JPWO2007055226A1 - 抗原特異的リンパ球の検出方法および調製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロウェルアレイチップを用い、従来のスキャンスピードのスキャナによっても、チップ上の広い範囲の細胞をスキャンして抗原特異的リンパ球を検出することができる方法を提供する。【解決手段】抗原特異的Bリンパ球を検出する方法。抗原として、蛍光標識された抗原を準備し、蛍光標識された抗原と同類の非特異的物質を準備し、Bリンパ球が各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された非特異的物質を接触させ、蛍光を発するBリンパ球を検出し、マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された抗原を接触させ、蛍光を発するBリンパ球を検出し、非特異的物質接触後に蛍光は発せず、抗原を接触させた後に蛍光を発したBリンパ球を選択する。抗原特異的Bリンパ球の代りに抗原特異的Tリンパ球を用い、抗原として蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を用いる方法。【選択図】
Description
本発明は、抗原特異的リンパ球の検出方法および調製方法に関する。
抗原特異的リンパ球(特にBリンパ球)を検出する方法としてフローサイトメータを用いる方法がある。抗原特異的Bリンパ球は細胞表面に抗原特異的抗体を発現しているため、蛍光標識した抗原とBリンパ球とをインキュベーションすることにより、細胞表面の抗原特異的抗体に蛍光標識抗原を結合させ(蛍光標識抗原を用いて細胞を染色し)、蛍光標識抗原が結合したBリンパ球をフローサイトメータにより検出し分離することができる。
蛍光標識抗原を用いて抗原特異的Bリンパ球を検出する場合、非特異的に蛍光標識抗原が細胞に結合する現象が生じる。これは蛍光色素あるいは抗原が非特異的にBリンパ球の表面に結合してしまうことから発生する。このような抗原非特異的に染色されるBリンパ球は全体の1%から0.1%程度であるので、抗原特異的Bリンパ球の割合が高いとき(10%程度)の場合は抗原特異的Bリンパ球をフローサイトメータを用いて問題なく検出することができる。しかし、抗原特異的Bリンパ球の割合が1%から0.1%程度、すなわち、非特異的に染色されてしまう細胞と同じ程度の頻度になってきた場合は、フローサイトメータでは抗原特異的に蛍光色素で染色された細胞と非特異的に染色された細胞の識別が困難になる(図1)。これは、フローサイトメータによる検出においては、装置の蛍光検出部位においてリンパ球が非常に早いスピードでバッファー中を流れているため、同じ細胞を2回計測することができないことによる。
本発明者らは、これまでに、リンパ球がちょうど1個入る大きさ、形状のマイクロウェルが45,000ウェルないし230,000ウェル規則正しく配置されたチップ(マイクロウェルアレイチップ)を用いて、抗原特異的Bリンパ球を検出できる方法を開発してきた。この場合、Ca2+に結合して蛍光が増強する蛍光物質であるFluo-4を細胞内に負荷したBリンパ球をマイクロウェルアレイチップに添加し、各ウェルに1個ずつBリンパ球を配置し、チップ上にてBリンパ球を抗原で刺激し、抗原で刺激されたBリンパ球の細胞内Ca2+濃度が上昇し、Fluo-4の蛍光が増強することを指標に抗原特異的Bリンパ球を検出することが可能であった。(特開2004−173681号公報(文献1)、特開2004−187676号公報(文献2))。
しかし、抗原で刺激されたBリンパ球の細胞内Ca2+濃度の増加は刺激後約30秒から1分をピークに起こり、その後漸減してくる。チップ上の細胞の蛍光は蛍光スキャナを用いて検出しているが、細胞内Ca2+濃度の変化で抗原特異的Bリンパ球を検出するためには刺激後30秒から2分くらいの間にチップをスキャンする必要があった。そのため、広い範囲の細胞のシグナルを読み取ることは困難であった。また、なるべく広い範囲の細胞のシグナルを読み取るために、スキャンスピードの早いスキャナを開発する必要があった。
そこで本発明の目的は、マイクロウェルアレイチップを用いて抗原特異的リンパ球を検出する方法であって、従来のスキャンスピードのスキャナによっても、チップ上の広い範囲の細胞をスキャンし、抗原特異的リンパ球を検出することができる方法を提供することにある。
本発明は以下の通りである。
[1]ある抗原に対して特異的に結合するBリンパ球を検出する方法であって、
前記抗原として、蛍光標識された抗原を準備し、
蛍光標識された前記抗原と同類の非特異的物質を準備し、
前記Bリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、
前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、前記蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出し、
次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された抗原を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出し、
非特異的物質接触後に蛍光は発せず、抗原を接触させた後に蛍光を発したBリンパ球を選択する
ことを含む、前記方法。(本発明の第1の態様)
[2]抗原がタンパク質である場合、非特異的物質もタンパク質であり、
抗原がペプチドである場合、非特異的物質もペプチドであり、
抗原が糖鎖である場合、非特異的物質も糖鎖であり、
抗原が脂質である場合、非特異的物質も脂質である、
[1]に記載の方法。
[3]非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質である[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一である[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]蛍光標識された非特異的物質を除去した後に、蛍光標識された抗原を接触させる[4]に記載の方法。
[6]蛍光標識がスキャナで検出できる蛍光標識である[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の方法で選択されたBリンパ球を回収することを含む抗原特異的Bリンパ球の調製方法。
[8]ある抗原に対して特異的に結合するTリンパ球を検出する方法であって、
前記抗原として、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を準備し、
蛍光標識された前記抗原と同類する非特異的物質を準備し、
前記Tリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、
前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、前記蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出し、
次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出し、
非特異的物質接触後に蛍光は発せず、MHC/ペプチド複合体四量体を接触させた後に蛍光を発したTリンパ球を選択する
ことを含む、前記方法。(本発明の第2の態様)
[9]非特異的物質は、抗原とMHCは同一であり、ペプチドが抗原のペプチドと異なる[8]に記載の方法。
[10]非特異的物質は、抗原とペプチドは同一であり、MHCが抗原のMHCと異なる[8]に記載の方法。
[11]非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質である[8]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一である[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]蛍光標識された非特異的物質を除去した後に、蛍光標識された抗原を接触させる[12]に記載の方法。
