JPWO2007010988A1 - 高耐熱導線及び高耐熱電磁機器 - Google Patents

高耐熱導線及び高耐熱電磁機器 Download PDF

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Abstract

螺旋状に巻かれた銅線(71)で構成されたコイル(700)と、コイル(700)を被覆した被覆体と、を備えた、空芯リアクトル(70)において、銅線(71)が合成高分子化合物Aを用いて被覆されていることを特徴としている。

Description

本発明は、高い耐熱性を有する被覆された導線、更には、高い耐熱性を有する電磁機器に関するものである。電磁機器としては、例えば、変圧器、リアクトル等がある。
変圧器、リアクトル、モーター、発電機等に代表される電磁機器では、火災防止等の安全性の観点から、コイルを不燃性の容器内に設置するとともに不燃性の絶縁油やガスを容器内に充満させていた。しかしながら、絶縁油として使用されるポリ塩化ビフェニルやガスとして使用される六弗化硫黄は、地球環境保護の観点から、使用が制限されるようになってきた。そこで、近年では、不燃性ではない樹脂によってコイル若しくは機器全体を被覆(「モールド」とも言う)して絶縁した、モールド電磁機器が広く使用され始めている。
一方、変圧器、リアクトル、モーター、発電機等を構成するコイルには、各種の構造のものがあり、製作方法にも違いがあるが、最終的には、導線が螺旋状に巻かれた状態となるよう構成されている。このようなコイルにおける隣接する導線間の絶縁は、導線用被覆材(例えば絶縁ワニス)やコイルのモールド材料によって、導線を被覆する被覆膜を形成することにより、実現されていた。
また、従来のモールド変圧器、例えば、3相の変圧器では、各相のコイルが、鉄芯を取り巻くように構成された低電圧の二次コイルと、二次コイルの外側に設けられた高電圧の一次コイルと、を有している。そして、両コイルは、モールド材料で被覆されていた。鉄芯モールドリアクトルも略同様であった。
すなわち、従来のモールド変圧器、モールドリアクトル、モールドコイルを用いたモーターや発電機は、導線と被覆膜とからなるコイルと、モールド材料からなる被覆体と、を備えている。そして、導線用被覆材やモールド材料として、エポキシ樹脂やシリコン樹脂が用いられていた。
特開2003−158018 特開2002−158118 「電気工学ハンドブック(第6版)」(電気学会発行)の190頁〜192頁、699頁〜701頁、727頁〜730頁
ところで、エポキシ樹脂の耐熱性は、それほど高くなく、通常180℃以上で劣化して、柔軟性が乏しくなり、堅くなる。そのため、エポキシ樹脂を用いた従来のモールド変圧器では、コイルの使用温度の上限が70〜120℃程度に設定されており、使用中に上限温度を超えないようにファンで冷却する場合が多い。しかしながら、使用中に、大きな短絡電流や雷サージ電流が流れると、コイルの温度が上記上限温度を超えることがある。そのような場合には、エポキシ樹脂が堅くなる恐れがある。そのため、コイルの温度が高温から室温に戻る時に、エポキシ樹脂の内部すなわち被覆膜や被覆体の内部に多数のクラックが発生する恐れがある。被覆膜や被覆体にクラックが発生すると、コイルは、リーク電流が増大するとともに高電界にも耐えることができなくなり、耐電圧性が悪くなる。
また、シリコン樹脂は、エポキシ樹脂に比して耐熱性が良いが、それでも200℃程度が上限温度である。そのため、シリコン樹脂を用いた従来のモールド変圧器では、コイルの温度が200℃以上になると、シリコン樹脂に含まれているポリメチルフェニルシロキサンの柔軟性が乏しくなり、更に、コイルの温度が空気中で220℃以上になると、ポリメチルフェニルシロキサンの表面がガラス化して完全に堅くなってしまう。これは、ポリメチルフェニルシロキサンの側鎖のメチル基やフェニル基が分解して蒸発するからであると推察される。そのような場合に、コイルの温度が高温から室温に戻ると、ポリメチルフェニルシロキサンの内部すなわち被覆膜や被覆体の内部に多数のボイドやクラックが発生する。被覆膜や被覆体にボイドやクラックが発生すると、コイルは、リーク電流が増大するとともに高電界にも耐えることができなくなり、耐電圧性が悪くなる。
更に、エポキシ樹脂やシリコン樹脂は、熱伝導率が、0.1〜1.0W/mKであり、比較的低いので、コイルで発生した熱を十分に放散できない。そのため、エポキシ樹脂やシリコン樹脂でコイルを被覆した場合には、被覆しない場合よりも、定格容量を小さく設定しなければならなかった。また、エポキシ樹脂やシリコン樹脂でコイルを被覆した場合には、熱の放散性が悪いので、定格電流を上回る比較的短時間の短絡電流によって、コイルの温度が上昇する。その結果、場合によっては、被覆膜、被覆体、更には、一次コイルと二次コイルとの接触を防ぐために両者間に設けた混触防止板等が、熱破壊されて、耐電圧性が損なわれていた。
以上のように、従来のモールド変圧器、モールドリアクトル、モールドコイルを用いたモーターや発電機等の、モールド電磁機器は、耐熱性や熱放散性が十分でなく、高温では高電界に耐えることができず、耐電圧性が悪いという問題を有していた。
本発明は、耐熱性が高い電磁機器を提供すること、更には、熱放散性にも優れている高耐熱電磁機器を提供すること、を目的としている。
本願の第1発明は、被覆された導線において、導線を被覆した被覆膜が、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有していることを特徴としている。
本願の第2発明は、螺旋状に巻かれた導線を有するコイルと、コイルを被覆した被覆体と、を備えた、高耐熱電磁機器において、コイルの隣接する導線の間に、隣接する導線同士を絶縁するよう、導線に沿って、絶縁テープが設けられていることを特徴としている。
絶縁テープは、例えばエポキシ樹脂のフィルムで形成してもよいが、後述する合成高分子化合物Aを含有したフィルムで形成するのが好ましい。
本願の第3発明は、上記第2発明において、絶縁テープが、接着剤によって導線に貼り付けられているものである。
本願の第4発明は、螺旋状に巻かれた導線を有するコイルと、コイルを被覆した被覆体と、を備えた、高耐熱電磁機器において、コイルが、導線と、導線を被覆した被覆膜とで、構成されており、上記被覆膜が、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有していることを特徴としている。
本願の第5発明は、上記第2又は第3発明において、絶縁テープが、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有しているものである。
本願の第6発明は、上記第2ないし第5発明のいずれか1つの発明において、被覆体が、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有しているものである。
上記第1発明及び第4ないし第6発明において、第1有機珪素ポリマーは、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、及びポリプロピルシルセスキオキサンの内から選択された少なくとも1種類である。
また、第2有機珪素ポリマーは、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、及びポリメチルフェニルシロキサンの内から選択された少なくとも1種類である。
また、シロキサン結合は、Si−O結合のことである。
