次に、本願に好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、CD(Compact Disc)等のデジタル信号にて記録された記録媒体から読み出されたPCM信号が入力され、当該入力されたPCM信号の信号レベルを増幅してスピーカに出力するD級増幅装置において、本願のD級電力増幅装置を適用した場合の実施形態である。また、以下の説明では、1chのD級電力増幅装置を用いているが、ステレオ、5.1chまたは7.1chのマルチチャンネルのスピーカを拡声するD級電力増幅装置においても適用可能である。
〔第1実施形態〕
初めに、図1〜図8を用いて D級電力増幅装置の第1実施形態について説明する。
まず、図1および図2を用いて本実施形態におけるD級電力増幅装置の構成について説明する。なお、図1は、本実施形態のD級電力増幅装置の構成を示すブロック図であり、図2は、本実施形態における検出された誤差信号の電圧値に対応する第2クロック信号生成部にて生成されるクロック信号のクロック周波数範囲を示すグラフである。また、以下の説明では、Single Sided PWM方式における適用例について説明する。
本実施形態のD級電力増幅装置100は、所定のクロック信号に基づいて入力されたPCM信号に対してパルス幅変調を施し、PWM信号を生成するようになっており、当該生成されたPWM信号に従って電源電圧のスイッチングを行う処理(以下、「スイッチング処理」という。)を実行して信号レベルが増幅されたPWM信号をスピーカに出力するようになっている。
特に、本実施形態のD級電力増幅装置100は、後述するようにスイッチング処理が為される前のPWM信号と当該スイッチング処理が為された後のPWM信号との誤差信号を算出し、算出された誤差信号の変化に応じてクロック周波数が変化するクロック信号を発生させるようになっている。そして、このD級電力増幅装置100は、スイッチング処理が施される際に生じる非線形歪みを補正するために、発生させたクロック信号に基づいて、PCM信号に対してパルス幅変調を施すようになっている。
このD級電力増幅装置100は、入力されたPCM信号に対して前処理としてオーバーサンプリング処理およびノイズシェーピンク処理を行うオーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102と、オーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102を動作させるためのクロック信号(以下、「第1クロック信号」という。)を発生させる第1クロック信号発生部103と、前処理されたPCM信号を一時的に記憶するバッファ104と、バッファ104に記憶されたPCM信号の出力制御を行う出力制御部105と、出力制御されたPCM信号に対してパルス幅変調を行い、PWM信号を生成するPCM/PWM変換部106と、を有している。
また、このD級電力増幅装置100は、生成されたPWM信号に基づいてスイッチング処理を行い、当該PWM信号の信号レベルをk倍に増幅するスイッチング増幅回路107と、信号レベルが増幅されたPWM信号に対してフィルタ処理を行い、拡声信号を生成する第1ローパスフィルタ(以下、「第1LPF」という。)108と、拡声信号の信号レベルを1/k倍する増幅器109と、PCM/PWM変換部106から出力されたPWM信号に対して上述の第1ローパスフィルタと同様のフィルタ処理を行う第2ローパスフィルタ(以下、「第2LPF」という。)110と、1/k倍された拡声信号と第2ローパスフィルタから出力されたPWM信号との誤差信号を算出する誤差信号算出部111と、を有している。
さらに、このD級電力増幅装置100は、算出された誤差信号の直流電圧化(DC化)、すなわち、平均化を行う積分器112と、直流電圧化された誤差信号の電圧値を検出する電圧検出部113と、検出された電圧値にリミッタ処理を施すリミッタ回路114と、リミッタ処理された電圧値の変化に応じてクロック周波数が変化するクロック信号(以下、「第2クロック信号」という。)を発生させる第2クロック信号発生部115と、生成された第2クロック信号の波形を整形する波形整形回路116と、を有している。
なお、例えば、本実施形態のバッファ104は、本発明の受信手段、第1生成手段および記憶手段を構成し、出力制御部105は、本発明の第1生成手段および制御手段を構成する。また、本実施形態のPCM/PWM変換部106は、本発明の第1生成手段およびパルス幅変調信号生成手段を構成し、スイッチング増幅回路107は、本発明の第2生成手段を構成する。さらに、例えば、本実施形態の誤差信号算出部111は、本発明の検出手段を構成し、第2クロック信号発生部115は、本発明の発生手段を構成する。
オーバーサンプリング処理部101には、入力端子Tを介してPCM信号が入力されるようになっており、このオーバーサンプリング処理部101は、第1クロック信号発生部103にて生成された第1クロック信号に基づいて、入力されたPCM信号に対してオーバーサンプリング処理を行い、当該オーバーサンプリング処理が為されたPCM信号をノイズシェーピング回路102に出力するようになっている。
例えば、本実施形態のオーバーサンプリング処理部101は、4倍または8倍など、入力されたPCM信号に対して当該PCM信号のサンプリング周波数より所定倍数のサンプリング周波数によりサンプリングする処理を実行するようになっている。
ノイズシェーピング回路102には、オーバーサンプリングされたPCM信号が入力されるようになっており、このノイズシェーピング回路102は、第1クロック信号発生部103にて生成された第1クロック信号に基づいて、入力されたPCM信号から量子化ビット数を所定のビット数(Nビット)に減らし、量子化雑音を高周波数帯域にシフトさせるノイズシェーピンク処理を施すようになっている。また、このノイズシェーピング回路102は、ノイズシェーピンク処理が施されたPCM信号をバッファ104に書き込むようになっている。
