本発明は、生体等の被検体への超音波の発信または被検体からの超音波の受信に使用される超音波探触子に関する。
超音波診断装置は、超音波をヒトや動物等の生体の被検体内に照射し、生体内で反射されるエコー信号を検出して生体内組織の断層像等をモニタに表示し、被検体の診断に必要な情報を提供する。この際、超音波診断装置は、被検体内への超音波の送信と、被検体内からのエコー信号を受信するために超音波探触子を利用している。
図12は、このような超音波探触子の一例を示している。図12において、超音波探触子20は、被検体(図示せず)との間で超音波を送受信するべく、一定方向に配列された複数個の圧電素子11と、圧電素子11の被検体側の前面(図12の上方)に設けられる1層以上(図示は3層)からなる音響マッチング層12(12a、12b、12c)と、音響マッチング層12の被検体側表面に設けられた音響レンズ13と、圧電素子11に対して音響マッチング層12の反対側となる背面に設けられる背面負荷材14とから構成されている。
圧電素子11の前面と背面には、それぞれ図示しない電極が配置され、圧電素子11との間で電気信号の送受信を行う。圧電素子11は、PZT系等の圧電セラミック、単結晶、前記材料と高分子を複合した複合圧電体、あるいはPVDF等に代表される高分子の圧電体等によって形成され、電圧を超音波に変換して被検体内に送信し、あるいは被検体内で反射したエコーを電気信号に変換して受信する。図示の例では、X方向に複数の圧電素子11が配列されている。このような圧電素子11の複数個の配列は、電子的に超音波を走査して偏向あるいは集束することができ、いわゆる電子走査を可能とする。
音響マッチング層12は、超音波を効率よく被検体内に送受信するために設けられ、より具体的には、圧電素子11の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づける役割を果たす。図示の例では、3層の音響マッチング層12a、12b、12cが設けられているが、これは1層から2層であっても4層以上であってもよい。また図示の例では、音響マッチング層12が複数の圧電素子11の上に一体に形成されているが、各圧電素子11にそれぞれ対応して分割して配置している。また、超音波の指向性を広くする構成も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
音響レンズ13は、診断画像の分解能を高めるために超音波ビームを絞る役割を果たす。図示の例では、音響レンズ13は図のY方向(圧電素子11の配列方向Xに直交する方向)に沿って延びると共に、Z方向に凸状となるかまぼこ型に形成され、超音波ビームをY方向に絞ることができる。音響レンズ13はオプション要素であり、必要に応じて設けられる。
背面負荷材14は、圧電素子11に結合されてこれを保持し、さらに不要な超音波を減衰させる役割を果たす。なお、本明細書では、図のX方向を「(圧電素子の)配列方向」、Y方向を「(圧電素子の)幅方向」、Z方向を「(圧電素子の)厚さ方向」とも呼ぶものとする。
特開2003−125494号公報
特開2005−198261号公報
電子走査型の超音波診断装置は、圧電素子を任意の群にして個々の圧電素子に一定の遅延時間与えて駆動し、圧電素子から被検体内に超音波の送信と受信を行う。このような遅延時間を与えることで超音波ビームが収束あるいは拡散され、広い視野幅あるいは高分解能の超音波画像を得ることができる。
この構成は、一般的なシステムとして既に知られている。超音波探触子として、係る高分解能の超音波画像を得るために重要なことは、電子的に走査する複数個の所定の方向に配列された個々の圧電素子から音響マッチング層、更には必要に応じて音響レンズを介して被検体に放射される超音波ビームの指向性が広いことである。
電子走査型の超音波探触子は、複数個配列したある群の圧電素子(例えば64素子)のそれぞれの送受信時間を遅延させて位相を制御することにより、超音波ビームを所望の位置に絞ってビームを細くし高分解能化したり、あるいは超音波ビームを偏向したりして扇形状に走査する。
この場合、超音波ビームは、それぞれの群で使用する圧電素子の数が多ければ(例えば64素子から96素子にすれば)、その分だけ超音波の開口が大きくなりビームを強く絞る、つまり細くすることができ、結果として分解能を向上させることが可能となる。
しかしながら、開口を大きくするためには、個々の圧電素子の指向性が広くないと、いくら開口を大きく(遅延をかけて電気信号を印加する素子数を多く)しても、寄与しない圧電素子が出てきて結果として開口は狭くなり、超音波ビームを細く絞ることができなくなる。以上のことから、圧電素子の指向性は広くすることが望まれている。
指向性を広くするための1つの方策として、特許文献1に示すような複数個の一定の方向に配列された圧電素子に対応して全ての音響マッチング層までを分割し、隣接する圧電素子及び音響マッチング層相互間での音響的な結合を小さくした構成とすることが挙げられる。
しかしながら、この構成においては、配列された圧電素子及び音響マッチング層毎に分割して配列する必要があり、超音波の周波数を広帯域化するために音響マッチング層を多層化すると、分割加工するときに加工が困難になり安定した特性の超音波探触子を得ることが困難になる。
近年、超音波探触子の使用周波数がより広帯域化される傾向にあり、複数の周波数で使用する場合が多くなってきていることから、高分解能の超音波画像を得るために、広帯域化と共に超音波探触子の指向性を広くすることがますます重要になってきている。
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、加工が容易で、高分解能の画像を得ることができる超音波探触子を提供することを目的としている。
本発明の超音波探触子は、配列された複数の圧電素子と、ゴム弾性体材料からなり、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられた音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、音響マッチング層を分割することなく設けることにより、圧電素子と共に分割加工する必要がなくなるため、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。また、音響マッチング層をゴム弾性体材料とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記ゴム弾性体材料の音響インピーダンスが、前記圧電素子の音響インピーダンスより小さく、前記被検体の音響インピーダンスより大きいことを特徴とする。
上記構成によれば、ゴム弾性体材料の音響インピーダンスを、圧電素子の音響インピーダンスより小さく、被検体の音響インピーダンスより大きくすることにより、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記音響マッチング層の音速が、1650m/sec、またはそれ以下の値を有することを特徴とする。
上記構成によれば、音響マッチング層の音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、分割しない音響マッチング層であっても、分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された音響マッチング層をさらに備えることを特徴とする。
上記構成によれば、圧電素子側の音響マッチング層だけを圧電素子と同じように分割するので、圧電素子を狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができる。また、平面状の音響マッチング層と複数の圧電素子の間に、分割した音響マッチング層を備えるので、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明は、配列された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、音響インピーダンスが1.8〜2.2メガレールスであり、かつ音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有する第3の音響マッチング層と、前記第3の音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に設けられた第1、第2の音響マッチング層とを備えることを特徴とする超音波探触子である。
上記構成によれば、第3の音響マッチング層の音響インピーダンスを1.8〜2.2メガレールスとし、かつ音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とするとともに、第1、第2の音響マッチング層を備えることにより、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、前記第1、第2の音響マッチング層は、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第3の音響マッチング層と複数の圧電素子の間に、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第1、第2の音響マッチング層を備えるので、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料であることを特徴とする。
また、本発明の超音波探触子は、配列された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有する第2、第3の音響マッチング層と、前記第2、第3の音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に設けられた第1の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第2、第3の音響マッチング層の音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第2、第3の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、前記第1の音響マッチング層が、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第2、第3の音響マッチング層を設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層を少なくすることができ、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第2、第3の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料であることを特徴とする。
また、本発明の超音波探触子は、配列された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有する第4の音響マッチング層と、前記第4の音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に設けられた第1、第2、第3の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第4の音響マッチング層の音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。また、第1、第2、第3の音響マッチング層を第4の音響マッチング層と複数の圧電素子の間に設けることにより、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第4の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、前記第1、第2、第3の音響マッチング層が、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第4の音響マッチング層を設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3、第4の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の片側に設けられ、前記第1、第2の音響マッチング層が、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第3、第4の音響マッチング層を設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料で、音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有することを特徴とする。また、本発明の超音波探触子は、前記第4の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料であることを特徴とする。
上記構成によれば、音響マッチング層をゴム弾性体材料とし、音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。
本発明の超音波探触子は、背面負荷材と、前記背面負荷材の上面に配列された複数の圧電素子とを備える超音波探触子であって、前記背面負荷材と前記複数の圧電素子との間に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に電気端子を設けた第1の高分子フィルムと、前記複数の圧電素子の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第1の音響マッチング層と、前記第1の音響マッチング層の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に電気端子を設けた第2の高分子フィルムと、前記第2の高分子フィルムの上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第2の音響マッチング層と、前記第2の音響マッチング層の上面に設けられ、ゴム弾性体材料からなる第3の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第3の音響マッチング層をゴム弾性体材料で形成することにより、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第3の音響マッチング層を分割することなく設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消できる。また、高分子フィルムに電気端子を設けることにより、電気端子を容易に形成することができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層の音速が、1650m/sec、またはそれ以下の値を有することを特徴とする。また、本発明の超音波探触子は、前記第2の高分子フィルムの音響インピーダンスが、前記第2の音響マッチング層の音響インピーダンスより小さく、且つ、厚さが使用周波数に対して0.07波長以下であることを特徴とする。
また、本発明の超音波探触子は、背面負荷材の上面に配列された複数の圧電素子を備える超音波探触子であって、前記背面負荷材と前記複数の圧電素子との間に設けられ、電気端子を設けた第1の高分子フィルムと、前記複数の圧電素子の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第1の音響マッチング層と、前記第1の音響マッチング層の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に電気端子を設けた第2の高分子フィルムと、前記第2の高分子フィルムの上面に設けられ、ゴム弾性体材料からなる第2の音響マッチング層と、前記第2の音響マッチング層の上面に設けられ、ゴム弾性体材料からなる第3の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第2、第3の音響マッチング層をゴム弾性体材料で形成することにより、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第2、第3の音響マッチング層を分割することなく設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消できる。また、高分子フィルムに電気端子を設けることにより、電気端子を容易に形成することができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記ゴム弾性体材料の主体が、合成ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムまたはエラストマーであることを特徴とする。さらに、本発明の超音波探触子は、前記合成ゴムの主体が、エチレン−プロピレン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムまたはアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム材料であることを特徴とする。
本発明によれば、圧電素子の一方の面に設けた音響マッチング層をゴム弾性体材料で構成することにより、音響マッチング層を分割することなく、音響マッチング層を分割した構成と同等あるいはそれ以上の指向性にさせることができるため、加工が容易で、高分解能な診断画像が得られる超音波探触子を提供することができる。
本発明に係る第1実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
音響マッチング層の音速と指向角の関係を示す図
本発明に係る第2実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第3実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
第3の音響マッチング層の音響インピーダンスとパルス長、比帯域の関係を示す図
本発明に係る第4実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第5実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第6実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第1実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第1実施形態の超音波探触子を示す概略断面図
高分子フィルムの厚みと比帯域の関係を示す図
本発明に係る第2実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
従来技術に係る超音波探触子の構成を示す概略斜視図
符号の説明
1 圧電素子
2、2a、2b、2c、2d 音響マッチング層
3 背面負荷材
4 音響レンズ
5 接地電極
6 信号用電極
7 電気端子
8,9 フィルム
10 超音波探触子
11 圧電素子
12 音響整合層
13 音響レンズ
14 背面負荷材
20 超音波探触子
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された音響マッチング層2(第1の音響マッチング層)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1は個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。
図2は、図1に示す複数個の圧電素子1の配列方向Xの超音波の指向性角度と音響マッチング層2のゴム弾性体材料の音速との関係を示した図である。複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントである。
第1実施形態では、図1に示すように、背面負荷材3上に設けた圧電素子1をスライシングマシーンなどにより分割し、分割した分割溝にシリコーンゴムやウレタンゴムを充填し、その後分割し配列された圧電素子1の面上にゴム弾性体材料の音響マッチング層2を設ける。