また、第3有機珪素ポリマーは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されている。例えば、第1有機珪素ポリマーを「X」とし、第2有機珪素ポリマーを「Y」とすると、第3有機珪素ポリマーは、「−X−Y−X−Y−」の構造を有している。また、例えば、2種類の第1有機珪素ポリマーと2種類の第2有機珪素ポリマーを用いる場合において、第1有機珪素ポリマーを「X1」、「X2」とし、第2有機珪素ポリマーを「Y1」、「Y2」とすると、第3有機珪素ポリマーは、「−X1−Y1−X2−Y2−」や「−X1−Y2−X2−Y1−」等の構造を有している。
更に、合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーがアルキレン基によって連結されるのが、好ましい。
本願の第7発明は、上記第2、第3、第5、又は第6発明において、絶縁テープが、導線の両側縁から僅かにはみ出しており、被覆体が、隣接する当該はみ出し部分の間を埋めているものである。
本願の第8発明は、上記第1発明及び第4ないし第6発明のいずれか1つの発明において、第1有機珪素ポリマーが200〜7万の重量平均分子量を有しており、第2有機珪素ポリマーが5000〜20万の重量平均分子量を有しており、第1有機珪素ポリマーの重量平均分子量が第2有機珪素ポリマーの重量平均分子量より小さいものである。
本願の第9発明は、上記第6発明において、合成高分子化合物Aが、4W/mK以上の熱伝導率、例えば4〜2500W/mKの熱伝導率を有する絶縁性セラミックス微粒子を含有しているものである。
本願の第10発明は、上記第9発明において、絶縁性セラミックスが、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、アルミナ、炭化珪素、ダイヤモンド、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素の内の少なくとも1種類であるものである。
本願の第11発明は、上記第9発明において、絶縁性セラミックス微粒子が、0.01〜50μmの粒径を有しているものである。
本願の第12発明は、上記第9発明において、合成高分子化合物Aに対する絶縁性セラミックス微粒子の体積充填率が、15%vol〜85%volであるものである。
本願の第13発明は、上記第9発明において、微粒子が、粒径の異なる複数種類の微粒子を含んでおり、それらの微粒子の粒径比が、1:1/10〜1:1/200の範囲にあるものである。
本願の第1発明によれば、被覆膜を構成する合成高分子化合物Aが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを含んでいるので、被覆膜自体の、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、両立できる。
すなわち、第1有機珪素ポリマーは、絶縁性及び耐熱性に優れているが、流動性や硬化後の柔軟性が非常に悪い。これに対して、第2有機珪素ポリマーは、流動性や柔軟性が良好である。したがって、両ポリマーを連結することによって、両ポリマーの利点を発揮できる。
したがって、上記第1発明によれば、被覆膜の、耐熱性及び耐電圧性等の特性を、向上できる。
しかも、合成高分子化合物Aは、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属に対して、接着性が極めて良好であり、これらに強固に付着する。したがって、合成高分子化合物Aは、導線の表面に、強固に付着する。それ故、導線と被覆膜との間に、隙間のない強固な密着状態を実現でき、高い耐湿性を得ることができる。その結果、導線の信頼性を向上できる。
したがって、上記第1発明によれば、導線の、耐熱性及び耐電圧性等の特性、及び信頼性を、向上できる。
更に、合成高分子化合物Aは、紫外線及び可視光線に対する高い透光性を有している。それ故、導線の被覆工程において、合成高分子化合物Aを導線に付着させて硬化させる前及び後に、気泡やボイド等が存在しないことを目視により確かめることができる。したがって、生産性を著しく向上できる。
本願の第2発明によれば、コイルの隣接する導線同士の絶縁を、簡単な構成で且つ確実に実現できる。
しかも、導線と絶縁テープとを重ねた状態で螺旋状に巻いてコイルを構成するだけで、上記絶縁を実現できるので、製造が容易である。
本願の第3発明によれば、コイルを製作する際に、絶縁テープと導線とを一体物として取り扱うことができるので、コイルの生産性を著しく向上できる。しかも、絶縁テープを、コイルの隣接する導線間に確実に位置させることができるので、コイルの隣接する導線間の絶縁を確実に確保できる。
本願の第4発明によれば、被覆膜を構成する合成高分子化合物Aが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを含んでいるので、被覆膜自体の、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、両立できる。
すなわち、第1有機珪素ポリマーは、絶縁性及び耐熱性に優れているが、粘度が大きすぎるので、流動性や硬化後の柔軟性が非常に悪い。これに対して、第2有機珪素ポリマーは、流動性や柔軟性が良好である。したがって、両ポリマーを連結することによって、両ポリマーの利点を発揮できる。
したがって、上記第4発明によれば、被覆膜の、耐熱性及び耐電圧性等の特性を、向上できる。
しかも、合成高分子化合物Aは、(a)銅、アルミニウム、ステンレス等の金属、(b)芳香族ポリアミド(アラミド紙)、エナメル等の絶縁材や被覆材、(c)エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の樹脂類、及び(d)ガラス類に対して、接着性が極めて良好であり、これらに強固に付着する。したがって、合成高分子化合物Aは、導線の表面や被覆体のモールド材料の表面に、強固に付着する。それ故、導線と被覆膜との間、及び被覆膜と被覆体との間に、隙間のない強固な密着状態を実現でき、高い耐湿性を得ることができる。その結果、モールド電磁機器の信頼性を向上できる。
したがって、上記第4発明によれば、モールド電磁機器の、耐熱性及び耐電圧性等の特性、及び信頼性を、向上できる。
更に、合成高分子化合物Aは、紫外線及び可視光線に対する高い透光性を有している。それ故、導線の被覆工程において、ケースや金型に導線をセットして合成高分子化合物Aを流し込んだ時、合成高分子化合物Aが硬化する前に、気泡やボイド等が存在しないことを目視により確かめることができる。したがって、生産性を著しく向上できる。
本願の第5発明によれば、絶縁テープを構成する合成高分子化合物Aが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを含んでいるので、絶縁テープ自体の、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、両立できる。
すなわち、第1有機珪素ポリマーは、絶縁性及び耐熱性に優れているが、粘度が大きすぎるので、流動性や硬化後の柔軟性が非常に悪い。これに対して、第2有機珪素ポリマーは、流動性や柔軟性が良好である。したがって、両ポリマーを連結することによって、両ポリマーの利点を発揮できる。
したがって、上記第5発明によれば、コイルの、耐熱性及び耐電圧性等の特性を、向上できる。
