JPWO2006085407A1 - Hcv量に関連する遺伝子のスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

多量のHCVを含む高ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子をスクリーニングする方法であって、 (a)肝組織由来cDNA50ng当りのHCVのコピー数を18S rRNA定量値で割った値が300unit以下の肝組織を低ウイルス群組織として選択し、当該値が30000unit以上の肝組織を高ウイルス群組織として選択するステップ、(b)前記低ウイルス群組織および高ウイルス群組織における遺伝子の発現量を測定するステップ、並びに、 (c)前記低ウイルス群組織よりも高ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子を選択するステップ を含む前記方法。

Description

本発明は、HCV RNAの高ウイルス群において発現亢進している遺伝子および低ウイルス群において発現亢進している遺伝子をスクリーニングする方法に関する。
肝炎ウイルスは、肝疾患の主な原因である。特に、慢性肝疾患の八割はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染が原因となっている。HCVの感染の70〜80%は、一過性感染で終わらず持続感染が成立する。その後、慢性肝炎、肝硬変を経て、20〜30年かけて肝細胞癌に進展する。したがって、肝細胞癌発症の高危険群である、C型慢性肝炎の段階での根治が望ましい。現在、抗ウイルス薬としてインターフェロン(IFN)が認可され使用されている。しかし、約30%にしか効果がないため、依然として有効な治療法はない状況である。
HCVそのものによる細胞障害性はほとんどないにも拘わらず、重篤な肝疾患を引き起こすことが知られている。C型肝炎の肝障害は、HCVを排除しようとする宿主免疫反応により引き起こされている。しかし、免疫応答が不十分なため、HCVを完全に排除することができず持続感染につながると考えられている。たとえ、HCVを完全に排除できなくとも、ウイルス量を抑えることができれば病態の進展を食い止めることができるはずである。一般にHCVの増殖能は低いが、中には肝臓ウイルス量が1000倍以上多い症例が存在する。この肝臓ウイルス量の違いが何に起因するかは明らかではない。
上記の通り、C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス量は、症例により違いがある。本発明者は、これらの違いが何によるものかを明らかにすれば、自然経過における抗ウイルス作用機構を知ることができるとともに、抗ウイルス治療薬開発に役立つ標的分子を明らかにできると考えた。
本発明者は、上記課題を解決するために、ヒト慢性肝炎症例から、高ウイルス量と低ウイルス量の症例を複数選別し、この2群間でどのような遺伝子の発現に差が生じているのかを、2つの方法により調べた。(1)細胞にウイルスが感染すると、ウイルスの排除機構としてIFNが誘導される。そのIFNは、様々な抗ウイルス作用分子を誘導してウイルス排除に向かう。この宿主防御反応の強弱が、肝臓HCV量の多い、または、少ない状況を作り出している要因であるか調べるため、ウイルス量の異なる2群間で、IFN下流遺伝子およびそれを介しておこるアポトーシスに関与するBcl2−associated X protein(BAX)の発現量を比較した。(2)ウイルス量のコントロールに関与する新規の遺伝子を探し出すため、高ウイルス群と低ウイルス群症例を各4例選びOligonucleotide microarrayを用いた網羅的発現解析を行った。鋭意研究の結果、ヒト慢性肝炎組織から高ウイルス量および低ウイルス量の症例を複数選び、ウイルス側及び宿主側からの要因を検討することによって、高ウイルス量および低ウイルス量で高発現する遺伝子を見出す方法の確立に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)多量のHCVを含む高ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
(a)肝組織由来cDNA50ng当りのHCVのコピー数を18S rRNA定量値で割った値が300unit以下の肝組織を低ウイルス群組織として選択し、当該値が30000unit以上の肝組織を高ウイルス群組織として選択するステップ、
(b)前記低ウイルス群組織および高ウイルス群組織における遺伝子の発現量を測定するステップ、並びに、
(c)前記低ウイルス群組織よりも高ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子を選択するステップ
を含む前記方法。
(2)少量のHCVを含む低ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
(a)肝組織由来cDNA50ng当りのHCVのコピー数を18S rRNA定量値で割った値が300unit以下の肝組織を低ウイルス群組織として選択し、当該値が30000unit以上の肝組織を高ウイルス群組織として選択するステップ、
(b)前記低ウイルス群組織および高ウイルス群組織における遺伝子の発現量を測定するステップ、並びに、
(c)前記高ウイルス群組織よりも低ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子を選択するステップ
を含む前記方法。
(3)遺伝子の発現量の測定がマイクロアレイおよび/またはリアルタイムPCRを用いることを特徴とする、(1)または(2)記載の方法。
(4)高ウイルス群組織における遺伝子の発現量が、低ウイルス群における遺伝子の発現量に対して2倍以上発現亢進することを特徴とする、(1)記載の方法。
(5)低ウイルス群組織における遺伝子の発現量が、高ウイルス群における遺伝子の発現量に対して2倍以上発現亢進することを特徴とする、(2)記載の方法。
(6)低ウイルス群組織又は高ウイルス群組織を、さらに慢性肝炎由来のもの及び肝硬変由来のものに分類することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)以下の(a)〜(d)の遺伝子から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を含有する、ウイルス量に関連する病態の検査薬。
(a)配列番号54〜131で表される塩基配列を含む遺伝子
(b)配列番号54〜131で表される塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(c)配列番号132〜170で表される塩基配列を含む遺伝子
(d)配列番号132〜170で表される塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(8)以下の(a)〜(h)の遺伝子から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を含有する、ウイルス量に関連する病態の検査薬。
(a)配列番号171〜237で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(b)配列番号171〜237で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、慢性肝炎の高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(c)配列番号238〜258で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(d)配列番号238〜258で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、慢性肝炎の低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(e)配列番号259〜285で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(f)配列番号259〜285で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、肝硬変の高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(g)配列番号286〜302で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(h)配列番号286〜302で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、肝硬変の低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(9)マイクロアレイの形態である、(7)〜(10)のいずれか1項に記載の検査薬。
図1は、インターフェロン作用機構を示す図である。ウイルス感染によりインターフェロン(IFN)α/βが誘導されると、Jak‐Statシグナル伝達系を介して転写因子IFN−stimulated gene factor(ISGF)3が誘導される。この転写因子がIFN−stimulated response element(ISRE)に結合し、IFN−stimulated gene(ISG)の転写が誘導される。ここでは4つのISG‐myxovirus resistance protein A(MxA),2’,5’oligoadenylate synthetase(OAS),double−stranded RNA−dependent protein kinase(PKR),p53−の誘導を示す。MxAはウイルスRNAに結合し、RNA複製を阻害する。OASやPKRは宿主細胞内反応をshut−offすることによりウイルス増殖を抑制する。p53はBcl2−associated X protein(BAX)を介して宿主細胞のアポトーシスを誘導し、ウイルス増殖を抑制する。これら宿主のウイルス感染防御反応に対し、HCVタンパク質は複数の抑制機構をもって対抗している。
