JPWO2007058387A1 - ゼオライト膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

シリカ、水及び構造規定剤を含有する種付け用ゾル並びに支持体を、前記支持体が前記種付け用ゾルに浸漬された状態になるように、耐圧容器内に入れ、前記耐圧容器内を加熱して前記支持体表面にゼオライト種結晶を生成させる種結晶生成工程と、前記ゼオライト種結晶を成長させて支持体の表面にゼオライト膜を形成する膜形成工程とを有するゼオライト膜の製造方法であって、前記種結晶生成工程において、前記種付け用ゾルの水/シリカモル比を、水/シリカ=10〜50とし、耐圧容器の加熱温度を90〜130℃とするゼオライト膜の製造方法。支持体表面に対して垂直な方向にc軸が配向し、均一な膜厚のゼオライト膜を製造することが可能なゼオライト膜の製造方法を提供する。

Description

本発明は、ゼオライト膜の製造方法に関し、更に詳しくは、支持体表面に対して垂直な方向にc軸が配向し、均一な膜厚のゼオライト膜を製造することが可能なゼオライト膜の製造方法に関する。
ゼオライト(zeolite)は、微細で均一な径の細孔が形成された網目状の結晶構造を有する珪酸塩の一種であり、一般式:WmZnOn・sHO(W:ナトリウム、カリウム、カルシウム等、Z:珪素、アルミニウム等、sは種々の値をとる)で示される種々の化学組成が存在するとともに、結晶構造についても細孔形状の異なる多くの種類(型)が存在することが知られている。これらのゼオライトは、各々の化学組成や結晶構造に基づいた固有の吸着能、触媒性能、固体酸特性、イオン交換能等を有しており、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体といった様々な用途において利用されている。
例えば、MFI型ゼオライトは、結晶中の酸素10員環によって0.5nm程度の細孔が形成されたゼオライトであり、一般には、自動車排ガス中の窒素酸化物(NO)、炭化水素(HC)等の有害物を吸着させるための吸着材、或いは分解する触媒等の用途において利用されている。
通常、ゼオライトは粉末状ないし粒状を呈するが、分離膜として使用するために膜状に形成する方法が開発されつつある。例えば、ゼオライト膜は、ゼオライト原料を水熱合成により反応し、支持体表面にゼオライト結晶を膜状に析出させることにより得られる。ここで、水熱合成とは、ゼオライト原料を水(水蒸気)の存在下、所定の条件で加熱してゼオライトを合成する方法をいう。
このようなゼオライト膜の製造においては、ゼオライト膜を、単に支持体の存在下に水熱合成することにより成膜するだけでは、支持体表面が露出したり、膜厚が厚くなり過ぎて、緻密で薄い膜を形成することが困難であるという問題があった。これに対し、支持体表面に種結晶を塗布することによりこのような問題を解消しようとする方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、支持体表面に種結晶を付着させる方法として、ゼオライト原料を含む水溶液内に、支持体を浸漬し、支持体表面に種結晶を析出させる方法が開示されている(例えば、特許文献4,5参照)。
特開平10−36114号公報 特開2002−201020号公報 特開2004−82008号公報 特開2004−307296号公報 特開2000−26115号公報
上記特許文献1〜3に記載されるゼオライト膜の製造方法では、ゼオライト種結晶を支持体に付着させる方法として、ラビング(擦り込み)やディップコート(浸漬)等を使用しているが、これらの方法では、ゼオライト種結晶を支持体表面に均一に付着することが困難であり、特に表面積の大きい支持体の場合に均一に付着することが非常に困難であった。また、モノリス形状支持体の細管の内面や、スパイラル形状等の複雑な形状の支持体表面に、ゼオライト種結晶を均一な厚みで付着させることも非常に困難であった。このように、ゼオライト種結晶が支持体に不均一に付着した場合には、水熱合成によって得られるゼオライト膜の膜厚も不均一となり、これにより、水熱合成後の乾燥、焼成のような活性化処理を行ったときに、ゼオライト膜にクラック等の欠陥が発生することがあった。このため、これら方法では、高い分離性能を有するゼオライト膜を再現よく作成することが困難であり、製造効率が非常に悪いという問題があった。また、このような不均一な膜厚のゼオライト膜は、例えば、高温下での使用時に、膜に歪みが生じ、クラックが発生する可能性もある。
また、上述のような、ゼオライト種結晶をディップコート等により支持体に付着させる方法では、支持体に付着したゼオライト種結晶は支持体との密着性が悪く、水熱合成時に、支持体に付着していたゼオライト種結晶が、ゼオライト原料が分散する成膜用ゾル内に流出し、これにより成膜用ゾルの組成が変化するため、ゼオライト膜を所定の膜厚に制御することが非常に困難であった。
上述のようなゼオライト種結晶をディップコート等により支持体に付着させる方法に対し、特許文献4,5には、上述のようにゼオライト原料を含む水溶液内に、支持体を浸漬し、支持体表面にゼオライト種結晶を析出させる方法が開示されている。特許文献4に記載の方法では、水熱合成によりゼオライト種結晶を支持体表面に析出させるため、支持体表面に均一に析出させることができるが、支持体表面に対して垂直な方向にb軸が配向している。そのため、支持体表面に対して垂直な方向に他の軸、例えばc軸を配向させたい場合には、この方法は使用できないことになる。また、特許文献5に記載の方法では、ゼオライト種結晶を支持体に付着させるときのゼオライト原料中のシリカ濃度が薄過ぎて結晶が析出し難いという問題があった。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、支持体表面に対して垂直な方向にc軸が配向し、均一な膜厚のゼオライト膜を製造することが可能なゼオライト膜の製造方法を提供することを特徴とする。
