本発明は、導電性液体を移動させることにより、画像や文字などの情報を表示する表示素子、及びこれを用いた電気機器に関する。
従来より、透明もしくは着色液体の移動現象を利用して表示を行う表示素子が提案されている。例えば、外部電場を利用して液体を移動させて表示する表示素子には、電気浸透方式とエレクトロウェッティング方式のものがある。
電気浸透方式の表示素子では、多孔質体の表面の液体含浸率を制御して外光を散乱させ、外光に対する光反射率や光透過率を制御するようになっている。また、この電気浸透方式の表示素子では、予め多孔質体と透明液体の屈折率を一致させておき、多孔質体の貫通孔(細孔)内に液体を満たすことで透明とし、貫通孔から液体を流出させることで光散乱が生じるように構成されている。
エレクトロウェッティング方式の表示素子では、細孔内の液体に対する電界印加により液体の界面張力を変化させ、電気毛管現象(エレクトロウェッティング現象)で当該液体を移動させるようになっている。詳細には、細孔の内面に設けられた一対の電極間のスイッチが閉じられて、液体に電界が印加されると、液体の細孔内面に対する濡れ性が変化し、液体の細孔内面に対する接触角が減少して、液体は細孔内を移動していく。一方、スイッチが開かれて、液体に対する電界印加が停止されると、細孔内面に対する液体の濡れ性が変化して接触角は急激に増大して、液体は細孔から流出される。
ところで、上記のような表示素子において、動画表示を行うためには、細孔内で液体を高速、かつ低電圧で移動させることが求められている。この点から電気浸透方式とエレクトロウェッティング方式とを比較した場合、エレクトロウェッティング方式の方が液体を高速に移動させることが可能であり、動画表示により適している。
また、従来の表示素子では、例えば下記特開平10−39799号公報に記載されているように、エレクトロウェッティング現象を用いた画像表示装置が提供されている。
具体的には、図20に示すように、上記従来の表示素子は、透明なシートにより構成されるとともに、図20の上側(表示面側)から所定間隔をおいて順次配置された第1、第2、第3シート1、2、3を備えている。第1シート1と第2シート2との間には、上側通路4が設けられ、第2シート2と第3シート3との間には、下側通路5が設けられている。また、第2シート2には、上側通路4及び下側通路5を連通するリザーバ6、7が設けられている。さらに、上側通路4、下側通路5、リザーバ6、7の内部には、所定色に着色された導電性液体L1と透明な透明液体L2とが密封されている。
また、この従来の表示素子では、第1電極8A及び8Bが上側通路4を挟むように第1シート1の下面側及び第2シート2の上面側にそれぞれ設置されている。また、上側通路4内には、第2電極9がリザーバ6の上端開口と対向する位置に設置されている。これら第1電極8A、8Bと第2電極9とには、図20に示すように、直流電源が接続されており、導電性液体L1に対して電界印加を行えるようになっている。
上記のように構成された従来の表示素子では、第1電極8A、8Bと第2電極9との間の回路を閉じて、これらの電極間に電圧を印加することにより、上側通路4内の透明液体L2を下側通路5側に移動させるとともに、リザーバ6側から上側通路4側に導電性液体L1を移動させて、表示面側を上記所定色としている。
一方、上記回路を開くことにより、上側通路4側からリザーバ6側に導電性液体L1を戻させるとともに、透明液体L2をリザーバ7側から上側通路4側に移動させて、表示面側を透明表示としている。
ところで、上記のような従来の表示素子では、その駆動方式として、例えば単純マトリクス方式(パッシブマトリクス方式)やアクティブマトリクス方式を適用することができる。
単純マトリクス方式は、液晶ディスプレイ等でも良く知られているように、X方向でストライプ状にパターニングされたX電極と、Y方向でストライプ状にパターニングされたY電極との2層の電極を格子状に設けている。そして、単純マトリクス方式では、上記X電極とY電極とにタイミングよく電圧パルスを印加することにより、TFT(Thin Film Transistor)等のアクティブ素子を用いることなく、X電極とY電極との各交差部にある画素に表示動作を行わせるようになっており、構造が単純でコスト安価な表示素子を製造可能とされている。
しかしながら、上記のような単純マトリクス方式では、周知のように、X電極の夫々に電圧を順次印加することにより、X電極を1ラインずつ選択するとともに、選択ラインに対応する入力電圧をY電極に印加する走査表示が行われている。このため、単純マトリクス方式では、漏れ電流などの影響により選択ラインに隣接する非選択ラインにも若干の電圧が掛かり半選択状態となってクロストークの問題が生じることがあった。
一方、アクティブマトリクス方式では、各画素にTFT等のスイッチング素子やダイオード素子を設けることによって画素毎に付加される電圧を制御することが可能となり、クロストークの問題を解決している。しかしながらこのアクティブマトリクス方式では、上記のようなアクティブ素子を画素毎に設けているので、表示素子の製造プロセスが複雑化したり、部品点数が増加したりして、表示素子のコストアップが生じるという新たな問題点が発生した。
上記の課題を鑑み、本発明は、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができる表示素子、及びこれを用いた電気機器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる表示素子は、表示面側に設けられた透明な上部層と、
所定の上部空間が前記上部層との間に形成されるように、当該上部層の背面側に設けられた中間層と、
所定の下部空間が前記中間層との間に形成されるように、当該中間層の背面側に設けられた下部層と、
前記上部空間と前記下部空間とが連通するように、前記中間層に設けられた連通空間と、
前記上部空間、前記下部空間、及び前記連通空間によって形成された液体貯留空間の内部に移動可能に封入された導電性液体を具備するとともに、前記導電性液体を移動させることにより、前記表示面側の表示色を変更可能に構成された表示素子であって、
前記上部層または前記下部層に設けられた基準電極と、
前記中間層に設けられた複数の信号電極と、
前記複数の信号電極と交差するように、前記上部層または前記下部層に設けられた複数の走査電極と、
前記基準電極に接続されて、前記基準電極に対し、所定の基準電圧を印加する基準電圧印加部と、
前記複数の信号電極に接続されるとともに、前記複数の各信号電極に対して、前記表示面に表示される情報に応じた信号電圧を印加する信号電圧印加部と、
前記複数の走査電極に接続されるとともに、前記基準電圧印加部が前記基準電極に対し前記基準電圧を印加しているときに、前記複数の各走査電極に対して、前記導電性液体が前記液体貯留空間の内部を移動するのを阻止する非選択電圧と、前記導電性液体が前記信号電圧に応じて、前記液体貯留空間の内部を移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を印加する走査電圧印加部とを備えていることを特徴とするものである。
上記のように構成された表示素子では、複数の信号電極及び複数の走査電極が互いに交差するように設けられてマトリクス状に配置されている。また、基準電圧印加部が基準電極に対し基準電圧を印加しているときに、複数の各走査電極に対して、導電性液体が液体貯留空間の内部を移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体が上記信号電圧に応じて、液体貯留空間の内部を移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を印加する走査電圧印加部が設けられている。これにより、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができる。
また、上記表示素子において、前記表示面には、複数の画素領域が設定されるとともに、
前記複数の各画素領域は、前記信号電極と前記走査電極との交差部単位に設けられ、かつ、前記各画素領域では、前記液体貯留空間が仕切壁によって区切られてもよい。
この場合、表示面の複数の各画素において、クロストークを生じることなく、導電性液体を移動させて、表示面側での表示色を画素単位に変更することが可能となる。
また、上記表示素子において、前記複数の画素領域が、前記表示面側でフルカラー表示が可能な複数の原色に応じてそれぞれ設けられていることが好ましい。
この場合、複数の各画素において対応する導電性液体が適切に移動されることにより、カラー画像表示を行うことができる。
また、上記表示素子において、前記基準電圧印加部は、前記基準電圧の極性を所定の時間毎に切り替えるとともに、
前記走査電圧印加部は、前記基準電圧の極性の切り替えに対応して、前記非選択電圧及び前記選択電圧の各極性を切り替えることが好ましい。
この場合、上記基準電極及び走査電極に対して常時同じ極性の電圧を印加するときに比べて、これらの基準電極及び走査電極での電荷の局在化を防ぐことができる。
また、上記表示素子において、前記信号電圧印加部は、外部からの画像入力信号に基づいて、前記信号電圧の大きさを変更してもよい。
この場合、表示面では上記画像入力信号に応じた階調表示が行われる。
また、上記表示素子において、前記基準電極は、前記上部層または前記下部層のどちらか一方側に設けられ、かつ、
前記走査電極は、前記上部層または前記下部層のうち、前記基準電極が設けられていない他方側に設けられるとともに、
前記表示面側の表示色が、前記上部空間側または前記下部空間側に前記導電性液体を移動させることにより、変更されてもよい。
この場合、上記基準電圧及び選択電圧が基準電極及び走査電極に対しそれぞれ印加されたときに、導電性液体を変形させることなく、液体貯留空間の内部で上部空間側または下部空間側に移動させることができる。従って、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことが可能となる。
また、上記表示素子において、前記基準電極には、面状の導電膜が用いられてもよい。
この場合、基準電極を容易に形成することが可能となり、表示素子の製造コストを低減することができる。
また、上記表示素子において、前記液体貯留空間の内部には、前記導電性液体と混じり合わない絶縁性流体が当該液体貯留空間の内部を移動可能に封入されていることが好ましい。
この場合、導電性液体の移動速度の高速化を容易に図ることができる。
また、上記表示素子において、前記基準電極及び前記走査電極は、前記上部層または前記下部層に設けられるとともに、
前記表示面側の表示色が、前記基準電極側または前記走査電極側に前記導電性液体を移動させることにより、変更されることが好ましい。
この場合、基準電極及び走査電極を同時に形成することができ、表示素子の製造コストを容易に低減することができる。また、導電性液体を変形させることなく、当該導電性液体を移動させて、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことができる。さらには、導電性液体が上記上部空間の内部または下部空間の内部でのみ移動されることにより、表示色の変更動作が行われるので、導電性液体の駆動電圧を低減することができる。
また、上記表示素子において、前記基準電極及び前記走査電極は、前記下部層または前記中間層のどちらか一方側に設けられるとともに、
前記信号電極が、前記下部空間を挟んで前記基準電極及び前記走査電極と対向するように、前記下部層または前記中間層の他方側に設けられてもよい。
この場合、表示面側に基準電極、走査電極、及び信号電極のいずれの電極も設けられていないので、当該表示面側での開口率(有効表示領域)を容易に向上できる。また、信号電極と基準電極及び走査電極とが互いに対向しているので、導電性液体の駆動電圧を容易に低減することができる。
また、上記表示素子において、前記液体貯留空間の内部には、前記導電性液体と混じり合わない第1の絶縁性流体と、前記導電性液体及び前記第1の絶縁性流体と混じり合わない第2の絶縁性流体とが当該液体貯留空間の内部を移動可能に封入されるとともに、
前記表示面側の表示色は、前記第1または前記第2の絶縁性流体が前記上部空間側に移動されることにより、変更されることが好ましい。
この場合、導電性液体の移動速度の高速化を容易に図ることができる。
また、上記表示素子において、前記液体貯留空間には、前記上部空間の一端部側と前記下部空間の一端部側とを連通する第1の連通空間と、前記上部空間の他端部側と前記下部空間の他端部側とを連通する第2の連通空間とが設けられてもよい。
この場合、導電性液体を移動させる際に、液体貯留空間の内部で当該導電性液体を循環させることができ、上記表示面側の表示色の変更速度を容易に高速化することが可能となる。
また、上記表示素子において、前記基準電極及び前記走査電極の表面上には、誘電体層が積層されていることが好ましい。
この場合、誘電体層が導電性液体に印加する電界を確実に大きくして、当該導電性流体の移動速度をより容易に向上することができる。
また、上記表示素子において、前記中間層の表示面側は、光散乱機能を有してもよい。
この場合、外部から入射された外光が上記光散乱機能によって反射されることにより、白色表示が行われるので、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。
また、上記表示素子において、前記中間層及び前記下部層には、透明な透明シートが用いられ、
前記下部層の背面側には、バックライトが設けられてもよい。
この場合、バックライトからの照明光により白色表示を行うことが可能となり、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、バックライトを使用しているので、外光が十分でないときでも、表示動作を行うことができる。
また、上記表示素子において、前記中間層には、透明な透明シートが用いられ、
前記下部層には、並設された光散乱体及び透明な透明シートが含まれ、
前記下部層の背面側には、バックライトが設けられてもよい。
この場合、光散乱体及びバックライトからの照明光によって白色表示が行うことができるので、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、外光を併用しているため、バックライトの消費電力を低減することができる。
また、本発明の電気機器は、文字及び画像を含んだ情報を表示する表示部を備えた電気機器であって、
前記表示部に、上記いずれかの表示素子を用いたことを特徴とするものである。
上記のように構成された電気機器では、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止可能な表示素子が表示部に用いられているので、優れた表示性能をもつコスト安価な表示部を備えた電気機器を容易に構成することができる。
本発明によれば、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができる表示素子、及びこれを用いた電気機器を提供することが可能となる。
本発明の第1の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。
着色表示時における、上記表示素子の要部構成を示す断面図である。
白色表示時における、上記表示素子の要部構成を示す断面図である。
上記表示素子の動作例を示す説明図である。
本発明の第2の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
本発明の第3の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
図7(a)は、第4の実施形態にかかる表示素子を用いた画像表示装置を説明する概略構成図であり、図7(b)は、図7(a)に示した画像表示装置の変形例を説明する概略構成図である。
本発明の第5の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。
白色表示時における、図8に示した表示素子の要部構成を示す断面図である。
着色表示時における、図8に示した表示素子の要部構成を示す断面図である。
図8に示した基準電極、走査電極、及び下部シートの形成工程を説明する図である。
図8に示した信号電極及び中間層の形成工程を説明する図である。
図8に示した上部シートの形成工程を説明する図である。
上記下部シートと中間層とを組み付ける製造工程を説明する図である。
図8に示した表示素子の最終の製造工程を説明する図である。
図8に示した表示素子の動作例を示すタイミングチャートである。
本発明の第6の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
着色表示時における、図17に示した表示素子の要部構成を示す断面図である。
本発明の第7の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
従来の表示素子、及び画像表示装置の要部構成を示す断面図である。
以下、本発明の表示素子及び電気機器の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、カラー画像表示を表示可能な表示部を備えた画像表示装置に本発明を適用した場合を例示して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。図2及び図3は、それぞれ着色表示時及び白色表示時における、上記表示素子の要部構成を示す断面図である。
図において、本実施形態の画像表示装置では、本発明の表示素子を用いて構成された表示部が設けられており、この表示部では図2の上側がユーザに視認される表示面側となっている。上記表示素子には、図2に示すように、上部シート11と、所定の上部空間S1が上部シート11との間に形成されるように、当該上部シート11の背面側(非表示面側)に設けられた中間層12と、所定の下部空間S2が中間層12との間に形成されるように、当該中間層12の背面側に設けられた下部シート13とが設けられている。
上部シート11は、透明な絶縁材(例えば、合成樹脂材)にて形成されており、表示面側に設けられた透明な上部層を構成している。下部シート13には、例えば合成樹脂などの絶縁材が用いられており、下部シート13は、下部層を構成している。また、表示素子では、上部空間S1及び下部空間S2は複数の仕切壁W1及びW2にてそれぞれ区切られて各々直方体状に構成されており、図2の左右方向及び図2の紙面に垂直な方向で複数の画素領域が上記表示面に設けられるようになっている。また、各画素領域は、後述の信号電極15と走査電極22との交差部単位に設けられている。さらに、表示素子では、上記表示面側でフルカラー表示が可能なように、例えばRGBの各色用の画素領域が1絵素として互いに隣接して設けられている。
中間層12は、表示面側から順次積層された光散乱体14、信号電極15、及び絶縁シート16の三層構造に構成されている。また、中間層14には、画素領域毎に、厚さ方向(図2の上下方向)に貫通した一対の貫通孔H1、H2が形成されている。これら貫通孔H1、H2は、第1、第2の連通空間をそれぞれ構成するものであり、各一端側が上部空間S1に連通している。また、貫通孔H1、H2の各他端側は、下部空間S2に連通している。そして、密閉された液体貯留空間が、上部空間S1、下部空間S2、及び貫通孔H1、H2によって画素毎に形成されている。尚、上記の説明以外に、画素毎に一つの貫通孔(連通空間)のみ設ける構成でもよい。また、中間層12の表示面側は、光散乱機能を有するものであればよく、光散乱体14以外のものを用いることができる。
上記液体貯留空間には、水を含まない着色透明のイオン導電性液体(以下、″導電性液体″と略す。)17と、絶縁性のオイル18とが密封されている。また、仕切壁W1、W2により区画された隣接する2つの液体貯留空間には、互いに異なる色に着色された導電性液体17が密封されている。つまり、導電性液体17には、RGBのいずれかの顔料や染料等の着色剤が添加されており、表示面側の表示色をRGBの対応する色で表示可能になっている。
また、導電性液体17は、イオン性液体に限定されないが、蒸気圧がゼロであり、熱的安定性に優れ、かつ導電率も高い点により、イオン性液体が好適に用いられる。
具体的には、導電性液体17は、電荷が1価のカチオンとアニオンとを1種類ずつ組み合わせている1−1塩からなる常温溶融塩で、かつ、水を含まないイオン性の導電性液体である。
カチオンとアニオンとは、導電性液体17が下記の融点、粘度、イオン伝導度を備える組み合わせとなるように選択されている。
