JPWO2006054368A1 - 組織制御によってイオン溶出を抑えた生体用Co−Cr−Mo合金及びその製造法 - Google Patents

組織制御によってイオン溶出を抑えた生体用Co−Cr−Mo合金及びその製造法 Download PDF

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Abstract

生体用Co−Cr−Mo合金やNiフリーステンレス鋼合金において不可避的に存在するNi微量不純物によるアレルギー毒性などの生体毒性を無害化する技術を提供。生体用Co−Cr−Mo合金やNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する方法であって、合金組成に、元素周期表第4族、第5族、及び第13族に属する元素からなる群から選択された元素、特には元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素を添加することを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金及びNiフリーステンレス鋼合金のニッケル毒性の無毒化法。好適には、添加元素は、ジルコニウム及びチタンからなる群から選択されたもので、より好ましくは、ジルコニウムである。

Description

本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金やニッケルフリーステンレス鋼合金のNi微量不純物によるアレルギー毒性などの生体毒性を無害化する方法及びNiの生体毒性が無毒化されているCo−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金並びに該合金より製造される生体用材料及び人工補綴材に関する。
本発明は、Co−Cr−Mo合金の組織制御技術を駆使することで、イオン溶出速度が遅い結晶構造であるε相を積極的に活用して、生体内に埋入されたCo−Cr−Mo合金表面からのイオン溶出速度を低下させることにより、アレルギー発症を抑制する技術を提供するものである。
Co−Cr−Mo合金は、耐食性,耐磨耗性,加工性に優れており、そうした信頼性から、人工股関節などの摺動面を有する部位、人工骨材といった補綴材料、外科用インプラントなど様々な医療用デバイスとして活用されている。Co基合金は塑性加工が困難なことからNiを添加することによって加工の改善を図ってきたが、近年では、Niによるアレルギーや発癌性などの生体毒性の発現が報告されている。そこでNi添加をしない材料の開発も試みられている。
しかし、Niを添加しなくとも、原料には不可避的にNiが含有されるが、そうした微量のNiでさえも、その生体毒性が懸念されている。該原料に存在する不可避的Niというものは、原料の純度を上げることで理論的には解決可能であるが、そうした高純度化は原料価格の増大を招くので、実用的でなく、実質上問題がある。同様に、Niフリーステンレス鋼合金もその優れた特性を利用して生体材料、医療用材料として利用されたり、有望視されているが、原料に不可避的に存在し、その結果、Niフリーと呼称されながら実際には避けることのできない混在する微量のNiによる生体毒性の発現が問題である。
Co−Cr−Mo合金は高耐食性、高耐摩耗性を有するために様々な医療用デバイスとして活用されている。特に、人工関節材料としての使用実績が多い。近年微量不純物として、数100ppmオーダーで不可避的に混入するNiや、主要な構成元素である、Coイオンの生体内における溶出が原因となって発症するアレルギーの問題が指摘されている。こうした生体用Co−Cr−Mo合金表面からのイオン溶出を抑制する方法の開発が求められており、溶出イオンが原因となって引き起こされるアレルギー発症を防ぐ方法の開発が必要とされている。
そこで、本発明者らは、生体用Co−Cr−Mo合金などにおいて、Niに起因する生体毒性を抑制する技術の開発をすべく、広範な探索を行い、鋭意研究を行った。その結果、生体用Co−Cr−Mo合金において、Niと化合物を形成する元素であって、さらに生体毒性が少ない元素を添加すれば、該合金の優れた特性を損なうことなく、Niに起因する生体毒性を抑制することが可能であることを見出して、これに基づき本発明を完成せしめた。本発明者らは、さらに、この無毒化技術がNiフリーステンレス鋼合金にも応用できるとの認識を有し、本発明を成し遂げたものである。
さらに、本発明者らは、生体に対して問題となるイオンの溶出をコントロールすることを目指して研究を行ない、Co−Cr−Mo合金をその組織制御、すなわち、Co−Cr−Mo合金に出現するγ相とε相のイオン溶出挙動を詳細に検討した結果、γ相に比べてε相のイオン溶出速度が著しく遅いことを見出し、それに基づき合金の組織制御によりイオンの溶出をコントロールしてアレルギー発症を抑制することが可能であるとの認識を得るに至り、本発明を完成した。
一つの態様では、本発明は次のような態様のものである。
本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する方法であって、合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加することを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金のニッケル毒性の無毒化法を提供している。好ましい態様では、該添加元素は、Mg,Al,Ti,Zr及びNbからなる群から選択されたものである。特に、本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する方法であって、合金組成に、元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素を添加することを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金のニッケル毒性の無毒化法を提供している。ある好ましい態様では、該添加元素は、ジルコニウム及びチタンからなる群から選択されたものである。より好適には、添加元素は、ジルコニウムであってよい。特に、本発明は、合金組成中のニッケル含有量が、(1)1.0wt%程度あるいはそれ以下、(2)0.5wt%程度あるいはそれ以下、(3)0.002wt%程度あるいはそれ以下、(4)少なくとも100ppmオーダーあるいはそれ以下、または(5)数100ppmオーダーあるいはそれ以下のもので、Niが不可避的に混在する合金に適用されるニッケル毒性の無毒化技術である。
本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する目的で、合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加されているものであることを特徴とするニッケル毒性の無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金を提供している。一つの態様では、本発明の合金は、合金組成中のニッケル含有量が、(1)1.0wt%程度あるいはそれ以下、(2)0.5wt%程度あるいはそれ以下、(3)0.002wt%程度あるいはそれ以下、(4)少なくとも100ppmオーダーあるいはそれ以下、または(5)数100ppmオーダーあるいはそれ以下のもので、Niが不可避的に混在するものである。さらに、本発明は、上記のニッケル毒性が無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金から製造されたことを特徴とする医療用デバイスを提供している。また、本発明は、上記のニッケル毒性が無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金を、焼入れ、金属のガス霧化法、機械的合金法、溶湯急冷法、熱間押出し、熱間圧延、熱間線引き及び鍛造からなる群から選択された処理を加えて製造されたことを特徴とする医療用デバイスを提供している。
別の態様では、本発明は次のような態様のものである。
