JPWO2006095775A1 - 水溶性ヒアルロン酸修飾物とglp−1アナログの結合体 - Google Patents

水溶性ヒアルロン酸修飾物とglp−1アナログの結合体 Download PDF

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Abstract

本発明は、水溶性のヒアルロン酸修飾物に1以上のグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アナログが結合したヒアルロン酸−ペプチド結合体またはその塩、特に、水溶性のヒアルロン酸修飾物において、ヒアルロン酸のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基の70%以上がN−置換アミド基に変換されており、ここで当該ヒアルロン酸修飾物中の各N−置換アミド基の置換基は同一であっても異なってもよく、当該置換基の少なくとも1つが前記GLP−1アナログと連結する2価の連結基である、前記ヒアルロン酸−ペプチド結合体またはその塩に関する。

Description

本発明は、糖尿病および高血糖症に起因する糖尿病性合併症、肥満症の予防または治療薬として有用な、水溶性ヒアルロン酸修飾物とGLP−1アナログの結合体(コンジュゲート)、並びにその結合体を含む持続性糖尿病および高血糖症に起因する糖尿病性合併症、肥満症の予防または治療薬に関する。
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、食物摂取に応答して小腸L−細胞から分泌される31アミノ酸からなるペプチドである。膵臓ベータ細胞に作用し、インスリン分泌を促進し、血清中グルコース量を減少させることが知られている(非特許文献1を参照)。この作用は血糖値が低い時には見られないことから低血糖のリスクが低いこと、さらに、GLP−1にはインスリンを産生するベータ細胞の増殖、前駆細胞からの分化誘導作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排出遅延作用あるいは摂食抑制作用などがあることが知られており(非特許文献1を参照)、糖尿病および高血糖症に起因する糖尿病性合併症、肥満症の予防または治療薬としての利用への期待が高い。しかし、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)による分解と腎からの排泄により、GLP−1の血中半減期は数分間と短く、糖尿病および高血糖症に起因する糖尿病性合併症、肥満症の予防または治療薬として使用するためには頻回投与が必要になる。生物活性を維持し、DPPIV耐性を付与した様々なGLP−1類縁体、誘導体(アナログ)が報告されている(特許文献1〜8を参照)が、腎排泄は回避できないため血中滞留時間の延長は十分ではない。
また、一般に、低分子薬物、ペプチド薬物、タンパク質薬物等の血中滞留性の向上、安定性の向上、溶解性の向上、抗原性の低減等を目的として、薬物と水溶性ポリマーとの結合体の形成(コンジュゲーション)が試みられている。特に、ポリエチレングリコール(以下、「PEG」とも称す)は、その不活性な性質と生体内でのタンパク質による薬物の吸着を防ぐ効果を有することから広く用いられており、PEG結合体化タンパク質は医薬品として既に実用化されている。しかし、PEGは生分解性ポリマーではない為、長期投与により体内に蓄積した場合の安全性等の問題は明らかでない。更には、最近、PEG結合体化リポソームにおいて投与2回目のクリアランスが異常に早い現象(Accerelated Blood Clearance現象)が報告されており(非特許文献2および3を参照)、PEG結合体化医薬品の安全性、有効性は充分に確立されたとは言い難い。
ヒアルロン酸(以下、「HA」とも称す)は、1934年、K.Meyerによって牛の眼の硝子体から単離された多糖であり、細胞外マトリックスの主成分として古くから知られている。HAは、D−グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ(1→3)グリコシド結合により連結された二糖単位から成るグルコサミドグリカンの一種である。ヒアルロン酸は、その化学的および物理的構造に種差が無く、ヒトにおいてもヒアルロン酸の代謝系が存在する。さらに免疫性または毒性の点に関しても非常に安全な生体材料(Biomaterial)ということができる。近年、細胞の接着、増殖、移動の誘導に関するヒアルロン酸の生理活性物質としての側面が注目されている。また、微生物による高分子量のヒアルロン酸の大量生産が可能となり、関節疾患治療薬などの医薬として実用化されており、化粧品等の分野においても実用化が進んでいる。さらに、薬物をヒアルロン酸と結合体化することで、薬物の癌組織へのターゲティング(特許文献9を参照)、肝臓へのターゲティング(特許文献10を参照)、抗原性の低減(特許文献11を参照)、血中滞留時間の延長(特許文献12、13および14を参照)等が達成できるという報告がなされている。
汎用されているPEGと比べて、薬物の結合体担体としてヒアルロン酸を用いる際の利点は、生分解性を有する点、巨大サイズ化が可能な点、さらに、1分子中に多くの反応点を持つため、複数の薬物(同一薬物を複数、或いは2種類以上の薬物)を1分子中に担持できるということである。このような利点を有するヒアルロン酸を薬物結合体担体として用いることは、ターゲティング、徐放等、より高度な薬物動態制御機能を持つ結合体を設計開発する手段となる。また、ヒアルロン酸は生分解性である上に、その化学的構造に種差が無いことから、安全性という点においてもPEGよりも優れた担体であるといえる。
しかし、ヒアルロン酸自体の血中滞留時間は短く、静脈内投与(以下、「iv」とも称す)で半減期が2分であると報告されている(非特許文献4を参照)。本発明者の検討においても、ただ単にヒアルロン酸を薬物に結合体化しただけでは、薬物の血中滞留時間の大きな延長や、薬効の持続性の向上は確認されなかった。ヒアルロン酸の主代謝部位は肝臓およびリンパ腺であり、その代謝は、主にCD44、RHAMM、HARE等のヒアルロン酸に特異的に結合する細胞膜局在レセプターを介した細胞内への取り込みとそれに引き続くヒアルロニダーゼによる分解によるものである。これらのレセプター分子は共に、ヒアルロン酸の連続した遊離のカルボキシ基(6糖)を主な認識部位にしていることが報告されている(非特許文献5を参照)。
従って、血中滞留時間が短いというヒアルロン酸の問題を克服すべく、ヒアルロン酸に置換基を導入したヒアルロン酸修飾物を薬物担体として利用する試みもある(特許文献4、5および6を参照)。一般に、ヒアルロン酸に置換基を導入すればその血中滞留時間は延長され、その程度は置換基の導入率と相関すると考えられる。ヒアルロン酸の様々な位置に置換基が導入されたヒアルロン酸修飾物が報告されている。その中でも、ヒアルロン酸におけるグルクロン酸部分のカルボキシ基に加水分解されにくいアミド結合を介して置換基を導入することが、得られるヒアルロン酸修飾物とヒアルロン酸レセプターとの結合阻害において効果的であり、当該ヒアルロン酸修飾物は血中滞留時間の面において優れていると考えられる。
一方、ヒアルロン酸をテトラブチルアンモニウム塩にし、ジメチルスルホキシド中で置換基と反応させることによって、ヒアルロン酸のカルボキシ基をアミド化したヒアルロン酸修飾物(特許文献7を参照)も報告されているが、この発明は架橋体調製を目的としたもので、血中滞留性向上を目指したものではない。さらに言えば、この発明においては縮合剤として1,1−カルボニルジイミダゾール(以下、「CDI」とも称す)を用いている。我々の検討では、縮合剤としてCDIを用いても血中滞留性が充分に向上された(ヒアルロニダーゼによる分解に対して充分な耐性を持つような)ヒアルロン酸誘導体を得ることはできず、さらに、反応中にヒアルロン酸分子量が大きく低下することが確認されている。
これら以外にも、水と極性有機溶媒の混合溶媒中で、ヒアルロン酸のカルボキシ基に置換基を導入した例も報告されている(特許文献8を参照)。しかしながら、得られたヒアルロン酸修飾物について、血中滞留時間の延長が見られるかどうかについては一切触れられていない。
このように、薬物担体として実用的な水溶性ヒアルロン酸修飾物、特に血中滞留時間を実用的なレベルまで延長した水溶性ヒアルロン酸修飾物は知られていない。
GLP−1アナログのポリマー結合体としては、C末端でPEGと結合体化したものが報告されているが(国際公開WO04/022004号パンフレット、国際公開WO03/040309号パンフレット)、血中滞留性を改善した水溶性ヒアルロン酸修飾物とGLP−1アナログとの結合体の報告は無い。
国際公開WO91/11457号パンフレット、 特開平11/310597号公報、 国際公開WO99/43705号パンフレット、 国際公開WO00/069911号パンフレット、 国際公開WO95/31214号パンフレット、 国際公開WO00/07617号パンフレット、 国際公開WO03/103572号パンフレット、 国際公開WO97/29180号パンフレット 国際公開WO92/06714号パンフレット 特開2001−81103号公報 特開平2−273176号公報 特開平5−85942号公報 国際公開WO01/05434号パンフレット 国際公開WO01/60412号パンフレット 特表2002−519481号公報 国際公開WO94/19376号パンフレット 国際公開WO04/022004号パンフレット、 国際公開WO03/040309号パンフレット Trends Pharacol.Sci.第24巻、第377−383頁、2003年 Int.J.Pharm.第255巻、第167−174頁、2003年 J.Control.Rel.第88巻、第35−42頁、2003年 J.Inter.Med.第242巻、第27−33頁、1997年 Exp.Cell Res.第228巻、第216−228頁、1996年
発明が解決しようとする課題は、糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、または肥満症などの慢性疾患の予防または治療に有用なGLP−1アナログ結合体であって、実用的な血中滞留時間を有し、かつ生分解性で安全なGLP−1アナログ結合体を提供することにある。さらに、前記GLP−1アナログ結合体の製造方法、当該結合体の製造に使用することができるGLP−1アナログ、および当該結合体を含む医薬組成物および治療方法を提供することにある。
本発明者は、かかる課題を解決する為に鋭意研究を進めたところ、非プロトン性極性溶媒中で、特定の縮合剤を用い、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸のカルボキシ基に置換基をアミド結合で導入することにより得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物とGLP−1アナログの結合体が、実用的なレベルの血中滞留時間を有することを見出し、また、当該結合体が持続的な血糖降下作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
本発明の1つの側面によれば、水溶性のヒアルロン酸修飾物に1以上のグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アナログが結合した、ヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。当該GLP−1アナログは、多価、好ましくは2価の連結基を介して前記ヒアルロン酸修飾物に結合する。上記ヒアルロン酸−ペプチド結合体の塩は、特に限定されないが、例えば医薬として許容な塩(例えば、酸付加塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、リン酸塩など)、および塩基付加塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩など))が含まれる。
水溶性のヒアルロン酸修飾物は、特に限定はされないが、例えば、ヒアルロン酸の分子中に含まれるカルボキシル基が置換アミド基に変換された化合物が用いられる。本発明に使用される水溶性のヒアルロン酸修飾物は、好ましくは、ヒアルロン酸のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基の70%以上がN−置換アミド基に変換されており、ここで当該ヒアルロン酸修飾物中の各N−置換アミド基の置換基は同一であっても異なってもよく、当該置換基の少なくとも1つが前記GLP−1アナログと連結する2価の連結基でありうる。
本発明の別の側面によれば、GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端側に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであり(前記アミノ酸配列の置換は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換されてもよい)、ここでXaは直接結合またはプロリン、グリシン、セリンおよびグルタミン酸から独立に選択される1〜9のアミノ酸からなる配列であり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基はアミド基に変換されていてもよい、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。
本発明の当該側面における1つの態様によれば、GLP−1アナログは、例えば、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列の8位のアラニン(Ala8)が天然または非天然アミノ酸に置換されている配列からなるペプチドであり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基はアミド基に変換されていてもよい。ここで、前記アラニンと置換する天然または非天然アミノ酸としては、例えば、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン、アルギニンおよびアミノ酪酸などが挙げられる。好ましくは、前記アラニンは、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびスレオニンから選択されるアミノ酸、さらに好ましくはグリシンおよびセリンから選択されるアミノ酸と置換される。
本発明の当該側面における別の態様によれば、本発明に使用されるGLP−1アナログは、
His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Xa−Cys(配列番号1)
で表されるペプチド、または当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されたペプチドあってもよい。ここで、Xaは既に定義した通りであり、例えば直接結合または−Gly−Pro−Pro−Pro−が含まれる。
本発明の別の側面において、GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−36)またはGLP−1(7−37)に、−Qa−SHで表されるメルカプト化合物を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであり(前記アミノ酸配列は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換されてもよい)、
ここでQaは−NH−X5−、−CO−X5−または−CONH−X5−から選択され、ペプチドのC末端アミノ酸残基に含まれるカルボキシ基、アミノ基または水酸基と連結してアミド結合、ウレア結合またはエステル結合を形成し、
5はC1-50アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよい、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。
本発明のさらなる側面において、2価の連結基の一端がGLP−1アナログに導入されたメルカプト基において結合する、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。
本発明のこの側面の1つの態様において、2価の連結基は、式(I):
Figure 2006095775
[式中、QはC1-400アルキレン基(例えば、C1-10アルキレン基を含む)であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、さらに当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる炭素原子の間あるいは末端に−CO−、−NHCO−または−CONH−が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
Xは、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、もしくは−CH(−CH3)−CH2**であり、Rは水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
XおよびRは結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(II):
Figure 2006095775
で表される基を形成し;
*はヒアルロン酸修飾物中のアミド基の窒素原子への結合位置を表し、**はGLP−1アナログのメルカプト基の硫黄原子への結合位置を表す]
で表されうる。
上述の2価の連結基には、例えば、式(Ia):
Figure 2006095775
[式中、Q1はC1-10アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
1は、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、もしくは−CH(−CH3)−CH2**であり、R1は水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
1およびR1は結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(IIa):
Figure 2006095775
で示される基を形成し;または
1は、式(Ib):
Figure 2006095775
(式中、Q2はC1-10アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間には酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
2は、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、もしくは−CH(−CH3)−CH2**であり、R2は水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
2およびR2は結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(IIb):
Figure 2006095775
で示される基を形成し;または
2は、式(Ic):
Figure 2006095775
(式中、Q3はC1-10アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間には酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
3は、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、−CH(−CH3)−CH2**であり、R3は水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
3およびR3は結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(IIc):
Figure 2006095775
で表される基を形成する)
で表される基であり)
で表される基であり;
*はヒアルロン酸修飾物中のアミド基の窒素原子への結合位置を表し、**はGLP−1アナログのメルカプト基の硫黄原子への結合位置を表す]
で表される2価の連結基も含まれる。
上記式(Ia)において、Q1は、例えば、式:−(CH2m−、または−(CH2m−(O−CH2−CH2n
[式中、mは、例えば1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは2〜10からそれぞれ独立に選択される整数であり、nは、例えば1〜200、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜4から選択される整数である]
で表される基であってもよい。
上記式(Ia)において、X1は、例えば、式:−(CH2m−CH2−(O−CH2−CH2p−NHCO−(CH2q−Y1**、または−(CH2r−Y1**