音響マッチング層2は既に知られているように、圧電素子1と被検体(図示せず)のそれぞれの音響インピーダンスの間の値を有した材料を用いて、その厚みは使用周波数の4分の1波長の厚みを基本としている。更に、音響マッチング層2面上には、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料で音響レンズ4を設ける。
音響マッチング層2は、従来では指向性を広くするために圧電素子1上に設けた後、圧電素子1と同じに分割した構成にしていた。これは音響マッチング層2を圧電素子1と同じに分割しないと、音響マッチング層2が連続して繋がっているために、音響マッチング層2内で横方向にも超音波が伝播して指向性が狭くなるということを回避するためである。
しかし、圧電素子1と音響マッチング層2、更には背面負荷材3の一部まで一緒にスライシングマシーンで加工分割して、特に分割間隔が0.1mmという狭い間隔になってくると複数の材料を一緒に加工するために、均一に、安定的に分割することが困難になってくるという課題を有していた。
本実施形態は、加工が容易で均一に、また安定して作成できるように圧電素子1のみを分割して配列した圧電素子1面上に、分割しないで連結した1枚の状態でゴム弾性体材料の音響マッチング層2を設けた構成にし、しかも指向性は、音響マッチング層2を分割した構成と同等あるいはそれ以上にできるようにしたことがポイントである。
音響マッチング層2の材料としてのゴム弾性体は、圧電素子1と被検体のそれぞれの音響インピーダンスの間の値を有した材料を用い、厚みは使用周波数の4分の1波長の厚みを基本にしている。音響マッチング層2として、いろいろな材料を実験により検討した結果、同じゴム弾性体で、硬さ、および音響インピーダンスも同じような値を有した材料においても、指向性に違いがあることを見出した。
例えば、周波数が3.5MHzの圧電素子1を、圧電素子1の間隔0.38mm(0.19mmの間隔で分割した2つを電気的に束ねた状態)に分割したときの指向性の角度は、−6dBのレベルで定義すると音響マッチング層2を圧電素子1と同時に分割した構成のタイプは、約23度の指向角となる。
すなわち、例えば、方向Zに放射した超音波ビームの強さが−6dB低下するのが、方向Zから約23度の方向となる。なお、圧電素子1および音響マッチング層2の分割した分割溝には、シリコーンゴム材を充填した構成にしている。
前記の方法で圧電素子1を同様の仕様で分割して、音響マッチング層2は分割しないで図1のように構成したタイプにおいて、音響マッチング層2の材料として、シリコーンゴム(硬さがショア−A硬度で76、音速915m/sec、音響インピーダンス2.1メガレールス)、クロロプレンゴム(硬さがショア−A硬度で70、音速1630m/sec、音響インピーダンス2.16メガレールス)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で65、音速1480m/sec、音響インピーダンス1.94メガレールス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で60、音速1640m/sec、音響インピーダンス1.97メガレールス)、およびウレタンゴム(硬さがショア−A硬度で78、音速1850m/sec、音響インピーダンス1.98メガレールス)のそれぞれ用いて配列された圧電素子1面上に設け、更にその音響マッチング層2の上面にシリコーンゴムの音響レンズを設けて、圧電素子1の配列方向の超音波の指向特性を測定した。
その結果、音響マッチング層2の材料による指向特性に違いがあることがわかった。なお、圧電素子1を分割した分割溝には、音響マッチング層2まで分割した構成と同様にシリコーンゴムの材料を充填している。
また、上記に挙げた材料のウレタンゴム以外の材料には、音響インピーダンスを調整するためにアルミナ、カーボンあるいは炭酸カルシウムなどのフィラーを任意の量を充填した材料を用いている。
上記のような5種類の材料を音響マッチング層2の指向特性の違いは、材料の硬さ、音響インピーダンス等との相関はなく、影響していなかった。指向特性に影響している、つまり相関があったのは、音響マッチング層2材料の音速の特性であり、これは良好な相関が見られた。
3.5MHzの周波数で−6dBのレベルで測定した指向性角度と材料の音速との関係の結果を図2に示す。図2に示すように音速との良好な相関が見られ、相関係数は0.86となっている。このことから、音響マッチング層2を分割しないで設けた構成において、指向性を広くする場合には音速に注目する必要があることがわかった。前記使用した音響マッチング層2のそれぞれの材料を用いたときの指向性角度は以下のようになっている。
それぞれの指向性角度は、シリコーンゴムは25度、クロロプレンゴムは23.5度、エチレン−プロピレン共重合ゴムは23.5度、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは22.9度、ウレタンゴムは20度という結果であった。なおこの測定結果のばらつきは、±0.5度程度あると考えている。
これらの指向性角度と従来の音響マッチング層2まで圧電素子1と共に分割した構成の指向性角度を比較すると、従来構成の指向性角度とほぼ同等レベルの指向性角度を得るには、音響マッチング層2の音速は1650m/sec付近の材料を使用すれば良いということになる。更に指向性を広くする場合には、図2の結果から音速が1650m/sec以下の材料、例えばシリコーンゴムのような材料を用いれば良いということがわかる。
また、指向性角度が狭い結果となっているウレタンゴムにおいても、ウレタンゴムの中でも音速が1650m/sec付近あるいはそれ以下の種類(例えばサンユレック株式会社製中型用ウレタン樹脂UE-644グレードは、音速が1580m/sec、音響インピーダンスが2.1メガレールス)も存在するのでウレタンゴムでは指向角が狭くなるということではなく、その基準は音速にあるということである。音速が1650m/sec以下の材料を選択すると、基本的にはゴム弾性体である材料に絞り込まれる。
以上のように、音響マッチング層2を圧電素子1と同じように分割しないで連続した形状の1枚のフィルムで設ける構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、音響マッチング層2の材料の音速に注目する必要がある事が分かった。
例えば、音響インピーダンスが上記材料に挙げたように約2メガレールスの値を有する材料は、ゴム弾性体材料に限らずプラスチック材料等にも存在する。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるがこれらの材料の音速はいずれも約1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように音響マッチング層2を分割しない構成にした場合には、図2の傾向からも明らかのように、指向性は狭くなる。このような材料を用いる場合にはやはり音響マッチング層2を圧電素子1と同様に分割する構成にして指向性を広くする必要がある。
なお、音響マッチング層2の材料として、主体が合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、音響マッチング層2の材料として、主体が合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態では1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第1の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、音響マッチング層にゴム弾性体を用いてもよい。
また、第1の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図3は、第2実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aは、個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、圧電素子1側に位置する音響マッチング層2aの上面には第2の音響マッチング層2bを分割しない連続した1枚のフィルムで設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第1の実施の形態と同様である。
第1実施形態では、音響マッチング層2は1層の場合について説明したが、圧電素子1と被検体との音響インピーダンスの差が大きい例えば、圧電素子としてPZT系のような圧電セラミックスを用いた場合には、約30メガレールス、被検体の音響インピーダンスは約1.5メガレールスと大きな差があるため、1層の音響マッチング層では周波数の広帯域化に限界がある。広帯域化するためには音響マッチング層2を2層以上の多層化する必要がある。
しかしながら、音響マッチング層を2層以上の多層化する場合には、音響マッチング層2も圧電素子1と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。この事は、圧電素子1と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層2を多層化することによって厚みは層が増加した分、厚くなり更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態で2層以上の多層化の音響マッチング層、ここでは2層の音響マッチング層にしたときにおいて、図3に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する音響マッチング層2aとを分割して、更に音響マッチング層2aの上面に連続した1枚の音響マッチング層2bを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また音響マッチング層2aには、グラファイト、エポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用いる。
また、音響マッチング層2bの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなど第1の実施の形態で説明したものと同じゴム弾性体を主体とした材料を用いる。
音響マッチング層2bの音響インピーダンスが第1の実施の形態の場合と違う値が必要な場合には、主体となるゴム弾性体の主体材料に金属、酸化物などのフィラーを充填して調整することによって得ることができる。
ここで音響マッチング層2bは、分割しないで連続した1枚のフィルムとして設ける条件は、指向性が音響マッチング層2bを分割した構成の指向性と、同等か若しくはそれ以上の特性が得られるように、ゴム弾性体であること、更に前記ゴム弾性体材料の音速は1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有する材料を選択することである。これは第1の実施の形態の図2で示した結果からいえる。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
以上のように、2層の音響マッチング層2の圧電素子1側に位置する音響マッチング層2aを圧電素子1と同じように分割し、更に音響マッチング層2aの上面には、連続した1枚の音響マッチング層2bを設けた構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、音響マッチング層2bの材料の音速に注目する必要がある。
例えば、音響マッチング層2b材料としてはゴム弾性体材料に限らずプラスチック材料等にも存在する。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるがこれらの材料の音速はいずれも1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように音響マッチング層2を分割しない構成にした場合には、図2に示す結果からも明らかのように、指向性角度は狭くなる。このような材料を用いる場合には、やはり音響マッチング層2bを圧電素子1と音響マッチング層2a同様に分割する必要があるといえる。
なお、第2の実施の形態では、音響マッチング層2bの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、音響マッチング層2bの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、音響マッチング層2を2層とした場合について説明したが、このほか3層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成し場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第2の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、音響マッチング層にゴム弾性体を用いてもよい。
また、第2の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図4は、第3実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aおよび第2の音響マッチング層2bは、個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、第2の音響マッチング層2bの上面には第3の音響マッチング層2cを分割しない連続した1枚のフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第2の実施の形態と同様である。
第2実施形態では、音響マッチング層2が2層の場合について説明したが、音響マッチング層2を更に3層化することにより、更なる広帯域化が可能となる。しかしながら、音響マッチング層を3層以上の多層化する場合には、参考文献1,2に示すように、音響マッチング層2(2a、2b、2c)を圧電素子1と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。
この事は、圧電素子1と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層2を多層化することによって厚みは、層が増加した分、厚くなり、更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、広帯域化が可能で、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態の3層の音響マッチング層にしたときにおいて、図4に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bとを分割して、更に第1の音響マッチング層2a、第2の音響マッチング層2bの上面に連続した1枚の第3の音響マッチング層2cを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンス8〜20メガレールスの範囲の値を有するシリコン単結晶、水晶、溶融石英などのガラス、快削性セラミックス、またはグラファイトなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲の値を有するグラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用いる。
また、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。
音響マッチング層2(2a、2b、2c)のそれぞれの音響インピーダンスは、各材料あるいは周波数特性により選択される。例えば、周波数を3.5MHzの中心周波数に設定して、背面負荷材3の音響インピーダンス7メガレールス、圧電素子1にPZT系の圧電セラミックスでPZT-5H相当の材料を用い、第1の音響マッチング層2aは音響インピーダンス9メガレールスのグラファイトを用い、第2の音響マッチング層2bは音響インピーダンス4メガレールスの酸化物を充填したエポキシ樹脂を用いて、第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスを1.5〜2.5メガレールスの範囲で可変した構成において計算した。
−6dBでの周波数特性の比帯域、およびパルス長−6dB、−20dB、−40dBのレベルで評価した結果を図5に示す。図5において、横軸は第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンス値、また左側の縦軸はパルス長、右側の縦軸は−6dBでの周波数比帯域(帯域幅/中心周波数)の値を表している。
図5において、パルス長は−6dBのレベルでは第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスが変化してもほとんど変わらないが、−20dB、−40dBのレベルでは変化があり、音響インピーダンスが1.8〜2.3メガレールスの範囲で小さい値になっていることがわかる。このパルス長は、小さい値になるほど分解能が高くなり良好であるので、小さい値にすることが分解能を向上させることで重要である。
一方、比帯域の値が大きいほど分解能、被検深度が深くなる。図5の周波数比帯域について見ると、第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスが約2.3メガレールスより大きくなると、比帯域は80%以下になり、広帯域化ができなくなってくることがわかる。以上のように、パルス長および比帯域の両特性の結果から、第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスは1.8〜2.2メガレールスの範囲が望ましいことがわかる。
第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスが1.8〜2.2メガレールスの範囲の材料としては、主体となるゴム弾性体の主体材料単体で得られるものはそのまま使用できるが、音響インピーダンスが範囲外の値を有する材料については、フィラーなどを充填して調整することによって得ることができる。
ここで第3の音響マッチング層2cは、分割しないで連続した1枚のフィルムとして設ける条件が、指向性が第3の音響マッチング層2cを分割した構成の指向性と、同等か若しくはそれ以上の特性が得られるようなゴム弾性体であること、更に前記弾性体材料の音速は1650m/sec以下の値を有する材料を選択することである。これは第1の実施の形態の図2で示した結果からいえることである。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
以上のように、3層の音響マッチング層2の圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bを圧電素子1と同じように分割し、更に第2の音響マッチング層2bの上面には、連続した1枚の第3の音響マッチング層2cを設けた構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、第3の音響マッチング層2cの材料の音速に注目する必要がある。
例えば、第3の音響マッチング層2cに適した材料として、ゴム材料に限らず、プラスチック材料等も考えられる。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるがこれらの材料の音速はいずれも1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように第3の音響マッチング層2cを分割しない構成にした場合には、図2に示す結果からも明らかのように、指向性角度は狭くなる。このような材料を用いる場合には、やはり第3の音響マッチング層2cを圧電素子1と第1、第2の音響マッチング層2a、2b同様に分割する必要があるといえる。
