i,j、ΔEDd i,jとするとき、次式によりΔED i,jを求めた。なお、ΔEDp i,j=ΔEDd i,jのときは、当然、ΔEDp i,j=ΔEDd i,j=ΔED i,jである。
Figure 2007094338
ここで、数式5を使用して、数式13で導き出された色差ΔED i,jと、色覚正常者が分光特性T(λ)であるフィルタを通して見たときの色差ΔEF i,jとが、どの程度近づいているかによって分光透過率T(λ)の評価を行う。このとき、それぞれの色の組み合わせに対する重み係数Wi,jは、色覚異常者の感じる色差が小さく、区別が難しい色の組み合わせほど再現精度を重視する必要があることから、
Figure 2007094338
とした。ここで、εは計算の発散(ゼロ割)を防ぐための正の小数であり、ここでは、本手法を実装した計算機のマシンイプシロン(ε=2.2204e-16)とした。また、数式4の評価値ei,jを、
Figure 2007094338
とした。よって、性能評価値Aは、ΔED i,jとΔEF i,jの相対誤差値の和により、下記数式16のように表せる。
Figure 2007094338
本実施例では、図1に示す計算手順(アルゴリズム)において、最適化法として、SA法を用いた。
なお、初期値は、p1,p2,p3,p4をいずれも80nm、p5,p6,p7,p8,p9をいずれも50%とし、微小変化量は、波長幅の変化量を5nm、透過率の変化量を1%とした。
そして、最適化回数100回毎にAの増加分を計算し、Aの増加率が1%未満となったときに、そのうちのAの最も大きな値を最大値とした(最適化回数:10000回)。
得られた分光透過率(最適T(λ))を、図3のグラフ中、実線で示す。併せて、SiO2とTiO2を積層した膜生成シミュレーションを行い、理論設計に近似した特性が物理的に実現可能であることを確認した。この膜生成シミュレーションで得られた特性を、図3のグラフ中、点線で示す。
このときの膜構成はSiO2/TiO2交互層にて計31層であった。その後、実際に真空蒸着装置にて成膜を行い、膜生成シミュレーションとほぼ近似の特性が得られることを確認している。なお、当該膜構成は、所要の分光透過率を得るための公知の膜設計ソフト(「Film Star」FTG Software Association社、USA)を使用して求めたもので、表1に示す。
Figure 2007094338
得られた分光透過率は、短波長域および中波長域の2つの帯域を透過させる特性となっている。これは、第1・第2色覚異常者の赤と緑との組合せに対する色の見分け能力が低いことから、フィルタモデルを規定する際に予想した結果と一致している。
図4は、D15色票の全ての2色の組み合わせに対する色差を、疑似表示したものである。縦軸、横軸は色票番号(色番号)i,j を示し、色覚正常者がフィルタ無しで感じる色差ΔEi,jを(a)、色覚異常者がフィルタ無しで感じる色差ΔED i,jを(b)、色覚正常者がフィルタを装着した場合に感じる色差ΔEF i,jを(c)に示している。これらの各図(a)〜(c) における網掛け表示は、それぞれ右のダイヤグラムにおける色差(ΔE)に対応し、上の網掛け表示程、色の見分け能力があるということを示している。
ここで、(a)と(b)を比較すると、色覚異常者は、特定の色の組み合わせに対して感じる色差が、色覚正常者と比較し小さくなっていることが分かる。(c)に示した分光フィルタ装着時の色差はこの特徴をよく捉えており、設計した分光フィルタが所望の機能を有していることが分かる。
図5は、パネルD15テストのシミュレーション結果である。実際の検査では、D65光源下で、パイロット色(P)から順に1〜15の色が変化するように、被験者に色を並べさせ、並べた結果を数字順に線で結んで記録する。
色覚正常者であれば1〜15までの色を数字順に並べることが試験結果より確認されている。図5は、色覚正常者が分光フィルタを装着して試験を行った結果である。このとき、Protan(第1色覚異常者)、Deutan(第2色覚異常者)、Tritan(第3色覚異常者)は、それぞれ、線を結んだ際の線の角度が図中に示す方向となることが知られている(参考文献(4))。
図5の試験結果では、色覚正常者が分光フィルタを装着した場合の色覚特性が、第1色覚異常者と第2色覚異常者の中間的な特性となっていることが、確認できる。
本実施例は、色覚異常者が装着することで、指定した色の見分けを容易にすることのできる機能性分光フィルタの作成方法に係る実施例である。