しかも、合成高分子化合物Aは、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属に対して、接着性が極めて良好であり、これらに強固に付着する。したがって、合成高分子化合物Aは、コイルの導線の表面に、強固に付着する。それ故、導線と絶縁テープとの間に、隙間のない強固な密着状態を実現でき、高い耐湿性を得ることができる。その結果、コイルの信頼性を向上できる。
したがって、上記第5発明によれば、モールド電磁機器の、耐熱性及び耐電圧性等の特性、及び信頼性を、向上できる。
本願の第6発明によれば、被覆体を構成する合成高分子化合物Aが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを含んでいるので、被覆体自体の、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、両立できる。
すなわち、第1有機珪素ポリマーは、絶縁性及び耐熱性に優れているが、粘度が大きすぎるので、流動性や硬化後の柔軟性が非常に悪い。これに対して、第2有機珪素ポリマーは、流動性や柔軟性が良好である。したがって、両ポリマーを連結することによって、両ポリマーの利点を発揮できる。
したがって、上記第6発明によれば、被覆体の、耐熱性及び耐電圧性等の特性を、向上できる。
しかも、合成高分子化合物Aは、(a)銅、アルミニウム、ステンレス等の金属、(b)芳香族ポリアミド(アラミド紙)、エナメル等の絶縁材や被覆材、(c)エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の樹脂類、及び(d)ガラス類に対して、接着性が極めて良好であり、これらに強固に付着する。したがって、合成高分子化合物Aは、コイルの導線及び絶縁テープの表面や、ケース等の表面に、強固に付着する。それ故、コイルと被覆体との間に、隙間のない強固な密着状態を実現でき、高い耐湿性を得ることができる。その結果、モールド電磁機器の信頼性を向上できる。
したがって、上記第6発明によれば、モールド電磁機器の、耐熱性及び耐電圧性等の特性、及び信頼性を、向上できる。
更に、合成高分子化合物Aは、紫外線及び可視光線に対する高い透光性を有している。それ故、コイルの被覆工程において、ケースや金型にコイルをセットして合成高分子化合物Aを流し込んだ時、合成高分子化合物Aが硬化する前に、気泡やボイド等が存在しないことを目視により確かめることができる。したがって、生産性を著しく向上できる。
本願の第7発明によれば、絶縁テープと被覆体とを確実に一体化できるので、コイルの絶縁性をより向上できる。特に、絶縁テープ及び被覆体が共に合成高分子化合物Aを含有している場合には、絶縁テープと被覆体との接着をより確実に実現できるので、コイルの絶縁性を更に向上できる。
本願の第8発明によれば、合成高分子化合物Aの、特に、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、共に良好なレベルで両立できる。
すなわち、第1有機珪素ポリマーは、絶縁性及び耐熱性に優れているが、流動性や硬化後の柔軟性が非常に悪い。それ故、例えば被覆体が第1有機珪素ポリマーのみからなる場合は、被覆体を厚くすることができず、耐電圧性を向上できない。これに対して、第2有機珪素ポリマーは、流動性や柔軟性を有している。したがって、両ポリマーを連結することにより、両ポリマーの利点を発揮できる。ところで、第1有機珪素ポリマーの重量平均分子量を大きくすると、耐熱性は向上するが、柔軟性が悪くなる。一方、第2有機珪素ポリマーの分子量を大きくすると、柔軟性は向上するが、耐熱性は低下する。すなわち、第1有機珪素ポリマー及び第2有機珪素ポリマーの各々の重量平均分子量を調節することにより、合成高分子化合物Aの、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、所望のレベルに調節することができる。本発明では、第1有機珪素ポリマー及び第2有機珪素ポリマーの各々の重量平均分子量を望ましい大きさに設定しているので、導線の被覆膜又は絶縁テープ又は被覆体の、柔軟性と、耐熱性及び耐電圧性とを、共に良好なレベルで両立できる。
本願の第9発明によれば、被覆体を構成する合成高分子化合物Aの熱伝導率を増大できるので、被覆体の熱伝導率を増大できる。したがって、被覆体の熱放散性を向上でき、熱放散性が優れたモールド電磁機器を得ることができる。
したがって、上記第9発明によれば、空冷装置等を不要にでき、電磁機器の構成を簡略化でき、該機器の小型化及び低コスト化を達成できる。
また、上記第9発明によれば、耐熱性及び熱放散性に優れているので、電流密度を大きくして定格容量を増大させることができる。それ故、小さい定格容量で良い場合には、小型で軽量な電磁機器を得ることができる。
本願の第10発明によれば、モールド形の電磁機器の、熱放散性を、確実に向上できる。
本願の第11発明によれば、絶縁性セラミックス微粒子を、合成高分子化合物Aの立体構造の隙間に、効果的に充填できる。
すなわち、セラミックス微粒子は、粒径が大きすぎると、合成高分子化合物Aに対する微粒子の体積充填率が低下し、粒径が小さすぎても、微粒子同士がお互いに凝集しやすくなるために、体積充填率が低下する。しかしながら、上述の粒径であれば、体積充填率が低下することはない。したがって、上記第11発明によれば、40%vol以上の体積充填率を実現できる。体積充填率が40%vol以上であると、セラミックス微粒子同士が互いに接触する割合が大幅に増えるので、高い熱伝導率を得ることができる。
本願の第12発明によれば、被覆体の熱伝導率を充分に増大できる。
本願の第13発明によれば、合成高分子化合物Aに対するセラミックス微粒子の体積充填率を、50%vol以上に設定できる。
なお、セラミックス微粒子は、尖った部分が少ない球形に近い形状を有するものが好ましい。これによれば、微粒子による局部的な電界集中を回避できるので、被覆体の耐電圧性を向上できる。
また、上述のような絶縁性セラミックス微粒子を充填することにより、具体的には、2〜120W/mKの高い熱伝導率を実現できる。
更に、充填されたセラミックス微粒子は、合成高分子化合物Aの結合には影響しないので、合成高分子化合物Aの耐熱性を損ねることはない。また、上記体積充填率や形状の範囲にあるセラミックス微粒子は、合成高分子化合物Aの耐電圧性や粘度に、若干影響を及ぼすが、実用上ほとんど問題を生じない。また、上記体積充填率や粒径の範囲にあるセラミックス微粒子は、合成高分子化合物Aの透光性や、合成高分子化合物Aと構成材料との接着性に、若干影響を及ぼすが、実用上ほとんど問題を生じない。
本発明の第1実施形態の高耐熱電磁機器である空芯リアクトルを示す斜視図である。 本発明の第4実施形態の高耐熱電磁機器であるモールド変圧器を示す斜視図である。
符号の説明
20 モールド変圧器
10 モールドコイル
70 空芯リアクトル
71 銅線
72 絶縁テープ
700 コイル
以下、本発明の好適な実施形態を図に基づいて説明する。なお、各図において、各構成部材の寸法は、各構成部材の理解を容易にするために、実際の寸法とは対応していない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の高耐熱電磁機器である空芯リアクトルを示す斜視図である。この空芯リアクトル70は、円形巻線タイプのものであり、3kV、80A、10μHの定格を有している。また、空芯リアクトル70の具体的寸法は、外形が58mm、内径が46mmである。
