JPWO2006080409A1 - 5−置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組換えdna、形質転換された細胞、および、光学活性n−カルバミルアミノ酸または光学活性アミノ酸の製造方法 - Google Patents
5−置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組換えdna、形質転換された細胞、および、光学活性n−カルバミルアミノ酸または光学活性アミノ酸の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
1.分子量:約139,000、
2.L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するKm値:約0.304mM、
3.作用温度の範囲:25℃〜65℃、 至適温度 40℃
4.作用pHの範囲:6〜10、 至適pH8〜9、
5.温度安定性:30℃以下、
6.pH安定性:4.5〜8.0。
本発明の別の特徴は、上記のポリペプチドを生産する能力を有する微生物を培養し、培養物中に当該ポリペプチドを蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするヒダントインラセマーゼの製造方法である。
本発明の別の特徴は、上記のヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチド、上記の形質転換体、又は上記の微生物を、光学活性5−置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性5−置換ヒダントインのラセミ化方法である。
本発明の別の特徴は、上記のポリペプチド、上記の形質転換体、又は上記の微生物と、ヒダントイナーゼを、前記式(1)で表される5−置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする、一般式(2):
まず、本発明の実施形態としてのポリペプチドについて説明する。本発明のポリペプチドは、ヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチドであって、以下のような理化学的性質を有することを特徴とする。
1)作用
光学活性5−置換ヒダントイン化合物のラセミ化反応を触媒する。
2)分子量
約139,000
3)L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するKm値
約0.304mM
4)作用温度の範囲
温度範囲 25℃〜65℃、 至適温度 40℃
5)作用pHの範囲
pH範囲6〜10、 至適pH8〜9
6)温度安定性
30℃以下
7)pH安定性
pH4.5〜8.0
さらには、以下の理化学的性質も有する。
8)比活性(後述の測定法において、1分間に1μmolのD−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを生成する酵素量を1unitと定義する)
純粋酵素1mgあたり 24.2unit
9)基質阻害
50〜80mM L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを基質としたときに基質阻害を受ける。
本発明の実施形態としてのポリペプチドは、好適には、バチルス(Bacillus)属に属する微生物から取得することが出来、より好ましくは、バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株から取得できる。
1)直径1.0−1.1μm×2.0−4.0μm程度の桿菌
2)グラム染色:陽性
3)運動性:有り
4)胞子の有無:有り
5)寒天平板培地培養でのコロニー形態:円形、周縁波状、凸状、光沢あり、黄色
2.培養的性質
1)生育温度試験:37℃(+)、45℃(−)
3.生理学的性質
1)カタラーゼ:+
2)オキシダーゼ:−
3)グルコースからの酸/ガス産生(酸産生/ガス産生):−/−
4)O/Fテスト(酸化/発酵):−/−
5)発酵性試験
グリセロール:+
エリスリトール:−
D−アラビノース:−
L−アラビノース:−
リボース:+
D−キシロース:+
L−キシロース:−
アドニトール:−
β−メチル−D−キシロース:−
ガラクトース:+
グルコース:+
フラクトース:+
マンノース:−
ソルボース:−
ラムノース:−
ズルシトール:−
イノシトール:−
マンニトール:+
ソルビトール:−
α−メチル−D−マンノース:−
α−メチル−D−グルコース:−
N−アセチルグルコサミン:+
アミグダリン:−
アルブチン:+
エスクリン:+
サリシン:+
セロビオース:+
マルトース:+
乳糖:−
メリビオース:−
白糖:+
トレハロース:+
イヌリン:−
メレチトース:−
ラフィノース:+
澱粉:+
グリコーゲン:+
キシリトール:−
ゲンチオビオース:−
D−ツラノース:−
D−リキソース:−
D−タガトース:−
D−フコース:−
L−フコース:−
D−アラビトール:−
L−アラビトール:−
グルコネート::−
2−ケトグルコン酸:−
5−ケトグルコン酸:−
6)生化学試験
β−ガラクトシダーゼ:−
アルギニンジヒドロラーゼ:−
リシンデカルボキシラーゼ:−
オルニチンデカルボキシラーセ:−
クエン酸の利用性:−
H2S産生:−
ウレアーゼ:−
トリプトファンデアミナーゼ:−
インドール産生:−
アセトイン産生(VP):−
ゼラチナーゼ:+
硝酸塩還元:−
7)嫌気での生育性:−
8)10%NaClでの生育性:+