[14]蛍光標識がスキャナで検出できる蛍光標識である[8]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15][8]〜[14]のいずれかに記載の方法で選択されたTリンパ球を回収することを含む抗原特異的Tリンパ球の調製方法。
[1]ある抗原に対して特異的に結合するBリンパ球を検出する方法であって、
前記抗原として、蛍光標識された抗原を準備し、
蛍光標識された前記抗原と同類の非特異的物質を準備し、
前記Bリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、
前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、前記蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出し、
次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された抗原を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出し、
非特異的物質接触後に蛍光は発せず、抗原を接触させた後に蛍光を発したBリンパ球を選択する
ことを含む、前記方法。(本発明の第1の態様)
[2]抗原がタンパク質である場合、非特異的物質もタンパク質であり、
抗原がペプチドである場合、非特異的物質もペプチドであり、
抗原が糖鎖である場合、非特異的物質も糖鎖であり、
抗原が脂質である場合、非特異的物質も脂質である、
[1]に記載の方法。
[3]非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質である[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一である[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]蛍光標識された非特異的物質を除去した後に、蛍光標識された抗原を接触させる[4]に記載の方法。
[6]蛍光標識がスキャナで検出できる蛍光標識である[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の方法で選択されたBリンパ球を回収することを含む抗原特異的Bリンパ球の調製方法。
[8]ある抗原に対して特異的に結合するTリンパ球を検出する方法であって、
前記抗原として、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を準備し、
蛍光標識された前記抗原と同類する非特異的物質を準備し、
前記Tリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、
前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、前記蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出し、
次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出し、
非特異的物質接触後に蛍光は発せず、MHC/ペプチド複合体四量体を接触させた後に蛍光を発したTリンパ球を選択する
ことを含む、前記方法。(本発明の第2の態様)
[9]非特異的物質は、抗原とMHCは同一であり、ペプチドが抗原のペプチドと異なる[8]に記載の方法。
[10]非特異的物質は、抗原とペプチドは同一であり、MHCが抗原のMHCと異なる[8]に記載の方法。
[11]非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質である[8]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一である[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]蛍光標識された非特異的物質を除去した後に、蛍光標識された抗原を接触させる[12]に記載の方法。
[14]蛍光標識がスキャナで検出できる蛍光標識である[8]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15][8]〜[14]のいずれかに記載の方法で選択されたTリンパ球を回収することを含む抗原特異的Tリンパ球の調製方法。
本発明の第1の態様では、抗原特異的Bリンパ球を蛍光標識した抗原を用いて、蛍光標識抗原の結合を指標に検出する。その際、抗原特異的Bリンパ球を含むBリンパ球はマイクロウェルアレイチップに播種することにより、そのアドレス(位置)を固定する。本発明ではアドレスの固定されたBリンパ球をまず蛍光標識した非特異的物質と接触させ、蛍光標識した非特異的物質が結合するBリンパ球を検出する。すなわち、非特異的に染色されたBリンパ球を、ノイズとなる細胞として検出しておく。次に、蛍光標識した抗原とBリンパ球を接触させ、蛍光標識抗原が結合したBリンパ球を検出する。Bリンパ球はチップ上でのアドレスが固定されているため、蛍光標識した非特異的物質が結合せず、蛍光標識抗原が結合したBリンパ球を同定することができ、非特異的シグナル(ノイズ)を除去し、特異的シグナルをより精度よく検出することが可能となる。
本発明の第2の態様では、抗原特異的Bリンパ球の代りに抗原特異的Tリンパ球を用い、抗原として蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を用いる。
チップ上でリンパ球はそのアドレス(位置)が固定される。このことにより、同じリンパ球の蛍光シグナルを繰り返し測定することが可能となる。本発明ではアドレスの固定されたリンパ球をまず蛍光標識した非特異的物質と接触させ、蛍光標識した非特異的物質が結合するリンパ球を検出する。すなわち、非特異的に染色されたリンパ球を、ノイズとなる細胞として検出しておく。次に、蛍光標識した抗原とリンパ球を接触させ、蛍光標識抗原が結合したリンパ球を検出する。リンパ球はチップ上でのアドレスが固定されているため、蛍光標識した非特異的物質が結合せず、蛍光標識抗原が結合したリンパ球を同定することができ、非特異的シグナル(ノイズ)を除去し、特異的シグナルをより精度よく検出することが可能となる。
[抗原特異的Bリンパ球の検出方法](本発明の第1の態様)
本発明の方法は、ある抗原に対して特異的に結合するBリンパ球(抗原特異的Bリンパ球)を検出する方法であって、本発明の方法では、
(1)抗原として、蛍光標識された抗原、
(2)上記抗原と同類の非特異的物質であって、蛍光標識された非特異的物質、および
(3)Bリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップ、
を用いる。
本発明の方法は、ある抗原に対して特異的に結合するBリンパ球(抗原特異的Bリンパ球)を検出する方法であって、本発明の方法では、
(1)抗原として、蛍光標識された抗原、
(2)上記抗原と同類の非特異的物質であって、蛍光標識された非特異的物質、および
(3)Bリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップ、
を用いる。
抗原は、特に限定はなく、例えば、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、脂質、糖鎖、または有機高分子化合物(例えば、環境ホルモン)等であることができる。あるいは、細菌、ウィルス、自己抗原、がん抗原またはアレルゲン等であることができる。
抗原の蛍光標識に用いられる蛍光物質は、特に限定はなく、例えば、FITC (fluorescence isothiocyanate)、PE (phycoerythrin)等であることができる。但し、蛍光標識はスキャナで検出できる蛍光標識である(スキャナに搭載されているレーザーの波長で励起される励起波長を持っており、スキャナに搭載されている検出器で検出される波長の蛍光を発する蛍光色素である)ことが、好ましい。