融点が−4〜−90℃の常温で液体であり、不揮発性であるため蒸気圧がゼロで、広い液体温度領域を備えて優れた熱安定性を有するものであること。
常温(25℃)におけるイオン伝導度(s/cm)が0.1×10−3以上であること。
常温(25℃)における粘度が300cp以下であること。
上記の物性を有する導電性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、あるいは1,2−ジジメチル−3−プロピルイミダゾリウムからなる化学種を含むものが用いられる。
オイル18は、導電性液体17と混じり合わない物性を有するものであり、オイル18には、透明な側鎖高級アルコール、側鎖高級脂肪酸、アルカン炭化水素、シリコーンオイル、マッチングオイルから選択された1種または複数種からなる無極性のオイルが用いられている。
また、表示素子では、導電性液体17に電圧を印加あるいは除電して、当該導電性液体17を移動させて、オイル18との位置を置換するため、表示素子は、上部空間S1側に設けられた基準電極19と、中間層12内に設けられた信号電極15と、下部空間S2側に設けられた走査電極22とを備えた3端子構造を画素毎に有している。
詳しくは、上部シート11の下面には、上側の基準電極19aが上部空間S1の表示面側の全面を覆うように、設けられている。また、中間層12側では、貫通孔H1、H2の開口を除いて、下側の基準電極19bが、上部空間S1に対向する表面上に設けられている。これら基準電極19a、19bは、ITO膜などの透明な面状の導電膜を用いて構成されており、互いに電気的に接続されている。なお、基準電極19は、上部シート11及び中間層12のうち、少なくとも上部シート11に設けられていればよい。但し、上部空間S1を挟むように、上下2層の基準電極19a、19bを設ける場合の方が、導電性液体17の移動速度の高速化を容易に図れる点で好ましい。
また、下部シート13の上面には、下側の走査電極22aが設けられている。また、中間層12側では、貫通孔H1、H2の開口を除いて、上側の走査電極22bが、下部空間S2に対向する表面上に設けられている。これらの走査電極22a、22bには、薄い帯状の導電膜が用いられており、複数の走査電極22a、22bが、図1のX方向に沿ってストライプ状に設けられている。また、走査電極22a、22bは、アルミニウム、銅などの上記導電膜が使用されており、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ディップコーティング法などで形成されている。なお、走査電極22は、下部シート13及び中間層12のうち、少なくとも下部シート13に設けられていればよい。但し、下部空間S2を挟むように、上下2層の走査電極22a、22bを設ける場合の方が、導電性液体17の移動速度の高速化を容易に図れる点で好ましい。
中間層12では、複数の信号電極15が図1のY方向に沿ってストライプ状に設けられており、同図1に示すように、複数の走査電極22と交差するように形成されている。これにより、表示素子では、信号電極15と走査電極22とがマトリクス状に配置されるとともに、後に詳述するように、エレクトロウェッティング現象によって導電性液体17を移動させて、表示面側での表示色を変更するようになっている。
また、信号電極15には、アルミニウム、銅などの薄い帯状の導電膜が用いられており、信号電極15は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ディップコーティング法などにより、例えば合成樹脂材を用いた絶縁シート16上に形成されている。
また、図1に示すように、基準電極19a、19b、信号電極15、及び走査電極22a、22bでは、各々一端部側が表示面の有効表示領域の外側に引き出されて、端子部19a1、19b1、15a、及び22a1、22b1が形成されている。
基準電極19a、19bの端子部19a1、19b1には、それぞれ配線30の上側配線30a(図2)、下側配線30b(図2)を介して基準ドライバ27が接続されている。基準ドライバ27は、基準電圧印加部を構成するものであり、画像表示装置10が文字及び画像を含んだ情報を表示面に表示する場合に、基準電極19に対して、所定の基準電圧Vsを常時印加するように構成されている。
また、複数の信号電極15の端子部15aには、複数の配線31をそれぞれ介して信号ドライバ28が接続されている。信号ドライバ28は、信号電圧印加部を構成するものであり、画像表示装置10が文字及び画像を含んだ情報を表示面に表示する場合に、複数の各信号電極15に対して、情報に応じた信号電圧Vgを印加するように構成されている。
また、複数の走査電極22a、22bの端子部22a1、22b1には、それぞれ複数の配線32の下側配線32a(図2)、上側配線32b(図2)を介して走査ドライバ29が接続されている。走査ドライバ29は、走査電圧印加部を構成するものであり、画像表示装置10が文字及び画像を含んだ情報を表示面に表示する場合に、複数の各走査電極22a、22bに対して、走査電圧Vdを印加するように構成されている。
また、走査ドライバ29では、基準ドライバ27が基準電極19に対し基準電圧を印加しているときに、上下一対の走査電極22a、22b毎に、導電性液体17が移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体17が信号電圧Vgに応じて移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を走査電圧Vdとして印加するようになっている。そして、画像表示装置10では、例えば図1の上側から下側に向かう方向で上下一対の走査電極22a、22bが選択されることにより、ライン毎の走査動作が行われて、表示情報に応じた表示色に表示面側での表示色が変更されるように構成されている(詳細は後述。)。
また、基準ドライバ27、信号ドライバ28、及び走査ドライバ29には、交流電源または直流電源が含まれており、対応する基準電圧Vs、信号電圧Vg、及び走査電圧Vdを供給するようになっている。
また、基準ドライバ27は、基準電圧Vsの極性を所定の時間毎に切り替えるように構成されている。さらに、走査ドライバ29は、基準電圧Vsの極性の切り替えに対応して、走査電圧Vd(非選択電圧及び選択電圧)の各極性を切り替えるように構成されている。このように、基準電圧Vs及び走査電圧Vdの各極性が所定の時間毎に切り替えられるので、基準電極19及び走査電極22に対して常時同じ極性の電圧を印加するときに比べて、これらの基準電極19及び走査電極22での電荷の局在化を防ぐことができる。さらに、電荷の局在化に起因する表示不良(残像現象)や信頼性(寿命低下)の悪影響を防止することができる。つまり、基準ドライバ27及び走査ドライバ29では、直流電源よりも交流電源を使用する場合の方が、電荷の局在化を容易に防げる点で好ましい。
基準電極19a、19bの表面上には、それぞれ誘電体層20a、20bが積層されている。また、誘電体層20a、20bの表面上には、絶縁性を有する撥水膜21、24がそれぞれ積層されており、導電性液体17またはオイル18に接触するようになっている。
同様に、走査電極22a、22bの表面上には、それぞれ誘電体層23a、23bが積層されている。また、誘電体層23a、23bの表面上には、絶縁性を有する撥水膜26、24がそれぞれ積層されており、導電性液体17またはオイル18に接触するようになっている。
また、信号電極15では、貫通孔H1の周囲の部分が露出されており、導電性液体17に直接的に接するようになっている。また、貫通孔H2の周囲では、誘電体層20b、23bを共に被覆するように積層された撥水膜24が配置されている。さらに、この撥水膜24では、仕切壁W1、W2に気密に接合されることによって、画素単位の液体貯留空間の密閉性が維持されるようになっている。
また、誘電体層20a、20b、23a、23bは、例えばパリレンあるいは酸化アルミナを含有した高誘電体膜により構成されており、層厚は1〜0.1μm程度とされている。また、撥水膜21、24、26には、電圧印加時に導電性液体17に対して親水層となるものが好ましく、具体的にはフッ素系樹脂が好ましい。また、上部空間S1側の誘電体層20a、20bと撥水膜21、24は、透明な材料で構成されている。一方、信号電極15、絶縁シート16、走査電極22、誘電体層23a、23b、及び撥水膜26は、透明な材料でも非透明な材料でもよい。
光散乱体14には、透明な高分子樹脂と、高分子樹脂の内部に添加されるとともに、屈折率が互いに異なる複数種類の微粒子とを含んだ反射シートが使用されており、上部空間S1の内部から導電性液体17が流出して、透明なオイル18が流入されたときに、表示面を紙のような白さで表示可能になっている。具体的には、光散乱体14では、上記高分子樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができ、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)等が用いられる。また、光散乱体14では、上記複数種類の微粒子として、屈折率の大きな酸化チタン、アルミナの微粒子や屈折率の小さい中空ポリマー微粒子を含有されており、光散乱体14の表面から乱反射を発生させ、紙のような白さを現出可能となっている。
なお、上記の説明以外に、ガラス、セラミック等を用いた光散乱体を使用することもできる。
また、光散乱体14の厚さは、10μm〜300μm程度とすることが好ましく、より好ましくは10μm〜100μm、特に50μm前後が好ましい。このように、光散乱体14の厚さを1mm以下の非常に薄いシートとすることにより、所謂ペーパーディスプレイを容易に構成することができる。
また、貫通孔H1、H2の直径は、0.1μm〜100μm程度とされている。また、貫通孔H1、H2の形成方法としては、フォトリソグラフィ法、陽極酸化法、エッチング法、染色法、印刷法等、適宜な形成方法が採用することができる。
上部シート11及び下部シート13では、光散乱体14と同様に、その厚さが10〜300μm程度の薄いシート材が使用されている。また、上部空間S1及び下部空間S2の図2の上下方向での各間隔寸法は、5〜50μm、好ましくは10μm程度である。なお、この間隔寸法は、撥水膜26、24間の寸法である。
次に、上記のように構成された画像表示装置10の表示動作について、具体的に説明する。
基準電極19、走査電極22、及び信号電極15には、例えば以下のように電圧を印加するものとする。すなわち、基準電極19には、基準ドライバ27から常にHigh電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極22には、走査ドライバ29により図1の上側から順次1本ずつLow電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ29は、Low電圧が印加されない残りの全ての走査電極22に対してHigh電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極15には、信号ドライバ28により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
上記のような表示動作を行う場合、基準電極19、走査電極22、及び信号電極15への印加電圧の組み合わせは、表1に示されるものとなる。さらに、導電性液体17の挙動及び表示面側の表示色は、表1に示すように、印加電圧に応じたものとなる。尚、表1では、High電圧及びLow電圧をそれぞれ″H″及び″L″にて略記している(後掲の表でも同様。)。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極15に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、共にHigh電圧が印加されているので、これらの基準電極19と信号電極15との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極15と走査電極22との間では、走査電極22に対して、Low電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。このため、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている走査電極22が設置された下部空間S2側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図2に示した状態から図3に示した状態となるように移動して、上部空間S1側から排出された状態となり、表示面側での表示色は、光散乱体14による白色表示の状態となる。
また、上記のように導電性液体17が、電位差の生じている電極間に引き寄せられるのは、電極間の電位差によって導電性液体17の内部の電荷分布が変化(誘電分離)し、導電性液体17の各々電極側表面の内部において、対応する各電極の極性とは反対の極性の電荷が生じるからである。逆に、電極間に電位差が無い場合には、上述のような導電性液体17内部における電荷分布の変化(誘電分離)が発生しないため、導電性液体17の移動は生じない。以下の説明においても、上述と同様の引き寄せ現象により、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている走査電極22または基準電極15がそれぞれ設置された下部空間S2側または上部空間S1側に移動される。
一方、選択ラインにおいて、信号電極15に対してLow電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、電位差が生じ、信号電極15と走査電極22との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている基準電極19が設置された上部空間S1側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図3に示した状態から図2に示した状態となるように移動して、上部空間S1側の内部に充填された状態となり、表示面側での表示色は、当該導電性液体17による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極15に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極19、信号電極15、及び走査電極22の全ての電極がHigh電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり上部空間S1側または下部空間S2側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極15に対してLow電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極19及び走査電極22の双方に対して、High電圧が印加されているので、基準電極19と信号電極15との間の電位差及び走査電極22と信号電極15との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
以上のように、非選択ラインにおいては、信号電極15がHigh電圧及びLow電圧のいずれかの電圧であっても、導電性液体17は移動せずに、静止して、表示面側での表示色は変化しない。
一方、選択ラインにおいては、信号電極15への印加電圧に応じて、上述のように、導電性液体17を移動させることができ、表示面側での表示色を変更させることができる。
また、画像表示装置10では、表1に示した印加電圧の組み合わせによって、選択ライン上の各画素での表示色は、例えば図4に示すように、各画素に対応する信号電極15への印加電圧に応じて着色または非着色(白色)となる。また、走査ドライバ29が、例えば走査電極22の選択ラインを図4の上から下へ走査動作を行う場合、画像表示装置10の表示部での各画素の表示色もまた同図4の上から下に向かって順次変化することとなる。したがって、走査ドライバ29による選択ラインの走査動作を高速で行うことによって、画像表示装置10において、表示部での各画素の表示色も高速に変化させることが可能となる。さらに、選択ラインの走査動作に同期させて信号電極15への信号電圧Vgの印加を行うことにより、画像表示装置10では、外部からの画像入力信号に基づいて、動画像を含んだ種々の情報を表示することが可能となる。
また、基準電極19、走査電極22、及び信号電極15への印加電圧の組み合わせは、表1に限定されるものではなく、表2に示すものでもよい。
すなわち、基準電極19には、基準ドライバ27から常にLow電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極22には、走査ドライバ29により図1の上側から順次1本ずつHigh電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ29は、High電圧が印加されない残りの全ての走査電極22に対してLow電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極15には、信号ドライバ28により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極15に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、共にLow電圧が印加されているので、これらの基準電極19と信号電極15との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極15と走査電極22との間では、走査電極22に対して、High電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。従って、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている走査電極22が設置された下部空間S2側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図2に示した状態から図3に示した状態となるように移動して、上部空間S1側から排出された状態となり、表示面側での表示色は、光散乱体14による白色表示の状態となる。
一方、選択ラインにおいて、信号電極15に対してHigh電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、電位差が生じ、信号電極15と走査電極22との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている基準電極19が設置された上部空間S1側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図3に示した状態から図2に示した状態となるように移動して、上部空間S1側の内部に充填された状態となり、表示面側での表示色は、当該導電性液体17による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極15に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極19、信号電極15、及び走査電極22の全ての電極がLow電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり上部空間S1側または下部空間S2側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極15に対してHigh電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極19及び走査電極22の双方に対して、Low電圧が印加されているので、基準電極19と信号電極15との間の電位差及び走査電極22と信号電極15との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
以上のように、表2に示した場合でも、表1に示した場合と同様に、非選択ラインにおいては、信号電極15がHigh電圧及びLow電圧のいずれかの電圧であっても、導電性液体17は移動せずに、静止して、表示面側での表示色は変化しない。
一方、選択ラインにおいては、信号電極15への印加電圧に応じて、上述のように、導電性液体17を移動させることができ、表示面側での表示色を変更させることができる。
ここで、上記選択ライン及び非選択ラインを定めることができる基準電圧Vsと、走査電圧Vdについて、具体的に説明する。
