JPWO2006085587A1 - ニューロスフェア形成剤 - Google Patents

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茂樹 大多
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雅江 矢口
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Abstract

【課題】高効率にニューロスフェアを形成するニューロスフェア形成剤及び神経障害によって障害が生じた神経機能を効率よく改善する医薬組成物を提供すること。【解決手段】マウスCD8α陽性樹状細胞、成熟樹状細胞、Notch陽性樹状細胞を分離し、それらを単独に、あるいは複数含有するニューロスフェア形成剤または医薬組成物とする。ニューロスフェア形成剤が含有する樹状細胞を、神経幹細胞と共培養することにより、高効率にニューロスフェアを形成することができる。また、医薬組成物を神経損傷部分に投与することにより、障害が生じた神経機能を効率よく改善することができる。

Description

本発明は、成熟型及び/又はNotch陽性樹状細胞を含有するニューロスフェア形成剤及び神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善する医薬組成物に関する。
脊髄損傷の治療法としては、物理的な圧迫や障害部位を外科的手術により除去する方法や、受傷急性期の脊髄浮腫に対するステロイド療法などがあるが(Altinors, N. et al., J. Neurosurgery vol.93, p1-8, 2000)、いずれも決定的に有効な治療法ではない。
近年、新しい脊髄損傷治療法として、抗原提示に重要な役割を果たす免疫細胞である樹状細胞(Dendritic cell、DC)を脊髄に移植する治療法が開発された(国際特許出願PCT/JP03/03868)。この発明は、マウス脾臓細胞より調整した樹状細胞(CD11c陽性樹状細胞)を、マウス脊髄損傷モデルに移植することにより顕著な運動機能改善が認められるという報告(Mikami Y. et al., J. Neurosci. Res., vol.76, p.453-465, 2004)に基づくものである。この報告において、樹状細胞における神経栄養因子(サイトカイン)等の発現や、in vitroおよびin vivoにおける樹状細胞による神経幹細胞の増殖効果より、上記運動機能改善の作用機序として、樹状細胞が損傷脊髄に存在する内在性神経幹細胞を活性化し、神経新生が誘導されることが考えられた。なお、この報告は、成熟哺乳類の脊髄において樹状細胞を移植することにより、初めて神経新生を誘導することを明らかにしたものである。
一方、樹状細胞はマウス・ヒトにおいて、その表面マーカーの発現および生物学的機能により幾つかのサブタイプに分類されている(Liu, Y.J., Cell vol.106, p.259-62, 2001)。しかし、樹状細胞のサブタイプが上記運動機能改善作用とどのように関係するかは明らかではなかった。
そこで、本発明は、樹状細胞のサブタイプとそれぞれのニューロスフェア形成能または神経機能改善能を明らかにすることを通じて、高効率にニューロスフェアを形成するニューロスフェア形成剤及び障害が生じた神経機能を効率よく改善する医薬組成物を提供することを目的としてなされた。
発明者らは、樹状細胞のサブタイプとそれぞれのニューロスフェア形成能の関連を調べた結果、マウスCD8α陽性樹状細胞は、CD8α陰性樹状細胞に比べ、ニューロスフェア形成能が高いことを見出した。
マウス樹状細胞では、CD8α陽性樹状細胞が生体においてCD8α陰性樹状細胞より成熟度が高い存在として知られている(Ardavin C., Trends Immunol. 22, 691-700, 2001)。そこで、成熟樹状細胞に関してニューロスフェア形成能を調べたところ、未成熟樹状細胞よりニューロスフェア形成能が高いことが明らかになった。
CD8α陽性樹状細胞およびCD8α陰性樹状細胞におけるニューロスフェア形成能の違いを分子的基盤において解明するために、RT-PCRにより種々の遺伝子発現の違いを調べたところ、神経幹細胞の幹細胞性維持に重用な機能を有しているNotch1の発現が、CD8α陽性樹状細胞で顕著に高く、CD8α陰性樹状細胞ではほとんど検出されないことが明らかとなった。このことは、CD8α陽性樹状細胞のサブグループ中にNotch1陽性樹状細胞のサブグループが存在しているか、あるいは、これらのサブグループがほぼオーバーラップしていることを示す。
そこで、樹状細胞の成熟度に再び着目して、マウス脾臓由来樹状細胞においてin vitroおよびin vivo成熟化条件で、Notch1の発現をFACS解析により調べたところ、成熟化に伴いNotch1の発現が亢進することが明らかとなった。