空芯リアクトル70は、コイルがモールド材料で被覆されたモールドリアクトルであり、螺旋状に巻かれた銅線71を有するコイル700と、コイル700を被覆した被覆体(図示せず)と、を備えている。銅線71自体は、被覆されていないものである。銅線71は、平板形状を有しており、厚さ約1.5mm及び幅約6mmの寸法を有している。
そして、本発明では、コイル700の隣接する銅線71の間に、隣接する銅線71同士を絶縁するよう、銅線71に沿って、絶縁テープ72が設けられている。絶縁テープ72は、ポリイミド樹脂のフィルムで形成されている。コイル700は、銅線71と絶縁テープ72とを、重ねた状態で螺旋状に巻いて、構成されている。絶縁テープ72は、約10mmの幅を有しており、銅線71の両側縁から各々約2mmはみ出すように巻かれている。すなわち、絶縁テープ72は、銅線71からのはみ出し部分(図示せず)を有している。
銅線71の両方の終端には、各々、結線用の端子73a、73bが取り付けられている。絶縁テープ72は、銅線71と端子73a、73bとの境目よりも約30mm手前で終端している。
被覆体は、端子73a、73b以外のコイル700全体を、被覆している。ここで、コイル700の全体とは、コイル700の内面、外面、上面、及び下面を意味する。被覆体は、コイル700において隣接する絶縁テープ72のはみ出し部分の間を埋めている。
そして、被覆体は、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有している。
合成高分子化合物Aにおいて、第1有機珪素ポリマーは、分子量が約500のポリフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約3万のポリメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約7万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
コイル700の合成高分子化合物Aによる被覆は、次のようにして行う。
まず、真空容器内に設置された合成高分子化合物Aの第1浴槽に、コイル700を、所定時間、浸す。この際、端子73a、73bは、その大部分が第1浴槽に浸らないようにする。また、この際、第1浴槽の合成高分子化合物Aの粘度を所定の値に設定することにより、隣接する絶縁テープ72のはみ出し部分の間に、合成高分子化合物Aを完全に充満させることができる。次に、コイル700を、第1浴槽から取り出し、恒温槽に入れ、100℃〜350℃の範囲の所定温度で保持し、合成高分子化合物Aを熱硬化させる。その後、真空容器内に設置された合成高分子化合物Aの第2浴槽に、コイル700を、所定時間、浸す。そして、コイル700を、第2浴槽から取り出し、恒温槽に入れ、所定温度で保持し、合成高分子化合物Aを熱硬化させる。これにより、被覆体の形成が完了する。
上記構成の空芯リアクトル70においては、コイル700の隣接する銅線71間の絶縁が、絶縁テープ72によって達成されている。したがって、本実施形態によれば、コイル700の隣接する銅線71間の絶縁を、簡単な構成で且つ確実に実現できる。
しかも、コイル700は、銅線71と絶縁テープ72とを重ねた状態で螺旋状に巻くだけで構成できるので、容易に製造できる。
更に、上記構成の空芯リアクトル70においては、被覆体が、コイル700において隣接する絶縁テープ72のはみ出し部分の間を埋めているので、絶縁テープ72と被覆体とを確実に一体化できる。
しかも、合成高分子化合物Aは、銅やポリイミド樹脂との接着性が良好であるので、被覆体と、銅線71及び絶縁テープ72とを、良好に接着できる。したがって、コイル700の絶縁性を向上でき、ひいては、空芯リアクトル70の信頼性を向上できる。
また、合成高分子化合物A及びポリイミド樹脂の耐熱性は、約300℃であり、銅線のエナメル被覆材やエポキシ被覆材の耐熱性の約2倍である。それ故、空芯リアクトル70に高電圧を印可してリアクトル動作をさせた時、銅線71の発熱が2倍程度になっても、絶縁破壊等は生じない。したがって、上記構成の空芯リアクトル70においては、銅線71の厚さを、従来のリアクトルの銅線の厚さの半分より少し厚めの程度にしても、従来のリアクトルと同じリアクトル値を実現できる。但し、銅線71の正確な厚さは、銅線71の抵抗の温度依存性も考慮して設定する必要がある。また、銅線71の厚さを従来のリアクトルと同じにした場合には、空芯リアクトルの直径を約半分にしても、従来のリアクトルと同じリアクトル値を実現できる。更に、コイル700の巻き線の回数を、従来のリアクトルの1/√2程度に低減しても、従来のリアクトルと同じリアクトル値を実現できる。以上のように、上記構成の空芯リアクトル70によれば、リアクトルの性能を損なうことなく、リアクトルの大きさや重量を従来のリアクトルよりも大幅に低減できるので、良好な経済性及び省資源化を達成できる。なお、比較対象とした従来のリアクトルでは、絶縁テープが用いられておらず、被覆体がエポキシ樹脂で構成されており、その他が空芯リアクトル70と同じである。
なお、本実施形態では、次のような構成を採用してもよい。
(1)第2浴槽の合成高分子化合物Aの第1有機珪素ポリマーの分子量を第1浴槽のそれよりも大きくする。例えば、約2500とする。これによれば、硬化後の硬度を高くすることができ、外力からの保護性を向上できる。
(2)絶縁テープを接着剤によって平板状の銅線の一面に貼り付け、この銅線を巻いてコイルを構成する。これによれば、絶縁テープと銅線とを一体物として取り扱うことができるので、生産性を著しく向上できる。なお、接着剤は、必ずしも高い耐熱性を有するものである必要はなく、主に製作時に絶縁テープが銅線から剥がれるのを防止する機能を有するものであればよい。仮に、コイル完成後に接着剤が高温状態で分解したとしても、コイル自体は合成高分子化合物Aで完全に被覆されているので、絶縁性が損なわれることはない。
(3)被覆体を形成した後に、コイル700の複数個所を縦方向にテープで巻いて、コイル700を固定する。テープとしては、例えば、ポリイミド樹脂からなるテープを使用できる。これによれば、コイル700の稼働時の電磁力や外部からの衝撃に対して、空芯リアクトル70の形状を確実に維持できる。
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態と同じ構成を有する空芯リアクトルであるが、本実施形態では、絶縁テープ72が、第1合成高分子化合物Aを含有したフィルムで構成されており、また、被覆体を構成する第2合成高分子化合物Aが絶縁性セラミックス微粒子を含有しており、その他は第1実施形態と同じである。
第1合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約1600のポリフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約2.5万のポリメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約6万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
第2合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約5000のポリフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約3万のポリメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約7万である。そして、第2合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
