本発明は、入力信号に混入したノイズを除去するノイズキャンセラに関する。
信号処理技術分野では、処理すべき入力信号に混入している外来ノイズを除去することが重要である。
例えば、自動車に搭載される車載型の放送受信機等では、イグニッションノイズ等の外来ノイズの影響を受けやすい。そのため、一般に、受信した高周波数の受信信号(RF受信信号)と同調周波数の局発信号とを混合して周波数変換することで得られる中間周波信号(IF信号)に対して、直ちに検波及び復調等の処理を行わず、中間周波信号に混入している外来ノイズをノイズキャンセラで除去してから、検波及び復調等の処理を行っている。
図1(a)は、車載型の放送受信機等に一般に設けられている従来のノイズキャンセラの構成を表したブロック図、図1(b)は、そのノイズキャンセラの機能を表したタイミングチャートである。従来のノイズキャンセラは、ホールド部1とホールド制御部2とディレー回路DLYを有して構成されている。
ホールド制御部2は、中間周波信号(入力信号)Sinに混入しているノイズNzをハイパスフィルタ2aで抽出し、抽出したノイズNzを平滑回路2bで平滑化することで平滑ノイズANzを生成した後、その平滑ノイズANzと所定の閾値THDとを比較器2cで比較し、平滑ノイズANzのレベルが閾値THDより大きくなる期間をノイズ混入期間τとして検出して、論理“H”となるホールドゲート信号HDGTを出力する。
ディレー回路DLYは、ホールド制御部2で生じる遅延時間を調整するための遅延器である。
ホールド部1は、ホールドゲート信号HDGTが論理“L”のときには、入力信号Sinをそのまま通過させ、出力信号Soutとして検波器等へ出力する。一方、ホールドゲート信号HDGTが論理“H”のときにはホールド動作を継続し、ホールド信号成分Shldを出力信号Soutとして検波器等へ出力する。すなわち、ホールド部1は、ホールドゲート信号HDGTが論理“L”から“H”に反転する時点(ノイズNzの検出時点)t1に、入力信号Sinの信号成分をホールドすると共に、ホールドゲート信号HDGTが論理“H”となっている間、そのホールドした一定レベルのホールド信号成分Shldを出力し、ゲート信号HDGTが論理“H”から“L”に再び反転する時点(ノイズNzの終了時点)t2でホールド動作を終了して、再び入力信号Sinを出力信号Soutとして出力することによって、ノイズ混入期間τのノイズNzを除去することとしている。
ところで、上記従来のノイズキャンセラでは、ノイズ混入期間τが終了した時点t2において、ホールド部1の出力信号Soutがホールド信号成分Shldから入力信号Sinに切り替えられるため、出力信号Soutの波形が不連続となり、高周波数のノイズ成分が新たに発生する問題がある。
すなわち、ノイズ混入期間τで一定レベルに保持されていたホールド信号成分Shldが、ノイズ混入期間τの終了(ホールド解除)時点t2で急激に入力信号Sinに切り替えられるため、外来ノイズNzの除去がなされても、出力信号Soutの時点t2での波形が不連続となり、高周波数のノイズ成分が新たに発生する。このため、出力信号Soutに基づいて検波及び復調等の処理を行うと、検波信号と復調信号に歪み等が発生し、受信品質を向上させることが困難となる等の問題があった。
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、入力信号に対するホールド処理に際に、高周波数のノイズ成分を新たに内部生成することのないノイズキャンセラを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、入力信号に混入しているノイズを除去するノイズキャンセラであって、前記入力信号に混入している前記ノイズのノイズ混入期間を検出するノイズ期間検出手段と、前記ノイズ混入期間に付加期間を付加した期間を補正期間とする補正期間設定手段と、前記補正期間の間、前記入力信号をホールドしてホールド信号を出力するホールド手段と、前記入力信号に対してミュート処理を行うことで補正信号を生成する第1ミュート手段と、前記ホールド信号に対してミュート処理を行うことで補間信号を生成する第2ミュート手段と、少なくとも前記補正期間における前記ノイズ混入期間と前記付加期間において、前記第1,第2ミュート手段のゲインを調整するゲイン調整手段と、前記第1,第2ミュート手段で生成される前記補正信号と補間信号を合成することで、前記ノイズを除去した入力信号と相似な波形の出力信号を生成する合成手段と、を具備することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノイズキャンセラにおいて、前記ゲイン調整手段は、前記第1ミュート手段のゲインを、前記補正期間以外の期間では固定値に設定し、前記補正期間内の前記ノイズ混入期間では0に設定し、前記付加期間では0から前記固定値に変化する値に設定すると共に、前記第2ミュート手段のゲインを、前記補正期間以外の期間では0に設定し、前記補正期間内の前記ノイズ混入期間では前記固定値に設定し、前記付加期間では前記固定値から0に変化する値に設定することを特徴とする。
従来のノイズキャンセラの構成及び動作を説明するための図である。
本発明の実施形態に係るノイズキャンセラの構成を表したブロック図である。
図2に示したノイズキャンセラの動作を説明するためのタイミングチャートである。
実施例に係るノイズキャンセラの構成を表したブロック図である。
図4に示したノイズキャンセラの動作を説明するためのタイミングチャートである。
本発明の好適な実施形態について図2及び図3を参照して説明する。図2は、本実施形態のノイズキャンセラの構成を表したブロック図、図3は動作を説明するためのタイミングチャートである。
図2において、このノイズキャンセラ3は、第1ミュート部4と、合成部5、ホールド部6、第2ミュート部7、ノイズ期間検出部8、補正期間設定部9、ゲイン調整部10を備えて構成されており、入力信号Sinに混入しているノイズを除去して出力信号Soutを出力する。更に、本実施形態では、タイミング調整のためにディレー回路DLYを設けている。
ノイズ期間検出部8は、入力信号Sinに混入しているノイズを検出し、ノイズの生じている期間τを検出する。そして、そのノイズ混入期間τを示すノイズ期間検出信号NPRDを出力する。
補正期間設定部9は、ノイズ期間検出信号NPRDのノイズ混入期間τに続けて予め決められた所定の付加時間Taddを付加することで補正期間(τ+Tadd)を設定し、その補正期間(τ+Tadd)を示す情報と共に、補正期間信号CPRDを出力する。
ディレー回路DLYは、上述したようにノイズキャンセラ3の処理に要する遅延時間を調整するための遅延器であり、主として、ノイズ期間検出部8と補正期間設定部9との内部処理時間に起因する遅延時間を調整するために設けられている。
ホールド部6は、補正期間信号CPRDに従って、入力信号Sinを補正期間(τ+Tadd)の間ホールドして出力する。すなわち、ホールド部6は、補正期間(τ+Tadd)を除く期間では入力信号Sinをそのまま通過させて出力し、補正期間(τ+Tadd)の開始時点で入力信号Sinの信号成分をホールドし、ホールドした一定レベルの信号成分を補正期間(τ+Tadd)の終了時点まで保持して出力する。そして、出力する信号をホールド信号SHAとしてミュート部7に供給する。
ゲイン調整部10は、補正期間信号CPRDで示される補正期間(τ+Tadd)の間において、ミュート部4,7のゲインを可変調整するためのゲイン調整信号GA,GBを出力する。