上記課題を達成するため、本発明によって以下のゼオライト膜の製造方法が提供される。
[1]シリカ、水及び構造規定剤を含有する種付け用ゾル並びに支持体を、前記支持体が前記種付け用ゾルに浸漬された状態になるように、耐圧容器内に入れ、前記耐圧容器内を加熱して前記支持体表面にゼオライト種結晶を生成させる種結晶生成工程と、前記ゼオライト種結晶を成長させて支持体の表面にゼオライト膜を形成する膜形成工程とを有するゼオライト膜の製造方法であって、前記種結晶生成工程において、前記種付け用ゾルの水/シリカモル比を、水/シリカ=10〜50とし、耐圧容器の加熱温度を90〜130℃とするゼオライト膜の製造方法。
[2]前記種結晶生成工程において、耐圧容器内を加熱する時間が3〜18時間である[1]に記載のゼオライト膜の製造方法。
[3]前記種結晶生成工程において、得られるゼオライト種結晶の粒子径が1μm以下である[1]又は[2]に記載のゼオライト膜の製造方法。
[4]前記ゼオライト膜の膜厚が、1〜30μmである[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
[5]前記ゼオライト膜が、MFI型ゼオライトから形成される[1]〜[4]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
[6]前記ゼオライト膜が、そのc軸が前記支持体表面に対して垂直な方向に配向する結晶膜である[1]〜[5]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
[7]前記支持体が、複数の流通路(チャネル)が軸方向に並行に形成された柱状の多孔質体であり、前記種結晶生成工程が、前記チャネルの表面にゼオライト種結晶を生成させる工程である[1]〜[6]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
[8]前記膜形成工程の後に、前記支持体の表面に形成されたゼオライト膜を更に成長させる、少なくとも一の膜成長工程を有する[1]〜[7]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
本発明のゼオライト膜の製造方法によれば、水熱合成によりゼオライト種結晶を支持体表面に析出させる種結晶生成工程において、種付け用ゾルの水/シリカモル比を、水/シリカ=10〜50とし、耐圧容器の加熱温度を90〜130℃とするため、支持体表面に粒径の小さいゼオライト種結晶を緻密かつ均一に付着させることが可能となり、それにより、得られるゼオライト膜を、膜厚が均一で、緻密で欠陥の少ない膜とすることが可能となる。そして得られるゼオライト膜は、支持体表面に対し垂直な方向にc軸が配向するものとなる。
MFI型ゼオライト結晶を模式的に示す斜視図である。 MFI型ゼオライト結晶が、ゼオライト膜の表面に平行な面(膜表面)に対して特定の方向に配向した状態を示す模式図である。 実施例1において、支持体及びシリカゾルを耐圧容器内に入れた状態を概略的に示す、断面図である。 実施例1における、支持体にゼオライト種結晶が析出した状態を示すSEM写真である。 実施例1における、支持体にゼオライト膜が形成された状態を示す断面SEM写真である。 比較例1における、支持体にゼオライト膜が形成された状態を示す断面SEM写真である。 実施例1により得られた膜のXRDパターンを示す図である。 比較例1により得られた膜のXRDパターンを示す図である。 パーベーパレーション試験を行う試験装置全体を示す模式図である。 本発明のゼオライト膜の製造方法において用いる支持体の一の実施形態(モノリス形状)を示し、図10(a)は、斜視図であり、図10(b)は断面図である。 実施例2において、耐圧容器に支持体を固定して、種付け用ゾル又は膜形成用ゾルを入れた状態を示す断面図である。 実施例2における、支持体にゼオライト種結晶が析出した状態を示すSEM写真である。 実施例2における、支持体にゼオライト膜が形成された状態を示す断面SEM写真である。
符号の説明
1,1a,1b,1c:MFI型ゼオライト結晶、2:abc結晶軸系、3:支持体表面、4a,4b,4c:c軸、11:耐圧容器、12:アルミナ支持体、13:種付け用ゾル、13’:膜形成用ゾル、14:フッ素樹脂製内筒、15,16:固定治具、21:ゼオライト種結晶、22:ゼオライト膜、31:原料タンク、32:供給ポンプ、33:供給液導入口、34:供給液排出口、35:SUS製モジュール、36:原料側空間、37:透過側空間、38:ゼオライト膜、39:流量計、40:透過蒸気回収口、41:液体窒素トラップ、42:圧力制御器、43:真空ポンプ、51:支持体、52:チャネル、53:軸方向、54:多孔質体、61:耐圧容器、62:内筒、63:ステンレス容器、64:固定治具、65:支持体、66:種付け用ゾル(膜形成用ゾル)。