なお、第3の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、音響マッチング層2を3層とした場合について説明したが、このほか4層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成し場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第3の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第3の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図6は、第4実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aが個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、第1の音響マッチング層2aの上面には、第2の音響マッチング層2b、第3の音響マッチング層2cを分割しないで連続したフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第2、3の実施の形態と同様である。
第2実施形態では、音響マッチング層2は2層の場合について説明したが、音響マッチング層2を更に3層化することにより、更なる広帯域化が可能となる。しかしながら、音響マッチング層を3層以上の多層化する場合には、参考文献1,2に示すように、音響マッチング層2(2a、2b、2c)も圧電素子1と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。
この事は、圧電素子1と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層2を多層化することによって厚みは、層が増加した分、高くなり更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、広帯域化が可能で、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態の3層の音響マッチング層にしたときにおいて、図6に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aとを分割して、更に第1の音響マッチング層2aの上面に連続した第2、第3の音響マッチング層2b、2cを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンス8〜20メガレールスの範囲の値を有するシリコン単結晶、水晶、溶融石英などのガラス、快削性セラミックス、またはグラファイトなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲の値を有する金属粉、酸化物粉などのフィラーを充填したゴム弾性体を用いる。
また、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。本実施形態のポイントは第2の音響マッチング層2bも第3の音響マッチング層2cと同様に分割しない構成にして設けることである。
第2の音響マッチング層2bとして、圧電素子1のように分割しない場合には前述しているように指向性が狭くなるため、望ましくない。しかし、分割しない構成にしても指向性が狭くならければ、問題ないわけであり、しかも、加工して分割するときにはできるだけ、構成部品数は少ない方がよいことは第2、3の実施形態で説明している。
第2、第3の音響マッチング層2b、2cを分割しない構成にするためには、第2の音響マッチング層2bも図2および第3の実施形態で説明したように、第3の音響マッチング層2cのようにゴム弾性体の材料で、しかも音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料を用いれば、第2の音響マッチング層2bも分割しなくとも指向性が狭くならない特性を得ることができる。
第2の音響マッチング層2bは、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲で、且つ音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム1に対して、銅金属粉(平均粒径1.2マイクロメートル)のフィラーを重量比で9の割合で充填した材料は音響インピーダンスが5.3メガレールス、また音速は1070m/secであり、第2の音響マッチング層2bとして要望される値の特性を有している材料を用いる。
このように合成ゴム系のゴム弾性体を主体とした材料に、タングステン、銀、鉄、ニッケルなどの金属粉や酸化物のような密度の大きいフィラーを充填することにより、第2の音響マッチング層2bに要望される音響インピーダンス、音速の値の材料を得ることができる。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
なお、第4の実施の形態では、第2の音響マッチング層2bの材料として、合成ゴムであるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムに銅粉のフィラーを充填した材料を用いた場合について説明したが、このほかクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム、エラストマー系の材料等と、ほかのフィラーの組み合わせた材料であっても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、音響マッチング層2を3層とした場合について説明したが、このほか4層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成し場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第4の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第4の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第5実施形態)
以下、本発明に係る第5実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図7は、第5実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された4層の音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する音響マッチング層2a、2bおよび2cは、個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、音響マッチング層2cの上面には音響マッチング層2dを分割しない連続した1枚のフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1の方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントである。
圧電素子1の被検体側に設ける音響マッチング層2を多層化することにより、広帯域化が可能となる。しかしながら、音響マッチング層を4層以上に多層化する場合には、図12(特許文献1,2参照)に示すように、3層の音響マッチング層12も圧電素子11と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。
このことは、圧電素子11と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層12を更に多層化することによって厚みは、層が増加した分、厚くなり更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、広帯域化が可能で、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態の4層の音響マッチング層にしたときにおいて、図7に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に設けた第1、2、3の音響マッチング層2a、2b、2cとを分割して、更に第3の音響マッチング層2cの上面に連続した1枚の第4の音響マッチング層2dを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンスが圧電素子1より小さい値を有するシリコン単結晶、水晶、テルライトガラス、快削性セラミックスなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが第1の音響マッチング層2aより小さい値を有する溶融石英などを代表とするガラス系材料、グラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用い、第3の音響マッチング層2cの材料としては、音響インピーダンスが第2の音響マッチング層2bより小さい値を有するグラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用いる。
また、第4の音響マッチング層2dの材料としては、音響インピーダンスが第3の音響マッチング層2cより小さい値を有するシリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびポリウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。これら音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の厚みは公知のように、使用周波数の4分の1波長の厚みを基本にする。
本実施形態は、加工が容易で均一に、また安定して作成できるように圧電素子1と第1、第2、第3の音響マッチング層2(2a、2b、2c)までを分割して配列し、第3の音響マッチング層2cの上面に分割しないで連結した1枚の状態でゴム弾性体材料の第4の音響マッチング層2dを設けた構成にしている。しかも指向性は、第4の音響マッチング層2dまで分割した構成と同等あるいはそれ以上にできるようにしたことがポイントである。
音響マッチング層を分割しない構成で指向性を広くするためには、第1の実施の形態の図2でも説明したように、音響マッチング層は、ゴム弾性体材料で、しかも音速は1650m/sec若しくはそれ以下の値の特性を有するものであればよい。この特性を有した材料を第4の音響マッチング層に用いる。
なお、第4の音響マッチング層2dの材料として、主体が合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第4の音響マッチング層2dの材料として、主体が合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第5の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第5の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
以上の構成により、前記音響マッチング層の被検体側に位置する第4の音響マッチング層としてゴム弾性体で音速を規定して、分割しない構成にすることにより周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になり、さらに、第4の音響マッチング層を圧電素子と共に加工して分割することが必要なくなるため、加工の困難さは解消され安定した超音波探触子を得ることができ、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御できることになり、超音波ビームを細く絞る事ができ、また、超音波ビームを偏向する事ができるため、分解能の高い超音波画像を提供する超音波探触子を得ることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明に係る第6実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図8は、第6実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された4層の音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bが分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。
更に、第2の音響マッチング層2bの上面には、第3の音響マッチング層2c、第4の音響マッチング層2dを分割しないで連続したフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第1の実施の形態と同様である。
本実施形態の4層の音響マッチング層にしたときにおいて、図8に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bとを分割して、更に第2の音響マッチング層2bの上面に連続した第3の音響マッチング層2cを設け、更に第3の音響マッチング層2cの上面に連続した第4の音響マッチング層2dを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンスが圧電素子1より小さい値を有するシリコン単結晶、水晶、テルライトガラス、快削性セラミックスなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが第1の音響マッチング層2aより小さい値を有する溶融石英などを代表とするガラス系材料、グラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用い、第3の音響マッチング層2cの材料としては、音響インピーダンスが第2の音響マッチング層2bより小さい値を有し、ゴム弾性体材料で、且つ音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有するものを用いる。
また、第4の音響マッチング層2dの材料としては、音響インピーダンスが第3の音響マッチング層2cより小さい値を有するシリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。これら音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の厚みは公知のように、使用周波数の4分の1波長の厚みを基本にする。
本実施形態は、加工が容易で均一に、また安定して作成できるように圧電素子1と第1、第2の音響マッチング層2(2a、2b)までを分割して配列し、第2の音響マッチング層2bの上面に分割しないで連結した1枚の状態でゴム弾性体材料の第3の音響マッチング層2cと、更にその上面に第3の音響マッチング層2cと同様に分割しないで連結した1枚の状態で、第4の音響マッチング層2dを設けた構成にしている。しかも指向性は、第3、第4の音響マッチング層2c、2dまで分割した構成と同等あるいはそれ以上にできるようにしたことがポイントである。
第3の音響マッチング層2cとして、圧電素子1のように分割しない場合には前述しているように指向性が狭くなるため、望ましくない。しかし、分割しない構成にしても指向性が狭くならければ、問題ないわけであり、しかも、加工して分割するときにはできるだけ、構成部品数は少ない方がよいことは第1の実施形態で説明している。
第3、第4の音響マッチング層2c、2dを分割しない構成にするためには、第3の音響マッチング層2cも図2および第1の実施形態で説明したように、第4の音響マッチング層2dのようにゴム弾性体の材料で、しかも音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料を用いれば、第3の音響マッチング層2cも分割しなくとも指向性が狭くならない特性を得ることができる。
第3の音響マッチング層2cは、音響インピーダンスは第2、第4の音響マッチング層2b、2dの間を有する値を有し、音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム1に対して、銅金属粉(平均粒径1.2マイクロメートル)のフィラーを9の割合で充填した材料は音響インピーダンスが5.3メガレールス、また音速は1070m/secであり、第3の音響マッチング層2cとして要望される値の特性を有している材料を用いる。
このように合成ゴム系のゴム弾性体を主体とした材料に、タングステン、銀、鉄、ニッケルなどの金属粉や酸化物のような密度の大きいフィラーを充填することにより、第3の音響マッチング層2cに要望される音響インピーダンス、音速の値の材料を得ることができる。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
なお、第6の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴムであるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムに銅粉のフィラーを充填した材料を用いた場合について説明したが、このほかクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム、エラストマー系の材料等と、ほかのフィラーの組み合わせた材料であっても同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態では、音響マッチング層2を4層とした場合について説明したが、このほか2層若しくは5層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成した場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第6の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第6の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第7実施形態)
次に、本発明に係る第7実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図9aは、第7実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示し、また図9bは、図9aに示すX方向から見た概略断面図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
以下に更に詳細に説明する。PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料の圧電素子1に設けた信号電極6と背面負荷材3の間には、ポリイミドなどの高分子フィルムに銅などの金属膜を設けたフィルム8(第1の高分子フィルム)を設けており、前記信号用電極6と前記フィルム8の金属膜の電気端子7が接するようにし、前記背面負荷材3側が高分子のフィルムが接するように設ける。
一方、圧電素子1面上に設けた接地電極5側には、グラファイトのような導体(絶縁体材料であれば絶縁体の周囲をめっきなどで金属の導体を構成する)である第1の音響マッチング層2aを設け、更に前記第1の音響マッチング層2aの上面には、ポリイミドなどの高分子フィルムに銅などの金属膜(厚みは特性に影響が小さいように5マイクロメートル以下)を設けたフィルム9(第2の高分子フィルム)を設けており、前記導体である第1の音響マッチング層2aと前記フィルム9の金属膜が接するように構成する。
更に、前記フィルム9の高分子フィルムの上面には、グラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂の第2の音響マッチング層2bを設ける。また、第1の音響マッチング層2aの材料が絶縁体である場合には、前記絶縁体の全周囲にめっきなどの方法により導体を形成すれば、本構成が成立するので、必ずしも第1の音響マッチング層2aの材料は導体である必要はない。また、第2の音響マッチング層2bは絶縁体、導体は問わない。