第1クロック信号発生部103は、予め定められた一定のクロック周波数に基づいて第1クロック信号を生成し、当該生成された第1クロック信号をオーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102に出力するとともに、バッファ104に出力するようになっている。
バッファ104は、予め定められた記憶容量を有し、オーバーサンプリング処理およびノイズシェーピンク処理が施されたPCM信号が一時的に記憶されるようになっている。また、このバッファ104においては、入出力のタイミング制御が独立的に行われてPCM信号の書き込みおよび読み出しが行われるようになっており、このバッファ104は、入出力のそれぞれの書き込みタイミングおよび読み出しタイミングの相違による時間差を吸収するようになっている。
具体的には、このバッファ104には、第1クロック信号に基づいてノイズシェーピング回路102から出力されたPCM信号が順次書き込まれるようになっており、このバッファ104は、出力制御部105の制御の下、後述するように、所定のタイミング、すなわち、第2クロック信号に基づいて生成されるクロック信号に基づいて、記憶されたPCM信号をPCM/PWM変換部106に出力するようになっている。
なお、このバッファ104における書き込みレートは、一定になっている。また、本実施形態のバッファ104における記憶容量は、後述するスイッチング増幅回路107におけるスイッチング周波数の変動幅以上の時間的長さを吸収することができる容量であることが好適である。
出力制御部105は、波形整形回路116から出力された第2クロック信号を(N/2N)倍にする分周回路を有し、入力された第2クロック信号の周期を(N/2N)倍し、当該周期が(N/2N)倍された第2クロック信号に基づいて、バッファ104からPCM/PWM変換部106に記憶されたPCM信号を出力させるようになっている。
なお、「N」は、ノイズシェーピング回路102から出力されるPCM信号のビット数を示す。また、本実施形態では、PCM/PWM変換部106の時間分解能は、PCM信号に比べて(2N)倍になるため、後述するPCM/PWM変換部106において用いる第2クロック信号の(N/2N)倍のタイミングにて読み出すようになっている。
PCM/PWM変換部106には、所定のタイミングにて読み出され、かつ、所定の前処理が施されたPCM信号が入力されるようになっており、このPCM/PWM変換部106は、第2クロック信号に基づいて、入力されたPCM信号に対してパルス幅変調を行い、PWM信号を生成してスイッチング増幅回路107および第2LPF110に出力するようになっている。
具体的には、本実施形態では、第2クロック信号が誤差信号に基づいて変化するようになっており、PCM/PWM変換部106は、変化された第2クロック信号に基づいて、入力されたPCM信号に対してパルス幅変調を行うようになっている。
スイッチング増幅回路107には、パルス幅変調されたPWM信号が入力されるようになっている。このスイッチング増幅回路107は、例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型トランジスタであって、電界効果型トランジスタ(以下、「FET:Field Effect Transistor」という。)FETと、スピーカを駆動するための駆動電圧を印加するための直流電源と、を有し、入力されたPWM信号のスイッチング制御などの所定の制御を行い、PWM信号の信号レベルをk倍に、すなわち、所定の信号レベルに増幅するようになっている。そして、このスイッチング増幅回路107は、当該増幅されたPWM信号を第1LPF108に出力するようになっている。
なお、本実施形態では、スイッチング増幅回路107において、FETに代えてバイポーラトランジスタを用いてでもよい。
第1LPF108には、所定のレベルに増幅されたPWM信号が入力されるようになっており、この第1LPF108は、高域雑音を除去するために入力されたPWM信号に対して高域遮断処理を施して拡声信号を生成し、当該生成された拡声信号をスピーカおよび増幅器109に出力するようになっている。
増幅器109には、第1LPF108にて生成された拡声信号が入力されるようになっており、この増幅器109は、誤差信号を算出する際に一方の信号、すなわち、PCM/PWM変換部106から出力されたPWM信号との整合性を図るために入力された拡声信号の信号レベルを(1/k)倍に増幅し、当該信号レベルが(1/k)倍に増幅された拡声信号を誤差信号算出部111に出力するようになっている。
第2LPF110には、PCM/PWM変換部106から出力されたPWM信号が入力されるようになっており、この第2LPF110は、誤差信号を算出する際に他方の信号、すなわち、拡声信号との整合性を図るために入力されたPWM信号に対して第1LPF108と同様の高域遮断処理を施し、当該高域遮断処理が施された信号を誤差信号算出部111に出力するようになっている。
誤差信号算出部111には、信号レベルが(1/k)倍された拡声信号と第2LPF110から出力された信号とが入力されるようになっており、この誤差信号算出部111は、入力された各信号に基づいて誤差信号を算出し、当該算出された誤差信号を積分器112に出力するようになっている。
具体的には、本実施形態の誤差信号算出部111は、減算器から構成され、信号レベルが(1/k)倍された拡声信号から第2LPF110から出力された信号を減算し、誤差信号を生成するようになっている。
積分器112には、誤差信号生成部にて生成された誤差信号が入力されるようになっており、この積分器112は、入力された誤差信号に対して積分演算して直流電圧値化(DC値化)、すなわち、当該入力された誤差信号を平均化して電圧検出部113およびリミッタ回路114に出力するようになっている。
例えば、この積分器112は、(式1)に示すオーバーサンプリングされたPCM信号のサンプリング周期(FPWM)以下であって、(式2)を満たす時定数τの低いローパスフィルタから構成されるようになっている。ただし、以下の式において、Fsは、PCM信号のサンプリング周波数を示す。
(数1)
FPWM = Fs×オーバーサンプリング数 ・・・・(式1)