一方、ヒト樹状細胞のサブタイプ分類では、マウスCD8α陽性樹状細胞に厳密に対応するサブタイプは同定されていない。そこで、ヒトにおける樹状細胞成熟度のマーカーであるCD83とNotch1の発現の関連を解析したところ、CD83陽性細胞はNotch1を高発現し、ヒトにおける樹状細胞未成熟度のマーカーであるCD1aの発現が低下していることが明らかになった。これは、マウスにおいて、成熟化条件においた樹状細胞でNotch1の発現が亢進するという結果を支持する。
これらの知見により、Notch1の発現が樹状細胞の成熟度と関連することが明らかになり、同時にNotch1の発現とニューロスフェア形成能との関連性が示唆された。実際、Notch1陽性樹状細胞についてニューロスフェア形成能を調べてみると、Notch1陰性細胞よりニューロスフェア形成能が有意に高いことが明らかになった。こうして、発明者らは、本発明の完成に至った。
以上のように、本発明にかかるニューロスフェア形成剤は、マウスCD8α陽性樹状細胞を有効成分として含む。
また、本発明にかかるニューロスフェア形成剤は、成熟樹状細胞あるいはNotch陽性樹状細胞を有効成分として含んでもよい。前記いずれの樹状細胞もマウス由来であってもよいし、ヒト由来であってもよいが、由来はこれらに限定されない。また、前記マウスCD8α陽性樹状細胞及び前記成熟樹状細胞は、Notch陽性であってもよい。
本発明にかかる神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善する医薬組成物は、マウスCD8α陽性樹状細胞を有効成分として含む。前記神経機能は運動機能でも良い。また、前記神経損傷は、脊髄損傷でもよい。
また、前記医薬組成物は、成熟樹状細胞あるいはNotch陽性樹状細胞を有効成分として含んでもよい。前記いずれの樹状細胞もマウス由来であってもよいし、ヒト由来であってもよいが、由来はこれらに限定されない。また、前記マウスCD8α陽性樹状細胞及び前記成熟樹状細胞は、Notch陽性であってもよい。
また、本発明にかかる樹状細胞サブタイプのマーカーは、Notch遺伝子関連物質である。ここで、遺伝子関連物質とは、遺伝子及びそれが転写・翻訳されてできる物質であれば何でもよく、例えば、遺伝子をコードするゲノムDNA、cDNA、及びそれらの相補鎖、転写物であるmRNA、翻訳されてできるポリペプチド及びタンパク質などが挙げられる。
以上のいずれの場合も、NotchはNotch1であることが好ましい。
――関連文献とのクロスリファレンス――
なお、本出願は、2005年2月9日出願の日本国出願番号特願2005−033698の優先権の利益を主張し、これを引用することにより本明細書に含める。
本発明にかかる一実施例において、マウス脊髄由来神経幹細胞とマウス線状体由来神経幹細胞の、樹状細胞存在下におけるニューロスフェア形成能を比較した結果を表すグラフである。 本発明にかかる一実施例において、マウス脾臓由来未熟樹状細胞に含まれるCD8α陽性樹状細胞のニューロスフェア形成能を測定した結果を表すグラフである。 本発明にかかる一実施例において、マウスCD11c陽性成熟樹状細胞によるニューロスフェア形成能を測定した結果を表すグラフである。 本発明にかかる一実施例において、マウスCD8α陽性成熟樹状細胞によるニューロスフェア形成能を測定した結果を表すグラフである。 本発明にかかる一実施例において、マウスNotch陽性樹状細胞によるニューロスフェア形成能を測定した結果を表すグラフである。 本発明にかかる一実施例において、ヒトNotch陽性樹状細胞によるニューロスフェア形成能を測定した結果を表すグラフである。 本発明にかかる一実施例において、マウス脾臓由来CD11陽性細胞およびCD8α陽性樹状細胞移植による、脊髄損傷モデルマウスにおける行動機能回復実験の結果を表すグラフである。レアリング(A)、BBBスコア(B)は、経時的観察の結果を、ロータロッドテスト(C)は手術後56日における解析結果を示す。 本発明にかかる一実施例において、組織学的解析により、マウス脊髄損傷モデルにおけるCD8α陽性樹状細胞移植後の増殖を調べた結果を示す図である。 本発明にかかる一実施例において、マウス樹状細胞におけるCD8α及びNotch1の発現の相関を、FACSで解析した結果を示す図である。 本発明にかかる一実施例において、マウス樹状細胞におけるCD8α及びNotch1の発現の相関を、RT−PCRで解析した結果を示す図である。 本発明にかかる一実施例において、マウス脾臓由来Notch1陽性樹状細胞移植による、脊髄損傷モデルマウスにおける行動機能回復実験の結果を表すグラフである。レアリング(A)、BBBスコア(B)は、経時的観察の結果を、スリッピングテスト(C)は手術後3ヶ月目における解析結果を示す。 本発明にかかる一実施例において、ヒト樹状細胞におけるCD83及びNotch1の発現の相関を、FACSで解析した結果を示す図である。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==ニューロスフェア形成剤の構成==
通常、細胞障害性T細胞において発現している細胞表面分子CD8αのマウス樹状細胞における発現は、解剖学的かつ機能的に異なった樹状細胞のサブセットを識別するために用いられている。そのサブセットの中で、CD8α陽性樹状細胞は、神経幹細胞と共培養されたとき、CD8α陰性細胞より効率よくニューロスフェアを形成することができる。