[式中、mは、例えば1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは2〜10から選択される整数であり、pは、例えば1〜200、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜4から選択される整数であり、qおよびrは、例えば1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10から選択される整数であり、Y1は式(IIc):
Figure 2006095775
で表される基であり、
**はGLP−1アナログのメルカプト基の硫黄原子への結合位置を表す]
で表される基であってもよい。
本発明のさらに別の側面によれば、式(VIa):
Figure 2006095775
[式中、Ra1、Ra2、Ra3およびRa4は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル基またはC1-6アルキルカルボニル基から選択され、
0は、既に定義したXまたはX1を表し、
0は、既に定義したQまたはQ1を表し、
Rおよび**は、既に定義されたとおりである]
で表される繰り返し単位、および式(VIb):
Figure 2006095775
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、X0、Q0、Rおよび**は、既に定義されたとおりであり、X6は−CH=CH2、−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−(CH2m−Y2または−(CH2m−(O−CH2−CH2n−Y2であり、Y2は式(VII):
Figure 2006095775
で表される基であり、
mは、例えば1〜20、好ましくは1〜10から選択される整数であり、
nは、例えば1〜200、好ましくは1〜25から選択される整数である]
で表される繰り返し単位、および式(VIc):
Figure 2006095775
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Q0およびRは、既に定義されたとおりである]
で表される繰り返し単位を含む、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、前記アミド基の窒素原子上に導入された置換基の1以上が、式(IV):
Figure 2006095775
[QおよびRは既に定義したとおりであり、Q4はC1-6アルキレン基である]
で表される基である、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、ヒアルロン酸に含まれるカルボキシ基のN−置換アミド基への修飾率が70モル%以上である、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩もまた提供される。
本発明の1つの態様において、GLP−1アナログに結合した連結基により置換されたアミド基のヒアルロン酸1分子に含まれるカルボキシ基に対する導入率は、例えば、平均0.1モル%以上であり15モル%以下であり、好ましくは0.1モル%〜10モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%〜5モル%である。また、本発明に係るヒアルロン酸−GLP−1アナログ結合体の平均分子量は、粘度平均分子量として測定した場合、例えば、5000ダルトン〜100万ダルトン、好ましくは1万ダルトン〜30万ダルトン、さらに好ましくは8万ダルトン〜30万ダルトンである。
本発明のさらに別の側面によれば、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩を含む医薬組成物もまた提供される。当該医薬組成物の投与方法は、特に限定されず、当該技術分野において当業者に周知の方法により投与されうるが、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与および経肺投与から選択される手段によっても投与されうる。
本発明のさらに別の側面によれば、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩を含む、糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、および肥満症から選択される疾患の予防または治療に使用される医薬が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩の治療有効量を投与することを含む、糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、および肥満症から選択される疾患の予防または治療方法もまた提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、非プロトン性極性溶媒中で、式(V):
Figure 2006095775
[式中、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立にC1-6アルキル基から選択され、またはR10およびR11、R12およびR13、ならびにR14およびR15は、それぞれ独立にそれらが結合する窒素原子と一緒になって含窒素ヘテロ環を形成してもよく、環Bは置換されていてもよい単環式または縮環式の含窒素ヘテロ環基であり、X-はアニオンを表す]
で表される縮合剤を使用して、ヒアルロン酸のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基を、N−置換アミド基に変換して水溶性ヒアルロン酸修飾物を得る工程を含む、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩の製造方法が提供される。ここで、前記非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドンまたはこれらの2種以上の混合溶媒が使用されうる。好ましくは、前記非プロトン性極性溶媒として、ジメチルスルホキシドが使用されうる。
上記式(V)において、環Bは、好ましくはベンゾトリアゾール−1−イルであり、上記式(V)で表される縮合剤の例には、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、およびこれらの混合物から選択されるBOP系縮合剤が含まれる。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の製造方法により製造することができる、既に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端側に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであり(前記アミノ酸配列の置換は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換および/または付加されてもよい)、ここでXaは直接結合またはプロリン、グリシン、セリンおよびグルタミン酸から独立に選択される1〜9のアミノ酸からなる配列であり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基はアミド基に変換されていてもよいペプチドであるGLP−1アナログが提供される。
本発明の当該側面の1つの態様によれば、GLP−1アナログは、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列の8位のアラニン(Ala8)が天然または非天然アミノ酸に置換されている配列からなるペプチドであり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されていてもよく、Xaは既に定義されたとおりである。ここで、前記アラニンと置換する天然または非天然アミノ酸としては、例えば、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン、アルギニンおよびアミノ酪酸などが挙げられる。好ましくは、前記アラニンは、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびスレオニンから選択されるアミノ酸、さらに好ましくはグリシンおよびセリンから選択されるアミノ酸と置換される。
前記GLP−1アナログには、例えば、配列番号1で表されるペプチド、または当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されたペプチドが含まれる。好ましくは、Xaは、直接結合または−Gly−Pro−Pro−Pro−である。
本発明の別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸修飾物は特に限定されないが、ヒアルロン酸をその構成ユニットの2糖にまで分解することができ且つ分解産物の非還元末端にΔ−4,5−グルクロン酸残基をもつ不飽和2糖分解物を生成させるヒアルロニダーゼで該水溶性ヒアルロン酸修飾物を分解し、得られる分解産物の232nmにおける吸収を測定した場合に、分解産物に由来する全吸収に対する2糖に由来する吸収の分率が30%以下となるものが好ましい。
本発明のヒアルロン酸修飾物−GLP−1アナログ結合体を用いることで、その血中滞留時間も延長が実現され、従来の技術では達成できなかった実用的でかつ安全なGLP−1アナログの持続性製剤、および当該アナログを含む糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、または肥満症の予防または治療薬を提供することが可能である。
本発明に使用することができる水溶性ヒアルロン酸修飾物のヒアルロニダーゼ処理後のGPCデータの一例である。 本発明に使用することができる水溶性ヒアルロン酸修飾物NMRデータの一例である。 本発明に使用することができる水溶性ヒアルロン酸修飾物のアミノ基をカルボン酸へ変換した水溶性ヒアルロン酸修飾物NMRデータの一例である(実施例2−2)。 本発明に使用することができる水溶性ヒアルロン酸修飾物のアミノ基をカルボン酸へ変換した水溶性ヒアルロン酸修飾物のヒアルロニダーゼ処理後のGPCデータの一例である。 本発明に使用することができる水溶性ヒアルロン酸修飾物NMRデータの一例である(実施例3−1)。 分子量の異なる蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移を示した図である。 本発明に使用することができる水溶性ヒアルロン酸修飾物NMRデータの一例である(実施例4−1)。 分子量200kDa HAから合成したアミノ基修飾率の違う蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移を示した図である。 HA修飾物のアミノ基修飾率と平均血中滞留時間(MRT)との相関およびアミノ基修飾率とヒアルロニダーゼにより分解される2糖の分率との相関を示した図である。 HA−GLP−1アナログ1結合体をラットに静脈内投与したときの血漿中濃度推移を示した図である。 HA−GLP−1アナログ2結合体および対照化合物のGPCデータの一例である。 HA−GLP−1アナログ2結合体をラットに静脈内投与したときの血漿中濃度推移を示した図である。 HA−GLP−1アナログ1結合体をラットに静脈内投与したときの血漿中濃度推移を示した図である。
発明の実施の形態
以下、本発明を更に具体的に説明する。
本発明において使用されるヒアルロン酸修飾物の水溶性は、得られるヒアルロン酸−ペプチド結合体が所望の効果をそうする限りにおいて特に限定されないが、水に対して、例えば0.1〜1000mg/mL、好ましくは1〜100mg/mLの溶解度を有するヒアルロン酸修飾物を本発明に用いることができる。
本発明において使用される水溶性ヒアルロン酸修飾物は、非プロトン性極性溶媒などの溶媒中で、縮合剤を用い、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸のカルボキシ基をN−置換アミド基に変換することにより得ることができる。当該水溶性HA修飾物における修飾率は、修飾されたカルボキシ基の割合、すなわちN−置換アミド基に変換されているカルボキシ基の割合である、アミド基導入率として以下の式:
Figure 2006095775
により算出される。本発明に使用される水溶性HA修飾物のN−置換アミド基導入率の下限は70%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがさらに好ましい。また、導入率の上限は100モル%以下であればよい。
上記のN−置換アミド基への変換反応は、ヒアルロン酸またはその誘導体と種々のアミン類を適当な縮合剤を用いることにより行うことができる。ここで使用されるアミン類は、特に限定されないが、例えば、以下の式:
2N−(CHR5m−NH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−NH2
2N−(CHR5m−OH;
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−OH;
2N−(CHR5m−SR6
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−SR6
2N−(CHR5m−O−CO−C(R7)=CH2
2N−(CHR5m−CO−O−(CHR5p−C(R7)=CH2
2N−(CHR5m−NHCO−C(R7)=CH2
2N−(CHR5m−NHCO−CH2C(R7)=CH2
2N−(CHR5m−CONH−(CHR5p−C(R7)=CH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−C(R7)=CH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−CH2C(R7)=CH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−CONH−(CHR5p−C(R7)=CH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−O−CO−C(R7)=CH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−CO−O−(CHR5p−C(R7)=CH2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−(CH2m−Y2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−CONH−(CH2m−Y2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
2N−CH2CH2−(OCH2CH2n−CONH−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
2N−(CHR5m−NHCO−(CH2m−Y2
2N−(CHR5m−CONH−(CH2m−Y2
2N−(CHR5m−NHCO−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
2N−(CHR5m−CONH−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
2N−(CHR5m−Y2;または
2N−CH2−CH2−(O−CH2−CH2n−Y2
[式中、存在するmは、各々独立に、例えば1〜20、好ましくは1〜10から選択される整数であり、
存在するnは、各々独立に、例えば1〜200、好ましくは1〜25から選択される整数であり、
存在するpは、各々独立に、例えば0〜20、好ましくは0〜10から選択される整数であり、
存在するR5は、各々独立に、水素原子、C1-6アルキル基および水酸基から選択され、
6は、各々独立に、水素原子、C1-6アルキル基およびメルカプト基の保護基(例えば、ピリジルスルフィド基、アセチル基、トリチル基およびエトキシカルボニルエチル基など)から選択され、
7は、各々独立に、水素原子およびC1-6アルキル基から選択され、
2は、式(VII):
Figure 2006095775
で表される基である]
で表されるアミン類が挙げられる。したがって、ヒアルロン酸のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基がN−置換アミド基に変換されているヒアルロン酸修飾物のうち、置換基が以下の基:
−(CHR5m−NH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−NH2
−(CHR5m−OH;
−CH2CH2−(OCH2CH2n−OH;
−(CHR5m−SR6
−CH2CH2−(OCH2CH2n−SR6
−(CHR5m−O−CO−C(R7)=CH2
−(CHR5m−CO−O−(CHR5p−C(R7)=CH2
−(CHR5m−NHCO−C(R7)=CH2
−(CHR5m−NHCO−CH2C(R7)=CH2
−(CHR5m−CONH−(CHR5p−C(R7)=CH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−C(R7)=CH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−CH2C(R7)=CH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−CONH−(CHR5p−C(R7)=CH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−O−CO−C(R7)=CH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−CO−O−C(R7)=CH2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−(CH2m−Y2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−CONH−(CH2m−Y2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−NHCO−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
−CH2CH2−(OCH2CH2n−CONH−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
−(CHR5m−NHCO−(CH2m−Y2
−(CHR5m−CONH−(CH2m−Y2
−(CHR5m−NHCO−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
−(CHR5m−CONH−CH2CH2−(OCH2CH2n−Y2
−(CHR5m−Y2;または
−CH2−CH2−(O−CH2−CH2n−Y2
であるヒアルロン酸修飾物は、それぞれ対応するアミン類から製造することができる。
本発明のヒアルロン酸−ペプチド結合体の合成のために好ましいアミン類は、ジアミン類(H2N−(CHR5m−NH2、およびH2N−CH2−CH2−(O−CH2−CH2n−NH2)である。上記のジアミン類は例えばシグマ−アルドリッチ社などから市販されており、適宜購入して利用することができる。また、文献記載の方法に従い、もしくは文献記載の方法を参考にして合成してもよい。
上記の溶媒としては極性有機溶媒が好ましく、特に非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒と水との混合溶媒、あるいは、水を溶媒に使用した場合には、何れの縮合剤を用いても実用上十分な血中滞留性を付与するために必要な導入率を得ることが難しい。使用可能な非プロトン性極性溶媒は、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」とも称す)、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」とも称す)、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」とも称す)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、「DMI」とも称す)、スルホラン(以下、「SF」とも称す)、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」とも称す)またはそれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンまたはそれらの2種以上の混合溶媒であり、特に好ましくは、ジメチルスルホキシドである。