(数2)
τ ≧ 1/(Fs×オーバーサンプリング数×(2N−1))・・・・(式2)
電圧検出部113には、積分器112にてDC値化された誤差信号が入力されるようになっており、この電圧検出部113は、入力された誤差信号の電圧値を検出し、検出された電圧値に基づいてリミッタ回路114における出力を制御するようになっている。
リミッタ回路114には、積分器112から出力された平均化された誤差信号と、電圧検出部113から出力された電圧値と、が入力されるようになっており、このリミッタ回路114は、電圧検出部113にて検出された電圧値に基づいて定められた上限の電圧値(以下、「上限電圧値」という。)以上、および、予め定められた下限の電圧値(以下、「下限電圧値」という。)以下の電圧値が誤差信号として積分器112から入力された際には、上限電圧値または下限電圧値を出力するようになっている。
なお、本実施形態では、後述するように、第2クロック信号発生部115にて生成されるクロック信号におけるクロック周波数の変動範囲を予め定めるようになっており、この変動範囲に属するクロック周波数にて形成されるクロック信号を発生させるように、電圧検出部113にて検出された電圧値に基づいて、リミッタ回路114における上限値と下限値の閾値を適宜定めるようになっている。
また、リミッタ回路114は、予め定められた上限電圧値および下限電圧値に基づいて、入力された誤差信号に対して制限を行い、所定の電圧値を出力するようにしてもよい。この場合には、上述の電圧検出部113は不要となる。
第2クロック信号発生部115には、リミッタ回路114から出力された電圧値が入力されるようになっており、この第2クロック信号発生部115は、PCM/PWM変換部106にて生成されるPWM信号のパルス幅を伸縮させるために、入力された電圧値に応じて所定のクロック周波数を発生させ、当該発生させたクロック周波数にて形成される第2クロック信号を波形成形回路116に出力するようになっている。
具体的には、この第2クロック信号発生部115は、リミッタ回路114にて上限電圧値および下限電圧値にて予め所定の周波数範囲に属するクロック周波数にて形成されるクロック信号を発生させるようになっている。
例えば、図2に示すように、第2クロック信号発生部115は、下限周波数Fl1から上限周波数Fl2までの周波数範囲内にてクロック周波数を発生させるようになっており、誤差信号における電圧値が「0」以上の場合には、発生させるクロック周波数を高くし、当該誤差信号における電圧値が「0」以下の場合には、発生させるクロック周波数を低くするようになっている。
また、例えば、本実施形態において、第2クロック信号発生部115は、(式1)に基づいて(式3)のように算出された中心周波数Fcを有する変動範囲にてクロック周波数を発生させるようになっている。ただし、(式3)におけるNは、ノイズシェーピング回路102における出力ビット数を示す。
(数3)
Fc=FPWM × (2N) ・・・・(式3)
なお、この上限周波数Fl2は、スイッチング増幅回路107における動作不良を防止するために、クロック周波数Fl2にて形成される第2クロック信号に基づいて変調されたPWM信号のパルス幅が、当該スイッチング増幅回路107で使用しているデバイスが追従可能な最小のパルス幅より大きくなるように、当該クロック周波数Fl2を予め定めるようになっている。また、下限周波数Fl1は、動作する際の中心となる中心周波数fcと上限周波数fl2の偏差、すなわち、|fl2−fc|以上を満たすように、当該中心周波数fcに対して周波数軸対象となるように予め定めるようになっている。このように第2クロック信号を構成することにより、安定性の高い構成が可能となっている。
波形整形回路116には、第2クロック信号発生部115にて生成された第2クロック信号が入力されるようになっており、この波形整形回路116は、入力された第2クロック信号の波形を正弦波から矩形波に変換し、当該矩形波に変換された第2クロック信号をPCM/PWM変換部106および出力制御部105に出力するようになっている。
次に、図3〜図6を用いて本実施形態における第2クロック信号の生成過程およびパルス幅変調の動作について説明する。
なお、図3は、本実施形態の第2クロック信号の生成過程において誤差信号が「0」より大きいときの各部における信号波形を示す図であり、図4は、本実施形態の第2クロック信号の生成過程において誤差信号が「0」より小さいときの各部における信号波形を示す図である。
また、図5は、本実施形態のパルス幅変調の動作において、誤差信号が「0」より大きいときの各部におけるタイミングチャートであり、図6は、本実施形態のパルス幅変調の動作において、誤差信号が「0」より小さいときの各部におけるタイミングチャートである。
以下の説明において、D級電力増幅器100において増幅される再生信号が4bitで「0101」のPCM値を有するPCM信号として入力されるものとし、誤差信号が「0」より大きい場合と「0」より小さい場合に分けて説明する。
また、ノイズシェーピング回路102における出力ビット数を4bitとし、第1クロック信号のクロック周波数を4Hzとする。なお、上述したように、当該各条件からPWMステップ数は、「16」となり、第2クロック信号のクロック周波数の中心周波数は、16Hzとなる。
本実施形態において、図3(a)に示す再生信号を拡声する場合に、スイッチング増幅回路107における増幅率を「1」とすると、当該スイッチング増幅部などの各部における所定の処理に基づいて、スピーカには、図3(b)に示す雑音成分を含む拡声信号が出力される。
この場合において、誤差信号算出部111は、図3(c)に示す誤差信号(>「0」)を検出すると、積分器112は、当該誤差信号に基づいて図3(d)に示す信号を出力し、リミッタ回路114は、上述のように決定された上限電圧値および下限電圧値に基づいて、図3(e)に示す信号を出力する。そして、第2クロック信号発生部115は、図3(e)の信号に基づいて、図3(f)に示すように、クロック周波数が可変される正弦波のクロック信号を生成し、波形整形回路116に出力する。なお、波形整形回路116では、上述のように、この正弦波のクロック信号を矩形波に整形する。