更に、第2合成高分子化合物Aは、絶縁性セラミックスである窒化アルミニウムの微粒子を含有している。窒化アルミニウム微粒子は、約2μmの粒径を有しており、約49%volの体積充填率で第2合成高分子化合物Aに充填されている。これにより、第2合成高分子化合物Aは、耐熱性、耐電圧性、及び柔軟性が殆ど損なわれることなく、熱伝導率が約0.3W/mKから約6.9W/mKまで増大した。
本実施形態の空芯リアクトルは、第1実施形態と同様の作用効果を発揮すると共に、特に以下のような作用効果を発揮する。
(1)絶縁テープ72を構成する第1合成高分子化合物Aが、被覆体を構成する第2合成高分子化合物Aと、同種の材料であり且つ類似の組成を有しているので、第1実施形態の場合に比して、絶縁テープと被覆体との接着性をより向上できる。その結果、本実施形態の空芯リアクトルは、約330℃の高温においても、より良好な絶縁性を達成でき、より優れた信頼性を得ることができる。
(2)第2合成高分子化合物Aの熱伝導率が高いので、コイルにおける発熱を効率良く外気に放散できる。その結果、本実施形態の空芯リアクトルは、定格許容温度を従来のリアクトルと同じにした場合に、電流容量を増大でき、しかも、小型化できる。すなわち、本実施形態の空芯リアクトルによれば、定格を、3kV、100A、10μHに増大しても、外形や内径を約10%小型化できるので、更に良好な経済性及び省資源化を達成できる。
なお、本実施形態においては、絶縁テープ72を接着剤によって銅線71に貼り付けてもよい。
(第3実施形態)
本実施形態は、第2実施形態と同じ構成を有する空芯リアクトルであるが、本実施形態では、絶縁テープを用いておらず、銅線71が、第1合成高分子化合物Aを用いて被覆されており、その他は第2実施形態と同じである。すなわち、コイル700が、銅線71と、第1合成高分子化合物Aを含有した被覆膜とで、構成されている。なお、コイル700は、被覆された銅線71を螺旋状に巻いて構成されている。
本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
本実施形態は、銅線71が断面丸形形状や幅狭の断面平板形状を有する場合に、特に有効に適用できる。
(第4実施形態)
図2は、本発明の第4実施形態の高耐熱電磁機器であるモールド変圧器を示す斜視図である。このモールド変圧器20は、3相モールド変圧器であり、各相のコイルである3つのモールドコイル10を有している。このモールド変圧器20は、例えば、一次側電圧が6kV、二次側電圧が210V、定格容量が750kVAの、内鉄形のモールド変圧器である。定格電流は、一次側が65A、二次側が2060Aである。モールドコイル10は、断面が略長円の柱状に形成されている。モールドコイル10には、図の縦方向に貫通する鉄心15が設けられている。モールドコイル10は、低電圧の二次コイルが内側に、高電圧の一次コイルが外側になるように、構成されている。3つのモールドコイル10の二次コイルは、低圧端子25にそれぞれ接続されており、一次コイルは高圧端子26にそれぞれ接続されている。3つの鉄心15の上下端部分を挟み込むように、上部フレーム18と下部フレーム19が設けられている。下部フレーム19の両端部には、据付板21が、防振ゴム22を介して、取り付けられている。
モールドコイル10の一次コイルは、被覆された銅線が螺旋状に巻かれて構成されている。すなわち、一次コイルは、銅線と、銅線を被覆した被覆膜とで、構成されている。被覆膜の厚さは、例えば、10μm〜1000μmである。
そして、被覆膜は、第1合成高分子化合物Aを含有している。第1合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約1600のポリフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約2.5万のポリメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約6万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
モールドコイル10の二次コイルも、一次コイルと同じく、銅線と、第1合成高分子化合物Aを含有した被覆膜とで、構成されている。
モールドコイル10は、例えば、高さ84cm、長径50cmの、長円柱である。そして、モールドコイル10の上下の端面及び側面には、厚さ約4〜5cmの被覆体が形成されている。被覆体は、第2合成高分子化合物Aを含有している。
第2合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約3000のポリフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約1万のポリメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約4万である。そして、第2合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
モールドコイル10は、次のようにして製作する。
まず、二次コイルと一次コイルとを製作する。なお、一次コイルと二次コイルとの間には、両者間の絶縁を保つためにポリイミド樹脂等で構成された混触防止板が設けられている。次に、両コイルを、断面が略長円形の筒状の金型(図示せず)内に挿入する。このとき、金型の寸法は、金型と一次コイルとの間に4〜5cmの隙間ができるように、設定されている。次に、金型を真空チャンバーに入れ、真空チャンバー内の空気を抜いて低圧とし、第2合成高分子化合物Aを、金型内の隙間に、すなわち、金型と一次コイルとの間及び両コイルの間に、流し込む。次に、金型と両コイルを60℃程度の温度に加熱し、第2合成高分子化合物Aの粘度を下げて、所定時間保持し、第2合成高分子化合物Aを上記隙間に十分に行き渡らせる。次に、金型と両コイルを約200℃に加熱して所定時間保持し、第2合成高分子化合物Aを硬化させる。硬化後、両コイルを金型から取り出し、型枠を除去する。これにより、一次及び二次の両コイルが被覆されて、両コイルと被覆体とからなるモールドコイル10が得られる。
ところで、両コイル全体を約4〜5cmの肉厚で気泡やボイドや隙間がないように覆うためには、第2合成高分子化合物Aの粘度を適切に調節することが重要である。合成高分子化合物Aの粘度が高すぎると、合成高分子化合物Aが金型内に十分に行き渡ららず、両コイルと被覆体との間に隙間ができることがある。逆に、合成高分子化合物Aの粘度を低くするために、その重量平均分子量を過度に小さくすると、耐熱性が低下する。しかるに、第2合成高分子化合物Aにおいては、耐熱性が高く且つ硬化後に高温でも適度の柔軟性を維持できるように、重量平均分子量を設定している。このような第2合成高分子化合物Aの粘度は約1万cpである。しかし、粘度は温度に強く依存するので、本実施形態では、製作の際に、第2合成高分子化合物Aを、上記のように一旦60℃に加熱することによって、3000〜5000cp程度の低い粘度とし、それを約3時間維持し、金型内の上記隙間に十分に行き渡らせた後に、200℃に加熱して硬化させている。
本実施形態のモールド変圧器20の作動を、従来のモールド変圧器とは異なる特徴的な点に着目して、以下に説明する。なお、従来のモールド変圧器では、銅線がエポキシ樹脂系ワニスで被覆されており、被覆体がエポキシ樹脂で構成されており、その他が本実施形態のモールド変圧器20と同じである。
