JP5299885B2 - Hcv陽性肝細胞癌の発癌・再発に関連する遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明はHCV陽性肝細胞癌の発癌・再発に関連する遺伝子に関する。
日本人では、肝細胞癌の80%がC型慢性肝炎、またはそれに続く肝硬変を母地に発症すると推定されている(Kiyosawa K, Umemura T, Ichijo T, Matsumoto A, Yoshizawa K, Gad A, Tanaka E. Hepatocelular carcinoma: recent trends in Japan. Gastroenterology 2004; 127: S17-26.)。C型肝炎ウイルス(HCV)に感染後20〜30年を経て発癌に至るが、その発癌機序は未だ不明な点が多い。肝細胞癌の治療法として肝細胞癌切除術が確立しているが、術後2年以内の再発率は50%と高く、極めて予後が悪いことが知られている(Makuuchi M, Takayama T, Kubota K, Kimura W, Midorikawa Y, Miyagawa S, Kawasaki S. Hepatic resection for hepatocellular carcinoma -- Japanese experience. Hepatogastroenterology 1998;45:S1267-1274.)。残肝における肝細胞癌の再発は、初発肝細胞癌と同様のメカニズムであると考えられるが、その予後因子については分子レベルで明らかになってはいない(Poon RT, Fan ST, Ng IO, Lo CM, Liu CL, Wong J. Different risk factors and prognosis for early and late intrahepatic recurrence after resection of hepatocellular carcinoma. Cancer 2000; 89: 500-507)。
本発明は、HCV陽性肝細胞癌の発癌・再発に関連する遺伝子をスクリーニングする方法および当該遺伝子を含むHCV陽性肝細胞癌の再発検査用のマイクロアレイなどを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために以下の研究を行った。
本発明者は、肝細胞癌の再発リスクを決める因子を分子レベルで明らかにする目的で、早期の肝細胞癌症例で、切除術後再発しやすい症例としにくい症例との間に、残肝組織の分子レベルにおける遺伝子発現の違いの有無を探索した。一般に、再発リスクの同様の探索は、切除肝組織の癌部を用いて行われている(Iizuka N, Oka M, Yamada-Okabe H, Nishida M, Maeda Y, Mori N, Takao T, et al.Oligonucleotide microarray for prediction of early intrahepatic recurrence of hepatocellular carcinoma after curative resection. Lancet 2003;361:923-929.)。しかし、本発明者は、残肝組織の再発リスク情報に注目し、この残肝組織とほぼ同じ再発リスク情報を有すると考えられる切除肝組織の非癌部を用いて上記検討を行った。すなわち、本発明者は、切除癌組織ではなく、非癌部組織における再発リスクの違いによる遺伝子発現の特徴を包括的に探索した。
また、本発明者は、肝細胞癌再発症例から再発遅延症例と再発早期症例とを収集して、両群での遺伝子発現パターンを比較した。これまでの研究では、再発早期症例(例えば、1年以内再発)とその他の症例(例えば、1年以降3年以内に再発)とを比較するというアプローチがとられていた。これに対して、本発明者は、患者の長期のfollow-upを行い、再発遅延症例として3年以上(長いもので7年以上)未再発症例(再発遅延症例)を用いることで、再発遅延症例に特有に発現する遺伝子の同定に成功した。
また、本発明者は、非癌部組織を肝硬変の有無に分けて再発リスクを検討した。慢性炎症は、肝臓組織の線維化をもたらし、高い確率で肝硬変に至る。そして、C型肝細胞癌は、肝硬変を伴う症例がほとんどであるといわれている。しかし、早期の肝細胞癌症例を観察すると、実際には約半数近くが肝硬変には至っていない肝組織からの発癌であった。従って、本発明者は慢性肝炎の末期である肝硬変と、その手前の肝病変とでは、発癌リスク情報が異なると考え、それらの情報に左右されるような解析結果を避けるため、肝硬変の有無に分けて再発リスクの解析を行った。
本発明者は、上記観点から鋭意研究を行った結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の早期再発に関連する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発早期症例及び再発遅延症例の非癌部における遺伝子の発現量をそれぞれ測定し、前記再発遅延症例よりも前記再発早期症例において発現が亢進している遺伝子を選択することを特徴とする、前記方法。
(2)慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発遅延に関連する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発早期症例及び再発遅延症例の非癌部における遺伝子の発現量をそれぞれ測定し、前記再発早期症例よりも前記再発遅延症例において発現が亢進している遺伝子を選択することを特徴とする、前記方法。
(3)肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の早期再発に関連する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発早期症例及び再発遅延症例の非癌部における遺伝子の発現量をそれぞれ測定し、前記再発遅延症例よりも前記再発早期症例において発現が亢進している遺伝子を選択することを特徴とする、前記方法。
(4)肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発遅延に関連する遺伝子をスクリーニングする方法であって、
肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発早期症例及び再発遅延症例の非癌部における遺伝子の発現量をそれぞれ測定し、前記再発早期症例よりも前記再発遅延症例において発現が亢進している遺伝子を選択することを特徴とする、前記方法。
(5)慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発検査に用いるマイクロアレイであって、配列番号1〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のプローブを搭載した前記マイクロアレイ。
(6)肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発検査に用いるマイクロアレイであって、配列番号1〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のプローブを搭載した前記マイクロアレイ。
本発明により、肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌および肝硬変を伴わないHCV陽性肝細胞癌における癌再発関連遺伝子のスクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング方法は、肝細胞癌の発症メカニズムに即して肝細胞癌症例を分類して遺伝子を選択するため、より正確に癌再発関連遺伝子をスクリーニングすることができる。