本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金におけるイオン溶出抑制法であって、合金組織を制御調整して、εHCP相組織を富化せしめることを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法を提供している。好ましい態様では、該生体用Co−Cr−Mo合金における合金組織の制御調整は、(1)合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加すること及び/又は(2)適切な熱処理を施すことで達成できる。ある態様では、該添加元素は、Mg,Al,Ti,Zr及びNbからなる群から選択されたものである。また、本発明では、合金組織制御調整の目的で、元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素を添加元素として使用することを含んでいてよい。該添加元素は、ジルコニウム及びチタンからなる群から選択されたものであってよい。より好ましくは、該添加元素は、ジルコニウムである。もちろん、合金組成中のニッケル含有量は、上記したようなものであってよい。該Co−Cr−Mo合金の組織コントロールは、合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことを含むものであってよい。また、該Co−Cr−Mo合金の組織コントロールは、合金組成物を、(i)溶解あるいは1000℃及びそれ以上の温度で熱処理した後、急冷処理を施すか、又は(ii)おおよそ1000℃及びそれ以上の温度であり且つ少なくとも550〜650℃の温度領域での長時間の熱処理を施すことを含むものであってよい。
本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金における合金組織のうち、εHCP相組織が富化せしめられ、合金からのイオン溶出が抑制あるいは低減せしめられていることを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金を提供する。例えば、該合金は、Co−Cr−Mo合金の基本組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加されているものである。該合金は、合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことにより、εHCP相組織が富化せしめられたものを包含していてよい。さらに、該合金は、合金組成物を、(i)溶解あるいは1000℃及びそれ以上の温度で熱処理した後、急冷処理を施すか、又は(ii)おおよそ1000℃及びそれ以上の温度であり且つ少なくとも550〜650℃の温度領域での長時間の熱処理を施すことがなされて、εHCP相組織が富化せしめられたものを包含していてよい。本発明では、εHCP相組織が富化せしめられ、合金からのイオン溶出が抑制あるいは低減せしめられている生体用Co−Cr−Mo合金から製造されたことを特徴とする医療用デバイスをも提供している。こうしたデバイスは、上記と同様、該Co−Cr−Mo合金を、焼入れ、金属のガス霧化法、機械的合金法、溶湯急冷法、熱間押出し、熱間圧延、熱間線引き及び鍛造からなる群から選択された処理を加えて製造されたものであってよい。
Co−Cr−Mo合金やNiフリーステンレス鋼に生体毒性の少ない元素、例えば、Ti,Nb,Zr,Alなどを第4要素として添加することで、Niを固定化しNiイオンの溶出を抑制できる。これによりNiの実質的な無害化ができる。Niを意図的に添加しなくても、原料から混入されるNi不純物(100ppmオーダー)が存在するが、本発明はこのようなNiに対しても対処できる。さらに、Co−Cr−Mo合金の組織制御技術を駆使することで、イオン溶出速度が遅い結晶構造であるε相を積極的に活用して、生体内に埋入されたCo−Cr−Mo合金表面からのイオン溶出速度を低下させることにより、アレルギー発症を抑制する技術が提供される。かくして、生体毒性の少ない、すなわち、より安全な生体材料として、人工股関節、ステント材など様々な医療用デバイスに応用可能である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容は本明細書の開示に含めて解釈されるべきものである。
1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例1)のCo金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例1)のCr金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例1)のMo金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例1)のNi金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例1)の各添加元素の金属溶出の結果を示すものである。 Co−29Cr−6Mo−1Ni合金とCo−29Cr−6Mo−1Ni−0.05Zr合金について、それぞれの公称応力−公称ひずみ曲線を示す。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例3)のCo金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例3)のCr金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例3)のMo金属溶出の結果を示すものである。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例3)のNi金属溶出の結果を示すものである。 CoのHCP→FCC相変態温度に及ぼす添加元素(1at%当たり)の影響を示す。縦軸は添加元素の固溶限を示し、横軸は添加元素1.0%の添加によりHCP to FCC相変態における温度の変化を示す。出典:C.T.Sims,N.S.Stoloff&W.C.Hagel:SUPERALLOYSII,Wiley−Interscience(1987) (a)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Niの組成を有する合金、(b)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni−0.3wt%Nbの組成を有する合金及び(c)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni−0.1wt%Zrの組成を有する合金の光学顕微鏡組織写真を示す。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例4)の合金構成元素の金属溶出の結果を示すものである。 (a)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Niの組成を有する合金、(b)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni−0.05wt%Zrの組成を有する合金、(c)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni−0.1wt%Zrの組成を有する合金及び(d)Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni−0.3wt%Zrの組成を有する合金の光学顕微鏡組織写真を示す。 1%乳酸を使用しての金属溶出試験における各合金試料片(実施例5)の合金構成元素の金属溶出の結果を示すものである。
本発明において、「生体用Co−Cr−Mo合金」としては、実質的な割合のクロム(Cr)及びモリブデン(Mo)を含有するコバルト(Co)を基体としている合金であって、当該分野で「超合金(super alloy)」として知られている群に含まれるものが挙げられる。用語「超合金」とは、非常に高い強度、優れた機械的特性並びに耐食性を持っているものを一般的に表すのに使用されている技術用語であって、代表的な超合金は安定的なミクロな組織を備えていることが認められている。本生体用Co−Cr−Mo合金は、優れた生体適合性を有するものであり、高い降伏強度、優れた硬さなどを有している。該Co−Cr−Mo合金としては、ASTM(American Society for Testing and Materials;アメリカ材料試験協会)規格、例えば、ASTM F1537 94、ASTM F799、ASTM F75など、ISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)規格、例えば、ISO 5832−12などを挙げることができる。
ASTM F 1537 94規格の合金組成(重量%(wt%))は、次のようなものである:
Mo:5.0〜7.0wt%、Cr:26.0〜30.0wt%、C:≦0.35 wt%、
Ni:≦1.0wt%、Fe:≦0.75wt%、Mn:≦1.0wt%、
Si:≦1.0wt%、N:≦0.25wt%、そして