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明のゼオライト膜の製造方法は、主として、MFI型ゼオライトの例により具体的に説明する。但し、本発明のゼオライト膜の製造方法は、ゼオライト種結晶を支持体に適切に付着させることを特徴とするものであるため、MFI型ゼオライト以外の型のゼオライト、例えば、LTA、MOR、AFI、BEA、FER、FAU、DDR等の従来公知のゼオライトにも当然に適用することができるものである。
本発明のゼオライト膜の製造方法は、シリカ、水及び構造規定剤を含有する種付け用ゾル並びに支持体を、支持体が種付け用ゾルに浸漬された状態になるように、耐圧容器内に入れ、その耐圧容器内を加熱して支持体表面にゼオライト種結晶を生成させる種結晶生成工程と、ゼオライト種結晶を成長させて支持体の表面にゼオライト膜を形成する膜形成工程とを有するゼオライト膜の製造方法であって、種結晶生成工程において、種付け用ゾルの水/シリカモル比を、水/シリカ=10〜50とし、耐圧容器の加熱温度を90〜130℃とするものである。
(1)種結晶生成工程:
(1−1)種付け用ゾル;
本発明のゼオライト膜の製造方法に使用する種付け用ゾルは、水中にシリカ微粒子が分散したシリカゾルであり、その中に少なくとも構造規定剤を含有するものである。この種付け用ゾルは、所定濃度のシリカゾルと、濃度調整用の水と、所定濃度の構造規定剤水溶液とを、それぞれ所定量混合することにより得られる。この種付け用ゾルは、後述する水熱処理によりゼオライトへ結晶化され、構造規定剤の分子の周囲をシリカゾル由来のシリカ原子が取り囲んだような構造を形成する。そして、後述する加熱処理により、その構造から構造規定剤が除去され、構造規定剤に特異的な細孔形状を有するゼオライト結晶を形成し得るものである。
シリカゾルとしては、市販のシリカゾル(例えば、商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製、固形分濃度30質量%)を好適に用いることができる。ここで、固形分とはシリカのことをいう。但し、シリカ微粉末を水に溶解させることにより調製したもの、或いはアルコキシシランを加水分解することにより調製したものを用いてもよい。
種付け用ゾルは、含有される水とシリカ(微粒子)とのモル比(水/シリカモル比:水のモル数をシリカのモル数で除した値)が、水/シリカ=10〜50であることが好ましく、20〜40であることが更に好ましい。このように、種付け用ゾルのシリカ濃度を高くすることにより、ゼオライト種結晶を微粒子とし、支持体表面に付着させることが可能となる。水/シリカモル比が10より小さいと、ゼオライト種結晶が支持体表面に不均質にかつ過剰に析出することがあり、50より大きいと、ゼオライト種結晶が支持体表面に析出しないことがある。ここで、ゼオライト種結晶が支持体表面に付着した状態は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)写真において、支持体表面を被覆している割合(写真上の面積割合)として定量的に示すことができ、5〜100%であることが好ましい。
MFI型ゼオライトの構造規定剤としては、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)を生じ得る、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)やテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)が用いられる。従って、構造規定剤水溶液としては、TPAOH及び/又はTPABrを含む水溶液を好適に用いることができる。
シリカゾルとして、シリカ微粒子の他、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含有するものを用いることも好ましい。MFI型ゼオライトの構造規定剤として用いられるTPAOHは比較的高価な試薬であるが、この方法によれば、比較的安価なTPABrとアルカリ金属等の水酸化物とからTPA源とアルカリ源を得ることができる。即ち、この方法では高価なTPAOHの使用量を削減できるため、原料コストを低減させることができ、ゼオライトを安価に生産することが可能となる。
シリカゾルと構造規定剤水溶液とを混合するに際しては、シリカに対するTPAのモル比(TPA/シリカ比)が0.05〜0.5の範囲内となるように両者を混合することが好ましく、0.1〜0.3の範囲内とすることが更に好ましい。TPA/シリカ比が0.051未満であると、種結晶が析出しないことがあり、0.5を超えると過剰に支持体表面に析出することがある。
なお、構造規定剤として用いられる物質はゼオライトの型により異なるため、所望の型のゼオライトに応じた構造規定剤を適宜選択して使用する。例えば、BEA型ゼオライト(「β−ゼオライト」とも称される)の場合にはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)やテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)等を、DDR型ゼオライトの場合には1−アダマンタンアミン等を使用する。シリカに対する構造規定剤のモル比(構造規定剤/シリカ比)は、各々の型のゼオライトの従来公知の合成法に準じて決定すればよい。
また、種付け用ゾル調製時に添加する水は、不純物イオンを含まないことが好ましく、具体的には蒸留水又はイオン交換水であることが好ましい。
(1−2)支持体;