また、複数の異なる抗原を各々異なる蛍光色素で標識した場合、複数の抗原に対する複数の抗原特異的Bリンパ球を検出することが可能である。
蛍光色素で標識した抗原の作製方法について以下に説明する。
タンパク質に対するFITCの標識法
タンパク質溶液を0.1M NaHCO3 (pH9.5)で透析し、1mg/mLの溶液を作成する。そのタンパク質溶液(1mg相当)に1mgのFITC on Celite 10% (Sigma F1628)を添加し、室温で30分間インキュベーションする。その後10000rpm 1分間遠心することによりCeliteを除去する。その後、タンパク質溶液をPBSで透析することにより、FITC標識タンパク質を作成することができる。
タンパク質溶液を0.1M NaHCO3 (pH9.5)で透析し、1mg/mLの溶液を作成する。そのタンパク質溶液(1mg相当)に1mgのFITC on Celite 10% (Sigma F1628)を添加し、室温で30分間インキュベーションする。その後10000rpm 1分間遠心することによりCeliteを除去する。その後、タンパク質溶液をPBSで透析することにより、FITC標識タンパク質を作成することができる。
タンパク質に対するPE標識
まず、PEにSATA(N-succinimidyl-S-acetylthioacetate)を結合させる。次に、タンパク質にGMBS(γ-maleimidobutyric acid N-hydroxysuccinimide ester)を結合させる。最終的にSATAとGMBSを介してPEとタンパク質を結合させる。
(参考文献)Current Protocols in Immunology/ edited by John E. Coligan, Ada M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strober. Published by Greene Publishing Associated and Wiley-Interscience, New York
まず、PEにSATA(N-succinimidyl-S-acetylthioacetate)を結合させる。次に、タンパク質にGMBS(γ-maleimidobutyric acid N-hydroxysuccinimide ester)を結合させる。最終的にSATAとGMBSを介してPEとタンパク質を結合させる。
(参考文献)Current Protocols in Immunology/ edited by John E. Coligan, Ada M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strober. Published by Greene Publishing Associated and Wiley-Interscience, New York
抗原と同類の非特異的物質は、抗原が有する特異性は有さないが、抗原と類似する物質から構成されているものである。そのような非特異的物質は、例えば、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質であることができる。また、抗原がタンパク質である場合、非特異的物質もタンパク質であり、抗原がペプチドである場合、非特異的物質もペプチドであり、抗原が脂質である場合、非特異的物質も脂質であることができる。
非特異的物質に対する蛍光標識は、抗原に対する蛍光標識と同様のものを使用できる。特に、抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一であることが、蛍光標識による非特異的結合を排除できるという観点から好ましい。
蛍光色素で標識した非特異的物質は、抗原と同様の方法を用いて蛍光標識することができる。
Bリンパ球がマイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップは、例えば、上記文献1および2に記載の方法で作成されたマイクロウェルアレイチップであることができる。
[マイクロウェルアレイチップ]
本発明のマイクロウェルアレイチップは、複数個のマイクロウェルを有し、各マイクロウェルに1個の被検体リンパ球を格納し、抗原特異的リンパ球を1個単位で検出するために用いられるマイクロウェルアレイチップであって、前記マイクロウェルは、1つのマイクロウェルに1つのリンパ球のみが格納される形状及び寸法を有する。
本発明のマイクロウェルアレイチップは、複数個のマイクロウェルを有し、各マイクロウェルに1個の被検体リンパ球を格納し、抗原特異的リンパ球を1個単位で検出するために用いられるマイクロウェルアレイチップであって、前記マイクロウェルは、1つのマイクロウェルに1つのリンパ球のみが格納される形状及び寸法を有する。
マイクロウェルの形状や寸法には特に制限はないが、マイクロウェルの形状は、例えば、円筒形であることができ、円筒形以外に、直方体、逆円錐形、逆角錐形(逆三角錐形、逆四角錐形、逆五角錐形、逆六角錐形、七角以上の逆多角錐形)等であることもでき、これらの形状の二つ以上を組み合わせた形状であることもできる。例えば、一部が円筒形であり、残りが逆円錐形であることができる。また、逆円錐形、逆角錐形の場合、底面がマイクロウェルの開口となるが、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状である(その場合、マイクロウェルの底部は平坦になる)こともできる。円筒形、直方体は、マイクロウェルの底部は通常、平坦であるが、曲面(凸面や凹面)とすることもできる。マイクロウェルの底部を曲面とすることができるのは、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状の場合も同様である。
マイクロウェルの形状や寸法は、マイクロウェルに格納されるべきリンパ球の種類(リンパ球の形状や寸法等)を考慮して、1つのマイクロウェルに1つのリンパ球が格納されるように、適宜決定される。1つのマイクロウェルに1つのリンパ球が格納されるようにするためには、例えば、マイクロウェルの平面形状に内接する最大円の直径が、マイクロウェルに格納しようとするリンパ球の直径の1〜2倍の範囲、好ましくは1.1〜1.9倍の範囲、より好ましくは1.2〜1.8倍の範囲であることが適当である。また、マイクロウェルの深さは、マイクロウェルに格納しようとするリンパ球の直径の1〜2倍の範囲、好ましくは1.1〜1.9倍の範囲、より好ましくは1.2〜1.8倍の範囲であることが適当である。
マイクロウェルが円筒形の場合、その寸法は、例えば、直径5〜100μmであることができ、リンパ球がBリンパ球の場合、好ましくは、直径は5〜15μmである。また、深さは、例えば、5〜100μmであることができ、リンパ球がBリンパ球の場合、好ましくは、深さは5〜40μmであることができる。但し、マイクロウェルの寸法は、上述のように、マイクロウェルに格納しようとするリンパ球の直径とのマイクロウェルの寸法の好適な比を考慮して適宜決定する。
1つのマイクロウェルアレイチップが有するマイクロウェルの数は、特に制限はないが、抗原特異的リンパ球の頻度が105個に1個から多い場合には約500個であるという観点から、1cm2当たり、例えば、2,000〜1,000,000個の範囲であることができる。
本発明に用いる抗原特異的リンパ球検出用マイクロウェルアレイチップは、複数のマイクロウェルを有し、かつ各マイクロウェルが被検体リンパ球を1個含むものである。マイクロウェルアレイチップは、上記のマイクロウェルアレイチップをそのまま用いることができる。
抗原特異的リンパ球検出用マイクロウェルアレイチップは、各マイクロウェルが被検体リンパ球を1個含むことで、抗原特異的リンパ球を1個1個の細胞レベルで特定することが可能になる。即ち、このマイクロウェルアレイチップを用いる抗原特異的リンパ球の検出方法では、マイクロウェルに含まれる被検体リンパ球が1個であることから、抗原に反応する被検体リンパ球を1個の細胞として特定できる。