以上にような構成に形成した後、背面負荷材3の一部、フィルム8、圧電素子1、第1の音響マッチング層2a、フィルム9、および第2の音響マッチング層2bをスライシングマシーンなどで加工して分割する。分割後の分割溝には、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料を充填し、更に第2の音響マッチング層2bおよび分割溝に充填した部分の上面には、第3の音響マッチング層2cを設ける。
第3の音響マッチング層2cは、図示のように分割しないで連結した状態で設けている。また、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。更に必要に応じて、第3の音響マッチング層2cの上面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を構成する。
信号用電極6は、フィルム8の電気端子7の金属膜を経由し、また、接地電極5は第1の音響マッチング層2a、フィルム9の金属膜の導体を経由し、ケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1の方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントである。
一方、圧電素子1と被検体の音響インピーダンスは、それぞれ、約30メガレールス、約1.54メガレールスであり、その差が大きいために音響的な不整合が生じ、このために周波数の帯域は狭くなる。この音響的な不整合をなくすために、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体の間の値を有する材料を音響マッチング層として設けることにより、周波数の広帯域化が可能になる。
この音響マッチング層の音響インピーダンスを段階的に圧電素子から被検体に近づけていく段階数を多くすることにより、さらに周波数の広帯域化が可能になる。したがって、音響マッチング層は1層より2層、さらには2層より3層と層数を多くすることによってより広帯域化が可能になる。
また、圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
例えば、周波数が3.5MHzの圧電素子1を、圧電素子1の間隔0.38mm(0.19mmの間隔で分割した2つを電気的に束ねた状態)分割したときの指向性の角度は、−6dBのレベルで定義すると音響マッチング層2を圧電素子1と同時に分割した構成のタイプは、約23度の指向角となる。なお、圧電素子1および第1、第2の音響マッチング層2a、2bを分割した分割溝には、シリコーンゴム材を充填した構成にしている。
前記の方法で圧電素子1を同様の仕様で分割して、3層の音響マッチング層の内、圧電素子1側の第1、第2の音響マッチング層2a、2bは、前記圧電素子1と同じに分割して、被検体側に位置する第3の音響マッチング層は分割しない構成にしたタイプにおいて、被検体側に位置する第3の音響マッチング層2の材料として、シリコーンゴム(硬さがショア−A硬度で76、音速915m/sec、音響インピーダンス2.1メガレールス)、クロロプレンゴム(硬さがショア−A硬度で70、音速1630m/sec、音響インピーダンス2.16メガレールス)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で65、音速1480m/sec、音響インピーダンス1.94メガレールス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で60、音速1640m/sec、音響インピーダンス1.97メガレールス)、およびウレタンゴム(硬さがショア−A硬度で78、音速1850m/sec、音響インピーダンス1.98メガレールス)のそれぞれ用いて配列された圧電素子1面上に設け、更にその音響マッチング層2の上面にシリコーンゴムの音響レンズを設けて、圧電素子1の配列方向における超音波の指向特性を測定した。
その結果、第3の音響マッチング層2の材料による指向特性に違いがあることがわかった。なお、圧電素子1および第1、第2の音響マッチング層を分割した分割溝(このときの分割溝幅は約0.03mmである)には、第2の音響マッチング層2まで分割した構成と同様にシリコーンゴムの材料を充填している。
また、上記に挙げた材料のウレタンゴム以外の材料には、音響インピーダンスを調整するためにアルミナ、カーボンあるいは炭酸カルシウムなどのフィラーを任意の量を充填した材料を用いている。
指向特性の違いは、材料の硬さ、音響インピーダンス等との相関はなく、あまり影響していなかった。指向特性に影響している、つまり相関があったのは、第3の音響マッチング層2材料の音速特性であり、これは良好な相関が見られた。
3.5MHzの周波数で−6dBのレベルで測定した指向性角度と、材料の音速との関係の結果を図2(既出)に示す。図2に示すように音速との良好な相関が見られ、相関係数は0.86となっている。このことから、被検体側に位置する音響マッチング層2を分割しないで設けた構成において、指向性を広くする場合には、音速に注目する必要があることがわかった。前記使用した音響マッチング層2のそれぞれの材料を用いたときの指向性角度は以下のようになっている。
それぞれの指向性角度は、シリコーンゴムは25度、クロロプレンゴムは23.5度、エチレン−プロピレン共重合ゴムは23.5度、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは22.9度、ウレタンゴムは20度という結果であった。なおこの測定結果のばらつきは、±0.5度程度あると考えている。
このことは、多層化した音響マッチング層を全て圧電素子1と同じように分割しない構成にしても、分割した構成と同等若しくはそれ以上の指向特性を得るには、音響マッチング層の音速を限定すれば良く、その値は1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有するゴム弾性体材料であるといえる。
これらの結果を踏まえて、本実施形態では音響マッチング層2を3層と多層化した構成にして、しかも、被検体側に位置する第3の音響マッチング層2cに音速1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有するゴム弾性体材料を用いて、分割しない構成にして、指向性も広くできるようにしている。
しかも、音響マッチング層2を3層と多層化していることから広帯域化も可能となり、これらの指向性角度と、従来の音響マッチング層2まで圧電素子1と共に分割した構成の指向性角度を比較すると、従来構成の指向性角度とほぼ同等レベルの指向性角度を得るには、被検体側に位置する音響マッチング層2の音速は1650m/sec付近の材料を使用すれば良いということになる。更に指向性を広くする場合には、音速が1650m/sec以下の材料、例えばシリコーンゴムのような材料を用いれば良いということがわかる。
また、指向性角度が狭い結果となっているウレタンゴムにおいても、ウレタンゴムの中でも音速が1650m/sec付近あるいはそれ以下の種類(例えばサンユレック株式会社製中型用ウレタン樹脂UE-644グレードは、音速が1580m/sec、音響インピーダンスが2.1メガレールス)も存在するため、ウレタンゴム材料は指向角が狭くなるということではなく、その基準は音速にあるということである。音速が1650m/sec以下の材料を選択すると、基本的にはゴム弾性体である材料に絞り込まれる。
以上のように、音響マッチング層2を圧電素子1と同じように分割しないで連続した形状の1枚のフィルムで設ける構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、音響マッチング層2の材料の音速に注目する必要がある事が分かった。
また、第3の音響マッチング層2cとしての音響インピーダンスが上記材料に挙げたように2メガレールス付近の値を有する材料は、ゴム材料に限らずプラスチック材料等にも存在する。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるが、これらの材料の音速はいずれも約1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように、第3の音響マッチング層2cを分割しない構成にした場合には、図2の傾向からも明らかのように、指向性は狭くなる。このような材料を用いる場合には、やはり音響マッチング層2を圧電素子1と同様に分割する構成にして指向性を広くする必要がある。
また、第1と第2の音響マッチング層の間に設けたフィルム9の金属膜は銅などの材料を用いるが、銅の音速が4700m/secと早くしかも5マイクロメートル以下の厚みに形成できるため、周波数特性などに影響は小さく、あまり考慮する必要がないが、フィルム9の高分子フィルムはポリイミドなどの材料が用いられる。
前記高分子フィルムの音響インピーダンスは、第1と第2の音響マッチング層2a、2bより小さく約3メガレールスの値であり、更には音速が2200m/secと遅いために、厚みが周波数特性に影響する。一般的に、3層の音響マッチング層を設けた構成での各音響マッチング層の音響インピーダンスは第1の音響マッチング層2aは8〜20メガレールス、第2の音響マッチング層は3〜8メガレールス、第3の音響マッチング層は1.7〜2.4メガレールスの範囲の値が用いられている。
本実施形態において、第1の音響マッチング層の音響インピーダンスが10メガレールス、第2の音響マッチング層の音響インピーダンスが4メガレールスの材料を用い、フィルム9の高分子フィルムとしてポリイミドの材料を用いて3層の音響マッチング層で構成した場合、3.5MHzの周波数で、周波数特性の−6dBでの比帯域を計算した結果を図10に示す。
図10において、横軸は、フィルム8としてポリイミドの高分子フィルムの厚みを波長で正規化した値で示し、また縦軸は、周波数特性の−6dBでの比帯域(帯域幅/中心周波数)の値を示している。
図10に示すように、3層の音響マッチング層にしているために、比帯域は90%以上の広帯域特性が得られており、フィルム9の厚みが厚くなるにしたがって、比帯域は小さくなっていく傾向となっている。広帯域化のために3層の音響マッチング層にしていることを考慮すると、比帯域は少なくとも90%以上の確保が必要となる。ここで比帯域を90%以上と規定すると、フィルム9の高分子の厚みは0.07波長以下にしなければならない。ちなみに今回のように周波数が3.5MHzでフィルム9の高分子フィルムにポリイミドを使用した場合の0.07波長以下の厚みは44マイクロメートル以下となる。
このように、音響マッチング層の間に音響インピーダンスが前記音響マッチング層の音響インピーダンスの範囲から外れた値のものが介在する場合には、周波数特性などに影響が小さくなるように厚みなどを設定することが必要であり、今回は影響が小さい0.07波長以下の厚みに設定すればよいことを明らかにした。
以上のように、音響マッチング層の被検体側に位置する第3の音響マッチング層の材料にゴム弾性体を設けており、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第3の音響マッチング層を圧電素子と共に加工して分割することが必要なくなるため、加工の困難さが解消される。また、フィルムに設けた導体から電気端子を取り出しているために、品質の高い安定した超音波探触子を得ることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御できることになり、超音波ビームを細く絞る事ができ、また、超音波ビームを偏向する事ができるため、分解能の高い超音波画像を提供する超音波探触子を得ることができる。
なお、第7の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に、広帯域化できる効果がある。
また、第7の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第8実施形態)
次に、本発明に係る第8実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図11は、第8実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
以下に更に詳細に説明する。PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料の圧電素子1に設けた信号電極6と背面負荷材3の間には、ポリイミドなどの高分子フィルムに銅などの金属膜を設けたフィルム8(第1の高分子フィルム)を設けており、前記信号用電極6と前記フィルム8の金属膜の電気端子7が接するようにし、前記背面負荷材3側が高分子のフィルムが接するように設ける。
一方、圧電素子1面上に設けた接地電極5側には、グラファイトのような導体(絶縁体材料であれば絶縁体の周囲をめっきなどで金属の導体を構成する)である第1の音響マッチング層2aを設けた構成にする。以上にような構成に形成した後、背面負荷材3の一部、フィルム8、圧電素子1、第1の音響マッチング層2aをスライシングマシーンなどで加工して分割する。
分割後の分割溝には、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料を充填し、さらに、第1の音響マッチング層2aおよび分割溝に充填した部分の上面には、接地電極5から第1の音響マッチング層を経由して取り出す電気端子の機能を有する金属膜の導体と高分子フィルムを有したフィルム9(第2の高分子フィルム)を設け、さらにフィルム9の上面には、第2の音響マッチング層2bを設け、さらに、前記第2の音響マッチング層2bの上面(被検体側)に、第3の音響マッチング層2cを設ける。
フィルム9、第2、第3の音響マッチング層2b、2cは、図示のように分割しないで連結した状態で設けている。また、第2、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。更に必要に応じて、第3の音響マッチング層2cの上面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を構成する。
本実施形態のポイントは、第2の音響マッチング層2bも第3の音響マッチング層2cと同様に分割しない構成にして設けることである。第2の音響マッチング層2bとして、圧電素子1のように分割しない場合には、前述しているように指向性が狭くなるため、望ましくない。しかし、分割しない構成にしても指向性が狭くならければ問題なく、しかも、加工して分割するときには、可能な限り構成部品数は少ない方がよいことは、第7の実施形態でも説明している。
指向性が狭くならないように、第2、第3の音響マッチング層2b、2cを分割しない構成にするためには、第2の音響マッチング層2bも、図2および第7の実施形態で説明したように、第3の音響マッチング層2cのようにゴム弾性体の材料で、しかも音速が1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有する材料を用いればよい。
第2の音響マッチング層2bは、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲で、且つ音速が1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有する材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム1に対して、銅金属粉(平均粒径1.2マイクロメートル)のフィラーを重量比で9の割合で充填した材料は音響インピーダンスが5.3メガレールス、また音速は1070m/secであり、第2の音響マッチング層2bとして要望される値の特性を有している材料を得ることができる。
このように合成ゴム系のゴム弾性体を主体とした材料に、ほかのタングステン、銀、鉄、ニッケルなどの金属粉や酸化物のような密度の大きいフィラーを充填することにより、第2の音響マッチング層2bに要望される音響インピーダンスおよび音速の値の材料を得ることができる。
また、第1の音響マッチング層と、第2の音響マッチング層2bの間に設けたフィルム9の高分子フィルムの厚みについては、第1実施形態と同様に厚みは、0.07波長以下にする。
なお、第8の実施の形態では、第2、第3の音響マッチング層2b、2cの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
以上のように、音響マッチング層の第2、第3の音響マッチング層の材料にゴム弾性体を設けており、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第2、第3の音響マッチング層を圧電素子と共に加工して分割することが必要なくなるため、加工の困難さは解消される。また、フィルムに設けた導体から電気端子を取り出しているために、品質の高い安定した超音波探触子を得ることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御できることになり、超音波ビームを細く絞る事ができ、また、超音波ビームを偏向する事ができるため、分解能の高い超音波画像を提供する超音波探触子を得ることができる。
なお、第8の実施の形態では、第2、第3の音響マッチング層2b、2cの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態では、圧電素子1とともに、第1の音響マッチング層まで分割した構成について説明したが、このほか圧電素子1とともに、第1層の音響マッチング層2a、フィルム9まで分割し、その上面に、音速が1650m/sec若しくはそれ以下でゴム弾性体を有した第2、第3の音響マッチング層2b、2cを形成した構成にしても、同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2006年1月31日出願の日本特許出願(特願2006−023170)、2006年1月31日出願の日本特許出願(特願2006−023169)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明に係る超音波探触子は、人体等の被検体の超音波診断を行う各種医療分野、さらには材料や構造物の内部探傷を目的とした工業分野において利用が可能である。
本発明は、生体等の被検体への超音波の発信または被検体からの超音波の受信に使用される超音波探触子に関する。
超音波診断装置は、超音波をヒトや動物等の生体の被検体内に照射し、生体内で反射されるエコー信号を検出して生体内組織の断層像等をモニタに表示し、被検体の診断に必要な情報を提供する。この際、超音波診断装置は、被検体内への超音波の送信と、被検体内からのエコー信号を受信するために超音波探触子を利用している。
図12は、このような超音波探触子の一例を示している。図12において、超音波探触子20は、被検体(図示せず)との間で超音波を送受信するべく、一定方向に配列された複数個の圧電素子11と、圧電素子11の被検体側の前面(図12の上方)に設けられる1層以上(図示は3層)からなる音響マッチング層12(12a、12b、12c)と、音響マッチング層12の被検体側表面に設けられた音響レンズ13と、圧電素子11に対して音響マッチング層12の反対側となる背面に設けられる背面負荷材14とから構成されている。
圧電素子11の前面と背面には、それぞれ図示しない電極が配置され、圧電素子11との間で電気信号の送受信を行う。圧電素子11は、PZT系等の圧電セラミック、単結晶、前記材料と高分子を複合した複合圧電体、あるいはPVDF等に代表される高分子の圧電体等によって形成され、電圧を超音波に変換して被検体内に送信し、あるいは被検体内で反射したエコーを電気信号に変換して受信する。図示の例では、X方向に複数の圧電素子11が配列されている。このような圧電素子11の複数個の配列は、電子的に超音波を走査して偏向あるいは集束することができ、いわゆる電子走査を可能とする。