支持体は、ゼオライト種結晶を表面に生成し、ゼオライト膜を形成することができれば特に限定されるものではなく、その材質、形状及び大きさは用途等に合わせて適宜決定することができる。支持体を構成する材料としては、アルミナ(α−アルミナ、γ−アルミナ、陽極酸化アルミナ等)、ジルコニア等のセラミックスあるいはステンレスなどの金属等を挙げることができ、支持体作製、入手の容易さの点から、アルミナが好ましい。アルミナとしては、平均粒径0.001〜30μmのアルミナ粒子を原料として成形、焼結させたものが好ましい。支持体は多孔質体であることが好ましい。支持体の形状としては、板状、円筒状、断面多角形の管状、モノリス形状、スパイラル形状等いずれの形状でもよいが、モノリス形状が好ましい。ここで、モノリス形状とは、図10(a)、図10(b)に示す支持体51のような、複数の流通路(チャネル)52が軸方向53に並行に形成された柱状のものをいう。図10は、本発明のゼオライト膜の製造方法において用いる支持体の一の実施形態(モノリス形状)を示し、図10(a)は、斜視図であり、図10(b)は断面図である。支持体51としては、恃にモノリス形状の多孔質体54であることが好ましい。このような、モノリス形状の多孔質体からなる支持体は、公知の製造方法により形成することができ、例えば、押出成形等により形成することができる。
(1−3)ゼオライト種結晶の生成;
ゼオライト種結晶を生成させるために、まず、上記支持体と上記種付け用ゾルを耐圧容器内に入れる。このとき、支持体が、種付け用ゾルに浸漬されるように配置する。その後、耐圧容器を加熱し、水熱合成により支持体表面にゼオライト種結晶を生成させる。
耐圧容器としては、特に限定されないが、フッ素樹脂製内筒付のステンレス製耐圧容器、ニッケル金属製耐圧容器等を使用することができる。支持体を種付け用ゾルに浸漬する場合は、少なくともゼオライト種結晶を析出させる箇所を種付け用ゾル内に沈めることが好ましく、支持体全体を種付け用ゾルに沈めてもよい。水熱合成を行う場合の温度は、90〜130℃であり、100〜120℃がより好ましい。90℃より低温であると、水熱合成が進行しにくく、130℃より高温であると、得られるゼオライト種結晶を微粒化することができない。特に、支持体がアルミナ粒子を焼結した多孔体である場合には、水熱合成の温度を上記範囲(90〜130℃)とすることにより、支持体表面に位置するアルミナ粒子のそれぞれの表面をゼオライト種結晶で覆うことが可能となる。また、水熱合成の合成時間は、3〜18時間であることが好ましく、6〜12時間であることがより好ましい。3時間より短いと、水熱合成が十分に進行しないことがあり、18時間より長いと、ゼオライト種結晶が大きくなり過ぎることがある。このように、水熱合成により支持体表面に直接ゼオライト種結晶を析出させると、支持体からゼオライト種結晶が剥離し難くなるため、ゼオライト膜を形成したときに、膜の欠陥や膜厚の不均一等の問題を防止することができる。
また、加熱する方法としては、耐圧容器を熱風乾燥機に入れて加熱したり、耐圧容器にヒーターを直接取り付けて加熱する等の方法が挙げられる。
得られるゼオライト種結晶の粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01〜0.5μmであることが特に好ましい。1μmより大きいと、膜形成工程において欠陥が少なく均一な膜厚で緻密なゼオライト膜を形成できないことがある。ここで、ゼオライト種結晶の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって得られた値とし、1μm以下というときは、最大粒子径が1μm以下であることを示す。
支持体表面にゼオライト種結晶が析出した後は、支持体を水を使用して煮沸洗浄することが好ましい。これにより、余分なゼオライトの生成を防止することができる。洗浄時間は、種付け用ゾルが洗い流されれば特に限定されないが、0.5〜3時間の洗浄を1〜5回繰り返すことが好ましい。洗浄の後は、60〜120℃で、4〜48時間乾燥させることが好ましい。
また、支持体として図10(a)、図10(b)に示すようなモノリス形状の多孔質体54を使用する場合には、支持体51のチャネル52の表面に、ゼオライト種結晶を生成させることが好ましい。この場合、支持体51を、種付け用ゾルに浸漬させるときには、外周面をフッ素樹脂等のテープで被覆した状態で浸漬することが好ましい。
(2)膜形成工程:
(2−1)膜形成用ゾル;
膜形成用ゾルは、原料としては、上述した種付け用ゾルに含有されるシリカゾル、構造規定剤及び水と同じものを使用し、種付け用ゾルの場合より水を多く使用して、種付け用ゾルより濃度を薄くしたものを使用することが好ましい。
膜形成用ゾルの、含有される水とシリカ(微粒子)とのモル比(水/シリカモル比)が、水/シリカ=100〜700であることが好ましく、200〜500であることが更に好ましい。水/シリカモル比が100〜700であると、均一な厚みの欠陥の少ない緻密なゼオライト膜を形成することができる。水/シリカモル比が100より小さいと、シリカ濃度が高くなるため、膜形成用ゾル中にゼオライト結晶が析出し、ゼオライト膜表面に堆積するため、焼成等の活性化処理時にクラック等が発生し易くなることがある。また、水/シリカモル比が700より大きいと、ゼオライト膜が緻密になり難いことがある。
膜形成用ゾルにおいて、シリカゾルと構造規定剤水溶液とを混合するに際しては、シリカに対するTPAのモル比(TPA/シリカ比)が0.01〜0.5の範囲内となるように両者を混合することが好ましく、0.02〜0.3の範囲内とすることが更に好ましい。TPA/シリカ比が0.01未満であると、膜が緻密になりにくく、0.5を超えるとゼオライト結晶が膜表面に堆積することがある。