また、本発明により、癌再発関連遺伝子を搭載したマイクロアレイが提供される。本発明のマイクロアレイを用いれば、肝細胞癌の再発の時期を予測することができる。好ましくは、本発明のマイクロアレイを用いれば、肝細胞癌の発症メカニズムに即して肝硬変の発症の有無で分類した肝細胞癌の再発時期を予測することができる。肝細胞癌から採取される非癌部における遺伝子発現パターンを本発明のマイクロアレイを用いて解析すれば、肝細胞癌の再発が早期であるか、または再発が遅延するかを推定することが可能となる。
図1は、二群間比較における再発早期群と遅延群の分類方法を示す図である。 図2は、慢性肝炎組織から再発関連遺伝子(a)を選択する手順を示す図である。 図3は、肝硬変組織から再発関連遺伝子を選択する手順を示す図である。 図4は、慢性肝炎組織から再発関連遺伝子(b)を選択する手順を示す図である。 図5は、選択した再発関連遺伝子間の重複を解析した図である。 図6は、慢性肝炎由来再発関連遺伝子による症例のクラスター分類を示す図である。 図7は、肝硬変由来再発関連遺伝子による症例のクラスター分類を示す図である。 図8は、再発関連遺伝子のプローブの位置の模式図である。 図9は、リアルタイムPCRによる再発関連遺伝子の検証結果を示す図である。 図10は、二群間比較における再発早期群と遅延群の分類方法を示す図である。 図11A及びBは、内在性コントロール遺伝子候補の発現量の分布を示す図である。26例の発現量の中央値を1として、相対発現量を求めた。縦軸は相対発現量の自然対数を示す。 図12は、再発早期群(2年以内再発)と再発遅延群(3年以上未再発)との間で発現量に差のあった遺伝子について、代表的な発現パターンを示す図である。
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を限定する趣旨ではない。
なお、本明細書において引用した文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、2005年8月12日に出願し、本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願第2005-234915号の開示内容は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
1.概要
本発明は、HCV陽性肝細胞癌の発癌・再発に関連する遺伝子をスクリーニングする方法、及び当該遺伝子のプローブを搭載したマイクロアレイに関する。
本発明のスクリーニング方法は、主に以下の3点の特徴を有する。
第一の点は、再発リスクの違いによる遺伝子発現の特徴を、従来の切除癌組織ではなく、非癌部組織から包括的に探索する点である。切除非癌部組織における遺伝子発現は、残肝部分における遺伝子発現と同様であるといえる。切除癌組織での遺伝子発現パターンが再発リスクと関連する場合は、再発が切除癌と同じ癌、すなわち転移である場合に限る。肝細胞癌の多中心性発癌機構を鑑みると、初期段階の肝細胞癌症例では、再発に転移の可能性は極めて低い。ステージI,IIの肝細胞癌症例の残肝部分での遺伝子発現パターンは、切除癌組織での遺伝子発現パターンよりも再発リスクと関連していると考えられることから、本発明では、非癌部組織を用いることで、より正確な再発に関連する遺伝子解析をすることができる。
第二の点は、肝細胞癌症例から、再発遅延症例と再発早期症例とを抽出し、両症例の遺伝子発現パターンを比較する点にある。本発明により、再発時期の違いに即した再発リスクに関連する遺伝子を解析することが可能となる。また、このような比較に基づく解析は、再発に限らず、初発の慢性肝炎から肝細胞癌発生の機序を知る上にも有用である。
第三の点は、C型肝細胞癌症例の非癌部を肝硬変の有無に分けて再発リスクを解析した点であり、この点が本発明の最も特徴的な点である。肝硬変からの発癌と、肝炎からの発癌とでは、発癌機序が異なると考えられるため、これらを分けて再発リスクを検討することにより、それぞれの症例に特徴的な遺伝子を見出すことが可能となる。
非癌部は100%慢性肝炎である。中にはその炎症が進んで線維化の程度が強く、肝硬変になっているものもある。線維化はF0からF4までランキングされており、F4が肝硬変に該当する。F3までは慢性肝炎と呼ぶが、正しくは慢性肝炎の内、肝硬変になっていないもの(F0-F3)となったもの(F4)に分けられる。
2.症例の選択及び分類
本発明の方法は、C型肝炎ウイルス(HCV)陽性肝細胞癌(「C型肝細胞癌」ともいう)の非癌部において遺伝子の発現解析を行うことで、C型肝細胞癌の再発に関連する遺伝子をスクリーニングするというものである。すなわち、本発明の方法は、C型肝細胞癌症例を対象としている。
本発明において、C型肝細胞癌症例は、肝硬変(LC)を伴う症例と伴わない症例とに分類される。
本明細書において、「肝硬変を伴うC型肝細胞癌」は、肝硬変から発生したと思われるC型肝細胞癌を意味する。また、肝硬変を伴うC型肝細胞癌症例の非癌部を「肝硬変症例」と称する場合もある。また、本明細書において、「慢性肝炎を伴うC型肝細胞癌」は、肝硬変を伴わず、慢性肝炎(CH)を伴うC型肝細胞癌を意味し、慢性肝炎から発生したと思われるHCV陽性肝細胞癌を意味する。また、肝硬変を伴わず、慢性肝炎(CH)を伴うC型肝細胞癌症例の非癌部を「慢性肝炎症例」と称する場合もある。
症例が肝硬変症例または慢性肝炎症例のどちらであるかは、C型肝細胞癌除去術時の所見で判断することができる。肝硬変では肝臓が高度に線維化しているため、肝硬変の発症は、当業者であれば容易に確認することができる。
また、本発明において、C型肝細胞癌症例は、再発の難易によって分類される。すなわち、C型肝細胞癌症例は、C型肝細胞癌の再発時期によって、再発早期症例群(「Early」と称する場合がある)と、再発遅延症例群(「Late」と称する場合がある)とに分類される。
本発明において肝細胞癌が「再発」したことの判断は、残肝に新生した病変が認められ、その病変が1)超音波上モザイクパターン、2)ダイナミックCT上low-high-low density profile、3)血管造影上腫瘍濃染の3所見を全て満足するという臨床基準にしたがって行うことができる。
C型肝細胞癌の再発早期症例群と再発遅延症例群との分類は、再発月数で任意に分類することができる。例えば、再発早期症例群を、手術から再発までの期間が36ヶ月未満、好ましくは15ヶ月以内、より好ましくは14ヶ月以内、さらに好ましくは13ヶ月以内、最も好ましくは12ヶ月以内に設定することができる。また、例えば再発遅延症例群を、手術から再発までの期間が36ヶ月以上(3年)、好ましくは37ヶ月以上、より好ましくは40ヶ月以上、さらに好ましくは42ヶ月以上、最も好ましくは65ヶ月以上に設定することができる。C型肝細胞癌症例の分類の例を表1および図1に示す。
Figure 0005299885
図1において、二群間比較における再発早期群と遅延群の分類方法を示す。◆は再発早期群を、●および斜線を付した○は再発遅延群として選んだ症例を示している。△は二群のいずれにも選ばれなかった症例を示す。斜線を付した○は、未再発を確認した月数を示す再発遅延症例を示す。図の横軸は、早期群:遅延群の症例数を示す。四角で囲んだ症例数は、実施例2〜4のマイクロアレイで用いた分類を示す。
本発明において、C型肝細胞癌症例を、慢性肝炎症例と肝硬変症例とに分類するステップ、および再発早期症例群と再発遅延症例群とに分類するステップを実施する順番は、特に限定されず、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
3.遺伝子の発現量の測定
(1)非癌部
上記のように分類した各症例について、非癌部における遺伝子の発現量を測定する。非癌部は、患者から得られた肝臓の非癌部であれば、C型肝細胞癌の切除術時に採取した肝臓の一部であってもよいし、あるいは、バイオプシ等により採取したものであってもよい。本発明において、非癌部組織は、採取後に液体窒素またはフリーザーで凍結保存したものを使用することもできる。非癌部への癌部の混入を防ぐために、また、転移による再発症例を除くために、単発症例に限ることが好ましい。採取した組織が非癌部か癌部かの判断は、当業者であれば肉眼所見およびヘマトキシリンエオジン染色標本の顕微鏡観察等により、容易に判断することができる。