残部が、Coである。
ここで、Niは、原料に不可避的に混在していることに起因して、少なくとも0.2〜1.0wt%程度は、通常、含まれており、残部のCoとは、痕跡量で付随してくる不純物を除いたCo量を意味している。
該Co−Cr−Mo合金としては、Vitallium(商品名)が整形外科用製品として知られているが、その一般的な組成は次のようなものである:
Mo:おおよそ5.50wt%、Cr:おおよそ28.00wt%、
C:おおよそ0.25wt%、Mn:おおよそ0.70wt%、
Si:おおよそ0.75wt%、そして
残部が、Coである
ここで、Niは、原料に不可避的に混在していることに起因して、少なくとも0.002〜2.5wt%、通常、含まれており、残部のCoとは、痕跡量で付随してくる不純物を除いたCo量を意味している。
該Co−Cr−Mo合金は、数多くのものが報告されており、例えば、特開2002−363675公報(JP,A,2002−363675)、国際公開第97/00978号パンフレット(WO,A,97/00978)、米国特許第5,462,575号明細書(US,A,5462575)、米国特許第4,668,290号明細書(US,A,4668 290)などに開示のものあるいはそれらを修飾したもの、それから誘導されたものなどが含まれてもよい。例えば、特開2002−363675公報に開示されているように、Moの量が、≦12.0wt%程度まで増量されているものや10wt%程度まで増量されているものも含まれてよい。
一つの具体的な態様では、該Co−Cr−Mo合金は、Mo:おおよそ5.0〜6.0 wt%、Cr:おおよそ26.0〜28.0wt%、C:≦おおよそ0.07wt%、Ni:≦おおよそ1.0wt%、Fe:≦おおよそ0.75wt%、Mn:≦おおよそ1.0wt%、Si:≦おおよそ1.0wt%、N:≦おおよそ0.25wt%、そして残部が、Coである(ここで、Niは、原料に不可避的に混在していることに起因して、少なくとも0.002wt%程度、最低でも、50ppmのオーダーより多くが存在しており、残部のCoとは、痕跡量で付随してくる不純物を除いたCo量を示している)というものであってよい。
別の具体的な態様では、該Co−Cr−Mo合金は、Mo:おおよそ6.0〜12.0 wt%、Cr:おおよそ26.0〜30.0wt%、C:おおよそ0〜0.30wt%、そして残部が、Coである(ここで、Niは、原料に不可避的に混在していることに起因して、少なくとも0.02wt%程度、最低でも、50ppmのオーダーより多くが存在しており、残部のCoとは、痕跡量で付随してくる不純物を除いたCo量を示している)というものであってよい。
該合金として不可避的にNiを含有することになるものは、本発明の技術を適用できる。市販されているNi不含の(Ni−free)Co−Cr−Mo合金やNiフリーステンレス鋼というものも、実際上、極めて微量あるいは痕跡量のNiが含まれており、ある場合には、1wt%までのNiが含まれていたり、あるいは、0.5wt%までのNiが含まれていたり、さらに例えば、少なくとも100ppmオーダーのNiが含有されているが、本発明の技術はそうしたものに適用されて有用である。典型的には、数100ppmオーダーのNiが不可避的に混在する合金あるいはそれ以下の量でNiが混在する合金に適用されて有用である。
本発明では、上記Co−Cr−Mo合金(あるいはNiフリーステンレス鋼)を構成する組成を与える原料に、2元状態図上で、Niと化合物を形成する元素であって、さらに生体毒性が少ない元素を添加し、得られた当該合金用配合物を通常の合金調製法に付してそれを行うことができる。添加元素としては、Niと結合する性質の強い元素から選択することができる。Niと結合する元素は、水素吸蔵合金(化合物)で各種のものが知られており、本発明でもそうしたことの知られている元素などからそれを選択して使用してよい。添加元素としては、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、マグネシウム(Mg)からなる群から選択された元素または化合物を添加する。添加方法としては、溶湯に存在する酸素を通常行われている脱酸処理を施してから行うことが望ましい。これは、溶湯中の酸素濃度が高すぎると、添加する元素、すなわち周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、マグネシウム(Mg)からなる群から選択された元素または化合物が、Niと結合する前に、溶湯中に固溶する酸素と反応して酸化物となることを防止するためである。これらの添加元素は単独で添加して用いることも、数種組み合わせて用いることもでき、さらに複合せしめて添加せしめることもできる。より好ましくは、元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素を添加する。代表的には、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr)などが挙げられ、特に、Zrは好ましい添加元素である。
添加元素の合金組成における配合量は、合金に含有されるNiの含有量に応じて増減することができ、所要の目的が得られ且つ得られる合金の特性に実質的に悪影響を及ぼさない範囲でその配合量を設定できる。例えば、合金中に1wt%のNiが存在する場合では、0.05wt%のZrの添加で実質的に生体内でのNiの溶出を完全に抑制できる一方で、合金の機械的特性についてはそれが低下するといった影響はない。
本発明では、該添加元素として、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などからそれを選択してもよい。ランタノイド元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。ミッシュメタルとは、希土類金属の化合物を指しているが、希土類金属の元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Yb)、La、Ce、Pr、Ndなどのランタノイド元素、アクチノイド元素(例えば、アクチニウム(Ac)、トリウム(Th)など)などが挙げられる。
合金組成における添加元素の配合割合は、合金中1wt%のNiに対して、
0.0001〜10.0wt%、好ましくは、0.001〜5.0wt%、より好ましくは、0.01〜2.0wt%で、ある場合には0.001〜1.0wt%、より好ましくは、0.01〜0.5wt%であるが、これには限定されず、所要の目的が得られ且つ得られる合金の特性に実質的に悪影響を及ぼさない範囲でその配合量を変えることができる。代表的な場合、合金組成における添加元素の配合割合は、合金中1wt%のNiに対して、例えば、Zrでは0.0001〜1.0wt%、好ましくは、0.001〜0.5 wt%、より好ましくは、0.01〜0.1wt%で、Tiでは0.001〜5.0wt%、好ましくは、0.01〜1.0wt%、より好ましくは、0.1〜0.5wt%で、Alでは0.001〜5.0wt%、好ましくは、0.01〜1.5wt%、より好ましくは、0.1〜0.8wt%で、Nbでは0.001〜5.0wt%、好ましくは、0.01〜1.5wt%、より好ましくは、0.1〜0.8wt%であるが、これには限定されず、所要の目的が得られ且つ得られる合金の特性に実質的に悪影響を及ぼさない範囲でその配合量を変えることができる。
本発明では、無毒化用添加元素を加えた合金原料はそれを一緒にし、必要に応じて、混合後、加熱して溶融せしめ、溶融合金とする。溶融化は、真空誘導溶融法(vacuum induction melting;VIM)のほか、さまざまな公知の方法を適用できる。溶融処理工程の間、VIM炉にはアルゴンガスなどの不活性ガスの分圧をかけておくこともできる。また、別の手法としては、VIM炉に不活性ガスや窒素ガスを含有している被覆用ガスを流しておくこともできる。当該不活性ガスや被覆用ガスの存在下、溶融された合金は、適宜、所定の組成が得られる所定の温度にまで加熱されたり、あるいは所定の温度で保持される。次に、溶融している合金は、インゴットあるいは所要の形状物体に鋳造することができ、そのまま冷却せしめてもよいし、必要に応じて、焼入れすることができる。焼入れ法としては、水焼入れ、氷水での焼入れ、油焼入れ、熱浴焼入れ、塩浴焼入れ、電解焼入れ、真空焼入れ、空気焼入れ、噴射焼入れ、噴霧焼入れ、段階焼入れ、時間焼入れ、プレスクエンチ、部分焼入れ、鍛造焼入れなどが挙げられるが、適宜、それぞれに適したものが適用される。代表的な場合では、水焼入れ、氷水での焼入れが挙げられる。インゴットは、熱間押出し、熱間圧延、熱間線引き等を行うことにより所望の形状に加工することもできる。