また、成熟樹状細胞は、未成熟樹状細胞より効率よくニューロスフェアを形成することができる。これは、成熟条件下においたマウス樹状細胞が未成熟樹状細胞より効率よくニューロスフェアを形成することができることから示される。
また、樹状細胞は、Notch1の発現レベルによって、高レベルに発現しているサブセット(Notch1陽性)と低レベルに発現しているサブセット(Notch1陰性)に分類できる。マウスの場合、CD8α陽性樹状細胞はCD8α陰性樹状細胞より、Notch1を高レベルに発現しているため、Notch1の発現レベルによって分類されたサブセットとCD8αの発現によって分類されたサブセットはかなりオーバーラップしていると考えられる。ヒトの場合、マウスCD8α陽性樹状細胞に厳密に対応するサブタイプは同定されていないが、Notch1の発現レベルによる分類は可能であり、Notch1を高レベルに発現している樹状細胞は、Notch1を低レベルに発現している樹状細胞より効率よくニューロスフェアを形成することができる。Notch1を高発現しているマウスCD8α陽性樹状細胞または成熟樹状細胞は、特に好ましい。
Notchシグナリングは、ヒト単球由来の樹状細胞の成熟に重要な役割を果たしていることが明らかになっている(Weijzen et al., J. Immunol 169, 4273-4278, 2002)が、Notch1欠損マウスにおいては樹状細胞の成熟に異常がない(Radtke et al., J. Exp. Med. 191, 1085, 2000)ことから、他のNotch分子が発現し、redundantな機能を担っていると考えられる。従って、Notch1だけでなく、Notch-familyの他のメンバー(例えば、Notch2〜4)であっても、成熟樹状細胞で高発現しているものであれば構わない。
このように、本発明にかかるニューロスフェア形成剤は、より効率よくニューロスフェアを形成することができるマウスCD8α陽性樹状細胞、成熟樹状細胞、Notch(特にNotch1)を高発現している樹状細胞を、単独であるいは複合して含有する。
ニューロスフェア形成剤は、典型的にはこれらの樹状細胞が緩衝液や培地などに懸濁されている液体調製剤であるが、その樹状細胞を含有していればよく、形状はこれに限定されない。ニューロスフェア形成剤は、樹状細胞以外に、コラーゲン、グリセロール、DMSO、糖、防腐剤など、様々なキャリアや添加剤を含有してもよい。
==医薬組成物==
上記ニューロスフェア形成剤として適当な樹状細胞は、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善する医薬組成物に有効成分として含有させることができる。即ち、本発明にかかる医薬組成物は、マウスCD8α陽性樹状細胞、成熟樹状細胞、Notch(特にNotch1)を高発現している樹状細胞を、単独であるいは複合して含有する。Notch(特にNotch1)を高発現しているCD8α陽性樹状細胞及び成熟樹状細胞は、特に好ましい。
本医薬組成物は、典型的にはこれらの樹状細胞が緩衝液や培地などに懸濁されている液体調製剤であるが、その樹状細胞を含有していればよく、形状はこれに限定されない。医薬組成物は、樹状細胞以外に、コラーゲン、グリセロール、DMSO、糖、防腐剤など、様々なキャリアや添加剤を含有してもよい。
==樹状細胞各サブタイプの調製==
本発明で用いられる樹状細胞の由来は、ヒト及びヒト以外の脊椎動物であれば何でもよい。(本明細書において、動物名で限定していない樹状細胞の由来は、特に限定されないものとする。)
樹状細胞は、体中に広く分布しており、どの組織から調整してもよいが、脾臓、血液、骨髄から調整するのが好ましい。脾臓からは、直接樹状細胞を分離するが、末梢血や骨髄からは一定条件下で樹状細胞に分化誘導させた後、サブタイプのマーカーを指標に、各サブタイプの樹状細胞を分離する。分離方法は、特に限定されないが、抗体とのアフィニティを利用した方法が好ましい。例えば、CD8α、CD11,CD83、Notch1等に対する抗体を用い、カラム方式やバッチ方式で、各マーカーを有する細胞を単離できる。また、蛍光色素が結合した抗体を用いて、FACSで各マーカーを細胞表面に発現する細胞を分離できる。
なお、複数の抗体を用いることにより、複数の表面抗原を同時に発現している樹状細胞を単離することも可能である。
また、分離前に、樹状細胞に成熟化させる処理を施すことで、成熟樹状細胞を効率よく得ることができる。例えば、ヒト樹状細胞を成熟化させるためには、培養5日目にOK−432で刺激すればよいが、その方法は特に限定されない。
こうして分離された樹状細胞は、ニューロスフェア形成剤や医薬組成物を作製する際、マイトマイシンC処理やUV処理や放射線処理等により、増殖しないように処理してもよい。
==ニューロスフェアの形成==
神経幹細胞の培養及びニューロスフェアの形成は、基本的には、Weissらにより確立された培養法(Reynolds et al., Science 255, 1707-10, 1992)に基づく。即ち、中枢神経系組織から単離した細胞を、成長因子(EGF、FGF、など)を含む培地で浮遊培養させることにより、ニューロスフェア(神経細胞塊)を形成することができ、ある程度細胞塊が大きくなると、再び単一細胞に解離して、継代することができる。