実施例1と同様に、D15色票の16色を被観察対象色(すなわち、対象色群)とし、標準光源D65を用いて、パラメータ数16のスプライン関数モデルを使用し、色覚異常者の色差ΔED i,jを求めた。
なお、分光フィルタの分光透過率モデルとして用いたスプライン関数モデルは、以下の数式17で表されるものである。
Figure 2007094338
ここで、可視光波長領域380〜780nmが解析対象であり、λkは350〜800nmの間で30nm間隔に設定し、ω=6とした。
同様にそれぞれの色の組み合わせに対する重み係数Wi,j を、色覚異常者が区別し難い色の組合せ程、重みが大きくなるように、
i,j =1/(ΔED i,j+ε)とした。
本実施例は教師データなしの場合であるので、評価値ei,jは、色覚異常者がフィルタを通して見たときの色差をΔEF i,jとし、
Figure 2007094338
とした。よって、性能評価値は、
Figure 2007094338
となる。ここで、性能評価値Aの最大値を、実施例1同様にSA法を用いて求めた(最適化回数:10000回)。
なお、パラメータp1,p2,・・・,p16の初期値を、いずれも0.75とした。
得られた最適T(λ)を、図6のグラフ中、実線で示す。併せて、SiO2とTiO2とを積層した膜生成シミュレーションを行い、理論設計に近似した特性が物理的に実現可能であることを確認した。この膜生成シミュレーションで得られた特性を、図6のグラフ中、点線で示す。
このときの膜構成はSiO2/TiO2交互層にて計23層であった。その後、実際に真空蒸着装置にて成膜を行い、膜生成シミュレーションとほぼ近似の特性が得られることを確認している。
なお、当該膜構成は、実施例1と同様にして求めたもので、表1に示す。
本実施例は、特定の色群の違いを強調する分光フィルタの作成方法に係る実施例である。
あらかじめ指定した色の組み合わせに対して色差を増加させる、あるいは減少させる機能性分光フィルタを設計する具体例として、天然植物の葉の緑と人工の葉の緑を見分けるための分光フィルタを作成する。
まず、天然植物の葉の緑をA群、人工の葉の緑をB群とし、A群とB群とからそれぞれ任意の3色を選んだ計6色を被観察対象色(すなわち、対象色群)とし、それぞれの反射光の分光分布を用いて、パラメータ数23のスプライン関数モデルを使用した。
本実施例は教師データなしの場合であるので、評価値ei,jは、フィルタを通して見たときの色差をΔEF i,j とし、
Figure 2007094338
とした。よって、性能評価値Aは次式のようになる。
Figure 2007094338
ここで、Wi,jは、同じ色群の色に対しては色差を小さくし、異なる色群の色に対しては色差を大きくするために、すなわち、A群の色同士、B群の色同士では、それぞれ、色差を小さくし、A群の色とB群の色とでは色差を大きくするために、
Figure 2007094338
とした。
なお、分光フィルタの分光透過率モデルとして用いたスプライン関数モデルは数式23で表されるものである。
Figure 2007094338
ここで、380〜780nmが解析対象であり、λkは360〜800nmの間で20nm間隔で設定し、ω=4とした。
そして、数式21の性能評価値Aが最大値になるまで、最適化を繰り返し、最適T(λ)を求めた(最適化回数:15000回)。得られた最適T(λ)を、図7のグラフ中、実線で示す。
なお、パラメータp1,p2,・・・,p23の初期値は、いずれも0.75とした。
併せて、SiO2とTiO2を積層した膜生成シミュレーションを行い、理論設計に近似した特性が物理的に実現可能であることを確認した。この膜生成シミュレーションで得られた特性を、図7のグラフ中、点線で示す。このときの膜構成はSiO2/TiO2交互層にて計26層であった。
なお、当該膜構成は、実施例1と同様にして求めたもので、表2に示す。
Figure 2007094338
本実施例は、特定の色群の違いを強調する分光フィルタの作成方法、具体的には、化粧品を肌に塗った際に、肌全面に均一に塗布できているかを見分けるための分光フィルタの作成方法に係る実施例である。
まず、顔の素肌の色をA群、顔に市販の化粧品(KOSE社製エスプリーク ビューティフルフィニッシュOC-410)を塗った色をB群とし、標準光源D65を用いて、素肌の場合と上記化粧品を塗った場合とで、それぞれ、任意の顔の部位3箇所の測色を行い、計6色を被観察対象色(すなわち、対象色群)とした。そして、それぞれの反射光の分光分布を用いて、パラメータ数16のスプライン関数モデルを使用した。
ここで、評価値ei,jは、実施例3と同様に、フィルタを通して見たときの色差をΔEF i,jとし、
Figure 2007094338