さらに、合金溶融物は、溶湯急冷法により、薄帯、細線などの所望の形状にすることができる。該溶湯急冷法には、液体紡糸法、回転液中紡糸法、キャベッシュ法、双ロール法、片ロール法などが含まれてよい。溶湯急冷法では、一般的には、冷却されている金属ロールあるいは冷媒流体中に溶融金属を噴出せしめてこの溶融金属を凝固させる。該冷却されている金属ロールは、通常、高速で回転せしめられている。該冷媒流体としては、各種のものを使用でき、所望の結果が得られる限り限定されないが、例えば、シリコーンオイル類を含む流体を使用できる。該シリコーンオイル類としては、例えば、東芝シリコーン社製ポリジメチルシロキサンTSF451−30やTSF440が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらのシリコーンオイル類は単独で用いることも、数種組み合わせて用いることもできる。また、通常のシリコーンオイル類に含まれる低沸点溶媒あるいは溶解した空気などのガスを除くために、使用するシリコーンオイル類をあらかじめ減圧下で加熱してそれらを除去しておくことが好ましい場合もある。また、溶融金属をシリコーンオイル類中で急冷凝固して直接金属細線を作製するためには溶融金属ジェット流に加わる擾乱をできるだけ抑えることが好ましい。このため、溶融金属ジェットとシリコーンオイル類の間には微妙なバランスを取ることが望ましい。具体的には、溶融金属ジェットとシリコーンオイル類の速度差、粘度の違い、表面張力の違いなど制御することが望まれる。特に、本発明においてはシリコーンオイル類の粘度を規定することは有効である。
回転液中紡糸法とは、一般的には、回転するドラムの内側に遠心力により液層を形成し、溶融金属あるいは溶融合金をノズル孔より噴出して、液層中にて凝固させ金属細線を製造する方法で、例えば、冷媒として水を用いて、合金を溶融状態から回転する水冷媒中に噴出して金属細線を得るといった技術である。キャベッシュ法とは、例えば、特開昭49−135820号公報(JP,A,49−135820(December 27,1974))に記載されているような手法で、溶融物を溶融フィラメント状に押出し、制御されたガス状界面領域を経て液状急冷領域へ通すもので、該液状急冷領域ではフィラメントと液状媒体とが並流しているといった技術であり、そこで用いる冷媒としては、流体の媒体であって、純粋な液体、溶液、エマルジョン、または固液分散物であることができ、該流体の媒体は、溶融物と反応して安定化表面スキンを形成でき、あるいは溶融噴出物と化学的に非反応性であることができるもので、さらに急冷媒体の選択にあたっては、溶融噴出物の熱容量に関係して行なわれ、溶融噴出物の熱容量が大きくなればなるほど、急冷流体をより冷たく及び/又はその比熱、密度、蒸発熱、および熱伝導率をより高いものとするのが好ましいとされる。さらには、流体の急冷媒体の他の好ましい性質は、一般的には、溶融噴出物の分裂を最小にする低粘度、非粘性、非毒性、光学的透明度を有するもので、低価格のものである。また、実際には、水、−20℃の23重量%の塩化ナトリウム水溶液、−33℃の21.6重量%の塩化マグネシウム水溶液、−62℃の51重量%の塩化亜鉛水溶液の流体がそれぞれ好ましいことが、さらに0〜100℃で50センチストークス粘度級のダウ・コーニング510流体のようなシリコーン急冷流体などを用いることができる。
また、冷却された合金は、適宜、それを加工せしめることができる。例えば、溶湯急冷法などにより得られた、薄帯、細線などは、必要に応じて整形するなどし、それを医療用デバイスにすることができる。また該合金は、偏析などを取り除くなどのため、さらに均質化熱処理にかけることができる。均質化熱処理は、熱処理と焼入れ処理とからなるものであることができる。熱処理は、当該分野で公知の方法から選んでそれを適用でき、例えば、電気炉などを使用したりすることができる。代表的な場合、減圧あるいは真空下に加熱されることができる。典型的な場合では、例えば、5〜30時間、好ましくは8〜24時間、より好ましくは10〜20時間加熱する。一つの具体例では、12〜15時間加熱する。加熱温度としては、例えば、1400℃以下、代表的には900〜1350℃、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1050〜1250℃であるが、所要の目的が達成されるならばこれらに限定されるものではない。一つの具体例では、1100〜1200℃である。均質化熱処理では、上記加熱処理の後、焼入れすることができる。焼入れ法については上記と同様である。
かくして、本発明では、生体用Co−Cr−Mo合金(あるいはNiフリーステンレス鋼)のNi微量不純物によるアレルギー毒性などの生体毒性が、当該添加元素配合により無害化される。
よって、本発明では生体用Co−Cr−Mo合金(あるいはNiフリーステンレス鋼)のニッケル毒性の無毒化法が提供されると共に、Niの生体毒性が無毒化されているCo−Cr−Mo合金(あるいはNiフリーステンレス鋼合金)並びに該合金より製造される生体用材料及び人工補綴材も提供できる。
本発明のCo−Cr−Mo合金においては、熱履歴を調整することにより、内部欠陥を解消せしめてあるものを得ることも可能である。該熱履歴調整処理は、鍛造合金に生じているヒケ巣、気泡などは、鍛造で圧潰され、デンドライト組織も破壊され、後続する再結晶焼き鈍しにより均一な組織としようとするものである。組織調整では、水冷式の銅製鋳型を用いて急冷鋳造することにより析出物の成長を抑えることが期待できる。高温鍛造等の塑性加工により、析出物、金属間化合物等の第二相を微細分散させることが期待できる。鋳造時の急冷が析出物の成長抑制に及ぼす影響は、鋳込み温度から400℃までの温度域を1000℃/分以上の冷却速度で冷却するとき顕著になる。また、高温鍛造により、デンドライト等の鋳造組織が破壊され、50μm以下に微細化された等軸結晶粒からなるマトリックスが形成される。マトリックスの微細化は、耐磨耗性の向上にも有効である。
本発明では、熱処理方法及び加工温度の選定によってσ相の生成を防止することも可能である。具体的には、本発明系において高温鍛造温度を1100〜1400℃の範囲に設定することができる。高温鍛造した当該合金を室温に持ち来たす場合にも、水冷等の急冷を採用することによってσ相が防止され、第二相が成長することなく粒状の析出物又は晶出物としてマトリックスに微細分散することができる。
本発明の合金は、特開昭62−80245公報(JP,A,62−80245(April 13,1987))に開示されているような金属のガス霧化法(gas atomization)に付したり、米国特許第3,591,362号明細書(US,A,3591362)に開示されている機械的合金法(mechanical alloying)を利用している特開平5−1345公報(JP,A,5−1345(January 8,1993))に開示されている技術を適用して医療用デバイスに適した形態の合金にすることも可能である。例えば、本発明のNi無毒化用添加元素を含んだ合金を、ガス霧化法で粉末状にして製造せしめ、得られる粉末を熱的機械的処理により圧縮せしめて、固体合金とし、必要に応じて、鍛造処理して加工して人工補綴材を製造できる。該熱的機械的処理としては、熱間押出し、熱間圧延、熱間プレスなどが包含されてよい。鍛造された合金は、冷間圧延、機械加工などされることもできる。製品は、次に、機械加工されて、滑らかな表面に仕上げることができ、また必要に応じて、該滑らかな表面を処理して多孔質被覆を施すこともできる。
本発明のニッケル毒性が無毒化されたCo−Cr−Mo合金より生体用材料及び人工補綴材などの医療用デバイスを製造できる。該医療用デバイスとしては、ブリッジ、歯根などの歯科材料、人工骨材といった補綴材料、外科用インプラントなど、さらに生体適合性インプラント、関節用インプラント、医療用人工インプラントなどが含まれる。インプラント材などとしては、人工の腰、人工の膝、人工の肩、人工の足首、人工の肘、その他の人工の関節インプラントなどが挙げられる。本発明の合金を使用して、骨折部位を固定したりするための部材を製造することもできる。該部材としては、クギ、ネジクギ、ナット、ネジ、プレート、針、鈎針、鈎、受具、埋込み土台などが含まれる。
本発明の合金中Niによる生体毒性の無毒化技術は、ニッケルフリーステンレス鋼合金又は単にニッケルフリーステンレス鋼(Ni−free stainless steel, Ni−free stainless steel alloy)にも応用することができて有用である。特に、フェライト系ステンレス鋼にニッケルの代わりに窒素を添加することで力学的強度と耐食性を飛躍的に向上させたオーステナイト系ニッケルフリーステンレス鋼があるが、そうしたニッケルフリーステンレス鋼に適用できる。代表的なニッケルフリーステンレス鋼合金としては、例えば、R.C. Gebeau and R.S. Brown: Adv. Mater. Process.,159(2001)46−48などに開示のものが挙げられ、代表的な合金組成としては次のようなものである:
Cr:19.0〜23.0wt%、Mn:21.0〜24.0wt%、Mo:0.5〜1.5wt%、
:19.0〜23.0wt%、そして
残部が、Feである
ここで、Niは、原料に不可避的に混在していることに起因して、少なくとも100ppmオーダー〜1.0wt%程度は、通常、含まれており、残部のFeとは、痕跡量で付随してくる不純物を除いたFe量を意味している。
本ニッケルフリーステンレス鋼合金についても、上記Co−Cr−Mo合金に準じて上記で説明したことが適用できる(但し、上記Co−Cr−Mo合金とは融点が違うことなどを考慮して、処理温度などを変更することは当業者にとっては明らかなことである)。なお、ニッケルフリーステンレス鋼合金は、窒素を添加する前に加工を施してから窒素を吸収せしめて所要の材料・製品にすることができる。例えば、成形品を加熱した熱処理炉内で窒素ガスと接触させることで、1重量%程度の窒素を成形品に吸収させオーステナイト化することが知られている。
本発明では、生体用Co−Cr−Mo合金、例えば、Co−29Cr−6Mo合金に出現するγ相とε相のイオン溶出挙動の詳細な検討から、γ相に比べてε相のイオン溶出速度が著しく遅いことに基づいている生体環境でのイオン溶出抑制技術が提供される。これまで、出現する結晶構造の違いによってイオン溶出速度が異なることを見出した例は無く、本発明において始めて明らかにされた知見である。かくして、本発明では、Co−Cr−Mo合金、例えば、Co−29Cr−6Mo合金の組織制御技術を駆使することで、イオン溶出速度が遅い結晶構造であるε相を積極的に活用して、生体内に埋入されたCo−Cr−Mo合金、例えば、Co−29Cr−6Mo表面からのイオン溶出速度を低下させることにより、アレルギー発症を抑制する技術が提供される。
生体用Co−Cr−Mo合金として実績のあるASTM F75合金の基本組成はCo−29Cr−6Mo(もちろん、各元素は、上記したような一定の許容範囲を有するものであることには留意されるべきである)であるが、これに最大で、0.35%のCと1%のNiが含まれている。Co−29Cr−6Mo合金の微細組織は、FCC相(face−centered cubic phase)と炭化物相からなる。または、FCC相(γ相)と炭化物相に加えて少量のHCP相(ε相)が含まれるものが一般的であった。HCP相(close−packed hexagonal phase)は、溶解あるいは1000℃以上の高温で熱処理を施した後に、急冷処理を施すことで形成されるε相(εマルテンサイト相)である。または、およそ1,000℃以下で600℃程度の温度領域で長時間熱処理を施すことで拡散変態により析出するε相である(マッシブε相)。
本発明では、生体用Co−Cr−Mo合金として知られているものであれば制限なく所定の組織制御技術・イオン溶出制御技術を適用できると考えてよく、例えば、上記したCo−Cr−Mo合金にそれを適用できる。さらに、Co−Cr−Mo合金としては、例えば、次のようなものも包含される:
Cr:25.0〜31.0wt%、好ましくは26.0〜30.0wt%、より好ましくは28.0〜29.5wt%、
Mo:4.0〜8.0wt%、好ましくは5.0〜7.0wt%、より好ましくは5.5〜6.5wt%、そして
残部が、Coである
ここで、Niは、原料に不可避的に混在していることに起因して、少なくとも0.2〜1.0wt%程度は、通常、含まれており、残部のCoとは、痕跡量で付随してくる不純物を除いたCo量を意味しているし、さらに不可避的にC,Fe,Si,N,その他の微量元素が含まれていてよい。
これまでのASTM F75合金では、炭化物を形成させることを目的として炭素を最大で0.35%含有させている。また、微量の不純物として最大で1%のニッケルの含有が許容されている。これらの元素は、Co−Cr−Mo合金の積層欠陥エネルギーを上昇させる効果を有することから、γ相が安定化し、得られる構成相は、γ相と炭化物相である。場合によっては、γ相と炭化物相に加えて、溶解あるいは1000℃以上の高温で熱処理を施した後に、急冷処理を施すことで形成されるε相(マルテンサイト相)が、少量含まれることがある。
これに対し、本発明では、γ相を析出させない程度に炭素添加量を制御し、ε相の析出割合を高めている。これによりイオン溶出速度を低下させることが可能である。また、1,000℃程度よりも低い温度から600℃程度の温度領域に保持することによりマッシブε相を析出させることによってもイオン溶出速度を低下させることが可能である。
本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金において、合金組織を制御・調整して、εHCP相組織を富化せしめることにより、生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法を提供している。該生体用Co−Cr−Mo合金における合金組織の制御調整は、(1)合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加すること及び/又は(2)適切な熱処理を施すことで達成できる。ある態様では、該添加元素は、Mg,Al,Ti,Zr及びNbからなる群から選択されたものである。また、本発明では、合金組織制御調整の目的で、元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素を添加元素として使用することを含んでいてよい。該添加元素は、ジルコニウム及びチタンからなる群から選択されたものであってよい。より好ましくは、該添加元素は、ジルコニウムである。添加量は、上記したように所望の効果が得られるように調整できるし、上記したような範囲からも選択できる。該Co−Cr−Mo合金の組織コントロールは、合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことを含むものであってよい。また、該Co−Cr−Mo合金の組織コントロールは、合金組成物を、(i)溶解あるいは1000℃及びそれ以上の温度で熱処理した後、急冷処理を施すか、又は(ii)おおよそ1000℃及びそれ以上の温度であり且つ少なくとも550〜650℃の温度領域での長時間の熱処理を施すことを含むものであってよい。また、本発明での合金からのイオン溶出が抑制あるいは低減とは、現在市販のもの、あるいは公称組成の合金、例えば、Co−29Cr−6Mo合金の場合より、本明細書に従った試験によりイオン溶出量が少なくなっていることを意味してよく、減少の程度は、個々のイオンにおいて減少している場合、全イオンにおいて減少している場合、より生体毒性の問題となっているイオンにおいて減少している場合などを意味してよい。
本発明は、生体用Co−Cr−Mo合金における合金組織のうち、εHCP相組織が富化せしめられ、合金からのイオン溶出が抑制あるいは低減せしめられている新規なCo−Cr−Mo合金を提供する。例えば、該合金は、Co−Cr−Mo合金の基本組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加されているものである。該合金は、合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことにより、εHCP相組織が富化せしめられたものを包含していてよい。さらに、該合金は、合金組成物を、(i)溶解あるいは1000℃及びそれ以上の温度で熱処理した後、急冷処理を施すか、又は(ii)おおよそ1000℃及びそれ以上の温度であり且つ少なくとも550〜650℃の温度領域での長時間の熱処理を施すことがなされて、εHCP相組織が富化せしめられたものを包含していてよい。本発明では、εHCP相組織が富化せしめられ、合金からのイオン溶出が抑制あるいは低減せしめられている生体用Co−Cr−Mo合金から製造されたことを特徴とする医療用デバイスをも提供している。こうしたデバイスは、上記と同様、該Co−Cr−Mo合金を、焼入れ、金属のガス霧化法、機械的合金法、溶湯急冷法、熱間押出し、熱間圧延、熱間線引き及び鍛造からなる群から選択された処理を加えて製造されたものであってよい。
本発明で組織制御されて得られた合金(Co−Cr−Mo合金、例えば、Co−29Cr−6Mo合金)(添加元素をコントロールして、組織制御されている場合も含む)は、生体毒性の少ない、すなわち、より安全な生体材料として、人工股関節、ステント材など様々な医療用デバイスに応用可能である。本組織制御型合金に対しても、上記「ニッケル毒性が無毒化されたCo−Cr−Mo合金」に関して説明した技術・加工法・用途などが、同様に、それに適用できることは理解されなければならない。