図2は、肝臓HCV RNAの定量結果を示す図である。低ウイルス群(Low)15例(慢性肝炎9例、肝硬変6例)、高ウイルス群(High)19例(慢性肝炎9例、肝硬変10例)のHCV RNA量を示した。グラフ棒の下にHCV遺伝子型を示す。記載のない症例は、すべて1b型である。また「+2a」は、1b型と2a型との二重感染を意味する。黒棒は慢性肝炎、斜線棒は肝硬変、「▼」はoligonucleotide microarray解析に用いた症例を示す。
図3は、高ウイルス群(High)と低ウイルス群(Low)とで発現量に差があった遺伝子を示す図である。高ウイルス群14例(慢性肝炎5例と肝硬変9例)と低ウイルス群11例(慢性肝炎6例と肝硬変5例)とを用いて発現量を比較した。Mann Whitney U testにて有意差を検定した(p<0.05)。横線は有意差のあった慢性肝炎症例の中央値を示す。「●」は慢性肝炎患者由来の遺伝子発現量を示し、「○」は肝硬変患者由来の遺伝子発現量を示す。
図4は、高ウイルス群と低ウイルス群とで発現量に差のある遺伝子の求め方を示す図である。慢性肝炎高ウイルス群4例と低ウイルス群4例とを用いた8枚のmicroarrayについて、二群間の比較で2倍以上発現量に差のあった遺伝子を探し出した。用いたmicroarray1枚には約47,000遺伝子以上を網羅する54,675probeが載っている。少なくとも1枚のmicroarrayで発現有りの表記がでたprobeを選択し(28,505)、2群間の比較で3種類のパラメトリック検定を行った。それぞれで有意に発現量が異なるprobe数を求めた。いずれの検定でも選ばれた共通probe683個について、2群間で2倍以上差のあるprobeを選び、さらに発現量の多い群4枚とも発現有りの表記がでたprobeを選んだ。最終的には遺伝子として、高ウイルス群に発現優位のものを高ウイルス遺伝子、低ウイルス群に発現優位のものを低ウイルス遺伝子とした。
図5は、クラスタリング解析によるCondition treeを示す図である。2群間で発現量に差のあった遺伝子117遺伝子(A)と肝臓に発現していた28,505probe(B)とを用いて8枚のmicroarrayのクラスタリングを行った。microarrayは、高ウイルス群のなかでウイルス量の多い順にH1,H2,H3,H4とし、低ウイルス群でウイルス量の少ない順にL1,L2,L3,L4とした。
図6は、内在性コントロール遺伝子の発現定量の結果を示す図である。(A)GAPDHとRPL34のシグナルを8枚のmicroarrayで比較した。per gene normalization後のシグナル値を用いた。(B)34例の肝臓cDNAにおける18S rRNA,RPL34,GAPDH量をreal−time PCRを用いて定量した。発現量は各遺伝子の中央値を1とした補正値で表した。「○」は低ウイルス群、「●」は高ウイルス群を示す。
図7は、高ウイルス遺伝子および低ウイルス遺伝子のreal−time PCRによる発現定量の結果を示す図である。各3つの高ウイルス遺伝子(A,B,C)と低ウイルス遺伝子(D,E,F)について、real−time PCRにより発現定量を行い、慢性肝炎高ウイルス群(High)9例と低ウイルス群(Low)9例とで比較した。microarrayに用いた各4例は、灰色丸で示した。遺伝子の発現量は、18S rRNAで補正した値を用いた。Mann Whitney U testにて有意差を検定した(p<0.05)。横線は慢性肝炎9症例の中央値を示す。
図8は、117probeの遺伝子構造上の位置と分類を示す図である。ボックス(□)と白矢印により、exon5個からなる遺伝子とその方向を示す。黒矢印はmicroarrayに使用されたprobeの位置とその方向を示す。(5)は遺伝子が同定されていない領域に、転写産物が証明されている場合を示す。右の数字は、高ウイルス遺伝子78個と低ウイルス遺伝子39個の各分類別遺伝子数を示す。
図9は、慢性肝炎における遺伝子発現量の解析の概要を示す図である。
図10は、肝硬変における遺伝子発現量の解析の概要を示す図である。
図11は、慢性肝炎と肝硬変において共通に発現する遺伝子の有無を解析した結果を示す図である。
図12は、クラスタリング解析結果を示す図である。
図13は、microarrayに使用されたprobeの遺伝子構造上の位置と分類を示す図である。
図14は、慢性肝炎における高ウイルス遺伝子について発現の検証を行った結果を示す図である。
図15は、慢性肝炎における高ウイルス遺伝子について発現の検証を行った結果を示す図である。
図16は、肝硬変における低ウイルス遺伝子について発現の検証を行った結果を示す図である。
図17は、癌部と非癌部におけるHCV量の定量結果を示す図である。
図18は、受容体関連遺伝子の発現量を測定した結果を示す図である。
図19は、受容体関連遺伝子の発現量を測定した結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定するものではない。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
1.本発明の概要
HCVに感染した慢性肝炎、肝硬変肝組織において、ウイルス量の多い症例と少ない症例が存在することが知られている。本発明者は、このウイルス量の違いが宿主側の何に起因するかを明らかにする目的で、ヒト慢性肝炎組織のさまざまな遺伝子の発現レベルを調べ、ウイルス増殖に関連する宿主側要因を検討した。
具体的には、本発明者は、対象症例であるC型肝細胞癌の非癌部組織を、HCV RNA量の多い高ウイルス群と、HCV RNA量の少ない低ウイルス群とに選別し、この2群間での遺伝子の発現レベルを解析し、それぞれの群において発現が亢進している遺伝子を見出した。
したがって、本発明は、HCV RNA量の多い高ウイルス群において、発現亢進している遺伝子のスクリーニング方法、および、HCV RNA量の少ない低ウイルス群において、発現亢進している遺伝子のスクリーニング方法を提供するものである。
また、本発明は、高ウイルス群又は低ウイルス群において発現亢進している遺伝子を含む、ウイルス量に関連する病態の検査薬を提供する。
2.高ウイルス群および低ウイルス群
本発明の方法の好ましい態様においては、まず、解析対象をHCV RNA量によって、高ウイルス群または低ウイルス群に分類する。
(1)試料
本発明の方法の対象となる組織は、C型肝細胞癌患者の非癌部組織である。また、C型肝炎ウイルスに感染した慢性肝炎、肝硬変の組織であってもよい。組織は採取後すぐに本発明の方法を実施しない場合は、液体窒素で凍結して、−80℃にて保存することもできる。
続いて、組織からtotal RNAを抽出する。組織からRNAを抽出する方法は、当業者であれば適宜選択することができるが、例えばTrizol(Invitrogen)を用いることができる。
(2)HCV RNA量の測定
HCV RNA量は、real time PCRによって測定することができる。real time PCRには、例えば、Rotor−Gene 3000(Corbett Research,Mortalke,Australia)とABI Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster,CA)を用いることができる。
HCV RNA量の測定は、2.(1)で得られたRNAから逆転写酵素によってcDNAを合成し、得られたcDNAの例えば50ng相当を用いて実施することができる。そのとき、プライマーとしては、例えば
Forward(5’−3’):GACCAAGCTCAAACTCACTC (配列番号1)
Reverse(5’−3’):GCACGAGACAGGCTGTGATA (配列番号2)
を0.3μM用いてもよい。
HCV全長を組み込んだプラスミドDNAを用いて検量線を作成し、HCV RNA量の定量に用いる。
本発明において、HCV RNA量は、「unit」で表す。「unit」は、検量線作成に用いたプラスミドDNA量をcopy数に換算し、検量線から肝組織由来のcDNA50ng当りのHCV RNAコピー数を求め、18S rRNA定量値で割った値を意味する。
「18S rRNA定量値」は、ある肝臓由来のcDNA(標準サンプル)中の18S rRNAをリアルタイムPCRで測定して、標準サンプルcDNAに対する検量線を作成したときの、肝組織由来のcDNA0.25ng相当における標準サンプルcDNA量を意味する。肝組織由来のcDNA0.25ng相当における標準サンプルcDNA量は検量線から求めることができる。
例えば、肝組織由来のcDNA50ng当りのHCV RNAコピー数が8000であり、肝組織由来のcDNA0.25ng当りの18S rRNA定量値が0.2ngのときは、40000unitとなる(8000×1/0.2=40000)。
(3)対象症例の選別
本発明において、「低ウイルス群」とは、HCV RNA量が300unit以下の症例を意味する。
本発明において、「高ウイルス群」とは、HCV RNA量が30000unit以上の症例を意味する。
3.遺伝子の発現量の測定
本発明の方法は、HCV RNA量によって、解析対象を前記の高ウイルス群と低ウイルス群とに選別して行うことを特徴とする。
さらに、本発明は、高ウイルス群および低ウイルス群をHCV遺伝子型によって選別することもできる。すなわち、nested PCR法により、1a型、1b型、2a型、2b型の4つのHCV遺伝子型特異的PCRを行うことでHCV遺伝子型を明らかにし、HCVの特定の遺伝子型に注目して、宿主遺伝子の発現量解析を行うこともできる。
また、高ウイルス群および低ウイルス群から慢性肝炎または肝硬変の症例のみを抽出して、宿主遺伝子の発現量解析を行うこともできる。
本発明の遺伝子スクリーニング方法において、遺伝子の発現量の測定にはオリゴヌクレオチドマイクロアレイまたはリアルタイムPCRを用いることができる。
また、高ウイルス群または低ウイルス群で発現亢進する遺伝子をオリゴヌクレオチドマイクロアレイで選択した後、これらの遺伝子の中から高ウイルス群または低ウイルス群で発現亢進する遺伝子をリアルタイムPCRでさらに絞って選択することもできる。
(1)オリゴヌクレオチドマイクロアレイ
(a)発現解析方法