上記反応溶媒中の反応基質の濃度は、特には限定されないが、反応基質となるヒアルロン酸中のN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸の繰り返し単位(ユニット)のモル濃度として、例えば、0.025〜250mmol/L、好ましくは、0.25〜50mmol/Lの範囲から選択されうる。
反応温度は特に限定されないが、例えば、4〜80℃、好ましくは4〜40℃、より好ましくは20〜40℃の範囲から選択されうる。
上記の縮合剤としては、式(V):
Figure 2006095775
[式中、R10、R11、R12、R13、R14、R15、環BおよびX-は、既に定義したとおりである]
で示される縮合剤を用いることができる。ここで、環Bは、酸性プロトンを有さない含窒素へテロ環基であれば特に限定されず、C1-6アルキル基またはハロゲン原子などの置換基により置換されていてもよい。環Bには、例えばピロリジン−2,5−ジオン−1−イル、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、ベンゾトリアゾール−1−イルなどが含まれる。X-には、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、CF3SO3 -、BF4 -、PF6 -などが含まれる。
10およびR11、R12およびR13、ならびにR14およびR15が、それらが結合する窒素原子と一緒になって形成する含窒素ヘテロ環としては、5〜7員飽和含窒素ヘテロ環などが好ましく、具体的にはピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジンなどが含まれる。
好ましくは、当該縮合剤は環Bがベンゾトリアゾール−1−イルであるBOP系縮合剤である。好ましいBOP系縮合剤としては、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(以下、「BOP」とも称す)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(以下、「PyBOP」とも称す)、およびこれらの混合物が挙げられる。BOP系縮合剤は単独でまたは適宜組み合わせて利用することができる。
ヒアルロン酸とジアミン類を反応させる場合、ヒアルロン酸中に含まれるカルボキシル基、すなわちヒアルロン酸中のN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸の繰り返し単位(1ユニット)に対して等量以上のジアミン類を用いて反応させることが好ましく、(ジアミン類)/(HAユニット)のモル比は、例えば、1〜1000、好ましくは20〜750、より好ましくは50〜500の範囲から選択されうる。さらに、ジアミン類を導入する場合に使用する縮合剤のモル比(縮合剤/HAユニット)は、ジアミン類のアミノ基の反応性により適宜調整されるが、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3の範囲から選択されうる。
上記の製造工程において使用されうるヒアルロン酸(HA)はHA骨格を有していれば特に限定されず、HAの一部を誘導体化したHA誘導体や、酵素、熱分解等で低分子化したHA、HA及びHA誘導体の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、等)なども含まれる。本発明に用いられるHAは、どのようにして得られたHAでもよく、動物組織から抽出されたHA、発酵法で得られたHA、化学合成で得られたHAなど、その由来は限定されない。また、HAを有機溶媒に可溶化する為に、テトラブチルアンモニウム塩等の疎水性の高い対イオンにイオン交換したものを用いてもよい。上記の製造工程において使用されうるヒアルロン酸誘導体としては、例えば、一部をアルキル化、アルキルエステル化あるいは脱アセチル化したものなどが挙げられる。
ここで、N−置換アミド基の導入率は、プロトンNMRで定量することができる。具体的には、プロトンNMRで得られるアミノ化されたHA修飾物中のアミノ化合物の量と、HA由来のピークとの比較から求めることができる。例えば、エチレンジアミン(以下、「EDA」とも称す)でアミノ基を導入したヒアルロン酸修飾物(以下、「HA−AM」とも称す)のプロトンNMRから得られるアミン化合物由来のピーク(2.9〜3.1ppm:測定溶媒D2O)と、HA由来のピーク(1.8〜1.9ppm:測定溶媒D2O)の比を実測する。
アミノ基を導入したヒアルロン酸修飾物(以下、「HA−AM」とも称する)は、アミノ基に適当な置換基を導入することにより、本発明のヒアルロン酸−ペプチド結合体の前駆体として使用することができる。上記方法によりヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体とジアミン類とを反応させて得られるヒアルロン酸修飾物は、例えば以下の式(VId)
Figure 2006095775
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Q0およびRは、既に定義されたとおりである]
で表される繰り返し単位を分子内に含む、アミノ基が導入されたヒアルロン酸修飾物であり、本発明のヒアルロン酸−ペプチド結合体の前駆体として使用することができる。
本発明に係るヒアルロン酸−ペプチド結合体の調製方法は、既知のポリマーの薬物との結合体化で使用されている方法を用いることができる。例えば、水溶性HA修飾物のアミノ基と、GLP−1アナログのカルボキシ基との脱水縮合反応;GLP−1アナログのアミノ基と、水溶性HA修飾物のカルボキシ基との脱水縮合反応;水溶性HA修飾物のアミノ基と、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、N−ヒドロキシコハク酸イミド(以下、「NHS」とも称す)エステルおよびエポキシドなどとして修飾基が導入されたGLP−1アナログとの反応;GLP−1アナログのアミノ基と、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステルおよびエポキシドなどとして修飾基が導入された水溶性HA修飾物との反応;水溶性HA修飾物のアミノ基と、アルデヒドおよびケトンなどのカルボニル化物として修飾基が導入されたGLP−1アナログとのシッフ塩基形成ならびに還元アミノ化反応;GLP−1アナログのアミノ基と、アルデヒドおよびケトンなどのカルボニル化物として修飾基が導入された水溶性HA修飾物とのシッフ塩基形成ならびに還元アミノ化反応;水溶性HA修飾物に導入したメルカプト基と、マレイミド、アクリルエステル、アクリルアミド、メタクリルエステル、メタクリルアミド、アリル化物、ビニルスルホンおよびメルカプト化物などとして修飾基が導入されたGLP−1アナログとの反応;GLP−1アナログに導入したメルカプト基と、マレイミド、アクリルエステル、アクリルアミド、メタクリルエステル、メタクリルアミド、アリル化物、ビニルスルホンおよびメルカプト化物などとして修飾基が導入された水溶性HA修飾物との反応;水溶性HA修飾物に導入したアビジンと、GLP−1アナログに導入したビオチンとの結合;GLP−1アナログに導入したアビジンと、水溶性HA修飾物に導入したビオチンとの結合;などを利用することができる。水溶性HA修飾物あるいはGLP−1アナログへこれらの修飾基(アビジンおよびビオチン由来の基を含む)を導入するには、これらの修飾基およびカルボキシ基(このカルボキシ基はNHSエステルなどの活性エステルとなっていてもよい)から任意に選ばれる2つ以上、好ましくは2つの基を分子内に有する化合物が用いられ、この化合物においては、これらの基以外の分子内の構造は、結合体を調製するまでの間に不都合な反応が進行しないものであれば、特に限定されない。該化合物は試薬として入手可能であるか、または文献公知の方法を参考にして合成してもよい。
具体的には、N−置換アミド基の置換基が、アミノ基を含む水溶性HA修飾物(HA−AM)を合成し、ここで、アミノ基の一部をN−スクシンイミジル 3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート(N−Succinimidyl 3−[2−pyridyldithio]propinate;SPDP)と反応させ、メルカプト基を導入したHA(以下、「HA−SH」とも称す)を調製する。この際、余剰のアミノ基は、例えば無水コハク酸等で処理、カルボキシ基に戻してトータル電荷をアニオン性にした方が好ましい。一方で、GLP−1アナログにメルカプト基と特異的に反応する修飾基として、マレイミド、ビニルスルホン、アクリロイル、メタクリロイル、アリルなどを導入する。これをHA−SHと反応させ結合体を調製してもよい。
また逆に、N−置換アミド基の置換基がアミノ基を含む水溶性HA修飾物の当該アミノ基を修飾することにより二重結合を含有する基を導入し、さらに、メルカプト基含有GLP−1アナログと反応させることにより、本発明の結合体を調製してもよい。二重結合を含有する基を導入した水溶性HA修飾物は、例えば、式(VId):
Figure 2006095775
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Q0およびRは、既に定義されたとおりである]
で表される繰り返し単位を分子内に含むヒアルロン酸修飾物を、適切な試薬と反応させることにより、式(VIb):
Figure 2006095775
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Q0、RおよびX6は、既に定義されたとおりである]
へ変換することにより調製することができる。上記反応において使用されうる試薬としては、例えば、アクリル酸クロリド(X6が−CH=CH2の場合)、メタクリル酸クロリド(−C(CH3)=CH2の場合)、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スルホサクシンイミドエステル、N−(κ−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホサクシンイミドエステル(以上、X6が−(CH2m−Y2の場合)、およびN−ヒドロキシサクシンイミジル−15−(3−マレイミドプロピオニル)−アミド−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカノエート(以下、「NHS−(EO)4−MI」とも称する)、N−ヒドロキシサクシンイミジル−75−(3−マレイミドプロピオニル)−アミド−4,7,10,13,16、19、22、25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73−テトラコサオキサペンタヘプタコンタノエート(以上、X6が−CH2−CH2−(O−CH2−CH2n−Y2の場合)が挙げられる。余剰のアミノ基は、例えば無水コハク酸等で処理してもよい。
一方でGLP−1アナログにはシステインを導入するか、またはメルカプト基を有するリンカーを反応させておき、これをHA−マレイミドと反応させ結合体を調製してもよい。これらの中で、特に好ましいのは、マレイミド基とメルカプト基の反応であり、例えば、GLP−1アナログに導入されたシステインのメルカプト基とHA−AMの一部にNHS−(EO)4−MIで導入したマレイミド基との反応で結合体化したものが好ましい。GLP−1アナログの導入率は、HA1分子当たり平均0.1モル%以上であり15モル%以下が好ましい。導入率が少ないと相対的に投与量に占めるHA量が増大し、高用量のGLP−1アナログを投与しようとしたときに現実的な投与用量ではHAの濃度が上がってしまい、高い粘度となり投与が困難になる。一方、導入率が高すぎると結合体の不溶化が起こり易くなる。
また、本発明に用いられるマレイミド基等の結合体用官能基を導入した後のHA−AM残存したアミノ基は、GLP−1アナログの結合前に、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸および無水アジピン酸などのジカルボン酸無水物などで処理するか、マレイン酸、グルタル酸およびアジピン酸などのジカルボン酸を縮合剤共存下で反応させることで、末端の官能基をカルボキシ基に戻してトータル電荷をアニオン性にした方が血中滞留時間の延長には好ましい。特に無水コハク酸が好ましい。ここで用いられる縮合剤は、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、N,N'−カルボニルジイミダゾール、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、EDC/3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、4−(4,6−ジメトキシDimethoxy−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリウムクロリド n−水和物、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレートならびにこれらの混合物などを使用することができる。
また、GLP−1アナログとの結合体とした時に実用的な血中滞留時間を得るためのヒアルロン酸修飾物としての観点では、本発明に用いられる水溶性HA修飾物の分子量も、その体内動態を左右する。本発明に用いられる原料HAの分子量は特に制限されないが、余りに低分子量では得られた水溶性HA修飾物の血中滞留時間が短くなる。逆に、余りに高分子量になると得られた水溶性HA修飾物の粘度が非常に高くなり、高濃度での投与が難しくなる。また、本発明に用いられる水溶性HA修飾物の血中滞留時間は分子量が一定以上大きくなるとほとんど変化しなくなるので、通常、原料HAの分子量は粘度平均分子量で5000ダルトン〜100万ダルトンであることが好ましく、1万ダルトン〜30万ダルトンであることがより好ましく、8万ダルトン〜30万ダルトンであることがさらに好ましい。
なお、HA重量平均分子量の測定方法については、例えば、中浜精一他著「エッセンシャル高分子科学」(講談社発行、ISBN4−06−153310−X)に記載された、光散乱法、浸透圧法、粘度法等、各種の公知の方法を利用することができ、本明細書において示される粘度平均分子量もウベローデ粘度計を使用するなど、本発明が属する技術分野において通常用いられる方法により測定することができる。
本発明に用いられる水溶性HA修飾物の血中滞留時間は、ラットで平均血中滞留時間が18時間以上のものであることが好ましく、25時間以上のものがより好ましい。
また、本発明の別の側面によれば、本発明に使用される水溶性HA修飾物は、原料HAに比べてヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有するものである。ここで、「ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有する」とは、原料HAと本発明の水溶性HA修飾物をそれぞれヒアルロニダーゼにより酵素分解させた際に、原料HAよりも分解速度が遅いかまたは分解が進まない性質を有することを指す。例えば、HA修飾物1mgに対してヒアルロニダーゼを0.4ユニット添加して37℃で24時間ヒアルロニダーゼ処理した際に、原料HAで観察される2糖分解物より少ないか2糖分解物が観察されなければ「分解が進まない」性質を有する(即ち、ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有する)と判定することができる。具体的には、例えば、ヒアルロン酸をその構成ユニットの2糖にまで分解することができ且つ分解産物の非還元末端にΔ−4,5−グルクロン酸残基をもつ不飽和2糖分解物(例えば、式IVの化合物を含む):
Figure 2006095775
を生成させるヒアルロニダーゼで該水溶性ヒアルロン酸修飾物を分解し、得られる分解産物の232nmにおける吸収ピークを測定して判定することができる。当該測定は、通常の高速液体クロマトグラフィーを用いて当該技術分野において通常用いられる方法により行うことができ、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラム(例えばSuperdex200 10/300 GL、Superdex75HR 10/30およびSuperdex PeptideHR 10/30(いずれもアマシャムバイオサイエンス株式会社製)を連結したものなど)を使用することができる。また使用する溶離液は特には限定されないが、例えばPBS(例えば、SIGMA製Phosphate Buffered Saline Tablets 2錠をとり、精製水400mLに溶解させて得たもの)を使用することができる。
本発明で用いる水溶性ヒアルロン酸修飾物としては、上記方法で測定した場合、分解産物に由来する全ピークエリアに対する2糖に由来するピークエリアの分率の上限が30%以下であることが好ましい。さらに好ましくは20%以下、さらに好ましくは13%以下である。また、下限は0%以上であればよい。
ここで、分解産物に由来する全ピークエリアに対する2糖に由来するピークエリアの分率は、以下の式:
Figure 2006095775
で求めることができる。また、ヒアルロニダーゼとしては、例えばヒアルロニダーゼSD(生化学工業株式会社製)等を使用することができる。
GLP−1アナログと結合体とした時に実用的な血中滞留時間を得るためのヒアルロン酸修飾物としての観点では、本発明に用いられる水溶性HA修飾物は、特に限定はされないが、例えば室温において生理食塩水に対して10mg/mL〜100mg/mLの溶解度を有する。実際に治療を目的として投与される時のHA修飾物の濃度は50mg/mL以下が好ましい。
本明細書において「C1-6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの「C1−C4アルキル基」が含まれ、さらに、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチルなどが含まれる。
本明細書において「C1−C6アルキルカルボニル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルカルボニル基を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル、イソバレリル、ヘキサノイルなどが含まれる。
本明細書において「C1-400アルキレン基」とは、炭素数1〜400の直鎖状アルキレン基を意味し、例えば、C1-200アルキレン基、C1-100アルキレン基、C1-50アルキレン基、C1-20アルキレン基、C1-10アルキレン基などが含まれる。ここで、当該アルキレン基が1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよい場合、当該定義には、例えば、−CH2CH2−(OCH2CH2n−(ここでnは0〜199から選択される整数)で表されるエチレンオキシド基などが含まれる。
本明細書において天然アミノ酸とは、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、バリン、トレオニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン、グルタミン酸、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、アルギニン、チロシン、トリプトファンなどから選択されるα−アミノ酸の他に、β−アラニンなどのβ−アミノ酸、γ−アミノ酪酸などのγ−アミノ酸、およびタウリンなどのアミノスルホン酸などが含まれる。また、非天然α−アミノ酸には、アルキル側鎖を持つα−アミノ酸(例えば、ノルバリン、ノルロイシン、t−ロイシンなど)、シクロアルキル基で置換されたアラニンやグリシン(例えば、シクロペンチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシンなど)、またはアリール基で置換されたアラニンやグリシン(例えば、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、置換フェニルアラニン、フェニルグリシンなど)などが含まれる。
本発明において導入される置換基の導入量は、縮合剤のHAに対する添加量などで調節することができる。
また、本発明に使用される水溶性HA修飾物の電荷が、GLP−1アナログとの結合体後にカチオン性であった場合、生体膜などとの非特異的相互作用により血中滞留時間の短縮に繋がるため、酸無水物、ラクトン、ラクチドあるいは活性エステルを含む化合物などと反応させることによりノニオン性か、アニオン性に変換することが好ましい。
本発明に使用される水溶性HA修飾物の調製方法では、例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩化したHAをDMSOに溶解し、分子の両末端にアミノ基を1つずつ有するジアミノ系化合物を添加、HAのカルボキシ基にBOP系縮合剤で縮合させ、アミノ基を導入したHA(以下、「HA−AM」とも称す)を合成できる。
GLP−1アナログとの結合体合成は、活性低下を抑える上から部位特異的な結合体化が好ましい。