本明細書において、「元素周期表」とは、1989年に国際純正応用化学連合会(International Union of Pure Applied Chemistry:IUPAC)の無機化学命名法の改訂にともない採用された表記方法に従ったものを指す。
元素周期表第4族の元素としては、Ti,Zr,Hfなどである。元素周期表第5族の元素としては、V,Nb,Taなどである。元素周期表第13族の元素としては、B,Al,Ga,In,Tlなどである。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
実施例1
(微量Niを固定化する添加元素Xの探索)
2元状態図上で、Niと化合物を形成する元素であって、さらに生体毒性が少ない元素を探索した。その結果、候補添加元素Xとして、アルミニウム(Al),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ニオブ(Nb)を選択した。
(試料組成及び試料溶解)
試料組成は以下の通りである。
Co:Balance,Cr:29wt%,Mo:6wt%,Ni:1wt%をコントロールとして、これにAl:0.5wt%,Ti:0.3wt%,Zr:0.05wt%, Nb:0.5wt%をそれぞれ添加した。本試料組成においては、Niの溶出量を比較しやすくするために、あえてNiを1wt%含有せしめた。溶解は高周波真空誘導溶解炉を用いて行った。溶湯を真空に保持した状態で炭素を添加して十分な脱酸処理を施した後で、添加元素Xを添加した。
(試験試料)
試験用合金試料は溶湯鍛造装置によって作製した。
作製した試料をワイヤーカット放電加工機で10×30×1mmのサイズに加工し、偏析を完全除去するために均質化熱処理(1150℃、12時間→水焼入れ(water quenching:W.Q.))を施した。また、試験片は蒸留水でSiC 1000番まで研磨を行い、その後アセトン、蒸留水中で各5分間超音波洗浄によって十分に洗浄した後、大気皮膜を形成させるため大気中に24時間以上放置した。
(試験方法)
合金試料の試験片につき、各金属溶出量をより明らかにし、また比較しやすいようにするために、試験溶液には加速試験用として(1+99)乳酸(1%乳酸水溶液)を用いた。
試験容器に試験片2枚を重ならないように入れ、完全に試験溶液に浸るようにする。また試験溶液の液量は30mlとした。試料を入れない試験溶液だけで同様に試験する(空試験)。溶出条件は、静置条件を基本として、溶液温度:37±1℃、試験期間:7日間とする。
(試験溶液の濃度測定)
試験終了後に試験片を取り出し、(1+99)硝酸(1%硝酸水溶液)で試験片、容器内の洗浄を行い、それを濾過せしめ、分析溶液を一定(100ml)にする。そして、ICP発光分光分析法により、金属濃度を測定し、以下の式を用いて各金属溶出量を求めた。
=L(IC−IB)/S
ここで、W:i元素の単位面積当たりの溶出量(g/cm
IC:溶出試験後の溶出中のi元素の濃度(g/ml)
IB:空試験溶液中のi元素の濃度の平均値(g/ml)
L:溶出試験溶液の全量(ml)
S:試験片全体の表面積(cm
とする。
(試験結果)
金属溶出について試験した結果を図1〜5に示す。
図1に1%乳酸中におけるCo金属溶出量を示す。添加元素の含まれていないNiをコントロールとすると、Al,Nbを添加した合金では、コントロール材とほぼ同量のCo金属溶出量を示した。それに比べて、Ti,Zrを添加した合金では、コントロール材からのCo金属溶出量の1/5程度の溶出量であった。
図2に1%乳酸中におけるCr金属溶出量を示す。Ti,Zrを添加した合金からの溶出量は、コントロール材からのCr金属溶出量と同量であった。Al,Nbを添加した合金からのCr金属溶出量は、コントロール材より3倍以上の溶出量を示した。
図3に1%乳酸中におけるMo金属溶出量を示す。どの添加元素の合金試料でも、コントロール材の溶出量より少ない溶出量を示した。Al,Nb添加合金では、Mo金属の溶出量はわずかに少なく、Ti,Zr添加合金では、コントロール材よりも1/10以下のMo金属溶出量であった。
図4に1%乳酸中におけるNi金属溶出量を示す。Al,Nb添加合金でのNi溶出量は、コントロール材とほぼ同量であった。Ti添加合金では、コントロール材のNi溶出量よりも1/4以下であり、さらに、Zr添加合金では、全くNiの溶出がなかった。
図5に1%乳酸中における各添加元素の金属溶出量を示す。Alの溶出が非常に多い溶出量を示した。これに対して、Ti,Zrの溶出量は非常に少なく、Nbに至っては溶出が全くなかった。
(溶出試験まとめ)
Co−29Cr−6Mo−1Niに0.5Al,0.5Nb添加せしめた合金は、Ni金属の溶出に対して抑制の効果は見られなかった。Co−29Cr−6Mo−1Niに0.3Ti,0.05Zr添加せしめた合金に関しては、Ni金属の溶出に対して抑制の効果が認められるばかりでなく、Ni以外のCo,Moに対しても溶出抑制の効果が見られた。特に0.05Zr添加合金では、Niの溶出は見られなかった。
これにより、Niの溶出抑制、つまりは、Niの固定化は、微量なTi,Zrの添加によって可能であることが明らかである。
(引張試験結果)
Zr微量添加合金で、金属の溶出が最も抑制されていた。しかし、微量添加による機械的特性への影響は明らかになっていない。そこで、Zrを微量添加した合金とコントロール材の機械的特性を比較した。
図6にCo−29Cr−6Mo−1Ni合金とCo−29Cr−6Mo−1Ni−0.05Zr合金の公称応力−公称ひずみ曲線を示す。コントロール材の破断応力は807MPaであり、Zr添加合金は1011MPaであって、コントロール材より高い値を示した。また降伏応力、塑性伸びに関しても、コントロール材の値はそれぞれ335MPa、16.5%であるのに対し、Zr添加合金ではそれらの値はそれぞれ420MPa、23.0%であり、Zrを微量添加することで機械的特性は大きく向上せしめられることがわかった。これにより、Zrを微量添加した合金の機械的特性についてはそれが低下するといった影響はないと考えられる。
実施例2
試料組成は以下の通りである。
Co:Balance,Cr:29wt%,Mo:6wt%,Ni:1wt%をコントロールとして、これにランタノイド元素、すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタル、すなわち、La−Ceミッシュメタルをそれぞれ添加する。実施例1と同様、本試料組成においては、Niの溶出量を比較しやすくするために、あえてNiを1wt%含有せしめる。実施例1と同様に処理してNiの溶出抑制、つまりは、Niの固定化についての効果を確認することができる。実施例1で観察されるNi固定の原理は、Niと結合する性質の強い元素を添加することにある。ところで、Niと結合する元素を探してみると、多くは、水素吸蔵合金(化合物)にあることが認められ、よって、ランタン系元素に関しても、Niと化合物を作る水素吸蔵合金があることから、Zr添加と同様な効果が期待できる。同様に、Niフリーステンレス鋼合金についても、例えば、Fe−(19−23)Cr−(21−24)Mn−(0.5−1.5)Mo−(0.85−1.1)Nの組成に、Niが入っているものについて実施例1と同様の操作を行い、Niの溶出抑制、つまりは、Niの固定化についての効果を確認することができる。
同様なコントロール合金の試料組成をもつものにつき、MgO坩堝を使用して、合金試料を調製する。溶湯温度を1600℃以上に保持すると溶湯とMgO坩堝が反応してMgが溶け出す。この溶け出したMgとNiが結びついてNiが固定される。ないしは、Mg とNiが結びついたものが、比重の関係で溶湯表面に浮いてきて、スラグとして除去されて、脱Niが起きる。上記の結果は、通常のアルミナ坩堝を使用して、溶湯中にMgを添加することによっても得ることが可能であることを示している。
実施例3
試料組成は以下の通りである。
Co:Balance,Cr:29wt%,Mo:6wt%,Ni:1wt%とし、実施例1と同様、本試料組成においては、Niの溶出量を比較しやすくするために、あえてNiを1wt%含有せしめる。これをアルミナ(Al)坩堝及びマグネシア(MgO)坩堝により鋳造して試料を作製した。鋳造方法は溶湯温度を一旦1600℃〜1650℃以上に暫く保持した後、真空のまま溶湯に炭素を添加し、溶湯中の溶け込む酸素を除去してから1400〜1450℃に溶湯温度を下げ、暫く保持した後、型に鋳込んだ。作製した試料を実施例1と同様な処理をして溶出試験を行った。