(2)遺伝子の発現量
本発明のスクリーニング方法において、非癌部における遺伝子の発現量は、mRNAの量またはタンパク質の量を指標にすることができるが、多種の遺伝子の発現量を測定するために、測定操作の簡便なmRNA量を指標にすることが好ましい。本発明において、非癌部のmRNA量は、マイクロアレイ(DNAチップ)またはリアルタイムPCRなどを用いて測定することができる。
(3)total RNAの抽出
C型肝細胞癌症例由来の非癌部組織から、公知の方法によってtotal RNAを抽出する。例えば、非癌部組織約0.1gにTrizol (Invitrogen, Carsbad, CA)を2 ml加え、ポリトロンでホモゲナイズ後、取り扱い説明書に従いtotal RNAを抽出することができる。Total RNAの質的評価を行うため、Agilent Bioanalyzer 2100 (Agilent Technologies, Palo Alto, CA)のRNA 6000 nano assay chipを用いて電気泳動解析を行ってもよい。また、total RNAからオリゴd(T)カラムを用いてmRNAを抽出してもよい。
得られたtotal RNAまたはmRNAは、以下の解析に用いることができる。
(4)オリゴヌクレオチドマイクロアレイによる発現解析
(3)で抽出したtotal RNAを用いて、例えば、ビオチン、Cy3、Cy5等で標識したcRNAを合成する。標識cRNAは、当業者であれば公知の方法で合成することができる。例えば、Affymetrix GeneChip expression analysisのマニュアルに従ってビオチン標識cRNAを合成することもできし、一部改変して実施例1のように合成することもできる。また、標識cRNAはmRNAから合成することもできる。
次に、マイクロアレイを用いて各遺伝子発現シグナルを解析する。マイクロアレイは、例えば、市販のHuman Genome U133 Plus 2.0 array (Affymetrix, Santa Clara, CA)、CodeLink Human UniSet 20K I Bioarray (Amersham Biosciences)、Whole human genome oligo microarray kit (Agilent Technologies)を用いることができる。症例毎に1枚のマイクロアレイを用いてもよいし、複数の症例のRNA又はcRNAをプールして1枚のマイクロアレイに適用してもよいが、症例毎に1枚のマイクロアレイを適用することが好ましい。
オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて遺伝子の発現量を測定する症例数は、好ましくは1群3例以上、好ましくは4例以上、より好ましくは5例以上である。
標識cRNAとマイクロアレイ上のプローブとのハイブリダイゼーションと、それに続く洗浄、染色の工程は、各マイクロアレイのマニュアルに従って行うことができる。また、例えば、Fluidics Station 450 (Affymetrix)により、マニュアルに従ってハイブリダイゼーション、洗浄、染色を行うことができる。染色後、読みとり機器、例えば、Scanner 3000 (Affymetrix)にて遺伝子発現シグナルの読みとりを行う。読みとった各遺伝子発現シグナルは、Gene Spring version 7 (Silicon Genetics, Redwood, CA)などの解析ソフトを用いて解析すればよい。
シグナル値の補正は当業者であれば、適宜実施することができる。例えば、microarrayごとに中央値を1とするper chip normalizationを行い、その後遺伝子ごとに中央値を1とするper gene normalizationを行えばよい。
また、クラスター解析、各種有意差検定法による2群間で発現量の異なる遺伝子の抽出は、例えば、Gene Spring version 7 を用いて実施することができる。
(5)リアルタイムPCRによる発現定量
リアルタイムPCRで解析するcDNAをtotal RNAまたはmRNAから調製する前に、(3)で抽出したRNAに混在するDNAを除くため、DNase I 処理を行うことが好ましい。例えば、total RNA 20μgに対しDNase I (Takara, Shiga, Japan) 10 unitを加え、50μl中で37℃, 20 min反応後、TrizolにてRNAを精製することができる。
次に、DNase I処理後のRNAを用いて、cDNAを合成する。例えば、DNase I処理後のRNA 10μgに対して、random primer、oligo dT primerなどと共に逆転写酵素(例えば、AMV reverse transcriptase XL (Life Sciences, Gaithersurg, MD) 25 unit、SuperScript IIなど)を加え、100μl中でcDNAを合成することができる。
リアルタイムPCRによる発現定量は、Rotor-Gene 3000 (Corbett Research, Mortalke, Australia) 、ABI Prism 7000 Sequence Detection System (Applied Biosystems, Foster, CA)、ABI Prism 7500 Sequence Detection System (Applied Biosystems)等の機器を用いることができる。例えば、定量反応は、10ng相当のcDNA、SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems)、0.5μMの各種遺伝子primerを含む25μl反応液中で、95℃、10 min のpreheat後、95℃ 15 sec、60℃ 60 secを45 cycle行うことができる。内在性コントロール遺伝子である18S rRNA定量は、0.25ng相当のcDNAを用いることができる。定量用標準サンプルは、肝臓cDNAを5倍の系列希釈で5点用意し検量線を作成後、絶対定量解析に用いればよい。各遺伝子で最も高い発現を示した肝臓cDNAを標準サンプルとし、そのcDNA ng数を定量値に使用できる。内在性コントロール遺伝子として、例えばハウスキーピング遺伝子、18S rRNA、Glucuronidase, beta (GUSB)またはglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) を用いることができ、18S rRNAが好ましい。各遺伝子発現量は、各遺伝子発現定量値を内在性コントロール遺伝子発現定量値で除した相対値で表すことができる。用いるprimer配列は、例えば、primer 3
(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて設計することができる。
リアルタイムPCRで遺伝子の発現量を測定する際、症例毎に発現量を測定してもよいし、いくつかの症例のRNAをプールしたものの発現量を測定してもよい。本発明において、オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて遺伝子の発現量を測定する症例数は、好ましくは1群3例以上、好ましくは4例以上、より好ましくは5例以上である。
(6)免疫組織化学又はELISAによる発現定量
本発明においては、遺伝子発現を、免疫組織化学又はイムノアッセイを利用して定量することができる。