とした。よって、性能評価値Aは、
Figure 2007094338
となる。
ここで、重み係数Wi,jは、同じ色群の色に対しては色差を小さくし、異なる色群の色に対しては色差を大きくするため、すなわち、A群の色同士、B群の色同士では、それぞれ、色差を小さくし、A群の色とB群の色とでは色差を大きくするために、
Figure 2007094338
とした。
なお、分光フィルタの分光透過率モデルとして用いたスプライン関数モデルは実施例2のときと同式で表され、数式27で表されるものである。
Figure 2007094338
ここで、380〜780nmが解析対象であり、λkは350〜800nmの間で30nm間隔に設定し、ω=6とした。そして、数式25の性能評価値Aが最大値になるまで、最適化を繰り返し、最適T(λ)を求めた(最適化回数:100000回)。得られた最適T(λ)を、図8のグラフ中、実線で示す。
なお、パラメータp1、p2、・・・、p16の初期値は、いずれも0.75とした。併せて、SiO2とTiO2を積層し、膜生成シミュレーションを行い、理論設計に近似した特性が物理的に実現可能であることを確認した。この膜生成シミュレーションで得られた特性を、図8のグラフ中、点線で示す。このときの膜構成は、SiO2/TiO2交互層にて計19層であった。なお、当該膜構成は、実施例1と同様にして求めたもので、表3に示す。
Figure 2007094338
また、表4に、フィルタ無しの場合とフィルタを通して見た場合の各々について、顔の素肌と化粧をした後の色差を、数式8を用いて計算した結果を示す。
表4に示す結果から、フィルタ有りの場合の色差が、フィルタ無しの場合の色差に比較して、約40%大きくなっており、フィルタを通して見ると化粧ムラが見分けやすくなっていることが分かる。
Figure 2007094338
本実施例は、特定の色群の違いを強調する分光反射ミラー(反射型の分光フィルタ)の作成方法、具体的には、化粧品を肌に塗った際に、ミラーの反射光により、化粧品が肌全面に均一に塗布できているか、或いは、化粧を塗った後の化粧が取れているかを見分けるための分光反射ミラーの作成方法に係る実施例である。
図10(A)に示す不透明基材10の上に、表5に示すSiO2/TiO2交互層計19層の膜構成の多層膜12を形成したものである。
多層膜の設計(計算方法)は、実施例4において、該多層膜の分光透過率T(λ)を分光反射率M(λ)に置き換え、フィルタを通して見たときの色差ΔEF i,jを、反射ミラーを通して見たときの色差ΔEM i,jに置き換えた以外は、全て実施例4と同様にして行って最適M(λ)を得た。こうして得たM(λ)に基づき、膜設計ソフト「The Essential Macleod」(Thin Film Center Inc社、USA)を使用して所要の分光反射率を示す多層膜(分光フィルタ)の膜構成を求めた(表5参照)。
得られたM(λ)を、図11のグラフ中、実線で示す。併せて、膜生成シミュレーションを行い、理論設計に近似した特性が物理的に実現可能であることを確認した。この膜生成シミュレーションで得られた特性を、図11のグラフ中、点線で示す。
不透明基材10は、多層膜12を表面に形成したガラス基材14の、多層膜12側とは反対の面(すなわち、裏面)14aを、入射光が乱反射するように擦りガラス状に加工した後、黒色系光吸収剤(「アクリルラッカー」大信ペイント(株)社製)を塗布し、フィルタ裏面の反射光及び裏面からの透過光を遮断する光遮断膜16を形成したものである。
Figure 2007094338
なお、上記実施例において、分光反射ミラーは、図10(B)に示す如く、ガラス基材14の裏面側に光遮断膜16を形成するとともに、該ガラス基材14と光遮断膜16との間に多層膜12を形成したり、更には、図10(A)において多層膜12の表面に保護クリア塗膜を形成したりする構成とすることもできる。
また、以下に、本明細書で引用した参考文献一覧を示す。
(1)H.Brettel , F.Vienot , J.D.Mollon , Computerized simulation of color
appearance for dichromats , J.Opt.Soc.Am.A , Vol.1 , No.10 , pp.2647-2655 ,
1997.
(2)CIE Publication 116-1995 , Industrial colour-difference evaluation
(Technical Report) , CIE Central Bureau , Vienna , 1995.