宿主の遺伝子の発現量を測定するために、まず、2.(1)で得られたtotal RNAからbiotin−標識cRNAを合成する。合成は、例えば、Affymetrix Gene Chip expression analysisのマニュアルを一部改変して実施することができる(実施例2(1)参照)。得られたcRNAは、標的遺伝子サンプルとして使用するために、適宜精製し、断片化する。精製、断片化は、当業者であれば容易に実施することができる。
マイクロアレイは、Human Genome U133 Plus 2.0 array(Affymetrix)などの市販品を用いることが好ましいが、これに限定されるわけではない。
次に、作製したcRNA断片を標的遺伝子サンプルとしてアレイにハイブリダイズさせる。ハイブリダイズ、洗浄、染色には、Fluidics Station 450(Affymetrix)などの機器を用いることもできる。ハイブリダイズ、洗浄、染色の方法は、市販アレイであれば、添付のマニュアルにしたがうことが好ましい。
続いて、スキャナー(たとえば、Scanner 3000(Affymetrix))にて遺伝子発現のシグナルを読み取り、解析する。遺伝子発現シグナルの解析には、ソフトウェアを用いることが好ましく、ソフトウェアには、例えば、Gene Spring version 7(Silicon Genetics,Redwood,CA)を挙げることができる。
シグナル値の補正は、マイクロアレイ毎に中央値を1とする「per chip normalization」を行い、つづいて、遺伝子毎に中央値を1とする「per gene normalization」を行うことが好ましい。
(b)統計学的解析
本発明において、分割表の検定は、χ検定またはフィッシャーの直接確率検定を用いる。また、2群間の有意差検定は、Mann−Whitney U検定を用いることが好ましい。
(c)発現解析手順
高ウイルス群において発現亢進している遺伝子を選択する方法、および低ウイルス群において発現亢進している遺伝子を選択する方法を以下に示す。
同時に複数試料で発現解析を行う場合は、まず、複数枚のマイクロアレイのうち、少なくとも1枚で発現の確認された(「present flag」の出た)プローブを抽出することができる。このプローブに対応する遺伝子が、HCVに感染した患者の肝臓に発現している遺伝子である。
ここで「プローブ」は、マイクロアレイにセットした、遺伝子の一部を意味する。「プローブに対応する遺伝子」とは、プローブの元となった遺伝子を意味する。
次に、高ウイルス群と低ウイルス群との2群間で発現に有意な差がある遺伝子を抽出するために、パラメトリック検定を行うことができる。例えば、2群で分散が等しいと仮定するStudent’s t test、分散が等しくないと仮定するWelch’s t test、あるいは、少ないreplicateからできるだけ正確な母分散を見積もるため、replicateを増やした時に収束するであろう標準偏差を予測計算するCross−gene error modelのパラメトリック検定が挙げられる。本発明において、検定は1種類でもよいし、複数種類でもよいが、複数行うことが好ましい。
複数の検定を行う場合は、これらの検定で抽出されたプローブの重複を調べるために、Venn diagramを作製することが好ましい。
続いて、1種類の検定で抽出されたプローブ、または複数の検定で共通に抽出されたプローブを対象にして、2群間で発現亢進の程度が2倍以上、すなわち、2群間での発現量に2倍以上差のあるプローブを選択できる。発現亢進の程度の差は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3倍以上である。選択されたプローブのうち、高ウイルス群において発現亢進しているプローブに対応する遺伝子が、高ウイルス群において発現亢進している遺伝子(以下「高ウイルス遺伝子」ともいう)であり、低ウイルス群において発現亢進しているプローブに対応する遺伝子が、低ウイルス群において発現亢進している遺伝子(以下「低ウイルス遺伝子」ともいう)である。
また、場合によっては、さらに、複数枚のマイクロアレイのすべてにおいて、または高発現群のマイクロアレイのすべてにおいてpresent flagのついているものに絞って、プローブを抽出することもできる。また、プローブの対応する遺伝子が同一であり重複するものや、polyA+RNAとしては測定できない遺伝子(例えば、rRNAなど)を除くこともできる。このように選択されるプローブにおいても、高ウイルス群において発現亢進しているプローブに対応する遺伝子が高ウイルス遺伝子であり、低ウイルス群において発現亢進しているプローブに対応する遺伝子が低ウイルス遺伝子である。
本発明者は、上記方法により、高ウイルス遺伝子として78個(表5)、および低ウイルス遺伝子として39個(表6A)の、計117個の遺伝子を選択することができた(実施例2)。そのうち、2群間で2.5倍以上差のあった遺伝子をさらに表3および表4に示す。
また、高ウイルス群及び低ウイルス群のそれぞれについて、慢性肝炎と肝硬変に分類して4つの群とし、それぞれの群の遺伝子発現を解析した結果、慢性肝炎高ウイルス遺伝子として66個(表10)、慢性肝炎低ウイルス遺伝子として21個(表11)、肝硬変高ウイルス遺伝子として27個(表12)、肝硬変低ウイルス遺伝子として17個(表13)を得た(実施例5)。
(2)リアルタイムPCR
(a)発現解析方法
本発明において、リアルタイムPCRを用いて遺伝子の発現量を測定する場合は、まず、上記2.(1)で得られたRNAを、適宜DNaseI処理し、精製して、ランダムプライマーと逆転写酵素とでcDNAを合成する。逆転写酵素は、例えばAMV reverse transcriptase XL(Life Sciences,Gaithersurg,MD)を用いることができる。また、ランダムプライマーの代わりにOligo(dT)プライマーを用いることもできる。
リアルタイムPCRによる遺伝子の発現量の測定は、Rotor−Gene 3000(Corbett Research,Mortalke,Australia)やABI Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster,CA)などの市販の機器を用いて行うことができる。
反応は例えば、10ng相当のcDNA、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)、0.5μMの各種遺伝子プライマーを含む25μl反応液中で、95℃、10minのpreheat後、95℃ 15sec、60℃ 60secを45cycle行うことができる。このとき、18S rRNAなどのハウスキーピング遺伝子の定量には、例えば0.25ng相当のcDNAを用いて行うことができる。
反応に用いるプライマーは、当業者であればソフトウェアを用いて適宜設計することができる。代表的なソフトウェア「primer3」のURLを下記に示す。
(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)
primer3を用いて設計したプライマーの例を下記の表1に示す。
ある肝臓cDNAを定量用の標準サンプルに用いて検量線を作成し、各種遺伝子の定量に用いる。例えば、各遺伝子で最も高い発現を示す肝臓cDNAを標準サンプルとし、そのcDNAの量を定量値に用いることができる。測定対象のサンプルのcDNAを一定量、遺伝子XのリアルタイムPCRにかけて、そのサンプルが検量線から5ngと評価できれば、そのサンプルには標準サンプルcDNAの5ngに含まれる遺伝子X mRNAと等量の遺伝子X mRNAが存在することになる。
本発明において、各遺伝子発現量は、検量線から得られた測定対象サンプル中の各遺伝子発現定量値を内在性コントロール遺伝子発現定量値(例えば上記測定対象サンプル中の18s rRNAの定量値)で除した相対値で表すことができる。
(b)内在性コントロール遺伝子
本発明において「内在性コントロール遺伝子」は、18S rRNA,glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase(GAPDH),ribosomal protein L34(RPL34)を用いることができるが、発現量のばらつきが小さい点で18S rRNAが好ましい。
(c)発現解析手順
上記のように、宿主の各遺伝子の発現量は、18S rRNAで補正した値を用いることができる。補正の後、低ウイルス群の発現量と高ウイルス群の発現量とを比較する。例えば、高ウイルス群の発現量の中央値を低ウイルス群の中央値で割ったときの値が、2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上の遺伝子を高ウイルス遺伝子として選択することができる。逆に、低ウイルス群の中央値を高ウイルス群の発現量の中央値で割ったときの値が、2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上の遺伝子を低ウイルス遺伝子として選択することができる。
また、このとき、2群間でMann Whitney U検定を行い、上記遺伝子の中でも、有意差(P<0.05)の遺伝子を選択することがより好ましい。
4.高ウイルス遺伝子および低ウイルス遺伝子
(1)高ウイルス遺伝子
高ウイルス遺伝子では、HCVを排除しようとする高ウイルス群の宿主防御機能の能力を超えて誘導された遺伝子が含まれていると考えられる。したがって、高ウイルス遺伝子の中には、HCV側にとって増殖有利に働くと予想される因子が存在する可能性がある。
すなわち、本発明によってスクリーニングされる高ウイルス遺伝子の発現を抑制すれば、C型肝炎ウイルスの増殖を抑制することが可能となるだろう。高ウイルス遺伝子の発現を抑制することを特徴とするC型肝炎ウイルス増殖抑制剤やC型肝炎ウイルス増殖抑制方法の開発につながることが予想される。
(2)低ウイルス遺伝子
低ウイルス遺伝子の中には、HCVが増殖しにくい環境作りに関与する遺伝子が存在する可能性がある。すなわち、本発明によってスクリーニングされる低ウイルス遺伝子の発現を亢進すれば、C型肝炎ウイルスの増殖を抑制することが可能となる。低ウイルス遺伝子の発現を亢進することを特徴とするC型肝炎ウイルス増殖抑制剤やC型肝炎ウイルス増殖抑制方法の開発につながることが期待できる。
(3)疾患別に発現する遺伝子