その結果、検出された抗原特異的リンパ球を取り出して、抗原特異的抗体遺伝子やT細胞受容体遺伝子をクローニングすることが可能になる。例えば、抗原特異的抗体遺伝子がクローニングできると、それを用いて大量にヒト型モノクローナル抗体を生産することがでる。この抗体を感染症などの患者へ投与することにより、感染症などの治療、予防に用いることができると考えられる。
但し、同一のマイクロウェルには、リンパ球以外の細胞が被検体リンパ球とともに含まれていても良い。リンパ球以外の細胞であれば、抗原に反応せず、検出されることもないからである。
マイクロウェルには、被検体リンパ球は、例えば、培養液とともに格納される。培養液としては、例えば、以下のいずれかのものを挙げることができる。
1. 137mM NaCl, 2.7 mM KCl, 1.8mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 1mg/mlグルコース, 1mg/ml BSA, 20mM HEPES(pH7.4)
2. 10% FCS(牛胎仔血清)含有RPMI1640培地
3. 1mg/ml BSA含有RPMI1640培地
4. 10% FCS(牛胎仔血清)含有Dulbecco's MEM培地
5. 1mg/ml BSA含有Dulbecco's MEM培地
1. 137mM NaCl, 2.7 mM KCl, 1.8mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 1mg/mlグルコース, 1mg/ml BSA, 20mM HEPES(pH7.4)
2. 10% FCS(牛胎仔血清)含有RPMI1640培地
3. 1mg/ml BSA含有RPMI1640培地
4. 10% FCS(牛胎仔血清)含有Dulbecco's MEM培地
5. 1mg/ml BSA含有Dulbecco's MEM培地
本発明の方法では、第1に、上記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出する。次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された抗原を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出する。蛍光の検出はスキャナで行うことができる。非特異的物質接触後に蛍光は発せず、抗原を接触させた後に蛍光を発したBリンパ球が、抗原特異的Bリンパ球であり、そのようなBリンパ球を選択することで、抗原特異的Bリンパ球が得られる。
非特異的物質および抗原の各マイクロウェルへの添加は、例えば、以下のように行うことができる。
1. ピペットを用いてマイクロウェルアレイチップ全面を覆うように非特異的物質液または抗原液を添加する。
2. 1ウェルずつ自動スポッターを用いて非特異的物質液または抗原液を添加する。
1. ピペットを用いてマイクロウェルアレイチップ全面を覆うように非特異的物質液または抗原液を添加する。
2. 1ウェルずつ自動スポッターを用いて非特異的物質液または抗原液を添加する。
図2に蛍光標識抗原を用いた細胞チップによる抗原特異的Bリンパ球の検出方法を示す。蛍光標識した抗原と細胞表面の抗原特異的抗体を結合させ、その蛍光を検出することで、抗原特異的抗体を発現している細胞を同定する。この場合、マイクロウェルに格納されたBリンパ球はアドレスが決まっているので、2回以上の染色操作、即ち蛍光標識抗原等との結合操作を行うことができる。
より具体的には、以下の通りである。
マイクロウェルアレイチップにBリンパ球を播種し、各ウェルに1個ずつBリンパ球を配置する。次に、チップ上に蛍光標識した抗原と似た非特異的な物質を加える。例えば、用いる抗原がタンパク質の場合には、蛍光標識した抗原と無関係なタンパク質をチップに加える。この時点で、非特異的に染色されたBリンパ球をスキャナを用いて検出する。次に、蛍光標識した抗原をチップに添加し、抗原特異的抗体を細胞表面に発現しているBリンパ球に蛍光標識抗原を結合させ、スキャナにて抗原特異的Bリンパ球のシグナルを検出する。マイクロウェルアレイチップを用いた場合、マイクロウェルアレイ中のBリンパ球は基本的に染色、洗浄等の操作により細胞が移動せず、細胞のアドレスが決まっているため、同じ細胞で、非特異的な染色と抗原特異的な染色を比較することが可能である。すなわち、非特異的に染色されたBリンパ球は抗原特異的Bリンパ球ではなく、非特異的な染色では染色されず、抗原を用いた時にのみ蛍光色素で染色されたBリンパ球を抗原特異的Bリンパ球として識別することができる。
マイクロウェルアレイチップにBリンパ球を播種し、各ウェルに1個ずつBリンパ球を配置する。次に、チップ上に蛍光標識した抗原と似た非特異的な物質を加える。例えば、用いる抗原がタンパク質の場合には、蛍光標識した抗原と無関係なタンパク質をチップに加える。この時点で、非特異的に染色されたBリンパ球をスキャナを用いて検出する。次に、蛍光標識した抗原をチップに添加し、抗原特異的抗体を細胞表面に発現しているBリンパ球に蛍光標識抗原を結合させ、スキャナにて抗原特異的Bリンパ球のシグナルを検出する。マイクロウェルアレイチップを用いた場合、マイクロウェルアレイ中のBリンパ球は基本的に染色、洗浄等の操作により細胞が移動せず、細胞のアドレスが決まっているため、同じ細胞で、非特異的な染色と抗原特異的な染色を比較することが可能である。すなわち、非特異的に染色されたBリンパ球は抗原特異的Bリンパ球ではなく、非特異的な染色では染色されず、抗原を用いた時にのみ蛍光色素で染色されたBリンパ球を抗原特異的Bリンパ球として識別することができる。
蛍光標識抗原を使って抗原特異的Bリンパ球を検出する場合、Bリンパ球に結合した蛍光色素の強度は時間によってほとんど変化しないため、スキャナを用いて蛍光を検出する場合、スキャンの時間は5分あるいは10分くらいかかっても良い(バッファーが乾燥しない程度、細胞の状態が悪くならない程度の時間)。また、細胞内Ca2+濃度の変化をFluo-4の蛍光の変化で観察した場合、抗原特異的に刺激されたBリンパ球の蛍光はスキャンした時間により低い蛍光強度から強い蛍光強度まで様々な蛍光強度の細胞が観察される。すなわち、蛍光強度が分散する。しかし、蛍光標識した抗原を用いて抗原特異的Bリンパ球を検出した場合、スキャンした時間による蛍光強度のバラツキ、変化はないので、均一なシグナルを得ることができる。このため、ネガティブのシグナルとポジティブのシグナルの識別が容易である。
本発明は、上記検出方法で選択されたBリンパ球を回収することを含む抗原特異的Bリンパ球の調製方法を包含する。選択されたBリンパ球の回収は、例えば、以下のように行うことができる。顕微鏡下、あるいは蛍光顕微鏡下でマイクロマニピュレータを用いて検出したBリンパ球を回収する。あるいは、自動細胞回収装置(スギノマシン(株))を用いて検出したBリンパ球を回収することができる。
回収された抗原特異的Bリンパ球は、逆転写酵素を含む反応液中に入れ、逆転写反応を行い抗体のmRNAをcDNAに変換し、次にPCR法あるいは5'-RACE法を用いて抗体cDNAを増幅する。増幅した抗体cDNAをタンパク質発現ベクターに導入し、動物細胞に導入することにより、抗原特異的抗体を作成することができる。あるいは、回収した抗原特異的Bリンパ球をサイトカインおよびCD40抗体などを用いて増殖させ、増殖した抗原特異的Bリンパ球を用いて抗原特異的抗体産生ハイブリドーマを作成し、抗原特異的抗体を作成することができる。
[抗原特異的Tリンパ球の検出方法](本発明の第2の態様)
本発明の方法は抗原特異的Bリンパ球の検出だけでなく、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を用いて抗原特異的Tリンパ球を染色することにより抗原特異的Tリンパ球の検出にも用いることができる。
本発明の方法は抗原特異的Bリンパ球の検出だけでなく、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を用いて抗原特異的Tリンパ球を染色することにより抗原特異的Tリンパ球の検出にも用いることができる。