9)馬尿酸塩加水分解性:−
10)カゼイン加水分解性:+
ヒダントインラセマーゼの分離精製は、次のようにして行ない得る。まず、上記培養終了後に培養液から遠心分離などにより菌体を集め、超音波破砕機などの手段により菌体を破砕して、粗酵素液を得る。この粗酵素液を、塩析法、カラムクロマトグラフィー法などにより精製することで精製ヒダントインラセマーゼを得ることができる。
次に本発明のDNAについて説明する。本発明のDNAは上記のようなヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAであればよく、好ましくは配列表の配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA、例えば、配列表の配列番号2で示される塩基配列を有するDNAを挙げることができる。なお、通常1つのアミノ酸に複数の塩基コドンが対応していることから、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするほかの塩基配列を持つDNAも、配列番号2で示される塩基配列と等価であり、本発明のDNAに含まれる。
宿主、ベクターとしては、「組換えDNA実験指針」(科学技術庁研究開発局ライフサイエンス課編:平成8年3月22日改定)に記載の宿主―ベクター系を用いることができる。例えば、宿主としては、エシェリヒア(Escherichia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属またはストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物を用いることができる。
形質転換体の一例として、上記のようにして取得したDNAをpUCNTに組み込んだ組換えプラスミドpBHR001(図1参照)を用いてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101を形質転換し、形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pBHR001)を得ることができる。プラスミドpBHR001は、図1の制限酵素地図にて特定される。
次に、本発明のヒダントインラセマーゼを使用する、効率的な光学活性N−カルバミルアミノ酸または光学活性アミノ酸の製造方法について説明する。実施形態としての光学活性N−カルバミルアミノ酸は、前記反応式(I)に示す方法で、5−置換ヒダントイン化合物から、ヒダントイナーゼを作用させることによる加水分解でN−カルバミルアミノ酸に変換することができる。また、生成したN−カルバミルアミノ酸は、前記反応式(I)に示す方法で、カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼを作用させることにより加水分解されてアミノ酸に変換することができる。このとき、ヒダントインラセマーゼを同時に用いることで、化学的ラセミ化速度が遅い5−置換ヒダントイン化合物から、効率良く定量的に光学活性N−カルバミルアミノ酸または光学活性アミノ酸を製造できる。
ここでヒダントイナーゼとは、5−置換ヒダントイン誘導体を加水分解してN−カルバミルアミノ酸誘導体を生成する活性を有する酵素である。本発明で用いるヒダントイナーゼとしては、動物、植物、微生物由来のものが使用できるが、工業的な利用には微生物由来のものが好ましい。微生物としては、当該酵素の生産能力を有する微生物であればいずれも利用できるが、例えば、以下の公知の、当該酵素の生産能力を有する微生物を挙げることができる。
N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼは、N−カルバミルアミノ酸誘導体を加水分解してアミノ酸誘導体を生成する活性を有する酵素である。本発明で用いるN−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼとしては、前述のヒダントイナーゼと同様に、動物、植物、又は微生物由来のいずれでも使用できるが、工業的な利用には微生物由来のものが好ましい。酵素源となる微生物としては、当該酵素の生産能力を有する微生物であればいずれも利用できる。
本発明において、上記ヒダントインラセマーゼ、ヒダントイナーゼおよびN−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼは、酵素自体として用いることができるほか、本酵素活性を有する微生物もしくはその処理物としても用いることができる。ここで、微生物の処理物とは、例えば、粗抽出液、培養菌体凍結乾燥生物体、アセトン乾燥生物体、またはそれらの菌体の破砕物を意味する。
本発明の実施形態としての酵素反応は以下の方法で行うことができる。本発明において、酵素反応の基質として用いられる5−置換ヒダントイン化合物は、D体、L体、ラセミ体、または、D体とL体とが任意の割合で混合したものの、いずれを用いることもできる。酵素反応の基質として、5−置換ヒダントイン化合物を用いることができ、好ましくは、前記一般式(1)で表される5−置換ヒダントイン化合物が用いられる。
バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株(FERM BP−10477)を、表1の組成の培地(500ml容−坂口フラスコ)に植菌して30℃で17時間、好気的に振とう培養した。
実施例1で得られた精製ヒダントインラセマーゼの性質を以下のように調べた。