すなわち、ゲイン調整部10は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、次式(1)で表されるように、ゲイン調整信号GBのゲイン値を固定値1、ゲイン調整信号GAのゲイン値を0に設定する。更に、補正期間(τ+Tadd)のうちのノイズ混入期間τでは、次式(2)で表されるように、ゲイン調整信号GBのゲイン値を0、ゲイン調整信号GAのゲイン値を固定値1に設定する。更に、補正期間(τ+Tadd)のうちの付加期間Taddでは、ゲイン調整信号GBのゲイン値を、増加率(1/Tadd)の下で経過時間t(すなわち、0≦t≦Tadd)に従って、0から1まで可変調整すると共に、ゲイン調整信号GAのゲイン値を、増加率(1−(1/Tadd))の下で経過時間t(すなわち、0≦t≦Tadd)に従って、1から0まで可変調整する。
そして、ゲイン調整部10は、ゲイン調整信号GBのゲイン値によってミュート部4のゲインを調整すると共に、ゲイン調整信号GAのゲイン値によってミュート部7のゲインを調整する。
ミュート部4は、入力信号Sinを入力し、ゲイン調整信号GBで指定されるゲイン値に従ってミュート処理を施すことにより、補正信号SBを生成して合成部5に供給する。すなわち、次式(4)で表されるように、上記式(1)〜(3)で示したゲイン調整信号GBのゲイン値と入力信号Sinとの乗算に相当するミュート処理を行うことで、補正信号SBを生成して出力する。
ミュート部7は、ホールド信号SHAを入力し、ゲイン調整信号GAで指定されるゲイン値に従ってミュート処理を施すことにより、補間信号SAを生成して合成部5に供給する。すなわち、次式(5)で表されるように、上記式(1)〜(3)で示したゲイン調整信号GAのゲイン値とホールド信号SHAとの乗算に相当するミュート処理を行うことで、補間信号SAを生成して出力する。
合成部5は、次式(6)で表されるように、補正信号SBと補間信号SAを合成(振幅を加算)することで、入力信号Sinからノイズが取り除かれた出力信号Soutを生成して出力する。
次に、かかる構成を有するノイズキャンセラ3の動作について図3を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図3に例示するように、ある時点t1からt2の期間内において外来ノイズNzが入力信号Sinに混入しているものとして説明する。
かかる入力信号Sinがノイズキャンセラ3に入力することとなると、ノイズ期間検出部8がノイズNzの発生時点t1から終了時点t2までの期間であるノイズ混入期間τを検出してノイズ期間検出信号NPRDを出力し、更に、補正期間設定部9がノイズ混入期間τに付加期間Taddを付加することによって、補正期間(τ+Tadd)を示す補正期間信号CPRDを生成して出力する。
更に、ホールド部6が、補正期間信号CPRDの指示に従って、補正期間(τ+Tadd)の開始時点t1の入力信号Sinの信号成分(より厳密に言えば、ノイズNzの混入時直前の信号成分)をホールドすると共に、そのホールドした一定レベルのホールド信号SHAを補正期間の間継続して出力する。
すなわち、ホールド部6は、補正期間以外の期間では入力信号Sinをそのまま通過させ、補正期間の期間内では、入力信号Sinに混入していたノイズNzに代えて、一定レベルのホールド信号成分Shldをホールド信号SHAとして出力する。
そして更に、ゲイン調整部10が、上記式(1)〜(3)で表されるゲイン調整信号GA,GBの各ゲイン値に従って、ミュート部7,4の各ゲインを調整する。
これにより、ミュート部4が、ゲイン調整信号GBのゲイン値(図3中、ゲイン値をzで示している)の変化に従って、入力信号Sinに対してミュート処理を施し、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
すなわち、ミュート部4は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が1となるため、入力信号Sinをそのまま補正信号SBとして出力し、更に、期間τ内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0となるため、入力信号Sinの通過を実質的に阻止することで、振幅0の補正信号SBを出力し、更に、付加期間Tadd内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0から1に向かって変化するのに従って、入力信号Sinに対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
一方、ミュート部7も同様に、ゲイン調整信号GAのゲイン値(図3中、ゲイン値を(1−z)で示している)の変化に従って、ホールド信号SHAに対してミュート処理を施し、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
すなわち、ミュート部7は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が0となるため、ホールド信号SHAの通過を実質的に阻止することで、振幅0の補間信号SAを出力し、更に、期間τ内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1となるため、一定レベルのホールド信号SHA(すなわち、ホールド信号成分Shld)をそのまま補間信号SAとして通過させ、更に付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1から0に向かって変化する(付加期間Taddの終了時点t3に向かって変化する)のに従ってホールド信号SHAに対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
そして、合成部5が、補正信号SBと補間信号SAを合成することにより、図示するような、ノイズが除去された波形から成る出力信号Soutを生成して出力する。
ここで、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、補正信号SBは入力信号Sinと同じ波形、補間信号SAは振幅0となることから、出力信号Soutは入力信号Sinと同じ波形となる。更に、ノイズ混入期間τの期間内では、補正信号SBは振幅0となり、補間信号SAはノイズNzがホールド信号成分Shldで置き換えられた波形となることから、出力信号Soutは、一定レベルのホールド信号成分Shldと同じ波形となる。更に、付加期間Taddでは、補正信号SBは入力信号Sinがミュート処理によって減衰された波形となり、補間信号SAはホールド信号SHAがミュート処理によって減衰された波形となることから、出力信号Soutは、減衰された補正信号SBと補間信号SAとの合成によって入力信号Sinに相似した波形となる。
そして更に、ノイズ混入期間τから付加期間Taddへと時間が経過する際の出力信号Soutの振幅は、一定レベルのホールド信号SHAから滑らかな振幅変化で連続的に変化していくため、高周波数のノイズ成分が発生しない。