すなわち、選択ラインの走査電極22に印加する選択電圧は、基準電極19に印加された基準電圧Vsとの電位差により、導電性液体17をエレクトロウェッティング現象で移動させる可能な電圧であればよい。一方、非選択ラインの走査電極22には、基準電極19に印加された基準電圧Vsとの電位差によっては、導電性液体17が移動しない程度の略同一の電圧であればよい。
具体的には、導電性液体17を移動させるのに必要な閾値電圧をVthとし、選択電圧をVd1とすると、この選択電圧Vd1は、当該選択電圧Vd1と基準電圧Vsとの差の絶対値が閾値電圧Vth以上となるように設定することにより、導電性液体17を移動させることができる。
一方、非選択電圧Vd2とすると、この非選択電圧Vd2は、当該非選択電圧Vd2と基準電圧Vsとの差の絶対値が閾値電圧Vth未満となるように設定することにより、導電性液体17を移動させることなく、静止させることができる。
また、本実施形態では、表1及び表2に示した印加電圧の組み合わせ以外に、信号電極15への印加電圧を、High電圧またはLow電圧の2値だけではなく、例えば下記のMid(Low)電圧やMid(High)電圧を設定して、多段階に変化させることもできる。
<Mid(Low)電圧の印加動作>
図4に例示するように、中央の信号電極15に対して、High電圧とLow電圧との間でLow電圧寄りの電圧であるMid(Low)電圧(以下、″ML電圧″という。)として、例えばML電圧(=1/3×(High電圧−Low電圧)+Low電圧)を印加する。この場合、基準電極19と信号電極15との間の電位差は、Low電圧のときよりも小さくなる。そのため、信号電極15にML電圧が印加された画素では、導電性液体17の上部空間S1側への移動量はLow電圧を印加したときよりも少なくなる。それゆえ、ML電圧が印加された画素の表示色は、着色表示時と白色表示時との中間的な色合いとすることができる。
<Mid(High)電圧の印加動作>
また、図4の右から2番目の信号電極15に対して、High電圧とLow電圧との間でHigh電圧寄りの電圧であるMid(High)電圧(以下、″MH電圧″という。)として、例えばMH電圧(=2/3×(High電圧−Low電圧)+Low電圧)を印加する。この場合、基準電極19と信号電極15との電位差は、ML電圧のときよりも小さくなる。このため、信号電極15にMH電圧が印加された画素では、導電性液体17の上部空間S1側への移動量は、ML電圧を印加したときよりも少なくなる。それゆえ、ML電圧が印加された画素の表示色は、ML電圧印加時の着色表示時と白色表示時との中間的な色合いとすることができる。特に、この場合では、基準電極19と信号電極15との電位差(=High電圧−MH電圧)と、信号電極15と走査電極22との電位差(=MH電圧−Low電圧)との関係は、High電圧−MH電圧<MH電圧−Low電圧となっている。そのため、信号電極15にMH電圧が印加された画素では、導電性液体17は、電位差の大きい走査電極22が設置された下部空間S2側に引き寄せられている。
以上のように、信号電極15への印加電圧を2値以上の多段階とすることで、画素の色合いを多段階に変化させることが可能となる。すなわち、画像表示装置10では、信号電圧Vgを制御することにより、階調表示が可能となる。なお、上記の説明では、選択電圧と非選択電圧との範囲内の電圧値を信号電極15に印加した場合を示したが、上記範囲外の電圧値を信号電圧Vgとして印加することもできる。
以上のように構成された本実施形態では、複数の信号電極15及び複数の走査電極22を互いに交差するように設けて、これらの信号電極15及び走査電極22をマトリクス状に配置している。また、基準ドライバ(基準電圧印加部)27が基準電極19に対して基準電圧Vsを印加しているときに、走査ドライバ(走査電圧印加部)29は、複数の各走査電極22に対して、導電性液体17が液体貯留空間の内部を移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体17が信号電圧Vgに応じて、液体貯留空間の内部を移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を印加するようになっている。つまり、本実施形態では、一つの選択ライン以外では、走査電極22に対し非選択電圧が印加されることにより、導電性液体17の移動を阻止する非選択ラインが設定されるので、画素毎にアクティブ素子を設けることなく、クロストークが発生するのを防止することができる。この結果、本実施形態では、構造簡単でコスト安価に表示素子及び画像表示装置10を構成することができるとともに、クロストークに起因するコントラストの低下及び表示品位の低下を防ぐことが可能な高性能な表示素子及び画像表示装置10を提供することができる。
また、本実施形態では、基準電極19及び走査電極22がそれぞれ上部シート(上部層)11及び下部シート(下部層)13に設けられている。また、表示面側の表示色が、上部空間S1側または下部空間S2側に導電性液体17を移動させることにより、変更されている。これにより、本実施形態では、基準電圧及び選択電圧が基準電極19及び走査電極22に対しそれぞれ印加されたときに、導電性液体17を変形させることなく、液体貯留空間の内部で上部空間側または下部空間側に移動させることができる。従って、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことができる。
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、基準電極及び走査電極をそれぞれ下部空間側及び上部空間側に設けた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図5に示すように、本実施形態では、基準電極19が下部空間S2側に設けられ、走査電極22が上部空間S1側に設けられている。また、本実施形態の導電性液体17’は、所定色に着色された着色液体ではなく、光散乱液体である。詳細には、導電性液体17’には、顔料等が添加されておらず、酸化チタン粒子、中空粒子等の光散乱粒子が混入され、導電性液体17’が外光を散乱反射する光散乱液体とされている。そして、図5に示すように、導電性液体17’が上部空間S1側に移動されたときに、表示面側での表示色は白色表示となる。
一方、オイル18’には、RGBのいずれかの色の顔料等が添加されており、導電性液体17’の移動に伴い、オイル18’が上部空間S1側に移動されたときに、表示面側での表示色はRGBの対応する着色表示が行われる。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。尚、本実施形態では、上記のように、導電性液体17’内の光散乱粒子によって白色表示が行われるので、光散乱体14に代えて、透明または非透明な絶縁材料を用いて構成することもできる。
尚、導電性液体とオイルとの組み合わせは、上記第1及び第2の実施形態のものに限定されるものではなく、例えば着色と着色、着色と透明、着色と光散乱粒子による白色、透明と着色、透明と光散乱粒子による白色、光散乱粒子による白色と着色、または光散乱粒子による白色と透明とのいずれかの組み合わせを選択することができる。
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、上部空間の一端部側と下部空間の一端部側とを連通する第1の連通空間と、上部空間の他端部側と下部空間の他端部側とを連通する第2の連通空間とを設けた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図6に示すように、本実施形態では、貫通孔H1の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の左端部側に連通するように形成されている。また、貫通孔H2の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の右端部側に連通するように形成されている。そして、本実施形態では、図6に示すように、各画素での上記液体貯留空間の断面形状が枠状に構成されている。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、液体貯留空間の断面形状が枠状に構成されているので、導電性液体17を移動させる際に当該液体貯留空間の内部で導電性液体17を容易に循環させて移動させることができ、上記表示面側の表示色の変更速度を容易に高速化することが可能となる。
[第4の実施形態]
図7(a)は、第4の実施形態にかかる表示素子を用いた画像表示装置を説明する概略構成図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、基準電極を複数の領域に分割した点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図7(a)に示すように、本実施形態の画像表示装置10Aでは、表示部の表示面が上下2つに分割可能となるように、2つの基準電極190a、190bが用いられている。また、基準電極190aの領域に対応するドライバとして、基準ドライバ270a、信号ドライバ280a、及び走査ドライバ290aが設けられている。そして、基準ドライバ270aは、基準電極190aに対して基準電圧Vsを印加し、信号ドライバ280a及び走査ドライバ290aは、基準電極190aの領域内に設けられた信号電極15及び走査電極22に対して、信号電圧Vg及び走査電圧Vdをそれぞれ印加するように構成されている。
同様に、基準電極190bの領域に対応するドライバとして、基準ドライバ270b、信号ドライバ280b、及び走査ドライバ290bが設けられている。そして、基準ドライバ270bは、基準電極190bに対して基準電圧Vsを印加し、信号ドライバ280b及び走査ドライバ290bは、基準電極190bの領域内に設けられた信号電極15及び走査電極22に対して、信号電圧Vg及び走査電圧Vdをそれぞれ印加するように構成されている。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、基準電極の領域毎に、基準ドライバ、信号ドライバ、及び走査ドライバを設けているので、各ドライバでの処理負荷を軽減することが可能となる。また、画像表示装置の大型化(大画面化)にも容易に対応することができる。
尚、上記の説明では、基準電極を2つの領域に分けた場合について説明したが、基準電極の領域数はこれに限定されない。また、図7(b)に例示するように、予め定められた情報が表示される領域を設定することもできる。
つまり、図7(b)において、画像表示装置10Bでは、上部側に予め定められた柄、文字などのキャラクタ(例えば、「ABC」)を表示するキャラクタ表示領域310が設定されている。このキャラクタ表示領域310では、単に上記キャラクタを表示または非表示のいずれかを行う領域であり、表示または非表示を選択的に行わせるキャラクタ用ドライバ300が設けられている。
さらに、画像表示装置10Bでは、キャラクタ表示領域310の下側に、基準電極190cが設けられている。そして、この画像表示装置10Bでは、基準電極190cの領域に対応して、基準ドライバ270c、信号ドライバ280c、及び走査ドライバ290cが設置されており、上記の各実施形態と同様に、画像入力信号に応じて情報を表示できるようになっている。
尚、上記第1〜第4の各実施形態では、基準電極に、面状の導電膜を用いた場合について説明したが、帯状の導電膜を用いてもよい。但し、上記の各実施形態のように、面状の導電膜を用いる場合の方が、基準電極の成膜工程を簡単化して、当該基準電極を容易に形成することが可能となり、表示素子及び画像表示装置の製造コストを低減することができる点で好ましい。
[第5の実施形態]
図8は、本発明の第5の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、下部シート上に帯状の基準電極と帯状の走査電極とを交互に設けた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図8に示すように、本実施形態の画像表示装置50では、複数の信号電極57がX方向に沿ってストライプ状に設けられている。また、画像表示装置50では、複数の走査電極58及び複数の基準電極59が交互に、かつY方向に沿ってストライプ状に設けられている。また、各信号電極57、各走査電極58、各基準電極59には、帯状のアルミニウムなどの導電膜が用いられている。また、複数の信号電極57と複数の走査電極58とは、互いに交差するように設けられており、これらの信号電極57と走査電極58との交差部に画素領域が設定されている。
また、信号電極57、走査電極58、及び基準電極59では、各々一端部側が表示面の有効表示領域の外側に引き出されて、端子部57a、58a、及び59aが形成されている。
信号電極57の端子部57aには、配線61を介して信号ドライバ54が接続されており、上記実施形態のものと同様に、表示情報に応じた信号電圧Vgが印加されるようになっている。
また、走査電極58の端子部58aには、配線62を介して走査ドライバ55が接続されており、上記実施形態のものと同様に、走査電圧Vdが印加されることによって走査動作が行われるようになっている。すなわち、走査ドライバ55は、導電性液体17が液体貯留空間の内部で移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体17が信号電圧Vgに応じて液体貯留空間の内部で移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を走査電圧Vdとして印加可能に構成されている。そして、走査ドライバ55は、例えば図の左側から右側の各走査電極58に対して、選択電圧を順次印加することにより、上記実施形態のものと同様な走査動作を実施する。
基準電極59の端子部59aには、配線63を介して基準ドライバ27が接続されており、上記実施形態のものと同様に、所定の基準電圧Vsが印加されるようになっている。
また、走査電極58及び基準電極59は、下部シート53側に設けられるとともに、信号電極57は、下部空間S2を挟んで走査電極58及び基準電極59と対向するように、中間層側に設けられている。具体的には、図9及び図10も参照して、表示面側には、透明な上部シート51が設けられており、この上部シート51の上部空間S1側には、透明な撥水膜67が積層されている。
また、下部シート53の表示面側の表面には、走査電極58及び基準電極59が並設されており、走査電極58及び基準電極59には、誘電体層65及び撥水膜66がこの順番で順次積層されている。
また、信号電極57は、光散乱体52の非表示面側の表面上に形成されており、光散乱体52及び信号電極57は撥水膜64にて被覆されて、中間層が構成されている。
また、上部空間S1、下部空間S2、及び貫通孔H1、H2にて形成される液体貯留空間では、上記第3の実施形態のものと同様に、その断面形状が枠状に構成されている。つまり、貫通孔H1の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の左端部側に連通し、貫通孔H2の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の右端部側に連通している。また、隣接する画素は、仕切壁Wで互いに区切られており、各画素領域の液体貯留空間は、気密に密閉されている。
また、液体貯留空間の内部には、導電性液体17と、第1の絶縁性流体としてのオイル18と、第2の絶縁性流体としての水60とが移動可能に封入されている。水60は、顔料や染料などにより、RGBのいずれかの色に着色されている。但し、この水60には、電解質を混合していないため、上記のように第2の絶縁性流体として機能するようになっている。すなわち、水60は、導電性液体17と異なり、走査電極58などの上記電極に対応する電圧が印加されたときでも、水60自体は移動されないようになっており、表示素子の駆動に影響しない。
一方、導電性液体17は、走査電極58と基準電極59との間でスライド移動可能に構成されており、図9及び図10にそれぞれ示すように、走査電極58側及び基準電極59側のいずれか一方側に移動して、白色表示または水60による着色表示を行わせるようになっている(詳細は後述。)。
ここで、図11〜図15を参照して、本実施形態の表示素子の製造工程を具体的に説明する。
まず、下部シート53側の形成工程について、図11を用いて説明する。
図11(a)において、下部シート53には、例えば厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(旭ガラス社製)が用いられており、スパッタ法にて膜厚100nmのITO膜を下部シート53上に成膜することによって走査電極58及び基準電極59を形成する。なお、走査電極58及び基準電極59は、透明なITO膜以外の非透明な金属薄を使用することもできる。
その後、図11(b)に示すように、下部シート53、走査電極58、及び基準電極59の上方に、誘電体層65としてアモルファス酸化チタンTi−44(ラサ工業社製)をスピンコーティング法にて成膜した。この誘電体層65の膜厚は200nmとした。
そして、図11(c)に示すように、誘電体層65の表面に対して、フロロテクノロジー社製の撥水膜FG−5010をディッピング法もしくはスピンコーティング法によって塗布して、80℃で30分間焼成することにより、撥水膜66を成膜した。撥水膜66の膜厚は、20nmとした。
以上のように、走査電極58及び基準電極59を同一基板上に同時にパターニングして形成しているので、上記の実施形態に比べて、表示素子の製造プロセスの簡略化することができ、コスト低減を実現することができる。
続いて、上記中間層の形成工程について、図12を参照して具体的に説明する。
図12(a)において、光散乱体52には、例えばフジコピアン社製の反射シート(厚さ30μm)が用いられている。この光散乱体52は、PET樹脂に酸化チタンの微粒子が練り込まれており、酸化チタンの微粒子により白色が発現されている。また、光散乱体52の表面には、アルミニウムを膜厚100nmで蒸着することにより、信号電極57を形成した。この信号電極57は透明電極を用いてよいが、今回は光散乱体52の膜厚が薄いため、反射率を向上させるためにアルミニウムを使用した。
次に、図12(b)に示すように、多数の孔を形成したマスクを用いて、エキシマレーザ加工を行うことにより、幅30μm、深さ30μmの貫通孔H1、H2を形成した。なお、エキシマレーザ加工に代えてマイクロドリル加工法で貫通孔H1、H2を設けることもできた。
次に、図12(c)に示すように、光散乱体52及び信号電極57の表面に対して、フロロテクノロジー製の撥水膜をディッピング法により成膜することで撥水膜64を設けた。なお、貫通孔H1、H2の間の光散乱体52w、信号電極57w、及び撥水膜64wは、後述のスペーサと一体化されて上記仕切壁Wとされる。
続いて、上部シート51側の形成工程について、図13を用いて説明する。
図13(a)において、上部シート51には、例えば厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(旭ガラス社製)が用いられている。そして、図13(b)に示すように、上部シート51の表面に対して、フロロテクノロジー社製の撥水膜をディッピング法もしくはスピンコーティング法により成膜することで撥水膜67を設けた。なお、上記無アルカリガラス基板に代えて、上部シート51に透明な樹脂シートを用い、下部シート53に樹脂シートを用いてもよい。
次に、下部シート53と中間層とを組み付ける製造工程について、図14を用いて説明する。
図14(a)において、撥水膜66の表面上に対して、白色のUV硬化樹脂を用いた樹脂スペーサ68を形成した。この樹脂スペーサ68では、幅及び高さを10μmとした。これにより、Gapが10μmの下部空間S2が、撥水膜66の表面上に形成される。
つまり、図14(b)に示すように、樹脂スペーサ68上に上記中間層の光散乱体52w、信号電極57w、及び撥水膜64wを載置することにより、下部空間S2が撥水膜66と中間層との間に形成される。
そして、図14(b)に示すように、撥水膜64wの上方に対して、白色のUV硬化樹脂を用いた樹脂スペーサ69を設けた。この樹脂スペーサ69では、幅及び高さを10μmとした。これにより、Gapが10μmの上部空間S1が、中間層の上方に形成される。その後、信号電極57、走査電極58、及び基準電極59を、信号ドライバ54、走査ドライバ55、及び基準ドライバ56に接続した。また、走査ドライバ55及び基準ドライバ56は、例えば周波数10kHzでAC3.5Vの電圧を印加可能に構成されている。