実施例1のHPLC分析の際に分取したヒダントインラセマーゼを用いて、プロテインシークエンサーProcise492(アプライドバイオシステムズ社製)でN末端アミノ酸配列を解析した。その結果、N末端から40アミノ酸の配列を決定できた。その配列を、配列表の配列番号3に示した。
得られた精製ヒダントインラセマーゼの活性は、L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントイン50mMを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中で、30℃、30分間に生成するD−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの増加量をHPLCで定量することにより求めた。HPLC分析は、カラム:Chirobiotic T(4.6mm×250mm、ASTEC社製)、溶離液:0.01%(v/v)Triethylamine acetate(pH6.8)/methanol=9/1、流速:0.7ml/min.、カラム温度:35℃、検出:210nmで行なった。このとき1分間に1μmolのD−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを生成する酵素量を1unitと定義した。また、タンパク質の定量は、BSAを標準タンパク質としてLowry法で行った。その結果、精製したヒダントインラセマーゼの比活性は24.2unit/mgタンパク質であった。
L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するKm値を、ラインウェーバー−バークのプロットにより求めた。図2に示したように、L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するKm値は0.304mMであった。
作用温度の範囲と至適温度を調べた。40℃での活性を100%とした場合の各温度での相対活性を図3に示した。本酵素の至適温度は40℃で、検討した25〜65℃の範囲でよく作用した。
作用pHの範囲と至適pHを調べた。pH8.9での活性を100%とした場合の各pHでの相対活性を図4に示した。本酵素はpH6〜10の範囲で作用し、至適pHは8〜9であった。
本酵素の温度安定性を、各温度で30分間処理した後の残活性で調べたところ、図5に示すように30℃で80%の残存活性を示し、70℃ではほぼ失活した。
pH安定性について調べた。本酵素を30℃、16時間、各pHで処理した後の残活性を、未処理酵素液の活性を100%として図6に示した。本酵素はpH4.5〜8.0の間で比較的安定であった。
ゲルろ過クロマトグラフィー法(カラム:TSKgel G3000SW(東ソー社製))により標準タンパク質の溶出時間と比較して分子量を測定したところ、約139,000であった。また、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動により標準タンパク質との移動度と比較してサブユニット分子量を測定したところ、約31,000であった。
精製ヒダントインラセマーゼの基質特異性を調べた。それぞれ、50mM L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントイン、50mM D−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントイン、13mM D−5−(1−メルカプト−1−メチル)エチルヒダントイン、8mM L−5−イソブチルヒダントイン、50mM L−5−(1−メチルプロピル)ヒダントイン、または、4mM L−5−ベンジルヒダントインを含む0.9mlの50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に実施例1で得た精製ヒダントインラセマーゼ0.1mlを添加して30℃で反応させた後、1N HCl 0.1mlを添加して反応を停止した。D−5−(1−メルカプト−1−メチル)エチルヒダントイン以外の基質を用いた反応の分析は、反応液の遠心上清をイオン交換水で2倍希釈し、反応液中に生成したD−5−置換ヒダントイン化合物をHPLCで定量することで行なった。HPLC分析は前記の条件で行なった。また、D−5−(1−メルカプト−1−メチル)エチルヒダントインを基質として用いた反応の分析は、反応液を1mlの酢酸エチルで抽出して得た試料を、次の条件でHPLC分析により定量することで行なった。カラム:CHIRALPAK AD−H(ダイセル社製)、溶離液:ヘキサン/イソプロパノール=9/1、流速:1ml/min.、カラム温度:25℃、検出:210nm。その結果を表2に、L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対する活性を100としたときの相対活性値で示した。