(試験結果)
金属溶出についての試験結果を図7〜10に示す。また実施例1で用いたCo−29Cr−6Mo−1Ni合金をcontrolとし、Al坩堝で作製した合金をSample A,MgO坩堝で作製した合金をSample Bとする。
図7に1%乳酸中におけるCo金属溶出量を示す。Sample A,Sample B両合金ともcontrolとほぼ同量なCo金属溶出量を示した。
図8に1%乳酸中におけるCr金属溶出量を示す。Sample Aはcontrolよりもわずかに多い溶出量を示し、Sample Bはcontrolよりもわずかに少ない溶出量であったが同等レベルである。
図9に1%乳酸中におけるMo金属溶出量を示す。Moの金属溶出量はSample A,Sample B両合金ともにcontrolの金属溶出量の約1/2の値を示した。
図10に1%乳酸中におけるNi金属溶出量を示す。Niの金属溶出量はSample A,Sample B両合金ともcontrolよりも少ない値を示した。Sample B,Sample Aの順に抑制の効果が得られた。
(まとめ)
Al坩堝,MgO坩堝を使用して、溶湯温度を1600℃以上に保持すると溶湯と坩堝が反応して、AlやMgが溶け出す。この溶け出したAl及びMgとNiが結びついてNiが固定化される。ないしはAl及びMgとNiが結びついたものが、比重の差で溶湯表面に浮き、スラグとして除去されて脱Niが起きた結果溶出量が低減したものと推察される。
試験結果よりNiの溶出量の低減効果の確認はできたが、実施例1のZr添加合金ほどの効果は得られなかった。しかし鋳造後、適切な熱処理・加工などを施すことにより十分なNi溶出抑制の効果が得られた。
実施例4
Co−Cr−Mo合金に積層欠陥エネルギーを増加させる元素を添加して、合金組織のγ相を安定化させ、得られた合金からのイオン溶出量の変化を調べる。
(方法)
図11は、CoのHCP→FCC相変態温度(Ms)に及ぼす添加元素の影響について示している(C.T.Sims,N.S.Stoloff&W.C.Hagel:SUPERALLOYSII,Wiley−Interscience(1987)(ISBN:0471011479))。縦軸は添加元素の固溶限を示し、横軸は添加元素1%あたりのMsの変化する温度を示す。0からマイナスの温度が高いほど(図11では、より左側ほど)、Coの積層欠陥エネルギーを増加させ、FCC結晶を安定化する効果を有する(左側)。逆に、ゼロからプラスに温度が高くなるほど(図11ではより右側ほど)、Coの積層欠陥エネルギーを減少させ、HCP結晶が安定化する(右側)。
この図11より、γ相を安定化させる元素として、NbとZrを選び、Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni合金(公称組成:Co:Balance,Cr:29 wt%,Mo:6wt%,Ni:1wt%を比較材として、「無添加材」と呼ぶ。Niは、1wt%をあえて添加してある」にNbを0.3wt%、Zrを0.1wt%を添加した合金を、アルゴンアーク溶解炉を用いて溶製した。1150℃で12時間保持した後、水焼入れした合金の組織を図12に示す。組織観察は、試験片をAl粒子0.3μmで鏡面仕上げした後、硫酸メタノールで電解研磨したものを、光学顕微鏡で観察した(なお、組織観察は、他でも、同様にして行った)。
図12(a)に示される無添加材の光学顕微鏡組織ではγ相に対応する平坦な組織の他に、εマルテンサイト相に対応する微細な直線的な組織(ストライエーション)が多数観察される。一方、図12(b)および(c)に示される、NbおよびZr添加材においては、ほとんどγ相の平坦組織に変っている。このことより、NbとZrの添加はγ相を安定化することが確認された。
次に、以下の方法で、イオン溶出試験を実施した。
(試料作成)
Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni合金に0.3wt%の量のNbあるいは0.1wt%の量のZrを添加した合金を、アルゴンアーク溶解炉を用いて溶製した。1150℃で12時間保持して水焼入れした合金の試験片を蒸留水でSiC 1000番まで研磨し、その後、アセトン、蒸留水中で各5min超音波洗浄によって十分に洗浄した後、大気皮膜を形成させるため大気中に24h以上放置した。
(溶出試験方法)
実施例1と同様、合金試料の試験片につき、各金属溶出量をより明らかにし、また比較しやすいようにするために、試験溶液には加速試験用として(1+99)乳酸を用いた。試験容器に試験片2枚を重ならないように入れ、完全に試験溶液に浸るようにする。また試験溶液の液量は30mlとした。試料を入れない試験溶液だけでも、同様に試験(空試験)する。
溶出条件は、静置条件を基本として、溶液温度:37±1℃、試験期間:7daysとする。
(試験溶液の濃度測定)
実施例1と同様、試験終了後に試験片を取り出し、(1+99)硝酸で試験片、容器内の洗浄を行い、それを濾過せしめ、分析溶液を一定量(100ml)にする。そしてICP発光分光分析法により、金属濃度を測定し、以下の式を用いて各金属溶出量を求めた。
=L(IC−IB)/S
ここで、W:i元素の単位面積当たりの溶出量(g/cm
IC:溶出試験後の溶出中のi元素の濃度(g/ml)
IB:空試験溶液中のi元素の濃度の平均値(g/ml)
L:溶出試験溶液の全量(ml)
S:試験片全体の表面積(cm
とする。
(試験結果)
イオン溶出実験結果を図13に示す。γ相の割合の多いNbおよびZr添加材ではその全元素溶出量は、γ相以外にε相の析出割合が多い無添加材より大きい値を示した。ただ、Zr添加材ではNiイオンの溶出量が減少する傾向が認められた。
実施例5
積層欠陥エネルギーを増加させる元素であるZrのCo−Cr−Mo合金に対する添加量を0.05wt%から0.3wt%まで増加させ、γ相を安定化の程度を変化させる。このときのイオン溶出量の変化を調べる。
(方法)
Co−29wt%Cr−6wt%Mo−1wt%Ni合金にZrを0.05、0.1、および0.3wt%添加した合金を、アルゴンアーク溶解炉を用いて溶製した。1150℃で12時間保持して水焼入れした合金の組織を、図14に示す。
図14(a)に示される無添加材の光学顕微鏡組織ではγ相に対応する平坦な組織の他に、εマルテンサイト相に対応する微細な直線的な組織(ストライエーション)が多数観察される。一方、図14(b)の0.05wt%の添加では、無添加材に比べてストライエーションの面積分率が高くなっている。これは、Zrの添加量が微量であったために、Niなどの微量元素と化合物を形成して消費されたためと考えられる。このため、Zr無添加に比べて積層欠陥エネルギーが若干減少したためと考えられる。これ以上多く添加すると積層欠陥エネルギーは上昇すると考えられる。図14(c)およびd)では、Zr添加量が0.1、0.3wt%と増加せしめてある。それに対応して、ストライエーションの面積分率が減少している。X回折実験の結果より、γ相の割合が増加することが明らかになった。
(結果)
次に、実施例4と同様な方法で、イオン溶出試験を実施した。
各試験材について、イオン溶出実験結果を図5に示す。Zrを0.05%添加した合金では、ε相の割合が多いために、無添加合金に比べてイオン溶出量が少ない。Zrを0.1、0.3%添加することで、積層欠陥エネルギーが上昇し、γ相が安定化する。これに対応してイオンの溶出量が増加している。
以上、実施例4および5の結果をまとめると、γFCC組織よりεHCP組織を析出させることで金属溶出を抑制させることが可能となることが分かった。
本発明により、ジルコニウムなどの添加元素を加えることでニッケルに伴う生体毒性の発現を抑制あるいは阻止しながら、優れた耐食性,耐磨耗性,生体適合性を有しているCo−Cr−Mo合金並びにNiフリーステンレス鋼が提供できる。本発明では、安価で且つ簡単な手法でニッケルの生体毒性の無毒化が図れるので、得られた合金はコスト的に優れており、広範な実用用途、例えば、生体適合材料や医療用デバイスを製造するのに応用できる。本発明では、Co−Cr−Mo合金の組織を制御してイオン溶出速度が遅い結晶構造を生成せしめる技術を示し、よって、例えば、イオン溶出速度が遅い結晶構造であるε相を富化することで生体内に埋入されたCo−Cr−Mo合金表面からのイオン溶出速度を低下させて、アレルギー発症を抑制するなどの生体毒性の発現を抑制あるいは阻止技術を提供し、広範な実用用途、例えば、生体適合材料や医療用デバイスを製造するのに応用できる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

Claims (28)