すなわち、従来技術のノイズキャンセラでは、図1(b)を参照して説明したように、ホールド動作の終了時点t2において一定レベルのホールド信号成分Shldが瞬断される結果、高周波のノイズが新たに内部生成されてしまうという問題があったが、本実施形態のノイズキャンセラ3では、一定レベルのホールド信号成分Shldに続いて、付加期間Tadd内にミュート処理される補正信号SBと補間信号SAとの合成によって生じる、急峻に変化しない合成信号成分が継続することとなるため、高周波数のノイズを内部発生しない。
以上に説明したように、本実施形態のノイズキャンセラ3によれば、入力信号Sinに混入しているノイズNzをホールド信号成分Shldに置き換えることで生成されるホールド信号SHAに対し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補間信号SAを生成すると共に、ノイズ混入期間τの入力信号Sinに対してその信号成分とノイズNzとを除去し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補正信号SBを生成して、これらの補間信号SAと補正信号SBを合成することで出力信号Soutを生成するので、入力信号Sinに混入しているノイズNzの除去を行うことができ、且つ、高周波数のノイズ成分を内部発生することを防止することができる。
そして、本実施形態のノイズキャンセラ3を、例えば車載型の放送受信機等に設け、その放送受信機のチューナ部から出力される中間周波信号(IF信号)に混入する外来ノイズ(例えばイグニッションノイズ等)を除去して検波器に供給したり、また、検波器で検波されるベースバンド信号に混入する同様の外来ノイズを除去して復調器に供給することにより、より品質に優れたベースバンド信号や復調信号を再生させることができる。
なお、本実施形態のノイズキャンセラ3は、放送受信機のみに利用可能なものではなく、入力信号に混入した外来ノイズを除去するために広く適用することが可能な汎用性を有するものである。
次に、ラジオ放送を受信する車載型の受信機に設けられるノイズキャンセラの実施例について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施例のノイズキャンセラの構成を表したブロック図であり、図2と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図5は本実施例のノイズキャンセラの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4において、本実施例のノイズキャンセラ3は、受信機内で検波されたベースバンド信号(AM検波信号)Sin1に混入しているイグニッションノイズ等の外来ノイズNzを除去し、そのノイズを除去したベースバンド信号Soutを出力するように配線接続がなされている。
すなわち、受信機のチューナ部11が、受信アンテナANTに生じる高周波受信信号(RF受信信号)と同調周波数の局発信号とを混合して周波数変換を行うことで中間周波信号(IF信号)SIFを生成し、第1のIFバンドパスフィルタ12がその中間周波信号SIFを帯域制限して信号処理可能な振幅レベルに増幅することで、希望信号成分としてのベースバンド信号Sin1を生成するための第1中間周波信号SIF1を出力し、更にその第1中間周波信号SIF1を検波器13がAM検波することで、第1ベースバンド信号Sin1を生成して出力する。
更に、第1のIFバンドパスフィルタ12より広い通過周波数帯域を有する第2のIFバンドパスフィルタ14が、中間周波信号SIFを帯域制限して信号処理可能な振幅レベルに増幅することで第2中間周波信号SIF2を出力し、その第2中間周波信号SIF2を検波器15がAM検波することで、本実施例のノイズキャンセラ3がノイズ検出を行うためのベースバンド信号Sin2を生成して出力する。
そして、後述の加算器5の出力信号Soutをスピーカシステム等の側に出力することでAM放送番組をユーザ等に提供するようになっている。
次に、本実施例のノイズキャンセラ3の構成を詳述する。ノイズキャンセラ3は、検波器13の出力端子に、遅延時間を調整するためのディレー回路DLYを介して接続された乗算器4及びホールド回路6と、ホールド回路6に従属接続された乗算器7と、乗算器4,7の両者の出力を加算して出力信号Soutを出力する加算器5と、検波器15の出力端子に接続されたノイズ期間検出部8と、ノイズ期間検出部8に対して順に従属接続された補正期間設定部9とゲイン調整部10とを備えて構成されている。
ここで、ホールド回路6と乗算器4,7と加算器5は、図2に示したホールド部6とミュート部4,7と合成部5に相当しており、ノイズ期間検出部8と補正期間設定部9とゲイン調整部10も同様である。
ノイズ期間検出部8は、図4(b)に示す構成を有しており、第2ベースバンド信号Sin2に混入している高周波数域のノイズNzをハイパスフィルタ8aによって通過させることでノイズNzの抽出を行い、その抽出したノイズNzを平滑回路8bがエンベロープ検出することで平滑ノイズ成分を生成し、更に平滑ノイズ成分と所定の閾値THDとを比較器8cが比較して、平滑ノイズ成分が閾値THDより大振幅となる期間をノイズ混入期間τとして検出する。そして、検出したノイズ混入期間τを示すノイズ期間検出信号NPRDを補正期間設定部9へ出力する。
補正期間設定部9は、ノイズ期間検出信号NPRDを入力すると、ノイズ混入期間τと付加期間Taddの情報をゲイン調整部10に供給すると共に、ノイズ混入期間τと付加期間Taddとの合計の期間(すなわち、補正期間)(τ+Tadd)の間、論理“H”となる補正期間信号CPRDを生成して、ホールド回路6とゲイン調整部10に供給する。
ゲイン調整部10は、図4(c)に示すように、乗算器7に供給するゲイン調整信号GAのゲイン値(z)の変化パターンを演算する基本ゲインパターン演算部10aと、ゲイン調整信号GAのゲイン値zに基づいて、乗算器4に供給するゲイン調整信号GBのゲイン値(z)の変化パターンを演算する演算部10bを有して構成されている。
すなわち、基本ゲインパターン演算部10aは、補正期間設定部9から供給されるノイズ混入期間τと付加期間Taddの情報に基づいて、上記式(1)〜(3)を参照して説明したように、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)を1、ノイズ混入期間τの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)を0、付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)を0から1までの増加率(1/Tadd)で変化する値に設定する。
演算部10bは、基本ゲインパターン演算部10aで生成されるゲイン調整信号GBのゲイン値(z)に基づいて、(1−z)で表される演算を行うことにより、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)を設定する。
そして、ゲイン調整部10は、ゲイン調整信号GAを乗算器7に供給して、ホールド信号SHAとゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)との乗算演算を行わせることによって補間信号SAを生成させ、更に、ゲイン調整信号GBを乗算器4に供給して、ディレー回路DLYからのベースバンド信号Sin1とゲイン調整信号GBのゲイン値(z)との乗算演算を行わせることによって補正信号SBを生成させる。
加算器5は、補間信号SAと補正信号SBを加算することにより、ノイズNzを除去したベースバンド信号Sin1と相似な波形となる出力信号Soutを合成して出力する。