本発明においては、上記高ウイルス遺伝子と低ウイルス遺伝子を、さらに慢性肝炎由来のもの及び肝硬変由来のものに分類して発現量の解析を行うことができる。例えば、患者背景因子として慢性肝炎症例と肝硬変症例に分類し、それぞれの項目(性別、年齢、病期等)についてウイルス量を指標として2群間の比較を行うことができる。
なお、本発明においては高ウイルス遺伝子と低ウイルス遺伝子を、さらに慢性肝炎由来のもの及び肝硬変由来のものに分類するという順序でもよく、病態(慢性肝炎由来及び肝硬変)を分類した後に高ウイルス遺伝子と低ウイルス遺伝子を分類するという順序でもよく、順序に限定されるものではない。すなわち、本発明における遺伝子発現解析は、遺伝子群が、慢性肝炎における高ウイルス遺伝子群(CHH群)、慢性肝炎における低ウイルス遺伝子群(CHL群)、肝硬変における高ウイルス遺伝子群(LCH群)、及び肝硬変における低ウイルス遺伝子群(LCL群)の4通りに分類されている限り、分類の順序は問わないものとする。
(4)解析された遺伝子
本発明において解析された遺伝子を以下に示す。
<高ウイルス遺伝子>(表5)
(a)配列番号54〜131で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(b)配列番号54〜131で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
<低ウイルス遺伝子>(表6)
(c)配列番号132〜170で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(d)配列番号132〜170で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
また、疾患別に分類したときの遺伝子群を以下に示す。
(i)CHH遺伝子群(表10)
(a)配列番号171〜237で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(b)配列番号171〜237で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、慢性肝炎の高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(ii)CHL遺伝子群)(表11)
(c)配列番号238〜258で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(d)配列番号238〜258で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、慢性肝炎の低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(iii)LCH遺伝子群(表12)
(e)配列番号259〜285で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(f)配列番号259〜285で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、肝硬変の高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
(iv)LCL遺伝子群(表13)
(g)配列番号286〜302で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
(h)配列番号286〜302で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、肝硬変の低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
上記各遺伝子において、「ストリンジェントな条件」とは、核酸同士がハイブリダイズしたときの洗浄条件であってバッファーの塩濃度と温度により規定される条件である。例えば、0.5〜2×SSC及び0.1%SDSの濃度で37〜52℃の条件を挙げることができ、よりストリンジェントな条件としては、例えば2×SSC及び0.1%SDSで65℃の条件、0.5×SSC及び0.1%SDSで42℃の条件等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブの濃度や長さ、あるいは反応時間等の諸条件を加味し、適切な条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987−1997)等を参照することができる。
本発明において遺伝子が「発現が亢進する」とは、リアルタイムPCRにより定量解析を行い、得られた定量値が比較したいウイルス量の異なる群よりも高い場合を言う。
5.病態検査薬
本発明において解析された、CHH遺伝子群、CHL遺伝子群、LCH遺伝子群またはLCL遺伝子群に属するそれぞれの遺伝子は、CHH遺伝子群及びCHL遺伝子群については慢性肝炎におけるウイルス量のマーカーとなり、LCH遺伝子群及びLCL遺伝子群は肝硬変におけるウイルス量のマーカーとなり得る。したがって、患者等から得られた肝組織からこれらの遺伝子の発現量を解析することで、どの疾患でどの程度ウイルスが増殖している病態か、どの程度肝機能を維持し、どのような抗ウイルス反応を惹起できるかなどを判断することができる。
また、本発明において解析された遺伝子は、患者等の肝組織から得られた遺伝子とのハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイゼーションによってシグナルを検出することで、ウイルス量に関連したどの病態にあるかを判断することができる。ハイブリダイゼーション条件および標識方法は、当業者に周知であり、本明細書に記載の方法のほか、任意の方法を採用することができる。
従って、上記遺伝子は、ウイルス量に関連する病態の検査薬として使用することができる。上記遺伝子をマイクロアレイに搭載することで、簡易かつ網羅的に遺伝子の発現量解析を行うことが可能である。
本発明において、上記遺伝子は緩衝液(例えばTris緩衝液)、標識試薬(例えば蛍光標識試薬)等とともにキットの形態で使用することができる。上記遺伝子が搭載されたマイクロアレイをキットに含めることもできる。
以下、本発明を具体的な例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(1) 肝臓組織
59例のC型肝細胞癌患者の癌切除術検体より非癌部組織を分離し、速やかに液体窒素で凍結し−80℃にて保存した。検体の研究使用に関しては、各患者より同意を得て行った。
(2) RNA抽出とRNA発現定量
約0.1gの肝臓組織にTrizol(Invitrogen,Carsbad,CA)を2ml加え、ポリトロンでホモゲナイズ後、取り扱い説明書に従いtotal RNAを抽出した。Total RNAの質的評価を行うため、Agilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies,Palo Alto,CA)のRNA 6000 nano assay chipを用いて電気泳動解析を行った。
抽出したRNAに混在するDNAを除くため、DNaseI処理を行った。Total RNA 20μgに対しDNase I(Takara,Shiga,Japan)10unitを加え、50μl中で37℃,20min反応後、TrizolにてRNAを精製した。DNaseI処理後のRNA 10μgを用いて、random primerとAMV reverse transcriptase XL(Life Sciences,Gaithersurg,MD)25unitを加え100μl中でcDNAを合成した。
実施例中のReal−time PCRによる発現定量は、Rotor−Gene 3000(Corbett Research,Mortalke,Australia)とABI Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster,CA)を用いた。10ng相当のcDNA、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)、0.5μMの各種遺伝子primerを含む25μl反応液中で、95℃、10minのpreheat後、95℃ 15sec、60℃ 60secを45cycle行った。Real−time PCRにおいて、HCV RNAの定量は50ng相当のcDNAを用いて行い、18S rRNAの定量は0.25ng相当のcDNAを用いて行った。また、HCV primerは0.3μMで行った。
定量用標準サンプルは、肝臓cDNAおよびHCV全長を組み込んだプラスミドDNA(標準プラスミドDNA)を5倍の系列希釈で5点用意し、検量線を作成後、得られた検量線を絶対定量解析に用いた。各遺伝子毎に、最も高い発現を示した肝臓cDNAを標準サンプルとし、そのcDNAを定量値算出用の検量線作成に用いた。HCV RNA定量値は、標準プラスミドDNA量をウイルスのcopy数に換算し、cDNA50ng当りのHCV RNA copy数を求め、18S rRNA定量値で割った値を「unit」として表記した。内在性コントロール遺伝子として、3つのハウスキーピング遺伝子、18S rRNA,glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase(GAPDH),ribosomal protein L34(RPL34)を用いた。各遺伝子発現量は、各遺伝子発現定量値を内在性コントロール遺伝子発現定量値で除した相対値で表した。用いたprimer配列の一部は、primer3(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いてデザインした。(表1)。
Figure 2006085407
(3) HCV遺伝子型の決定
cDNA100ngを用いて、岡本らのnested PCR法により、1a型、1b型、2a型、2b型の4つのHCV遺伝子型特異的PCRを行った。第一ラウンドPCRは、共通配列primerで20μl中35cycle PCRを行った。その反応液1μlを用いて共通forward primerと各型別reverse primerで第二ラウンドPCRを20μl中で35cycle行った。用いたprimer配列を表1に示す。PCR産物5μlを3%アガロースゲル電気泳動にかけ、PCR産物の大きさより1a型が49bp、1b型が144bp、2a型が174bp、2b型が123bpであることから、HCV遺伝子型を決定した。