また、誤差信号算出部111は、図4(a)に示す誤差信号(<「0」)を検出すると、積分器112は、当該誤差信号に基づいて図4(b)に示す信号を出力し、リミッタ回路114は、上述のように決定された上限電圧値および下限電圧値に基づいて、図4(c)に示す信号を出力する。そして、第2クロック信号発生部115は、図4(c)の信号に基づいて、図4(d)に示すように、クロック周波数が可変される正弦波のクロック信号を生成し、波形整形回路116に出力する。なお、波形整形回路116では、上述のように、この正弦波のクロック信号を矩形波に整形する。
一方、上述のように、4bitで「0101」のPCM値を有するPCM信号が入力端子に入力され、図5(a)に示す第1クロック信号に基づいて、オーバーサンプリング処理およびノイズシェーピング処理が施されると、図5(b)に示すPCM信号がバッファ104に書き込まれる。
そして、バッファ104に書き込まれたPCM信号は、上述のように、算出された誤差信号(>「0」)に基づいて生成され、図5(c)に示すクロック周波数が可変する(N/2N)倍された第2クロック信号を用いて、バッファ104から図5(d)に示すPCM信号として読み出されると、当該読み出されたPCM信号は、図5(e)に示すクロック周波数が可変する第2クロック信号に基づいて、図5(f)に示すPWM信号に変換される。
また、バッファ104に書き込まれたPCM信号は、上述のように、算出された誤差信号(<「0」)に基づいて生成され、図6(a)に示すクロック周波数が可変する(N/2N)倍された第2クロック信号を用いて、バッファ104から図6(b)に示すPCM信号として読み出されると、当該読み出されたPCM信号は、図6(c)に示すクロック周波数が可変する第2クロック信号に基づいて、図6(d)に示すPWM信号に変換される。
このように、本実施形態では、誤差信号に基づいて第2クロック信号のクロック周波数を可変させることができるので、当該クロック周波数が可変にされた第2クロック信号に基づいて、バッファ104からの出力制御およびPCM/PWM変換を行い、スイッチング増幅回路107にて増幅されるPWM信号のパルス幅を可変させることができるようになっている。このため、本実施形態では、スイッチング増幅回路107にてスイッチング処理が施される際に生じる非線形歪み、すなわち、当該スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができるとともに、PWM信号のパルス幅を可変にするための精度の高い専用の回路も必要なく、回路規模も小さくすることができるようになっている。また、本実施形態では、第2クロック信号のクロック周波数が変動するため、当該クロック周波数に基づく高周波雑音の発生も低減させることができるようになっている。
以上により、本実施形態のD級電力増幅装置100は、PCM信号をパルス変調し、当該パルス変調されたPWM信号を増幅してスピーカに出力するD級電力増幅装置100であって、デジタル信号であるPCM信号を受信するバッファ104と、受信されたPCM信号をパルス変調し、PWM信号を生成するPCM/PWM変換部106と、生成されたPWM信号に従って電源電圧をスイッチングし、当該PWM信号の信号レベルを増幅して拡声信号を生成するスイッチング増幅回路107と、生成されたPWM信号と拡声信号との誤差を検出する誤差信号算出部111と、検出された誤差信号に応じて変化するクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させる第2クロック信号発生部115と、を備え、PCM/PWM変換部106が、第2クロック信号発生部115にて発生された第2クロック信号に基づいて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成する構成を有している。
この構成により、本実施形態のD級電力増幅装置100は、検出された誤差信号に応じて変化するクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させ、当該発生された第2クロック信号を用いて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成する。
したがって、本実施形態のD級電力増幅装置100は、発生された第2クロック信号を用いて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成することができ、スイッチング増幅回路107にて増幅されるPWM信号のパルス幅を可変させることができるので、スイッチング増幅回路107にてスイッチング処理が施される際に生じる非線形歪み、すなわち、当該スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができるとともに、PWM信号のパルス幅を可変にするための精度の高い専用の回路も必要なく、回路規模も小さくすることができる。
そして、本実施形態のD級電力増幅装置100は、第2クロック信号のクロック周波数が変動するため、当該クロック周波数に基づく不要輻射などの高周波雑音の発生も低減させることができるので、当該高周波雑音に近接するラジオ放送、例えば、500kHz〜1600kHzなどの放送波を受信する際などのEMI対策(Electro Magnetic Interference)も有効になる。
また、本実施形態のD級電力増幅装置100は、信号レベルが増幅されたPWM信号に対して平滑化して拡声信号を生成する場合に、誤差信号算出部111が、生成されたPWM信号に対して平滑化しつつ、拡声信号との誤差を検出するので、的確に第2クロック信号を発生させることができるので、的確にPCM信号に対してパルス幅変調を行うことができ、スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができる。