次に、かかる構成を有する本実施例のノイズキャンセラ3の動作について、図5を参照して説明する。なお、説明の便宜上、入力されるベースバンド信号Sin1,Sin2を共に入力信号Sinで示すこととする。また、ある時点t1からt2の期間内において外来ノイズNzが入力信号Sin(すなわち、ベースバンド信号Sin1,Sin2)に混入しているものとして説明する。
かかる入力信号Sinがノイズキャンセラ3に入力することとなると、ノイズ期間検出部8内のハイパスフィルタ8aが、ベースバンド信号Sin2に混入しているノイズNzを通過させ、平滑回路8bがそのノイズNzを平滑化することで平滑ノイズ成分ANzを生成し、更に比較器8cが閾値THDと平滑ノイズ成分ANzとを比較して、ノイズ混入期間τを示す論理“H”となるノイズ期間検出信号NPRDを出力する。
更に、補正期間設定部9がノイズ混入期間τと付加期間Taddの情報をゲイン調整部10に供給すると共に、補正期間(τ+Tadd)を示す補正期間信号CPRDを生成して出力する。
更に、ホールド回路6が、補正期間信号CPRDの指示に従って、補正期間の開始時点t1において入力信号Sinの信号成分をホールドすると共に、そのホールドした一定レベルのホールド信号成分Shldをホールド信号SHAとして、補正期間(τ+Tadd)の終了時点t3まで継続して出力する。
そして更に、ゲイン調整部10内の基本ゲインパターン演算部10aと演算部10bが、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)とゲイン調整信号GBのゲイン値(z)とを設定して、補正期間信号CPRDが論理“H”となっている期間内に、ミュート処理を行わせる。すなわち、補正期間信号CPRDが論理“H”から“L”に反転する時点t3までミュート処理を行わせる。
これにより、乗算器4が、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)の変化に従って、ベースバンド信号Sin1に対してミュート処理を施し、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
すなわち、乗算器4は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が1となるため、ベースバンド信号Sin1をそのまま補正信号SBとして出力し、更に、ノイズ混入期間τの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0となるため、ベースバンド信号Sin1の通過を実質的に阻止することで、振幅0の補正信号SBを出力し、更に、付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0から1に向かって変化するのに従って、ベースバンド信号Sin1に対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
一方、乗算器7も同様に、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)の変化に従って、ホールド信号SHAに対してミュート処理を施し、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
すなわち、乗算器7は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が0となるため、ホールド信号SHAの通過を実質的に阻止することで、振幅0の補間信号SAを出力し、更に、ノイズ混入期間τの期間内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1となるため、ホールド信号SHAのホールド信号成分Shldをそのまま補間信号SAとして通過させ、更に付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1から0に向かって変化するのに従ってホールド信号SHAに対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
そして、加算器5が、補正信号SBと補間信号SAを加算することにより、図示するような、ノイズが除去された波形から成る出力信号Soutを生成して出力する。
ここで、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、補正信号SBはベースバンド信号Sin1と同じ波形、補間信号SAは振幅0となることから、出力信号Soutはベースバンド信号Sin1と同じ波形となる。更に、ノイズ混入期間τの期間内では、補正信号SBは振幅0となり、補間信号SAはノイズNzがホールド信号成分Shldで置き換えられた波形となることから、出力信号Soutは、一定レベルのホールド信号成分Shldと同じ波形となる。更に、付加期間Taddでは、補正信号SBはベースバンド信号Sin1がミュート処理によって減衰された波形となり、補間信号SAはホールド信号SHAがミュート処理によって減衰された波形となることから、出力信号Soutは、減衰された補正信号SBと補間信号SAとの加算によってベースバンド信号Sin1に相似した波形となる。
そして更に、ノイズ混入期間τから付加期間Taddへと時間が経過する際の出力信号Soutの振幅は、一定レベルのホールド信号成分Shldから滑らかな振幅変化で連続的に変化していくため、高周波数のノイズ成分が発生しない。
すなわち、本実施例のノイズキャンセラ3では、ホールド信号成分Shldに続いて、付加期間Tadd内にミュート処理される補正信号SBと補間信号SAとの合成によって生じる、急峻に変化しない合成信号成分が継続することとなるため、高周波数のノイズを内部発生しない。
以上に説明したように、本実施例のノイズキャンセラ3によれば、AM検波されたベースバンド信号Sin1に混入しているノイズNzをホールド信号成分Shldに置き換えることで生成されるホールド信号SHAに対し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補間信号SAを生成すると共に、ノイズ混入期間τのベースバンド信号Sin1に対してその信号成分とノイズNzとを除去し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補正信号SBを生成して、これらの補間信号SAと補正信号SBを加算することで出力信号Soutを生成するので、ベースバンド信号Sin1に混入しているノイズNzの除去を行うことができ、且つ、高周波数のノイズ成分を内部発生することを防止することができる。
なお、AM放送受信機に設けたノイズキャンセラ3の実施例について説明したが、本実施例と実施形態のノイズキャンセラ3は、FM放送受信機にも適用することが可能である。更に、アナログ放送受信機への適用に限らず、地上ディジタル放送等のディジタル放送を受信するディジタル放送受信機への適用も可能である。すなわち、本実施例と実施形態のノイズキャンセラ3をディジタル回路構成とし、ディジタル放送受信機の検波器で検波されるベースバンド信号や復調器で復調される復調信号を入力信号として入力し、ディジタル信号処理を行うことで、内部で新たに高周波数のノイズ成分を発生させることなく、入力信号に混入しているノイズを除去することができる。