本発明のGLP−1アナログには、例えば、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)などの天然型GLP−1フラグメントのC末端側に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1以上(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドが含まれる。ここで、前記アミノ酸配列は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換および/または付加されてもよく、Xaは直接結合または独立に選択される1以上(例えば1〜9個、好ましくは1〜4個)のアミノ酸(天然アミノ酸および非天然アミノ酸から選択される)からなる配列であり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基はアミド基に変換されていてもよい。
さらにGLP−1アナログには、GLP−1(1−36)、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−36)またはGLP−1(7−37)に、−Qa−SHで表されるメルカプト化合物を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1以上(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドも含まれる。前記アミノ酸配列の置換は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換されてもよい。
ここでQaは−NH−X5−、−CO−X5−または−CONH−X5−から選択され、ペプチドのC末端アミノ酸残基に含まれるカルボキシ基、アミノ基または水酸基と連結してアミド結合、ウレア結合またはエステル結合を形成する。
5はC1-50アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよい。
本発明の1つの態様において、GLP−1アナログは、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)等の天然型GLP−1構成アミノ酸の1〜5残基を置換、欠失、付加したアナログ、及び当該アナログのC末端のアミノ酸残基を1〜10残基のアミノ酸配列で置換したアナログまたはC末端側にα−アミノ基を除くアミノ基、カルボキシ基あるいは水酸基にアミド結合、ウレア結合あるいはエステル結合を介して−X5−SHで表されるメルカプト化合物が付加したGLP−1アナログを示す。ここで置換、付加されるアミノ酸残基は天然型でも非天然型であってもよい。
GLP−1アナログとしては、DPPIV耐性を示すことが期待される置換と部位特異的な結合体化部位としてメルカプト基を与えるアナログが好ましい。具体的には、少なくとも天然型のGLP−1の2番目(8位)のアラニンを他の天然型或いは非天然型のアミノ酸残基に置換したアナログにおいて、さらに当該アナログのC末端のアミノ酸残基を−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列(Xaは直接結合またはプロリン、グリシン、セリンおよびグルタミン酸から独立に選択される1〜9のアミノ酸からなる配列を示す)で置換したGLP-1アナログ(ここでC末端のシステインはアミド化されていてもよい)、あるいはC末端側アミノ酸のα−アミノ基を除くアミノ基、カルボキシ基あるいは水酸基にアミド結合、ウレア結合あるいはエステル結合を介して−X5−SHで表されるチオール化合物が付加したGLP−1アナログが好ましい。
好ましいGLP−1アナログとしては、天然型のGLP−1(Human、7−37;特表平7−504679号公報記載)のアナログであり、例えば、GLP−1(7−36)−Xb−Cys、GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2、[Gly8]−GLP−1(7−36)−Xb−Cys、[Gly8]−GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2、[Ser8]−GLP−1(7−36)−Xb−Cys、[Ser8]−GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2、[Val8]−GLP−1(7−36)−Xb−Cys、[Val8]−GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2、[Leu8]−GLP−1(7−36)−Xb−Cys、[Leu8]−GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2、[Ile8]−GLP−1(7−36)−Xb−Cys、[Ile8]−GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2、[Thr8]−GLP−1(7−36)−Xb−Cys、[Thr8]−GLP−1(7−36)−Xb−CysNH2(式中、Xbは、直接結合またはGly−Pro−Pro−Pro−を表す)、GLP−1(7−37)NH−X5−SH、GLP−1(7−36)−Lys−ε−NHCO−X5−SH、GLP−1(7−36)−LysNH2−ε−NHCO−X5−SH、[Gly8]−GLP−1(7−37)NH−X5−SH、[Gly8]−GLP−1(7−36)−LysNH2−ε−NHCO−X5−SH(式中、X5は、−(CH2)n−、直接結合または−(CH2CH2O)m−であり、nおよびmは1〜20から選択される整数である)
などが含まれる。なお、上記のCysNH2はカルボキシ基がアミド化されたシステインを、LysNH2はカルボキシ基がアミド化されたリシンを表す。
特に、天然型のGLP−1の2番目(8位)のアラニンをグリシンに、31番目(37位)のグリシンをシステインに変更したアナログ、天然型GLP−1の2番目をグリシンに、31番目(37位)のグリシンをグリシン‐プロリン−プロリン−プロリン−システインに変更したアナログが好ましい。また、GLP−1アナログのC末端は周知の方法でアミド化されていてもよい。
本発明のGLP−1アナログの合成は、通常用いられる、固相法、液相法による化学合成法でも、大腸菌や動物細胞を宿主として製造される組み換え培養法でも、無細胞タンパク質合成法でも良い。
本発明の結合体は、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容し得る希釈剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤等を含む医薬組成物として、目的とする投与経路に応じ、適当な任意の形態にして投与することができる。
本発明の結合体を含む医薬組成物は、非経口的に全身又は局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、鼻腔内投与、経肺投与などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、投与経路、投与頻度によって異なる。副作用(悪心、嘔吐等)の発生を抑制しつつ薬効を得るための血中濃度として、2pMから20000pMが想定されるので、当該血中濃度となるように投与量を調整することが好ましい。
本発明を適用することができる糖尿病性合併症は特に限定されず、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈硬化症、糖尿病性心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病性足病変などが挙げられる。
本発明により、従来の方法では得られない、長期間の持続性糖尿病医薬を提供することが可能である。
本発明により、血中滞留時間が延長された実用的でかつ安全なGLP−1アナログ結合体を製造することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
NMR測定は、核磁気共鳴装置 JNM−ECA500(日本電子株式会社製)を用いて測定した。NMRの測定条件を以下に示す:
Data point:16384
Spectral width(X sweep):15ppm
Acquisition time(X acq time):1.749s
Pulse delay(Relaxation delay):30s
Transients(Scans):64
温度:室温
測定溶媒:D2
また、以下の記載中のHAユニットとは、ヒアルロン酸中のN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸の繰り返し単位(1ユニット)を意味する。
〔実施例1〕非プロトン性極性溶媒中でのヒアルロン酸修飾物の合成(縮合剤、溶媒混合比率、酵素分解性)
非極性溶媒中における様々な合成条件を検討し、各条件で得られたヒアルロン酸修飾物の酵素耐性の評価を行った。
(実施例1−1)
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(シグマ−アルドリッチ社製)でテトラブチルアンモニウム(TBA)塩化したDOWEX 50WX8−400(シグマ−アルドリッチ社製)を用いて、分子量200kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA;電気化学工業株式会社製)をTBA塩化した。得られたテトラブチルアンモニウム塩化ヒアルロン酸(以下、「HA−TBA」とも称す)29.1mgを2.0mg/mL濃度となるようDMSO(和光純薬株式会社製)に溶解した。HAユニット/BOP(和光純薬株式会社製)/エチレンジアミン(以下、「EDA」とも称す;シグマ−アルドリッチ社製)=1/2.5/100(mol/mol/mol)の当量比でEDA、BOPの順で添加し、室温下で一晩反応させた。その後、1M NaCl水溶液を10mL加えた後、5N HClを加えてpHを3まで低下させ、さらに2N NaOHにて中和を行った。大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、分画分子量(以下、「MWCO」とも称す):12k−14kDa)、限外ろ過後(YM−10、MILLIPORE社製)、凍結乾燥して標題のアミノ基が導入されたヒアルロン酸(以下、「HA−AM」とも称す)25.8mgを得た。
(実施例1−2)
エチレンジアミンの代わりに2,2'−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(以下、「EDOBEA」とも称す;シグマ−アルドリッチ社製)を用い、HA−TBA 35.1mgを用い、HAユニット/BOP/EDOBEA=1/2.5/50(mol/mol/mol)の当量比で反応させたこと以外は実施例1−1と同様の方法で行い、アミノ基が導入されたヒアルロン酸(HA−AM)27.2mgを得た。
(実施例1−3)
EDOBEAの代わりにヘキサメチレンジアミン(HMDA;シグマ−アルドリッチ社製)を用い、HA−TBA 62.0mgを用いたこと以外は実施例1−2と同様の方法で行い、アミノ基が導入されたヒアルロン酸(HA−AM)41.1mgを得た。
(実施例1−4)
BOPの代わりにPyBOP(国産化学株式会社製)を用い、HA−TBA 51.8mgを用いたこと以外は実施例1−2と同様の方法で、アミノ基が導入されたヒアルロン酸(HA−AM)39.0mgを得た。
(試験例1)酵素分解性評価
実施例1−1〜1−4で得られたHA−AMを2mg/mL濃度に蒸留水(ミリQ水)に溶解した。この溶液55μLに0.2Mリン酸緩衝液(pH6.2)132μLおよび水77μLを加え、ヒアルロニダーゼSD(生化学工業株式会社製)1U/mL溶液(0.01%BSAを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH6.2))44μLを加えて37℃で24時間インキュベートした。各サンプル100μLを分取し、50mM酢酸溶液を720μL加え反応を停止させた。対照として酵素非添加群も同様に行った(データ省略)。それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも称す)に供してHA−AMの分子量の変化、分解産物の生成パターンを観察した(232nmの吸収)。GPCの条件を以下に示す。
GPC Column:Superdex200 10/300 GL、Superdex75HR 10/30、Superdex PeptideHR 10/30(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)(3本連結)
Eluent:PBS(pH7.4)
Flow Rate:0.4mL/min
Injection Volume:50μL
Detection:UV(232nm)
2糖分解ピーク(Retention Time:130分)は観察されなかった。また、GPCデータを図1に示す(実施例1−1〜1−4)。
また、実施例1−1〜1−4のアミノ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基のメチルプロトン、1.8〜1.9ppm、AM:遊離のアミノ基に隣接するメチレンプロトン、2.9〜3.1ppm)。プロトンNMRデータを図2に示す。アミノ基導入率はそれぞれ97.5、75.5、88.3、84.5%だった。
〔実施例2〕カルボン酸変換したHA修飾物のヒアルロニダーゼ耐性評価
より詳細に酵素耐性を評価するために、導入した一級アミンをコハク酸アミドに変換したHA修飾物(HA−AM−SUC)の合成を行い、得られたHA修飾物の酵素耐性の評価を行った。
(実施例2−1)EDOBEA導入HA修飾物の合成
HA(200kDa)−TBAのDMSO溶液(4.0mg/mL)を6つ用意し、各溶液に2,2'−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDOBEA)をHAユニット/EDOBEA=1/50(mol/mol)の当量比で加え、BOPをHAユニットに対し、0.4、0.6、0.8、1.0、1.5、1.85または2.5の当量比で加え、一晩反応させた。その後反応混合物の容量の半分量の1M NaCl水溶液を加え、5N HClにてpHを3まで低下させた後、2N NaOHにて中和を行った。その後0.3M NaCl水溶液に対して透析を行い、次に大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)、凍結乾燥を行い、EDOBEA導入HA修飾物を得た。
(実施例2−2)一級アミンのコハク酸アミドへの変換
上記(実施例2−1)で得られたサンプルを蒸留水(ミリQ水)で20.0mg/mLの溶液とし、これに0.2M炭酸緩衝液(pH9.0)を加え、10.0mg/mLとした。この溶液にHAのユニットに対して20モル倍の無水コハク酸(和光純薬株式会社製)をHA−AM溶液の1/10容量のDMSO溶液として加えて室温で30分間撹拌した。その後0.3M NaCl水溶液に対して透析を行い、次に大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)、凍結乾燥を行ない、HA−AM−SUCを得た。NMRスペクトルを図3に示す。アミノ基の隣のメチレンのピーク(2.9〜3.1)が完全に消失し、新たにコハク酸由来のピーク(2.4〜2.6ppm)が観察され、アミノ基がコハク酸アミドに変換され新たにカルボキシ基が導入されていることが明らかとなった。
(実施例2−3)酵素分解性評価
実施例2−2で得られたHA−AM−SUCを4mg/mL濃度で蒸留水(ミリQ水)に溶解した。この溶液25μLに0.1Mリン酸緩衝液(pH6.2)200μLおよび水25μLを加え、ヒアルロニダーゼSD(生化学工業株式会社製)1U/mL溶液(0.2Mリン酸緩衝液;pH6.2)50μLを加えて37℃で24時間インキュベートした。各サンプル100μLを分取し、50mM酢酸溶液を700μL加え反応を停止させた。対照として酵素非添加群も同様に行った(データ省略)。それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも称す)に供してHA−AM−SUCの分子量の変化、分解産物の生成パターンを観察した(232nmの吸収)。結果を図4および表1に示す。
また、GPCの条件を以下に示す。
GPC Column:Superdex200 10/300 GL、Superdex PeptideHR 10/30(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)(2本連結)
Eluent:PBS(pH7.4)
Flow Rate:0.4mL/min
Injection Volume:50μL
Detection:UV(232nm)
Figure 2006095775
ここで分解産物のうちの2糖分率は溶媒由来のピーク(Retention Time:90分)を除いた範囲で100×(2糖のピークエリア)/(全ピークエリア−酵素非添加時全ピークエリア)(%)として算出した。酵素耐性はアミド基の導入率、すなわちHAのカルボン酸の修飾率に対応して酵素耐性が上がることが明らかとなった。
〔実施例3〕ヒアルロン酸修飾物(HA−AM−SUC)の分子量と血中滞留時間との相関(分子量依存性)
ヒアルロン酸修飾物(HA−AM−SUC)の血中滞留性を分子量の観点から解析するために、23k、100kおよび200kDaのHAからHA修飾物を合成し、蛍光色素であるFITCを導入したサンプルを調製し、それぞれの血中滞留性を観察した。
(実施例3−1)HA−AMの合成
HA(23kDa)−TBAのDMSO溶液(2mg/mL)、HA(100kDa)−TBAおよびHA(200kDa)−TBAのそれぞれのDMSO溶液(4mg/mL)を調製した。HAユニット/BOP/2,2'−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDOBEA)=1/2.5/50(mol/mol/mol)の当量比でEDOBEA、BOPの順で各溶液に添加し、室温下で一晩反応させた。その後、反応混合物の容量の半分量の1M NaCl水溶液を加えた後、5N HClを加えてpHを3まで低下させ、さらに2N NaOHにて中和を行った。大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)、限外ろ過後(YM−10、MILLIPORE社製)、凍結乾燥して標題のアミノ基が導入されたN−置換アミド化ヒアルロン酸(HA−AM)を得た。アミド基導入率はプロトンNMR法で定量した。NMRチャートを図5に示す(HA:N−アセチル基のメチルプロトン、1.8〜1.9ppm、AM:EDOBEA部分のメチレンプロトン、2.9〜3.1ppm)。それぞれ導入率は23kDa:87モル%、100kDa:92.5モル%、200kDa:93.5モル%であった。
(実施例3−2)蛍光標識HA修飾物の合成
上記(実施例3−1)で得られたHA−AMを蒸留水(ミリQ水)で溶解し20.0mg/mLの溶液とし、これに0.2M炭酸緩衝液(pH9.0)を加え、濃度を10.0mg/mLとした。この溶液にHAのユニットに対して0.07モル倍のフルオレセインイソチオシアネート(以下、「FITC」とも称す;ピアス社製)をHA−AM溶液の1/10容量のDMSO溶液として加えて室温で1時間撹拌した。その後、HAのユニットに対して40モル倍の無水コハク酸(和光純薬株式会社製)をHA−AM溶液の1/10容量のDMSO溶液として加えて室温で30分間撹拌した。PD−10カラム(アムシャムバイオサイエンス株式会社製)によるゲル濾過で粗精製した後、大過剰量の0.5M NaCl水溶液に対して透析精製した(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)。透析外液を蒸留水(ミリQ水)に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識化HA−AM−SUCを得た。
ここで得られた各蛍光標識HA−AM−SUCを0.25mg/mL濃度で50mM炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、その溶液の494nmにおける吸光度からFITC由来のN−フルオロセイニルチオカルバモイル基のモル濃度を定量し、以下の式に従って各ユニットの濃度を算出した。さらに、モル分率への変換、HA修飾物中のHA由来の重量分率算出を行った。
未修飾 HAユニット: x nmol/mL
HA−AM−SUCユニット: y nmol/mL (AMが無水コハク酸処理されたユニット)
Figure 2006095775
なお、式中の残存AM conc.とは未反応のアミノ基を有するユニットのモル濃度を意味し、FTC conc.とはFTC基を有するユニットのモル濃度を意味する。
得られた結果を表2にまとめた。
Figure 2006095775
(比較例3−1)蛍光標識HA−HZ−SUCの合成