(4) 対象症例の選別
59例の肝臓HCV RNAを定量した結果、定量値は、0〜372,068unitの範囲で分布した。ウイルス量が、300unit以下の症例を低ウイルス群とし、30000unit以上を高ウイルス群として、59例を群分けした。
その結果、低ウイルス群は15例で、その内訳は慢性肝炎(CH)9例と肝硬変(LC)6例であった。高ウイルス群は19例で、その内訳は慢性肝炎9例と肝硬変10例であった(図2)。
選別した34例(CH+LC)とその中の慢性肝炎症例(CH)18例について、患者の背景因子を高ウイルス群と低ウイルス群とで比較した(表2)。
Figure 2006085407
表2に示すように、34例(CH+LC)において、肝硬変(LC)の割合、性比、年齢の分布、肝細胞癌の進行度の分布については、ウイルス量の違いでわけた2群間に差はなかった。肝機能を表す血液検査結果(「Liver function」)も、軽度の肝障害を示す値であるが、2群間で有意差は認められなかった。以上より、この34症例を用いてウイルス量が1000倍異なる肝臓で、どのような遺伝子発現レベルの違いがあるのか、解析することが可能と考えた。
ただし、34例におけるHCV遺伝子型の分布(「HCV genotype」)は、2群間で有意に異なり、2型HCVが低ウイルス群に偏っていたことから(p=0.001)、一部HCV遺伝子型の違いによる差が反映されることを考慮する必要がある。そこで、以下の実施例(実施例3(1)を除く)では、1b型の23例で比較解析を行うことにした。
また明らかに病態が進行している肝硬変の影響も考慮する必要があると考え、慢性肝炎(CH)18例でのウイルス量の違いも独立して解析することにした。
(1) Oligonucleotide microarrayによる発現解析方法
慢性肝炎症例の高ウイルス群、低ウイルス群より各4例を選別し、total RNAよりbiotin−標識cRNAを以下のように合成した。Affymetrix GeneChip expression analysisのマニュアルを一部改変して次のように行った。まず、10μgのtotal RNAを用いてRNase inhibitor存在下、42℃,2hrにてfirst strand cDNAを合成した。マニュアルに従ってsecond strand cDNAを合成後、半分量を用いてMEGAscript T7 kit(Ambion,Austin,TX)を基本にした以下の組成の反応液を含む43μlの反応液を37℃で9hrインキュベートし、in vitro transcriptionを行い、biotin−cRNAを合成した。
Figure 2006085407
その後、biotin−cRNAはRNeasy MiniElute cleanup kit(Qiagen,Hilden,Germany)を用いて精製した。cRNAのfragmentationはマニュアルにしたがった。
Human Genome U133 Plus 2.0 array(Affymetrix,Santa Clara,CA)を8枚用いて、マニュアルに従ってFluidics Station 450(Affymetrix)によりハイブリダイゼーション、洗浄、染色を行い、Scanner 3000(Affymetrix)にて読みとりを行った。各遺伝子発現シグナルは、Gene Spring version 7(Silicon Genetics,Redwood,CA)を用いて解析した。シグナル値の補正は、microarrayごとに中央値を1とするper chip normalizationを行い、その後遺伝子ごとに中央値を1とするper gene normalizationを行った。
(2) インターフェロン下流遺伝子の発現解析
IFN作用機構がうまく働いているかいないかでウイルス量に差が出るのか、を調べるために、抗ウイルス作用を示す5つの遺伝子(MxA、OAS、PKR、p53、BAX)(図1)の発現量を高ウイルス群と低ウイルス群の2群間で比較した。
図3に示すように、慢性肝炎11例で比較すると高ウイルス群において、OAS、MxA、BAXの発現が有意に上がっていた(P<0.05)。肝硬変14例や全体25例では2群間の有意差は認められなかった。また、HCV遺伝子型1b単独の9例で比較しても、有意差は認められなかった。このように慢性肝炎症例だけで有意差がみられた。
図3からも明らかなように、高ウイルス群の症例のなかに、3遺伝子について特に発現が上がっているものが存在した。この症例を除くと、いずれの遺伝子についても有意差は認められなかった。このことより、サンプリングエラーによる有意差も考えられ、慢性肝炎症例数を増やし、再現性を確かめる必要があると考える。
図3の結果は、内在性コントロール遺伝子として18S rRNAを用いたときの発現量の測定結果である。よく用いられるGAPDHと18S rRNAとで、一定cDNA量あたりの発現量を比較したところ、GAPDHでは症例間に差が大きく、18SrRNAの方が症例間の差が少なかった(図6B)。よって18S rRNAをコントロール遺伝子として各遺伝子発現量を評価した(後述)。
上記の結果では、予想外にも慢性肝炎高ウイルス群にIFN誘導性遺伝子の発現が増加していた。これはウイルス量が多いため、結果的にIFN及びIFN下流の遺伝子が誘導されたことによると考えられる。本実施例の系においては、IFN下流の抗ウイルス作用関連遺伝子がウイルス量の抑制に関与しているわけではなく、宿主細胞の他の因子がウイルス量制御に関与していることが示唆された。
そこで、既知の抗ウイルス作用因子ではなく、何がウイルス量の低下に関与しているのかを知る目的で、下記の(3)oligonucleotide microarrayを用いた網羅的発現解析により、HCVのウイルス量に関連する宿主遺伝子の検討を行った。
(3) Oligonucleotide microarrayの発現解析結果
図2「▼」印に示した8例(慢性肝炎症例の高ウイルス群4例と低ウイルス群4例)を用いて、microarrayによる発現解析を行った。Human Genome U133 Plus 2.0 array(Affymetrix)を用い、ヒトの約47,000個以上の転写産物に相当する54,675プローブ(probe)を対象とした。高ウイルス群4枚と低ウイルス群4枚とで発現が有意に異なる遺伝子の求め方を図4に示す。
まず、8枚のmicroarrayのうち少なくとも1枚で発現ありの表記(present flag)が出たprobeを抽出した。その結果28,505probeが選ばれた(図4(a))。これが、肝臓(詳しくは慢性肝炎の肝臓)に発現している遺伝子である。さらに、28,505probeより、高ウイルス群と低ウイルス群との2群間で発現に有意な差がある遺伝子を抽出するため、3種類のパラメトリック検定を行った(図4(b))。2群で分散が等しいと仮定するStudent’s t testでは1,710probesが抽出され、分散が等しくないと仮定するWelch’s t testでは1,327probesが抽出された。また、少ないreplicateからできるだけ正確な母分散を見積もるため、replicateを増やした時に収束するであろう標準偏差を予測計算するCross−gene error modelのパラメトリック検定では、1,069probesが抽出された。これらのprobeの重複を調べるために、Venn diagramを作製した(図4)。Welch’s t testの1,327probeは、すべてStudent’s t testの1,710probeに含まれていた。そして、3種類の検定で共通に抽出された683probesを対象に、2群間で2倍以上発現に差があるprobeを選んだ(図4(c))。その結果、高ウイルス群に発現が2倍以上増加していたprobeは158個、低ウイルス群で有意に発現が2倍以上増加していたprobeは136個であった(図4(d))。さらに、発現量の多い群4枚ともにpresent flagがついているprobeを絞った(図4(e))。それぞれ80個と41個になり、これらの中で、probeが同一遺伝子として重複するものやpolyA+RNAとしては測定できないはずの遺伝子を除いた。
結局、高ウイルス群で発現亢進している遺伝子(高ウイルス遺伝子)として78個、低ウイルス群で発現亢進している遺伝子(低ウイルス遺伝子)として39個が選ばれた(図4(f))。
この117個の遺伝子で8枚のmicroarrayのクラスタリング解析を行い、Condition treeを作成した(図5A)。28,505probeによるCondition tree(図5B)とは異なり、高ウイルス群と低ウイルス群に症例を区別できる遺伝子リストであることが示された。
肝臓で発現する遺伝子全体では感染したウイルス量と関連する特徴は捉えることはできず、限られた遺伝子だけが感染したウイルス量に関連することがわかった。表3と表4に、高ウイルス遺伝子78個と低ウイルス遺伝子39個のうち、2群間で2.5倍以上差のあった遺伝子を示す(表3)(表4)。
Figure 2006085407
Figure 2006085407
また、高ウイルス遺伝子78個すべてを表5に、低ウイルス遺伝子39個すべてを表6に示した。
表5および表6(1)、(2)において、「a」はmicroarrayのprobeが由来する遺伝子で、発現変化した遺伝子そのものではない場合もあることを、「b」は、遺伝子の構造上のprobeの位置より、5つのカテゴリーに分類したことを、「c」は、このprobe配列とホモロジーのある他の遺伝子が検出されてことを示している。また、「A」は遺伝子のexon配列を、「B」は遺伝子のintronで遺伝子と同方向の配列を、「C」は遺伝子のintronで、遺伝子と反対方向の配列を、「D」は遺伝子に隣接する同方向の配列を、「E」は遺伝子のないところの配列を示している。
Figure 2006085407
Figure 2006085407
real−time PCRによる発現量解析
8症例のmicroarrayの比較で見いだされた遺伝子117個(実施例2)が、確かにHCV量の違いに相関するものかを調べるために、34症例の肝臓cDNAを用いてreal−time PCRによる発現量解析を行った。