本発明は、入力信号に混入したノイズを除去するノイズキャンセラに関する。
信号処理技術分野では、処理すべき入力信号に混入している外来ノイズを除去することが重要である。
例えば、自動車に搭載される車載型の放送受信機等では、イグニッションノイズ等の外来ノイズの影響を受けやすい。そのため、一般に、受信した高周波数の受信信号(RF受信信号)と同調周波数の局発信号とを混合して周波数変換することで得られる中間周波信号(IF信号)に対して、直ちに検波及び復調等の処理を行わず、中間周波信号に混入している外来ノイズをノイズキャンセラで除去してから、検波及び復調等の処理を行っている。
図1(a)は、車載型の放送受信機等に一般に設けられている従来のノイズキャンセラの構成を表したブロック図、図1(b)は、そのノイズキャンセラの機能を表したタイミングチャートである。従来のノイズキャンセラは、ホールド部1とホールド制御部2とディレー回路DLYを有して構成されている。
ホールド制御部2は、中間周波信号(入力信号)Sinに混入しているノイズNzをハイパスフィルタ2aで抽出し、抽出したノイズNzを平滑回路2bで平滑化することで平滑ノイズANzを生成した後、その平滑ノイズANzと所定の閾値THDとを比較器2cで比較し、平滑ノイズANzのレベルが閾値THDより大きくなる期間をノイズ混入期間τとして検出して、論理“H”となるホールドゲート信号HDGTを出力する。
ディレー回路DLYは、ホールド制御部2で生じる遅延時間を調整するための遅延器である。
ホールド部1は、ホールドゲート信号HDGTが論理“L”のときには、入力信号Sinをそのまま通過させ、出力信号Soutとして検波器等へ出力する。一方、ホールドゲート信号HDGTが論理“H”のときにはホールド動作を継続し、ホールド信号成分Shldを出力信号Soutとして検波器等へ出力する。すなわち、ホールド部1は、ホールドゲート信号HDGTが論理“L”から“H”に反転する時点(ノイズNzの検出時点)t1に、入力信号Sinの信号成分をホールドすると共に、ホールドゲート信号HDGTが論理“H”となっている間、そのホールドした一定レベルのホールド信号成分Shldを出力し、ゲート信号HDGTが論理“H”から“L”に再び反転する時点(ノイズNzの終了時点)t2でホールド動作を終了して、再び入力信号Sinを出力信号Soutとして出力することによって、ノイズ混入期間τのノイズNzを除去することとしている。
ところで、上記従来のノイズキャンセラでは、ノイズ混入期間τが終了した時点t2において、ホールド部1の出力信号Soutがホールド信号成分Shldから入力信号Sinに切り替えられるため、出力信号Soutの波形が不連続となり、高周波数のノイズ成分が新たに発生する問題がある。
すなわち、ノイズ混入期間τで一定レベルに保持されていたホールド信号成分Shldが、ノイズ混入期間τの終了(ホールド解除)時点t2で急激に入力信号Sinに切り替えられるため、外来ノイズNzの除去がなされても、出力信号Soutの時点t2での波形が不連続となり、高周波数のノイズ成分が新たに発生する。このため、出力信号Soutに基づいて検波及び復調等の処理を行うと、検波信号と復調信号に歪み等が発生し、受信品質を向上させることが困難となる等の問題があった。
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、入力信号に対するホールド処理に際に、高周波数のノイズ成分を新たに内部生成することのないノイズキャンセラを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、入力信号に混入しているノイズを除去するノイズキャンセラであって、前記入力信号に混入している前記ノイズのノイズ混入期間を検出するノイズ期間検出手段と、前記ノイズ混入期間に付加期間を付加した期間を補正期間とする補正期間設定手段と、前記補正期間の間、前記入力信号をホールドしてホールド信号を出力するホールド手段と、前記入力信号に対してミュート処理を行うことで補正信号を生成する第1ミュート手段と、前記ホールド信号に対してミュート処理を行うことで補間信号を生成する第2ミュート手段と、少なくとも前記補正期間における前記ノイズ混入期間と前記付加期間において、前記第1,第2ミュート手段のゲインを調整するゲイン調整手段と、前記第1,第2ミュート手段で生成される前記補正信号と補間信号を合成することで、前記ノイズを除去した入力信号と相似な波形の出力信号を生成する合成手段と、を具備することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノイズキャンセラにおいて、前記ゲイン調整手段は、前記第1ミュート手段のゲインを、前記補正期間以外の期間では固定値に設定し、前記補正期間内の前記ノイズ混入期間では0に設定し、前記付加期間では0から前記固定値に変化する値に設定すると共に、前記第2ミュート手段のゲインを、前記補正期間以外の期間では0に設定し、前記補正期間内の前記ノイズ混入期間では前記固定値に設定し、前記付加期間では前記固定値から0に変化する値に設定することを特徴とする。
本発明の好適な実施形態について図2及び図3を参照して説明する。図2は、本実施形態のノイズキャンセラの構成を表したブロック図、図3は動作を説明するためのタイミングチャートである。
図2において、このノイズキャンセラ3は、第1ミュート部4と、合成部5、ホールド部6、第2ミュート部7、ノイズ期間検出部8、補正期間設定部9、ゲイン調整部10を備えて構成されており、入力信号Sinに混入しているノイズを除去して出力信号Soutを出力する。更に、本実施形態では、タイミング調整のためにディレー回路DLYを設けている。
ノイズ期間検出部8は、入力信号Sinに混入しているノイズを検出し、ノイズの生じている期間τを検出する。そして、そのノイズ混入期間τを示すノイズ期間検出信号NPRDを出力する。
補正期間設定部9は、ノイズ期間検出信号NPRDのノイズ混入期間τに続けて予め決められた所定の付加時間Taddを付加することで補正期間(τ+Tadd)を設定し、その補正期間(τ+Tadd)を示す情報と共に、補正期間信号CPRDを出力する。
ディレー回路DLYは、上述したようにノイズキャンセラ3の処理に要する遅延時間を調整するための遅延器であり、主として、ノイズ期間検出部8と補正期間設定部9との内部処理時間に起因する遅延時間を調整するために設けられている。
ホールド部6は、補正期間信号CPRDに従って、入力信号Sinを補正期間(τ+Tadd)の間ホールドして出力する。すなわち、ホールド部6は、補正期間(τ+Tadd)を除く期間では入力信号Sinをそのまま通過させて出力し、補正期間(τ+Tadd)の開始時点で入力信号Sinの信号成分をホールドし、ホールドした一定レベルの信号成分を補正期間(τ+Tadd)の終了時点まで保持して出力する。そして、出力する信号をホールド信号SHAとしてミュート部7に供給する。
ゲイン調整部10は、補正期間信号CPRDで示される補正期間(τ+Tadd)の間において、ミュート部4,7のゲインを可変調整するためのゲイン調整信号GA,GBを出力する。