実施例1と同様に調製したバチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の粗酵素液を用いて、バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の生産するヒダントインラセマーゼの基質特異性を調べた。それぞれ、4mM L−5−ベンジルヒダントイン、50mM L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントイン、または、8mM L−5−イソブチルヒダントインを含む0.9mlの50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に上記粗酵素液0.1mlを添加して、30℃で反応させた後、1N HCl 0.1mlを添加して反応を停止した。その遠心上清をイオン交換水で2倍希釈し、反応液中に生成したD−5−置換ヒダントイン化合物をHPLCで定量した。HPLC分析は、カラム:Chirobiotic T(4.6mm×250mm、ASTEC社製)、溶離液:0.01%(v/v)Triethylamine acetate(pH6.8)/methanol=9/1、流速:0.7ml/min.、カラム温度:35℃、検出:210nmで行なった。また、50mM 5−メチルヒダントインを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.9mlに上記バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の粗酵素液0.1ml、後述の培養液1ml分のD体選択的ヒダントイナーゼ活性を有する組換え大腸菌および培養液1ml分のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する組換え大腸菌を同時に添加して、30℃で反応させた後、1N HCl 0.1mlを添加して反応を停止した。1N NaOHを添加して中和した後、遠心分離し、上清中に生成したD−アラニンをD−アミノ酸オキシダーゼとペルオキシダーゼを用いた酵素法で定量した。
バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の生産するヒダントインラセマーゼの基質阻害効果を実施例1で調製した粗酵素液を用いて調べた。5、10、50、または、80mM L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.9mlと上記粗酵素液0.1mlの混合反応液中30℃で、10、20、30、ないし、40分間反応させた後、1N HCl 0.1mlを添加してヒダントインラセマーゼを失活させ、遠心上清をイオン交換水で2倍希釈し、反応液中に生成したD−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインをHPLCで定量した。HPLC分析は実施例3と同じ条件で実施した。それぞれの初発基質濃度について反応初速度を求め、初発基質濃度との関係を図7に示した。その結果、バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の生産するヒダントインラセマーゼは、50、ないし、80mM L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを基質としたときに基質阻害を受けることが明らかになった。
バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株のコロニーを、培地10ml(16g トリプトン ペプトン(DIFCO社製)、10g バクトイーストエキス(Becton Dickinson and Company社製)、5g NaClに水を加えて1LとしてpH7に調製、オートクレーブ殺菌して使用)に植菌して30℃で12時間、好気的に振とう培養した。
実施例5で得られたヒダントインラセマーゼ遺伝子のN末端、C末端部分にそれぞれ制限酵素NdeI及びEcoRIの切断部位を結合させた配列を持つプライマー(Primer−7:配列表の配列番号11、Primer−8:配列表の配列番号12)を用いて、この間のDNAを実施例5で得た染色体DNAを鋳型にしたPCRにより増幅することで配列表の配列番号2に示されるオープンリーディングフレームのDNA断片を取得した。
実施例6で得られたプラスミドpBHR001をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101のコンピテントセルと混合することで形質転換を行い、寒天培地(トリプトン10g、イーストエキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天15g、アンピシリン100mg、脱イオン水にて1lにメスアップ、滅菌前pH7.0、ただしアンピシリンは滅菌後に添加する)にプレーティングして、ヒダントインラセマーゼ遺伝子を含む組換え体DNAを含有する形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pBHR001)をコロニーとして取得した。
実施例7で得た形質転換体のヒダントインラセマーゼ酵素液を用いて、実施例2と同じ方法で基質特異性を調べた。その結果を表4に、L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対する活性を100としたときの相対活性値で示した。
実施例3に示したD体選択的ヒダントイナーゼ活性を有する組換え大腸菌であるエシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pTH104)(FERM BP−4864)、および、D体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する組換え大腸菌であるエシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pNT4553)(FERM BP−4368)を、実施例1で培養したヒダントインラセマーゼ活性を有するバチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の培養液と同時に、DL−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントイン、または、DL−5−メチルヒダントインのそれぞれに作用せしめ、対応するD−アミノ酸を合成した。