ここで、神経幹細胞の由来となる組織は、神経幹細胞が含まれる中枢神経系組織(神経上皮、神経管、大脳皮質、線条体、嗅球、SVZ(subventricular zone)、海馬歯状回(hippocampal dentate gyrus)、脊髄など)であれば限定されない。
これらの組織から得られた神経幹細胞を、ニューロスフェア形成剤に含有された樹状細胞と共培養することにより、ニューロスフェアをより効率よく形成させることができる。その細胞数の比率は、神経幹細胞200個:樹状細胞10個であることが好ましい。
==医薬組成物の投与==
分離された樹状細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善することができる。
治療対象である神経損傷は、中枢神経系の損傷であれば限定されず、脳損傷であっても脊髄損傷であっても構わない。両者共に、神経幹細胞から分化し、樹状細胞は神経幹細胞の増殖を支持できるからである。
例えば、そのような神経損傷の原因疾病として、脳血管障害、脊髄血管障害、脳・脊髄腫瘍、脊椎疾患による神経障害、感染症疾患、痴呆性疾患、代謝・中毒性疾患、基底核変性疾患、脊髄小脳変性疾患、運動ニューロン疾患、末梢神経疾患、脱髄疾患、筋疾患、および、先天異常などが考えられ、具体的には例えば、歩行障害、起立障害、痙攣、舞踏病、バリズム、ジストニア、てんかん、ミオクローヌス、チック、脳出血、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、脳卒中、脳虚血、Binswanger病、片麻痺、四肢麻痺、運動失調、脊髄梗塞、脊髄静脈性梗塞、脳腫瘍、脊髄腫瘍、脳炎、脳膿瘍、結核腫、アルツハイマー病、パーキンソン病、痴呆、Wilson病、肝レンズ核変性症、Menkes病、アミロイドーシス、スフィンゴリピドーシス、アミノ酸代謝異常症、ビタミン欠乏症、アルコール症、アルコール性神経障害、有機溶剤中毒、スモン、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症などが挙げられるが、特にこれらに限定されず、神経損傷を生じる疾病であれば、どんなものでもよい。
このような上記樹状細胞を含有する医薬組成物を、神経損傷部位に移植する。移植方法は、常法に従えばよく、移植細胞量や移植回数などは適宜判断され、特に限定されない。
<実施例1>
==神経幹細胞の培養==
胎生14日のマウス胎仔終脳の線条体及び脊髄を採取し、それぞれ、DMEM/F12培地にEGF(20ng/ml、Peprotech社)、FGF2(10ng/ml、Peprotech社)、インシュリン(25μg/ml、Sigma社)、プロゲステロン(20nM、Sigma社)、セレン酸ナトリウム(30nM、Sigma社)、プトレスシン(60μM、Sigma社)を添加したマウス神経幹細胞培養用培養液を用い、2x10細胞/mlの細胞密度で播種した。その後、5−7日培養することで、神経幹細胞を含む細胞塊(ニューロスフェア)を選択的に培養した。この神経幹細胞カルチャー(ニューロスフェアカルチャー)を5日毎に継代培養し、以下の実験を行った。なお、継代にはAccumax(Inovative cell technologies社)を用い、酵素処理後(37℃、10分)物理的に細胞を解離し、DMEM/F12培地を用いて細胞を洗浄した後、上記マウス神経幹細胞培養培地を用いて、50個/μlの細胞密度で新しいプレートに播種した。
ヒト神経幹細胞は、中絶胎児脳より確立した神経幹細胞株を、慶應義塾大学医学部倫理委員会の規定に従って培養したものを使用した。ヒト神経幹細胞培養培地には、DMEM/F12(1;1)-bases medium(Invitrogen社)中に、hrFGF2(20ng/ml、PeproTech社)、hrEGF(20ng/ml、Peprotech社)、hrLIF(10ng/ml、Chemicon International社)、Heparin(5 μg/ml、Sigma社)、15mM HEPES(Invitrogen社)、penicilin(100U/ml、Invitrogen社)、Streptomycin(100 μg/ml、Invitrogen社)、B27 supplement(Invitrogen社)、amphotericib B(250ng/ml、Invitrogen社)を添加した培地を用いた(J .Neurosci. Res. 69; 869-879, 2002)。
==樹状細胞の分離==
マウス樹状細胞をC57BL/6成熟マウス脾臓より以下のように調整した。マウス脾臓を摘出したのちメスにより細断し、コラゲナーゼ(100U/ml、Sigma社)にてホモジェナイズした後、37℃にて20分間インキュベートし細胞を解離した。この細胞をセルストレーナー(100μm、BDFalcon社)に通過させた後、遠心して28%BSA(ρ=1.080)溶液中に浮遊させ、さらに遠心管中にてRPMI培地を重層後8500回転15分遠心し、BSA溶液とRPMI間の中間層にある細胞分画を回収した。