(1)内在性コントロール遺伝子
遺伝子の発現量の評価に用いるコントロール遺伝子として、細胞あたり一定量発現するといわれているhousekeeping geneが用いられる。β−actinやGAPDH遺伝子が代表的な遺伝子である。しかし、様々な病態や状態の組織、細胞を調べると、必ずしもこれらの遺伝子が一定発現するとはいえない。最近では18S rRNAなどが用いられるようになっている。本実施例では、対象とする肝炎組織で一定発現する遺伝子を、8例のmicroarrayから独自に検討してみた。
今回用いたHG U133 Plus2.0 arrayには、これに載っているprobeのうち、コントロール遺伝子として100個の遺伝子がリストされている。そのうち8枚のmicroarray全てにpresent flagの付いている遺伝子は91個であった。この中から、8枚のmicroarrayで発現レベルに差がなく、なおかつGAPDHと同様の発現レベルを示す遺伝子を探した。その結果ribosomal protein L34(RPL34)が選ばれた。同じmicroarray上のGAPDH発現シグナルと比較すると、RPL34の方が確かに発現レベルのバラつきが少なかった(図6A)。
microarray解析では18S rRNAの評価をすることができない。そこで、RPL34と18S rRNAとではどちらがコントロール遺伝子として適しているかを明らかにするために、全34症例でreal−time PCRにより発現量を比較した。図6BにGAPDHも含めて3遺伝子の発現量の比較を示す。cDNA一定量あたりの発現量を比較したところ、18S rRNAの発現量のばらつきが、PRL34とGAPDHと比較して最も小さかった。よって本実施例では、内在性コントロール遺伝子として18S rRNAを用いて、以下の遺伝子発現の評価を行った。
(2)高ウイルス遺伝子と低ウイルス遺伝子の発現定量比較
高ウイルス遺伝子8個、低ウイルス遺伝子5個を選び、慢性肝炎18例(microarrayに用いた8例を含む)と肝硬変16例を対象に、高ウイルス群と低ウイルス群との間で発現量の比較を行った。表7にその結果を示す。
Figure 2006085407
二群間比較は、マイクロアレイ解析に用いた慢性肝炎(CH)8例と全慢性肝炎(CH)18例と全肝硬変(LC)16例とにわけて行った。遺伝子の発現量は、18S rRNAで補正した値を用いた。高ウイルス群:低ウイルス群の例数を括弧内に示す。表7の「High」の欄に高ウイルス遺伝子8個の結果を、表7の「Low」の欄に低ウイルス遺伝子5個の結果を示した。
Fold change(FC)は、各群中央値で比較したときの値を示す。例えば、高ウイルス遺伝子であれば、当該遺伝子の高ウイルス群の中央値を低ウイルス群の中央値で除した値を示している。 また、2群間でMann Whitney U検定を行い、有意差(P<0.05)のあった遺伝子の値は破線で囲んだ。逆転変化で有意差を示したものは、実線で囲んだ。
表7に示すように、real−time PCRによる発現量解析において、高ウイルス遺伝子は、microarrayによる発現解析結果とほぼ一致し、慢性肝炎(CH)18例においては8遺伝子とも高ウイルス遺伝子として有意差を認めた(表7)。しかし肝硬変(LC)では発現量に差は認められなかった。これらの遺伝子は、低ウイルス症例で発現が減少していなかったためである。このことから、感染しているウイルス量が少ない慢性肝炎と肝硬変とでは、ウイルス量を制御する機構は異なり、共通のメカニズムを単純には追跡できないことがわかった。
図7には慢性肝炎での代表的な比較結果を示す。図7のA〜Cに示す高ウイルス遺伝子は、図3に示したIFN下流の遺伝子とは異なり、高ウイルス群と低ウイルス群とで明らかに発現量の有意差を認める遺伝子であった。しかし、低ウイルス遺伝子は、microarrayの発現結果と同様の結果が5個中2個に認められるが、結局慢性肝炎で有意に差を認めるのは1個となった(表7)。この遺伝子SELEは肝硬変でも差のある傾向を示した(表7)。図7のDおよびEに上記2つの遺伝子SELEおよびFLJ461542の結果を示す。また、N80145は慢性肝炎で逆の有意差、すなわち高ウイルス遺伝子として認められた(F)。SELE以外の遺伝子では、肝硬変症例で有意に差のある遺伝子は見出されなかった。
低ウイルス遺伝子の中には、microarrayの発現解析の8例では差のある遺伝子として抽出されても、慢性肝炎18例では差のある遺伝子とはいえない遺伝子が含まれている可能性が示唆された。また、一部の低ウイルス遺伝子では、microarrayとreal−time PCRとで同じような有意差を示すことができない遺伝子も存在した。設計したprimerでは効率よくPCRできない、microarrayのprobeにクロスハイブリダイゼーションする遺伝子があるなどの可能性が考えられる。
117遺伝子の分類
Oligonucleotide microarrayで抽出された発現に差のある遺伝子117個について、既知の遺伝子、未知の遺伝子、さらに既知遺伝子の機能について分類した。
(A)構造分類
図8に、最新遺伝子情報にもとづく117probeの構造上の分類を示す。遺伝子の分類は次の5つのカテゴリーが考えられる。
(1)同定済みの遺伝子または遺伝子として予想されている配列がprobeの場合、
(2)遺伝子領域内であるが、イントロン配列がprobeの場合、
(3)上記(2)のprobeの相補鎖がprobeの場合、
(4)遺伝子に隣接する外側の配列がprobeの場合、
(5)遺伝子が想定されていない領域がprobeの場合
である。(1)は該当遺伝子の転写産物を意味する。(2)は該当遺伝子の選択的スプライシング転写産物か、あるいは新たな転写産物の可能性がある。(3)はその干渉RNAとしての転写産物か、あるいは新たな転写産物の可能性がある。(4)は該当遺伝子の転写産物か、新たな転写産物の可能性がある。(5)は未知の転写産物と考えられる。
高ウイルス遺伝子78個と低ウイルス遺伝子39個を、これらのカテゴリーに従って分類した(図8)。
高ウイルス遺伝子の半数は遺伝子転写産物で、8割が遺伝子関連領域の転写産物であった。低ウイルス遺伝子は逆に遺伝子未同定の領域の転写産物が6割を占めていた。これら未知の転写産物が数多く発現増強していることが、ウイルス抑制状態と関連するかどうか、興味深いところである。
(B)機能分類
まず、INF誘導性遺伝子が差のある遺伝子として見いだされているかを検討した。INF誘導性遺伝子として知られている239個の遺伝子のうち、2個だけが高ウイルス遺伝子の中に存在した。このことは高ウイルス症例でさえ、IFNがそれほど強く作動していないことを示している。持続感染が成立してしまった慢性肝炎では、IFN以外の宿主遺伝子がウイルス量のコントロールに関与していることが示唆された。
既知の高ウイルス遺伝子36個の中で、6個は、T細胞活性、免疫細胞やリンパ球の増殖、リンパ球の走化性などの炎症反応、免疫反応を増強する遺伝子であった。このような遺伝子が発現していることは、HCVを排除しようとする宿主防御反応が働いていることを示すものである。これらは、ウイルス量が多い結果、誘導された遺伝子と考えられる。しかし、それにも拘わらずウイルスは排除されず、宿主はウイルス量の多い状態を保っている。高ウイルス遺伝子の中には、HCV側にとって増殖有利に働くと予想される因子が存在する可能性がある。
低ウイルス遺伝子では、セリンプロテアーゼ阻害活性領域を持つ遺伝子、プロテオソームに関与する遺伝子が存在した。ウイルス増殖阻害が予想される遺伝子である。また、高ウイルス遺伝子とは別の炎症に関与する遺伝子も含まれていた。しかし、低ウイルス遺伝子では機能のわからない未知遺伝子が半分以上占めていた。これらの中に、HCVの干渉RNAとして働く転写産物が含まれていないか、HCV9.5kbの配列との相同性を調べてみた。しかし、低ウイルス遺伝子にはそのような配列は存在しなかった。低ウイルス遺伝子には、HCVが増殖しにくい環境作りに関与する遺伝子が存在する可能性がある。
ここで見出された遺伝子には、ウイルス量に関わる原因遺伝子と結果遺伝子とが両方存在すると考えられる。どの遺伝子がウイルス量のコントロールに関与している原因遺伝子であるかは、HCV感染増殖実験系を用いて、遺伝子が実際ウイルス量に影響するかどうか、因果関係を明らかにしていく必要がある。
本実施例では、実施例1及び2と同様にHCVの定量を行い、また実施例1及び2よりも症例数を増やして2つの病態に分けてウイルス量と関連する遺伝子を検討した。
まず肝臓ウイルス量を定量し、症例の選別を行った。方法を以下に示す。なお、total RNA抽出とリアルタイムRT−PCRの方法は、実施例1と同様である。
ウイルス量は、ウイルス遺伝子の定量で求めた。材料は、肝細胞癌症例59例の非癌部組織を用い、なるべく肝細胞癌ステージの低いI,およびIIを選択した。
組織からTotal RNAを抽出し、DNAの混在を除くためDNaseI処理をおこなった。その後、ランダムプライマーによりcDNAを合成し、リアルタイムPCRにて遺伝子定量をおこなった。HCV RNAの定量は、HCVの遺伝子配列が保存されていて、効率よくPCRがかかった、3’端に近い領域を用いた。また肝臓mRNAの定量も同様の方法で行った。HCV RNA量やmRNA量は、細胞あたりの量に標準化するために18S rRNAの定量も行い、この値で除した値を各RNA量とした。HCV RNA定量の結果を表8に示す。
Figure 2006085407
肝臓HCV量は、4〜480000unitの範囲で分布した。その中から、30000unit以上の20症例を高ウイルス群とし、300unit以下の15症例を低ウイルス群とした。
実施例2において行ったインターフェロン下流の遺伝子の発現解析から、CHとLCでは異なる遺伝子発現パターンを示したことより、本実施例では、2つの病態に分けて、ウイルス量と関連する遺伝子を検討した。選別した高ウイルス群と低ウイルス群とで患者背景因子を比較した。患者背景因子として慢性肝炎18例、肝硬変17例に分けて、それぞれの項目についてウイルス量による2群間で比較を行った。有意差検定値を表9の「P」の欄に示す。
Figure 2006085407