例えば、免疫組織化学の場合は、遺伝子産物のタンパク質全体あるいは一部を合成し免疫抗体を作製する。切除肝組織を薄切切片として 固定、ブロッキング後、免疫抗体を1次抗体として反応させる。洗浄後、蛍光標識または酵素標識した2次抗体を反応させ、蛍光顕微鏡で観察するか、あるいは酵素反応による発色を光学顕微鏡で観察する。遺伝子産物発現細胞を染色陽性細胞としてカウントまたは画像解析により染色性を定量し、その陽性率または定量値で発現定量する。。
また、ELISAの場合は、 切除肝組織を溶解溶液でホモゲナイズし、遠心上清を抗原ソースとして用いる。イムノアッセイプレートに上記免疫抗体をはり付け、ブロッキング後抗原検体を反応させる。洗浄後免疫抗体を1次抗体として再度反応させ、上記と同様標識2次抗体を反応させる。検出は蛍光光度計、あるいは比色計で定量値として読みとる。
4.再発関連遺伝子の選択
(1)再発関連遺伝子
本発明において、C型肝細胞癌の再発早期症例の非癌部または再発遅延症例の非癌部において遺伝子発現量の変動した遺伝子を、C型肝細胞癌の発癌・再発関連遺伝子とする。なお、本明細書において、発癌・再発関連遺伝子を、単に「再発関連遺伝子」と記載する場合がある。再発関連遺伝子には、再発早期症例の非癌部において再発遅延症例よりも遺伝子発現量が亢進した遺伝子、または再発遅延症例の非癌部において再発早期症例よりも遺伝子発現量が亢進した遺伝子が含まれる。ここで、再発早期症例の非癌部、及び再発遅延症例の非癌部で発現亢進した遺伝子は、それぞれ、再発遅延症例の非癌部、及び再発早期症例の非癌部で発現低下した遺伝子と同じ意味である。
本発明において、再発関連遺伝子は、慢性肝炎症例または肝硬変症例毎にスクリーニングすることが好ましい。
(2)再発関連遺伝子の選択
再発関連遺伝子の選択は、上記の遺伝子の発現量の測定方法のうち、マイクロアレイまたはリアルタイムPCRの一方を実施し、発現量の変動した遺伝子を選択してもよいし、これらの方法を組み合わせて実施し、いずれかの方法または両方の方法で発現量の変動した遺伝子を選択してもよい。好ましくは、マイクロアレイで網羅的に遺伝子の発現量を測定した後、発現量の変動した遺伝子を再発関連遺伝子候補と位置づける。そして、この再発関連遺伝子候補についてリアルタイムPCRを実施して、リアルタイムPCRにおいても発現量が変動した遺伝子をC型肝細胞癌再発関連遺伝子として選択することができる。すなわち、マイクロアレイで再発関連遺伝子候補を検出し、リアルタイムPCRで候補遺伝子を検証し、再発関連遺伝子を選択することが好ましい。
以下にマイクロアレイまたはリアルタイムPCRにより、再発関連遺伝子またはその候補遺伝子を選択する方法を記載する。
(i) マイクロアレイで遺伝子の発現量を測定した結果を利用して、再発関連遺伝子またはその候補遺伝子を選択する場合、P (present) flagの有無を指標の一つに用いることができる。P flagは発現の確認されたプローブに付される印である。例えば、あるプローブについて、複数枚のマイクロアレイのうち少なくとも1枚においてP flagの付されたプローブを、すべて選択することができる。また、あるプローブについて、複数枚のマクロアレイの全部においてP flagの付されたプローブのみを選択することもできる。選択されたプローブに対応する遺伝子が目的の遺伝子である。
また、統計学的処理により、再発早期症例と再発遅延症例とで発現量の差が有意にある遺伝子を選択することもできる。このような統計学的処理としては、Student’s T test(ST)、Welch’s T test(WT)、Cross-gene error model(CG)、Mann-Whitney U test(MW)等を上げることができる。これらの統計学的処理は単独で用いてもよいし、複数の処理方法を組み合わせて用いてもよい。
さらに、再発早期症例と再発遅延症例との2群間で再発の難易によって発現量の異なる遺伝子を選択する場合、発現量の差を、例えば、1.8倍、好ましくは2.0倍、より好ましくは2.2倍、さらに好ましくは2.5倍、最も好ましくは3倍に設定することができる。
慢性肝炎症例の再発関連遺伝子は例えば以下のように選択することができる(図2、図4)。慢性肝炎症例群の各症例毎にマイクロアレイによる遺伝子の定量を行う。少なくとも1枚のマイクロアレイにP flagの付されたプローブをすべて選択する。次に、選択したプローブについて上記4種類の統計学的処理の全部またはいくつかをそれぞれ実施し、すべての処理において、再発早期症例と再発遅延症例の2群間で統計的に発現量の差が有意であったプローブをさらに選択する。次に、2群間の発現量の差が、例えば2.0倍以上のプローブを抽出し、最後に発現亢進側のすべてのマイクロアレイでP flagの付されたプローブのみを選択する。選択されたプローブのうち、再発早期症例で発現亢進しているプローブが早期再発に関連する遺伝子のプローブであり、再発遅延症例で発現亢進しているプローブが再発遅延に関連する遺伝子のプローブと呼ぶ。肝硬変症例の再発関連遺伝子も同様に選択することができる(図3)。1つの遺伝子に対して複数のプローブが、1枚のマイクロアレイに搭載されている場合もある。
慢性肝炎症例11例におけるC型肝細胞癌再発関連遺伝子のスクリーニング例を実施例2(再発早期症例群5例、再発遅延症例群6例)および実施例4(再発早期症例群7例、再発遅延症例群4例)に示す。
肝硬変症例9例(再発早期症例群5例、再発遅延症例群4例)におけるC型肝細胞癌再発関連遺伝子のスクリーニング例を実施例3に示す。
(ii) リアルタイムPCRで遺伝子の発現量を測定した結果を利用して、再発関連遺伝子またはその候補遺伝子を選択する場合、再発早期症例と再発遅延症例との2群間比較をMann Whitney U 検定などの公知の統計学的手法を用いて行うことができる。そして、有意差(P<0.05)のあったプローブまたは有意差のあったものに加えて有意差傾向(0.05<P<0.07)にあったプローブについて、選択することができる。選択されたプローブに対応する遺伝子が目的の遺伝子である。
5.マイクロアレイ
本発明は、再発関連遺伝子のプローブを搭載したマイクロアレイ、再発関連遺伝子を発現させて得られるタンパク質を搭載したELISA用プレート、及び再発関連遺伝子を発現させて得られるタンパク質が基板上に固定されたプロテインチップを提供する。
(1)慢性肝炎症例用のマイクロアレイ
本発明により、配列番号1〜配列番号115のいずれか、好ましくは配列番号1〜配列番号97で表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のプローブが搭載された慢性肝炎症例用のマイクロアレイが提供される。
配列番号1〜配列番号97のいずれかで表される塩基配列は、
(i) 配列番号1〜配列番号52:慢性肝炎症例の再発遅延群に発現亢進する遺伝子(CHLa47、実施例2、表3)、
(ii) 配列番号53〜配列番号65:慢性肝炎症例の再発早期群に発現亢進する遺伝子(CHEa13、実施例2、表4)、
(iii) 配列番号66〜配列番号88:慢性肝炎症例の再発遅延群に発現亢進する遺伝子(CHLb17、実施例4、表7.1)、および
(iv) 配列番号89〜配列番号97:慢性肝炎症例の再発早期群に発現亢進する遺伝子(CHEb9、実施例4、表7.1)
である。
また、慢性肝炎を伴う肝細胞癌の再発検査には、肝硬変で見つかった遺伝子(配列番号98〜115)の中からも、使用することが可能である。このような遺伝子として、例えば配列番号109〜111に示すものを挙げることができる。
ここで、(i)または(iii)の遺伝子は、再発遅延群(手術から再発までの期間を(i) 36ヶ月以上または(iii) 65ヶ月以上に設定)の非癌部組織において、それぞれ14ヶ月以内、36ヶ月以内の再発早期群と比較して発現が亢進した遺伝子である。また、(ii)または(iv)の遺伝子は、再発早期群(手術から再発までの期間を(ii) 14ヶ月以内または(iv) 36ヶ月以内に設定)の非癌部組織においてそれぞれ36ヶ月以上、65ヶ月以上の再発遅延群と比較して発現が亢進した遺伝子である。