すなわち、ゲイン調整部10は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、次式(1)で表されるように、ゲイン調整信号GBのゲイン値を固定値1、ゲイン調整信号GAのゲイン値を0に設定する。更に、補正期間(τ+Tadd)のうちのノイズ混入期間τでは、次式(2)で表されるように、ゲイン調整信号GBのゲイン値を0、ゲイン調整信号GAのゲイン値を固定値1に設定する。更に、補正期間(τ+Tadd)のうちの付加期間Taddでは、ゲイン調整信号GBのゲイン値を、増加率(1/Tadd)の下で経過時間t(すなわち、0≦t≦Tadd)に従って、0から1まで可変調整すると共に、ゲイン調整信号GAのゲイン値を、増加率(1−(1/Tadd))の下で経過時間t(すなわち、0≦t≦Tadd)に従って、1から0まで可変調整する。
そして、ゲイン調整部10は、ゲイン調整信号GBのゲイン値によってミュート部4のゲインを調整すると共に、ゲイン調整信号GAのゲイン値によってミュート部7のゲインを調整する。
ミュート部4は、入力信号Sinを入力し、ゲイン調整信号GBで指定されるゲイン値に従ってミュート処理を施すことにより、補正信号SBを生成して合成部5に供給する。すなわち、次式(4)で表されるように、上記式(1)〜(3)で示したゲイン調整信号GBのゲイン値と入力信号Sinとの乗算に相当するミュート処理を行うことで、補正信号SBを生成して出力する。
ミュート部7は、ホールド信号SHAを入力し、ゲイン調整信号GAで指定されるゲイン値に従ってミュート処理を施すことにより、補間信号SAを生成して合成部5に供給する。すなわち、次式(5)で表されるように、上記式(1)〜(3)で示したゲイン調整信号GAのゲイン値とホールド信号SHAとの乗算に相当するミュート処理を行うことで、補間信号SAを生成して出力する。
合成部5は、次式(6)で表されるように、補正信号SBと補間信号SAを合成(振幅を加算)することで、入力信号Sinからノイズが取り除かれた出力信号Soutを生成して出力する。
次に、かかる構成を有するノイズキャンセラ3の動作について図3を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図3に例示するように、ある時点t1からt2の期間内において外来ノイズNzが入力信号Sinに混入しているものとして説明する。
かかる入力信号Sinがノイズキャンセラ3に入力することとなると、ノイズ期間検出部8がノイズNzの発生時点t1から終了時点t2までの期間であるノイズ混入期間τを検出してノイズ期間検出信号NPRDを出力し、更に、補正期間設定部9がノイズ混入期間τに付加期間Taddを付加することによって、補正期間(τ+Tadd)を示す補正期間信号CPRDを生成して出力する。
更に、ホールド部6が、補正期間信号CPRDの指示に従って、補正期間(τ+Tadd)の開始時点t1の入力信号Sinの信号成分(より厳密に言えば、ノイズNzの混入時直前の信号成分)をホールドすると共に、そのホールドした一定レベルのホールド信号SHAを補正期間の間継続して出力する。
すなわち、ホールド部6は、補正期間以外の期間では入力信号Sinをそのまま通過させ、補正期間の期間内では、入力信号Sinに混入していたノイズNzに代えて、一定レベルのホールド信号成分Shldをホールド信号SHAとして出力する。
そして更に、ゲイン調整部10が、上記式(1)〜(3)で表されるゲイン調整信号GA,GBの各ゲイン値に従って、ミュート部7,4の各ゲインを調整する。
これにより、ミュート部4が、ゲイン調整信号GBのゲイン値(図3中、ゲイン値をzで示している)の変化に従って、入力信号Sinに対してミュート処理を施し、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
すなわち、ミュート部4は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が1となるため、入力信号Sinをそのまま補正信号SBとして出力し、更に、期間τ内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0となるため、入力信号Sinの通過を実質的に阻止することで、振幅0の補正信号SBを出力し、更に、付加期間Tadd内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0から1に向かって変化するのに従って、入力信号Sinに対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
一方、ミュート部7も同様に、ゲイン調整信号GAのゲイン値(図3中、ゲイン値を(1−z)で示している)の変化に従って、ホールド信号SHAに対してミュート処理を施し、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
すなわち、ミュート部7は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が0となるため、ホールド信号SHAの通過を実質的に阻止することで、振幅0の補間信号SAを出力し、更に、期間τ内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1となるため、一定レベルのホールド信号SHA(すなわち、ホールド信号成分Shld)をそのまま補間信号SAとして通過させ、更に付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1から0に向かって変化する(付加期間Taddの終了時点t3に向かって変化する)のに従ってホールド信号SHAに対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
そして、合成部5が、補正信号SBと補間信号SAを合成することにより、図示するような、ノイズが除去された波形から成る出力信号Soutを生成して出力する。
ここで、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、補正信号SBは入力信号Sinと同じ波形、補間信号SAは振幅0となることから、出力信号Soutは入力信号Sinと同じ波形となる。更に、ノイズ混入期間τの期間内では、補正信号SBは振幅0となり、補間信号SAはノイズNzがホールド信号成分Shldで置き換えられた波形となることから、出力信号Soutは、一定レベルのホールド信号成分Shldと同じ波形となる。更に、付加期間Taddでは、補正信号SBは入力信号Sinがミュート処理によって減衰された波形となり、補間信号SAはホールド信号SHAがミュート処理によって減衰された波形となることから、出力信号Soutは、減衰された補正信号SBと補間信号SAとの合成によって入力信号Sinに相似した波形となる。
そして更に、ノイズ混入期間τから付加期間Taddへと時間が経過する際の出力信号Soutの振幅は、一定レベルのホールド信号SHAから滑らかな振幅変化で連続的に変化していくため、高周波数のノイズ成分が発生しない。
すなわち、従来技術のノイズキャンセラでは、図1(b)を参照して説明したように、ホールド動作の終了時点t2において一定レベルのホールド信号成分Shldが瞬断される結果、高周波のノイズが新たに内部生成されてしまうという問題があったが、本実施形態のノイズキャンセラ3では、一定レベルのホールド信号成分Shldに続いて、付加期間Tadd内にミュート処理される補正信号SBと補間信号SAとの合成によって生じる、急峻に変化しない合成信号成分が継続することとなるため、高周波数のノイズを内部発生しない。