580kDaのヒアルロン酸ナトリウム(電気化学工業株式会社製)を0.25%濃度(w/v)で蒸留水に溶解し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に調整した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とアジピン酸ジヒドラジド(以下、「ADH」とも称す)を、HAのユニット:EDC:ADH=1:5:40のモル比になるよう添加し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に保ちながら室温で2時間反応させた。大過剰量の100mM塩化ナトリウム溶液、25%エタノール水溶液、蒸留水(ミリQ水)に対して順に透析(スペクトラポア7、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)し、凍結乾燥してヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。HA−HZ中のHZ導入率をADH導入率としてプロトンNMR法で定量したところ、HAのカルボキシ基の73%であった。
このHA−HZを蒸留水(ミリQ水)に溶解させた後、等量の100mM炭酸緩衝液(pH9.0)を加えて終濃度を1mg/mLに調整した。これにFITC/HAのユニット=3.0mol/molの仕込比で、HA−HZ溶液の1/10容量のDMSOに溶解させたFITCを添加し、室温、遮光下に1時間反応させた。反応溶液25mLを予め50mM炭酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したPD−10カラム(10本)に投入し、未反応のFITCを除去した。この粗精製した溶液に無水コハク酸/HZ=250mol/molの仕込比で、DMSOに溶解させた無水コハク酸を添加し(3.5mL)、同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し、凍結乾燥してHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ−SUCを得た。
得られた各蛍光標識HA−HZを0.25mg/mL濃度で50mM炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、その溶液の494nmにおける吸光度からFITC濃度を定量し、以下の式に従って各ユニットの濃度を算出した。さらに、モル分率への変換、HA修飾物中のHA由来の重量分率算出を行った。
未修飾 HAユニット: x μmol/mL
HA−HZ−SUCユニット: y μmol/mL (HZが無水コハク酸処理されたユニット) と定義し、以下の式より算出した。
Figure 2006095775
なお、式中FITC conc.とはFITC基を有するユニットのモル濃度を意味する。得られた結果を表3にまとめた。
Figure 2006095775
(実施例3−3)血中滞留時間評価
HA投与ラット血漿サンプル
実施例3−2および比較例3−1の蛍光標識HA修飾物を10mg/kgの用量でラット静脈内(iv)および皮下(sc)に単回投与し、投与前および投与後0.0833、0.5、2、4、8、24、48、72、96、168時間に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下で凍結保存した。
測定方法
GPCにより検量線用標準試料および測定用試料の分析を行った。以下に条件を示す。
GPC Column:TSKgel G6000PWXL(TOSOH社製)
Mobile phase:PBS(pH7.4)
Elution mode:Isocratic
Flow rate:0.5mL/min
Injection volume:40μL
Detection:Fluorescence(EX:494nm,EM:518nm)
測定試料の調製
・検量線用試料;
各蛍光標識HA修飾物をPBS(pH7.4)を用いて希釈し、1、5、10、50、100、500μg/mLおよび0μg/mL(対照、PBS(pH7.4))の標準液を調製した。この標準液に等容量の正常ラット血漿を添加し検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製;
HA修飾物投与ラット血漿サンプルに等容量のPBS(pH7.4)を添加して測定用試料を調製した。
・血漿中のHA修飾物濃度の算出;
解析ソフトMillenium Ver 3.21(Waters社製)を用いてピーク面積を算出した。各標準試料のピーク面積から得られた検量線より血漿中のHA修飾物濃度を算出した。
薬物動態データ
実施例3−2および比較例3−1の蛍光標識HA修飾物の蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver 4.0.1(Pharsight社製)で薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の最終測定点3点のデータを用いてモデル非依存的解析を行い、半減期(t1/2)、平均血中滞留時間(MRT)を算出した。蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移を図6に示し、算出した薬物動態学的パラメーターを表4に示す。
Figure 2006095775
蛍光標識化HA修飾物を用いた薬物動態試験により、非プロトン極性有機溶媒中で合成した本発明HA修飾物(実施例3−2)はHAおよびこれまで報告されたHA誘導体(HA−HZ−SUC;特許文献12、13および14を参照)と比較して、ラット単回静脈内投与後の血中滞留時間が大幅に改善されることが確認された。これまでに報告された分子量600kDaのHA修飾物(70モル%修飾)においてもラット単回静脈内投与後の平均血中滞留時間(MRT)は16時間程度であり、血中滞留性が5.5倍程度延長されていることが明らかとなった。23kDa HA修飾物に関しては、初期段階で血中濃度が減少する傾向が観察され、一部低分子HA修飾物が腎排泄されている可能性が示唆された。100kDaおよび200kDaのHA修飾物に関しては、血中滞留性に関する特性(CL、MRT,t1/2)はほぼ同様の値となった。
〔実施例4〕ヒアルロン酸修飾物(HA−AM−SUC)のアミド基導入率と血中滞留時間との相関
ヒアルロン酸修飾物(HA−AM−SUC)の血中滞留性を修飾率の観点から解析するために、200kDaのHAから様々な修飾率のHA修飾物を合成し、蛍光色素であるFITCを導入したサンプルを調製し、それぞれの血中滞留性を観察した。
(実施例4−1)HA−AMの調製
HA(200kDa)−TBAのDMSO溶液(4.0mg/mL)を5つ調製し、各溶液にHAユニット/EDOBEA=1/50(mol/mol)の当量比でEDOBEAを添加し、BOP試薬をHAユニットに対し、0.25、0.5、0.75、1.0、または1.5の当量比でそれぞれの溶液に加え、一晩反応させた。その後反応混合物の容量の半分量の1M NaCl水溶液を加え、5N HClにてpHを3まで低下させた後、2N NaOHにて中和を行った。その後大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)、限外ろ過後(YM−10、MILLIPORE社製)、凍結乾燥を行った。置換基の末端にアミノ基を有するN−置換アミド基導入率はプロトンNMR法で定量した。NMRチャートを図7に示す。(HA:N−アセチル基のメチルプロトン、1.8〜1.9ppm、AM:EDOBEA部分のメチレンプロトン、2.9〜3.1ppm)それぞれ導入率はBOP試薬比率0.25:20.0モル%、0.5:36.5モル%、0.75:54.5モル%、1.0:69.0モル%、1.5:90.5モル%であった。
(実施例4−2)蛍光標識化HA修飾物の合成
実施例4−1で得られたHA−AMのそれぞれを、蒸留水(ミリQ水)で20.0mg/mLの濃度に溶解し、これに0.2M炭酸緩衝液(pH9.0)を加え濃度を10.0mg/mLとした。これらの溶液にHAのユニットに対して0.07モル倍(69%および90.5%アミド導入率のHAの溶液)、0.175モル倍(54.5%アミド導入率のHAの溶液)、0.28モル倍(36.5%アミド導入率のHAの溶液)および0.63モル倍(20.0%アミド導入率のHAの溶液)のフルオレセインイソチオシアネートをHA−AM溶液の1/10容量のDMSO溶液として加え、室温で1時間撹拌した。その後、HAのユニットに対して40モル倍の無水コハク酸をHA−AM溶液の1/10容量のDMSO溶液として加え、室温でさらに30分間撹拌した。20%アミン修飾物は大過剰量DMSOへ透析を行った後、またその他のサンプルは直接、大過剰量の25%EtOH水溶液に対して透析し(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)、その後、0.5M NaCl水溶液に対して透析精製した。透析外液を蒸留水(ミリQ水)に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識化HA−AM−SUCを得た。
ここで得られた各蛍光標識化HA−AM−SUCを0.25mg/mL濃度で50mM炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、その溶液の494nmにおける吸光度からFITC濃度を定量し、以下の式に従って各ユニットの濃度を算出した。さらに、モル分率への変換、HA修飾物中のHA由来の重量分率算出を行った。
未修飾 HAユニット: x nmol/mL
HA−AM−SUCユニット: y nmol/mL (AMが無水コハク酸処理されたユニット)
Figure 2006095775
得られた結果を表5にまとめた。
Figure 2006095775
(実施例4−3)血中滞留時間評価
HA投与ラット血漿サンプル
実施例4−2の蛍光標識HA修飾物を10mg/kgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与前および投与後0.5、2、4、8、24、48、72、96、168時間に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下で凍結保存した。
測定方法
96穴プレートに検量線用標準試料および測定用試料を分注しマイクロプレートリーダーを用いて分析を行った。以下に条件を示す。
マイクロプレートリーダー:SPECTRA MAX GEMINI (Molecular Devices社製)
Sample volume:100μL/well
Detection:Fluorescence(EX:485nm,EM:538nm)
測定試料の調製
・検量線用試料;
各蛍光標識HA修飾物をPBS(pH7.4)を用いて希釈し、1、5、10、50、100、500μg/mLおよび0μg/mL(対照、PBS(pH7.4))の標準液を調製した。この標準液に等容量の正常ラット血漿を添加し検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製;
HA修飾物投与ラット血漿サンプルに等容量のPBS(pH7.4)を添加して測定用試料を調製した。
・血漿中のHA修飾物濃度の算出;
解析ソフトSOFTmax PRO(Molecular Devices社製)を用いて各標準試料の蛍光強度から得られた検量線より血漿中のHA修飾物濃度を算出した。
薬物動態データ
実施例4−2の蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver 4.0.1(Pharsight社製)で薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の血漿中濃度推移についてモデル非依存的解析を行い、平均血中滞留時間(MRT)を算出した。半減期(t1/2)は各個体の測定可能な最終3点のデータを用いて算出した。蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移を図8に示し、AM導入率とMRTの関係を図9に示す。また、算出した薬物動態学的パラメーターを表6に示す。
Figure 2006095775
図9に示されるアミド基導入率とMRTとの関係から、修飾率が50%の後半から急激にMRTの増加すなわち血中滞留性の向上が起こることが示唆された。すなわち導入率が55モル%以上、好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは69モル%以上の場合、18時間以上のMRTを有する血中滞留時間の面において好ましいHA修飾物が得られる可能性が高い結果となった。
酵素耐性を獲得したHA誘導体は、CD44などHAレセプターへの結合能も大きく低下しているため長期間の血中滞留性が得られるものと考えられる。
〔実施例5〕水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ1結合体の調製と評価
(実施例5−1)HA−EDOBEA−(CH210−MI/SUCの調製
BOP試薬をHAユニットに対し2.5の当量比とした以外は実施例3−1と同様にして得たHA−EDOBEA(200kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:95.5%)水溶液(10mg/mL、17.66mL)に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、22.075mL)を加えた。N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミド エステル(以下、「Sulfo−KMUS」とも称す)(ピアス社製)のDMSO溶液(0.573mg/mL、4.415mL)を加え、室温で30分間振とうした。無水コハク酸DMSO溶液(283.95mg/mL、4.415mL)を加えて、更に室温で1.5時間振とうした。4℃で大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、得られた溶液を凍結乾燥して、マレイミド基およびコハク酸が導入されたヒアルロン酸修飾物(以下、「HA−EDOBEA−MI/SUC」とも称す、177.80mg)を得た。
(実施例5−2)ヒアルロン酸−GLP−1アナログ1結合体溶液の調製
天然型のGLP−1(Human、7−37;特表平7−504679号公報記載)の2番目(8位)のアラニンをグリシンに、31番目(37位)のグリシンをシステインに変更したアナログ(以下、「GLP−1アナログ1」とも称す)を固相法ペプチド合成法で得た((株)ペプチド研究所製)。GLP−1アナログ1の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(2.0mg/mL)にトリス[2−カルボキシエチル]ホスフィン塩酸塩(以下、「TCEP」とも称す)(ピアス社製)水溶液(20mM)を1/20容量加えた。このTCEPを含むGLP−1アナログ1溶液(1.3263mL)を実施例5−1で得たHA−EDOBEA−MI/SUC水溶液(20mg/mL、1.2mL)に加え、37℃で2時間静置した。同じTCEPを含むGLP−1アナログ1溶液(1.3263mL)を再度添加し、同様に静置した。システイン塩酸塩一水和物の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(3.6mg/mL、0.3853mL)を加え、更に37℃で1時間静置した。反応混合液を3回に分けて下記の条件でGPCに供して結合体画分を分取した。分取した画分を遠心式限外濾過(Vivaspin20、MWCO:50000、フナコシ株式会社製)で約4.85mLまで濃縮して、標題のHA−GLP−1アナログ1結合体溶液を得た。GLP−1アナログ1を使用せずに本実施例と同様の操作を行なって得られた試料を対照として補正に用い、得られたHA−GLP−1アナログ1溶液の280nmにおける吸光度とカルバゾール−硫酸法で、GLP−1アナログ1濃度、HA−EDOBEA−MI/SU濃度およびGLP−1アナログ1導入率を算出した。GLP−1アナログ1が42.6nmol/mL、HA−EDOBEA−MI/SUが3.54mg/mL、GLP−1アナログ1が3.7/HA(mol/mol)であった。
GPC条件
System:FPLC(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
GPC Column:HiLoad 16/60 Superdex 200prep grede(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
Mobile phase:PBS(pH7.4)
Flow rate:1.0mL/min
Detection:UV(280nm)
カルバゾール−硫酸法によるHA修飾物定量方法
[試薬]
硫酸溶液:Na247・10H2Oの硫酸溶液(25mM)
カルバゾール溶液:カルバゾールのエタノール溶液(1.25mg/mL:0.12 5%)
[標準物質]
N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミド エステルのDMSO溶液を加えないこと以外は実施例5−1と同様にして、HA−EDOBEAに無水コハク酸のみが導入されたヒアルロン酸修飾物(HA−EDOBEA−SUC)を調製し、PBSに溶解して0.5mg/mLとした。この0.5mg/mLのHA−EDOBEA−SUC溶液から2倍希釈列を調製した(濃度5点:0.03125〜0.5mg/mL)。
[定量]
氷冷した硫酸溶液(1mL)に、PBS(対照)および標準物質(各0.2mL)、ならびに実施例5−2で得られたHA−GLP−1アナログ1結合体溶液をPBSで19.8倍希釈して得た溶液(0.2mL)を加え、混合した。熱水浴中で約25分間加熱した後、流水で室温まで冷却した。それぞれにカルバゾール溶液(40μL)を加えて混合した。再度熱水浴中で約30分間加熱した後、流水で室温まで冷却した。530nmにおける吸光度を測定し、対照および標準物質の吸光度から検量線を作成し,試料溶液に含まれるHA修飾物の濃度を定量した。
(実施例5−3)HA−GLP−1アナログ1結合体の血中滞留時間評価
HA−GLP−1アナログ1結合体投与ラット血漿サンプル
実施例5−2で得られたHA−GLP−1アナログ1結合体溶液をTween 80を0.05%含有するPBS(pH7.4;以下、「溶媒Z」とも称す)で希釈し、50μg/kgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与後1、4、8、24、48、72、96、および168時間で採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下で凍結保存した。
測定方法
GLP−1(Active)ELISA KIT(Linco Research,Inc.製;以下、「キットW」とも称す)の96穴プレートに検量線用標準試料および測定用試料を分注し、マイクロプレートリーダーを用いて分析を行った。以下に条件を示す。
マイクロプレートリーダー:SPECTRA MAX GEMINI (Molecular Devices社製)
Detection:Fluorescence(EX:355nm,EM:460nm)
測定試料の調製
・検量線用試料;
実施例5−2で得られたHA−GLP−1アナログ1結合体溶液を溶媒ZおよびキットWに同封されたAssay Bufferを用いて希釈し、12.8、6.4、3.2、1.6、0.8、0.4、0.2、0.1μg/mLおよび0μg/mLの標準液を調製した。この標準液に5μLの正常ラット血漿を添加し、検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製;
HA−GLP−1アナログ1結合体投与ラット血漿サンプルに、キットWに同封されたAssay Bufferを添加して測定用試料を調製した。
・血漿中のHA修飾物濃度の算出;
解析ソフトSOFTmax PRO(Molecular Devices社製)を用いて各標準試料の蛍光強度から得られた検量線より血漿中のHA−GLP−1アナログ1結合体濃度を算出した。
薬物動態データ
投与したHA−GLP−1アナログ1結合体の血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver 4.0.1(Pharsight社製)で薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の血漿中濃度推移についてモデル非依存的解析を行い、平均血中滞留時間(MRT)を算出した。半減期(t1/2)は各個体の測定可能な最終3点のデータを用いて算出した。HA−GLP−1アナログ1結合体の血中濃度推移を図10に示す。また、算出した薬物動態学的パラメーターを表7に示す。
Figure 2006095775