また、本実施形態のD級電力増幅装置100は、検出された誤差信号の平均値を算出する積分器112を有し、算出された平均値に応じて異なるクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させる構成を有している。
この構成により、本実施形態のD級電力増幅装置100は、的確に第2クロック信号を発生させることができ、波形が規定レベルを一時的に上回るオーバーシュートおよび波形が規定レベルを一時的に下回るアンダーシュートなどの波形歪み成分までの追従を防ぐことができるので、的確にPCM信号に対してパルス幅変調を行うことができ、スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができる。
また、本実施形態のD級電力増幅装置100は、リミッタ回路114によって予め定められた周波数範囲に属する第2クロック信号を発生させるので、安定して第2クロック信号を発生させることができ、的確にPCM信号に対してパルス幅変調を行うことができる。
なお、本実施形態では、誤差信号算出部は、(1/k)倍された拡声信号とPCM/PWM変換部106から出力されたPWM信号において第2LPF110にて平滑化処理を施した信号とに基づいて誤差信号を算出するようになっているが、図7に示すように、(1/k)倍されたスイッチング増幅回路107にて増幅されたPWM信号とPCM/PWM変換部106から出力されたPWM信号とに基づいて誤差信号を算出してもよい。この場合には、上述と同様に、誤差信号に入力される各信号の整合性を図ることができるので、上述と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、オーバーサンプリング処理部101およびノイズシューピング回路には、同一のクロック周波数を有する第1クロック信号を用いているが、各部における同期が取れていれば、異なるクロック信号を用いていてもよい。
また、本実施形態では、リミッタ回路114を設け、電圧検出部113において検出された電圧値に対して上限電圧値および下限電圧値に基づいて第2クロック信号発生部115に入力される電圧値の制御を行うようになっているが、当該リミッタ回路114を設けず、図8に示すように、検出された電圧値の値を保持させつつ、第2クロック信号発生部115に入力するようにしてもよい。
また、本実施形態ではPWM変調方式としてSingle Sided PWM方式を例にして説明しているが、(式1)から(式3)におけるNを(N+1)に置き換え、本実施形態の出力制御部105における分周比をN/(2(N+1))にすることによってDouble Sided PWM方式に適用することも可能である。
また、本実施形態では、シングルエンド構成、すなわち、2値PWM変調に適用するようになっているが、勿論、3値PWM変調に適用するようにしてもよい。この場合に、本実施形態の構成を各PWM信号毎に適用すればよい。
また、本実施形態のオーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102は、第1クロック信号発生部103にて発生された第1クロック信号に基づいて動作するようになっているが、各オーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102において、分周回路を設け、分周された第1クロック信号に基づいて動作するようにしてもよい。
〔第2実施形態〕
次に、図9〜図14を用いて D級電力増幅装置の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態においてバッファに記憶されたPCM信号を、クロック周波数が所定倍された第2クロック信号に基づいてPWM信号を生成している点に代えて、所定のクロック周波数を有するクロック信号にてPWM信号を生成してバッファに書き込み、第2クロック信号に基づいて当該書き込まれたPWM信号を読み出している点に特徴がある。その他の点は、第1実施形態と同様であり、同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明では、Single Sided PWM方式における適用例について説明する。
まず、図9を用いて本実施形態におけるD級電力増幅装置の構成について説明する。
なお、図9は、本実施形態のD級電力増幅装置の構成を示すブロック図である。
このD級電力増幅装置200は、図9に示すように、オーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102と、ノイズシェーピング処理されたPCM信号に対してパルス幅変調を行い、PWM信号を生成するPCM/PWM変換部210と、オーバーサンプリング処理部101、ノイズシェーピング回路102およびPCM/PWM変換部210を動作させるための第1クロック信号を発生させる第1クロック信号発生部103と、生成されたPWM信号を一時的に記憶するバッファ211と、を有している。
また、このD級電力増幅装置200は、第1実施形態と同様に、スイッチング増幅回路107と、第1LPF108と、増幅器109と、第2LPF110と、誤差信号算出部111と、積分器112と、電圧検出部113と、リミッタ回路114と、第2クロック信号発生部115と、波形整形回路116と、を有している。
なお、例えば、本実施形態のバッファ211は、本発明の受信手段、第1生成手段、記憶手段および制御手段を構成する。また、本実施形態のPCM/PWM変換部210は、本発明の受信手段、第1生成手段およびパルス幅変調信号生成手段を構成し、増幅回路は、本発明の第2生成手段を構成する。さらに、例えば、本実施形態の誤差信号算出部111は、本発明の検出手段を構成し、第2クロック信号発生部115は、本発明の発生手段を構成する。
PCM/PWM変換部210には、ノイズシェーピング回路102から出力された所定の前処理が施されたPCM信号が入力されるようになっており、このPCM/PWM変換部210は、第1クロック信号に基づいて、入力されたPCM信号に対してパルス幅変調を行い、PWM信号を生成してバッファ211に出力するようになっている。