以上に説明したように、本実施形態のノイズキャンセラ3によれば、入力信号Sinに混入しているノイズNzをホールド信号成分Shldに置き換えることで生成されるホールド信号SHAに対し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補間信号SAを生成すると共に、ノイズ混入期間τの入力信号Sinに対してその信号成分とノイズNzとを除去し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補正信号SBを生成して、これらの補間信号SAと補正信号SBを合成することで出力信号Soutを生成するので、入力信号Sinに混入しているノイズNzの除去を行うことができ、且つ、高周波数のノイズ成分を内部発生することを防止することができる。
そして、本実施形態のノイズキャンセラ3を、例えば車載型の放送受信機等に設け、その放送受信機のチューナ部から出力される中間周波信号(IF信号)に混入する外来ノイズ(例えばイグニッションノイズ等)を除去して検波器に供給したり、また、検波器で検波されるベースバンド信号に混入する同様の外来ノイズを除去して復調器に供給することにより、より品質に優れたベースバンド信号や復調信号を再生させることができる。
なお、本実施形態のノイズキャンセラ3は、放送受信機のみに利用可能なものではなく、入力信号に混入した外来ノイズを除去するために広く適用することが可能な汎用性を有するものである。
次に、ラジオ放送を受信する車載型の受信機に設けられるノイズキャンセラの実施例について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施例のノイズキャンセラの構成を表したブロック図であり、図2と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図5は本実施例のノイズキャンセラの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4において、本実施例のノイズキャンセラ3は、受信機内で検波されたベースバンド信号(AM検波信号)Sin1に混入しているイグニッションノイズ等の外来ノイズNzを除去し、そのノイズを除去したベースバンド信号Soutを出力するように配線接続がなされている。
すなわち、受信機のチューナ部11が、受信アンテナANTに生じる高周波受信信号(RF受信信号)と同調周波数の局発信号とを混合して周波数変換を行うことで中間周波信号(IF信号)SIFを生成し、第1のIFバンドパスフィルタ12がその中間周波信号SIFを帯域制限して信号処理可能な振幅レベルに増幅することで、希望信号成分としてのベースバンド信号Sin1を生成するための第1中間周波信号SIF1を出力し、更にその第1中間周波信号SIF1を検波器13がAM検波することで、第1ベースバンド信号Sin1を生成して出力する。
更に、第1のIFバンドパスフィルタ12より広い通過周波数帯域を有する第2のIFバンドパスフィルタ14が、中間周波信号SIFを帯域制限して信号処理可能な振幅レベルに増幅することで第2中間周波信号SIF2を出力し、その第2中間周波信号SIF2を検波器15がAM検波することで、本実施例のノイズキャンセラ3がノイズ検出を行うためのベースバンド信号Sin2を生成して出力する。
そして、後述の加算器5の出力信号Soutをスピーカシステム等の側に出力することでAM放送番組をユーザ等に提供するようになっている。
次に、本実施例のノイズキャンセラ3の構成を詳述する。ノイズキャンセラ3は、検波器13の出力端子に、遅延時間を調整するためのディレー回路DLYを介して接続された乗算器4及びホールド回路6と、ホールド回路6に従属接続された乗算器7と、乗算器4,7の両者の出力を加算して出力信号Soutを出力する加算器5と、検波器15の出力端子に接続されたノイズ期間検出部8と、ノイズ期間検出部8に対して順に従属接続された補正期間設定部9とゲイン調整部10とを備えて構成されている。
ここで、ホールド回路6と乗算器4,7と加算器5は、図2に示したホールド部6とミュート部4,7と合成部5に相当しており、ノイズ期間検出部8と補正期間設定部9とゲイン調整部10も同様である。
ノイズ期間検出部8は、図4(b)に示す構成を有しており、第2ベースバンド信号Sin2に混入している高周波数域のノイズNzをハイパスフィルタ8aによって通過させることでノイズNzの抽出を行い、その抽出したノイズNzを平滑回路8bがエンベロープ検出することで平滑ノイズ成分を生成し、更に平滑ノイズ成分と所定の閾値THDとを比較器8cが比較して、平滑ノイズ成分が閾値THDより大振幅となる期間をノイズ混入期間τとして検出する。そして、検出したノイズ混入期間τを示すノイズ期間検出信号NPRDを補正期間設定部9へ出力する。
補正期間設定部9は、ノイズ期間検出信号NPRDを入力すると、ノイズ混入期間τと付加期間Taddの情報をゲイン調整部10に供給すると共に、ノイズ混入期間τと付加期間Taddとの合計の期間(すなわち、補正期間)(τ+Tadd)の間、論理“H”となる補正期間信号CPRDを生成して、ホールド回路6とゲイン調整部10に供給する。
ゲイン調整部10は、図4(c)に示すように、乗算器7に供給するゲイン調整信号GAのゲイン値(z)の変化パターンを演算する基本ゲインパターン演算部10aと、ゲイン調整信号GAのゲイン値zに基づいて、乗算器4に供給するゲイン調整信号GBのゲイン値(z)の変化パターンを演算する演算部10bを有して構成されている。
すなわち、基本ゲインパターン演算部10aは、補正期間設定部9から供給されるノイズ混入期間τと付加期間Taddの情報に基づいて、上記式(1)〜(3)を参照して説明したように、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)を1、ノイズ混入期間τの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)を0、付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)を0から1までの増加率(1/Tadd)で変化する値に設定する。
演算部10bは、基本ゲインパターン演算部10aで生成されるゲイン調整信号GBのゲイン値(z)に基づいて、(1−z)で表される演算を行うことにより、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)を設定する。
そして、ゲイン調整部10は、ゲイン調整信号GAを乗算器7に供給して、ホールド信号SHAとゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)との乗算演算を行わせることによって補間信号SAを生成させ、更に、ゲイン調整信号GBを乗算器4に供給して、ディレー回路DLYからのベースバンド信号Sin1とゲイン調整信号GBのゲイン値(z)との乗算演算を行わせることによって補正信号SBを生成させる。
加算器5は、補間信号SAと補正信号SBを加算することにより、ノイズNzを除去したベースバンド信号Sin1と相似な波形となる出力信号Soutを合成して出力する。
次に、かかる構成を有する本実施例のノイズキャンセラ3の動作について、図5を参照して説明する。なお、説明の便宜上、入力されるベースバンド信号Sin1,Sin2を共に入力信号Sinで示すこととする。また、ある時点t1からt2の期間内において外来ノイズNzが入力信号Sin(すなわち、ベースバンド信号Sin1,Sin2)に混入しているものとして説明する。