実施例1のバチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の培養液1ml分の菌体と、実施例3のD体選択的ヒダントイナーゼ活性を有する組換え大腸菌の培養液1ml分の菌体、および、実施例3のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する組換え大腸菌の培養液1ml分の菌体を、2%(w/v)DL−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.5mlに懸濁し、30℃で反応を行った。19時間後に反応液に1N HCl 0.05mlを添加して反応を停止し、反応上清をイオン交換水で50倍希釈してHPLCで分析した。HPLC分析は実施例3に示した条件で行なった。その結果、モル収率80%でD−メチオニンが生成し、光学純度は86.0%eeであった。それと比較して、KNK519HR株培養菌体を添加しなかった場合、モル収率39%でD−メチオニンが生成し、38mol%のL−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインが残存した。
実施例1のバチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株の培養液1ml分の菌体と、実施例3のD体選択的ヒダントイナーゼ活性を有する組換え大腸菌の培養液1ml分の菌体、および、実施例3のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する組換え大腸菌の培養液1ml分の菌体を、2%(w/v)DL−5−メチルヒダントインを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.5mlに懸濁し、30℃で反応した。18時間後に反応液に1N HCl 0.05mlを添加して反応を停止し、イオン交換水で20倍希釈した後、遠心分離し、上清をHPLCで分析した。
実施例7で得たヒダントインラセマーゼ活性を有する形質転換体、実施例3で得たD体選択的ヒダントイナーゼ活性を有する組換え大腸菌エシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pTH104)、および実施例3で得たD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する組換え大腸菌エシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pNT4553)のそれぞれを培養後の培養液から遠心分離により集菌し、50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波により菌体を破砕して各酵素液を取得した。それらの酵素液を、DL−5−イソブチルヒダントイン、DL−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントイン、DL−5−(1−メルカプト−1−メチル)エチルヒダントイン、または、DL−5−ベンジルヒダントインに作用させて、対応するD−N−カルバミルアミノ酸又はD−アミノ酸を合成した。
前記のヒダントインラセマーゼ活性を有する形質転換体の培養液2ml分、前記のD体選択的ヒダントイナーゼ活性組換え菌の培養液2ml分、および、前記のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性組換え菌の培養液10ml分の菌体破砕液を、5%(w/v)DL−5−イソブチルヒダントインを含む0.83M 2−[4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid(HEPES)−NaOH緩衝液(pH7.0)2mlに懸濁し、30℃で反応を行った。また、比較例としてヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応も行なった。2時間後に反応液を0.01%(v/v)Triethylamine acetate(pH6.8)/methanol=9/1で50倍希釈して、遠心上清をHPLCで分析した。その結果、変換率99%で100%eeのD−ロイシンが生成した(L体n.d.)。また、比較例であるヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応では変換率26%であった。HPLC分析によるアミノ酸の定量は次に示す条件で実施した。カラム:CROWNPAK CR+(4.6mm×150mm、ダイセル社製)、溶離液:HClO4(pH1.5)、流速:1ml/min.、カラム温度:25℃、検出:210nm。
前記のヒダントインラセマーゼ活性を有する形質転換体の培養液2ml分、前記のD体選択的ヒダントイナーゼ活性組換え菌の培養液2ml分の菌体破砕液を、5%(w/v)DL−5−イソブチルヒダントインを含む0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.5)2mlに懸濁し、30℃で反応を行った。また、比較例としてヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応も行なった。6時間後に反応液を0.01%(v/v)Triethylamine acetate(pH6.8)/methanol=9/1で50倍希釈して、遠心上清をHPLCで分析した。その結果、変換率74%で100%eeのD−N−カルバミルロイシンが生成した(L体n.d.)。また、比較例であるヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応では、変換率49%であった。HPLC分析による定量は次に示す条件で実施した。カラム:Chirobiotic T(4.6mm×250mm、ASTEC社製)を2本連結、溶離液:0.01%(v/v)Triethylamine acetate(pH6.8)/methanol=9/1、流速:0.7ml/min.、カラム温度:35℃、検出:210nm。