本発明の慢性肝炎症例用のマイクロアレイは、肝硬変を併発せず、慢性肝炎に伴う肝細胞癌患者のC型肝細胞癌の再発検査に有効である。例えば、患者の非癌部組織において、(i) 配列番号1〜配列番号52および(iii) 配列番号66〜配列番号88のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、慢性肝炎症例の再発は術後3年以上経過後であると予想することができる。特に、配列番号66〜配列番号88からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、慢性肝炎症例の再発は術後5年以上経過後であると予想することができる。
また、(ii) 配列番号53〜配列番号65および(iv) 配列番号89〜97のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、慢性肝炎症例の再発は36ヶ月以内であると予想することができる。特に、配列番号53〜配列番号65からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、慢性肝炎症例の再発は14ヶ月以内であると予想することができる。
(2)肝硬変症例用のマイクロアレイ
本発明により、配列番号1〜配列番号115、好ましくは配列番号98〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のプローブが搭載された肝硬変症例用のマイクロアレイが提供される。
配列番号98〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列は、
(v) 配列番号98〜配列番号107:肝硬変症例の再発遅延群に発現亢進する遺伝子(LCL9、実施例3、表5)、および
(vi) 配列番号108〜配列番号115:肝硬変症例の再発早期群に発現亢進する遺伝子(LCE8、実施例3、表6)
である。
ここで、(v)の遺伝子は、再発遅延群(手術から再発までの期間を37ヶ月以上に設定)の非癌部組織において12ヶ月以内の再発早期群と比較して発現が亢進した遺伝子である。また、(vi)の遺伝子は、再発早期群(手術から再発までの期間を12ヶ月以内に設定)の非癌部組織において37ヶ月以上の再発遅延群と比較して発現が亢進した遺伝子である。
また、肝硬変を伴う肝細胞癌の再発検査には、慢性肝炎で見つかった遺伝子(配列番号1〜98)の中からも使用することができる。このような遺伝子としては、例えば配列番号25又は配列番号29で表されるものが挙げられる。
本発明の肝硬変症例用のマイクロアレイは、肝硬変に伴うC型肝細胞癌患者の肝細胞癌の再発検査に有効である。例えば、患者の非癌部組織において、配列番号98〜配列番号107のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、肝硬変症例の再発は手術後3年以上経過後と予想することができる。また、配列番号108〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、肝硬変症例の再発は手術後12ヶ月以内と予想することができる。
また、本発明は、配列番号1〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される遺伝子のプローブを搭載したマイクロアレイであってもよい。このマイクロアレイは、慢性肝炎および肝硬変に伴うC型肝細胞癌の再発検査に有効である。
(3)本発明のマイクロアレイは、上記遺伝子の全部もしくは一部の配列またはそれらの相補配列を含む核酸を、プローブとして搭載する。プローブの設計は、当業者であれば既存のソフトウェアを用いるなど、公知の方法により容易に実施することができる。マイクロアレイの作製方法は、例えば、あらかじめ調製したプローブを、スライドガラスの上に高密度にスポットする方法、あるいは、基盤上で25mer前後のオリゴヌクレオチド(プローブ)を合成する方法があげられるが、これらに限定されない。
(4)測定サンプル
本発明のマイクロアレイを用いて、C型肝細胞癌患者について、肝細胞癌が早期に再発するタイプか、又は再発が遅延するタイプかを推定することができる。
測定サンプルは、例えば、肝細胞癌の摘出術時に採取される非癌部組織、又はバイオプシなどにより採取された非癌部組織を使用することができる。採取された非癌部組織から、上記「3.遺伝子の発現量の測定」に記載した方法により、遺伝子の発現量を本発明のマイクロアレイ、ELISA用プレート又はプロテインチップを用いて、あるいは免疫組織化学を利用して解析することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例2〜4および実施例8に用いる測定サンプルの調製およびサンプルの測定は以下のように実施した。
(1)total RNAの抽出
非癌部組織約0.1gにTrizol (Invitrogen, Carsbad, CA)を2μl加え、ポリトロンでホモゲナイズ後、取り扱い説明書に従いtotal RNAを抽出した。Total RNAの質的評価を行うため、Agilent Bioanalyzer 2100 (Agilent Technologies, Palo Alto, CA)のRNA 6000 nano assay chipを用いて電気泳動解析を行った。
(2)Oligonucleotide microarrayによる発現解析
20症例のtotal RNAを用いて、ビオチン標識cRNAを合成した。Affymetrix GeneChip expression analysisのマニュアルを一部改変して次のように行った。10μgのtotal RNAを用いてRNase inhibitor存在下、42℃, 2 hrにてfirst strand cDNAを合成した。マニュアルに従ってsecond strand cDNAを合成後、半分量を用いてMEGAscript T7 kit (Ambion, Austin, TX)を基本にした反応液でbiotin-cRNAを合成した。すなわち、75 mM ATP、GTP各4μl、75 mM CTP、UTP各3μl、T7 10x reaction buffer 4μl、T7 enzyme 4μl, 10 mM biotin-11-CTP (PerkinElmer Life Sciences, Boston, MA) 7.5μl、10 mM biotin-16-UTP (Roche Diagnostics, Basel, Switzerland) 7.5μl、200 unit/μl T7 RNA polymerase (Ambion) 1μl、40 unit/μl RNase inhibitor 1μlおよびsecond strand cDNAを含む43μlの反応液を37℃で9 hrインキュベートし、in vitro transcriptionを行った。その後、biotin-cRNAはRNeasy MiniElute cleanup kit (Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。cRNAのfragmentationをマニュアルに従い行った。
Human Genome U133 Plus 2.0 array (Affymetrix, Santa Clara, CA)を20枚用いて、マニュアルに従ってFluidics Station 450 (Affymetrix)によりcRNAとのハイブリダイゼーション、洗浄、染色を行い、Scanner 3000 (Affymetrix)にて読みとりを行った。各遺伝子発現シグナルは、Gene Spring version 7 (Silicon Genetics, Redwood, CA)を用いて解析した。シグナル値の補正は、microarrayごとに中央値を1とするper chip normalizationを行い、その後遺伝子ごとに中央値を1とするper gene normalizationを行った。クラスター解析、各種有意差検定法による2群間で発現量の異なる遺伝子の抽出は、 Gene Spring version 7 で行った。