音響マッチング層12は、超音波を効率よく被検体内に送受信するために設けられ、より具体的には、圧電素子11の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づける役割を果たす。図示の例では、3層の音響マッチング層12a、12b、12cが設けられているが、これは1層から2層であっても4層以上であってもよい。また図示の例では、音響マッチング層12が複数の圧電素子11の上に一体に形成されているが、各圧電素子11にそれぞれ対応して分割して配置している。また、超音波の指向性を広くする構成も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
音響レンズ13は、診断画像の分解能を高めるために超音波ビームを絞る役割を果たす。図示の例では、音響レンズ13は図のY方向(圧電素子11の配列方向Xに直交する方向)に沿って延びると共に、Z方向に凸状となるかまぼこ型に形成され、超音波ビームをY方向に絞ることができる。音響レンズ13はオプション要素であり、必要に応じて設けられる。
背面負荷材14は、圧電素子11に結合されてこれを保持し、さらに不要な超音波を減衰させる役割を果たす。なお、本明細書では、図のX方向を「(圧電素子の)配列方向」、Y方向を「(圧電素子の)幅方向」、Z方向を「(圧電素子の)厚さ方向」とも呼ぶものとする。
特開2003−125494号公報
特開2005−198261号公報
電子走査型の超音波診断装置は、圧電素子を任意の群にして個々の圧電素子に一定の遅延時間与えて駆動し、圧電素子から被検体内に超音波の送信と受信を行う。このような遅延時間を与えることで超音波ビームが収束あるいは拡散され、広い視野幅あるいは高分解能の超音波画像を得ることができる。
この構成は、一般的なシステムとして既に知られている。超音波探触子として、係る高分解能の超音波画像を得るために重要なことは、電子的に走査する複数個の所定の方向に配列された個々の圧電素子から音響マッチング層、更には必要に応じて音響レンズを介して被検体に放射される超音波ビームの指向性が広いことである。
電子走査型の超音波探触子は、複数個配列したある群の圧電素子(例えば64素子)のそれぞれの送受信時間を遅延させて位相を制御することにより、超音波ビームを所望の位置に絞ってビームを細くし高分解能化したり、あるいは超音波ビームを偏向したりして扇形状に走査する。
この場合、超音波ビームは、それぞれの群で使用する圧電素子の数が多ければ(例えば64素子から96素子にすれば)、その分だけ超音波の開口が大きくなりビームを強く絞る、つまり細くすることができ、結果として分解能を向上させることが可能となる。
しかしながら、開口を大きくするためには、個々の圧電素子の指向性が広くないと、いくら開口を大きく(遅延をかけて電気信号を印加する素子数を多く)しても、寄与しない圧電素子が出てきて結果として開口は狭くなり、超音波ビームを細く絞ることができなくなる。以上のことから、圧電素子の指向性は広くすることが望まれている。
指向性を広くするための1つの方策として、特許文献1に示すような複数個の一定の方向に配列された圧電素子に対応して全ての音響マッチング層までを分割し、隣接する圧電素子及び音響マッチング層相互間での音響的な結合を小さくした構成とすることが挙げられる。
しかしながら、この構成においては、配列された圧電素子及び音響マッチング層毎に分割して配列する必要があり、超音波の周波数を広帯域化するために音響マッチング層を多層化すると、分割加工するときに加工が困難になり安定した特性の超音波探触子を得ることが困難になる。
近年、超音波探触子の使用周波数がより広帯域化される傾向にあり、複数の周波数で使用する場合が多くなってきていることから、高分解能の超音波画像を得るために、広帯域化と共に超音波探触子の指向性を広くすることがますます重要になってきている。
本発明の目的は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、加工が容易で、高分解能の画像を得ることができる超音波探触子を提供することである。
本発明の超音波探触子は、配列された複数の圧電素子と、ゴム弾性体材料からなり、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられた音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、音響マッチング層を分割することなく設けることにより、圧電素子と共に分割加工する必要がなくなるため、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。また、音響マッチング層をゴム弾性体材料とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記ゴム弾性体材料の音響インピーダンスが、前記圧電素子の音響インピーダンスより小さく、前記被検体の音響インピーダンスより大きいことを特徴とする。
上記構成によれば、ゴム弾性体材料の音響インピーダンスを、圧電素子の音響インピーダンスより小さく、被検体の音響インピーダンスより大きくすることにより、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記音響マッチング層の音速が、1650m/sec、またはそれ以下の値を有することを特徴とする。
上記構成によれば、音響マッチング層の音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、分割しない音響マッチング層であっても、分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された音響マッチング層をさらに備えることを特徴とする。
上記構成によれば、圧電素子側の音響マッチング層だけを圧電素子と同じように分割するので、圧電素子を狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができる。また、平面状の音響マッチング層と複数の圧電素子の間に、分割した音響マッチング層を備えるので、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明は、配列された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、音響インピーダンスが1.8〜2.2メガレールスであり、かつ音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有する第3の音響マッチング層と、前記第3の音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に設けられた第1、第2の音響マッチング層とを備えることを特徴とする超音波探触子である。
上記構成によれば、第3の音響マッチング層の音響インピーダンスを1.8〜2.2メガレールスとし、かつ音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とするとともに、第1、第2の音響マッチング層を備えることにより、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、前記第1、第2の音響マッチング層は、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第3の音響マッチング層と複数の圧電素子の間に、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第1、第2の音響マッチング層を備えるので、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料であることを特徴とする。
また、本発明の超音波探触子は、配列された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有する第2、第3の音響マッチング層と、前記第2、第3の音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に設けられた第1の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第2、第3の音響マッチング層の音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第2、第3の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、前記第1の音響マッチング層が、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第2、第3の音響マッチング層を設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層を少なくすることができ、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第2、第3の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料であることを特徴とする。
また、本発明の超音波探触子は、配列された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有する第4の音響マッチング層と、前記第4の音響マッチング層と前記複数の圧電素子の間に設けられた第1、第2、第3の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第4の音響マッチング層の音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。また、第1、第2、第3の音響マッチング層を第4の音響マッチング層と複数の圧電素子の間に設けることにより、圧電素子の音響インピーダンスを段階的に被検体の音響インピーダンスに近づけ、超音波を効率よく被検体内に送受信することができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第4の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の一方の面に設けられ、前記第1、第2、第3の音響マッチング層が、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第4の音響マッチング層を設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3、第4の音響マッチング層が、前記複数の圧電素子の片側に設けられ、前記第1、第2の音響マッチング層が、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列されることを特徴とする。
上記構成によれば、第3、第4の音響マッチング層を設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消し安定した超音波探触子を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料で、音速が1650m/sec、またはそれ以下の値を有することを特徴とする。また、本発明の超音波探触子は、前記第4の音響マッチング層が、ゴム弾性体材料であることを特徴とする。
上記構成によれば、音響マッチング層をゴム弾性体材料とし、音速を1650m/sec、またはそれ以下の値とすることにより、音響マッチング層を分割した構成と同等若しくはそれより広い指向性にすることができる。
本発明の超音波探触子は、背面負荷材と、前記背面負荷材の上面に配列された複数の圧電素子とを備える超音波探触子であって、前記背面負荷材と前記複数の圧電素子との間に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に電気端子を設けた第1の高分子フィルムと、前記複数の圧電素子の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第1の音響マッチング層と、前記第1の音響マッチング層の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に電気端子を設けた第2の高分子フィルムと、前記第2の高分子フィルムの上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第2の音響マッチング層と、前記第2の音響マッチング層の上面に設けられ、ゴム弾性体材料からなる第3の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第3の音響マッチング層をゴム弾性体材料で形成することにより、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第3の音響マッチング層を分割することなく設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消できる。また、高分子フィルムに電気端子を設けることにより、電気端子を容易に形成することができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記第3の音響マッチング層の音速が、1650m/sec、またはそれ以下の値を有することを特徴とする。また、本発明の超音波探触子は、前記第2の高分子フィルムの音響インピーダンスが、前記第2の音響マッチング層の音響インピーダンスより小さく、且つ、厚さが使用周波数に対して0.07波長以下であることを特徴とする。
また、本発明の超音波探触子は、背面負荷材の上面に配列された複数の圧電素子を備える超音波探触子であって、前記背面負荷材と前記複数の圧電素子との間に設けられ、電気端子を設けた第1の高分子フィルムと、前記複数の圧電素子の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に配列された第1の音響マッチング層と、前記第1の音響マッチング層の上面に設けられ、それぞれの圧電素子に対応させて個別に電気端子を設けた第2の高分子フィルムと、前記第2の高分子フィルムの上面に設けられ、ゴム弾性体材料からなる第2の音響マッチング層と、前記第2の音響マッチング層の上面に設けられ、ゴム弾性体材料からなる第3の音響マッチング層とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、第2、第3の音響マッチング層をゴム弾性体材料で形成することにより、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第2、第3の音響マッチング層を分割することなく設けることにより、圧電素子と共に加工して分割する音響マッチング層が少なくなるため、加工の困難さを解消できる。また、高分子フィルムに電気端子を設けることにより、電気端子を容易に形成することができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御を行い、超音波ビームを細く絞って偏向することが可能になり、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
また、本発明の超音波探触子は、前記ゴム弾性体材料の主体が、合成ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムまたはエラストマーであることを特徴とする。さらに、本発明の超音波探触子は、前記合成ゴムの主体が、エチレン−プロピレン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムまたはアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム材料であることを特徴とする。
本発明によれば、圧電素子の一方の面に設けた音響マッチング層をゴム弾性体材料で構成することにより、音響マッチング層を分割することなく、音響マッチング層を分割した構成と同等あるいはそれ以上の指向性にさせることができるため、加工が容易で、高分解能な診断画像が得られる超音波探触子を提供することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された音響マッチング層2(第1の音響マッチング層)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1は個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。
図2は、図1に示す複数個の圧電素子1の配列方向Xの超音波の指向性角度と音響マッチング層2のゴム弾性体材料の音速との関係を示した図である。複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントである。
第1実施形態では、図1に示すように、背面負荷材3上に設けた圧電素子1をスライシングマシーンなどにより分割し、分割した分割溝にシリコーンゴムやウレタンゴムを充填し、その後分割し配列された圧電素子1の面上にゴム弾性体材料の音響マッチング層2を設ける。
音響マッチング層2は既に知られているように、圧電素子1と被検体(図示せず)のそれぞれの音響インピーダンスの間の値を有した材料を用いて、その厚みは使用周波数の4分の1波長の厚みを基本としている。更に、音響マッチング層2面上には、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料で音響レンズ4を設ける。
音響マッチング層2は、従来では指向性を広くするために圧電素子1上に設けた後、圧電素子1と同じに分割した構成にしていた。これは音響マッチング層2を圧電素子1と同じに分割しないと、音響マッチング層2が連続して繋がっているために、音響マッチング層2内で横方向にも超音波が伝播して指向性が狭くなるということを回避するためである。
しかし、圧電素子1と音響マッチング層2、更には背面負荷材3の一部まで一緒にスライシングマシーンで加工分割して、特に分割間隔が0.1mmという狭い間隔になってくると複数の材料を一緒に加工するために、均一に、安定的に分割することが困難になってくるという課題を有していた。
本実施形態は、加工が容易で均一に、また安定して作成できるように圧電素子1のみを分割して配列した圧電素子1面上に、分割しないで連結した1枚の状態でゴム弾性体材料の音響マッチング層2を設けた構成にし、しかも指向性は、音響マッチング層2を分割した構成と同等あるいはそれ以上にできるようにしたことがポイントである。
音響マッチング層2の材料としてのゴム弾性体は、圧電素子1と被検体のそれぞれの音響インピーダンスの間の値を有した材料を用い、厚みは使用周波数の4分の1波長の厚みを基本にしている。音響マッチング層2として、いろいろな材料を実験により検討した結果、同じゴム弾性体で、硬さ、および音響インピーダンスも同じような値を有した材料においても、指向性に違いがあることを見出した。
例えば、周波数が3.5MHzの圧電素子1を、圧電素子1の間隔0.38mm(0.19mmの間隔で分割した2つを電気的に束ねた状態)に分割したときの指向性の角度は、−6dBのレベルで定義すると音響マッチング層2を圧電素子1と同時に分割した構成のタイプは、約23度の指向角となる。
すなわち、例えば、方向Zに放射した超音波ビームの強さが−6dB低下するのが、方向Zから約23度の方向となる。なお、圧電素子1および音響マッチング層2の分割した分割溝には、シリコーンゴム材を充填した構成にしている。
前記の方法で圧電素子1を同様の仕様で分割して、音響マッチング層2は分割しないで図1のように構成したタイプにおいて、音響マッチング層2の材料として、シリコーンゴム(硬さがショア−A硬度で76、音速915m/sec、音響インピーダンス2.1メガレールス)、クロロプレンゴム(硬さがショア−A硬度で70、音速1630m/sec、音響インピーダンス2.16メガレールス)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で65、音速1480m/sec、音響インピーダンス1.94メガレールス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で60、音速1640m/sec、音響インピーダンス1.97メガレールス)、およびウレタンゴム(硬さがショア−A硬度で78、音速1850m/sec、音響インピーダンス1.98メガレールス)のそれぞれ用いて配列された圧電素子1面上に設け、更にその音響マッチング層2の上面にシリコーンゴムの音響レンズを設けて、圧電素子1の配列方向の超音波の指向特性を測定した。