(2−2)膜形成;
支持体表面に析出したゼオライト種結晶を水熱合成により成長させて、支持体表面に、膜状に成長したゼオライト結晶からなるゼオライト膜を形成する。ゼオライト膜を支持体表面に形成するために、上記ゼオライト種結晶を生成(析出)させた場合と同様にして、まず、ゼオライト種結晶が析出した支持体と上記膜形成用ゾルを耐圧容器内に入れる。このとき、支持体が、膜形成用ゾルに浸漬されるように配置する。その後、耐圧容器内を加熱して水熱合成により支持体表面にゼオライト膜を形成する。尚、水熱合成により得られたゼオライト膜は、テトラプロピルアンモニウムを含むものであるため、最終的にゼオライト膜を得るために、その後に、加熱処理を行うことが好ましい。
耐圧容器としては、上記ゼオライト種結晶の生成に使用した耐圧容器を使用することが好ましい。支持体を膜形成用ゾルに浸漬する場合は、少なくともゼオライト膜を形成させる箇所を膜形成用ゾル内に沈めることが好ましく、支持体全体を膜形成用ゾルに沈めてもよい。水熱合成を行う場合の温度は、100〜200℃が好ましく、120〜180℃が更に好ましい。このような温度範囲とすることにより、均一な厚みで欠陥の少ない緻密なゼオライト膜を得ることが可能となる。そして、本発明のゼオライト膜の製造方法では、このような高品質な膜を再現性よく製造することが可能であり、製造効率が高い。100℃より低温であると、水熱合成が進行し難いことがあり、200℃より高温であると、得られるゼオライト膜を均一な厚みの欠陥の少ない緻密なものとし難いことがある。また、水熱合成の合成時間は、3〜120時間であることが好ましく、6〜90時間であることが更に好ましく、10〜72時間であることが特に好ましい。3時間より短いと、水熱合成が十分に進行しないことがあり、120時間より長いと、ゼオライト膜が、不均一な厚さで、厚くなり過ぎることがある。ここで、ゼオライト膜が緻密であるというときは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した場合に、支持体表面の露出がない状態であることをいう。また、ゼオライト膜の欠陥は、例えば、ローダミンB溶液のような着色剤を支持体表面に塗布した後、速やかに水洗することにより残存する着色を目視により観察することができ、欠陥が少ないというときは、着色がほとんど残存しない状態であることをいう。
得られるゼオライト膜の膜厚は、30μm以下であることが好ましく、1〜30μmであることが更に好ましく、1〜20μmであることが更に好ましく、1〜15μmであることが特に好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。30μmより厚いと、分離膜として使用したときに、分離効率が低下することがある。ここで、ゼオライト膜の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって得られた値とする。このように薄い膜を形成することができるため、上述した欠陥が少なく膜厚が均一で緻密であるという特徴と合わせて、分離性能の高い分離膜とすることができる。
また、得られるゼオライト膜は、ゼオライト結晶のc軸が支持体表面に対して垂直な方向に配向(c軸配向)したものであることが好ましく、c軸配向するゼオライト結晶の比率が高いほど好ましい。具体的には、ゼオライト膜を構成するゼオライト結晶の90%以上がc軸配向したものであることが好ましい。ゼオライト膜がc軸配向することにより、水とエタノールとを混合した溶液から、パーベーパレーションによりエタノールを分離(透過)するための分離膜として、好適に使用することが可能となる。ここで、ゼオライト膜がc軸配向しているというときは、ゼオライト膜のc軸が、支持体表面に対して90度の方向に配向している場合だけでなく、90度±33.76度の範囲で配向している状態をいう。ここで、図1,2にMFI型ゼオライト結晶およびc軸配向の説明図を示す。図1は、MFI型ゼオライトの結晶1のabc結晶軸系2における各結晶面を模式的に示した斜視図である。図2は、MFI型ゼオライト結晶が、支持体表面3に対して特定の方向に配向した状態を示す模式図である。MFI型ゼオライト結晶1aは、そのc軸4aと支持体表面3とにより形成される角度が90度+33.76度であり、ゼオライト結晶の101結晶面が支持体表面3に対して平行に配置された状態である。また、MFI型ゼオライト結晶1cは、そのc軸4cと支持体表面3とにより形成される角度が90度−33.76度であり、ゼオライト結晶の101結晶面が支持体表面3に対して平行に配置された状態である。このとき、「90度+33.76度」と「90度−33.76度」とは相対的な関係であり、c軸4aと支持体表面3との角度が「90度−33.76度」であり、c軸4cと支持体表面3との角度が「90度+33.76度」であるとしてもよい。また、また、MFI型ゼオライト結晶1bは、そのc軸4bと支持体表面3とにより形成される角度が90度であり、ゼオライト結晶の001結晶面が支持体表面3に対して平行に配置された状態である。ゼオライト結晶の配向は、X線回折により測定することができる。また、本発明の製造方法で得られたゼオライト膜は、水とエタノールの混合液だけでなく、他の低分子量物質の混合物の分離に使用することも可能である。
水熱合成により支持体表面にゼオライト膜を形成した後には、支持体を水を使用して煮沸洗浄することが好ましい。これにより、ゼオライト膜上に余分なゼオライト結晶が付着することを防止することができる。洗浄時間は、特に限定されないが、0.5〜3時間の洗浄を1〜5回繰り返すことが好ましい。洗浄の後は、60〜120℃で、4〜48時間乾燥させることが好ましい。