かかる入力信号Sinがノイズキャンセラ3に入力することとなると、ノイズ期間検出部8内のハイパスフィルタ8aが、ベースバンド信号Sin2に混入しているノイズNzを通過させ、平滑回路8bがそのノイズNzを平滑化することで平滑ノイズ成分ANzを生成し、更に比較器8cが閾値THDと平滑ノイズ成分ANzとを比較して、ノイズ混入期間τを示す論理“H”となるノイズ期間検出信号NPRDを出力する。
更に、補正期間設定部9がノイズ混入期間τと付加期間Taddの情報をゲイン調整部10に供給すると共に、補正期間(τ+Tadd)を示す補正期間信号CPRDを生成して出力する。
更に、ホールド回路6が、補正期間信号CPRDの指示に従って、補正期間の開始時点t1において入力信号Sinの信号成分をホールドすると共に、そのホールドした一定レベルのホールド信号成分Shldをホールド信号SHAとして、補正期間(τ+Tadd)の終了時点t3まで継続して出力する。
そして更に、ゲイン調整部10内の基本ゲインパターン演算部10aと演算部10bが、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)とゲイン調整信号GBのゲイン値(z)とを設定して、補正期間信号CPRDが論理“H”となっている期間内に、ミュート処理を行わせる。すなわち、補正期間信号CPRDが論理“H”から“L”に反転する時点t3までミュート処理を行わせる。
これにより、乗算器4が、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)の変化に従って、ベースバンド信号Sin1に対してミュート処理を施し、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
すなわち、乗算器4は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が1となるため、ベースバンド信号Sin1をそのまま補正信号SBとして出力し、更に、ノイズ混入期間τの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0となるため、ベースバンド信号Sin1の通過を実質的に阻止することで、振幅0の補正信号SBを出力し、更に、付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GBのゲイン値(z)が0から1に向かって変化するのに従って、ベースバンド信号Sin1に対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補正信号SBを出力する。
一方、乗算器7も同様に、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)の変化に従って、ホールド信号SHAに対してミュート処理を施し、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
すなわち、乗算器7は、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が0となるため、ホールド信号SHAの通過を実質的に阻止することで、振幅0の補間信号SAを出力し、更に、ノイズ混入期間τの期間内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1となるため、ホールド信号SHAのホールド信号成分Shldをそのまま補間信号SAとして通過させ、更に付加期間Taddの期間内では、ゲイン調整信号GAのゲイン値(1−z)が1から0に向かって変化するのに従ってホールド信号SHAに対してミュート処理を施すことで、図示するような波形の補間信号SAを出力する。
そして、加算器5が、補正信号SBと補間信号SAを加算することにより、図示するような、ノイズが除去された波形から成る出力信号Soutを生成して出力する。
ここで、補正期間(τ+Tadd)以外の期間では、補正信号SBはベースバンド信号Sin1と同じ波形、補間信号SAは振幅0となることから、出力信号Soutはベースバンド信号Sin1と同じ波形となる。更に、ノイズ混入期間τの期間内では、補正信号SBは振幅0となり、補間信号SAはノイズNzがホールド信号成分Shldで置き換えられた波形となることから、出力信号Soutは、一定レベルのホールド信号成分Shldと同じ波形となる。更に、付加期間Taddでは、補正信号SBはベースバンド信号Sin1がミュート処理によって減衰された波形となり、補間信号SAはホールド信号SHAがミュート処理によって減衰された波形となることから、出力信号Soutは、減衰された補正信号SBと補間信号SAとの加算によってベースバンド信号Sin1に相似した波形となる。
そして更に、ノイズ混入期間τから付加期間Taddへと時間が経過する際の出力信号Soutの振幅は、一定レベルのホールド信号成分Shldから滑らかな振幅変化で連続的に変化していくため、高周波数のノイズ成分が発生しない。
すなわち、本実施例のノイズキャンセラ3では、ホールド信号成分Shldに続いて、付加期間Tadd内にミュート処理される補正信号SBと補間信号SAとの合成によって生じる、急峻に変化しない合成信号成分が継続することとなるため、高周波数のノイズを内部発生しない。
以上に説明したように、本実施例のノイズキャンセラ3によれば、AM検波されたベースバンド信号Sin1に混入しているノイズNzをホールド信号成分Shldに置き換えることで生成されるホールド信号SHAに対し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補間信号SAを生成すると共に、ノイズ混入期間τのベースバンド信号Sin1に対してその信号成分とノイズNzとを除去し、付加期間Tadd内においてミュート処理を施すことで補正信号SBを生成して、これらの補間信号SAと補正信号SBを加算することで出力信号Soutを生成するので、ベースバンド信号Sin1に混入しているノイズNzの除去を行うことができ、且つ、高周波数のノイズ成分を内部発生することを防止することができる。
なお、AM放送受信機に設けたノイズキャンセラ3の実施例について説明したが、本実施例と実施形態のノイズキャンセラ3は、FM放送受信機にも適用することが可能である。更に、アナログ放送受信機への適用に限らず、地上ディジタル放送等のディジタル放送を受信するディジタル放送受信機への適用も可能である。すなわち、本実施例と実施形態のノイズキャンセラ3をディジタル回路構成とし、ディジタル放送受信機の検波器で検波されるベースバンド信号や復調器で復調される復調信号を入力信号として入力し、ディジタル信号処理を行うことで、内部で新たに高周波数のノイズ成分を発生させることなく、入力信号に混入しているノイズを除去することができる。
従来のノイズキャンセラの構成及び動作を説明するための図である。
本発明の実施形態に係るノイズキャンセラの構成を表したブロック図である。
図2に示したノイズキャンセラの動作を説明するためのタイミングチャートである。
実施例に係るノイズキャンセラの構成を表したブロック図である。
図4に示したノイズキャンセラの動作を説明するためのタイミングチャートである。
符号の説明
3…ノイズキャンセラ
4…第1ミュート部
5…合成部
6…ホールド部
7…第2ミュート部
8…ノイズ期間検出部
9…補正期間設定部
10…ゲイン調整部