次に、表示素子の最終の製造工程について、図15を用いて説明する。
図15(a)において、各画素領域の液体貯留空間に対して、互いに混じり合わない、脂肪族アミンからなる常温溶融塩で非水の導電性液体(広栄化学工業株式会社製 商品名:IL−A4)17と、オイル(キシダ化学製 n−ドデカン)18、水60を充填した。また、水60には、RGBのいずれかの顔料を分散して着色した。
続いて、図15(b)に示すように、樹脂スペーサ69の上方に対して、撥水膜67が接するように、上部シート51側を接合することで表示素子が完成される。
以下、上記のように構成された本実施形態での表示動作について、具体的に説明する。
基準電極59、走査電極58、及び信号電極57には、例えば以下のように電圧を印加するものとする。すなわち、基準電極59には、基準ドライバ56から常にHigh電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極58には、走査ドライバ55により図8の左側から順次1本ずつLow電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ55は、Low電圧が印加されない残りの全ての走査電極58に対してHigh電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極57には、信号ドライバ54により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
上記のような表示動作を行う場合、基準電極59、走査電極58、及び信号電極57への印加電圧の組み合わせは、表3に示されるものとなる。さらに、導電性液体17の挙動及び表示面側の表示色は、表3に示すように、印加電圧に応じたものとなる。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極57に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、共にHigh電圧が印加されているので、これらの基準電極59と信号電極57との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極57と走査電極58との間では、走査電極58に対して、Low電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。このため、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている走査電極58側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図9に示した状態となり、オイル18を上部空間S1側に移動させる。これにより、表示面側での表示色は、光散乱体52による白色表示の状態となる。
一方、選択ラインにおいて、信号電極57に対してLow電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、電位差が生じ、信号電極57と走査電極58との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている基準電極59側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図10に示した状態に移動して、上部空間S1側の内部に水60を移動させる。これにより、表示面側での表示色は、水60による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極57に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極59、信号電極57、及び走査電極58の全ての電極がHigh電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり走査電極58側または基準電極59側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極57に対してLow電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極59及び走査電極58の双方に対して、High電圧が印加されているので、基準電極59と信号電極57との間の電位差及び走査電極58と信号電極57との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
また、基準電極59、走査電極58、及び信号電極57への印加電圧の組み合わせは、表3に限定されるものではなく、表4に示すものでもよい。
すなわち、基準電極59には、基準ドライバ56から常にLow電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極58には、走査ドライバ55により図8の左側から順次1本ずつHigh電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ55は、High電圧が印加されない残りの全ての走査電極58に対してLow電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極57には、信号ドライバ54により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極57に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、共にLow電圧が印加されているので、これらの基準電極59と信号電極57との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極57と走査電極58との間では、走査電極58に対して、High電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。従って、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている走査電極58側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図9に示した状態となり、オイル18を上部空間S1側に移動させる。これにより、表示面側での表示色は、光散乱体52による白色表示の状態となる。
一方、選択ラインにおいて、信号電極57に対してHigh電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、電位差が生じ、信号電極57と走査電極58との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている基準電極59側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図10に示した状態に移動して、上部空間S1側の内部に水60を移動させる。これにより、表示面側での表示色は、水60による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極57に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極59、信号電極57、及び走査電極58の全ての電極がLow電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり上部空間S1側または下部空間S2側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極57に対してHigh電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極59及び走査電極58の双方に対して、Low電圧が印加されているので、基準電極59と信号電極57との間の電位差及び走査電極58と信号電極57との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
尚、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、信号電極57に対して、例えばHigh電圧とLow電圧との間の電圧レベルの信号電圧Vgを印加することにより、階調表示を行うことができる。
次に、図16を参照して、基準電極59、走査電極58、及び信号電極57への対応する電圧の印加動作について、説明する。尚、以下の説明では、説明の簡略化のために、各々3本の基準電極59、走査電極58、及び信号電極57の場合を例示する。
図16(a)〜(c)にそれぞれ示すように、3本の基準電極59には、常にHigh電圧が印加されている。
また、3本の走査電極58では、図16(d)〜(f)にそれぞれ示すように、1フレーム期間内で、一定時間t0の間のみ、選択電圧としてのLow電圧が順次印加されている。また、一定時間t0以外の期間では、非選択電圧としてのHigh電圧が印加されている。なお、一定時間t0は、1フレーム期間の時間を走査電極58の設置数(走査線数)にて除算することにより、求められる。
また、3本の信号電極57では、図16(g)〜(i)にそれぞれ示すように、外部からの画像入力信号に応じたHigh電圧またはLow電圧が信号電圧Vgとして印加されている。しかしながら、表示素子では、各走査電極58に対して選択電圧が印加されているときのみ、信号電極57では印加された信号電圧Vgが有効な印加電圧となる。つまり、3本の信号電極57と3本の走査電極58との交差部にある画素領域では、第1及び第2のフレーム期間での表示色はそれぞれ表5及び表6に示すものとなる。尚、表5及び表6では、図8の左側から右側に向かって第1〜第3の走査電極58が設けられるとともに、図8の上側から下側に向かって第1〜第3の信号電極57が設けられ、かつ、第1の走査電極58から順次走査動作が行われたときでの画素領域の表示色を示している。さらに、第1のフレーム期間前では、各画素領域の表示色は、水60による着色表示が行われているものとする。
以上のように構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、下部シート53に対して、走査電極58及び基準電極59を同時に形成することができるので、表示素子の製造コストを容易に低減することができる。また、導電性液体17が下部空間S2の内部でのみスライド移動されることにより、表示色の変更動作が行われている。すなわち、本実施形態では、導電性液体17が2次元的に移動されることで表示色の変更動作が行われているので、導電性液体17を変形させることなく、当該導電性液体17を移動させている点とも相まって、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことができ、さらには、導電性液体17の駆動電圧を低減することができる。
[第6の実施形態]
図17は、本発明の第6の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第5の実施形態との主な相違点は、透明な透明シートを用いて、中間層及び下部シート側を構成するとともに、当該下部シートの背面側にバックライトを設けた点である。なお、上記第5の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図17に示すように、本実施形態では、中間層が透明な透明シート70、透明な信号電極57、及び透明な撥水膜64にて形成されている。また、下部シート53には、透明なシート材が用いられており、この下部シート53上の走査電極58、誘電体層65、及び撥水膜66もまた透明な材料が用いられている。
また、基準電極59は、図17に例示するように、略U字状に構成されており、下部空間S2には、U字状の基準電極59に応じた液溜空間S21が形成されている。この液溜空間S21の上方、例えば上部シート51には、遮光膜(図示せず)が設けられており、液溜空間S21の内部に導電性液体17が移動されているときでも、その導電性液体17による着色がユーザに視認されるのを防ぐようになっている。
また、下部シート53と走査電極58との間には、下部層に含まれた透明シート71が設置されている。また、液体貯留空間の内部には、着色されていない水60’が封入されており、さらには下部シート53の下側(背面側)に、白色の照明光を発光するバックライト72が設けられている。そして、走査電極58の上方のみが、各画素の有効表示領域として機能するようになっている。すなわち、図17に示すように、導電性液体17が液溜空間S21の内部に移動されているときは、バックライト72からの白色光による白色表示が行われる。
一方、図18に示すように、導電性液体17が走査電極58側にスライド移動されると、当該導電性液体17による着色表示が行われる。
以上の構成により、本実施形態では、第5の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、バックライト72を設けて、透過型の表示素子を構成しているので、バックライト72からの照明光により白色表示を行うことができ、外光が不十分な場合や夜間などでも、適切な表示動作を行うことができる。これにより、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、導電性液体17による着色表示を行うときに、バックライト72からの照明光を照射することにより、当該着色表示の表示品位を容易に向上させることができる。
なお、上記の説明以外に、バックライト72の発光色を変更することにより、表示面側の表示色を当該発光色に応じて変更することができる。また、バックライト72を用いることにより、表示素子の輝度を容易に変更することができ、調光範囲が大きく、かつ、高精度な階調制御を行える表示素子を簡単に構成することができる。
[第7の実施形態]
図19は、本発明の第7の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第6の実施形態との主な相違点は、下部層に光散乱体と透明シートとを並設した点である。なお、上記第6の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図19に示すように、本実施形態では、下部シート53と走査電極58との間には、下部層に含まれた透明シート71と光散乱体52とが図の左右方向で互いに並設されている。
以上の構成により、本実施形態では、第6の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、透明シート71及び光散乱体52と、バックライト72とを設けて、半透過型の表示素子を構成しているので、光散乱体52による外光の反射光及びバックライト72からの照明光にて白色表示を行うことができ、適切な表示動作を行うことができる。これにより、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、外光を併用できるので、バックライト72の消費電力を低減することができる。
尚、上記第5〜第7の各実施形態では、走査電極58及び基準電極59を下部シート53側に設けるとともに、信号電極57が下部空間S2を挟んで走査電極58及び基準電極59と対向するように中間層側に設けた構成について説明した。しかしながら、走査電極58及び基準電極59を中間層側や上部シート51側に設けたり、信号電極57を上部シート51側や下部シート53側に設けたりすることもできる。但し、基準電極59及び走査電極57を下部シート53及び中間層の一方側に設けるとともに、信号電極57を下部シート53及び中間層の他方側に設ける場合の方が好ましい。つまり、上記の各実施形態のように、下部空間S2側に信号電極57、走査電極58、及び基準電極59を設ける場合の方が、表示面側での開口率(有効表示領域)を容易に向上できる点で好ましい。また、信号電極57と走査電極58及び基準電極59とが互いに対向配置させる場合の方が、導電性液体17の駆動電圧を容易に低減できる点で好ましい。
また、上記第5〜第7の各実施形態の説明以外に、互いに混じり合わない4種類以上の流体を使用することもできる。このように構成した場合には、一つの画素において、互いに異なる三色以上の表示色を表示させることができる。
また、上記第6及び第7の実施形態の説明以外に、例えば図6に示した第3の実施形態の表示素子において、貫通孔H1、H2のいずれか一方の表示面側に遮光膜を形成することにより、第6及び第7の実施形態と同様に、透過型及び半透過型の表示素子を構成することができる。
尚、上記の実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上記の説明では、カラー画像表示を表示可能な表示部を備えた画像表示装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は文字及び画像を含んだ情報を表示する表示部が設けられた電気機器であれば何等限定されるものではなく、例えば電子手帳等のPDAなどの携帯情報端末、パソコンやテレビなどに付随する表示装置、あるいは電子ペーパーその他、各種表示部を備えた電気機器に好適に用いることができる。
また、上記の説明では、導電性液体への電界印加に応じて、当該導電性液体を移動させるエレクトロウェッティング方式の表示素子を構成した場合について説明したが、本発明の表示素子は、これに限定されるものではなく、外部電場を利用して、液体貯留空間の内部で導電性液体を動作させることにより、表示面側の表示色を変更可能な電界誘導型の表示素子であれば何等限定されるものではなく、電気浸透方式、電気泳動方式、誘電泳動方式などの他の方式の電界誘導型表示素子に適用することができる。
但し、上記各実施形態のように、エレクトロウェッティング方式の表示素子を構成する場合の方が、導電性液体を低い駆動電圧で高速に移動させることが可能となり、表示面での表示色の切換速度の高速化及び省力化を容易に図ることができる。それ故、動画表示を容易に行うことが可能で、表示性能に優れた表示素子を容易に構成することができる点で好ましい。また、エレクトロウェッティング方式の表示素子では、導電性液体の移動に応じて表示色が変更されるので、液晶表示装置等と異なり、視野角依存性がない点でも好ましい。
また、上記の説明では、RGBの各色の画素領域を含んだ表示面を構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の画素領域が、表示面側でフルカラー表示が可能な複数の原色に応じてそれぞれ設けられているものであればよい。具体的には、上記RGBの画素領域に代えて、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のCMYの色にそれぞれ着色された導電性液体が封入される液体貯留空間を設け、CMYの各色の画素領域を構成してもよい。但し、CMYの画素領域を構成する場合には、RGBの場合に比べて、黒色表示の表示品位が低下するおそれがあるため、黒色に着色された導電性液体を有する黒色表示用の画素領域を設置する場合の方が好ましい。さらに、RGB、CMY以外の表示面においてカラー画像表示が可能な複数の原色、例えば、RGBYC(五色)、RGBC(四色)、RGBY(四色)、GM(二色)等の組合せに対応した所定色に着色された導電性液体を使用することもできる。
また、上記の説明では、導電性液体にイオン性液体を用いた場合について説明したが、本発明の導電性液体はこれに限定されるものではなく、例えばアルコール、アセトン、ホルムアミド、エチレングリコール、水、それらの混合物からなる導電性液体を使用することもできる。
また、上記の説明では、無極性のオイルを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、導電性液体と混じり合わない絶縁性流体であればよく、例えばオイルに代えて、空気を使用してもよい。また、オイルとして、シリコーンオイル、脂肪系炭化水素などを使用することができる。但し、上記実施形態のように、イオン性液体と相溶性がない無極性のオイルを用いた場合、空気とイオン性液体とを用いる場合よりは、無極性のオイル中でイオン性液体の液滴がより移動し易くなり、イオン性液体(導電性液体)を高速移動させることが可能となり、表示色を高速に切り換えられる点で好ましい。
また、上記の説明では、基準電極及び走査電極を上部シートや下部シートなどの絶縁シートの表面上に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁材料からなる上記シートの内部に埋設した基準電極及び走査電極を用いることもできる。このように構成した場合には、シートを誘電体層として兼用させることができ、当該誘電体層の設置を省略することも可能となる。