(3)S.Kirtpatrick , C.D.Jr.Gelatt , M.P.Vecchi , Optimization by simulated
annealing , Science , Vol.220 , pp.671-680 , 1983
(4)市川宏 , 三島濟一 , 塚原勇 , 植村恭夫 , 眼鏡MOOK16 色覚異常 , 金原出版 , pp.139-147 , 1982

Claims (18)

  1. 透明基材上に多層膜を備えた透過型の分光フィルタの作成方法であって、
    該多層膜の分光透過率T(λ)を、分割された波長幅と各波長幅に対応する透過率からなるパラメータ、又は、任意波長での透過率を関数モデルで表したときの関数パラメータp1,p2,・・・,pnを用いて、
    T(λ)=T(p1,p2,・・・,pn
    と記述し、
    指定された複数色からなる対象色群、のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の、前記多層膜を介した、受光体の感度波長帯域における感度特性差(すなわち、色差)、
    からなる感度特性差パターンが、所望の感度特性差パターンになるように、前記パラメータp1,p2,・・・,pnを最適化し、
    該最適化されたパラメータp1,p2,・・・,pnを用いて記述される最適T(λ)に基づいて、前記透過型の分光フィルタを作成することを特徴とする機能性分光フィルタの作成方法。
  2. 被観察物における前記対象色群の色数がNのとき、該対象色群の各色の分光反射率Ri(λ)(i=1〜N)と、照明光の分光分布E(λ)とを設定した後、下記性能評価値Aが最大になるまで、下記(0)、(I)、(II)、(III)を、この順に繰り返し、前記性能評価値Aが最大になったときのT(λ)を前記最適T(λ)とすることを特徴とする請求項1記載の機能性分光フィルタの作成方法。
    (0)前記分光透過率T(λ)を、1回目は前記各パラメータに初期値を設定することにより初期設定し、2回目以降は最適化法に基づいて前記各パラメータを再設定することにより設定する。
    (I)前記対象色群の各色の、前記分光透過率T(λ)を有する機能性分光フィルタを通して観察したときの感度特性(すなわち、色感覚)
    i=f1(T(λ)Ri(λ)E(λ))
    を計算する。
    (II)前記感度特性から、前記対象色群のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の感度特性差
    ΔEi,j=f2(Ci,Cj
    を計算する。
    (III)前記分光透過率T(λ)のときの性能評価値Aを、Aが最大のときにT(λ)が最適T(λ)となるように重み係数Wi,jが設定された下記数式に基づいて計算する。
    Figure 2007094338
  3. 前記感度特性差の計算基準をCIE94とするとともに、前記最適化法をシミュレーティッドアニ−リング法とすることを特徴とする請求項2記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  4. 前記各組み合わせのうちの、特定の前記組み合わせにおいては、前記分光フィルタを介した場合に前記分光フィルタを介さない場合よりも色差が小さくなるとともに、他の特定の前記組み合わせにおいては、前記分光フィルタを介した場合に前記分光フィルタを介さない場合よりも色差が大きくなるように、前記最適T(λ)を設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  5. 前記各組み合わせに対する色覚異常者の感じる色差が、前記分光フィルタを介した場合に前記分光フィルタを介さない場合よりも大きくなるように、前記最適T(λ)を設定して、
    色覚異常者が前記対象色群の各色を見分けるときの見分けが容易になる機能性分光フィルタを作成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  6. 前記各組み合わせに対する色覚異常者の感じる色差を用いて、色覚正常者が前記対象色群の各色を見分けるときの難易が、色覚異常者が前記対象色群の各色を見分けるときの難易に近づくように、前記最適T(λ)を設定して、
    色覚正常者が前記対象色群の各色を見分けるときの見分けが困難になる機能性分光フィルタを作成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  7. 前記対象色群を、被観察物の、化粧品を塗った部分の複数色と、化粧品を塗らない部分の複数色とからなるものとし、
    化粧品を塗った部分の色同士、及び、化粧品を塗らない部分の色同士では、それぞれ、前記分光フィルタを介した場合に前記分光フィルタを介さない場合よりも色差が小さくなり、化粧品を塗った部分の色と化粧品を塗らない部分の色とでは、前記分光フィルタを介した場合に前記分光フィルタを介さない場合よりも色差が大きくなるように、前記最適T(λ)を設定して、