前記のヒダントインラセマーゼ活性を有する形質転換体の培養液2ml分、前記のD体選択的ヒダントイナーゼ活性組換え菌の培養液2ml分、および、前記のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性組換え菌の培養液8ml分の菌体破砕液を、5%(w/v)L−5−イソブチルヒダントインを含む0.63M HEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)2mlに懸濁し、40℃で反応を行った。2.5時間後に反応液を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.0)/アセトニトリル=95/5で50倍希釈して、遠心上清をHPLCで分析した。その結果、変換率99%で100%eeのD−ロイシンが生成した(L体n.d.)。HPLC分析によるアミノ酸の定量は、上述の「1.」で説明した条件と同じ条件で実施した。
前記のヒダントインラセマーゼ活性組換え菌、前記のD体選択的ヒダントイナーゼ活性組換え菌、および、前記のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性組換え菌の、それぞれの培養液2ml分の菌体破砕液を、1%(w/v)DL−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)2mlに懸濁し、40℃で反応を行った。また、比較例としてヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応も行なった。2時間後に反応液を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.0)/アセトニトリル=95/5で20倍希釈して、遠心上清をHPLCで分析した。その結果、変換率93%でD−メチオニンが生成し、この時、比較例であるヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応では、変換率47%であった。HPLC分析によるアミノ酸の定量は次に示す条件で実施した。カラム:Develosil ODS HG−5(4.6mm×150mm、ノムラケミカル社製)、溶離液:60mMリン酸カリウム緩衝液(5mMデカンスルホン酸ナトリウム)/メタノール=3/1、流速:1ml/min.、カラム温度:40℃、検出:210nm。
前記のヒダントインラセマーゼ活性組換え菌の培養液2ml分、前記のD体選択的ヒダントイナーゼ活性組換え菌の培養液2ml分、および、前記のD体選択的N−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼ活性組換え菌の培養液4ml分の菌体破砕液を、1%(w/v)DL−5−(1−メルカプト−1−メチル)エチルヒダントインを含む100mM HEPES-NaOH緩衝液(pH7.0)2mlに懸濁し、40℃で反応を行った。また、比較例としてヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応も行なった。2.5時間後に反応液を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.0)/アセトニトリル=95/5で20倍希釈して、遠心上清をHPLCで分析した。その結果、変換率86%で100%eeのD−ペニシラミンが生成した(L体n.d.)。また、比較例であるヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応では、変換率52%であった。HPLC分析は上述の「4.」で説明した条件と同じ条件で行なった。
上述の「1.」で説明した条件と同じ条件で、基質をDL−5−ベンジルヒダントインとして反応した。また、比較例としてヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応も行なった。その結果、反応9時間で変換率83%で98.1%eeのD−フェニルアラニンが生成した。また、比較例であるヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応では変換率40%であった。
上述の「2.」で説明した条件と同じ条件で、基質をDL−5−ベンジルヒダントインとして反応した。また、比較例としてヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応も行なった。その結果、反応20時間で変換率84%でD−N−カルバミルフェニルアラニンが生成した。また、比較例であるヒダントインラセマーゼ活性組換え菌破砕液を添加しない反応では、変換率48%であった。
ラフである。
Claims (26)
- 下記の性質を有し、ヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチド。
1.分子量
約139,000