本発明にかかる表示素子及びこれを用いた電気機器は、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができるので、優れた表示性能を有し、かつ構造簡単でコスト安価な表示素子及び電気機器を提供することができる。
本発明は、導電性液体を移動させることにより、画像や文字などの情報を表示する表示素子、及びこれを用いた電気機器に関する。
従来より、透明もしくは着色液体の移動現象を利用して表示を行う表示素子が提案されている。例えば、外部電場を利用して液体を移動させて表示する表示素子には、電気浸透方式とエレクトロウェッティング方式のものがある。
電気浸透方式の表示素子では、多孔質体の表面の液体含浸率を制御して外光を散乱させ、外光に対する光反射率や光透過率を制御するようになっている。また、この電気浸透方式の表示素子では、予め多孔質体と透明液体の屈折率を一致させておき、多孔質体の貫通孔(細孔)内に液体を満たすことで透明とし、貫通孔から液体を流出させることで光散乱が生じるように構成されている。
エレクトロウェッティング方式の表示素子では、細孔内の液体に対する電界印加により液体の界面張力を変化させ、電気毛管現象(エレクトロウェッティング現象)で当該液体を移動させるようになっている。詳細には、細孔の内面に設けられた一対の電極間のスイッチが閉じられて、液体に電界が印加されると、液体の細孔内面に対する濡れ性が変化し、液体の細孔内面に対する接触角が減少して、液体は細孔内を移動していく。一方、スイッチが開かれて、液体に対する電界印加が停止されると、細孔内面に対する液体の濡れ性が変化して接触角は急激に増大して、液体は細孔から流出される。
ところで、上記のような表示素子において、動画表示を行うためには、細孔内で液体を高速、かつ低電圧で移動させることが求められている。この点から電気浸透方式とエレクトロウェッティング方式とを比較した場合、エレクトロウェッティング方式の方が液体を高速に移動させることが可能であり、動画表示により適している。
また、従来の表示素子では、例えば下記特開平10−39799号公報に記載されているように、エレクトロウェッティング現象を用いた画像表示装置が提供されている。
具体的には、図20に示すように、上記従来の表示素子は、透明なシートにより構成されるとともに、図20の上側(表示面側)から所定間隔をおいて順次配置された第1、第2、第3シート1、2、3を備えている。第1シート1と第2シート2との間には、上側通路4が設けられ、第2シート2と第3シート3との間には、下側通路5が設けられている。また、第2シート2には、上側通路4及び下側通路5を連通するリザーバ6、7が設けられている。さらに、上側通路4、下側通路5、リザーバ6、7の内部には、所定色に着色された導電性液体L1と透明な透明液体L2とが密封されている。
また、この従来の表示素子では、第1電極8A及び8Bが上側通路4を挟むように第1シート1の下面側及び第2シート2の上面側にそれぞれ設置されている。また、上側通路4内には、第2電極9がリザーバ6の上端開口と対向する位置に設置されている。これら第1電極8A、8Bと第2電極9とには、図20に示すように、直流電源が接続されており、導電性液体L1に対して電界印加を行えるようになっている。
上記のように構成された従来の表示素子では、第1電極8A、8Bと第2電極9との間の回路を閉じて、これらの電極間に電圧を印加することにより、上側通路4内の透明液体L2を下側通路5側に移動させるとともに、リザーバ6側から上側通路4側に導電性液体L1を移動させて、表示面側を上記所定色としている。
一方、上記回路を開くことにより、上側通路4側からリザーバ6側に導電性液体L1を戻させるとともに、透明液体L2をリザーバ7側から上側通路4側に移動させて、表示面側を透明表示としている。
ところで、上記のような従来の表示素子では、その駆動方式として、例えば単純マトリクス方式(パッシブマトリクス方式)やアクティブマトリクス方式を適用することができる。
単純マトリクス方式は、液晶ディスプレイ等でも良く知られているように、X方向でストライプ状にパターニングされたX電極と、Y方向でストライプ状にパターニングされたY電極との2層の電極を格子状に設けている。そして、単純マトリクス方式では、上記X電極とY電極とにタイミングよく電圧パルスを印加することにより、TFT(Thin Film Transistor)等のアクティブ素子を用いることなく、X電極とY電極との各交差部にある画素に表示動作を行わせるようになっており、構造が単純でコスト安価な表示素子を製造可能とされている。
しかしながら、上記のような単純マトリクス方式では、周知のように、X電極の夫々に電圧を順次印加することにより、X電極を1ラインずつ選択するとともに、選択ラインに対応する入力電圧をY電極に印加する走査表示が行われている。このため、単純マトリクス方式では、漏れ電流などの影響により選択ラインに隣接する非選択ラインにも若干の電圧が掛かり半選択状態となってクロストークの問題が生じることがあった。
一方、アクティブマトリクス方式では、各画素にTFT等のスイッチング素子やダイオード素子を設けることによって画素毎に付加される電圧を制御することが可能となり、クロストークの問題を解決している。しかしながらこのアクティブマトリクス方式では、上記のようなアクティブ素子を画素毎に設けているので、表示素子の製造プロセスが複雑化したり、部品点数が増加したりして、表示素子のコストアップが生じるという新たな問題点が発生した。
上記の課題を鑑み、本発明は、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができる表示素子、及びこれを用いた電気機器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる表示素子は、表示面側に設けられた透明な上部層と、
所定の上部空間が前記上部層との間に形成されるように、当該上部層の背面側に設けられた中間層と、
所定の下部空間が前記中間層との間に形成されるように、当該中間層の背面側に設けられた下部層と、
前記上部空間と前記下部空間とが連通するように、前記中間層に設けられた連通空間と、
前記上部空間、前記下部空間、及び前記連通空間によって形成された液体貯留空間の内部に移動可能に封入された導電性液体を具備するとともに、前記導電性液体を移動させることにより、前記表示面側の表示色を変更可能に構成された表示素子であって、
前記上部層または前記下部層に設けられた基準電極と、
前記中間層に設けられた複数の信号電極と、
前記複数の信号電極と交差するように、前記上部層または前記下部層に設けられた複数の走査電極と、
前記基準電極に接続されて、前記基準電極に対し、所定の基準電圧を印加する基準電圧印加部と、
前記複数の信号電極に接続されるとともに、前記複数の各信号電極に対して、前記表示面に表示される情報に応じた信号電圧を印加する信号電圧印加部と、
前記複数の走査電極に接続されるとともに、前記基準電圧印加部が前記基準電極に対し前記基準電圧を印加しているときに、前記複数の各走査電極に対して、前記導電性液体が前記液体貯留空間の内部を移動するのを阻止する非選択電圧と、前記導電性液体が前記信号電圧に応じて、前記液体貯留空間の内部を移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を印加する走査電圧印加部とを備えていることを特徴とするものである。
上記のように構成された表示素子では、複数の信号電極及び複数の走査電極が互いに交差するように設けられてマトリクス状に配置されている。また、基準電圧印加部が基準電極に対し基準電圧を印加しているときに、複数の各走査電極に対して、導電性液体が液体貯留空間の内部を移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体が上記信号電圧に応じて、液体貯留空間の内部を移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を印加する走査電圧印加部が設けられている。これにより、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができる。
また、上記表示素子において、前記表示面には、複数の画素領域が設定されるとともに、
前記複数の各画素領域は、前記信号電極と前記走査電極との交差部単位に設けられ、かつ、前記各画素領域では、前記液体貯留空間が仕切壁によって区切られてもよい。
この場合、表示面の複数の各画素において、クロストークを生じることなく、導電性液体を移動させて、表示面側での表示色を画素単位に変更することが可能となる。
また、上記表示素子において、前記複数の画素領域が、前記表示面側でフルカラー表示が可能な複数の原色に応じてそれぞれ設けられていることが好ましい。
この場合、複数の各画素において対応する導電性液体が適切に移動されることにより、カラー画像表示を行うことができる。
また、上記表示素子において、前記基準電圧印加部は、前記基準電圧の極性を所定の時間毎に切り替えるとともに、
前記走査電圧印加部は、前記基準電圧の極性の切り替えに対応して、前記非選択電圧及び前記選択電圧の各極性を切り替えることが好ましい。
この場合、上記基準電極及び走査電極に対して常時同じ極性の電圧を印加するときに比べて、これらの基準電極及び走査電極での電荷の局在化を防ぐことができる。
また、上記表示素子において、前記信号電圧印加部は、外部からの画像入力信号に基づいて、前記信号電圧の大きさを変更してもよい。
この場合、表示面では上記画像入力信号に応じた階調表示が行われる。
また、上記表示素子において、前記基準電極は、前記上部層または前記下部層のどちらか一方側に設けられ、かつ、
前記走査電極は、前記上部層または前記下部層のうち、前記基準電極が設けられていない他方側に設けられるとともに、
前記表示面側の表示色が、前記上部空間側または前記下部空間側に前記導電性液体を移動させることにより、変更されてもよい。
この場合、上記基準電圧及び選択電圧が基準電極及び走査電極に対しそれぞれ印加されたときに、導電性液体を変形させることなく、液体貯留空間の内部で上部空間側または下部空間側に移動させることができる。従って、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことが可能となる。
また、上記表示素子において、前記基準電極には、面状の導電膜が用いられてもよい。
この場合、基準電極を容易に形成することが可能となり、表示素子の製造コストを低減することができる。
また、上記表示素子において、前記液体貯留空間の内部には、前記導電性液体と混じり合わない絶縁性流体が当該液体貯留空間の内部を移動可能に封入されていることが好ましい。
この場合、導電性液体の移動速度の高速化を容易に図ることができる。
また、上記表示素子において、前記基準電極及び前記走査電極は、前記上部層または前記下部層に設けられるとともに、
前記表示面側の表示色が、前記基準電極側または前記走査電極側に前記導電性液体を移動させることにより、変更されることが好ましい。
この場合、基準電極及び走査電極を同時に形成することができ、表示素子の製造コストを容易に低減することができる。また、導電性液体を変形させることなく、当該導電性液体を移動させて、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことができる。さらには、導電性液体が上記上部空間の内部または下部空間の内部でのみ移動されることにより、表示色の変更動作が行われるので、導電性液体の駆動電圧を低減することができる。
また、上記表示素子において、前記基準電極及び前記走査電極は、前記下部層または前記中間層のどちらか一方側に設けられるとともに、
前記信号電極が、前記下部空間を挟んで前記基準電極及び前記走査電極と対向するように、前記下部層または前記中間層の他方側に設けられてもよい。
この場合、表示面側に基準電極、走査電極、及び信号電極のいずれの電極も設けられていないので、当該表示面側での開口率(有効表示領域)を容易に向上できる。また、信号電極と基準電極及び走査電極とが互いに対向しているので、導電性液体の駆動電圧を容易に低減することができる。
また、上記表示素子において、前記液体貯留空間の内部には、前記導電性液体と混じり合わない第1の絶縁性流体と、前記導電性液体及び前記第1の絶縁性流体と混じり合わない第2の絶縁性流体とが当該液体貯留空間の内部を移動可能に封入されるとともに、
前記表示面側の表示色は、前記第1または前記第2の絶縁性流体が前記上部空間側に移動されることにより、変更されることが好ましい。
この場合、導電性液体の移動速度の高速化を容易に図ることができる。
また、上記表示素子において、前記液体貯留空間には、前記上部空間の一端部側と前記下部空間の一端部側とを連通する第1の連通空間と、前記上部空間の他端部側と前記下部空間の他端部側とを連通する第2の連通空間とが設けられてもよい。
この場合、導電性液体を移動させる際に、液体貯留空間の内部で当該導電性液体を循環させることができ、上記表示面側の表示色の変更速度を容易に高速化することが可能となる。
また、上記表示素子において、前記基準電極及び前記走査電極の表面上には、誘電体層が積層されていることが好ましい。
この場合、誘電体層が導電性液体に印加する電界を確実に大きくして、当該導電性流体の移動速度をより容易に向上することができる。
また、上記表示素子において、前記中間層の表示面側は、光散乱機能を有してもよい。
この場合、外部から入射された外光が上記光散乱機能によって反射されることにより、白色表示が行われるので、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。
また、上記表示素子において、前記中間層及び前記下部層には、透明な透明シートが用いられ、
前記下部層の背面側には、バックライトが設けられてもよい。
この場合、バックライトからの照明光により白色表示を行うことが可能となり、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、バックライトを使用しているので、外光が十分でないときでも、表示動作を行うことができる。
また、上記表示素子において、前記中間層には、透明な透明シートが用いられ、
前記下部層には、並設された光散乱体及び透明な透明シートが含まれ、
前記下部層の背面側には、バックライトが設けられてもよい。
この場合、光散乱体及びバックライトからの照明光によって白色表示が行うことができるので、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、外光を併用しているため、バックライトの消費電力を低減することができる。
また、本発明の電気機器は、文字及び画像を含んだ情報を表示する表示部を備えた電気機器であって、
前記表示部に、上記いずれかの表示素子を用いたことを特徴とするものである。
上記のように構成された電気機器では、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止可能な表示素子が表示部に用いられているので、優れた表示性能をもつコスト安価な表示部を備えた電気機器を容易に構成することができる。
本発明によれば、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができる表示素子、及びこれを用いた電気機器を提供することが可能となる。
本発明の第1の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。
着色表示時における、上記表示素子の要部構成を示す断面図である。
白色表示時における、上記表示素子の要部構成を示す断面図である。
上記表示素子の動作例を示す説明図である。
本発明の第2の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
本発明の第3の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
図7(a)は、第4の実施形態にかかる表示素子を用いた画像表示装置を説明する概略構成図であり、図7(b)は、図7(a)に示した画像表示装置の変形例を説明する概略構成図である。
本発明の第5の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。
白色表示時における、図8に示した表示素子の要部構成を示す断面図である。
着色表示時における、図8に示した表示素子の要部構成を示す断面図である。
図8に示した基準電極、走査電極、及び下部シートの形成工程を説明する図である。
図8に示した信号電極及び中間層の形成工程を説明する図である。
図8に示した上部シートの形成工程を説明する図である。
上記下部シートと中間層とを組み付ける製造工程を説明する図である。
図8に示した表示素子の最終の製造工程を説明する図である。
図8に示した表示素子の動作例を示すタイミングチャートである。
本発明の第6の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
着色表示時における、図17に示した表示素子の要部構成を示す断面図である。
本発明の第7の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。
従来の表示素子、及び画像表示装置の要部構成を示す断面図である。
以下、本発明の表示素子及び電気機器の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、カラー画像表示を表示可能な表示部を備えた画像表示装置に本発明を適用した場合を例示して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。図2及び図3は、それぞれ着色表示時及び白色表示時における、上記表示素子の要部構成を示す断面図である。
図において、本実施形態の画像表示装置では、本発明の表示素子を用いて構成された表示部が設けられており、この表示部では図2の上側がユーザに視認される表示面側となっている。上記表示素子には、図2に示すように、上部シート11と、所定の上部空間S1が上部シート11との間に形成されるように、当該上部シート11の背面側(非表示面側)に設けられた中間層12と、所定の下部空間S2が中間層12との間に形成されるように、当該中間層12の背面側に設けられた下部シート13とが設けられている。
上部シート11は、透明な絶縁材(例えば、合成樹脂材)にて形成されており、表示面側に設けられた透明な上部層を構成している。下部シート13には、例えば合成樹脂などの絶縁材が用いられており、下部シート13は、下部層を構成している。また、表示素子では、上部空間S1及び下部空間S2は複数の仕切壁W1及びW2にてそれぞれ区切られて各々直方体状に構成されており、図2の左右方向及び図2の紙面に垂直な方向で複数の画素領域が上記表示面に設けられるようになっている。また、各画素領域は、後述の信号電極15と走査電極22との交差部単位に設けられている。さらに、表示素子では、上記表示面側でフルカラー表示が可能なように、例えばRGBの各色用の画素領域が1絵素として互いに隣接して設けられている。
中間層12は、表示面側から順次積層された光散乱体14、信号電極15、及び絶縁シート16の三層構造に構成されている。また、中間層14には、画素領域毎に、厚さ方向(図2の上下方向)に貫通した一対の貫通孔H1、H2が形成されている。これら貫通孔H1、H2は、第1、第2の連通空間をそれぞれ構成するものであり、各一端側が上部空間S1に連通している。また、貫通孔H1、H2の各他端側は、下部空間S2に連通している。そして、密閉された液体貯留空間が、上部空間S1、下部空間S2、及び貫通孔H1、H2によって画素毎に形成されている。尚、上記の説明以外に、画素毎に一つの貫通孔(連通空間)のみ設ける構成でもよい。また、中間層12の表示面側は、光散乱機能を有するものであればよく、光散乱体14以外のものを用いることができる。
上記液体貯留空間には、水を含まない着色透明のイオン導電性液体(以下、“導電性液体”と略す。)17と、絶縁性のオイル18とが密封されている。また、仕切壁W1、W2により区画された隣接する2つの液体貯留空間には、互いに異なる色に着色された導電性液体17が密封されている。つまり、導電性液体17には、RGBのいずれかの顔料や染料等の着色剤が添加されており、表示面側の表示色をRGBの対応する色で表示可能になっている。
また、導電性液体17は、イオン性液体に限定されないが、蒸気圧がゼロであり、熱的安定性に優れ、かつ導電率も高い点により、イオン性液体が好適に用いられる。