本発明の抗原特異的Tリンパ球の検出方法は、ある抗原に対して特異的に結合するTリンパ球(抗原特異的Tリンパ球)を検出する方法であって、
(1)抗原として、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体、
(2)蛍光標識された前記抗原と同類する非特異的物質、および
(3)Tリンパ球がマイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップ
を用いる。
(1)抗原として、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体、
(2)蛍光標識された前記抗原と同類する非特異的物質、および
(3)Tリンパ球がマイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップ
を用いる。
MHC class I分子/ペプチド複合体四量体は、Major Histocompatibility Complex(MHC)class I分子の細胞外部分(可溶化部分)のcDNAを作成し、発現ベクターに導入し、大腸菌にて蛋白を作成する(この時点では立体構造は形成されていない)。作成した蛋白をβ2-ミクログロブリンと抗原ペプチドの存在下でインキュベーションし、ペプチドが結合し、正確な立体構造を形成した可溶化MHC classI分子を作成する。次にこの分子にビオチンを結合させる。ビオチン化MHC class I分子/ペプチド複合体をPE標識ストレプトアビジンとインキュベーションすることにより、MHC class I分子/ペプチド複合体四量体を作成することができる。(参考文献)Altman JD, Moss PA, Goulder PJ, Barouch DH, McHeyzer-Williams MG, Bell JI, McMichael AJ, Davis MM. Phenotypic analysis of antigen-specific T lymphocytes. Science. 274:94-96, 1996.(Correction: Davis MM. Science, Science 280:1821, 1998)
MHC classII分子/ペプチド複合体四量体の作成は、以下の通りである。
MHC class II分子α鎖、β鎖分子の細胞外部分のcDNAの3'側にロイシンジッパーモチーフの遺伝子配列を及びビオチン化サイトの遺伝子配列を結合させ、昆虫細胞で発現させる。可溶化MHC class II分子α鎖、β鎖分子がロイシンジッパーを介して会合した分子が形成され、そのビオチン化部位にビオチンを結合させる。それにペプチドを結合させた後、ストレプトアビジンとインキュベーションし、四量体を形成させることができる。(参考文献:Novak EJ, Liu AW, Nepom GT, Kwok WW, MHC class II tetramers identify peptide-specific human CD4+ T cells proliferating in response to influenza A antigen. J. Clin. Invest. 104:R63-R67 (1999))
MHC class II分子α鎖、β鎖分子の細胞外部分のcDNAの3'側にロイシンジッパーモチーフの遺伝子配列を及びビオチン化サイトの遺伝子配列を結合させ、昆虫細胞で発現させる。可溶化MHC class II分子α鎖、β鎖分子がロイシンジッパーを介して会合した分子が形成され、そのビオチン化部位にビオチンを結合させる。それにペプチドを結合させた後、ストレプトアビジンとインキュベーションし、四量体を形成させることができる。(参考文献:Novak EJ, Liu AW, Nepom GT, Kwok WW, MHC class II tetramers identify peptide-specific human CD4+ T cells proliferating in response to influenza A antigen. J. Clin. Invest. 104:R63-R67 (1999))
抗原に対する蛍光標識は、Bリンパ球の場合と同様である。複数の抗原(MHC/ペプチド複合体四量体)を異なる蛍光色素で標識した場合、複数の抗原に対する抗原特異的T リンパ球を検出することが可能である。
抗原と同類する非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質であることができる。具体的には、抗原がMHC/ペプチド複合体四量体の場合は、非特異的物質は、抗原とMHCは同一であり、ペプチドが抗原のペプチドと異なるか、あるいは、非特異的物質は、抗原とペプチドは同一であり、MHCが抗原のMHCと異なるものであることができる。
抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは、Bリンパ球の場合と同様に、同一であることが好ましい。
本発明の方法では、第1に、マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出する。次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出する。そして、非特異的物質接触後に蛍光は発せず、MHC/ペプチド複合体四量体を接触させた後に蛍光を発したTリンパ球が抗原特異的Tリンパ球であるので、これを選択する。
本発明は、上記検出方法で選択されたTリンパ球を回収することを含む抗原特異的Tリンパ球の調製方法を包含する。選択されたT リンパ球の回収は、例えば、以下のように行うことができる。顕微鏡下、あるいは蛍光顕微鏡下でマイクロマニピュレータを用いて検出したTリンパ球を回収する。あるいは、自動細胞回収装置(スギノマシン(株))を用いて検出したTリンパ球を回収することができる。
回収された抗原特異的Tリンパ球は、逆転写酵素を含む反応液中に入れ、逆転写反応を行い抗体のmRNAをcDNAに変換し、次にPCR法あるいは5'-RACE法を用いてT細胞受容体(TCR)cDNAを増幅する。増幅したTCR cDNAをタンパク質発現ベクターに導入し、別のTリンパ球に導入し細胞表面に抗原特異的TCRを発現させることにより、抗原特異的T細胞を作成することができる。
以下に本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
比較例1
図1に蛍光標識抗原を用いた抗原特異的Bリンパ球のフローサイトメータによる検出を示す。
図1に蛍光標識抗原を用いた抗原特異的Bリンパ球のフローサイトメータによる検出を示す。
Hen egg lysozyme (HEL)に特異的な抗体(HyHEL10)遺伝子を持つトランスジェニックマウス(HyHEL10-tgマウス)の脾細胞と正常マウスの脾細胞を適当に混合し、HyHEL10-tgマウスの脾細胞が全体の10%(10HEL)、1%(1HEL)、0.1%(0.1HEL)、0%(0HEL)になるような細胞懸濁液を調製した。それらのサンプルをビオチン化HELおよびPE標識ストレプトアビジンを用いて染色し、フローサイトメータにより解析した。縦軸はPE-HELで染色された細胞の蛍光強度を、横軸はFITC-B220 (B細胞マーカー) 抗体で染色した細胞の蛍光強度を示してある。PEおよびFITCの蛍光強度で細胞を4分画してある。左下の分画の細胞はPE-HEL、FITC-B220抗体のいずれも結合しなかった細胞をしめしており、右下の分画の細胞はFITC-B220抗体のみが結合し、PE-HELが結合しなかった細胞を示している。すなわち、正常マウス由来のBリンパ球である。右上はFITC-B220抗体およびPE-HELの両方が結合した細胞であり、HEL特異的Bリンパ球の細胞集団である。このHEL特異的Bリンパ球の全細胞の中での割合を示してある。HyHEL10-tgマウスの脾細胞中のBリンパ球の割合は約50%であるので、10%HyHEL10-tgマウス由来脾細胞を含むサンプルでは、約5.6%の細胞がHEL特異的Bリンパ球として検出される。1%の場合、予想されるHEL特異的Bリンパ球の割合は0.5%であるが、実際には1.6%検出されている。さらに、0.1%および0%の場合、0.8%および0.7%の細胞がHEL特異的Bリンパ球の分画に検出される。すなわち、フローサイトメータによる解析ではネガティブコントロールの0%の細胞群でも約0.7〜0.8%の割合でPE-HELが結合した細胞が存在していた。これは蛍光標識蛋白の非特異的結合によると考えられ、解析のバックグラウンドノイズの原因となる。