この細胞分画から、それぞれのマウス樹状細胞サブタイプに応じてMACSビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いて回収した。すなわち、CD11c(N418)磁気ビーズ、CD8α+Dendritic Cell Isolation kitを用い、上記細胞分画から、それぞれCD11c陽性樹状細胞(以下、樹状細胞と記す)、CD8α陽性樹状細胞を分離した。CD8α陰性樹状細胞はCD8α陽性樹状細胞を回収した残りの分画からCD11c磁気ビーズを用いて回収した(Fukao T., Immunology 164, 64-71, 2000)。なお、CD11cは、樹状細胞のマーカーとして知られている。
また、マウス成熟樹状細胞の誘導は、未成熟樹状細胞をR10培地(RPMI+10%FCS)で3時間培養したのち浮遊細胞を除き、さらにR10培地で一晩培養することによって行い、得られた細胞を成熟樹状細胞とした。
また、マウスNotch1陽性樹状細胞を得るために、上記細胞分画から、PE結合抗CD11c抗体(e-Bioscienses社)、ウサギ抗Notch1抗体(Santa cruz社)およびFITC結合抗ウサギIgG抗体(Beckman coulter社)を順次反応させた後、Moflo(Modular Flow、Dako cytometer社)を用いてFITC陽性のNotch1陽性細胞を分離した。
ヒト樹状細胞は、ヒト末梢血より分離した。ヒト末梢血をリンフォプレップ(Axis-Shield PoC AS社)に重層した後、遠心して単核球を含む中間層を回収した。これをCD14磁気ビーズにて、CD14陽性単球を分離したのち、hrGM-CSF及びhrIL-4(各100ng/ml、Peprotech社)を含むR10培地で5X105/mlで播種し、7−8日培養し、ヒト未成熟樹状細胞を得た(Araki H., British J Haematology 114, 681-89, 2001)。なお、ヒト樹状細胞の成熟化は、このCD14陽性単球の培養5日目にOK−432(中外製薬、0.1KE/ml)で刺激することにより行い、成熟化のマーカーであるCD83に対する抗体を用いて、成熟樹状細胞を純化した。
ヒトNotch1陽性樹状細胞を得るためには、上記ヒト樹状細胞をPE結合抗CD1a抗体(BD Bioscienses社)、およびウサギ抗Notch1抗体(Santa cruz社)、FITC結合抗ウサギIgG抗体を順次反応させた後、Mofloを用いてPE及びFITC陽性細胞を分離した(CD1aはヒト樹状細胞マーカー、Liu YJ, Cell 106, 259-262, 2001参照)。Notch1陽性成熟樹状細胞を調製するためには、OK-432刺激した培養樹状細胞をPE結合抗CD83抗体(BD Bioscienses社)、 およびウサギ抗Notch1抗体(Santa cruz社)、FITC結合抗ウサギIgG-FITC抗体を順次反応させた後、Mofloを用いてPE及びFITC陽性細胞を分離した。
==神経幹細胞と樹状細胞の共培養==
マウス胎児終脳線条体由来および脊髄由来神経幹細胞をAccumax(Inovative cell technologies社)にて37℃10分間酵素処理して、単一細胞に解離した後、セルソーター(Epics Altra,ベックマンコールタール社)にてPI(Propidium Iodide)陰性で直径10mm前後の単一細胞を選択し、神経幹細胞用培地を満たした低接着性96穴プレート(コースター社)にそれぞれ200個ずつ添加した(クローナル密度)。各ウェル内で、CD11c陽性樹状細胞10個と共培養し、樹状細胞を加えない群(コントロール)と比較して、ニューロスフェア形成数(直系50μm以上の細胞塊)を培養開始10−14日後に比較したところ、神経幹細胞の由来に関わりなく、2.5−3倍のニューロスフェア形成能の増加が観察された(図1)。このことから、中枢神経系の異なる組織由来の神経幹細胞であっても樹状細胞に対する反応性は同じであると考えられたので、以下のマウス実験系を用いた実験には、マウス線条体由来細胞を用いた。
マウス脾臓由来の樹状細胞は、CD8αの発現を指標に、CD8α陽性樹状細胞とCD8α陰性樹状細胞に分類できる。そこで、これらのサブタイプにニューロスフェア形成能の違いがあるかを検討した。その結果、分画前の樹状細胞が、コントロール(樹状細胞の添加無し)に比べ2倍程度のニューロスフェア形成能であったのに対し、CD8α陽性樹状細胞が、コントロールの8倍程度という顕著に高いニューロスフェア形成能を有していることが明らかとなった(図2)。このことは、高効率にニューロスフェアを形成するニューロスフェア形成剤として、マウスCD8α陽性樹状細胞を有効成分として含むニューロスフェア形成剤が有用であることを示す。