バッファ211は、予め定められた記憶容量を有し、オーバーサンプリング処理およびノイズシェーピンク処理が施されたPCM信号が一時的に記憶されるようになっている。
また、このバッファ211においては、入出力のタイミング制御が独立的に行われてPWM信号の書き込みおよび読み出しが行われるようになっており、このバッファ211は、入出力のそれぞれの書き込みタイミングおよび読み出しタイミングの相違により、記憶されているPWM信号のパルス幅を可変させるようになっている。
具体的には、このバッファ211には、第1クロック信号に基づいてPCM/PWM変換部210から出力されたPWM信号が順次書き込まれるようになっており、このバッファ211は、所定のタイミング、すなわち、出力制御回路116から出力された第2クロック信号に基づいて記憶されたPWM信号を第2クロック信号に基づいてスイッチング増幅回路107および第2LPF110に出力するようになっている。
なお、このバッファ211における書き込みレートは、一定になっている。また、第1クロック信号発生部103は、PCM/PWM変換部210に第1クロック信号を出力する他は、第1実施形態と同様の構成を有している。
次に、図10〜図13を用いて本実施形態における第2クロック信号の生成過程およびパルス幅変調の動作について説明する。
なお、図10は、本実施形態の第2クロック信号の生成過程において誤差信号が「0」より大きいときの各部における信号波形を示す図であり、図11は、本実施形態の第2クロック信号の生成過程において誤差信号が「0」より小さいときの各部における信号波形を示す図である。
また、図12は、本実施形態のパルス幅変調の動作において、誤差信号が「0」より大きいときの各部におけるタイミングチャートであり、図13は、本実施形態のパルス幅変調の動作において、誤差信号が「0」より小さいときの各部におけるタイミングチャートである。
以下の説明において、第1実施形態と同様に、D級電力増幅器109において増幅される再生信号が4bitで「0101」のPCM値を有するPCM信号として入力されるものとし、誤差信号が「0」より大きい場合と「0」より小さい場合に分けて説明する。
また、ノイズシェーピング回路102における出力ビット数を4bitとし、第1クロック信号のクロック周波数を2.5Hzとする。なお、上述したように、当該各条件からPWMステップ数は、「16」となり、第2クロック信号のクロック周波数の中心周波数は、10Hzとなる。
本実施形態において、第1実施形態と同様の再生信号を拡声する場合に、スイッチング増幅回路107における増幅率を「1」とすると、当該スイッチング増幅部などの各部における所定の処理に基づいて、スピーカには、第1実施形態と同様に雑音成分を含む拡声信号が出力される。
この場合において、誤差信号算出部111は、図10(a)に示す誤差信号(>「0」)を検出すると、積分器112は、当該誤差信号に基づいて図10(b)に示す信号を出力し、リミッタ回路114は、第1実施形態と同様に、決定された上限電圧値および下限電圧値に基づいて、図10(c)に示す信号を出力する。そして、第2クロック信号発生部115は、図10(c)の信号に基づいて、図10(d)に示すように、クロック周波数が可変される正弦波のクロック信号を生成し、波形整形回路116に出力する。なお、波形整形回路116では、上述のように、この正弦波のクロック信号を矩形波に整形する。
また、誤差信号算出部111は、図11(a)に示す誤差信号(<「0」)を検出すると、積分器112は、当該誤差信号に基づいて図11(b)に示す信号を出力し、リミッタ回路114は、上述のように決定された上限電圧値および下限電圧値に基づいて、図11(c)に示す信号を出力する。そして、第2クロック信号発生部115は、図11(c)の信号に基づいて、図11(d)に示すように、クロック周波数が可変される正弦波のクロック信号を生成し、波形整形回路116に出力する。なお、波形整形回路116では、上述のように、この正弦波のクロック信号を矩形波に整形する。
一方、第1実施形態と同様に、4bitで「0101」のPCM値を有するPCM信号が入力端子に入力され、図12(a)に示す第1クロック信号に基づいて、PWM信号が生成されると、図12(b)に示すPWM信号がバッファ211に書き込まれる。
そして、バッファ211に書き込まれたPWM信号は、第1実施形態と同様に、算出された誤差信号(>「0」)に基づいて生成され、図12(c)に示すクロック周波数を有する第2クロック信号を用いてバッファ211から読み出されると、図12(d)に示すPWM信号がスイッチング増幅回路107に出力される。
また、バッファ211に書き込まれたPWM信号は、第1実施形態と同様に、算出された誤差信号(<「0」)に基づいて生成され、図13(c)に示すクロック周波数を有する第2クロック信号を用いてバッファ211から読み出されると、図12(d)に示すPWM信号がスイッチング増幅回路107に出力される。
このように、本実施形態では、誤差信号に基づいて第2クロック信号のクロック周波数を可変させることができるので、バッファ211からの出力されるPWM信号のパルス幅を可変させることができるようになっている。このため、本実施形態では、第1実施形態と同様に、スイッチング増幅回路107にてスイッチング処理が施される際に生じる非線形歪み、すなわち、当該スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができるとともに、PWM信号のパルス幅を可変にするための精度の高い専用の回路も必要なく、回路規模も小さくすることができる。また、本実施形態では、第2クロック信号のクロック周波数が変動するため、当該クロック周波数に基づく高周波雑音の発生も低減させることができるようになっている。