2.L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインに対するKm値
約0.304mM
3.作用温度の範囲
温度範囲 25℃〜65℃、 至適温度 約40℃
4.作用pHの範囲
pH範囲6〜10、 至適pH8〜9
5.温度安定性
30℃以下
6.pH安定性
pH4.5〜8.0 - バチルス(Bacillus)属に属する微生物に由来する請求項1記載のポリペプチド。
- 前記微生物が、バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株(FERM BP−10477)である請求項2記載のポリペプチド。
- 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNA。
- 配列表の配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA。
- 配列表の配列番号2に示す塩基配列もしくはこれと等価の塩基配列を有し、ヒダントインラセマーゼの遺伝子を含むDNA。
- 請求項5から7のいずれか1項に記載のDNAを含む組換えプラスミド。
- 前記組換えプラスミドが、プラスミドpBHR001である請求項8記載の組換えプラスミド。
- 請求項8または9に記載の組換えプラスミドで宿主微生物を形質転換して得られる形質転換体。
- 前記宿主微生物がエシェリヒア コリ(Escherichia coli)である請求項10に記載の形質転換体。
- 前記形質転換体がエシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pBHR001)(FERM BP−10476)である請求項10に記載の形質転換体。
- 請求項1または4に記載のポリペプチドを生産する能力を有し、かつ、バチルス(Bacillus)属に属する微生物。
- バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株(FERM BP−10477)、又はその変異株である請求項13記載の微生物。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のポリペプチドを生産する能力を有する微生物を培養し、培養物中に当該ポリペプチドを蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするヒダントインラセマーゼの製造方法。
- 前記微生物が請求項10から12のいずれか1項に記載の形質転換体、又は、請求項13もしくは14記載の微生物である、請求項15に記載のヒダントインラセマーゼの製造方法。
- 前記ヒダントインラセマーゼの生産能を有する微生物が、バチルス スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK519HR株(FERM BP−10477)である請求項16に記載のヒダントインラセマーゼの製造方法。
- 前記ヒダントインラセマーゼの生産能を有する形質転換体が、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101(pBHR001)(FERM BP−10476)である請求項16に記載のヒダントインラセマーゼの製造方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチド、請求項10から12のいずれか1項に記載の形質転換体、又は請求項13もしくは14に記載の微生物を、光学活性5−置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性5−置換ヒダントインのラセミ化方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチド、請求項10から12のいずれか1項に記載の形質転換体、又は請求項13もしくは14に記載の微生物と、ヒダントイナーゼを、5−置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性N−カルバミルアミノ酸の製造方法。
- 前記光学活性N−カルバミルアミノ酸が、N−カルバミル−D−ロイシン、N−カルバミル−D−イソロイシン、N−カルバミル−D−バリン、N−カルバミル−D−ノルロイシン、N−カルバミル−D−ノルバリン、N−カルバミル−D−メチオニン、N−カルバミル−D−システイン、N−カルバミル−D−ペニシラミン、N−カルバミル−D−フェニルアラニン、N−カルバミル−D−フェニルグリシン、又は、N−カルバミル−D−4−ヒドロキシフェニルグリシンである請求項22に記載の製造方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のヒダントインラセマーゼ活性を有するポリペプチド、請求項10から12のいずれか1項に記載の形質転換体、又は請求項13もしくは14に記載の微生物と、ヒダントイナーゼおよびN−カルバミルアミノ酸アミドハイドロラーゼを、5−置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性アミノ酸の製造方法。
- 光学活性アミノ酸が、D−ロイシン、D−イソロイシン、D−バリン、D−ノルロイシン、D−ノルバリン、D−メチオニン、D−システイン、D−ペニシラミン、D−フェニルアラニン、D−フェニルグリシン、又は、D−4−ヒドロキシフェニルグリシンである請求項25に記載の製造方法。
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