本実施形態のモールド変圧器20は、同一規格の従来のモールド変圧器に比して、定格電流及び短絡電流を約1.6倍にすることができた。そして、その状態で本実施形態のモールド変圧器20を動作させると、モールドコイル10の温度がかなり上昇するが、電気的機械的な異常は生じなかった。これは、第2合成高分子化合物Aが、410℃という高い5重量%減少温度を有しており、しかも、高温でも柔軟性を維持できるからである。
モールドコイル10の温度が上昇すると、鉄心15の温度も上昇するが、鉄心15の鉄損は、温度が高くなると減少するので、本実施形態のモールド変圧器によれば、変換効率を増大できるという効果も得ることができた。
従来のモールド変圧器の場合の1.5倍の短絡電流によって、本実施形態のモールド変圧器20の一次及び二次コイルの温度は、340℃近くまで上昇すると推測される。しかし、この程度の温度では両コイル周辺の第2合成高分子化合物Aは劣化しないので、本実施形態のモールド変圧器20は、高耐電圧を維持することができた。
また、第2合成高分子化合物Aは、340℃近くの高温でも高い柔軟性を維持できる。したがって、第2合成高分子化合物Aは、一次コイルと二次コイルとの間に生じる電磁的な反発力を吸収することができた。それ故、モールド変圧器20の被覆体には、クラックが生じなかった。
本実施形態のモールド変圧器20は、効率が98.2%、電圧変動率が1.7%、無負荷電流が3.5%、短絡インピーダンスが4.5%であり、高い特性を発揮できた。
また、本実施形態のモールド変圧器20は、交流耐電圧印加試験、雷パルス試験、及び信頼性試験等においても、従来のモールド変圧器と同等以上の結果を得ることができた。
以上のように、本実施形態のモールド変圧器20は、従来のモールド変圧器に比して、耐熱性が高く、略同形状の従来のモールド変圧器に比して、他の特性を損ねることなく、定格電流すなわち定格容量を約1.6倍に増大できた。
(第5実施形態)
本実施形態は、第4実施形態と同じ構成を有するモールド変圧器であるが、本実施形態では、次の点が第4実施形態とは異なっており、その他は第4実施形態と同じである。
すなわち、モールドコイル10の一次コイルが、螺旋状に巻かれた銅線と、絶縁テープとで、構成されている。銅線自体は、被覆されていないものである。絶縁テープは、一次コイルにおいて隣接する銅線の間に、隣接する銅線同士を絶縁するよう、銅線に沿って、設けられている。銅線と絶縁テープとは、重ねた状態で螺旋状に巻かれている。絶縁テープは、銅線より少し大きな幅を有しており、銅線の両側縁から各々少しだけ(例えば約2mm)はみ出すように巻かれている。すなわち、絶縁テープは、銅線からのはみ出し部分を有している。
そして、絶縁テープは、第1合成高分子化合物Aを含有したフィルムで形成されている。第1合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約1600のポリフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約2.5万のポリメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約6万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
モールドコイル10の二次コイルも、一次コイルと同じく、螺旋状に巻かれた銅線と、第1合成高分子化合物Aを含有した絶縁テープとで、構成されている。
本実施形態においても、第4実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
本実施形態は、銅線が幅広の断面平板形状を有する場合に、特に有効に適用できる。
(第6実施形態)
本実施形態は、第5実施形態と同じ構成を有するモールド変圧器であるが、本実施形態では、銅線に絶縁テープが銅線の表面が露出しないように巻き付けられており、更に、絶縁テープが巻き付けられた銅線が螺旋状に巻かれて、モールドコイル10の一次コイル及び二次コイルが構成されており、その他は第5実施形態と同じである。
本実施形態においても、第5実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
本実施形態は、銅線が断面丸形形状や幅狭の断面平板形状を有する場合、更には、銅線が太くて一次及び二次コイルが大型である場合に、特に有効に適用できる。
(第7実施形態)
本実施形態は、第4実施形態と同じ形態を有するモールド変圧器であるが、本実施形態では、被覆体を構成する第2合成高分子化合物Aが絶縁性セラミックス微粒子を含有している。
絶縁性セラミックスとしては、窒化アルミニウムを用いている。窒化アルミニウム微粒子は、約2μmの粒径を有しており、約48%volの体積充填率で第2合成高分子化合物Aに充填されている。これにより、第2合成高分子化合物Aは、耐熱性、耐電圧性、及び柔軟性が殆ど損なわれることなく、熱伝導率が約0.3W/mKから約6.7W/mKまで増大した。
本実施形態のモールド変圧器によれば、モールドコイル10の被覆体の熱放散性が、第4実施形態の場合よりも更に向上するので、定格電流及び短絡電流を、従来のモールド変圧器の場合の約2.1倍にしても、特に電気的機械的な異常は生じなかった。
本実施形態のモールド変圧器の、効率、無負荷電流、及び短絡インピーダンス等の、電気的性能は、従来のモールド変圧器と殆ど同じであり、信頼性は、従来のモールド変圧器よりも優れていた。
以上のように、本実施形態のモールド変圧器は、第4実施形態のモールド変圧器に比して、熱放散性がより高く、略同じ形状及び寸法の従来のモールド変圧器に比して、定格電流すなわち定格容量を更に増大することができた。
(第8実施形態)
本実施形態は、第3実施形態と同じ構成を有する空芯リアクトルであるが、本実施形態では、第1合成高分子化合物Aの組成が第3実施形態とは異なっており、その他は第3実施形態と同じである。
第1合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約1800のポリメチルフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約3万のポリジメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約6万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
本実施形態においても、第1ないし第3実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
(第9実施形態)
本実施形態は、第4実施形態と同じ構成を有するモールド変圧器であるが、本実施形態では、被覆膜を構成する第1合成高分子化合物Aの組成が第4実施形態とは異なっており、その他は第4実施形態と同じである。
第1合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約1800のポリメチルフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約3万のポリジメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約6万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
本実施形態においても、第4実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