以上により、本実施形態のD級電力増幅装置200は、PCM信号をパルス変調し、当該パルス変調されたPWM信号を増幅してスピーカに出力するD級電力増幅装置200であって、デジタル信号であるPCM信号を受信するとともに、受信されたPCM信号をパルス変調し、PWM信号を生成するPCM/PWM変換部210およびバッファ211と、生成されたPWM信号に従って電源電圧をスイッチングし、当該PWM信号の信号レベルを増幅して拡声信号を生成するスイッチング増幅回路107と、生成されたPWM信号と拡声信号との誤差を検出する誤差信号算出部111と、検出された誤差信号に応じて変化するクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させる第2クロック信号発生部115と、を備え、PCM/PWM変換部210およびバッファ211は、第2クロック信号発生部115にて発生された第2クロック信号に基づいて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成する構成を有している。
この構成により、本実施形態のD級電力増幅装置200は、第1実施形態と同様に、検出された誤差信号に応じて変化するクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させ、当該発生された第2クロック信号を用いて、PCM信号からPWM信号を生成する。
したがって、本実施形態のD級電力増幅装置200は、発生された第2クロック信号を用いて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成することができ、スイッチング増幅回路107にて増幅されるPWM信号のパルス幅を可変させることができるので、スイッチング増幅回路107にてスイッチング処理が施される際に生じる非線形歪み、すなわち、当該スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができるとともに、PWM信号のパルス幅を可変にするための精度の高い専用の回路も必要なく、回路規模も小さくすることができる。
そして、本実施形態のD級電力増幅装置200は、第2クロック信号のクロック周波数が変動するため、当該クロック周波数に基づく不要輻射などの高周波雑音の発生も低減させることができるので、当該高周波雑音に近接するラジオ放送、例えば、500kHz〜1600kHzなどの放送波を受信する際などのEMI対策も有効になる。
なお、本実施形態では、誤差信号算出部は、(1/k)倍された拡声信号とバッファ211から出力されたPWM信号において第2LPF110にて平滑化処理を施した信号とに基づいて誤差信号を算出するようになっているが、図14に示すように、(1/k)倍されたスイッチング増幅回路107にて増幅されたPWM信号バッファ211から出力されたPWM信号とに基づいて誤差信号を算出してもよい。この場合には、上述と同様に、誤差信号に入力される各信号の整合性を図ることができるので、上述と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、オーバーサンプリング処理部101およびノイズシューピング回路には、同一のクロック周波数を有する第1クロック信号を用いているが、各部における同期が取れていれば、異なるクロック信号を用いていてもよい。
また、本実施形態では、リミッタ回路114を設け、電圧検出部113において検出された電圧値に対して上限電圧値および下限電圧値に基づいて第2クロック信号発生部115に入力される電圧値の制御を行うようになっているが、当該リミッタ回路114を設けず、検出された電圧値の値を保持させつつ、第2クロック信号発生部115に入力するようにしてもよい。
また、本実施形態では、シングルエンド構成、すなわち、2値PWM変調に適用するようになっているが、勿論、3値PWM変調に適用するようにしてもよい。この場合に、本実施形態の構成を各PWM信号毎に適用すればよい。
また、本実施形態のオーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102は、第1クロック信号発生部103にて発生された第1クロック信号に基づいて動作するようになっているが、各オーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102において、分周回路を設け、分周された第1クロック信号に基づいて動作するようにしてもよい。特に、本実施形態では、PCM信号およびPWM信号の信号処理を行う際に第1クロック信号を用いているため、分周回路が必要となる。ただし、この場合において、PWM変調方式としてSingle Sided PWM方式を用いる場合には、第1実施形態の(式1)から(式3)における分周比を用い、PWM変調方式としてDouble Sided PWM方式を用いる場合には、(式1)から(式3)におけるNを(N+1)に置き換えた分周比、すなわち、N/(2(N+1))を用いるようになっている。
〔第3実施形態〕
次に、図15〜図17を用いて D級電力増幅装置の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態においてバッファに代えて非同期回路を用いる点に特徴があり、その他の点は、第1実施形態と同様であり、同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
まず、図15および図16を用いて本実施形態におけるD級電力増幅装置の構成について説明する。なお、図15は、本実施形態のD級電力増幅装置の構成を示すブロック図であり、図16は、本実施形態における非同期回路における信号波形の例を示す図である。なお、以下の説明では、Single Sided PWM方式における適用例について説明する。
このD級電力増幅装置300は、図15に示すように、オーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102と、第1クロック信号発生部103と、前処理されたPCM信号のタイミングおよびパルス幅を変更する非同期回路310と、非同期回路310のタイミングを制御する出力制御部311と、PCM/PWM変換部312と、を有している。