実施例1
1. HyHEL10-tgマウスの脾細胞のほぼ全てのBリンパ球はHEL特異的抗体を細胞表面に発現している。このHyHEL10-tgマウスの脾細胞と野生型マウスの脾細胞を調製し、それぞれを混ぜ合わせ、total 2x106細胞になるようにし、HyHEL10-tgマウスの脾細胞が全体の100%, 10%, 1%, 0.1%,0.01%,0%を占めるような細胞懸濁液を調製した。
2.細胞を1,500回転5分間遠心し、上清を捨てた後、細胞に1μM Fluo4(Molecular Probes, Oregon,USA), 0.2% (v/v) F127(Molecular Probes, Oregon, USA)を含むloading buffer (20mM HEPES pH7.6, 137mM NaCl, 2.7mM KCl, 1.8mM CaCl2, 0.1mM MgCl2, 1.1mM Glucose, 0.2%BSA)1mlを加え懸濁の後、室温で30分間震盪した。
3.細胞にloading bufferを約10mL加え、1,500回転、5分間遠心し、上清を取り除いた。
4.細胞を10%FCS/RPMIに懸濁し、1,500回転、5分間遠心した。
5.細胞の沈殿に抗FcγR抗体(2.4G2, BD Pharmingen, USA) 2μgを添加、撹拌し、室温で15分間放置した。その後、細胞を50μLあるいは200μLの10%FCS/RPMIに懸濁した。
6.細胞懸濁液50μLを45,000ウェルあるいは200μLを230,000ウェルのマイクロウェルアレイチップに添加し、2〜3分静置後3回程度ピペッティングにて攪拌した。
7.チップ上のバッファーをピペットを用いて除去し、そこへバッファーを50μL(45,000ウェルの場合、以下同様)あるいは200μL(230,000ウェルチップの場合、以下同様)添加し、ピペットを用いて軽く撹拌後バッファーを除去した。これをさらに2回程度繰り返し、ウェルに入らなかった細胞を除去した。最終的にバッファーを50μLあるいは200μL添加し、細胞をカバーガラスで覆った。その後さらに3回程度バッファーを交換した。
8.細胞がアレイされたチップをスキャナ(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、CRBIO IIe-FITC)に挿入し、励起波長473nm、蛍光波長535nmおよび励起波長532nm、蛍光波長585nm、解像度2.5μmで各々の細胞の蛍光を測定した(スキャン1)。
9.チップをスキャナから取り出した後、カバーガラスをかけたままバッファーを除去し、ビオチン化BSA 2μg/mlを50μLあるいは200μLチップに添加し、5分間、室温にて遮光し静置した。
10.チップにてバッファーを除去し、バッファーを50μLあるいは200μL加えて1回洗浄後、チップに1500倍希釈したPE標識ストレプトアビジン(Sav-PE、BD Pharmingen, USA)を50μLあるいは200μL添加し、3分間室温にて遮光し静置した。
11.細胞をバッファーにて3回洗浄後、チップをスキャナ(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、CRBIO IIe-FITC)に挿入し、励起波長473nm、蛍光波長535nmおよび励起波長532nm、蛍光波長585nm、解像度2.5μmで各々の細胞の蛍光を測定した(スキャン2)。
12.チップをスキャナから取り出し、カバーガラスをかけたままバッファー除去後2μg/mlビオチン化HELを 50μLあるいは200μLチップに添加し、5分間遮光、静置した。
13.細胞をバッファーにて一回洗浄後、バッファーで1500倍希釈したSav-PEをチップに50μLないし200μL添加し、3分間遮光し静置した。
14.チップ上で細胞をバッファーにて3回洗浄後、チップをスキャナ(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、CRBIO IIe-FITC)に挿入し、励起波長473nm、蛍光波長535nmおよび励起波長532nm、蛍光波長585nm、解像度2.5μmで各々の細胞の蛍光を測定した(スキャン3)。
15.スキャナ付属のソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、DNASIS)にて各細胞の蛍光強度を測定する。ビオチン化BSA/PE-savで染色された細胞は抗原非特異的な細胞である。ビオチン化BSA/PE-savで染色されずに、ビオチン化HEL/PE-savで染色された細胞を抗原(HEL)特異的細胞として検出した(図3)。
1. HyHEL10-tgマウスの脾細胞のほぼ全てのBリンパ球はHEL特異的抗体を細胞表面に発現している。このHyHEL10-tgマウスの脾細胞と野生型マウスの脾細胞を調製し、それぞれを混ぜ合わせ、total 2x106細胞になるようにし、HyHEL10-tgマウスの脾細胞が全体の100%, 10%, 1%, 0.1%,0.01%,0%を占めるような細胞懸濁液を調製した。
2.細胞を1,500回転5分間遠心し、上清を捨てた後、細胞に1μM Fluo4(Molecular Probes, Oregon,USA), 0.2% (v/v) F127(Molecular Probes, Oregon, USA)を含むloading buffer (20mM HEPES pH7.6, 137mM NaCl, 2.7mM KCl, 1.8mM CaCl2, 0.1mM MgCl2, 1.1mM Glucose, 0.2%BSA)1mlを加え懸濁の後、室温で30分間震盪した。
3.細胞にloading bufferを約10mL加え、1,500回転、5分間遠心し、上清を取り除いた。
4.細胞を10%FCS/RPMIに懸濁し、1,500回転、5分間遠心した。
5.細胞の沈殿に抗FcγR抗体(2.4G2, BD Pharmingen, USA) 2μgを添加、撹拌し、室温で15分間放置した。その後、細胞を50μLあるいは200μLの10%FCS/RPMIに懸濁した。
6.細胞懸濁液50μLを45,000ウェルあるいは200μLを230,000ウェルのマイクロウェルアレイチップに添加し、2〜3分静置後3回程度ピペッティングにて攪拌した。
7.チップ上のバッファーをピペットを用いて除去し、そこへバッファーを50μL(45,000ウェルの場合、以下同様)あるいは200μL(230,000ウェルチップの場合、以下同様)添加し、ピペットを用いて軽く撹拌後バッファーを除去した。これをさらに2回程度繰り返し、ウェルに入らなかった細胞を除去した。最終的にバッファーを50μLあるいは200μL添加し、細胞をカバーガラスで覆った。その後さらに3回程度バッファーを交換した。
8.細胞がアレイされたチップをスキャナ(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、CRBIO IIe-FITC)に挿入し、励起波長473nm、蛍光波長535nmおよび励起波長532nm、蛍光波長585nm、解像度2.5μmで各々の細胞の蛍光を測定した(スキャン1)。
9.チップをスキャナから取り出した後、カバーガラスをかけたままバッファーを除去し、ビオチン化BSA 2μg/mlを50μLあるいは200μLチップに添加し、5分間、室温にて遮光し静置した。