また、樹状細胞はサブタイプのみならず、成熟度に応じても機能が異なることが知られているので、樹状細胞における成熟度の違いによるニューロスフェア形成能の違いを検討した。まず、マウスCD11c陽性樹状細胞を用い、成熟化を誘導して、未成熟樹状細胞とニューロスフェア形成能を比較したところ、成熟樹状細胞のほうが有意に高いニューロスフェア形成能を示した(図3)。また、マウスCD8α陽性樹状細胞を用い、成熟化を誘導して、未成熟樹状細胞とニューロスフェア形成能を比較したところ、同様に成熟樹状細胞のほうが有意に高いニューロスフェア形成能を示した(図4)。このことは、高効率にニューロスフェアを形成するニューロスフェア形成剤として、成熟樹状細胞を有効成分として含むニューロスフェア形成剤が有効であることを示す。
次に、Notch1の発現の違いに対するニューロスフェア形成能の違いを検討した。発明者らは、マウス及びヒト樹状細胞の成熟度と関連して、Notch1の発現が高くなることを明らかにした。そこで、マウス樹状細胞についてNotch1陽性分画と陰性分画に分画し、ニューロスフェア形成能を比較した。またヒトCD83陽性樹状細胞についても、Notch1陽性分画と陰性分画に分画し、ニューロスフェア形成能を比較した。ここでは、コントロールとして、CD83陰性かつNotch1陰性樹状細胞、及び樹状細胞無しのネガティブコントロールを用いた。なお、ここで、樹状細胞成熟マーカーとしてCD83を用いたが(Hagihara M, Leuk Res 25, 249-58, 2001)、この培養系においてCD83陽性細胞はMHC ClassIIの高い発現を示したため、成熟樹状細胞であることが確認された。この実験の結果、マウスの系においても(図5)、ヒトの系においても(図6)、Notch1陽性樹状細胞は、コントロールと比べ、有意に高いニューロスフェア形成能を示した。このことは、Notch1が樹状細胞サブタイプの新規マーカーとして有用であること、及び高効率にニューロスフェアを形成するニューロスフェア形成剤として、Notch1陽性樹状細胞を有効成分として含むニューロスフェア形成剤が有効であることを示す。なお、ヒト細胞を用いた共培養系では、樹状細胞に対し40Gray量の放射線照射を行い、増殖を止めた後で共培養実験に供した。
<実施例2>
==マウス脊髄損傷モデルの作製==
C57BL/6成熟マウス(6週齢)を麻酔し、第8胸椎椎弓切除を行い、尖刀にて脊髄を左半切した脊髄損傷モデルを作製した。損傷部位に、実施例1と同様に得られた5x10個のCD11c陽性樹状細胞及びそこから分離したCD8α陽性樹状細胞をゲルフォーム(変性コラーゲン)とともに、移植した。コントロールには、RPMI培地を用いた。なお、動物実験は、慶應義塾大学動物実験委員会のプロトコールに従って行われた。
==マウス脊髄損傷モデルの行動機能解析==
(1)レアリングテスト
本機能解析では、60x60cmの黒い底のプラスチックボックスにマウスを入れ、立ち上がり行動の回数を調べた(Mikami, J Neurosurg 97, 142-147, 2002)。すなわち、測定にはSCANET(Toyo Sangyo Co. Ltd..)を用い、マウスを10分間ボックス内に入れて自由に行動させ、移動距離および下肢のみによる立ち上がり行動を機械的に測定した。
(2)BBBスコア
本機能解析では、60x60cmのプラスチックボックスにマウスを入れて10分間自由に活動させ、BBB score(Basso-Beattie-Bresnahan locomotor rating scale)に基づき下肢麻痺の程度を0-21点で評価し、下記の基準にて点数をつけた(Basso DM, J. Neurotrauma 12:1-21, 1995)。なお、点数を客観的にするため、群をブラインドで評価し、何度かの平均点を用いた。
0-7点:isolated hindloilmb joint movements
8-13点:frequency of stepping and coordination
14-21点:paw ratation and dragging of the toes
(3)ロータロッドによる解析
本解析では、手術後56日目に、ロータロッド測定機 (Rota-rod Treadmil BASILE Model No.7650, UGOBASILE)にマウスをのせ、一定速度の回転でマウスが持続してロータ上にとどまりうる時間を計測した。
(4)結果
マウス脊髄損傷モデルにおいて、CD11c陽性樹状細胞及びそこから分離したCD8α陽性樹状細胞の移植による運動機能回復を3つの異なった指標(レアリング、BBBスコアおよびロータロッド)に基づいて観察した。その結果、図7に示すように、CD8α陽性樹状細胞は、分離前のCD11c陽性樹状細胞より、高い運動機能改善効果を示すことが明らかになった。
なお、統計処理としては、ここに示されたデータに対してStudent-t 検定(独立2群)を行い、図7においてそれぞれコントロールのRPMI(培養液のみ)と比較した結果を、P*<0.05, P**<0.01, P***<0.005で表記した。
この結果は、マウスCD8α陽性樹状細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、神経損傷によって障害が生じた運動機能を改善するのに有用であることを示す。この医薬組成物は、運動機能だけでなく感覚機能などの行動機能であっても、神経障害によって生じた機能障害であれば、改善するのに有用であると考えられる。