また、このD級電力増幅装置300は、第1実施形態と同様に、スイッチング増幅回路107と、第1LPF108と、増幅器109と、第2LPF110と、誤差信号算出部111と、積分器112と、電圧検出部113と、リミッタ回路114と、第2クロック信号発生部115と、波形整形回路116と、を有している。
出力制御部311は、第1実施形態と同様に、波形整形回路116から出力された第2クロック信号を(N/2N)倍にする分周回路を有し、第1クロック信号と、入力された第2クロック信号を(N/2N)倍し、当該(N/2N)倍された第2クロック信号と、に基づいて、非同期回路310を制御するようになっている。
非同期回路310は、例えば、D(Delay)フリップフロップまたはラッチにて構成さ
れ、図16に示すように、出力制御部311の制御の下、ノイズシェーピング回路102から出力されたPCM信号の同期を再度取り直してPCM/PWM変換部312に出力するようになっている。
なお、図16は、非同期回路310におけるスイッチング周期において、入力されたPCM信号、第1クロック信号、出力側PCM信号および(N/2N)倍された第2クロック信号の幅が異なることを示している。ただし、MSB(Most Significan Digit)は、
最上位ビットを示し、LSB(Least Significant Bit)は、最下位ビットを示す。また
、非同期回路310における書き込みレートは一定となっている。
以上により、本実施形態のD級電力増幅装置300は、PCM信号をパルス変調し、当該パルス変調されたPWM信号を増幅してスピーカに出力するD級電力増幅装置300であって、デジタル信号であるPCM信号を受信する非同期回路310と、受信されたPCM信号をパルス変調し、PWM信号を生成するPCM/PWM変換部312と、生成されたPWM信号に従って電源電圧をスイッチングし、当該PWM信号の信号レベルを増幅して拡声信号を生成するスイッチング増幅回路107と、生成されたPWM信号と拡声信号との誤差を検出する誤差信号算出部111と、検出された誤差信号に応じて変化するクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させる第2クロック信号発生部115と、を備え、PCM/PWM変換部312が、第2クロック信号発生部115にて発生された第2クロック信号に基づいて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成する構成を有している。
この構成により、本実施形態のD級電力増幅装置300は、第1実施形態と同様に、検出された誤差信号に応じて変化するクロック周波数にて形成される第2クロック信号を発生させ、当該発生された第2クロック信号を用いて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成する。
したがって、本実施形態のD級電力増幅装置300は、発生された第2クロック信号を用いて、受信されたPCM信号からPWM信号を生成することができ、スイッチング増幅回路107にて増幅されるPWM信号のパルス幅を可変させることができるので、スイッチング増幅回路107にてスイッチング処理が施される際に生じる非線形歪み、すなわち、当該スイッチング増幅回路107にて直流電源のオン・オフの切り換えにより発生する非線形な歪みを的確に防止することができるとともに、PWM信号のパルス幅を可変にするための精度の高い専用の回路も必要なく、回路規模も小さくすることができる。
そして、本実施形態のD級電力増幅装置300は、第2クロック信号のクロック周波数が変動するため、当該クロック周波数に基づく不要輻射などの高周波雑音の発生も低減させることができるので、当該高周波雑音に近接するラジオ放送、例えば、500kHz〜1600kHzなどの放送波を受信する際などのEMI対策も有効になる。
なお、本実施形態では、誤差信号算出部は、(1/k)倍された拡声信号とPCM/PWM変換部312から出力されたPWM信号において第2LPF110にて平滑化処理を施した信号とに基づいて誤差信号を算出するようになっているが、図17に示すように、(1/k)倍されたスイッチング増幅回路107にて増幅されたPWM信号とPCM/PWM変換部312から出力されたPWM信号とに基づいて誤差信号を算出してもよい。この場合には、上述と同様に、誤差信号に入力される各信号の整合性を図ることができるので、上述と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、オーバーサンプリング処理部101およびノイズシューピング回路には、同一のクロック周波数を有する第1クロック信号を用いているが、各部における同期が取れていれば、異なるクロック信号を用いていてもよい。
また、本実施形態では、リミッタ回路114を設け、電圧検出部113において検出された電圧値に対して上限電圧値および下限電圧値に基づいて第2クロック信号発生部115に入力される電圧値の制御を行うようになっているが、当該リミッタ回路114を設けず、第1実施形態と同様に、検出された電圧値の値を保持させつつ、第2クロック信号発生部115に入力するようにしてもよい。
また、本実施形態ではPWM変調方式としてSingle Sided PWM方式を例にして説明しているが、第1実施形態と同様に、(式1)から(式3)におけるNを(N+1)に置き換え、本実施形態の出力制御部311における分周比をN/(2(N+1))にすることによってDouble Sided PWM方式に適用することも可能である。
また、本実施形態では、シングルエンド構成、すなわち、2値PWM変調に適用するようになっているが、勿論、3値PWM変調に適用するようにしてもよい。この場合に、本実施形態の構成を各PWM信号毎に適用すればよい。
また、本実施形態のオーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102は、第1クロック信号発生部103にて発生された第1クロック信号に基づいて動作するようになっているが、各オーバーサンプリング処理部101およびノイズシェーピング回路102において、分周回路を設け、分周された第1クロック信号に基づいて動作するようにしてもよい。