10.チップにてバッファーを除去し、バッファーを50μLあるいは200μL加えて1回洗浄後、チップに1500倍希釈したPE標識ストレプトアビジン(Sav-PE、BD Pharmingen, USA)を50μLあるいは200μL添加し、3分間室温にて遮光し静置した。
11.細胞をバッファーにて3回洗浄後、チップをスキャナ(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、CRBIO IIe-FITC)に挿入し、励起波長473nm、蛍光波長535nmおよび励起波長532nm、蛍光波長585nm、解像度2.5μmで各々の細胞の蛍光を測定した(スキャン2)。
12.チップをスキャナから取り出し、カバーガラスをかけたままバッファー除去後2μg/mlビオチン化HELを 50μLあるいは200μLチップに添加し、5分間遮光、静置した。
13.細胞をバッファーにて一回洗浄後、バッファーで1500倍希釈したSav-PEをチップに50μLないし200μL添加し、3分間遮光し静置した。
14.チップ上で細胞をバッファーにて3回洗浄後、チップをスキャナ(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、CRBIO IIe-FITC)に挿入し、励起波長473nm、蛍光波長535nmおよび励起波長532nm、蛍光波長585nm、解像度2.5μmで各々の細胞の蛍光を測定した(スキャン3)。
15.スキャナ付属のソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、DNASIS)にて各細胞の蛍光強度を測定する。ビオチン化BSA/PE-savで染色された細胞は抗原非特異的な細胞である。ビオチン化BSA/PE-savで染色されずに、ビオチン化HEL/PE-savで染色された細胞を抗原(HEL)特異的細胞として検出した(図3)。
図3に蛍光標識抗原(PE-HEL)を用いた細胞チップによる抗原(HEL)特異的Bリンパ球の検出結果を示す。
図1と同様にHyHEL10-tgマウスの脾細胞と正常マウスの脾細胞との比が10:90、1:99、0.1:99.9となるように混合した細胞懸濁液を調製した。細胞をチップに播種後、まずビオチン標識BSA(b−BSA)およびPE標識ストレプトアビジン(Sav-PE)を用いてチップ上で細胞を染色し、スキャナでシグナルを読み取った後、ビオチン標識HEL(b−HEL)およびSav-PEを用いて細胞をチップ上で染色し、スキャナでシグナルを読み取った。図では横軸にb-BSA/Sav-PEで染色した蛍光強度(A)を、縦軸にb-HEL/Sav-PEで染色した蛍光強度(B)を示している。B/Aの比が10倍以上の細胞の割合を示してある。図1と同様にHyHEL10-tgマウスの脾細胞中のBリンパ球の割合が約50%とすると、1%で0.56%の細胞が、0.1%のとき0.049%の細胞が検出されており、フローサイトメータと比べて頻度の低い抗原特異的Bリンパ球をより正確に検出していると考えられる。
16.その後、チップをスキャナから取り出し、バッファーを取り除いた後カバーガラスを外した。さらに細胞が乾燥しないようバッファーをチップ上に添加した後、検出した抗原特異的Bリンパ球を蛍光顕微鏡下(BX51WI, オリンパス)でマイクロマニピュレータ(TransferMan NK2, Eppendorf)を用いて採取し、RT溶液(GSP mix 1μl, 5x 1st strand buffer 3μl, dNTP 1.5μl, 1mg/ml BSA 1.5μl, NP40 1.5μl, RNaseOUT 0.2μl, reverse transcriptase 0.2μl, and DEPC-H20 6.1μl)を含んだPCRチューブに移した。その後、RT反応(55℃、60分)を行い、cDNAを作製した。
17.作製したcDNAを用い、HEL cDNAを増幅するプライマーを用いてPCRにてcDNAを増幅した(1st PCR 94℃ 3min; 94℃ 20sec, 60℃ 20sec, 72℃ 1.5min 30cycle; 72℃ 2min; cDNA 1.5μl, 10X Taq Buffer 2μl, dNTP 1.6μl, 1st primer1 (H鎖TTTGAAGAAA GGGGTTGTAG(配列番号1)、L鎖 CCACACAAAC TCAGGGAAAG(配列番号2)) 0.6μl, 1st Primer2 (H鎖 TGCAGAGACA GTGACCAGAG(配列番号3)、L鎖 CAGCCCGTTT TATTTCCAG(配列番号4)) 0.6μl, ExTaq 0.1μl, ddH20 13.61μl, 2nd PCR 94℃ 3min; 94℃ 20sec, 60℃ 20sec, 72℃ 1.5min 30cycle; 72℃ 2min; 100X 1st PCR product 2μl, 10X Taq Buffer 2μl, dNTP 1.6μl, nest primer1 (H鎖 AGCCTAAAAGATGATGGTGT T(配列番号5)、L鎖 CAGTAATCACCGTCCCAGTT(配列番号6))0.6μl, nest Primer2(H鎖 CAGTAATCACCGTCCCAGTT(配列番号7), L鎖 CCAAAATCTTCAGTCTCCACA(配列番号8)) 0.6μl, ExTaq 0.1μl, ddH20 13.1μl)。増幅したcDNAをアガロースゲル電気泳動にて分離し(cDNA 10μl, 1% agarose gel/EtBr 20μg/1xTAE, 100V)、目的のcDNAが増幅したか否かをチェックした(図4)。
17.作製したcDNAを用い、HEL cDNAを増幅するプライマーを用いてPCRにてcDNAを増幅した(1st PCR 94℃ 3min; 94℃ 20sec, 60℃ 20sec, 72℃ 1.5min 30cycle; 72℃ 2min; cDNA 1.5μl, 10X Taq Buffer 2μl, dNTP 1.6μl, 1st primer1 (H鎖TTTGAAGAAA GGGGTTGTAG(配列番号1)、L鎖 CCACACAAAC TCAGGGAAAG(配列番号2)) 0.6μl, 1st Primer2 (H鎖 TGCAGAGACA GTGACCAGAG(配列番号3)、L鎖 CAGCCCGTTT TATTTCCAG(配列番号4)) 0.6μl, ExTaq 0.1μl, ddH20 13.61μl, 2nd PCR 94℃ 3min; 94℃ 20sec, 60℃ 20sec, 72℃ 1.5min 30cycle; 72℃ 2min; 100X 1st PCR product 2μl, 10X Taq Buffer 2μl, dNTP 1.6μl, nest primer1 (H鎖 AGCCTAAAAGATGATGGTGT T(配列番号5)、L鎖 CAGTAATCACCGTCCCAGTT(配列番号6))0.6μl, nest Primer2(H鎖 CAGTAATCACCGTCCCAGTT(配列番号7), L鎖 CCAAAATCTTCAGTCTCCACA(配列番号8)) 0.6μl, ExTaq 0.1μl, ddH20 13.1μl)。増幅したcDNAをアガロースゲル電気泳動にて分離し(cDNA 10μl, 1% agarose gel/EtBr 20μg/1xTAE, 100V)、目的のcDNAが増幅したか否かをチェックした(図4)。
図4にHEL特異的抗体(HyHELL10) 遺伝子の検出結果を示す。HEL特異的抗体(HyHELL10)のH鎖のPCR結果を示す。マイクロアレイ法で採取した1細胞からRT反応にてcDNAを作製し、HyHELL10抗体遺伝子特異的プライマーを用いてPCR反応によりcDNAを増幅した。その結果、10%から0.01%まで希釈したサンプルにおいてもHyHELL10のcDNA(約400bp)が確認された。Pはpositive controlで100%HEL-tgのマウス脾細胞106個より抽出したRNAを用いた結果を示している。
比較例2および実施例2