次に、上記方法により得られた、支持体表面に形成されたゼオライト膜を加熱処理(活性化処理)することにより、テトラプロピルアンモニウムを除去し、最終的にゼオライト膜を形成する。加熱温度は、400〜600℃が好ましく、加熱時間は1〜60時間が好ましい。また、加熱に使用する機器としては、電気炉等を挙げることができる。
(3)膜成長工程:
本実施形態のゼオライト膜の製造方法は、上記「(2)膜形成工程」の後に、支持体の表面に形成されたゼオライト膜を更に成長させる、少なくとも一の膜成長工程を有することが好ましい。特に、支持体をモノリス形状とし、チャネル内の表面にゼオライト膜を形成する場合には、膜形成用ゾル中に含まれるシリカ成分がチャネル内で不足し、「(2)膜形成工程」だけでは、膜形成が十分でないことがある。そのような場合には、その後に、更に、膜成長工程によりゼオライト膜を成長させることにより、所望の厚さのゼオライト膜を形成することができる。この膜成長工程は、1回だけでなく、2回以上行ってもよい。
膜成長工程の操作は、上記「(2)膜形成工程」において、「(1)種結晶生成工程で得られた、表面にゼオライト種結晶を析出させた支持体」を用いる代わりに、「(2)膜形成工程で得られた、表面にゼオライト膜が形成された支持体」を用い、それ以外については、上記「(2)膜形成工程」と同様の操作とすることが好ましい。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(種付け用ゾルの調製)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)36.17gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)18.88gとを混合し、さらに蒸留水82.54g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)95gを加えて、室温で30分間マグネチックスターラーで撹拌して種付け用ゾルとした。
(ゼオライト種結晶の生成)
得られた種付け用ゾル13を、図3に示すように、フッ素樹脂製内筒14が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器11内に入れ、直径12mm、厚さ1〜2mm、長さ160mmの円筒状の多孔質のアルミナ支持体12を浸漬し、110℃の熱風乾燥機中で10時間反応させた。アルミナ支持体12は、フッ素樹脂製の固定治具15,16により耐圧容器11内に固定した。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。反応後の支持体表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図4の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、多孔質のアルミナ支持体12の表面全体を約0.5μmのゼオライト結晶粒子(ゼオライト種結晶21)が隙間無く覆っていた。そして、結晶粒子のX線回折によりMFI型ゼオライトであることが確認された。
(膜形成用ゾルの調製)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)0.66gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)0.34gとを混合し、さらに蒸留水229.6g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)5.2gを加えて、室温で30分間マグネチックスターラーで撹拌して膜形成用ゾルとした。
(ゼオライト膜の形成)
得られた膜形成用ゾル13’を、上記「ゼオライト種結晶の生成」の場合と同様に、図3に示すような、フッ素樹脂製内筒14が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器11内に入れ、上記ゼオライト種結晶が析出した多孔質アルミナ支持体12を浸漬し、180℃の熱風乾燥機中で60時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。反応後の支持体表面部分における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図5の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、多孔質のアルミナ支持体12の表面に厚さ約13μmの緻密層(ゼオライト膜)22が形成されていた。以下に示す条件で、この緻密層のX線回折(XRD)による分析(図7)を行ったところ、MFI型ゼオライト結晶であることが確認された。またc軸配向に由来するピークの強度が高いことから,支持体表面に垂直な方向にc軸配向した膜が得られることがわかった。ここで、図7は、得られた膜のXRDパターンを示す図である。
得られた、多孔質アルミナ支持体上に形成されたc軸配向のMFI型ゼオライト膜を、電気炉で500℃まで昇温し、4時間保持して、テトラプロピルアンモニウ厶を除去して、ゼオライト膜を得た。
(実施例2)