その結果、音響マッチング層2の材料による指向特性に違いがあることがわかった。なお、圧電素子1を分割した分割溝には、音響マッチング層2まで分割した構成と同様にシリコーンゴムの材料を充填している。
また、上記に挙げた材料のウレタンゴム以外の材料には、音響インピーダンスを調整するためにアルミナ、カーボンあるいは炭酸カルシウムなどのフィラーを任意の量を充填した材料を用いている。
上記のような5種類の材料を音響マッチング層2の指向特性の違いは、材料の硬さ、音響インピーダンス等との相関はなく、影響していなかった。指向特性に影響している、つまり相関があったのは、音響マッチング層2材料の音速の特性であり、これは良好な相関が見られた。
3.5MHzの周波数で−6dBのレベルで測定した指向性角度と材料の音速との関係の結果を図2に示す。図2に示すように音速との良好な相関が見られ、相関係数は0.86となっている。このことから、音響マッチング層2を分割しないで設けた構成において、指向性を広くする場合には音速に注目する必要があることがわかった。前記使用した音響マッチング層2のそれぞれの材料を用いたときの指向性角度は以下のようになっている。
それぞれの指向性角度は、シリコーンゴムは25度、クロロプレンゴムは23.5度、エチレン−プロピレン共重合ゴムは23.5度、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは22.9度、ウレタンゴムは20度という結果であった。なおこの測定結果のばらつきは、±0.5度程度あると考えている。
これらの指向性角度と従来の音響マッチング層2まで圧電素子1と共に分割した構成の指向性角度を比較すると、従来構成の指向性角度とほぼ同等レベルの指向性角度を得るには、音響マッチング層2の音速は1650m/sec付近の材料を使用すれば良いということになる。更に指向性を広くする場合には、図2の結果から音速が1650m/sec以下の材料、例えばシリコーンゴムのような材料を用いれば良いということがわかる。
また、指向性角度が狭い結果となっているウレタンゴムにおいても、ウレタンゴムの中でも音速が1650m/sec付近あるいはそれ以下の種類(例えばサンユレック株式会社製中型用ウレタン樹脂UE-644グレードは、音速が1580m/sec、音響インピーダンスが2.1メガレールス)も存在するのでウレタンゴムでは指向角が狭くなるということではなく、その基準は音速にあるということである。音速が1650m/sec以下の材料を選択すると、基本的にはゴム弾性体である材料に絞り込まれる。
以上のように、音響マッチング層2を圧電素子1と同じように分割しないで連続した形状の1枚のフィルムで設ける構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、音響マッチング層2の材料の音速に注目する必要がある事が分かった。
例えば、音響インピーダンスが上記材料に挙げたように約2メガレールスの値を有する材料は、ゴム弾性体材料に限らずプラスチック材料等にも存在する。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるがこれらの材料の音速はいずれも約1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように音響マッチング層2を分割しない構成にした場合には、図2の傾向からも明らかのように、指向性は狭くなる。このような材料を用いる場合にはやはり音響マッチング層2を圧電素子1と同様に分割する構成にして指向性を広くする必要がある。
なお、音響マッチング層2の材料として、主体が合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、音響マッチング層2の材料として、主体が合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第1の実施の形態では1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第1の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、音響マッチング層にゴム弾性体を用いてもよい。
また、第1の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図3は、第2実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された2層の音響マッチング層2(2a、2b)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aは、個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、圧電素子1側に位置する音響マッチング層2aの上面には第2の音響マッチング層2bを分割しない連続した1枚のフィルムで設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第1の実施の形態と同様である。
第1実施形態では、音響マッチング層2は1層の場合について説明したが、圧電素子1と被検体との音響インピーダンスの差が大きい例えば、圧電素子としてPZT系のような圧電セラミックスを用いた場合には、約30メガレールス、被検体の音響インピーダンスは約1.5メガレールスと大きな差があるため、1層の音響マッチング層では周波数の広帯域化に限界がある。広帯域化するためには音響マッチング層2を2層以上の多層化する必要がある。
しかしながら、音響マッチング層を2層以上の多層化する場合には、音響マッチング層2も圧電素子1と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。この事は、圧電素子1と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層2を多層化することによって厚みは層が増加した分、厚くなり更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態で2層以上の多層化の音響マッチング層、ここでは2層の音響マッチング層にしたときにおいて、図3に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する音響マッチング層2aとを分割して、更に音響マッチング層2aの上面に連続した1枚の音響マッチング層2bを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また音響マッチング層2aには、グラファイト、エポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用いる。
また、音響マッチング層2bの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなど第1の実施の形態で説明したものと同じゴム弾性体を主体とした材料を用いる。
音響マッチング層2bの音響インピーダンスが第1の実施の形態の場合と違う値が必要な場合には、主体となるゴム弾性体の主体材料に金属、酸化物などのフィラーを充填して調整することによって得ることができる。
ここで音響マッチング層2bは、分割しないで連続した1枚のフィルムとして設ける条件は、指向性が音響マッチング層2bを分割した構成の指向性と、同等か若しくはそれ以上の特性が得られるように、ゴム弾性体であること、更に前記ゴム弾性体材料の音速は1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有する材料を選択することである。これは第1の実施の形態の図2で示した結果からいえる。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
以上のように、2層の音響マッチング層2の圧電素子1側に位置する音響マッチング層2aを圧電素子1と同じように分割し、更に音響マッチング層2aの上面には、連続した1枚の音響マッチング層2bを設けた構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、音響マッチング層2bの材料の音速に注目する必要がある。
例えば、音響マッチング層2b材料としてはゴム弾性体材料に限らずプラスチック材料等にも存在する。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるがこれらの材料の音速はいずれも1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように音響マッチング層2を分割しない構成にした場合には、図2に示す結果からも明らかのように、指向性角度は狭くなる。このような材料を用いる場合には、やはり音響マッチング層2bを圧電素子1と音響マッチング層2a同様に分割する必要があるといえる。
なお、第2の実施の形態では、音響マッチング層2bの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、音響マッチング層2bの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、音響マッチング層2を2層とした場合について説明したが、このほか3層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成し場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第2の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第2の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、音響マッチング層にゴム弾性体を用いてもよい。
また、第2の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図4は、第3実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aおよび第2の音響マッチング層2bは、個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、第2の音響マッチング層2bの上面には第3の音響マッチング層2cを分割しない連続した1枚のフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第2の実施の形態と同様である。
第2実施形態では、音響マッチング層2が2層の場合について説明したが、音響マッチング層2を更に3層化することにより、更なる広帯域化が可能となる。しかしながら、音響マッチング層を3層以上の多層化する場合には、参考文献1,2に示すように、音響マッチング層2(2a、2b、2c)を圧電素子1と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。
この事は、圧電素子1と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層2を多層化することによって厚みは、層が増加した分、厚くなり、更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、広帯域化が可能で、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態の3層の音響マッチング層にしたときにおいて、図4に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bとを分割して、更に第1の音響マッチング層2a、第2の音響マッチング層2bの上面に連続した1枚の第3の音響マッチング層2cを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンス8〜20メガレールスの範囲の値を有するシリコン単結晶、水晶、溶融石英などのガラス、快削性セラミックス、またはグラファイトなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲の値を有するグラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用いる。
また、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。
音響マッチング層2(2a、2b、2c)のそれぞれの音響インピーダンスは、各材料あるいは周波数特性により選択される。例えば、周波数を3.5MHzの中心周波数に設定して、背面負荷材3の音響インピーダンス7メガレールス、圧電素子1にPZT系の圧電セラミックスでPZT-5H相当の材料を用い、第1の音響マッチング層2aは音響インピーダンス9メガレールスのグラファイトを用い、第2の音響マッチング層2bは音響インピーダンス4メガレールスの酸化物を充填したエポキシ樹脂を用いて、第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスを1.5〜2.5メガレールスの範囲で可変した構成において計算した。
−6dBでの周波数特性の比帯域、およびパルス長−6dB、−20dB、−40dBのレベルで評価した結果を図5に示す。図5において、横軸は第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンス値、また左側の縦軸はパルス長、右側の縦軸は−6dBでの周波数比帯域(帯域幅/中心周波数)の値を表している。
図5において、パルス長は−6dBのレベルでは第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスが変化してもほとんど変わらないが、−20dB、−40dBのレベルでは変化があり、音響インピーダンスが1.8〜2.3メガレールスの範囲で小さい値になっていることがわかる。このパルス長は、小さい値になるほど分解能が高くなり良好であるので、小さい値にすることが分解能を向上させることで重要である。
一方、比帯域の値が大きいほど分解能、被検深度が深くなる。図5の周波数比帯域について見ると、第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスが約2.3メガレールスより大きくなると、比帯域は80%以下になり、広帯域化ができなくなってくることがわかる。以上のように、パルス長および比帯域の両特性の結果から、第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスは1.8〜2.2メガレールスの範囲が望ましいことがわかる。
第3の音響マッチング層2cの音響インピーダンスが1.8〜2.2メガレールスの範囲の材料としては、主体となるゴム弾性体の主体材料単体で得られるものはそのまま使用できるが、音響インピーダンスが範囲外の値を有する材料については、フィラーなどを充填して調整することによって得ることができる。
ここで第3の音響マッチング層2cは、分割しないで連続した1枚のフィルムとして設ける条件が、指向性が第3の音響マッチング層2cを分割した構成の指向性と、同等か若しくはそれ以上の特性が得られるようなゴム弾性体であること、更に前記弾性体材料の音速は1650m/sec以下の値を有する材料を選択することである。これは第1の実施の形態の図2で示した結果からいえることである。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
以上のように、3層の音響マッチング層2の圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bを圧電素子1と同じように分割し、更に第2の音響マッチング層2bの上面には、連続した1枚の第3の音響マッチング層2cを設けた構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、第3の音響マッチング層2cの材料の音速に注目する必要がある。
例えば、第3の音響マッチング層2cに適した材料として、ゴム材料に限らず、プラスチック材料等も考えられる。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるがこれらの材料の音速はいずれも1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように第3の音響マッチング層2cを分割しない構成にした場合には、図2に示す結果からも明らかのように、指向性角度は狭くなる。このような材料を用いる場合には、やはり第3の音響マッチング層2cを圧電素子1と第1、第2の音響マッチング層2a、2b同様に分割する必要があるといえる。
なお、第3の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、音響マッチング層2を3層とした場合について説明したが、このほか4層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成し場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第3の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第3の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図6は、第4実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aが個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、第1の音響マッチング層2aの上面には、第2の音響マッチング層2b、第3の音響マッチング層2cを分割しないで連続したフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第2、3の実施の形態と同様である。
第2実施形態では、音響マッチング層2は2層の場合について説明したが、音響マッチング層2を更に3層化することにより、更なる広帯域化が可能となる。しかしながら、音響マッチング層を3層以上の多層化する場合には、参考文献1,2に示すように、音響マッチング層2(2a、2b、2c)も圧電素子1と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。
この事は、圧電素子1と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層2を多層化することによって厚みは、層が増加した分、高くなり更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、広帯域化が可能で、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態の3層の音響マッチング層にしたときにおいて、図6に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1の音響マッチング層2aとを分割して、更に第1の音響マッチング層2aの上面に連続した第2、第3の音響マッチング層2b、2cを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンス8〜20メガレールスの範囲の値を有するシリコン単結晶、水晶、溶融石英などのガラス、快削性セラミックス、またはグラファイトなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲の値を有する金属粉、酸化物粉などのフィラーを充填したゴム弾性体を用いる。