天然型のGLP−1および天然型のGLP−1の2番目のアラニンをグリシンに変更した変異体を、ヒトおよびブタに静脈内投与したときの半減期が1〜5分間であることが報告されている(Current Medicinal Chemistry、第10巻、第2471−2483頁、2003年およびDiabetologia、第41巻、第271−278頁、1998年)。図10および表7から、HA−GLP−1アナログ1結合体をラットに静脈内投与したときの半減期は、23.6時間、MRTは30.2時間となり、天然型のGLP−1などと比較して大幅に血中滞留性が向上したことが示唆された。
(実施例5−4)経口糖負荷試験
8週齢の雄性BKS.Cg−+ Leprdb/+ Leprdb/Jclマウス(日本クレア株式会社)を一晩絶食した後、実施例5−2で得られたHA−GLP−1アナログ1結合体溶液を溶媒Zで希釈したもの(ペプチド量として、1.5μg/kg、15μg/kgまたは150μg/kg)または溶媒Zを静脈内投与し、静脈内投与1分後に50%グルコース溶液((株)大塚製薬工場製)を3g/kgになるように経口投与した。同様にGLP−1(Human、7−37;(株)ペプチド研究所製)を溶媒Zで希釈したもの(150μg/kgまたは1500μg/kg)または溶媒Zを静脈内投与し、静脈内投与1分後に50%グルコース溶液を3g/kgになるように経口投与した。6匹を1群として試験に用いた。
グルコース投与前(0時間の値とする)、グルコース投与0.5、1、2、および4時間後に尾部より血液を採取し、血糖値を酵素法(ヘキソキナーゼ法、試薬名:オートセラS GLU(第一化学薬品(株)製);機器名:BioMajesty JCA−BM1250(日本電子(株)製))にて測定した。
以下の式より血糖降下率を算出した。
Figure 2006095775
ここで、血糖上昇値のAUCとは、横軸にグルコース投与後の時間、縦軸に各個体の血糖値をプロットし、各点を直線で結んで得られるグラフの曲線下面積から、各個体のグルコース投与前の血糖値がグルコース投与4時間後まで変化無く一定であったとした場合のグラフの曲線下面積を減算したものである。具体的には、A1=グルコース投与前の血糖値、B1=グルコース投与30分後の血糖値、C1=グルコース投与1時間後の血糖値、D1=グルコース投与2時間後の血糖値、E1=グルコース投与4時間後の血糖値としたとき、血糖上昇値のAUCは、以下の式:
Figure 2006095775
から求めることができる。
算出された血糖降下率から、各群ごとに平均値及び標準誤差を算出し、表8および表9に示した。HA-GLP−1アナログ1結合体では、GLP−1(Human、7−37)と比較して、血糖降下作用が大幅に増大し、糖尿病治療剤としての有用性が示唆された。
Figure 2006095775
Figure 2006095775
〔実施例6〕水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ2結合体の調製と評価
(実施例6−1)HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCの調製
BOP試薬をHAユニットに対し2.5の当量比とした以外は実施例3−1と同様にして得たHA−EDOBEA(100kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:97.0%)水溶液(10mg/mL、4.0mL)3本に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、5.0mL)および0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0、30mL)をそれぞれ加えた。N−ヒドロキシサクシンイミジル 15−(3−マレイミドプロピオニル)−アミド−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカノエート(以下、「NHS−(EO)4−MI」とも称す)(Quanta BioDesign Ltd.製)のDMSO溶液(2.283mg/mL、1.0mL)をそれぞれ加え、室温で30分間振とうした。無水コハク酸DMSO溶液(287mg/mL、1.0mL)をそれぞれ加えて、更に室温で1.5時間振とうした。4℃で大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、得られた溶液を凍結乾燥して、マレイミド基およびコハク酸が導入されたヒアルロン酸修飾物(以下、「HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC」とも称す、46.93,48.01,22.57mg)を得た。
それぞれのHA1分子あたりのマレイミド(MI)導入量(以下、「MI/HA」とも称す)を評価したところ7.0、7.8、7.4(mol/mol)であった。
HA−EDOBEA−(EO) 4 −MI/SUCにおけるMI/HA定量法
[分子量の算出]
HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCのコハク酸導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基のメチルプロトン、1.8〜1.9ppm、コハク酸:エチレンプロトン、2.4〜2.55ppm)。(EO)4−MI導入率は低率であるため考慮せずHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCの平均分子量およびユニット当たりの平均分子量を算出した。
[MIの定量]
HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC水溶液(20.0mg/mL、55μL)に2Mシステインを含む0.2Mリン酸、20mMエチレンジアミン四酢酸緩衝液(pH7.0、55μL)あるいはシステインを含まない同じ緩衝液を加えた。37℃で30分間静置した後、残存するシステインをエルマン試薬で定量した。対照として蒸留水(55μL)に2Mシステインを含む0.2Mリン酸、20mMエチレンジアミン四酢酸緩衝液(pH7.0、55μL)を加えたもの、NHS−(EO)4−MIのDMSO溶液に替えてDMSOを加えたこと以外は実施例6−1と同様にして得たHA−EDOBEAにコハク酸のみが導入されたヒアルロン酸修飾物(HA−EDOBEA−SUC)についても同様に行った。対照で非特異的消費を補正してシステインの消費量をマレイミド量として、HA濃度との比からMI/HA(mol/mol)を算出した。
[エルマン試薬を用いたシステイン定量法]
反応溶媒として1mMエチレンジアミン四酢酸を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)を調製した。標準試料溶液としてシステインを反応溶媒に溶解させ、1.2、0.6、0.3、0.15、0.075mMに調整した。エルマン試薬をDMSOに溶解し(40mg/mL)、これを反応溶媒で10倍稀釈してエルマン試薬溶液を調製した。反応溶媒(1.0mL)にエルマン試薬溶液(20μL)を加え、これにブランクとして反応溶媒、標準試料溶液および試料溶液をそれぞれ加え(100μL)加えて混合した後、室温、遮光下に15分間静置した。412nmにおける吸光度を測定し、ブランクおよび標準試料の吸光度から検量線を作成し,試料溶液に含まれるシステイン残存量を定量した。ヒアルロン酸誘導体の412nmにおける吸光度はシステインを加えなかった試料溶液の測定値で補正した。
(実施例6−2)HA−GLP−1アナログ2結合体溶液の調製
天然型のGLP−1(Human、7−37;特表平7−504679号公報記載)の2番目(8位)のアラニンをグリシンに、31番目(37位)のグリシンC末端側にプロリン−プロリン−プロリン−システインを付加し、C末端をアミド化した変異体(以下、「GLP−1アナログ2」とも称す)を固相法ペプチド合成法で得た((株)ペプチド研究所製)。実施例6−1で得たHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(MI/HA=7.0、7.8、7.4(mol/mol)水溶液(20mg/mL、2.0、2,0、0.83mL)をそれぞれ混合し、HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(平均MI/HA=7.4(mol/mol)水溶液(20mg/mL)とした。このHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC水溶液(20mg/mL、4.02mL)にGLP−1アナログ2の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(2.0mg/mL、7.052mL)に加え、37℃で1時間静置した。システイン塩酸塩一水和物の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(11.98mg/mL、1.107mL)を加え、更に37℃で30分間静置した。反応混合液を3回に分けて下記の条件でGPCに供して結合体画分を分取した。分取した結合体画分を濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)した後、遠心式限外濾過(Centricon Plus−20、分画分子量:30000、ミリポア社製)で容量が約1/20程度になるまで濃縮した。濃縮液をPBSで約20倍程度に稀釈、再度同様に濃縮、稀釈した。再び濃縮して得られた濃縮液をPBSで約16mLに調整し、これを濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)して標題のHA−GLP−1アナログ2結合体溶液を得た。図11にGPCのクロマトグラムを示す。GLP−1アナログ2を添加した試料について高分子量画分でペプチドに由来すると考えられる280nmにおける吸収が強く観察され、GLP−1アナログ2がヒアルロン酸修飾物に結合したことが支持された。GLP−1アナログを使用せずに本実施例と同様の操作を行なって得られた試料を対照として補正に用い、得られたHA−GLP−1アナログ2溶液の280nmにおける吸光度とカルバゾール−硫酸法で、GLP−1アナログ2濃度、HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC濃度およびGLP−1アナログ2導入率を算出した。GLP−1アナログ2が161.8nmol/mL、HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCが3.22mg/mL、GLP−1アナログ2が7.9/HA(mol/mol)であった。
GPC条件
System:FPLCまたはAKTAexplorer(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
GPC Column:HiLoad 26/60 Superdex 200prep grede(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
Mobile phase:30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
Flow rate:2.5mL/min
Detection:UV(280nm)
カルバゾール−硫酸法によるHA修飾物定量方法
[試薬]
硫酸溶液:Na247・10H2Oの硫酸溶液(25mM)
カルバゾール溶液:カルバゾールのエタノール溶液(1.25mg/mL)
[標準物質]
NHS−(EO)4−MIのDMSO溶液に替えてDMSOを加えたこと以外は実施例6−1と同様にして得たHA−EDOBEAにコハク酸のみが導入されたヒアルロン酸修飾物(HA−EDOBEA−SUC)をPBSに溶解して0.5mg/mLとした。この0.5mg/mLのHA−EDOBEA−SUC溶液から2倍稀釈列を調製した(濃度5点:0.03125〜0.5mg/mL)。
[定量]
氷冷した硫酸溶液(1mL)に、PBS(対照)および標準物質(各0.2mL)、ならびに実施例6−2で得られたHA−GLP−1アナログ2結合体溶液(15μL)をPBSで20倍希釈して得た溶液(0.2mL)を加え、混合した。熱水浴中で約25分間加熱した後、流水で室温まで冷却した。それぞれにカルバゾール溶液(40μL)を加えて混合した。再度熱水浴中で約30分間加熱した後、流水で室温まで冷却した。530nmにおける吸光度を測定し、対照および標準物質の吸光度から検量線を作成し,試料溶液に含まれるHA修飾物の濃度を定量した。
HA−GLP−1アナログ2結合体におけるGLP−1アナログ2濃度およびGLP−1アナログ2導入率決定方法
GLP−1アナログを使用せずに本実施例と同様の操作を行なって得られた試料および得られたHA−GLP−1アナログ2溶液(50μL)をPBSで2倍稀釈した溶液の280nmにおける吸光度を測定した。カルバゾール−硫酸法で定量したGLP−1アナログを使用せずに本実施例と同様の操作を行なって得られた試料のHA修飾物濃度と280nmにおける吸光度から比例定数を算出し、HA−GLP−1アナログ2結合体溶液のHA修飾物濃度から結合体溶液の280nmにおける吸収のHA寄与分を算出した。差分をGLP−1アナログ2の吸収としてモル吸光係数からGLP−1アナログ2濃度を算出した。GLP−1アナログ2濃度とHA修飾物濃度の比からGLP−1アナログ2導入率(mol/mol)を算出した。
(実施例6−3)HA−GLP−1アナログ2結合体のcAMP産生能評価
ヒトGLP−1受容体の公開されているDNA配列情報[Grazianoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.1993.196:141−146(1993)]に基づき、発現ベクターを構築した。ヒト胎児腎臓HEK293細胞を該ベクターで形質転換し、ヒトGLP−1受容体を発現する組換えHEK293細胞を得た。
ヒトGLP−1受容体発現細胞は、96wellプレートで3日間培養し、アッセイに供した。培養液を反応液(0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン、3.7g/L NaHCO3を含むDMEM)に置換し、0.05% Tween 80を含むDMEMで希釈したGLP−1または実施例6−2で得られたHA−GLP−1アナログ2結合体を添加して、37℃、CO2インキュベータ中で30分間インキュベーションした後、細胞溶解用緩衝液を添加して反応を停止した。
HA−GLP−1アナログ2結合体とGLP−1受容体との反応により細胞内に生成されるサイクリックAMPは、cAMP−ScreenTM(Applied Biosystems製)による化学発光ELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)法により、ARVO HTS 1420 Multilabel Counter(PerkinElmer(Wallac)社製)を用いて測定した。標準サイクリックAMP試料の発光強度から得られた検量線より、解析ソフトGraphpad Prism Version 4.02(GraphPad Software, Inc.製)を用いて細胞溶解液中のサイクリックAMPを算出し、細胞wellあたりのサイクリックAMP量に換算した。HA−GLP−1アナログ2結合体と細胞wellあたりのサイクリックAMP量の濃度−反応曲線から、Graphpad Prism Version 4.02を用いて結合体のEC50値を算出した。なお、結合体のEC50値はHA−GLP−1アナログ2結合体におけるGLP−1アナログ2濃度に基づいて算出した。表10に、HA−GLP−1アナログ2結合体のサイクリックAMP産生能を、天然型GLP−1(Human、7−37)のEC50値を1とした時の相対値で示した。
Figure 2006095775
HA−GLP−1アナログ2結合体のEC50値は、巨大分子であるHAによる立体障害などのために天然型GLP−1に比して高い値であったが、GLP−1のもつcAMP産生能を保持していることが確認された。
(実施例6−4)HA−GLP−1アナログ2結合体の血中滞留時間評価
HA−GLP−1アナログ2結合体投与ラット血漿サンプル
実施例6−2で得られたHA−GLP−1アナログ2結合体溶液をTween 80 0.05%含有PBS(pH7.4)(以下、「溶媒Z」とも称す)で希釈し、50μg/kgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与後1、4、8、24、48、72、96、120、168時間に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下で凍結保存した。
測定方法
GLP−1(Active)ELISA KIT(Linco Research,Inc.製)(以下、「キットW」とも称す)の96穴プレートに検量線用標準試料および測定用試料を分注しマイクロプレートリーダーを用いて分析を行った。以下に条件を示す。
マイクロプレートリーダー:SPECTRA MAX GEMINI (Molecular Devices社製)
Detection:Fluorescence(EX:355nm,EM:460nm)
測定試料の調製
・検量線用試料;
実施例6−2で得られたHA−GLP−1アナログ2結合体溶液を溶媒ZおよびキットWに同封されたAssay Bufferを用いて希釈し、3.2、1.6、0.8、0.4、0.2、0.1、0.05μg/mLおよび0μg/mLの標準液を調製した。この標準液に5μLの正常ラット血漿を添加し、検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製;
HA−GLP−1アナログ2結合体投与ラット血漿サンプルに、キットWに同封されたAssay Bufferを添加して測定用試料を調製した。
・血漿中のHA修飾物濃度の算出;
解析ソフトSOFTmax PRO(Molecular Devices社製)を用いて各標準試料の蛍光強度から得られた検量線より血漿中のHA−GLP−1アナログ2結合体濃度を算出した。
薬物動態データ
投与したHA−GLP−1アナログ2結合体の血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver 4.0.1(Pharsight社製)で薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の血漿中濃度推移についてモデル非依存的解析を行い、平均血中滞留時間(MRT)を算出した。半減期(t1/2)は各個体の測定可能な最終3点のデータを用いて算出した。HA−GLP−1アナログ2結合体の血中濃度推移を図12に示す。また、算出した薬物動態学的パラメーターを表11に示す。
Figure 2006095775
天然型のGLP−1および天然型のGLP−1の2番目のアラニンをグリシンに変更した変異体を、ヒトおよびブタに静脈内投与したときの半減期が1〜5分間であることが報告されている(Current Medicinal Chemistry、第10巻、第2471−2483頁、2003年およびDiabetologia、第41巻、第271−278頁、1998年)。図12および表11から、HA−GLP−1アナログ2結合体をラットに静脈内投与したときの半減期は、21.3時間、MRTは32.6時間となり、天然型のGLP−1などと比較して大幅に血中滞留性が向上したことが示唆された。
(実施例6−5)経口糖負荷試験
8週齢の雄性BKS.Cg−+ Leprdb/+ Leprdb/Jclマウス(日本クレア株式会社)を一晩から24時間絶食した後、実施例6−2で得られたHA−GLP−1アナログ2結合体溶液を溶媒Zで希釈したもの(ペプチド量として、300μg/kg)または溶媒Zを皮下投与し、皮下投与6、24または48時間後に50%グルコース溶液((株)大塚製薬工場製)を3g/kgになるように経口投与した。同様に天然型のGLP−1(Human、7−37;特表平7−504679号公報記載)の2番目(8位)のアラニンをグリシンにした変異体(以下、「GLP−1アナログ0」とも称す)((株)ペプチド研究所製)を溶媒Zで希釈したもの(3000μg/kg)または溶媒Zを皮下投与し、皮下投与2分後または4時間2分後(溶媒Zは皮下投与1または5時間後)に50%グルコース溶液を3g/kgになるように経口投与した。6匹を1群として試験に用いた。
グルコース投与前(0時間の値とする)、グルコース投与0.5、1、および2時間後に尾部より血液を採取し、血糖値を酵素法(ヘキソキナーゼ法、試薬名:オートセラS GLU(第一化学薬品(株)製);機器名:BioMajesty JCA−BM1250(日本電子(株)製))にて測定した。
実施例5−4に記載の式より血糖降下率を算出した。
ここで、血糖上昇値のAUCとは、横軸にグルコース投与後の時間、縦軸に各個体の血糖値をプロットし、各点を直線で結んで得られるグラフの曲線下面積から、各個体のグルコース投与前の血糖値がグルコース投与2時間後まで変化無く一定であったとした場合のグラフの曲線下面積を減算したものである。具体的には、A1=グルコース投与前の血糖値、B1=グルコース投与30分後の血糖値、C1=グルコース投与1時間後の血糖値、D1=グルコース投与2時間後の血糖値としたとき、血糖上昇値のAUCは、以下の式:
Figure 2006095775
から求めることができる。