(3)リアルタイムPCRによる発現定量
抽出したRNAに混在するDNAを除くため、DNase I 処理を行った。Total RNA 20μgに対しDNase I (Takara, Shiga, Japan) 10 unitを加え、50μl中で37℃, 20 min反応後、TrizolにてRNAを精製した。DNase I処理後のRNA 10μgを用いて、random primerとAMV reverse transcriptase XL (Life Sciences, Gaithersurg, MD) 25 unitを加え100μl中でcDNAを合成した。
Real-time PCRによる発現定量は、Rotor-Gene 3000 (Corbett Research, Mortalke, Australia) を用いた。10ng相当のcDNA、SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems)、0.5μMの各種遺伝子primerを含む25μl反応液中で、95℃、10 min のpreheat後、95℃ 15 sec、60℃ 60 secを45 cycle行った。18S rRNAの定量には0.25ng相当のcDNAを用いた。肝臓cDNAを5倍の系列希釈で5点用意し検量線を作成後、定量用標準サンプルを絶対定量解析に用いた。すなわち、各遺伝子で最も高い発現を示した肝臓cDNAを標準サンプルとし、そのcDNA ng数を定量値に用いた。内在性コントロール遺伝子として、2つのハウスキーピング遺伝子、18S rRNA, glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) を用いた。各遺伝子発現量は、各遺伝子発現定量値を内在性コントロール遺伝子発現定量値で除した相対値で表した。用いたprimer配列は、primer 3
(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いてデザインした。表9に各遺伝子のプライマー配列およびアニーリング温度を示す。2群間の有意差検定はMann-Whitney U検定を用いた。
:慢性肝炎再発関連遺伝子のスクリーニング(CHa)
CH症例を、術後から肝細胞癌再発までの期間が14ヶ月以内の症例を再発早期症例群とし、術後から再発までの期間が36ヶ月以上の症例を再発遅延症例群と設定した。CH症例15例のうち、再発早期症例群の5例と再発遅延症例群の6例の計11例から慢性肝炎再発関連遺伝子のスクリーニングを行った(図1)。
11枚のマイクロアレイの少なくとも1枚でP flagの出現する(発現有り)プローブは、29020個あった。この29020個のプローブの中から、再発難易による違い(6:5)で有意に発現量の異なるプローブを上記の異なる4つの統計学的処理によって求めると、約1000〜2000個のプローブに絞られた。そして、これら4つのすべての統計学的処理において、発現量が有意に異なったプローブは875個であった。その中、再発早期症例群と、再発遅延症例群との2群間で発現量が2倍以上異なるプローブは193個有り、さらに発現の高い方で全てP flagの出現するものを選び、64プローブを選択した(図2)。表3および4に、それぞれ遅延遺伝子(再発遅延群に発現亢進している遺伝子)および早期遺伝子(再発早期群に発現亢進している遺伝子)を示す。なお、マイクロアレイに搭載されている異なるプローブのいくつかが、同一の遺伝子に由来していたため、遺伝子数としては、それぞれ47個および13個となり、合計60遺伝子であった。
Figure 0005299885
表3のカテゴリー分類に示すように(図8も参照)、カテゴリーAだけが遺伝子(タンパク質をコードする実質的な遺伝子)を意味する。残りのカテゴリーは、ある遺伝子の領域に位置するが、イントロンあるいは遺伝子近接部位の遺伝子外配列がプローブとなっていたり、遺伝子コードとは逆の方向がプローブとなっていたりして、発現変化したプローブとして選択された。従ってこれらはタンパク質をコードする本物のmRNAの発現変化を見ているとは限らない。名前の付いている遺伝子そのものの発現変化ではない場合もある。
Figure 0005299885
なお、これら2群間における症例の背景因子の異同については、表2に示す。血清アルブミンおよびαフェトプロテインの発現量に若干の差が認められ、再発早期症例群にアルブミン低値、 αフェトプロテイン高値の傾向が見られた。
Figure 0005299885
:肝硬変症例再発関連遺伝子のスクリーニング(LC)
術後から肝細胞癌再発までの期間が12ヶ月以内のLC症例を再発早期症例群とし、術後から再発までの期間が37ヶ月以上のLC症例を再発遅延症例群と設定した。LC症例22例のうち、再発早期症例群の5例と再発遅延症例群の4例の計9例から肝硬変症例再発関連遺伝子のスクリーニングを行った(図1)。
9枚のマイクロアレイの少なくとも1枚でP flagが出現した(発現有り)プローブは、28450個あった。この28450個のプローブの中から、再発難易による違い(4:5)で有意に発現量の異なるプローブを3つの異なる統計学的処理(Student’s T test、Welch’s T test、Cross-gene error model)によって求めると、約400〜1000個のプローブに絞られた。そして、これらのすべての統計学的処理において、発現量が有意に異なったプローブは297個であった。その中、再発早期症例群と、再発遅延症例群との2群間で発現量が2倍以上異なるプローブは111個有り、さらに発現の高い方で全てP flagが出現したものを選び、17プローブを選択した(図3)。表5および表6に、それぞれ遅延遺伝子および早期遺伝子を示す。
Figure 0005299885
Figure 0005299885
なお、上記の表2に2群間における症例の背景因子の比較を示す。肝組織中のC型肝炎ウイルス量に差が認められた。肝硬変の再発早期群にウイルス量が多いという特徴があった。
:慢性肝炎再発関連遺伝子のスクリーニング(CHb)
術後から肝細胞癌再発までの期間が36ヶ月以内のCH症例を再発早期症例とし、術後から再発までの期間が65ヶ月以上のCH症例を再発遅延症例群と設定した。CH症例15例のうち、再発早期症例群の7例と再発遅延症例群の4例の計11例から慢性肝炎再発関連遺伝子のスクリーニングを行った(図1)。
11枚のマイクロアレイの少なくとも1枚でP flagが出現する(発現有り)プローブは、29020個あった。この29020個のプローブの中から、再発難易による違い(4:7)で有意に発現量の異なるプローブを3つの異なる統計学的処理(Student’s T test、Welch’s T test、Cross-gene error model)によって求め、これら3つのすべての統計学的処理において、発現量が有意に異なったプローブは485個であった。その中、再発早期症例群と、再発遅延症例群との2群間で発現量が2倍以上異なるプローブは114個有り、さらに発現の高い方で全てP flagが出現するものを選び、27プローブを選択した(図4)。表7.1および表7.2に遅延遺伝子および早期遺伝子を示す。マイクロアレイに搭載されている異なるプローブのいくつかが、同一の遺伝子に由来していたため、遺伝子数としては、それぞれ17個および9個となり、合計26遺伝子であった。
Figure 0005299885
本実施例では、再発遅延群を65ヶ月以上で区切っているため、再発遅延群に特に特徴的な遺伝子発現を明らかにすることができた。
:各候補遺伝子の重複
実施例2〜4で示した3つの2群間比較から求められた再発関連遺伝子(CHa、LC、CHb)について重複を検討した。