(第10実施形態)
本実施形態は、高温環境下で使用される大型産業機械の、配線用絶縁電線に使用される、高耐熱導線である。高温環境とは、例えば、溶鉱炉、鍛造装置、圧延機等の、近傍の環境等を言う。大型産業機械としては、例えば、電動走行クレーン等がある。
使用電圧は、交流600Vである。本実施形態の高耐熱導線は、銅線と、銅線を被覆した被覆膜と、からなっている。銅線は、ニッケルメッキされており、約4mmの直径を有している。被覆膜は、約1.0mmの厚さを有している。
被覆膜は、合成高分子化合物Aを含有している。合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約2000のポリメチルフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約1万のポリジメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約5万である。そして、合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
本実施形態の高耐熱導線は、被覆膜を、銅線の外周に押し出し成形して約220℃の高温窒素ガス中で硬化させて、作製する。
本実施形態の高耐熱導線は、20℃での導体抵抗が1.38Ω/km、絶縁抵抗が55MΩ・kmであり、良好な特性を発揮できた。
また、本実施形態の高耐熱導線は、被覆膜が合成高分子化合物Aを含有しているので、被覆膜が架橋ポリエチレンからなっている通常の絶縁電線に比して、次のような特性を発揮できた。すなわち、柔軟性に富み、配線時の屈曲にフレキシブルに対応でき、したがって、被覆膜にクラック等が発生しない。また、耐熱性に富み、従来の絶縁電線では実現できなかった280℃での連続使用を達成できた。また、410℃であっても、間欠的使用であれば、熱分解が殆ど発生せず、十分耐えることができた。また、コロナ放電に対する耐性も、大幅に向上できた。更に、銅線と被覆膜との密着性が良いので、高い耐湿性を達成でき、信頼性を向上できた。
また、合成高分子化合物Aが、紫外線及び可視光線に対する高い透過性を有しているので、導線の被覆工程において気泡やボイド等の存在を容易に光学的に検出することができる。したがって、生産性を向上でき、また、使用時の導線の劣化状況を、目視や光学装置によって非破壊的に容易に観察でき、メンテナンスを著しく容易に実行することができる。
(第11実施形態)
本実施形態は、第10実施形態と同じ構成を有する高耐熱導線であるが、本実施形態では、被覆膜を構成する合成高分子化合物Aが絶縁性セラミックス微粒子を含有している。
絶縁性セラミックスとしては、窒化アルミニウムを用いている。窒化アルミニウム微粒子は、約0.3μmの粒径を有しており、約25%volの体積充填率で合成高分子化合物Aに充填されている。
本実施形態の高耐熱導線によれば、合成高分子化合物Aが窒化アルミニウム微粒子を含有しているので、熱伝導性を向上でき、第10実施形態に比して電流容量を約18%増大できた。更に、窒化アルミニウム微粒子が、インバータサージ等の部分放電による被覆膜の劣化の進展を抑制できるので、第10実施形態に比して絶縁破壊時間を約10倍以上長くでき、絶縁破壊寿命を大幅に改善できた。
(第12実施形態)
本実施形態は、高温環境下で使用される大型産業機械の、給電用ケーブルに使用される、高耐熱導線である。高温環境とは、例えば、溶鉱炉、鍛造装置、圧延機等の、近傍の環境等を言う。
使用電圧は、交流3.3kVである。本実施形態の高耐熱導線は、銅線と、銅線を被覆した被覆膜と、からなっている。銅線は、ニッケルメッキされており、約5mmの直径を有している。被覆膜は、3層構造を有しており、内層である第1被覆膜と、中層である薄い半導電膜と、外層である第2被覆膜と、からなっている。第1被覆膜は、約2.5mmの厚さを有している。第2被覆膜は、約1.5mmの厚さを有している。
第1被覆膜は、第1合成高分子化合物Aを含有している。第1合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約1500のポリメチルフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約1万のポリジメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約4万である。そして、第1合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
第2被覆膜は、第2合成高分子化合物Aを含有している。第2合成高分子化合物Aは、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成されている。第1有機珪素ポリマーは、分子量が約4000のポリメチルフェニルシルセスキオキサンである。第2有機珪素ポリマーは、分子量が約2万のポリジメチルフェニルシロキサンである。第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとは、シロキサン結合によって、交互に且つ線状に連結されて、第3有機珪素ポリマーを構成している。第3有機珪素ポリマーは、分子量が約8万である。そして、第2合成高分子化合物Aは、複数の第3有機珪素ポリマーをアルキレン基によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している。
本実施形態の高耐熱導線は、第1被覆膜、半導電膜、及び第2被覆膜を、銅線の外周に押し出し成形して約200℃の高温窒素ガス中で硬化させて、作製する。
本実施形態の高耐熱導線は、20℃での導体抵抗が0.82Ω/km、絶縁抵抗が2500MΩ・km、静電容量が0.26μF/kmであり、良好な特性を発揮できた。
本実施形態の高耐熱導線は、被覆膜が第1合成高分子化合物A及び第2合成高分子化合物Aを含有しているので、被覆膜が架橋ポリエチレンからなっている通常のケーブルに比して、次のような特性を発揮できた。すなわち、柔軟性に富み、配線時の屈曲にフレキシブルに対応でき、したがって、被覆膜にクラック等が発生しない。また、耐熱性に富み、従来のケーブルでは実現できなかった275℃での連続使用を達成できた。また、400℃であっても、間欠的使用であれば、熱分解が殆ど発生せず、十分耐えることができた。また、コロナ放電に対する耐性も、大幅に向上できた。更に、銅線と被覆膜との密着性が良いので、高い耐湿性を達成でき、信頼性を向上できた。
(第13実施形態)
本実施形態は、第12実施形態と同じ構成を有する高耐熱導線であるが、本実施形態では、第1被覆膜を構成する第1合成高分子化合物A及び第2被覆膜を構成する第2合成高分子化合物Aがそれぞれ絶縁性セラミックス微粒子を含有している。
絶縁性セラミックスとしては、窒化アルミニウムを用いている。窒化アルミニウム微粒子は、約0.1μmの粒径を有しており、約16%volの体積充填率で第1合成高分子化合物A及び第2合成高分子化合物Aのそれぞれに充填されている。
本実施形態の高耐熱導線によれば、第1合成高分子化合物A及び第2合成高分子化合物Aがそれぞれ窒化アルミニウム微粒子を含有しているので、熱伝導性を向上でき、第12実施形態に比して電流容量を約13%増大できた。更に、窒化アルミニウム微粒子が、インバータサージ等の部分放電による被覆膜の劣化の進展を抑制できるので、第12実施形態に比して絶縁破壊時間を約10倍以上長くでき、絶縁破壊寿命を大幅に改善できた。