算出された血糖降下率から、各群ごとに平均値及び標準誤差を算出し、表12および表13に示した。HA-GLP−1アナログ2結合体では、GLP−1アナログ0と比較して、血糖降下作用が大幅に持続し、糖尿病治療剤としての有用性が示唆された。
Figure 2006095775
Figure 2006095775
〔実施例7〕水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ1およびGLP−1アナログ2結合体の調製と評価
異なるHA分子量、異なる水溶性HA修飾物とマレイミド間のリンカーおよび異なるGLP−1アナログからなる水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ結合体を調製した。
(実施例7−1) HA−EDOBEA−(CH210−MI/SUCの調製
BOP試薬をHAユニットに対し2.5の当量比とした以外は実施例3−1と同様にして得たHA−EDOBEA(200kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:98.5%)水溶液(10mg/mL、9.0mL)に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、11.25mL)を加えた。N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(以下、「Sulfo−KMUS」とも称す)(ピアス社製)のDMSO溶液(0.567mg/mL、2.25mL)を加え、室温で30分間振とうした。無水コハク酸DMSO溶液(290mg/mL、2.25mL)をそれぞれ加えて、更に室温で1.5時間振とうした。4℃で大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、得られた溶液を凍結乾燥して、HA−EDOBEA−(CH210−MI/SUC(94.81mg)を得た。
MI/HAを実施例6−1記載の方法で評価したところ5.0(mol/mol)であった。
(実施例7−2) HA−EDOBEA−(CH210−MI/SUCおよびHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCの調製
BOP試薬をHAユニットに対し2.5の当量比とした以外は実施例3−1と同様にして得たHA−EDOBEA(100kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:95.5%)水溶液(10mg/mL、3.5、4.0mL)に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、4.375、5.0mL)および0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0、8.75、10.0mL)をそれぞれ加えた。Sulfo−KMUS(ピアス社製)のDMSO溶液(0.858mg/mL、0.875mL)あるいはNHS−(EO)4−MI(Quanta BioDesign Ltd.製)のDMSO溶液(1.528mg/mL、1.0mL)をそれぞれ加え、室温で30分間振とうした。無水コハク酸DMSO溶液(283mg/mL、0.875,1.0mL)をそれぞれ加えて、更に室温で1.5時間振とうした。4℃で大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、得られた溶液を凍結乾燥して、HA−EDOBEA−(CH210−MI/SUC、HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(37.87、42.42mg)を得た。
それぞれのMI/HAを実施例6−1記載の方法で評価したところ4.7、4.7(mol/mol)であった。
(実施例7−3) HA−GLP−1アナログ2およびGLP−1アナログ1結合体溶液の調製
実施例7−1で得たHA−EDOBEA−(CH210−MI/SUC(MI/HA=5.0(mol/mol))水溶液(20mg/mL、0.15mL)にGLP−1アナログ2の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(2.0mg/mL、0.895mL)を加えた。実施例7−2で得たHA−EDOBEA−(CH210−MI/SUC(MI/HA=4.7(mol/mol))水溶液(20mg/mL、0.15、0.15mL)にGLP−1アナログ2あるいはGLP−1アナログ1の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(2.0mg/mL、0.1527、0.1684mL)をそれぞれ加えた。また、実施例7−2で得たHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(MI/HA=4.7(mol/mol))水溶液(20mg/mL、0.15mL)にGLP−1アナログ1の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(2.0mg/mL、0.1539mL)を加えた。それぞれ37℃で1時間静置した。システイン塩酸塩一水和物の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(11.22(実施例7−1記載HA修飾物使用例)、21.28(実施例7−2記載HA修飾物使用例)mg/mL、それぞれ0.015mL)を加え、更に37℃で30分間静置した。反応混合液を下記の条件でGPCに供して結合体画分を分取した。分取した画分を遠心式限外濾過(Centricon Plus−20、分画分子量:30000、ミリポア社製)で容量が約1/20程度になるまで濃縮した。濃縮液をPBSで約20倍程度に稀釈、再度同様に濃縮、稀釈した。再び濃縮して得られた濃縮液をPBSで約1.2(実施例7−1記載HA修飾物使用例)、0.6(実施例7−1記載HA修飾物使用例)mLに調整し、標題のHA−GLP−1アナログ2結合体およびHA−GLP−1アナログ1結合体の溶液を得た(試料番号7−3−1〜7−3−4)。試料溶液の稀釈率を適宜変更した以外は実施例6−2記載の方法と同様に定量した結果を表14にまとめた。
GPC条件
System:FPLCまたはAKTAexplorer(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
GPC Column:Superdex200 10/300 GL(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
Mobile phase:30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
Flow rate:0.6mL/min
Detection:UV(280nm)
Figure 2006095775
(実施例7−4)HA−GLP−1アナログ結合体のcAMP産生能評価
実施例7−3で得られた各種HA−GLP−1アナログ結合体のcAMP産生能は、実施例6−3と同様に測定した。
表15に、各種HA−GLP−1アナログ結合体のサイクリックAMP産生能を、天然型GLP−1のEC50値を1とした時の相対値で示した。
Figure 2006095775
HA−GLP−1アナログ結合体は、分子量200kDaのHAを用いた場合、および水溶性HA修飾物とマレイミド基の間の連結基に疎水性の(CH210を用いた場合にも、GLP−1のもつcAMP産生能は維持されることが確認された。
(実施例7−5)HA−GLP−1アナログ結合体の血中滞留時間評価
実施例7−3で得られたHA−GLP−1アナログ結合体溶液を溶媒Zで希釈し、50μg/kgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与後1、4、8、24、48、72、120、168時間に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下で凍結保存した。
測定方法
GLP−1(Active)ELISA KIT(Linco Research,Inc.製)(以下、「キットW」とも称す)の96穴プレートに検量線用標準試料および測定用試料を分注しマイクロプレートリーダーを用いて分析を行った。以下に条件を示す。
マイクロプレートリーダー:SPECTRA MAX GEMINI(Molecular Devices社製)
Detection:Fluorescence(EX:355nm,EM:460nm)
測定試料の調製
・検量線用試料;
実施例7−3で得られたHA−GLP−1アナログ結合体溶液を溶媒ZおよびキットWに同封されたAssay Bufferを用いて希釈し、3.2、1.6、0.8、0.4、0.2、0.1、0.05μg/mLおよび0μg/mLの標準液を調製した。この標準液に5μLの正常ラット血漿を添加し、検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製;
HA−GLP−1アナログ結合体投与ラット血漿サンプルに、キットWに同封されたAssay Bufferを添加して測定用試料を調製した。
・血漿中のHA修飾物濃度の算出;
解析ソフトSOFTmax PRO(Molecular Devices社製)を用いて各標準試料の蛍光強度から得られた検量線より血漿中のHA−GLP−1アナログ結合体濃度を算出した。
薬物動態データ
投与したHA−GLP−1アナログ結合体の血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver 4.0.1(Pharsight社製)で薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の血漿中濃度推移についてモデル非依存的解析を行い、平均血中滞留時間(MRT)を算出した。半減期(t1/2)は各個体の測定可能な最終3点のデータを用いて算出した。HA−GLP−1アナログ結合体の血中濃度推移を図13に示す。また、算出した薬物動態学的パラメーターを表16に示す。
Figure 2006095775
Figure 2006095775
いずれのペプチドおよびリンカーを用いてもHA−GLP−1アナログ結合体とすることによって、半減期が18〜26時間、平均血中滞留時間が25.3〜41.2時間と滞留性が非常に向上することが明らかとなった。
HA−GLP−1アナログ結合体は合目的的にHAの分子量や連結基構造を選択すること可能であることが示された。
〔実施例8〕水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ結合体の調製と評価
GLP−1アナログ導入率の異なる水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ結合体を調製した。
(実施例8−1) HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCの調製
BOP試薬をHAユニットに対し2.5の当量比とした以外は実施例3−1と同様にして得たHA−EDOBEA(100kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:100%)水溶液(10mg/mL、5.0、9.0mL)に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、6.25、11.25mL)をそれぞれ加えた。NHS−(EO)4−MI(Quanta BioDesign Ltd.製)のDMSO溶液(0.377、1.510mg/mL、1.25、2.25mL)をそれぞれ加えた。また、同じHA−EDOBEA(100kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:100%)水溶液(10mg/mL、5.0mL)3本に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、6.25mL)および0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0、37.5mL)をそれぞれ加えた。NHS−(EO)4−MI(Quanta BioDesign Ltd.製)のDMSO溶液(2.114、2.717、3.321mg/mL、1.25mL)をそれぞれ加えた。室温で30分間振とうした。無水コハク酸DMSO溶液(293mg/mL、NHS−(EO)4−MIのDMSO溶液と等量)をそれぞれ加えて、更に室温で1.5時間振とうした。4℃で大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、得られた溶液を凍結乾燥して、マレイミド基およびコハク酸が導入されたHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(57.78、99.24、61.33、60.92、59.02mg)を得た。
それぞれのMI/HAを実施例6−1に記載の方法で評価したところ1.2、4.7、6.0、7.3、9.3(mol/mol)であった。
マレイミド導入量(マレイミド/HA(mol/mol))は添加するNHS−(EO)4−MI添加量で制御することが可能であった。
(実施例8−2)HA−GLP−1アナログ2結合体溶液の調製
実施例8−1で得たそれぞれのHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC水溶液(20mg/mL、0.15mL)にGLP−1アナログ2の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液をMIとGLP−1アナログ2が等モルとなるように(2.0mg/mL、0.0432、0.1677、0.2128、0.2588、0.3319mL)それぞれ加え、37℃で1時間静置した。システイン塩酸塩一水和物の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(4.21、9.93、11.03、11.90、12.95mg/mL、0.0193、0.0318、0.0363、0.0409、0.0482mL)をそれぞれ加え、更に37℃で30分間静置した。反応混合液を実施例7−3記載の条件でGPCに供して結合体画分を分取した。分取した画分を濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)した後、遠心式限外濾過(Centricon Plus−20、分画分子量:30000、ミリポア社製)で容量が約1/20程度になるまで濃縮した。濃縮液をPBSで約20倍程度に稀釈、再度同様に濃縮、稀釈した。再び濃縮して得られた濃縮液をPBSで約0.48,0.45、0.48、0.60、0.60mLに調整し、これを濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)して標題のHA−GLP−1アナログ2結合体溶液を得た(試料番号8−2−1〜8−2−5)。試料溶液の稀釈率を適宜変更した以外は実施例6−2記載の方法と同様に定量した。結果を表17にまとめた。
Figure 2006095775
GLP−1アナログはマレイミドと等量添加することで、その導入量はマレイミド量に近い値として定量され、ほぼ定量的に結合体化されるものと考えられた。
マレイミド導入量、GLP−1アナログ導入量が制御可能であることは、再現性高く結合体を調製し得ることを示すものである。
(実施例8−3)HA−GLP−1アナログ2結合体のcAMP産生能評価
実施例8−2で得られた各種HA−GLP−1アナログ結合体のcAMP産生能は、実施例6−3と同様に測定した。
表18に、各種HA−GLP−1アナログ結合体のサイクリックAMP産生能を、天然型GLP−1のEC50値を1とした時の相対値で示した。なお、結合体のEC50値はHA−GLP−1アナログ2結合体におけるGLP−1アナログ2濃度に基づいて算出した。
Figure 2006095775
HA−GLP−1アナログ2結合体は、GLP−1アナログ導入率を変化させてもGLP−1のもつcAMP産生能を保持することが確認された。
HA−GLP−1アナログ結合体をGLP−1アナログ持続性糖尿病および高血糖症に起因する糖尿病性合併症、肥満症の予防または治療薬として使用する上では、投与するGLP−1量と投与方法から規定される投与容量において、HAに起因する粘度の上昇が許容される範囲でGLP−1アナログ導入率を選択することができる。
〔実施例9〕水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ結合体の調製と評価
異なるGLP−1アナログでGLP−1アナログ導入率の異なる水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ結合体を調製した。
(実施例9−1)HA−GLP−1アナログ結合体溶液の調製
実施例7−1で得たHA−EDOBEA−(CH210−MI/SUC(MI/HA=5.0(mol/mol))水溶液(20mg/mL、0.15mL)にGLP−1アナログ1あるいは2の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液をGLP−1アナログ/HAが1.0、2.0、4.0、5.0、6.0、7.5(mol/mol)となるように(GLP−1アナログ1:2.0mg/mL、0.0162、0.0325、0.0649、0.0812、0.0974、0.1217mL、GLP−1アナログ2: 2.0mg/mL、0.0179、0.0358、0.0716、0.0895、0.1074、0.1343mL、)それぞれ加え、37℃で1時間静置した。システイン塩酸塩一水和物の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(11.22mg/mL、0.0150mL)をそれぞれ加え、更に37℃で30分間静置した。反応混合液を実施例7−3記載の条件でGPCに供して結合体画分を分取した。分取した画分を濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)した後、遠心式限外濾過(Centricon Plus−20、分画分子量:30000、ミリポア社製)で容量が約1/20程度になるまで濃縮した。濃縮液をPBSで約20倍程度に稀釈、再度同様に濃縮、稀釈した。再び濃縮して得られた濃縮液をPBSで約0.48,0.45、0.48、0.60、0.60mLに調整し、これを濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)して標題のHA−GLP−1アナログ1およびHA−GLP−1アナログ2結合体溶液を得た。試料溶液の稀釈率を適宜変更した以外は実施例6−2記載の方法と同様に定量した。
結果を表19にまとめた。
Figure 2006095775
マレイミド導入量(MI/HA(mol/mol))を一定とした時、GLP−1アナログ導入率はGLP−1アナログ添加量で制御できることが示された。一方、GLP−1アナログ添加量をマレイミドの1から1.5等量に増大してもGLP−1導入率はほぼ不変であったことから、結合体化はマレイミドとGLP−1アナログのチオールとの特異的な反応で形成されていることが支持された。
(実施例9−2) HA−GLP−1アナログ結合体のcAMP産生能評価
実施例9−1で得られた各種HA−GLP−1アナログ結合体のcAMP産生能は、実施例6−3と同様に測定した。
表20に、各種HA−GLP−1アナログ結合体のサイクリックAMP産生能を、天然型GLP−1のEC50値を1とした時の相対値で示した。
Figure 2006095775
HA−GLP−1アナログ結合体は、マレイミドに対するGLP−1アナログ導入率を変化させてもGLP−1のもつcAMP産生能を保持することが確認された。
〔実施例10〕水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ1およびGLP−1アナログ3結合体の調製と評価
GLP−1アナログのC末端が異なる水溶性HA修飾物−GLP−1アナログ結合体を調製した。
(実施例10−1) HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUCの調製
BOP試薬をHAユニットに対し2.5の当量比とした以外は実施例3−1と同様にして得たHA−EDOBEA(100kDa HA−TBA、EDOBEA導入率:97.0%)水溶液(10mg/mL、5.0mL)に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、6.25mL)および0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0、37.5mL)をそれぞれ加えた。NHS−(EO)4−MI(Quanta BioDesign Ltd.製)のDMSO溶液(1.826mg/mL、1.25mL)を加え、室温で30分間振とうした。無水コハク酸DMSO溶液(287mg/mL、1.25mL)を加えて、更に室温で1.5時間振とうした。4℃で大過剰量の蒸留水(ミリQ水)に対して透析精製し(スペクトラポア4、MWCO:12k−14kDa)、得られた溶液を凍結乾燥して、HA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(54.0mg)を得た。