また、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。本実施形態のポイントは第2の音響マッチング層2bも第3の音響マッチング層2cと同様に分割しない構成にして設けることである。
第2の音響マッチング層2bとして、圧電素子1のように分割しない場合には前述しているように指向性が狭くなるため、望ましくない。しかし、分割しない構成にしても指向性が狭くならければ、問題ないわけであり、しかも、加工して分割するときにはできるだけ、構成部品数は少ない方がよいことは第2、3の実施形態で説明している。
第2、第3の音響マッチング層2b、2cを分割しない構成にするためには、第2の音響マッチング層2bも図2および第3の実施形態で説明したように、第3の音響マッチング層2cのようにゴム弾性体の材料で、しかも音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料を用いれば、第2の音響マッチング層2bも分割しなくとも指向性が狭くならない特性を得ることができる。
第2の音響マッチング層2bは、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲で、且つ音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム1に対して、銅金属粉(平均粒径1.2マイクロメートル)のフィラーを重量比で9の割合で充填した材料は音響インピーダンスが5.3メガレールス、また音速は1070m/secであり、第2の音響マッチング層2bとして要望される値の特性を有している材料を用いる。
このように合成ゴム系のゴム弾性体を主体とした材料に、タングステン、銀、鉄、ニッケルなどの金属粉や酸化物のような密度の大きいフィラーを充填することにより、第2の音響マッチング層2bに要望される音響インピーダンス、音速の値の材料を得ることができる。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
なお、第4の実施の形態では、第2の音響マッチング層2bの材料として、合成ゴムであるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムに銅粉のフィラーを充填した材料を用いた場合について説明したが、このほかクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム、エラストマー系の材料等と、ほかのフィラーの組み合わせた材料であっても同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、音響マッチング層2を3層とした場合について説明したが、このほか4層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成し場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第4の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第4の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第4の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第5実施形態)
以下、本発明に係る第5実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図7は、第5実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された4層の音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する音響マッチング層2a、2bおよび2cは、個々に分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。更に、音響マッチング層2cの上面には音響マッチング層2dを分割しない連続した1枚のフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1の方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントである。
圧電素子1の被検体側に設ける音響マッチング層2を多層化することにより、広帯域化が可能となる。しかしながら、音響マッチング層を4層以上に多層化する場合には、図12(特許文献1,2参照)に示すように、3層の音響マッチング層12も圧電素子11と同様に分割した構成にしなければ指向性を広くすることができなかった。
このことは、圧電素子11と同じようにスライシングマシーンなどで分割するために、音響マッチング層12を更に多層化することによって厚みは、層が増加した分、厚くなり更には分割する材料がより多くなるため、分割するときの加工が困難になり、均一で安定したものを作成することが困難になっている。本実施の形態はこれらの課題を解決し、広帯域化が可能で、且つ指向性を広くできる構成である。
本実施形態の4層の音響マッチング層にしたときにおいて、図7に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に設けた第1、2、3の音響マッチング層2a、2b、2cとを分割して、更に第3の音響マッチング層2cの上面に連続した1枚の第4の音響マッチング層2dを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンスが圧電素子1より小さい値を有するシリコン単結晶、水晶、テルライトガラス、快削性セラミックスなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが第1の音響マッチング層2aより小さい値を有する溶融石英などを代表とするガラス系材料、グラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用い、第3の音響マッチング層2cの材料としては、音響インピーダンスが第2の音響マッチング層2bより小さい値を有するグラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用いる。
また、第4の音響マッチング層2dの材料としては、音響インピーダンスが第3の音響マッチング層2cより小さい値を有するシリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびポリウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。これら音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の厚みは公知のように、使用周波数の4分の1波長の厚みを基本にする。
本実施形態は、加工が容易で均一に、また安定して作成できるように圧電素子1と第1、第2、第3の音響マッチング層2(2a、2b、2c)までを分割して配列し、第3の音響マッチング層2cの上面に分割しないで連結した1枚の状態でゴム弾性体材料の第4の音響マッチング層2dを設けた構成にしている。しかも指向性は、第4の音響マッチング層2dまで分割した構成と同等あるいはそれ以上にできるようにしたことがポイントである。
音響マッチング層を分割しない構成で指向性を広くするためには、第1の実施の形態の図2でも説明したように、音響マッチング層は、ゴム弾性体材料で、しかも音速は1650m/sec若しくはそれ以下の値の特性を有するものであればよい。この特性を有した材料を第4の音響マッチング層に用いる。
なお、第4の音響マッチング層2dの材料として、主体が合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第4の音響マッチング層2dの材料として、主体が合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第5の実施の形態では1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第5の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第5の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
以上の構成により、前記音響マッチング層の被検体側に位置する第4の音響マッチング層としてゴム弾性体で音速を規定して、分割しない構成にすることにより周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になり、さらに、第4の音響マッチング層を圧電素子と共に加工して分割することが必要なくなるため、加工の困難さは解消され安定した超音波探触子を得ることができ、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御できることになり、超音波ビームを細く絞る事ができ、また、超音波ビームを偏向する事ができるため、分解能の高い超音波画像を提供する超音波探触子を得ることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明に係る第6実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図8は、第6実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された4層の音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
両電極5、6は、電気端子7を経由しケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
また、図示の例では、圧電素子1と、圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bが分割されており、これら分割された溝の部分には音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料が充填されている。
更に、第2の音響マッチング層2bの上面には、第3の音響マッチング層2c、第4の音響マッチング層2dを分割しないで連続したフィルムを設ける。更に、必要に応じてシリコーンゴムなどの材料を用いて音響レンズを設けた構成にする。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1のX方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントであることは第1の実施の形態と同様である。
本実施形態の4層の音響マッチング層にしたときにおいて、図8に示すように、圧電素子1と圧電素子1側に位置する第1、第2の音響マッチング層2a、2bとを分割して、更に第2の音響マッチング層2bの上面に連続した第3の音響マッチング層2cを設け、更に第3の音響マッチング層2cの上面に連続した第4の音響マッチング層2dを設けた構成にする。
圧電素子1の材料としては、PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料を用い、また第1の音響マッチング層2aには、音響インピーダンスが圧電素子1より小さい値を有するシリコン単結晶、水晶、テルライトガラス、快削性セラミックスなどの材料が用いられ、また、第2の音響マッチング層2bとしては、音響インピーダンスが第1の音響マッチング層2aより小さい値を有する溶融石英などを代表とするガラス系材料、グラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂を用い、第3の音響マッチング層2cの材料としては、音響インピーダンスが第2の音響マッチング層2bより小さい値を有し、ゴム弾性体材料で、且つ音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有するものを用いる。
また、第4の音響マッチング層2dの材料としては、音響インピーダンスが第3の音響マッチング層2cより小さい値を有するシリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。これら音響マッチング層2(2a、2b、2c、2d)の厚みは公知のように、使用周波数の4分の1波長の厚みを基本にする。
本実施形態は、加工が容易で均一に、また安定して作成できるように圧電素子1と第1、第2の音響マッチング層2(2a、2b)までを分割して配列し、第2の音響マッチング層2bの上面に分割しないで連結した1枚の状態でゴム弾性体材料の第3の音響マッチング層2cと、更にその上面に第3の音響マッチング層2cと同様に分割しないで連結した1枚の状態で、第4の音響マッチング層2dを設けた構成にしている。しかも指向性は、第3、第4の音響マッチング層2c、2dまで分割した構成と同等あるいはそれ以上にできるようにしたことがポイントである。
第3の音響マッチング層2cとして、圧電素子1のように分割しない場合には前述しているように指向性が狭くなるため、望ましくない。しかし、分割しない構成にしても指向性が狭くならければ、問題ないわけであり、しかも、加工して分割するときにはできるだけ、構成部品数は少ない方がよいことは第1の実施形態で説明している。
第3、第4の音響マッチング層2c、2dを分割しない構成にするためには、第3の音響マッチング層2cも図2および第1の実施形態で説明したように、第4の音響マッチング層2dのようにゴム弾性体の材料で、しかも音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料を用いれば、第3の音響マッチング層2cも分割しなくとも指向性が狭くならない特性を得ることができる。
第3の音響マッチング層2cは、音響インピーダンスは第2、第4の音響マッチング層2b、2dの間を有する値を有し、音速が1650m/sec若しくはそれ以下の値を有する材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム1に対して、銅金属粉(平均粒径1.2マイクロメートル)のフィラーを9の割合で充填した材料は音響インピーダンスが5.3メガレールス、また音速は1070m/secであり、第3の音響マッチング層2cとして要望される値の特性を有している材料を用いる。
このように合成ゴム系のゴム弾性体を主体とした材料に、タングステン、銀、鉄、ニッケルなどの金属粉や酸化物のような密度の大きいフィラーを充填することにより、第3の音響マッチング層2cに要望される音響インピーダンス、音速の値の材料を得ることができる。
このように圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることが可能になることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
なお、第6の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴムであるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムに銅粉のフィラーを充填した材料を用いた場合について説明したが、このほかクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム、エラストマー系の材料等と、ほかのフィラーの組み合わせた材料であっても同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態では、音響マッチング層2を4層とした場合について説明したが、このほか2層若しくは5層以上の音響マッチング層を設け、被検体側に位置する音響マッチング層を分割しないでゴム弾性体の材料を用いて連続体で形成した場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第6の実施の形態では、1次元に圧電素子を配列した構成の場合について説明したが、このほか圧電素子が2次元に配列した場合についても同様の効果がある。また、第6の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に広帯域化できる効果がある。
また、第6の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第7実施形態)
次に、本発明に係る第7実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図9aは、第7実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示し、また図9bは、図9aに示すX方向から見た概略断面図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
以下に更に詳細に説明する。PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料の圧電素子1に設けた信号電極6と背面負荷材3の間には、ポリイミドなどの高分子フィルムに銅などの金属膜を設けたフィルム8(第1の高分子フィルム)を設けており、前記信号用電極6と前記フィルム8の金属膜の電気端子7が接するようにし、前記背面負荷材3側が高分子のフィルムが接するように設ける。
一方、圧電素子1面上に設けた接地電極5側には、グラファイトのような導体(絶縁体材料であれば絶縁体の周囲をめっきなどで金属の導体を構成する)である第1の音響マッチング層2aを設け、更に前記第1の音響マッチング層2aの上面には、ポリイミドなどの高分子フィルムに銅などの金属膜(厚みは特性に影響が小さいように5マイクロメートル以下)を設けたフィルム9(第2の高分子フィルム)を設けており、前記導体である第1の音響マッチング層2aと前記フィルム9の金属膜が接するように構成する。
更に、前記フィルム9の高分子フィルムの上面には、グラファイト、またはエポキシ樹脂に金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂の第2の音響マッチング層2bを設ける。また、第1の音響マッチング層2aの材料が絶縁体である場合には、前記絶縁体の全周囲にめっきなどの方法により導体を形成すれば、本構成が成立するので、必ずしも第1の音響マッチング層2aの材料は導体である必要はない。また、第2の音響マッチング層2bは絶縁体、導体は問わない。
以上にような構成に形成した後、背面負荷材3の一部、フィルム8、圧電素子1、第1の音響マッチング層2a、フィルム9、および第2の音響マッチング層2bをスライシングマシーンなどで加工して分割する。分割後の分割溝には、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料を充填し、更に第2の音響マッチング層2bおよび分割溝に充填した部分の上面には、第3の音響マッチング層2cを設ける。
第3の音響マッチング層2cは、図示のように分割しないで連結した状態で設けている。また、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。更に必要に応じて、第3の音響マッチング層2cの上面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を構成する。
信号用電極6は、フィルム8の電気端子7の金属膜を経由し、また、接地電極5は第1の音響マッチング層2a、フィルム9の金属膜の導体を経由し、ケーブルを介して図示しない超音波診断装置と電気的に接続され、超音波診断装置で作られる規則正しいパルス電圧を圧電素子1に印加し、逆に圧電素子1が電気信号に変換したエコー受信波を超音波診断装置本体に送信する。
複数の圧電素子1を配列したいわゆる電子走査型の超音波探触子10では、配列した圧電素子1の方向の指向性を如何に広くできるかが超音波画像の分解能を向上させる重要なポイントである。