肝硬変の高ウイルス群では肝細胞癌の進展度が低い症例が多くみられたが、肝機能レベルなど他は2群間に有意差はなかった。ウイルスの遺伝子型については低ウイルス群側に2型のHCVが偏って分布した。従ってHCVの遺伝子型の違いも考慮に入れる必要があると考え、遺伝子発現量を比較する際には遺伝子型別解析も平行して行った。
遺伝子発現の違いを肝臓組織に発現する全mRNAを対象に網羅的に調べるため、最新バージョンのオリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いた。
方法は、実施例2と同様にして行った。
用いたGeneChip(Affymetrix)には、ヒト全遺伝子と思われる約47000遺伝子に相当する54675プローブが張り付いている。本実施例では、慢性肝炎の高ウイルス群を5例、低ウイルス群を5例とし、また、新たに肝硬変高ウイルス群7例、低ウイルス群3例を加えた。各病態で10枚ずつ合計20枚のマイクロアレイを使い、慢性肝炎では5:5、肝硬変では7:3の2群間比較を行い、発現に差のある遺伝子を同定した。
図9は、マイクロアレイ解析結果を用いて発現量に差のある遺伝子を求める方法の概要図である。実施例2では高ウイルス群、低ウイルス群各4症例で解析したが、本実施例では、各群5症例にして解析した。
その結果、54675プローブのうち、10枚中1枚でも発現有りと表記されたprobeを選び出すと、29070probeであった。この29070probeが、肝臓に発現している遺伝子と考えられる。
次に2群間で有意に差のある遺伝子を抽出するため、3種類のパラメトッリク検定を行った。2群間で分散が等しいと仮定するStudent’s t testで1637probe、2群間で分散が等しくないと仮定するWelch’s t testで1367probeが抽出された。また少ないレプリケートからできるだけ正確な母分散を見積もるため、レプリケートを増やした時に収束するであろう標準偏差を予測計算したCross gene error model適用のパラメトリック検定を行い982probeを抽出した。この3種類の検定で重複した714probeが、信頼性の高い差のあるprobeと考えた。さらに、この714probeのうち、2群間で発現量が2倍以上差のあるprobeを求めたところ、高ウイルス群側に2倍以上発現の高くなっているprobeは143個で、更に高ウイルス群の全てのアレイに発現有りと表記された、遺伝子発現が明確なプローブだけにすると、高ウイルス遺伝子として69probeとなった。遺伝子として整理すると66遺伝子となり(表10)、これらを高ウイルス遺伝子と呼ぶ。同様の操作により、低ウイルス遺伝子は21遺伝子となった(表11)。これら93probe、87遺伝子が、ウイルス量に関連して発現変化を示した遺伝子となる。
表10〜13に、それぞれ慢性肝炎高ウイルス遺伝子、慢性肝炎低ウイルス遺伝子、肝硬変高ウイルス遺伝子、肝硬変低ウイルス遺伝子をリストした。
Figure 2006085407
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Figure 2006085407
Figure 2006085407
Figure 2006085407
実施例2の解析結果と比較したところ、高ウイルス遺伝子は35probeが重複しており、低ウイルス遺伝子では19probeが重複していた。これらの重複した遺伝子は、症例を増やすことで発現量の差が2倍にも満たなくなることから、症例を増やすことで、より信頼性の高い遺伝子として抽出されたものであると考えられる。なお表10及び11の「Overlap」の欄にこれら重複遺伝子をマークした。
肝硬変において高ウイルス群7例、低ウイルス群3例で,同様の解析をした。その結果、高ウイルス遺伝子は、27遺伝子、低ウイルス遺伝子は17遺伝子が抽出された(図10)。
慢性肝炎と肝硬変からそれぞれ抽出されたウイルス量に関連する遺伝子には、共通なものがあるかを検討した。その結果、高ウイルス遺伝子に1遺伝子の重複があった(図11)。他は、重複が認められなかった。
本実施例では、抽出された遺伝子の発現パターンが、ウイルス量の違いを見分ける遺伝子として有効であるか、クラスタリング解析を行った。特にサンプルの近縁関係がどのように解析されるかに注目した。
その結果、慢性肝炎遺伝子87遺伝子は、高ウイルス遺伝子66個と低ウイルス遺伝子21個にクラスター分類されており、慢性肝炎10症例も低ウイルス(L)群と高ウイルス(H)群とに、きれいにクラスター分類できることが示された(図12)。また、同様に肝硬変遺伝子44遺伝子で肝硬変10症例を解析すると3例と7例の2群のきれいにクラスター分類できた。しかし、慢性肝炎遺伝子で肝硬変症例を解析した場合と肝硬変遺伝子で慢性肝炎症例を解析した場合では、10症例のクラスター分類は正しく行うことができなかった。従って、ウイルス量に関連する遺伝子は慢性肝炎と肝硬変とでは異なることが示された。
抽出した遺伝子(表10〜13)が、ウイルス量関連遺伝子であることを検証するために、その一部の遺伝子を適宜選択してリアルタイムPCRによるmRNAの発現定量を行った。
表14に、用いたプライマー配列を示す。
Figure 2006085407
検証し得た抽出遺伝子の評価を表15に示す。
Figure 2006085407
高ウイルス群と低ウイルス群での発現量比較をMann−Whitney U testにて行った。慢性肝炎と肝硬変のそれぞれで解析できた結果をP値で示す。P値空欄は未測定であることを示す。低ウイルス群をHCV遺伝子型別に分け、2群間比較も行った。
検証結果の例を図14〜16に示す。左パネルは、低ウイルス群を遺伝子型1型と2型にわけて高ウイルス癌と比較した図である。右パネルは、低ウイルス群全体をまとめて高ウイルス群と比較した図である。図は、箱ひげ図であり、各群における測定値の分布を示している。下からひげ下端が10パーセンタイル、箱下端が25パーセンタイル、箱の中線が50パーセンタイル、箱上端が75パーセンタイル、ひげ上端が90パーセンタイルを表す。欄外P値は、ウイルス量の2群間比較の結果でMann−Whitney U検定による。左パネルは、低ウイルス群をHCV遺伝子型1型と2型に分け、高ウイルス群との比較を行った結果を示す。
図14において、OASLは、慢性肝炎と肝硬変で共通に見いだされた高ウイルス遺伝子である。この遺伝子は、慢性肝炎でのみ検証された。SNAI2も慢性肝炎高ウイルス遺伝子として検証できた。いずれの遺伝子もHCV遺伝子型によらず、低ウイルス群では低発現を示した。
図15は、慢性肝炎高ウイルス(CHH)遺伝子の例である。図15において、CXCL6はHCV遺伝子型1b型低ウイルス群でのみ発現抑制がみられた。AK025967は、肝硬変では低ウイルス遺伝子であった。
図16は、肝硬変低ウイルス(LCL)遺伝子の例である。図16において、両遺伝子共、肝硬変低ウイルス遺伝子として検証できたが、慢性肝炎では高ウイルス遺伝子であった。
HCVは約9.6kbのプラス鎖RNAを持つ一本鎖RNAウイルスである。HCVゲノムには多くの遺伝子型が存在しており、現在までに6種類以上の遺伝子型に分けられている。またHCVは直径50〜60nmの球状のウイルスでコア粒子をエンベロープが包み込む構造をとっている。
HCVは肝細胞に受容体を介して吸着し、細胞質にエンドサイトーシスで侵入したあと脱殻してRNAを放出する。このRNAはすぐにmRNAとしてリボゾームと結合し約3000アミノ酸からなる前駆体蛋白質が翻訳される。小胞体膜上で翻訳された前駆体タンパク質は、細胞のシグナラーゼとウイルス自身がコードする2種類のプロテアーゼによって3種の構造蛋白質と7種の非構造蛋白質として産生される。合成されたウイルス由来のRNA依存性RNAポリメラーゼによって、ウイルスRNAは+鎖から−鎖が複製され、さらに+鎖が複製される。+鎖RNAはコアタンパク質に取り込まれ、小胞体内に向かってエンベロープをかぶりながら粒子形成が起こる。ウイルス粒子はゴルジ装置を通って細胞膜に達し、肝細胞の外へ放出されると考えられている。
これらの過程で、ウイルス量を制御する第一ステップとして細胞への吸着と侵入過程が考えられる。そこで、本実施例では、ウイルス量の違いがウイルス受容体発現およびエンドサイトーシス関連遺伝子発現と関連するかどうか、検討した。
方法は、以下の通り行った。まず肝臓ウイルス量を定量し、症例の選別を行った。方法を以下に示す。なお、total RNA抽出とリアルタイムRT−PCRの方法は、実施例1と同様である。
ウイルス量は、ウイルス遺伝子の定量で求めた。材料は、肝細胞癌症例50例の癌部および非癌部組織を用い、なるべく肝細胞癌ステージの低いI,およびIIを選択した。
組織からTotal RNAを抽出し、DNAの混在を除くためDNaseI処理をおこなった。その後、ランダムプライマーによりcDNAを合成し、リアルタイムPCRにて遺伝子定量をおこなった。HCV RNAの定量は、HCVの遺伝子配列が保存されていて、効率よくPCR増幅ができた、3’端に近い領域を用いた。また肝臓mRNAの定量も同様の方法で行った。HCV RNA量やmRNA量は、細胞あたりの量に標準化するために18S rRNAの定量も行い、この値で除した値を各RNA量とした。
その結果、ウイルス量の違いは、非癌部肝組織だけでなく、癌部でも多様であることが分かった(図17)。図17は、肝臓HCV RNA定量の結果について、縦軸に癌部のHCV量、横軸に非癌部のHCV量をとってあらわしたグラフである。
実線は非癌部(NT)に対し癌部(T)の量が1の場合を示し、点線は1/4(T/NT、実線の下側)と4倍(実線の上側)を表す。非癌部HCVは数十から数十万単位まで幅広く分布している。これに対し、癌部HCVは同量かもしくは低下が見られ、1/4以下になる症例が50症例中29例(58%)存在することが分かった。癌部では半分以上の症例で、HCVが感染しにくいか増えにくいと言える。そこで、ウイルス量の違いについて、非癌部同志の違いだけでなく、癌部同志での違いについても検討した。非癌部・癌部ともにウイルス量が多い症例が7例(領域1の症例)、癌部のウイルス量が非癌部の100分の1以下になる症例が7例(領域2の症例)、非癌部・癌部ともにウイルス量が少ない症例が11例(領域3)について、ウイルス受容体およびその関連遺伝子について発現量を比較した。
なお、図17において、HCV遺伝子型別については、「●」は1b、「○」は2a、「◇」は2b、「■」は1bと2aの重感染を示す。