具体的には、導電性液体17は、電荷が1価のカチオンとアニオンとを1種類ずつ組み合わせている1−1塩からなる常温溶融塩で、かつ、水を含まないイオン性の導電性液体である。
カチオンとアニオンとは、導電性液体17が下記の融点、粘度、イオン伝導度を備える組み合わせとなるように選択されている。
融点が−4〜−90℃の常温で液体であり、不揮発性であるため蒸気圧がゼロで、広い液体温度領域を備えて優れた熱安定性を有するものであること。
常温(25℃)におけるイオン伝導度(s/cm)が0.1×10−3以上であること。
常温(25℃)における粘度が300cp以下であること。
上記の物性を有する導電性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、あるいは1,2−ジジメチル−3−プロピルイミダゾリウムからなる化学種を含むものが用いられる。
オイル18は、導電性液体17と混じり合わない物性を有するものであり、オイル18には、透明な側鎖高級アルコール、側鎖高級脂肪酸、アルカン、シリコーンオイル、マッチングオイルから選択された1種または複数種からなる無極性のオイルが用いられている。
また、表示素子では、導電性液体17に電圧を印加あるいは除電して、当該導電性液体17を移動させて、オイル18との位置を置換するため、表示素子は、上部空間S1側に設けられた基準電極19と、中間層12内に設けられた信号電極15と、下部空間S2側に設けられた走査電極22とを備えた3端子構造を画素毎に有している。
詳しくは、上部シート11の下面には、上側の基準電極19aが上部空間S1の表示面側の全面を覆うように、設けられている。また、中間層12側では、貫通孔H1、H2の開口を除いて、下側の基準電極19bが、上部空間S1に対向する表面上に設けられている。これら基準電極19a、19bは、ITO膜などの透明な面状の導電膜を用いて構成されており、互いに電気的に接続されている。なお、基準電極19は、上部シート11及び中間層12のうち、少なくとも上部シート11に設けられていればよい。但し、上部空間S1を挟むように、上下2層の基準電極19a、19bを設ける場合の方が、導電性液体17の移動速度の高速化を容易に図れる点で好ましい。
また、下部シート13の上面には、下側の走査電極22aが設けられている。また、中間層12側では、貫通孔H1、H2の開口を除いて、上側の走査電極22bが、下部空間S2に対向する表面上に設けられている。これらの走査電極22a、22bには、薄い帯状の導電膜が用いられており、複数の走査電極22a、22bが、図1のX方向に沿ってストライプ状に設けられている。また、走査電極22a、22bは、アルミニウム、銅などの上記導電膜が使用されており、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ディップコーティング法などで形成されている。なお、走査電極22は、下部シート13及び中間層12のうち、少なくとも下部シート13に設けられていればよい。但し、下部空間S2を挟むように、上下2層の走査電極22a、22bを設ける場合の方が、導電性液体17の移動速度の高速化を容易に図れる点で好ましい。
中間層12では、複数の信号電極15が図1のY方向に沿ってストライプ状に設けられており、同図1に示すように、複数の走査電極22と交差するように形成されている。これにより、表示素子では、信号電極15と走査電極22とがマトリクス状に配置されるとともに、後に詳述するように、エレクトロウェッティング現象によって導電性液体17を移動させて、表示面側での表示色を変更するようになっている。
また、信号電極15には、アルミニウム、銅などの薄い帯状の導電膜が用いられており、信号電極15は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ディップコーティング法などにより、例えば合成樹脂材を用いた絶縁シート16上に形成されている。
また、図1に示すように、基準電極19a、19b、信号電極15、及び走査電極22a、22bでは、各々一端部側が表示面の有効表示領域の外側に引き出されて、端子部19a1、19b1、15a、及び22a1、22b1が形成されている。
基準電極19a、19bの端子部19a1、19b1には、それぞれ配線30の上側配線30a(図2)、下側配線30b(図2)を介して基準ドライバ27が接続されている。基準ドライバ27は、基準電圧印加部を構成するものであり、画像表示装置10が文字及び画像を含んだ情報を表示面に表示する場合に、基準電極19に対して、所定の基準電圧Vsを常時印加するように構成されている。
また、複数の信号電極15の端子部15aには、複数の配線31をそれぞれ介して信号ドライバ28が接続されている。信号ドライバ28は、信号電圧印加部を構成するものであり、画像表示装置10が文字及び画像を含んだ情報を表示面に表示する場合に、複数の各信号電極15に対して、情報に応じた信号電圧Vgを印加するように構成されている。
また、複数の走査電極22a、22bの端子部22a1、22b1には、それぞれ複数の配線32の下側配線32a(図2)、上側配線32b(図2)を介して走査ドライバ29が接続されている。走査ドライバ29は、走査電圧印加部を構成するものであり、画像表示装置10が文字及び画像を含んだ情報を表示面に表示する場合に、複数の各走査電極22a、22bに対して、走査電圧Vdを印加するように構成されている。
また、走査ドライバ29では、基準ドライバ27が基準電極19に対し基準電圧を印加しているときに、上下一対の走査電極22a、22b毎に、導電性液体17が移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体17が信号電圧Vgに応じて移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を走査電圧Vdとして印加するようになっている。そして、画像表示装置10では、例えば図1の上側から下側に向かう方向で上下一対の走査電極22a、22bが選択されることにより、ライン毎の走査動作が行われて、表示情報に応じた表示色に表示面側での表示色が変更されるように構成されている(詳細は後述。)。
また、基準ドライバ27、信号ドライバ28、及び走査ドライバ29には、交流電源または直流電源が含まれており、対応する基準電圧Vs、信号電圧Vg、及び走査電圧Vdを供給するようになっている。
また、基準ドライバ27は、基準電圧Vsの極性を所定の時間毎に切り替えるように構成されている。さらに、走査ドライバ29は、基準電圧Vsの極性の切り替えに対応して、走査電圧Vd(非選択電圧及び選択電圧)の各極性を切り替えるように構成されている。このように、基準電圧Vs及び走査電圧Vdの各極性が所定の時間毎に切り替えられるので、基準電極19及び走査電極22に対して常時同じ極性の電圧を印加するときに比べて、これらの基準電極19及び走査電極22での電荷の局在化を防ぐことができる。さらに、電荷の局在化に起因する表示不良(残像現象)や信頼性(寿命低下)の悪影響を防止することができる。つまり、基準ドライバ27及び走査ドライバ29では、直流電源よりも交流電源を使用する場合の方が、電荷の局在化を容易に防げる点で好ましい。
基準電極19a、19bの表面上には、それぞれ誘電体層20a、20bが積層されている。また、誘電体層20a、20bの表面上には、絶縁性を有する撥水膜21、24がそれぞれ積層されており、導電性液体17またはオイル18に接触するようになっている。
同様に、走査電極22a、22bの表面上には、それぞれ誘電体層23a、23bが積層されている。また、誘電体層23a、23bの表面上には、絶縁性を有する撥水膜26、24がそれぞれ積層されており、導電性液体17またはオイル18に接触するようになっている。
また、信号電極15では、貫通孔H1の周囲の部分が露出されており、導電性液体17に直接的に接するようになっている。また、貫通孔H2の周囲では、誘電体層20b、23bを共に被覆するように積層された撥水膜24が配置されている。さらに、この撥水膜24では、仕切壁W1、W2に気密に接合されることによって、画素単位の液体貯留空間の密閉性が維持されるようになっている。
また、誘電体層20a、20b、23a、23bは、例えばパリレンあるいは酸化アルミニウムを含有した高誘電体膜により構成されており、層厚は1〜0.1μm程度とされている。また、撥水膜21、24、26には、電圧印加時に導電性液体17に対して親水層となるものが好ましく、具体的にはフッ素系樹脂が好ましい。また、上部空間S1側の誘電体層20a、20bと撥水膜21、24は、透明な材料で構成されている。一方、信号電極15、絶縁シート16、走査電極22、誘電体層23a、23b、及び撥水膜26は、透明な材料でも非透明な材料でもよい。
光散乱体14には、透明な高分子樹脂と、高分子樹脂の内部に添加されるとともに、屈折率が互いに異なる複数種類の微粒子とを含んだ反射シートが使用されており、上部空間S1の内部から導電性液体17が流出して、透明なオイル18が流入されたときに、表示面を紙のような白さで表示可能になっている。具体的には、光散乱体14では、上記高分子樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができ、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)等が用いられる。また、光散乱体14では、上記複数種類の微粒子として、屈折率の大きな酸化チタン、アルミナの微粒子や屈折率の小さい中空ポリマー微粒子を含有されており、光散乱体14の表面から乱反射を発生させ、紙のような白さを現出可能となっている。
なお、上記の説明以外に、ガラス、セラミック等を用いた光散乱体を使用することもできる。
また、光散乱体14の厚さは、10μm〜300μm程度とすることが好ましく、より好ましくは10μm〜100μm、特に50μm前後が好ましい。このように、光散乱体14の厚さを1mm以下の非常に薄いシートとすることにより、所謂ペーパーディスプレイを容易に構成することができる。
また、貫通孔H1、H2の直径は、0.1μm〜100μm程度とされている。また、貫通孔H1、H2の形成方法としては、フォトリソグラフィ法、陽極酸化法、エッチング法、染色法、印刷法等、適宜な形成方法が採用することができる。
上部シート11及び下部シート13では、光散乱体14と同様に、その厚さが10〜300μm程度の薄いシート材が使用されている。また、上部空間S1及び下部空間S2の図2の上下方向での各間隔寸法は、5〜50μm、好ましくは10μm程度である。なお、この間隔寸法は、撥水膜26、24間の寸法である。
次に、上記のように構成された画像表示装置10の表示動作について、具体的に説明する。
基準電極19、走査電極22、及び信号電極15には、例えば以下のように電圧を印加するものとする。すなわち、基準電極19には、基準ドライバ27から常にHigh電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極22には、走査ドライバ29により図1の上側から順次1本ずつLow電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ29は、Low電圧が印加されない残りの全ての走査電極22に対してHigh電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極15には、信号ドライバ28により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
上記のような表示動作を行う場合、基準電極19、走査電極22、及び信号電極15への印加電圧の組み合わせは、表1に示されるものとなる。さらに、導電性液体17の挙動及び表示面側の表示色は、表1に示すように、印加電圧に応じたものとなる。尚、表1では、High電圧及びLow電圧をそれぞれ“H”及び“L”にて略記している(後掲の表でも同様。)。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極15に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、共にHigh電圧が印加されているので、これらの基準電極19と信号電極15との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極15と走査電極22との間では、走査電極22に対して、Low電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。このため、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている走査電極22が設置された下部空間S2側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図2に示した状態から図3に示した状態となるように移動して、上部空間S1側から排出された状態となり、表示面側での表示色は、光散乱体14による白色表示の状態となる。
また、上記のように導電性液体17が、電位差の生じている電極間に引き寄せられるのは、電極間の電位差によって導電性液体17の内部の電荷分布が変化(誘電分離)し、導電性液体17の各々電極側表面の内部において、対応する各電極の極性とは反対の極性の電荷が生じるからである。逆に、電極間に電位差が無い場合には、上述のような導電性液体17内部における電荷分布の変化(誘電分離)が発生しないため、導電性液体17の移動は生じない。以下の説明においても、上述と同様の引き寄せ現象により、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている走査電極22または基準電極15がそれぞれ設置された下部空間S2側または上部空間S1側に移動される。
一方、選択ラインにおいて、信号電極15に対してLow電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、電位差が生じ、信号電極15と走査電極22との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている基準電極19が設置された上部空間S1側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図3に示した状態から図2に示した状態となるように移動して、上部空間S1側の内部に充填された状態となり、表示面側での表示色は、当該導電性液体17による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極15に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極19、信号電極15、及び走査電極22の全ての電極がHigh電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり上部空間S1側または下部空間S2側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極15に対してLow電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極19及び走査電極22の双方に対して、High電圧が印加されているので、基準電極19と信号電極15との間の電位差及び走査電極22と信号電極15との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
以上のように、非選択ラインにおいては、信号電極15がHigh電圧及びLow電圧のいずれかの電圧であっても、導電性液体17は移動せずに、静止して、表示面側での表示色は変化しない。
一方、選択ラインにおいては、信号電極15への印加電圧に応じて、上述のように、導電性液体17を移動させることができ、表示面側での表示色を変更させることができる。
また、画像表示装置10では、表1に示した印加電圧の組み合わせによって、選択ライン上の各画素での表示色は、例えば図4に示すように、各画素に対応する信号電極15への印加電圧に応じて着色または非着色(白色)となる。また、走査ドライバ29が、例えば走査電極22の選択ラインを図4の上から下へ走査動作を行う場合、画像表示装置10の表示部での各画素の表示色もまた同図4の上から下に向かって順次変化することとなる。したがって、走査ドライバ29による選択ラインの走査動作を高速で行うことによって、画像表示装置10において、表示部での各画素の表示色も高速に変化させることが可能となる。さらに、選択ラインの走査動作に同期させて信号電極15への信号電圧Vgの印加を行うことにより、画像表示装置10では、外部からの画像入力信号に基づいて、動画像を含んだ種々の情報を表示することが可能となる。
また、基準電極19、走査電極22、及び信号電極15への印加電圧の組み合わせは、表1に限定されるものではなく、表2に示すものでもよい。
すなわち、基準電極19には、基準ドライバ27から常にLow電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極22には、走査ドライバ29により図1の上側から順次1本ずつHigh電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ29は、High電圧が印加されない残りの全ての走査電極22に対してLow電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極15には、信号ドライバ28により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極15に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、共にLow電圧が印加されているので、これらの基準電極19と信号電極15との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極15と走査電極22との間では、走査電極22に対して、High電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。従って、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている走査電極22が設置された下部空間S2側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図2に示した状態から図3に示した状態となるように移動して、上部空間S1側から排出された状態となり、表示面側での表示色は、光散乱体14による白色表示の状態となる。
一方、選択ラインにおいて、信号電極15に対してHigh電圧が印加されているときでは、基準電極19と信号電極15との間では、電位差が生じ、信号電極15と走査電極22との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極15に対して、電位差が生じている基準電極19が設置された上部空間S1側に引き寄せられる。この結果、導電性液体17は、図3に示した状態から図2に示した状態となるように移動して、上部空間S1側の内部に充填された状態となり、表示面側での表示色は、当該導電性液体17による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極15に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極19、信号電極15、及び走査電極22の全ての電極がLow電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり上部空間S1側または下部空間S2側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極15に対してHigh電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極19及び走査電極22の双方に対して、Low電圧が印加されているので、基準電極19と信号電極15との間の電位差及び走査電極22と信号電極15との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
以上のように、表2に示した場合でも、表1に示した場合と同様に、非選択ラインにおいては、信号電極15がHigh電圧及びLow電圧のいずれかの電圧であっても、導電性液体17は移動せずに、静止して、表示面側での表示色は変化しない。