==マウス脊髄損傷モデルにおけるCD8α陽性樹状細胞移植後の組織学的解析==
脊髄損傷マウスに移植した樹状細胞による神経再生効果を解析するため、移植脊髄損傷マウスにおいて、新生された神経細胞の細胞数を調べた。
まず、上述した脊髄損傷モデルマウスに、脊髄損傷当日を含めて6 日間、BrdU(50 mg/Kg)を腹腔内投与した。CD11cおよびCD8α(5X105)陽性樹状細胞移植28日目に、4%パラホルムアルデヒドで経心臓的灌流固定を行い、脊髄を回収して凍結切片を作製した。その後、細胞増殖のマーカーであるBrdU及び成熟神経細胞のマーカーであるNeuNに対し、それぞれ抗BrdU抗体(Fitzgerald社)および抗NeuN抗体(Chemicon社)を用いて免疫染色を行った。損傷部位より250μm離れた頭側及び尾側の灰白質を、中心管を基準として500μm(背側−腹側方向)x1000μm(頭側−尾側方向)のエリアを一匹あたり計6ヶ所定め、2重陽性細胞を観察し、それぞれ一匹あたりの2重陽性細胞総数の平均を比較した。
その結果、CD8α陽性樹状細胞移植群ではCD11c樹状細胞移植群およびコンロール群(RPMI移植群)と比較してNeuN/BrdU 陽性細胞の有意な増加を認めた(図8)。したがって、これまで神経新生は不可能であると考えられてきた哺乳類成体脊髄において、CD8α陽性樹状細胞の移植は、CD11c樹状細胞移植と比較して、脊髄損傷後により多くの神経細胞を新生させることが明らかになった。
<実施例3>
マウス樹状細胞において、CD8αの発現とNotch1の発現は、非常に相関性が高い。従って、実施例2の結果より、マウスNotch1陽性樹状細胞を有効成分として含有する医薬組成物も、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善するのに有用であると考えられた。そこで、Notch1陽性樹状細胞を用いて、実施例2と同様の実験を行い、マウスNotch1陽性樹状細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、神経損傷によって障害が生じた運動機能を改善するのに有用であることを確認した。
==樹状細胞におけるCD8α及びNotch1の発現解析==
マウスに、LPS(E coli(055:B5)-derived Lipopolysacchride, Sigma)を腹腔内投与(20μg/匹)し、24時間後に脾臓より成熟樹状細胞を分離し、実施例1と同様にCD11c抗体、Notch1抗体、CD8α抗体により標識した後、CD11c陽性分画についてNotch1、CD8αの発現をFACSで解析した。
また、CD8α陽性細胞と陰性細胞と、それぞれにおけるNotch1の発現を、以下のようにRT−PCRで調べた。まず、分離したそれぞれの樹状細胞より、全RNAをTRAIZOL(GIBCO社)により調整したのち、各RNA1μgをcDNA合成に使用した。cDNA合成にはRevatrace cDNA synthesis kit(TOYOBO社)を用い、各々の組み合わせのPCRプライマー、
Notch1:
Sense CCAGCATGGCCAGCTCTGG(配列番号1)
antisense CATCCAGATTCTGTGGCCCTGTT(配列番号2)
Galectin-1:
sense CGCCAGCAACCTGAATCTCAAACC(配列番号3)
antisense GGCCACGCACTTAATCTTGAAGTCTC(配列番号4)
b-actin:
sense ATCTGGCACCACACCTTCTACAATGAGCTGCG(配列番号5)
antisense CGTCATACTCCTGCTTGCTGATCCACATCTGC(配列番号6)
を用いて、(94℃30秒、56℃40秒、72℃40秒、35サイクル)で反応を行なった。
図9(A)に示すように、CD11c陽性のマウス成熟樹状細胞はCD8αおよびNotch1を共発現していた。また、図9(B)に示すように、CD8α陽性の細胞においてのみ、Notch1の発現が検出された、従って、CD8αとNotch1の発現は相関性が高いことが示された。
==マウス脊髄損傷モデルの行動機能解析==
細胞は、実施例1と同様にして得られたCD11c陽性樹状細胞(106個: n=14),及びNotch1陽性樹状細胞(106個; n=17)を用いた以外は、実施例2と同様にマウス脊椎損傷モデルを作製した。
これらのマウスに対し、運動機能回復を3つの異なった指標(レアリング、BBBスコアおよびスリッピングテスト)に基づいて観察した。解析に関しては、レアリングテスト及びBBBスコアによる評価は、実施例2と同様に行った。スリッピングテストは、ロータロッドと同様の手法であるが、より検出感度が高いことが明らかになっている。まず、手術後3ヶ月目にロータロッド測定器にマウスをのせ、2〜20回転/20秒の加速度にて回転軸にマウスをのせて5分間のプレトレーニングを行い、すべてのマウスが回転軸に乗ることを確認後、翌日に同じ個体を用いて本解析を行った。本解析では、8回転/分の速度に維持した回転軸にマウスを1分間のせ、回転軸上で左足が滑った回数を測定した。
==結果==