    化粧品の塗りむらの見分けが容易になる機能性分光フィルタを作成することを特徴とする請求項4記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の方法で作成された透過型の機能性分光フィルタが加工されて、眼鏡、コンタクトレンズ、又は、眼内レンズとされていることを特徴とする眼用光学製品。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の方法で作成された透過型の機能性分光フィルタが加工されて、カメラ、フォトダイオード等の受光部に組み込まれていることを特徴とする光学撮影装置。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の方法で作成された透過型の機能性分光フィルタが加工されて、ハロゲンランプ、蛍光灯、標準光源等の発光部に組み込まれていることを特徴とする光源装置。
  11. 不透明基材(透明基材の裏面側に光遮断層を備えたものを含む。)の表面に、又は、透明基材と該透明基材の裏面側に設けられた光遮断層との間に、多層膜を備えた反射型(すなわち、鏡型)の分光フィルタの作成方法であって、
    該多層膜の分光反射率M(λ)を、分割された波長幅と各波長幅に対応する反射率からなるパラメータ、又は、任意波長での反射率を関数モデルで表したときの関数パラメータp1,p2,・・・,pnを用いて、
    M(λ)=M(p1,p2,・・・,pn
    と記述し、
    指定された複数色からなる対象色群、のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の、前記多層膜の反射を介した、受光体の感度波長帯域における感度特性差(すなわち、色差)、
    からなる感度特性差パターンが、所望の感度特性差パターンになるように、前記パラメータp1,p2,・・・,pnを最適化し、
    該最適化されたパラメータp1,p2,・・・,pnを用いて記述される最適M(λ)に基づいて、前記反射型の分光フィルタを作成することを特徴とする機能性分光フィルタの作成方法。
  12. 被観察物における前記対象色群の色数がNであるとき、該対象色群の分光反射率Ri(λ)(i=1〜N)と、照明光の分光分布E(λ)とを設定した後、下記性能評価値Aが最大になるまで、下記(0)、(I)、(II)、(III)を、この順に繰り返し、前記性能評価値Aが最大になったときのM(λ)を前記最適M(λ)とすることを特徴とする請求項1記載の機能性分光フィルタの作成方法。
    (0)前記分光反射率M(λ)を、1回目は前記各パラメータに初期値を設定することにより初期設定し、2回目以降は最適化法に基づいて前記各パラメータを再設定することにより設定する。
    (I)前記対象色群の各色の、前記分光反射率M(λ)を有する機能性分光フィルタの反射を介して観察したときの感度特性(すなわち、色感覚)
    i=f1(M(λ)Ri(λ)E(λ))
    を計算する。
    (II)前記感度特性から、前記対象色群のうちの2色を組み合わせた各組み合わせにおける、組み合わされた2色間の感度特性差
    ΔEi,j=f2(Ci,Cj
    を計算する。
    (III)前記分光反射率M(λ)のときの性能評価値Aを、Aが最大のときにM(λ)が最適M(λ)となるように重み係数Wi,jが設定された下記数式に基づいて計算する。
    Figure 2007094338
  13. 前記色差の計算基準をCIE94とするとともに、前記最適化法をシミュレーティッドアニ−リング法とすることを特徴とする請求項12記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  14. 前記各組み合わせのうちの、特定の前記組み合わせにおいては、前記分光フィルタの反射を介した場合に前記分光フィルタの反射を介さない場合よりも色差が小さくなるとともに、他の特定の前記組み合わせにおいては、前記分光フィルタの反射を介した場合に前記分光フィルタの反射を介さない場合よりも色差が大きくなるように、前記最適M(λ)を設定することを特徴とする請求項11、12又は13記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  15. 前記分光フィルタの反射を介した場合に前記分光フィルタの反射を介さない場合よりも色差が大きくなるように、前記最適M(λ)を設定して、
    前記対象色群の各色の見分けが容易になる機能性分光フィルタを作成することを特徴とする請求項11、12又は13記載の機能性分光フィルタの作成方法。
  16. 請求項11〜15のいずれかに記載の方法で作成された反射型の機能性分光フィルタが加工されて、カメラ、フォトダイオード等の受光部に組み込まれていることを特徴とする光学撮影装置。
  17. 請求項11〜15のいずれかに記載の方法で作成された反射型の機能性分光フィルタが加工されて、ハロゲンランプ、蛍光灯、標準光源等の発光部に組み込まれていることを特徴とする光源装置。
  18. 前記対象色群を、被観察物の、化粧品を塗った部分の複数色と、化粧品を塗らない部分の複数色とからなるものとし、
    化粧品を塗った部分の色同士、及び、化粧品を塗らない部分の色同士では、それぞれ、前記分光フィルタの反射を介した場合に前記分光フィルタの反射を介さない場合よりも色差が小さくなり、化粧品を塗った部分の色と化粧品を塗らない部分の色とでは、前記分光フィルタの反射を介した場合に前記分光フィルタの反射を介さない場合よりも色差が大きくなるように、前記最適M(λ)を設定して、
    化粧品の塗りむらの見分けが容易になる機能性分光フィルタを作成することを特徴とする請求項14記載の機能性分光フィルタの作成方法。
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