また、第1合成高分子化合物A及び第2合成高分子化合物Aが、紫外線及び可視光線に対する高い透過性を有しているので、導線の被覆工程において気泡やボイド等の存在を容易に光学的に検出することができる。したがって、生産性を向上でき、また、使用時の導線の劣化状況を、目視や光学装置によって非破壊的に容易に観察でき、メンテナンスを著しく容易に行うことができる。
(別の実施形態)
本発明は、更に次に示すような構成を採用してもよい。
(1)本発明は、内鉄形又は外鉄形のいずれの変圧器にも適用できる。
(2)本発明は、単相又は三相のいずれの変圧器にも適用できる。
(3)本発明は、金属ケースに収納された変圧器、ケースにモールド封入された変圧器、柱上変圧器、又は路上変圧器にも、適用できる。
(4)本発明は、定格容量において、例えば、7万〜22万V級の大容量のモールド変圧器や10〜100MW級の大容量のモールド変圧器にも、適用できる。
(5)本発明は、小型化及び軽量化に好適であるので、電車や電気自動車等の車両用変圧器や事故時の応急用可搬型変圧器に適用することによって、大きな利点を得ることができる。
(6)本発明は、空芯リアクトル以外に鉄心リアクトルにも適用できる。また、直列リアクトル、分路リアクトル、消弧リアクトル、中性点リアクトル、直流リアクトルにも適用できる。
(7)本発明の被覆された導線、すなわち合成高分子化合物Aで被覆された導線は、モータ、発電機等の各種の電磁コイルを構成する場合にも使用でき、高耐熱性という特性を発揮できる。
(8)電流トランスフォーマ(CT)や電圧トランスフォーマ(VT)等の変成器、電流測定用のロゴスキーコイル等にも適用でき、高耐熱性という特性を発揮できる。
(9)絶縁性セラミックスとしては、酸化ベリリウム、アルミナ、炭化珪素、ダイヤモンド、窒化ホウ素、又は窒化ケイ素を、用いることができる。
本発明は、変圧器やリアクトルのような高耐熱電磁機器において、良好な経済性及び省資源化を達成できるので、産業上の利用価値が大である。

Claims (13)

  1. 被覆された導線において、
    導線を被覆した被覆膜が、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、
    第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、
    第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、
    第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、
    合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有していることを特徴とする高耐熱導線。
  2. 螺旋状に巻かれた導線を有するコイルと、コイルを被覆した被覆体と、を備えた、高耐熱電磁機器において、
    コイルの隣接する導線の間に、隣接する導線同士を絶縁するよう、導線に沿って、絶縁テープが設けられていることを特徴とする高耐熱電磁機器。
  3. 絶縁テープが、接着剤によって導線に貼り付けられている、請求項2記載の高耐熱電磁機器。
  4. 螺旋状に巻かれた導線を有するコイルと、コイルを被覆した被覆体と、を備えた、高耐熱電磁機器において、
    コイルが、導線と、導線を被覆する被覆膜とで、構成されており、
    上記被覆膜が、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、
    第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、
    第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、
    第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、
    合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有していることを特徴とする高耐熱電磁機器。
  5. 絶縁テープが、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、
    第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、
    第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、
    第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、
    合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している、請求項2又は3に記載の高耐熱電磁機器。
  6. 被覆体が、少なくとも1種の第1有機珪素ポリマーと少なくとも1種の第2有機珪素ポリマーとを連結してなる第3有機珪素ポリマーを、複数連結して構成された、合成高分子化合物Aを含有しており、
    第1有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による橋かけ構造を有しており、
    第2有機珪素ポリマーが、シロキサン結合による線状連結構造を有しており、
    第3有機珪素ポリマーが、第1有機珪素ポリマーと第2有機珪素ポリマーとをシロキサン結合によって交互に且つ線状に連結して構成されており、且つ、2万〜80万の重量平均分子量を有しており、
    合成高分子化合物Aが、複数の第3有機珪素ポリマーを付加反応により生成される共有結合によって連結して構成された、三次元の立体構造を有している、請求項2ないし5のいずれか1つに記載の高耐熱電磁機器。
  7. 絶縁テープが、導線の両側縁から僅かにはみ出しており、
    被覆体が、隣接する当該はみ出し部分の間を埋めている、請求項2、3、5、又は6に記載の高耐熱電磁機器。
  8. 第1有機珪素ポリマーが200〜7万の重量平均分子量を有しており、
    第2有機珪素ポリマーが5000〜20万の重量平均分子量を有しており、
    第1有機珪素ポリマーの重量平均分子量が第2有機珪素ポリマーの重量平均分子量より小さい、請求項1及び4ないし6のいずれか1つに記載の高耐熱電磁機器。
  9. 合成高分子化合物Aが、4W/mK以上の熱伝導率を有する絶縁性セラミックス微粒子を含有している、請求項6記載の高耐熱電磁機器。
  10. 絶縁性セラミックスが、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、アルミナ、炭化珪素、ダイヤモンド、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素の内の少なくとも1種類である、請求項9記載の高耐熱電磁機器。
  11. 絶縁性セラミックス微粒子が、0.01〜50μmの粒径を有している、請求項9記載の高耐熱電磁機器。
  12. 合成高分子化合物Aに対する絶縁性セラミックス微粒子の体積充填率が、15%vol〜85%volである、請求項9記載の高耐熱電磁機器。
  13. 微粒子が、粒径の異なる複数種類の微粒子を含んでおり、それらの微粒子の粒径比が、1:1/10〜1:1/200の範囲にある、請求項9記載の高耐熱電磁機器。

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