レアリングテストでは、図10(A)に示すようにNotch1陽性樹状細胞移植群は、移植後28日において、Notch1陰性樹状細胞移植群と比較して、有意に高いスコアを示した(#p<0.05)。
BBB scoreでは、図10(B)に示すように、Notch1陽性樹状細胞移植群は、移植後28日においてNotch1陰性樹状細胞移植群に比べ有意に高いスコアを示した(##p<0.001)。
神経損傷手術から3ヶ月後のスリッピングテストでは、図10(C)に示すように、Notch1陽性樹状細胞移植群は、Notch1陰性樹状細胞移植群と比べて、マウスが足を滑らせる回数が減る傾向にあった。
このように、Notch陽性樹状細胞は、Notch陰性樹状細胞に比べ、神経損傷によって障害が生じた運動機能を改善するのに、より有効であることが確認された。
<実施例4>
上記のように、マウス樹状細胞において、Notch1発現と樹状細胞の成熟化には強い関連性が見出されるため、成熟樹状細胞を有効成分として含有する医薬組成物もまた、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善するのに有用である。本実施例で示すように、このNotch1発現と樹状細胞の成熟化の関連性は、ヒトにおいても観察されるので、ニューロスフェア形成能と同様、この医薬組成物の有用性はヒトの系(例えば、ヒトCD83陽性樹状細胞など)にも当てはまると言える。
==ヒト樹状細胞の成熟化に伴うNotch1の発現亢進==
実施例1と同様に、ヒト樹状細胞を単離し、まず、成熟度のマーカーであるCD83を利用して、CD83陰性未成熟樹状細胞とCD83陽性成熟樹状細胞に分離し、それぞれにおいて、抗Notch1抗体を用い、Notch1の発現をFACSにて調べた。図11に示すように、成熟樹状細胞(図11B上)では、未成熟樹状細胞(図11A)より、Notch1の発現が高かった。さらに、成熟樹状細胞において、CD83とNotch1の発現を調べたところ、図11B下に示すように、CD83とNotch1の発現に相関が見られた。このように、ヒト樹状細胞においても、細胞の成熟化に伴い、Notch1の発現が亢進した。
本発明によって、高効率にニューロスフェアを形成するニューロスフェア形成剤及び障害が生じた神経機能を効率よく改善する医薬組成物を提供することが可能になった。

Claims (20)

  1. マウスCD8α陽性樹状細胞を有効成分として含むニューロスフェア形成剤。
  2. 成熟樹状細胞を有効成分として含むニューロスフェア形成剤。
  3. Notch陽性樹状細胞を有効成分として含むニューロスフェア形成剤。
  4. 前記NotchがNotch1であることを特徴とする請求項3に記載のニューロスフェア形成剤。
  5. 前記樹状細胞がマウス由来でありCD8α陽性であることを特徴とする請求2〜4のいずれかに記載のニューロスフェア形成剤。
  6. 前記樹状細胞がヒト由来であることを特徴とする請求2〜4のいずれかに記載のニューロスフェア形成剤。
  7. 前記樹状細胞がNotch陽性であることを特徴とする請求項1または2に記載のニューロスフェア形成剤。
  8. 前記NotchがNotch1であることを特徴とする請求項7に記載のニューロスフェア形成剤。
  9. マウスCD8α陽性樹状細胞を有効成分として含有し、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善することを特徴とする医薬組成物。
  10. 成熟樹状細胞を有効成分として含有し、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善することを特徴とする医薬組成物。
  11. Notch陽性樹状細胞を有効成分として含有し、神経損傷によって障害が生じた神経機能を改善することを特徴とする医薬組成物。
  12. 前記NotchがNotch1であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 前記樹状細胞がマウス由来でありCD8α陽性であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
  14. 前記樹状細胞がヒト由来であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
  15. 前記樹状細胞がNotch陽性であることを特徴とする請求項9または10に記載の医薬組成物。
  16. 前記NotchがNotch1であることを特徴とする請求項15に記載の医薬組成物。
  17. 前記神経損傷が脊髄損傷であることを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
  18. 前記神経機能が運動機能であることを特徴とする請求項9〜17のいずれかに記載の医薬組成物。
  19. Notch遺伝子関連物質である、樹状細胞サブタイプのマーカー。
  20. 前記Notch遺伝子関連物質がNotch1遺伝子関連物質であることを特徴とする請求項19に記載のマーカー。
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