結果を図5に示す。慢性肝炎(CHa、CHb)と肝硬変(LC)では重複する遺伝子はなかった。異なる2群分類を行った慢性肝炎では、4遺伝子が共通に抽出された。なお慢性肝炎遅延遺伝子の1つが、肝硬変早期遺伝子として抽出されていた。
このように、慢性肝炎と肝硬変では異なる遺伝子が、再発リスクと関連して発現変化することが示された。従って、慢性肝炎と肝硬変とは異なる発癌の作用機序を有すると考えられる。すなわち、これらの症例毎に発癌に関連する遺伝子をスクリーニングする本発明の方法は、より確実に再発関連遺伝子を選択することができる点で極めて有用であるといえる。
:慢性肝炎の再発関連遺伝子による症例のクラスター分類
実施例2で得られた再発関連遺伝子(CHa)が、症例の再発リスクについて正しく分類できる遺伝子であるかを検証するために、クラスター分類を行った。
慢性肝炎の候補遺伝子64プローブの発現パターンから症例のクラスター分類を行うと、慢性肝炎11例の遅延群6例と早期群5例とは正しく2群に分類された(図6)。しかし同じ遺伝子発現パターンを用いて肝硬変症例をクラスター分類すると、2群に正しく分類されなかった(図6)。
従って、この64プローブの発現パターンは慢性肝炎における再発リスクを予測できるものといえる。
:肝硬変の再発関連遺伝子による症例のクラスター分類
実施例6と同様に、実施例3で得られた肝硬変の関連遺伝子についてもクラスター分類を試みた。
肝硬変の候補候補遺伝子17プローブの発現パターンから症例のクラスター分類を行うと、肝硬変9症例の遅延群4例と早期群5例とは、正しく2群に分類された(図7)。しかし同じ遺伝子発現パターンを用いて慢性肝炎症例をクラスター分類すると、2群に正しく分類されなかった(図7)。
従って、この17プローブの発現パターンは肝硬変における再発難易を予測できるものといえる。
候補遺伝子プローブの遺伝子上の位置について
実施例において用いたマイクロアレイのプローブは54675プローブであり、ヒトゲノムの遺伝子数を遙かに超えている。すなわち、1つの遺伝子に対し複数の転写産物が報告されていたり、機能は未知の短い転写産物が報告されていたりするため、54675プローブ中には、1つの遺伝子に対して複数のプローブが含まれている場合がある。そこでプローブの意味を知る目的から、マイクロアレイに用いられたプローブ配列を、遺伝子のDNA配列上どの位置にセットされていたかで5つのパターンに分類した(図8)。A, 遺伝子エキソン上に同方向、すなわち該当遺伝子のmRNAを検出;B, 該当遺伝子のエキソンを含むイントロン、またはイントロンのみ;C, 該当遺伝子の相補鎖;D, 該当遺伝子の3’末端を含むまたは含まない遺伝子外の配列;D,遺伝子が定義されていない領域として表3〜7にあげられた各遺伝子について、上記に従いプローブカテゴリーとして表記した。表8には抽出遺伝子のカテゴリー別集計を示した。A以外にもB,D,Eに分類されるプローブが検出されたが、これらが転写産物として機能するものであるか、今後検証することは有意義かもしれない。
Figure 0005299885
:リアルタイムPCRによる発現定量と2群間比較の検証
図9にPCRデザインした遺伝子数(デザイン)と、リアルタイムPCRで定量可能であった遺伝子数(PCR可)と、その結果2群間において発現量の差を検証できた遺伝子数(検証可)を示す。2群間において発現量の差を検証できた遺伝子数には、2年以内に再発した再発早期群と3年以上未再発の再発遅延群との間で発現量の差が証明できた遺伝子数を示した。表9には用いたプライマー配列を、表10には、様々な2群間での有意差検定の結果を示す。
Figure 0005299885
Figure 0005299885
再発関連遺伝子について、慢性肝炎遅延遺伝子は、マイクロアレイで検出したものがほとんどリアルタイムPCRで検証できた(CHL)。また、慢性肝炎で検出された再発関連遺伝子は、早期群の設定が術後約1年以内でも約2年以内でも同様の結果が得られた。また遅延群の設定が術後約3年以上でも約5年以上でも同様の結果が得られた。
さらに、慢性肝炎再発関連遺伝子の一部について、肝硬変症例における発現をリアルタイムPCRで測定した。その結果を図9の括弧内に示す。但し図9の検証結果には、肝硬変再発早期群と慢性肝炎再発遅延群との2群間比較を示した。また表10の「Liver cirrhosis」「LC early : CH late」にも結果を示す。
上記の結果から、慢性肝炎で検出された再発関連遺伝子は、肝硬変症例内での再発早期群と遅延群との間で、有意な発現の差を示さなかった(表10「Liver cirrhosis」の欄、CH遺伝子は空欄となっている)。すなわち、慢性肝炎症例の再発関連遺伝子は、肝硬変症例の再発関連遺伝子にはならないことが示された。しかし、慢性肝炎再発遅延遺伝子のほとんどが、慢性肝炎早期群だけでなく、肝硬変症例の再発早期群に対しても、低発現を示した(表10「LC early: CH late」の欄の有意差を示したCHLa遺伝子18個)。従って、これらの遺伝子は、慢性肝炎であれ肝硬変であれ早期に再発する症例では、共通して発現低下を示す遺伝子であるといえる。これらの遺伝子発現を増強できれば、再発を予防できる可能性がある。再発予防を考える上に、示唆に富む遺伝子といえる。
〔比較例〕
再発関連遺伝子候補の抽出
肝硬変の有無で肝細胞癌症例を分類せず、肝細胞癌症例20例について20枚のマイクロアレイを用いて、再発関連遺伝子の探索を行った。
20枚のマイクロアレイで少なくとも1枚でP flagが出現する(発現有り)プローブは、31020個あり、再発難易による違い(10:10)で有意に発現量の異なる遺伝子を4つの異なる統計学的処理によって求めると約1000から2000プローブに絞られた。これらの解析で共通に見いだされたプローブは905個であった。2群間で発現量が2倍以上異なるプローブは140個有り、さらに発現の高い方で全てP flagが出現するものを選ぶと、3プローブしか選択することができなかった。
したがって、肝硬変の有無で肝細胞癌症例を分類して、再発関連遺伝子のスクリーニングを行うことが重要であるといえる。
以下の実施例では、64例のC型肝細胞癌症例の非癌部と、正常肝組織として13例の大腸癌肝転移症例の肝臓非癌部とを対象に用いた。肝炎ウイルスマーカー陰性の大腸癌肝転移症例からの切除肝の非癌部では、病理組織学的に炎症はなかったため、正常肝と見なされた。
C型肝細胞癌症例を、再発までの月数により分類し、さらに非癌部の病理組織像から慢性肝炎症例と肝硬変症例とに分類した(表11及び図10)。表11及び図10には早期再発と遅延の二群の分類方法を3通り示した。図10において、◆は再発早期群を、●および斜線を付した○は再発遅延群として選んだ症例を示している。△は二群のいずれにも選ばれなかった症例を示す。斜線を付した○は、未再発を確認した月数を示す再発遅延症例を示す。
Figure 0005299885
:内在性コントロール遺伝子の決定
本実施例では、本発明の遺伝子の検証により適した内在性コントロール遺伝子を決定するために、肝蔵で一定レベルで発現する遺伝子を検討した。
肝臓病理組織学的な差異により発現変化しない遺伝子を選択するために、慢性肝炎、肝硬変および正常肝の症例より各8,8および10例を選択し、本実施例の対象症例とした。対象症例を選択するために、Agilent Bioanalyzer 2100でtotal RNAの質を確認し、RNA integrity number が7以上を示す症例を選択した。
ハウスキーピング遺伝子には、表12に示す12遺伝子を用い、リアルタイムPCRにより、26症例の肝臓由来のRNAにおける発現量を検討した。14遺伝子のプライマーは、表13に示す。リアルタイムPCRによる定量は、実施例8と同様の方法により、定量用標準サンプルの希釈系列により検量線を作成し、絶対定量法で行った。各遺伝子で最も高い発現を示した肝臓cDNAを標準サンプルとし、そのcDNA ng数を定量値に用いた。各遺伝子について、26例の発現量の中央値を1として相対発現量を求め、26例の発現量分布を遺伝子間で比較できるようにした。そして、26例の肝臓RNAにおいて、発現量が一定している遺伝子について検討した。