一方、選択ラインにおいては、信号電極15への印加電圧に応じて、上述のように、導電性液体17を移動させることができ、表示面側での表示色を変更させることができる。
ここで、上記選択ライン及び非選択ラインを定めることができる基準電圧Vsと、走査電圧Vdについて、具体的に説明する。
すなわち、選択ラインの走査電極22に印加する選択電圧は、基準電極19に印加された基準電圧Vsとの電位差により、導電性液体17をエレクトロウェッティング現象で移動させることが可能な電圧であればよい。一方、非選択ラインの走査電極22には、基準電極19に印加された基準電圧Vsとの電位差によっては、導電性液体17が移動しない程度の略同一の電圧であればよい。
具体的には、導電性液体17を移動させるのに必要な閾値電圧をVthとし、選択電圧をVd1とすると、この選択電圧Vd1は、当該選択電圧Vd1と基準電圧Vsとの差の絶対値が閾値電圧Vth以上となるように設定することにより、導電性液体17を移動させることができる。
一方、非選択電圧Vd2とすると、この非選択電圧Vd2は、当該非選択電圧Vd2と基準電圧Vsとの差の絶対値が閾値電圧Vth未満となるように設定することにより、導電性液体17を移動させることなく、静止させることができる。
また、本実施形態では、表1及び表2に示した印加電圧の組み合わせ以外に、信号電極15への印加電圧を、High電圧またはLow電圧の2値だけではなく、例えば下記のMid(Low)電圧やMid(High)電圧を設定して、多段階に変化させることもできる。
<Mid(Low)電圧の印加動作>
図4に例示するように、中央の信号電極15に対して、High電圧とLow電圧との間でLow電圧寄りの電圧であるMid(Low)電圧(以下、“ML電圧”という。)として、例えばML電圧(=1/3×(High電圧−Low電圧)+Low電圧)を印加する。この場合、基準電極19と信号電極15との間の電位差は、Low電圧のときよりも小さくなる。そのため、信号電極15にML電圧が印加された画素では、導電性液体17の上部空間S1側への移動量はLow電圧を印加したときよりも少なくなる。それゆえ、ML電圧が印加された画素の表示色は、着色表示時と白色表示時との中間的な色合いとすることができる。
<Mid(High)電圧の印加動作>
また、図4の右から2番目の信号電極15に対して、High電圧とLow電圧との間でHigh電圧寄りの電圧であるMid(High)電圧(以下、“MH電圧”という。)として、例えばMH電圧(=2/3×(High電圧−Low電圧)+Low電圧)を印加する。この場合、基準電極19と信号電極15との電位差は、ML電圧のときよりも小さくなる。このため、信号電極15にMH電圧が印加された画素では、導電性液体17の上部空間S1側への移動量は、ML電圧を印加したときよりも少なくなる。それゆえ、ML電圧が印加された画素の表示色は、ML電圧印加時の着色表示時と白色表示時との中間的な色合いとすることができる。特に、この場合では、基準電極19と信号電極15との電位差(=High電圧−MH電圧)と、信号電極15と走査電極22との電位差(=MH電圧−Low電圧)との関係は、High電圧−MH電圧<MH電圧−Low電圧となっている。そのため、信号電極15にMH電圧が印加された画素では、導電性液体17は、電位差の大きい走査電極22が設置された下部空間S2側に引き寄せられている。
以上のように、信号電極15への印加電圧を2値以上の多段階とすることで、画素の色合いを多段階に変化させることが可能となる。すなわち、画像表示装置10では、信号電圧Vgを制御することにより、階調表示が可能となる。なお、上記の説明では、選択電圧と非選択電圧との範囲内の電圧値を信号電極15に印加した場合を示したが、上記範囲外の電圧値を信号電圧Vgとして印加することもできる。
以上のように構成された本実施形態では、複数の信号電極15及び複数の走査電極22を互いに交差するように設けて、これらの信号電極15及び走査電極22をマトリクス状に配置している。また、基準ドライバ(基準電圧印加部)27が基準電極19に対して基準電圧Vsを印加しているときに、走査ドライバ(走査電圧印加部)29は、複数の各走査電極22に対して、導電性液体17が液体貯留空間の内部を移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体17が信号電圧Vgに応じて、液体貯留空間の内部を移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を印加するようになっている。つまり、本実施形態では、一つの選択ライン以外では、走査電極22に対し非選択電圧が印加されることにより、導電性液体17の移動を阻止する非選択ラインが設定されるので、画素毎にアクティブ素子を設けることなく、クロストークが発生するのを防止することができる。この結果、本実施形態では、構造簡単でコスト安価に表示素子及び画像表示装置10を構成することができるとともに、クロストークに起因するコントラストの低下及び表示品位の低下を防ぐことが可能な高性能な表示素子及び画像表示装置10を提供することができる。
また、本実施形態では、基準電極19及び走査電極22がそれぞれ上部シート(上部層)11及び下部シート(下部層)13に設けられている。また、表示面側の表示色が、上部空間S1側または下部空間S2側に導電性液体17を移動させることにより、変更されている。これにより、本実施形態では、基準電圧及び選択電圧が基準電極19及び走査電極22に対しそれぞれ印加されたときに、導電性液体17を変形させることなく、液体貯留空間の内部で上部空間側または下部空間側に移動させることができる。従って、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことができる。
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、基準電極及び走査電極をそれぞれ下部空間側及び上部空間側に設けた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図5に示すように、本実施形態では、基準電極19が下部空間S2側に設けられ、走査電極22が上部空間S1側に設けられている。また、本実施形態の導電性液体17’は、所定色に着色された着色液体ではなく、光散乱液体である。詳細には、導電性液体17’には、顔料等が添加されておらず、酸化チタン粒子、中空粒子等の光散乱粒子が混入され、導電性液体17’が外光を散乱反射する光散乱液体とされている。そして、図5に示すように、導電性液体17’が上部空間S1側に移動されたときに、表示面側での表示色は白色表示となる。
一方、オイル18’には、RGBのいずれかの色の顔料等が添加されており、導電性液体17’の移動に伴い、オイル18’が上部空間S1側に移動されたときに、表示面側での表示色はRGBの対応する着色表示が行われる。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。尚、本実施形態では、上記のように、導電性液体17’内の光散乱粒子によって白色表示が行われるので、光散乱体14に代えて、透明または非透明な絶縁材料を用いて構成することもできる。
尚、導電性液体とオイルとの組み合わせは、上記第1及び第2の実施形態のものに限定されるものではなく、例えば着色と着色、着色と透明、着色と光散乱粒子による白色、透明と着色、透明と光散乱粒子による白色、光散乱粒子による白色と着色、または光散乱粒子による白色と透明とのいずれかの組み合わせを選択することができる。
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、上部空間の一端部側と下部空間の一端部側とを連通する第1の連通空間と、上部空間の他端部側と下部空間の他端部側とを連通する第2の連通空間とを設けた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図6に示すように、本実施形態では、貫通孔H1の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の左端部側に連通するように形成されている。また、貫通孔H2の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の右端部側に連通するように形成されている。そして、本実施形態では、図6に示すように、各画素での上記液体貯留空間の断面形状が枠状に構成されている。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、液体貯留空間の断面形状が枠状に構成されているので、導電性液体17を移動させる際に当該液体貯留空間の内部で導電性液体17を容易に循環させて移動させることができ、上記表示面側の表示色の変更速度を容易に高速化することが可能となる。
[第4の実施形態]
図7(a)は、第4の実施形態にかかる表示素子を用いた画像表示装置を説明する概略構成図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、基準電極を複数の領域に分割した点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図7(a)に示すように、本実施形態の画像表示装置10Aでは、表示部の表示面が上下2つに分割可能となるように、2つの基準電極190a、190bが用いられている。また、基準電極190aの領域に対応するドライバとして、基準ドライバ270a、信号ドライバ280a、及び走査ドライバ290aが設けられている。そして、基準ドライバ270aは、基準電極190aに対して基準電圧Vsを印加し、信号ドライバ280a及び走査ドライバ290aは、基準電極190aの領域内に設けられた信号電極15及び走査電極22に対して、信号電圧Vg及び走査電圧Vdをそれぞれ印加するように構成されている。
同様に、基準電極190bの領域に対応するドライバとして、基準ドライバ270b、信号ドライバ280b、及び走査ドライバ290bが設けられている。そして、基準ドライバ270bは、基準電極190bに対して基準電圧Vsを印加し、信号ドライバ280b及び走査ドライバ290bは、基準電極190bの領域内に設けられた信号電極15及び走査電極22に対して、信号電圧Vg及び走査電圧Vdをそれぞれ印加するように構成されている。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、基準電極の領域毎に、基準ドライバ、信号ドライバ、及び走査ドライバを設けているので、各ドライバでの処理負荷を軽減することが可能となる。また、画像表示装置の大型化(大画面化)にも容易に対応することができる。
尚、上記の説明では、基準電極を2つの領域に分けた場合について説明したが、基準電極の領域数はこれに限定されない。また、図7(b)に例示するように、予め定められた情報が表示される領域を設定することもできる。
つまり、図7(b)において、画像表示装置10Bでは、上部側に予め定められた柄、文字などのキャラクタ(例えば、「ABC」)を表示するキャラクタ表示領域310が設定されている。このキャラクタ表示領域310では、単に上記キャラクタを表示または非表示のいずれかを行う領域であり、表示または非表示を選択的に行わせるキャラクタ用ドライバ300が設けられている。
さらに、画像表示装置10Bでは、キャラクタ表示領域310の下側に、基準電極190cが設けられている。そして、この画像表示装置10Bでは、基準電極190cの領域に対応して、基準ドライバ270c、信号ドライバ280c、及び走査ドライバ290cが設置されており、上記の各実施形態と同様に、画像入力信号に応じて情報を表示できるようになっている。
尚、上記第1〜第4の各実施形態では、基準電極に、面状の導電膜を用いた場合について説明したが、帯状の導電膜を用いてもよい。但し、上記の各実施形態のように、面状の導電膜を用いる場合の方が、基準電極の成膜工程を簡単化して、当該基準電極を容易に形成することが可能となり、表示素子及び画像表示装置の製造コストを低減することができる点で好ましい。
[第5の実施形態]
図8は、本発明の第5の実施形態にかかる表示素子、及び画像表示装置を説明する平面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、下部シート上に帯状の基準電極と帯状の走査電極とを交互に設けた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図8に示すように、本実施形態の画像表示装置50では、複数の信号電極57がX方向に沿ってストライプ状に設けられている。また、画像表示装置50では、複数の走査電極58及び複数の基準電極59が交互に、かつY方向に沿ってストライプ状に設けられている。また、各信号電極57、各走査電極58、各基準電極59には、帯状のアルミニウムなどの導電膜が用いられている。また、複数の信号電極57と複数の走査電極58とは、互いに交差するように設けられており、これらの信号電極57と走査電極58との交差部に画素領域が設定されている。
また、信号電極57、走査電極58、及び基準電極59では、各々一端部側が表示面の有効表示領域の外側に引き出されて、端子部57a、58a、及び59aが形成されている。
信号電極57の端子部57aには、配線61を介して信号ドライバ54が接続されており、上記実施形態のものと同様に、表示情報に応じた信号電圧Vgが印加されるようになっている。
また、走査電極58の端子部58aには、配線62を介して走査ドライバ55が接続されており、上記実施形態のものと同様に、走査電圧Vdが印加されることによって走査動作が行われるようになっている。すなわち、走査ドライバ55は、導電性液体17が液体貯留空間の内部で移動するのを阻止する非選択電圧と、導電性液体17が信号電圧Vgに応じて液体貯留空間の内部で移動するのを許容する選択電圧との一方の電圧を走査電圧Vdとして印加可能に構成されている。そして、走査ドライバ55は、例えば図の左側から右側の各走査電極58に対して、選択電圧を順次印加することにより、上記実施形態のものと同様な走査動作を実施する。
基準電極59の端子部59aには、配線63を介して基準ドライバ27が接続されており、上記実施形態のものと同様に、所定の基準電圧Vsが印加されるようになっている。
また、走査電極58及び基準電極59は、下部シート53側に設けられるとともに、信号電極57は、下部空間S2を挟んで走査電極58及び基準電極59と対向するように、中間層側に設けられている。具体的には、図9及び図10も参照して、表示面側には、透明な上部シート51が設けられており、この上部シート51の上部空間S1側には、透明な撥水膜67が積層されている。
また、下部シート53の表示面側の表面には、走査電極58及び基準電極59が並設されており、走査電極58及び基準電極59には、誘電体層65及び撥水膜66がこの順番で順次積層されている。
また、信号電極57は、光散乱体52の非表示面側の表面上に形成されており、光散乱体52及び信号電極57は撥水膜64にて被覆されて、中間層が構成されている。
また、上部空間S1、下部空間S2、及び貫通孔H1、H2にて形成される液体貯留空間では、上記第3の実施形態のものと同様に、その断面形状が枠状に構成されている。つまり、貫通孔H1の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の左端部側に連通し、貫通孔H2の上端部及び下端部がそれぞれ上部空間S1及び下部空間S2の右端部側に連通している。また、隣接する画素は、仕切壁Wで互いに区切られており、各画素領域の液体貯留空間は、気密に密閉されている。
また、液体貯留空間の内部には、導電性液体17と、第1の絶縁性流体としてのオイル18と、第2の絶縁性流体としての水60とが移動可能に封入されている。水60は、顔料や染料などにより、RGBのいずれかの色に着色されている。但し、この水60には、電解質を混合していないため、上記のように第2の絶縁性流体として機能するようになっている。すなわち、水60は、導電性液体17と異なり、走査電極58などの上記電極に対応する電圧が印加されたときでも、水60自体は移動されないようになっており、表示素子の駆動に影響しない。
一方、導電性液体17は、走査電極58と基準電極59との間でスライド移動可能に構成されており、図9及び図10にそれぞれ示すように、走査電極58側及び基準電極59側のいずれか一方側に移動して、白色表示または水60による着色表示を行わせるようになっている(詳細は後述。)。
ここで、図11〜図15を参照して、本実施形態の表示素子の製造工程を具体的に説明する。
まず、下部シート53側の形成工程について、図11を用いて説明する。
図11(a)において、下部シート53には、例えば厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(旭ガラス社製)が用いられており、スパッタ法にて膜厚100nmのITO膜を下部シート53上に成膜することによって走査電極58及び基準電極59を形成する。なお、走査電極58及び基準電極59は、透明なITO膜以外の非透明な金属薄を使用することもできる。
その後、図11(b)に示すように、下部シート53、走査電極58、及び基準電極59の上方に、誘電体層65としてアモルファス酸化チタンTi-44(ラサ工業社製)をスピンコーティング法にて成膜した。この誘電体層65の膜厚は200nmとした。
そして、図11(c)に示すように、誘電体層65の表面に対して、フロロテクノロジー社製の撥水膜FG-5010をディッピング法もしくはスピンコーティング法によって塗布して、80℃で30分間焼成することにより、撥水膜66を成膜した。撥水膜66の膜厚は、20nmとした。
以上のように、走査電極58及び基準電極59を同一基板上に同時にパターニングして形成しているので、上記の実施形態に比べて、表示素子の製造プロセスの簡略化することができ、コスト低減を実現することができる。
続いて、上記中間層の形成工程について、図12を参照して具体的に説明する。
図12(a)において、光散乱体52には、例えばフジコピアン社製の反射シート(厚さ30μm)が用いられている。この光散乱体52は、PET樹脂に酸化チタンの微粒子が練り込まれており、酸化チタンの微粒子により白色が発現されている。また、光散乱体52の表面には、アルミニウムを膜厚100nmで蒸着することにより、信号電極57を形成した。この信号電極57は透明電極を用いてよいが、今回は光散乱体52の膜厚が薄いため、反射率を向上させるためにアルミニウムを使用した。
次に、図12(b)に示すように、多数の孔を形成したマスクを用いて、エキシマレーザ加工を行うことにより、幅30μm、深さ30μmの貫通孔H1、H2を形成した。なお、エキシマレーザ加工に代えてマイクロドリル加工法で貫通孔H1、H2を設けることもできた。
次に、図12(c)に示すように、光散乱体52及び信号電極57の表面に対して、フロロテクノロジー製の撥水膜をディッピング法により成膜することで撥水膜64を設けた。なお、貫通孔H1、H2の間の光散乱体52w、信号電極57w、及び撥水膜64wは、後述のスペーサと一体化されて上記仕切壁Wとされる。
続いて、上部シート51側の形成工程について、図13を用いて説明する。
図13(a)において、上部シート51には、例えば厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(旭ガラス社製)が用いられている。そして、図13(b)に示すように、上部シート51の表面に対して、フロロテクノロジー社製の撥水膜をディッピング法もしくはスピンコーティング法により成膜することで撥水膜67を設けた。なお、上記無アルカリガラス基板に代えて、上部シート51に透明な樹脂シートを用い、下部シート53に樹脂シートを用いてもよい。
次に、下部シート53と中間層とを組み付ける製造工程について、図14を用いて説明する。
図14(a)において、撥水膜66の表面上に対して、白色のUV硬化樹脂を用いた樹脂スペーサ68を形成した。この樹脂スペーサ68では、幅及び高さを10μmとした。これにより、Gapが10μmの下部空間S2が、撥水膜66の表面上に形成される。
つまり、図14(b)に示すように、樹脂スペーサ68上に上記中間層の光散乱体52w、信号電極57w、及び撥水膜64wを載置することにより、下部空間S2が撥水膜66と中間層との間に形成される。