受容体のリガンド別に分類すると、HCVエンベロープタンパク質を認識する受容体としてCD81、ヘパラン硫酸が知られている。ヘパラン硫酸については、ヘパラン硫酸合成に関わる糖転移酵素の3分子を測定した。HCVエンベロープタンパク質の糖鎖を認識する受容体として、C型レクチンのDC−SIGN,L−SIGN,ASGR及びMBL2があり、それぞれマンノースやガラクトースなどが認識分子となっている。HCV粒子が血中のLDL、HDLと結合し複合体形成をしているため、これらの受容体であるLDLR及びSCARB1がHCV受容体として働くことも示唆されている。また、SCARB1はE2蛋白を直接認識しているとも考えられている。
そこで、発現量については、8個の受容体候補に関連して11分子のmRNAを測定した。
エンドサイトーシス関連分子には、クラスリンタンパク質とアダプタータンパク質がある。リガンドが受容体に結合すると、細胞膜内で受容体の近くに存在しているアダプタータンパク質であるAP2が受容体の周りに集まり、それがきっかけとなり受容体とアダプタータンパク質の周りに重鎖(Clathrin C)三量体と軽鎖(Clathrin A)三量体からなるクラスリンが集まって来る。クラスリンがたくさん集まることによってクラスリン被覆ピット(Clathrin−coated pit)が出来上がり、エンドゾームが形成される。
本実施例では、上記エンドサイトーシス関連分子としてCLTC,CLTA及びAP2M1の3分子を測定した。
なお、感染に伴い起こるシグナル伝達の1つであるToll−like receptor関連のシグナル分子(TLR3,TICAM1,DDX58)も測定した。
表16に各遺伝子のプライマー配列を示す。リアルタイムPCRにて定量した結果を表17に示す。
Figure 2006085407
Figure 2006085407
表17の癌部(Tumor)の「2群間比較」の欄において、網掛けをした部分の結果を図18及び図19に示す。図18及び図19は、有意差のでた受容体関連遺伝子の結果である。
なお、表17におけるCLEC4Mは、L−SIGNと同義である。
非癌部のウイルス量から、低ウイルス群(NL)11例、高ウイルス群(NH)14例に分け、NHについては、さらに癌部で依然として高ウイルスである(NHTH)7例と低ウイルスとなる(NHTL)7例とに分けて、比較した。
なお、2群間比較における背景因子の比較を、表18に示す。
Figure 2006085407
以上の結果より、次のことが分かった。
(1)非癌部でウイルス量に相関する受容体関連遺伝子はなかった。
(2)癌部ではウイルス量に相関する受容体遺伝子(L−SIGN)が1つみつかった。ウイルス量が多い癌ではL−SIGNが高発現していた。
(3)癌部でウイルス量に逆相関する遺伝子が3つ(エンドサイトーシス関連遺伝子の3つ)がみつかった。ウイルスが少ない癌ではエンドサイトーシス関連分子が高発現していた。
(4)非癌部が高ウイルスであるにも拘わらず、癌部ではウイルス低下が見られる症例には上記の変化に加え、SCARB1,ASGR及びDC−SIGNの低下が顕著であった。
以上より、これら受容体関連遺伝子において、非癌部のウイルス量には関連ないが、癌部ウイルス量には関連する分子が存在した。非癌部のウイルス量はこれら受容体関連遺伝子の発現量とは無関係なところで制御されている。しかし癌細胞のウイルス量はこれら受容体および関連分子の発現量に依存しており、1つにウイルスエントリーステップでウイルス量が制御されていると考えられた。
また癌細胞におけるウイルス低下がエンドサイトーシス亢進と関連する可能性が示唆された。特にL−SIGNの発現抑制、CLTCの発現促進は、癌部低ウイルス群に顕著であり、非癌部レベルと比べても明らかな特徴である。従って、L−SIGNの発現抑制、CLTCの発現促進をすることが、HCV感染防御に有効な戦略を示すものと思われる。
本発明により、高ウイルス群で発現亢進している遺伝子をスクリーニングすることが可能となる。そして、この高ウイルス遺伝子の中には、HCVが増殖するのに有利に働くと予想される因子が存在する可能性があるため、高ウイルス遺伝子の発現を抑制することによってHCVの増殖を抑制することができる。
また、本発明により、低ウイルス群で発現亢進している遺伝子をスクリーニングすることが可能となる。そして、この低ウイルス遺伝子には、HCVが増殖しにくい環境作りに関与する遺伝子が存在する可能性がある。すなわち、低ウイルス遺伝子の発現を亢進することによってHCVの増殖を抑制することができる。
すなわち、本発明の方法を用いて見出された遺伝子の発現を調節することによって、HCVの発現量の調節を行うことができるため、本発明によってHCVの治療剤、治療方法の開発を行うことができる。
配列表フリーテキスト
配列番号1〜53:プライマー
配列番号303〜404:プライマー

Claims (9)

  1. 多量のHCVを含む高ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
    (a)肝組織由来cDNA50ng当りのHCVのコピー数を18S rRNA定量値で割った値が300unit以下の肝組織を低ウイルス群組織として選択し、当該値が30000unit以上の肝組織を高ウイルス群組織として選択するステップ、
    (b)前記低ウイルス群組織および高ウイルス群組織における遺伝子の発現量を測定するステップ、並びに、
    (c)前記低ウイルス群組織よりも高ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子を選択するステップ
    を含む前記方法。
  2. 少量のHCVを含む低ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
    (a)肝組織由来cDNA50ng当りのHCVのコピー数を18S rRNA定量値で割った値が300unit以下の肝組織を低ウイルス群組織として選択し、当該値が30000unit以上の肝組織を高ウイルス群組織として選択するステップ、
    (b)前記低ウイルス群組織および高ウイルス群組織における遺伝子の発現量を測定するステップ、並びに、
    (c)前記高ウイルス群組織よりも低ウイルス群組織において発現が亢進する遺伝子を選択するステップ
    を含む前記方法。
  3. 遺伝子の発現量の測定がマイクロアレイおよび/またはリアルタイムPCRを用いることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  4. 高ウイルス群組織における遺伝子の発現量が、低ウイルス群における遺伝子の発現量に対して2倍以上発現亢進することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  5. 低ウイルス群組織における遺伝子の発現量が、高ウイルス群における遺伝子の発現量に対して2倍以上発現亢進することを特徴とする、請求項2記載の方法。
  6. 低ウイルス群組織又は高ウイルス群組織を、さらに慢性肝炎由来のもの及び肝硬変由来のものに分類することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 以下の(a)〜(d)の遺伝子から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を含有する、ウイルス量に関連する病態の検査薬。
    (a)配列番号54〜131で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
    (b)配列番号54〜131で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
    (c)配列番号132〜170で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
    (d)配列番号132〜170で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
  8. 以下の(a)〜(h)の遺伝子から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を含有する、ウイルス量に関連する病態の検査薬。
    (a)配列番号171〜237で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
    (b)配列番号171〜237で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、慢性肝炎の高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
    (c)配列番号238〜258で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
    (d)配列番号238〜258で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、慢性肝炎の低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
    (e)配列番号259〜285で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
    (f)配列番号259〜285で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、肝硬変の高ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
    (g)配列番号286〜302で表されるいずれかの塩基配列を含む遺伝子
    (h)配列番号286〜302で表されるいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、肝硬変の低ウイルス群において発現が亢進する遺伝子
  9. マイクロアレイの形態である、請求項7又は8に記載の検査薬。
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