MI/HAを実施例6−1記載の方法で評価したところ7.7(mol/mol)であった。
(実施例10−2) HA−GLP−1アナログ3およびGLP−1アナログ1結合体溶液の調製
天然型のGLP−1(Human、7−37;特表平7−504679号公報記載)の2番目(8位)のアラニンをグリシンに、31番目(37位)のグリシンをシステインに変更し、C末端をアミド化した変異体(以下、「GLP−1アナログ3」とも称す)を固相法ペプチド合成法で得た((株)ペプチド研究所製)。実施例10−1で得たHA−EDOBEA−(EO)4−MI/SUC(MI/HA=7.7(mol/mol))水溶液(20mg/mL、0.15mL)にGLP−1アナログ3あるいはGLP−1アナログ3の0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(2.0mg/mL、0.250mL)を加えた。それぞれ37℃で1時間静置した。システイン塩酸塩一水和物の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の溶液(12.96mg/mL、それぞれ0.040mL)を加え、更に37℃で30分間静置した。反応混合液を下記の条件でGPCに供して結合体画分を分取した。分取した結合体画分を濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)した後、遠心式限外濾過(Centricon Plus−20、分画分子量:30000、ミリポア社製)で容量が約1/20程度になるまで濃縮した。濃縮液をPBSで約20倍程度に稀釈、再度同様に濃縮、稀釈した。再び濃縮して得られた濃縮液をPBSで約0.6mLに調整し、これを濾過(MILLEX−GV、φ=0.22μm、ミリポア社製)して標題のHA−GLP−1アナログ1およびアナログ3結合体溶液を得た(試料番号10−2−1〜10−2−2)。試料溶液の稀釈率を適宜変更した以外は実施例6−2記載の方法と同様に定量した結果を表21にまとめた。
GPC条件
System:FPLC(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
GPC Column:Superdex200 10/300 GL(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)
Mobile phase:30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
Flow rate:0.6mL/min
Detection:UV(280nm)
Figure 2006095775
(実施例10−3)HA−GLP−1アナログ結合体のcAMP産生能
実施例10−2で得られたHA−GLP−1アナログ3およびGLP−1アナログ1結合体のcAMP産生能は、実施例6−3と同様に測定した。
表22に、HA−GLP−1アナログ3およびGLP−1アナログ1結合体のcAMP産生能を、天然型GLP−1のEC50値を1とした時の相対値で示した。
Figure 2006095775
HA−GLP−1アナログ結合体は、GLP−1アナログのC末端カルボキシ基がアミド化されていてもGLP−1のもつcAMP産生能を保持することが確認された。



Claims (34)

  1. 水溶性のヒアルロン酸修飾物に1以上のグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アナログが結合した、ヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  2. 前記GLP−1アナログが2価の連結基を介して前記ヒアルロン酸修飾物に結合する、請求項1に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  3. 水溶性のヒアルロン酸修飾物において、ヒアルロン酸のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基の70%以上がN−置換アミド基に変換されており、ここで当該ヒアルロン酸修飾物中の各N−置換アミド基の置換基は同一であっても異なってもよく、当該置換基の少なくとも1つが前記GLP−1アナログと連結する2価の連結基である、請求項1または2に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  4. 糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、および肥満症から選択される疾患の予防または治療に使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  5. GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端側に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであり(前記アミノ酸配列は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換および/または付加されてもよい)、ここでXaは直接結合またはプロリン、グリシン、セリンおよびグルタミン酸から独立に選択される1〜9のアミノ酸からなる配列であり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基はアミド基に変換されていてもよい、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  6. GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列の8位のアラニン(Ala8)が天然または非天然アミノ酸に置換されている配列からなるペプチドであり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されていてもよい、請求項5に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  7. GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列の8位のアラニン(Ala8)が、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびスレオニンから選択されるアミノ酸に置換されている配列からなるペプチドであり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されていてもよい、請求項5に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  8. GLP−1アナログが、
    His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Xa−Cys(配列番号1)
    で表されるペプチド、または当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されたペプチドである、請求項5に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩
  9. Xaが、直接結合または−Gly−Pro−Pro−Pro−である請求項5〜8のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  10. GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−36)またはGLP−1(7−37)に、−Qa−SHで表されるチオール化合物を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであり(前記アミノ酸配列は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換および/または付加されてもよい)、
    ここでQaは−NH−X5−、−CO−X5−または−CONH−X5−から選択され、ペプチドのC末端アミノ酸に含まれるカルボキシ基、アミノ基または水酸基と連結してアミド結合、ウレア結合またはエステル結合を形成し、
    5はC1-50アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよい、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  11. 2価の連結基の一端がGLP−1アナログに導入されたメルカプト基において結合する請求項5〜10のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  12. 2価の連結基が式(I):
    Figure 2006095775
    [式中、QはC1-400アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、さらに当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる炭素原子の間あるいは末端に−CO−、−NHCO−または−CONH−が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
    Xは、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、もしくは−CH(−CH3)−CH2**であり、Rは水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
    XおよびRは結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(II):
    Figure 2006095775
    で表される基を形成し;
    *はヒアルロン酸修飾物中のアミド基の窒素原子への結合位置を表し、**はGLP−1アナログのメルカプト基の硫黄原子への結合位置を表す]
    で表される、請求項11に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  13. 2価の連結基が式(Ia):
    Figure 2006095775
    [式中、Q1はC1-10アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間に酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
    1は、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、もしくは−CH(−CH3)−CH2**であり、R1は水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
    1およびR1は結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(IIa):
    Figure 2006095775
    で示される基を形成し;または
    1は、式(Ib):
    Figure 2006095775
    (式中、Q2はC1-10アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間には酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
    2は、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、もしくは−CH(−CH3)−CH2**であり、R2は水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
    2およびR2は結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(IIb):
    Figure 2006095775
    で示される基を形成し;または
    2は、式(Ic):
    Figure 2006095775
    (式中、Q3はC1-10アルキレン基であり、ここで当該アルキレン基の1以上の個所において当該アルキレン基に含まれる2つの炭素原子の間には酸素原子が挿入されていてもよく、当該アルキレン基の炭素原子は、水酸基およびC1-6アルキル基から選択される1以上の置換基により独立に置換されていてもよく;
    3は、−CH2−CH2**、−CH2−CH2−CH2**、−CH(−CH3)−CH2**であり、R3は水素原子またはC1-6アルキル基であり;または
    3およびR3は結合する炭素原子および窒素原子と一緒になって、式(IIc):
    Figure 2006095775
    で表される基を形成する)
    で表される基であり)
    で表される基であり;
    *はヒアルロン酸修飾物中のアミド基の窒素原子への結合位置を表し、**はGLP−1アナログのメルカプト基の硫黄原子への結合位置を表す]
    で表される、請求項9または10に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  14. 前記アミド基の窒素原子上に導入された置換基の1つが、式(IV):
    Figure 2006095775
    [QおよびRは請求項12で定義したとおりであり、Q4はC1-6アルキレン基である]
    で表される、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  15. 1が、式:−(CH2m−、または−(CH2m−(O−CH2−CH2n
    [式中、mは1〜10からそれぞれ独立に選択される整数であり、nは1〜200から選択される整数である]
    で表される、請求項13または14に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  16. 1が、式:−(CH2m−(O−CH2−CH2p−NHCO−(CH2q−Y1**、または−(CH2r−Y1**
    [式中、mは1〜10から選択される整数であり、pは1〜200から選択される整数であり、qおよびrは1〜10から独立に選択される整数であり、Y1は式(IIc):
    Figure 2006095775
    で表される基であり、
    **はGLP−1アナログのメルカプト基の硫黄原子への結合位置を表す]
    で表される、請求項13〜15のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  17. ヒアルロン酸に含まれるカルボキシ基のN−置換アミド基への修飾率が85モル%以上である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  18. GLP−1アナログに結合した連結基により置換されたアミド基のヒアルロン酸に含まれるカルボキシ基に対する導入率が、平均0.1モル%以上であり15モル%以下である、請求項1〜17のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  19. 粘度平均分子量が5000ダルトン〜100万ダルトンである、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  20. 請求項1〜19のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩を含む医薬組成物。
  21. 請求項1〜19のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩を含む、糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、および肥満症から選択される疾患の予防または治療に使用される医薬。
  22. 静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与および経肺投与から選択される手段により投与される、請求項20に記載の医薬組成物。
  23. 請求項1〜19いずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩の治療有効量を投与することを含む、糖尿病、高血糖症、糖尿病性合併症、および肥満症から選択される疾患の予防または治療方法。
  24. 非プロトン性極性溶媒中で、式(V):
    Figure 2006095775
    [式中、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立にC1-6アルキル基から選択され、またはR10およびR11、R12およびR13、ならびにR14およびR15は、それぞれ独立にそれらが結合する窒素原子と一緒になって含窒素ヘテロ環を形成してもよく、環Bは置換されていてもよい単環式または縮環式の含窒素ヘテロ環基であり、X-はアニオンを表す]
    で表される縮合剤を使用して、ヒアルロン酸のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基を、N−置換アミド基に変換して水溶性ヒアルロン酸修飾物を得る工程を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩の製造方法。
  25. 上記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドンまたはこれらの2種以上の混合溶媒から選択される請求項24に記載の製造方法。
  26. 上記非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシドである、請求項25に記載の製造方法。
  27. 式(V)において、環Bがベンゾトリアゾール−1−イルである、請求項24〜26のいずれか1項に記載の製造方法。
  28. 上記縮合剤が、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、およびこれらの混合物から選択されるBOP系縮合剤である、請求項27に記載の製造方法。
  29. 請求項24〜28のいずれか1項に記載の製造方法により製造することができる、請求項1〜19のいずれか1項に記載のヒアルロン酸−ペプチド結合体、またはその塩。
  30. GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端側に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであり(前記アミノ酸配列は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸により置換および/または付加されてもよい)、ここでXaは直接結合またはプロリン、グリシン、セリンおよびグルタミン酸から独立に選択される1〜9のアミノ酸からなる配列であり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基はアミド基に変換されていてもよいペプチドである、GLP−1アナログ。
  31. GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列の8位のアラニン(Ala8)が天然または非天然アミノ酸に置換されている配列からなるペプチドであり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されていてもよく、Xaは請求項30に定義されたとおりである、GLP−1アナログ。
  32. GLP−1アナログが、GLP−1(1−36)またはGLP−1(7−36)のC末端に−Xa−Cysで表されるアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列の8位のアラニン(Ala8)が、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびスレオニンから選択されるアミノ酸に置換されている配列からなるペプチドであり、当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されていてもよい、請求項31に記載のGLP−1アナログ。
  33. 配列番号1で表されるペプチド、または当該ペプチドのC末端のシステインのカルボキシ基がアミド基に変換されたペプチドである、請求項30に記載のGLP−1アナログ。
  34. Xaが、直接結合または−Gly−Pro−Pro−Pro−である請求項33に記載のGLP−1アナログ。



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