  1. 生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する方法であって、合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加することを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金のニッケル毒性の無毒化法。
  2. 添加元素が、Mg,Al,Ti,Zr及びNbからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のニッケル毒性の無毒化法。
  3. 生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する方法であって、合金組成に、元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素を添加することを特徴とする請求項1に記載のニッケル毒性の無毒化法。
  4. 添加元素が、ジルコニウム及びチタンからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項3に記載のニッケル毒性の無毒化法。
  5. 添加元素が、ジルコニウムであることを特徴とする請求項3に記載のニッケル毒性の無毒化法。
  6. 合金組成中のニッケル含有量が、(1)1.0wt%程度あるいはそれ以下、(2)0.5wt%程度あるいはそれ以下、(3)0.002wt%程度あるいはそれ以下、(4)少なくとも100ppmオーダーあるいはそれ以下、または(5)数100ppmオーダーあるいはそれ以下のもので、Niが不可避的に混在する合金であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル毒性の無毒化法。
  7. 合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことを特徴とする、請求項1から6に記載の生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金のニッケル毒性の無毒化法。
  8. 生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金におけるNi微量不純物による生体毒性を無害化する目的で、合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加されているものであることを特徴とするニッケル毒性の無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金。
  9. 合金組成中のニッケル含有量が、(1)1.0wt%程度あるいはそれ以下、(2)0.5wt%程度あるいはそれ以下、(3)0.002wt%程度あるいはそれ以下、(4)少なくとも100ppmオーダーあるいはそれ以下、または(5)数100ppmオーダーあるいはそれ以下のもので、Niが不可避的に混在する合金であることを特徴とする請求項8に記載の合金。
  10. 合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことを特徴とする、請求項8及び9に記載のニッケル毒性の無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金。
  11. 請求項8に記載のニッケル毒性の無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金から製造されたことを特徴とする医療用デバイス。
  12. 請求項8に記載のニッケル毒性の無毒化された生体用Co−Cr−Mo合金又はNiフリーステンレス鋼合金を、焼入れ、金属のガス霧化法、機械的合金法、溶湯急冷法、熱間押出し、熱間圧延、熱間線引き及び鍛造からなる群から選択された処理を加えて製造されたことを特徴とする医療用デバイス。
  13. 生体用Co−Cr−Mo合金におけるイオン溶出抑制法であって、合金組織を制御調整して、εHCP相組織を富化せしめることを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  14. 生体用Co−Cr−Mo合金における合金組織の制御調整が、合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加することを特徴とする請求項13に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  15. 添加元素が、Mg,Al,Ti,Zr及びNbからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項14に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  16. 添加元素が、元素周期表第4族に属する元素からなる群から選択された元素であることを特徴とする請求項14に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  17. 添加元素が、ジルコニウム及びチタンからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項16に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  18. 添加元素が、ジルコニウムであることを特徴とする請求項16に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  19. 合金組成中のニッケル含有量が、(1)1.0wt%程度あるいはそれ以下、(2)0.5wt%程度あるいはそれ以下、(3)0.002wt%程度あるいはそれ以下、(4)少なくとも100ppmオーダーあるいはそれ以下、または(5)数100ppmオーダーあるいはそれ以下のもので、Niが不可避的に混在する合金であることを特徴とする請求項14に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  20. 合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことを特徴とする、請求項14〜19のいずれか一に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  21. 合金組成物を、(i)溶解あるいは1000℃及びそれ以上の温度で熱処理した後、急冷処理を施すか、又は(ii)おおよそ1000℃及びそれ以上の温度であり且つ少なくとも550〜650℃の温度領域での長時間の熱処理を施すことを特徴とする、請求項14〜19のいずれか一に記載の生体用Co−Cr−Mo合金からのイオン溶出抑制法。
  22. 生体用Co−Cr−Mo合金における合金組織のうち、εHCP相組織が富化せしめられ、合金からのイオン溶出が抑制あるいは低減せしめられていることを特徴とする生体用Co−Cr−Mo合金。
  23. 生体用Co−Cr−Mo合金組成に、元素周期表第4族、第5族、第13族に属する元素、ランタノイド元素、ミッシュメタル、Mgからなる群から選択された元素または化合物を添加されているものであることを特徴とする請求項22に記載の合金。
  24. 合金組成中のニッケル含有量が、(1)1.0wt%程度あるいはそれ以下、(2)0.5wt%程度あるいはそれ以下、(3)0.002wt%程度あるいはそれ以下、(4)少なくとも100ppmオーダーあるいはそれ以下、または(5)数100ppmオーダーあるいはそれ以下のもので、Niが不可避的に混在する合金であることを特徴とする請求項22に記載の合金。
  25. 合金溶製後、600℃から1250℃での温度で熱処理を行うことを特徴とする、請求項22〜24のいずれか一記載の合金。
  26. 合金組成物を、(i)溶解あるいは1000℃及びそれ以上の温度で熱処理した後、急冷処理を施すか、又は(ii)おおよそ1000℃及びそれ以上の温度であり且つ少なくとも550〜650℃の温度領域での長時間の熱処理を施すことを特徴とする、請求項22〜24のいずれか一に記載の合金。
  27. 請求項22に記載の生体用Co−Cr−Mo合金から製造されたことを特徴とする医療用デバイス。
  28. 請求項22に記載の生体用Co−Cr−Mo合金を、焼入れ、金属のガス霧化法、機械的合金法、溶湯急冷法、熱間押出し、熱間圧延、熱間線引き及び鍛造からなる群から選択された処理を加えて製造されたことを特徴とする医療用デバイス。
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