(種付け用ゾルの調製)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)33.32gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)17.45gとを混合し、さらに蒸留水76.17g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)87.5gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して種付け用ゾルとした。
(ゼオライト種結晶の生成)
図11に示すように、得られた種付け用ゾル66を、フッ素樹脂製内筒62がステンレス容器63の内部に配設されて形成されステンレス製300ml耐圧容器61内に入れ、あらかじめ外周をフッ素樹脂製テープで被覆した直径30mm、セル(チャネル)内径3mm、セル(チャネル)数37、長さ180mmのモノリス状の多孔質アルミナ支持体65(図10参照)を浸漬し、110℃の熱風乾燥器中で12時間反応させた。図11は、実施例2において、耐圧容器に支持体を固定して、種付け用ゾル又は膜形成用ゾルを入れた状態を示す断面図である。アルミナ支持体65は、フッ素樹脂製の固定治具64により、耐圧容器61内に固定した。反応後の支持体は、煮沸洗浄後、80℃にて一晩乾燥した。反応後の支持体表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図12の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、多孔質アルミナ支持体の表面全体を約0.5μmのMFI結晶粒子(ゼオライト種結晶21)が一様に覆っていた。図12は、支持体にゼオライト種結晶が析出した状態を示すSEM写真である。
(膜形成用ゾルの調製)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)0.84gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)0.44gとを混合し、さらに蒸留水202.1g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)6.58gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌して、膜形成用ゾルとした。
(ゼオライト膜の形成)
得られた膜形成用ゾルを、上記「ゼオライト種結晶の生成」の場合と同様に、図11に示すような、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、上記ゼオライト種結晶が析出した多孔質アルミナ支持体を浸漬し、160℃の熱風乾燥器中で24時間反応させた。反応後の支持体は、煮沸洗浄後、80℃で一晩乾燥した。
(ゼオライト膜の成長)
上記ゼオライト膜の形成の操作の後に、更にゼオライト膜を成長させる操作(膜成長工程)を行った。膜成長工程においては、得られた上記「「ゼオライト膜の形成」において得られた「反応後の支持体」」、及び上記「「ゼオライト膜の形成」において用いた「膜形成用ゾル」」と同じ「膜形成(成長)用ゾル」を用い、上記「ゼオライト膜の形成」と同様の方法で膜成長を行った。膜成長工程は一度だけ行った。膜成長を行った後の支持体表面部における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図13の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、多孔質のアルミナ支持体12の表面に厚さ約12μmの緻密層(ゼオライト膜22)が形成されていた。図13は、支持体にゼオライト膜が形成された状態を示す断面SEM写真である。この緻密層のX線回折(XRD)による分析を行ったところ、MFI型ゼオライト型結晶であることが確認された。またc軸配向に由来するピークの強度が高かったことから、支持体表面に垂直な方向にc軸配向した膜が得られたことがわかった。得られたMFI型ゼオライト膜を電気炉で500℃まで昇温し、4時間保持して、テトラプロピルアンモニウムを除去して、ゼオライト膜を得た。
(比較例1)
40%テトラプロピアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)18.75gとテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業(株)製)9.78gを混合し、さらに蒸留水を180.46g、約30wt%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学(株)製)30gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して膜形成ゾルを調製した。このゾルを、フッ素樹脂製内筒付ステンレス製300ml耐圧容器中に入れ、直径12mmφ、厚み1〜2mm、長さ160mmの多孔質アルミナ支持体に浸漬させ、160℃の熱風乾燥器中で30時間反応させた。反応後の支持体は、5回の熱水洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。