ビオチン化HELとPE標識ストレプトアビジンを用いる系を用いて、実際にどの程度低頻度の抗原特異的Bリンパ球が検出されるか、検討した。方法は、上記実施例1と同様に、HEL特異的抗体(HyHEL10)遺伝子のトランスジェニックマウス(HyHEL10-tgマウス)を正常マウスの脾細胞をHEL-tgマウスの脾細胞が10%、1%、0.1%、0.001%になるように調製し、フローサイトメータの場合(比較例2)は、それらの細胞をビオチン化HELとPE標識ストレプトアビジンを使って染色し、ベクトンディッキンソン社製のFACSCantoを使って、蛍光が陽性の細胞の割合を解析し、さらにベックマンコールター社製のEPICS ELITEを用いて蛍光が陽性の細胞をソーティングし、ソーティングした細胞をスライドガラスの上に展開し、顕微鏡下、マイクロマニピュレータを用いて1個のBリンパ球をチューブに回収し、RT-PCR反応によりHEL特異的抗体遺伝子が存在するかを検討した。100%HEL特異的Bリンパ球を用いた時には、平均的に約50%のBリンパ球から抗体遺伝子が増幅した。
ビオチン化HELとPE標識ストレプトアビジンを用いる系を用いて、実際にどの程度低頻度の抗原特異的Bリンパ球が検出されるか、検討した。方法は、上記実施例1と同様に、HEL特異的抗体(HyHEL10)遺伝子のトランスジェニックマウス(HyHEL10-tgマウス)を正常マウスの脾細胞をHEL-tgマウスの脾細胞が10%、1%、0.1%、0.001%になるように調製し、フローサイトメータの場合(比較例2)は、それらの細胞をビオチン化HELとPE標識ストレプトアビジンを使って染色し、ベクトンディッキンソン社製のFACSCantoを使って、蛍光が陽性の細胞の割合を解析し、さらにベックマンコールター社製のEPICS ELITEを用いて蛍光が陽性の細胞をソーティングし、ソーティングした細胞をスライドガラスの上に展開し、顕微鏡下、マイクロマニピュレータを用いて1個のBリンパ球をチューブに回収し、RT-PCR反応によりHEL特異的抗体遺伝子が存在するかを検討した。100%HEL特異的Bリンパ球を用いた時には、平均的に約50%のBリンパ球から抗体遺伝子が増幅した。
チップを使う場合(実施例2)には、上記のように調製した脾細胞をチップに播種し、チップ上で、まず、ビオチン化BSAとPE標識ストレプトアビジンを用いて染色し、スキャナにて非特異的に染色された細胞を検出した。次に、チップ上でビオチン化HELとPE標識ストレプトアビジンを用いて脾細胞を染色し、スキャナにて蛍光陽性細胞を検出した。非特異的染色で染色されず、HELで特異的に染色された細胞をHEL特異的Bリンパ球として検出し、蛍光顕微鏡下でマイクロマニピュレータを用いて細胞を回収し、RT-PCR反応によりHEL特異的抗体遺伝子が存在するかを検討した。100%HEL特異的Bリンパ球を用いた時には、平均的に約50%のBリンパ球から抗体遺伝子が増幅した。HELの脾細胞中には約50%の割合でBリンパ球が存在する。
下記表1に示すように、フローサイトメータの場合、0.1%HELで予測される0.05%を上回り、0.09%の細胞が検出されており、0.01%では予測される0.005%を大きく上回り0.063%の細胞が検出されており、ノイズが高いことがわかる。一方、本発明によるチップを用いた方法では、0.1%の場合、予測される0.05%に近い0.038%の細胞が、0.01%の場合は予測される0.005%に較べると、少し低い0.0024%の細胞が陽性と検出され、チップ法の方がノイズが低い事がわかる。また、PCRを用いて実際にHEL特異的Bリンパ球が採取されたかをチェックした時、フローサイトメータの場合には0.1%から0.01%にかけて陽性細胞の割合が落ちて来ているが、チップ法の場合は44〜45%の細胞からHEL特異的抗体遺伝子が増幅しており、100%HEL特異的Bリンパ球を用いた場合でも平均的に約50%のBリンパ球から抗体遺伝子が増幅することを考えると、0.01%の場合でもほぼ100%に近い確率で抗原特異的Bリンパ球が検出されていることが示唆される。
本発明は、抗原特異的リンパ球の検出方法および調製方法であり、抗体医療等の免疫に関連する医療分野に有用である。
Claims (15)
- ある抗原に対して特異的に結合するBリンパ球を検出する方法であって、
前記抗原として、蛍光標識された抗原を準備し、
蛍光標識された前記抗原と同類の非特異的物質を準備し、
前記Bリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、
前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、前記蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出し、
次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のBリンパ球に、蛍光標識された抗原を接触させ、接触後、蛍光を発するBリンパ球を検出し、
非特異的物質接触後に蛍光は発せず、抗原を接触させた後に蛍光を発したBリンパ球を選択する
ことを含む、前記方法。 - 抗原がタンパク質である場合、非特異的物質もタンパク質であり、
抗原がペプチドである場合、非特異的物質もペプチドであり、
抗原が糖鎖である場合、非特異的物質も糖鎖であり、
抗原が脂質である場合、非特異的物質も脂質である、
請求項1に記載の方法。 - 非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質である請求項1または2に記載の方法。
- 前記抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 蛍光標識された非特異的物質を除去した後に、蛍光標識された抗原を接触させる請求項4に記載の方法。
- 蛍光標識がスキャナで検出できる蛍光標識である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で選択されたBリンパ球を回収することを含む抗原特異的Bリンパ球の調製方法。
- ある抗原に対して特異的に結合するTリンパ球を検出する方法であって、
前記抗原として、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を準備し、
蛍光標識された前記抗原と同類する非特異的物質を準備し、
前記Tリンパ球が、マイクロウェルアレイチップの各ウェルに1個ずつ配置されたマイクロウェルアレイチップを準備し、
前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、前記蛍光標識された非特異的物質を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出し、
次いで、前記マイクロウェルアレイチップ上のTリンパ球に、蛍光標識されたMHC/ペプチド複合体四量体を接触させ、接触後、蛍光を発するTリンパ球を検出し、
非特異的物質接触後に蛍光は発せず、MHC/ペプチド複合体四量体を接触させた後に蛍光を発したTリンパ球を選択する
ことを含む、前記方法。 - 非特異的物質は、抗原とMHCは同一であり、ペプチドが抗原のペプチドと異なる請求項8に記載の方法。
- 非特異的物質は、抗原とペプチドは同一であり、MHCが抗原のMHCと異なる請求項8に記載の方法。
- 非特異的物質は、抗原のエピトープを除き、抗原と略同一の物質である請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記抗原に対する蛍光標識と非特異的物質に対する蛍光標識とは同一である請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 蛍光標識された非特異的物質を除去した後に、蛍光標識された抗原を接触させる請求項12に記載の方法。
- 蛍光標識がスキャナで検出できる蛍光標識である請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法で選択されたTリンパ球を回収することを含む抗原特異的Tリンパ球の調製方法。
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