そして、図14(b)に示すように、撥水膜64wの上方に対して、白色のUV硬化樹脂を用いた樹脂スペーサ69を設けた。この樹脂スペーサ69では、幅及び高さを10μmとした。これにより、Gapが10μmの上部空間S1が、中間層の上方に形成される。その後、信号電極57、走査電極58、及び基準電極59を、信号ドライバ54、走査ドライバ55、及び基準ドライバ56に接続した。また、走査ドライバ55及び基準ドライバ56は、例えば周波数10kHzでAC3.5Vの電圧を印加可能に構成されている。
次に、表示素子の最終の製造工程について、図15を用いて説明する。
図15(a)において、各画素領域の液体貯留空間に対して、互いに混じり合わない、脂肪族アミンからなる常温溶融塩で非水の導電性液体(広栄化学工業株式会社製 商品名:IL−A4)17と、オイル(キシダ化学製 n−ドデカン)18、水60を充填した。また、水60には、RGBのいずれかの顔料を分散して着色した。
続いて、図15(b)に示すように、樹脂スペーサ69の上方に対して、撥水膜67が接するように、上部シート51側を接合することで表示素子が完成される。
以下、上記のように構成された本実施形態での表示動作について、具体的に説明する。
基準電極59、走査電極58、及び信号電極57には、例えば以下のように電圧を印加するものとする。すなわち、基準電極59には、基準ドライバ56から常にHigh電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極58には、走査ドライバ55により図8の左側から順次1本ずつLow電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ55は、Low電圧が印加されない残りの全ての走査電極58に対してHigh電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極57には、信号ドライバ54により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
上記のような表示動作を行う場合、基準電極59、走査電極58、及び信号電極57への印加電圧の組み合わせは、表3に示されるものとなる。さらに、導電性液体17の挙動及び表示面側の表示色は、表3に示すように、印加電圧に応じたものとなる。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極57に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、共にHigh電圧が印加されているので、これらの基準電極59と信号電極57との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極57と走査電極58との間では、走査電極58に対して、Low電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。このため、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている走査電極58側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図9に示した状態となり、オイル18を上部空間S1側に移動させる。これにより、表示面側での表示色は、光散乱体52による白色表示の状態となる。
一方、選択ラインにおいて、信号電極57に対してLow電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、電位差が生じ、信号電極57と走査電極58との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている基準電極59側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図10に示した状態に移動して、上部空間S1側の内部に水60を移動させる。これにより、表示面側での表示色は、水60による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極57に対して例えばHigh電圧が印加されているときでは、基準電極59、信号電極57、及び走査電極58の全ての電極がHigh電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり走査電極58側または基準電極59側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極57に対してLow電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極59及び走査電極58の双方に対して、High電圧が印加されているので、基準電極59と信号電極57との間の電位差及び走査電極58と信号電極57との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
また、基準電極59、走査電極58、及び信号電極57への印加電圧の組み合わせは、表3に限定されるものではなく、表4に示すものでもよい。
すなわち、基準電極59には、基準ドライバ56から常にLow電圧を基準電圧Vsとして印加する。走査電極58には、走査ドライバ55により図8の左側から順次1本ずつHigh電圧を上記選択電圧として印加して選択ラインとする走査動作を行う。また、走査ドライバ55は、High電圧が印加されない残りの全ての走査電極58に対してLow電圧を上記非選択電圧として印加して、非選択ラインとする。信号電極57には、信号ドライバ54により外部からの画像入力信号に応じて、High電圧またはLow電圧を信号電圧Vgとして印加する。
<選択ラインでの動作>
選択ラインでは、信号電極57に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、共にLow電圧が印加されているので、これらの基準電極59と信号電極57との間には、電位差が生じていない。一方、信号電極57と走査電極58との間では、走査電極58に対して、High電圧が印加されているので、電位差が生じている状態となる。従って、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている走査電極58側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図9に示した状態となり、オイル18を上部空間S1側に移動させる。これにより、表示面側での表示色は、光散乱体52による白色表示の状態となる。
一方、選択ラインにおいて、信号電極57に対してHigh電圧が印加されているときでは、基準電極59と信号電極57との間では、電位差が生じ、信号電極57と走査電極58との間には、電位差が生じていない。従って、導電性液体17は、信号電極57に対して、電位差が生じている基準電極59側に下部空間S2の内部を移動する。この結果、導電性液体17は、図10に示した状態に移動して、上部空間S1側の内部に水60を移動させる。これにより、表示面側での表示色は、水60による着色表示の状態となる。
<非選択ラインでの動作>
非選択ラインでは、信号電極57に対して例えばLow電圧が印加されているときでは、基準電極59、信号電極57、及び走査電極58の全ての電極がLow電圧となり、これらの電極間には電位差が生じていない。それ故、導電性液体17は現状の位置、つまり上部空間S1側または下部空間S2側から移動せずに、静止した状態で維持される。この結果、表示色は、現状の白色表示または着色表示から変更されずに維持される。
同様に、非選択ラインにおいて、信号電極57に対してHigh電圧が印加されているときでも、導電性液体17は現状の位置に静止した状態で維持されて、現状の表示色で維持される。すなわち、基準電極59及び走査電極58の双方に対して、Low電圧が印加されているので、基準電極59と信号電極57との間の電位差及び走査電極58と信号電極57との間の電位差は、共に同じ電位差が生じるからである。
尚、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、信号電極57に対して、例えばHigh電圧とLow電圧との間の電圧レベルの信号電圧Vgを印加することにより、階調表示を行うことができる。
次に、図16を参照して、基準電極59、走査電極58、及び信号電極57への対応する電圧の印加動作について、説明する。尚、以下の説明では、説明の簡略化のために、各々3本の基準電極59、走査電極58、及び信号電極57の場合を例示する。
図16(a)〜(c)にそれぞれ示すように、3本の基準電極59には、常にHigh電圧が印加されている。
また、3本の走査電極58では、図16(d)〜(f)にそれぞれ示すように、1フレーム期間内で、一定時間t0の間のみ、選択電圧としてのLow電圧が順次印加されている。また、一定時間t0以外の期間では、非選択電圧としてのHigh電圧が印加されている。なお、一定時間t0は、1フレーム期間の時間を走査電極58の設置数(走査線数)にて除算することにより、求められる。
また、3本の信号電極57では、図16(g)〜(i)にそれぞれ示すように、外部からの画像入力信号に応じたHigh電圧またはLow電圧が信号電圧Vgとして印加されている。しかしながら、表示素子では、各走査電極58に対して選択電圧が印加されているときのみ、信号電極57では印加された信号電圧Vgが有効な印加電圧となる。つまり、3本の信号電極57と3本の走査電極58との交差部にある画素領域では、第1及び第2のフレーム期間での表示色はそれぞれ表5及び表6に示すものとなる。尚、表5及び表6では、図8の左側から右側に向かって第1〜第3の走査電極58が設けられるとともに、図8の上側から下側に向かって第1〜第3の信号電極57が設けられ、かつ、第1の走査電極58から順次走査動作が行われたときでの画素領域の表示色を示している。さらに、第1のフレーム期間前では、各画素領域の表示色は、水60による着色表示が行われているものとする。
以上のように構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、下部シート53に対して、走査電極58及び基準電極59を同時に形成することができるので、表示素子の製造コストを容易に低減することができる。また、導電性液体17が下部空間S2の内部でのみスライド移動されることにより、表示色の変更動作が行われている。すなわち、本実施形態では、導電性液体17が2次元的に移動されることで表示色の変更動作が行われているので、導電性液体17を変形させることなく、当該導電性液体17を移動させている点とも相まって、表示面側の表示色の変更動作を安定した状態で行うことができ、さらには、導電性液体17の駆動電圧を低減することができる。
[第6の実施形態]
図17は、本発明の第6の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第5の実施形態との主な相違点は、透明な透明シートを用いて、中間層及び下部シート側を構成するとともに、当該下部シートの背面側にバックライトを設けた点である。なお、上記第5の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図17に示すように、本実施形態では、中間層が透明な透明シート70、透明な信号電極57、及び透明な撥水膜64にて形成されている。また、下部シート53には、透明なシート材が用いられており、この下部シート53上の走査電極58、誘電体層65、及び撥水膜66もまた透明な材料が用いられている。
また、基準電極59は、図17に例示するように、略U字状に構成されており、下部空間S2には、U字状の基準電極59に応じた液溜空間S21が形成されている。この液溜空間S21の上方、例えば上部シート51には、遮光膜(図示せず)が設けられており、液溜空間S21の内部に導電性液体17が移動されているときでも、その導電性液体17による着色がユーザに視認されるのを防ぐようになっている。
また、下部シート53と走査電極58との間には、下部層に含まれた透明シート71が設置されている。また、液体貯留空間の内部には、着色されていない水60’が封入されており、さらには下部シート53の下側(背面側)に、白色の照明光を発光するバックライト72が設けられている。そして、走査電極58の上方のみが、各画素の有効表示領域として機能するようになっている。すなわち、図17に示すように、導電性液体17が液溜空間S21の内部に移動されているときは、バックライト72からの白色光による白色表示が行われる。
一方、図18に示すように、導電性液体17が走査電極58側にスライド移動されると、当該導電性液体17による着色表示が行われる。
以上の構成により、本実施形態では、第5の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、バックライト72を設けて、透過型の表示素子を構成しているので、バックライト72からの照明光により白色表示を行うことができ、外光が不十分な場合や夜間などでも、適切な表示動作を行うことができる。これにより、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、導電性液体17による着色表示を行うときに、バックライト72からの照明光を照射することにより、当該着色表示の表示品位を容易に向上させることができる。
なお、上記の説明以外に、バックライト72の発光色を変更することにより、表示面側の表示色を当該発光色に応じて変更することができる。また、バックライト72を用いることにより、表示素子の輝度を容易に変更することができ、調光範囲が大きく、かつ、高精度な階調制御を行える表示素子を簡単に構成することができる。
[第7の実施形態]
図19は、本発明の第7の実施形態にかかる表示素子の要部構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第6の実施形態との主な相違点は、下部層に光散乱体と透明シートとを並設した点である。なお、上記第6の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図19に示すように、本実施形態では、下部シート53と走査電極58との間には、下部層に含まれた透明シート71と光散乱体52とが図の左右方向で互いに並設されている。
以上の構成により、本実施形態では、第6の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、透明シート71及び光散乱体52と、バックライト72とを設けて、半透過型の表示素子を構成しているので、光散乱体52による外光の反射光及びバックライト72からの照明光にて白色表示を行うことができ、適切な表示動作を行うことができる。これにより、白色表示の表示品位を容易に向上させることができる。また、外光を併用できるので、バックライト72の消費電力を低減することができる。
尚、上記第5〜第7の各実施形態では、走査電極58及び基準電極59を下部シート53側に設けるとともに、信号電極57が下部空間S2を挟んで走査電極58及び基準電極59と対向するように中間層側に設けた構成について説明した。しかしながら、走査電極58及び基準電極59を中間層側や上部シート51側に設けたり、信号電極57を上部シート51側や下部シート53側に設けたりすることもできる。但し、基準電極59及び走査電極57を下部シート53及び中間層の一方側に設けるとともに、信号電極57を下部シート53及び中間層の他方側に設ける場合の方が好ましい。つまり、上記の各実施形態のように、下部空間S2側に信号電極57、走査電極58、及び基準電極59を設ける場合の方が、表示面側での開口率(有効表示領域)を容易に向上できる点で好ましい。また、信号電極57と走査電極58及び基準電極59とが互いに対向配置させる場合の方が、導電性液体17の駆動電圧を容易に低減できる点で好ましい。
また、上記第5〜第7の各実施形態の説明以外に、互いに混じり合わない4種類以上の流体を使用することもできる。このように構成した場合には、一つの画素において、互いに異なる三色以上の表示色を表示させることができる。
また、上記第6及び第7の実施形態の説明以外に、例えば図6に示した第3の実施形態の表示素子において、貫通孔H1、H2のいずれか一方の表示面側に遮光膜を形成することにより、第6及び第7の実施形態と同様に、透過型及び半透過型の表示素子を構成することができる。
尚、上記の実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上記の説明では、カラー画像表示を表示可能な表示部を備えた画像表示装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は文字及び画像を含んだ情報を表示する表示部が設けられた電気機器であれば何等限定されるものではなく、例えば電子手帳等のPDAなどの携帯情報端末、パソコンやテレビなどに付随する表示装置、あるいは電子ペーパーその他、各種表示部を備えた電気機器に好適に用いることができる。
また、上記の説明では、導電性液体への電界印加に応じて、当該導電性液体を移動させるエレクトロウェッティング方式の表示素子を構成した場合について説明したが、本発明の表示素子は、これに限定されるものではなく、外部電場を利用して、液体貯留空間の内部で導電性液体を動作させることにより、表示面側の表示色を変更可能な電界誘導型の表示素子であれば何等限定されるものではなく、電気浸透方式、電気泳動方式、誘電泳動方式などの他の方式の電界誘導型表示素子に適用することができる。
但し、上記各実施形態のように、エレクトロウェッティング方式の表示素子を構成する場合の方が、導電性液体を低い駆動電圧で高速に移動させることが可能となり、表示面での表示色の切換速度の高速化及び省力化を容易に図ることができる。それ故、動画表示を容易に行うことが可能で、表示性能に優れた表示素子を容易に構成することができる点で好ましい。また、エレクトロウェッティング方式の表示素子では、導電性液体の移動に応じて表示色が変更されるので、液晶表示装置等と異なり、視野角依存性がない点でも好ましい。
また、上記の説明では、RGBの各色の画素領域を含んだ表示面を構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の画素領域が、表示面側でフルカラー表示が可能な複数の原色に応じてそれぞれ設けられているものであればよい。具体的には、上記RGBの画素領域に代えて、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のCMYの色にそれぞれ着色された導電性液体が封入される液体貯留空間を設け、CMYの各色の画素領域を構成してもよい。但し、CMYの画素領域を構成する場合には、RGBの場合に比べて、黒色表示の表示品位が低下するおそれがあるため、黒色に着色された導電性液体を有する黒色表示用の画素領域を設置する場合の方が好ましい。さらに、RGB、CMY以外の表示面においてカラー画像表示が可能な複数の原色、例えば、RGBYC(五色)、RGBC(四色)、RGBY(四色)、GM(二色)等の組合せに対応した所定色に着色された導電性液体を使用することもできる。
また、上記の説明では、導電性液体にイオン性液体を用いた場合について説明したが、本発明の導電性液体はこれに限定されるものではなく、例えばアルコール、アセトン、ホルムアミド、エチレングリコール、水、それらの混合物からなる導電性液体を使用することもできる。
また、上記の説明では、無極性のオイルを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、導電性液体と混じり合わない絶縁性流体であればよく、例えばオイルに代えて、空気を使用してもよい。また、オイルとして、シリコーンオイル、脂肪系炭化水素などを使用することができる。但し、上記実施形態のように、イオン性液体と相溶性がない無極性のオイルを用いた場合、空気とイオン性液体とを用いる場合よりは、無極性のオイル中でイオン性液体の液滴がより移動し易くなり、イオン性液体(導電性液体)を高速移動させることが可能となり、表示色を高速に切り換えられる点で好ましい。
また、上記の説明では、基準電極及び走査電極を上部シートや下部シートなどの絶縁シートの表面上に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁材料からなる上記シートの内部に埋設した基準電極及び走査電極を用いることもできる。このように構成した場合には、シートを誘電体層として兼用させることができ、当該誘電体層の設置を省略することも可能となる。
本発明にかかる表示素子及びこれを用いた電気機器は、アクティブ素子を設けることなく、クロストークの発生を防止することができるので、優れた表示性能を有し、かつ構造簡単でコスト安価な表示素子及び電気機器を提供することができる。