比較例1により得られたゼオライト膜が形成された支持体の、支持体表面部分における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図6の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、多孔質のアルミナ支持体12の表面に、凹凸が多く膜厚が不均一なゼオライト膜22が形成されていることが判る。このゼオライト膜を以下に示す条件でX線回折による分析(図8)を行ったところ、MFI型ゼオライト結晶であることが確認された。(501)面ピークが最も高い強度を示し、c軸配向とは大きく異なるものであった。ここで、図8は、得られた膜のXRDパターンを示す図である。
実施例1及び比較例1で得られたゼオライト膜を使用して、水とエタノールとの混合液から、下記方法によるパーベーパレーションによりエタノールを分離(透過)する試験を行った。水とエタノールとの混合液中、エタノールの含有率は10体積%とした。
(X線回折)
粉末X線回折(XRD)パターンは、(株)リガク製のMiniFlexを使用し、使用X線源:CuKα、管電流:30kV、管電圧:15mA、フィルター:Ni、スキャン速度:4°/minとして得た。
(パーベーパレーション試験)
図9は、パーベーパレーション試験を行う試験装置全体を示す模式図である。図9に示すように、原料タンク31内に入れられた、エタノールを10体積%含む水溶液を約70℃に加熱する。供給ポンプ32にてSUS(ステンレススチール)製モジュール35の原料側空間36に、供給液導入口33より原料を供給し、供給液排出口34から排出された原料を原料タンク31に戻すことで、原料を循環させる。原料の流量は流量計39で確認する。真空ポンプ43にてゼオライト膜38の支持体側(透過側空間37)を減圧することで、ゼオライト膜38を透過し、透過蒸気回収口40から排出される透過蒸気を液体Nトラップ41にて回収する。透過側空間37の真空度は圧力制御器42により制御する。SUS製モジュール35は、内部空間がゼオライト膜38により原料側空間36と透過側空間37とに仕切られ、原料側空間36に連通するように供給液導入口33と供給液排出口34とが形成され、透過側空間37の上端部に透過蒸気を外部に排出するための透過蒸気回収口40が形成されている。図9においては、SUS製モジュール35は、SUS製の円筒状の外側容器の中に、円筒状の支持体(図示せず)の外表面に配設された円筒状のゼオライト膜が装着された構造である。得られた液体の質量は電子天秤にて秤量し、液体の組成はガスクロマトグラフィーにて分析した。
上記パーベーパレーション試験の結果得られた、分離係数及び透過流束(kg/m/時間)を表1に示す。ここで、分離係数とは、下記式で示されるように、供給液中のエタノール濃度(体積%)と水濃度(体積%)との比に対する透過液中のエタノール濃度(体積%)と水濃度(体積%)との比の値をいう。また、透過流束とは、単位時間(時間)、単位面積(m)当たりに、分離膜を透過した全物質の質量をいう。
分離係数=((透過液中のエタノール濃度)/(透過液中の水濃度))/((供給液中のエタノール濃度)/(供給液中の水濃度))
表1より、実施例1で得られたゼオライト膜が、分離係数、透過流束のいずれについても高い値となることが判る。
本発明は、低分子量物質の混合物から特定の物質を分離するための分離膜を製造するために利用することが可能であり、特に、エタノールと水との混合液からエタノールを高効率で分離することが可能な分離膜を製造するために利用することができる。

Claims (8)

  1. シリカ、水及び構造規定剤を含有する種付け用ゾル並びに支持体を、前記支持体が前記種付け用ゾルに浸漬された状態になるように、耐圧容器内に入れ、前記耐圧容器内を加熱して前記支持体表面にゼオライト種結晶を生成させる種結晶生成工程と、
    前記ゼオライト種結晶を成長させて支持体の表面にゼオライト膜を形成する膜形成工程とを有するゼオライト膜の製造方法であって、
    前記種結晶生成工程において、前記種付け用ゾルの水/シリカモル比を、水/シリカ=10〜50とし、耐圧容器の加熱温度を90〜130℃とするゼオライト膜の製造方法。
  2. 前記種結晶生成工程において、耐圧容器を加熱する時間が3〜18時間である請求項1に記載のゼオライト膜の製造方法。
  3. 前記種結晶生成工程において、得られるゼオライト種結晶の粒子径が1μm以下である請求項1又は2に記載のゼオライト膜の製造方法。
  4. 前記ゼオライト膜の膜厚が、1〜30μmである請求項1〜3のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
  5. 前記ゼオライト膜が、MFI型ゼオライトから形成される請求項1〜4のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
  6. 前記ゼオライト膜が、そのc軸が前記支持体表面に対して垂直な方向に配向する結晶膜である請求項1〜5のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
  7. 前記支持体が、複数の流通路(チャネル)が軸方向に並行に形成された柱状の多孔質体であり、前記種結晶生成工程が、前記チャネルの表面にゼオライト種結晶を生成させる工程である請求項1〜6のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
  8. 前記膜形成工程の後に、前記支持体の表面に形成されたゼオライト膜を更に成長させる、少なくとも一の膜成長工程を有する請求項1〜7のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
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