一方、圧電素子1と被検体の音響インピーダンスは、それぞれ、約30メガレールス、約1.54メガレールスであり、その差が大きいために音響的な不整合が生じ、このために周波数の帯域は狭くなる。この音響的な不整合をなくすために、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体の間の値を有する材料を音響マッチング層として設けることにより、周波数の広帯域化が可能になる。
この音響マッチング層の音響インピーダンスを段階的に圧電素子から被検体に近づけていく段階数を多くすることにより、さらに周波数の広帯域化が可能になる。したがって、音響マッチング層は1層より2層、さらには2層より3層と層数を多くすることによってより広帯域化が可能になる。
また、圧電素子1と同じように分割する音響マッチング層の数を少なくすることによって、例え狭い間隔(例えば0.1mm)で分割しても、加工は安定し、均一に精度高く超音波探触子を作成することができ、しかも、指向性も狭くすることがない構成にすることが可能となる。
例えば、周波数が3.5MHzの圧電素子1を、圧電素子1の間隔0.38mm(0.19mmの間隔で分割した2つを電気的に束ねた状態)分割したときの指向性の角度は、−6dBのレベルで定義すると音響マッチング層2を圧電素子1と同時に分割した構成のタイプは、約23度の指向角となる。なお、圧電素子1および第1、第2の音響マッチング層2a、2bを分割した分割溝には、シリコーンゴム材を充填した構成にしている。
前記の方法で圧電素子1を同様の仕様で分割して、3層の音響マッチング層の内、圧電素子1側の第1、第2の音響マッチング層2a、2bは、前記圧電素子1と同じに分割して、被検体側に位置する第3の音響マッチング層は分割しない構成にしたタイプにおいて、被検体側に位置する第3の音響マッチング層2の材料として、シリコーンゴム(硬さがショア−A硬度で76、音速915m/sec、音響インピーダンス2.1メガレールス)、クロロプレンゴム(硬さがショア−A硬度で70、音速1630m/sec、音響インピーダンス2.16メガレールス)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で65、音速1480m/sec、音響インピーダンス1.94メガレールス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(硬さがショア−A硬度で60、音速1640m/sec、音響インピーダンス1.97メガレールス)、およびウレタンゴム(硬さがショア−A硬度で78、音速1850m/sec、音響インピーダンス1.98メガレールス)のそれぞれ用いて配列された圧電素子1面上に設け、更にその音響マッチング層2の上面にシリコーンゴムの音響レンズを設けて、圧電素子1の配列方向における超音波の指向特性を測定した。
その結果、第3の音響マッチング層2の材料による指向特性に違いがあることがわかった。なお、圧電素子1および第1、第2の音響マッチング層を分割した分割溝(このときの分割溝幅は約0.03mmである)には、第2の音響マッチング層2まで分割した構成と同様にシリコーンゴムの材料を充填している。
また、上記に挙げた材料のウレタンゴム以外の材料には、音響インピーダンスを調整するためにアルミナ、カーボンあるいは炭酸カルシウムなどのフィラーを任意の量を充填した材料を用いている。
指向特性の違いは、材料の硬さ、音響インピーダンス等との相関はなく、あまり影響していなかった。指向特性に影響している、つまり相関があったのは、第3の音響マッチング層2材料の音速特性であり、これは良好な相関が見られた。
3.5MHzの周波数で−6dBのレベルで測定した指向性角度と、材料の音速との関係の結果を図2(既出)に示す。図2に示すように音速との良好な相関が見られ、相関係数は0.86となっている。このことから、被検体側に位置する音響マッチング層2を分割しないで設けた構成において、指向性を広くする場合には、音速に注目する必要があることがわかった。前記使用した音響マッチング層2のそれぞれの材料を用いたときの指向性角度は以下のようになっている。
それぞれの指向性角度は、シリコーンゴムは25度、クロロプレンゴムは23.5度、エチレン−プロピレン共重合ゴムは23.5度、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは22.9度、ウレタンゴムは20度という結果であった。なおこの測定結果のばらつきは、±0.5度程度あると考えている。
このことは、多層化した音響マッチング層を全て圧電素子1と同じように分割しない構成にしても、分割した構成と同等若しくはそれ以上の指向特性を得るには、音響マッチング層の音速を限定すれば良く、その値は1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有するゴム弾性体材料であるといえる。
これらの結果を踏まえて、本実施形態では音響マッチング層2を3層と多層化した構成にして、しかも、被検体側に位置する第3の音響マッチング層2cに音速1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有するゴム弾性体材料を用いて、分割しない構成にして、指向性も広くできるようにしている。
しかも、音響マッチング層2を3層と多層化していることから広帯域化も可能となり、これらの指向性角度と、従来の音響マッチング層2まで圧電素子1と共に分割した構成の指向性角度を比較すると、従来構成の指向性角度とほぼ同等レベルの指向性角度を得るには、被検体側に位置する音響マッチング層2の音速は1650m/sec付近の材料を使用すれば良いということになる。更に指向性を広くする場合には、音速が1650m/sec以下の材料、例えばシリコーンゴムのような材料を用いれば良いということがわかる。
また、指向性角度が狭い結果となっているウレタンゴムにおいても、ウレタンゴムの中でも音速が1650m/sec付近あるいはそれ以下の種類(例えばサンユレック株式会社製中型用ウレタン樹脂UE-644グレードは、音速が1580m/sec、音響インピーダンスが2.1メガレールス)も存在するため、ウレタンゴム材料は指向角が狭くなるということではなく、その基準は音速にあるということである。音速が1650m/sec以下の材料を選択すると、基本的にはゴム弾性体である材料に絞り込まれる。
以上のように、音響マッチング層2を圧電素子1と同じように分割しないで連続した形状の1枚のフィルムで設ける構成において、指向性を確保あるいは広くする場合には、音響マッチング層2の材料の音速に注目する必要がある事が分かった。
また、第3の音響マッチング層2cとしての音響インピーダンスが上記材料に挙げたように2メガレールス付近の値を有する材料は、ゴム材料に限らずプラスチック材料等にも存在する。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、あるいは参考文献2に示したエポキシ樹脂に充填材を充填した材料等もあるが、これらの材料の音速はいずれも約1800m/sec以上であり、これらの材料を本実施形態の構成のように、第3の音響マッチング層2cを分割しない構成にした場合には、図2の傾向からも明らかのように、指向性は狭くなる。このような材料を用いる場合には、やはり音響マッチング層2を圧電素子1と同様に分割する構成にして指向性を広くする必要がある。
また、第1と第2の音響マッチング層の間に設けたフィルム9の金属膜は銅などの材料を用いるが、銅の音速が4700m/secと早くしかも5マイクロメートル以下の厚みに形成できるため、周波数特性などに影響は小さく、あまり考慮する必要がないが、フィルム9の高分子フィルムはポリイミドなどの材料が用いられる。
前記高分子フィルムの音響インピーダンスは、第1と第2の音響マッチング層2a、2bより小さく約3メガレールスの値であり、更には音速が2200m/secと遅いために、厚みが周波数特性に影響する。一般的に、3層の音響マッチング層を設けた構成での各音響マッチング層の音響インピーダンスは第1の音響マッチング層2aは8〜20メガレールス、第2の音響マッチング層は3〜8メガレールス、第3の音響マッチング層は1.7〜2.4メガレールスの範囲の値が用いられている。
本実施形態において、第1の音響マッチング層の音響インピーダンスが10メガレールス、第2の音響マッチング層の音響インピーダンスが4メガレールスの材料を用い、フィルム9の高分子フィルムとしてポリイミドの材料を用いて3層の音響マッチング層で構成した場合、3.5MHzの周波数で、周波数特性の−6dBでの比帯域を計算した結果を図10に示す。
図10において、横軸は、フィルム8としてポリイミドの高分子フィルムの厚みを波長で正規化した値で示し、また縦軸は、周波数特性の−6dBでの比帯域(帯域幅/中心周波数)の値を示している。
図10に示すように、3層の音響マッチング層にしているために、比帯域は90%以上の広帯域特性が得られており、フィルム9の厚みが厚くなるにしたがって、比帯域は小さくなっていく傾向となっている。広帯域化のために3層の音響マッチング層にしていることを考慮すると、比帯域は少なくとも90%以上の確保が必要となる。ここで比帯域を90%以上と規定すると、フィルム9の高分子の厚みは0.07波長以下にしなければならない。ちなみに今回のように周波数が3.5MHzでフィルム9の高分子フィルムにポリイミドを使用した場合の0.07波長以下の厚みは44マイクロメートル以下となる。
このように、音響マッチング層の間に音響インピーダンスが前記音響マッチング層の音響インピーダンスの範囲から外れた値のものが介在する場合には、周波数特性などに影響が小さくなるように厚みなどを設定することが必要であり、今回は影響が小さい0.07波長以下の厚みに設定すればよいことを明らかにした。
以上のように、音響マッチング層の被検体側に位置する第3の音響マッチング層の材料にゴム弾性体を設けており、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第3の音響マッチング層を圧電素子と共に加工して分割することが必要なくなるため、加工の困難さが解消される。また、フィルムに設けた導体から電気端子を取り出しているために、品質の高い安定した超音波探触子を得ることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御できることになり、超音波ビームを細く絞る事ができ、また、超音波ビームを偏向する事ができるため、分解能の高い超音波画像を提供する超音波探触子を得ることができる。
なお、第7の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態では、第3の音響マッチング層2cの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第7の実施の形態では、圧電素子を複数個配列した構成について説明したが、この他、圧電素子を配列しない単体の場合についても、3層以上の音響マッチング層にして被検体側に位置する音響マッチング層にゴム弾性体を用いても同様に、広帯域化できる効果がある。
また、第7の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
(第8実施形態)
次に、本発明に係る第8実施形態の超音波探触子について、図面を参照して説明する。図11は、第8実施形態に係る超音波探触子10の一部概略斜視図を示している。
この超音波探触子10は、配列された複数の圧電素子1と、各圧電素子1に対応して被検体側(図の上方)となる厚さ方向前面に配置された3層の音響マッチング層2(2a、2b、2c)と、必要に応じて圧電素子1に対して音響マッチング層2(2a、2b、2c)の反対側となる厚さ方向背面(図の下方)に配置された背面負荷材3と、必要に応じて音響マッチング層2(2a、2b、2c)上に配置された音響レンズ4から構成されている。これら各構成要素のそれぞれの機能は、従来技術で説明したものと同様である。
圧電素子1の厚さ方向Zの前面には接地電極5が、背面には信号用電極6がそれぞれ設けられている。両電極5、6は、金や銀の蒸着、スパッタリング、あるいは銀の焼き付け等により圧電素子1の前面、背面にそれぞれ形成される。
以下に更に詳細に説明する。PZT系のような圧電セラミックス、PZN-PT、PMN-PT系のような圧電単結晶、または前記材料と高分子を複合した複合圧電体などの材料の圧電素子1に設けた信号電極6と背面負荷材3の間には、ポリイミドなどの高分子フィルムに銅などの金属膜を設けたフィルム8(第1の高分子フィルム)を設けており、前記信号用電極6と前記フィルム8の金属膜の電気端子7が接するようにし、前記背面負荷材3側が高分子のフィルムが接するように設ける。
一方、圧電素子1面上に設けた接地電極5側には、グラファイトのような導体(絶縁体材料であれば絶縁体の周囲をめっきなどで金属の導体を構成する)である第1の音響マッチング層2aを設けた構成にする。以上のような構成に形成した後、背面負荷材3の一部、フィルム8、圧電素子1、第1の音響マッチング層2aをスライシングマシーンなどで加工して分割する。
分割後の分割溝には、音響的な結合が小さいシリコーンゴムやウレタンゴム等のような材料を充填し、さらに、第1の音響マッチング層2aおよび分割溝に充填した部分の上面には、接地電極5から第1の音響マッチング層を経由して取り出す電気端子の機能を有する金属膜の導体と高分子フィルムを有したフィルム9(第2の高分子フィルム)を設け、さらにフィルム9の上面には、第2の音響マッチング層2bを設け、さらに、前記第2の音響マッチング層2bの上面(被検体側)に、第3の音響マッチング層2cを設ける。
フィルム9、第2、第3の音響マッチング層2b、2cは、図示のように分割しないで連結した状態で設けている。また、第2、第3の音響マッチング層2cの材料としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびウレタンゴムなどのゴム弾性体を主体とした材料を用いる。更に必要に応じて、第3の音響マッチング層2cの上面にはシリコーンゴムなどの材料を用いた音響レンズ4を構成する。
本実施形態のポイントは、第2の音響マッチング層2bも第3の音響マッチング層2cと同様に分割しない構成にして設けることである。第2の音響マッチング層2bとして、圧電素子1のように分割しない場合には、前述しているように指向性が狭くなるため、望ましくない。しかし、分割しない構成にしても指向性が狭くならければ問題なく、しかも、加工して分割するときには、可能な限り構成部品数は少ない方がよいことは、第7の実施形態でも説明している。
指向性が狭くならないように、第2、第3の音響マッチング層2b、2cを分割しない構成にするためには、第2の音響マッチング層2bも、図2および第7の実施形態で説明したように、第3の音響マッチング層2cのようにゴム弾性体の材料で、しかも音速が1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有する材料を用いればよい。
第2の音響マッチング層2bは、音響インピーダンスが3〜8メガレールスの範囲で、且つ音速が1650m/sec、若しくはそれ以下の値を有する材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム1に対して、銅金属粉(平均粒径1.2マイクロメートル)のフィラーを重量比で9の割合で充填した材料は音響インピーダンスが5.3メガレールス、また音速は1070m/secであり、第2の音響マッチング層2bとして要望される値の特性を有している材料を得ることができる。
このように合成ゴム系のゴム弾性体を主体とした材料に、ほかのタングステン、銀、鉄、ニッケルなどの金属粉や酸化物のような密度の大きいフィラーを充填することにより、第2の音響マッチング層2bに要望される音響インピーダンスおよび音速の値の材料を得ることができる。
また、第1の音響マッチング層と、第2の音響マッチング層2bの間に設けたフィルム9の高分子フィルムの厚みについては、第1実施形態と同様に厚みは、0.07波長以下にする。
なお、第8の実施の形態では、第2、第3の音響マッチング層2b、2cの材料として、合成ゴムであるクロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いた場合について説明したが、このほかの合成ゴム例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムあるいはアクリルゴム等の材料を主体としたものの材料であっても同様の効果が得られる。
以上のように、音響マッチング層の第2、第3の音響マッチング層の材料にゴム弾性体を設けており、周波数の広帯域化と指向性の拡大が可能になる。また、第2、第3の音響マッチング層を圧電素子と共に加工して分割することが必要なくなるため、加工の困難さは解消される。また、フィルムに設けた導体から電気端子を取り出しているために、品質の高い安定した超音波探触子を得ることができる。これにより、多くの圧電素子の配列を使用して自由に位相制御できることになり、超音波ビームを細く絞る事ができ、また、超音波ビームを偏向する事ができるため、分解能の高い超音波画像を提供する超音波探触子を得ることができる。
なお、第8の実施の形態では、第2、第3の音響マッチング層2b、2cの材料として、合成ゴム、シリコーンゴム、あるいはウレタンゴム等のゴム弾性体を用いた場合について説明したが、このほかゴム弾性体を有するエラストマー系の材料を用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態では、圧電素子1とともに、第1の音響マッチング層まで分割した構成について説明したが、このほか圧電素子1とともに、第1層の音響マッチング層2a、フィルム9まで分割し、その上面に、音速が1650m/sec若しくはそれ以下でゴム弾性体を有した第2、第3の音響マッチング層2b、2cを形成した構成にしても、同様の効果が得られる。
また、第8の実施の形態では、複数個の圧電素子がほぼ直線状に配列したいわゆるリニア型について説明したが、この他、複数個の圧電素子を曲面に配列したコンベックス型、コンケーブ型の場合についても同様の効果がある。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2006年1月31日出願の日本特許出願(特願2006−023170)、2006年1月31日出願の日本特許出願(特願2006−023169)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明に係る超音波探触子は、人体等の被検体の超音波診断を行う各種医療分野、さらには材料や構造物の内部探傷を目的とした工業分野において利用が可能である。
本発明に係る第1実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
音響マッチング層の音速と指向角の関係を示す図
本発明に係る第2実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第3実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
第3の音響マッチング層の音響インピーダンスとパルス長、比帯域の関係を示す図
本発明に係る第4実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第5実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第6実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第1実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
本発明に係る第1実施形態の超音波探触子を示す概略断面図
高分子フィルムの厚みと比帯域の関係を示す図
本発明に係る第2実施形態の超音波探触子を示す概略斜視図
従来技術に係る超音波探触子の構成を示す概略斜視図
符号の説明
1 圧電素子
2、2a、2b、2c、2d 音響マッチング層
3 背面負荷材
4 音響レンズ
5 接地電極
6 信号用電極
7 電気端子
8,9 フィルム
10 超音波探触子
11 圧電素子
12 音響整合層
13 音響レンズ
14 背面負荷材
20 超音波探触子