Figure 0005299885
図11A及びBに、内在性コントロール遺伝子候補の発現量分布結果を示す。図11A及びBは、相対発現量の自然対数を求め、各遺伝子について慢性肝炎、肝硬変、および正常肝に分けて発現量分布を示すものである。◇は再発早期群(2年以内再発)を、○は再発遅延(3年以上未再発)群、△は二群のいずれにも選ばれなかった症例、□は正常肝(但し大腸癌観点に症例の非癌部組織で病理組織学的には正常)を示す。
12個の遺伝子の中で、18s rRNA、GUSB、GAPDHの3遺伝子が、発現量の変動の最も少ない遺伝子であった。その他の遺伝子では、例えば、TBPのように肝硬変症例において遺伝子の発現が変動しているものがあった。また、ALAS1、HPRT1のように、全体に大きく変動している遺伝子もあった。
本実施例により、本発明で用いる内在性コントロール遺伝子として、18s rRNA、GUSB、GAPDHが適していることが示された。
:リアルタイムPCRによる発現定量と2群間比較の検証
本実施例では、実施例2〜4で選択した遺伝子中の43遺伝子の発現について、リアルタイムPCRにより、再発早期および再発遅延に関する様々な2群間での有意差検定を行った。表13には、用いたプライマー配列を示す。また、表14、15および16には、内在性コントロール遺伝子として実施例9で選択した3つの遺伝子、18s rRNA、GUSBおよびGAPDHを用いたときの検定結果をそれぞれ示す。
Figure 0005299885
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なお、表14の検証結果より、慢性肝炎を伴う肝細胞癌の再発検査には、肝硬変で見つかった遺伝子(配列番号98〜115)の中からも、使用可能な遺伝子が存在することが分かった(表6のLCE-2,3,4及び5(配列番号109〜111))。また、肝硬変を伴う肝細胞癌の再発検査には、慢性肝炎で見つかった遺伝子(配列番号1〜98)の中にも使える遺伝子が存在することが分かった(CHLa-23,27(配列番号25、29))。
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図12に、再発早期群(2年以内再発)と再発遅延群(3年以上未再発)との間で、発現量に差のあった遺伝子について、代表的な発現パターンを示した。補正には18S rRNAの発現量を用いた。
また、実施例9で内在性コントロールとして適していることが示された18S rRNA、GAPDH、GUSBのうち、18S rRNAが再発遅延群および再発早期群において発現亢進または発現減少することなく一定のレベルで発現していた。また、18S rRNAを内在性コントロールとして使用したときは、検証可能な遺伝子数が最も多かった。したがって、18S rRNAが内在性コントロールとして最適であることが示された。
本実施例により、補正に用いる内在性コントロール遺伝子として18S rRNAが最適であることが示された。
また、本実施例において、C型肝細胞癌、特に、慢性肝炎を伴うC型肝細胞癌の再発遅延群において発現亢進する遺伝子を数多く検証できた。また、慢性肝炎を伴うC型肝細胞群の再発遅延群において発現亢進する遺伝子の多くは、正常肝においても発現が遅延群タイプか(表14中CH:Normal liverで、24M:NLで有意差ありかつ37M:NLで有意差なしの遺伝子)、それ以上に発現亢進している遺伝子であった(表14中CH:Normal liverで、24M:NLおよび37M:NLの両方で有意差ありの遺伝子)。したがって、正常肝に近い発現様式が、再発を遅らせる要素となっていることが示された。言い換えると、ある種の遺伝子の発現抑制が、再発リスクを高めている可能性が示された。
一方、本実施例において、肝硬変を伴うC型肝細胞癌の再発関連遺伝子は3遺伝子が検証された。そのうちの2遺伝子(CHLa-27=DIAPH1, LCE-5=ZFP36L1)は、慢性肝炎を伴うC型肝細胞癌の再発関連遺伝子として検証された遺伝子と共通していた。したがって、これらの2遺伝子は、慢性肝炎および肝硬変を伴うC型肝細胞癌に共通して再発を予測する遺伝子として有用であると考えられる。
さらにまた、本実施例では、2年以内の肝硬変症例再発早期群において、19遺伝子が慢性肝炎遅延群に比べて発現低下することが示された。言い換えると、前記19遺伝子は、慢性肝炎遅延群において肝硬変症例再発早期群に対して発現亢進していた。また、このうち17遺伝子は、慢性肝炎再発早期群に対しても発現亢進することが示された。すなわち、これら17遺伝子は、C型肝細胞癌の再発を予防するのに有用な遺伝子であると考えられる。
再発を予測する遺伝子の組合せの抽出
43遺伝子の発現情報から、再発を予測する遺伝子の組合せを求めた。慢性肝炎症例を対象にして、再発早期群と再発遅延群との判別分析を行った。
対象症例は、(i) 慢性肝炎症例の再発遅延群と再発早期群との24例、(ii) 全例(慢性肝炎症例および肝硬変症例)の再発早期群と慢性肝炎症例の遅延群との44例および(iii) 全例の再発早期群と再発遅延群との55例とした。
再発早期群(2年以内再発)と再発遅延群(3年以上未再発)とを判別するために有効な遺伝子を判別関数として抽出したところ、4〜7遺伝子が選出された(表17)。下線は(i)と(ii)と(iii), (i)と(ii), (i)と(iii), (ii)と(iii)のいずれかに共通に抽出された遺伝子を示す。各判別関数で正しく判別できる精度を表17の下段に示した。表17の括弧内には、遺伝子名を記した。
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配列番号116〜配列番号257:プライマー

Claims (2)

  1. 肝硬変を伴わず慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発検査を補助する方法であって、
    配列番号1〜配列番号97のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のプローブを搭載したマイクロアレイを用い、
    採取した非癌部組織において、
    配列番号1〜配列番号52および配列番号66〜88のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発は術後3年以上経過後であると予想し、
    配列番号53〜配列番号65および配列番号89〜97のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、慢性肝炎を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発は術後36カ月以内であると予想する、
    前記方法。
  2. 肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発検査を補助する方法であって、
    配列番号98〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のプローブを搭載したマイクロアレイを用い、
    採取した非癌部組織において、
    配列番号98〜配列番号107のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発は術後3年以上経過後であると予想し、
    配列番号108〜配列番号115のいずれかで表される塩基配列を含有する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現量が亢進する場合、肝硬変を伴うHCV陽性肝細胞癌の再発は術後12カ月以内であると予想する、
    前記方法。
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